2: 2022/08/08(月) 00:11:15.81 ID:j++XiR9y.net
中川菜々、自室で一人、そわそわしています。

現在の日時は8月7日23時59分…………あと1分で8月8日。

つまり、私の誕生日です!

なぜ自室で緊張しているかというと、以前歩夢さんのお誕生日をお祝いした時のことを思い出したからです。


(次のせつ菜ちゃんのお誕生日は、私が一番にお祝いするよ!!)


歩夢さんは私にそう言ってくれました。

きっと日付が変わったら、すぐに電話が掛かってくるに違いありません!

なので私もすぐにお受けしなくては!

4: 2022/08/08(月) 00:13:08.69 ID:j++XiR9y.net
そんなことを考えている間に、あっという間に日付が変わりました。

私はまだかな、まだかな、と心を躍らせながら自分のスマホを持ち、みつめ続けました。

すると、扉からコンコンとノックする音が聞こえました。


「あ、はーい!」


もしかして、お母さんが日付が変わったことに気付いて、部屋に来てくれたのかな?

嬉しいな……えへへ……

……すみません、歩夢さん、最初にお祝いしてくれるのはお母さんになりそうです。

そう、心の中で謝罪しながら扉を開けました。

5: 2022/08/08(月) 00:15:20.71 ID:j++XiR9y.net
「せつ菜ちゃん!お誕生日おめでとう!」

「……え!?」


そこには歩夢さんが立っていました。

あれ?どうして私の部屋に歩夢さんがいるんでしょうか?

明らかにおかしいです!もしかして、これは夢の中なのでは!?

誕生日を待っている間に寝落ちしてしまったんでしょうか!?

なんてことです!早く起きなくては!


「歩夢さん!私の頬をつねっていただけませんか?」

「え?」

「早く起きないといけないんです!お願いします!」

6: 2022/08/08(月) 00:17:55.37 ID:j++XiR9y.net
歩夢さんは少し戸惑った表情をした後、ニコッと笑顔になったと思ったら、突然私の事をギュッと抱きしめました。


「ななな、何をしているんですか!?」

「だって、ほっぺをつねるのは痛いかと思って」


抱きしめられた時、歩夢さんのやわらかい感触が確かにあり、ふわっといい香りもしました。

ということは、これは夢ではなく、現実なんですか!?


「いきなりびっくりさせてごめんね、夢じゃないよ?」

「あ、はい……お、おはようございます……」


私は動揺しすぎて、寝てもないのに目覚めの挨拶をしてしまいました。

それにしても、どうして歩夢さんが私の家にいるのでしょうか?

7: 2022/08/08(月) 00:21:11.26 ID:j++XiR9y.net
「実は、せつ菜ちゃんのお母さんにお願いして、さっきこっそりと家に入れてもらったの!せつ菜ちゃんを驚かせようと思って!」

「そ、そうだったんですね」


歩夢さんも、けっこうお茶目なところがあるんですね……

でも、こうやって私にサプライズでお祝いしてくれたことは、本当に嬉しいです!


「歩夢さん!来ていただいて、ありがとうございました!」

「どういたしまして!……あ!そうだ!せつ菜ちゃんにプレゼントがあるの!」


なんと!私にプレゼントまであるのですか!?なんでしょう!?ワクワクします!

9: 2022/08/08(月) 00:25:30.54 ID:j++XiR9y.net
「はい、どうぞ!」


歩夢さんから、可愛くラッピングされた小包を受け取ります。


「嬉しいです!開けてもいいですか?」

「うん!」


中を開けると、そこには高級そうなシャープペンシルが入っていました。

色は、せつ菜のイメージカラーのスカーレットでしょうか?


「受験勉強もそろそろ大変になりそうだから、応援の意味も込めたよ」

「わぁっ!ありがとうございます!夏期講習もこれで乗り切れそうですね!」

「実は私もピンクのシャーペンをお揃いにして買っちゃったんだ」

「なんと!歩夢さんとお揃いのペンだなんて、とっても嬉しいです!家宝にします!」

「ふふっ、大袈裟だなぁ」

13: 2022/08/08(月) 00:34:59.11 ID:j++XiR9y.net
こうやって歩夢さんとずっと話してたい気持ちもありますが、

もう深夜ですし、そろそろ就寝した方がいいですよね。


「もう遅いですし、今日は是非、家に泊まっていってください!」

「ありがとう!じゃあ、そうさせて貰おうかな!……あ、そうだ」

「はい!」

「良かったら一緒に寝ようよ!」


え……?

今、なんと言いましたか?

一緒に寝る……ですか?

15: 2022/08/08(月) 00:37:33.32 ID:j++XiR9y.net
・・・・・・


部屋の狭いベッドに、歩夢さんと一緒に横になりました。

さきほど感じた歩夢さんの柔らかい感触といい香りがして、凄くドキドキします……!

これは……ドキドキしすぎて、眠れないかもしれません!


「せつ菜ちゃん、もしかして緊張してる?」

「え、ええっ!?」

「だって、胸の鼓動が伝わってくるから」


これだけ密着しているんですから、私がドキドキしているのもバレバレですよね……


「す、すみません、あまりこういうのには慣れてないものでして……」

「ふふっ、可愛いなぁ、せつ菜ちゃんは」

「かっ、からかわないでください!」

「ごめんごめん」

20: 2022/08/08(月) 00:43:02.48 ID:j++XiR9y.net
確かに緊張でドキドキですが、歩夢さんの暖かさにギュッと包まれているようで、とても幸せです。

これは、2つ目のプレゼントを貰ってしまったかもしれませんね。


「ふふっ、来年もこうやって一番にせつ菜ちゃんのこと、お祝いできるといいな」

「来年も……」


来年も……その言葉も聞いた時、ふと思いました。

私たちは今高校3年生……来年にはそれぞれの大学に進学することになります。

私の志望している大学は、とても遠い場所になるので、お母さんと相談して、進学後は引っ越して一人暮らしをすることに決めました。

もし私が引っ越したら、歩夢さんとこうして会うことも難しくなるでしょうね。

そう思うと、少し寂しい気持ちになってしまいました。

23: 2022/08/08(月) 00:51:02.92 ID:j++XiR9y.net
「……せつ菜ちゃん?どうしたの?」

「えっ?」


私がごちゃごちゃと暗いことを考えていると、歩夢さんが心配そうな顔で私を見つめていました。


「その、いろいろ先の事とか考え込んでしまって……」

「先のこと?」

「来年も、こうやって歩夢さんと一緒にいられるのかなって……」


つい不安な言葉を漏らしてしまいました。

いったい何を言っているんでしょうか私は……

急にこんなことを言っても、歩夢さんが戸惑ってしまいますよね……

29: 2022/08/08(月) 01:00:13.07 ID:j++XiR9y.net
「す、すみません歩夢さん!今のは忘れて……」

「せつ菜ちゃん!」


歩夢さんは私の目をじっと見つめながら、言いました。


「私ね!去年、スクールアイドルに……せつ菜ちゃんに出会って、私の人生は大きく変わったんだよ!」

「え?」

「あの時、侑ちゃんと一緒にせつ菜ちゃんのライブを見なかったら、きっと今の私はなかったと思う!」


改めてそう言われると、なんだか照れてしまいます……


「その後も、スクールアイドルフェスティバルをして、単独ライブをして、留学して、色々な経験をして、だんだんと自分の夢がはっきりしてきたの」

「歩夢さんの夢が……?」

「うん!それは、きっかけをくれたせつ菜ちゃんの隣で、同じ景色を見ることができれば、夢を掴めるんじゃないかなって考えたの!」


そう言うと歩夢さんは、私の手をギュッと握って、言いました。


「だから私、せつ菜ちゃんと同じ大学に行きたい!」

30: 2022/08/08(月) 01:02:10.40 ID:j++XiR9y.net
「ええっ!?」


あ、歩夢さんが、私と同じ大学に……!?


「そ、それって、つまり……」

「うん!だから、来年もきっと、一緒にいられるよ!」

「……歩夢さんっ!!」


歩夢さんの言葉が嬉しくて、思わず歩夢さんに抱き着いてしまいました


「嬉しいですっ……!歩夢さんっ……!」

「えっと……まだ合格するか、わからないんだけど…………ううん、絶対に合格して、せつ菜ちゃんと同じ大学に通うよ!」

「はい!私も絶対に合格します!」

33: 2022/08/08(月) 01:03:16.51 ID:j++XiR9y.net
「じゃあ約束、だね」


そう言うと歩夢さんは、あの時のように、私に拳を突き出しました。


「はい!約束、ですよ!」


私はコツンと、歩夢さんに拳を突き返しました。

どうやら、3つ目のプレゼントも貰ってしまいましたようです。

大好きです、歩夢さん!

これからもずーっと一緒にいましょうね!

36: 2022/08/08(月) 01:07:45.55 ID:j++XiR9y.net
短いですが、これで終わりです!
読んでいただいた方、ありがとうございました!
改めてせつ菜ちゃん、お誕生日おめでとう!!


引用元: 【SS】せつ菜「歩夢さんからの3つのプレゼント」