1: 2018/03/06(火) 21:51:56.45 ID:prsSAOaq0
青羽「…っ放せ…!」


自分でも抑えられない衝動。戦兎は暴走していた俺を止めるために、見たこともない姿に変身し、完膚なきまで俺を叩き潰した。


≪マックスハザードオン!ガタガタゴットン!ズタンズタン!≫


俺を倒した後も、黒く、そして強くなった三羽ガラス共を圧倒してやがった。あの野郎、また強くなりやがったな。これならグリスもぶっ飛ばせるかもしれねぇ。あの時は気楽にそう思ってたんだ。


一海「やめろーーーー!」


《ハザードフィニッシュ!》



止めるべきだった?けど俺はあそこで動けなかった。情けねえ、何もできねえ、大事な相棒を俺は…


戦兎「…俺が、やったのか…?」


ーーーーーーーーー救ってやれなかった。




これは、東都と北都の代表戦が始まるまでのお話…



2: 2018/03/06(火) 22:26:07.02 ID:prsSAOaq0
万丈「代表戦…ですか」

仮面ライダーによる一対一の代表戦。つまりお互いの主力の最高戦力を使って、東都と北都が戦争の勝敗を決める。被害が甚大な東都にとって、最も平和的な解決法だ。


泰山「頼む。東都のため、戦ってくれんか」



戦兎「…俺はもう、戦いたくないです」


微かに震えた声で、そう言い残して出ていった。


いつまでたっても、戦兎の瞳は虚ろなままだった。あれだけ東都を守ろうと必氏だったのに、全てがどうでもよくなったみてえだった。


泰山「…」

美空「…」

紗羽「…」

万丈「…あの」


…なんとかするしかねえだろ、俺。

3: 2018/03/06(火) 22:33:04.52 ID:prsSAOaq0
美空「万丈!代表戦出るって…」

万丈「…あんな状態のあいつに、東都の未来を任せてらんねーだろ」

あれから、あいつと顔を合わせることが少なくなった。最近何処かに入り浸ってるようだ。一体何をしてんだか、俺にはさっぱりわかんねえけど。

万丈「俺が、戦争を終わらせるんだ」

美空「万丈…」

万丈「…っし!そう決まったなら特訓しねえとな!こんなもんじゃ、グリスに勝てねえ!」

万丈「勝つんだ…あいつに頼らなくても、俺が…」


4: 2018/03/06(火) 22:39:54.30 ID:prsSAOaq0
万丈『悪かった…俺のせいで、お前たちの仲間を…』

一海『…』


謝罪の言葉しか出てこなかった。俺を止めようとして、あいつは無茶をした。俺のせいだ。俺の…


一海『半端な覚悟で戦場に戻ってくんじゃねえ』


忘れられない。あいつらが仲間を失った時のあの眼を。今すぐにでも俺達に復讐したいはずなのに。


自分が、どうしようもなく惨めに思えた。

5: 2018/03/06(火) 22:49:30.64 ID:prsSAOaq0
万丈「…変身!」


心の中にある色んなもんを振り切るように、俺は言い放った。

強くなる。あいつがハザードトリガーなんか使わなくていいように。グリスに勝つために。


クローズチャージ「もっと強くなるんだ…!もっと、もっと、もっと!」


弱い自分に打ち勝つために!


クローズチャージ「うおおおおお!!」


負けねえ…負けねえぞ!俺は!



スターク「…頑張るねぇ…」

6: 2018/03/06(火) 23:06:22.81 ID:prsSAOaq0
北都、西都のボトルや、ハザードトリガーを使った戦闘訓練。戦兎は内海もといスタークの力を借りて、代表戦の勝利を目指していた。


ビルド「はぁ…はぁ…」

内海「…よし。今日はここまでにしよう」

ビルド「…はい」


戦兎は自分を限界まで追い込み、更に強くなっていく。だが、変身を解除して見えた戦兎の表情は、どこか腑に落ちない様子だった。


戦兎「…内海さん」

内海「どうした?」

戦兎「この特訓のおかげで、様々なボトルの特徴を使いこなせるようにはなれた。俺自身も、前より強くなっている実感もある。けど…」

戦兎「もし…もしだ。このボトルでも敵わなかった時、俺は…」

「心配するな」

内海「! スターク…」

スターク「今のお前はグリスと互角と言ってもいい。たとえ劣勢になっても、奴がボトルに対応する前に勝負を決めればいいんだよ」

戦兎「…あんたの口から出たことなんて、もう信用できるかよ」

スターク「…はっはっはっ!その信用できない男に、最初に泣きついてきたのは…一体どこの誰かなぁ?」

戦兎「っ!てめぇ…」

内海「…口が過ぎるぞスターク」

スターク「ま、そういうことだ。気楽にやれよ、心が病んだままじゃ、今の万丈みたいになっちまうぞ?」

戦兎「何…?」

7: 2018/03/06(火) 23:14:21.49 ID:prsSAOaq0
スターク「馬鹿は馬鹿なりに、精一杯やってるってことだ。あのままだとあいつ、勝手に自滅してしまうかもなぁ…でもまあ、今のお前には関係のない話か!」

戦兎「どういうことだ!あんた、また何かしたのかよ!」

スターク「…何も?俺はあいつになーんにも手出ししてねぇよ?」

戦兎「なら、なんで…」



スターク「それぐらい自分で考えろ。チャオ!」



戦兎「おい!待てよ!」



戦兎「ごめん内海さん!俺、あいつを…」

内海「ああ」

戦兎「くそ…!あのバカ…!」



内海「…大した性格の悪さだな、スターク」

8: 2018/03/06(火) 23:31:17.82 ID:prsSAOaq0
特訓を始めて数日。俺は、少しずつスクラッシュドライバーの副作用を克服していこうとした。

クローズチャージ「ぐっ!?ちくしょう、まだまだ…!」

美空「また…もうやめなよ万丈!今度こそただじゃすまなくなっちゃうよ…」

クローズチャージ「これぐらいの痛みで負けるかよ…!俺は…あいつのために…」

「誰のためだって?」

「「!」」

美空「戦兎!」

クローズチャージ「…何しに来やがった」

戦兎「ん?そりゃあお前、バカみたいに熱血してるバカを止めに来たんだよバカ」

クローズチャージ「うるせーよ…」

やる気が一気に失せた。変身を解いてから興奮が収まってくると、痛みや疲れが俺の体にガツンと押し寄せてきた。

戦兎「お前が何しようが知らねーけど、寒くなってきたしそろそろ帰るぞ。皆に心配かけてんじゃねーよ、バカ」

万丈「…んだと?」



…心配かけるなだと?どの口が言ってやがる…



戦兎「バカは風邪引かないからいいけど、なんたってこのてーーんさい物理学者の俺は…」



万丈「ざけんな!」

9: 2018/03/06(火) 23:47:08.86 ID:prsSAOaq0
万丈「俺は代表戦で勝たなくちゃならねえ…戦争で怯えてる皆のためにも、負けられねぇんだよ!そのために俺は、こうやってスクラッシュドライバーの力を抑えられるよう特訓してんだ!」

万丈「その戦いから逃げたお前に、あれこれ言われる筋合いはねえ!」

戦兎「…!」

美空「万丈!!!」

万丈「…あっ」


嘘だろ俺。やっちまった。あいつが一番後悔してんのに、俺はまた…


万丈「…わりい、言い過ぎた」

こいつと、久しぶりに目が合った気がした。初めて会った時とは比べ物にならないほど、戦兎の顔はやつれていた。


本当に馬鹿だ。今、誰よりも傷ついて、誰よりも悩んでるのは、俺じゃない。こいつなんだ…


戦兎「…いや。そうか、そうだよな…うん」

戦兎「万丈、そして美空。お前らに話さないといけないことがある」

美空「私も…?」

戦兎「ああ。大切な話なんだ」

万丈「…」

10: 2018/03/07(水) 00:02:55.41 ID:28hKpkeW0
万丈「人の気も知らねぇで…!勝手にしろ!」

戦兎「…」


万丈(信じらんねえ…)


あいつは、代表戦に出ると言った。


相手は強敵のグリス、ハザードトリガーを使わないで勝つなんて、いくらあいつでも無理だ。


ハザードトリガーなら…グリスとも互角にやれるだろうな。


だけど、ハザードトリガーを使えば暴走して、また青羽のように犠牲を出すかもしれねえ…けど、そうなったら…



そうなったら…誰が止めるんだ…?




もういい…考えるのは疲れた…俺は馬鹿だから…


………


11: 2018/03/07(水) 00:10:36.44 ID:28hKpkeW0
始まった代表戦。テレビに映るビルドとグリスを、俺はぼんやり眺めていた。

万丈「…負けんなよ」

序盤は目にも止まらぬ連撃で、グリスを押していたビルド。そのまま押しきれればビルドの勝ちだったが…俺の悪い予感は当たっちまった。


《ハザードオン!》

万丈「! あいつ…」


スパークリングでもとうとう勝てないと悟ったのか、ついにハザードトリガーを使いやがった。

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

万丈「…」

自我を失わずに勝つ、それが理想だけど…あいつにそんな余裕はなかった。


グリスに苦しめられているビルドを見るのは、決していい気分ではない。だが俺はそれでも、動くことはなかった。

12: 2018/03/07(水) 00:17:04.04 ID:28hKpkeW0
しばらくしてから、紗羽さんが帰ってきた。走ってきたのか汗だくだった。

紗羽「はぁ…ふぅ…はぁ…」

俺を見るその目は、何かを訴えかけていたようだった。

紗羽「…戦兎君が、ハザードトリガーを使った!」

やっぱりだ。俺にあいつを止めてほしいんだろ。

万丈「…俺にはどうしようもねぇよ」

暴走したあいつを、俺が止められるわけねーだろ…
グリスにすら勝てない俺が…

紗羽「…戦兎君が、氏んでもいいの!?」


万丈「ーーーー!」

13: 2018/03/07(水) 00:24:38.42 ID:28hKpkeW0
万丈「うおおおおおおお!!」


間に合え…間に合え!


紗羽『戦兎君…美空ちゃんに万が一の時の自爆スイッチを渡してたみたいなの。美空ちゃんにそんなもの…使わせるわけにはいかない!だからお願い万丈、戦兎君を氏なせないで!』

紗羽『貴方しかいないの!戦兎君を止められるのは!』


そうだ…俺しかいねえ。

ごちゃごちゃ考える前に動けよ…

いつだってそうだ…

あいつの側にいてやれんのは…

俺しかいねえだろうが!



万丈「おおおおおおおおお!!」

14: 2018/03/07(水) 00:35:07.28 ID:28hKpkeW0

ビルド「…」

美空「だめ…」

一海「くっ…」

ビルド「…フッ!」

美空「だめーーーー!戦兎ーーーー!」

ハザードフォームの容赦のない一撃。阻止できる者などいないと誰もが思っていた。

クローズチャージ「調子良さそうじゃねぇか…戦兎!」

美空「万丈…!」

ビルド「…」

一海「よせ…今のお前じゃ…」

クローズチャージ「うるせえ…やるしかねぇんだよ!」


うじうじ悩んでても仕方ねぇだろ俺!俺は馬鹿なんだから、やれることを一生懸命やるぐらいしかできねえ!そんでもって、絶対後悔しないようにすりゃいいんだよ!

15: 2018/03/07(水) 00:47:22.92 ID:28hKpkeW0


クローズチャージ「目ぇ覚ませ!戦兎!!」


必殺の一発を戦兎にぶちこむ。

強力なハザードも、スクラッシュドライバーを制御できるようになり、なんとか止めることが出来た。


一海「あいつ…殻を破りやがった」


紗羽「…やったね」


美空「ありがとう…万丈」


良かった…

戦兎「っ、ここは…」

万丈「…勝ったんだ」

戦兎「…お前が止めてくれたのか」

万丈「…いや」

万丈「皆のおかげだ」


これで皆、何も失わないで済むんだな…


16: 2018/03/07(水) 00:53:47.93 ID:28hKpkeW0
俺は馬鹿だ。みんな分かってるだろうけど、とんでもねえ大馬鹿野郎だ。


だけど…今度こそ…


俺の力で、守りたいモノが守れた。俺はそう信じてる。


香澄…俺、負けねえから。


だからもうちょっとだけ…


俺に力、貸してくれよな。


クローズドラゴン「♪♪」

17: 2018/03/07(水) 00:56:55.39 ID:28hKpkeW0
終わりだあああ
オチが考えつかなくてまーた香澄よろしくENDになっちまった。万丈大好きだからね、仕方ないね。

18: 2018/03/07(水) 17:42:23.82 ID:VkIt+ZSIO
最初からこういうの書いてよw

引用元: 《仮面ライダービルド》万丈の葛藤