1: 2016/07/19(火) 16:41:41.73 ID:TizHk2kd0
はぁとがシリーズ番外編


2: 2016/07/19(火) 16:43:48.93 ID:TizHk2kd0
 かたかたと事務所内はキーボードを叩く音だけが響いていた。

 他のアイドルは仕事やレッスンで外出しており、事務所内ははぁととプロデューサーの二人だけ。
 ほんとはプロデューサーとおしゃべりしたいが、彼の仕事を邪魔するわけにもいかないので、
 はぁとは少し離れたソファで雑誌を読んでいる。

 
 かた……かた……かたかた

 さっきまで一定のリズムで鳴っていたキーボードの音がだんだん不規則になっていたので、はぁとは顔を上げた。
 仕事に集中できないなんて珍しい。
 雑誌の隙間からプロデューサーの様子をこっそりと伺った。

【モバマス】佐藤心「はぁとが走り出す」
【モバマス】佐藤心「はぁとが止まらない」

ローソン限定 アイドルマスター シンデレラガールズ ラバーストラップ 佐藤心 単品
3: 2016/07/19(火) 16:45:50.62 ID:TizHk2kd0
 しばらくプロデューサーを観察して、不規則な音の原因がわかった。
 スマホ。さっきからプロデューサーは頻繁にスマホをチェックしている。
 30秒に一回ほどの割合でスマホを見る。
 それを繰り返している。

 仕事先からの連絡を待っているのか、はたまた女の子からの恋文を待っているのか。
 後者だったら嫌だな。
 そんなことを考えながら、はぁとはプロデューサーを観察しつづけるが、
 プロデューサーは、はぁとの視線には気づかなかった。

4: 2016/07/19(火) 16:47:05.84 ID:TizHk2kd0
「時間だ」

 プロデューサーはキーボードを叩くのをやめ、スマホを弄りだした。

 時間?
 時計を見つめるとちょうど3時。急に甘いものが食べたくなってきた。
  
 何かあるかな。
 すごい速さでスマホをタッチしているプロデューサーが気になりながらも、はぁとは冷蔵庫に向かった。

5: 2016/07/19(火) 16:49:36.45 ID:TizHk2kd0
 戦利品であるプリンを手にはぁとが戻ると、プロデューサーが机に頭をうなだれていた。
 プリンの味よりも頭をうなだれているプロデューサーの方が気になったので、
 プリンはいったんお預けにして、はぁとは恐る恐るプロデューサーに声をかけた。

「ど、どうしたのプロデューサー☆元気ないけど」
「はぁとさん……」

 さっきまで仕事をしていたときと比べるとプロデューサーは明らかに落ち込んでいた。
 これはほんとに恋愛事か、とはぁとが勘ぐっているとプロデューサーが続けた。

「出なかったんですよ」
「な、なにが?」
「はぁとさん」
「え、はぁと?」

 意表をつかれた。
 さっきまではぁとのこと全然気にしてなかったはずなのに、はぁとが出なかったってどういうことだろう

「どういう意味?」
「これですよ。これ」

 プロデューサーはスマホをタッチした。
 
「アイドルマスターシンデレラガールズ、スターライトステージ」

 事務所に聞いたことのある声が鳴り響いた。


6: 2016/07/19(火) 16:50:51.42 ID:TizHk2kd0
「ああ。プロデューサー、デレステやってたんだね☆」
「当たり前じゃないですか。事務所のみんなが出演してるんですよ」

 プロデューサーはさっきまでと打って変わり熱く語りだした。

「今日のガチャ更新できっとはぁとさんが来てくれると思ったんです僕は」
「はぁ」
「でも結果は相葉ちゃんで。いつになったらはぁとさん実装されるんですか」
「それははぁとに聞かれても…… というかそれこそプロデューサーが交渉しろよ☆」
「デレステは別の会社さんに任せているので、こっちからは何も干渉できないんですよ」


7: 2016/07/19(火) 16:52:21.25 ID:TizHk2kd0
 プロデューサーはまだ熱く語っている。
 
 はぁと本人が近くにいたのに、本人そっちのけでゲームの方ってどうなの?
 と思う反面、はぁとのことにここまで熱くなってくれるなんて、
 と考えると、はぁとも少し熱くなってきた。

「まぁまぁ。落ち着こうプロデューサー。はぁともいつかは実装されるし。その時に引けばいいじゃん☆」
「……確かにそうですね。すいません。ちょっと熱くなりすぎました」

 ほんとはゲームのはぁとじゃなくて、現実のはぁとをお迎えしてもいいんだぞ☆
 少し恥ずかしそうに頭をかいてるプロデューサーに、はぁとは思いを寄せる。



8: 2016/07/19(火) 16:53:12.41 ID:TizHk2kd0
「はぁ、またジュエル貯めなおしですね」
「え?」
「え?」

 貯めなおす。
 はぁとの頭は考えを巡らす。
 貯めることをやりなおす。

9: 2016/07/19(火) 16:53:50.52 ID:TizHk2kd0
「ちょっとまって☆まて☆まさかジュエル使ったの?
 さっき、はぁとさん実装されない……って悲しんでたのに?」

 たたみかけるようにはぁとが質問すると、

「飲み物を買ってきます。はぁとさん何がいいですか」

 プロデューサーは席をたった。
 逃がすかとはぁとはプロデューサーを窓際へ追い詰める。

10: 2016/07/19(火) 16:55:07.71 ID:TizHk2kd0
「はぁとさん……そこどいてくれないと飲み物買いにいけないんですけど」
「喉なんて乾いてないから!ねぇプロデューサー、使ったの?使ったんでしょ?言え☆言え☆」

 逃げ場を失ったプロデューサーははぁとから目を逸らしたまま一言呟いた。



「……白封筒でした」


 外では蝉が。内でははぁとが。ないていた。

11: 2016/07/19(火) 16:55:52.66 ID:TizHk2kd0
以上です。

涙ふいてコンビニいきます

16: 2016/07/19(火) 23:08:32.98 ID:TizHk2kd0
前作
はぁとが走り出す
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465794060/

よかったらどうぞ

引用元: 佐藤心「はぁとがないている」