420: ◆2wv2J1ktzo 2016/10/27(木) 20:15:52.21 ID:rlaj3vFz0

「さて…」

花陽は考える


皆の前では大見得を切ったが、状況はかなり悪い



【ラブライブ】穂乃果「戦国μ's」【前編】
421: 2016/10/27(木) 20:17:14.65 ID:rlaj3vFz0

武田の主力が音ノ木の中心まで出てきた

という事は此処にそれだけの戦力を注ぎ込む余裕があるという事だ


音ノ木の他、織田や上杉といった強豪と隣接する武田はそこまでの軍勢を一箇所に投入できない

そう見込んでの音ノ木の拡大戦略であったがここにきて突然の襲撃



422: 2016/10/27(木) 20:18:02.46 ID:rlaj3vFz0

まさか領地をかなぐり捨てて攻めてきたわけではないだろう

しかも同盟国である北条の家臣を調略している

重要な同盟国との信頼関係を破壊してまでの侵略行動



やはりこれは…




423: 2016/10/27(木) 20:19:44.00 ID:rlaj3vFz0

となれば何としてでも単独で武田を撃退せねばならない


此処を抜かれれば音ノ木の本城まで落とされる可能性もある

こちらの戦力は約千五百

籠城戦を行うならばそれ程少なくは無い

しかし籠城は後詰があってこその戦術


私の予想が正しければ、後詰は…来ない



424: 2016/10/27(木) 20:20:40.38 ID:rlaj3vFz0

ならばどれだけの長期戦を行えるかだが、残念ながら現在河越城には約一ヶ月分程しか兵糧の備蓄がない


ここ河越はあくまでも米流通の通過点

国内が安定している音ノ木では前線以外の城は政治的な拠点となっている場合がほとんどで、ここも例外ではなかった


「これは大失態、みんなに合わせる顔がないよ…」



「でも!」




425: 2016/10/27(木) 20:21:31.18 ID:rlaj3vFz0

「私がやらなくちゃ皆んなの帰るところが無くなっちゃうもんね」

「何処まで出来るかわからないけど…じゃなかった」


「絶対守ってみせるよ!」



426: 2016/10/27(木) 20:22:42.79 ID:rlaj3vFz0

「さあ、前向きにいこう!」


入間の砦が落とされたという事は入間川は渡られたという事

次は狭山

そして敵は三枝守友か…


破竹の勢いでこのまま狭山まで進軍してくれそうだね

ならば…



花陽の軍略が今ここに顕現する




427: 2016/10/27(木) 20:24:38.80 ID:rlaj3vFz0

一方武田軍の先鋒、三枝守友は異常なほどの進軍速度で狭山を目指していた


「この機を逃すわけには行かぬ!」

「再びお館様に認めていただく為、力を見せねばならぬのだ!」


守友は前年、ある失態のため主君武田信玄から蟄居を命じられていた

それが今回、命あって強敵音ノ木攻めの先鋒を任された


「高坂九将『みゆうず』の中でも小泉花陽は最弱と聞きおよぶ」

「これは千載一遇の好機!天運我に味方せり!」


「このまま一気に狭山も落とせ!」

「本隊が到着するまでに河越までの道を切り開くのだ!」



428: 2016/10/27(木) 20:25:46.45 ID:rlaj3vFz0

武田軍先鋒、三枝隊の勢いは止まることを知らず、次々と狭山に続く砦を落としていく

しかも殆ど戦闘らしい戦闘はしていない


なぜなら武田菱を掲げた三枝隊が接近するや否や

「武田だ!武田軍が来たぞ!!」

「旗印は三枝守友?!勝てるわけがない!」

「砦を棄てて逃げろ!急げ!!」



429: 2016/10/27(木) 20:26:28.46 ID:rlaj3vFz0

この調子である

「小泉隊は弱いと聞くが、まさかここまでとは…」


「まぁ良い、我が名声の礎となって貰おうか」

「進め!このまま河越も落としてくれようぞ!」


『応!』



430: 2016/10/27(木) 20:27:34.70 ID:rlaj3vFz0

勢いづく三枝隊はそのまま狭山まで到達


「流石にここは易々とは落ちんか」


その言葉の通り、狭山はここまでとは違い抵抗が激しい

駐留する隊も組織立って行動する為、迂闊に攻撃できずにいた


三枝隊が攻めあぐねている、その時



431: 2016/10/27(木) 20:29:33.87 ID:rlaj3vFz0

「水だ!逃げろ!!」

三枝隊後方から悲鳴があがる


「何事か?!」

守友が報告を求めると

「空堀に突如水が流入!お味方に被害が出ています!」

さらに馬廻衆からは絶望的な報告がもたらされる


「三枝殿!退路が絶たれました!」

「んなっ?!」



432: 2016/10/27(木) 20:31:06.23 ID:rlaj3vFz0

三枝隊が大混乱に陥る中


「いまだっ!掛かれ!」

小泉隊の伏兵が横腹を突く


「ふ、伏兵です!隊の横から伏兵の攻撃!」

直後には

「討って出るぞ!敵を蹴散らせ!!」


「狭山砦から敵出陣!対応できません!」


「…小泉花陽……ぬかった!」



433: 2016/10/27(木) 20:32:31.75 ID:rlaj3vFz0

「狭山砦にてお味方勝利!」

「三枝守友を捕らえました!」


早馬の報告に

「ふぅ、取り敢えずは予定通りだよ」

「と言うより捕虜を取れたことは上出来だね」

安堵の表情で答える花陽


「さて、次はどっちかな?」

花陽の問いに側に控えていた小姓が答える

「先鋒の別働隊として南側から進軍する部隊が残っています」


「随分遠回りだね」

「と言うことは部隊の構成は…ふむ」



434: 2016/10/27(木) 20:33:11.22 ID:rlaj3vFz0

「季節外れだけど代掻きのお手伝いでもしてもらいましょうか」


花陽の言葉に小姓は深々と頭を下げる

「御意にございます」



435: 2016/10/27(木) 20:34:48.79 ID:rlaj3vFz0

南側からの進軍を続ける武田軍の分隊は先鋒三枝守友隊の敗北を知り進軍を停止していた


「合流するはずの先鋒隊が潰滅…」

「ここは一旦戻るか?」


しかしここまで敵砦や拠点では抵抗らしい抵抗を受けていない

それどころか相手は皆、武田の菱を見るだけで尻尾を巻いて逃げるのみであった



436: 2016/10/27(木) 20:35:48.57 ID:rlaj3vFz0

狭山は防衛上の重要拠点

そこに精鋭を集中していた可能性は高い


ここで引いて他の将に弱腰と見られることは避けなければならない

ならば次の拠点まで進み本隊の進軍に合わせるのが上策

この辺りは見渡す限りの沼地と聞き及んでいたが、農地が整備され進軍に影響はない


「国力の充実が仇となったな、音ノ木よ!」

「進軍せよ!入曽拠点を落とす」



437: 2016/10/27(木) 20:37:02.01 ID:rlaj3vFz0

武田軍の進軍後間も無く

「伏兵!茂みから伏兵の攻撃です!」


伏兵による矢の攻撃を受けるが

「蹴散らせ!敵は少数だ!」

号令一下、反撃を開始


すると反撃も殆どせず

「退却!」

瞬く間に小泉隊は退却する


438: 2016/10/27(木) 20:37:57.10 ID:rlaj3vFz0

「弱い!弱すぎるぞ!」


このまま河越まで突き進むのも可能ではないか?

頭にそんな思いが横切ったその時


「敵襲!再度伏兵の攻撃です!」

「ええい!蹴散らせ!敵は弱兵だ!!」


再び現れる伏兵も直ぐに蹴散らされる



439: 2016/10/27(木) 20:39:54.84 ID:rlaj3vFz0

その後も一里どころか数町毎に何らかの攻撃が続く


流石に辛抱たまらず

「一気に駆け抜けろ!弱兵は相手にするな!!」

入曽迄の道を駆け始める武田軍

入曽拠点が目に見える距離まで走り抜け、一旦軍を止める


その時周辺の農民と思しき者が遠くから声を掛けてきた



440: 2016/10/27(木) 20:42:08.62 ID:rlaj3vFz0

「戦かね?」


「その通り!間も無くこの一帯は武田の物となる!」


「そんなに急ぐと怪我をなさりますぞ」


「武田の兵にその様な弱兵はおらん!」


「しかし、こんな見晴らしの良い田んぼの細い畦道を一直線になど」

「数の多さを生かせぬぞ…」


「まるで横腹をついてくれと言っているかの様だ!」


「?!貴様!!」



「撃て!」

農民が号令をかけた瞬間、乾いた火薬の音が響き渡る



441: 2016/10/27(木) 20:45:09.73 ID:rlaj3vFz0

「鉄砲です!鉄砲隊の攻撃!!」

「拠点からも敵が出撃しています!」


「そんな事は分かっておる!」

「くっ…退却!!」


しかし道を戻ろうにも細く伸びた己が部隊に阻まれ動けない


「ええい!退け!道に拘るな!」

堪らず農地に入り逃亡を図るが

「田に水が!馬が進めん?!」


いつの間にか周辺の田には水が引き込まれ馬で逃亡が図れる様な状態ではなくなっていた


その間も鉄砲隊の攻撃は続く


「くっ…に、逃げろ!馬など放っておけ!」

遂に馬を置いて武田軍は逃亡する



442: 2016/10/27(木) 20:48:20.50 ID:rlaj3vFz0


「深追い無用、花陽殿に報告だ」


逃げる武田軍に対し小泉隊は追撃を行う事なく戦闘は終了となった




443: 2016/10/27(木) 20:49:08.16 ID:rlaj3vFz0


「ありがとう、ご苦労様です」


再び早馬の報告を受けた花陽はいつもの柔らかな笑顔で伝令に労いの言葉をかける



444: 2016/10/27(木) 20:51:38.27 ID:rlaj3vFz0

農地を利用した『灌漑要塞』河越城


元々の城の防御力に花陽が作り上げた独自思想の攻撃的防衛

今の所完全にこちらの思惑通り


これで南側からの進行は阻止できた

これで敵の気勢を削ぐことが出来たはず


残るは西、城下町側からの侵攻を迎撃するのみ



445: 2016/10/27(木) 20:52:26.44 ID:rlaj3vFz0

時間が無い


私達には時間が無いのだ


次は敵も本腰を入れて来るだろう



決着を急がねば




446: 2016/10/27(木) 20:53:06.71 ID:rlaj3vFz0


「住民を城へ」


「河越城総構えの真骨頂、味わっていただきます」



『ははっ!』




447: 2016/10/27(木) 20:53:56.78 ID:rlaj3vFz0


音ノ木本城を守る最強の盾 河越城


その盾の守護者小泉花陽は全ての知識を振り絞り、戦国最強の矛である武田騎馬隊と対峙する




453: 2016/10/28(金) 20:24:50.57 ID:9N7mc7AA0

武田軍本陣


先鋒隊の潰滅、別働隊も命からがら逃げ帰るという体たらく

予想外の出来事に一部の将から大将、内藤昌豊の弱腰姿勢に不満が発生

今後の方針を巡り軍議は紛糾していた


454: 2016/10/28(金) 20:26:20.56 ID:9N7mc7AA0

「『みゆうず』の名に恐れをなし、下らぬ包囲策を選んだ結果、この有様である!」

「大将殿は如何お考えか!?」


強硬派の急先鋒、一条信龍が昌豊に詰め寄る

「一気呵成に攻め立てれば小細工など気にせず今頃河越を手に入れられていたはず!」

賛同する者もそうだそうだと騒ぎ立てる


455: 2016/10/28(金) 20:27:02.88 ID:9N7mc7AA0

批判の矢面に立つ昌豊は特に慌てる様子もなく落ち着いて反対派の意見を聞いていた


この姿勢が更に信龍の癇に障り

「何か言うことはないのか!!」

立ち上がり激昂する


456: 2016/10/28(金) 20:28:11.62 ID:9N7mc7AA0

「さて…信龍殿の言い分は以上ですかな?」


昌豊は静かに口を開く

その口調は落ち着いているが鋭い眼差しは信龍達強硬派を黙らせるのに十分であった


「なるほど、では信龍殿であればあの網の目の様に広がる堀、細く伸びた街道、的確に配置された拠点を掻い潜り河越城を落とせたという事ですな」



457: 2016/10/28(金) 20:29:51.18 ID:9N7mc7AA0

「入間川を渡りし時から既に蜘蛛の巣に入り込み雁字搦めになっていた…」

「その危険性を憂慮し、確実に各拠点を落とし、敵の連携を無効化、河越を完全に孤立化させようとしたのですが…」


「先鋒隊が殊の外勇猛で想定外に奥地に踏み込んでしまったのが確かに失敗でした」

「しかも戦前にあれ程危険と伝えていた南側の道に別働隊を送るとは…」


「いやはや、戦とは予想外の事が起こるものでございますな」



458: 2016/10/28(金) 20:31:13.43 ID:9N7mc7AA0

一条信龍を筆頭とする強硬派は皆黙るしかなかった

何故なら全ては内藤昌豊の言う通りであり、一気に攻めたのも、別働隊を送ったのも強硬派の独断であるからだ


459: 2016/10/28(金) 20:31:56.14 ID:9N7mc7AA0

「攻めるのであれば、このまま城の西側である街を抜けるか、防御に優れる東から攻めるかですが…」


「やはりここは当初の予定通り包囲すべきと考えます」



460: 2016/10/28(金) 20:34:09.21 ID:9N7mc7AA0

「待たれよ!大将殿!」

「ここはやはり一気に攻めるべきである!」


それでも声を上げる一条信龍

「『みゆうず』と言えども弱兵の小泉花陽」

「某が兵を率いれば、瞬く間に河越を落としてご覧に入れよう」


461: 2016/10/28(金) 20:34:54.79 ID:9N7mc7AA0

信龍は武田信虎の八男

当主信玄の弟である


今回の戦では大将に志願したものの、兄信玄は内藤昌豊を大将とした

傾奇者として名を馳せる彼としては非常に面白くない事である


しかも自分の息のかかった者が大きな失態

何としてでも兄に己が力を誇示しなければならない


462: 2016/10/28(金) 20:35:46.97 ID:9N7mc7AA0

昌豊は頷き

「そこまで仰るのであればお任せ致しましょう」


「河越城は攻め辛き城に御座る」

「そして小泉花陽は中々のやり手と感じます」

「お気をつけくだされ」



再び河越城に武田軍赤備えの脅威が迫る




463: 2016/10/28(金) 20:36:59.10 ID:9N7mc7AA0

新たに組織された武田軍一条隊は入間川北部を東に進軍


狭山砦に本隊が張り付き無力化する間に入間川を渡河

一気に城下町を目指す


464: 2016/10/28(金) 20:37:56.68 ID:9N7mc7AA0

総構えの城らしく街に入る前には門が構えられているが単なる冠木門


「一気に矢を放て!」

「この様な板塀踏み潰してくれるわ!」


その言葉の通り小泉隊にほとんど反撃の機会を与えず城下になだれ込む



465: 2016/10/28(金) 20:39:01.61 ID:9N7mc7AA0

その先には小泉隊が待ち構えるが


「遅いな!小泉隊!城下に入ればこちらのものよ!」

「懸かれ!」

『応!!』


恐れを知らぬ赤備えは小泉隊の放つ矢など物ともせず一気に攻めかかる


466: 2016/10/28(金) 20:40:59.83 ID:9N7mc7AA0

「強い?!引け!引けぇ!!」

一条隊の圧力に堪らず退却を始める小泉隊


「逃すな!攻め込め!」

「これが武田の力だ!全軍このまま城まで突き進め!」


遂に一条隊全軍が城下に入り一気に虎口まで突き進まんと進軍するその裏では…



467: 2016/10/28(金) 20:41:50.89 ID:9N7mc7AA0


「門を閉じよ…」


静かに街の門は閉められる




468: 2016/10/28(金) 20:42:57.34 ID:9N7mc7AA0

一条隊は細く入り組んだ街並みを進軍

しかし入り組んだ道により思い通りに城に近づく事が出来ずにいた

しかも各所に櫓が配置され食い違い虎口となった街並みでは様々な攻撃を受け、被害は拡大している


それでも何とか二ノ丸が見えるところまで来た時、不意に城門が開かれた


そしてそこに現れたのは…


469: 2016/10/28(金) 20:43:42.31 ID:9N7mc7AA0


「いらっしゃいませ、武田軍の皆様」


「流石の赤備え、この小泉花陽、感服致します」




470: 2016/10/28(金) 20:44:46.73 ID:9N7mc7AA0

城門の向こうには愛らしい姫の姿


「あれが小泉花陽…」


花陽は堂々とした立ち居振る舞いで一条信龍へ告げる

「遠路遥々来て頂いた御礼でございます」

「この河越城の素晴らしさ、是非体験していってくださいませ!」



471: 2016/10/28(金) 20:45:38.17 ID:9N7mc7AA0

「ちっ!言ってくれるわ!」

「構うな!攻撃……」


信龍が命令する声をかき消す様に花陽の声が響き渡る



472: 2016/10/28(金) 20:46:11.04 ID:9N7mc7AA0



「攻撃開始!!」




473: 2016/10/28(金) 20:46:53.27 ID:9N7mc7AA0


その声に呼応し花陽の背後に鉄砲隊が現れ、そのまま耳をつんざく様な火薬の炸裂する音が続く


「ちっ!建物の陰に隠れよ!」

慌てて後退するも


474: 2016/10/28(金) 20:47:41.70 ID:9N7mc7AA0

「撃てー!!」


次は家屋の上に鉄砲隊が現れる

「こいつら!?」


「弓隊!撃ち落とせ!!」

弓隊の攻撃が開始されるその時



475: 2016/10/28(金) 20:48:33.43 ID:9N7mc7AA0

「家が?!」

「倒れるぞ!避けろ!」

突如家屋が倒壊し一条隊の一部が巻き込まれる


「何事か?!」

状況を把握しようとするも即座に聞こえる声


「突撃!!」


倒壊家屋の背後から伏兵が出現、攻撃を開始する



476: 2016/10/28(金) 20:49:34.12 ID:9N7mc7AA0

「くっ!敵の狙いは我々の戦力分散だ!」

「慌てず組織を維持せよ!」

「各隊は落ち着いて目の前の敵を討て!」


崩壊するかと思われた武田軍だが、流石の一条信龍

組織を維持しつつ態勢を整える



477: 2016/10/28(金) 20:50:54.39 ID:9N7mc7AA0

「一条信龍…凄いです!」


「あの状況で隊を混乱させる事なく反撃を…」

「でも負けられない!」


「火を放て!!」

花陽の号令と共に火矢が放たれる



478: 2016/10/28(金) 20:51:31.86 ID:9N7mc7AA0

これには信龍も目を疑う

「自分の城下に火をかけるとは…」

「正気の沙汰か!?」


「小泉花陽!貴様は何者だ!!」



479: 2016/10/28(金) 20:52:30.75 ID:9N7mc7AA0

河越城の総構え


本城を囲む本丸

軍事施設や施政設備を中心とした二ノ丸

城下町を囲い込む三ノ丸

灌漑設備を利用した独自の外堀

そして自然の川を利用した大外堀


しかしそれだけではない

更にもう一段階の構えがある


それは



480: 2016/10/28(金) 20:54:22.71 ID:9N7mc7AA0

「花奉行!敵は北の庄屋の家の方に向かったぞ!」

「もうすぐです花奉行!家に火をかけて下さい!」


次々と入る情報

その情報源はその街に住む住人達

自分の家が引き倒され、火をかけられるが特に構うでもなく協力を惜しまない



481: 2016/10/28(金) 20:55:23.23 ID:9N7mc7AA0

これこそ花陽が構築した総構えの真骨頂


住人の家屋は国が作る

国を守る為の盾の一つとして街並みを整える

農村部も然り

その為この様な戦術も可能としているのである



そして花陽は気づいていないが、住人が彼女を慕うからこそ完成した、彼女独自の要塞であった




482: 2016/10/28(金) 20:55:56.24 ID:9N7mc7AA0


その要塞に引き込まれた者は、例えどの様な強敵であっても無力化させられる


この一条信龍の様に…




483: 2016/10/28(金) 20:57:12.21 ID:9N7mc7AA0

「外へ向かえ!一旦引くぞ!」


信龍の号令も時すでに遅し

脱出の為何とか入り口に戻るも


「…少し見ぬうちに随分と立派な門になったものだ」


門は固く閉ざされ、更には補強がなされていた




484: 2016/10/28(金) 20:57:51.23 ID:9N7mc7AA0

次々と来襲する小泉隊に対して遂に



「…降伏する」





485: 2016/10/28(金) 21:00:19.93 ID:9N7mc7AA0

「花陽様、一条信龍が降伏しました」

伝令の報告を受けた花陽は、ふぅと息を漏らしつつ


「ありがとう、ご苦労様でした」

と労いの言葉をかける


486: 2016/10/28(金) 21:01:29.54 ID:9N7mc7AA0

ここで大名の親族を捕虜に出来たのは大きい

相手の気勢もかなり削ぐことが出来るだろう


もう少しだ


時間との戦いだが、勝機は見えてきた

何としてでも相手の心を折らねばならない



487: 2016/10/28(金) 21:02:30.53 ID:9N7mc7AA0

弱い小泉にいい様にやられ、武田の誇りも傷つけられ、次は必ず力攻めで来るはず


そうすればこちらの勝ちだ

必ず撃退してみせる


それでこの戦は終了

武田を退かせることが出来れば良いのだ


その後は何とか態勢を整えることが出来るはず



488: 2016/10/28(金) 21:03:13.72 ID:9N7mc7AA0

花陽が思い描く戦の流れ

ここまでは正に掌の上で踊らせる様に事が進んで来た


このままいけば…



そんな思いは翌日打ち砕かれる事となる




489: 2016/10/28(金) 21:04:40.89 ID:9N7mc7AA0

「武田軍、西外堀周辺に陣取り静観の構え」


「東からも別働隊と思しき部隊が出丸を望む位置に布陣しています」


「周辺街道の通行が武田軍により妨害されています」


次々と入る報告

それは花陽が最も忌諱する事態、包囲による兵糧攻めの構えであった


490: 2016/10/28(金) 21:05:59.13 ID:9N7mc7AA0

まずい…


今この城には兵糧が殆どない

その為の強硬防衛策だったのに


なぜ?


総大将内藤昌豊は誇り高き武人

私などに良い様にされて冷静でいられるはずもないはず


…悩んでいても仕方がない

何としてでも敵をおびき寄せる!



491: 2016/10/28(金) 21:07:23.09 ID:9N7mc7AA0

「武田軍は何やらのんびりしているねぇ」

「少しこちらも挨拶に伺いますか」


味方にも、あくまでも余裕であるところを見せねばならない

負の心は伝染が早い


私が弱気になったらみんなの心が折れてしまう

私が頑張らねば!



492: 2016/10/28(金) 21:07:58.56 ID:9N7mc7AA0

「一緒に来る人は少しで良いよ?」

「あくまでもご挨拶だから」


笑顔でそう言うと軽装で敵軍の見える三ノ丸物見へ



493: 2016/10/28(金) 21:09:09.35 ID:9N7mc7AA0

到着後すぐに敵軍陣地へ向けて大声で叫ぶ


「武田の皆様方、お初にお目にかかります」

「音ノ木はμ’sが内の一人、郡奉行小泉花陽でございます」


武田軍にざわめきが走る中、花陽は声を上げ続ける

「我が自慢の河越城、お楽しみ頂いている様で何よりでございます」



494: 2016/10/28(金) 21:10:09.84 ID:9N7mc7AA0


「まさかこの寒い中、信玄公の兵の方々に代掻きをお手伝いいただけるとは思いもよらず、感謝感激でございます」


「残念ながら戦本職の『金色夜叉』や『流星』は不在の為お相手出来ず、戦慣れしておらぬ私ごときで申し訳ありませんが、本日も趣向を凝らしてお相手いたしますゆえ、ご堪能くださいませ」
花陽は笑顔で微笑み続ける



495: 2016/10/28(金) 21:10:57.54 ID:9N7mc7AA0

ううっ…ごめんなさい


結構失礼な事言っちゃった

でも、このくらいしないと私達勝てないから…


一条さん達には後で謝ろう



496: 2016/10/28(金) 21:11:56.11 ID:9N7mc7AA0

花陽の狙いは強硬派の暴発

血の気の多い将校がいれば、行けるはず


しかし、花陽の狙いとは別に武田軍は僅かにざわめきが聞こえるのみ

そしてそのざわめきの中から、一人の人間が姿を現わす


大将旗をなびかせ威風堂々と現れたのは



497: 2016/10/28(金) 21:13:22.18 ID:9N7mc7AA0


「…内藤昌豊」


花陽が口にした名を持つ者は重く、しかしよく通る声で音ノ木に語りかける


「丁寧な挨拶痛み入り申す、我が名は内藤修理亮昌豊」

「此度の戦は流石の采配、感服いたす」


この後の発言は花陽の戦略の根底を覆すものであった



498: 2016/10/28(金) 21:15:15.31 ID:9N7mc7AA0

「彼の国の偉人、蕭何にも匹敵する知識と張良の軍略に匹敵する采配、この目で見させて頂いた」


「流石は高坂九将『最強』扇の要、小泉花陽殿である」


「我が主君武田信玄が命を受け、如何な手段を用いても勝利させて頂く」

「互いに持てる全てを出す戦となろう」

「だが、勝つのは我が武田家だと言うことを思い知って貰おう」



499: 2016/10/28(金) 21:15:59.79 ID:9N7mc7AA0

「我等の目的は貴公の首一つである」

「努努、ご承知置きを」


そう言うと内藤昌豊は一礼後、陣の奥に去っていく


500: 2016/10/28(金) 21:16:46.34 ID:9N7mc7AA0

これは花陽にとって完全に想定外の出来事である


まさか敵が『小泉花陽』をそこまで過大評価しているとは…

μ’sの皆んなの凄さは既に全国津々浦々まで広がっている

きっとそれで武田家も自分を勘違いしているのであろう


501: 2016/10/28(金) 21:19:00.12 ID:9N7mc7AA0

まずい事になった


相手が自分を舐めてかかって来てくれなければ今回の戦闘に勝ち目はない

何せ後詰は来ないのだ


後数日もすれば何らかの動きが伝えられるであろう

そうなればこちらの兵の士気に重大な影響を及ぼす


助けを求め様にもμ’sは最前線でそれぞれに戦闘中

同盟国の北条家も望み薄



502: 2016/10/28(金) 21:20:05.98 ID:9N7mc7AA0

辛い、心が痛い


みんなこんな想いでいつも戦っているんだ

私はいつも後ろで見ているばかり


やはりμ’sの中でも間違いなく最弱



503: 2016/10/28(金) 21:20:58.87 ID:9N7mc7AA0


「でも!」


花陽は折れそうになる心を奮い立たせる様に

「私もμ’s」

「音ノ木のため、何よりでみんなの為」

「守ってみせる!みんなの事を!」



「そう…みんなの事を守るんだ」




504: 2016/10/28(金) 21:21:54.13 ID:9N7mc7AA0

音ノ木を守る


花陽の決意は揺るぐ事なく彼女を支える

だが彼女を待つのは過酷な現実

そこに待つ結果とは…




次回に続く!!




520: 2016/11/20(日) 21:33:49.02 ID:cSzg9iDr0

時は遡り数か月前


音ノ木による信濃侵攻

双方に大きな損害を出しつつもμ‘sの参戦により小田井城が落ちた


これにより音ノ木に信濃への足掛かりを与えた形となった武田はついに当主信玄の命により音ノ木との全面戦争を開始することとなる

その軍議において信玄はμ‘s討伐を指示する



「弱き所より徐々に削り取り、崩壊させる」





521: 2016/11/20(日) 21:34:55.85 ID:cSzg9iDr0

この一言に対して内藤昌豊は

「恐れながら御館様」

「μ‘sの各個撃破には賛同いたしますが、弱きところを突くなどすれば当家の威信にかかわるものと進言いたします」


信玄は表情を変える事無く昌豊に問いかける

「当家は現在北は上杉、西は織田、そして新たに東の音ノ木と事を構えておる」

「帥の言うことも尤もであるが、音ノ木の主力と全力でぶつかるには時期尚早とみるが」


「どう考える」



522: 2016/11/20(日) 21:36:12.45 ID:cSzg9iDr0

昌豊は顔を上げ考えを述べる

「音ノ木を疎ましく思う者は少なくありませぬ」

「当家だけではなく侵攻を受ける伊達、上杉、そして織田も危険視して居るとのこと」


「そして幕府も何とか音ノ木を駆逐せんと考えておるようで…」


ここまで言うと後方の者に目配せをする




523: 2016/11/20(日) 21:37:10.52 ID:cSzg9iDr0


「実は先ほど客人が参られました」


この言葉に信玄が訝し気な表情を見せる

「客…?」


そしてそこに現れたのは…



524: 2016/11/20(日) 21:38:44.40 ID:cSzg9iDr0


再び時は戻り河越城



短期決戦の目論見が外れた花陽は焦っていた

さすがに食料の不足を隠すには限界がある

総構えとして住民を城内に入れている以上食料の減りも当然早くなる


「何とかしなくちゃ…このままでは…」



525: 2016/11/20(日) 21:39:43.69 ID:cSzg9iDr0

武田の包囲は着々と強固さを増していく

各拠点が徐々に落とされ攻め手がなくなっていく


様々な挑発行動を行っても頑として行動を起こさない

確実にこちらの窮状を推察しての行動であろう



526: 2016/11/20(日) 21:40:26.69 ID:cSzg9iDr0

「周辺の状況を確認しておこうか」


無意識に独り言を口にしてしまう花陽

常日頃から人に苦労を見せず、自分の中に閉じ込めてしまう悪癖が出ている証拠だ



527: 2016/11/20(日) 21:41:26.13 ID:cSzg9iDr0


「まず、西側」


武田軍の本隊はここだ

狭山砦を落とした後はここを拠点としている様子

そこから入間川南岸に沿うようにして徐々に包囲を狭めてきている


南側も本隊と連携し行動している様子

小さな拠点一つにおいても非常に慎重な攻めを見せ、もともと戦力の乏しいこちらはなすすべなく敗北を重ねている



528: 2016/11/20(日) 21:42:28.94 ID:cSzg9iDr0


「そして北側…」


戦力は一番薄いようだが入間川の流れがこちらの攻め幅も奪う形となっている

最高の自然の要塞がまさかこちらの足枷になるとは…

相手もそれを承知のようで戦力の大多数を街道の通行妨害に充てている


北部は音ノ木の戦力も健在であるが、その牽制も兼ねているのだろう



529: 2016/11/20(日) 21:43:38.25 ID:cSzg9iDr0


「東は膠着状態だなぁ」


一番防御の堅い東部は武田軍も手を出してこない

しかも後方は音ノ木の支配地域

ここを使えば何とか包囲の突破も可能かもしれないが…


未だ東方からの援軍が来ないのは足止め部隊の大半がそこにいることを示す

月夜衆からの報告からもその傾向が推測される



530: 2016/11/20(日) 21:47:07.29 ID:cSzg9iDr0

推測というには訳がある


音ノ木や周辺諸国に張り巡らされた月夜衆の情報網

それが現在はほとんど機能していない


その理由として考えられる第一の理由は敵陣中にて目撃された『飛加藤』こと加藤段蔵の姿

武田の忍衆の頂点が従軍している


μ‘sの周辺には希の息のかかった優秀な忍が配属されるがその者達でもわずかな情報を手に入れるのがやっとの状態であった


531: 2016/11/20(日) 21:48:11.09 ID:cSzg9iDr0


「…南の北条さんに援軍を頼めば」


そこまで言って花陽は首を振り

「駄目だ…今は駄目」


南部は北条氏との国境も近い

花陽は北条とは特に懇意にしており、通常であれば援軍を頼むことも可能


しかし今はそれが出来ない

花陽が援軍は来ないと言っていた訳であり、無理な短期決戦を仕掛けた理由



その理由は翌日遂に白日の下にさらされることとなる




532: 2016/11/20(日) 21:49:18.80 ID:cSzg9iDr0


北信濃侵攻軍本陣


音ノ木を率いる高坂穂乃果、そして怪我から復帰した園田海未の元へ幕府からの勅使が訪れていた


「こ、これは…!?」

勅使から受け取った書状を読んだ海未は驚愕の声を上げる


この様子を見た穂乃果はただならぬ海未の様子に慌てて声をかける

「どうしたの!?海未ちゃん!」



533: 2016/11/20(日) 21:52:11.59 ID:cSzg9iDr0

「…これを読んでください」

青ざめた顔で書状を穂乃果に渡す


書状を見た穂乃果は真剣な面持ちで

「海未ちゃん…これ……」


答えを聞くことなく海未は頷き

「困ったことになりました…」


そう答える海未に対し穂乃果は首を横に振り

「違うんだよ、海未ちゃん」


「違うとは、いったい?」


この質問に穂乃果は答える



534: 2016/11/20(日) 21:53:10.06 ID:cSzg9iDr0


「穂乃果…これ、なんて書いてあるか全然わかんないんだけど…」



535: 2016/11/20(日) 21:54:03.24 ID:cSzg9iDr0


「………」


「………」



536: 2016/11/20(日) 21:55:24.29 ID:cSzg9iDr0


「穂乃果!あなたあれほど私と花陽がこの時代の作法を説明したのに…」クドクド


説教を始める海未に対し

「だって、こんなミミズが這ったみたいな字、読める訳ないじゃん!!」

「なんか最後に変な落書きしてるし!!」



537: 2016/11/20(日) 21:56:54.78 ID:cSzg9iDr0


「み、蚯蚓…落書き……」


勅使は明らかな不機嫌さを見せ直接説明を始める

「高坂穂乃果、貴殿の目に余る狼藉に、遂に将軍様の怒りが頂点に達したのだ」

「よって貴殿は幕府の敵として全国の幕臣により討伐されることとなった」


「将軍様は天下泰平の為、自ら各地へ出向き幕臣に命を出したのだ」

「関東管領 上杉、奥州探題 伊達、甲斐守護 武田、さらには織田弾正を含め各地の者が成敗に参上することであろう」



538: 2016/11/20(日) 21:57:51.40 ID:cSzg9iDr0

実際は京を追われた足利義昭が行く当てもなく各地を放浪した結果であるが、音ノ木を危険視する風潮も相まって、結果巨大勢力となったものである


勅使は虎の威を借りる狐のごとく、居丈高な態度でこう言い放つ

「地に這いつくばり許しを請い、貴殿の首を差し出すのであれば家臣の命は考えてやらなくもな…」


しかし言葉はここで止まる



539: 2016/11/20(日) 21:59:02.60 ID:cSzg9iDr0


その首元には海未により刀が突きつけられていた


「ひっ…ひいぃ、お、お助け…」

冷たくにらみつける海未に命乞いする


「穂乃果に対してそのような言葉は謹んでいただきたい」

「でないと私、この刀を振らねばならなくなります」


一触即発の事態に穂乃果が仲裁に入る

「まあまあ、海未ちゃん、そこまでにしなよ」

「このおじさん、泣いてるよ?」



540: 2016/11/20(日) 21:59:58.05 ID:cSzg9iDr0

穂乃果が止めたことにより海未は刀を引く


「ぶ、無礼者めが!幕府の勅使に対して…何たる…」

「覚えておれ!貴様らに未来は無いのだ!」


勅使はそう捨て台詞を吐き捨てると逃げるように立ち去る



541: 2016/11/20(日) 22:01:20.43 ID:cSzg9iDr0

「全国の大名がすべて敵…」

「しかも織田までもが遂に我らの敵となりました」

「敵の攻撃が日々苛烈になっていくのも全ての戦力を音ノ木に向けているからということですか…」

「こんなことをしている暇はないのに…」


海未の言葉に穂乃果もうなずき

「そうだよ!早く敵をやっつけて花陽ちゃんの所に行かなくちゃ!」


河越急襲の報はこの地にも届いていたが、敵の攻撃が激しく二人は釘付けにされていた

「花陽ちゃんが負けるわけないと思うけど、それでも助けに行かなくちゃ!!」


その言葉を合図にしたかのように伝令が飛び込んでくる



542: 2016/11/20(日) 22:02:53.07 ID:cSzg9iDr0


「大殿!!新たな敵集団を確認しました!!」


「こんな時に?!」

「また武田の増援?しつこーい!!!」


「いえ、敵の旗印は」



「上杉です!!」



「うそ…」

「仇敵の両者が手を組むとは…」


二人の驚きと焦りなど無視するかのように音ノ木への攻撃は激しさを増していく




543: 2016/11/20(日) 22:04:39.16 ID:cSzg9iDr0


音ノ木討伐令の件は他のμ‘sの元へも届いていった


越後侵攻部隊の星空凛と西木野真姫が参戦するここも例外ではなかった



544: 2016/11/20(日) 22:06:13.97 ID:cSzg9iDr0

「この敵の数、多すぎる」

「幕府の勅令が下ったのは本当のことらしいわね」


冷静な真姫の横で焦りとも怒りともつかぬ表情で凛は叫ぶ

「そんなことは解ってる!でも凛はかよちんの所に行かなくちゃならないの!!」


「かよちんは強いけど…でもきっと辛くて泣いてる」

「凛はいつも助けてもらってた…」

「だから私もかよちんを助けるんだ!!」



545: 2016/11/20(日) 22:07:23.29 ID:cSzg9iDr0

興奮する凛に真姫は

「落ち着きなさい、凛」

「あなたの気持ち、わかるわ」


「だって私も同じ気持ちだもの」


「落ち着いてなんかいられないよ!急いで『だからこそ!!』

凛の言葉に真姫が割り込む

「だからこそ、私も協力させて頂戴」


「私とあなた、二人で花陽を助けましょう」



546: 2016/11/20(日) 22:08:14.30 ID:cSzg9iDr0

この言葉に我に返る凛

「真姫ちゃん…うん!二人で力を合わせてかよちんを助けよう!」


笑顔が戻った凛に向かい真姫は告げる

「さあ、そうと決まれば目の前の雑魚を片付けましょう」



547: 2016/11/20(日) 22:08:58.47 ID:cSzg9iDr0



「『緋色の孔明』と『流星』の力、しっかり見せてあげる」




548: 2016/11/20(日) 22:19:12.99 ID:cSzg9iDr0

その頃、河越周辺で不穏な動きを見せる集団があった


「あの小泉花陽がここまで追い込まれるとは…」

「でもこの戦場で一番の大手柄を上げるのは私」

「必ず恩に報いて見せるよ」



「出陣!!」




549: 2016/11/20(日) 22:20:40.73 ID:cSzg9iDr0

遂に完成した音ノ木包囲網

河越城の花陽も徐々に窮地に追い込まれていく


この危機を脱する策はあるのか?

凛と真姫は間に合うのか?

そして謎の集団の正体は?


続く!!



550: 2016/11/20(日) 22:24:22.81 ID:cSzg9iDr0

そしてさらにこんなに投稿が遅れた原因と>>1の責任は!?

明日投稿される超短編 μ’sのみんなで>>1を糾弾するよ!にて明らかに!!


ホントすみません、まじで

554: 2016/11/21(月) 22:05:34.92 ID:kpsz06kO0

閑話休題

穂乃果「μ’sのみんなで>>1を糾弾するよ!」


始まり始まり


555: 2016/11/21(月) 22:08:24.75 ID:kpsz06kO0

海未「さて、軍議の時間ですが…」

真姫「その前にやらなきゃいけない事があるわね」

穂乃果「うーん、まぁ仕方ないかなぁ」

ことり「色々聞きたいこともあるしね」

絵里「まぁ本人も何か言い分があるかもしれないし」

希「納得いかなかったら戦国ワシワシハラキリバージョンやね」

にこ「…ポップだか物騒だかわかんないわね、それ」


凛「おーい!連れてきたよー!」

花陽「凛ちゃん!待ってぇ〜!」


海未「来たようですね」

真姫「では、始めましょうか」


海未「只今より今回の更新遅れに対する>>1への事情聴取を執り行います」

真姫「因みにカッコ内には簡単な翻訳が入るから読んでみてね」


1「高坂穂乃果様、そしてμ’sの皆様方、お久しぶりでございます(※はわわわ〜穂乃果ちゃん!μ’sのみんな!かわいい〜!!)」

穂乃果「さて、どこから聞いたら良いのかな?」

絵里「取り敢えず前回の更新後あたりからで良いんじゃない?」

希「そしたらその辺りから説明してくれる?」


1「ははっ、前回更新後河越防衛の策を練っていた折、不覚にも敵の奇襲に会い馬が重傷を負い申した(※ぼーっと車を運転してたらおかま掘られて車が中破)」

凛「凛知ってるよ、あれだけの事故で凹むどころか事故車の写真をツイッターにあげまくってたの」

花陽「でもそれって結構前の事だったような…」

1「その通りにございます」

1「問題はその後にございまする、馬を治療に出し某は徒歩にて行軍を再開、遂に河越防衛の秘策が見えたころ、再び敵の急襲を受けたのでございます(※仕方ないので歩って通勤しつつ、プロットが完成してきた時、今度は原チャリと女子校生が空から降って来たんです、マジで)」

にこ「…あんたどんだけついてないのよ」

1「しかし某も武士の端くれ、身体には大した怪我を負う事なかったのですが…情けなや、刀を折られ申した(PCとスマホが物故我た…)」

海未「武士が刀を折られるなど…情けない」

1「面目次第もございません」

1「しかも相手が錯乱し仲間を呼びつけ、決氏の抵抗虚しく捕縛され申した…(※なんか1人で大騒ぎし始めて警察から救急車から親から色々呼び出して、早く帰りたかったのに病院に連れていかれてなぜか入院させられたんですよ)」

穂乃果「うへ、なんか大変だね」

1「しかし某には次の戦場が待っており申す、あの様なザル警護、抜け出すのは容易いものでござった(※次の日の大事な用事の為抜け出したった)」

1「要件が済み次第愛刀を刀鍛冶に出したのですが…口惜しや、名工の手でも元には戻ることは叶いませんでした(※PCとスマホを修理に出しだけど、PCデータサルベージ不可(涙))」

1「急ぎであったため脇差しのみでありますが体裁を整え再びこの地に舞い戻った次第であります(※取り敢えず生き残ったスマホで書き直して会社からUPしたった)」


海未「なるほど、致し方なき理由があったのですね」

1「如何なる処分も甘んじて受ける所存でございますが、願わくば何卒、今の戦場にてお仕えさせて頂きたく…」

穂乃果「それじゃあ、次からまた頑張るということで」



1「……」ニヤリ




556: 2016/11/21(月) 22:12:44.11 ID:kpsz06kO0
希「ちょっと待って」

1「な、何か?」

希「おかしくない?だって事故起こしてから一週間くらいたってるやん?」

希「本気出したらもう少し早くUP出来たんやないかな?」

1「い、いや…その点はやはり申し訳ないと考えて…」

希「申し訳ないねぇ…シラを切るならしゃあないなぁ、ことりちゃん?」

ことり「うーん、実は私見ちゃったんだけど」

1「な、なにを、でございましょう」

ことり「病院抜け出してまで行ったトコって…スクフェス感謝祭だよね?」

μ’s『?!!』

1「な、なにを…おっしゃられて……」

ことり「待ってくれてる方達がいるのに遊びに行くのは少しどうかなって」

真姫「どういうことかしら!?」

絵里「説明、してくれるわよね」

1「い、いえ、そのこれには…その」


にこ「にこもぉ〜ひとつしってるんだけどぉ〜」

1「ファッ?!(※ファッ?!)」

にこ「あんたこないだ某所で短編UPしたでしょ、こっちを差し置いて」

1「…あ、あ、のそれは…」

凛「サイテー!かよちんのピンチに何やってんの?」

花陽「ちょっと…これはないかな?」

穂乃果「ヒドイよ!ケーキだと思ったらクリームの下が全部うぐいす餡だったくらいヒドイ!」

海未「…あなたは最低です!!」ボグー

1「………」ピクピク


557: 2016/11/21(月) 22:13:52.21 ID:kpsz06kO0

ことり「んー?でもこのままだと>>1さんが可哀想だから条件付きで許してあげたらいいんじゃないかな?」

1「み、南殿…(※こ、ことりちゃんマジ天使…)」

μ’s『条件?』

ことり「そう、UPするのが遅いのが悪いんだから今度から早くすればいいんじゃないかな?そうだなぁ…3日にいっぺんくらい?」

1「み、3日!?さ、流石にそれは…せめて10日ほど…」

ことり「3日」

1「い、いや…その」

ことり「3日」

1「戦略や戦術の調査だけでも時間が…」

(・8・)「3日」


1「い、一週間で…」

ことり「だって、みんなどうする?」

μ’s『賛成』


1「………ことりちゃんマジことりちゃん………」


という訳で短くても長くても一週間に一回は話を載せることになりました

何曜日かはまた決めます

今週からスタート

がんばるぞ(棒読み)

8・)「………」


よ、よーし!気合い入れちゃうぞぉ〜!



という訳でもう少しお付き合いください

宜しくお願いします



568: 2016/11/26(土) 21:51:37.09 ID:fGiB0rXg0

季節は晩秋


朝晩は冬の気配を感じさせる冷たい空気を運んでくるようになった

河越城の包囲も日々進み、打開策も見出せずにいた、そんな折



569: 2016/11/26(土) 21:52:46.45 ID:fGiB0rXg0

「花陽様!火急の案件でございます!」

花陽の寝所の前で小姓が慌てて声をかける


元より殆ど睡眠を取れずにいた花陽は

「入っていいよ、どうぞ」

優しく声をかけ小姓を部屋へ通した


「どうしたの?」

小姓の慌てぶりとは対照的に花陽は落ち着き払っていた


その様子は、まるで何が起こっているのかを既に知っているかのようであった



570: 2016/11/26(土) 21:54:50.03 ID:fGiB0rXg0

「幕府より音ノ木討伐令が発せられました!」

「武田や上杉、更には伊達、そして元々の同盟国である織田、まだまだ多数の大名が参加し一斉に音ノ木に攻め込んできております!」


「…遂にきたんだね」

ため息とともに花陽が呟くと今度は伝令が部屋の前まで走り込み声をあげた


「ご報告!西城門、及び東馬出し周辺で武田の伝令が騒ぎ立てております!」

「内容が内容な故、城内に動揺が広がっております」



571: 2016/11/26(土) 21:57:41.42 ID:fGiB0rXg0

「……一通り迎撃の後、集まれる者は全て二の丸へ集めて下さい」

「兵士だけでなく町の人たちも含めて、お願いします」

花陽はそれだけ伝えると着替えるから、と言い隣の部屋へ姿を消す


その背中を見つめる小姓はただ頭を垂れ

「仰せのままに…」

と答えるだけであった



572: 2016/11/26(土) 21:58:43.22 ID:fGiB0rXg0

周辺の小競り合いは午前中には方がついた


元々の目的が騒ぎ立てる事であったため大した抵抗もなく武田は引いたためだ

騒動の後、花陽の指示に従い手の空いた兵士や城内に匿われている住民達全てが集められた


それぞれに、今朝の武田の話がどうとか、やれ新しい作戦だ、反転攻勢だなど口にしながら花陽の到着を待っていた

少し間を置いて花陽が姿をあらわすと、そこにいる者の期待の眼差しが彼女に集中する


しかし彼女の口から発せられる言葉はその期待に添う物ではなかった



573: 2016/11/26(土) 21:59:52.27 ID:fGiB0rXg0

「皆様、此度の戦、厳しい戦いの連続ながら見事な働き、ありがとうございます」


花陽は深々と頭を下げる

「流石の武田も皆様の力を恐れ、ここ数日は手出し出来ずにいます」

「しかし我が城、いえ我が音ノ木は現在大変な危機を迎えております」


「今朝、武田が騒ぎ立てていた件、皆様も聞き及んでいることと思いますが、それらは全て事実です」


「幕府の勅命により、音ノ木は全国の大名に狙われることとなりました」

「この武田の攻撃もその一環です」


聴衆の騒つきが大きくなる

そんな中、花陽は話を続ける



574: 2016/11/26(土) 22:01:05.54 ID:fGiB0rXg0

「この戦、勝ち目はありません」


「この城には食料がもう無く、このままでは戦いの継続は困難だからです」


この言葉に先程の騒つきが嘘のように一瞬で静まり返る


「しかし私は戦うことをやめません」

「何故なら私は音ノ木が好きだから」

「μ’sのみんなやこの国の人達が大好きだから」


「そして私がμ’sだから」


そう言うと花陽は興奮を冷ますように深呼吸する



575: 2016/11/26(土) 22:01:48.63 ID:fGiB0rXg0


「住人の皆様にはこの城を脱出していただきます」


「その策はありますので機を見て実行します、ご安心を」


そう言うと花陽はもう一度頭を下げた



576: 2016/11/26(土) 22:02:47.17 ID:fGiB0rXg0

そんな中住民の一人が声をかける

「お奉行様…わしらをお見捨てになるのですか?」


花陽は顔を上げ必氏の表情で

「それはありません!必ず全員無事で脱出させてみます!」

と答えるが、他の住民からも不安の声が上がり始める


「土地も家も全て失っては生きる術がありません…」


「それも大丈夫、北条殿の支配地まで行けば悪いようにはなりません」

「いずれは必ずこの地に戻って来れるように取り計らっていただきます」

花陽は不安を払拭するように丁寧に答えていった



577: 2016/11/26(土) 22:03:54.93 ID:fGiB0rXg0

そんな中このような質問が飛んできた


「花奉行…我々が戻るその地は音ノ木なのでしょうか?」

「そこに花陽様はおられるのですか?」



「……………」


花陽は答えることが出来ない


そしてその無言は質問に対する答えでもあった



578: 2016/11/26(土) 22:04:40.33 ID:fGiB0rXg0


この答えに対する住民達の答えは



「…ならば我々は退避を拒否します」





579: 2016/11/26(土) 22:05:41.75 ID:fGiB0rXg0

「なっ?!それは認められません!」

予想外の答えに慌てる花陽


そんな彼女に住民達は想いを告げる


「この地が音ノ木となる前、我らの暮らしはそれはそれは酷いものでした」

「続く戦乱の中、食い物など食えなくて当たり前、木の根や土を食らって生き延びてきた者ばかりです」


「それが今ではどうでしょう」

「田畑は実り、子供らは笑いながら駆け回る」

「全ては音ノ木の、そして花陽様のお陰です」


「我々が生きてここにいるのはあなた様のお陰なのです」

住民達はそうだそうだと声を上げる



580: 2016/11/26(土) 22:06:40.79 ID:fGiB0rXg0

「ここに残っているのは年寄りや女子供ばかりです」

「しかし爺でも元々戦場を経験したものも多く、少しは役に立ちまする」

「女達も畑仕事に勤しんでおり、そんじょそこらの男どもにも負けません!」


「我々は音ノ木でなければ既にこの世の者ではなかったでしょう」

「そしてこれからもそうだと考えております」


「だからここに残り戦います!」

「お奉行様が認めてくれなければ外で一揆を起こしてでも戦ってみせます」


ざわつきは喧騒となり、広場は一種異様とも言える雰囲気となる



581: 2016/11/26(土) 22:07:27.40 ID:fGiB0rXg0

花陽は俯いて皆に問いかける

「……兵糧攻めは最も酷い攻城戦法、悲惨な末路以外ありえないよ…?」



「何度も言わさんでくだされ、花奉行」

「ワシらの命はアンタのモンじゃ!好きにせい」



582: 2016/11/26(土) 22:08:14.66 ID:fGiB0rXg0

「………わかりました」

「ただし!子供達だけは脱出させます」

「これは絶対条件です」


「みんなの命、私が預かるね」

「そして私の命も、みんなに預ける」



「何としてでも…勝つんだ!!」




583: 2016/11/26(土) 22:09:16.67 ID:fGiB0rXg0

河越城を守る総構え

音ノ木は全ての人々の心を繋げ、正に百万一心


絶望的な戦いの第二幕が遂に開かれる




584: 2016/11/26(土) 22:10:29.03 ID:fGiB0rXg0

その頃武田軍荷駄隊駐屯地では事件が起こっていた

「敵襲!?ここは安全なはず?」

「野盗か?迎え撃て!」


前線より遥か後方

兵糧を蓄えた荷駄隊が急襲される


「音ノ木か?!」

「いえ!違います!」

「黒頭巾で顔を覆っている為正体不明です!旗印はありません!!」


「強い…!こやつら一体!?」



585: 2016/11/26(土) 22:11:16.13 ID:fGiB0rXg0

混乱する武田軍を尻目に黒頭巾の頭領と思しきものは配下に命令する

「さぁ!手柄の挙げ放題だ!」

「全て奪い尽くせ!!」


「河越は近い!!ここで土産を頂いて一気に城へ突入するぞ!!」

『応!!』




586: 2016/11/26(土) 22:12:03.94 ID:fGiB0rXg0

そこに住む人々全ての力を合わせた新生音ノ木軍

勝ち目の無い戦いに挑む花陽はどう動く?


そして遂に行動を起こした謎の集団


さらに混沌を深める河越戦線

一体何が起こるのか?



次週に続く!!




591: 2016/12/03(土) 22:18:09.56 ID:y+iYo9YR0

翌朝


「じゃあ、お願いね」


「お任せ下さい」

朝霧に包まれる城から月夜衆を先導として護衛数名、そして子供達が脱出する


592: 2016/12/03(土) 22:19:33.93 ID:y+iYo9YR0

「これで一安心…かな」


花陽は胸をなで下ろすと同時に険しい表情を見せ

「さて…どうする、私…」


そう呟くと一人部屋の中へ姿を消すのであった



しかしその日の昼、そんな陰鬱な気分を吹き飛ばす事件が起こる



593: 2016/12/03(土) 22:20:59.33 ID:y+iYo9YR0

「花陽様!謎の集団が河越城に向かい突撃してきます!」

「どうやら武田軍に追われている模様!」


見張りからの報せに花陽は部屋を飛び出し情報を集める


「何者かわかる?」

花陽は月夜衆に問いかける


「恐らくは最近武田の小荷駄隊を襲撃している盗賊集団ではないかと…」


「小荷駄隊を?」


「はい、盗賊風情の割には統率が取れ、個々の力も非常に高く、更には全員が馬持ちと言う謎の黒頭巾集団です」



594: 2016/12/03(土) 22:21:44.48 ID:y+iYo9YR0

「頭領が女との噂もあり、μ’sの別働隊との話も上がっているようです」

「情報不確定の為報告が遅れました、申し訳ございません」


「大丈夫だよ、ありがとう」

花陽が頭の中を整理しようとした時、新たな情報がもたらされる


「花陽様!黒頭巾集団が城門付近で騒ぎ立てております!」


「早い?!今行きます!」

花陽は急ぎ物見櫓へ登り状況を確認する



595: 2016/12/03(土) 22:23:12.56 ID:y+iYo9YR0

門前では黒頭巾の頭領と思しき者が騒ぎ立てていた

「開門!かいもーん!!」

「小泉はなよー!私だー!あけろー!!」


「この声?まさか?!」

そう、この声には聞き覚えがあった


「反撃は禁止!い、急いて開門を…」

花陽が指示を出す直前


「えーい!面倒じゃ!突き破れ!突破じゃ!!」

言うが早いか城門の破壊を目論み始める


「うわわっ!待って!開けるから!」

「開門!急いで!あの子本当に突き破る気だよぉー!」


「誰か助けてぇ〜!!」



596: 2016/12/03(土) 22:24:37.14 ID:y+iYo9YR0

「小泉花陽!無事であったか?!」


黒頭巾集団は無事?河越城に入り武田の追撃を免れた

流石の武田軍も自ら城下に入ろうとする者などいなかった為である


黒頭巾集団の頭領はそのまま本丸まで突き進み花陽を見つけると先程の言葉を投げかけそのまま抱き着いてきた

側近には事前に正体を伝えていた為、何もなかったがそうでなければ大事になるところだ


余り深くものを考えない辺り、ウチの大名様と似てるな、などと考えながら声をかける


「久しぶりだね」



597: 2016/12/03(土) 22:26:02.14 ID:y+iYo9YR0

「久しぶりだね、ではない!」

黒頭巾はお怒りの様子


しかし次の瞬間には泣きそうな声で

「河越城での状況を聞いて、心配で心配で…」

「父上や大殿を説得しても動かず…」


「でもやっとここにたどり着けた!」

「星空凛や西木野真姫より早かったぞ!」

今度は頭領は踏ん反り返って自慢する


花陽は、そんなコロコロと変わる黒頭巾の態度に苦笑しながらもう一度声をかける

「そろそろその黒頭巾、外してもいいんじゃないかな?」


「おお!忘れていた!」

そう言って黒頭巾を外す頭領


するとそこからは周りの人間全てが息を呑むほど美しい美女が現れた



598: 2016/12/03(土) 22:27:02.05 ID:y+iYo9YR0


「ありがとう、甲斐ちゃん」


彼女の名前は成田甲斐

北条家の誇る姫武将である



599: 2016/12/03(土) 22:28:08.24 ID:y+iYo9YR0

数年前の事

成田甲斐は常に退屈だった


毎日毎日つまらない稽古事ばかり

でも仕方がない

私は女なのだ

いつか何処ぞの知らない男に嫁がされ、子を産み、そして朽ちていくだけの存在


本当は外で思いっきり暴れたい

自分も武士として儚き命を輝かせたい


そんな気持ちは押し殺さねばならない

私は女だから、そんな事は考えてもいけない


だから心を頃したのだ

故に私は氏人だった



600: 2016/12/03(土) 22:29:35.66 ID:y+iYo9YR0

甲斐が年頃となり、そろそろ縁談などと言う下らない話が聞こえた頃、城内はある話で持ちきりだった


「武蔵に新たな勢力が旗揚げしたそうな」

「ふむ、戦も強く連戦連勝、民には温情厚く、正に飛ぶ鳥を落とす勢いとの事」

「しかもその主力は美しき9人の姫武将だそうな」

「『みゆうず』などと名乗っておるとか」


…えっ?

姫武将?


女ながら刀を持ち、戦場駆け巡り、しかも強く美しい

そこには甲斐が求めていた世界があるように感じた


更に聞けば音ノ木なるその国は旧態然とした物の考えをせず、聞いたことのないような新しい方法で国を治めているようだ



601: 2016/12/03(土) 22:30:50.59 ID:y+iYo9YR0

甲斐は初めてこの世に色が付いたように感じた

女だからと諦めていた世界

それらを全て否定するμ’sという存在


そうか…

いいんだ

私みたいな考えの人間がいたっていいんだ!



「父上、お話が御座います」


甲斐は己が心の内を父に打ち明けた

当然難色を示す父であったが、偶々その話を聞いた北条家重臣の一人が助け舟を出した


その理由は音ノ木対策

同じ姫武将がいた方が有事の際役に立つ事もあるだろうとの理由だった


602: 2016/12/03(土) 22:32:03.01 ID:y+iYo9YR0

こうして誕生した姫武将 成田甲斐は努力と研鑽の結果、五色備に次ぐと言われる活躍をみせた

そして遂に音ノ木への同盟の使者としてμ’sと対面することになる


初めてμ’sに会った甲斐は己の理想と現実の違いに戸惑った

連戦連勝、坂東無双とまで言われる武将達

さぞや男勝りな者達と勝手な想像をしていたが、実際会ってみれば自分とほぼ同い年のものばかり


そして優しく、華やかで、楽しい、そんな姫達だった


人はこんなに光り輝く事が出来るのか

こんなの私は知らない


凄い!

世の中はこんなにも明るく輝けるんだ!


衝撃を受けた甲斐はその後も事あるごとに音ノ木を訪れμ’sと親交を深めていった


特に歳の同じ花陽、凛、真姫とは懇意になりお互い親友と呼ぶ間柄になっていた



603: 2016/12/03(土) 22:34:29.06 ID:y+iYo9YR0

そんな中での今回の戦


大殿も父も動けず、気持ちだけが急かされる毎日

苦境に立たされている友、いや私に命を吹き込んでくれた恩人の力になりたい


甲斐はある日の評定でこう発言した

「皆々様方にご報告申し上げます」


「私、成田甲斐に翻意あり」

「一大事となる前にいち早く国外に追放されるべきと進言いたします」



604: 2016/12/03(土) 22:35:30.69 ID:y+iYo9YR0


「父上も大殿も直ぐに賛成してくれた」


「故に私は宿無しだ、拾ってくれ小泉花陽!」

にこやかに重い事をさらっと言うものだ、と花陽はため息をつきつつ感心する


そして、そこまでしてここに駆け付けてくれた事に純粋な感謝の気持ちも大きい

当然答えは


「よろしくね!甲斐ちゃん!」



605: 2016/12/03(土) 22:36:43.44 ID:y+iYo9YR0

甲斐はうむと頷いて

「土産も持ってきた!」


「土産ってあの門のところの大荷物かな?」


「そうだ!武田から奪った兵糧だ!10日は持つだろう」


「すごい!ありがとう!」


「我らにかかれば何と言うことはない」

「もし花陽に拾ってもらえなかったら山賊にでもなろうかと思ったほどだ!」


自信満々にそう言う甲斐に花陽は苦笑いで

「それは勘弁して欲しいかな…?」



606: 2016/12/03(土) 22:37:54.99 ID:y+iYo9YR0

「ところで甲斐ちゃんの連れてる人達は?」


追放なら部隊は連れてこれないはずである

しかし相当な手練れの集団だ

この人達は一体?


「うむ!餞別がわりに地黄八幡が貸してくれた!」

「ただし貸りただけだから全員無事帰さないと私の首が危ういのだ!」

「中々際どくて格好よいであろう?」


「綱成さんの精鋭部隊…なるほどさすがです」

「何かあったら私の首も危ういね」

花陽もクスリと笑いかえす



「でもこれなら…いける!」




607: 2016/12/03(土) 22:38:37.70 ID:y+iYo9YR0


花陽は小姓に命じ各隊代表を広間に集めた


そこにいるのは本来の正規軍だけでなく、町衆の代表や農村部の長老、女衆も姿を見せる

今や河越を守る大事な仲間達である


「軍議を開始します」

小姓の宣言により軍議が始まる



608: 2016/12/03(土) 22:39:49.38 ID:y+iYo9YR0

花陽はいつもの柔らかな表情ではなく、引き締まった表情

それは彼女の決意と共に心の弱さを曝け出していた


しかしそれは周りの全員が望んだ事

彼女のその表情は周りを信頼している証であった


「現状と今後の作戦について伝えます」

「現在我々は武田軍により完全に包囲され、補給もままならぬ状況です」

「このままでは城内全ての人間が飢え氏にを待つこととなります」


「でも我々にはまだ希望が残されている」



609: 2016/12/03(土) 22:41:27.93 ID:y+iYo9YR0



「それはこの河越城」



「幸いにもこの城はまだ三の丸迄武田軍の侵入を許していません」

「これによりこちらから討って出ることも可能です」


「花陽様、まさかこの戦力で武田に正面から?」

「如何に士気高しといえども流石にそれは…」


口々に不安を口にする将達に花陽は笑顔で

「大丈夫だから最後までキチンと聞いてね?」


将達は住民達の笑い声もあり二つの意味で顔を赤くする


「続けるよ?」

「流石にまともでは勝てません」


「だから策を講じました」




610: 2016/12/03(土) 22:42:00.97 ID:y+iYo9YR0



「名付けて忍辱の計」




611: 2016/12/03(土) 22:42:36.68 ID:y+iYo9YR0


「勝つのは私達です」


「音ノ木の強さ、しっかとその心に刻み込んで頂きましょう」



612: 2016/12/03(土) 22:43:22.54 ID:y+iYo9YR0

新たに甲斐姫を仲間とした花陽

音ノ木の力を結集し遂に反撃の狼煙を上げる

その為の秘策 忍辱の計とは



次週に続く!




617: 2016/12/10(土) 10:54:48.15 ID:NjSA8tuw0

「じゃあ甲斐ちゃん、よろしくね」

「大変な仕事だけど甲斐ちゃんなら出来るって信じてるから…」


朝日も昇らぬ宵闇の中、花陽は出陣する甲斐を見送る



618: 2016/12/10(土) 10:55:42.85 ID:NjSA8tuw0

「花陽!任せてくれ!」


「…そして信頼してくれてありがとう」

「必ず勝って、再び歌や踊りをともに楽しもう…」


そう言うと、恥ずかしそうにプイと顔を背け

「出陣」


甲斐の部隊は闇夜に消えていく



619: 2016/12/10(土) 10:57:12.84 ID:NjSA8tuw0

「…月夜衆のみんな、いるね?」


「はっ、ここに」

暗がりに声をかけると今まで人の気配すらなかった場所に数名の人物の姿が現れる


「加藤段蔵については任せます」

「今回の作戦は情報が全て」

「大丈夫、みんななら出来るから」


「μ’sの皆様はお館様を含め、難度の高き依頼が多くございまする」

表情は見えないが声からは大凡の感情が伺い知れる


「なればこそ、我らの士気も高まらざるを得ません」

「必ずや御命令遂行致しましょう」


「では…」

あっという間に消える気配


「流石、希ちゃんの部隊だね」



620: 2016/12/10(土) 10:58:33.02 ID:NjSA8tuw0

「さて、他のみんなは準備出来てるかな?」

花陽が振り返るとそこには男衆と女衆に別れた住民達の姿


「全員準備万端じゃ」

「いつでもかかってこいだよ!」

口々に意気込みを口にする


「では打ち合わせ通り、指揮はお願いしますね、お爺ちゃん」

花陽は代表の老人に告げる


「任せてくだされ、我らまだまだ若いもんには負けませんて」

花陽は笑顔でその言葉でへの答えとする



621: 2016/12/10(土) 10:59:23.67 ID:NjSA8tuw0

「そして、女衆の指揮は…出来るね?」

花陽の視線の先にいるのは…


「は、はい!お任せ下さい!」

裏返った声で返事をする小姓の姿があった



622: 2016/12/10(土) 11:00:57.70 ID:NjSA8tuw0

緊張が服を着ているかのような様子の小姓を花陽は優しく抱きしめ

「大丈夫、あなたなら出来るよ」


「だってずっと私の事、見てたでしょ?」

「初めて自慢しちゃうけど、私、結構すごいんだよ?」


「だから大丈夫…」


「は、花陽様…」

顔を赤くしながらも心が落ち着いていくのを感じる小姓に対し


「大将様!顔が赤くなってるよ!」

「本当に大将様は花奉行が大好きだねぇ!」

女衆からやいのやいのと声がかけられる


「こ、これは…ち、違います!花陽様の叡智をお借りする儀式のようなものです!」

恥ずかしさから慌てて言い訳をする小姓



623: 2016/12/10(土) 11:02:17.11 ID:NjSA8tuw0

「ふふっ、ねっ?もう大丈夫でしょ?」


「…花陽様」

「はい!お任せ下さい!」



「では、作戦開始!」


花陽の合図とともに遂に反攻作戦『忍辱の計』が開始される




624: 2016/12/10(土) 11:03:21.48 ID:NjSA8tuw0

朝日がもうすぐ顔を見せようと東の空を染め始めた頃、武田河越包囲軍西部部隊は大混乱に陥っていた


「敵は少数だ!慌てず討ち取れ!!」

「賊の狙いは兵糧だ!荷を守れ!」



625: 2016/12/10(土) 11:04:27.21 ID:NjSA8tuw0

甲斐の部隊は敵後方からの夜襲に成功

そのまま武田軍荷駄隊の襲撃を開始した


「さあ奪え!河越への土産は多い方が良いからな!」

「持てぬ分は焼き払え!」



「…何か凄い悪者みたいだが大丈夫か?私達?」

「ご安心下され!いつもとあまり変わりませぬぞ!!」


「納得いかないがまぁ良い!暴れまくれ!」


『応!』

626: 2016/12/10(土) 11:05:28.53 ID:NjSA8tuw0

しかし時が経つと武田軍も態勢を整え反撃の構えを見せる

数に勝る武田軍は甲斐隊を取り囲もうと展開する

その時



「今です!突撃!!」




627: 2016/12/10(土) 11:06:56.87 ID:NjSA8tuw0

「何者?!」

「小泉隊です!本隊が突撃してきます!」

「展開間に合いません!!」


背後の甲斐隊への反撃の為、本隊の守りが手薄になった所に突撃する花陽隊

「しまった!!」

再び混乱する武田軍

本隊が機能を失い総崩れの様相を見せた、その時


「援軍です!」

「武田軍の援軍が来ます!!」


物見の早馬から報告を受けた花陽は

「よし!全軍退却します!!」


あっさりと退却指示を出す



まるで嵐のような一瞬の出来事であったが武田軍の被害は大きく西部包囲部隊は再編成を余儀なくされた




628: 2016/12/10(土) 11:07:39.23 ID:NjSA8tuw0


この日を機に河越からの夜襲部隊が数日に渡り武田軍宿営地を襲い続けた


人的被害もさることながら兵糧や武器を奪われ、または破壊される事が問題となった



629: 2016/12/10(土) 11:09:04.48 ID:NjSA8tuw0


武田本陣


内藤昌豊はこの状況を分析していた

「小泉花陽、包囲部隊の精神的疲労と合わせて兵站の破壊を狙ってきたか」

「しかしこの作戦は諸刃の剣、自ら窮地を曝け出しているようなものだ」


「そちらがそう来るのならこちらも仕掛けさせてもらう」

そう言うと伝令に作戦を伝え、各隊に命令を出す


「次は河越城陥落ぞ」



そしてその機会は数日後訪れることとなる




630: 2016/12/10(土) 11:10:16.67 ID:NjSA8tuw0

「敵襲!黒頭巾だ!」

「荷を守れ!奴らの狙いはこれだ!」


夜襲も繰り返せば対応されるもので、甲斐隊が襲いかかった部隊は大きな混乱をする事なく反撃にかかる


「ふん!流石の武田のぼんくら供でも学習するか」

「それならばよし!正面より切り崩してくれるわ!」


果敢に敵部隊に斬りかかる甲斐

しかし多勢に無勢

徐々に追い詰められていく


「囲い込め!一網打尽だ!」

数に物を言わせ包囲を試みる武田軍



631: 2016/12/10(土) 11:11:33.30 ID:NjSA8tuw0

左右に展開しようとしたその瞬間


「好機到来です!突撃!!」

暗闇から花陽隊が一気に襲いかかる


「ちっ!そんな所に隠れていたか?!」

だが挟まれる形となった武田軍に混乱の様子はない

困惑する花陽隊に荷駄隊護衛兵が言い放つ


「かかったな!小泉花陽!」

「貴様らがこの荷駄隊を襲撃する事はわかっていたぞ!」


「なっ?!」

花陽の驚く表情に満足気に笑う武田の兵士達


「今頃河越城はもぬけの殻であろう」

「肉を切らせて骨を断つ、兵法の基本だ」



632: 2016/12/10(土) 11:13:11.46 ID:NjSA8tuw0

その様子を見た甲斐は

「かかったな!武田のぼんくら供!」

笑いながら満足気に言い放つ


花陽も同じ様な表情

「河越城がもぬけの殻?多分『飛び加藤』の情報かな?」

「情報を伝えるって難しいね、私も口下手だからわかるよ」


「だから特別に教えちゃいます」




「今あそこはね、歴戦の強者達の巣窟なんだよ」




633: 2016/12/10(土) 11:14:18.92 ID:NjSA8tuw0

その頃河越城では


「…な、なんだ…どう言う事だ?」


「もぬけの殻どころか何処に行っても敵襲が止まぬ、話が違うぞ!」


武田軍河越城突撃隊は恐怖していた



634: 2016/12/10(土) 11:15:24.29 ID:NjSA8tuw0

三ノ丸城門を難なく突破し城下に侵入した途端そこかしこから様々な攻撃を受ける

反撃を試みようと接近すれば罠が仕掛けられ、さらに路地裏に誘い込まれ撃破される

恐怖心を煽ろうと脅しをかけても逆に士気を上げる始末



あれだけいた部隊は今何人残っている?

ここには老人や女しかいないのではないか?


敵は何処だ?

我々は何と戦っているのだ?



635: 2016/12/10(土) 11:18:40.19 ID:NjSA8tuw0

「若いのう、残念じゃがもう手遅れじゃ」


「この河越城は力では落とせん」

「今は無き我が主、道灌様の知恵と、新たな主、そして我らが友、花陽様の叡智の結晶」


「貴様らの相手は我らだけではない」

「『河越城』こそが貴様らの相手なのだ!!」



636: 2016/12/10(土) 11:19:59.96 ID:NjSA8tuw0

「今じゃ!家屋を倒せ!」

『おう!』


掛け声とともに路地の武田軍に向かい周囲の家が倒壊する

逃げ惑う兵士に向かい煮え湯や石が降り注ぐ


完全に崩壊した部隊に向かい駆け行く騎馬

瞬く間に敵将を討ち取って行く


「…うむ、馬子にも衣装とはよく言ったもんじゃい」

「流石、花奉行が可愛がるだけあるわ」


637: 2016/12/10(土) 11:21:01.44 ID:NjSA8tuw0

騎馬隊の先頭にはあの小姓

勇敢にも先頭に立ち、見事に農民兵を統率し数倍の武田軍を壊滅状態に追い込む


小姓は逃げて行く兵に向かい叫ぶ

「帰り内藤昌豊に申し伝えよ!」


「この河越には強兵が集っている!城が欲しくば総掛かりで来るがよい!」

「ただし一歩足を踏み入れれば最後、音ノ木の力が貴様らを打ち倒すであろう!」



「さあ皆さん!勝鬨をあげましょう!」

「えい!」

「えい!」


『おう!』




638: 2016/12/10(土) 11:22:11.33 ID:NjSA8tuw0

この河越城の戦闘は内藤昌豊にとっても衝撃であった


まさか農民如きにしてやられるとは

やはり迂闊に手を出せばやられる


元より長期戦は覚悟の上だ

城の食料もそうは持つまい


音ノ木に援軍は来ない

北条も動く気配はない

ここを落とせば一気に音ノ木本城を狙えるのだ


「一旦部隊を再編成する」

「兵糧攻めを本格化させるぞ」



639: 2016/12/10(土) 11:23:45.82 ID:NjSA8tuw0

遂に反攻作戦を開始した音ノ木軍は総力戦で敵に立ち向かう


対して兵糧攻めの強化を図る武田軍


花陽の次の一手は何か?



次週に続く!



644: 2016/12/17(土) 10:41:15.76 ID:IdfcDlzO0

数日間の渡り小さな小競り合いが続いたものの大きな動きもなく戦況は硬直状態を保っていた


そんなある日

遂に内藤昌豊が大きく動く



645: 2016/12/17(土) 10:42:06.72 ID:IdfcDlzO0

「花陽様!武田に動きあり!」

「各城門や馬出しに向かい一斉に進軍してきます!」


伝令の報告を受けた花陽は即座に命令を下す

「西側は城下に誘い込み迎撃、東は堀を越えさせなければ大丈夫、こちらは出撃のそぶりを見せておけば相手は攻めてこないから」


「みんな、慌てないで行動して下さい」

「河越城が付いていますから」


花陽の指示は皆に安心感を与える

城内の者たちは各々持ち場に散って行く



646: 2016/12/17(土) 10:44:25.51 ID:IdfcDlzO0

一人になった花陽は再び状況を整理する


力攻め?いや違う、もしそうならば部隊の展開がおかしい

こちらを完全に封じ込める作戦か…


悩む花陽の元へ再び伝令の報告が入る

「武田軍が城門前にて櫓の設営を開始しました!」

「各隊阻止に動いていますが敵方の攻勢激しく難航!」


「ご指示を!!」


なるほど

武田はこちらの完全な封じ込めを選択したか


櫓を組まれたら三ノ丸と出丸は無効化されてしまう

城の防御を大きく削られてしまうのはよろしくないね


花陽は伝令に指示を伝える

「各隊に連絡、なんとか設営を阻止して下さい」

「弓矢が扱えるものには火矢を使うように」



647: 2016/12/17(土) 10:46:44.26 ID:IdfcDlzO0

しかしここで正規軍の少なさの弊害が見えてきた


弓矢は扱いにある程度の訓練がいる武器だ

城内に引き込めば様々な攻め手で翻弄出来る


しかし野戦となれば話は変わる

そこには兵の練度が大きく関わってくるからだ


練度の高い直属兵は数が少ない

甲斐の部隊は遊軍として城外に出撃中

城を封鎖されれば連携も取れず戦力は半減する


元より兵士自体が圧倒的に少ないのだ


内藤昌豊もそれを分かっているのだろう

だからここまで大胆な行動に打って出た



648: 2016/12/17(土) 10:47:26.03 ID:IdfcDlzO0


「…これは少し厳しいかな」


花陽は珍しく厳しい面持ちで独り呟いた



649: 2016/12/17(土) 10:49:36.22 ID:IdfcDlzO0


それから数日間城の周りで様々な妨害工作を講じた音ノ木軍であったが決定的な効果も見られず、遂には各所に武田軍の櫓が設営された


櫓は城門の中まで確認できるほど高く、討って出ようにも瞬く間に敵兵が集中し、思うような行動がとれない

内藤昌豊は城内に侵入することなく三ノ丸を完全に沈黙させる事に成功したのだ


武田軍はそれから完全に動きを止め、包囲に徹するようになった

武田に動きがない以上、音ノ木も動く訳にもいかない

甲斐の部隊も様々な工作を試みている模様だが、いかんせん数が少なすぎるため思うような効果を得られぬ様子



こうして河越城の完全封鎖は完成したのである




650: 2016/12/17(土) 10:51:35.81 ID:IdfcDlzO0


そのまま膠着状態に陥り半月が過ぎた


士気の高かった住民兵も包囲の重圧による精神的疲労と食料不足による肉体的疲労が重なり城内では愚痴を聞くことが多くなった

それでも皆は花陽を信じ勝利の為にひたすら辛さを耐え抜いていた


音ノ木は時折散発的な抵抗を見せるがその度に簡単に撃退され城に追い返されていた

「まるで訓練だな!」

「まぁ年寄りや女相手では訓練にもならんがなぁ!」

武田軍はこの様に嘲笑い城に向かい野次を飛ばした



その様な絶望的な状況が更に一週間程続いた時、戦況を揺るがす事件が発生する




651: 2016/12/17(土) 10:53:19.39 ID:IdfcDlzO0


「ほらよ、飯だ」


乱暴に置かれる椀の中には僅かな稗と葉物が入った汁のみ

ここは河越城内の一角にある牢獄

そこには今回の戦闘で捕虜となった武田兵が投獄されていた


その中には一条信龍や三枝守友の顔もみえる


椀の中を見た信龍は見張りに声をかける

「随分と質素な生活となったな」

「侘び寂びの世界にでも没頭しておるのか?」


捕虜達の疲れた笑いが牢内に広がる



652: 2016/12/17(土) 10:55:26.13 ID:IdfcDlzO0

「貴様ら…食わせてもらえるだけありがたいと思え!」

「花陽様のお慈悲が無ければ貴様らの首などとうの昔に飛んでおるのだ!」


見張りの一人が声を上げる

本来は見張りが牢内の者と言葉を交わすことは禁じられているが、この追い詰められた状況に精神的に参っているのであろう

声を荒げて威嚇する


「…まぁそう怒るな、儂は貴殿らの心配をしておるのだ」



653: 2016/12/17(土) 10:56:45.88 ID:IdfcDlzO0


「心配だと…?」


「その通り、まず貴殿の言う小泉花陽」

「確かにこの国の豊かさ、非常に優秀な者であることは間違いない」

「しかし忘れてはならぬ、今の過酷な現状を作っているのもその小泉花陽である事を」


「貴様!花陽様を侮辱するか?!」


「まぁ、落ち着きなされよ」

「考えてもみよ、小泉が籠城などしなければこの様な事には至らなかったのだ」


「それは貴様らが攻め入ったせいであろうが!」


「その通り、しかし戦いの選択をしたのは小泉だ」




「そしてなぜ戦いを選択したのか」




654: 2016/12/17(土) 10:58:25.86 ID:IdfcDlzO0


「それは所詮奴もただの欲望にまみれた人間だからだ」


「ここを失えば富や名声が失われる、簡単に言えば食いっぱぐれだ」

「その証拠に今奴はどこで何をしておる?」

「安全な本丸の奥で命令を出しているだけではないのか?」


「そ、それは違う!花陽様は我らのために智慧を振り絞っておられるのだ!」


「我らの為…か」

「貴殿らを思うのであれば既に降伏しておるのではないのか?」

「貴殿らの苦しみより己が命の方が大事なのだ」

「何とも酷い事よ…」


「そ、そんなことは…」

見張りにみえる明らかな動揺

信龍は諭す様な声で語り続ける


「武田とて鬼ではない、降伏すればそのまま上が変わるだけで庶民は平和に暮らせるものを…」



「………何が言いたいのだ」



「いや、ただの戯言よ」

「我らであればこの様な事にはならぬであろうと皆で話しておったのだ」


「ただ、我らが本陣までたどり着けばこの窮状やお主達の気持ちをお伝えする事はできる」


「そして皆を救う事ができる」



655: 2016/12/17(土) 10:59:41.64 ID:IdfcDlzO0



「…お主、皆の救世主になってみぬか?」




656: 2016/12/17(土) 11:00:32.90 ID:IdfcDlzO0

その数日後


「捕虜が逃げたぞ!!」

「探せ!どこだ!」


夕暮れというには少し遅い時間

河越城内に怒号が響き渡る



657: 2016/12/17(土) 11:01:38.65 ID:IdfcDlzO0

花陽の部屋に小姓が息を切らしてやってくる


「花陽様!一条信龍、三枝守友ら武田の捕虜達が脱走しました!」

「どうやら城外まで脱走した模様!」


報告を受けた花陽はふと目を瞑りふぅといきを吐く

「…遂にきたね」

「城内のみんなに伝えて」



「明日武田軍の総攻撃があるからって」




658: 2016/12/17(土) 11:02:43.60 ID:IdfcDlzO0


一方武田軍本陣


脱走に成功した一条信龍達は城内の様子を報告

数名の内通者も確保した旨を伝える


約一月に渡る包囲により武田兵達にも厭戦機運が生まれ始めた頃合いである


「この機を逃す手はなし」

内藤昌豊は遂に決断する



「明日河越城に総攻撃を開始する」




659: 2016/12/17(土) 11:03:38.51 ID:IdfcDlzO0


その夜は数週間ぶりに河越城から飯炊きの煙が見えた


「小泉花陽、我らの思惑を知るか…」

「最後の飯だ、楽しむがよい」



河越籠城戦最後の時はそこに迫っていた




660: 2016/12/17(土) 11:04:29.94 ID:IdfcDlzO0

窮地に追い込まれた花陽

武田軍は最後の総攻撃を開始する


このままなす術なく陥落してしまうのか?

それとも…



次週、遂に決着?!




661: 2016/12/17(土) 11:06:58.30 ID:IdfcDlzO0

来週は更新日曜になるかも…




|8・)…



が、ガンバります!!

668: 2016/12/25(日) 04:48:39.78 ID:wa5dsuNR0

翌日

夜明けと同時に戦いの火蓋は切って落とされた


武田軍は東側の出丸を強襲

馬出し堀まで一気に押し寄せる


対する音ノ木軍は弓、鉄砲で応戦

激しい応酬が繰り広げられる


一方西側では音ノ木軍が先制

櫓に対し火矢と奇襲をもって攻撃


それに呼応して武田軍が動く形となった

櫓の半数を無効化された武田軍は数に任せてそのまま城下へ向かい進軍を開始する


城下に侵入を試みる武田軍に対し音ノ木軍は激しく抵抗

これまでと違い侵入後の迎撃ではなく城門付近での戦闘となった



669: 2016/12/25(日) 04:49:51.12 ID:wa5dsuNR0

「出丸はあと一歩の所で堀を渡りきれません」

「城下では音ノ木の抵抗激しく一進一退!趨勢未だ流動的です!」

「南方待機部隊が追撃の許可を求めています!」


武田軍大将内藤昌豊の元へ次々と戦況が報告される

「攻撃の手を緩めるな」

「数はこちらが圧倒的に上なのだ、必ず綻びが表れる」

「後詰はまだ待機、直ぐに出番が来る」



670: 2016/12/25(日) 04:51:16.04 ID:wa5dsuNR0

昌豊は指示を出すと腰掛けに座ったまま目を閉じる


出丸の攻略は想定内

正規兵を釘付けに出来ている


しかし三ノ丸攻略は想定外だ

即席の兵と侮った訳ではないが練度の高い行動をとっている


「なるほど…」

包囲して数週間、無駄と思われる散発的な反撃


その目的は兵の鍛錬であったか

その直前に行われていた夜襲は単なる兵站の破壊や兵の士気を削ぐだけでなくこの為の布石

小泉花陽も決戦に向けて準備を整えていた訳か…


「しかしそうは上手くいかん」

「付け焼き刃では武田の強兵を切ることはできん」



671: 2016/12/25(日) 04:53:07.10 ID:wa5dsuNR0

各地で続く激しい戦いに動きが出たのは日も高く登った正午前の事


「多田隊が城下への侵入に成功!」

「櫓部隊との連携により徐々に敵を押し込んでいます!」

伝令が武田本陣に飛び込んで来る


「よし!二番隊、三番隊は多田隊の援護に回れ!」

「生き残った櫓は攻勢を強めよ!」

「城門の攻撃隊は各隊突破を目指せ!」


矢継ぎ早に指示を出すと馬廻衆にも声をかける

「戦闘準備を整えよ」


「しかし…ここは御大将が出る場面ではないと思われますが…」

怪訝な顔で確認する


「我らが対峙するのは音ノ木最強の小泉花陽ぞ」

「奴が何事もなくただ攻撃されると思っておるのか」


「来るぞ…」


その言葉を合図としたかの様に

「敵襲!本陣目掛け突っ込んで来る部隊があります!!」


「黒頭巾隊です!真っ直ぐこちらに向かってきます!!」



672: 2016/12/25(日) 04:54:42.33 ID:wa5dsuNR0

「止まるな!私達が止まったら花陽達がもたない!」

「突撃!!」


『応!!』


甲斐隊は本陣付近の部隊が動くのを見て突撃を敢行

距離のある場所からの出現であったが騎馬の機動力を生かし瞬く間に本陣に迫る


「慌てるな!数は少ない!」

「鶴翼!矢を射て追い払え!」


内藤隊が甲斐隊に正対する



673: 2016/12/25(日) 04:56:45.32 ID:wa5dsuNR0

次の瞬間


「今です!突撃!!」

「狙うは大将内藤昌豊の首一つ!!」


茂みの中がら現れる旗印は


「八巻の稲穂!」

「小泉花陽です!!」


「このままでは側面を突かれます!」

「ご指示を!」


慌てる側近

しかし昌豊は落ち着き払いこう指示を出す

「本隊はこのまま黒頭巾を攻撃、撃退せよ」


「しかしそれでは…」


「慌てるなと言っておろう」

「この程度は織り込み済みだ」


不敵に笑う昌豊

「鏑矢を放て!」


命令通り馬廻衆は鏑矢を放つ


風切り音が戦場に響く



674: 2016/12/25(日) 04:58:13.25 ID:wa5dsuNR0

一瞬の静寂ののち


「囲い込め!小泉を討て!」

『応!!』


まるでこの事を見通していたかのように出現する援軍

瞬く間に花陽隊と甲斐隊が包囲される


「見破られた?!そんな!」

声をあげ驚愕する花陽に昌豊が話しかける


「小泉花陽!ここまでの戦い見事であった!」

「だがここまでだ!昨日の夜の飯炊きの明かり、今までの窮状からしても多すぎたな!」

「夜影に乗じ出陣する人影も把握している」


「小細工が過ぎたな!小泉花陽!」

「覚悟せ『…ちょっと、話が長いんだけど』



675: 2016/12/25(日) 05:00:27.68 ID:wa5dsuNR0

昌豊の話を遮るように一人の兵が不満気な声を上げる

兵は不満を更にぶつけるように話し出す


「全くさっきから聞いてれば花陽花陽って…」

「いい加減気付きなさいよね、流石に花陽でもこんなちっこくないわよ」

兵が指差す方にいるのは確かに姫武将だが


「小泉の小姓!影武者か!」


「あと考えても見なさい、あの小泉花陽がそんな簡単に裏見せると思う?」


「無礼千万な物言いだが…」
「貴様…何者だ?」



676: 2016/12/25(日) 05:01:40.82 ID:wa5dsuNR0

「この陣羽織を見てそう聞かれるなんて、私もまだまだねぇ…」

「やっぱり変な二つ名のせいかしら?」

「にこちゃんにもっとかっこいいの考えてもらわなくちゃ」


「その陣羽織…なるほど」

「赤より紅き紅蓮の炎、その知恵の焔は全てを飲み込む」



「『緋色の孔明』西木野真姫か」




677: 2016/12/25(日) 05:03:07.94 ID:wa5dsuNR0

「まさかここに援軍が現れるとは…」

「しかも大物、上杉はどうした?放っておいても良いのか?」


「あんなのμ’sの敵じゃないわ」

「そんなことより自分の心配したら?」


「心配とな?」

「緋色の孔明、この状況をもって心配すべきは己が命ではないのか?」

「それともこの人数に囲まれ無事で済むとでも思っておるのか」


「多勢に無勢って中々経験したことないのよ」

「だって真姫ちゃん天才だから、まずそんな状況にならないからね」

「でも一回やって見たいことがあったのよ」




「火牛の計って知ってる?」




678: 2016/12/25(日) 05:06:29.24 ID:wa5dsuNR0


「花陽を散々いじめてくれたお礼たっぷり味わってもらうわよ」


真姫の言葉を合図に一斉に馬車が方々へ走り出す

完全包囲を保っていた武田軍は避けることも出来ず馬車を破壊していく


そして荷台から現れたのは


「猪だ!突っ込んで来るぞ!」


荷台に乗せられていたのは数十頭猪の猪

興奮した猪は四方八方にひたすら突撃を繰り返す


「来るなっ!避けろ!!」

「矢を射かけろ!!」

「馬鹿者!この様な所で矢を射るわけにはいかん!」



679: 2016/12/25(日) 05:10:09.46 ID:wa5dsuNR0

「ふむ、派手さに欠けるけどまぁまぁね」


「では攻撃開始」

混乱を見た真姫は攻撃を指示

混乱に拍車をかける


「馬鹿者が!慌てるな!」

「陣形を保て!我らの優位は変わらんのだ!!」


「落ち着いて敵に集中せよ!!」

昌豊は陣太鼓をもって全軍に再指示

練度の高い本隊から徐々に体制を立て直す

「包囲しているのはこちらだ!覚悟せよ!!」


しかし真姫はその様な事も気にせずといった風に淡々と話を続けた

「あぁそうそう、因みにもう一つ忠告なんだけど…」


「あなた達、東の出丸攻撃してるでしょ?」

「あそこの堀に橋なんてかけちゃ駄目よ?」



680: 2016/12/25(日) 05:11:48.69 ID:wa5dsuNR0

「何を言っておるか?もう遅い、今頃は陥落しておる頃だろうて…」


「あっそ、知らないわよ?」

「あの中には遊びたくて遊びたくてうずうずしてる跳ねっ返りの猫がいるのよ」


「ただあなた達が花陽を苛めすぎたから多分今頃虎になってると思うけど…」


「何を…?」

昌豊は真姫の言葉の真意を図る間も無く意味を知る事となる


遠くから響く陣太鼓と騎馬の蹄の音

その勢いは武田騎馬軍団といえども到底敵わぬ程の速さでこちらへ向かって来る


「ご報告!旗印は猫に星!!」

「『流星』星空凛の騎馬隊です!!」


「…流星、星空隊だと?」

「出丸の攻め手は一体…」



681: 2016/12/25(日) 05:13:25.69 ID:wa5dsuNR0

「まぁ良い!本隊はこのまま西木野隊と黒頭巾を潰せ!」

「その他は星空隊を止めろ!」


この布陣を見て甲斐は嬉しそうな笑顔で

「そんな事をして良いのか?」

「では、遠慮なくいかせてもらおう!」


「突撃!鶴の翼をもぎ取れ!!」

「星空凛に負けるなよ!!」

『応!!』

鶴翼陣左翼に向かい突撃を敢行する


「あぁ、そう言えばここにもう一人おんなじ様なのが居たわね」

真姫が感想をいう間も無く瞬く間に包囲を突破

それに合わせるかの様に凛の部隊も迎撃部隊と激突する


「かよちんの痛みを知れ!!」

「凛は怒ってるんだよ!!」



682: 2016/12/25(日) 05:14:35.66 ID:wa5dsuNR0

流星隊の圧力に屈し迎撃部隊の陣が崩れかける


「まだだ!右翼は黒頭巾に集中せよ!」

「左翼と本隊は八卦陣!立て直せ!」

「流星隊迎撃部隊はそのまま二手に分かれよ!無理に止めようとするな!!」


再度の昌豊の指示

武田軍は再び陣を再構成崩壊を阻止したかの様に見えた


その時



683: 2016/12/25(日) 05:15:37.21 ID:wa5dsuNR0

「河越城の門が開きます!何者かが出陣する模様!!」

「旗印は…」



「八巻の稲穂!!」

「今度こそ本物の小泉花陽本隊です!!」



684: 2016/12/25(日) 05:18:13.60 ID:wa5dsuNR0


「突撃!一気に決めます!!」


花陽の号令一下

小泉隊はそのまま本隊に向かい突撃

西木野隊と挟み撃ちの形となった


そこに迎撃部隊を置き去りにした星空隊も攻撃に参加

甲斐隊はそのまま遊撃部隊として敵を翻弄

戦況は一気に音ノ木有利となる


しかし昌豊は諦めることはない

次の指示を繰り出す

「こちらは八卦陣だ!早々削られることはない!」

「散った部隊を再編せよ!小泉花陽の背後を付くのだ!!」

「敵大将は目の前だ!!」


激しさを増す陣太鼓



685: 2016/12/25(日) 05:20:04.43 ID:wa5dsuNR0

攻める花陽も兵に叫ぶ


「前へ!突き進んで!」

「これを破れば私達の勝ち!」


「辛くて怖いけど…敵も同じ!」

「耐え忍んで自分に打ち勝つ!!」


「その向こうに勝利があるから!!!」


『応!!』


圧力を強める小泉隊

それに呼応する西木野隊、星空隊、甲斐隊の三隊


しかし練度の高い武田の八卦陣に徐々に圧力を弱められる

再編された部隊も徐々に迫って来る


花陽の部隊は敵陣に食い込み退くことは出来ない

「もう少し…もう少しなのに!」


戦況は再び武田優位になろうとしていた



686: 2016/12/25(日) 05:21:36.98 ID:wa5dsuNR0

「……た…った」

「か……っ……」


遠くから何かが聞こえて来る

激しい戦闘の為聞き取りにくいがかなりの人数の声の様だ


人々の声は徐々に大きくなる

「…った!かった!」

「かった!勝った!我らの勝ちだ!」

「勝った!!勝った!!」


現れたのは数千人にも及ぶ人々

兵士だけではない

ほとんどが農民の集団、所謂一揆勢である


集団は口々に

「勝った!!勝った!!」

と叫びながら進軍して来る


その先頭に立つのは…


687: 2016/12/25(日) 05:23:02.00 ID:wa5dsuNR0

「地黄八幡!北条綱成!!」

甲斐がその名を叫ぶ


甲斐の姿を見た綱成は

「お転婆姫!無事であったか!」

「儂の部下は無事だろうな!!」


「当然だ!首を刎ねられるのは嫌だからな!!」

「しかし、その一揆勢は一体…?」


「知らん!儂らが河越に行くと言ったら勝手について来たのだ」

「我等が来れば勝ちは確定、だから景気付けに勝った勝ったと叫んでおるのだ」


「我等…?」

「という事は!」



688: 2016/12/25(日) 05:24:47.79 ID:wa5dsuNR0

甲斐が一揆勢の更に向こうを見ると

赤、青、白、黒

そして黄


「五色備!皆来て来れたのか!!」

「それにあの旗印は…まさか?」


旗印を見た昌豊は苦々しく呟く

「北条氏康…」

「音ノ木と共に破滅の道を歩むか…」



氏康は静かに軍配を掲げると

「敵を排除せよ、攻撃開始」

振り下ろされる軍配を見届けると北条軍、一揆勢共に攻撃を開始する



689: 2016/12/25(日) 05:26:33.63 ID:wa5dsuNR0

「蹴散らせ!勝利は我等のものぞ!」

『応!!』


「勝った!勝った!我等の勝ちだ!!」

「音ノ木の勝ちだ!!」

一揆勢も口々に勝利を唱えつつ突撃を敢行する


「みんな…」

花陽は溢れそうになる涙を堪えて最後の命令を下す


「総員突撃、武田軍を殲滅せよ!!」


『応!!』



690: 2016/12/25(日) 05:27:47.54 ID:wa5dsuNR0

陽も傾き寒さを肌で感じる頃、戦場に響く鬨の声


『えい!えい!』

『おう!!!』



多数の援軍を得た音ノ木はそのまま武田に猛攻を加え撃退

大将内藤昌豊は這々の体で退却する事となった


河越城を攻めていた部隊もほぼ壊滅

全ての敵は河越城と小泉花陽の前に敗れ去った




約一ヶ月に及ぶ河越城合戦はこうして幕を降ろした




698: 2017/01/03(火) 23:04:14.89 ID:hDH3aF8+0

河越城を巡る攻防から一週間が過ぎた



あの直後から花陽は心労と体力の消耗が激しく床に伏せる日々が過ぎていた


事後の処理は真姫を大将、凛と甲斐を副将とした部隊を編成

武田軍の掃討を行なったが、総崩れの撤退であった為、数日で作戦は完了した


北条から寝返り武田を手引きした旧幕臣に関しては氏康自ら兵を率いて討伐する事となった

旧領回復も時間の問題だろう



699: 2017/01/03(火) 23:05:59.72 ID:hDH3aF8+0

現在は花陽も随分体調が戻り、掃討隊も河越城に入り復興の道筋をつける段階まで来ていた


花陽は久しぶりに陽を浴びる為、寝所を出る


城下の復興は始まったばかり

人々は住む家を立て直し、一刻も早く元の生活を取り戻そうと動き始めている


少し離れた城の鍛錬場では凛と甲斐が何やらやっているのも見える


「見て見て!こんな事出来るんだよ!」

凛は元気一杯宣言すると愛馬『ミケ』に跨りそのまま背中の上で片足上げや後ろ向き、更には逆さまになって馬を駆る


「おおっ!?凄いぞ星空凛!」

「だが私も負けてはいないぞ!これを見よ!」

そう言うと甲斐は薙刀を持ち出しわら編みの標的を一刀両断、打ち上げられた半身を次々に切り刻みそれをまた薙刀で刺し集めるなどという離れ業をやってのける


「にゃー!?す、すごいよ甲斐ちゃん!!」

「それじゃあ凛もとっておきを…」



700: 2017/01/03(火) 23:07:06.31 ID:hDH3aF8+0

「あいつら何やってんの?」

「あれってあれでしょ?チートってやつなんでしょ」

「もしくはパラメータ、バグってんじゃないの」

花陽の隣でその様子をいう見ていた真姫がため息混じりに呟く


「いやぁ…多分あれは元々の性能なんじゃないかな?」

困った様な笑い声で返す花陽


体調もだいぶ良くなり笑顔も見せる様になった

籠城中はほとんど食を口にせず柔らかな頰もすっかりなりを潜め、再会した時は凛が泣き喚き大変な事となった


しかし元々健啖家である

既に粥を口にし始めるまで回復している


元の状態にはすぐに戻るだろう



701: 2017/01/03(火) 23:08:00.64 ID:hDH3aF8+0

「しかし良く持ち堪えたものね」

「少し嫉妬しちゃうわ」

珍しく真姫は素直な感想をぶつける


「偶然が重なったのもあったから…」

「もう一度同じ事があったら絶対無理だよ」

花陽はいつも下がり気味の眉を更に下げ、もう懲り懲りといった仕草を見せる


「ふーん…」

真姫がなんとなく気の無い返事をした時


「花陽様!一大事です!!」

誰かがバタバタと音を立て騒ぎ立てる


その声の主は



702: 2017/01/03(火) 23:09:14.20 ID:hDH3aF8+0

「晴朝ちゃん、どうしたの?」


晴朝と呼ばれたその名の主は、あの小姓である

今回の戦で初陣を飾り、見事に役割を果たした褒美として花陽から名を与えられたのだ

本人は花陽のどちらか一文字が欲しい様であったが、花陽がもっと相応しい名があるからとこの名を送った


さて、その晴朝が騒ぎ立てるほどの要件とは何か

花陽が問うと


「北条殿より重要なご用件」

「使者として幻庵殿が参られております」


花陽の表情があからさまに変わるのがわかる

「…すぐにお会いしましょう」

「丁度真姫ちゃんもいるし、いいよね?」


花陽の様子を見て真姫も只ならぬ様子を感じ取り

「わかったわ、行きましょう」


二人は使者を迎えるため広間へ向かった



703: 2017/01/03(火) 23:10:08.99 ID:hDH3aF8+0

話の内容は驚愕に値するものであった


北条は音ノ木国への併合を望む

条件は旧領を小泉花陽が統治する事



外交担当の真姫は首を横に振る選択肢などなく話を進める事となった

凛と甲斐は素直に喜びあった

花陽はいつも通り笑っていた

真姫はただそんな花陽をじっと見つめていた



704: 2017/01/03(火) 23:10:55.56 ID:hDH3aF8+0

その日の夜、真姫は花陽の寝所を訪れた

突然の訪問であったが花陽は予想していたかの様に身支度を整えていた


真姫は人払いをした後、花陽の正面に座り話を切り出す



「さあ花陽、答え合わせをしましょうか」




705: 2017/01/03(火) 23:11:51.51 ID:hDH3aF8+0

「答え合わせ?」

「いつもの感想戦じゃないのかな?」

花陽は微笑んだまま少し首をかしげる


「…花陽、私ね、怖かったのよ」

「お友達を失う恐怖がこんなに怖いものだなんて知らなかった」


「私がもっと広い視点で、思慮深く、豊富な知識で、全てを見渡していればこんな事態にならなかった」

「私はもっと完璧にならなきゃいけないの」


「それともう一つ…」

「戦わずして勝つ、究極の戦略」



「今回の『北条攻め』の内容を知りたい」




706: 2017/01/03(火) 23:14:15.51 ID:hDH3aF8+0

真姫の言葉の後訪れた静寂

花陽からは微笑みが消え、静かに真姫を見つめる


先に口を開いたのは花陽

「…今回は対音ノ木連合による河越急襲」

「それをみんなの力を合わせて何とか防衛した」

「北条さんが音ノ木と手を組む選択をしたのは南関東の覇権を確固たるものとするため」

「それが全てじゃないのかな?」


困った様な笑顔をする花陽


そうだ、この子はいつもこの表情をする

こうやって己が意見を隠して妥協点を探しているのだ

いつもならその妥協に乗るところだが今回はそうはいかない


私、西木野真姫は負けず嫌いなのだ

私の予想もしていなかった北条併合をやってのけたその軍略を知りたい

しかしそれよりも悔しいのは此の期に及んでも本心を隠していることだ


「…花陽、一回しか言わないからよく聞いてね」

「私はこれでもあなたの事信用してるの」

「あなたも私のこと、信用して欲しいわ」


この言葉を聞いた花陽は静かに真姫を見つめて

「…分かったよ、真姫ちゃん」

「全部教えるね」


「でも凛ちゃんには内緒にして欲しいの」

「…それと、真姫ちゃん…」


「……私のこと、嫌いにならないで……」

蚊の鳴くような声で懇願する花陽


真姫は優しく微笑んで

「覚えておいて…私は何があってもあなたの味方よ」

「当然凛も、μ’sのみんなもよ」


花陽は頷くと今回の計略の全てを語り始めた



707: 2017/01/03(火) 23:15:29.64 ID:hDH3aF8+0

音ノ木包囲網の成立は予想できていた

音ノ木が武蔵、下総、上総、そして常陸四カ国を抑えた

この時点で各国にその機運が高まっていた


盟主は武田

そこで花陽は武田潰しに動く


北は穂乃果と海未の部隊が一進一退の攻防を繰り広げていた

そこへ包囲網による援軍が期待できる状況が生まれる


そこに合わせ南から音ノ木に直接攻め込める道を作った


「…まさか北条方の寝返りを工作したのは」

驚く真姫に花陽は淡々と答える


「その通り、私だよ」



708: 2017/01/03(火) 23:16:32.46 ID:hDH3aF8+0

この調略は成功

表向きは北条の配下を武田が調略した形となり北条の武田への不満は頂点へと達する事となる


元々方針を決めきれず、身動きが取れない北条であったが、これで対外的にも動かぬ口実ができた為、包囲網に穴を開けることに成功する


その後の河越城の攻防は実は準備万端の状態

槍働の少ない小泉花陽が強兵武田軍相手に優位に立つ状況は武田家だけでなく他家に対しても衝撃を与える


その証拠としてμ’sのいる戦場では過大な戦力投入や逆に戦況の膠着といった通常考えにくい状況が生まれていた


「なるほど、だから私達μ’sの配置を変更して私と凛が動ける状況に出来たわけね」


花陽は静かに頷く



709: 2017/01/03(火) 23:17:50.74 ID:hDH3aF8+0

そんな中、北条から甲斐が援軍として駆けつける

これは北条が音ノ木に荷担する意思ありと見る決定的な事件であった


もちろん甲斐はそんな深い事は考えていない

ただ単純に友として花陽を助けたい一心での行動だ


「純粋に嬉しかったんだ…」


「でも私はそれと同時に、『指揮の出来る武将』として甲斐ちゃんを見たんだ」

「最低だね…」


「それはあなたが本気だからよ」

「本気でみんなの為に戦うからこそ、自分の心に嘘をついてまで非情に徹した結果よ」

「私はあなたを尊敬するわ」


再び静寂が二人を包む


意を決した花陽が

「ゴメンね、続けるよ」



710: 2017/01/03(火) 23:19:08.04 ID:hDH3aF8+0

本当は河越城の防衛力で凌ぐ方針だったが、敵方大将内藤昌豊の消極戦略の為方針を転換


表向き敵方兵站の破壊と兵の疲労を誘う、実際は素人の住民兵の訓練期間の時間稼ぎを実施

兵糧の持つ限界の時間を使い弓や槍が使える段階まで訓練した


そうして遂に西木野隊と星空隊が到着する

指定した期日丁度であった


「全く、援軍に行くのに期日まで指定されるとは思わなかったわ」

「間に合わなかったらどうするつもりだったの?」


「ゴメンね、私、真姫ちゃんと凛ちゃんにはわがまま言っていいって自惚れてるから…」


それを聞いた真姫は顔を赤くしながら

「ま、まぁいいんだけど!」


「つ、続けなさいよね!」



711: 2017/01/03(火) 23:20:57.73 ID:hDH3aF8+0

その後捕虜を利用して城内に不穏な空気が流れているように思わせ故意に逃亡騒動を起こした

そしてこれ見よがしに飯炊きの火を見せ敵に余計な思惑を植え付ける

当然わざと見えるような場所から伏兵役の真姫を逃して


翌日の城内の守り

武田はこう考えていたはず


総指揮 小泉花陽

東出丸 正規軍

西三ノ丸 住民兵

遊撃隊 黒頭巾隊、少数の援軍


しかし実際はこうだった


総指揮 なし

東出丸 星空隊、住民兵の半数

西三ノ丸 小泉花陽、正規軍、住民兵の半数

遊撃隊 西木野隊、黒頭巾隊


各隊毎に細かく作戦を伝え正確にそれを実行させる

それにより総指揮から花陽を外し、城内に入り込んだ敵を殲滅する


各々がそれぞれの仕事をすることにより結果として連携が取れていく

各人の力を正確に把握し、戦場の状況を完全に掌握した上の作戦


結局この戦はきっかけから結果まで全て花陽の掌の上の出来事だった


包囲網は結成直後に盟主の敗北という大きな痛手を負い、勢いは大きく削がれるだろう

そして武田はその立場が大きく揺らぎ、攻勢一転、瓦解の危機が訪れる事になった



712: 2017/01/03(火) 23:22:11.89 ID:hDH3aF8+0

しかしこの戦はあくまでも大きな計略の流れの一つ

真の目的は先にも述べた通り『北条攻略』であった


誰にもさとられることなく静かに、そして確実に行われていたこの計略は遂に北条が花陽の傘下に入るという形で結実した


「いつから始まっていたの?」

真姫は純粋に疑問を口にする


今の花陽に真意を隠すような真似は無粋だ


当然花陽も全てを包み隠さず話す

「最初からだよ」


「1番初めから、この『忍辱の計』は始まっていたんだ」




713: 2017/01/03(火) 23:23:47.81 ID:hDH3aF8+0

音ノ木がまだ弱小勢力出会った頃

関東の強豪は旧幕府軍、佐竹、そして北条であった


中でも北条は別格

初めはとにかく友好関係を構築する事に勤めた


そうしながらも自然と旧幕府軍を敵とし、北条の北上を抑え、武蔵を手中に収めた

その後も北を攻め、南は北条に手を貸し遂には北条を凌ぐ国力を手に入れた

しかしそれでも北条を軽んじるどころか更に厚遇し、信頼を厚くしていった


そこへ今回の事件である

最初に北条が動かなかった時点でほぼ成功を確信した


そして甲斐の援軍

これは非公式ながら北条の意思が見て取れた


さらに武田に対する攻勢

無勢ながらも優位に事を進める音ノ木を見る目は如何程のものだったか



714: 2017/01/03(火) 23:25:12.50 ID:hDH3aF8+0

周辺地域でも音ノ木の不利は聞こえなかったはず


後詰があれば勝てるのではないか

そういう考えが頭に浮かぶ様になった時、月夜衆から情報がもたらされる


後詰として『流星』と『緋色の孔明』がやって来る、と


この危機を音ノ木だけに解決させると一気に周辺は飲み込まれる

それは同盟国とて同じ事

ならば今の内に恩を売り、名も実も取るのが最良


音ノ木はμ’sの様な軍団長待遇の者は領地は切り取り次第となっている

現在はμ’s以外では佐竹義重と長野業正がその任に就いている

人数的にもこれ以上は増えにくいだろう


となれば今が最後の機会

しかも最大の危機に恩を売る形となる


幸運な事に領地経営に関しては共通するところも多い

住民も音ノ木ならば何も言うまい


そして遂には河越城に大名、そして五色備を揃え援軍に駆けつけた

その後の事後処理も含め完全に自分達で対応


そして遂に一番懇意にしていた小泉花陽の名をもって傘下に入ると表明したのだ



715: 2017/01/03(火) 23:26:07.32 ID:hDH3aF8+0

「こうして忍辱の計は成功を収めたんだ」


「最初からみんなの事騙して、利用してたんだよ」

「最低でしょ、私…」


「そう…わたし……ごめんなさ…い」

花陽はそこまで言うと顔を覆い泣き崩れる



716: 2017/01/03(火) 23:27:16.17 ID:hDH3aF8+0

真姫はそんな花陽にこう告げた

「忍辱の計とはよく言ったものね」

「耐え忍ぶのは何者でもない、あなた自身だったのね」

「ごめんなさい花陽、あなたにばかり辛い思いをさせて」


そう言うと真姫は泣き崩れる花陽を抱きしめる

「でももう大丈夫…」

「必ず私があなたを超えて一番になるわ」

「そして優しいあなたにこんな辛い思いをさせたりしない」

「だから今は一杯泣いていいのよ…」


「凛達はきっとあなたを責めたりしない」

「だって花陽は自分の心を犠牲にしてまでみんなを守ろうとしたんだもの…」


「約束通りみんなには内緒にするから…」

「その代わり明日にはいつもの笑顔を見せてね…」



717: 2017/01/03(火) 23:28:56.69 ID:hDH3aF8+0

『うぅっ…うわぁぁぁ〜〜ん』


正に泣き叫ぶ様な声が響き渡る


「花陽…辛かったでしょう、我慢しなくていいからね」

『ガマンなんてできないにゃ〜〜!かよち〜ん!!うえぇぇぇん!!』

「そう、ガマンしないで、かよち…ん?」


真姫が違和感に気が付き襖の方を見る

花陽も同じ方向を向いている


真姫が襖を開けた途端、大きな猫が花陽に飛びついた

「ゴメンね!かよちん!!」


飛び付かれた花陽は目を白黒させながらもその猫の名を呼ぶ



「り、凛ちゃん?!」



凛は花陽を抱きしめたまま

「かよちんが何かしてるのは知ってたけど!凛はバカだから!」

「ゴメンね!もっと勉強して色々知ってたら手伝えたのに…」

ここまで言って大泣き状態となり、収拾がつかなくなる





718: 2017/01/03(火) 23:29:55.22 ID:hDH3aF8+0

真姫はそんな凛の様子をみて花陽に語りかける


「ほらね、あなたを責めたりしないでしょ?」

「それどころかあなたの計略も見抜いてたみたいよ」


「だからもう一人になったりしないで…」



花陽は涙を拭く

そしてとびっきりの笑顔でこう答えた


「うん!ありがとう!真姫ちゃん!!凛ちゃん!!」



719: 2017/01/03(火) 23:32:22.20 ID:hDH3aF8+0


季節は冬


身にしみる寒さとは裏腹に、花陽の心は春の陽を受けた様に暖かかった




河越城軍絵巻 完


720: 2017/01/03(火) 23:35:03.48 ID:hDH3aF8+0

河越城編終わりです

次は少し間が開くと思います


まあもし落ちても立て直すんですけどね

ほな、また


721: 2017/01/04(水) 00:35:06.80 ID:tBqcn+tJo

次は誰編になるんだろうか、楽しみ

引用元: 穂乃果「戦国μ's」