3: 2008/03/05(水) 19:29:28.67 ID:h7UVI1VwO
カチカチ……カチカチ……

キョン「お、長門最近携帯よく使ってるな。メールでもしてるのか?」

長門も大分人間らしいところが出て来たな……そう思っていたのだが、その思いは次の瞬間打ち砕かれた。

長門「違う。メールをしている訳ではない」

キョン「え?」

長門「第一、私にはあなた以外にメールする相手もいない」

キョン「……ッ!」

古泉は、等と聞く事は出来なかった。
実際俺自身、あいつへの返信以外でこちらからメールしたことがなかったからだ。

長門「私は今、携帯で小説を読んでいる」

キョン「まさか……」



長門「そう。今話題の携帯小説」

スイーツ(笑)。なんてこった。

9: 2008/03/05(水) 20:11:10.34 ID:h7UVI1VwO
キョン「なあ、長門」

長門「何?」

キョン「面白いのか?」

長門「とてもユニーク」

そうなのか?
俺は今までネットで評判を見ていたが、大分ひどいものばかりだったが……。
やはり先入観に捕らわれてはいけないのだろうか。

……ううむ、何故だろう。
とても気になってきた。

キョン「なあ、オススメはなんて携帯小説だ?」

長門はこちらをチラっと見た後、携帯に目線を戻しつぶやいた。

長門「恋空」

12: 2008/03/05(水) 20:49:07.87 ID:h7UVI1VwO
な……よりにもよって恋空かよ……。
それだけは流石に俺も駄目だな。
一度、妹が見たいとだだをこねて映画に連れて行った時があったが、見終わった後はさんざんなものだった。

まったく意味が分からない話の展開に妹は理解するのをやめ、途中から騒ぎ出すし、
周りの客はゴミをさんざんっぱら散らかしていやがった。
俺としてもあんなに簡単に運命だなんだかんだ言い出す女にどうしても感情移入できず、損した気分になった。

…………長門をまともな道に戻さないといけないな。
ハードカバーとはいかなくとも、せめてラノベを読むようにはなってもらわなくては。

14: 2008/03/05(水) 20:53:30.30 ID:h7UVI1VwO
キョン「な、なあ長門」

長門「何」

キョン「その……恋空なんだが」

長門「………………」

キョン「い、いや、やっぱりなんでもない」

言えないー! あんなに目を輝かせている長門に読むのやめろなんて言えないって。

くそう、どうする?
やはり俺も2ちゃん脳だったかもしれないし、一度読んだ方が……。

……いや、そうだ。

キョン「長門、恋空なんか読むのやめろよ」

長門「………………」

キョン「俺が恋空なんかよりスイーツな恋をさせてやる」

ハルヒ「な……」

18: 2008/03/05(水) 21:29:52.89 ID:h7UVI1VwO
キョン「へ?」

俺は間抜けな声を出して振り返った。
ハルヒの声に聞こえたがまさか……いやいやまさかねえ。
そんなまさか。頼みますよ神様。
あ、神様ってハルヒだったっけ?

そんな俺の祈りも虚しく、振り向いた先にいたのはやはりハルヒだった。
おいおい、なんて顔してるんだ。

ハルヒ「あ……ごめんね、私お邪魔よね」

ハルヒ「キョンと有希がそんな関係だなんて知らなかったから驚いちゃって……ごゆっくりぃ!」

おい、ハルヒ! それは谷口と同じリアクション……行っちまった……。

長門「ユニーク」

キョン「どうすっかなぁ」

26: 2008/03/05(水) 21:58:19.40 ID:h7UVI1VwO
長門はと言うと、さっき俺が声をかけた時から時間が停まったんじゃないかというほどじっとしている。

長門「………………」

…………いや、ほんの少しだけ頬が赤い、か?

キョン「長門?」

長門「……スイーツな恋、とは?」

キョン「あ、ああ、俺もよくは分からんが……恋空よりはマシだと思うぞ」

長門「………………」

また赤くなった。今度ははっきりと分かる。
なんだ、照れてるのか。長門も可愛い所が……

長門「ふざけないで欲しい」

キョン「へ?」

長門「恋空はワタシ達のリアル」

長門「よく知りもしないでバカにしたような事は言わないで」

30: 2008/03/05(水) 22:08:40.53 ID:h7UVI1VwO
キョン「な……ちょっとまて、長門」

長門「何」

キョン「恋空のどこがリアルだって言うんだ」

もう無理だった。
いくらなんでも、あんなトンデモな話をリアルだと言われては、我慢出来なかった。

キョン「俺の妹もあれの映画を見たが、
    『訳分かんなーい、つまんないよー』
    って言うくらいだったんだぜ!?」

長門「それはあなたの妹はまだ子供だから」

長門「美嘉(だかYOSHIだか)の話を理解出来るはずもない」

31: 2008/03/05(水) 22:18:58.55 ID:h7UVI1VwO
キョン「な……」

長門「恋空はワタシ達みたいな年代じゃないと理解出来ない」

キョン「目を覚ますんだ、長門!」

キョン「いったいどこの世界にレOプされるのが普通な世界があるっていうんだ!」

キョン「確かにレOプされる事もないとは言わない。だが、そんなのがリアルだなんて俺は信じない!」

キョン「しかも何だ、恋人が集中治療室に入ってるってのにそこでするってか?」

キョン「そんなの有り得ないだろう! んなバカな話がそうそうあってたまるか!!!!」

長門「う……」

33: 2008/03/05(水) 22:23:17.89 ID:h7UVI1VwO
長門「で、でも……」

キョン「………………」

長門「あんなに素晴らしい話を書ける作者はきっと凄い人で……」

キョン「それは作品には関係がないな」

長門「だって……恋空は感動する作品だから、みんなそう言ってるし……」

キョン「……お前は」

長門「え?」

キョン「お前はどう思ってるんだ。みんな、じゃなくて」

長門「…………………………」

37: 2008/03/05(水) 22:29:32.04 ID:h7UVI1VwO
長門「………………」

キョン「………………」

沈黙が部室を支配した。
長門は目にうっすらと涙を浮かべている。
感情が芽生え、人間に近づいているこんな時だからこそ、長門におかしな影響は与えたくない。
あんなものがリアルだなんて、そう思ってしまったら、きっと長門は誰にでもすぐ股を開くようなビXチになってしまうだろう。
運命とかなんとか言って。
それだけは阻止しなくてはいけないんだ。
あの日、枕元で朝倉に頼まれたのだから。

朝倉「長門さんをお願いね。おかしな事になったらあなたをさっくりいくから」

44: 2008/03/05(水) 22:40:23.30 ID:h7UVI1VwO
長門「私は……」

キョン「…………」

長門「確かに恋空にはおかしな所があると思う」

長門……。良かった、本当に良かった。
正気に戻ったんだな……。
さっきから鳴り続けてる携帯を無視し続けて説得したかいがあった。
多分携帯は古泉からだろうし、たいして問題ないはずだ。
うん。
多分。
きっと。

キョン「そうだな、長門。それじゃこっちのオーフェンを読も」

長門「しかし、恋空などの携帯小説も、これはこれで面白いものだと思う」

スイーツ(笑)、間違った、ジーザス。神はいない。
あ、神様ってハルヒだっけ。

45: 2008/03/05(水) 22:48:18.14 ID:h7UVI1VwO
キョン「なあ、長門。一つだけいいか?」

長門「何?」

俺はもうダメだ。
長門がスイーツ(笑)になってしまった以上、朝倉にさっくりとやられてしまう。
いや、世界が崩壊するのが先かもな、ははは。
せめて冥土の土産に、長門が恋空を知ったきっかけくらい聞いておこう……。

キョン「お前、どうやって恋空を知ったんだ?」

長門「朝比奈みくるに薦められた。」

なんてこった。
冥土の土産をメイドが投げつけてきやがった。

部室の隅に再構成される朝倉を見て、俺は意識を手放した。



終わり

47: 2008/03/05(水) 22:53:31.56 ID:tC1E5JCiO

48: 2008/03/05(水) 23:01:07.16 ID:GMqXKtl0O
水をぶっかけた所ですごく吹いたwww
ちゃんとふいてあげないと風邪ひいちゃうだろ

50: 2008/03/05(水) 23:06:57.05 ID:h7UVI1VwO
>>18分岐ハルヒ追いかける


キョン「おい、ハルヒ!」

俺は部室を飛び出し、ハルヒを追い掛けた。
長門が顔を赤くしていたような気がしたが、見間違いか気のせいだろう。
まさかあの長門が、そんなまさか。
それより今はハルヒだ。
部室から飛び出して行くあいつの目にうっすらと涙が見えた気がしたからな。

キョン「ぜっ……はっ……ぐぇ……」

………………いくらなんでも速すぎじゃないか?
姿がまったく見えん。

52: 2008/03/05(水) 23:11:39.93 ID:h7UVI1VwO
とぉるるるるるる

携帯が鳴った。
きっとボスからだろう。
俺はボスの言うとおりにやればいいんだ。

キョン「はいもしもし?」

ドッピオです、そう続けようとしたが、相手の声を聞いて電話を切りそうになった。




古泉「もしもし、古泉です」

55: 2008/03/05(水) 23:16:24.96 ID:h7UVI1VwO
キョン「なんだ」

古泉「おや、大分お疲れの様ですね」

キョン「切るぞ」

古泉「いやはや、お待ちください。少し聞きたい事があるのですよ」

キョン「なんだ」

古泉「先程から閉鎖空間が広がっています」

キョン「そうか」

古泉「……涼宮さんの居場所をご存知ですか?」

キョン「知らん」

古泉「やはり。涼宮さんは……」

57: 2008/03/05(水) 23:23:32.00 ID:h7UVI1VwO
古泉からハルヒの居場所を聞いた俺は、教室を目指して走っていた。
すまないな、古泉。
これからはお前との会話で一度に使う文字数を、三文字から最大五文字まで上げてやる。

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「へ? キョン!?」

教室に入ると、席について俯いたハルヒがいた。

ハルヒ「あ、あんたなんでここにいるのよ!? 有希はどうしたのよ!?」

キョン「あ、ああ……」

61: 2008/03/05(水) 23:30:00.31 ID:h7UVI1VwO
キョン「いや、長門はな」

ハルヒ「別に言い訳なんてしなくていいわよ」

キョン「は?」

ハルヒ「さっき有希に告白してたじゃない。あんた有希が好きなんでしょ!?」

なるほど。
確かにあの場面だけ見れば告白してるように見えなくもない。
というより告白そのものな気がしないでもない訳もない。
…………あれ? 俺長門に告白してたの?
だから長門も顔を赤く染めて?

キョン「なんてこったい」

つい思わず口をついて、言葉が出てきた。

62: 2008/03/05(水) 23:35:55.83 ID:h7UVI1VwO
ハルヒ「は?」

やばい、ハルヒがおかしな顔をしている。
今のつぶやきを変な風にとられられてしまったら……。

ハルヒ「あんた、まさか有希をからかったんじゃないでしょうね!!」

キョン「落ち着け、ハルヒ」

ハルヒ「こんのバカキョ」

キョン「あれは長門に頼まれたんだよ!」

ハルヒ「ふえ?」

キョン「長門が最近携帯をよくいじってるのは気付いてるか?」

ハルヒ「え? ええ」

キョン「長門はな、最近携帯小説にハマってるらしいんだ」

64: 2008/03/05(水) 23:40:53.64 ID:h7UVI1VwO
ハルヒ「携帯小説ぅ? あのくだらない恋空とかの?」

キョン「そうなんだ。それで、携帯小説に出て来るようなスイーツなセリフを実際に言ってみて欲しいと頼まれてな」

よくもまあ、口から出任せを言えるもんだ。
我ながら感心するぜ。

キョン「長門はどうも携帯小説のセリフ回しが気にくわないらしくてな、自分で音読しては首を傾げていたんだよ」

キョン「んで、男が実際にセリフを言った所を聞いてみたい、とかでな」

ハルヒ「はあ、そうだったんだ……」

ふう、なんとかなったようだな。
これで一安心だ。

65: 2008/03/05(水) 23:45:47.36 ID:h7UVI1VwO
キョン「さ、もう日も暮れてきたし帰ろうぜ」

俺はハルヒを促し、教室を出ようとした。
だが。

ハルヒ「ちょっと待って」




ハルヒ「私にも、有希の前で言ったセリフを聞かせてよ」

パードゥン?
マジですか、ハルヒさん。

ハルヒ「…………ダメ…………?」

あー、もう。
その顔は反則だろうが。

キョン「一度しか言わんからな」

66: 2008/03/05(水) 23:49:03.19 ID:h7UVI1VwO
俺は夕日で逆光になっているハルヒに向けて、あのセリフを言った。







キョン「俺が、恋空なんかよりスイーツな恋をお前にさせてやる」







………………あの、ハルヒさん。何か言って下さいよ。
俺だってこう改まって言うのは恥ずかしかったと言うのに。

70: 2008/03/05(水) 23:56:03.82 ID:h7UVI1VwO
しばらく黙っていたハルヒだったが、いきなり立ち上がったかと思うと出口へ走り出した。

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「わ、私先に帰る!!!」

なんだよ、んな笑いこらえるほどキツかったってか。
こっちだって恥ずかしかったんだがな。

朝倉「あら、涼宮さんは笑ってなんかいなかったと思うけど?」

キョン「そうか? って、ええ!?」

朝倉「はぁい、お久しぶり」

72: 2008/03/06(木) 00:01:02.17 ID:R4ToKjS+O
朝倉涼子。
以前二度も命を狙われた相手だ。
今回も例に漏れず、アーミーナイフをしっかり握ってやがる。

キョン「何の用だ?」

朝倉「あら、そんなに警戒しないでよ」

キョン「いいから答えろ」

朝倉「んもう……いいわ。以前、あなたの枕元に立ったことがあるんだけど、覚えてる?」

キョン「枕元だと……?」

朝倉「私、言ったわよね。長門さんに悪影響を与えないで、って」

あ……あれは夢じゃなかったってのか?
まさか……それじゃあ。

73: 2008/03/06(木) 00:06:23.15 ID:R4ToKjS+O
朝倉「思い出したみたいね」

キョン「………………」

ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
あの夢が現実なら、確か朝倉は……。

朝倉「私言ったわよね、もしダメだったらさっくりイクって」

そう言い、朝倉はナイフを振り上げ間合いを詰めて来た。

キョン「う、うわぁぁぁ!!」

逃げられない? な、いつの間に金縛りに……チクショウ。

朝倉「何をしようと、ム・ダ・な・の。それじゃ、バイバイ」

それきり俺の意識はぷつりと消えた。



終わり

74: 2008/03/06(木) 00:08:05.55 ID:R4ToKjS+O
キョン氏にすぎな気がしなくもない
しかし>>1がどう氏ぬか聞いてるから仕方ない


なんかさっきから背中が痛いパイナポゥでした

75: 2008/03/06(木) 00:12:58.98 ID:Lso0ouFf0

引用元: 長門「ケータイ小説……面白い……」