かのん「ご存知のように、私たちはこれからラブライブ！の後継者Liella!としてデビューします」

すみれ「ついに私たちもデビューなのね」

千砂都「うん」

恋　　「デビューするからと言って気を抜けませんよ。
　　　　私たちはこれから厳しいアイドル界で生き抜いていかねばなりません」

孔明　「左様でございます」

恋　　「あのー……先ほどから気になっていたのですが、どちら様でしょうか？」

孔明　「申し遅れました。私、姓は諸葛、名は亮、字は孔明と申します」

可可　「ええー！　あの忠武候、諸葛孔明先生ですかー？！」

千砂都「誰？」

すみれ「三国時代の有名な武将よ」

孔明　「以後お見知り置きを」

恋　　「その諸葛孔明さんがなぜここに？」

かのん「うん……渋谷で歌ってたら「ｽﾊﾞﾗｼｺｴﾉﾋﾄｰ!」とか話しかけられて、
　　　　そのままウチの喫茶店で働くことになって……」

すみれ「中国人ってみんな同じパターンなのかしら？」

孔明　「寄る辺無く渋谷を彷徨っていたところ、かのんさんの素晴らしい歌声にすっかり魅了されまして。
　　　　聞けばこれからスクールアイドルデビューされるとか。
　　　　微力ながらこの孔明お手伝いしたく参上致しました」

かのん「私たちの軍師になるって言ってついてきちゃって......」

可可　「孔明先生がいれば天下取るのも夢ではありません！」

すみれ「でも諸葛孔明は天下取れなかったんじゃない？」

可可　「グソクムシは黙ってろデス」

千砂都「まあまあ、とにかく運営会議を進めようか」

恋　　「えー、おさらいですが、ラブライブ！界はμ’sが一代で勢力を築きました。
　　　　μ’s Finalの後は後継者であるAqoursが勢力を引き継ぎ、
　　　　そして今はスピンオフの虹ヶ咲もデビューし、２作品が同時進行しています」

すみれ「ここに私たちまでデビューすると少ないパイを奪い合うことになるわね」

千砂都「もうアラサーのおばさん達には引退してもらおうよ」

孔明　「お待ちください」

可可　「先生、何か策があるのデスカ？！」

孔明　「Liella!が天下を取るにはAqoursも虹ヶ咲も邪魔な存在。いつかは倒さなければなりません。
　　　　しかしμ’sから引き継いだAqours、虹ヶ咲のファン数は侮れないものがあります。
　　　　今彼女らを引退させてファンを失うのは得策ではありません。
　　　　外にはウマ娘等の蛮族もおり、ラブライブ！のファンを虎視眈々と狙っておりますし」

千砂都「おばさん達のファンを私たちが取り込めばいいじゃん」

孔明　「民の心はすぐに動く物ではありません。
　　　　そしていくらラブライブ！正当後継者のLiella!でもデビューしたての状態では
　　　　他グループのファンを取り込む魅力を引き出せません」

すみれ「じゃあどうすればいいのよ？」

孔明　「Aqours、虹ヶ咲、Liella!、３作品同時進行するのです。すなわち天下三分の計」

可可　「出ました！　天下三分の計！」

恋　　「ですが、３作品同時進行ではファンの出費が増え、
　　　　脱落するファンも出てくるのではないでしょうか……？」

孔明　「そのような者は捨て置けば良いのです。大事の前の小事です」

千砂都「おばさん達の知名度を利用してLiella!のファンを増やすんだね」

かのん「なんか悪い事してるみたい…」

可可　「何言ってるんですか、かのん！　スクールアイドルとして生きていくには弱肉強食、酒池肉林デス」

すみれ「後半は違うんじゃないの？」

孔明　「新シリーズの発表を行う場も考えてまいりました、こちらです」ﾋﾟｯ

恋　　「こ、これはラブライブ！フェスじゃないですか？！」

可可　「μ’s、Aqours、虹ヶ咲が一堂に会する夢のライブです！」

孔明　「左様でございます。フェスの最後で新シリーズ開始の発表を行います」

すみれ「私たち出演してないのに発表なんかしちゃっていいの？」

孔明　「休止状態だったμ’sも参加するこのフェスで新シリーズを発表することで、Liella!がμ'sの正統な後継者であると世に知らしめるのです。
　　　　これぞ兵法三十六計における借屍還魂」

千砂都「おばさん達に盛り上げてもらって私たちの前座になってもらうんだね」

恋　　「ですが……、虹ヶ咲は当初予定が無かったアニメ化が決まり勢い付いてます。
　　　　この状況で彼女達のステージの後に私たちの発表をすると反発を招くのでは無いでしょうか？」

孔明　「その勢いすら利用するのです。悪名は無名に勝る。
　　　　どんな手段を使ってでも世間の耳目を集めれば勝ちなのです」

可可　「さすが孔明先生！」

かのん「孔明怖いなあ～」

孔明　「フフフ……お褒めいただき光栄です」

ラブライブ！フェス後

結ヶ丘女子高等学校
スクールアイドル部 部室


かのん「ラブライブ！フェスすごい盛り上がりだったね」

可可　「μ’sのライブが見られて幸せでした」

千砂都「新シリーズの発表は「歓喜の渦」だったYo!」

すみれ「歓喜の渦というよりは困惑のざわつきだったような…」

可可　「孔明先生の策にケチつけるなデス、グソクムシ」

恋　　「スーパースターは最初からアニメ化決定していることから
　　　　ネット上では虹ヶ咲に同情する声も聞かれています」

孔明　「それも想定の範囲内です。日本人は判官贔屓と言いますから気にすることはありません」

かのん「それじゃあ今日もラブライブ！スーパースター！！運営会議を開催します」

恋　　「今日決めるのはデビューシングルに関してですね」

可可　「ワクワクするデス！」

孔明　「デビューシングルのMVロケ地はSHIBUYA SKYがよろしいかと」

かのん「ええー！　あんな高いところで歌っちゃっていいの？！」

孔明　「はい。μ’sのラブライブ決勝のステージである晴海客船ターミナルも高地でした。つまり......」

千砂都「なるほどデビュー曲をアニメの決勝曲にするエモ展開だね」

可可　「さすが孔明先生！　そこまで考えてましたか！」

孔明　「ありがとうございます」

恋　　「ではロケ地は決定ですね。
　　　　CDの内容はこれまでの慣例に習ってMVのBlu-yay付きで、カップリング曲とラジオドラマを入れようと思います」

孔明　「お待ちください」

かのん「孔明？」

孔明　「CDは２バージョン出すのが得策と存じます」

可可　「なぜですか？　先生」

孔明　「ファンに２バージョン購入させて利益を最大化するのです」

すみれ「まあバージョン分けは虹ヶ咲もやってるけど、コアなファンしか買わないからあまり利益は変わらないんじゃ無い？」

孔明　「虹ヶ咲は同じ内容でジャケットが違うだけですが、我々は曲も変えます」

かのん「えー？！」

孔明　「カップリング曲を２曲づつにして、そのうち１曲をバージョンによって変えるのです」

恋　　「しかし今はサブスクで聴けますから、１曲だけのためにCD２つも購入するでしょうか？」

孔明　「２つのバージョンのうち、サブスクで公開するのが片方だけならいかがでしょう……?」

恋　　「サブスクで公開されない方の曲はCDを買わないと聴けない…」

孔明　「左様でございます。どちらのバージョンがサブスク公開されるかは発売まで伏せておきます。
　　　　しかもその１曲をライブとアニメで多用し、ファンが聴かざるを得ない状況を作ります」

千砂都「Blu-ray付きで5000円近くする商品を２つも買わせるなんて、孔明悪いYo!」

すみれ「こんな小細工反対よ！
　　　　出し惜しみなく良い商品をファンに届けるのがラブライブ！じゃないの？！」

孔明　「ラブライブ！スーパースター！！には各ステークホルダーからも大きな期待が寄せられております。
　　　　μ’s並みのブレイクを再現するには楽曲もライブもアニメも金をかけて良いものにしなければなりません。
　　　　その為には金が要るのです。
　　　　あなたは売れないままでいいのですか？　平安名すみれさん？」

すみれ「……」

CD発売後
結ヶ丘女子高等学校
スクールアイドル部 部室


千砂都「CD結構売れたね！」

可可　「さすが孔明先生の策です！」

すみれ「でも２バージョンで曲を変えたことに対する批判はあるみたいよ」

恋　　「私のSymphonyを聴けてない方も結構いるみたいですね……」

かのん「せっかく歌ったのに......」

孔明　「無名のアイドルグループのデビューシングルとしてはまずまずの売り上げですが、ラブライブ！シリーズとしてはまだ足りません。
　　　　手を緩めてはなりません」

かのん「えー、それではラブライブ！スーパースター！！運営会議を開催します」

恋　　「今日の議題はアニメの内容に関してです」

孔明　「監督と脚本は無印と同じ陣容がよろしいかと」

可可　「脚本担当は3回目の登用、三顧の礼デス！」

すみれ「使い方違うわよ。
　　　　確かに無印のアニメはヒットしたけど、同じ脚本のサンシャイン！！は叩かれたんじゃない？」

恋　　「虹ヶ咲は全く新しい監督と脚本を登用して新しい風を吹かせることに成功した様ですし、私たちも新たな人材を探した方がいいのではないでしょうか？」

孔明　「温故知新。古い物の中にも新しい物はございます。
　　　　ストーリーも、廃校、幼馴染、生徒会長との対立、ライバルグループ等のレガシーをふんだんに盛り込みます」

すみれ「マンネリで叩かれそう」

可可　「孔明先生の策にケチつけるなんて1800年早いです！　このスットコドッコイ！」

かのん「ライバルグループってどんなの？」

孔明　「こちらがライバルグループのSunny Passionのキャラデザでございます」ﾋﾟｯ

千砂都「なんか可愛く無いね。サンバだし」

恋　　「デザインも私たちとは違う感じがしますね」

孔明　「容姿よりも内面を重視すべきかと」

可可　「孔明の嫁選びデスネ！」

すみれ「強者感も無いわね。子供っぽすぎない？」

孔明　「今後もラブライブ！シリーズを成長させるには若年層の取り込みが必要でございます。
　　　　スーパースター！！はNHKでの放映を予定しております」

かのん「再放送じゃなくて最初の放送からNHKなの？！」

孔明　「左様でございます。日曜19時のゴールデンタイムです」

恋　　「裏番組も強そうですね」

すみれ「NHKじゃCM打てないから関連商品の売り上げ落ちないの？」

孔明　「この時間帯に打って出ることでラブライブ！シリーズは一皮剥けたコンテンツとなるのです。
　　　　またNHKと関係を強くすることで紅白への道も見えてまいります」

可可　「なんという深謀遠慮！」

アニメ放映開始後

結ヶ丘女子高等学校
スクールアイドル部 部室


千砂都「アニメ放映開始したけど、イマイチバズってないね」

可可　「第３話のクーカーまでは盛り上がってましたよ！」

恋　　「後半に行くに従って盛り下がってきている様に見えます。
　　　　やはり私の性格設定は少しおかしかったのでは無いでしょうか？」

孔明　「自分の人気を落として敵を欺く「苦肉の計」でございます」

すみれ「視聴者欺いてどうすんのよ」

かのん「私の家のモデルになったカフェとも揉めて炎上しちゃったね」

孔明　「カフェがあの様な対応をしたのは残念です。
　　　　聖地として惜しかったですが切るしかありませんでした」

可可　「泣いてカフェを切るデス！」

恋　　「あれはこちらの対応も悪かったのでは……？」

千砂都「CDもあまり売れてないYo!」

かのん「ネットじゃ強い曲が無いって叩かれてるよね」

孔明　「心配ご無用です。損失を穴埋めする手は既に打ってあります」

可可　「おお！さすが孔明先生！」

孔明　「結ヶ丘購買部でこの縄跳びを4950円(税込)で販売します」

かのん「えっ！？　ただの縄跳びを4950円で？！　あんまりなんじゃない？」

すみれ「しかも原価100円程度のただの既製品の縄跳びじゃない！　作中に出てきたのと色も違うし！」

孔明　「ファンなら何も考えずポチるでしょう」

恋　　「CDシングルを1枚1320円で売っている私達がおもちゃの縄跳びを4950円で売っていいのでしょうか…?」

孔明　「大したことのないものを囮に使い金を得る。
　　　　藁人形を使って矢を得た草船借箭の計の応用でございます」

かのん「そう言えば、今日はライブについて決めないとね」

孔明　「ライブ案も考えております。1stライブツアーは10都市22公演です」

恋　　「そ、そんなに！　ファンがついて来られるでしょうか？」

孔明　「徳が有れば大丈夫です。
　　　　我が君劉備玄徳が新野から撤退する際、君の徳を慕い、民もついてまいりました」

千砂都「今のウチらは悪徳だYo!」

すみれ「ひとつひとつの会場は小さいみたいね。大きい箱でまとめてやった方が良くない？」

孔明　「今疫病が蔓延してますので中止になると損害の大きい大会場は避けた方が得策です。
　　　　また、地方を回ることで今までライブに来れなかった層を開拓する意図もあります」

千砂都「珍しくまともな事言うじゃん」

孔明　「会場数を増やすことでアニメ円盤７巻全てにチケット最速先行抽選申し込み券をつけます」

千砂都「やっぱりエゲツないYo!」www

孔明　「さらに全巻購入特典曲は法人ごとに変えます」

可可　「ハマったら抜け出せない恐ろしい策デス」

恋　　「あら？　北海道公演はAZALEAのライブと被っていませんか？」

孔明　「はい、二虎競食… 、ではなくやむなく被ってしまいました。
　　　　そうそう、こちらがライブ衣装の案でございます」

かのん「あれ？　肩にこんな袖あったっけ？」

すみれ「スカートも長くなってて、常夏衣装なんかもはや別物じゃないの」

孔明　「はい。昨今のフェミニズムに配慮しました」

恋　　「しかしこれまでのスクールアイドルグループも決していやらしい意味ではなく、
　　　　肌を露出してきたと思いますが」

孔明　「時代の流れでございます。私が言うのもおかしいかもしれませんが」

千砂都「これじゃ盛り上がらなそうだなあ」

かのん「アニメ2期制作発表はやっぱりライブでやるの？」

孔明　「いいえ、振り返り上映会で行います」

すみれ「普通は注目されてるライブで発表するものじゃない？」

恋　　「それかTV放映直後とか……」

孔明　「あえて注目されていないガラガラの振り返り上映会で発表することでファンの意表を突くことができます」

可可　「空城の計デスネ！」

恋　　「ファンの意表を突く必要があるのでしょうか…?」

1stライブ後

結ヶ丘女子高等学校
スクールアイドル部 部室


千砂都「ライブツアー疲れたー！」

すみれ「さすがにほぼ毎週ライブは疲れたわね。喉もおかしくなったし」

孔明　「みなさんお疲れ様でございました。みなさんが各地の会場で活躍された様は、まるで一日に千里を走る赤兎馬の様でございました」

恋　　「馬車馬の様に働いたという意味でしょうか…?」

孔明　「みなさんのお働きのおかげで2ndライブツアーも決定いたしました」ﾋﾟｯ

かのん「って、これ再来月からじゃない？！」

孔明　「はい。１ヶ月以上も先です」

かのん「そっかー。結構間が空くね」

すみれ「騙されてんじゃ無いわよ！　２ヶ月後に2ndツアーなんて異常よ」

孔明　「昔から攻めること火の如く、速きこと風の如くと申します」

可可　「アニメ2期までに勢いをつける必要がありマス！」

孔明　「その通りでございます。2期開始までの間にファンミーティングツアーも予定しております」

すみれ「ギャラクシー？！」

恋　　「私たちの疲労もありますが、ファンも疲れそうです」

孔明　「ご心配なく。ファンを飽きさせないための伏兵を用意しております」

可可　「伏兵デスカ？　これぞ孔明の罠！」

孔明　「十面埋伏とまではいきませんが、2期から新メンバーを4人増やします」

すみれ「へ？」

かのん「どういうこと？」

恋　　「デビューから1年この5人で頑張ってきてライブツアーも2回やるのに
　　　　そこからメンバー増やすんですか？」

孔明　「左様でございます。意外だからこそファンも驚きます」

千砂都「私たちも聞いてないんだけど」

孔明　「古より敵を欺くにはまず味方からと申します」

恋　　「……」

恋　　「あの、前からお話したいと思っていたのですが」

かのん「恋ちゃん？」

恋　　「孔明さんが私たちに策を授けてくださるのはありがたいのですが、正直うまくいってる様には思えないのです」

すみれ「確かに」

可可　「何言うんですか！」

孔明　「なるほど……お二人は私とかのんさんの仲が良いので嫉妬されているのですね？」

恋　　「え？　そう言う話ではありませんが…」

孔明　「かのんさんと私の関係は魚と水の様なものでございます」

かのん「えー？」

可可　「水魚の交わりデス！　切っても切れない関係デス！
　　　　可可だって嫉妬してません！」

恋　　「ですが……」

孔明　「今日の軍議はここまでにいたしましょう」

夜
お台場　潮風公園


??「……」

ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ

孔明　「お待たせして申し訳ありませんでした、我が君」

??「久しぶりだね、孔明」

孔明　「はい。我が君もお変わりなく恐悦至極に存じます」

??「して首尾は？」

孔明　「上々でございます。スーパースター！！は盛り上がらず、各種商品の売り上げは虹ヶ咲より下です」

??「そうか、ごくろうさん。さすが孔明だね」

孔明　「赤壁における龐統が如く、私をスーパースター！！陣営に送り込み悪手をさせる計略、お見事でございました。
　　　　さすが「高」の系譜に連なる我が君…」

??「スーパースター！！2期も引き続き頼むよ」

孔明　「御意……」


完

龐統だったのか

自分を孔明だと思い込んでる精神異常者が紛れ込んでると思って読むと面白い

仲達「待てあわてるな」