1: 2008/05/08(木) 21:45:26.20 ID:W2a3wDlFO
キョン「いや、今日はもう寝るわ。疲れた」

長門「……ご飯、作った…」

キョン「悪いな、明日の朝食べる」

長門「……お風呂、沸いてる…」

キョン「明日朝シャワーで済ます」

長門「……………最近、別々に寝てる」

キョン「子供じゃないんだから、一人で寝ろ。…おやすみ」

長門「…………」

長門(………シャツ、アイロンあてないと…)

14: 2008/05/08(木) 21:53:57.62 ID:W2a3wDlFO
長門「…………」

長門(…………仕方ない)ポイッ

長門(……洗いものしてから寝る)



…………………



キョン「ぐがー……」

長門「………寝た?」

長門(……たまになら、横に寝てもいい…)

ギシッ……

長門(………背中、あったかい)

キョン「暑いんだが」

長門「………」

21: 2008/05/08(木) 22:00:11.70 ID:W2a3wDlFO


長門「………」(ユサユサ)

キョン「…うーん……」

長門「……起きて」

キョン「まだ……」

長門(……あと五分だけなら寝かせてあげてもいい)

………………

22: 2008/05/08(木) 22:00:55.68 ID:W2a3wDlFO
………………

キョン「なっ!もうこんな時間か!!」

長門「…………ぁ、朝ご飯」

キョン「この時間じゃ食べられないだろ!!もっと早く起こしてくれ!!」

長門「…………ごめんなさい」

キョン「ったく…。行ってくる」

ガチャッ バタン!!!

長門「…………」

長門(朝ご飯……彼の好きなものなのに)

ポイッ

長門(彼はお仕事頑張ってる……。これは仕方の無いこと…)


27: 2008/05/08(木) 22:10:03.51 ID:W2a3wDlFO


ガチャッ
みくる「いってらっしゃいませぇー♪」

古泉「はっは、僕は公務員ですからね。朝のアニメ劇場を見てから出勤してもまだまだ間に合いますね。あ、ゴミは私が出しておきますよ」

みくる「やーん、いっちゃん優しすぎですよぉー☆」


ガチャッ

長門(今日はゴミの日……)ズルズル

みくる「あら、お隣の長門さん
どうかされました?そんな重そうなゴミ袋を持って」


32: 2008/05/08(木) 22:16:23.84 ID:W2a3wDlFO
長門「今日はゴミの日だから…」

みくる「そうなんですかぁ♪あらら、重そうですねぇ☆」

古泉「こんな重いものを女性に持たせるとはとんだ甲斐性なしですね」

みくる「ほんとほんと」

長門(……彼はお仕事を頑張っている。家のことは私の仕事)

38: 2008/05/08(木) 22:22:36.44 ID:W2a3wDlFO
時計「チッ、チッ、チッ、チッ、チッ」

長門「…………」

長門(もうそろそろ帰ってくる)


ブルブルブル、ブルブルブル

長門(……電話。彼から…)

長門「……もしもし」

キョン『俺だけど』

長門「……ご飯なら出来てる。あなたの好きな」

キョン『俺谷口とのんれんだけろーwwwwwwwwもう一軒いくわwwwwwww』
谷口『おいキョンwwwwwww風俗いこうへwwwwwww』
キョン『ちょwwwwwwwおまwwwwwww電話中wwwwwww』

ブツッ

ツー、ツー、ツー

長門(これもお付き合いだから……仕事のうち)

46: 2008/05/08(木) 22:29:21.76 ID:W2a3wDlFO
>>40 そんなあなたに

キョン「ただいまー」

ハルヒ「ちょっとキョン!!今何時だと思ってんの?」

キョン「会社の付き合いだ。仕方ないだろ」

ハルヒ「会社の付き合い付き合いって…!…もういいわ。ご飯できてるわよ!」

キョン「食って来た」

ハルヒ「はぁ?食ってきたって…!!あたし食べないで待ってたのよ?」

キョン「別に待たなくていいって言ってるだろ。…寝る」

ハルヒ「ちょ、ちょっと待ちなさい!風呂は…」

キョン「うるさい」

ハルヒ「え?」

キョン「人が働いてヘロヘロになって帰ってきてるんだ。ギャーギャー騒がないでもらえるか?…おやすみ」

バタンッ

ハルヒ「…………」


ハルヒ「バブルバスで遊ぼうと思ったのに……」

57: 2008/05/08(木) 22:39:04.58 ID:W2a3wDlFO
キョン「遅刻だ!やばいぞ!もっと早く起こせっていっただろ!!」

ハルヒ「なによ!!あんたが気持ち良さそうに寝てたから…!!」

キョン「ちっ、いってくる!」

バァン!!!

ハルヒ「………なによ…」




みくる「ちょっといっちゃん、隣またやってますよぅ」

古泉「まったく喧嘩以外やることはないのでしょうか。よく飽きないものです」

たかた社長「こちらの商品はですね!!!」

みくる「あ、これ欲しい♪」

古泉「みくるは欲張りさんですね♪(ピポパ)…あーもしもしたかたさん?」

63: 2008/05/08(木) 22:45:27.90 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「……買い物いこうかしらね」

ガチャッ

みくる「あ、おとなりの涼宮さん」

ハルヒ「みくるちゃん…!」

みくる「あらら…。ちょっと駄目じゃないですか!こんなヨレヨレの服着て!」

ハルヒ「あ、あたしはいいのよ」

ハルヒ(キョンにはいいスーツを着てもらわないといけないから…)

みくる「鞄もこれって手作りじゃないですか!女の子はやっぱり良い鞄は一つは必要ですよ?」

ハルヒ「いいのよ……」

古泉「これはこれは、おとなりの涼宮さん。隣人、そして公務員の古泉です」

みくる「あ、おかえりなさい♪」

68: 2008/05/08(木) 22:51:40.62 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「こ、こんにちは。お帰り早いんですね……」

古泉「それはもう。定時上がりが原則の公務員ですから。五時以降は家族との愛を育む時間です」

みくる「恥ずかしいですぅ♪」

古泉「そうだ。ここからダイエーは遠いでしょう。僕が車で送りましょう。僕の愛車のポルポル君(カラーは赤・オープンカー)でね」

みくる「いっちゃんかっこいいです☆」

ブロロロロ…

ハルヒ「………」

73: 2008/05/08(木) 22:55:04.82 ID:W2a3wDlFO
スーパー店員「ありゃしたwwwww」

ハルヒ(…昨日はキョンに悪いことしちゃったから、今日はちょっと奮発しないとね!)
ハルヒ「う……重い……!買いすぎたかしら」

ハルヒ(でも、仲直りするために頑張るわよ!!)

81: 2008/05/08(木) 22:59:39.31 ID:W2a3wDlFO
長門がいいのかい
ちゃんと書きためてるからしばし待たれよ

キョン「ただいま」

ハルヒ「おかえり!…あの、昨日は……」

キョン「昨日?なんのことだ?あぁそうだ。明日早いから風呂入って寝るわ」

ハルヒ「お風呂?ああ、じゃあ私も……」

キョン「一緒に入るって?はは、かんべんしてくれ。新婚じゃあるまいし」

バタン

ハルヒ「…………」

87: 2008/05/08(木) 23:04:41.47 ID:W2a3wDlFO
時計『チッ、チッ、チッ、チッ』

長門「……………」

長門(もう夜中の二時……)

長門「………(うつらうつら)」

………

長門「(はっ)………寝ては駄目…」

長門(彼は疲れて帰ってくる。私だけ先に寝るわけにはいかない)





キョン「やっべ気持ちいいwwwwwww嫁じゃこうはいかんwwwwwwwあwwwwwwwいwwwwくwwwwwww」

102: 2008/05/08(木) 23:12:02.77 ID:W2a3wDlFO
長門「………(うつらうつら)」

長門「(はっ)……寝てしまった」

長門「………」

キョン「ぐがー……」

長門「………おかえり」

キョン「ぐがー……ぐひっ」

長門(…スーツがぐしゃぐしゃ……)

長門「…………」

長門(スーツをプレスしてから寝よう)

104: 2008/05/08(木) 23:17:19.21 ID:W2a3wDlFO


ジリリリリリ

キョン「朝か……ん?」

長門「くー……すー………」

キョン「…………」ユサユサ

長門「……ぅ……朝?」

キョン「飯」

長門「……え?」

キョン「飯は?」

長門「………………まだ」

キョン「じゃあいい。いってくる」

バタンッ!!!

長門「………」

長門(………帰ってきたら謝ろう)

108: 2008/05/08(木) 23:21:57.03 ID:W2a3wDlFO
キョン「ただいま。飯は」

長門「………ごめんなさい、まだ」

キョン「…………チッ」

長門「……………」

キョン「(スーツぬぎぬぎ)」

長門「………風呂は沸いてる」

キョン「……………」

長門「……………?」

キョン「…………」

長門「………(くいっくいっ)」

キョン「……何?」

長門「……セリフ」



ハルヒ「ちょっとキョン!!!真面目にやりなさいよ!!」ぼかっ

キョン「ぐあっ!」

117: 2008/05/08(木) 23:27:34.83 ID:W2a3wDlFO
キョン「……おい、もうやめようぜ。こんなの意味ないって」

ハルヒ「なに言ってんの!あんたたちのためにやってんでしょ!」グイグイ

キョン「ぐお……!ネクタイを引っ張るな!」

古泉「…そうですね、こればっかりは彼に賛成です。シミュレーションとはいえ、あのような役回りはちょっと……」

みくる「私もその……あんな人じゃないです……」

長門「………」


……まぁ、見ての通り、俺たちはこの涼宮ハルヒに馬鹿な寸劇をさせられているのだが、それはなぜかというと、学校の進路希望調査に遡る

121: 2008/05/08(木) 23:31:22.69 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「キョン、あんた進路希望調査書出したの?」

キョン「ん?まだ締切じゃないだろ」

ハルヒ「なに言ってんの!あーいうのはさっさと出しておいたほうがいいの!」

キョン「何も思い浮かばん。会社員とか?」

ハルヒ「……あんたバカ?会社員でもどんな企業の会社員がいいのよ?」

キョン「ん?うーむ、東証一部上場企業とか?」

ハルヒ「………」

125: 2008/05/08(木) 23:35:42.86 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「……あんた駄目すぎるわね。有希、あなたの進路志望調査書見せてあげなさい!」

長門「………(ぺらっ)」

キョン「……えーっとどれどれ?
……家事手伝い?」

長門「………」

ハルヒ「………」

キョン「………」

長門「……家事手伝いはセレブ。本に書いてあった」

128: 2008/05/08(木) 23:37:40.88 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「あ、あのね有希。家事手伝いは職業じゃないの」

長門「……では、自宅警備員とは?」

ハルヒ「………」

ハルヒ「とにかく自宅警備員も家事手伝いも職業には入らないの」

長門「……基準が分からない」

古泉「その二つは何の利益も生み出してないんですよ。まぁ家事手伝いは旦那さんの代わりに家事を全て請負っているという点で利益は生み出していると言えますが、進路志望という観点からは不適切でしょうね。」

長門「………」

131: 2008/05/08(木) 23:39:40.29 ID:W2a3wDlFO
キョン「…とりあえず適当に三校挙げて進学しますって言っていればいいんじゃないのか?」

ハルヒ「だめだめ!夢があって進路があるんだから!文系理系の選択だってあるし」

古泉「そうですね。人生においてのターニングポイントはたくさんありますが、文理選択はその一つと言えます」

キョン「……そーいうお前はもう決めたのか?」

古泉「ええ、もちろん」

135: 2008/05/08(木) 23:42:18.76 ID:W2a3wDlFO
ハルヒ「SOS団の団員である以上は、こーいうのも人並み以上に出来るようにならないとね。
有希とキョンは明日までに職業について研究してくること!」

キョン「なぜそうなる!いきなりは無理だろ」

ハルヒ「まぁ聞きなさい。あんたのノロマっぷりは団長であるあたしが一番把握しているわ」キョン「………」ハルヒ「だから今からここで色んな職業をシミュレートしてあげる」

キョン「……は?」

かくして、この職業シミュレーションとはかけ離れた、馬鹿げた寸劇の幕が開けたのである。



だがこの寸劇が大きな事件の始まりとは、当時の俺は知る由も無かった

そう、今の俺がこの一連の事件を題するならば……涼宮ハルヒの進路指導、とでも言うとしようか。

139: 2008/05/08(木) 23:45:11.77 ID:W2a3wDlFO

ハルヒ「SOS団の団員である以上は、こーいうのも人並み以上に出来るようにならないとね。
有希とキョンは明日までに職業について研究してくること!」

キョン「なぜそうなる!いきなりは無理だろ」

ハルヒ「まぁ聞きなさい。あんたのノロマっぷりは団長であるあたしが一番把握しているわ」

キョン「………」

ハルヒ「だから今からここで色んな職業をシミュレートしてあげる」

キョン「……は?」

かくして、この職業シミュレーションとはかけ離れた、馬鹿げた寸劇の幕が開けたのである。



だがこの寸劇が大きな事件の始まりとは、当時の俺は知る由も無かった


157: 2008/05/09(金) 00:13:18.92 ID:YIxfD2KZO
ハルヒ(…………)

ハルヒ「あ、私用事があるんだった!
有希は大丈夫だと思うけど、キョン!問題はあんたよ!今日のシミュレーションを踏まえてきっちりと進路を決めなさい!」

キョン(……あんなのに意味ないだろ)

ハルヒ「じゃあ、また明日ね!」

バタンッ

みくる「…………はぁ、疲れました」

古泉「慣れないキャラは難しいですね。
それはそうとキョンさんの駄目男ぶり、なかなか見事でしたよ」

キョン「やってて気分が悪いな、あーいうのは」

みくる「それが社会のつらさなのかもしれませんね」

160: 2008/05/09(金) 00:21:41.75 ID:YIxfD2KZO
夜、キョンの部屋にて

キョン「………だめだ。何も思いうかばん」

キョン(結局体良くハルヒに遊ばれただけじゃないのか…?)

キョン「だいたいシミュレートしてるのは職業じゃなくて職に就いた人間の生活じゃないかアレは。
……全く………」

ピンポ~ン

キョン「ん?こんな時間に誰だ?」

162: 2008/05/09(金) 00:25:12.20 ID:YIxfD2KZO
ドタドタドタ……

キョン「はーい」

ガチャッ

長門「………」

キョン「おう長門か。どうした?」

長門「涼宮ハルヒの宿題」

キョン「あぁ、あれが?長門はできたのか?」

長門「……まだ。だからここへ来た。
一人よりも、二人のほうが早い」

キョン「………」

166: 2008/05/09(金) 00:30:25.37 ID:YIxfD2KZO
キョンの部屋

長門「………」

キョン(……親が留守だとはいえ、女の子をこの時間に自室に入れるのはいかがなもなか)

長門「………そろそろ開始めたい」

キョン「あ、あぁ」(まぁ相手はあの長門だし、問題ないか)

長門「………」ドサッ

キョン「おわっ!?なんだこの紙の量は!?」

長門「給与水準等から優れた職業をピックアップした資料。あなたの力になる」

キョン「…そ、それはどうも」

172: 2008/05/09(金) 00:37:05.75 ID:YIxfD2KZO
………

……



キョン(これだけの資料があっても浮かばんもんは浮かばん)

長門「………」

キョン(…潜在意識として働くことを拒否してるのか?)

長門「……私のデータは」

キョン「いや、役に立ってるんだが、俺には荷が重すぎる職業ばかりだ」

キョン「弁護士は給与は高いが、司法試験は狭き門。会計士はそれより難しい。医者なんか生きた人の腹を切るなんてことは俺にはできない」

長門「……そう?」

キョン「あぁ」

長門「……私からも質問がある」

176: 2008/05/09(金) 00:45:15.34 ID:YIxfD2KZO
誤字は脳内で補完してくれ。マジ多いから…
長門「あなたと行なったシミュレート」

キョン「あぁ、あれか。あれが?」

長門「………私の役割だったあの女性は、あなたたちから見るとどう感じるの…?」

キョン「…?
あぁ、そりゃ不幸な女性さ。旦那にあんな扱いされて」

長門「何故」

キョン「何故って……飯作って待ってるのに帰ってきて『いらん』とか言われたり」
長門「………」

キョン「あと、その……女遊びが激しかったり」

178: 2008/05/09(金) 00:50:52.63 ID:YIxfD2KZO
長門「………幸せじゃ……ないの?」

キョン「それはないと思うけどなぁ」

長門「………理解した」

ガタン

キョン「あれ?長門……。帰るのか?」

長門「私が長時間ここにいることは、あなたにとって問題かと思われる」

キョン(………否定はしない)

キョン「進路志望調査、書けてないだろ?いいのか?」

長門「……涼宮ハルヒはあなたをマークしている。私が書かなくてもしばらくは問題ないと推測する」

キョン「……なるほどね」

182: 2008/05/09(金) 00:54:20.00 ID:YIxfD2KZO
キョン「ありがとうな。データ、助かる」

長門「問題ない」

キョン「……送ろうか?夜道は危ないし」

長門「……ここでいい」

キョン「……わかった。じゃ、また明日な」

長門「……(こくん)」

バタンッ

長門「……………」

187: 2008/05/09(金) 01:01:58.24 ID:YIxfD2KZO
次の朝 教室にて

ハルヒ「おはようキョン。早いわね」

キョン「お、おう…」

ハルヒ「進路希望調査、書き終わった?」

キョン「……残念ながら」

ハルヒ「……ふーん。ま、そういうと思ってたわ
……よし、あんたには特別サービスよ」

キョン「何だ?」

ハルヒ「今日の放課後、マンツーマンで進路考えてあげる?」

キョン「はぁ?」

195: 2008/05/09(金) 01:11:13.14 ID:YIxfD2KZO
キョン「いらん」

ハルヒ「いらんって…、これはあんたの問題なのよ?しかも人生を左右するかもしれない問題…。
あんたそれ分かってる?」

キョン「分かってる分かってる」

ハルヒ「分かってないわね」

キョン「…もういいよ。……あんま寝てないんだから騒がないでくれ」

ハルヒ「な!なによ!その言い方…!」


俺机に突っ伏すと、昨日の疲れがあったのかそのまま意識を埋没させた。
俺はどこにでもいる普通の高校生だ。それ以上でもそれ以下でもない。
お前や長門みたいな特別な人間じゃないんだ、ハルヒ。
俺は平凡な職につき、平凡な家庭を築き、平凡な生活を送る。
それでいい。

進路なんて今考えても仕方がない。
この時の俺はそう思った

199: 2008/05/09(金) 01:21:15.22 ID:YIxfD2KZO
俺は眠たい授業をのらりくらりとかわし続け、気付けば放課後だ。
SOS団部室に行くと、パソコンを難しい顔で眺めるハルヒと、窓際で置物のように本をよむ長門。ボードゲームをがちゃがちゃとイジる古泉に、美味しそうなお茶を淹れる朝比奈さん。
なんら変らない毎日の連鎖。このなかに人生のターニングポイントなんてものが存在しているとは全くもって思えない。
俺は思う。つまらない毎日の連鎖はごめんこうむるが、楽しい毎日の連鎖は素晴らしいものじゃないか。
SOS団がくれる非日常。それは迷惑なものだが、正直スリリングなんだ。俺の中で。
連鎖は連鎖でも、楽しい連鎖ならいいじゃないか。
俺はこのSOS団が紡ぐ連鎖の中に、ずっといたい。




ハルヒ「………!」ガタン

キョン「…どうした、急に立ち上がったりして」

ハルヒ「…私、用事があるんだったわ!」

201: 2008/05/09(金) 01:27:27.81 ID:YIxfD2KZO
キョン「ま、またかよ!」

ハルヒ「ごめん!あたし帰るね!」

古泉「はい、お気をつけて」

ハルヒ「あとキョン!」

キョン「うん?」

ハルヒ「明日暇でしょ?」

キョン「あぁ」

ハルヒ「じゃあ明日図書館に来なさい!
進路指導してあげるわ!!」

キョン「行かんぞ」

ハルヒ「図書館前に11時に集合ね!」

キョン(休みの日にハルヒに絞られにわざわざ図書館まづ行くやつがどこにいるんだ)

ハルヒ「あたしは行ったわよ!じゃ、急いでるから!」

バタンッ

キョン「俺は行かんって言ったからなー!?」

204: 2008/05/09(金) 01:33:32.45 ID:YIxfD2KZO
キョン「……なんであいつはあんなにも勝手なんだ」

古泉「それが彼女の魅力でもありますね」

キョン「……ごめんだね」

みくる「……それにしても涼宮さん」

キョン「ん?」

みくる「すっごく眠そうにしていたような……」

長門「………」

みくる「あ、あの、パソコンで何してらっしゃいましたけど……」

長門「………(じーっ)」

みくる「!……い、いえ、なんでもありません…」

キョン(図書館…か)

206: 2008/05/09(金) 01:41:59.98 ID:YIxfD2KZO
次の日

キョンの妹「キョンくーん!おひるだよー!」

キョン(……お昼?)

キョンの妹「おーきーてー!」

どすんどすん!!

キョン「ぐおあ!……は、腹の上で……」

キョン(そうだ、今日は休日か………ん!?)ガババッ

キョンの妹「ひゃあ!」

時計「チッ、チッ、チッ、チッ」

キョン(まだ朝の10時か……。
いまから光の速さで準備すればまだハルヒとの約束に……)

キョンの妹「キョンくんいーたーいー!急に起きないでー!」

208: 2008/05/09(金) 01:47:40.81 ID:YIxfD2KZO
キョン(いや、でも俺…約束はしなかったよな…?)


キョン(そうだ。あいつがいつものように勝手にとりつけただけじゃないか)


キョン(行く義務はないよな……)


キョン「……寝る」ドサッ

キョンの妹「ちょっと、キョンくーん!」

キョン「まだ昼まで二時間あるだろ?二時間たったら起こしてくれ」



俺のターニングポイントはまさに、この時だった

212: 2008/05/09(金) 01:52:05.79 ID:YIxfD2KZO
………

……



時計「チッ、チッ、チッ、チッ」

キョン「…………」

キョン(………気になって寝れん)


キョン(……12時か。
ハルヒのやつ、帰ったのかな?)

キョン(………)

キョン(………)

キョン(………)

バッ、ババハッ



キョン「いってきまーす」


213: 2008/05/09(金) 01:55:33.89 ID:YIxfD2KZO
チリンチリン…!

キョン(自転車で飛ばせばなんとか……って)

キョン「……じゃあ初めから行けばよかったのか」

キョン(………まぁいいか。ハルヒよ。昼飯くらいは甘んじて弾んでやる)

…………

………

……


217: 2008/05/09(金) 02:00:57.04 ID:YIxfD2KZO
図書館前にて

キョン「着いたぞ!…ん?」

ザワザワ……ドヨドヨ……

一般人A「ひどいもんだわ」
一般人B「……可哀想に…」

警察官「こら!あんたら!下がりなさい!ブルーシート!ブルーシート!!」

救急隊員「はいはーい!邪魔になるんで下がって下さーい!!」



キョン(なんだなんだ?事故か?物騒だな……)

キョン「っと、こうしちゃおれん」

スタスタスタ……

225: 2008/05/09(金) 02:03:39.97 ID:YIxfD2KZO
自動ドア『ウィーン』

キョン(ふう、冷房がきいてて気持ちいいじゃないか。
……さて、ハルヒは…)キョロキョロ

キョン(見当たらんな。奥の方か?)

228: 2008/05/09(金) 02:07:10.94 ID:YIxfD2KZO
………

……



キョン「おかしいな…。だいたい探したハズなんだが……ん?」



キョン(これ…ハルヒの筆箱だ)

キョン「あと、なんだ?この大量の紙。……何かのデータっぽいが…」


230: 2008/05/09(金) 02:13:16.79 ID:YIxfD2KZO
キョン(………それに、なんだこれ)

キョン「『夢をつかむ!なりたい職業百選』。『高校生から考える、僕の進路』…。」

キョン(………!ってことは……)


散らばったプリント。
それは給与や待遇などの水準から見た、良い職業のリストだった。
でもそれは長門の作ったリストのような整然としたリストではない。
ところどころ誤字があったり、そしてハルヒ本人のものと思しき字で「要チェック!」などと書いてあった

236: 2008/05/09(金) 02:18:26.52 ID:YIxfD2KZO
キョン(あいつ…こんなことを……)

キョン「でも当の本人は一体」


ン……


キョン「何処」


クン……


キョン「二」


ドクン……


キョン「イッタんだ?」

自動ドア「ウィーン」

「キョーン!!」

249: 2008/05/09(金) 02:45:37.70 ID:YIxfD2KZO
谷口「キョン!!なにやってんだこんなとこで!」

キョン「谷口…。お前こそ慌ててなにやってんだよ」

谷口「いますぐこい!お前、すぐそこで涼宮が」

キョン「ハルヒが?」

谷口「トラックと


俺はそこから何をきいたか覚えていない。
ただ図書館を出て目に入った光景を見て、意識が遠のいたのは覚えている。


アスファルトを染めている赤い血は誰のものだ?
考えたくもない。目を逸らしたい。

朦朧とした意識をムチうって、俺は全速力で病院へ向かった。

254: 2008/05/09(金) 02:50:59.29 ID:YIxfD2KZO
タッタッタッタ……バァン!

医師「こらこら、そんなドアを勢いよく開けては」

キョン「は、ハルヒ!!」

医師「……ん…?」

キョン「は、ハルヒはどこなんだ!知ってるのか!?ハルヒは!?」ガバッ

医師「ぅ……く……お、落ち着いて下さい!」

キョン「(はっ)…あ、す、すみません……」パッ

医師「………ゲホッ、ゲホッ…。……ハルヒさんとは、涼宮ハルヒさんのことでしょうか?」

キョン「……はい!」

257: 2008/05/09(金) 02:54:40.75 ID:YIxfD2KZO
眠くなるまでいきます


医師「……先ほどこちらの病院に運ばれました。今、手術中です」

キョン「……ここで」

医師「………はい?」

キョン「………ここで待たせてもらっていいですか」

医師「……恐らく、深夜になると思いますが……。それでも待ちますか?」

キョン「……いつまでも待ちます…っ」


261: 2008/05/09(金) 02:59:36.10 ID:YIxfD2KZO
夕方、手術室前にて

キョン「…………っ……!」

タッタッタッタ…

みくる「キョンくん!」

古泉「図書館に置きっ放しだった荷物を持ってきました。
……涼宮さんは?」

キョン「…………」

古泉「………あの」

谷口「まだ、なにも聞かされてねぇ」

長門「………」

古泉「そうですか……」


みくる「……キョンくん…」

264: 2008/05/09(金) 03:05:04.85 ID:YIxfD2KZO
ガチャン……

みくる「キョンくん、手術中のランプが消えましたよ」

キョン「…!」(終わったのか!?)


ガチャ…

執刀医「………」

キョン「(!!)あ、あの、先生…!」

執刀医「……お友達の方ですか。……申し訳ありませんが両親の方から先に説明させて頂きますね。あなたがたはその後という形で」

キョン「いや!待ってくれ!!だめだ!まず……」

古泉(がしっ)「いえ、僕たちは後で」

キョン「古泉っ!
お前…!!離せよ!!」


執刀医「………失礼します」

269: 2008/05/09(金) 03:12:02.63 ID:YIxfD2KZO
俺の体は騒いで見せるが
俺の脳はその現実を受け入れたくないのか、
この状況がまるでリアリティがないように感じる

いや、わかるんだ。おれの頭はよく出来てるよ。
そうだ。この現実を受け入れたら、きっと俺は……。




この日から、俺の生活はがらりと一変した。
そう、まさに人生のターニングポイント。




271: 2008/05/09(金) 03:13:18.59 ID:YIxfD2KZO







月日は流れる
「あの日」から一か月……








277: 2008/05/09(金) 03:18:39.87 ID:YIxfD2KZO


……

………

…………

タッタッタッタ…!

受付「あら、キョンくん。こんにちは」

キョン「こんにちは。涼宮ハルヒの面会なんですが」

受付「はい」

キョン「……あの、あいつ……」

受付「……?」

キョン「部屋でおとなしくしてますかね?」

受付「あぁそのことですか!キョン君、部屋であなたのことを待ってますよ」

キョン「すみません、ありがとう御座います!」


285: 2008/05/09(金) 03:23:47.98 ID:YIxfD2KZO
受付B「…………」

受付A「……また来たの?あの子」

受付B「はい」

受付A「ハルヒはいますか、って?」

受付B「……えぇ」

受付A「………健気ね。あの子が部屋から出ることは……」

受付B「先輩」

受付A「………」

受付B「それ以上は、どうか……」

受付A「……ごめんなさい」

291: 2008/05/09(金) 03:26:51.24 ID:YIxfD2KZO
ガラガラガラッ!

キョン「ようハルヒ。今日も来たぞ」

ハルヒ「」

心電図『ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、』

呼吸器『シュー……コー……』

キョン「今日はな、綺麗な花を持って来た。SOS団みんなで探したんだ」

ハルヒ「」

キョン「良い匂いだぞー!」

ハルヒ「」

キョン「……お前花粉症だっけか?」

ハルヒ「」

キョン「んなわけないか。はははw」

299: 2008/05/09(金) 03:31:44.03 ID:YIxfD2KZO
…………

………

……


ハルヒの親とあの執刀医の話が終わったあと、俺たちも話を聞いた。
執刀医は「手はつくしましたが」と言葉を濁した。はっ、馬鹿いえよ藪医者め。医者ってんなら人間の一人や二人救ってみろよ。
そう思ったねあの時は。だけどその人は何時間も汗だくになりながらも集中してハルヒを助けてくれようとした人だ。

祈ることしかできない無力な俺に代わって…

316: 2008/05/09(金) 03:49:52.67 ID:YIxfD2KZO
俺たちSOS団はローテーションを組んでハルヒの看病をした。ハルヒの親にはひどく感謝されたが、俺には感謝の言葉には聞こえてなかった。…いや、ハルヒの親は感謝の気持ちを表していたんだろうが、受け手の俺がどうかしてたから…。

図書館司書の話によるとハルヒは11時には図書館についていたらしかった。そしてひとしきり調べもの(恐らく進路の資料の整理だろう)をしたあと、すっと図書館を後にしたらしい。

ハルヒは何度も時計を眺めていた。
……俺と待ち合わせの時間を気にしていたんだろう

これを聞いたとき、急に俺の足に力が入らなくなったのを覚えてる。
覚えていたくもない。…でもそれが現実。
覚えていなくてはならない。俺の最大の、一番してはいけない失敗だった。

322: 2008/05/09(金) 03:57:02.11 ID:YIxfD2KZO
俺たちは来る日も来る日も眠り続けるハルヒに話しかけた。
寝ているハルヒを見るといきなり起きだして「今日も不思議を探すわよ!」とか言い出しそうな気がして、ひたすら話しかけた。まるで病人の気がしない。……ハルヒへ伸びる禍々しい医療機器どもの管やコードが目に入るまでは。


ハルヒは良い夢を見てるのか悪い夢を見ているのかすら分からない、いつも変らぬ表情で眠り続ける。でもきっと俺たちの声はとどいてるよな。なぁ、団長。


俺たちはお前が目をさますまでずっとこうやってるよ。ずっとだ。だから早く起きろ。


楽しいことの連鎖。ずっと繋がっていくんだ。SOS団の連鎖は。
だが……俺が信ずるそんなささやかなものも、脆くも崩れ去るのだ。

324: 2008/05/09(金) 04:00:50.89 ID:YIxfD2KZO
>>314
描写が足りんかな?映画をとったあとです

病院、廊下にて

キョン「……なんだって?」

古泉「ですから、涼宮さんがこの状態なので僕はしばらく内勤に回されることが機関の上の意向で決定しました」

キョン「…………」

古泉「不本意ですが、今日でみなさんとお別れです」

キョン「…………」

古泉「それでは、お世話になりました」

326: 2008/05/09(金) 04:05:09.42 ID:YIxfD2KZO
キョン「………それだけか」

古泉「……はい?」

キョン「言いたいことはそれだけか?」

古泉「…………」

キョン「うおああああっ!!」

古泉「!!!」

ガラガラガッシャーン!!

キョン「おおあ!この!この野郎!!」

ガッ!ガツッ!

古泉「………ぐっ!………ぐぁ……くっ!……」

331: 2008/05/09(金) 04:10:18.02 ID:YIxfD2KZO
医師「君達!やめなさい!」(がしっ)

キョン「…はぁ、はぁ……」

古泉「…………」(ヨロ…)

キョン「…反撃も防御もなしかい」

古泉「………僕にはあなたを殴る権利も、いや、その拳を防ぐ権利すらありません」

キョン「………っ!」

古泉「こんな形でお別れとは………残酷なものです」

キョン「顔あげやがれ……!もう一発殴ってやる…!」

医師「や、やめなさい!」

古泉「……それでは、さようなら」

キョン「待て!!逃げんのか!!」

古泉「……あなたは」

キョン「…!?」

337: 2008/05/09(金) 04:16:18.64 ID:YIxfD2KZO
古泉「……信じてもらえないかもしれませんが……」

キョン「……?」

古泉「……幼少のころから機関に属していた私の、初めての友人といえる存在でした」

キョン「…!」

古泉「……そんな人達をおいて、私は」

キョン「言い訳なんかするな!!」

古泉「…………」

キョン「……ハァッ、……ハァッ、…」

古泉「………失礼します」

スタスタスタ……


キョン「………畜生」

医師「あの、大丈……」

キョン「馬鹿……野郎……」

345: 2008/05/09(金) 04:21:16.01 ID:YIxfD2KZO
ハルヒ「」

人口呼吸器「シュー……コー……」

キョン「………ようハルヒ」

ハルヒ「」

キョン「さっき古泉と喧嘩したんだ」

ハルヒ「」

キョン「あいつがわけわからんこと言うもんだからぶん殴ってやった」

ハルヒ「」

348: 2008/05/09(金) 04:23:15.33 ID:YIxfD2KZO
キョン「ははは」

ハルヒ「」

キョン「はは………は…………」

ハルヒ「」

キョン「…………うっ……うぅ……」



……不幸ってのは、続いてくるもんだ。
まるで数珠のように、ジャラジャラと

古泉のやつがあんなことを言い出したんだ。
頭の良くない俺にだってわかる。

その予感は、古泉が消えた数日中に的中する。

352: 2008/05/09(金) 04:26:27.69 ID:YIxfD2KZO
みくる「……キョンくん」

キョン「何ですか?」

みくる「大切なお話があります」

キョン「………愛の告白だったらすごく嬉しいです」

みくる「…………」

キョン「……だいたい分かります」

みくる「……本日付でここを離れなくてはならなくなりました」


354: 2008/05/09(金) 04:29:26.65 ID:YIxfD2KZO
キョン「……訳すら教えていただけませんか?」

みくる「ごめんなさい……禁則事項なんです」

キョン「…………」

キョン「俺は今までSOS団ってのは任務とか組織とか機関とか……
根っこの部分はそういうのナシで集まってる、仲間だと思ってました」

みくる「…………はい」

キョン「……なんか俺、裏切られた気分です」

みくる「……………」

355: 2008/05/09(金) 04:30:28.71 ID:YIxfD2KZO
キョン「分かりました。これからは俺と長門でローテーション組みますんで」

みくる「…っ!あ、あのっ!」

キョン「…………なんですか?」

みくる「えっと……その………」

キョン「……………」

みくる「…………」

キョン「……俺、ハルヒのとこ行かなくちゃならないんで」

ッカツカツカ…

みくる「………………」



みくる「………最低ですね、私って……」

360: 2008/05/09(金) 04:36:26.73 ID:YIxfD2KZO
病院、深夜、廊下にて

キョン「…………」


ツカツカツカ……


長門「……なにをしているの?」

キョン「…………」

長門「………ここで寝るのは風邪をはじめとする症候群に冒される危険がある」

キョン「…………寝ないさ」

長門「…………?」

キョン「寝れない。不安で不安でたまらなくて……」

366: 2008/05/09(金) 04:42:31.75 ID:YIxfD2KZO
キョン「……みんなSOS団から消える夢を見るんだ」

長門「…………」

キョン「古泉が消えて、朝比奈さんが消えて、長門が消えて……
んで……………」

長門「…………?」

キョン「……こっから先は言いたくない」

長門「……あなたが不安になるなら、言わないほうがいい」

キョン「………あぁ」


長門「私は消えない」

キョン「……!」

長門「ずっと、あなたたちのそばにいる」

キョン「………」

長門「ずっと」

キョン「な………が…と…………」

キョン「zzz...」

373: 2008/05/09(金) 04:50:03.00 ID:YIxfD2KZO
俺と長門は二人で看病を続けた。くる日もくる日も。
いつか、ハルヒが元気に起きることを信じて
それが、ちょうど事件から一か月の日だ


タッタッタッタ…!

受付「あら、キョンくん。こんにちは」

キョン「こんにちは。涼宮ハルヒの面会なんですが」

受付「はい」

キョン「……あの、あいつ……」

受付「……?」

キョン「部屋でおとなしくしてますかね?」


376: 2008/05/09(金) 04:53:31.13 ID:YIxfD2KZO
ガラガラガラッ!

キョン「ようハルヒ。今日も来たぞ」

ハルヒ「」

心電図『ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、』

呼吸器『シュー……コー……』

キョン「今日はな、綺麗な花を持って来た。SOS団みんなで探したんだ」

ハルヒ「」

キョン「良い匂いだぞー!」

ハルヒ「」

キョン「……お前花粉症だっけか?」

ハルヒ「」

キョン「んなわけないか。はははw」



キョン「…なぁ!長門!」

長門「……(こくん)」

378: 2008/05/09(金) 04:57:00.31 ID:YIxfD2KZO
そうさ。SOS団の団員は今や二人だけ。でも今のハルヒには知らなくてもいいことだ
俺は……実のところ、古泉や朝比奈さんがいなくなって寂しい。だがな、お前は寂しがる必要はないぞ。
お前が元気になった暁には、閉鎖空間の一つでも作ってやって、悠々自適にデスクワークしてやがる古泉を引っ張りだしてくればいい。それだけだ。
朝比奈さんもぶったまげて今の仕事をほっぽりだして来てくれるだろうぜ




……そん時は俺も二人に謝るよ。





389: 2008/05/09(金) 05:04:49.95 ID:YIxfD2KZO
そこからが長かった。俺は教師のはらかいで無事に三年生なった。ハルヒもいっしょだ。

そして花見シーズン。病床から見える桜も綺麗だった。

ゴールデンウィーク。俺は嬉しかった。ハルヒの看病に専念できるから。

そして梅雨の時期………


月日は流れる。無情なほど早く


そして俺たちの中でも何かが変わったのかもしれない
そんな時期の話だ





391: 2008/05/09(金) 05:06:05.97 ID:YIxfD2KZO
キョン「………(うつら、うつら)」

長門「……寝てるの?」

キョン「(はっ!)…い、いや、起きてる!」

長門「……あなたには休息が必要」

キョン「んなわけあるか。元気バリバリだぞ」

長門「……」

キョン「はっはっは!」

長門「……今日は私にまかせて」

キョン「今日は俺の番だ」

長門「あなたはほとんど毎日来てる。何か月も前から」

キョン「それは長門もだろ」

393: 2008/05/09(金) 05:08:13.46 ID:YIxfD2KZO
キョン「それは俺が勝手にやってるだけだ」

長門「……駄目、休んで」

キョン「……放っておいてくれ…!」

長門「……!!」

キョン「………ごめん」

長門「………問題ない」

キョン「…………」

長門「…………」

キョン「なぁ長門」

長門「………何?」

キョン「…ハルヒは、お前の力でなんとかならないのか?」


俺の中で、何かが壊れた

394: 2008/05/09(金) 05:15:21.90 ID:YIxfD2KZO
長門「……それはできない。私の任務は涼宮ハルヒの観察。こちらからの極度の関与は宇宙にとって致命的な歪みを発生させる可能性があるため、禁止されている」



俺はやっぱりなと思うと同時に大きな失望感を覚えた。
それは長門がハルヒを元気にさせることができやかったから?違う。
俺は自分に失望したんだ。また俺は長門に頼った。他力本願。……己の無力さに失望したんだ。
あの執刀医の話を聞いた時の感覚……。

395: 2008/05/09(金) 05:16:49.55 ID:YIxfD2KZO
ねみぃいいいいい!!!
多分文おかしい


そのころからだったか。心にどす黒いものが住み着いたのは。


夜、寝るとき奴は俺にささやくんだ。
「もういいだろ」「無駄だ」って。

俺ははなっから長門に頼りっ放しだったんだ。そのとき理解した。
ハルヒだって長門がその気になれば……


何かが崩れた。その何か。
心の支えだった。
その支えが長門だったなんて。
自分で自分を失望するのもわかる気がするよ

398: 2008/05/09(金) 05:19:54.88 ID:YIxfD2KZO
ガチャッ…

キョン「ただいまー…」

シャミセン「……にゃ」

キョンの妹「キョンくんおかえり!ご飯食べるー?」

キョン「いい…。とりあえず寝る」

キョンの妹「……あ、ぅ、うん……」

シャミセン「……くるるる……」

俺はまるで力の入らない足をひきずるような足取りで自分の部屋に行き、ベッドに倒れこんだ。
布団に顔を突っ込んだ瞬間、疲れがどっと体の奥から滲みだして来て、俺はあがなうことなく深い眠りの闇に落ちていった。

399: 2008/05/09(金) 05:21:40.12 ID:YIxfD2KZO
キョンの妹「キョンくーん!朝だよー!」

どすんどすん

キョン「(う……)」

キョンの妹「あーさーだーよー!!」

どすんどすん

キョン「わ、分かった分かった…。分かったからやめてくれ」


401: 2008/05/09(金) 05:23:19.25 ID:YIxfD2KZO
>>397
無茶いうなw


キョンの妹「あ、そうだ!キョンくん宿題できてないよ!」

キョン「なにが?」

キョンの妹「このプリント、今日ていしゅつ!」

キョン「うん?どれどれ…。
……ってこれは宿題じゃないじゃないか」
キョンの妹「でも今日ていしゅつって……」

キョン「それは進路志望調査のプリントだ」

キョンの妹「出さなくていいの?」

キョン「構わん。
……学校行ってくる」

キョンの妹「……はーい」

568: 2008/05/09(金) 18:28:06.06 ID:YIxfD2KZO
すまん>>1

今バイトの休みジガンなんだが
10時ぐらいにバイト終わるからそっから投下でいいか?

628: 2008/05/09(金) 22:39:31.91 ID:YIxfD2KZO
数学教師「だからなー、この数列がこうなってだなー!」

キョン(………ハルヒ……)

キョン「………」

キョン(………気になって授業もまともに……)

…コツッ!

キョン「いてっ!?………なんだ?消しゴム?」

谷口(……お前あてられてんぞ!答えろ!)

キョン「……え?」



634: 2008/05/09(金) 22:41:39.74 ID:YIxfD2KZO
数学教師「……(じーっ)ビキビキ」

クラスメート「………(じーっ)」

キョン「あ、いや、その……わかりません。聞いてませんでした」

どッ…!!

数学教師「はぁ、お前高校生にもなってまだ廊下に立たされたいのか?」

キョン「いえ、すみません……」

数学「……顔洗ってこい」

キョン「…はい」

637: 2008/05/09(金) 22:48:18.26 ID:YIxfD2KZO
キョン「………(ぼーっ……)」

ハルヒ「…」

長門「…………」チラッ

時計「チッ、チッ、チッ、チッ」

長門(………そろそろ)

長門「………(くいっくいっ)」

キョン「……んぁ?どうした長門?」

長門「………夕ご飯」

キョン「……俺はいい。ここにいる」

長門「………体に悪い」

キョン「…………」

長門「………無理にでも、連れて行く」

キョン「…………」

639: 2008/05/09(金) 22:50:27.15 ID:YIxfD2KZO
ウェイター「いらっしゃいませ。2名様でよろしいですか?」

キョン「はい」

ウェイター「おタバコは…?」

キョン「吸わないです」

ウェイター「では、こちらに」


642: 2008/05/09(金) 22:55:35.08 ID:YIxfD2KZO
キョン「……ファミレスなんで久し振りだなぁ。ちょうど一年振りくらいか」

長門「……(こくん)」

キョン「みんなで色んなとこで飯食べたよな」

長門「…………」

キョン「…あ、あぁー、すまん。あ、好きなの食べるんだぞ」

長門「……(こくん)
……じゃあ、五目チャーハン」

キョン「……ん?それだけでいいのか?」

長門「……大丈夫」

キョン「そっか、んじゃ俺は……」

キョン(……………)

キョン「コーヒーでいいや」

長門「駄目…!」

645: 2008/05/09(金) 22:58:40.13 ID:YIxfD2KZO
キョン「あ、あんまり腹へってないんだ……」

長門「あなたは昼も食べていなかった。ちゃんと食べないと、駄目」

キョン「……………」

長門「……あなたまで病気になる」

キョン「…わかったよ。じゃあ俺はオムライスにする」

長門「……(こくん)」

648: 2008/05/09(金) 23:03:23.01 ID:YIxfD2KZO
ウェイター「おまたせしました。オムライスと五目チャーハンです。
オムライスの方は…?」

キョン「……(ぼーっ)」

ウェイター「…?あ、あの」

キョン「(はっ)…あ、」

長門「五目チャーハンが、私」

ウェイター「かしこまりました」ゴト…


キョン「や、やっと来たな!さ、食べろ、長門」

長門「……あなたは?」

キョン「え?あ、あぁ……食べるよ」

キョン(…………)

652: 2008/05/09(金) 23:07:59.03 ID:YIxfD2KZO
長門「………頂きます」

キョン「…………」

長門「………(ムシャムシャ)」

キョン「………(チビチビ)」

長門「…入らない?」

キョン「そ、そんなわけないだろ。い、いただきます!ハムッハフ!バクバク」

長門「……」



ぐにゃあっ……!



キョン(う……!!)

653: 2008/05/09(金) 23:10:24.82 ID:YIxfD2KZO
キョン「う……ぐ…………!!」

長門「!!!」ガタンッ



キョン「おぅ、おええぇええ!!!!」

ウェイトレス「きゃあああ!!」

長門「…大丈夫…!?」

660: 2008/05/09(金) 23:14:56.81 ID:YIxfD2KZO
キョン「おぇえっ!ぺっ!!げほっ!!!」

ウェイター「いかがなさいました!?大丈夫ですか!?」

キョン「ごほっ…!い、いや、ごめんなさい。なんでもないです…」

ウェイター「すぐ、布巾を持って来ますので!」

キョン「……すみませ…げほっ!!」


長門「………!」

キョン「お、おかしいな……。腹はへってるんだが……ぅ…!おぇ……」

長門(………まずい)




664: 2008/05/09(金) 23:21:14.23 ID:YIxfD2KZO
………

……



ウェイター「ありがとうございましたー」
ガランガラン…


キョン「すまんな、汚いもの見せちまって」

長門「……問題ない」

キョン「んじゃ、ハルヒんとこにもどるか」

長門「………待って」

キョン「…?」

長門「あの公園で、休憩したい」

キョン「もう暗くなるぞ?」

長門「お願い」

キョン「………」

667: 2008/05/09(金) 23:25:45.66 ID:YIxfD2KZO
夜、公園にて

キョン「……夏直前とはいえ、夜はすずしいもんだね」

長門「……(こくん)」

キョン「あのベンチに座るか」



ドスン… トスン…

キョン「ふう……」

長門「………(くいっくいっ)」

キョン「なんだ?」

長門「…………大切な話がある」

キョン「なんだよ、あらたまって?」







長門「明日からもう来ないで」

671: 2008/05/09(金) 23:28:50.67 ID:YIxfD2KZO
さて、風呂にいく時間をくれ。
もしかしたらちょっとだけ1000オーバーするかもしらぬ

685: 2008/05/09(金) 23:44:36.10 ID:YIxfD2KZO


長門「…………あなたは抜けて」

キョン「……あ?」

長門「……あなたをこれ以上涼宮ハルヒのそばにおいておくわけにはいかない」

キョン「…………どういうことだ?」

長門「………」

キョン「……理由を言え」

長門「あなたの精神と肉体は、もう崩壊寸前」

キョン「………」

長門「……食事もろくにうけつけていない」

690: 2008/05/09(金) 23:48:24.33 ID:YIxfD2KZO
長門「…食事はいつからとってないの?」

キョン「知らん」

長門「…………」


長門「……この一連の事件であなたはもう疲弊しきっている」

キョン「…………」

長門「……特にあなたの精神は、もうボロボロ。拒食症の兆候も出ている」

キョン「…………」

長門「あなたまで大変なことになる」

キョン「…………」

長門「お願い」



長門「…………あなたはもうこないで」

694: 2008/05/09(金) 23:53:30.16 ID:YIxfD2KZO
キョン「…………嫌だ」

長門「駄目」

キョン「明日は俺の当番だ。長門は来なくていいからな」

長門「駄目」

キョン「よーし!飯も食ったし戻ろうか。ハルヒも一人じゃ寂しいだろうしな!ははは」

長門「駄目…!」ガシッ

キョン「……離してくれ」

長門「駄目…!」ギュ

キョン「離せよ!!」ぶんっ

長門「!!」

701: 2008/05/09(金) 23:59:20.17 ID:YIxfD2KZO
長門「……っ!」ドサッ


キョン「…………ぁ……」

長門「………平気」

キョン「す、すまん…!…な、なにやってんだ俺は…!」

長門「大丈夫。……問題ない」

キョン「も、問題ないって、あ、アザが……」

長門「……本当に平気」


長門「でもここまで抵抗があるとは、予想外」

キョン「…………」

長門「…………」




長門「………涼宮ハルヒはもう助からない」


714: 2008/05/10(土) 00:04:51.82 ID:X5xL4IH0O



長門「………彼女はずっとあの状態のまま、生涯を終える。それはもうほぼ間違いない」



長門「彼女の今の状態は脳氏状態」



長門「……体だけが生きている状態。機械を使って」



長門「…………氏んだものは」



長門「……………蘇らない」

721: 2008/05/10(土) 00:07:55.75 ID:X5xL4IH0O








キョン「……………」











キョン「……………そうか」







長門「…………その反応も、予想外」

730: 2008/05/10(土) 00:11:19.12 ID:X5xL4IH0O
キョン「………こころのどこかで予防線……、いや、整理をつけてたのかもしれない」

長門「……整理を………つけていたの?」
キョン「………あぁ」




……多分分かっていたんだ。頭の中では。
ハルヒは助からないって。
ただ、考えようとしてなかっただけだ。


ほら……思い出してきた…………

738: 2008/05/10(土) 00:17:49.50 ID:X5xL4IH0O
記憶の海の中に、重しをつけて沈めた記憶。
二度と思い出したくもないから、俺は沈めた。
深く、深く……!



谷口「涼宮がトラックに跳ねられたんだよ!!」

キョン「な、なにを言って……!?」

谷口「カーブを猛スピードで入ってきたトラックに……!!」

キョン「え、演技でもない冗談はよせよ!!」

谷口「早く病院へ行ってやれ!!俺はお前のダチに連絡いれておいてやる!!」

キョン「……!!」

谷口「だから携帯を置いて…!!あ、おい!待て!!」

745: 2008/05/10(土) 00:22:38.00 ID:X5xL4IH0O



執刀医「………手はつくしましたが」

古泉「………」

執刀医「………ほぼ、延命措置と言っても差し支えありません」

みくる「………」

執刀医「………………回復はほぼ絶望的です」

長門「………」

執刀医「…………気長に、頑張りましょう」

キョン「………」

執刀医「………奇跡を、信じて……」

751: 2008/05/10(土) 00:28:21.52 ID:X5xL4IH0O
キョン「ただ、俺は現実から目を背けてただけか……」

長門「………」

キョン「心の隅では分かってたんだよな。奇跡なんておきないんだって」

長門「………」

キョン「奇跡なんてハナから信じてなかったんだ。俺は…」



長門「………そう」







長門「………じゃあ」




長門「………何故、泣いているの?」

キョン「…………………ぅっ……!……ううぅ………」

754: 2008/05/10(土) 00:32:43.04 ID:X5xL4IH0O
長門「何故、泣くの……?」

キョン「俺は……なにもあげてないんだ」

長門「………?」

キョン「もらいっぱなしだった…!くだらないSOS団の活動も!!夏の思い出も!!鍋だってしたよな……!!あれだってそうだ!!楽しい時間も!仲間を思う気持ちも!!!……俺はもらいっぱなしだった……!!」

長門「…………」

キョン「……飽食してたんだ。惰性でダラダラと……」

長門「…………」

762: 2008/05/10(土) 00:38:06.82 ID:X5xL4IH0O
キョン「………俺はありがとうって言ってないんだ」

長門「………」

キョン「馬鹿げてるけど、こんなにも楽しい生活をくれるあいつに…」

長門「………」

キョン「涼宮ハルヒに、まだ一言も礼を言ってないんだ」

長門「………」

キョン「………だから、ちょっとだけ」



キョン「…………本当は、ちょっとだけ、奇跡を信じた」


キョン「あいつに、ありがとうが言いたいから……」

769: 2008/05/10(土) 00:42:27.77 ID:X5xL4IH0O
キョン「………奇跡ってのは99%のなかの1%だよな。……だから無くて当然なんだけど」




長門「……………」




キョン「その1%がなくなることが、こんなにも不安………うっ……………なんて……………っ……!」




長門「……………」




長門「………あなたがくれたものはたくさんある」

773: 2008/05/10(土) 00:46:22.82 ID:X5xL4IH0O
キョン「…………!」

長門「今の私は、たくさん持ってる」

キョン「…長門………」

長門「たくさん」

キョン「………やめてくれ。身のないフォローなんか……」

長門「……違う…!!」

キョン「……!!」

長門「…………あなたはたくさんくれた」





長門「……何もない私に、感動をくれた」





788: 2008/05/10(土) 00:52:13.04 ID:X5xL4IH0O
長門「……あなたに見て欲しいものがある」

キョン「………?」

長門「…………これ」


渡されたのは、忘れもしないあの用紙。……俺の運命を変えたあの紙だ
一年前渡された、第一回目進路志望。風化で少し色褪せていたが、これを見まがうことはない

795: 2008/05/10(土) 00:57:20.59 ID:X5xL4IH0O
俺は風化した紙に目を落とす



そこには長門特有の、あのパソコンで打ったような文字はなかった。


一見すれば長門のいつものあの文字だ。明朝体フォントのような。
でも俺にはわかる。いつもの一辺の滞りもない一本一本の線が不安に揺れていた。細かく、小さく。

第二志望、第三志望は空欄……。




第一志望の欄の片隅に、遠慮がちに………



小さく「お嫁さん」と書かれていた。




814: 2008/05/10(土) 01:04:09.73 ID:X5xL4IH0O
長門「………あなたはもう苦しまなくていい。……苦しまないでほしい」



長門「私が、サポートする。ずっと」



長門「……私は、あなたのそばにいたい」


長門「職業シミュレーション…。確かに劣悪な生活環境と認識した。だけど、不幸じゃなかった」



長門「ずっと、あなたのそばにいられるから」



長門「………あなたのそばが、私の居場所たがら……」

827: 2008/05/10(土) 01:10:22.23 ID:X5xL4IH0O
ぐにゃあ………。


あ、まただ…。

だけど今回は心地いい。

ここまでしてくれるのか長門……。

俺はそんなイイ男じゃないぞ。

はは。


ハルヒは……こんな俺を許すのか。

お前は俺を待っててくれたんだよな。

最期のときまで、俺を待ち続けるのか……?


でもな、俺はわかるんだ。

お前は多分笑って許してくれるんだ。

いつもギャーギャーうるさいお前が、こういう時だけは……

831: 2008/05/10(土) 01:12:11.96 ID:X5xL4IH0O
















でも、俺は………







「悪い。それは、受け取れない」

843: 2008/05/10(土) 01:14:54.11 ID:X5xL4IH0O
長門「…………」

キョン「その気持ちは、受け取れん」

長門「………!」



キョン「俺は奇跡を信じて、今まであいつの看病をしてきた」


キョン「でも、それを信じるあまり見失ってた」




キョン「……俺自身は、まだ何もしていない……!!」





863: 2008/05/10(土) 01:19:26.26 ID:X5xL4IH0O
キョン「………長門」

長門「………何?」

キョン「すまん」

長門「……………」





キョン「………また長門からもらってしまったな。懲りないな、俺も」


……ありがとう。


長門「………問題ない」





長門「………これは、予想の範囲内だった」

長門の顔がほころんだ気がした。
……きっと俺しか、分からないくらいに……

871: 2008/05/10(土) 01:22:22.33 ID:X5xL4IH0O
深夜、キョンの自宅にて


ドタドタドタドタドタドタ!


キョンの妹「うーん……今何時ぃ……?」

ギッタンバッタン!!

キョンの妹「キョンくんの部屋ぁ……?」

879: 2008/05/10(土) 01:27:02.93 ID:X5xL4IH0O
キョンの妹「……キョンくぅん……こんな時間になにやってるのぉ…?」

キョン「あれだあれ!進路志望調査の紙!!あれどこいった?」

キョンの妹「えー…?しらなぁい…」

ガサゴソガサゴソ!!

キョンの妹「……もう寝ようよぅ……」

キョン「あ!!」


キョン「あったぞ!!!!!」


シャミセン「にゃっ!?(びくっ)」

896: 2008/05/10(土) 01:35:03.06 ID:X5xL4IH0O
次の日 職員室にて

ガラガラガラっ!

キョン「失礼します」

数学教師「はいはい、って君は……」

キョン「岡部先生の机は?」

数学教師「あぁ、そこだが……」

キョン「……提出、と。(ペラッ)…失礼しました!」

ガラガラガラッ ピシャッ

数学教師「……何を提出したんだ?
………進路志望調査?……なんだいまごろ提出して」





数学教師「……しかも志望が『医師(脳外科)』だと?」

910: 2008/05/10(土) 01:39:09.69 ID:X5xL4IH0O
俺はなにもかもに頼りきりだった。

さっきの奇跡の話だってそうだし、長門にも頼りきりだった。

それゆえに、一番簡単なことを見失っていた。


待つんじゃない。俺が行くんだ。

奇跡がハルヒを助けるのか?

長門がハルヒを助けるのか?




……違う




……俺以外に誰が助けるんだ!!




915: 2008/05/10(土) 01:42:38.83 ID:X5xL4IH0O
昼休み、教室にて

国木田「…………」

谷口「…………どうなってやがる…?」




キョン「カリカリカリカリカリカリカリカリ」

924: 2008/05/10(土) 01:48:00.63 ID:X5xL4IH0O
ある日、昼休みにて

キョン「………ふぅ、チャートもやってみるもんだな。慣れればなんとかなりそうだ」

長門「…………」

キョン「おう長門!どうした?」

長門「………お弁当」

キョン「俺にか?」

長門「………(こくん)」

キョン「…助かる。すごく助かる。今ちょうど腹の虫たちが騒ぎ始めたところだ。
…で、弁当のメニューは?」

長門「カレー」

キョン「………なるほどね」

932: 2008/05/10(土) 01:52:21.18 ID:X5xL4IH0O
ある日、自宅にて

キョンの妹「まてー!!シャミー!!」

ドタドタドタ

シャミセン「………!!!」

ガチャッ

キョン「ただいまー」

キョンの妹「おかえりー!」




キョンの妹「だめだよー…?キョンくんはいまからお勉強するの。だからシャミセンは騒いじゃだめ」

シャミセン「…にゃ」

939: 2008/05/10(土) 01:59:39.77 ID:X5xL4IH0O
ある夏休みの晴れた日

谷口「二人で遊んでてもつまんねーな」

国木田「…毎日だからね」

谷口「仕方ないだろ。高校最後の夏休みなんだからよ。……ってことであいつも呼ぶ(ピポパ)」

国木田「…えぇ!?キョンを呼ぶの!?」

谷口「あいつ急に勉強しだしたり、おかしいからな最近。ここはひとつ景気づけに(ガチャッ)あ、もしもし?」

キョン『谷口か。どうした?今予備校なんだが』

谷口「………あいつ、金払って勉強してるぞ?」

国木田「…人間変わるもんだね」

28: 2008/05/10(土) 02:03:13.09 ID:X5xL4IH0O






そして、月日は流れ、
ある秋の日……







41: 2008/05/10(土) 02:07:44.95 ID:X5xL4IH0O
キョン「数学は完璧かな?あとは物理を潰せば……」

ブルブルブル、ブルブルブル!

キョン「………なんだ?公衆電話?」

(ピッ)

キョン「もしもし」

電話『キョンさんのお電話でお間違えないでしょうか?』

キョン「は、はい?どちらさまですか?」

電話『早く病院へ来て下さい!涼宮さんが危篤状態に…!!』

キョン「なんだって!?」

51: 2008/05/10(土) 02:10:37.44 ID:X5xL4IH0O
チリンチリン!!チリンチリン!!

キョン「すみません!どいて下さい!!」

通行人「ゴラァ坊主!!歩道で自転車飛ばすな!!!」


キョン(危篤だと…!!なにやってんだよ!ハルヒ、もう少し頑張れ!!すぐ俺が助けてやるから!!だから、まだ氏ぬな!!)

55: 2008/05/10(土) 02:13:42.68 ID:X5xL4IH0O
自動ドア『ウィーン』

受付B「こんにちは。受付はこちら…」

キョン「ハルヒ!!待ってろ!すぐ行く!!」

タッタッタッタ…!!

受付B「いまの…キョンくん?」

受付A「…どうかしたの?」

受付B「……いえ」

65: 2008/05/10(土) 02:17:26.50 ID:X5xL4IH0O
ハルヒ…!!もうすぐなんだ!!

俺は気付いた。お前を救うのは俺なんだ!

深い闇からお前を引っ張り上げるのは俺だけなんだ!!

俺は力をつける。だからもう少しまて!

もう少しだけ


待っててくれ!!!


ガラガラガラっ!!

キョン「ハルヒ!!!」






「……ばーか。だまされてやんの。
あんたはいつまでたってもノロマね…」

99: 2008/05/10(土) 02:24:01.78 ID:X5xL4IH0O
キョン「ハル…………」

ハルヒ「あら?あんたヒゲなんか生やしてんの?
……言っとくけど似合ってないわよ?」

キョン「ハルヒ……なのか?」

ハルヒ「………あたしの顔も忘れたの?あたしは正真正銘、涼宮ハルヒよ」

キョン「そんな、ことが………は、はは……」

ハルヒ「あんたその様子だとあたしの見舞いもさぼってたわね!
罰として売店に行ってケーキでも…」


キョン「ハルヒ!!!」

ハルヒ「きゃあ!?ちょ、ちょっと!ド変態!なに抱き付いてんの!?」

123: 2008/05/10(土) 02:30:44.12 ID:X5xL4IH0O
キョン「ば、馬鹿野郎…!!俺は……っ!俺は毎日見舞いに来てたっ……!!
来る日も来る日も…!!ずっとお前のそばにいたっ…!!

うっ……えぐっ………!

何度も葛藤した…!
逃げようともした…!!

だけど、やっぱり結論は一つだった…!お前のそばから離れられない…!いや、

お前を離したくないんだ…っ!!


馬鹿野郎…!この馬鹿野郎…!」

ハルヒ「………そう」

キョン「うわあああああああああぁぁぁぁ!!!」

149: 2008/05/10(土) 02:38:21.23 ID:X5xL4IH0O
多分俺もうすぐ寝るw


書き溜め?するかよそんなもんwwwwwwwwwwwwww



ガチャッ

医師「うおっ!?」

ハルヒ「きゃあ!ちょ、バカキョン!!いいかげんはなれなさい!!」

キョン「おわっ!ご、ごめんなさい、お見苦しいところを…」

医師「いえいえ、おかまいなく(…ごほん)」

ハルヒ「スケベ、氏ねっ」

キョン「…………」

164: 2008/05/10(土) 02:45:36.56 ID:X5xL4IH0O
………

……



ハルヒ「zzz……」

医師「実は一昨日あたりから意識の方は戻っておりまして。
真っ先に貴方に知らせようと思ったんですが、涼宮さんに強くひきとめられまして」

キョン「で、ああやって呼び付けたわけですか。
……とんでもないことを考えますよほんと。寿命が縮みました」

医師「はっはっは!それを言うなら、私があなたに突然組み付かれたときの方こそ縮みましたよ」

キョン「や、やめてくださいよ!」

174: 2008/05/10(土) 02:52:54.21 ID:X5xL4IH0O
医師「それにしても不思議なこともあったもんです」

キョン「………?」

医師「………涼宮さん、意識が戻る前日は、本当に危篤状態だったんです」

キョン「なんですって!?」

医師「…はい。私どもも最悪の事態を想定しました。…ですが」

キョン「?」

医師「……私たちが立ち去った後です。なんと息を吹き返されまして。まるで神のご加護があったように、なんの前触れもなく、です」

189: 2008/05/10(土) 03:00:16.62 ID:X5xL4IH0O
キョン「はぁ…」

医師「検査をしたところ、まだ脳内に血腫は存在するものの、脳の機能は完全に回復していました」

キョン「………」

ドクン……

医師「不思議なこともあるものですね。あ、不思議といえば」

ドクン……

医師「あなたのお連れさんの女の子、毎日来ていたのに、涼宮さんの意識がもどったと思ったらパタリと来なくなりましたね」

ドクン……

キョン「すみません!!急用を思い出しました!!」

207: 2008/05/10(土) 03:06:34.73 ID:X5xL4IH0O
医師「…………」

ハルヒ「……行きました?あいつ」

医師「……はい」

ハルヒ「………ふぅ。全くもう、相変わらず世話がやけるんだから…」

医師「あんまり無茶をされないで下さい」

ハルヒ「…………」

医師「意識が戻られたのは本当に奇跡です。ですが、奇跡は奇跡であることをお忘れなく。
……現実は……」

ハルヒ「………分かってます」



ハルヒ「あたしはもうキョンに心配かけたくない……」

504: 2008/05/10(土) 19:46:38.53 ID:X5xL4IH0O
チリンチリン!!

通行人「おわっ!?あぶねぇぞゴラァ!!自転車は車道走れ車道!!」

キョン「すみません!すみません!」

キョン(長門……!あいつ、まさか……!)


長門はハルヒはもう助からないと断言していた

にも関わらず、ハルヒは奇跡的に息を吹き返した……

そして、その時を境に病院にこなくなった長門 ……


……俺はこの時、最悪の状況が組み上がっていくのを感じていた。

508: 2008/05/10(土) 19:55:58.93 ID:X5xL4IH0O
長門「……それはできない。私の任務は涼宮ハルヒの観察。
こちらからの極度の関与は
宇宙にとって致命的な歪みを発生させる可能性があるため、禁止されている」


長門はたしかにそう言っていた。


そうだ、そんな危険なことなら長門がするはずないじゃないか。
そうも思った。

……だけど、奇跡なんてものはこうも都合よくおこるのか?

……おこらないさ。都合よくは。




これは長門が起こした「意図的な」奇跡だ。

509: 2008/05/10(土) 19:57:22.53 ID:X5xL4IH0O




キョン「……馬鹿野郎!!勝手なことしやがって…!」



キョン(……無事でいてくれ!!)





511: 2008/05/10(土) 20:00:58.76 ID:X5xL4IH0O
長門の家の前

ドンドンドン!ドンドンドン!

キョン「長門!いるか!?開けるぞ!!」

ガチャッ!


キョン「………!!」

キョン(……こたつがない)

キョロキョロ


キョン(鍋も、やかんも……。生活の必需品がなにもない……!!)



キョン「………くそっ!」

ダッ

513: 2008/05/10(土) 20:02:09.85 ID:X5xL4IH0O
図書館にて

キョン「すみません!」

図書館司書「はーい。
……!!あなたは……」

キョン「すみません、今日、ここに女の子は来ませんでしたか…!?」

図書館司書「お、女の子といっても女性はたくさんご来館なさるので…」

キョン「ショートカットで、このくらいの背の、ちょっと大人しそうな女の子です!」

図書館司書「うーん、そんな子は今の所見てないですが……」

キョン「くっ…!分かりました…!どうもすみません」

キョン(くそ……!何処なんだ、長門…!!)


514: 2008/05/10(土) 20:04:13.94 ID:X5xL4IH0O
公園にて

キョン「長門ー!!どこだー!?」


電話『お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません』

キョン「……くそっ!」

キョン(……電話もだめか………!)


野良犬「ガルル……」

キョン(…………!)

野良犬「グルルル……!!」

キョン(……これは嫌な予感が)

野良犬「ワウワウワゥ!!!」

キョン「うわあっ!」


518: 2008/05/10(土) 20:10:29.80 ID:X5xL4IH0O


チリンチリン、チリンチリン!

キョン「すみません!通ります!通ります!」

キョン(あとはどこだ?どこを探してない!?)

ギャル男A「……でよwwwwwwwその合コンで知り合った女がかなりしつこいのwwwwwww」

ギャル男B「それマジで?wwwwwwwマジKYwwwwwwwパネェwwwwwwwwwwwwww」

キョン「………!!」

キョン(歩行者!!こっちに気付いてないのか!?)


キョン「ぶ!ぶつかる!!うわああ!!」

キキーッ!!

ドンガラガッシャーン!!!


522: 2008/05/10(土) 20:13:39.43 ID:X5xL4IH0O


キョン「いたたた………」

ギャル男A「お、おい、やばくね?」

ギャル男B「壁と正面衝突だよオイ……」

ギャル男A「……あのー。大丈夫ッスか?」

キョン「……くっそ……。……うわっ!?」

ギャル男B「!?」

コロコロコロ……

キョン「前輪が外れた…」

キョン(………こうなったら走るしか…!)

タッタッタッタ…!

ギャル男A「………」

ギャル男B「………」




527: 2008/05/10(土) 20:19:01.80 ID:X5xL4IH0O
結局その日は町中をかたっぱしから走ってまわった。

図書館

公園

川辺

商店街

喫茶店……。




キョン「ハアッ……!ハアッ……!」

529: 2008/05/10(土) 20:25:51.15 ID:X5xL4IH0O
キョン「ハァッ……ハァッ………」


キョン(くっそ……。町の中はもうほとんど見てまわった…)

キョン(……探すところはもう………。)




キョン「………まだだ!……あともう一周…!」


ズキン……

キョン「痛っ…!?」

キョン(足が……!)

537: 2008/05/10(土) 20:34:35.71 ID:X5xL4IH0O
キョン(さっき壁と正面衝突した時に…!)

キョン「くっ……」フラフラ

通行人A「………?(じろじろ)」

通行人B「……あの、大丈夫ですか?」

キョン「…………っ……!」

キョン(この足だとどこまでいけるか…。くそっ…!)

キョン「……もう一度だ!もう一度考えよう」

…長門の行きそうな場所だ。

…長門が好きな場所だ。


分かるだろ?キョン…!


お前は誰よりも長門を知ってるんだろ?


543: 2008/05/10(土) 20:37:59.55 ID:X5xL4IH0O
キョン「考えろ!!気付くんだ!キョン!!!」







-----…………!!









549: 2008/05/10(土) 20:42:16.95 ID:X5xL4IH0O
夜、学校にて


警備員「~♪……ん?」

ササッ…!

警備員(今なにか通った…?)


警備員「………ゴクリ」


警備員「だ、だれかいるのかっ!?」

552: 2008/05/10(土) 20:48:25.66 ID:X5xL4IH0O
ガサッ……

警備員「…………!!」

警備員(…確実に誰かいるぞ…!)


警備員「で、出てきなさい!いるのはわかってるぞ!!」

???「………!!」

バッ!!

警備員「…!!!(ほんとに出て来た!?うわあああああ!!)」

猫「…にゃおー」

警備員「………」

警備員(………なんだ猫か)

猫「にゃ」

警備員「……お前可愛いな。ソーセージ食うか?」



キョン(………猫と遊んでるのか?…まぁいいや。いまのうちに…)

554: 2008/05/10(土) 20:50:12.63 ID:X5xL4IH0O
夜、部室前にて


キョン(……………)



キョン(そういやここに来るのも一年ぶりくらいか)




558: 2008/05/10(土) 20:55:51.16 ID:X5xL4IH0O
ガチャッ……


キョン「…………」

キョン(………開いてる…)




キョン(……………)




キョン「…………俺たちの、部室だ」

564: 2008/05/10(土) 21:04:09.91 ID:X5xL4IH0O

ドアの向こうは、一年前のままだった。


ホコリの積った長机

黄ばんだカーテン

ネズミやゴキブリの氏骸たち

床に散らばった蛍光灯の破片


一年という歳月を感じさせる変化はたしかにあった。
だけど、そこはまぎれもなく、俺たちの部室のままだった。
まるで、ハルヒが眠り続けていたことで、時が止まっていたかのように。



そして、彼女はいた。
窓際の、あの席に

572: 2008/05/10(土) 21:09:12.43 ID:X5xL4IH0O
長門「……………」

キョン「……………」

長門「……………」

キョン「………また、本読んでたのか?」

長門「……(こくん)」

キョン「………俺も一冊かりていいか?」

長門「……(こくん)」

590: 2008/05/10(土) 21:14:36.23 ID:X5xL4IH0O
キョン「…………」

長門「…………」

キョン「……なんかさ、思い出さないか?」

長門「……何を?」




キョン「授業が終ってさ、俺が部室に来る」

長門「………」

キョン「んじゃ長門が絶対いて、ここで本を読んでる」

長門「………」

キョン「んで俺は聞くんだ。『あれ?みんなは?』って」

長門「………」

キョン「そしたら長門は答えるんだ。『まだ』ってな具合で」

610: 2008/05/10(土) 21:23:46.71 ID:X5xL4IH0O
長門「………」

キョン「んで次は朝比奈さんが入ってくるんだ。お疲れ様ですーってな。
朝比奈が着替えるから、俺は外に出る」

長門「………」

キョン「んで俺が外で衣擦れの音を聞いて性欲をもてあま……じゃなかった。外で窓のそとを眺めていると、古泉が来る。
遅れて申し訳ありませんーとか言うんだが、顔がニヤけてやがるもんだから、全く申し訳なさそうに見えないんだな。これがさ」

長門「…………」


627: 2008/05/10(土) 21:31:43.69 ID:X5xL4IH0O
キョン「朝比奈さんがお茶を淹れてくれて、俺と古泉はゲームして、長門はずっと本をよんでる」

長門「………」

キョン「そしたらな、とびきりうるさいのが入ってくるんだ。
乱暴にドアを蹴って開けて、耳を貫きかねん声で『おまたせー!!』ってな」

長門「…………」

キョン「…………俺はいまにも、あいつらがそのドアから入ってきそうな気がする」

長門「…………」

キョン「俺と長門が、こうやって一年ごしに、ここにいるように」

644: 2008/05/10(土) 21:38:36.26 ID:X5xL4IH0O
長門「…………」

キョン「……俺はな、確信してるよ」

長門「……何を?」

キョン「……みんな、ここが好きだから、戻ってくる」

長門「………」

キョン「いつになるかは分からん。明日かもしらんし、もしかしたら爺さん婆さんになってからかもしれない」

長門「………」

キョン「……俺は確信してるよ」

長門「………」

キョン「………だから長門」




キョン「………お前は行くな…!!」

660: 2008/05/10(土) 21:47:53.42 ID:X5xL4IH0O
キョン「みんなを待つんだよ!俺たち二人で!!」

長門「………」

キョン「まずは俺たち二人でハルヒの看病をするんだ…!ハルヒは俺が医師になって必ず助ける!!
ハルヒが元気になったら……ほら、もう三人だ!!」

長門「………」

キョン「三人で待とう!!
三人になったらまずこの部室の掃除だ!
……ってあれ?そんときは俺は医者になってるから卒業……?
あああっ!まぁいいや!卒業してもここを使おう!!
だから、三人で大掃除だ!」

長門「……」

キョン「それから三人で、みんなが集まってから何をするか決めよう!
そうだな…!再結成第一弾は、やっぱオーソドックスに不思議探索かな!」

668: 2008/05/10(土) 21:52:16.12 ID:X5xL4IH0O
キョン「ははは、なんかこうやって話してたら楽しいな」

長門「………」

キョン「………楽しいだろ?」

長門「………」

キョン「…………………楽しいって言ってくれ……」











長門「…………ごめんなさい。その気持ちは、受け取れない……」

681: 2008/05/10(土) 21:56:59.03 ID:X5xL4IH0O
キョン「……………なんでだよ」

長門「………あなたはもう分かっているはず」

キョン「………………」




長門「私は本日の12時をもって削除、破棄される」

キョン「……嘘だろ」

長門「……聞いて。……これはもう決まったこと、仕方がない」

キョン「……仕方ないってなんだよ……。」

長門「………」

キョン「人が一人消えるのが、仕方ないってのか……!?」

長門「………」

695: 2008/05/10(土) 22:01:36.97 ID:X5xL4IH0O
長門「…………」パタン…

キョン「…………」

長門「読み終わった」

キョン「…………」

長門「………もう、行かないと」

キョン「………だめだ」

長門「もう決まったこと」

キョン「だめだ!!行くな!行かないでくれ!!長門!!」

長門「……聞いて」

キョン「嫌だ!誰が聞くか!!聞きたくないぞ俺は!!」

長門「聞いて…!!」

キョン「………!!」

711: 2008/05/10(土) 22:07:43.96 ID:X5xL4IH0O
長門「……あなたが本当に必要としているのは私じゃない」

キョン「何言ってんだ!!俺はお前を……!!」

長門「お願い聞いて。もう時間がない」

キョン「……くっ…!!」


長門「あなたが本当に必要としているのは涼宮ハルヒ。私じゃない」

キョン「でも!!」

長門「……涼宮ハルヒは三日前、氏ぬ予定だった。それは、宇宙の調和が決めた決定事項」

キョン「…………」

長門「………それを私が変えた。
あなたが、幸せに生きるために」

732: 2008/05/10(土) 22:16:45.75 ID:X5xL4IH0O
長門「……あなたには、悲しんで欲しくない」

キョン「でも!!長門が!!長門はどうするんだ!?お前が不幸なら俺も不幸だ!!」

長門「……私は幸せ」

キョン「……嘘だ……!嘘つけ!!」

長門「………もう、そろそろ」

ガシッ…!

長門「……!」

キョン「うわあああああ!!な゙がとぉ!!い゙ぐなァァ!!いがな゙い゙で!……いがないでくれ!!」

長門「…………」

745: 2008/05/10(土) 22:21:31.74 ID:X5xL4IH0O
長門「…………泣いては、駄目」

キョン「……うっ…!ううぅ……えぐっ……!」





長門「……最後は」

キョン「!!?」

長門「……最後は笑ってお別れしたい」







キョン「…………出来るわ゙げ……!ない゙だろ゙……!!」

760: 2008/05/10(土) 22:25:59.69 ID:X5xL4IH0O
長門「……お願い」


キョン「………ぐすっ…ぐすっ…!」

ゴシゴシゴシ…!

キョン「………じゃあ、一つだけ約束しろ」

長門「…約束?」

キョン「……俺はハルヒと二人でみんなを待つ!!だから長門」

長門「………」

キョン「お前も絶対戻って来い!」

長門「………!」

774: 2008/05/10(土) 22:30:27.82 ID:X5xL4IH0O
長門「……でも」

キョン「動けるSOS団は俺だけになってしまった」

長門「………」

キョン「だから俺が、今から団長代行だ!!」

長門「………」

キョン「団長の命令は絶対だ!」


キョン「長門!!」


キョン「待ってるから、絶対にもどってこい!」

長門「…………」




長門「…わかった」

801: 2008/05/10(土) 22:38:08.30 ID:X5xL4IH0O
次の瞬間、部室ないに閃光がほとばしった。
目を貫いて、脳の奥の方まで突き刺さりそうな鋭い光


でも俺はそのなかで、目をこらし、満面の笑みを浮かべた。
眩い閃光の中で、長門もほんのちょっぴり、俺にしか分からないくらいの笑みを浮かべていたに違いない。



―――あなたはここで立ち止まっては駄目。



そうだ。長門は帰ってくる。約束したんだ。
あいつは出来ない約束はしない。
だから、長門は帰ってくる。絶対に

だってほら、長門が最後に読んでいた本。

スタンドバイミー。
あなたのそばに立つ。

【涼宮ハルヒの憂鬱】長門有希の進路相談に続きます


引用元: 長門「…ご飯?…お風呂?………私?」