1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 08:28:12 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「僕は……僕は大変なことに気が付いてしまった……!」

クマノミ♀「どうしたの?」

クマノミ♂「僕らはやつらにずっと騙されていたんだ!」

クマノミ♀「やつらって、誰に?」

クマノミ♂「やつらさ!」

イソギンチャク「ゆらゆら」←やつら

クマノミ♀「そうなんだ」

クマノミ♂「そうなんだよ!」

クマノミ♀「あ、からだに海草ついてるよ。とってあげるね」

クマノミ♂「ありがとう」

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 08:34:38 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「それで、騙されてたって?」

クマノミ♂「あ、うん。……やつらは僕らを食べるつもりなんだ!」

クマノミ♀「そうなんだ」

クマノミ♂「そうなんだよ! そうだ……考えてみれば、そうだよ。こんなに近くに餌が泳いでいるのに、貪欲なやつらが手を出さない理由はないんだ……」

クマノミ♀「でもわたしたち、食べられてないよ?」

クマノミ♂「これから食べられるんだ! 油断したところを襲うつもりなんだ!」

クマノミ♀「そうなんだね」

クマノミ♂「そうなんだよ!」

クマノミ♀「あ、まだ海草ついてるよ」ヨイショ

クマノミ♂「あ、ほんとだ」

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 08:41:41 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「それならわたしたち、早く逃げないといけないね」

クマノミ♂「え?」

クマノミ♀「イソギンチャクがわたしたちを食べちゃうんでしょ?」

クマノミ♂「あ、ああ! そうなんだよ! 早く逃げないと!」

クマノミ♀「どこに逃げるの? 珊瑚礁の外は危ないよ」

クマノミ♂「どこかそこらへんさ!」

クマノミ♀「うん。でも逃げるなら安全なところに行かないと、天敵に食べられちゃうよ?」

クマノミ♂「僕が君を守ってあげるさ!」

クマノミ♀「わあ、嬉しいな。ありがとう」

クマノミ♂「へへへ……」

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 08:50:45 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「じゃあ、安全な珊瑚の近くを通って行かなくちゃね」

クマノミ♂「え? うん! そうだね! ……あ、ああっ! 触手に近づいたらだめだよ! 危ないよ!」

クマノミ♀「あ、そうなんだ」スイー

クマノミ♂「そうなんだよ! まったく、しっかりしてくれよ!」

クマノミ♀「ごめんね」

クマノミ♂「うん、君が食べられちゃうと僕が悲しいじゃないか!」

クマノミ♀「そうなんだ。えへへ」

クマノミ♂「へへへ」

クマノミ♀「あ、餌が落ちてきたよ」

クマノミ♂「うん、一緒に食べようよ!」

クマノミ♀「うん」

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 08:57:56 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「あ、背中にイソギンチャクの触手あたってるよ?」

クマノミ♂「え? そのようだけど……」

クマノミ♀「イソギンチャクはわたしたちを食べようとしてるんだよね」

クマノミ♂「ああ!? しまった、そうだった! く、危うく騙されるとこだった!」スイスイ

クマノミ♀「危なかったね」

クマノミ♂「ああ……本当に。君のおかげで助かったよ」

クマノミ♀「うん。どういたしまして」

クマノミ♂「くそう、こいつめ。僕たちを騙そうたって! そうはいかないぞ!」

クマノミ♀「あ、まだ海草ついてるよ」

クマノミ♂「あれ? まだついてたの?」

クマノミ♀「もう。わたしがとってあげるね」

クマノミ♂「ごめん、助かるよ」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 09:08:19 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「ああ、お腹がいっぱいだからなんだか眠くなってきたなあ」ユラユラ

クマノミ♀「眠っちゃう前に外に行かないとね」

クマノミ♂「外に? 君、何か用事があるのかい?」

クマノミ♀「イソギンチャクがわたしたちを食べようとしてるから、ここを離れないといけないんでしょ?」

クマノミ♂「あ……ああ! そうなんだよ! まったく、やつらと来たら!」

クマノミ♀「それで、珊瑚の傍を通ってどこかへ逃げるつもりだったよね」

クマノミ♂「あ、ああ! そうだね! 早く逃げないと! さあ、行こう!」

クマノミ♀「あ、ちょっと待っててね」スイー

クマノミ♂「うん、どうしたの?」

クマノミ♀「よいしょ、よいしょ」

クマノミ♂「この辺りの岩をどけて、どうしたんだい?」

クマノミ♀「ないしょ」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 17:29:25 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「準備は済んだ? さあ、行こうか!」

クマノミ♀「うん」

クマノミ♂「大丈夫だよ! 心配ないよ!」

クマノミ♀「うん、そうだね」

クマノミ♂「まずはあそこの赤いの珊瑚ところまで行ってみよう!」スイー

クマノミ♀「わあ、楽しそうだね」スイー

クマノミ♂「ばか! これは遊びじゃないんだぞ! イソギンチャクの罠を出し抜く逃避行だ!」

クマノミ♀「うん。ごめんね」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 18:04:18 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「さあ、気を付けてね、そこにいっぱい突き出た岩があるから。ぶつかったりしたら大変だ!」

クマノミ♀「うん。でも、すごく入り組んでるね」

クマノミ♂「いや、大丈夫さ! イソギンチャクの間をぬって行こう! なんせ僕らはクマノミだからね!」

クマノミ♀「でも、イソギンチャクはわたしたちを食べようとしてるんだよね」

クマノミ♂「え? あ、ああ! そうさ! まったく、こいつらときたら、安全そうに見えて実はとても危険なんだ!」

クマノミ♀「じゃあ、こっちの岩の少ない方から行こうよ」

クマノミ♂「うん、それがいいみたいだ。じゃあ、行くよ、ついてきて!」スイー

クマノミ♀「うん、ついていくね」スイー

クマノミ♂「ああっ、そこ、イソギンチャクの触手があるよ!?」

クマノミ♀「あ、ほんとだね」スイ

クマノミ♂「もう、君ったら、しっかりしてくれよ!」スイー

クマノミ♀「うん。気を付けるよ。ごめんね」スイー

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 20:58:26 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「あ、見て、綺麗な珊瑚だよ」スイスイ

クマノミ♂「……」キョロキョロ

クマノミ♀「わあ、大きなナマコだねえ」スイスイ

ナマコ「この通り、ちょうど良いサイズですから、携帯電話の代わりにもなりますよ」ブルブル

クマノミ♀「わあ、すごいな」

クマノミ♂「……」キョロキョロ

クマノミ♀「なにしてるの?」

クマノミ♂「天敵が来ないか、警戒してるんだ! 君が襲われたりしたら大変だ!」

クマノミ♀「ありがとう。気を付けてね」

クマノミ♂「うん!」キョロキョロ

クマノミ♀「珊瑚礁のトンネル、とっても綺麗だね」スイスイ

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:23:36 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「……」キョロキョロ

クマノミ♀「わっ、みて。向こうのウミユリ」

クマノミ♂「と、止まって!」

クマノミ♀「どうしたの?」

クマノミ♂「あ、危ないところだった……。君の目の前の水、透明だろ? クラゲがいるかもしれない! 間一髪だった!」

クマノミ♀「間一髪だね。助けてくれてありがとう」

クマノミ♂「もう、気を付けてくれよ! 君はおっちょこちょいだから」

クマノミ♀「うん、おっちょこちょいでごめんね」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:28:11 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「……」スイスイ

クマノミ♀「わあ、柔らかそうな海草だね」スイスイ

クマノミ♂「あ、危ないっ!」

クマノミ♀「どうしたの?」

クマノミ♂「それは罠だ! きっと海草の中にウツボが潜んでるんだ! 危機一髪だった!」

クマノミ♀「危機一髪だったね。助けてくれてありがとう」

クマノミ♂「もう、全く君は! こんな罠にも気が付かないなんて、ぽーっとしてるなあ」

クマノミ♀「うん、ぽーっとしててごめんね」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:36:50 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「……」スイスイ

クマノミ♀「……」スイスイ

クマノミ♂「あ、待って!」

クマノミ♀「うん、わたし待ったよ」

クマノミ♂「君の背中に海草がはり付いてるよ!」

クマノミ♀「あ、ほんとだね」

クマノミ♂「しかたないなあ、僕がとってあげるよ」ヨイショ

クマノミ♀「ありがとう」

クマノミ♂「まったく、海草なんて、そうそうついたりするものではないのに」

クマノミ♀「うん、ごめんね」

クマノミ♂「もう。さ、早く行こうよ!」

クマノミ♀「お散歩の続きだね」

クマノミ♂「そう、そう。あっちの珊瑚もきれいだよ!」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:38:34 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「お散歩、楽しいね」スイスイ

クマノミ♂「うん!」スイスイ

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:50:26 ID:ggRCo/i.
クマノミ♀「おうちに帰ってきたね」

クマノミ♂「ふう、疲れたよ」

クマノミ♀「ここで寝てもいいんだよ?」

クマノミ♂「そうだねえ。ここには天敵がくる心配はないし。イソギンチャクがあるからね」

クマノミ♀「イソギンチャクって、わたしたちを食べないんだよね?」

クマノミ♂「何を言ってるんだい。当たり前じゃないか。だって僕らはクマノミだもの。君はうっかり屋さんだなあ」

クマノミ♀「そうだね。うっかり屋さんでごめんね」

クマノミ♂「ふわあ……そろそろ寝ようかなあ」

クマノミ♀「わたしもいっしょに寝るね」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 21:54:44 ID:ggRCo/i.
クマノミ♂「あ」

クマノミ♀「どうしたの?」

クマノミ♂「そういえば、君、ごそごそと岩をどけてたんだけど、何してたの?」

クマノミ♀「あ、覚えてたんだ」

クマノミ♂「覚えてるさ。もう、僕はそんなにバカじゃないよ? 失礼だなあ」

クマノミ♀「うん。ごめんね」

クマノミ♂「で、結局教えてくれないのかい?」

クマノミ♀「うーん。まあ、いっか。あのね、もうすぐ繁殖期だから、産卵場所つくってたの」

クマノミ♂「あっ」

クマノミ♀「えへへ」

クマノミ♂「子育て一緒に頑張ろうね!」

クマノミ♀「うん、がんばろうね」


おしまい

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 22:00:55 ID:olx.BTtE
乙♪

途中で喰われちゃうかと思ったわ

ちなみにクマノミはイソギンチャクに喰われるどころか逆にイソギンチャクの触手を喰っちゃうらしい…(;´д`)

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/03/18(日) 22:04:32 ID:ggRCo/i.
>>23
クマノミは基本的に相利ではなく片利共生だからね
でも一応、クマノミの死骸をイソギンチャクが喰ったという話があるから、イソギンチャク側にとっても死骸が喰えるという点では……

引用元: クマノミ♂「僕らは嵌められていたんだ!」クマノミ♀「うん」