1: 2014/07/23(水) 01:14:53.71 ID:JU/Eiiqno
「おはよう、って誰もいないか」
貸し切りのレッスンスタジオにアタシの声が響く。時刻は早朝、アタシの呼吸音以外聞こえないなんて普段なら考えられないな。
いつもなら誰かしらと一緒にレッスンをする。真たちとダンス対決をしたり、苦手な歌をジュリアに教えてもらったり。
だが今日は誰もいない。それだけに、身が引き締まる。
2: 2014/07/23(水) 01:16:15.94 ID:JU/Eiiqno
「それじゃ、始めるとしますか」
ストレッチをすませ、ウォーミングアップ。軽い動きは次第に激しく。うん、いつも通りだ。
CDプレイヤーのスイッチを入れる。流れてきたのは今日のライブで踊る曲だ。
靴が床を擦る音、荒い息遣い、大変だが笑顔は忘れずに。鏡を見てチェックする。
顔は自然と笑顔になっていた。当然だ。私は今最高に楽しんでいる。
「夢はナンバーワン、ってな」
3: 2014/07/23(水) 01:17:57.01 ID:JU/Eiiqno
少し前まで、アタシはアメリカにいた。
そこでたくさん学ぶことはあった。友人もできたし、楽しい思い出も辛い思い出もある。
だが結果というものは付きまとう。アタシにとって、それは失敗だった。
何も成せず、何も掴めず。そうやってアタシは日本に帰ってきた。
帰ってきたころは辛かったかもしれない。だが時が経てば、想いは薄れていくものだ。
4: 2014/07/23(水) 01:19:04.39 ID:JU/Eiiqno
ぼんやりと過ごす日々、目的も見失ってアタシはただ過ぎていく時間に流されていた。
さすがに親から文句を言われ、自分が唯一自慢できるダンスを活かせないかと考えた。
リベンジ、だろうか? アタシの中に夢を追う情熱がまだあったのかもしれない。
そうしてアタシは、導かれるようにアイドルの門を叩いた。
5: 2014/07/23(水) 01:19:35.98 ID:JU/Eiiqno
『舞浜歩、19歳。夢は大きくスーパーアイドルになること!』
最初の挨拶はこんなもんだったはず。プロデューサーの困ったような顔は今でも忘れられない。
そりゃそうだ。どう見ても遊び歩いていたような見た目だからな。
それでもプロデューサーはアタシをアイドルにしてくれた。理由を聞いたとき、ティンと来たとか言ってたっけ。
仲間も受け入れてくれた。真や昴なんかとはすぐ仲良くなれたし、未来や静香にも色々聞かれたなぁ。
6: 2014/07/23(水) 01:20:38.18 ID:JU/Eiiqno
それからは大変だった。まずアタシはダンスしかできない。アイドルは歌に演技も必要だ。
教わりながら、少しずつだけど前に進んでいった。アタシは努力が嫌いじゃないし、なにより楽しかった。
プロデューサーがアタシの苦手な仕事を持ってきて、それに文句を言うのが楽しかった。
真と一緒のステージに立ったときは、今まで生きてきた中で一番燃えたかもしれない。
冬にやったブレイクダンスは今でも時々披露する。そのたびにファンは大盛り上がりだ。
7: 2014/07/23(水) 01:21:19.95 ID:JU/Eiiqno
そう、アタシには見ていてくれる人がいる。
ファンの人たちはこんなアタシを応援してくれている。
仲間たちは苦手なことの多いアタシを支えてくれたし、共に歩いてくれた。
プロデューサーには……感謝してもしきれないぐらい、たくさんのものを貰った。
「ダンスはオッケー、あとは歌だな」
8: 2014/07/23(水) 01:21:54.69 ID:JU/Eiiqno
今日は初めてソロ曲を披露する。アタシの苦手な歌メインの曲だ。
昔のアタシならできなかったかもしれない。だけど今のアタシならできる気がする。
それだけアタシは成長できたってことだろう。身も心も。
9: 2014/07/23(水) 01:23:11.20 ID:JU/Eiiqno
「Anyway 止められない 止めたくない ときめきも きらめきも この鼓動も」
この歌はアタシが考えたアタシだけの曲だ。もちろんプロデューサーや作曲家さんなど色んな人の力を借りて作られてるけど。
それでも、これに込めた想いはアタシだけのものだ。
「ずっと 自分らしく輝く場所 欲しかった 探してた どんなときも」
アタシの目指す場所はまだまだ先だ。スーパーアイドルなんて夢のまた夢。いつ到達できるかなんてわからない。
だけど皆となら、プロデューサーとならたどり着ける。そう信じてる。
「Get my shinin',I can't stop groovin',baby Feel me,Feel you,Starry heavens...」
10: 2014/07/23(水) 01:26:54.90 ID:JU/Eiiqno
しばらくして扉がガチャリと開いた。やってきたのはプロデューサーだった。
「今日は本番だな。こんな朝から飛ばしてて大丈夫か?」
飲み物を渡しながら聞いてくる。
「心配ないって。もう体調管理ぐらいできるよ。それに、今日のアタシは絶好調なんだ。動いてないと落ち着かないんだよ」
「ははっ、そうか。なら安心だな」
そう言って、笑いながら撫でてきた。予想外すぎて完全に固まってしまった。
「ちょ、子供じゃないんだから!」
「俺からすれば皆子供みたいなもんだよ。ほら、そろそろ会場に向かうぞ」
パッと手が離れる。恥ずかしさに混じって、少しだけ寂しいのはどうしてだろう? まっ、気にしなくてもいいか。
11: 2014/07/23(水) 01:27:36.73 ID:JU/Eiiqno
「もうそんな時間か? オッケー、ちょっと待ってて」
手早く片づけて移動の準備を整える。……よし、大丈夫だ。
「それじゃ行こうか。歩」
「よっしゃ! 行こうぜ、プロデューサー!」
アタシの居場所へ。いつか夢見たステージへ。
12: 2014/07/23(水) 01:30:51.48 ID:JU/Eiiqno
これにて終わりです。ミリオンライブ、舞浜歩のお話でした。
即興なので短いですね。歩の誕生日なので勢いで書いてしまいました。
自分は歩の曲が大好きです。まだ聞いたことのない人はぜひ聞いてみてください。
それでは読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
即興なので短いですね。歩の誕生日なので勢いで書いてしまいました。
自分は歩の曲が大好きです。まだ聞いたことのない人はぜひ聞いてみてください。
それでは読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
13: 2014/07/23(水) 01:43:08.99 ID:NcOE4vIC0
乙でした
16: 2014/07/23(水) 07:34:44.54 ID:FxIcOUEa0
乙!
歩、誕生日おめでとう!!
歩、誕生日おめでとう!!
引用元: 歩「探していた場所」
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