1: ◆CToYMTLgRvRe 2016/08/17(水) 20:50:47.38 ID:exLXzSy50
エリカ「あ、あの隊長...」

まほ「何だエリカ?」

エリカ「隊長が手に持ってるその冷凍ハンバーグは一体...?」

まほ「ああ、これか?今度お母様が西住流PRのために売り出すものでな」

エリカ「いや、それはなんとなくわかるんですが...

パッケージの『逸見クン印のお弁当ハンバーグ』って何なんですかァ?!?!?!」

※初SSです、キャラブレ駄文注意。

劇画ガールズ&パンツァー (てんとう虫コミックススペシャル)

2: 2016/08/17(水) 20:52:31.62 ID:exLXzSy50
まほ「何だ、ミートボールの方が良かったか?」

エリカ「いやそうじゃなくて!むしろハンバーグの方がありがたいけど!なんで西住流の商品に私の名前が使われてるんですか!?」

エリカ「てかそもそも、なんで西住流が冷凍ハンバーグの販売なんかに乗り出してるんですか?!」

まほ「ああ、エリカには話してなかったな。もともと西住流では戦車道のみならず選手の心身形成の面から食文化の方面にも精通していてな。特に挽肉料理は大変重要視しているんだ」

3: 2016/08/17(水) 20:53:06.88 ID:exLXzSy50
まほ「過酷な戦車戦に耐え得る健全な精神と身体を形成するにあたって食を重視するのは戦車道の基本であり、真髄であるというのがお母様の考えだ。」

エリカ「なるほど...家元は食事にまで神経を張っていらっしゃるのですか」

まほ「ああ、ただ作るのは基本菊代さんに任せっきりだがな」

エリカ「いやそれダメじゃん!!想像できたことだけど!!!」

4: 2016/08/17(水) 20:54:48.13 ID:exLXzSy50
まほ「お母様は家事に関しては基本ポンコツだからな。ただしカレーの出来はいい」

まほ「近年、聖グ口リアーナのように食文化を軽視する学校が出てきたり、島田流のようにファッション性重視の流派が出てきて戦車道界全体が表層的になってきている。」

まほ「そこでお母様は、自ら食品をプロデュースして知られざる西住流の食文化の面をアピールすると同時に、調理の苦手な主婦にも手軽に正しく西住流挽肉料理の一片を継承させていこうという計画を立てたようなんだ。そしてこれがその第一弾というわけだ」

エリカ「なるほど、大変勉強になりました...って、何でそこで私の名前が出てくるんですか!?隊長の独断ですか!?」

5: 2016/08/17(水) 20:55:30.04 ID:exLXzSy50
まほ「いや、私の判断ではない。お母様が『逸見さんはハンバーグがお好きでしょう?キャラクターにはぴったりではないですか』と決められてな」

エリカ「なんで家元が私の食事の好みをご存知なんですか!?」

まほ「前に家でみほが『エリカさんっていつもはキリッとしてるのに、ハンバーグ食べてる時は子猫ちゃんみたいな可愛いお顔になるんだァ』とニコニコしながら話してたぞ」

エリカ「みほォォォォォォォォォォ!!!!!」

6: 2016/08/17(水) 20:57:47.89 ID:exLXzSy50
まほ「お母様はあのとき普段では見せないような慈愛の表情を浮かべていたなァ...」

エリカ「何なんですか!!!西住家では私は一体どんな扱いなんですか!?!私は小動物かなにかですか!?」

エリカ「オマケにこのパッケージ、なんかビミョーにムカつく私の似顔絵イラストまでついてあるし!」

まほ「ああそれはな、赤星が『銀髪からたまに覗かせる寝顔がムッチャ可愛いエリカさんのイラストなら、たとえノーギャラでも描きますよ!』とニコニコしながら提供してくれたんだ」

エリカ「小梅ェェェェェェェェェェェェ!!!」

7: 2016/08/17(水) 21:04:47.41 ID:exLXzSy50
かくして、熊本県全域と学園艦を中心に販売が開始された『西住流謹製 逸見クン印のお弁当ハンバーグ』は料理の苦手な女子高生を中心に話題となり、冷凍食品業界では異例の大ヒットを記録した。

特に、大食らいで有名な大洗女子の五十鈴華は、学園艦内の全店舗を回り、約1000個もの冷凍ハンバーグを1日で平らげたのは半ば伝説として語り継がれている。

そしてこのヒットが、逸見エリカと西住流の運命を変える一コマだとはまだ誰も知らない...。

※明日に続きます。

22: 2016/08/20(土) 21:21:54.20 ID:xAg3EtiD0
数日後...@西住流総本山・西住邸

エリカ「あのぉ...家元?何故私は突然呼び出されたのでしょう?」

しほ「逸見さん、貴方を呼び出したのは他でもありません。貴方に礼を言いたいのです、先日発売した西住流謹製逸見クンじる

エリカ「スミマセンその名称は言わないでください蕁麻疹が出るくらい拒否反応示してるんですてかその名称のおかげでチームメイトからさんざ弄られて冗談抜きで困ってるんですよ!!!」

23: 2016/08/20(土) 21:22:29.40 ID:xAg3EtiD0
しほ「何言ってるのあなた!あれのおかげで西住流のもう一つの側面、挽肉食文化への世間の理解がとーっても深まったのよ!私たち、貴方にとっても感謝しているわ!名誉にこそ思っても、恥なんて思う必要これっぽっちもないのよ!」

エリカ「いやそれそっちの都合ですよね?!家元に感謝されてもこっちはちっとも得しないんですけど!しかもおもいっきり肖像権無視ですし!裁判したら私勝てますよ?!」

エリカ「少しは想像してくださいよ!道を歩いているだけでも子供達から『あ、ハンバーグイツミちゃんダァ!』とか『今日はおネンネ顔じゃないの~?』とか悪意のない声で呼びかけられる苦痛を!私の銀髪クールのイメージ台無しですよ!」

24: 2016/08/20(土) 21:24:42.32 ID:xAg3EtiD0
しほ「元々そんなのなかったじゃない、例の決勝での貴方の様子を聞いてから、我が家では地団駄エリちゃんってみんなで呼んで笑ってたのよ。」

エリカ「いつの間にそんなあだ名ついてたんですか?!」

しほ「ああ、みほが前に電話してきた時『決勝で会うまで逸見さん私への憎しみで本当に性格かわっちゃったのかなと怖かったんだけど、地団駄ふんでるエリカさんみてやっぱり可愛いエリカさんだなぁって安心しちゃった!』とウキウキした声で話してたわ」

エリちゃん「みほォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

25: 2016/08/20(土) 21:25:20.95 ID:xAg3EtiD0
しほ「ホントに地団駄踏まないでちょうだい、ホコリが出るわ。それよりも、地団駄エリちゃんにはお礼をしなくてはなりませんね」

エリちゃん「さっきからなんなんですか家元?!人の話もろくすっぽ聞かないで!これで冷食ハンバーグ一年分とかいうふざけた謝礼だったら私この家ぶち壊しますよ!?」

しほ「そんなケチ臭い謝礼では西住流の名が廃るわ。貴方には、西住流からハンバーグレストランを一軒差し上げようと思っています」

エリちゃん「...は?」

26: 2016/08/20(土) 21:26:02.44 ID:xAg3EtiD0
しほ「聞こえなかったかしら?












貴方が、ハンバーグ屋の、オーナーになるってことよ」

エリちゃん「」

27: 2016/08/20(土) 21:28:14.53 ID:xAg3EtiD0
エリちゃん「い、イヤイヤイヤイヤ意味わかんない何でそんなことに?!?!?!」

しほ「だって貴方、ハンバーグ屋になるのが夢だったんでしょう?まほがいつもみほに言ってたわよ、『エリカはな、普段はキツそうな顔してるが、私と2人きりになると(ハンバーグ屋さんになりたいですよぉたいちょ~)と小声で言ってくるんだ...』と、とっても愛おしそうに」

エリちゃん「隊長ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

しほ「黒森峰の学園艦のところにいいテナントがあったから抑えて改装しといたわ、そういう訳で明日からお願いね、本格的な挽肉料理で西住流の食文化をしっかりと伝えていらっしゃい!あ、菊ちゃん、逸見さんに秘伝のレシピお願~い」

菊代「合点承知の助!」

エリちゃん(もうやだこのポンコツ家族...)

29: 2016/08/20(土) 21:35:44.43 ID:xAg3EtiD0
かくして、黒森峰女学院学園艦に華々しくオープンした『西住流プロデュース HamburgHaus ERIKA』はその味のクオリティとオーナーシェフエリちゃんの憎めないキャラで瞬く間に大人気店舗となった。

特に、フードファイターで有名な大洗女子の五十鈴華は噂を嗅ぎつけすぐに来店、約1000食分のハンバーグ在庫を2時間で平らげ「店が潰れルゥゥゥ!」とエリちゃんを半泣きさせたのは半ば伝説として語り継がれている。

しかし、この店のヒットが、逸見エリカと西住流の間に亀裂を走らせる一コマになるとはまだ誰も知らない...。

32: 2016/08/20(土) 23:35:14.09 ID:xAg3EtiD0
※番外編

ギャァァァァァァァァ!!!!

島田流召使「ど、どうされました奥さ...ヒッ!」

千代「愛里寿が...可愛い可愛い私の御人形ちゃんだった愛里寿が...」ガタガタ

愛里寿「この前転校先候補を調べに黒森峰いったら華さんがエリカさんのやってるハンバーグ屋さん紹介してくれて、目玉焼きハンバーグ500個もご馳走になっちゃった」ドタプーン

千代「あぁ、調子に乗っちゃう愛里寿も可愛らし...いえいえ、ファッション性が重要な島田流ではあってはならないことだわ!」

千代「それもこれも、あの憎っくき西住流の某略のせいね...見てらっしゃい、きっといつの日かズタボロにしてやるわ!」

おのれしぽりん!がんばれちよきち!我らが島田流の明日はどっちだ!(続きません)

35: 2016/08/21(日) 01:13:29.80 ID:ntqxqg4C0
数ヶ月後...@西住流挽肉道総本山・西住邸

この日、普段はポンコツな西住家が、珍しく張り詰めた空気に支配されていた

エリカ「...失礼します」

しほ「エリちゃ...いえ、逸見さん」

しほ「今日、なぜ呼ばれたか、貴方にはわかりますね?」

エリカ「...ええ、重々承知しております」

36: 2016/08/21(日) 01:14:02.08 ID:ntqxqg4C0
しほ「では端的に申し上げます...








今日限りで、貴方を西住流から破門いたします」

エリカ「...」コクリ

37: 2016/08/21(日) 01:14:41.38 ID:ntqxqg4C0
~~

事は数日前に遡る

西住流の台所長とも言える菊代は、オープン以来久しぶりに『西住流プロデュース HamburgHaus ERIKA』を訪れた。

メディアにも取り上げられ、すっかり大物となったオーナーシェフ逸見エリカは、何も言わずにいつも通りハンバーグステーキを差し出した。

その塊の一片を口に運んだと同時に、菊代の脳内を、違和感や怒り、そして哀しみが襲った。

彼女は代金を置き、無言でその場を立ち去り、西住家に駆け戻った。

そして、しほの胸元でこう泣き叫んだのだ。

『あんなのっ...!西住家のっ...!!ハンバーグじゃないッ...!!!』

38: 2016/08/21(日) 01:15:31.11 ID:ntqxqg4C0
~~

しほ「...菊代は、一口食べた時の肉汁じゅわぁに違和感を覚えたようです。つなぎに卵を使いましたね?」

エリカ「ええ、旨味を感じやすくするため、保水率が高い卵を使うのは当然の事だと思い、使わせていただいております」

エリカ「当初渡されたレシピには、肉9牛脂1ツナギ塩のみと書かれていました。確かに純粋な挽肉料理としては至極真っ当なレシピではありますが、あれでは日本人好みのふっくらとした食感は出せません」

しほ「貴方の店は西住流の伝統継承拠点だったはずよ?柔らかい食感では挽肉本来の感触と、肉を噛んで旨味を引き出し愉しむ食文化を伝えられないわ」

39: 2016/08/21(日) 01:16:17.86 ID:ntqxqg4C0
しほ「メニューを拝見しましたが、チーズ乗せハンバーグが提供されているのはなぜなの?菊代のレシピには書いてなかったはずよ」

エリカ「私が考案しました。ハンバーグを楽しんでもらうには、子供の好きな味覚に訴えるメニューが必要不可欠だと思ったからです。実際、当店の人気1位になっています。」

しほ「西住流の挽肉食文化は、味覚の未熟な子供を相手にはしていないわ」

エリカ「...」

40: 2016/08/21(日) 01:17:36.46 ID:ntqxqg4C0
しほ「前にも言いましたね?西住流の挽肉食文化は、過酷な戦車戦に耐え得る健全な精神と身体を形成する為の基礎だと。貴方は食の快楽に溺れ、その掟を破ったのです」

エリカ「...お言葉ですが、家元。

41: 2016/08/21(日) 01:18:23.53 ID:ntqxqg4C0










私は決して、西住流の伝道者になるために、ハンバーグ屋になりたかった訳ではありません」

しほ「...!」

42: 2016/08/21(日) 01:19:37.03 ID:ntqxqg4C0
エリカ「私はあくまで、自分の大好きなハンバーグの美味しさをみんなに伝える喜び、そして食べてくださるお客様の笑顔を獲得する達成感を得たいがために店を続けているのです。」

エリカ「決して大義名分を他者に押し付けるためにやってる訳ではありません。そのような建前を並べていては、食の悦びなどあったものではありません。それはもはや、ハンバーグに対する冒涜そのものです。」

エリカ「家元は確か、謝礼としてハンバーグレストランを『差し上げる』とおっしゃいました。私はその言葉を、『私は好きにした、君も好きにしろ』と同義だと受け取ったまでです」

しほ「...」

43: 2016/08/21(日) 01:20:40.77 ID:ntqxqg4C0
しほ「...だとしたら、もう貴方がここにいる必要はありませんね」

エリカ「...そのようですね。家元、今まで本当にありがとう御座いました」バタン

しほ「...」

しほ「菊ちゃ...いえ、菊代。私たちも開店準備をするわよ」

菊代「家元...!」ウルッ

しほ(...あの子、シン・ゴジラを見れるまでに成長したのね)

44: 2016/08/21(日) 01:21:17.26 ID:ntqxqg4C0
かくして、『HamburgHaus ERIKA』はみほのツテを辿って大洗に移転し、黒森峰の跡地にはしほと菊代主導による『西住挽肉道』が開店した。両店とも瞬く間に以前を凌ぐほどの大人気店舗となったが、職人と化したエリカの顔からはかつての地団駄エリちゃんの面影が完全に消え失せていた。

特に、茨城のイーティングマシーンとして有名な大洗女子の五十鈴華は早速噂を嗅ぎつけ両店とも来襲、両者約2000食分のハンバーグ在庫を準備し構えたが、やはりどちらも3時間で平らげた。菊代には「この鬼ぃッ!」と吠えさせ、エリカの店舗に至っては五十鈴流による買収を持ちかけ、丁重に断られたのは半ば伝説として語り継がれている。

しかしこの後、とある1人の乙女の行動が、逸見エリカと西住流の仲を修復することになるとはまだ誰も知らない...。

45: 2016/08/21(日) 01:21:49.79 ID:ntqxqg4C0
※次回、最終回です

46: 2016/08/21(日) 01:23:23.11 ID:ntqxqg4C0
※番外編 2

バミューダ「「「隊長ォォォォ~~!無事痩せられたんですねェ~~~!!良かったァ~~~~!!!」」」

愛里寿「ありがとう、みんな...。ボコミュに行こうと大洗に遊びに行って、たまたまバレー部の人達に会ったの。そのまま練習に付き合っていたらすっかり痩せちゃった」スッキリ

ルミ「はっ?!ま、まさかバレー部に入るために大洗に転校なんてことないですよね??」ワナワナ

愛里寿「うーん、あの人たち脳筋だからそれはないかなぁ...」

ルミ「ほっ、良かったァ...」

メグミ「何気ィ抜いてんのよルミ!私達の可愛い隊長が成人病になってしまう寸前だったのよ!」

アズミ「それもこれも、あの西住流率いる忌々しい黒森峰の某略のせいね。BC自由にいたときはボロクソにやられたわ...見てらっしゃい、きっといつの日かワインの搾りかすにしてやるわ!」

おのれ黒森峰!がんばれバミューダ!我らが大学選抜の明日はどっちだ!(やっぱり続きません)

51: 2016/08/25(木) 22:27:13.85 ID:8qyDHtrB0
数日後の晩

みほ「...よし、明日のエキシビション用の作戦マニュアルはこれで完成っと」

みほ「家のみんなも見に来てくれるから嬉しいけど、まだエリカさんとだけ話ができてないなぁ...」

みほ (...エリカさんが大洗に来て以来、西住家は少し変わってしまいました)

みほ (お姉ちゃんによると、お母さんは菊代さんとハンバーグ屋経営に躍起になっていて、近所では『粗挽き夫人』と呼ばれているらしいです)

みほ (大会以降、仲直りついでにお母さんと電話で始めた「エリカさんの激萌えポイント女子トーク」も、最近はぷっつり途絶えたまま...)

52: 2016/08/25(木) 22:27:58.77 ID:8qyDHtrB0
みほ (エリカさんが転校してきた時は少し嬉しかったけど、授業が終わったらすぐに店の仕込みに入るため直帰してしまい、話す機会もありません)

みほ (前みたいに「隊長がらいしゅきれすのに~」と子猫ちゃんみたいな寝言を漏らすこともなくなってしまいました...)

みほ (...どうしたら戻れるんだろう)

みほ (...可愛いエリカさんをなでなでしながら家族みんなで笑ってた、あの頃のように...)

オーイシイレタヒキニクホゾンジョーキョードーダー?
ダイジョーブッスヨネーサンクサッテナイッスー!

みほ (あれ、あの声...?)

53: 2016/08/25(木) 22:39:44.83 ID:8qyDHtrB0
~~

みほ「あ、やっぱりアンチョビさん達だ~」

アンチョビ「ゔ、ゔぇぇぇぇぇぇ西住ィィィィィィ?!?」

ペパロニ「ほらぁ、姐さんでっかい声で喋ってたから気づかれちゃったじゃないですかァ」

みほ「あの...一体何をなされてるんですか?」

ペパロニ「見てわかんないっすか?屋台出店の準備っすよ!明日のエキシなんとかのための」

アンチョビ「おいぃぃぃぃサプライズ狙ってたんだから言うなよぉ~」ヘッドロック~

ペパロニ「つっても見られちゃったら変わんないじゃないっすか~」ギブギブ

みほ「あ、あはは...(苦笑)。そう言えばカルパッチョさんは?」

54: 2016/08/25(木) 22:40:59.45 ID:8qyDHtrB0
アンチョビ「あー、あいつは運び出しまで手伝ってくれてたけど、なんか旧友のたかちゃんとやらに会いに行くって別れてな」

ペパロニ「なんでも『愛しのたかちゃんを悪友たちの酷い食事から救う』とかいって包丁一式持って行きましたよ」

みほチョビ「「え?」」

ペパロニ「どういう意味っすかネ?よっぽどマズイもん喰わされてるって愚痴ってたんしょうねーアハハ!」

みほチョビ(き、聞かなかったことにしよう...!巻き込まれたら命が...!!!)

55: 2016/08/25(木) 22:41:36.57 ID:8qyDHtrB0




ぐ~





みほ「あっ......」

56: 2016/08/25(木) 22:42:17.99 ID:8qyDHtrB0
アンチョビ「お、何だ~西住腹空かしてんのか~え~?」ツンツン

みほ「ご、ごめんなさい!明日の作戦詰めていてご飯食べてなくて...」

アンチョビ「はは~根詰めすぎて食い忘れたって奴だな~。腹ペコだと隊長勤まんないぞ~!よーし、今からとっておきの限定メニューご馳走してやるぞ!」

みほ「え、そんな、ご迷惑じゃないんですか?!準備中ですし、明日の提供分もあるのに...」オロオロ

57: 2016/08/25(木) 22:43:15.55 ID:8qyDHtrB0
アンチョビ「いいっていいって!いつどんな時も、美味しいご飯を欲するものがいたら共に分かち合う!これこそアンツィオの流儀だからな!」

みほ「あ、ありがとうございます...!」

アンチョビ「よーしペパロニ!材料サッと揃えて、とびっきりの『トマトソース煮バーグ』ご馳走してやれ!」

ペパロニ「合点承知の助っス姐さん!」

みほ(菊代さんもご飯作るときいつも言ってたけど、『合点承知の助』って流行ってるのかな...?)

58: 2016/08/25(木) 23:06:54.99 ID:8qyDHtrB0
ペパロニ「んじゃー作っていきますよ~」

牛7豚3でつくったバーグ種をコロコロっと丸めてオーブンに投入~
トマト缶を鍋に開けてコンソメとイタリアンソルト、さらに新鮮なトマトを切った奴を投下~
コトコトっと煮込んだらちょうどレア目に焼けたバーグを入れて~
ソースかけかけしながら頃合いをみて深皿にいれますね~

アンチョビ「あ、最後の仕上げはやらせてくれ!」

アンチョビ「チーズを乗っけてトースターでちょい焼き、これにパセリ乗っけて出来上がりっと。どーだ、旨そうだろ~!」ホレホレ

クンクン
みほ「ホントだ、とろけたチーズとトマト、それに焼けたバーグの香ばしさもあってとっても
いい匂い...!」

59: 2016/08/25(木) 23:08:02.43 ID:8qyDHtrB0
ハムッ!モグモグ...

みほ「んん~!」ジタバタ

アンチョビ「おっ!思わず踊っちゃうほど美味かったか~?」ニヤニヤ

みほ(はっ、ついエリちゃんダンスやっちゃった!)テレテレ

みほ「ふぁい!すごく美味しいれす!お肉とトマトの旨みがアフアフッ!」

ペパロニ「熱々だからゆっくりでいいっすよ~」

みほ「ふぁい...」モジモジモグモグ

60: 2016/08/25(木) 23:21:56.30 ID:8qyDHtrB0
アンチョビ「ハハハ!そうだろ~うまいだろ~。なぁんせこのバーグ私自慢の特別レシピだからな!」

みほ「多分、友達の華さんだったら100個は軽くいけちゃうと思います!」

アンチョビ(え、そんな食うの?!)ワナワナ

みほ「何ていうか、とっても懐かしくてあったかい味...」

アンチョビ「おっ、『懐かしい』ときたか~。勘がいいなァ、分かってるじゃないか!」

ペパみほ「「え?」」キョトン

61: 2016/08/25(木) 23:26:22.49 ID:8qyDHtrB0
アンチョビ「実はこのメニュー、誕生にちょっとした小話があってな。今日は特別に聞かしてやろうじゃないか!」

ペパロニ「姐さん私も初耳っス!」

アンチョビ「あーそうか、これ人に喋べんの初めてだったな~。まあ大した話じゃないが聞いてくれ...

62: 2016/08/25(木) 23:27:09.11 ID:8qyDHtrB0
~~

実はこれな、私の子供の頃の思い出の料理なんだ。

ウチはそんなに裕福じゃなくて、外食なんぞ2年に一度できればいい方だった。

母方の実家がトマト農家だったから食うには困らなかったが、大抵夕食は寿がきやの味噌煮込みネギだけとか、トマト使ったお手軽パスタとか、キャベツとトマトのお手軽サラダとか、そんな品揃えのルーティンだったわけだ。

普段がこんなだからか、街歩いてる時レストランのショーウィンドウなんかにある鉄板のせのハンバーグとかが無性に美味しそうに見えてな、よく母さんに食べたい食べたいと駄々こねて困らせたもんだよ。

63: 2016/08/25(木) 23:31:29.19 ID:8qyDHtrB0
そんなある日の晩、母さんが珍しく挽肉を買ってきたんだ。何でも今日は肉屋のセールで合挽き肉がすごく安かったらしい。

そしていつものトマト缶とチーズを用意してささっと作ってくれたのがこのトマトソース煮バーグだ。

そりゃレストランのドミソースのかかったハンバーグとは違ったけど、私はウワァ!って喜んで、そりゃもう夢中で食べたもんだよ。口の周り真っ赤でベトベト。

何より、母さんが私のわがままをちゃんと覚えていてくれて、それに応える形でご飯を作ってくれたのがものすごく嬉しかった。あの時は、自分が愛されてると感じたなぁ...。

もちろん、残りのソースをパスタにかけてお腹も膨れたしな。そんなところも抜かりなかったわけだ。いい思い出だよ...

64: 2016/08/25(木) 23:42:48.95 ID:8qyDHtrB0
~~

アンチョビ「今でこそ娘を私学に出せるくらいは稼げるようになったけど、貧しかった時も母さんはたっぷりご飯をつくってくれたんだ」

みほ「...ステキなお母さんなんですね」

アンチョビ「そうだろう。母さんのそんな姿を見て、私は『ああ、私も誰かを率いる立場になったらご飯だけは楽しく食べてもらいたい』って思うようになったんだろうな」

アンチョビ「このバーグは、そんな家族の思い出が一緒になった特別なメニューなんだ。だから、特別な時にしか出さないってわけだ」

ペパロニ「...いうぃばなじっずねぇ姐ざんんんん」ボロナキ

みほ(『家族の思い出が一緒になったメニュー』かぁ...西住家にもそんなのがあったら...)

みほ(...あ!あれがあった!)

65: 2016/08/25(木) 23:49:39.30 ID:8qyDHtrB0
みほ「有難うございますアンチョビさん、ペパロニさん!今のお話おかげで家族をが元どおりになれるステキなヒントを頂けた気がします!」

アンチョビ「お、お?!そ、そうなのか??それはよかった、じゃないか」アセアセ

みほ「用事ができたので戻ります、美味しいバーグ、本当にごちそうさまでした!」トテトテ

ペパロニ「明日も試合後に来てくださいねー!そん時は500万リラっすよー!」

アンチョビ「みんなによろしくなぁー!......さぁ、私らも準備を続けるぞ!」

みほ(あれをお母さんやエリカさんに食べてもらえれば、ひょっとして...!)

66: 2016/08/25(木) 23:51:31.01 ID:8qyDHtrB0
~Intermission~

※やはり二回に分かれてしまいました。取り敢えず明日夜までには〆る予定です。もう暫くお付き合いを。

67: 2016/08/26(金) 00:13:57.58 ID:g8s9R8+S0
※番外編3

妙子「キャプテン!何だか知らないけどバレー部の入部希望者が増えています!」

典子「本当か近藤!苦節数ヶ月、遂にバレー部春の時代が来たか!」

忍「なんでも、愛里寿さんが練習に参加していてダイエットに成功したって事が校内中に広まったらしいです!」

典子「すごいじゃないか河西!どんなきっかけであれ、バレーに興味を持ってくれることはいいことだ!」

あけび「私も元はと言えば、忍ちゃんのスレンダーな身体に憧れて入ってきましたからね!根性があれば、みんな痩せられますよ!」ドタプーン

妙子「ええ、根性さえあれば、みんな忍ちゃんみたいなカッコいい体型になれるって証明してやりましょう!」ドタプーン

典子「そうだな!ダイエットもバレーも勧誘も、一に根性二に根性!新入りにも河西を目指してもらって根性でバレーに馴染んでもらおう!」

典あ妙「「「根性ーーーーーー!!!!!!!」」」

忍「...」

おのれ体脂肪!がんばれ忍ちゃん!我らがバレー部の明日はどっちだ!(続く訳ないでしょ?)


71: 2016/08/28(日) 15:05:43.26 ID:Mkz1nmf4O
翌日

みほ「あ、お姉ちゃん。例のもの作ってきてくれた?」

まほ「ああ、勿論だ。これをみほの分と一緒に、見学しているエリカに渡せばいいんだな?」

みほ「うん、私の分はもうお母さんにもう渡したから大丈夫。なんだかこれ作ってると、子供の頃を思い出しちゃうな」

まほ「確かにな、私も久しぶりの料理が懐かしかったよ。あの頃のみほは、出会ったばかりの銀髪お嬢様をミミズと毛虫とドブネズミの氏骸で脅かしていたヤンチャっ子だったなァ...」トオイメ

みほ「も、もうお姉ちゃん!あれは一応ドブネズミじゃなくてハムスターだよ!!」プンスカ

まほ「ははは違いない!」

ニシズミドノーソロソロシアイカイシデスヨー
イソイデミポリーンハナガマタナポリタンバカグイシチャウー
トッテモオイシイデスペパロニサンオカワリ500サラクダサイ!
スコシハエンリョシテクダサイッスヨイスズノネーサン!
ネムイ...

みほ「じゃ、また後でね...」

まほ「ああ、任せろ」

72: 2016/08/28(日) 15:11:03.51 ID:Mkz1nmf4O
エリカ(ったく、なんで黒森峰元副隊長の私が見学組扱いなのよ...まあ転校してきてから日も浅いし仕方ないけど)

エリカ(それに最近はハンバーグレシピ研究にかかりっきりだったもの、チームワークとか育んでる暇なんかないわ)

エリカ(そういえばさっきアンツィオの奴らがイタリアンハンバーグもどきを出してたわね...実食して査定してやらないと...)

まほ「見学のご身分だというのに随分といかつい顔をしてるな、『地団駄エリちゃん』」トントン

エリカ(...え?)フリムキ

まほ「久しぶりだな、エリカ」

エリカ「た、隊長ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!?!?!」

73: 2016/08/28(日) 15:14:53.96 ID:Mkz1nmf4O
まほ「騒ぐな、私はもうお前の隊長ではない」

エリカ「い、いやいや確かにそうですけど西住流やめても私にとって隊長は隊長なわけででももう黒森峰じゃないしってかなんで来てるんですか?!?!?」

まほ「いやぁ、みほから電話で『ハンバーグ狂いを悪化させて険しくなっちゃってるエリカさんのお顔を昔の激萌えエリちゃんスマイルに戻してあげて!』ってせがまれてな」

エリちゃん「みほォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

まほ「ついでに小梅からも『私たちの副隊長を取り戻して来て下さい!あのカワユイ寝顔をペロペロしないと毎晩動悸と発作に襲われて眠れないんです!!』と懇願されたんだ、隊員の体調を管理するのは私の仕事だからな」

エリちゃん「小梅ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

74: 2016/08/28(日) 15:24:14.88 ID:Mkz1nmf4O
エリカ「......てか、いくら隊長の願いでも私は戻りませんよ。もう私は西住流の人間ではないんですから」

まほ「ああ、私だって別に無理矢理引き戻そうとしに来たわけじゃない。ただ今日はエリカに是非とも食べてもらいたいものがあってな」

エリカ「......私の舌はそんなにやわじゃないですよ」

まほ「まあそう言わず、取り敢えず見てくれ」タッパーパカッ

エリカ「こ、これは......?」

~~

菊代「......そろそろ開けないんですか?みほさんからのタッパー」

しほ「そうね、重みから挽肉料理と推定できるわ。挽肉道としては邪道だけど、流石に娘の料理を貶すほど心は狭くないつもりよ」パカ

しほ「こ、これは......?!」

75: 2016/08/28(日) 15:41:30.03 ID:Mkz1nmf4O
エリカ「......は、ハンバーグ、なんでしょうか?」

まほ「ああ、私とみほで作ったものだ。2人とも料理は苦手でうまく丸められず、汚い見た目だがな」

エリカ「......なんだか今までの出来事の切っ掛けになったお弁当ハンバーグみたいなサイズですね。一応いただいてみます」パクッ

エリカ(……?!)

エリカ(そんな、ウソよ......!)

~~

菊代「し、しほさん?」

しほ(まさか、アレだというの......?!)パクッ

しほ(ああ、そうよ、コレよ......!)

76: 2016/08/28(日) 15:42:12.37 ID:Mkz1nmf4O
エリカ「懐かしのッ......!」

しほ「あの味ッ......!」








しほエリ(......西住姉妹特製「おうちバーグ」よッ!!!!!!!!!!!)

77: 2016/08/28(日) 15:56:24.01 ID:D+NvGOjkO
~~

その日しほとエリカが口にしたのは、かつて西住姉妹が母親のために作った「おうちバーグ」の再現そのものであった

まだ彼女たちが少女だった頃、しほは西住流師範に就任したばかりで多忙な日々を送り、家事などできる状況ではなかった

そんな或る日、台所長である菊代が過労で寝込んでしまう事案が起こる

そこで姉妹は二人の代わりに料理を作ってあげようと台所にたち、レシピを見よう見まねでこねこねとハンバーグをこしらえたのだった

3人じゃ寂しいというので近所に住んでいた銀髪お嬢様ことエリカを強引に引き連れ、その日の晩飯と相成ったわけだ

サイズはちっちゃく、ちょっと黒こげで、おまけにかじればボロボロこぼれる。

お世辞にも極上の味とはいえないものの愛がたっぷり詰まったそのバーグを、しほは涙を流しながら、エリカはウキウキと楽しく頬張ったのであった

そして今、エリカは自分がハンバーグ好きになった切っ掛けがこの「おうちバーグ」だったのだとハッキリと再認識したのである!

78: 2016/08/28(日) 16:09:51.90 ID:D+NvGOjkO
~~

エリちゃん「隊長ォォォォ......尊い......尊い味ですぅぅぅ………!」ボロナキ

まほ「そうか、そうか、本当に良かった……。すっかり、可愛いエリちゃんの顔に戻ったな......」ナデナデ

エリちゃん「ゔぁいぃぃぃぃぃぃぃ……......」グスグス

~~

しほ「菊ちゃん、あなたも食べて、あの味よッ......!」ボロナキ

菊代「ああっ、ああっ、あの味ですッ......!助けてもらった、あの時の味......!!」

~~

まほ(ああ、挽肉道の本質が「愛」だってことを一番理解していたのは、みほだったんだな......)

まほ(みほ、やっぱりお前は、西住の子だよ......!)

79: 2016/08/28(日) 16:12:54.30 ID:D+NvGOjkO
~~

その後、エリカさんはお母さんと和解して、無事西住流に復帰し、黒森峰に帰っていきました。ハンバーグに関してはしっかりと修行しなおすそうです。バイバイと手を振る姿がとっても可愛くて、でもなんだか暫しのお別れって感じて何故だか泣いちゃったな。

お母さんと菊代さんがやっていた「西住挽肉道」も毎週金曜限定の営業になりました。残りの時間は、本来の戦車道家元業や家族の時間、そして私とのお喋りに当ててくれるそうです。
昨日なんか、久しぶりのエリちゃん激萌えトークで朝まで盛り上がっちゃった!

「おうちバーグ」の噂はみんなに広まったみたいで、あんこうのみんなにもご馳走してあげることにしました。沙織さんが色々教えてくれてさらに美味しくできたし、楽しかったなァ。

そうそう、普段は大洗のブラックホールとか言われちゃってる程大食いな華さんが、一口頬張った瞬間

「みほさんッ......!私は今までッ......!食べ物に対してなんて無礼な食べ方をッ......!」

と涙を流しながら慈しむかのように味わってくれたのはびっくりしちゃいました!

80: 2016/08/28(日) 16:23:33.74 ID:D+NvGOjkO
最後に、私とエリカさんとのLINEでのやりとりを載せますね。



エリカ@バーグ命:今回の一件でよく分かったわ。私の作るバーグには、まだまだ愛が足りてないってね。

みほ@ボコ♡:ううん、エリカさんのバーグだってとっても美味しかったよ!お客さんに美味しく食べてもらいたいって気持ちがたっぷりで!

エリカ@バーグ命:いずれは全人類が涙を流すくらいの愛情を込めてハンバーグをこしらえてあげるわ!その時は貴方が試食第1号よみほ!これが私のハンバーグ道なのよ!

みほ@ボコ♡:うん!楽しみにしてるね!地団駄激萌えエリちゃん!!

エリカ@バーグ命:だから!そのあだ名止めろォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!



みほ(可愛いゾ、エリちゃん!)

81: 2016/08/28(日) 16:25:51.03 ID:D+NvGOjkO
※終わりです。HTML依頼出してきますね。
因みに筆者が好きなファミレスバーグは断然ロイホです。
では、御静読ありがとうございました!また会う日まで!

82: 2016/08/28(日) 19:18:07.87 ID:/b3mKAr1o
乙。ガンバレエリちゃん

83: 2016/08/28(日) 19:50:15.80 ID:l4ChPQZAO

エリちゃん可愛い

引用元: 【ガルパン】エリカさんのハンバーグ道です!