1: 2022/08/08(月) 21:15:10.12 ID:dlBQxSwZ.net
せつ菜ちゃんは私にとって憧れの存在。

あの日、あのステージで、あのパフォーマンスに魅了されたあの時から、その念が心から消えることは一瞬たりともなかった。

歯を磨くときも、宿題をするときも寝るときも、私のまぶたの裏にはいつも彼女……、つまりはせつ菜ちゃんの姿があった。

7: 2022/08/08(月) 21:18:05.48 ID:dlBQxSwZ.net
何かを食べれば「せつ菜ちゃんは美味しいと感じるのかな。どんな顔でこの料理を食べるのかな」と考えちゃうし、服屋に行けば「せつ菜ちゃんがこの服を着たらきっと似合うのにな」なんて一人の世界についつい入ってしまう。

そのくらい、スクールアイドル優木せつ菜は私にとっての目標であり、憧憬の的だった。

9: 2022/08/08(月) 21:20:38.66 ID:dlBQxSwZ.net
彼女は、私がスクールアイドルを始めるきっかけとなったスクールアイドルだ。

だからもちろん、スクールアイドルとして彼女の事を尊敬しているし、敬愛している。

でも、私の気持ちはそれ以上でもそれ以下でもないと思っている。

私という普通のスクールアイドルが目標にしている魅力的なスクールアイドル。それが彼女。

10: 2022/08/08(月) 21:23:17.32 ID:dlBQxSwZ.net
それ以上は考えないようにしている。

だって、これ以上深く考えたら……

――自分の気持ちとしっかり向き合ったら、もう戻れなくなる気がするから。

11: 2022/08/08(月) 21:25:39.87 ID:dlBQxSwZ.net
「今度の花火大会、一緒に行きませんか?!!!」

同好会の帰り道、背後から突然声をかけられ驚き振り向いたその先には、世界でいちばん笑顔がまぶしい女の子が立っていた。

心の底から嬉しかった。

12: 2022/08/08(月) 21:28:00.34 ID:dlBQxSwZ.net
花火大会。毎年一緒に行ってるあの子は家族旅行で不在。

ひとりで行くほどでもないし、自分で誰かを誘う気にもなれなかった。みんなそれぞれ一緒に行きたい人がいるだろうし。

そんな時、せつ菜ちゃんが誘ってくれたのだから嬉しくて仕方がない。

そう、一緒に行く人がいなかったからこんなに嬉しく感じるんだ。

そう、きっと痛いほど心臓が高鳴っているのも、そのせいだ。

13: 2022/08/08(月) 21:30:22.64 ID:dlBQxSwZ.net
花火大会当日。

浴衣姿のせつ菜ちゃんは息をのむほど可愛く、そして美しかった。

こんな女の子の隣に自分なんかがいていいのだろうか。

周りの人から不釣り合いだと笑われないだろうか。

14: 2022/08/08(月) 21:32:51.37 ID:dlBQxSwZ.net
誰も他人をそこまでよく見ていない。そんなことは分かっているはずなのに、どうしても自分がこの場に相応しくないような感じがして背筋がむずがゆくなる。

でもそんな私の気苦労とは裏腹に、せつ菜ちゃんは道の奥まで延々と連なる屋台に大興奮していた。

「金魚すくいやりましょう!!」

「あっちに焼きそば屋がありますよ!!一緒に食べませんか?!」

「わたし射的がやりたいです!!ゲームで鍛えているから自信ありますよ?!」

せつ菜ちゃんの屈託のない笑顔を、私の大好きなその顔を真正面に向けられ、思わず頬を赤らめる。

15: 2022/08/08(月) 21:35:02.32 ID:dlBQxSwZ.net
せつ菜ちゃん。せつ菜ちゃん。せつ菜ちゃん。

ステージの上で見る少し背伸びをしたかっこいいあなたも魅力的だけど、

今となりにいる、ファンの皆には見せない等身大のあなたも私を惑わせる。

やめて。これ以上私にあなたの事を考えさせないで。

考えれば考えるほど、あなたの事を好きになってしまうから。

16: 2022/08/08(月) 21:37:11.62 ID:dlBQxSwZ.net
「もうすぐ花火、始まりますよ!!」

せつ菜ちゃんが私の手を引っぱる。その小さな手に見合わない、強い力で。しっかりと、確実に。

せつ菜ちゃんは花火を見たいだけだよね。

でも、ついつい考えてちゃう。

せつ菜ちゃんがこれほど強く私を求めてくれたなら、どれだけ幸せだろう、と。

そんな私の妄想を打ち壊すかのように、一発目の花火が大きく大きく打ちあがった。

「あ~、始まっちゃいましたね!」

せつ菜ちゃんは少し残念そう。

17: 2022/08/08(月) 21:39:18.42 ID:dlBQxSwZ.net
せつ菜ちゃんは私の手を離すと花火が良く見える土手を駆け上がった。

「はやくはやく~!こっちですよ!!」

土手の上で大きく手を振るせつ菜ちゃん。

その瞬間、せつ菜ちゃんの背後で一際大きな花火がひらいた。

18: 2022/08/08(月) 21:41:26.49 ID:dlBQxSwZ.net
輝いているのは花火のはずなのに、花火よりも明るく見えるせつ菜ちゃんの笑顔。

その姿が光景があまりにも美しく、あぁ私がいま目にしているこの思い出は一生忘れることはないのだろうと、理由もなく確信してしまった。

そして、もしせつ菜ちゃんがこのまま遠くに行ってしまったら、その思い出がある種の呪いとして私を後悔と自責で苦しめ続けるに違いない。

19: 2022/08/08(月) 21:45:16.74 ID:dlBQxSwZ.net
いい加減、認めるべきだ。

私は、優木せつ菜が大好きなんだ。

そうでもしないと、今日という日の思い出を一生反芻することになる。

「ちょっと~!いつまでそんなところにいるんですか~?!」

そうだよね。いつまでも”こんなところ”にいたらだめだよね。

私は勇気を出してこう言った。今いくよ、と。

20: 2022/08/08(月) 21:47:30.65 ID:dlBQxSwZ.net
その先で受け入れてくれるかどうかはまだわからないけれど、

まずは勇気を出して一歩を踏み出してみようと思う。

今はまだ小さな蕾だけど、いつか大きな花を咲かすから。

だからこの小さな蕾を、あなたは受け取ってくれますか?

おわり

21: 2022/08/08(月) 21:49:09.96 ID:dlBQxSwZ.net
お読みいただきありがとうございました
そしてせつ菜ちゃん、お誕生日おめでとう!!

23: 2022/08/08(月) 21:53:58.76 ID:b56ZIvTq.net

とてもよかった

26: 2022/08/08(月) 22:28:25.58 ID:WY19FL/Q.net
良い雰囲気だった

引用元: 【SS】私とせつ菜ちゃんと花火大会と