1: 2022/08/15(月) 21:50:03.16 ID:Hr6rhWtQ.net

気がつくと、そこは無音の空間──

声は出せない。目は見えるけれど、明るいのか、暗いのかも分からない。

コツン…コツン…

遠くから、見慣れた顔の女性が歩いてくる…歩夢だ。

まっすぐにこちらを見つめながら、少しづつ、少しづつ近づいて。

私の前で、立ち止まった。

歩夢「………ふふっ♪」

歩夢は私の顔を見て、安心したように笑った。

そして、話し始めたんだ──

3: 2022/08/15(月) 21:53:44.15 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「面白い話があるんだよ、侑ちゃん」

歩夢「それはね、異世界への行き方の話」

歩夢「侑ちゃんは、異世界への行き方って言うと、どんな方法を思い浮かべるかな?」

歩夢「ありがちなのは転生とか、ワープとか、あと、妖精さんに連れて行ってもらうとか、かな?ふふっ」

歩夢「でも」

歩夢「異世界への行き方はね、そんなファンタジーみたいなものじゃないの。もっと簡単なことなんだよ」

4: 2022/08/15(月) 21:55:37.42 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「じゃあ、実際にやって見せようかな?」

歩夢「いくよ〜?えいっ」

パチン

歩夢「どうかな?」

歩夢「今、私は指を鳴らしてみたわけだけど」

歩夢「指を鳴らす前の私と、指を鳴らした後のわたし。同じ『上原歩夢』だって証明できる?」

歩夢「何を言ってるか分からないって?ふふっ♪そうだよね〜」

6: 2022/08/15(月) 21:58:05.08 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「侑ちゃん、この世界はね、階層構造になっているの」

歩夢「事象は前の事象に紐づいてる…世界は枝分かれの連続なの」

歩夢「パラレルワールドって言うと分かりやすい…けどちょっとだけ違うんだよなあ…う〜ん」

歩夢「例えばね、さっきは指を鳴らしてみたけど」

パンッ

歩夢「こうやって、手を叩くことも出来たわけだよね」

歩夢「でも、この時点でさっきの『指を鳴らす』行為をしたという事象の先に『手を叩く』行為をしたと言う事象が紐づいてしまったの。この形で世界に記録されてしまったんだよ」

9: 2022/08/15(月) 22:02:05.19 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「そして、一度世界に記録されてしまったら」

歩夢「下の階層から上の階層に戻ることはできない」

歩夢「だから今から」

パリン!

歩夢「こうやって花瓶を割っても」

ザシュ

歩夢「こうやって、わたしの耳を切ってみても、『指を鳴らし』た後に『手を叩い』たことは変えられないの。まあ、当たり前だよね」

10: 2022/08/15(月) 22:09:11.12 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「でもね、世界はたまにバグを起こしちゃうこともあるんだよ」

歩夢「私が好きなクソゲーみたいに… あははっ」

歩夢「よし」

歩夢「もう少しだけ挑戦してみるね!」

歩夢「次こそ成功させちゃうよ?えいっ!」

グチュ

歩夢「あ、成功したみたい!やったあ!」

11: 2022/08/15(月) 22:13:14.95 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「今ね、私は逶ョを■してみたでしょう?」

歩夢「こんな風にね、「ある事象』が起きたとき、『異なる世界の同じ事象』に移動できることがあるの!」

歩夢「移動が成功したらね、今まで私たちが驕弱#縺励※縺阪◆世界からは何もかもが変わってしまう」

歩夢「別の枝分かれを見ることができるんだよ。面白いよね♪」

歩夢「わあ!この世界は結構変わってるなあ。■■さんと■ちゃんが付き合ってて、■■ちゃんと■■ちゃんが絶交してる!あはは!」

歩夢「ふむふむ、今私は■ちゃんに逶ョは■■ないって言われてるところみたいだね♪」

歩夢「ね?意外と簡単でしょ?」

12: 2022/08/15(月) 22:14:46.67 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「あ、」

グサッ

歩夢「ぅ、また■■されたみたい、これは繧ゅ≧■からないかな、なんとか別の■■に。えと、」

グチュ グチュ

豁ゥ夢「縺ゅ■■→縺」

グチュ グチュ グチュ

■「■■■!謌サ繧後▲!■■■!謌サ縺」縺ヲ繧!」

グチュッ!グチュッ!

■■「■■■■■■■■■■■■」

─────
───

13: 2022/08/15(月) 22:20:10.77 ID:Hr6rhWtQ.net
侑「……っはっ!…はぁ…はぁ…ゅ…め……!」ダラダラ

侑「っ歩夢!」

歩夢「…ぅん…?ゆうちゃん……?」

侑「っは…はぁっ…!歩夢…っ!…ぐすっ…」

歩夢「侑ちゃん!?ど、どうしたの!」

侑「…ぐすっ、歩夢っ…こわいゆめ…みた…っ…ぐすっ…」ボロボロ

歩夢「…そっか…よしよし、大丈夫だよ…大丈夫…」ギュ

14: 2022/08/15(月) 22:20:15.76 ID:Hr6rhWtQ.net
侑「……っはっ!…はぁ…はぁ…ゅ…め……!」ダラダラ

侑「っ歩夢!」

歩夢「…ぅん…?ゆうちゃん……?」

侑「っは…はぁっ…!歩夢…っ!…ぐすっ…」

歩夢「侑ちゃん!?ど、どうしたの!」

侑「…ぐすっ、歩夢っ…こわいゆめ…みた…っ…ぐすっ…」ボロボロ

歩夢「…そっか…よしよし、大丈夫だよ…大丈夫…」ギュ

17: 2022/08/15(月) 22:31:42.80 ID:Hr6rhWtQ.net
侑「ごめん…ごめんね…明日も学校なのに…」

歩夢「私なら大丈夫だから。落ち着くまで、こうしてよう?」

侑「ありがとう…歩夢…」

ガタン

歩夢「?」

歩夢「スマホでも落ちたかな」

侑「…いやあ!嫌、やめて!!歩夢!」

19: 2022/08/15(月) 22:33:34.33 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「…だ、大丈夫!?どうしたの!?」

侑「嫌っ、こわい、怖いよ…!歩夢っ…!」

歩夢「侑ちゃん、私はここだよ。大丈夫…大丈夫だから」

侑「確認させてっ…!私と歩夢のこと!お願い、怖いからっ…!」

歩夢「わ、私はどうしたらいい?侑ちゃん、何をすればいいかな?」

侑「話してっ…!話して聞かせて!!私と歩夢の思い出とか、関係とか!全部っ…!!」

歩夢「う、うん…えっと、」

歩夢「私と侑ちゃんは幼馴染で、幼稚園からずっと一緒で、大学に入って付き合って。シェアハウスを始めて────────」

20: 2022/08/15(月) 22:39:41.30 ID:Hr6rhWtQ.net
─────
───


侑「……んぅ………朝…?」

歩夢「あ、侑ちゃん起きた?おはよう」

侑「あのまま寝ちゃってたんだ……歩夢、ごめんね?」

歩夢「ぜんぜん平気。大学は行けそう?今からなら2限間に合うよ?」

侑「もうそんな時間!?行く行く!急ごう!」

歩夢「まだ一回も休んでないし、今日は休んでもいいんだよ?」

侑「大丈夫!歩夢のおかげでもうなんともないから!」

歩夢「ふふっ、ならよかった。じゃあ準備して出よっか」

侑「うん!」

21: 2022/08/15(月) 22:57:23.01 ID:Hr6rhWtQ.net
〜大学〜

教授「……はい、では今日の講義は終わり。次回、小テストを実施するので各自復習しておくように」

侑(昨日の夢、怖かったな…)

侑(いつもは夢なんてすぐに忘れるのに、まだばっちり覚えてるよ…)

 ──異世界への行き方はね、もっと簡単なことなんだよ──

侑(別の枝分かれに行ける…か)

侑(もしそんなことが起こったら…)

教授「おーい!高咲ー!」


ジジ…… バチン‼︎

22: 2022/08/15(月) 23:02:52.05 ID:Hr6rhWtQ.net
侑「…え?」

教授「……なんだ?蛍光灯が切れたか」

教授「まあいいや、高咲、次の授業があるからボーッとしてないでさっさと移動しろよー」

侑「は、はい!すみません!」

侑(ま、まさかね…)

侑(私の記憶も何も変わってないし!大丈夫…!)

侑(そもそも、異世界なんてあるわけないし、あり得ないよ)

侑(はあ、早くこの夢のこと忘れられないかなあ…)

23: 2022/08/15(月) 23:08:34.20 ID:Hr6rhWtQ.net
─────
───


侑「え、今日は一緒に帰れないの?」

歩夢「うん、ごめんね?今日は先に帰ってて?」

侑「うん…」

侑「何の用事…?」

歩夢「ゼミの教授と面談だよ。侑ちゃんも来週、あるでしょう?」

侑「……!」

侑「そっか、そんなのもあったね!忘れてたよ!」

28: 2022/08/15(月) 23:47:46.00 ID:Hr6rhWtQ.net
侑「用事は面談だけ?それなら待ってるから…」

歩夢「だめ。私の順番結構遅いし、それに、侑ちゃん寝不足でしょう?」

侑「それは…そうだけど…」

歩夢「家に帰ってゆっくり休んでて?お願い」

侑「そ、そっか…じゃあ、先に帰ってるね、終わったら、すぐ帰ってきてね」

歩夢「うん!わかったよ」




歩夢(………………侑ちゃん…)

29: 2022/08/15(月) 23:49:39.46 ID:Hr6rhWtQ.net
〜侑と歩夢の家〜

侑(歩夢、遅いなあ…)

侑(面談なんて、長くても一時間くらいだよね?)

侑(もう、とっくに帰って来てもおかしくない時間なのに)

ポツ… ポツ…

侑(あ、雨…)

侑(結構強そうだけど、歩夢傘持ってるかな…?)

侑「『歩夢、傘持ってる?駅まで迎えに行こうか?』送信、っと…」

侑(………既読、付かないなあ…)

30: 2022/08/15(月) 23:55:09.99 ID:Hr6rhWtQ.net
侑(…いつもはすぐ読んでくれるのに)

侑(まさか、昼間の蛍光灯…)

侑(いや、まさかね…)


ピカッ! ゴロゴロ…


侑「ひっ!」

侑(か、雷…)

侑(嫌な予感がする… 早く帰ってきてよぉ、歩夢…)

ガチャ

32: 2022/08/15(月) 23:59:10.96 ID:Hr6rhWtQ.net
歩夢「侑ちゃん?ただいまー」

侑「歩夢!遅いよ!心配したんだから!」

侑「メッセージも返してくれないし…」

歩夢「ごめんね、雨の中走って帰ってきたから、携帯見れなくて…」

侑「やっぱり傘持ってなかった… びしょ濡れだね」

歩夢「あはは、まずシャワー浴びるね」

侑「うん。コートとカバン乾かしておくね」

歩夢「ありがとう!じゃあ、入ってくる!」

33: 2022/08/16(火) 00:00:36.36 ID:EE3MLJyP.net
─────
───


侑(…ふう、ひととおり干し終わったかな)

侑(カバンの中までびしょびしょ…プリントはギリギリ…無事だね)

侑(まったく…だから迎えに行くって言ったのに)

侑(雨に濡れて冷えてるだろうし、温かい飲み物でも作ってあげよっと)



ヴー ヴー



歩夢「 ■ ち ゃ ん ? 」

34: 2022/08/16(火) 00:04:12.66 ID:EE3MLJyP.net
侑(………え?)

■夢「■ ち ゃ ん ? ■ ■ し た の ? 」

パリン!


パリン!


侑「い、嫌っ!歩夢!やめて!」

バタン!

侑(つ、机が勝手に倒れた…!)

35: 2022/08/16(火) 00:05:21.00 ID:EE3MLJyP.net
バタン! バタン! バタン!

豁ゥ夢「縺ゥ縺?@縺溘???シ溘d繧√※?」

侑「いやあああああああああ!!!!!!!!」

ザシュ ザシュ ザシュ

侑「ぅ…ぁ……み、耳が…歩夢…っ!」

侑「戻さないと… 戻さないと…」

侑「目……?」

36: 2022/08/16(火) 00:05:54.10 ID:EE3MLJyP.net
侑「これで…… 戻れる……?」

グチュ

■■「萓代■繧?s縲∫李縺?h窶ヲ」

侑「ひ…っ…」

侑「なんで!?どうして戻らないの!?」

グチュッ!

侑「戻れ!戻れッ!戻って!戻ってよ!」

グチュッ!

■■「■■■■■■■■■■■■」

侑「嫌アアあああああ!!!!!」

グチュッ!

グチュッ!

─────
───

37: 2022/08/16(火) 00:11:03.12 ID:EE3MLJyP.net
被害者:上原歩夢の証言

侑ちゃんとは幼馴染で、大学までずっと一緒だったんです。

はい、付き合っていました。

そうですね、高校を卒業して、一緒にシェアハウスを始めて…

その頃からですね。少しづつ私に依存するようになっていました。

元々は普通の子です。おかしいところなんてありませんでした。

付き合って1ヶ月くらいのとき「他の子と遊ばないでほしい」と言われました。

38: 2022/08/16(火) 00:12:04.82 ID:EE3MLJyP.net
まあ、よくある嫉妬というか、その時はむしろ可愛いなって思ったくらいでした。

でも、侑ちゃんはどんどんエスカレートしていって。

他の子と少し話しただけで、私の腕を痛いくらいに握って引っ張ったり。

突然情緒不安定になって、侑ちゃんのどんなところが好きかを言い続けないといけなかったり。

事件前日の夜もそうでした。夜中に泣き出して、侑ちゃんとの今までの思い出を全て話して聞かせてほしいって…

41: 2022/08/16(火) 00:19:11.86 ID:EE3MLJyP.net
私も流石に少し怖いな、って思ってたんです。だから、私のことも、侑ちゃんのこともよく知ってる先輩に相談してたんです。高校の時の、部活の先輩です。

今思うと、これが引き金でした。

事件当日も、その先輩と会ってたんです。侑ちゃんには、秘密で。

それで、少し帰るのが遅くなっちゃったんです。雨も降ってたし、急いで帰りました。

家に着いた時?普通でした。少し寂しがってはいたみたいですけど、いつものことです。

でも、シャワーから上がったら、

侑ちゃんが携帯を持って立っていたんです。

42: 2022/08/16(火) 00:20:19.95 ID:EE3MLJyP.net
多分、その先輩からのメッセージの通知を見たんだと思います。

怒っている…というよりは、何かに取り憑かれているみたいでした。異常でした。

置いてあった花瓶を割って、机を蹴飛ばして…

侑ちゃんは暴れ始めました。

それだけなら良かったんです。その後侑ちゃんは私の頭を押さえつけて…

カッターナイフで私の耳を切ったんです。

「戻って、戻って」って、言いながら。

45: 2022/08/16(火) 00:25:12.64 ID:EE3MLJyP.net
その後は…ごめんなさい、思い出したくありません。

でも、私、侑ちゃんのこと、恨んでないんです。

あの時私、「ああ、私この人に殺されるんだ」って思ったんです。

でも、侑ちゃんになら殺されてもいいや、って思ったんです。

私も異常ですよね。

意識がどんどん薄れていく中で、最後に侑ちゃんに伝えようって、必氏でした。

「ゆうちゃん、だいすきだよ」って、そう言ったんです──


おしまい

46: 2022/08/16(火) 00:28:37.14 ID:rGs5GPRG.net
侑ちゃんは精神病院送りかな?

47: 2022/08/16(火) 00:31:02.01 ID:jzWkBodF.net
もしくは自分で自分を壊してしまったか

48: 2022/08/16(火) 00:38:20.53 ID:BtE3Jbv/.net
侑ちゃんなんでこうなった…

49: 2022/08/16(火) 00:46:33.55 ID:EE3MLJyP.net
読んでいただいた方ありがとうございました。
平和なゆうぽむの過去作もあるので良かったら読んでください
【ラブライブ】侑「あ、ゴム切らしちゃった…」

引用元: 歩夢「異世界への行き方」