1: 2016/12/06(火) 16:33:06.11 ID:vixu/TuV0
これは「俺ガイル」と「バトガ」のクロスSSです。時間軸は俺ガイルに合わせます。

2: 2016/12/06(火) 16:47:52.24 ID:vixu/TuV0
女子校

それは男子高校生のみならず男子全員が一度は憧れる「秘密の花園」
男子校の汚くてむさくるしいイメージとは真逆の「綺麗」で「清楚」な場所
もちろん、女子ばかりだから人間関係がややこしくなることはぼっちを極める俺じゃなくてもわかりきっていることだが、
俺は男だ。ゆえに女子のめんどくさい人間関係には入らず、すべて外から眺められる。だから女子校最高!と思っていた。

だが

ひなた「八幡くん、HR早く終わらせようよー」

うらら「そうだよ、ハチくん!うららこのあとアイドルグッズの物販に並ばないといけないのに!」

心美「う、うららちゃん、そんなこと言っちゃだめだよぉ」

みき「遥香ちゃん、昴ちゃん、帰りに新しくできたケーキ屋さん寄っていこうよ!」

昴「いいね!あそこのケーキ前からチェックしてたんだぁ、楽しみ~」

遥香「いちごのタルトもあるかしら」

明日葉「おいみんな、比企谷先生が困ってるだろ。静かにしろ」

蓮華「まぁまぁ明日葉~、固いこと言わないの、せっかくのかわいい顔が台無しよ?」

八幡「どうしてこうなった…」

11: 2016/12/07(水) 01:15:23.15 ID:G7Np97Dd0
比企ヶ谷ではなく比企谷でしたね。今気づきました。今後直します

15: 2016/12/07(水) 15:15:45.46 ID:G7Np97Dd0
補足です。
時代は俺ガイルと同じで現代ということにしてください。ただ、バトガの世界観は第二章がすべて終わって、詩穂も花音も仲間になっている状況で、地球に現れるイロウスを倒していくという本編とは離れた設定でやっています。

16: 2016/12/07(水) 15:23:09.99 ID:G7Np97Dd0
さら補足。詩穂も花音もサドネも星守クラスにはいますが、バトガ本編のようなスペースコロニーや月、火星などの近未来の設定や、審判の日、地球奪還などの設定は無視しています。あくまで「現代の地球だけを舞台にして、人間を襲うイロウスと星守が戦う」というように補完をお願いします

3: 2016/12/06(火) 17:26:39.85 ID:vixu/TuV0
数日前、総武高校、奉仕部部室


静「邪魔するぞ」

雪乃「平塚先生、入るときはノックを」

静「悪い悪い、ちょっと急ぎの大事な連絡があるんだ」

結衣「何々?」

雪乃「それは奉仕部への依頼ということでしょうか?」

静「いや、今回は比企ヶ谷個人へのものだ」

八幡「なんすか」

静「聞いて喜べ比企ヶ谷、明日からお前は神樹ヶ峰女学園で教師をやることになったぞ」

八幡「……は?」

結衣「神樹ヶ峰女学園って星守のいるあの学校!?」

雪乃「待ってください平塚先生、この男が女子校なんて行ったら校舎を見ているだけで警察に捕まってしまいます。
   それにこんなぼっちな男が生徒と関わらなければならない教師なんて務まるはずがありません。
   神樹ヶ峰女学園の生徒や名誉に多大な損失を与えかねません」

八幡「おい、俺を公害のように扱うな。つかそもそも何がなんだかさっぱりわからないんだが。
   いきなり女子校行って教師やれって言われても頭がついていかないんですけど、説明してください平塚先生」

静「説明と言われてもな、神樹ヶ峰女学園の先生に私の顔見知りがいて、この前飲んだ時に面白そうだから交流ということでこちらから生徒を一人送ることになったのだよ」

雪乃「その話だと、向こうに行くのが比企ヶ谷君である必要はないし、教師にもならなくていいんじゃないかしら」


4: 2016/12/06(火) 17:54:45.61 ID:vixu/TuV0
静「まぁ話は最後まで聞け雪ノ下。当初は生徒として女子を行かせるつもりだったのだが、向こうの理事長が『どうせなら男の子を呼びましょう』と言い出したらしくそれにこちらも同意したわけだよ。だが、女子校に男子生徒が行くのはマズイので、教師という肩書を与えたわけだよ」

結衣「へぇー、なんかすごいねヒッキー!もう先生になっちゃうんだ!」

雪乃「由比ヶ浜さん、この男をそのように調子に乗らせてはダメよ、絶対に良からぬ方向に権力を使うわ」

八幡「使わないし、そんな権力こっちから願い下げだよ。ってかそれなら俺じゃなくてもいいんじゃないですか?葉山とか適任だと思うんですけど」

静「人選に関しては向こうが通達を出してきたのでこっちからは何も提案はしていない。私個人としては君が選ばれてよかったと思っているがね」

八幡「なんでですか?」

静「単純に君が適任だと思ったまでさ。あ、ついでに言うと辞退はできないからな。頑張りたまえ」

結衣「ってか、明日から行くってことはヒッキー奉仕部には来られないの?」

静「あぁ、期間は特に決まってないからな。こっちと向こう、双方が満足すればこの交流は終わりだ。それまでは雪ノ下と由比ヶ浜、二人で活動してもらうことになる。」

雪乃「奉仕部については大丈夫ですが」

静「なら問題ないな。明日からはそういうことで各々頑張ってくれたまえ」

八幡「先生、肝心なことを聞いてないんですけど。」

静「なんだね、比企ヶ谷」

八幡「どうして俺が選ばれたんですか?」

静「『神樹』が君を選んだんだよ」

8: 2016/12/06(火) 18:21:44.68 ID:vixu/TuV0
まだ先ほどの話を受け入れられないまま帰宅すると、愛しの妹が玄関まで飛び出してきた

小町「お兄ちゃん!神樹ヶ峰女学園で先生やるって本当!?」

八幡「あぁ、なんかさっき学校で平塚先生に言われた。てかなに?なんでもう知ってるの?情報伝達早すぎない?」

小町「早いも何も、もともと知ってたし。お父さんもお母さんも知ってたよ。二人ともお兄ちゃんの意志に任せるって」

あれぇ、おかしいな。なんで当事者の俺だけ事後報告なんだ?ホウ、レン、ソウはしっかりやってもらわないと、これ社会の常識だよ?

小町「でも小町驚いたなぁ、まさかお兄ちゃんがこの話を受けるなんて思わなかったよ」

八幡「もともと俺に拒否権はなかったからな。仕方なくだ」

小町「ふーん、ま、頑張ってね!」

八幡「決まったもんはしょうがないが、明日からどうすればいいのかさっぱりわからないんだが……」

小町「お兄ちゃんあての神樹ヶ峰女学園からの封筒が来てたよ。そこにいろいろ書いてあったよ」

八幡「小町ちゃん?勝手に人の郵便見ちゃダメでしょ、てかその封筒どこ」

小町「そこの机の上。でもお兄ちゃんのこと心配してるから封筒開けちゃったんだよ?あ、今の小町的にポイント高い!」

八幡「はいはい、高い高い」

9: 2016/12/07(水) 00:21:26.84 ID:G7Np97Dd0
八幡「しかし、ここまでとんとん拍子で事が進んでいくと逆に怖いな。何か裏を感じる」

小町「大丈夫だよお兄ちゃん。そんなことは絶対ないから」

八幡「小町……」

さすが我が妹。兄を元気づけるなんてできた子

小町「お兄ちゃんをだましても相手側になんの得もないもん。だからお兄ちゃん安心して」

八幡「小町、さすがにそこまで言われるとお兄ちゃん傷つく」

とはいえ小町の言うことももっともなので少し安心して封筒の中身を見る

入っていたのは一枚の紙

「比企ヶ谷八幡君。この手紙を読んでくれているということは神樹ヶ峰女学園に来てくれるということですね。ありがとうございます。とりあえず初日は9時に校門で待ち合せましょう。詳しいことはお会いしてからお話しします。神峰牡丹」

これだけ?え、ほんとに?あっさりしすぎてない?

八幡「ずいぶん簡単な指示しか書いてないな」

小町「着いてからのお楽しみってことでしょ?楽しみだねお兄ちゃん!」

八幡「何言ってんだ小町、こんなよくわからない指示だけで何が楽しみになるんだ。逆に行きたくなくなったまである」

実際のとこ気乗りしてないしな。なんでぼっちの俺が女子校に行かなきゃならないんだ……ぼっちはぼっちらしい生活というものがあるのに。例えば?寝るとか読書とか妄想とか?

小町「ごちゃごちゃうるさいなぁ、いいから明日はその手紙の時間に遅れないようにね!わかった?」

八幡「……はい」

10: 2016/12/07(水) 01:00:14.32 ID:G7Np97Dd0
翌日、なぜかテンションが高い小町にせかされ家を追い出された俺は時間より少し早く校門に着いてしまった

八幡「ここが神樹ヶ峰女学園か。確かにでかい木があるな。」

校門からでもはっきり見えるほど大きな樹が校舎の真ん中から生えていて、校舎全体を覆うように枝を伸ばしている。

八幡「ここにこれから通うのか。しかも教師として。考えるだけで憂鬱になってきたな……」

今頃総武高校では何が行われているのだろう、朝のHRの時間か、まぁ俺はいてもいなくても変わらないしどうでもいいか

「あのー、」

あ、でも今日の朝は戸塚としゃべれなかったなぁ、戸塚の天使の笑顔を見ないと一日が始まる気がしない、むしろ終わるまである

「あのー、すみません」

いや待てよ、よく考えたら毎日朝からここに通うとなると俺は戸塚と会えなくなるってことにならないか!?これは非常に重要な問題だ。俺の心のオアシスである戸塚成分が補給できなくなるということは俺の生氏にかかわってくる、なんとかしてこの交流を早く終わらせなければ、

「あのー!すみません!」

あぁ、意識したら戸塚に会いたくなってきた、戸塚の笑顔が見たい、戸塚の声が聴きたい、戸塚戸塚

「あの!!すみません!!」

八幡「戸塚!」

「うわぁ!びっくりした!いきなり大きな声出さないでくださいよ、比企ヶ谷くん」

いきなり名前を呼ばれたので声のした方を見てみると赤い髪のボブカットの美少女がいた。
なんでこんな可愛い子が俺の名前知ってるの?新手の詐欺?「触らぬ神に祟りなし」だ、ひとまず無視するに限る

「ちょっとー!聞こえてますよね?無視しないでくださいよ比企ヶ谷くん!」

間違いない、向こうは俺のことを知っている。でも俺はこの子のことを知らない、こんな可愛い子と関わりがあるなら覚えてるはずなのにな、むしろ自分の人間関係薄すぎてすべての関係を覚えてるまである。我ながら今のは気持ち悪いな……

八幡「あぁ、ごめん。で、君誰?何してるの?」

みき「私は星月みきです!比企ヶ谷くんを迎えに来ました!ようこそ、神樹ヶ峰女学園へ!これから私がこの学校のことをいろいろ教えてあげますね!」

12: 2016/12/07(水) 11:46:25.20 ID:G7Np97Dd0
八幡「お、おう」

いきなりこんなにフレンドリーに話しかけてくるなんて、こいつカースト上位層の人間だな。普段なら関わらないでいたいところだが、今は彼女に頼らなければどうしようもない

みき「じゃあ早速行きましょう!」



ということで星月みきに連れられ学校の中を案内してもらうことに

みき「さっきはびっくりしましたよ!私が話しかけても全然反応しないのにいきなり大きな声出すんだもん」

八幡「あ、あぁ、すまん」

みき「でも比企谷くんも大変ですね、交流とはいえ1人で、しかも女子校に来ることになるなんて。」

八幡「あ、あぁ」

みき「でも心配はいらないですよ!ここのみんなはとっても明るくて優しくていい人たちばかりだから!」

八幡「あ、あぁ」

なにこの地獄、見知らぬ女の子と2人で歩きながら会話をするなんてぼっちにとっては苦行でしかない。現に、「あぁ」と「すまん」しか言えてない。

みき「さ、着きましたよ!まずは先生に挨拶してください!」

あ、これはまずい。確か平塚先生が顔見知りとか言ってたよな。あの人と飲みに行くような関係、しかもその場のノリでこの交流を決めるような人がまともなわけがない。

八幡「ちょ、ちょっと待てくれ、少し心の準備をだな」

みき「八雲先生!御剣先生!比企谷くんが来ましたよ!」ガラッ

13: 2016/12/07(水) 14:38:19.92 ID:G7Np97Dd0
開いたドアの先にはやたらとたくさんの難しそうな機械が大きな木を囲むように並んでいて、その機械の1つのところに二人の教師がいた。1人は青髪ショートカットで赤い縁のメガネをかけた、いかにも真面目そうな人。もう1人は長い金髪で白衣を着たちょっと怖そうな人。

樹「みき、ありがとう。それであなたが比企谷八幡くんね。初めまして、私は八雲樹です。これから、よろしくお願いしますね。」

風蘭「あんたが比企谷八幡か。アタシは御剣風蘭、よろしくな」

八幡「総武高校から来ました比企谷八幡です。よろしくお願いします」

風蘭「しかし、あんたも災難だったな、アタシたちの思いつきからこんなことに巻き込まれてな」

八幡「あ、いえ、別にそんなことは」

樹「そうよ、風蘭。その言い方だと罰ゲームのように聞こえてしまうわ」

風蘭「でもあの時の雰囲気はそんな感じだったろ。静が比企谷の話ばかりするからそんなに言うならアタシたちも見てみたいってなったからこうなったわけだろ?」

樹「あ、あの時は3人ともだいぶ酔っ払ってたから軽いノリになったけど、そのあとは真面目に計画を立ててたわ」

これ2人とも平塚先生の知り合いなのかよ。つか飲みの場でも俺の話をするのやめてくれないかな平塚先生、この2人に何をしゃべったのかすごく気になるが、怖いから聞くのはやめておこう

樹「では比企谷くん。さっそくここの説明をしますね。ここは神樹ヶ峰女学園の「ラボ」という場所です。ここでイロウスの探知や、武器の作成、神樹の管理など星守をサポートする場所です。」

八幡「はぁ」

ようするにここがこの学校の重要拠点なわけか。まぁ普通の学校にはこんな場所なんてないから当たり前だが


14: 2016/12/07(水) 15:08:51.52 ID:G7Np97Dd0
八幡「つかイロウスってなんですか?初めて聞いたんですけど」

樹「イロウスというのは詳しいことはわかっていない謎の生命体よ。そのイロウスがこの地球を制圧しようと人間たちを襲っているの。そのイロウスを倒せる力を持ってるのがこの学校の星守と呼ばれる少女たちよ。彼女たちのおかげでこの地球はイロウスに支配されなくてすんでいるの」

なるほど、状況はだいたいわかった。けど

八幡「なんで星月が今の話で満足そうにしてるんだよ」

御剣「そりゃ、そいつが星守だからに決まってるだろ」

え、なんだって?この子が星守?こんなか弱い子でも務まるの?もっとゴリゴリな霊長類最強女子とかがやるんじゃないの?
と、疑惑に思っていたことが顔に出ていたらしく、

みき「あぁー、比企谷くん信じてないでしょ!私だってちゃんと星守として戦えるんですよ!」

八幡「いや、だってそんなよくわからないものと戦うんだからもっと強そうな人を想像するだろ普通……」

樹「いえ、みきは星守としてかなりの力を持っていることは本当ですよ、比企谷くん」

みき「えへへ~」

こうやって褒められて素直に照れてるこの子がよくわからない生物と戦うなんてやはり想像できない、などと思っていた時、

ブーブーブーブー

突然警報音のようなものが鳴り始めた。なにこれどうなってんの?

樹「イロウスの反応だわ!」

風蘭「あぁ、すぐに転送装置の準備を始める。2人も準備しろ!」

みき「はい!」

おぉ、みんなさっきまでとはまるで別人だな。

みき「比企谷くん!はやくこっちに!」

八幡「え、俺も?」

19: 2016/12/08(木) 00:23:55.23 ID:VKkpR1Mr0
樹「はい、比企谷くんには現場で彼女のサポートをしてもらいたいと思っています」

八幡「いや、俺には無理ですって。何もわからないし、ただの足手まといにしかなりませんって」

風蘭「大丈夫だ、あんたも神樹に選ばれたんだ。何かの助けにはなるさ」

八幡「そんなこと突然言われたって」

樹「指示はこちらから出します。この通信機を持って行ってください。これでこちらと連絡が取れます」

八幡「え、いや、そういう問題じゃなくて、そもそも俺にできることなんてなにも」

風蘭「おい、そろそろ転送始まるぞ!」

みき「比企谷くん、さぁ行こう!」

俺は星月に手をつかまれ転送装置の上に連れていかれてしまった。あ、星月の手、小さいけど暖かいな……って感触を味わっている場合じゃない。こんなことになって無事に帰れる保証はどこにもない。早く脱出しなければマズイ

八幡「離してくれ、俺には無理だって」

風蘭「よくやった、みき!そのまま比企谷が逃げないように手を離すなよ」

樹「それじゃあみき、比企谷くん、頑張ってね」

みき「はい!いってきます!」

八幡「待ってk」

みき「大丈夫」

星月が手を握る強さを強めてきた。その強さにドキッとする

みき「比企谷くんは私が守るから」

八幡「星月……」

風蘭「転送!」

20: 2016/12/08(木) 00:55:45.82 ID:VKkpR1Mr0
目を開けたら転送が終わっていたらしく、見たこともない荒野に俺と星月は立っていた。

みき「さぁ。早くイロウスを探してやっつけないと」

八幡「あ、あぁ。てかこの転送ってなんだよ、一瞬で知らない土地まで移動したぞ」

みき「神樹に認められた人は神樹の力を利用した転送装置で移動できるんです。比企谷くんも神樹に選ばれているから私と一緒に来られたんだよ」

何それ全然わからねぇ、神樹すげぇってことしかわからねぇ、マジ神樹やばいでしょー、激アツだわー。……いかんいかん一瞬戸部になってしまった

八幡「とりあえずこれからどうすればいいんだ?イロウスってやつを倒さないといけないんだろ?」

みき「はい。詳しい場所は八雲先生が通信で知らせてくれるんです」

そんなことを言ってると通信機が鳴りだした

樹「比企谷くん、みき、聞こえる?」

みき「はい!聞こえてます!」

八幡「はい、一応」

樹「よかったわ。ではこれからの行動の指示を出します。2人がいる場所から北にある村でイロウスが出現しているわ。そこへ向かってちょうだい」

みき「わかりました!」

樹「それと、もう1つ。比企谷くんはイロウスと戦う術を持っていないはずです。だからくれぐれも危ないことは控えてくださいね」

八幡「いや、それなら俺を学校に残しといたほうが良かったんじゃないですか?」

樹「これから星守をサポートするに当たって、自分自身で色々体験することは必ず役に立つわ。とにかく気を付けてちょうだい。みき、比企谷くんの事頼むわね


みき「はい!任せてください!」

樹「ふふ、では切るわね。また何かあったら連絡するわ」

22: 2016/12/08(木) 11:18:42.89 ID:56X/D1xEO
みき「イロウスの場所もわかりましたし、早く行きましょう!」

八幡「待て、星月。お前はそれでもいいかもしれないが、勝手に行動されると俺が1人になって困ることになる。それに村にイロウスが出現したとなると村民を助けることになるかもしれない。そういうことに備えて少し対策を考えてから行ったほうがいい」

みき「……」

八幡「な、なんだよ。どうした」

みき「うんうん、比企谷くんって優しい人なんだなって思って」

八幡「……そんなんじゃねぇよ。ただ俺は任された以上、できることをしたいと思ってるだけだ」

そう、俺にできることは頭を働かせること。ぼっち特有の1人で考える時間が長いことで鍛えられた頭を使うことで星月をサポートしていくことしかできない

みき「あはは、比企谷くんって面白いね!」

八幡「どこがだよ……」

みき「そういうところだよ!」

八幡「なぁ、そんなことより対策を考えよう。ひとまず俺は安全なところで待ってるから星月がなんとかしてくれ」

みき「いきなり人任せ?比企谷くんにも協力してもらわないとイロウスは倒せないよ」

八幡「なんでだよ、俺じゃイロウスは倒せないだろ」

みき「イロウスは大型イロウスを中心に複数の小型イロウスと集団で出現するの。大型イロウスを倒さないと集団は消えないから大型イロウスを優先的に探さないといけないの」

八幡「なるほど、イロウスにも種類があるのか。ならこうしよう。星月は村の人をイロウスから守ることを優先してくれ。俺がその間に大型イロウスを探し出して見つけ次第お前に場所を伝える。そしたら大型イロウスを倒しに来てくれ」

みき「うん、そうしよう。でもムリしないでね?八雲先生も言ってたけど、危ない時は逃げてね?」

八幡「当たり前だ。自分の身は自分で守る。ぼっちの常識だ」

みき「あはは、やっぱり比企谷くん面白い」

八幡「うるせぇ。じゃ行くぞ」

みき「うん!」

24: 2016/12/08(木) 11:41:48.22 ID:56X/D1xEO
八幡「しかし、いざ探すといってもイロウスがどんな形か知らなかったな」

みき「イロウスはね、色々な種類がいて犬っぽいのとか鳥っぽいのとかドラゴンっぽいのとか、他にも何種類か!」

八幡「待て、ドラゴンっていったか?そんなヤバそうなやつとも戦うのかよ…キツそうだな…それにそんなに種類がいるなら口で言われてもどれがイロウスなのかわからねぇな」

みき「そうだねぇ、確かに実際に見てもらうのが1番わかりやすいかな。あ、そこにいる犬っぽいのがロウガ種ってイロウス!」

八幡「へぇ、意外と小さいんだな。これなら俺でも倒せそうだな」

みき「小型イロウスだからね。でも小さくてもイロウスはイロウスだから、私たち星守じゃないと倒せないよ~」

八幡「ほーん、そういうもんなのか。……って」

2人「あぁぁぁぁ、イロウスぅぅぅ」

25: 2016/12/08(木) 13:27:31.67 ID:56X/D1xEO
どどど、どうしよう。まさかこんなに早くイロウスとご対面するとは…考えろ考えろ、どうやってここを切り抜ける、今すぐ走って逃げればなんとかなるか…?いや、逃げてもどうせ倒すんだし、

みき「はぁぁぁ!」

ザシュッ

うぉっ、イロウスが一瞬で消えたぞ。何が起こったんだ?

みき「ふぅ、ちょっとびっくりしちゃって変身するのが遅れちゃったよ」

星月が倒したらしいな。つか変身?星守はイロウスと戦う時変身するのか?セーラー◯ーンや◯どマギみたいに?それはかなり期待できるぞ。さぁ、いざ拝見!

八幡「おぉ星月お疲れ、って……うわぁぁ」

星月を見ると確かに変身はしてる。してるけども……
えー、正直期待外れだわー。制服も満足に隠せてないし。これが変身?なんかテキトーに付け足しただけじゃね?



みき「なに、どうしたの比企谷くん。あ、この姿をまだ比企谷くんは知らなかったんだね。私たち星守はイロウスと戦う時、この星衣に変身するんだよ!」

八幡「あぁ、それは見ればわかるんだが」

なんてったってなんか残念な感じがするんだよなぁ、この星衣……もう少しどうにかならなかったの?

26: 2016/12/08(木) 13:31:39.83 ID:56X/D1xEO
補足です。
星守たちの星衣は現段階では星衣フローラではなく、この星衣しか持ってないことにしてください。
多分星衣フローラも追い追い出します

27: 2016/12/08(木) 17:08:09.26 ID:56X/D1xEO
みき「それで、星衣を纏うと一緒に武器も出てくるんだ。私はソードだけど他にはスピア、ハンマー、ロッド、ガン、ブレイドカノン、ツインバレットなんかがあるんだよ」

八幡「へぇ」

武器はまぁまぁ種類あるんだな。でも星衣がちょっと残念すぎてあまり話が入ってこなかったけど……詳しいことはまた今度聞くか

みき「さ、急がなきゃ。ここにイロウスがいるってことはその集団も近くにいるはずだから」

八幡「だな」

てかその星衣のままで行くのね。俺なら恥ずかしくて絶対ムリだわ……



そして村に着くと

みき「村っていってもほんとに小さな村だね。人もほとんどいないから被害も少なそう」

八幡「よし、じゃあ星月はこの村の人たちの安全を確保してくれ。俺は見晴らしのいいところから大型イロウスを探す。で、大型イロウスってどんなやつ?」

みき「さっきいたロウガ種の大きいサイズだよ。だいたい象くらいの大きさかなぁ」

デカっ、そしてこわっ。そんなのがここらへんウロついてるの?絶対会いたくない、会ったら即、来世に良い人間に生まれ変わることを神様にお願いするまである

八幡「マジかよ、そんなデカイのか。まぁそれなら逆に見つけやすいかもな」

星月「うん、だから私もここの村の人の安全を確保したら大型イロウスを探しに合流するね」

八幡「あぁ、わかった」

できれば俺は何もせず、星月に全てをさっさと片付けて欲しいところだが、果たしてどうなるだろうか

30: 2016/12/08(木) 21:15:24.32 ID:VKkpR1Mr0
星月と別れ俺は大型イロウスを探すために村はずれの見晴らしのいい丘に着いたが

八幡「…あれだな」

さすがに象サイズの大きさの生き物をこの小さい村で探すんだ。すぐ見つかるに決まっている。けど

八幡「あれ、明らかに象より大きいよな?それにさっきの犬っぽいやつがそのまま大きくなったにしては横幅がデカすぎないか?」

そんなことを思ってると通信機が鳴り出した
あぁ、これはヤバイやつですね絶対。悪い知らせが来るパターンだ。出たくねぇなぁ、でも出ないともっとヤバイよな…

八幡「はい、比企谷です」

樹「比企谷くん、ちょっとマズイことになったわ。予想外の大型イロウスが…………れて………まま……」

八幡「あの、八雲先生?聞こえないんですけど」

樹「……ザザザ…………」プツン

切れた。切れてしまった。この状況は非常にマズイ。ベタすぎるかもしれない展開だがマズイものはマズイ。ひとまず星月に連絡をしなければ

八幡「もしもし星月、聞こえるか、星月」

やはり通信機が使えない。そうなると星月はこの状況を理解していない可能性がある。通信機が使えない以上、合流してわかってる範囲で状況を伝えなければならないだろう

八幡「行くしかないか。直接村に」

31: 2016/12/08(木) 21:51:46.95 ID:VKkpR1Mr0
さぁ、星月はどこにいるか探すか、って探すまでもないな

八幡「絶対あそこだ…」

やたらと土煙が立って、たまに赤い炎が上がってる。絶対あれだ。でも、俺今からあそこ行くの?氏にに行くようなもんじゃないか?でも行って状況を伝えないと大型イロウスは倒せないしなぁ

八幡「行くしかないのか、あそこに…」

覚悟を決めろ、漢八幡。この状況を打開しないと愛しの我が家に帰れないぞ

八幡「うし、行くか」

念のため最後にもう一度大型イロウスの居場所を確認してから行くか

八幡「あそこだな。って、誰かいないか?」

よく見るとイロウスの集団の近くに1人の小さい女の子がいる。幸いお互いにその存在には気づいていないようだが、危険なことに違いはない

八幡「マジか…まずあの子を助けなきゃいかんか」

怖いものは怖いが、見つけてしまった以上自分が行くしかない。あの子を保護してすぐ隠れよう。それしかない、てかそれ以外できない

八幡「こういうことは俺のキャラじゃないんだが…」

俺は村へ走り出した

33: 2016/12/08(木) 22:34:45.25 ID:VKkpR1Mr0
ひとまずさっき女の子がいたところまで走って来たが
つ、疲れた…息上がってしんどい…普段身体を動かさなかったツケがここできたか…だが今はそんなことを言っている暇はない。早くあの子を探さなければ

八幡「いったいどこにいるんだ…」

周りを見渡していると、地面でやたらとキラキラ光っているものがあることに気づいた

八幡「なんだこれ、……石?」

小さいが綺麗な丸型の宝石のような石だ。なんか高そうだなこれ。あとで村の人に持ち主聞いてみるか

「あ!見つけた!それあたしの大事な宝物の石!」

声のする方を振り返ると丘の上で見つけた女の子が俺の前に立っていた

少女「その石私のなの!お願い、返しておにいちゃん!」

八幡「わかったわかった、そんなに大きな声で言われなくても返すよ…」

俺は光る石を少女に手渡した

少女「よかった。さっきからずっと探してたんだ。拾ってくれてありがとう、おにいちゃん」

八幡「あぁ、それはいいんだが、今ここらへんはとっても危ないんだ。急いで逃げた方がいいぞ」

少女「危ない?なんで?」

八幡「こわくて大きな動物がいっぱいいるんだ。だからおにいちゃんと一緒に早く逃げような」

少女「へー、そのこわい動物はどこにいるの?」

八幡「多分あっちのほうだ。だから逆の方向に逃げような」

少女「すごい!あたしその動物見てみたい!」

少女は言うが早いが大型イロウスのいる方に走ってしまった

八幡「おい、マジで危ないって。戻れ!」

イロウスのいる方向なんて教えるんじゃなかった…だけど後悔してももう遅い。早く追いついて連れ戻さなきゃならない

八幡「くそっ」

俺はまた走り出した

35: 2016/12/08(木) 23:56:05.25 ID:VKkpR1Mr0

少し走ってなんとか少女を捕まえることができたが、

少女「見て見ておにちゃん!ほんとにおおきな動物だね!」

時すでに遅く、少女は大型イロウスを見つけてしまっていた。だが、大型イロウスのほうはまだ少女に気づいていない。冷静になれ俺、ここでイロウスに気づかれたら終わりだ。慎重に慎重に

八幡「さぁ、いい子だからここから離れよう。この動物は本当に危ないんだぞ。さて、おにいちゃんはもうあっち行くからなぁ」

少女「待って!あたしも一緒に行く!」

少女は俺の言葉を聞いてこっちへ歩いてきた
よし、なんとかこの子を連れ出すことができた。あとは見つからないように星月のいる方角へ逃げるだけだ

八幡「うん、いい子だ。じゃあおにいちゃんと行こうか」

少女「うん!あ、おにいちゃん!あそこに小さな動物がいっぱいいるよ!」

恐る恐る少女が指さす先を見ると

八幡「ウソだろ…」

今にもこちらに襲い掛かろうとしている小型イロウスの群れがいた

八幡「やばい。早く逃げるぞ!」

俺は少女を担ぎ上げるとイロウスがいない方へ全速力で逃げた

少女「あはは!速い速い!」

これは最悪の事態だ。こうならないために先に村の人の安全を確保したかったのに、結果非常にまずいことになってしまった

八幡「くそっ、どうにかして逃げきらなきゃ」

後ろを振り返るとこの騒ぎで大型イロウスまでもが俺たちの存在に気づいたらしく、すさまじい唸り声をあげてこっちへ向かってきた

八幡「万事休すだな…」

そしていつの間にか逃げる方角には小型イロウスが数匹俺たちを待ち伏せている。だが、もう逃げ道は残されていない
せめてこの子だけでも逃がしてやりたいが、これまでこの子を抱えて走ってきたことで体力は残っているわけもなく、打開策を考えることもできない

八幡「はは、俺の命もここまでか…」

もう足に力が入らず、俺はその場に座り込んでしまった
まぁ少女を守りながら氏ぬってのも悪くないかな…ぼっちな俺にしてはいい最期だろう
あぁ、イロウスがやってくる。押してダメなら諦めろ、なんていつも考えてたが、いざ諦めるとなると自分の力のなさがひどく恨めしく思われる。自分でもっとなんとかできたらと思う
でも、もう、どうしようもない
俺は目を閉じた……

「やぁぁぁ!」

ザシュザシュザシュ!

一瞬にして目の前の小型イロウスの群れが消えた

「ダメだよ比企谷くん諦めたら。言ったよね?比企谷くんは私が守るって」

八幡「星月……」

みき「遅れてごめんね比企谷くん。でももう大丈夫だよ!私がイロウスをやっつけるから!」

37: 2016/12/09(金) 08:46:05.54 ID:8YFqUn0vO
八幡「どうして俺がここにいるってわかったんだ?」

みき「だって大型イロウスがあんなに暴れてるんですよ?誰かが襲われてるって思うのは当たり前ですよ!」

はは、確かに…
そんな当たり前のことすら考えられなかったのか、俺は

みき「比企谷くん大丈夫ですか?ケガとかないですか?」

ぼーっとしてる俺を心配したのか星月が声をかけてきた

八幡「あぁ、ちょっと体力が切れかけてるがケガはないし、大丈夫だ。」

みき「わかりました。でも私が来たのでもう大丈夫です。ゆっくり休んでてください」

八幡「悪いがそうさせてもらおうかな。この子も守らないといけないし」

そう言って俺は少女の頭を軽く撫でた
少女は満足そうに目を細める

みき「あ……」

星月が俺が少女の頭を撫でてる光景をなぜかじっと見つめてくる。え、なに?お兄ちゃんスキルがオートで発動しちゃっただけだから。別に他意はないからね?千葉のおにいちゃんはだいたいこうだからね?

八幡「なんだよ」

みき「……ふぇ?いや、な、なんでもないですよ。さぁ、イロウスを倒しにいかなきゃ」

星月はそう言うと大型イロウスのほうに向かい直した

みき「それじゃ、いってきますね」

八幡「あぁ、頼む」

星月はイロウスに向かって走り出した

少女「ねぇ、おにいちゃん。おにいちゃんさっきまでと違って笑ってるね」

八幡「え?」

俺は気付かないうちに笑っていたらしい。なにそれ気持ち悪い。だからさっき星月は俺のほうを見てたのか

少女「なんかさっき抱っこされてた時はおにいちゃん怖かったけど、あのお姉ちゃんが来てからおにいちゃん、なんか暖かくなった」

……そうか。俺はあいつが来て安心したんだ。イロウスに囲まれて絶望してた俺はあいつが来たことで希望を見出したんだ

でもなぜだ?会ってまだ数時間と経たないあいつが来ただけでなんで俺は安心できたんだ?
この状況はなにも好転していないというのに

だけど今は、この不思議な気持ちに身を委ねるのも悪くない。俺はもう一度少女の頭を軽く撫で

八幡「ちゃんと見てるんだぞ。あのお姉ちゃんがなんとかしてくれるからな」

少女「うん!」

38: 2016/12/09(金) 14:28:31.62 ID:xfgxMo2GO
みき「炎舞鳳凰翔!」

星月は剣に炎を纏わして大型イロウスを攻撃する

みき「まだまだ!」

星月は大型イロウスに向かって剣を振り続ける

だが、これまでの小型イロウスに通じていた攻撃も、大型イロウスにはあまり効果がないように思える
それに、大型イロウスの攻撃も凄まじく、星月が距離を少しでもとると周りの岩を飛ばしす攻撃や、地面を叩いて揺らす攻撃が星月を襲う

そして1番の問題は

みき「はぁ、はぁ、はぁ」

星月自身の体力もかなり限界がきている。このまま戦っても星月が不利だ。打開策は無くはないが、今の状況では使えない。どうすれば

39: 2016/12/09(金) 17:53:41.02 ID:xfgxMo2GO
少女「おにいちゃん…お姉ちゃん大丈夫かな?」

八幡「……」

少女「おにいちゃん?」

…なにをためらってるんだ俺は。諦めるなってさっきあいつに言われたろ
俺は……
ほんの少しでもいいから、あいつの力になってやりたい。

八幡「おにいちゃん、今からお姉ちゃんのこと助けに行ってくる。ここでいい子で待ってることはできるか?」

俺は自分に言い聞かせるつもりで言葉をゆっくり紡ぎ出す

少女「うん!おにいちゃんのこと待ってる!」

八幡「あぁ」

問題。自分1人では勝てない敵とどう戦うか
答え。戦わない

41: 2016/12/10(土) 00:46:41.03 ID:CnB9VT9k0
俺は大型イロウスと戦う星月のもとへ駆け出した

八幡「星月!」

みき「比企谷くん?何やってるの!?ここは危ないから早く逃げて!」

八幡「俺の話を聞け星月。この状況を打開する策を考えた」

みき「策?ほんとに?」

八幡「あぁ」

俺は自分の策を星月に説明する

八幡「打開策は…ひたすらあいつの攻撃をよけることだ」

みき「え!?それじゃあイロウスに勝てないよ!?」

八幡「いいから最後まで話を聞け。俺は星月とイロウスの戦いを見て、あいつの攻撃パターンを観察してた。あいつの攻撃パターンは3種類だ。片手を前方へ振り回す攻撃。両手で地面をたたいて揺らす攻撃、周りの岩を投げ飛ばす攻撃だ。この中で、片腕を前方へ振り回す攻撃だけはやつの腕が届く範囲以外、周りへの被害がなく、回避しやすい」

みき「それなら回避してから後ろや横から攻撃してもいいんじゃ…」

八幡「するとあいつは周囲を攻撃するために地面を揺らしてくる。結果、こっちはやつから距離をとることになり、また地面を揺らされたり、岩を投げられたりして攻撃を避けづらくなったり、被害が拡大したりすることになる」

みき「なるほど…」

八幡「それに攻撃するとしても肝心のお前が体力切れで、まともにあいつにダメージを与えられないだろ」

みき「う、それはそうなんだけど…でも、そしたら私たちはただイロウスの攻撃をよければいいの?」

八幡「そうだ。あいつは腕を振り回す前に上に腕を上げる。そのタイミングで腕の届く範囲外に避ければ当たらずに済む。だが、この策を実行するためには常にはイロウスの目の前にいないといけない。そうしないとあいつは腕を振り回す攻撃をしてこないからだ」

みき「攻撃をよける方法はわかったよ。でもそうすることでどうやってあのイロウスを倒すの?」

八幡「それは……」

みき「それは?」

八幡「援軍待ちだ」

みき「……え?」

八幡「考えてみろ。ここにいるのは体力切れのお前と、ただのぼっち男子高校生の俺と、さっきの女の子だ。俺らだけではどうやったってあいつには勝てっこない。だが、俺らがここで時間を稼ぐことが出来れば必ず神樹ヶ峰女学園から助けが来る。現に、八雲先生はここの状況が普通じゃないことをわかっている。必ず向こうで対策を立てているはずだ」

この策は現状考えうる範囲でできる最適解だろう。イロウスの攻撃をよける手段も現実的で、かつ助けが来る可能性も高いはずだ

みき「…ふふっ、あはは!」

八幡「な、なにがおかしいんだよ」

みき「えへへ、だって打開策っていうからどんなすごい作戦なのかと思ったら、ひたすら逃げて助けを待つことだったんだもん」

八幡「……俺だって必氏に考えたんだぞ」

みき「それはわかってるよ。だって」

星月が俺の顔を見つめてくる。

みき「希望を信じる目をしてるから」

八幡「…この腐った目をそんな風に言われたのは初めてだ」

みき「あはは!やっぱり比企谷くん面白い!」

八幡「だからどこがだよ…」

みき「そういうところだよ!」

八幡「わからん…」

ホントこの子わからない…俺の何が面白いの?からかわれてるの俺?

みき「さ、じゃあ今から逃げて逃げて助けを待ちましょう!」

八幡「…あぁ」

43: 2016/12/10(土) 20:43:56.25 ID:qnLXjnu4O
作戦を立てたはいいが、実際イロウスの前に立つと

…マジデカイ、マジコワイ。なにこれ、生き物ってよりもちょっとした山っていったほうが正しくない?大型っていっても限度があるぞ

っと、怖気付いてる暇はない。早速作戦決行だ

八幡「よし、逃げるぞ」

みき「うん!」

俺たちはイロウスの視界に入るように逃げながら攻撃の兆候を待つ
そして少しするとイロウスが片手を上に上げた

八幡「今だ、やつの腕より遠くまで逃げろ!」

言うが早いが、俺たちはイロウスの前から逃げる
その直後イロウスは片手を振り回すが、俺たちには当たらない

みき「やった!成功したよ!」

八幡「気を抜くな星月。すぐやつの目の前に戻るぞ」

みき「わ、わかった!」

そして俺たちはイロウスの目の前に走り、再びやつの注意を引きつける

みき「また腕を上げたよ!」

八幡「逃げるぞ!」

俺たちは体力の切れた体を懸命に動かしてイロウスの注意を引き続ける。
こうやって時間を稼げれば必ず助けがくるはず。それまでの我慢だ

46: 2016/12/11(日) 17:50:51.76 ID:Jw/xRcNSO
みき「でも、こうやって避け続けるのもかなり大変だね…」

確かにさっきまで物陰に隠れてた俺はまだしも、星月は小型イロウスと戦ってからさらに大型イロウスの攻撃に耐えていたんだ。動くだけでもキツいだろう。

現に俺の体力はもう恥ずかしながら限界です…

八幡「俺もキツいがここで止まると確実にやられるぞ。逃げ続けるしか道はない」

みき「そうだね」

と、そこにイロウスの攻撃がくる。

だが、俺は話すことに気を取られて腕の長さを見誤ってしまい足に少し攻撃を食らってしまう。

八幡「うぁっ」

逃げようと立ち上がろうとするが足に痛みが走る。

47: 2016/12/11(日) 17:51:34.02 ID:Jw/xRcNSO
みき「大丈夫?比企谷くん??」

立てない俺に気づいた星月がこちらへ走ってくる

だが、すでにイロウスは片腕を腕に上げて攻撃しようとしてくる

八幡「来るな、星月!」

だが星月は俺の言うことを聞かずに俺とイロウスの間に入り、イロウスの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまう

みき「きゃぁ!」

八幡「星月!」

俺は痛む足を引きづって星月のもとへ向かう

八幡「星月!星月!」

みき「大丈夫だよ比企谷くん。星衣のおかげでそこまでひどいダメージは負ってないから。逆に比企谷くんのほうがケガがヒドイよ。もう走れないんじゃない?」

八幡「……」

確かに俺は星月の言う通りもう走れない、じっとしていても痛むくらいだ

みき「だから私がここでイロウスの攻撃を食い止める片腕だけならなんとかなるかもしれない」

八幡「それは無茶だ、星月。もうお前も疲れ切ってるはずだ。いくら星衣があるからといっても攻撃を受ければ氏んじまうぞ!」

みき「だからって比企谷くんを見捨てることはできない!」

そう言って星月は俺の前から動こうとしない

…くそっ、俺が攻撃を避けていればこんなことにはならなかったのに、これじゃあ2人ともすぐやられてしまう…

もう俺がイロウスの囮になって星月を逃すしかない、なんとかしてここから動かなきゃ


少女 「おにいちゃん達をいじめないで!」


八幡「……!」

いつの間にか少女がイロウスの横にいて、声をあげている。ど、どうしてあの子がここに?

八幡「逃げろ!今すぐ遠くへ!」

少女「イヤ!」

イロウスも少女に気付いたらしく少女のほうへ向き直る

みき「ダメ!」

星月は自分に注意を引きつけようとイロウスを攻撃する、

八幡「やめろ星月!それは逆効果だ!はやくあの子を連れてやつの注意から外れろ!」

だが俺の声は聞こえていないらしく星月は攻撃を止めない。少女も動かない。

するとイロウスは俺たちをまとめて攻撃しようと両腕を上げる

…このままだと俺のせいで星月も少女も氏なせてしまう、それだけは回避しなければならない。

八幡「うぉぉぉぉ!」

俺はイロウスに突進していった

48: 2016/12/12(月) 00:45:50.71 ID:fFPyD8rD0
俺の力じゃ毛ほども役に立たないことはわかってる。でもせめて俺自身の手で責任は取らせて欲しい。この俺の身体であいつらが助かるなら十分だ。

俺はイロウスに向けて拳を振り上げる


八幡「…衝撃のっ!ファーストブリットおぉ!」




イロウス「ぐぉぉぉ」

49: 2016/12/12(月) 00:47:14.18 ID:fFPyD8rD0
……ん?俺のファーストブリットはまだ届いてないぞ?なんでイロウスは怯んでるんだ?

「すみません、遅くなりました」

「大型イロウスはアタシたちが退治してやる!」

「おぉー、大きいねぇー!」

「こんなに大きいイロウスは珍しいですね」

「感想なんて後にしろ!今はみきたちを助けてイロウスを倒すんだ!」

「あら?みきちゃんだけじゃなくて他にも小さな可愛い女の子がいるわ~」

「蓮華!イロウスに集中しろ!」

「いいからさっさとイロウス倒すわよ。ワタシまだクリアしてないゲーム残ってるから早く帰りたいし」

声のする方を見ると、星月と同じように星衣を纏った女の子たちが手に武器を持ってこちらへ向かってくる。おそらく星守の援軍たちだろう。

50: 2016/12/12(月) 00:52:17.08 ID:fFPyD8rD0
そしてその中の2人がこちらへやってきた。1人は灰色の髪を三つ編みにまとめた女の子、もう1人は緑がかったショートカットの女の子。

遥香「みき、比企谷さん、けがはありませんか?」

八幡「お前らは…?」

遥香「私は成海遥香、あっちのショートカットの子は若葉昴です。私たちもみきと同じ神樹ヶ峰女学園の星守です」


みき「遥香ちゃんはお医者さんを目指していて治療もできるんですよ」

遥香「応急処置程度ですが…みなさんのケガの処置をしたいと思います」

八幡「俺はいいから星月とあの子を…」

昴「この女の子にはケガは見当たらないよ」

みき「私も大丈夫」

八幡「よかった…」

遥香「よくはありません。比企谷さんが怪我をしてるじゃないですか」

八幡「いや、俺のケガは軽いし大丈夫だ。それに自分でイロウスの攻撃を避けられなかったことが原因だから…」

実際、軽い足の怪我だけで済んだのは不幸中の幸いだ。これで俺がもっと大ケガをしていたら星月もあの子も無事じゃいられなかったろう

遥香「言い訳は聞きません。ひとまず処置をします」

みき「遥香ちゃん、昴ちゃん、比企谷さんと女の子をお願いしてもいい?私、自分であのイロウスを倒したい」

昴「うん。わかった」

遥香「気をつけてね、みき」

みき「うん!」

そう言ってから星月は俺の方を向く

みき「じゃあ比企谷さん、今度こそイロウス倒してくるね」

八幡「…あぁ」

星月は俺の反応を聞いて笑顔を見せるとイロウスに向かって走っていった。

星月の剣に炎が宿る。その光景を見て

八幡「…頑張れ!星月!」

俺は思わず叫んでた

みき「炎舞鳳凰翔!」

54: 2016/12/12(月) 12:19:22.61 ID:BkxVvDc3O
大型イロウスは星月の攻撃で完全に消滅し、小型イロウスの群れもいなくなった。

村への被害もそこまで大きくはなく、村の人にケガ人もいないとのことだった。

唯一のケガは俺の足…なんか情けない…

八幡「なんでこんな包帯ぐるぐる巻きなの…」

遥香「動かなさいためです。また戻ったら病院で手当てですよ?」

昴「でも大型イロウス相手にそれだけのケガで済んでよかったんじゃないですか?」

八幡「まぁな」

みき「でも遥香ちゃんたちが来る直前にその足で大型イロウスに走っていきましたよね?」

八幡「あ、あれは、少しでもイロウスから注意を引きつけようと…」

みき「あんなの危なすぎますから!これから絶対やらないでくださいね!」

八幡「でもあの時はお前らを助けようと…」

みき「それで比企谷くんが氏んでたかもしれないんですよ!それで私が助かっても全然嬉しくないです!」

星月が声を荒げて俺に詰め寄る

昴「みき、落ち着いて」

みき「比企谷くん、これだけは言っておきます」

みき「もう絶対あなたを傷つけさせない、そのために私頑張るから」

…この子はホントに素直で優しい子なんだな。
なんなら星や月よりも暖かい太陽のように

八幡「星月、それは少し違うぞ」

みき「え?」

八幡「ここにいる成海や若葉や、俺も含めて全員で頑張るんだ」

成海と若葉も俺の言葉に笑顔で頷く

それを見て星月も笑顔で頷く

みき「比企谷くん…うん!そうだね!みんなでこれからも頑張ろう!」

55: 2016/12/12(月) 12:39:48.67 ID:BkxVvDc3O
少女「おにいちゃーん、お姉ちゃーん!」

村の人の集団からあの女の子が走ってくる

八幡「おう、どうした」

少女「あのね、私、大きくなったらお姉ちゃんみたいになる!それを言いにきたの!」

みき「私みたいに?てことは星守になりたいってこと?」

少女「うん!お姉ちゃんみたいにカッコよく戦いたいの!」

八幡「そうか」

みき「うん、きっとすごい星守になれるよ。お姉ちゃん待ってるからね」

少女「うん!」

昴「おーい!みき達、そろそろ転送が始まるよー!」

みき「わかったよ、昴ちゃん!もう行くよ!」

八幡「もうお別れだな。元気でな」

少女「うん!おにいちゃんもお姉ちゃんもありがとう!」

そう言って少女はまた走って戻っていった。

俺らも戻らなきゃな。体ガタガタだし足痛いし…

八幡「さ、帰りますか」

みき「そうだね!……あっ」

八幡「な、なんだよ今になって」

みき「あの子に名前聞き忘れちゃいました…」

八幡「あっ」

「転送!」



こうして俺は神樹ヶ峰女学園に戻った

56: 2016/12/12(月) 14:49:18.05 ID:qr1A9RlwO
転送が終わるとそこは神樹ヶ峰女学園のラボの中で、八雲先生と御剣先生がそこにいた

風蘭「みんな、お疲れ」

樹「特に比企谷くんとみきはよくやってくれたわ」

みき「いえ、みんなが助けに来てくれたおかげです!」

八幡「星月はともかく俺は本当になにもやってないんですが…」

樹「いえ、あなたたち2人が大型イロウスを食い止めてなければ被害はもっと甚大だったでしょう」

風蘭「そうだ。アンタたち2人が考え、行動した結果村は救われたんだ。すごいじゃないか」

みき「えへへ~」

八幡「…」

こうやって面と向かって褒められるなんてほぼ初めてだからどんな反応すればいいかわからん…八幡恥ずかしい!

風蘭「さ、比企谷とみき以外のみんなは教室に戻っておいてくれ」

「はーい!」

あれ、俺は?俺は?なんで帰れないの?

八幡「え、俺まだ何かやるんですか?」

樹「えぇ、これからあなたたち2人は私たちと一緒に理事長に会ってもらいます」

みき「理事長にですか?」

風蘭「あぁ、理事長が今回のことで2人と話したいことがあるそうだ」

理事長

この交流で俺がここに呼ばれることになった原因を作った1人。それに俺に手紙を送って来た人…

怖いなぁ、どんな強面の人なんだろうか、いっそのことケガを理由に帰ってしまうか。うん、そうしようそうしよう

八幡「あのー、俺足痛いんで病院行きたいんですけど…」

そう言った瞬間、八雲先生と御剣先生が俺の両側に立ち俺を掴む

樹「そんなこと言っても」

風蘭「逃がさないからな」

いやぁぁぁぁ、ダレカタスケテ~~

みき「あはは…」

57: 2016/12/12(月) 23:47:40.64 ID:fFPyD8rD0
俺は先生2人に両脇を抱えられながら理事長のところへ連行されている。

ちょっと?一応俺ケガ人なんですけど?もう少し優しく扱ってくれませんか?

八幡「…あの、そろそろ離してくれませんか?」

風蘭「断る」

八幡「どうして…」

樹「だって静さんに言われてるのよ。比企谷くんを逃がさないためには実力行使してもいいって」

あの暴力独身女教師ぃぃ、何めんどくさいことを他校の先生に教えてるんだよ。おかげで平塚先生が増えたみたいになっちまったじゃねぇか…

風蘭「ほら、着いたぞ」

前のドアを見ると確かに「理事長室」とある。

ついに来てしまったか…でももしかしたらラブ◯イブみたいに実は理事長は生徒のお母さんでしたーとか、ラブ◯イブ◯ンシャインみたいに生徒自身が理事長になってるパターンじゃないのか?そうなんだろ!実はそうなんだろ!

ってそんなわけないだろ!…いかん、自分でボケて自分でツッコンでしまった…

そんなことを考えてたら八雲先生がドアをノックする

樹「失礼します。比企谷くんとみきを連れて来ました」

八雲がドアを開けるとその先にはたくさんの本と、綺麗な茶色の高価そうな机と、これまた高価そうな椅子が置いてある。

そしてその椅子に小学生か中学生くらいの少女が座っていた。なんでここに少女がいるんだよ

八幡「八雲先生、理事長はどこですか?」

樹「…!比企谷くん?あなた本気で言ってるの?」

八幡「は?何がですか?」

風蘭「アンタの目の前にいるだろ理事長は」

目の前って…そんな理事長みたいな人なんてどこにもいないんだが…?

八幡「だからどこですか」

みき「比企谷くん、あの椅子に座ってるのが理事長ですよ…」

58: 2016/12/12(月) 23:52:29.57 ID:fFPyD8rD0



はぃぃぃぃぃぃ?え、ちょ、え?ラブ◯イブなんて目じゃないんですけど??俺より年下の理事長ですか??ハーレムものでよくある「天才で飛び級しちゃいました~」みたいなやつですか??

八幡「え、あ、あの、す、すみません」

動揺しすぎて言葉が出て来ない、こういう時は素数を数えて落ち着け俺。0、あれ、0って素数?素数じゃない?どっち?

牡丹「いえ、大丈夫ですよ。そういう反応をされるの慣れてますから」

そうやって理事長はにこやかに笑う

牡丹「はじめまして比企谷八幡さん。私がこの神樹ヶ峰女学園の理事長、神峰牡丹です。これからよろしくお願いしますね」

八幡「そ、総武高校から来ました比企谷八幡です。よろしくお願いします」

牡丹「あ、一応言っておきますけど、これでも私あなたのお母様と同じくらいの年ですからね」

は?ウソだろ?こんなちっちゃい女の子が俺の母親と同じくらいの歳?そんなことあるわけがない

樹「比企谷くん、信じられないかもしれないけど本当のことよ。私も羨ましいわ。年を重ねてもあの若さでいられるのは」

いや、あそこまでいくと若いってより幼いって感じだと思うんですけど

なんてことは俺は口が裂けても言えないから黙っておく

63: 2016/12/13(火) 13:46:24.35 ID:EnOxEFW+O
牡丹「さて、比企谷さん。今回のイロウス討伐にはあなたとみきの功績が大きいと話を聞きました。特に比企谷さん、あなたの策がとても効果的だったそうですね」

八幡「いや、俺は考えただけで実際星月が戦ってくれなかったらどうにもならなかったです」

牡丹「なるほど。あくまでみきのおかげでイロウスを倒せた、と」

八幡「まぁそうですね」

なんか迫力あるなこの人。見た目は小さいし、なんか巫女っぽい不思議な服着てるけど、逆に喋り方はすごく落ち着いてるし、そういう見た目と喋り方のギャップで存在感があるように思える

牡丹「そうですか。では」




牡丹「比企谷さん、みきの頭を撫でてあげてください」

………は?この人今なんて言った?俺が星月の頭を撫でる?headをstroke?なんで?どうして?why?

八幡「な、え、」

牡丹「聞こえなかったですか?みきの頭を撫でてあげて欲しいのですが」

八幡「流石にそれは聞こえてますよ。そうじゃなくて俺が不思議なのはなんで俺が星月の頭を撫でることになるのかってことですよ」

牡丹「それは星守にとって、頭を撫でられることはその人と親密度を深める行為になるからですよ。今回、比企谷さんはみきのおかげでイロウスを倒せたと言いましたね。それでしたらみきの頭を撫でて彼女を労うのは当然ではないですか?」

確かに星月のおかげでイロウスを倒せた。それに何か礼をするのも当然だろう。だけどそれが頭を撫でることになるのはおかしいんじゃないの?

みき「比企谷くんになら、私、撫でてもらいたいですよ…?」

あの、そんな上目遣いでそんなこと言わないでもらえますかね?うっかり惚れそうになるだろうが。この子ちょっと心配になるくらい純粋なんだが大丈夫なのか?

64: 2016/12/13(火) 16:46:17.19 ID:EnOxEFW+O
八幡「いや、星月さん?同い年くらいの男に頭撫でられるんですよ?いいの?」

みき「い、いいの!それに、村であの女の子が比企谷くんに頭撫でられてて気持ち良さそうだったから私もしてもらいたいなって…」

八幡「まさか、あの時俺をじっと見つめたのは…」

みき「はい、あの子が撫でてもらってるのが羨ましくて…」

えぇー、変人扱いされてないのがわかったのはまだいいが、こう思われてたのもまたキツいものがあるんですけど…

牡丹「ほら比企谷さん、彼女からも許可が出ましたよ。早く撫でてあげてください」

マジかよ、高校生の男に同い年くらいの女の子の頭を撫でさせるなんてこの学校おかしいぞ…

俺が躊躇してるのを見て八雲先生たちも早くしろと言ってくる。

だぁぁ、うるせぇな!撫でればいいんだろ、撫でれば?もうヤケクソだ。こうなったらイヤになるまで撫でてやる

八幡「…じゃあいくぞ、星月」

みき「は、はい!お願いします!」

66: 2016/12/14(水) 14:02:19.39 ID:fd65/65gO
恐る恐る俺は星月の頭に手を置いて、ゆっくり撫で始める

みき「ひゃうっ!ご、ごめんなさい。変な声出ちゃいました」

八幡「お、おう…」

だが星月はすぐに落ち着いたように見える。俺の手つきに慣れたようだ。てかこいつ髪サラッサラだな。うっすらシャンプーのいい香りするし、こうやって俺に頭を預けてくれている光景も悪くない。

みき「あの、」

八幡「ん?」

みき「いえ、そうやってされるのすごく落ち着きます…」

八幡「そうか…」

みき「…比企谷くんの手、あったかいですね」

八幡「そうか?」

みき「はい」

こいついちいち危ない発言するな…
てかこれ、はたから見たらかなりヤバいやつじゃ…?

周りを見渡すと案の定、理事長含め大人3人はこちらを見てニヤけている

牡丹「ふふ」

樹「想像以上だわ比企谷くん」

風蘭「ほら、アタシたちには遠慮せず続けていいぞ」

こんなに見られて続けられるか!逆によく撫でてたわ俺!恥ずかしさの極みだぞこれは…家に帰ったら枕に叫びたくなるくらいの黒歴史確定だな…

八幡「星月、もういいだろ。てかやめさせてくれ」

そう言って星月の頭から手を離す

みき「はい、ありがとうございました」

また星月は笑顔でそう言ってくる。お礼言われるほどのことしてないんだが。逆に俺がお礼言いたいくらい…

67: 2016/12/14(水) 23:38:55.82 ID:u9OKP7qc0
そんな俺たちを見て何を納得したのか頷きながら3人の大人たちは話している

樹「これはもう決まりではないですか?」

風蘭「アタシも大賛成だよ」

牡丹「ではそういうことにしましょう」

なになになに、大人の女たちの会話なんて恐ろしすぎる。俺の中で危険信号が鳴り続けているんだが…

牡丹「比企谷八幡さん」

八幡「は、はい」

これは絶対めんどくさいことをやらされるに違いない。なんとか回避しないと、とは思ってても逃げる勇気もない、どうも俺です…

牡丹「あなたを星守クラスの担任に任命したいと思います」

68: 2016/12/14(水) 23:39:59.12 ID:u9OKP7qc0
ん?星守クラスって星月とか成海とか若葉とかさっきの星守たちがいるクラス?え?そこに俺が配属されちゃうの?どう考えても不適材不適所じゃない?

八幡「あの、それは責任重すぎませんか?第一俺にそんな大きな仕事できませんよ…」

なんたって人類を守る星守たちの先生になるわけだ。一介のぼっち高校生の俺なんかがやっていいことではない。むしろぼっちの俺には普通の先生すらできるはずがないのに

牡丹「あら、比企谷さん、何かとても大きな勘違いをされてますね。あなたは今回大型イロウス討伐にとても貢献しました。それにみきへの撫で方を見るに星守たちともすぐ信頼関係を築けるでしょう。それになんといっても」

牡丹「あなたは神樹に選ばれたんです。こんなに適任な方は他にいませんよ」

八幡「いや、あの、それは全部偶然だと思うんですけど…」

牡丹「では星守クラスを頼みますよ、比企谷『先生』」

八幡「………はい」

こうまで言われると拒否のしようがない。ある意味平塚先生よりもやり方が強引だ。訴えればパワハラとかで勝てるんじゃない?

樹「では比企谷先生、さっそく星守クラスのみんなに挨拶しに行きましょう」

八幡「え、今からですか?もう俺ホントに帰りたいんですけど…」

風蘭「遥香や昴、他にもたくさんの星守が助けに来てくれただろ?そいつらに挨拶もなしに帰るってわけにはいかないだろ」

う、それは確かにそうなんだが…これ以上知らない人と会話をするのはツライものが…

牡丹「さ、比企谷先生。先生としての最初のお仕事、頑張ってください」

みき「そうですよ比企谷くん!いや先生!早く行きましょう!」

八幡「…わかりましたよ」

もうどんな抵抗も無意味なんですね、わかりましたよ…
物理的にも精神的にも重い足を引きずって俺は星月とか星守クラスに向かった

69: 2016/12/15(木) 13:38:34.02 ID:pXKhukydO
八幡「なぁ、さっきから色々悪いな」

理事長室を出て星月と2人になったので俺はそう切り出した

みき「え?何を謝ってるんですか?」

八幡「いや、村で戦いを任せっきりにしたこととか、俺の勝手な思いつきに巻き込んじゃったこととか、さっき頭撫でちゃったこととか、星守クラスの担任になっちゃったこととか」

手を握られて暖かいなって思ったこととか?撫でてる時いい匂いだなとか思ったこととか?これはさすがに言えないから心にしまっておこう

みき「そんなことありませんよ!全部、私がや比企谷くん、いや先生に同意してやったことですし、撫でてもらったことも私がしてもらいたかったことですし…」

八幡「…今は先生たちもいないから本当のこと言っていいんだぞ?」

さっきから星月にずっと気を遣われてるような気がして心が晴れてくれない。こんな純粋な子にそんな風にさせてる自分も許せない

みき「…先生?私本当に心の底から思ってますよ?」

八幡「だから、そんな気を遣わなくても」

みき「先生!」

星月が大きな声で俺の声を遮る

みき「私は、自分がそう思ったことしかやりません。だから」

みき「先生を信頼する気持ちに嘘はありませんよ?」

なんでこの子は俺にそんなに信頼を置けるんだ?会ってまだ数時間だぞ。そう思われる理由が一つとして考えつかない…

八幡「なんでこんな捻くれぼっちの俺のこと…」

みき「あはは、そういう面白いこと言うところも含めて、ですよ!」

理由になってるのかなってないのかわからない、多分なってないことをこれまた良い笑顔でいいつつ星月は教室のドアに手をかける

みき「さ、先生!ここが星守クラスです。準備はいいですか?」

え、もう?今回こそは心の準備が必要だよ?なにせ同年代の女の子たちに会うわけでしょ?俺には壁が高すぎる。それを乗り越えるには超大型巨人並みのコミュ力が必要だが、俺にあるのはせいぜいミジンコ並みの力ばかり…

八幡「ちょ、ちょっと待ってくれ、」

だが星月は俺の言葉なんか聞くことはなく、ドアを元気よく開ける。じゃあなんで俺に聞くんだよ…

みき「みんな!先生が来たよ!」

70: 2016/12/15(木) 16:55:50.67 ID:6XspA6vlO
中に入ると同時に、教室内の目という目が自分を刺してくる気がする。こういう目立つ役はものすごく苦手だ。もう八幡、穴掘って埋まってますぅぅぅ

そうは問屋も降ろしてくれないので、ひとまず教壇の真ん中に立つ。

明日葉「さ、これで全員揃ったな。まずは」

『ようこそ神樹ヶ峰女学園へ!比企谷先生!』

黒髪ロングの女子の掛け声に合わせて教室内の声が揃って自分を歓迎してくれる。

…こういう時どういう反応をするのがいいの?俺の脳内辞書はこういう状況には非対応なんですけど?誰か教えて?

みき「ほら、先生。ひとまず自己紹介お願いします!」

ナイスだ星月。じゃあ自己紹介といきますか

八幡「あー、比企谷八幡です。よろしくお願いします」

よく考えたら自己紹介なんかほぼしたことないから名前以外何を言えばいいかさっぱりわからない…
ほら、案の定教室シーーンとしてるしね?いや、これは俺のせいじゃない。喋ることがないことが悪い。あれ、それ結局俺が悪くない?

「先生何歳ですかー?」

「好きな植物とかありますか?」

「星とか、興味ありますか?」

「ここの可愛い子はみんな蓮華のだから手出しちゃダメよ~」

「ぬいぐるみとか好きー?」

「zzz」

だがそんな静寂はすぐ破られ、四方八方から声の圧力を受ける。そ、そんな声の暴力に慣れてないんですけど!てか1人寝てないか?よくこんな状況で寝られるな

八幡「あぁ、えーと…」

明日葉「ほら、みんな落ち着け。みんなが一斉に言っても比企谷先生が混乱するだろ。こちらも1人ずつ自己紹介してその時質問があればするようにしよう」

俺が反応できないところを察して、先ほど掛け声をした女生徒が指示を出す。周りもその意見に納得したのか静かになる。なるほど、彼女がこの教室のリーダー的存在か

71: 2016/12/16(金) 12:55:42.22 ID:UbqbxGIYO
「はいはい!じゃあひなたから自己紹介する!」

1人の女生徒が元気よく手を挙げた。こういうところで話し出せるのはすごいなぁ、八幡感心するぞ~

…どこ目線で物を喋ってるんだ俺は、アホか

明日葉「よし、ならひなたから学年順に自己紹介していこうか」

ひなた「はーい!ひなたは南ひなた!中学1年生!4月15日生まれで、血液型はO型!ソフトボール部に入っててピッチャーやってるの!好きな食べ物はオムライス!」

おぉ、元気が服着てるみたいに喋るなぁ

ひなた「あ、今度先生にオムライス作ってあげるね!ひなたのオムライス激うまだから!ひなたの家は6人兄弟で、ご飯の時はいつもおかずの取り合いになって戦場みたいになるけどオムライスの時は1人ひとつって決まってるからゆっくり食べられるの!それでー、」

サドネ「ヒナタ、長い…」

ひなた「えぇーまだ話したいこといっぱいあるのにー!」

八幡「いや、俺もそんなに言われても覚えられないからそろそろ勘弁してくれ…」

ちょっとテンションが高くてついていけないなぁ。俺の中学1年生の時もこんな感じだったのか?いや、流石にないな…

72: 2016/12/16(金) 13:28:19.17 ID:vEZc+o4sO
ひなた「じゃあ質問!先生!先生は兄弟いるの?」

八幡「あぁ、妹が1人な」

ひなた「へぇ、でも全然そんな感じしないね!」

八幡「ばっか、お前、俺は千葉で生まれ育ったためにお兄ちゃんスキルはカンストしてるまであるぞ」

兄妹ケンカの時は必ずお兄ちゃんが悪いって言われて謝らされたり?お兄ちゃんのお小遣いで買ったゲームや漫画を勝手に使われたり?
お兄ちゃんあるあるだよね!

ひなた「??先生何言ってるの?」

八幡「あぁ、いや、わかんないならいい…」

つい南に反論してしまった。これから南には俺のお兄ちゃんスキルを身をもって体感させなければならないだろう

ひなた「じゃあ次の自己紹介は桜ちゃん!」

桜「zzz」

南は隣で寝ている女子を揺すりながら起こそうとする。

ひなた「もう桜ちゃん!起きて!」

桜「なんじゃひなた、わし眠いから寝かせてくれんかのぉ」

ひなた「寝ちゃダメだよ!自己紹介、桜ちゃんの番だよ!」

桜「うーん、どうしてもやらなければならんのか?

ひなた「当たり前だよ!」

桜「うーん、ならさっさと済ませるとするかのぉ」

そう言ってその女生徒はゆっくりのっそり話を始めた

桜「わしは藤宮桜。ひなたとサドネと同じ中学1年生。好きなことは昼寝、好きなものはお茶じゃ。よろしく頼む」

南とは真逆な落ち着いた、というかもう老人の話し方なんだな。この子ホントに中1?多分世の中の老人たちより老人っぽいぞこいつ

73: 2016/12/16(金) 13:50:35.24 ID:gQm7ZBSiO
桜「わしからは特に質問とかはないのぉ。その代わり寝かせておくれ、zz」

ひなた「ダメだよ桜ちゃん!さっきまで寝てたでしょ!」

すごいマイペースだな藤宮。中1でこの態度は将来大物になりそうだな。なるべく関わりたくないが…

桜「なら、次の自己紹介に移ればよかろう。サドネ、頼む」

サドネと呼ばれた女の子がこっちを見るが明らかに嫌悪の目線を送ってくる。やりづらいなぁ…

サドネ「……サドネ」

…それだけ?

楓「ど、どうなさったのですかサドネ?」

サドネ「だって、この人の目怖い。だから、この人、イヤ」

こんなにストレートにこの目を嫌われるとそれもそれで心にくるものがあるぞ。かと言って雪ノ下みたいに罵られてもイヤだが…

78: 2016/12/17(土) 11:22:34.12 ID:2klv8N/O0
楓「では、気を取り直して自己紹介を続けますわ。ワタクシ千導院楓と申します。よろしくお願い致しますわ」

何この漂う金持ちオーラは。ホントにいるんだな、こんな喋り方するザ・お嬢様

楓「将来は千導院家を継ぎ、世の人のために行動できる立派な当主となるために日々勉学に励んでいますの」

玉縄みたいな意識高い系、ではなく本物の意識高い人だ。玉縄とはえらい違いだ。手をこねくり回さないあたりから違うぞ。…そんなの当たり前か

八幡「すげぇな、本物のお嬢様かよ」

楓「先生は千導院家をご存じないのですか?」

八幡「あ、あぁ、正直聞いたことはない…」

俺がそう言った瞬間、千導院の顔つきがサッと変わった。ヤベ、地雷踏んじまったかも

楓「それはいけませんわ!これから千導院家の歴史についてワタクシが講義いたしますわ。まず偉大な初代当主の…」

望「ストップストップ楓!まだみんな自己紹介終わってないよ!」

楓「あぁ、そうでしたわね。ワタクシとしたことが熱くなってしまいましたわ」

これ、止められなければ永遠に語られてたのだろうか…少し千導院家について勉強しとかないとまた言われそうだな

79: 2016/12/17(土) 13:48:50.38 ID:2klv8N/O0
楓「では次はミミ、お願いしますわ」

ミシェル「はーい!ミミは綿木ミシェル!楓ちゃんと同じ中学2年生!好きなものはぬいぐるみだよ!」

これはまた強烈なパンチ力を持った子だな。キュートキューティーキューティクル!って感じ。ウサミン星出身とか言いださないよね?

くるみ「ミミさんは可愛らしいぬいぐるみを自分で作ってるんですよ」

ほぉ、自分で作ってしまうくらいぬいぐるみが好きなのか。ああいう縫い物系を作れるのは素直にすごいと思う。

八幡「自分で作るなんて手先が器用なんだな綿木」

ミシェル「えへへ。あ、先生!ミミのことはミミって呼んでよ!」

八幡「え、いや、いきなり愛称で呼ぶのは俺にはムリだ」

ミシェル「むみぃ~、残念…」

そんな落ち込まれてもムリなものはムリよ?そもそも愛称で人を呼んだことないし、そんな仲になるような人もいなかったし。

八幡「あー、なんかすまん…」


80: 2016/12/17(土) 16:18:46.41 ID:3h8ZXqeMO
うらら「ちょっと先生!雰囲気暗くしたらこの後うららたちが自己紹介しづらいでしょ!ほら、心美も!何かあるなら言ったほうがいいわよ!」

心美「わ、私は別に何も…」

うらら「心美!そんなんじゃこの先うららの隣に立ってられないわよ!」

心美「うららちゃん、いきなり話が飛びすぎてるよ…」

この2人、タイプは違うけど仲良いんだろうなぁ。奉仕部の2人とはまた違った感じだけど

ゆり「こら2人とも!言い争いは後にして自己紹介をしろ!」

心美「す、すみません」

うらら「はーい、じゃあうららから自己紹介するよ!」

81: 2016/12/18(日) 01:03:46.96 ID:QpNdIOwrO
うらら「蓮見うららよ!学年は中学3年生!将来の夢は世界中を虜にする宇宙1のアイドルになること!先生、今なら特別にUFCの会員にしてあげてもいいよん」

八幡「いや、結構です…」

おぉ、小町と同じ年でここまで振り切れてる奴を見るのも珍しい気がする。まぁ中途半端に「アイドルになったきっかけですか?知り合いに勝手に応募されたんですよ~」とか言う奴よりはよっぽどいいが

うらら「えー、もったいない!入会しないと近い将来絶対後悔するわよ!」

八幡「しねぇから…そもそもUFCってなんだよ。どっかのサッカーチーム?」

うらら「football clubじゃないわよ!うららファンクラブ!今なら会員1号にしてあげてもいいよ!」

八幡「だから入らねえって…」

ここまでグイグイ来られると扱いに困るな…小町はこんなに押し強くないから余計に疲れる…

83: 2016/12/19(月) 00:40:13.86 ID:i3Dgu0w60
うらら「じゃあ次は心美の番よ!」

心美「は、はい」

蓮見の隣の席の子がおどおどしながらこっちを見る。そんなに怯えられるようなことしたか俺?やっぱり目?サドネと同じように目がイヤか?
…けっこう傷ついてるな、俺。なんかサドネの声でイヤ、とか嫌いとか言われるのすごい心に来るんだよなぁ

とか考えてると自己紹介が始まる

心美「あ、朝比奈心美です。た、誕生日は10月2日で、星座は天秤座です。天文部に入っています…」

八幡「あ、あぁ…」

心美「…はい」

八幡「……」

心美「……」

何この沈黙!今までキャラが濃い子ばっかりだったから余計に動揺する。何か言ってあげるべきなのか?いや、彼女が何か言うのを待つべきなのか?

心美「あの、やっぱり私の自己紹介つまらなかったですよね…」

朝比奈はそう言って泣き始める。なに?自己紹介がつまらなかったことを心配してたの?これは臆病とかそういう話じゃないと思うんだが…

八幡「そ、そんなことないぞ?自己紹介らしい自己紹介だと思うが」

心美「そ、そうですか。よかったぁ」

俺がフォローをしてしまった。これだけ臆病だと扱いに困るな。小町はこんなに芯が弱くないから余計に疲れる…

85: 2016/12/19(月) 12:09:22.60 ID:+GC+hjZ5O
みき「あはは、じゃ、じゃあ今度は高校生組の自己紹介ですね!」

八幡「まだやるの?」

アニメみたいに続きは来週!とかにならない?もう八幡のライフポイントは0だよ?

みき「当たり前です!星守クラスは18人で1クラスなんですから!」

八幡「そうですか」

まぁまだ話してない奴らはさっきイロウス討伐に助けてくれた連中だから、聞くだけ聞かなきゃいかんか

86: 2016/12/19(月) 12:34:46.56 ID:+GC+hjZ5O
みき「私から自己紹介しますね!星月みき、高校生1年生です!特技は料理ですっ!得意料理は……え、え~っと、まだ練習中です!」

なんで特技が料理で得意料理が練習中なんだよ、と思ってたらクラスの空気がいきなり重くなった

八幡「な、なんでこんな空気が重くなるんだ」

昴「いえ、みきの料理は、その、独特というか」

ゆり「前に食べたら見たこともない世界が見えました…」

八幡「あー、なるほど…」

由比ヶ浜タイプか。あいつが奉仕部で初めて作ったクッキーヤバかったもんな。まさしく凶器。あんなの作れるなんて狂気の沙汰としか思えない。

遥香「え?みきの料理美味しいですよ?先生も食べて見たらどうですか?」

みき「遥香ちゃんだけだよ、私の料理美味しいって食べてくれるの!そうだ、先生にも今度作ってあげますね!腕によりをかけて作りますから!」

八幡「いや、遠慮しておきます…」

自分の料理が下手なことを自覚してないのかこいつは。由比ヶ浜よりタチが悪い。こいつの料理は絶対に回避しなきゃいけないものだな。覚えておこう。

みき「遠慮なんかしないでください!先生の歓迎のために美味しいお菓子を明日作ってきますね!もちろんクラスのみんなのぶんも!」

望「まぁまぁみき、ひとまず今日はみきも疲れてるだろうしお菓子はまた今度で…」

昴「そ、そうそうそれに自己紹介もまだみんな終わってないから続けないとね。次はアタシがやりますね、先生」

87: 2016/12/19(月) 16:36:36.35 ID:RlxW6hY3O
なかば強引に星月を止め、若葉が自己紹介を始める。

昴「アタシ、若葉昴ですっ!5月4日生まれの高校1年生です!フットサル部に入ってますけど、体を動かすことが趣味なのでスポーツはなんでも得意です!」

見た目通りのボーイッシュな子なのね。異性よりも同性に好かれそうな感じだな。

昴「先生は何かスポーツやりますか?」

八幡「いや、俺は特に何もやってない。基本インドアだからな。家から出ない。」

正確には家から「出たくない」だな。外出は必要最低限にし、なるべく家でゴロゴロまったり過ごす。お家は最高、お家は天国。どんな人でも暖かく受け入れてくれるからね家は。家を擬人化したら絶対優しいお姉さんタイプに違いない。

昴「えー、体動かすの楽しいですよ!家に篭ってないでスポーツやりましょうよ!」

八幡「イヤだよ。スポーツは疲れるし、体痛くなるし…」

普段の体育は流してるからそんなことないが、戸塚とテニスした時とか次の日筋肉痛ひどかったからな。

88: 2016/12/19(月) 16:58:45.63 ID:RlxW6hY3O
遥香「先生!若い時から運動しておかないと将来生活習慣病になるリスクが高まってしまいますよ!」

いきなり成海が大きな声を出す

八幡「な、なんだよいきなり」

遥香「そうですね。まずは自己紹介からですね。私は成海遥香です。みきや昴と同じ高校1年生です。音楽鑑賞が好きなのでその影響で吹奏楽部でフルートを吹いています」

八幡「いや、そういうことではなくて…」

遥香「さぁ、自己紹介も終わったので言わせてもらいます。普段から適度な運動をしておかないと体に悪いですよ?そのケガが治ったら私たちと運動ですからね」

昴「そうそう!運動するといい汗かけるしね!楽しいですよ先生!」

疲れることを人に強制されてやるなんてイヤに決まってる。てか若葉の声、なんか一色に似てる感じがする。あいつとタイプは真逆も真逆だけど。一色は絶対運動しようなんて俺には言いださないし、そもそもそういうことしなさそうだし。

遥香「先生!聞いてますか??」

八幡「あ?だから運動はイヤだってば。」

遥香「ダメです。絶対にやってもらいます。」

ふえぇ、この子怖いよぉ。吹奏楽部の未来のお医者さんってもっと優しくないの?

91: 2016/12/20(火) 15:45:20.23 ID:FxVn9CCr0

ゆり「うむ!遥香の言う通りだ!先生は筋肉があまりなさそうなのでもう少し体を鍛えた方がいいと思いますよ!」

背の小さい生徒も俺に声をかけてくる。こんな小さい子にもアドバイスされるなんて、さすがに自分が恥ずかしい。確かに家という温室で育ったためか体つきは少し頼りない感は否めない。

八幡「小さいのにはっきり物を言うな、お前」

ゆり「ち、小さいって言うなぁ〜〜!!

八幡「す、すまん」

小さいことにそんなにコンプレックス持ってるの?別に不自然ではないと思うが。

ゆり「そう簡単には許しません!私のことをちゃんと教えますのでしっかり聞いてください!一度しか言いませんよ」

ゆり「私は火向井ゆり。高校2年生で、風紀委員長として学園の秩序を守っています!学園のルールを破る者、秩序を乱す者は絶対に許さん!部活は剣道部で、精神、肉体共に育てています!」

風紀委員長か…こいつの前で変なことはできないな。もしTo LOVEるしようもんなら「比企谷くん、ハレンチです!」とかはならず、多分ボコボコにされる。まぁ俺は結城リトでもなければ、火向井も色々小さいからToLOVEるすることもないんだろうけど。

というか

八幡「お前高2なの?俺と同い年なのかよ」

ゆり「え、先生って高校生なんですか?」

八幡「あぁ、この制服見ればわかるだろ」

さすがにコスプレには見えんだろ。見えないよね?

ゆり「同じ高校生で私たち相手に教壇に立てるとは。先生は相当すごい方なんですか?」

八幡「いや、普通の高校生だ。ここにいるのは理事長の命令でいるだけだ」

上司の命令には逆らえないんですねこれが。同学年相手に先生やるなんてかなり気まずいんですが、どうにかなりませんか?

92: 2016/12/20(火) 23:53:43.04 ID:FxVn9CCr0
望「えー、アタシはそれでもすごいと思うけどな~」

八幡「…!」

今、由比ヶ浜の声がしたか?いや、そんなはずはない。あいつがここにいるわけがない。

動揺しながら俺はひとまず返事をする。

八幡「あぁ、ありがと、その…」

望「アタシ?アタシは天野望!高校2年生!趣味は、オシャレ!ファッションに関する知識は誰にも負けません!目標はママみたいに自分でブランドを立ち上げること!特技は、お裁縫!デザイナーを目指す以上、服ぐらいは自分で作れないとね♪」

ほぉ、声だけじゃなくて、明るく素直な感じも由比ヶ浜と似てるな。

八幡「ファッションか。俺には縁もゆかりもないものだな」

家ではアイラブ千葉Tシャツだし、外出の時には小町に服選んでもらってるし。

望「それはもったいないよ先生!人間、オシャレしてナンボだよ!」

八幡「いや、めんどくさいし、自分に合う服分からないし…」

それに服屋の店員との会話もツライ。なんで店入ってすぐ「何かお探しですか?」とか聞いてくるのあの人たち。それにびびって「あ、いえ、あの」と言ってすぐ逃げてしまうどうも俺です。

望「じゃあアタシが先生の服選んであげるよ!カッコよくコーディネートしてあげるよ!」

何、この子押し強すぎじゃない?ガハマさんに勝るとも劣らないんだが。第一、こんな子と服選びに行くというシチュエーションがまず無理だよぉ

八幡「え、遠慮しときます…」

93: 2016/12/22(木) 00:44:18.57 ID:ymcmLuFb0
望「えー、行こうよ先生~」

ゆり「こら望。先生を困らせるな。それに騒がしいとくるみが話せないぞ」

望「そっか、ごめんねくるみ」

くるみ「いえ、大丈夫」

八幡「…!」

くるみ「どうかしましたか先生」

八幡「い、いや。なんでもない」

なんなんだよ、こいつは雪ノ下に声がそっくりじゃねえか。どうなってんだよ、このクラス

くるみ「そうですか。それでは私の自己紹介を始めます。私は常磐くるみ。高校2年生です。趣味は読書と家庭菜園です。将来はパパと同じように植物学者になりたいと思っています」

桜「くるみは花を育てるのが上手だからのぉ。くるみが手入れした花壇はとても綺麗じゃ」

くるみ「そんな。私はお花さんの声を聞いてその通りやっているだけで」

八幡「え、花の声を聞くって何?」

思わず反応してしまった。もしかしてこの子けっこう不思議な子?

くるみ「お花の声が聞こえることは、そんなに不思議なことですか?」

八幡「少なくとも俺は今まで聞いたことないぞ」

普通聞いたことないだろ。デビルーク星の第二王女じゃあるまいし…

てか聞けば聞くほど違和感が募る。この声でこんなにゆっくり優しい口調で話されたらどう反応すればいいか迷う…天野の場合は性格が似ていたからまだいいが、常磐は性格も全然違うし。なんなら見た目も違う。その最たるものとして雪ノ下にはない2つの兵器の存在がある。こんなに違うとこだらけで声だけ似てるのも少し面白いが。

96: 2016/12/22(木) 08:16:28.46 ID:fPV1oj0vO
くるみ「先生も心を素直にして耳をすませばお花たちの声が聞こえるはずですよ」

心を素直に、なんてできるはずがない。素直になれていたら今頃ここにはいないし、そもそも奉仕部にもいないだろう。

八幡「いや、それは」

花音「ムリね」

八幡「そう、ムリ。って、え?」

花音「アンタみたいな無能が心を素直に、なんてできるはずがないでしょ。むしろなんでこんなやつがここにいるのよ」

敵意むき出しで接してくるなこいつ。俺こいつとは初対面なんだけど、なんかした?

八幡「あの、俺あなたに何かしました?」

花音「は?何もできてないから怒ってるのよ!私は仕事で間に合わなかったけど、イロウスとの戦いでみきを酷い目に合わせたって聞いたわ。そんな無能、私は許さないわよ」

酷い目に合わせた無能って。まぁ間違ってはないか。

詩穂「まぁまぁ花音ちゃん、今はひとまず先生に自己紹介しないと」

花音「そ、そうね。私は煌上花音。アンタと同じ高校2年生よ。というか、私の自己紹介なんていらないでしょ。雑誌に書いてあるんだし」

八幡「雑誌?」

花音「…まさか、私のこと知らないって言うんじゃないでしょうね?」

八幡「あー、どこかで会ったことあったっけ?」

花音「信じられない!私のこと知らないなんて!どうやって今まで生きてきたのよ」

八幡「そこまで言うか…」

知らないものは知らないよ。こんな金髪ツインテなんて見たらそうそう忘れるもんじゃないし。それに雑誌ってのもよくわからん。どゆこと?

97: 2016/12/22(木) 10:05:04.31 ID:5/ND5JCIO
詩穂「花音ちゃん、そう言わずに。先生が私たちのこと知らないなら、これから知って貰えばいいでしょ?」

花音「詩穂は甘いのよ。こんなやつ今すぐ踏んでやりたいわ」

言い方はキツいが、この子に踏まれるって一種のご褒美じゃない?

花音「何考えてんのよ、ヘンタイ!」

それもご褒美っちゃあご褒美なんだよなぁ。

詩穂「うふふ。あ、申し遅れました。私、国枝詩穂と申します。ふとしたきっかけで花音ちゃんと『f*f』(フォルテシモ)というアイドルをやっています。先生、これからよろしくお願いしますね」

ふーん。アイドルか。アイドルねぇ。アイドル??「はっちはっちはー!あなたのハートにはちはちはー。笑顔届ける比企谷八幡!青空もー、ハチッ!」とか「みんなでハピハピしようにー☆」とか言うやつ?…俺の中のアイドル像イロモノに偏りすぎだろ。

八幡「え、お前らアイドルなの?」

詩穂「はい」

花音「だから雑誌見てないのかって言ったでしょ。ホントに何も知らないのねアンタ」

そういうリア充が興味あるようなもの見てないんだよなぁ。そもそもアイドル自体に興味もないし。

八幡「いやまぁそういう話題に疎くてな」

詩穂「でしたら、これから私たちにも興味を抱いてくださいね?」

煌上と違った、優しい言葉遣い、笑顔には癒される。

詩穂「でも、花音ちゃんに迷惑をかけてたら、絶対許しませんからね?」

そう言って国枝は俺に笑いかける。だがさっきまでの笑顔とは違ったゾッとする笑顔だ。

八幡「あ、あぁ」

前言撤回。こいつが1番怖いかもしれん。

参考画像
国枝詩穂
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira125433.png

98: 2016/12/22(木) 17:36:52.75 ID:pbTK8EO80
明日葉「よし、これで残りは私たち高校3年生だな」

八幡「え、高3もいるんすか?」

明日葉「当然です。星守は中学1年生から高校3年生までの女生徒で構成されているのですから」

八幡「そうなんですか…」

そんなこと初耳なんですけど。先生方、もう少し俺に基本情報を下ろしてほしいですね。

明日葉「はい。では私たち高校3年生の自己紹介を始めさせて頂きます。私は楠明日葉と申します。神樹ヶ峰学園の生徒会長を務めています。趣味は瞑想です。瞑想をすると自分自身の内面と向き合うことができるんです。あと、家族のこともお話ししたいのですが、楠家はとても古く、成り立ちからお伝えすると長くなってしまうのでまた今度にさせて頂きます」

ほう、一色とも玉縄とも違う、真面目な生徒会長そうだな。これこそ生徒会長らしい生徒会長。まぁ一色と玉縄がおかしすぎるから余計真面目に見えるのもある。

八幡「はぁ、よろしくお願いします」

くるみ「先生口調が丁寧になりましたね」

八幡「いや、だって俺の方が年下だしそこはへり下るだろうよ」

むしろ下りすぎて最底辺にいるまである。もっと世間は八幡のことを大事にしようね!

明日葉「先生はもっと堂々としていてください。私たちの担任なんですから」

八幡「いや、そう言われても…」

いくら先生という立場にいても年上相手に、しかも女子相手に偉そうな態度はとれない。

参考画像
楠明日葉
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira125450.png

99: 2016/12/22(木) 19:58:59.23 ID:1zIi9V6tO
蓮華「明日葉~。彼はこの学園との交流で来たのだから、先生としての振る舞いは多めに見てあげなきゃダメよ~、ね先生」

八幡「あ、あぁ。そうしてもらえると助かります」

蓮華「それに、蓮華はこうして可愛い子がいっぱいいる教室で慌てふためく先生のこと見てるのも面白いですし~」

八幡「それは勘弁してください…」

フォローしてもらったと思ったらただ遊ばれてただけでしたー!だ、だって女子校で、しかも可愛い子ばかりのクラスに入れられて慌てない男子高校生はいないよね?しょうがないよね?

蓮華「そしたらかわいい蓮華の魅力もしっかり知ってもらわないと。名前は芹沢蓮華。趣味はプロポーション管理。美は1日にしてならずですから。特技はお料理よ。人の心を掴むためにまず胃袋を掴まないとね」

八幡「はぁ」

蓮華「でも、先生に残念なお知らせがあるの」

八幡「…なんですか」

蓮華「れんげね、男の人より、かわいい女の子のほうが好きなんです~♪」

八幡「…はぁ」

蓮華「あら~、反応薄くない?」

八幡「いえ、どう反応すればいいかわからなくて」

突然そんなカミングアウトされてもどうやって答えればいいのかわからん。しかしこういう絡み方は苦手だ。なんか雪ノ下さんに少し似てる気がする。いや、あの人のことを考えたらここに来そうだからやめよう…

蓮華「も~、次からはもう少しかわいい反応を期待してるわよ」

八幡「俺にそんな反応求めないでください…」

参考画像
芹沢蓮華
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira125474.png

100: 2016/12/22(木) 22:29:58.00 ID:ymcmLuFb0
明日葉「蓮華、そろそろあんこにも自己紹介させてやれ」

蓮華「はーい」

はぁ、助かった。やっと最後の1人か。長かったな。なぜかとても長かった気がする…

あんこ「ワタシ、やらなきゃダメ?」

明日葉「当たり前だ。先生に私たちのことをしっかり知ってもらわないと」

あんこ「ワタシ、ゲームとかブログやりたいから早く帰りたいんだけど」

おぉ!最後にしてやっと俺と同じような考え方をしてるやつを見つけたぞ。この流れに乗れば俺は帰れる…!

八幡「いいこと言うじゃないですか。俺も早く帰りたいんだ、だからもうこの会はお開きに…」

明日葉「いけません」

蓮華「ダメよ~」

八幡あんこ「うっ」

そんな2人して否定しなくてもいいじゃないか…

明日葉「先生がそんなこと言ってどうするんですか。最後までしっかり聞いてもらいます」

八幡「はい…」

蓮華「あんこもよ~。ちゃんと自己紹介してもらうわよ。じゃないと…」

そう言って芹沢は不敵な笑みを浮かべる。

あんこ「わかった、わかったわよ。自己紹介するから!」

蓮華「うふふ~」

あんな風に笑われたらそりゃ反抗できないよな…やっぱり高3女子怖い。

あんこ「じ、じゃあ簡単に。粒咲あんこよ。特技はプログラミング。好きな食べ物は激辛料理。趣味はネットサーフィン。これでいい?」

八幡「あぁ、はい」

粒咲さんは星守の中で1番俺に近い人っぽいな。家に帰りたいと思ってるところもこのクラスの中においては八幡的にポイント高いぞ。

参考画像
粒咲あんこ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira125482.png

101: 2016/12/22(木) 23:08:42.38 ID:ymcmLuFb0
ふぅ、これで全員の自己紹介が終わったな。やっと解放される…さ、帰ろ

と思ったら、ドアが開いて八雲先生と御剣先生が入ってきた。

樹「みんな、比企谷先生とは話せたかしら?」

風蘭「比企谷も交流できたか?」

八幡「えぇ。しっかり交流できました。なのでもう俺は帰りたい…」

ミシェル「むみぃ、先生と全然お話しできてない~」

うらら「なんか変なことばっかり言うー」

花音「こんなやつ今すぐ踏んでやりたいわ!」

望「この先生かなり変わってるよね!」

おいおい、なんか散々な言われようだな。お前らもけっこう変わってるからな。

樹「ではもう少し交流を深める必要がありそうね」

風蘭「そうだな。ちょうどいいことに、今ラボでアタシが作ったチャーハン製造機がみんなのぶんのチャーハンを作っているんだ。比企谷の歓迎も兼ねてチャーハンパーティーでもやろうじゃないか」

遥香「おなか一杯食べられるかしら」

ひなた「わーい!チャーハンだー!」

明日葉「はい、賛成です」

風蘭「異存はなさそうだな。ではチャーハンを持ってくる。ちょっと待っててくれ」

あの、俺の意志は?一応俺って主賓じゃないの?

八幡「あのー、俺は今日はちょっと…」

蓮華「あら~、先生、勝手に逃げるのはナシですよ~」

楓「そうですわ!先生のことをきちんとおもてなししないとこちらの気が済みませんわ」

詩穂「うふふ」

逃げ道はないのね…

みき「先生!一緒に楽しみましょ!」

またいい笑顔だなこいつ。まぁ、チャーハンも嫌いじゃないし、腹も減ったからちょっとくらい残ってやるか。

八幡「食うだけな」

桜「はは、先生も素直じゃないのぉ」

ゆり「そうですよ!食べたいなら食べたいと正直になりましょう!」

八幡「うるせ」

これから俺はここでやっていけるのだろうか。不安しかないが、ひとまず今は香ばしい匂いのするチャーハンを味わうとしよう。

116: 2016/12/26(月) 00:06:57.38 ID:T7E6fWLO0
本編1-1

イロウスと戦った翌日。俺は朝早くから神樹ヶ峰女学園にいた。「比企谷先生にもう少しこの学園での生活について説明したいので、早く来てくださいね」と八雲先生に脅され、じゃなかった、言われてしまったためだ。

八幡「おはようございます」

樹「あら、おはようございます。待ってましたよ」

八幡「こんな朝早くから説明するんだったら昨日のうちにやってほしかったですね」

樹「昨日は、ほら、色々あったでしょ、ね?」

八幡「…はぁ」

昨日のチャーハンパーティーの時、星守たちはもちろん、先生たちも盛り上がってしまい、収拾がつかなくなって、そのまま解散になってしまった。なんなら先生たちが一番盛り上がってたまである。

樹「では時間もないので説明を始めたいと思います。比企谷先生にはHRや生徒指導など、担任としての業務を任せたいと思います。でも、それ以外の授業は星守クラスであの子達と同じように、生徒として受けてくださいね」

八幡「それは、どういうことですか?」

樹「つまり比企谷先生には、神樹ヶ峰女学園で、先生と生徒の両方をこなしてもらいます」

八幡「え、いや、そんなのムリですよ…」

樹「決定事項なので変更は受け付けません。今日からよろしくお願いしますね」

先生と生徒の二足の草鞋なんて履けるはずがない。なんなら今まで生徒すらちゃんとやれてない。

八幡「横暴だ…」

樹「何か言いましたか?」

八幡「いえ、何もないです…」

118: 2016/12/26(月) 15:02:06.30 ID:T7E6fWLO0
本編1-2


そうこうしていると朝のHRの時間になってしまった。昨日会っているとはいえ、教室には行きづらい。
今からは先生として振る舞い、授業は一緒に受ける。もう意味が分からない。

八幡「はぁ…」

ため息をつきながら教室のドアを開ける

みき「先生!おはようございます!」

楓「おはようございますわ」

望「おぉ!おはよう先生!」

八幡「あ、あぁ…」

ふぇえ、テンションが高くてついていけないよぉ

八幡「あぁ、みんなに伝えないといけないことがある」

そう切り出してさっき八雲先生に言われたことをかいつまんで説明すると

遥香「先生と生徒を一緒にやるなんて大変ですね」

八幡「あぁ…」

てかそもそも生徒として行くのはダメだから先生になったんじゃないの?設定がグダグダになってない?大丈夫?

あんこ「なら先生は先生じゃないってこと?」

ミシェル「先生が生徒で、生徒が先生?ミミ、わからないよぉ~」

八幡「簡単に言えば朝と放課後は先生で、授業中は生徒ってことか」

多分そう、ナニコレものすごくめんどくさい。

うらら「なら呼び方も変えなきゃね!先生じゃないなら、あだ名つけなきゃ!一応年上だし、ハチくんとか!」

ひなた「ひなたも八幡くんって呼ぶ!」

昴「は、八幡さん?なんか恥ずかしい…」

八幡「おい、好き勝手に呼ぶな」

なんか恥ずかしいだろ。すごい仲いいみたいじゃないか。

明日葉「そうだぞ。あくまで比企谷さんは先生としてここにいるんだぞ」

蓮華「まぁ、みんな好きにすればいいじゃない、ね、先生?いや、八幡って呼んだ方がいいかしら?」

八幡「からかわないでください…」

花音「そうね、こんなやつ先生なんて呼びたくはないし、好きに呼べばいいんじゃない」

詩穂「私たち高校2年生は同じ学年だしね、花音ちゃん」

こう、どうして星守ってのは人の話を聞かないんだ…

八幡「もう勝手にしてください…」

ゆり「先生!私は先生と呼びますからね!」

桜「はは、面白いことになっておるな。頑張れ八幡」

くるみ「八幡、頑張って」

サドネ「…サドネ、あの人イヤ」

そんなこんなしてたら1時間目のチャイムが鳴り、八雲先生が入ってきた

119: 2016/12/26(月) 15:17:33.42 ID:T7E6fWLO0
本編1-3



樹「みんな静かに。もう授業の時間ですよ。早く座ってください比企谷『くん』」

八幡「はい…」

俺を槍玉に挙げないでほしい。ほら、天野とか綿木とかも騒いでるよ?そっちは注意しないの?そういう差別はいけないと思います!

樹「では授業を始めます。今日は武器について授業をしたいと思います」

は?武器?暗殺教室でも始まるの?

樹「イロウスの種類ごとに効果が高い武器、低い武器が存在します」

あぁ、イロウスと戦うための授業ね。なら俺は別に聞かなくてもいいんじゃないか?

樹「『ソード』は扱いやすいベーシックな武器種です」

眠い。朝早く学校来たし、さっきのHRで俺の体力は切れた感がある。

樹「『ソード』はシュム種には効果が高いですが、ドラコ種には効果が低いです。これは…」

もういいや、寝よ

120: 2016/12/26(月) 17:23:56.09 ID:WuaUpmf4O
本編1-4


「くん、比企谷くん!」

八幡「ん、誰?」

目を開けると八雲先生が明らかに怒りながら俺の前に立っていた。

樹「比企谷くん、授業中に寝てはいけません!罰として、来週特別テストを行います。合格しなければ、どうなるかわかってますよね?」

八幡「いや、この授業を俺が受ける必要はないんじゃ…」

刹那、拳が左頬をかすめていった

樹「言い忘れてましたが、私は元星守です。現役の時よりは衰えましたが、まだまだ一般人よりは強いと思いますよ。では、もう一度言います。特別テスト受けてくださいね」

八幡「…はい」

こんなの断れるわけないよね!暴力反対!イロウスと戦った時くらいの命の危険を感じたんだが。

ひなた「あはは、八幡くん怒られてるー!」

桜「自業自得じゃな」

サドネ「ジゴウジトク、デスワ」

樹「ひなた、桜、サドネ。あなたたちも寝てたわよね?比企谷くんと一緒に来週特別テストです」

ひなた「えー、八雲先生ひどいよ~!」

桜「これも、自業自得かのぉ」

サドネ「特別テスト、みんなでやる!」

ひなた「サドネちゃん、テストだから勉強しないといけないんだよ…」

サドネ「え、サドネ、勉強キライ…」

ゆり「授業中に寝ているほうが悪いのだからこれくらいの罰は当たり前だ!」

蓮華「いや~ん、嫌がるひなたちゃんたちも可愛い~」

あんこ「蓮華、うるさい…」

樹「はい、静かに。4人とも、来週までにしっかり勉強してきてください。では授業を終わります」

122: 2016/12/27(火) 23:31:35.43 ID:3cMPTcAr0
本編1-5


昼休み、星守たちは机をくっつけ、楽しそうに弁当を食べる中、俺は例のごとく1人で飯を食う。今は教室だが、早くこの学校でのベストプレイスも探しておかなければならない。だって一方では

みき「昨日、ケーキ作ってみたんだけど、ママのよりもおいしく作れなかったよ…」

遥香「みきのケーキは今でも十分おいしいのに。ねぇ昴」

昴「はは…」

という会話がされ、また片方では

うらら「やっぱりアイドルには自己PR力がいると思うの!だからここみ!うららの自己PRの手伝いして!」

心美「そんなことしなくても、うららちゃんは、いつもかわいいよぉ」

うらら「それじゃあダメなの!うららのことをみんなに知ってもらうためには、印象に残るように魅力を伝えられるようにならないといけないの!さ、やるわよここみ!」

心美「ま、待ってようららちゃ~ん」

など、どこもかしこも女子トークに花が咲いている。こんなところで落ち着いて飯を食うなんて俺にはできない。

ひなた「ねぇ、八幡くん」

八幡「ん?」

南が俺のところへ来て話しかけてきた。

ひなた「テスト勉強どうするー?」

八幡「ん、あぁ。家でなんとかやるつもりだ」

朝早くから放課後まで時間が空いてないため、帰ってから家でやるしかない。幸運にも週末は学校に行かなくていいので、そこで集中してやることができそうだ。

ひなた「えぇー、1人でやるの~?それじゃつまんないよ!」

八幡「いや、勉強って1人でするものだから…」

1人で努力した分だけきちんと結果になる、そんな勉強を、俺はそこまで嫌いなわけではない。別に、他にすることがないから勉強しているわけではないよ?ホントだよ?

ひなた「あ、そうだ!せっかく同じテスト受けるんだからみんなで勉強会しようよ!ね、桜ちゃん!」

桜「ん?ならわしの家でやるか?じぃじは来客が好きじゃからのう」

ひなた「さすが桜ちゃん!そしたら週末に桜ちゃんのおうちで勉強会やろう!」

桜「じぃじも喜ぶじゃろうなぁ」

ひなた「ひなた、サドネちゃんも誘ってくる!」

そう言って南はサドネに話を付けに行った。うん、今のうちに俺は断りを入れておこう。

八幡「じゃあ、3人で仲良くやってくれ。俺は自分でやるから」

桜「八幡も参加確定じゃよ」

八幡「いや、お前らと一緒で勉強なんてできねぇよ」

桜「だが、イロウス関係の資料なんてどこにも売っておらんし、わしら星守の体験なども踏まえて学んだ方が確実に知識は定着すると思うぞ?」

八幡「それは、一理あるな…」

桜「じゃろ。ならひなたやサドネの話を聞いて勉強しておくれ」

八幡「おい、藤宮、まさかお前あいつらの世話を俺に押し付ける気じゃないだろうな」

桜「さてな。では週末にな、八幡」

八幡「くそ…」

中一にまんまと言いくるめられてしまった。悔しい…


123: 2016/12/29(木) 00:32:19.95 ID:fi5vZfrX0
本編1-6



そうして週末になり、俺らは藤宮の家に行くことに。

ひなた「桜ちゃんの家楽しみ!」

サドネ「サクラのジィジ、どんな人?」

桜「そうじゃのぉ、わしと同じように、ゆっくりまったりしておるのぉ」

サドネ「わぁ…!」

こんな感じでもう駅からかなりの距離を歩いている。周りは田んぼばかりで、のどかな風景が広がる。

八幡「なぁ、いつまで歩くんだよ…」

桜「もう少しの辛抱じゃ」

ひなた「八幡くん体力ないね!」

サドネ「…」

藤宮には励まされ、南にはからかわれ、サドネに至っては口もきいてくれない。なんで俺今日来たんだろう。すごい居心地悪いんだが。

桜「さ、着いたぞ」

ひなた「おぉ!」

サドネ「わぁ」

八幡「ほぉ」

家は古き良き木造日本家屋。庭も広いとは言えないが手入れは行き届いており、縁側も日当りのいい位置にある。確かにあそこで昼寝をするのは気持ちよさそうだ。

桜「さ、荷物を置いたら勉強会じゃ」

ひなた「おぉ!」

サドネ「おぉ」

南は元気よく手を挙げながら返事をし、サドネもそれを真似る。

八幡「はぁ…」

ひなた「ほら、八幡くんも返事して!」

八幡「はいはい」

サドネ「返事はちゃんとしないとダメ、デスワ」

八幡「…はい」

桜「わはは、面白いのぉ。やはり八幡を連れてきてよかったのぉ」

この中一トリオ、俺のことなめすぎだろ…

129: 2016/12/31(土) 03:01:03.88 ID:S00KlwTU0
本編1-7


桜「ただいま。さ、みんな入っておくれ」

藤宮がドアを開けて俺たちを家の中へ入れる。

桜の祖父「おぉ、遠いところをよく来たのぉ。わしは桜のじぃじじゃ。みんな、ゆっくりしていっておくれ」

藤宮の声を聞いたのか、中からおじいさんが出てきた。しかし、ほんとに藤宮はこのおじいさんとしゃべり方が同じなんだな。お互いが入れ替わってもわかんないぞ、これ

ひなた「こんにちは!」

サドネ「ご、ごきげんよう」

八幡「どうも。お邪魔します」

桜「さ、みんなこっちじゃ」

そう言って藤宮は奥の客間へ俺たちを案内する。

サドネ「サクラのじぃじ、優しそうな人だった」

桜「うむ。じぃじはとっても優しいんじゃ」

ひなた「さくらちゃんが70歳くらいになったらあんな感じのおばあちゃんになりそう!」

桜「ふふ、そうじゃな。そうなるかもしれんな」

八幡「とりあえず早く勉強始めないか?時間も多くはないことだし」

早く始めて早く終わらせ早く帰りたいし。

桜「そうじゃな。ではお互いのノートなどを見直しながら勉強をやるとするか。まずはひなたのノートから見るとしよう」

ひなた「うん!」

南が元気よくノートを開くが、ノートはラクガキで覆いつくされていた。

八幡「おい、なんだこのラクガキの山は…」

ひなた「すごいでしょ!これはクワガタ、これはカブトムシ、こっちはカマキリ!」

サドネ「ヒナタ、じょうず」

ひなた「えへへ~、でしょでしょ!どれも全部捕まえたことあるんだよ!」

八幡「いや、ノートにこんだけ昆虫の絵があったら怖いわ」

地味にうまいから余計生々しくてちょっと気持ち悪い

ひなた「そんなことないよー!ひなた、昆虫採集すると一回でこれくらいは集めるんだよ!」

八幡「まじか…」

昆虫採集なんてアウトドアな趣味を持ってるのねこの子。一日中森の中を駆け回ってそうだなこいつ

桜「うーむ、じゃがこのひなたのノートじゃ勉強できんな。昆虫の絵以外はほとんど何も書いておらんし」

ひなた「う、ごめんなさい…ひなた、ラクガキしてるとき以外はほとんど寝てるから授業のことは何も書いてない…」

八幡「南のノートがダメなら次はサドネのノートか?」

桜「じゃな。サドネ、ノートを見せておくれ」

サドネ「ん」

144: 2017/01/02(月) 11:40:18.04 ID:z/wUnfrG0
本編1-8


サドネのノートを開くと、そこには古代文字のような怪しい記号が並んでいる。

八幡「これは、なんだ?」

サドネ「ノート」

八幡「いや、ノートなのはわかるが何が書いてあるんだ?」

サドネ「わからない。イツキの授業難しくて何書けばいいかわからない」

桜「まぁ、サドネは最近神樹ヶ峰に来たからのぉ」

八幡「ん、こいつも南やお前と同じ学年だろ?」

ひなた「ひなた達、サドネちゃんがイロウスに襲われてたところを助け出したの。サドネちゃんはその時の傷やショックで記憶がなくなっちゃって…」

桜「じゃが、星守としての素質があったので、わし達と同じ中学1年として神樹ヶ峰の星守クラスに転入することになったわけじゃ」

八幡「…お前、かなりツライ経験してるんだな」

そう言ってサドネのほうに視線を向ける。こんな小さい子があんな得体の知れない生き物に襲われるなんて相当なショックを受けてるんだろう

サドネ「うん」

八幡「うんって…」

サドネ「みんなが助けてくれたから、サドネ平気」

八幡「そうか」

俺は無意識にサドネの頭を撫でていた。少なくとも俺はこんな年のときにイロウスに襲われてサドネのように落ち着いた反応はできてないだろう

サドネ「…」

八幡「あ、悪い、」

おにいちゃんスキルがまたオートで発動しちゃった!年下の子が、しかも小町に声が似ている子が辛い目にあってたら、頭撫でたくなっちゃうよね!

サドネ「うんうん、なんかこのなでなで、イヤじゃない」

八幡「…そうか」

サドネ「うにゅ……ふふ……えへへ……」

なかなか可愛い反応するじゃないかこいつ。撫でがいがあるな。

桜「さて、八幡、そろそろ勉強に戻りたいのじゃが、いいかのぉ?」

突然の声にハッとすると、藤宮が頬を膨らませこっちをジト目で睨んでくる。隣の南も機嫌が悪そうにしている

八幡「あ、あぁ。悪い」

145: 2017/01/02(月) 23:25:21.67 ID:z/wUnfrG0
本編1-9


桜「では八幡のノートを見せてもらおうかのう」

八幡「悪いが俺はノートすら作ってない」

ひなた「えー、ちゃんと授業ノート取らなきゃダメだよー!」

八幡「お前に言われたくねぇよ。つか、実際俺自身が戦う訳じゃないし、別にノートはいらないと思って。つか藤宮のノートはどうなってるんだよ」

桜「わしか?わしは授業は全部寝ておるので真っ白じゃ」

八幡「いや、そんなニコニコして言うことではないでしょ」

てか4人が4人とも授業聞いてないってやばくない?八雲先生のことだから特別テストでひどい点数とったらなにされるかわからないぞ。

桜「はぁ。しょうがないのう。ならわしがみんなに講義をしてやろう」

八幡「は?お前授業中寝ててノートも取ってないんだろ?俺たちにどうやって教えるんだよ」

桜「あれくらいの内容、寝ながら聞いても暗記できるわい」

八幡「まじかよ…」

ひなた「桜ちゃんは小学校の時からテストはもちろん、お遊戯会のダンスなんかも全部一発で覚えちゃうんだから!」

サドネ「サクラ、すごい」

桜「まぁ、このくらいはできて当然じゃ」

おいおい、このめんどくさがり屋、実はめちゃくちゃ天才なんじゃないのか?下手したら雪ノ下姉妹を超えるかも。

ひなた「桜ちゃんの説明すごいわかりやすいんだよ!だから、桜ちゃん!よろしく!」

サドネ「よろしく…!」

八幡「じゃ、じゃあ、頼む」

桜「はぁ。しょうがないのう。では始めるとするか」

146: 2017/01/03(火) 00:21:50.62 ID:GMXTOfKa0
本編1-10


南の言った通り、藤宮の説明は彼女自身がめんどくさがりということもあるのか、無駄な説明が一切なく、要点を押さえた非常にわかりやすいものだった。それに、俺たちの理解していない箇所を見極め、そこは特に詳しく解説してくれた。ホントこいつ有能だな…

桜「これで大体の説明は終わりかのう。あとはこれを覚えられれば大丈夫じゃろ」

ひなた「ありがとう桜ちゃん!」

サドネ「サクラ、ありがとう」

八幡「助かった」

桜「ま、これっきりにしてもらいたいのう。たくさんの人にものを教えるのは疲れるのじゃ」

八幡「でもお前、説明めちゃくちゃうまかったな」

桜「小学校の時からひなたの勉強を見てきたからのう。ずっとひなたにわかるように教えることを意識してた分、大体の人にはわかりやすい説明になっているわけじゃ」

八幡「なるほど…」

確かに南に勉強を教えるってかなり難しそうだしな。頭じゃなくて体で覚えそうなタイプだし。

桜の祖父「みんな、勉強は進んでおるかの?そろそろ休憩にしてはどうじゃ?お菓子の差し入れじゃ」

桜「おぉ!羊羹じゃ!」

サドネ「チョコもある!」

ひなた「わーい!ひなたいっぱい食べる!」

八幡「ありがとうございます」

桜の祖父「いやいや、さ、食べておくれ」

八幡「えぇ、では」

とテーブルを見るが、さっきまで大量にあったお菓子がなくなっている

八幡「俺のお菓子…」

ひなた「ごめん、八幡くん!ひなた疲れておなかすいちゃって」

サドネ「チョコはサドネのだから」

八幡「あぁ、別にいい。俺は自分で持ってるものでいいわ」

俺はカバンからマイソウルドリンク、マッ缶を取り出して飲み始める。あぁ、疲れた頭にもったりとした殺人的な甘さが染み渡る。

桜「それはなんじゃ八幡」

八幡「これか?これはMAXコーヒーという、千葉に住むものなら誰もが愛する飲み物だ」

ひなた「えー、コーヒー?」

八幡「そうだ。だが、このMAXコーヒーはそこらの甘いコーヒーとは比べ物にならないくらい甘いのだ。人生苦いことばかりだからな。コーヒーくらいは甘くていい」

サドネ「それ、甘いの?サドネ飲んでみたい」

八幡「お、おう。じゃあコップ貸してくれ」

サドネのコップにMAXコーヒーを移して渡す。缶ごと渡すのが手っ取り早いが、間接キスを意識しちゃってそんなこともできないどうも俺です。

八幡「ほれ」

サドネ「ん」

てかこの子さっき大量にチョコ食べてたよね?さらにマッ缶飲むの?いくら甘党の俺でもさすがに厳しい。

サドネ「サドネ、これ好き!」

サドネはコップの中身を飲み干すと笑顔でこっちを向いた

サドネ「ねぇ、もっとほしい」

八幡「いや、もう手持ちにはないんだが…」

そういうとサドネは明らかに落ち込んだ表情をする

八幡「…でも家にはストックあるから、今度学校でやるよ」

サドネ「ほんと?」

147: 2017/01/03(火) 00:33:51.54 ID:GMXTOfKa0
本編1-11


そうしてサドネはまた笑顔でこっちを向く。表情の浮き沈みが激しいな。

ひなた「なんか八幡くんとサドネちゃん兄妹みたい!」

桜「そうじゃな。ほほえましい光景じゃ」

サドネ「兄妹?」

ひなた「うん!八幡くんがサドネちゃんのおにいちゃんだね!」

サドネ「おにいちゃん。おにいちゃん…えへへ」

いや、何この状況。確かに頭なでたり飲み物あげたり兄妹っぽいことはしたけども…

サドネ「おにいちゃん!」

八幡「いや、俺はお前の兄じゃないんだが…」

サドネ「サドネにおにいちゃんって呼ばれること、イヤ?」

嫌いではないし、むしろ好きと言うか、大好きまである!なんか気にかけたくなるしこの子

八幡「ま、別に、いやではないが」

サドネ「なら、これからおにいちゃんはサドネのおにいちゃんね!」

八幡「あ、あぁ」

ひなた「よかったねサドネちゃん!」

桜「八幡もよかったのう。サドネと仲良くなれて」

八幡「ま、確かに仲良くはなったが」

サドネ「おにいちゃん!」

サドネはなんだか俺にすごいなついたらしく、これまでよりも明らかに物理的に距離が近くなった

八幡「これはこれで大変だ…」

149: 2017/01/05(木) 22:57:14.11 ID:Wr2oAFej0
本編1-12



ピリリリ

突然俺たちの通信機が鳴りだした。これが鳴りだすってことはまさか

樹「みんな聞こえる?大変なの!イロウスが比企谷くんたちのいるすぐそばに出現したわ!今すぐ戦う準備を!」

八幡「え、マジですか…」

ひなた「あ!イロウスが見えるよ!」

サドネ「いっぱいいる」

桜「…」

樹「今日は休日で、他の星守たちを呼ぶのには時間がかかるわ。できるだけあなたたちだけで討伐してほしいの」

ひなた「ひなた頑張るよ!」

サドネ「サドネも!ね、おにいちゃん?」

八幡「あ、あぁ」

桜「…」

なぜか藤宮が怖い顔でずっと黙ったままうつむいて返事もしない。

八幡「おい、藤宮、どうした」

桜「わしは…」

八幡「ん?」

桜「わしは、必ずここを守る。この家を、じぃじたちを!」

そういって藤宮は外に飛び出していった。そしてすぐ向こうの方で爆炎が上がり始めた。

八幡「お、おい、藤宮!」

俺の声は当然藤宮には届かない。が、両脇にはもう変身を終えている南とサドネがいた。

ひなた「ひなたたちも行くよ!」

サドネ「おにいちゃんも!早く!」

八幡「…あぁ」

俺は二人に手を引かれ、外に出た。

150: 2017/01/06(金) 00:20:50.06 ID:BSAdXQPt0
本編1-13


外に出ると、すでに四方をイロウスに取り囲まれているようだ。幸い、周りには何もないため、被害はまだないが、このイロウスが俺たち目指して集まっていることは間違いない。

サドネ「おにいちゃん、どうしよう」

ひなた「ここは攻撃あるのみかな!?」

八幡「待て、このまま個人個人が勝手に行動して、イロウスを取り逃がしたら俺や、この家が危険にさらされる。藤宮も含め、集団で戦わないとやられるぞ」

ひなた「でも、どうするの?」

八幡「…俺に考えがある。まずは藤宮を呼んできてくれ。話はそれからだ」

サドネ、ひなた「わかった!」

2人は走って藤宮を呼びに行った。

さて、まずはこの状況を藤宮の祖父に伝えなければならないだろう。

八幡「あの、」

桜の祖父「おぉ。君か」

八幡「実は、とても大切なことをお伝えしたいんですが…」

桜の祖父「イロウスがこの家目指して集まってきておるんじゃろ?」

八幡「どうしてそれを…」

桜の祖父「なに、桜が突然外へ飛び出し、かつすぐに轟音が聞こえてきておれば、大体の予想はつく。で、君は桜たちとともに戦おうとしておるんじゃろ?」

八幡「戦うのは彼女たちであって、俺はただ作戦のようなものを伝えるだけのつもりですが」

桜の祖父「それも、戦うことじゃ。わしももう年なもんで、体がいうことをきかない。じゃが、孫やその友人たちが戦うとなれば、わしも協力したい」

すごいな、このおじいさん。頭は切れるし、この状況でも他人を気遣っている。こういう人に育てられたから、藤宮もああいう子に育ったのだろうか。

八幡「その申し入れはありがたいのですが、イロウスを倒すことは俺たちの役目です。おじいさんには、この家を最後まで守っていてもらいたいんです。藤宮のためにも、どうかお願いします」

桜の祖父「…君も、あの子に負けず優しい子じゃのう」

八幡「え?」

何かおじいさんが言葉を発したが、よく聞き取れなかった。

桜の祖父「うん、君の考えはわかった。わしはここでこの家を守りながら、桜たちが帰ってくることを待っておるよ」

八幡「…よろしくお願いします」

桜の祖父「それはわしの言葉じゃ。どうか、桜たちをよろしく頼む」

八幡「…わかりました」

俺はまた外へ走っていった。

151: 2017/01/10(火) 12:45:08.91 ID:9VOFo2T4O
本編1-14

ひなた「八幡くん、桜ちゃん連れてきたよ!」

外に出ると、すぐ南が声をかけてきた。藤宮も南に腕を捕まえられている。すでに藤宮は息も絶え絶えで、無理をして戦っていたことがわかる。

八幡「おぉ、すまない」

桜「なんじゃ、八幡。わしはここを守るためにこんなところで怠けているヒマはないぞ」

八幡「この家を守るためにお前を呼んだんだ。こういう時こそ少し冷静にならなきゃならんだろ」

桜「じゃが…」

サドネ「サクラ、焦ってる。いつものサクラと違う」

ひなた「そうだよ、桜ちゃん!いつもの落ちついた桜ちゃんになって!」

桜「じゃがこうしてる間にもイロウスはわしらを襲おうとしておる。早く倒さなきゃいかん!」

八幡「藤宮。お前、頑張ることを間違えてるぞ。早く倒そうとするあまり、頭を使わないのはお前が嫌う非効率なことじゃないのか?」

桜「…」

八幡「今の状況は確かにかなり緊迫している。だが、だからこそ全員が持てる力を発揮できなければ勝機は見えてこない」

桜「…ハハ、ヌハハ!」

八幡「何がおかしいんだよ」

桜「わしがひなたや、サドネ、さらにはお主にまで心配されるとはな。まだまだわしは子どもじゃなぁ」

八幡「当たり前だ、お前はまだ中1だ。年相応に子どもだよ」

桜「そうじゃな。では、ここは少し大人の八幡の考えを聞くとするかの。策があるからわしを呼んだのじゃろ?」

そう言う藤宮の顔にはもう焦りの感情はなく、でもその目は確かに決意を固めている。

八幡「あぁ。3人とも、よく聞いてくれ」

153: 2017/01/10(火) 17:38:20.22 ID:9VOFo2T4O
本編1-15


八幡「3人にはこの家の3方に分かれてもらい、それぞれ家の前でイロウスを待ち構えてほしい。そして、自分の目の前にきたイロウスを殲滅してくれ」

ひなた「なんでこっちからイロウスを倒しに行かないの?」

桜「もしわしらがこの家から離れてしまえば、お互いにイロウスに注意を払わなければならない範囲が広がることになってしまい、戦いに集中しにくくなるからじゃ。それに、もしイロウスを取り逃がしたらこの家も危ないしのお。逆に家の前で待っておれば向こうから固まってくれるから動かなくても一斉に倒しやすいじゃろ。こういう考えでよいか、八幡?」

八幡「あぁ。そして、周りのイロウスをあらかた倒し終わったら、こちらから大型イロウスを倒しに行く」

サドネ「そしたらサドネたちはまずどうすればいいの?」

八幡「家の周りに3方に散らばってくれ。俺が屋根の上からイロウスの方向を通信機に指示する。それに従って順次位置を変えながらイロウス殲滅に動いてくれ」

ひなた「つ、つまりどういうこと?」

桜「ひなたは、八幡のいう方向をむいて、目の前のイロウスを一匹残らず倒せばいいんじゃ」

ひなた「なるほど!わかりやすいね!」

藤宮は俺の作戦を少し聞いただけで理解するし、その上で南に最低限の必要な役目を伝えている。こいつホントかしこいな。

154: 2017/01/10(火) 17:39:03.14 ID:9VOFo2T4O
本編1-16


そうやって藤宮と南を見ていたらサドネが俺の方へ寄ってきた。

サドネ「おにいちゃん!サドネ、頑張るからね!」

八幡「あ、あぁ。頼む」

サドネ「…もっと、励ましてほしい」

そう言ってサドネは上目遣いにこちらを見上げる。いや、そんな顔されても困るんだが。

八幡「…頑張れよ」

頭を撫でながらなんとか言葉を絞り出す。

サドネ「うにゅ、ありがと、おにいちゃん。頑張るね!」

ひなた「あぁー!ひなたにもやってほしい!」

桜「わしもしてもらおうかのお」

八幡「え、お前らはいいだろ…」

ひなた「サドネちゃんだけはズルイ!」

桜「先生が生徒を不公平に扱ってはいかんのお」

八幡「わかったよ…南、藤宮。お前も頑張ってこい」

そう言って2人の頭を撫でる。もうすでに八幡のHPは0だよぉ

ひなた「えへへ、頑張るね、八幡くん!」

桜「くすぐったいが、悪い気はせんのう」

八幡「ほ、ほら、もうそこまでイロウスは来てるぞ」

そうごまかして撫でるのをやめた。いや、さすがに恥ずかしいしね?状況も状況だからね?

桜「焦るな、八幡。わしらの力を信じておれ」

ひなた「絶対イロウス倒すから、見ててね!」

サドネ「イロウス倒したらまたなでなでしてね、おにいちゃん」

八幡「…あぁ」

俺はそれしか言えなかったが3人はそれで満足なのか、お互いに笑いあって散っていった。さて、俺もやりますか

八幡「まず、この屋根に登らなきゃ…」

155: 2017/01/12(木) 00:59:57.03 ID:z+T06vHw0
本編1-17


なんとか屋根に登って周りを見渡すと、南たち3人はすでに家を中心にする三角形の頂点に立っている。

八幡「3人とも、もう準備はいいか」

ひなた「八幡くん遅いよ!」

サドネ「サドネたち、もう戦えるよ」

桜「さ、八幡。指示をくれ」

八幡「あぁ。まずはみんな、目の前のイロウスを集中して倒してくれ。特に藤宮の方向には多くのイロウスがいる。気をつけてくれ」

ひなた、桜、サドネ「了解」

南とサドネは遠くのイロウスを攻撃するためガンやロッドを使うが、その攻撃はイロウスにガードされてしまう。

ひなた「あれー、なんで?」

サドネ「攻撃が通じない」

通信機ごしに南とサドネの声が聞こえる。ガンやロッドが通じないということは、

八幡「あれはドグー種か…」

桜「そうじゃ。近距離攻撃の武器でないと攻撃は通らんぞ」

八幡「そうだな。聞こえたか、南、サドネ。ドグー種には遠距離攻撃は通りにくい。近距離攻撃の武器に変えろ」

サドネ「わかった」

サドネは俺の声にすぐ反応してハンマーを出す。だが、南は何故かアタフタしている。

ひなた「わーん!どうすればいいのぉー!」

八幡「おい、さっき藤宮に教えてもらったろ。まずはメインの武器種を変えて…」

桜「ひなた、落ち着け。まずは武器種をぶんぶん振り回して斬っていくスピアにせい」

ひなた「う、うん!」

桜「変えたら後はどんどんイロウスを斬ればいいだけじゃ」

ひなた「そっか!ありがとう、桜ちゃん!やあぁー!」

藤宮の指示で武器を変更した南はイロウスを次々に倒していく。

八幡「藤宮、やっぱお前すごいな」

桜「ひなたは出来ないわけではない。ただ、頭で論理として理解させるより、わかりやすい言葉で体で理解させるほうが早いだけじゃ」

八幡「なるほど…」

そうして俺が感心してると、イロウスの集団がさらに遠くから数を増やして押し寄せてきた。

八幡「マズイ…さらにたくさんのイロウスが全方向からやってくる…」

ひなた「大丈夫だよ、八幡くん!ひなたのスキルで倒しちゃうから!」

そう言って南はスピアを上にかざす。

ひなた「風鈴りんりん波!」

南が叫んだ瞬間、何故か大きな風鈴が南の頭上に出現し、そこから衝撃波が放たれる。その衝撃波によって周りのイロウスが半分近く消えた。

八幡「おぉ…」

サドネ「おにいちゃん!サドネもやるよ!プルクラ・カエルム!」

サドネが飛び上がると地中から花火が放たれイロウスの集団を攻撃していく。

サドネ「どうどう、おにいちゃん!」

八幡「すごいな…これでかなりの数のイロウスを倒せたぞ」

156: 2017/01/12(木) 17:26:54.74 ID:z+T06vHw0
本編1-18


八幡「南とサドネのおかげで大型イロウスがようやく見えたぞ」

大きな球のような顔から腕が生え、足と言っていいかよくわからない何か溶け出したもので立っているのが大型イロウスだろう。

桜「わしがいく。大型イロウスはわしに倒させてくれ」

八幡「1人で大丈夫か?」

桜「ひなたとサドネには、まだこの家を守って欲しい。2人は大型イロウスの攻撃を避けながら戦うより、ここでスキルを使ってたほうがいいじゃろ」

八幡「…ま、確かにそうか。じゃあ、藤宮。お前に任せる。方向はお前の真正面だ」

桜「うむ。ではいってくる」

八幡「あぁ。南、サドネ、お前たちは藤宮が大型イロウスとの戦いに集中できるよう、2人でこの家を守ってくれるか」

ひなた「任せて!」

サドネ「うん!」

桜「2人とも、ありがとう」

ひなた「ほら、桜ちゃん!早く行かないと!」

サドネ「サクラ、頑張って」

桜「うむ」

2人の励ましを聞いてから、藤宮は大型イロウスに向かって走っていった。

八幡「…さ、俺たちはここで藤宮を待つぞ」

サドネ「おにいちゃん、ホントはサクラのこと心配なんじゃないの?」

八幡「べ、別にそんなことはない。あいつは1人でもできるはずだ。それに自分でも1人で大丈夫と言ってたしな。あいつはできないことは言わないだろうよ」

ひなた「八幡くん、行きたいなら桜ちゃんのところへ行ってよ!ここはひなたたちで大丈夫だから!」

八幡「…だが、俺がここを離れると今度はお前らを見捨てることになる」

桜の祖父「ならばここはわしが彼女たちの面倒を見るとしようかのお」

声の方向を見るといつの間にか藤宮のおじいさんが外に出ていた。

桜の祖父「比企谷くん、わしがお主の代わりにひなたくんやサドネくんに指示を出す。だからお主は桜のもとへ行ってくれ」

八幡「…ですが」

桜の祖父「もともとこの家はわしの家じゃ。少しは協力したい。とは言ってもここで彼女たちに動いてもらうのを見るだけだがのお。だから、お主にはわしらのぶんまで桜の助けになってほしいのじゃ」

八幡「…わかりました。よろしくお願いします」

桜の祖父「こちらこそ、孫を頼む」

八幡「はい」

俺は屋根から降りて藤宮と大型イロウスのほうへ走った。

157: 2017/01/12(木) 17:27:55.26 ID:z+T06vHw0
本編1-19


八幡「藤宮!」

桜「八幡…!どうしてここにおるのじゃ」

八幡「お前のおじいさんが南とサドネに指示を出してくれている。だから、俺はお前のとこへ来たんだ」

桜「はぁ、わしは1人でも大丈夫じゃというのに、過保護じゃのお」

八幡「そんなんじゃねぇよ。お前のことだけ誰も見てないってのは不公平だしな…まあ、いいから早く倒そうぜ」

桜「そうじゃな。じゃが厄介なことに、大型イロウスが2匹おってのお。どうにも決定打が打てんのじゃ」

八幡「2匹か…なぁ藤宮。1匹相手ならどれくらいで倒せる?」

桜「1匹ならスキルを使う余裕が持てるから10秒くらいで倒せると思うが、なぜじゃ?」

八幡「10秒か…なら、俺が1匹の注意を引きつける。その間にお前はもう1匹を倒して、すぐ俺を助けてくれ」

桜「…はは、ぬはは!なんじゃその作戦は。自分を助けてほしいなんてそんな真剣に言われたのは初めてじゃ!」

八幡「…しょうがないだろ。俺には何もできないんだから」

桜「じゃが、今この状況でこれ以上の手段はないか…」

八幡「あぁ。だから藤宮、俺が氏なないようになるべく早く助けに来てくれ」

桜「はは、助けにきたと思ったら、助けを求めてくるなんて情けない先生じゃのお」

八幡「う…」

確かに我ながら情けないことこの上ないことは重々承知だ。だが、戦える星守が藤宮1人である以上、俺ができることは囮くらいのものだ。

桜「じゃが、わしに任せておれ。すぐ助けに行く」

そう言う藤宮の顔に迷いはない。俺は思わずそんな顔をぼーっと見てしまっていた

桜「なんじゃ?顔に何かついておるか?」

八幡「い、いや、別に何もないぞ、何も。うん」

桜「なんじゃ、変なやつじゃのお。まぁ、そろそろ行くとするかの」

八幡「…あぁ」

159: 2017/01/15(日) 22:48:03.91 ID:zoUmH6390
本編1-20


さて、この大型イロウス相手に俺ができることと言えば

八幡「ひたすら逃げるか…」

向こうでは藤宮が攻撃を避けながら反撃の機会を伺っている。あいつ、あんなに上手く戦えるんだな。

そんなことを思っていると、イロウスが腕を振り回して攻撃してくる。

八幡「うおっ。危ねえ」

背後に回って視界から消えようと思っても、こいつは体をグルンと回してすぐ俺のことを捕捉してくる。なんかグニョングニョンしてて動き方も気持ち悪い…

八幡「もうイヤ…」

すると突然、イロウスの頭の突起から液体のようなものが噴射され、その液体が俺に向かって降ってきた。

八幡「なんだよこれ…」

もう全力で逃げるしかない。こんなはずじゃなかったぞ、この前のイロウスと全然違うじゃねぇか…

それにこの液体、逃げても俺を追跡してきてないか…?

バッシャーン!

八幡「おあっ」

一発目は避けられた。二発目もなんとか避けれたが…

バッシャーン!

八幡「くっ」

三発目に当たってしまった。すごく痛いし、吹き飛ばされたが、まだなんとか動ける。

八幡「なんか体が重い…」

だがさっきの液体を被ったためか、体がとても重い感じがする。普段よりも体を早く動かせない。そうした時に、イロウスはまた俺めがけて腕を振り回そうとしている。

八幡「今からじゃ避けきれない…」

さすがにアレに直撃すれば命も危ないだろう。だがもう避ける手段が思いつかない。せめて中学時代にイメージトレーニングで鍛えたダメージ軽減術を使うしかない。なんだよ、それ。効き目ないだろ。いや、こんなこと考えてる場合じゃない、もう身構えるしかない。

160: 2017/01/15(日) 22:49:24.46 ID:zoUmH6390
本編1-21


しかし次の瞬間、何故かイロウスの上に温泉まんじゅうが降りそそぎ、イロウスは消滅した。

桜「八幡、なんじゃその情けない姿は」

声のするほうを見るとさっきイロウスがいた方角から藤宮がこっちへ向かって歩いてきた。

八幡「これは、その、イロウスの攻撃を受け流そうと身構えてただけで…」

桜「わしにそのような言い訳は通じんぞ?」

八幡「まぁ、はい…攻撃を避けきれなかったんで、身構えてただけです…」

もうこの子雪ノ下並みに心読んでくる。怖い。あと怖い。

桜「まぁ、わしが間に合ってよかったの。間一髪じゃ」

八幡「それは、感謝してる…てかさっきの温泉まんじゅうはなんだよアレ」

桜「アレはわしのスキルじゃ。あのスキルを使うとわしの攻撃力が一時的に上昇するんじゃ。だからさっきのイロウスをほぼ一撃で倒せたのじゃ」

八幡「温泉まんじゅうすげぇな…」

桜「何故かわしらのスキルは戦いに関係ないものがよく出現するんじゃ。なんでなのかのお」

八幡「そこは、ほら、俺らが考えることではないと思うぞ…」

例えばコロフ◯ラの社員とかね!…伏字になっていないかこれじゃあ。

桜「??まぁよくわからんが、ひとまず帰るとするかのお」

八幡「そうだな。多分、向こうでおじいさんたちが待ってるはずだしな」

桜「おぉ、そうじゃ。じぃじは大丈夫かのお」

藤宮は少し慌てたように俺に聞いてくる。

八幡「無事だと思うぞ。なんせお前のおじいさんだからな」

桜「いや、ひなたやサドネに付き合わされて、今頃疲れ切ってるかもしれん…」

八幡「あぁ、なるほど…じゃあ早く帰ってやらないとな」

桜「そうじゃな!」

俺たちは笑ってこう言い合いながら家に戻って行った。

161: 2017/01/16(月) 14:50:59.47 ID:RWifosddO
本編1-22


藤宮の家周辺に出現したイロウスを倒した数日後、八雲先生に課された特別テストも無事終わり、やっと一息つけるようになった。

八幡「ふぅ、疲れた」

そんな俺は放課後の教室で書類作り。ナニコレ、教師って放課後はすぐ退勤できるんじゃないの?違うの?朝早いし、帰るの遅いしマジブラックな職場。絶対働きたくない。やはり将来は専業主夫になるしかない。

桜「おぉ、八幡。ここにおったのか、探したぞ」

俺が専業主夫への決意を新たにしていると、藤宮が教室のドアを開けて入ってきた。

八幡「ん、なにか用か?」

桜「うむ。八幡のテストが気になっておっての。合格できたか?」

八幡「当たり前だろ。俺は基本高スペックだからな、大抵のことはやればできる」

桜「…そうじゃな。八幡はやればできる子じゃな」

…あれ?そうやって素直に褒められるとは思ってなかったんだが?

八幡「な、なんだよいきなり。何か変なものでも食べたか?」

桜「失礼じゃな。わしは八幡のことを認めておるし、感謝もしてる。…八幡がいなければじぃじも、家も守れなかったじゃろう」

八幡「何言ってんだ。お前や南やサドネが頑張ったんだろ。俺は何もしてない」

むしろ足引っ張ったまである。あの時は足が動かなかったんだが。あの液体、許さん。

桜「そうやって自分のことを過小評価するのはもったいないと思うがのお」

八幡「やめてくれ。イロウスを倒せたのはお前らの功績だ。俺に恩を感じる必要はない」

162: 2017/01/16(月) 14:51:51.65 ID:RWifosddO
本編1-23


桜「むぅ、、そうじゃ。イロウスを倒せたのがわしらのおかげなら、八幡はわしらにご褒美をくれなきゃいかんのお」

八幡「あ?いや、ご褒美とかそんなの無理なんだが…」

桜「問題ない。ご褒美と言ってもわしの頭を撫でてほしいだけじゃ。それくらいならしてくれるじゃろ?」

八幡「…まぁ、そのくらいなら」

桜「そうかそうか。なら、早速お願いしようかのお」

八幡「今?」

桜「うむ」

そうして藤宮が俺のすぐ隣に椅子を持ってきて座りながら頭をこっちに傾けてきた。

桜「ほら、早くせい」

八幡「あ、あぁ」

ゆっくり藤宮の頭に手を置き、撫で始める。

桜「…なんだか大事にされてるようで、心があたたかくなるのお」

こうして撫でられている藤宮の、普段とは違う、むしろ幼いとも言えるような姿にこっちまで心があたたかくなるような感じがする。

桜「そうしてくれるの、待っておったぞ…」

八幡「そうか…」

若干、藤宮の俺にかける重みが増えた感じがする。だが、なぜかそれも悪くない。

163: 2017/01/16(月) 15:46:02.72 ID:7j29BHav0
本編1-24


サドネ「おにいちゃん!サドネ、イツキのテストで100点取ったよ!」

サドネが教室に入るなり声をかけてきた。そして、今の俺たちの状況を見て顔色が変わっていく。

サドネ「おにいちゃん、なんでサクラの頭撫でてるの?サドネのことは撫でてくれないのに?」

八幡「いや、これは、その…」

サドネ「おにいちゃん、サドネのこと、さみしくさせたら許さないからね」

サドネは目のハイライトを消しながら俺に迫ってくる。マジで怖いから、それやめて…

八幡「別に、サドネのことを軽く見ているわけではないし、うん、ちゃんと見てるから、大丈夫だから…」

サドネ「ホント?なら、サドネのことも撫でて?」

八幡「う…」

俺が躊躇していると、教室の外から大きな足音が聞こえてきた。

ひなた「八幡くーん!桜ちゃーん!サドネちゃん!ひなた、テストダメだったよぉー!また再テストだって!」

八幡「あ、あぁ、そうか…」

ひなた「合格するまでずっとテストだって!だからまたみんなで勉強会しよ?」

桜「はぁ、仕方ないのお」

サドネ「サドネ、みんなで勉強会やるの好きだからまたやりたい」

ひなた「そしたら今度はひなたの家でやろうよ!ひなたのオムライスご馳走しちゃうよ!」

サドネ「美味しそう!」

桜「久しぶりに食べるのも悪くないのお」

どうやら今度は南の家で勉強会をするつもりらしい。これ以上休日を侵食されるわけにはいかない。ここは前もって自分から断っておくに限る。そうすることでぼっちの面目も保たれるし、あいつらも余計な気を使わなくて済む。WIN-WINだね!

八幡「そしたらお前ら、頑張ってくれ」

ひなた「え?八幡くんも来るんだよ?」

桜「そうじゃな。逃げられんぞ、八幡」

サドネ「おにいちゃん、サドネたちと一緒にいなきゃダメ」

八幡「いや、俺にも予定が…」

桜「家でゴロゴロするのを予定とは言わんぞ」

サドネ「サドネ、この前のおにいちゃんのコーヒーまた飲みたいから持ってきてね」

ひなた「じゃあみんなで今週末に勉強会だね!」

3人はまた楽しそうに話し始める。いつの間にかサドネも南も俺の周りに椅子を置いて、予定を話し合っている。

八幡「はぁ…」

まぁ、もう少しこいつらの面倒を見てやるか。なんせ、「おにいちゃん」だしな。

164: 2017/01/16(月) 15:51:41.31 ID:7j29BHav0
以上で本編第一章終了です。戦いの状況がわかりにくいかもしれませんが、なんとか脳内補完してもらえると助かります。

173: 2017/01/19(木) 17:23:20.07 ID:8EpGdnVB0
本編2-1


藤宮の家での勉強会、イロウス討伐から数週間。未だ南は八雲先生のテストに合格できていないらしいが、俺はここの生活にも慣れてきて、いかに早くこの交流を終わらせられるかについて考えていた。

まず何をもってして交流が終わるのかがわからない。ゴールが見えない以上、こっちが交流不能の状態になるしかない。突然不治の病にかかったり?それは俺が氏ぬからヤダな。全治何ヶ月かのケガは?でもそれも日常生活に支障をきたすな。やはりサボるしかないのか…

などと、無理難題を考えながら歩いていると、廊下の角でフードに大きな耳がついた白いパーカーと、大きな薄紫のリボンが揺れているのが見えた。あんな特徴がある人物はあいつらしかいないだろうが、なんであんなところでコソコソ人目を気にして隠れてるのだろうか。ま、俺には関係ないし、さっさと帰ることにしよう。

何か外をじっと見ている2人の横を通ろうとした時、両腕を掴まれてしまった。

八幡「なんだよ」

ミシェル「今外に出ちゃダメだよ!」

楓「そうですわ。慎重に行動しないと見つかってしまいますわ」

八幡「は?何、かくれんぼでもしてるの?」

楓「当たらずとも遠からず、ですわね」

ミシェル「楓ちゃんの執事さんたちに見つからないように学校から出ようとしてるの!」

八幡「なんだそれ…」

ミシェル「あのね、今日楓ちゃんと帰り道に寄り道をして行きたいの」

八幡「あ?別に好きにすればいいだろ、それくらい」

下校途中に寄り道。いかにも青春じゃないか。俺の中2の頃なんて、寄り道してくれる相手なんかいなかったから、いつも家に直帰して、コスプレしたり、ノートに色々書いたりして中二病全開だったぞ。いや、寄り道もしてたな。だが、そうは言っても1人で異界との扉を探してたくらいだな。うん、あの頃は若かった…

楓「いえ、そうは行きませんの。ワタクシは学校が終わるとすぐ家のものが迎えに来て、そのまま帰らされてしまいますの。ほら、現にそこでワタクシを探している人がいますわ」

千導院が指差す先には黒いスーツを着た人たちが「お嬢様ー!」と叫びながら歩いているのが見える。

楓「ですからワタクシ、彼らに見つからないようにここを出なければなりませんの」

ミシェル「だから先生も協力して?」

八幡「いやなんで俺が…」

ミシェル「だってミミたちの先生なんだから、助けてくれるよね?」

楓「もしここでワタクシたちを助けなかったら、どうなるかわかっていますか?」

怖、千導院が言うと冗談じゃすまなくなる。最悪戸籍を消されて聞いたこともない孤島に流されかねない。

まぁそんなことはないにしろ、自分の生徒が困ってることには違いない。少しくらいなら手助けしてもいいかな。ホントに俺は年下の女の子のお願いにつくづく甘い。

八幡「…わかった。で、何をすればいいんだ?」

楓「うふふ、ワタクシにとっておきの作戦がありますの!」

174: 2017/01/19(木) 17:29:19.10 ID:8EpGdnVB0
本編2-2



八幡「で、これがとっておきの策なの?」

楓「もちろんですわ!この前見たドラマでやってましたもの!」

ミシェル「ミミたちぬいぐるみさんになったみた〜い!」

八幡「…」

何をしてるかというと、大きなダンボールの中に、綿木と千導院が縮こまって入っている。そのダンボールを俺が運ぶ、というべタな隠蔽工作である。

八幡「おい、これじゃ多分すぐバレるぞ」

ミシェル「大丈夫だよ〜、ミミたちじっとしてるから!」

楓「そうですわ!さ、先生、早くワタクシたちを外に出してください」

これは絶対バレる。なんならバレて俺だけ怒られる場面まで想像できる。なんで俺はあの時協力すると言ってしまったんだ…

ミシェル「じゃあミミたち隠れるからよろしくね、先生!」

そう言って2人はダンボールの中に入ってしまった。マジかよ…いやもうこうなったら運ぶしかないよな。もうどうなってもしらん!と俺は半ばやけくそになって2人が入ったダンボールが載った台車を押していく。

黒スーツ「あの、すみません」

八幡「ひゃ、ひゃい」

突然ガタイのいい黒スーツの人に声をかけられ、思わず声が裏返ってしまった。

黒スーツ「わたしたち、楓お嬢様を探しているのですが、あなたどこかで見ませんでしたか?」

八幡「い、いえ、別に俺は何も見てないですけど」

黒スーツ「…失礼ですが、あなたはどのような人物ですか?この学園に男性はいないはずですが」

八幡「お、俺は、その、他の学校から連れてこられたといいますか、そう、交流です、交流」

黒スーツ「怪しいですね、お嬢様のおられる学校にこのような人物がいるのは少々危険ですね…」

八幡「いえ、別に俺はそんな人間じゃないですよ?あ、ほら、俺星守クラスにいますから、千導院のことも知ってますし」

黒スーツ「…ますます怪しいですね。もしや、この学校を探るスパイなのでは?そのダンボールの中にも何か危険なものが入っているのでしょう?」

八幡「いや、そんなことないですよ…?別にこの中にも何もやましいものは入ってません…?」

黒スーツ「それなら私にも見せられるでしょう。さ、開けてください」

やばいやばいやばい。これで中にいる綿木と千導院が見つかったら一巻の終わりだ。

すると中から何か声が聞こえてきた。

楓「ミミ、もうワタクシ、我慢が…」

ミシェル「楓ちゃん、もう少し頑張って…」

黒スーツ「あ!お嬢様の声が聞こえます!お嬢様!今お開けします!」

楓「ハクション!」

黒スーツがダンボールに手をかけた瞬間、千導院が箱から飛び出しくしゃみをした。そして黒スーツは顎に千導院の頭がクリーンヒットしたらしくとても痛がっている。

楓「もう、ミミのフードが鼻をずっとくすぐって…」

ミシェル「ごめんね楓ちゃん」

楓「いえ、ミミのせいではないですわ。我慢できなかったワタクシのせいですわ…」

八幡「…お前ら、いいのか?」

ミシェル「何が〜?」

八幡「いや、もう取り囲まれてるぞ…」

見渡すとすでに黒スーツ部隊が360度隙間なく俺たちを包囲している。もちろんどこにも逃げ道はない。

楓「はっ、いつの間に!」

八幡「当たり前だろ…」

黒スーツ「いたた…さ、お嬢様、帰りますよ」

こうして俺たちはすぐ捕まり、迷惑をかけたとして八雲先生に叱られた後、すぐ帰るよう言われて解散させられた。

177: 2017/01/20(金) 07:57:27.59 ID:cfBjYOVgO
本編2-3


その翌日、朝から俺は綿木と千導院に問い詰められていた。

ミシェル「むみぃ、先生!先生がもう少し早くミミたちを運んでたらあんなことにはならなかったよ!」

八幡「そんなこと言われてもあの状況じゃ無理だろ…」

楓「作戦はカンペキでしたのに…」

八幡「いや、穴だらけだろあの作戦は」

そもそも作戦と言えるのか?作戦ってのは戦車同士が戦う時に「こっつん作戦」とか「もくもく作戦」とかで使うんだろ?

楓「では、ワタクシたちはどうすればよかったのですか?」

八幡「そうだな…だいたい、寄り道しようとするのが行けないんだろ?じゃあ休みの日に出かけるんじゃダメなのか?」

ミシェル「そっか!お休みの日にお出かけすれば寄り道にもならないね!」

楓「なるほど、盲点でしたわ!さすが先生!」

あれぇ~?そんなことにも気づかないなんてこの子たちちょっとアホな子?

ミシェル「じゃあじゃあ、明日は学校もないからお出かけしようよ!」

楓「そうですわね、休日ですから1日中いろんなところへ行けますわね」

ミシェル「むみぃ、楽しみ!あ、先生はどこか行きたいとこある?」

八幡「あ?俺も行くの?」

なんで?休日は休む日でしょ?休むために俺は明日は一歩も外へ出ない覚悟だったんだが。

楓「せっかくですから先生のよく行く場所へ連れてってもらいたいですわ」

八幡「は?なんで?」

ミシェル「楓ちゃん、気分転換に街歩きするのが好きなの!それでミミもよく付き合うんだけど、ミミたちだけだと行けるところも少ないから、先生に来て欲しいなって」

楓「ぜひ先生に庶民の遊び場を教えていただきたいですわ!」

八幡「ムリだって…」

ミシェル「むみぃ…」

楓「しょうがないですわね、では明日の朝、先生の家に昨日の人たちを行かせて強引に連れて来るしかありませんわ」

何それやめて!家まで来られたらどうしようもないから!それに昨日の人に会ったら俺何されるかわからない…

八幡「わかった。行くよ…」

ミシェル「わぁ~!やった~!」

楓「ありがとうございますわ、先生!」

八幡「はは…」

178: 2017/01/20(金) 13:58:14.56 ID:rfqYe2OJO
本編2-4


そうして迎えた週末。俺と言えば千葉。千葉と言えば俺、にはならないが俺が人を案内できるとしたらもうそれは千葉以外にはありえない。
そして、これから行くところは俺たち3人が行きたいところに1つずつ行くことになっている。

いやね、いくら千葉とは言え、中2の女の子が行きたがるところなんて俺がわかるわけないから無理だと言ったんだが、2人は聞き入れてくれなかった。おかげで小町にアドバイスを貰わざるを得なかった。くそ、あの時の小町の俺を小馬鹿にした笑顔、許さん。いや、可愛かったから許すか。

そんなこんなで、時間より10分ほど前に待ち合わせ場所の千葉駅に着くと、すでに綿木が到着していた。学校の外ではさすがにあのうさ耳パーカーは着ないのね。よかった…

ミシェル「あ、先生!」

八幡「おう、早いな」

ミシェル「えへへ~、今日が楽しみだったから早く来ちゃった!」

八幡「そ、そうか。で、千導院はまだか?」

ミシェル「楓ちゃんももう来るはずだよ~」

八幡「ほぉ」

そして少し経つと、見たこともないような黒塗りの高級車が俺たちの前に止まって、中から千導院が出てきた。いかにもお嬢様らしい登場だ。

楓「ミミ、先生、ごきげんよう。お待たせして申し訳ありませんわ」

ミシェル「大丈夫だよ!ミミたちが早かっただけだから!」

八幡「ま、そうだな。まだ時間よりかは前だし」

楓「そうですか。では早いですが揃ったので行きましょうか」

八幡「行くのはいいが、まずはどこにいくんだ?」

ミシェル「まずはミミが行きたいところに行きたい!」

八幡「どこだ、それは?」

ミシェル「むみぃ、それはね…」

179: 2017/01/21(土) 23:39:19.30 ID:j4sK55xQ0
本編2-5


綿木の提案により俺たちが向かったのはゲームセンターだった。入ってみると午前中とはいえ、週末のためかそこそこ人がいて賑わいを見せている。

ミシェル「ミミ、ゲームセンター来てみたかったんだ!」

楓「すごいですわね、とても騒がしいところですわ」

八幡「まぁ、こんだけゲームがあればそうだよな」

楓「これ全部遊べるんですの?」

八幡「お金入れればな」

ミシェル「ミミ、今日はパパからおこづかいもらったからたくさん遊べるよ!」

楓「それなら、ミミ、先生。わたくしこれがやってみたいですわ!」

千導院は近くにあったよくあるカーレースゲームの椅子に座り、ハンドルを持ってうずうずしている。

ミシェル「うん!やろやろ!ほら、先生も!」

八幡「え…」

楓「ほら、これ周りの人と対戦できるのだそうですよ!3人でやりましょう!」

あぁ、もう今日はこの2人に従うしかないか…グッバイ俺のおこづかい。

八幡「はぁ、わかった。だが、やる以上手加減しない」

楓「もちろんですわ!」

ミシェル「負けないよ!」

結果は俺が1位、綿木が2位、千導院が3位だった。順位以上に俺が圧勝を収め、綿木と千導院はわーわーきゃーきゃー言いながら壮絶なビリ争いを繰り広げていた。

ミシェル「やった~、楓ちゃんに勝った!」

楓「うぅ、先生にもミミにも負けましたわ…」

八幡「初めてなら仕方ないだろ」

楓「いえ、それでも悔しいですわ!さぁ、もう一度対戦しますわよ!」

ミシェル「むみっ、次は先生にも負けないんだから!」

八幡「はいはい…」

それから何回か対戦したのち、次はこれまたゲームセンターの定番、太鼓の達人をやることになった。

楓「ゲームセンターでは太鼓をたたくこともできるのですか?」

八幡「まぁ、曲に合わせて叩いていくだけで本物の太鼓を演奏するわけではないがな」

ミシェル「ミミ、これやってみたかったんだ~楓ちゃんもやろ?」

楓「えぇ、これも面白そうですわ」

だが2人ともうまくたたくことが出来ず、ほとんどコンボが続かない。

ミシェル「むみぃ、これ難しい…」

楓「それにかなり疲れますわ」

八幡「こういうのは慣れだからな。何回かやればそれなりにできるようになる」

ミシェル「じゃあじゃあ、先生もやってみてよ!」

楓「そうですわね、ぜひ拝見したいですわ!」

やったことがないわけではないが、自慢できるほどうまいわけでもない。俺がゲーセンでやるのはクイズゲーか上海か脱衣麻雀だからな。

八幡「一回だけな…」

だが、一回で終わるはずもなく、俺がやり終わるとまた2人がやり始め、終わりには3人で交代しながら遊んでしまった。これは明日両腕筋肉痛確定だな…

182: 2017/01/24(火) 23:10:19.82 ID:j8CTTqre0
本編2-6


ひとしきりゲーセンを楽しんだ後、次に俺たちが向かったのは千導院の希望によりボウリングである。

楓「本当はワタクシ、カラオケに行きたかったのですが、ミミがせっかくだからやったことのないことをしようと言うので、ボウリングにしましたわ」

歩きながらそんな文句らしきことを言う千導院を見て、綿木が俺に耳打ちをしてくる。

ミシェル「むみぃ、実は楓ちゃん、歌があんまり上手じゃないの…カラオケ行ったらずっと楓ちゃんの歌聴かないといけないから、なんとかやりたいことを変えてもらったの…」

八幡「なるほど…」

綿木がここまでして千導院とカラオケに行きたくないということは、そうとう千導院の歌が酷いのだろう。うん、聴かなくてよかった。綿木グッジョブ。

そうして俺たちはボウリング場に着き、受付を済ませ、靴を履き替え、指定されたレーンに荷物を置いた。

それから俺は2人に球の選び方や、投げ方について簡単にレクチャーした。途中周りの目線が痛かったが、別に俺は悪いことはしていない、はず…ただ中2の女の子2人と遊んでるだけ!うん、字面だけ見たらマジ犯罪。

楓「なるほど!大体わかりましたわ!早速ワタクシからやってみますわ!」

そう言って千導院が放ったボールは少し曲がりながら転がり、ピンを5本倒した。

ミシェル「楓ちゃんすご〜い!」

楓「やりましたわ!」

八幡「ほら、もう一投あるぞ」

楓「えぇ、さらに倒しますわよ!」

しかし二投目はピンをわずかに外れてしまい、虚しくボールは奥に消えていった。

楓「うぅ、外れてしまいましたわ…」

八幡「惜しかったな」

楓「次こそは全部のピンを倒してみせますわ!」

そうして千導院はあーでもないこーでもないとぶつぶつ呟きながらイメージトレーニングを始めた。どんだけやる気なんだよこいつ…

ミシェル「次はミミの番だね!」

そう言って綿木は重そうにボールを持ち上げ、よたよた歩きながらレーンに向かう。そのまま綿木はボールを投げるというより落とすが、すぐボールはガーターに落ちてしまう。

ミシェル「むみぃ、難しいよ〜」

楓「ミミ、もう少しこうするといいですわ」

そう言って千導院は綿木の手を取り腰を取りフォームの指導を始める。美少女2人が密着しながら練習し、時にじゃれ合っている姿、微笑ましいことこの上ない。眼福眼福。

ミシェル「ありがとう、楓ちゃん!もう一度やってみる!」

そうしてボールはかなり曲がりながらもかろうじて1本のピンを倒した。

ミシェル「むみぃ、1本だけかぁ」

楓「でも先ほどよりもかなりよくなりましたわ!」

ミシェル「ありがとう!じゃあ次は先生だね!」

八幡「あぁ」

仕方ない、ピンに愛されている男の実力を見せるしかないか。愛されすぎていつもピンで行動してるし。それは愛されているとは言わないか。

八幡「そらっ」

俺の投げたボールは軽やかにレーンを滑り、見事9本のピンを倒した。

ミシェル「すごーい!」

楓「さすが先生ですわ!」

八幡「このくらいお前らも少ししたらできるようになるって」

本当は9本も倒すことはあまりないが、褒められ慣れてないためについカッコつけてしまった。

でもこうして女の子に褒められるのも悪くはない。妹よりも年下の子たちにだが…

楓「ゲームセンターでは負けましたが、ボウリングではもう負けませんわ!」

ミシェル「うん!ミミも頑張るよ!」

そんな2人に気を取られ集中を切らした俺は二投目にガーターを決めてしまい、盛大に笑われてしまった。

227: 2017/02/24(金) 13:35:19.12 ID:n0W01wG4O
本編2-7


ボウリングを3ゲームほど楽しんで、俺たちはボウリング場を後にした。

ミシェル「いっぱい動いたからお腹空いたね~」

楓「そろそろお昼にしませんか?」

八幡「あぁ、いい時間だしな。で、お前らは何か食べたいものあるの?」

ミシェル「先生と楓ちゃんに任せるよ」

楓「それでしたらワタクシ、是非食べてみたいものがあるんですが…」

八幡「な、なんだ?」

先導院の食べたいものって、A5ランクのお肉とか、フォアグラとか、特上寿司とかしか思いつかない。俺の所持金ではその欠片でさえ食べられないぞ…

楓「あの、ラーメン屋に行ってみたい、です」

八幡「…ラーメン屋?」

楓「何故か無性に先生とラーメン屋に行きたくなりましたの」

ラーメン屋か、これまたお嬢様なイメージとは反対のものだな。正直、俺は助かったどころか食べたいものだし大賛成だ。

八幡「俺は別にかまわないんだが、綿木はどうだ?」

ミシェル「ミミもいいよ!」

八幡「そういうことなら行くか。俺がよく行くところでいいか?」

楓「はい!」

ミシェル「楽しみ~」

ということで俺たちはここ「なるたけ」にやってきた。

楓「ここではどんなラーメンが食べられるのですか?」

八幡「ここはこってり系ラーメンが有名だ。最初は驚くかもしれんが、けっこう美味いぞ」

ミシェル「ミミこういうラーメン初めて!」

八幡「じゃ入るか」

そうして注文を済ませ、少し待つとラーメンが運ばれてきた。

楓「こ、これはすごいですわね…」

ミシェル「想像以上だねぇ」

八幡「いただきます」

これだよ、この背脂。若いうちにしか食べられない味。

八幡「ほら、早く食べないと冷めるぞ」

楓「えぇ、そうですわね、いただきます」

ミシェル「い、いただきます」

そうして2人はラーメンを口にして、

楓「美味しいですわ!庶民はこんなに美味しいものをいつも食べているのですか??」

ミシェル「むみぃ、美味しいけど、ミミこんなに食べられるかなぁ…」

八幡「なんだかんだ食べられるぞ。あと先導院、そんなに感動するものでもないと思うんだが…」

229: 2017/02/25(土) 06:43:31.71 ID:MPODaahDO
本編2-8


楓「美味しかったですわ!また食べに来ましょうね」

ミシェル「ミミはしばらくいいかなぁ…」

楓「先生は?」

八幡「俺もしばらくは来ない。ああいうのはたまに食べるから美味いんだ。俺だって毎度毎度食べてるわけじゃない」

楓「そうですか…」

八幡「…ま、まだ他にも美味いラーメン屋はある。今度はそこに行けばいいんじゃないか」

楓「はい!」

ミシェル「で、先生、次はどこ行くの?」

楓「次は先生の行きたいところでしたわね」

八幡「俺の行きたいところは…」

ここで「1人で家に帰る」、と言えれば一番いいんだが、それはできない。こいつら下手したら家に押しかけて来そうだし。さて、そんなぼっちな俺も心安らぎ、かつ中2の女の子たちも楽しめるところといえば、

八幡「ショッピングセンターだ」

ショッピングセンターなら色々な店があるからどんな人でも楽しめるし、それゆえ人から離れて1人で行動しても問題ない場所だ。ゲーセンにボウリングで俺のHPは瀕氏状態だ。これ以上リア充っぽいイベントをされたらたまったもんじゃない。ここらへんで俺はフェードアウトさせてもらおう。

楓「お買い物ですわね!」

ミシェル「ミミ買いたいものいっぱいあるんだ~」

八幡「よしじゃあ行こう、すぐ行こう」

ミシェル「先生もお買い物楽しみなんだね!」

楓「庶民のお店をたくさん見られるチャンスですわ!」

ふ、もう今日の俺の役割も終わりが見えてきたな。ショッピングセンターに着いたらするっといなくなってやる。そして帰ってやる。ステルスヒッキーの本領発揮だ!

231: 2017/02/25(土) 07:47:59.28 ID:MPODaahDO
本編2-9


そうして俺たちは駅前のショッピングセンターに移動した。

さぁ、切り出すなら早いに越したことはない。さっさと別れていざ帰路へ。

八幡「よし、ここからはひとつ自分の見たい店に別々に行くというのは…」

ミシェル「先生!楓ちゃん!かわいいお店がいっぱいあるよ!」

楓「ええ!どのお店も見て回りたいですわ!」

あれー、なんでこの2人俺の話聞いてくれないのぉ。勝手に盛り上がっちゃってるし。

ミシェル「じゃあじゃあ端から順番に見て行こうよ!」

楓「そうですわね!そうと決まれば早速行きますわよ」

ミシェル「うん!ほら先生も早く!」

八幡「え、いや、俺他に見たいものあるんだけど」

楓「先生にも選んで欲しいものがあるんですの。さぁ行きましょう」

八幡「ちょ…引っ張らないで…」

俺は千導院と綿木の2人にファンシーショップに連れられてしまった。

ミシェル「かわいい小物がいっぱーい!」

楓「ミミ、このクッションとってもかわいいですわ!」

ミシェル「それかわいいよね~、ミミ、その種類のクッションいっぱい持ってるよ」

楓「そうなんですの?」

ミシェル「今度見せてあげるね!」

楓「待ってますわ!」

八幡「あの~」

ミシェル「どうしたの先生?」

八幡「その会話、俺を挟んでする意味ある?」

店に入ってからも、綿木と千導院が俺の両脇をがっちりキープして逃げ道を塞いでいる。なんなら物理的にすごい密着されてて、身動きしようにも2人の身体の色々なところに当たりそうでそれもできないし、周りの視線も痛い。

楓「こうでもしないと先生逃げてしまいそうなんですもの」

俺の魂胆バレてました。

ミシェル「だからこうやって楓ちゃんとミミで先生をキープしてるの!」

八幡「…わかった。もう逃げないからせめてこんなに密着するのはやめてくれ」

楓「どうします、ミミ」

ミシェル「う~ん、ミミはもう少しこのままがいいかなぁ」

楓「ワタクシもそう思いますわ」

ミシェル「じゃあごめんね先生、もう少しこのままでいさせてね」

八幡「…はぁ」

もう俺に選択権はないのね。まぁいつものことなんだけど…

236: 2017/02/28(火) 01:40:33.05 ID:7LIrVPUN0
本編2-10


ミシェル「次はあのお洋服屋さんに行きたい!」

楓「こ、こんな服見たことないですわ!」

八幡「おい、俺こんな店入りづらいんだけど」

ミシェル「ミミたちのそばにいれば大丈夫だよ!」

八幡「だからそれもいやだって言ってんだろ…」

そんなことを言ってるとポケットの中でスマホが鳴りだした。ディスプレイに表示される名前を見ると「小町」とある。

八幡「悪い、ちょっと電話」

そばにいる2人に声をかけて、少し離れたところで電話に出る。

八幡「なんだ小町」

小町『おにいちゃん!いつもより電話出るの遅いから小町心配しちゃったよ』

八幡「お前は俺のヤンデレ彼女か。で、なに」

小町『いやぁ、そういえばおにいちゃんに今日のお土産をお願いするのを忘れちゃったな、と思って』

八幡「そんなことくらいメールで連絡すればいいだろ」

小町『でもおにいちゃん、メール見ないこと多いじゃん』

八幡「まぁ、確かに」

小町『せっかく神樹ヶ峰の女の子たちと遊んでるんだもん、小町にもその楽しさを少しでも分けてほしいしね!』

八幡「俺は振り回されているだけだ、で、何が欲しいの」

小町『話が早くて助かりますねぇ、小町は…』

ん?小町の声が聞こえなくなった。どうしたんだ?

八幡「おい小町、どうした」

すると別のポケットに入っている通信機が鳴りだした。こんなタイミングでかかってくるということはまさか…

八幡「はい、もしもし」

樹『あ、比企谷くん?大変なの、千葉駅付近で突然イロウスが大量発生しているの!』

八幡「マジですか…」

樹『それで、今比企谷くんの近くにミミと楓がいるはずよね?急いで3人には現場に向かってほしいの』

八幡「それは良いんですが、なんで俺が2人と千葉にいること知ってるんですか」

樹『ここ数日、あの2人その話ばかりするんですもの、嫌でも耳に入るわ。とにかく、事態は急を要します。すぐイロウスのところへ向かってください』

八幡「わかりました…」

そう返事をすると通信は切られた。

おいおい、なんでイロウスがこの千葉に出現するんだよ…でも不幸中の幸いか、こいつらがいるからな。まだなんとかできるかもしれない。

ミシェル「あ、先生!」

八幡「2人とも。かなりやばいことになった」

楓「イロウスが近くに現れたのですよね。今ワタクシたちのもとへ御剣先生から連絡が入りました」

八幡「なら話は早いな。すぐイロウスのところへ向かうぞ」

ミミ「ミミたちのお買い物の邪魔をするイロウスは許さないんだから!」

楓「それに一般の方々も大勢いますから、早く助け出さないと」

八幡「あぁ、そうだな」

千導院の言う通り、今は一般人の避難も考えなくてはならないだろう。そのためにもまず状況把握をしなくてはならない。

八幡「急ぐぞ」

楓、ミシェル「はい!」

237: 2017/03/02(木) 00:14:13.12 ID:IJ5WQkJh0
本編2-11


俺たちが外に出てみると、まだ町の人たちに混乱している様子は見られなかった。

八幡「まずはどうやってここらへんから一般人を遠ざけるかだが…」

楓「ワタクシの家の者にやらせますわ。呼べばすぐ大勢の人が来ますから、彼らに任せれば大丈夫だと思います」

頼もしすぎるぞお嬢様パワー。

ミシェル「じゃあミミたちはイロウスを探せばいいんだね!」

八幡「あぁ、そしたら一般人の保護は千導院家の人に任せて、俺たちはイロウスの種類の特定と、大型イロウスの殲滅に向かおう」

楓「わかりましたわ」

八幡「それから、これからは一人一人別れて捜索しよう。大型イロウスを見つけたらお互いの通信機で連絡をすること。いいか」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあいこう」

こうして俺たちは別れてイロウスを探すことになったのだが、

八幡「時間がないとはいえ、俺1人になったのはまずかったな…」

こうして1人でイロウスを探して、もし出くわしたら逃げられる自信がない。今日は午前中から2人につき合わされて疲れているんだ。遅い小型イロウス相手でも危ないかもしれない。

ヒューン

と、突然何かが飛んできて、俺の前に小さなクレーターのような穴が出来た。

八幡「なに…?」

飛んできた方向を見ると、道の真ん中で植物のようなものがユラユラ動いているのが見えた。

八幡「あれが今回のイロウスか…」

あれは確か、シュム種だな。幸か不幸か小型イロウスは発生した場所から動かない。つまりあいつの射程距離外にいれば俺が攻撃されることはない。ここはまだ安全なはずだ。今のうちに2人にも伝えておこう。

八幡「俺だ。この付近に現れているイロウスはシュム種だ。2人とも、気を付けてくれ」

楓『わかりましたわ』

ミシェル『ミミやっつけちゃうよ!』

八幡「倒すのもいいが、最優先は大型イロウスの発見と殲滅だ。小型イロウスは少々ほっといてもそこから動くことはない。避難した人に害を与えそうなら倒してほしいが、それ以外は無視していい」

ミシェル『は~い』

八幡「それと、大型イロウスを見つけたらすぐに連絡してくれ。1人で戦うのはダメだ」

楓『もちろんですわ、では切りますね先生』

ミシェル『また連絡するね先生』

そうして通信は切れた。俺も大型イロウスを探さないといけない。倒せない分、せめて発見くらいはして役に立たないといけないだろう。

八幡「まずはあのイロウスを超えないと…」

自分とイロウスとの距離感を測り、息を整えてから

八幡「いざ…!」

猛ダッシュでイロウスの横を駆け抜け、種が飛んでこない距離までなんとか離れることができた。

八幡「あと何回こんなことやらなくちゃいけないんだ…」

シュム種相手でもめちゃめちゃ走るじゃん、やっぱイロウス討伐きつすぎる…

238: 2017/03/05(日) 01:50:35.79 ID:1iahUa8o0
本編2-12


こうして俺は千葉駅周辺を走り回りながら小型イロウスの発生頻度を見ていく。

八幡「キツイ…」

すでにかなり体力を消耗してきている。だが俺が3人の中で1番ここらへんの土地勘を持ってるし、2人には危険な小型イロウスも倒してもらわないといけないから捜索は俺が率先してやらないといけないことだろう。

そうやって考えながら俺はなんとか大型イロウスがいそうな場所を絞り込んできたのだが、どうしても見つけることができない。

八幡「いったいどこにいるんだ…」

だが立ち止まって考えているとすぐに小型イロウスが出現してきた。

八幡「くそっ、また逃げなきゃ」

この数分、こうしてずっと通りをグルグル回っているのだが一向に姿を見ることができない。

ミシェル「あ、先生!」

さらに移動していると綿木に会った。

八幡「おう、大型イロウス見つけられたか?」

ミシェル「見つかんないよぉ~、絶対このへんにいると思うんだけど…」

八幡「そうだよな。だけどもうどこにもいないぞ…」

大型イロウスだからすぐに見つかるような大きさだとは思ったんだが違うのか。もっと細い路地も探す必要があるな。仕方ない、この道を入ってみるか。

八幡「ん?おかしい」

ミシェル「先生どうしたの?」

八幡「この道は向こうの大きな道まで続いてるはずなんだが、途中で何かが邪魔している」

ミシェル「ほんとだ~」

八幡「……まさか」

ミシェル「先生?」

俺は行き止まりまで走っていき、一瞬その行き止まりに触れ、また綿木のもとに戻ってきた

八幡「綿木、あの行き止まりが大型イロウスだ」

ミシェル「むみっ、アレが??」

八幡「そうだ。路地の中で隠れてて一部しか見えてないんだ。だから全体像をイメージして探してた俺らには発見できなかったんだろう」

ミシェル「よーし、じゃあミミやっつけてくる!」

八幡「おい待て。千導院が合流してから攻撃しないと、やられるだけだぞ」

ミシェル「むみっ、そうだった。楓ちゃん呼ばないと!」

239: 2017/03/08(水) 23:49:04.06 ID:gwbJA+j30
本編2-13



楓「つまり、大型イロウスはあの路地の中にいるということですか?」

八幡「そうだ。だが、まずはあいつを路地の中から大通りにおびき出さないといけない」

ミシェル「どうして?」

八幡「そもそも全体が見えてないとどうにもならないだろう。それにあいつは自分のツタを使って、俺たちの真下から攻撃を仕掛けてくる。見えてないと対処のしようがないだろ」

ミシェル「なるほど」

楓「ではどうやって大型イロウスを大通りに誘い出すのですか?」

八幡「それなんだが、ガンなどの遠距離攻撃が出来る武器を使い、なるべく大通りに近いところから攻撃をして注意をひきつけていくしかないだろうな」

楓「そうですわね」

八幡「そして大通りに誘い込めたらソードで一気に倒してしまおう」

ミシェル「わかった!」

八幡「よし、じゃあ始めるぞ」

楓、ミシェル「はい!」

こうして2人は俺の指示通り、ガンで狙えるギリギリの距離から攻撃を始めた。

楓「さぁ、こっちへ出てきなさい!」

ミシェル「ミミの攻撃をくらえ~!」

だが、攻撃をはじめてすぐに、2人の真下からツタが出てきて反撃されてしまう。

楓「あぁっ」

ミシェル「大丈夫、楓ちゃん?」

楓「えぇ、まだいけますわ。でもあのイロウス、ワタクシたちを正確に攻撃してきましたわね」

ミシェル「どうしよう、やっぱりこのまま路地に入っていくしか、」

八幡「いや、それだとイロウスの攻撃を避けられない。なんとかして広い場所へ誘い込まないと」

楓「でも今のままではどうしようもないですわ」

さっきの作戦ではダメだったか。あんなに2人のことをうまく攻撃してくるとは想定外だった。もっと慎重にいかなければ。

八幡「そういうことなら、こっちは動き続けながら撃っていこう」

ミシェル「動き続けながら?」

八幡「止まって攻撃していると、どうしてもツタの標的にされやすい。だから動き続けながら攻撃することで、こっちの居場所の把握を困難にさせておびき出すんだ」

楓「わかりました、やってみますわ」

八幡「だが、やみくもに動いたらダメだ。この大通りからは外れないように、『こっちにいるんだ』とイロウスに悟らせるんだ」

ミシェル「わかった!」

240: 2017/03/13(月) 10:19:19.31 ID:dMvpeeOy0
本編2-14


楓「はぁっ」

ミシェル「やぁっ」

2人は指示通りに走りながら大型イロウスを打ち続けていく。ときおりツタが地中から出てくるが、動いている2人には当たらない。

八幡「まだか…」

かなり動きながら打ち続けているために、俺たちはかなり疲労していた。というか、俺がただ単純に疲れてるだけなんだが…

とその時、突然地面が大きく揺れだした。

八幡「これは」

楓「きますわね」

ミシェル「むみぃ~」

大通りの地面が大きくヒビ割れ、大型イロウスが姿を現した。

八幡「デケェ…」

顔の半分以上が口だし、そこから俺の背と同じくらい長い舌が気持ち悪く動いている。ツタはもっと長くて、俺の背の数倍はありそうだ。それが5本くらいウネウネしている。

ミシェル「ここからが本番だね!」

楓「いきますわよミミ!」

そう言って2人がガンで攻撃し始めると、大型イロウスの口が大きく開いて、そこから紫色のガスが出てきた。

ミシェル「うわぁー!」

楓「きゃっ」

八幡「大丈夫か??」

少し離れたところにいた2人だが、ガスがかなり広範囲に広がってきたために、当たってしまった。

楓「一応は大丈夫ですが」

ミシェル「むみぃ、なんだか体力が減っている気がするよ…」

八幡「毒か…」

毒状態になるとどんどん体力が削られていってしまう。このまま遠距離からチマチマ攻撃していてはこっちの体力がなくなってしまうだろう。一か八か短期決戦に持ち込むしかない。

247: 2017/03/21(火) 16:56:04.58 ID:rrYb2f7OO
本編2-15


未だイロウスに攻撃を続けている2人を一旦近くに呼び戻した。

八幡「このまま時間をかけていると俺たちがやられちまう。だからこれから一気に勝負を付けたいと思う」

楓「確かに早めにどうにかしなければなりませんわね」

ミシェル「そしたらソードでどんどん斬っていくしかないよね!」

八幡「それはそうだが、無闇に突っ込んでもあのツタにやられるだけだ」

ミシェル「むみぃ…じゃあどうするの?」

八幡「あのイロウスのツタは数こそ少なくないが、全て同じ行動をする。だからその隙を突く」

楓「具体的にはどのようにするのですか?」

八幡「まずは遠距離から攻撃を仕掛けて地下にツタを潜らせる。ツタが地下から出てきた瞬間に無防備になった大型イロウスに接近してソードで攻撃だ」

ミシェル「でもでもソード使ってもすぐには倒せないと思うけど」

八幡「なるべく大型イロウスの後ろから攻撃を加えてくれ。あいつは見えてる前方への攻撃パターンは豊富だが後ろや横に攻撃することはない」

楓「なるほど、背後を取っている限りこちらに攻撃はこないということですわね」

八幡「そうだ。もうお前たちは少しのダメージも許されない。絶対に失敗しないでくれ」

楓「任せてくださいまし」

ミシェル「ミミたちのお買い物を邪魔したイロウスは絶対倒すんだから!」

八幡「頼む」

楓「じゃあミミ、いきますわよ!」

ミシェル「頑張ろうね楓ちゃん!」

248: 2017/03/26(日) 00:58:54.17 ID:RCw2eeVQ0
本編2-16


千導院と綿木はお互いに気合を入れてから、改めて大型イロウスに立ち向かう。

ミシェル「まずはミミたちのほうにツタをおびき寄せるんだよね」

楓「えぇ、もうしばらくの辛抱ですわ」

八幡「2人とも、そろそろ来るぞ!」

そうこうしていると、大型イロウスがツタを高く挙げて、地中へ潜らせた。そして、

八幡「今だ!」

ミシェル、楓「はい!」

ツタが地上へ出てきたことを合図に、2人は全速力で大型イロウスに突っ込んでいく。

楓「ミミは右へ!ワタクシが左に回り込みますわ!」

ミシェル「わかった!」

そうして2人は左右に分かれて大型イロウスと間合いを詰める。

楓「さぁ、ミミ、ここからが勝負ですわよ!」

ミシェル「うん!」

2人は武器をシュム種に有効なソードに変更し、ダメージを与えていく。

楓「はぁっ!」

ミシェル「やっ!」

よし、2人の攻撃はかなり効いてそうだ。予想通り大型イロウスは横や後ろからの攻撃には対応するのに時間がかかるみたいだし、このままいければ勝てそうだ。

ヒューン

ん、なんだ?何か後ろから飛んできたような…

八幡「ま、まさか」

恐る恐る後ろを振り返ると小型のイロウスがうじゃうじゃ地中から生えだして、俺に向けて種のようなものを飛ばしてきている。幸い、コントロールが悪く俺には当たらなかったが、このままここにいるとやばい。確実に氏ぬ。

八幡「逃げなきゃ…」

俺はイロウスから逃げるように走り出した。綿木も千導院も大型イロウスと戦っている今、俺のことを守ってくれる人はいない。自分の体は自分で守らないといけない。

まずはイロウスに見つからないように細い路地に入って時間を稼ぐ。イロウスは俺たちのことを認識しない限り攻撃はしてこない。ならばイロウスの視野から外れることが一番の防衛策だろう。

八幡「さながらリアル鬼ごっこだな」

俺は佐藤でもないし、なんならろくに名前も覚えてもらえない存在だが、今のこの状況はあのデスゲームと同じような感じがする。だけど主人公の佐藤翼って陸上部の設定だったよな。引きこもり高校生の俺が逃げ切れるんだろうか…

って何考えてるんだ俺は。疲れと緊張で頭が混乱しているようだ。こういう時こそ冷静に、だ。イロウスと戦っている2人のためにも、このぼっち歴17年で鍛えた頭を使って絶対逃げ切ってやる。

257: 2017/03/29(水) 01:54:09.83 ID:MtNwVsOY0
本編2-17


小型イロウスよりも遠く離れた位置にいれば俺が攻撃されることはないはず。だったらまずはひたすら遠くへ逃げればいい。ならこの千葉駅から離れることがベストなんだが、そうすると俺はあいつらを置いていくことになる。こんな戦いの場で女の子2人、曲がりなりにも自分の生徒を置いていけるほど俺は腐っていない。

だとすると俺はあの大型イロウスを視界に入れられる場所にいなければならない、かつ小型イロウスからは隠れられる場所を探す必要があるのだが、果たしてそんな好都合なところがあるのだろうか…

ヒューン

八幡「おわっ」

やばい、小型イロウスの数がだんだん増えてきている。早く何とかしないと。なにかいいところは、

八幡「あ、あった」

そうだ。ここらへんにはいくらでもあるじゃないか。都合のいいところが。

八幡「ここだ!」

俺は急いでとあるショッピングモールの中へ逃げ込んだ。

そう、別に外にいなくてはいけないなんてことはなかった。他のイロウスとは違い、移動をしてこないシュム種相手ならいったん隠れてしまえば攻撃されることはない。それにここからなら窓から周りの状況がある程度は把握できる。万全を期して2階に上がっておくか。

カツンカツン、カツン

なにか一階で音がするな。なんだ?

窓から離れて1階を覗いてみると、小型イロウスが外から種をまき散らしていたのが見える。だけどあの位置からだと俺には絶対届かない、よね?

カツンカツン

それにしても種が散らばるな。何がしたいんだイロウスは。

ピキッ、グググ

え、まさか、嘘だろ?なんで種からイロウス出てくるの?一瞬で小型イロウスの大きさになっちゃうし、

ヒューン

俺の居る方へまっすぐ種を飛ばしてきた。ということは、種で増殖しつつ俺のところまで到達しようとしているのか。

八幡「やばい…」

このままここにいたら巨大な密室空間に閉じ込められることになってしまう。すぐにここを出なければ。目の前の出入り口はイロウスに封鎖されているから別のとこを使わなきゃ。

八幡「てかなんで俺ばっかり狙われるんだよ…」

まぁ周りに他の人はいないからですよね、ほんとみんな避難出来てよかった。千導院家の人には感謝しないと。

で、外に出たのはいいけどいったいどこに行けばいいのか。建物の中入ってもまたこんな状況になったら意味ないし。いや、道は一つしかなかったですね。

八幡「右しかない」

だって左側イロウスがうじゃうじゃいるのが見えたんだもん、もうこっちしかないよね。

八幡「ってやば」

正面にイロウスがいるのが見えた。次の角を左に曲がらないと。

八幡「ま、またかよ…」

今度は正面と左にイロウスが見えた。今度は右に曲がらないと…

八幡「あれ、この道ってもしかして」

イロウスに追い立てられながら走った先に見えたのは、大型イロウスの姿と、それと戦う2人だった。

ミシェル「先生!」

楓「ど、どうなさったのですか?」

八幡「はめられた…」

俺は逃げていたんじゃなく、逃がされていた、そしてまんまとこの場所へ戻されたわけだ。くそっ、頭使って逃げるどころか逆にイロウスに捕まっちまったじゃないか…

260: 2017/03/30(木) 00:10:30.87 ID:LFw+m70b0
本編2-18


八幡「いや、まぁ、小型イロウスから逃げようとしてたんだが、ちょっとな…」

ミシェル「?」

綿木は何が何だかわからない様子で首をかしげている。

八幡「そんなことより、大型イロウスをなんとかしないと」

楓「あれ?」

八幡「どうした千導院」

楓「いえ、先生がいなくなってからはしばらく小型イロウスは見なかったのですが、またチラホラ向こうの方に姿が」

ミシェル「あ、ほんとだ」

見渡すと確かにどの方向にも小型イロウスがうごめいているのが見える。多分、俺が連れてきましたゴメンナサイ。

八幡「このままだと挟み撃ちにされるぞ」

楓「ミミ、今こそスキルを使うときですわ!」

ミシェル「そうだね楓ちゃん!ミミに任せて!」

八幡「スキル?」

楓「ミミのスキルは広範囲にダメージを与えられるんですの」

ミシェル「いっくよー『フル♪フル♪ラビッツ』!」

綿木がスキルを発動させた瞬間、彼女の周りにウサギのぬいぐるみが現れ、それと一緒に綿木は踊り出す。すると上空から大量のウサギがイロウスの居る方向へ降り注いでいく。当然、俺たちのいるところにも降ってくる。

八幡「やべえ、当たる…」

俺はその場でしゃがみ込み頭を抱えて防御態勢をとる。が、ぬいぐるみは見事に俺をスルーしていく。

楓「先生、何やってるのですか…」

八幡「いや、俺にも当たるんじゃないかと思って…」

ミシェル「スキルはイロウスしか攻撃しないから先生は大丈夫だよ!」

八幡「そ、そういうものなのなのね」

できればもっと早くそのこと教えてほしかったなぁ。まぬけな姿晒しただけじゃん…

八幡「で、スキルの効果は?」

ミシェル「見てのとおり、小型イロウスは全滅だよ!」

確かに、ぱっと見小型イロウスは視界には入らない。

八幡「上出来だ綿木。あとは大型イロウスだけだな」

できればこの流れのまま一気に倒してしまいたい。時間をかけるとまた小型イロウスが湧いてくるかもしれない。

楓「先生、今度はワタクシがスキルを使いますわ」

261: 2017/03/31(金) 00:15:36.49 ID:/qZ45Qtf0
本編2-19


楓「『クルーエルスクラッチ』!」

千導院はスキルを唱えると、大型イロウスに向かって素早く近づいてまるで切り裂くかのように攻撃を加える。大型イロウスはまともに攻撃を受けたためにその場に崩れ落ちるように倒れた。

楓「ふぅ、これで大型イロウスも討伐できましたわ」

ミシェル「やったよ楓ちゃん!」

楓「ミミが周りの小型イロウスを倒してくれたおかげで、ワタクシは大型イロウスに攻撃を集中できたんですのよ」

なんとか倒せたか。今回も疲れたなぁ、なんもしてないけど。

八幡「2人ともお疲れさん」

俺の声に反応して2人がこちらへやって来るが、その背後でゆっくりと大型イロウスのツタが動いているのが見えた。

八幡「伏せろ!」

だが俺の叫びは2人には届かない。こうなったら強硬手段だ。

八幡「うおお」

イロウスのツタもかなり2人に迫っている。だがこの攻撃を体力が無い2人が受けるとヤバい。もう体ごと突っ込んで2人を抱え込んで回避するしかない。一度回避できれば、まだ戦えるかもしれない。

八幡「間に合え!」

俺は2人を両腕で抱きかかえて、そのままの勢いで横へ跳びのいた。間一髪間に合ったが、今の衝撃で俺はもちろん、2人も体を強打してしまった。

ミシェル「いたた」

楓「な、なにが起こったんですの」

八幡「まだ大型イロウスは動けてて、今、ツタが後ろからお前らに向かってたんだ」

楓「では先生はワタクシたちを助けるために…」

八幡「あぁ、だけど一回しか助けてやれそうにない。もう俺は動けないし、2人も限界だろ」

ミシェル「でも、限界とか言ってられないよ!なんとかしなきゃ!」

楓「そうですわ!」

八幡「やめろ、今のうちに逃げろ…」

2人は今にも倒れそうにふらふらになりながらもイロウスと対峙する。

ミシェル「今、ミミたちが逃げるわけにはいかないの!」

楓「だってワタクシたちは星守だから!」

そう言って構える2人に向かって大型イロウスのツタが襲いかか、

らなかった。2人の目の前でツタは落ち、そのまま大型イロウスとともに消えていった。

ミシェル「消えた…」

八幡「なんでだ?」

楓「もしかして、ワタクシのスキルでイロウスは猛毒にかかっていたのかもしれませんわ」

八幡「猛毒?」

楓「えぇ、スキルの攻撃自体ではダメージが足りませんでしたが、猛毒を与えることには成功できたようで、そのダメージで倒せたんだと思いますわ」

ミシェル「楓ちゃんのスキルが猛毒を与えるもので助かったね」

八幡「あぁ。だな」

大型イロウスから毒をくらってピンチだったのに、最後は逆に猛毒で倒すとはな。ちょっと思うところがあるな。

楓「今連絡がありまして、周囲の小型イロウスも消滅したらしいですわ」

ミシェル「よかった~、ミミたち勝ったんだ!」

2人は抱き合って喜んでいる。その笑顔をなんとか最後は守れたのはよかったけど、今は俺のことも気にしてほしいなぁ。もう全身痛くて動けないから早く助けて。

264: 2017/04/02(日) 23:33:09.48 ID:r/WNV3U20
本編2-20


千葉で壮絶な戦いを繰り広げた(綿木と千導院が)次の日の朝、やっと俺は待ち望んだ平和な休日を家で堪能していた。

プルルル

小町「はいはい、今でますよーっと」

こんな朝早くに電話か、珍しいな。

小町「もしもし、あっ、いえ、こちらこそお世話になってます。え、はい、大丈夫です!はい!お待ちしてます!」

そう言って小町は受話器を置いて、俺に不敵な笑みを浮かべながら話してきた。

小町「おにいちゃん、急いで出かける支度して」

八幡「え、なんで。今日は家から一歩も外出ないぞ。たとえ小町の頼みでも」

小町「いやぁ、小町の頼みじゃないんだよなぁ。とにかく急いで!来ちゃうから!」

八幡「誰が、」

その時、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。

小町「ほらおにいちゃんがもたもたしてるからもう来ちゃったよ!今ドア開けまーす!」

小町が小走りで玄関のドアを開けると、いつぞやの千導院家の黒スーツ軍団が乗り込んできた。

黒スーツ「さ、比企谷先生。楓お嬢様とミシェルさんがお待ちです。すぐに千葉駅までご同行願います」

やだ!小町助けて!と小町をすがるような思いで見つめると

小町「あ、兄は強引に連れてってくれて構いませんので、力ずくで連れ出してください」

黒スーツ「わかりました」

小町、兄への扱いが虫けら同然なんだけど?それにスーツの人、小町の意見わかっちゃだめでしょ。なんていう心の叫びは聞こえるはずもなく、ましてや抵抗などできないまま、俺は車に乗せられた。うん、犯罪を犯して逮捕された人が移送されるときってこんな感じなんだな。なんて思っていると車は千葉駅に到着した。

黒スーツ「さ、比企谷先生、お降りください」

最後だけやたら丁寧に車を降ろされると、遠くから2人の少女が走り寄って来た。

楓「先生!遅いですわよ!」

ミシェル「ほら早く行こ!」

八幡「どこにだよ、つかなんで俺は強制連行されたんだ」

ミシェル「昨日のお出かけの続きだよ!まだショッピングセンター全部回れてないし!」

楓「それに昨日の所以外のおいしいラーメン屋も連れてってくれると言ってくれたではありませんか」

八幡「え、いや、確かに言ったし、言ってたのも聞いてたけど、今日やるの?」

楓「当たり前です!昨日イロウスに邪魔されて不完全燃焼だったのですから」

ミシェル「だから今日はほんとに1日中、3人でお出かけするの!」

こう、中学生ってほんと元気だな。昨日の疲れなどまるでないかのように、ましてやイロウスが出現した場所にも関わらず楽しそうにしている2人をちょっと尊敬した。

八幡「はぁ、わかったよ、行けばいいんだろ行けば」

ミシェル「やった!」

楓「では早速買い物から始めましょ!」

八幡「おい、昨日のショッピングセンターはこっちだ。勝手に行動するな。はぐれるぞ」

勝手にどっかに行こうとする2人に俺は声をかけた。すると2人はこっちへ戻ってきてから俺の両脇に密着する。

ミシェル「なら先生とくっついてれば大丈夫だね!」

楓「ワタクシたちの引率、お願いしますわね先生」

暑い苦しい歩きずらい恥ずかしい。でも

八幡「今だけな」

口に出した言葉はそのどれでもなかった。

265: 2017/04/02(日) 23:36:15.28 ID:r/WNV3U20
以上で本編2章終了です。

279: 2017/04/09(日) 00:06:52.55 ID:7WQX1+Fa0
本編3-1


小町「へ〜。ふ〜ん。あ、おにいちゃんおはよー」

八幡「おう、おはよう」

俺は小町と挨拶を交わしてテーブルに座り、コーヒーにミルクと練乳を入れたものを飲みつつ、小町が作ってくれた朝ごはんを堪能する。

俺が神樹ヶ峰に行くようになって以来、家を出る時間が早くなったのだが、小町もなぜか俺と同じように早く起きてくれる。全く出来た妹である。だが、小町は早く起きても朝ごはんを作るとやることがなくなるので、こうして暇を持て余してるのだ。今日は女子中高生に人気そうな雑誌を眺めている。そういう雑誌の記事って何一つ信用できないよね。なんで売れるんだろう…

小町「うーん、すごいなぁ」

八幡「なにが」

小町「いやね、この雑誌の『輝くティーンエイジャー!』っていう特集に載ってる子たちってみんな小町とかおにいちゃんとかと年は変わらないのにすごい人ばっかりだなぁって」

八幡「ふん、そういう記事に載るような人ってのは『頑張ってる私、ステキ!カワイイ!みんな褒めて!』とか思ってるような奴ばかりだからな。注目されたいっていう魂胆が丸見えなんだよ」

小町「うわぁ、出たよおにいちゃんの捻くれた思考回路。そりゃそういう人もいるだろうけど、例えばこの子みたいな純粋な子もいるんだよ!」

八幡「小町、それは『純粋を装った目立ちたがり屋』だぞ。勘違いするな」

小町「なんでそうやってすぐ否定するかな…いいからこの子の記事だけでも読んでよ!」

そう言って小町は俺に雑誌を押し付けてきた。まぁ読みもせず批判するのはダメか。しっかり読んでこの記事をメッタメタにしてやろう。

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特集「輝くティーンエイジャー!」

今回の「輝くティーンエイジャー!」は中学3年生ながら〇〇神社で巫女さんとしても頑張る朝比奈心美ちゃんへの直撃インタビューを掲載しちゃうよ!

インタビュアー(以下、イ)「心美さんは中学生と巫女を両立して頑張ってると思うんだけど、大変だよね?」

心美ちゃん(以下、心)「い、いえ、どっちも私にとっては大事なことなので、大変ですけど、だ、大丈夫、です…」

イ「それに学校では部活動にも取り組んでるんだよね?天文部、だっけ?」

心「は、はい。星を見るのは大好きなので…」

イ「うんうん、とっても素敵だと思うよ!じゃあ、そんな心美ちゃんにこの記事を読んでる同年代の女の子たちへメッセージをお願いできるかな?」

心「え、そんな、私なんかが言えることなんて、ありませんよぉ…」

イ「心美ちゃんは謙虚なんだね、ますます好感度が上がっちゃったよ!今回は本当にありがとう!」

心「あ、ありがとうございました…」

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うん、もういつもの朝比奈だよね。文面でもあのちょっと怯えてる感じが表れてるなぁ。同じページには明らかに緊張してる巫女姿の朝比奈の写真もあるし。って

八幡「これ朝比奈じゃん…」

小町「え、なになにおにいちゃんこの子知ってるの?」

八幡「知ってるもなにも俺のクラスの生徒の1人だよ…」

なんでこいつ雑誌のインタビューなんか受けてるんだよ。明らかに人選ミスでしょ…

小町「すごいすごい!てことはこの子も星守なの?」

八幡「まぁそういうことになるな」

小町「小町と同い年で星守も巫女さんもやっちゃうんだ。すごいなぁ」

まぁ確かに傍目から見たらそう映るのかもしれない。現にこうして雑誌で取り上げられて、読者の小町も感心してるし。

小町「ほらおにいちゃん、みんながみんな目立ちたがり屋な女の子なわけじゃなかったでしょ?」

すごい憎たらしく微笑しながら小町は俺に言ってくる。妹じゃなきゃ殴っててもおかしくないが、言ってることは正しい。

八幡「ま、そうだな。そこは訂正する」

小町「これを機に少しは捻くれた考え方も直したら?あ、もう時間だよおにいちゃん。早くしないと遅刻するよ」

八幡「おう、じゃ行ってくる」

小町「いってらっしゃい!」

281: 2017/04/11(火) 13:02:02.20 ID:UOYZX4ALO
本編3-2


学校での朝の作業が終わってしまい、手持ち無沙汰だったので早めに教室に行くことにした。

八幡「うす」

心美「せ、先生、助けてください…」

俺が教室に入るや否や朝比奈が俺に駆け寄ってきた。

八幡「なんだよいきなり」

心美「あの、みんなが雑誌のことで私を質問責めに…」

うらら「ここみ!まだ話は終わってないわよ!」

そう言って蓮見も俺たちのところへやってきた。教室の後ろの方では何人かの生徒たちが机の上にある雑誌をあーだこーだ言いながら眺めている。

心美「だってうららちゃんの雰囲気ちょっと怖いんだもん…」

うらら「うららより先に雑誌のインタビュー受けるなんて…もっとその時のことを詳しく教えなさい!」

どうやら小町に今朝読まされたインタビュー記事のことが話題らしい。

八幡「あぁ、あの記事か」

うらら「え、ハチくんあの雑誌読んでるの?それはさすがに…」

八幡「俺じゃねぇ。妹が読んでるんだ。それで今朝読まされた記事がちょうど朝比奈のやつだっただけだ」

心美「せ、先生あの記事読まれたんですか?」

八幡「まぁ、一応」

心美「うぅ…恥ずかしいです…」

うらら「なに言ってるのよここみ!ハチくんでさえ読んでるのよ!今こそ世間への知名度アップのチャンスじゃない!」

心美「私は別に知名度はいらないよぉ」

うらら「甘い、甘いわよここみ!アイドルはいつチャンスを与えられるかわからないの!与えられたチャンスは最大限生かさないと、いつまでたっても有名になれないわよ!」

心美「私アイドルじゃないのに…」

八幡「おい、朝比奈も嫌がってるしそこらへんで」

うらら「でもでもハチくんもあのインタビューは物足りなかったでしょ?」

八幡「ん、まぁ、正直もう少ししっかり受け答えできるようになってもいいとは思うが」

うらら「ほらここみ!ハチくんもこう言ってるわけだし、インタビューの特訓よ!」

心美「えぇ、私にはムリだよぉ、うららちゃん…」

うらら「うららより先にインタビューを受けといてその態度は許さないわ!早速お昼休みから始めるわよ!」

283: 2017/04/14(金) 18:40:19.19 ID:7foyU3WJ0
本編3-3


昼休みになり俺が孤独にランチをしていると、蓮見が朝比奈の腕を引っ張りながらこちらへやってきた。

うらら「さ、ここみ。早速インタビュー特訓を始めるわよ!」

心美「え、う、うん…」

八幡「待て、なんでここでやるんだ。俺は1人で昼飯を食べたいんだ。あっちでやれ」

うらら「だってハチくんいるところじゃないとここみやらないって言うんだもん」

そう言われた朝比奈は俺に近づいて耳打ちしてきた。

心美「先生がいたほうがうららちゃん抑え気味にしてくれるかなって…迷惑ですか?」

八幡「いや、迷惑じゃないけど…」

それよりも腕に当たってる柔らかい感触が迷惑かもしれないです…

俺の返事を聞くと朝比奈は顔を遠ざけ、その表情は幾分か柔らかくなったように思える。

心美「あ、ありがとうございます…」

うらら「さ、じゃあやるわよ!まずは記事を見ながらダメだったところを見直すわよ」

八幡「そんなことからやるのかよ」

うらら「当然!うらら、インタビュー記事の直したほうがいいところにチェックしてきたから、これ参考にしてね」

そう言って蓮見が出した雑誌のインタビュー記事のページには付箋とマーカーと赤ペンとでびっしり埋まっている。どんだけこの記事読み込んでるんだよ…

心美「す、すごいねうららちゃん…」

八幡「もう何が書いてあるかさっぱり読めん」

うらら「これでもかなり少なくしたわよ」

八幡「……さいですか」

うらら「まずは最初よね。『大変ですけど、だ、大丈夫、です』なんて言っちゃダメよ!もっと可愛く自分をアピールしなきゃ!」

心美「ぐ、具体的にはどうするの?」

うらら「そーね、『でもうららは~学生生活も、アイドル生活も、どっちも大好きなので~、大変ってよりもむしろ今の状況が幸せです!』みたいな感じかしら」

八幡「おい、もうそれ蓮見の考えになってるぞ」

心美「うららちゃんはそうかもしれないけど、私はそんな風には言えないよ…」

うらら「甘いわよここみ!大事なのはこれを読んでくれる人にどう思われるのか。そのためなら自分を捨てる覚悟をしなさい!」

八幡「大袈裟だな…」

うらら「ハチくんも甘い!今の業界は本当に厳しいんだから!そもそも~」

そうやっていつの間にか蓮見のアイドル論、業界論が始まり、俺と朝比奈はただ聞いてるだけしかできないうちに昼休みを終えるチャイムが鳴った。

心美「う、うららちゃん、もう昼休み終わっちゃうよ」

うらら「そうね、でもここみのインタビューについて全然話せてないじゃない!」

八幡「いや、お前が勝手に自分のこと話してたから終わらなかったんだろ」

うらら「しょうがないわね、続きは放課後やるわよ」

八幡「まだやるの?もうよくね?」

うらら「ダメよ!ここみにもきちんとインタビューくらいこなせるようになってほしいもん!」

心美「うん、私もインタビューに慣れたい」

うらら「よく言ったわここみ!ということだからハチくんも協力してね」

心美「私からもお願いします、先生」

八幡「…わかった」

妹と同じ年の女の子たちからのお願いなので断ることもできないどうも俺です。ほんと甘いな、俺。MAXコーヒーと同じくらい甘い。…はぁ、面倒なことを引き受けてしまった。

288: 2017/04/18(火) 20:26:50.56 ID:guKBuReR0
本編3-4


放課後、ところ変わって俺たち3人はとあるカフェにいる。てっきり俺は学校で特訓とやらをやるのかと思ってたのだが、蓮見の「せっかくだから3人でケーキを食べたい!」という発言を受け、移動したのである。

で、このカフェがまた見事に若い女性客ばかりで現在進行形で視線が痛い……入り口で店員に人数を言った時も「本当に3名様で宜しいですか?」とか聞き返されたし。まぁ、麗しい制服姿の女の子2人と、目が腐ってるスーツ姿の男1人でいたらそりゃ怪しまれますよね、はい。とりあえず席にはついたが、相変わらず居心地が悪い。

八幡「ねぇ、この店女性客ばっかりじゃない?」

うらら「だってこの雑誌に紹介された店だもん。当たり前でしょ」

そう言って蓮見は件の雑誌を開く。そこには「今話題のオシャレカフェ!」と題して、今いるカフェの店内の写真と紹介文が載っている。

八幡「つまり、このページ見て来たくなったのね…」

うらら「うぅ、だって女の子なら惹きつけられるのよ!ほら、ここみだって夢中じゃない」

俺の対角線上、蓮見の隣に座る朝比奈はそんな俺たちの会話が聞こえてないのか、メニューをじっと見て「これも美味しそう、でもこっちもいいなぁ」とブツブツ呟いている。

まぁ俺もさっさとメニュー決めるか。うーん、なんかここのケーキ、名前だけ凝っててどんなものか全然わからん。無難なものだと、

「無難なのだとこれがいいんじゃない?」

後ろから指さされたのはチョコケーキだった。

あぁ、確かに普通のチョコケーキとかなら味も予想つくな。って、後ろから指?

ガバッと振り向くとそこには俺と同じアホ毛が揺れる、ニコニコ笑う美少女が立っていた。

八幡「……小町、こんなとこで何してんの」

小町「お兄ちゃんのいるとこ、必ず小町もいるのです。あー、今の小町的にポイント高い?」

てへぺろっとしながら小町は空いている俺の隣に座る。ホントいちいちあざとい。

八幡「うぜぇ、で実際のとこは?」

小町「雑誌でこのお店を見て来たくなりました。ていうか、そういうお兄ちゃんこそ何してるの、女の子2人も連れて」

八幡「あぁ、それは、まぁ」

何て説明するのがいいのだろうか、と思っていると向かいの蓮見が俺に問いかけてきた。

うらら「ねぇ、ハチくん、この人誰?」

八幡「ん?俺の妹だ」

小町「はーい!お兄ちゃんの妹小町でーす!兄がいつもお世話になってます!それでお兄ちゃん、このお二方は?」

八幡「神樹ヶ峰の生徒の、」

うらら「蓮見うらら、中学3年生よ!よろしくねこまっち!そっか〜、ハチくんの妹か〜可愛い~、なんかあんまり似てないね♪」

八幡「うるせぇ……」

蓮見は俺の言葉を遮って自己アピールをしつつ、俺をけなしてきた。まぁ、こんな兄に似ず、可愛く成長したのは奇跡だろう。ほんと似なくてよかった。特に目とか。てかこまっちって何?もしかしなくてもあだ名?

小町「おおっ、小町も中3なんだ~!よろしくね!」

八幡「で、こっちが、」

小町「も、もしかして朝比奈心美ちゃん?」

小町は身を乗り出して朝比奈に迫る。対して朝比奈は少し身を引いて答える。

心美「は、はい、朝比奈心美です、よろしくね、小町さん…」

小町「わぁ!本物の心美ちゃんだぁ!雑誌で見るよりすごい可愛い~!ていうか同い年なんだから小町でいいよ!」

心美「じゃ、小町ちゃん、で…」

小町「きゃー可愛い!もう、お兄ちゃん、こんな可愛い子たちとカフェでお茶とは、なかなかいい御身分ですなぁ」

八幡「俺はただの付き添いだ」

うらら「うららたち、今から心美のインタビューの特訓をやるの。こまっちも一緒にどう?」

小町「楽しそう!小町も参加していい、お兄ちゃん?」

八幡「……勝手にしろ」

289: 2017/04/19(水) 18:23:47.80 ID:uAWsROAo0
本編3-5


うらら「こまっちはここみのインタビューどう思った?」

心美「な、なんでも言って?」

小町「うーん、失礼かもしれないけど、なんだかすごく受け身だなって思った」

心美「受け身って、どういうこと?」

小町「なんて言えばいいのかな。ただ質問に答えてるだけっていうか、心美ちゃん自身の伝えたいことが何なのかよくわからなかった。それも可愛かったけどね!」

うらら「確かにそうね。ここみはもっと主体性を持つべきだわ!」

心美「しゅ、主体性?」

うらら「そうよ!自分が思ってることをもっと外に出していかないと!」

八幡「おいおい、いきなり主体性なんて言ってもそう簡単に身につくものじゃないだろ」

小町「え〜、そうかなぁ?」

うらら「うららは主体性持ってるよ!」

八幡「……確かにお前らは主体的すぎる。少しは遠慮しろ」

心美「や、やっぱり私がダメなのかな」

八幡「……ま、俺は朝比奈のそういう大人しいところも一つの個性として成り立ってると思うし気にしなくていいと思うけどな」

心美「そうですか?」

八幡「あぁ。俺を見てみろ。働きたくない、学校行きたくない、って常々言ってるだろ。それに比べたら全然大丈夫だ」

小町「いや、そりゃお兄ちゃんに比べたら人類のほぼ全員が良い人になっちゃうよ」

うらら「でもハチくんもなんだかんだキャラが立ってるのよね〜。それこそ主体的に『働きたくない』『早く帰りたい』って言ってるもん」

……確かに俺も一般的な人間とは口が裂けても言えない。まぁ小町や蓮見とは方向性が違うけど。

小町「あ、そうだ!小町閃いちゃった!」

そんな時突然小町が何か思いついたらしく声をあげた。

八幡「なに?」

小町「小町たちで心美ちゃんの魅力を見つけれてあげればいいんだよ!きっと自分の魅力がわかれば主体的になれるはず!」

うらら「それ名案!」

小町「でしょ?名付けて『心美ちゃんをプロデュース大作戦!』」

心美「そ、そんな、悪いよぉ」

朝比奈は遠慮がちに言うが、小町と蓮見はおかまいなしに話を続ける。

うらら「安心しなさいここみ。うららたちが必ずここみの魅力を見つけ出してあげるわ!」

小町「小町も全力でサポートするから!」

心美「あ、ありがとう」

なんだか話がおかしな方向に進んでないか?ここらで切り上げないとさらに話が脱線しそうだ。

八幡「そろそろいい時間だし帰るぞ、小町。じゃあな2人とも、気をつけて帰れよ」

小町「あ、ほんとだ。じゃあうららちゃん、心美ちゃん、またね!」

うらら「うん!またね、ハチくん!こまっち!」

心美「せ、先生、小町ちゃん、さようなら」

291: 2017/04/20(木) 18:03:12.34 ID:utF8+NEZ0
本編3-6


八幡「ただいまー」

小町「あはは、もううららちゃん面白い〜!あ、お兄ちゃんお帰り~」

カフェの帰り際に小町は蓮見と朝比奈と連絡先を交換し、それ以来よく2人と電話するようになった。まぁ学校が違うから会えないってのはあるとは思うが、そんな電話することあるの?

小町「うん、うん、そうだね〜、それなら〜」

相変わらず電話を続ける妹を無視して俺はご飯をよそう。すでにテーブルの上には今日の晩ご飯のおかずが準備されている。たまに俺が帰るのが遅くなる時もあるのだが、そんな時でも小町はご飯を食べるのを待ってくれている。良い妹だ。絶対よそには行かせん。

八幡「ほら小町。飯食べるぞー」

小町「はーい!じゃあうららちゃん、こっちは任せてね。じゃあね!」

小町は電話を切って俺の向かいに座ると、わざとらしく咳払いを一つする。

小町「いやぁ〜、小町中3で受験生じゃん?家でも学校でも勉強してるからストレス溜まっちゃって。だからお兄ちゃん、週末小町のストレス発散に付き合って?」

えー、今の今まで楽しそうに電話してたじゃん。ホントにストレス溜まってるのかこいつは?と、思っても俺は言わない。何故かというと、言っても無駄だからだ。

八幡「まぁ、いいけど」

小町「ほんとに?」

八幡「小町がそう言うなら俺に拒否権はない」

小町「わーい!ありがとうお兄ちゃん!」

八幡「で、どこでなにすんの」

小町「そ、れ、は、当日のお楽しみでーす!」

こいつしばいたろか、と思う心を俺はぐっと抑える。

八幡「ふーん」

小町「テキトーだな。まぁいいや。とりあえず、週末は朝早く出かけるつもりだからよろしくね」

八幡「え、休日くらいゆっくり寝かしてくれよ」

一番楽しいのが次の日が休日の夜に氏ぬほど無駄な時間を過ごして夜更かしして、次の日遅くまで寝ることじゃないのか。で、起きても結局夜まで何もせず「俺今日何やってるんだろ」って思って次の日の平日に絶望するまでがお約束。

小町「ダメ。寝るだけの休日なんて体に悪いよ。たまには外にも出ないと!」

八幡「はいはい、わかったよ……」

俺の反応を見て小町は満足したのか、ごはんを食べ始める。

小町「じゃ、よろひくねお兄ひゃん!」

八幡「食べながらしゃべるな、汚い」

293: 2017/04/21(金) 20:55:43.23 ID:fmvzb7dp0
本編3-7


迎えた休日。俺は早朝に小町に起こされ、今電車の中にいる。休日の、しかもまだ朝早いためか、そこまで人も乗っていない。

こうして空いてる電車に兄妹2人で乗ってると、なんか逃避行みたいで少しワクワクする。本当に現実から逃げられないかなぁ。最近の神樹ヶ峰との交流からは特に逃げたい。

小町「なーに朝から目腐らせてるのお兄ちゃん」

八幡「俺は悪くない。社会が悪い。つか、これどこ向かってるの」

小町「んー、まだ内緒〜」

今はこんな理解できない状況からも逃げ出したい。

小町「でももう着くから!ほら、ここで降りるよ」

小町に促され電車を降りたものの、周りにはこれといって目立つ建物は見当たらない。

八幡「小町、こんなところで何するつもりなんだ?」

小町「行けばわかるから!ほら行くよ〜」

そう言って意気揚々と歩く小町の後ろを付いて歩いていく。しかし、見渡してもストレスが発散できそうなスポットは見えない。強いて言えば緑豊かな景色くらい。

すると唐突に小町が立ち止まった。

小町「はい、到着!」

八幡「は?ここ?なんもないんだけど」

小町「え、あるじゃん鳥居」

八幡「なに、鳥居巡りでも始めるの?」

小町「小町そんな趣味は持ってないよ…ここで待ち合わせすることになってるの」

八幡「待ち合わせ?誰と?」

うらら「うららとだよーん!ハチくん、こまっちおはよー!」

心美「うららちゃーん、1人で行かないでよぉ」

突然の蓮見と朝比奈が神社の中の方からこちらへ走って来た。

小町「あ、うららちゃん、心美ちゃんおはよ!約束通りお兄ちゃん連れてきた!」

うらら「さすがこまっち!」

心美「き、今日はよろしくお願いします」

八幡「……あの、状況が全く飲み込めてないんですけど」

心美「実は雑誌にインタビューが載って以来、平日でも参拝客が増えちゃったんです。だから休日はもっと増えると思って、うららちゃんと小町ちゃんにお手伝いをお願いしたんです」

うらら「で、それに合わせてこの前カフェで言ってた『心美をプロデュース大作戦』も実行するの!」

八幡「……はぁ、なんとなく状況はわかった。で、なんで俺も連れてこられたの?」

小町「少しでも人手あったほうがいいと思って連れてきちゃった。どうせヒマでしょ?」

八幡「いや、ヒマだけどさ。それならそうと言ってくれよ」

小町「でもお兄ちゃん、神社でお手伝いって言ったら絶対来なかったでしょ」

八幡「……確かに」

心美「あの、迷惑だったでしょうか?」

八幡「ま、来ちゃったからには、俺にできる範囲で手伝うわ」

余計逃げ出したくなったのが本音だが、今さら帰るとも言えないし……

心美「あ、ありがとうございます」

うらら「よーし、そしたら心美の神社のお手伝いアーンド『心美プロデュース大作戦』決行よ!」

小町「おー!」

心美「お、おー」

八幡「はぁ……」

294: 2017/04/22(土) 23:44:40.47 ID:Jg67jXwl0
本編3-8


朝比奈に連れられ、俺たちは神社の奥の控え室に案内された。

心美「で、では先生。ここが先生の控え室です。着替えをして少し待っててください」

八幡「着替えって、これにか?」

俺は机の上に置いてある袴を見ながら尋ねる。

心美「は、はい。一応、それなりの格好をしてもらわないといけない決まりになってるので」

八幡「……了解」

小町「もしかして小町の服もあるの?」

うらら「もちろん!こまっちの服は隣の控え室にあるわよ」

小町「おぉ!やった!」

心美「じゃ、じゃあ私たちも着替えてくるので失礼します、先生」

八幡「おう」

でも1人になって改めて考えると、これ着るのけっこう恥ずかしいな。てかこれどうやって帯しめるの?

悪戦苦闘してると隣の部屋から声が聞こえてきた。

小町「お兄ちゃんー、小町たち着替え終わったよー」

八幡「おー、俺も終わったぞ」

結局帯の結び方がよくわからず適当に結んでしまった。ま、着れてればいいでしょ。

小町「じゃ入るねー」

襖が開くと、そこには3人の艶やかな巫女が立っていた。

3人とも真っ白な白衣を上半身に纏い、下半身には鮮やかな赤い緋袴を身につけている。髪もみんないつもと違い、後ろで一つにまとめていて清楚な雰囲気を醸し出している。

うらら「どうどうハチくん?」

小町「小町たち、似合ってるでしょ?」

八幡「あぁ。まぁ、いい感じなんじゃねぇの」

ついぼーっと眺めてしまい、そんな感想しか口に出せなかった。

小町「ありがとー!でもお兄ちゃんはそんなに似合ってないね」

八幡「うっせ」

心美「あ、あの、先生。結び方が間違ってます。直すので動かないでください」

そう言うと朝比奈は膝立ちになって、俺の腰の帯を結び直そうと腰に腕を回してくる。……なんかこの状況そこはかとなくいかがわしくない?

心美「はい、結べました。先生苦しくないですか?」

朝比奈は少し心配そうに上目遣いをしながら聞いてくる。そんな表情すんなよ、ちょっとドキッとするだろうが。

八幡「え?おう、大丈夫大丈夫。助かった」

心美「よかったですぅ」

安心したように笑顔になる朝比奈とは異なり、小町は不敵な笑みを浮かべ、蓮見は拗ねるようにそっぽを向いている。

八幡「おい、どうした?小町、蓮見」

小町「思わぬダークホースの登場かな?」

うらら「……ここみには負けないもん」

2人はなにかぶつぶつ言っているがよく聞こえない。

八幡「なんだって?」

小町「べつに~」

うらら「なんでもないわよ!」

296: 2017/04/23(日) 14:31:09.31 ID:yZ6uxURGO
本編3-9


うらら「はーい家内安全お守りは800円でーす!」

小町「おみくじはこっちですよ~!」

着替え終わった俺たちは境内で手伝いを始めた。小町と蓮見は売店で売り子さんをしている。売店はたちまち盛況になり、「売り子さん可愛いよね」みたいな会話がたまに聞こえてくる。で、そんな俺は

八幡「……」

売店に並ぶ長蛇の列の整理役をやらされている。それも『こちらが列の最後尾です』という看板を持って立ってるだけ。列に割り込もうとする人に声をかける以外は無言である。なにも面白みはないが、心のスイッチを切れば耐えられないこともない。

そして朝比奈はというと

少女A「めっちゃ可愛い~!」

心美「あ、ありがとうございます」

少女B「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

心美「は、はい」

本殿のほうでちょっとした人気者になっていた。朝比奈の周りには同年代の女の子たちが群がり、遠くから怪しいおっさんが数人、その光景をカメラに収めている。おい、おっさん。それ犯罪だぞ。やめろよ。

男「すんません、トイレどこっすか?」

八幡「あ、トイレなら絵馬掛けの向こう側にあります」

男「あざーす」

俺に声をかけてくる人はこんなもんしかいない。それでも大変なのに、3人とも大勢の人に笑顔で対応してすげぇな。俺には絶対できない。

そうして突っ立ってしばらく経った昼ごろ、小町と蓮見が俺のところへやってきた。

小町「お兄ちゃんお疲れー」

八幡「おう、そっちは休憩か?」

うらら「うん。うららとこまっちの可愛さでお守りが飛ぶように売れちゃって大変!」

八幡「そいつはよかったな」

小町「ほらお兄ちゃん。もうそんなに列も長くないし、本殿のほう行こ」

八幡「本殿でなんかあるの?」

うらら「心美が舞うの!」

301: 2017/04/24(月) 22:26:02.71 ID:JbfaqJzS0
本編3-10


俺たちが本殿に行くとすでにかなりの人だかりができていて、舞台には朝比奈が立っていた。

放送「これより当神社の巫女、朝比奈心美が舞を披露いたします。参拝客の皆さま、美しい舞を是非ご覧ください」

放送が終わると、神楽が鳴り始める。朝比奈はその音楽に合わせてゆったりと、優雅に舞う。手にある扇も使いながら美しく舞う姿からはいつもの臆病な雰囲気は全く感じない。

小町「キレイ……」

うらら「やるわね……」

小町や蓮見はもちろん周りの人たちも朝比奈の舞に魅力されているようで、ため息や囁き声があちこちから聞こえる。

小町「心美ちゃんすごいねお兄ちゃん」

八幡「あぁ」

小町「でも舞台が黒いのがもったいないよね。ちゃんと掃除しなきゃ。せっかく舞が綺麗なのに」

八幡「あ?床?」

注意して見てみると、確かに木が黒くなっている箇所がある。あれって、

八幡「……!おい蓮見。舞台の床を見ろ」

うらら「え?ん〜、あっ。これってまさか……ここみ!床!!」

蓮見の声が聞こえたのか、舞台上の朝比奈も床の異変に気付き舞を中断する。

その時床の黒い魔法陣が光り、そこからイロウスが出現した。

うらら「イロウス!」

心美「皆さん!今すぐここから逃げてください!」

蓮見はすぐに武器を出しイロウスへ飛びかかる。朝比奈は舞台上から大声で呼びかけるが、その途端に参拝客は我先に走り出し、本殿は混乱している。このままだと参拝客が危ない。それを防ぐには、

八幡「小町。お前は神社にいる人の避難を指揮してそのまま逃げろ」

小町「え?でもお兄ちゃんは?」

八幡「俺はここに残る。曲がりなりにもあいつらの先生だからな」

小町「なら小町も残る」

八幡「ダメだ。参拝客には完全に避難してもらわないと戦いづらい。それに、もし小町の身に何か起こったら俺が親父に殺される。俺の命のためにも逃げてくれ」

小町「目的が半分お兄ちゃんのためになってるよ……でもそう言うならわかった。お兄ちゃんの言う通りにするよ」

八幡「頼む」

小町は一度大きく頷いて人混みの方へ駆け出していった。

八幡「蓮見、なんとか小町が参拝客を避難させるまでここで持ちこたえてくれ」

うらら「わかった!」

心美「あの、私は何を」

八幡「朝比奈は参拝客が残っていないか神社を見回って、誰もいないのが確認できたら連絡してくれ」

心美「わ、わかりました。待っててねうららちゃん!すぐ戻ってくるから」

うらら「足止めは任せときなさい!」

303: 2017/04/25(火) 20:44:38.28 ID:wURqF/Kd0
本編3-11


八幡「じゃあ俺たちはこいつらをどうにかするか」

改めて俺と蓮見はイロウスに向き合う。

うらら「どーにかするのはうららでしょ♪」

八幡「……確かに」

うらら「いや、そんな意味で言ったんじゃないからね。元気出して!」

八幡「別に落ち込んでねぇよ。ほらイロウスに集中しろ」

うらら「大丈夫!小型イロウス数匹くらいなら余裕よ!」

蓮見はそう意気込んで杖を構える。魔法陣から出てきたところを見ると、こいつはレイ種ってやつか。

うらら「星守うららのステージ開幕よ!『炎舞鳳凰翔』!」

たちまち炎に包まれた蓮見は飛び上がり、上空からイロウスに向かって突撃する。その攻撃で周囲のイロウスはたちまち消滅する。

うらら「どうどうハチくん!うららの勇姿!」

八幡「ご苦労さん。あぁ、まぁ良かったんじゃねえの」

うらら「うわー。こまっちに聞いた通り、褒めるのも素直じゃないなぁ」

八幡「うるせ。つかまだ大型イロウスを倒せてない。油断すんな」

小型イロウスをいくら倒しても大型イロウスを倒さないと意味がない。絶対近くにいるはず。

その時通信機が鳴り出した。多分朝比奈からだろう。

八幡「もしもし」

心美「せ、先生!助けてください」

予想に反してかなり切羽詰まった声色だ。

八幡「どうした」

心美「神社全体にイロウスが出現していて、私1人では倒しきれないです。ど、どうすれば」

八幡「わかった。蓮見とすぐそっちに向かう。今どこだ」

心美「い、今は売店前の参道にいます」

八幡「すぐ蓮見と向かう。俺たちが行くまで無理はするなよ」

心美「わ、わかりました。お願いします」

そうして通信は切れた。くそ、すでに神社全体が襲われてるのか。

八幡「おい蓮見。ここだけじゃなくて神社全体にイロウスが現れてると今朝比奈から連絡があった」

うらら「ここみは大丈夫なの?」

八幡「無理はしないように言っといた。だが早く合流しないとマズイ」

うらら「すぐ行くわよ!」

304: 2017/04/27(木) 23:19:42.34 ID:dn6LpICn0
本編3-12


俺たちが参道に着くと、朝比奈が多数のイロウス相手に孤軍奮闘していた。

うらら「ここみ!」

心美「うららちゃん!先生!」

八幡「大丈夫か?」

心美「は、はい。でもイロウスが多すぎて対処しきれなくて……」

小型イロウスばかりだが、いかんせん数が多いのと散らばってるのとで効率的に倒せていない。

うらら「ハチくん!うららのスキルで一網打尽にするわ!」

八幡「でもさっきのスキルじゃせいぜい周り数メートルのイロウスしか倒せないだろ」

うらら「ふふん、うららを甘く見ないでよ!さ、ステージ第二幕の開演よ、『パンプキンクイーン』!」

蓮見が叫ぶと上空から大きなかぼちゃが降ってきた。かぼちゃ?

八幡「は?なにこれ?」

心美「うららちゃんのスキルです。あのかぼちゃが時限爆弾になってるんです」

八幡「時限爆弾?」

うらら「でもただの時限爆弾じゃないわよ!」

何がだ、と言いかけた時異変に気づいた。どの小型イロウスもかぼちゃに吸い寄せられていくのだ。

八幡「もしかしてこの爆弾」

うらら「そう、かぼちゃがイロウスを引き寄せてくれるの。さ、ここみ!今のうちにイロウスを叩くわよ!」

心美「う、うん!」

そうして2人は外からイロウスを攻撃してその数を減らしていき、

うらら「そろそろ爆発するわ!」

時間が経ったかぼちゃは周りに残ったイロウスを巻き込んで爆発した。

八幡「よし、これでかなり数が減ったな」

心美「でもまだ残ってます」

うらら「もう一回かぼちゃをやればいいだけの話よ!『パンプキンクイーン』!」

再びかぼちゃが降ってきて、イロウスが引き寄せられていく。

うらら「いくわよここみ!」

心美「うん!」

だが次の瞬間、かぼちゃが爆発した。

八幡「な、なにが起こった?」

うらら「うっ。実はあの爆弾、一定以上のダメージを受けても爆発する仕組みになってるの」

八幡「てことはまさか」

心美「た、多分出てきたんだと思います。大型イロウスが」

煙が晴れてくると、朝比奈の言う通り大型イロウスの輪郭が見えてきた。高さは4,5メートルほどで全身骨だが、角としっぽがあるぶんさらに巨大に感じる。

八幡「こいつがおそらく親玉だな」

心美「お、大きいよぉ」

うらら「しっかりしなさいここみ!大丈夫、うららたちならできる!」

305: 2017/05/01(月) 00:57:32.71 ID:UaigGRmc0
本編3-13


蓮見と朝比奈は杖を構え大型イロウスへ攻撃を仕掛けようとする。しかしその攻撃を次々と湧いてくる小型イロウスが身代わりとなって受け、大型イロウスに攻撃が届かない。

うらら「もうっ!なんなのよあの小型イロウスは!」

心美「し、しょうがないようららちゃん」

八幡「攻撃し続ければ隙が生まれるはずだ。そこを逃すな」

そうして攻撃を続けると小型イロウスが湧いてこない瞬間ができた。

八幡「今だ!」

うらら「はあっ!」

心美「やぁ!」

2人はすぐさま攻撃するが、大型イロウスは地中へ潜って攻撃をかわす。

うらら「今度は隠れるのね」

心美「ど、どこから現れるんだろう……」

マジか、また地中に隠れるのか。千葉に現れたシュム種といい、イロウスって地中が好きなの?そのまま地中に潜っていなくなってくれるとありがたいんだが。

などと考えていると蓮見の足元に大きな黒い魔方陣が出現した。

八幡「蓮見!足元に注意しろ!」

うらら「わかってる!」

すぐに魔方陣が光りだし、そこから大型イロウスが腕を振り回しながら現れる。だが、蓮見は素早く緊急回避のためにローリングして攻撃をかわす。

心美「うららちゃん!」

うらら「うららは大丈夫!早く大型イロウスに攻撃を!」

心美「うん!」

朝比奈は大型イロウスを攻撃する。しかし大半の攻撃はまた湧き出した小型イロウスが身代わりに受けたため、ほとんど大型イロウスにダメージを与えられない。

心美「ま、また小型イロウスが……」

うらら「もうどうすればいいのよ!」

八幡「どうするもなにも、こうなったら小型イロウスもまとめて攻撃するしかないんじゃないか」

心美「それならスキルを連発するしか……」

うらら「なら連発すればいいじゃない!」

そう言うと蓮見は矢継ぎ早にスキルを連発していく。

うらら「『チャーム・アイズ』!『エレクトロサポート』!」

蓮見のスキル攻撃でダメージを大型イロウスに与えることに成功した。

うらら「『チャーム・アイズ』でマヒさせて、『エレクトロサポート』でパワーアップしたうららの攻撃を受けなさい!『炎舞鳳凰翔』!」

だが蓮見がスキル名を唱えてもさっきみたいな炎は出てこない。

心美「うららちゃん……?」

八幡「……お前もしかして」

うらら「SP使い切っちゃった……」

八幡「なにやってんだ。スキル使えなくなるってかなりやばいぞ」

うらら「だ、だって参道に来た時に『パンプキンクイーン』何回も使っちゃたんだもん!それに小型イロウスもまとめて攻撃しろって言ったのハチくんじゃん!」

八幡「いや、確かにそう言ったけど、ここまでするとは思わないだろ」

自分でできること減らしてどうするんだよ。でも今さら後悔してもどうしようもない。まずはこの状況を打開することを考えないと……

307: 2017/05/02(火) 01:25:05.61 ID:CeRDX9tz0
本編3-14


心美「あ、あの」

朝比奈が胸の前で手をもじもじさせながら話しかけてきた。だから、その胸の前に手置くなよ。見ちゃうだろ。小町や蓮見にはないものを。

八幡「どうした?」

心美「わ、私のスキルでうららちゃんのSP回復してあげられますけど」

八幡「ほんとか?」

うらら「さすがここみ!」

心美「で、でもスキルの攻撃力はそこまで高くないんですけど」

八幡「蓮見のSP回復が最優先だ。すぐ頼む」

心美「じゃ、じゃあ、先生。私のそばに来てくれませんか?」

八幡「え、なんで?」

心美「そうしないとスキルが発動できないんです……」

なにその発動条件。回復対象の蓮見が近づくならわかるけどなんで俺?

うらら「ほらハチくん!早くここみに近付いてよ!」

俺が朝比奈に近付かないことに見かねて、蓮見が俺の背中を押した。そのせいで朝比奈との距離がほぼゼロ距離になり、朝比奈からうっすらシャンプーのいい香りがするっていうどうでもいい知識を身につけた。てかめっちゃ近いんですけど。色々女の子らしいものが目の前にあって視線が泳ぐ。

八幡「あ、悪い」

心美「い、いえ」

……なにこの沈黙。あれ、てかなんで俺朝比奈に近付いたんだっけ。

うらら「ほらここみ!早くスキル発動させなさいよ!」

心美「あ、うん。じゃあ先生」

そう言って朝比奈はハンカチを出して、それを俺の顔に向けてくる。自然とそのハンカチを目で追っているとその向こう側の朝比奈と目が合う。

心美「ブ、『ブラッシュアプローチ』!」

その瞬間、朝比奈はハンカチを引っ込めて顔を赤らめて横を向いてしまう。そんな朝比奈から大量のハートが飛び出して降り注ぐ。

……ていうか何この状況、どうすればいいの?なんか朝比奈の顔、真っ赤になってるし。こういうときって俺がフォローすればいいの?いや、そんなことして朝比奈が全然気にしてなかったら俺恥ずかしいだけだし。でも相手は朝比奈だぞ?絶対男の人にこんなことしたことないだろ。やっぱり何か一言言うべきか。

八幡「あ、」

うらら「ありがとうここみ!SPも回復できたし早く大型イロウス倒すわよ!」

俺が口を開く前に、蓮見が朝比奈に声をかけた。

心美「う、うん!そうだねうららちゃん」

蓮見の声掛けによって朝比奈も落ち着きを取り戻したらしい。むやみに俺が話しかけなくてよかった。

と思ったら蓮見が俺の腕をつかんでそのまま強引に引っ張ってきた。おかげで顔と顔がめっちゃ近くなって、蓮見の髪から朝比奈と同じシャンプーのいい香りがするっていうどうでもいい知識を身につけてしまった。蓮見はそんな俺にはおかまいなしに耳元で囁いてきた。

うらら「ここみに変な感情抱かないでよ」

八幡「んなわけないだろ。持たねぇよ」

うらら「でも赤くなってた」

八幡「あれは、まぁ、不可抗力だ」

うらら「ま、そうだね。今も赤くなってるし♪」

八幡「なっ」

恥ずかしくなって俺は蓮見の腕を強引に振りほどく。蓮見は残念そうに「あぁ~」とか言ってる。

八幡「おい、からかうなよ」

うらら「しょうがないでしょ。ここみには負けたくないんだもん……」

最後の言葉がよく聞こえなかった。何がしょうがないんだ。聞こえないんだよ。

八幡「なんだって?」

うらら「なんでもない!」

314: 2017/05/05(金) 17:41:55.56 ID:xi67hfcp0
本編3-15


うらら「『炎舞鳳凰翔』!」

朝比奈にSPを回復してもらった蓮見は再びイロウスに対しスキル攻撃を行う。そして数回スキルを使った後、

うらら「ここみ!回復お願い!」

心美「う、うん!『ブラッシュアプローチ』!」

うらら「よし!まだまだいくわよ!」

こうして蓮見がイロウスを攻撃し、朝比奈が蓮見のSPを回復するという役割分担が自然と出来上がった。俺はと言えば、スキル発動のために毎回毎回朝比奈と顔を近づけているだけである。さすがに何回もやれば慣れるだろうと思ったが全然そんなことはない。むしろ毎回ドキドキしすぎて心臓が過労氏しそうなレベル。

心美「な、何回もすみません先生」

八幡「い、いや、スキルのためだもんな。しょうがないしょうがない」

朝比奈もまたこの状況に慣れないのは俺と同じらしく、毎回動作がぎこちない。

うらら「もうここみもハチくんもいい加減慣れてよ!初心なカップルみたいな光景を見せられるうららの気持ちも考えて!」

何回目かの朝比奈のスキル発動ののち、蓮見がしびれを切らして文句を言い始めた。

八幡「いや、そう言われても慣れないものは慣れないし」

心美「ご、ごめんねうららちゃん」

うらら「まぁ百歩譲ってここみは普段男の人と関わりないからいいとして、ハチくんはなに?高校生でしょ?こういうことの一つや二つ経験あるでしょ?」

八幡「俺をなめるな蓮見。今まで俺の恋愛が成就したことなんて一度もない。それどころか失敗ばかりが積み重なっていき、結果が今の俺だ」

そう、誕生日にアニソンセレクトを送ったり、やたらメールをしてみたり、話しかけられただけで勘違いしたり。負けることに関しては俺最強。

心美「せ、先生も大変なんですね。わ、私は男の人に話しかけることなんてできないのですごいと思います」

うらら「こまっちの話だと高校で何かしらあってもいい感じだったのに。意外とそうでもないのね」

そんな俺の発言に2人は意外にも好意的な反応を示してくれた。

八幡「ま、そういうことだ。だから蓮見、俺たちがぎこちなくても許せ。どうしようもないことなんだ」

うらら「ならここみ!うららと役割変わって!」

八幡「は、お前何言ってんの」

うらら「だって、このままじゃいつまでたってもぎこちないままでしょ?ならうららがハチくんに色々教えてあ・げ・る」

八幡「いやいらないから。それにこれはイロウス倒すために仕方なくやってることなの。わかってる?」

心美「し、仕方なくですか……先生は私に近付かれるのが嫌ですか?」

八幡「別に好きとか嫌いとかの話じゃなくて。つか、そしたらイロウスには誰が攻撃するんだよ」

うらら「ここみがやればいいじゃない」

心美「でもうららちゃん、SP回復スキル持ってないよね?」

うらら「う、それはあれよ。ほら、気合でなんとか」

八幡「できるわけないだろ。てか話してる暇なんてないだろ。2人ともイロウスに集中しろ」

うらら、心美「はい……」

そうこうしてるとまた蓮見のSPが切れたため、朝比奈のスキルを使うときがきた。しかし朝比奈がなかなか近づいてこない。

八幡「あの、朝比奈?早くしてくれない?」

心美「あ、あの、私も早くしたいんですけど、先生も私と同じで経験がないってことがわかって余計意識しちゃって」

なんでそんなに顔赤いんだよ。俺まで余計に意識しちゃうだろうが。

その時、朝比奈の背後から大型イロウスが現れ、朝比奈の足元に黒い魔方陣が現れた。だが朝比奈はゆっくりこっちに歩いたままそれらに気づかない。

八幡「朝比奈!危ない!」

心美「え?」

俺は走り出しながらそう叫んだ。朝比奈はようやくイロウスや魔方陣に気づいたが、もう回避行動をとるには遅すぎる。すでに足元の魔方陣は光り出している。

心美「あ、あぁ」

朝比奈は恐怖のあまりその場から動けないでいる。だが俺も助けるには走っても位置的に間に合わない。

315: 2017/05/08(月) 18:45:27.16 ID:WuUQBt0z0
本編3-16



うらら「ここみ!」

その瞬間、蓮見が目にも止まらないスピードで朝比奈向かって飛び込み、魔法陣の中から身を呈して救い出した。

八幡「大丈夫か⁉︎」

俺は参道に倒れたまま動かない2人の元へ駆け寄る。

うらら「うん、うららは大丈夫」

そう言って蓮見は立ち上がろうとする。だが朝比奈はまだ起き上がれず何か呟いている。

心美「私、私……」

うらら「ここみ、起きなさいよ」

心美「……」

うらら「ここみ!」

そう言って蓮見は強引に朝比奈の顔を持ち上げて強烈な平手打ちを食らわした。

うらら「ここみ、あんた何してんのよ」

心美「うららちゃん……」

うらら「うららたちのやるべことは何?早くイロウスを倒してこの神社を守ることじゃないの?それをいつまでたってもスキルにもたついて、さらには動けなくなる?いい加減にしてよ!」

八幡「おい蓮見」

うらら「ハチくんは黙ってて」

八幡「はい……」

怖っ、蓮見怖。こんな人を突き放すような声も出すのかこいつ。

うらら「ここみはうららのライバルなんだよ?それなのにこんなみっともない姿晒さないでよ!」

そう言って蓮見は朝比奈をそっと抱き寄せる。

うらら「だから、一緒に頑張ろ。ここみ」

心美「うん、うん。ごめんね、うららちゃん」

涙声になりながら朝比奈も蓮見と抱き合う。この光景を近くで見るのはかなり罪悪感というか、見てはいけないものを見てる気がしてドキドキする。が、今はそんな風に眺めていられる場合じゃない。

八幡「あの、お2人さん。けっこうヤバイ状況なんだが」

そう、この一連の流れの最中に周りを小型イロウスに囲まれてしまった。ガイコツが四方八方で浮いてるのホント不気味。

うらら「安心してハチくん。うららたちにかかれば朝飯前よ!」

心美「そ、それは言いすぎだようららちゃん。でも、絶対倒します。私たちで」

2人の宣言を聞いて、絶望的な状況なのにこいつらならやってくれるっていう確信めいた何かを感じた。

八幡「もう大丈夫なんだな」

うらら「もちろん!じゃあここみ。うららのSP回復お願い」

心美「うん」

俺を見上げる朝比奈の目は決意を固めた目をしていた。……そんな目されたらこっちも覚悟決めるしかねぇじゃねぇか。

心美「いきますね先生。『ブラッシュアプローチ』!」

これまでよりもハートが多く降り注いでいる気がするのは気のせいですかね。そんなハートが周りの小型イロウスを攻撃する。

心美「うららちゃん!」

うらら「わかってるわよ!『エレクトロサポート』!」

蓮見の放つ大量の電撃が小型イロウスをまとめて撃破していく。気づけば周囲のイロウスはほとんど姿を消していた。

うらら「一気にいくわよここみ!ついてきなさい!」

心美「うん!」

316: 2017/05/12(金) 12:59:35.82 ID:OlOvuVhO0
本編3-17


それからの2人の勢いは凄まじかった。次々に湧き出て来るイロウスを無双シリーズ並に蹴散らしていく。そんな光景を俺はただ眺めることしかできなかった。
いや、たまには敵の位置教えたりはしたよ?でも俺何もできないし、完全にいらない子状態である。

だがしばらく攻撃してもなかなか大型イロウスを倒すところまではいかない。ダメージを与えてはいるものの決定打に欠ける感じだ。

うらら「はぁはぁ、しぶといわねあの大型イロウス」

心美「はぁはぁ、体力が多いんでしょうか」

八幡「体力もあるだろうがおそらく防御力も高いんだろう。だからこっちも攻撃力を上げて一気に大ダメージを与えないと厳しいと思う」

うらら「でもうららは攻撃力を上げてるわよ!」

八幡「あぁ、だが朝比奈は主に補助に回ってるからそうじゃないだろ」

心美「でも補助もしないと長期戦には耐えられません」

八幡「ここまでの朝比奈の働きは間違ってない。確かに長期戦において回復スキルは必須だ。だが、どこかで波状攻撃をしかけないとジリ貧になる」

ドラクエのボス戦とかな。まずはスクルトとかフバーハ。ダメージくらったらベホマ。で、その合間にバイキルドからのはやぶさ斬り。

うらら「ということはうららとここみが2人で大型イロウスにスキルを直撃させないといけないわけね」

心美「で、でももし失敗したらピンチですよね?」

うらら「今はそんなこと考えないの!絶対成功させるの!」

八幡「蓮見の言う通り、これは絶対成功させないといけない」

心美「先生……」

八幡「だが根性だけでなんとかなる話でもない。成功率を上げるためにできることはしないとな」

うらら「じゃあどうするの?」

八幡「流れの確認だ。まず2人の攻撃力を高めるスキルを朝比奈が使う。そののちすぐに蓮見が与えられるだけダメージを与える。そしてとどめはもう一度朝比奈だ。この流れで大事なのは攻撃力が上がっているうちにいかにダメージを与え続けられるかだ。大型イロウスに守る隙を作らせるな」

心美「素早く攻撃ってことですか」

八幡「あぁ。小型イロウスに防御されたり、大型イロウスに地中に潜られたりするとどうしても攻撃が滞るだろ。せっかくの攻撃が散発的なものになりかねない」

うらら「ということは心美が攻撃力を上げるスキルを使ってからは時間勝負ってわけね」

八幡「そういうことだな。だから2人にひとつ約束してほしいことがある」

心美「なんですか?」

八幡「この作戦中は大型イロウスにダメージを与えること。これだけに集中してほしい」

うらら「?そんなの当たり前じゃない」

八幡「違う。極論を言えばどっちかが危険な状態になっても攻撃をやめるな」

俺の言葉に朝比奈が顔を引きつらせた。

心美「つまりうららちゃんを助けるなってことですか?」

八幡「あぁ。攻撃力を上げられる時間は限られている。その間は大型イロウスだけを見ていろ。さらに言えば自分が小型イロウスから攻撃を受けても気にするな。攻撃を続けろ」

うらら「……そうね。そのくらいの覚悟は必要ね」

心美「覚悟、ですか」

……ちょっと言い過ぎたかな。緊張でガチガチになられても困るしフォローしとくか。

八幡「まぁそれくらいの心持ちでいてくれって話だからあんまり気負わないでくれ」

心美「わ、わかりました」

うらら「やってやるわ!」

2人は力強く返答した。

八幡「そしたら攻撃開始のタイミングを合わせて作戦開始だ」

うらら、心美「はい!」

319: 2017/05/16(火) 00:33:52.04 ID:2gmheKoN0
本編3-18


心美「じゃあいくようららちゃん!『ウォーミングカイザー』!」

朝比奈がスキルを唱えると下から温泉が湧き出して2人を包み込む。蓮見はその状態のまま大型イロウスのほうへ突っ込んでいく。

うらら「はぁぁぁ!『ラバブル・フィースト』!」

大きな誕生日ケーキが突然現れ、それに触れた小型イロウスが次々に消滅していく。小型イロウスが消えたことで大型イロウスに攻撃を与える隙が生まれた。

八幡「よし、朝比奈!いけるぞ!」

心美「は、はい!」

そうして朝比奈は杖を大型イロウスに向けた。

心美「『ハニカミ桃色パルス』!」

にわかに閃光がほとばしってあたりに爆発が起こる。

うらら「やったわ!案外ちょろいわね」

八幡「あ、バカ。お前それ氏亡フラグ」

俺がツッコミを入れた瞬間に爆煙の中から大型イロウスが現れた。見るからに荒れ狂っている。

うらら「ちょ、あの爆発でまだ消滅しないの!?」

八幡「やべぇ……」

うらら「ちょっと!どうすんの!」

八幡「お前があんなこと言わなければよかったんだよ」

うらら「うららのせいって言いたいの?」

八幡「いや、別にそこまで言うつもりはないけど」

心美「先生、うららちゃん。私に考えがあります」

俺とは蓮見があほな言い争いをしていると朝比奈が声をかけてきた。

八幡「なんだ」

心美「あの大型イロウスは多分体力がほぼないはずです。あと一押しすれば倒せます。だから最後の勝負を仕掛けたいんです」

八幡「具体的にはどうすんだ」

心美「もう私の攻撃力はもとに戻っていますが、うららちゃんは『ラバブル・フィースト』の効果でまだ攻撃力が上がってるはずです。うららちゃんが攻撃できれば倒せると思います」

うらら「でもあんなに暴れてるあいつにどう近づけって言うのよ」

心美「……私が攻撃を引き付けるから背後からうららちゃんが攻撃して」

うらら「待ってここみ。それは危険すぎる!」

心美「でも先生とさっき約束したよね。どっちかが危ない状況になっても攻撃を止めるなって」

うらら「そ、それはそうだけど」

確かに蓮見の言う通りこの作戦は危険すぎる。だが時間がないのも確かだし、なにより朝比奈がこれまでにないくらい凛とした表情をしている。なら俺が確認することは一つだけだ

八幡「朝比奈。大丈夫なんだな」

心美「はい。大丈夫です」

八幡「だとよ蓮見。これはもうやるしかねえだろ」

うらら「うぅ、ハチくんもここみもそこまで言うならやるわよ!」

心美「がんばろうね、うららちゃん」

うらら「当たり前よ。それとここみ」

心美「なに?」

うらら「絶対うららがあいつ倒すから。それまで倒れないでよ。絶対」

朝比奈は一瞬はっとした顔をしたがすぐにっこり笑って答える

心美「うん」

うらら「じゃあうららとここみの最終ステージ開演よ!」

320: 2017/05/17(水) 23:30:45.67 ID:YYJy4cRe0
本編3-19


心美「いやぁぁ!」

朝比奈は杖をかざして大型イロウス相手に正面から突っ込んだ。

だが、動きを止められるまでには至らない。

八幡「くそ、だめか」

朝比奈は依然大型イロウスの攻撃を引き付けている。と、その時朝比奈が杖を落とした。

八幡「何する気だあいつ」

大型イロウスはそれを見てすかさず腕を振り上げる攻撃を仕掛けてくる。それが朝比奈にクリーンヒットする。

心美「きゃぁ!」

八幡「朝比奈!」

だが朝比奈は倒れなかった。それどころか大型イロウスの腕を捕まえている。

心美「うららちゃん!今だよ!」

だが小型イロウスの群れが蓮見の行く手を阻む。

うらら「ここみ……くっ、この、こんなときに邪魔だよ!」

……こうなったら一か八か、こうするしかないか。

八幡「どけ蓮見。んで、俺の後から突っ込め」

うらら「え、そんなことできるわけ、」

八幡「俺にはこれくらいしかできないんだからやるしかねぇんだよ!」

困惑する蓮見をよそに俺は小型イロウスに向かって体ごと飛び込んだ。骨ばかりな見た目通り、さほど重くはない小型イロウスは俺ののしかかりで何体か倒れこむ。

八幡「ほら!いけ!」

蓮見は一瞬驚いた顔をしたが、すぐ俺が作った隙間を飛び越えて朝比奈の所へ向かう。

うらら「ここみ!」

蓮見は魔法弾を放つが、攻撃力がもとに戻っているのか大型イロウスにダメージが通らない。

うらら「あとちょっと、あとちょっとなのに」

なにか使えるものはないか。今すぐダメージ量を増やせるもの……そうだ。

八幡「蓮見!朝比奈の杖も使え!」

心美「うららちゃん!私の杖も使って!」

俺と朝比奈はほぼ同時に叫んだ。

うらら「わかった!使わしてもらうね」

蓮見は落ちていた朝比奈の杖を拾い大型イロウスに向き直る。にわかに両方の杖の先が光り出してきた。

うらら「ここみもこまっちも参拝客も危険にさらしたことは許さない!はぁ!」

そう言って蓮見は魔法弾を連発し、大型イロウスを見事消滅させた。

うらら「ここみ!大丈夫?」

心美「うん、大丈夫。ありがとうららちゃん」

うらら「それはうららのセリフよ。ありがと、ここみ」

倒れこむ朝比奈を優しく蓮見が抱きかかえる。美しい光景だ。べ、別に、俺も体張ったのになんも言われてないなぁとか、それどころか最後の蓮見の発言の中に俺が登場しなかったなぁなんて全然気にしてないんだからね!

八幡「お疲れさん」

心美「先生。ほんとうにありがとうございました」

八幡「ちげぇよ。お前らが頑張った結果だ」

うらら「そうだよね~。ハチくんが今日やったことと言えば、列の整理とここみにドキッとしたのと小型イロウスに倒れこんだくらいだもんね」

八幡「うっせ」

まぁ蓮見の言うことに間違いはないので反論はしない。ひとまずこれでもうこの神社も大丈夫だろ。小町に連絡して帰るとするか。

325: 2017/05/19(金) 17:32:11.52 ID:+JmIImL60
本編3-20


神社での戦いの数日後。朝比奈のもとには雑誌やら新聞やらのインタビューが何回かあったらしい。読む限り、完璧な答えではないが最初の雑誌のインタビューよりかは数段まともになった印象を受ける。

星守クラスでも朝比奈のインタビュー記事が出回っていてここ数日の話題の中心だ。

朝のHR前、そんなクラスの光景をぼーっと眺めてるとなぜかドヤ顔の蓮見が話しかけてきた。

うらら「ふふん、やっぱりうららたちの『ここみプロデュース大作戦』のおかげで、ここみのインタビューも少しはマシになったみたいね」

八幡「そういやお前らそのなんとか作戦言いながら何やってたの」

うらら「うららは徹底的にウケのいい答えを教えててわ。特によく聞かれそうな質問にはテンプレを作って暗記するくらいにね。で、こまっちがひたすらここみのいいところを列挙してくって感じ」

八幡「なにそれ、なんかの拷問?」

うらら「しょうがないじゃない。ここみってば全然自分に自信がないんだもん。こっちからどんどん魅力を言ってあげないとダメなの」

八幡「へぇ。そういえば朝比奈はどうした?」

うらら「ここみなら職員室に呼ばれてたわ。なんか悪いことでもしたのかしら」

八幡「お前じゃあるまいし、それはないだろ」

うらら「うららのことなんだと思ってるの」

蓮見はジト目で俺を睨んでくる。

八幡「だって昨日も宿題忘れて八雲先生に呼び出し食らってたろ」

うらら「あ、あれは、そうよ!ニ◯ニ◯動画ですCOLO GIRLSの一挙放送が深夜にあったからしょうがないの!」

八幡「完全に自業自得じゃねぇか」

うらら「そういうハチくんこそ授業中に寝ててよく八雲先生に怒られてるじゃん!」

八幡「仕方ないだろ、眠いんだから」

うらら「開き直った!?」

俺と蓮見がくだらないことを言い合ってると教室のドアが開いて朝比奈が戻って来た。その表情はいつにもまして不安そうだ。

八幡「どうした朝比奈」

心美「じ、じつは明日インタビューが来るらしいんです」

うらら「何よ、インタビューくらい別に今さら不安になることないじゃない」

心美「それが、テレビのインタビューなんだって……」

うらら「テレビ!?」

八幡「マジか」

心美「は、はい。だからどうしようかすごく不安で」

確かに雑誌とテレビじゃ話が違うな。顔とか話し方とかも全部映像になって伝わるぶん大変そうだ。

すると蓮見が何か思いついたように不敵な笑みを浮かべた。

うらら「これは『ここみプロデュース大作戦』臨時会議が必要ね」

そう言うと蓮見は携帯を取り出して誰かにメールを送った。するとすぐ俺の携帯がメールの着信を告げた。開いてみると小町からだった。

小町『こまちも今日うららちゃんたちと会うことにしたから!お兄ちゃんも来てよ。絶対帰っちゃだめだからね』

……こうやって俺の退路をすぐ断つあたりまじ蓮見さん策士。

うらら「こまっちも来れるっていうし、放課後この前のカフェに行くわよ!」

心美「うん!ありがとううららちゃん!」

朝比奈もヤル気だ。多分またあのカフェ行けるのが楽しみなんだろ。ま、あそこのケーキ割と美味しかったしそう思う気持ちはわかる。俺の財布の中身が心配になるが。

心美「先生も、あ、ありがとうございます」

朝比奈がやわらかい笑顔で俺にお礼を言ってきた。

……そうやって笑顔で接してくるあたりまじ朝比奈さん策士。違うな。俺がチョロイだけでした。

326: 2017/05/19(金) 17:35:37.97 ID:+JmIImL60
以上で本編第3章終了です。やっと中学生組が終わりました。次回からは高校生組の話になっていきます。

329: 2017/05/20(土) 17:05:35.48 ID:MYMlAbfc0
本編4-1


ある平日の朝。俺はいつもの通りベッドの誘惑をなんとか振り払いリビングに朝食を取りに行くと、いつもはこの時間にはいるはずのない母親がコーヒーを啜っていた。母親は俺がリビングに入っていくと一瞬「誰だこいつ」って目で俺を凝視してきやがった。おい、息子の顔忘れるなよ。仮にも母親だろ。

八幡の母「あらあんただったの、意外と早いのね」

八幡「……この時間に起きないと間に合わないんだよ。つか母ちゃんこそ今日遅くね。仕事は?」

八幡の母「今日は少し遅い出勤なの。ま、それでも世間の社会人よりかは早いんだけど」

母親の目の下に刻まれた隈がさらに深くなるくらい暗い発言だった。ホント社畜って人間を破壊していく。将来は働くお嫁さんをきちんといたわってあげよう。

八幡の母「そういえば、あんたしばらく見ないうちに少し変わったわね」

八幡「え、何突然」

嘘。母ちゃん、いつも小町の事しか見てないと思ってたら俺のこともきちんと見ててくれたの?八幡感激。

八幡の母「なんか前より丸くなった気がするわ。太った?」

衝撃の発言だった。お、俺が、太った?まままままさか。

八幡「待て母ちゃん。俺が太った?そんな馬鹿な話があってたまるか」

小町「うーん、言われてみると確かにお兄ちゃん少し太ったかも」

いつの間に起きてきたのか小町まで会話に参加してくる。

八幡の母「小町もそう思う?やっぱりね。最近あんたが始めたなんとかって学校との交流?だかなんだか知らないけど、それが原因なんじゃないの」

八幡「2人とも勝手な言いがかりはよしてくれ。俺だってまだ高校2年生の成長期だぞ?体が大きくなることだって十分あり得る」

小町「いきなり横に大きくなるのを成長期だとは言わないよお兄ちゃん」

八幡の母「このままいくとあんた、ただの目の腐ったデブになって一生を終えることになるわよ」

俺は頭の中で材木座の目が腐った姿を思い浮かべてみた。うん、ないな。もはや人間とは呼べない。どこかの絵巻物に出てくる化け物だ。

八幡「そ、それは嫌だ」

八幡の母「ならなんとかしな。そろそろ私出かけるから。2人とも車に気を付けて学校行くんだよ」

小町「はーい!いってらっしゃい!」

八幡「いってらっしゃい……」

母親がいなくなり、兄妹2人で朝食を食べ始めると先ほどまで元気だった小町が少し心配そうな声色で尋ねてくる。

小町「でもお兄ちゃん、ほんとにヤバいかもよ?家族でもわかるくらい変わったなら他の人なんてとっくに気づいてるよ」

八幡「でも別に神樹ヶ峰では何も言われてないぞ」

小町「そりゃ面と向かって『太ったね』なんて言う人がいるわけないでしょ。で、なんか原因はないの?」

ついさっきお前と母親に面と向かってそう言われたばっかりなんだが?と心の中でツッコミを入れつつ原因を少し考えてみる。

八幡「言われてみれば神樹ヶ峰に通うようになって自転車に乗ることもなくなったし、学校で体育もやってないから運動する時間は減ったな」

小町「それだよお兄ちゃん。このまま運動しないとお兄ちゃんの友達の中二病の人みたいになっちゃうよ?そしたら小町口ききたくないよ」

なぜか材木座がとばっちりを受けた。だが兄妹だと考えることも似てくるらしい。ごめんな材木座。

八幡「それはお兄ちゃん困る。あと材木座は俺の友達ではない」

小町「まだそれ言い張るんだ……とにかく今のままだとダメだよお兄ちゃん。なんとかしてね」

八幡「何とかって言われても」

小町「だから運動すればいいじゃん。休日に」

八幡「小町。休日は休む日だ。なんでわざわざ疲れることをせにゃいかんのだ」

小町「そんなこと言ってるから太るんだよ。あ、なら学校で汗を流しなよ。いっそのこと星守クラスの子と一緒に運動したら?」

そういえば若いときに運動をしないといけないとか、一緒に運動しましょうとか、前に誰かに言われたような気がする。誰だったかな。ま、いいや。

八幡「そういうリア充イベントは俺には絶対起こらない。断言してもいい」

小町「えー」

八幡「えー、じゃねぇ。とにかくこの話は終わり。俺もそろそろ行かなくちゃ遅刻しちまう。じゃな小町。いってくる」

小町からも話題からも逃げるように俺は家を出た。

330: 2017/05/22(月) 18:43:53.78 ID:FMP4dTeL0
本編4-2

その日の昼休み、教室でぼーっとしていると1枚の写真が足元に落ちているのに気づいた。拾って見てみると俺が神樹ヶ峰に来た日のチャーハンパーティの時に撮った写真だ。

みき「あ、先生。それ私のです!」

声のする方に顔を上げるといつの間にか星月が俺の目の前に立っている。手を差し出してるということはどうやら写真を返せということらしい。

八幡「ん、ほれ」

みき「ありがとうございます!」

星月は俺から写真を受け取るとしばらくじっと写真を見て、また俺をじっと見る。

八幡「な、なんだよ」

みき「いえ、今の先生と写真の中の先生がなんか違うなって」

八幡「そ、そんなことないんじゃないか?」

今朝のこともあって返事がしどろもどろになってしまう。

みき「えぇー、そうですか?そうだ。遥香ちゃんと昴ちゃんにも見てもらいましょう!おーい!遥香ちゃん!昴ちゃん!」

遥香「どうしたのみき」

みき「これ先生が星守クラスに来た日の写真なんだけど、なんか今と違くない?」

そう言って星月は2人に写真を見せる。2人は写真をじっと見て俺をじっと見てため息をつく。

昴「これは、先生……」

遥香「薄々そんな感じがしてたんですけど、やっぱり」

みき「2人もそう思う?」

みき、遥香、昴「先生。太りましたね」

3人ともが揃って俺の心にナイフを突き立てて来た。俺の周りには人を傷つけることしか言わない悪魔のような女性しかいないの?

八幡「今朝、母親と妹にも同じこと言われた……」

遥香「家族の方にも指摘されるなんて相当変化があった証拠じゃないですか」

みき「先生!今のままだと数年後、自分の過去を見られなくなりますよ!」

八幡「確かにどうにかしないといけないとは思うんだが」

昴「なら先生もアタシたちと一緒に特訓やりますか?実際に武器を使ったシミュレーションとかはムリですけど、それ以外のグランドでやる特訓なら一緒にできると思います」

絶対やりたくねぇ。何度かチラッと見たことはあるがみんなキツそうな顔してたし。なんとか言い訳をしてこの特訓からは逃れよう。

八幡「……いや、星守の特訓に一般人の俺が参加しちゃダメだろ?」

遥香「大丈夫ですよ。ただの体力増強のためのトレーニングですから」

八幡「てか俺が参加してもお前らに迷惑だろ?」

みき「そんなことないですよ!むしろ私たちの特訓を見てもらえればそれだけでヤル気が出ます!」

八幡「そもそも俺全然動けないんだけど?」

昴「先生のペースに合わせますから!」

遥香「そうやって言い訳を並べても無駄ですよ先生。さ、明日からはジャージを持ってきて放課後はグランドに集合ですよ」

八幡「いや、放課後には仕事が」

昴「私たちの特訓を見るのも立派な仕事ですよ!」

八幡「そうは言っても、」

みき「なら今から八雲先生と御剣先生に放課後特訓の許可をもらいに行きましょう!」

昴「みきナイスアイディア!」

遥香「そうね、私たちで勝手に決める訳にもいかないものね」

3人は意見がまとまると職員室に向かうために教室を出ようとする。

みき「先生。何してるんですか?行きますよ?」

席を立たない俺を星月が催促してくる。はぁ、俺の意志は無視ですかそうですか。だったらなんとか八雲先生と御剣先生はこっち側に引き込もう。てかそれしかない。

331: 2017/05/23(火) 23:41:15.35 ID:/cPjTZY60
本編4-2


星月を先頭に俺たち4人は職員室に入っていく。

みき「失礼しまーす!あ、八雲先生!」

樹「あらみんな揃ってどうしたの?」

昴「実は先生にお願いがあるんです」

樹「なにかしら?」

遥香「明日からの放課後特訓を比企谷先生と一緒にこなしたいんですがいいでしょうか?」

樹「いいわよ」

何のためらいもなく八雲先生は放課後特訓を承認した。

八幡「ダメじゃないんですか?」

樹「むしろこっちからお願いしたいくらいだわ。一緒に特訓をすることであなたたちの『親密度』も上がるんだから」

八幡「親密度?」

どっかのギャルゲーみたいな言葉が飛び出してきて思わず聞き返してしまった。

樹「簡単に言えば仲良くなるってこと。辛いことを一緒に乗り越えれば関係性も一層深まるはずよ」

八幡「そんな簡単に人が仲良くなれるんだったら、世の中からは戦争なんてなくなってますよ」

樹「どうしてこんなに屁理屈ばかり言えるのかしら……とにかく比企谷くんの特訓参加は決まりです」

八幡「でも俺放課後にも仕事があるんですけど」

樹「その仕事も風蘭から押しつられる雑用でしょ?もともと比企谷くんは星守たちとの交流が目的でここに来てるんだから特訓を優先してもらって何も問題ないわ。風蘭には私から言っとくから安心して」

完全に退路を断たれてしまった。「そうねぇ。優先すべきは仕事よね。やっぱり特訓は無理だと思うわ。仕事があるもの」なんていう展開を予想してたのに、「仕事」というワードが一切仕事をしなかった。

樹「というか比企谷くんが特訓をやりたいって言いだしたんじゃないの?」

八幡「やめてくださいよ八雲先生。俺がそんなこと自分から言いだすわけないじゃないですか」

樹「そ、そんな目を腐らせながら自信たっぷりに言われても困るわ……」

みき「私たちが先生を特訓に誘ったんです!」

遥香「比企谷先生の体型改善のために」

八幡「おい、成海。お前もう少しましな言い方あるだろ?」

昴「と、とにかくアタシたちもせっかくだから比企谷先生と特訓したいなって思ったんです!」

樹「そう。でもどんな理由にしろ比企谷くんが特訓に協力してくれるっていうなら助かるわ。よろしくね」

八幡「……はい」

こうして俺たちは八雲先生から特訓の許可をもらい職員室を後にした。

みき「先生!これで明日から存分に特訓できますね」

昴「でもいきなりすごい特訓はできないよみき。先生だってついてこられないだろうし」

遥香「そうね。それに無理をすればケガにつながるわ。しっかりメニューを考えないと」

3人は俺の事なんていないかのように特訓の話に夢中だ。こうなったら適当にうやむやに済ませることにしよう。

八幡「なぁ。別に俺のことなんて気にしなくていいぞ?なんなら俺だけでやるからお前らはお前らで特訓頑張ってくれ」

遥香「ダメです。先生の特訓は私たちがきちんと管理します」

昴「トレーニングはしっかりやらないと効果出ないですよ!」

みき「それに私たちは先生と一緒に特訓したいんですよ?別々にやったら意味がないじゃないですか!」

星月の発言に成海と若葉も頷く。正直ここまでストレートに言われて断るほど俺は腐っちゃいない。もとはと言えば運動してこなかった自分が悪いわけだし、さっさともとの体型に戻して特訓を終わらせる方が生産的だろう。

八幡「……わかった。よろしく頼む」

みき、遥香、昴「任せてください!」

348: 2017/05/29(月) 17:24:06.40 ID:kC9v2x230
本編4-4


翌日の放課後。総武高校のダサい蛍光緑のジャージに身を包んだ俺は体操服の星月、成海、若葉とグラウンドにいた。

みき「先生!今日から頑張りましょうね!」

昴「まずはストレッチからです!」

遥香「運動不足の人がいきなり激しい運動をしてもケガをするだけですから」

八幡「 へいへい」

3人はいつものルーティーンになってるのか、特に声をかけあうこともなく開脚を始める。ただでさえ体操服で色々目のやり場に困るのに、目の前で開脚なんて見せられるとドキドキしてしまう。それにしても3人とも柔らかいな。胸までベターッと地面に付いている。

遥香「先生?ちゃんとやってますか?」

八幡「え、お、おう。当然だ」

みき「全然足開いてないじゃないですか!もしかして体固いんですか?」

八幡「まぁな……」

昴「な、なら、アタシが手伝ってあげます!」

そう言うと若葉は俺の後ろに回り背中を押してくる。

みき「先生。足が曲がっちゃってますよ。押さえてあげますね」

遥香「じゃあ私はみきとは反対の足を」

あっという間に女の子3人に体を押さえつけられてしまった。おかげで主に下半身があまりの痛さに悲鳴をあげている。相撲部屋の新入りへの稽古のような状態である。このままだと何か開けてはいけない扉が開いてしまう。

昴「じゃあこれで10秒頑張りましょう!いーち、にー、さーん」

みき「しー、ごー、ろーく」

遥香「しーち、はーち、きゅー」

みき、昴、遥香「じゅう!」

八幡「ぐはっ……」

なんとか10秒耐え抜き、3人は俺を解放する。

遥香「これから毎日お風呂上がりにストレッチしてくださいね」

みき「体が柔らかくなると色々いいことありますから」

昴「じゃあ次のストレッチいきましょう!」

八幡「ちょ、待っ」

俺の嘆きは聞き入れられず、その後しばらくの間徹底的に体を虐められてしまった。もう八幡お嫁にいけない!

遥香「ではそろそろ特訓に入りましょうか」

八幡「もう俺の中では今日の特訓終わってるんだけど」

昴「まだストレッチが終わっただけですよ……」

みき「ほら先生立ってください!」

星月に強引に起こされ、グラウンドのトラックに移動した。

八幡「で、ここで何するの」

遥香「ここではランニングをやります」

みき「じゃあ私と昴ちゃんがまず走って、その後に遥香ちゃんと先生って順番で!」

昴「今日も負けないからねみき!よーいスタート!」

掛け声に合わせて2人は50メートルほどの直線を駆け抜けていく。あれ?なんか2人とも全力じゃね?

八幡「なぁ成海。これってランニングじゃなくてダッシュっていうものじゃないの?」

遥香「……まぁそうとも言えますね。でも私たちはこれをランニングと習ったので」

八幡「お前、わかってて騙したろ」

遥香「ほら先生、昴があっちで手を振ってますよ。私たちも走りましょう。いきますよ?よーいスタート!」

成海は強引に話を打ち切って走り出した。だが、いくら運動不足だとはいえ、年下の女の子にダッシュで負けるのは情けない。ここは本気を出すしかない……!

349: 2017/06/01(木) 00:38:24.55 ID:xx58rS780
本編4-5


八幡「はぁっ、はぁっ、なんとか勝った……」

遥香「ふぅ。あと少しだったんですけど、次は負けませんよ」

昴「待ってよ遥香!次はアタシが走る!」

八幡「待て待て、今の俺の状態見たらムリだってわかるだろ?」

昴「これくらいでへばってたらダメですよ先生!」

みき「ゆっくりでもいいですから頑張りましょう!」

そうして3人に励まされつつ、なんとか10分ほど走り終えた。

みき「お疲れ様です、先生!ランニング終了です!」

遥香「頑張りましたね先生」

八幡「終わり?マジ?」

やっと終わった。正直自分の体の鈍り具合にかなりがっかりしてる。ここまで動けなくなってたのか。

昴「明日はもっと激しくいきますから覚悟してくださいね!」

八幡「いや、多分明日は筋肉痛で動けないと思うぞ」

遥香「そうならないために今からストレッチです」

八幡「え?」

みき「また私たちが手伝いますから先生はそこに座って足を広げてください!」

八幡「お、お手柔らかにお願いします……」

遥香「善処します」

ニコッと笑った成海は容赦なく俺の背中をぐいぐい押してくる。星月と若葉もそれに続けと言わんばかりに俺の足を力いっぱい押してくる。運動した後だから余計痛く感じる。

八幡「あぁぁ」

夕焼けで赤く染まった空に俺の叫び声が空しく響いた。

-----------------------------------------

特訓でのダメージが蓄積された重い体を引きずって、なんとか家までたどり着いた。リビングに入ると小町が参考書と格闘していた。

八幡「ただいま」

小町「あ、お兄ちゃんおかえり!ってどうしたの?なんかすごく疲れてない?」

八幡「あぁ。もうお兄ちゃん、燃え尽きちゃったよ」

小町「何があったの?あ、もしかして星守クラスの人と運動したの?」

流石我が妹。見事な洞察力である。

八幡「まぁ、そんなとこだな。俺は嫌だって言ったんだがしつこく誘われたから仕方なくな」

小町「そう言いながら一緒に頑張るお兄ちゃん嫌いじゃないよ?あ、今の小町的にポイント高い!」

八幡「はいはい高い高い」

小町「むぅ、適当だな。ところでお兄ちゃん、その星守の人たちとは仲良くなれた?」

八幡「あ?別になってねぇよ。そもそもお互いに体を鍛えることが目的だし」

小町「はぁ、これだからごみいちゃんは。いい?年ごろの女の子がそんな目的だけでわざわざ男の人、ましてや目の腐ってる捻デレお兄ちゃんなんかを誘ったりしないよ?」

八幡「小町ちゃん?さりげなくお兄ちゃんを卑下するのはやめてね?」

小町「とにかく!これはチャンスだよお兄ちゃん!これをきっかけに仲良くなること!いい?」

八幡「いきなりそんなこと言われても困るんだが」

小町「でも交流が終わったら気軽に会うことはできなくなっちゃうよ?今のうちに仲良くなっておかないともったいないよ!小町はお兄ちゃんを心配して言ってるんだからね?あ、今の小町的にポイント高い!」

八幡「はいはい。もう俺疲れたから自分の部屋行くわ」

思わずため息が出てしまったが、小町の最後の発言に少し引っ掛かりを覚えた。本来、俺とあいつらは会うはずのない関係だ。なのに交流とか訳のわからない理屈で今はこうして関わりを持っている。

でも、だからって仲良くすることが正しいとは言えない。いつかくる終わりを意識して関係を深めようとするのを果たして仲良くなると言えるのだろうか。そんな関係は得てして時間が経てば消滅していく空虚なものでしかない。これこそまさに俺が嫌ってきた青春そのものじゃないか。だがいつの間にか俺は今の状況を甘受してしてしまっている。当たり前だと思ってしまっている。……俺は、このまま彼女たちと接していいのだろうか。

357: 2017/06/06(火) 17:04:22.49 ID:CL1oron80
本編4-6


特訓が始まってから数日経った。未だ俺の中で彼女たちへの接し方の答えは見つかっていない。

だが相変わらず交流は続き、放課後特訓もだんだんその強度を増してきて、ランニングの他に素振りとダンスをこなした。

そして今日。本来休日であるはずなのに当然のごとく3人に呼び出された。断ることもできず、着替えを済ませグラウンドに向かうと、既に3人が固まって喋っていた。成海がいち早く俺に気づき手を振ってくる。

遥香「先生!こっちですよ」

八幡「お前ら早くね?」

昴「アタシたち、先生と特訓するのが待ちきれないんですよ!」

落ち着け俺。こんなのいつも言われてるだろ。いつも通り、いつも通りの反応だ。

八幡「……そうか」

みき「……」

なぜか星月が黙って俺のことをじっと見つめている。

八幡「なんだよ」

みき「え?いえ、何でもないです!」

昴「じゃ、じゃあ早速始めますか!」

遥香「そうね、7時間もやるわけだし」

八幡「は?何時間だって?」

聞き間違いであることを願って若葉に問いかけるが、無慈悲な笑顔で一蹴される。

昴「7時間です!」

八幡「そんなに長い時間跳ばなきゃならないのか?」

遥香「そうしないと特訓になりませんから」

特訓と言うより最早拷問だった。ここだけ昭和なの?今どきスポ根は流行らないと思うよ?

なども心の中で文句を垂れてもどうしようもないので、俺は落ちている縄跳びを拾う。その光景を見て3人は驚いた表情を見せる。

八幡「なに」

遥香「いえ、先生が自分から縄跳びを拾ったのが意外だったので」

八幡「そうか?」

昴「いつもよくわからない理屈をこねてサボろうとするじゃないですか」

八幡「人をサボリ魔みたいに言うのやめろ。案外俺は真面目なんだぞ?宿題は自分でやるし、仕事なら嫌なことでもこなすし、小6レベルなら家事全般できる。もはや俺の人間力はエベレスト並に高い領域にあるわけだ。だから逆説的に、俺に人が寄り付かないまである。孤高な存在ゆえにな」

俺の力説に3人は素で困惑した表情をしている。

遥香「いつも以上に何を言っているかわからないです、先生……」

昴「アタシも……で、でも先生にやる気が出てきてよかったね、みき」

みき「うん。そうだね……」

そう答える星月の声は幾分か小さい。朝に変なものでも食ったか?

遥香「みき?どうしたの?」

みき「なんでもないよ。さ、今日も特訓頑張ろう!おー!」

遥香、昴「お、おー」

星月の気合につられ、2人もぎこちなく腕を上に伸ばした。

みき「ほら先生も。おー!」

八幡「……おー」

……なにこのグダグダな雰囲気。ま、いつも通りと言われればいつも通りか。じゃあ何も問題ないな。何も問題ない。

358: 2017/06/09(金) 18:41:01.61 ID:C9cDcFgo0
本編4-7


八幡「はぁ、はぁ」

一体、何時間こうして俺はなわとびを跳んでんのかなぁ。かよちんでもこんなに跳ばないっての。

昴「ほら見て遥香!三重跳び!」

遥香「さすが昴ね。私もはやぶさ跳んじゃおうかしら」

右にはいつもより若干テンションが高めな若葉と成海。多分ちょっと調子が良いんだろう。

みき「ふぅ、ふぅ」

左にはいつもより若干テンションが低めな星月。多分ちょっと調子が悪いんだろう。

みき「いたっ」

俺に見られてるのを気にしたのか星月は縄につまづいてしまう。他の2人もそれに気付いて縄を回す手を止める。

昴「休憩にする?みき?」

遥香「そろそろお昼ご飯の時間だしね。お腹減ったわ」

昴「遥香はいつもでしょ?」

遥香「そんなこと、ないわよ」

昴「目そらしながら言ったってバレバレだよ〜」

みき「あはは……うん。お昼にしようか。実は私、今朝みんなの分のお弁当作ってきたんだ」

刹那、若葉の顔から血の気が引いた。元凶は今でもなく、星月からの遠慮がちな、でもはっきり聞こえた「お弁当」の単語。

昴「で、でもアタシ自分の分のお弁当持ってきてるんだよなぁ……」

八幡「お、俺も妹が作ってくれた愛兄弁当が」

遥香「私みきの料理大好きだから是非食べたいわ」

成海ぃぃぃ、余計なことを言うなぁぁぁ。巻き込まれる俺らのことも考えてください、お願いします。

みき「じゃ、じゃあはい」

星月が取り出した弁当箱の中に入ってたのは、

八幡「サンドイッチ?」

そう。まぎれもなくサンドイッチだった。星月の料理がこうやって形になってるのを見るのはほぼ初めてだ。まさに奇跡。いつもなら得体の知れない物体Xとかになるはずなのに。俺と同じことを思ってるのか、横で若葉もびっくりしている。

みき「は、はい。全然うまくできなかったんですけど、良かったらどうぞ」

昴「じゃ、じゃあ1つもらおうかな」

八幡「俺も」

タマゴサンドであろうものを一口食べてみる。

八幡「すげぇ。普通のタマゴサンドだ」

昴「アタシのも普通のハムチーズサンドだよ」

見た目が壊れてないだけでも奇跡なのに味も壊れてなかった。ものすごく美味しいわけではないが、ザ・手作りって感じ。

遥香「いつものみき独特の味付けとは違う気がするけど、美味しいわよ」

みき「私の味付けになってない……」

昴「いや、でもこれはこれでいいと思うよ?ね、先生?」

八幡「あ、あぁ、そうだな。いつものよりも王道な手作り料理って感じがするな」

すかさず俺と若葉はフォローを入れた。ここで星月に勘違いされても困る。むしろこのままの方向性で料理のスキルアップを図ってもらいたいところだ。何があったかは知らんが、今までとは比べ物にならないほど改善されてるんだから、これに乗らない手はない。

みき「そうですか……」

そう言って星月はまだサンドイッチが残ってる弁当箱を閉じる。

八幡「どうした?」

だが星月は俺の声に反応せず、俯きながら弁当箱を持つ手を震わしている。

360: 2017/06/11(日) 22:47:59.34 ID:oP2TgmX+0
本編4-8


みき「……です」

八幡「え?」

みき「みんな私に優しすぎるんです!」

八幡「何言ってんだお前?」

みき「だってそうじゃないですか。サンドイッチだって明らかに失敗作なのに美味しい美味しいって食べてくれて」

昴「いや、あれは実際いつもの数百倍は美味しかったんだけど……」

みき「でも遥香ちゃんは私の味付けになってないって言ってた」

遥香「確かにそうは言ったけど、今日のもとても美味しかったわよ?」

みき「またそうやって優しくする!私はみんなにもっと正直に言ってほしいの!」

八幡「落ち着け星月。どうしたんだ突然」

みき「そもそも先生が悪いんです!」

八幡「俺が何かしたか?」

みき「先生、ここ最近ずっと上の空でしたよね?私たちと特訓を始めたときから、毎日。私ずっとそれが気になってたんです」

八幡「……」

みき「ほら否定しないじゃないですか」

昴「みき。ちょっと冷静に」

みき「昴ちゃんも気づいてたよね?先生の私たちへの接し方がいつもと違うって」

昴「そ、それは……」

遥香「実は、私も気づいてた。でも、なんで先生がそうなっちゃったのかわからなかった。私たちに原因があるんじゃないかって色々考えたりしたけど」

八幡「そんなことはない。お前たちは、悪くない」

みき「じゃあどうしてですか?どうしていつもの先生じゃなくなっちゃったんですか?」

星月は目に涙を浮かべながら追及してくる。若葉も成海も目を赤くして俺の言葉を待っている。

だが、俺はその疑問に答えることはできない。悪いのは俺だ。彼女たちには一切非はない。ならば彼女たちに背負わなくていい重荷をわざわざ与える必要なんてない。俺自身の問題は、俺自身で解決するべきだ。

八幡「……なんもねぇよ。別にいつもと変わらねぇ」

みき「嘘です」

昴「先生、話してください」

遥香「私たち、なんでも協力しますから」

八幡「なんもねぇって言ってんだろ」

つい口調が荒くなってしまった。だが口は止まってくれない。

八幡「お前らいつから俺の親友になったんだ?曲がりなりにも俺は先生としてここに来てるんだぞ?それを考慮に入れてもそもそも俺が今、この場にいる必然性はないし、俺の話をお前らにする義務もない、だから」

違う、こんなことを言いたかったんじゃない。いつもならもっとうまく言いくるめることができた。いや、それ以前に考えもしないことで悩んで、八つ当たりしてしまっている。

八幡「俺に、かまうな」

俺の言葉に誰も反応しない。誰も言葉を発しないまま、重苦しい雰囲気が俺たちを包み込む。

みき「……わかりました。それが、先生の本心なんですね」

それからどのくらい時間が経ったのだろうか。星月は小さくそうつぶやくと弁当箱も持たず、グラウンドを後にする。

昴「みき!待ってよ!」

若葉は俺を見向きもせず、星月の後を走って追いかけ、

遥香「……最低です」

成海は強烈な一言を言い放って2人を追いかけていった。

グラウンドに残ってるのは放置されたなわとびと弁当箱、そして俺。はっ、そうだよ。こういう状況こそぼっちマイスターな俺にふさわしい。だけど最近は交流とか言って女子校に来られて、だいぶ調子に乗ってたらしい。まぁ、いい薬になったわ。これからはまたもとのぼっち生活が始まるわけだ。彼女たちとも接しなくてすむし、余計な悩みも生まれないし、これにて一件落着。

だけど俺はしばらくグラウンドから一歩も動くことができず、その場で立ちつくしていた。

361: 2017/06/13(火) 20:58:25.04 ID:I76UsQrX0
本編4-9


星月たちと喧嘩別れした次の日の月曜日、俺は校門で朝の挨拶兼、登校時の服装チェックなることをやらされていた。

なんで俺が月曜の朝からこんなことをしなくちゃならんのだ。そもそもこの学校に校則とかあったっけ?けっこうみんな自由な服装してる気がするんだが。

八幡「はぁ、だるい。帰りたい……」

「先生が朝からそんなこと言ってていいのかなぁ?」

声がした方を見るや否やバッグが腹に直撃した。

望「おっはよ!先生!」

ゆり「こら望!先生に何やってるんだ!」

くるみ「先生、大丈夫?」

お腹をさすりながら顔を上げると天野、火向井、常磐の3人が周りを囲んでいた。

八幡「……あぁ」

ゆり「先生どうされたんですか?顔色よくないですよ?」

八幡「別にいつも通りだろ」

くるみ「でも目つきがいつもより暗い感じがする」

望「ほんとだ。クマもひどいよ?保健室行く?」

八幡「なんもねえって」

みき「望先輩、ゆり先輩、くるみ先輩、おはようございます!」

俺が3人を振りほどこうとした時、星月がこっちに向かって歩いてきた。だがその目線は俺のことを捉えようとはしていない。

望「おはよー!てか見てよみき。先生のクマひどくない?」

八幡「だからこれくらい大丈夫だって」

ゆり「でも心配だから保健室に連れて行こうと思うんだが、手伝ってくれるか?」

星月は一瞬苦し気な表情をしたが、すぐに笑顔になって話し出した。

みき「……先生が大丈夫だって言うなら大丈夫なんじゃないですか?」

くるみ「みきさん?」

みき「別に先生も子どもじゃないですし、私たちがそこまで先生に踏み込んでいく必要もないと思いますよ?」

望、ゆり、くるみ「……」

星月に諭された3人は茫然としている。多分、星月は自分達の味方をしてくれると思ってたんだろう。その予想が見事に裏切られたわけだ。

みき「あ、そろそろ教室に行かないとチャイム鳴っちゃいますよ?」

ゆり「え、あ、あぁ。そうだな。遅刻をしていてはダメだな。なぁ望?」

望「う、うん、そうだよね。早く教室行かなきゃ。ね、くるみ?」

くるみ「え、えぇ」

みき「じゃあ4人で昇降口まで競走しましょう!よーいドン!」

そう言うと星月は俺に背を向けて走り出した。天野たちも少し遅れて星月を追っていった。

八幡「……なんだあいつ」

遥香「みき、大丈夫かしら」

背後の声に気づいて振り返ってみると、俺と目が合って不機嫌そうになる成海と、それを見て心配そうな若葉が立っていた。

遥香「ま、先生には関係のないことですよね」

そう冷たく言うと成海はさっさと昇降口へ向かってしまう。

昴「せ、先生、あの、その、」

八幡「チャイム、もうすぐ鳴るからお前も教室行け」

昴「……はい」

俺が強引に若葉の言葉を遮ると、若葉はそれ以上何も言わず昇降口に寂しげに歩いていった。

363: 2017/06/16(金) 22:38:06.47 ID:PvR04w9Y0
本編4-10


八幡「ただいま……」

小町「あれ?お兄ちゃん?帰ってくるの早すぎない?もしかして先生クビになった?」

八幡「そんなわけないだろ。今日は特訓なかったんだよ」

放課後にチラッとグラウンドを覗いてみたが、いつもはチャイムが鳴ると同時に飛び出していた3人の姿はなかった。ま、昨日、今朝の態度から考えても当たり前か。

小町「ふーん、そっか。じゃあせっかく早く帰ってきたんだから部屋の掃除しちゃってよね。お兄ちゃんの部屋、物が散乱してて掃除機かけられないから」

八幡「ん、了解」

俺の返事を聞いて小町が俺の顔を不思議そうに見つめてくる。

小町「……どうしたの、お兄ちゃん?」

八幡「なにが」

小町「いや、なんか口数少なくない?いつもなら今日あったことを小町が聞かなくてもベラベラ喋るじゃん。まぁ、9割方愚痴だけど」

八幡「……そうか?別になんもねぇよ。部屋片付けてくるわ」

これ以上小町と話していたら色々問いただされることになるだろう。俺はさっさと部屋に逃げ込むことにした。

八幡「うん、確かに汚いな」

ここ最近、部屋に入ったら即就寝、起きたら即着替えて出勤、の生活だったからか部屋の中はかなりごちゃごちゃしている。足の踏み場もない、ってわけではないが、毎日使うベッド以外はけっこうひどい状態だ。

八幡「はぁ」

仕方ないし片付けるか。むしろ何かしてたほうが気が紛れていいかもしれない。まずは散らばってる服を集めて、と。パンツと下着は下の棚で、ジャージは上の棚。

……そういえば、特訓始めてからジャージとか着るようになったな。神樹ヶ峰に行くようになってからずっとスーツで、体育もやらなかったからなぁ。特訓やってるときはけっこうキツかったけど、運動して汗かくのは案外悪くなかった……

っていきなり考えちゃいけないこと考えちゃってるじゃん。バカなのか俺は……。気を取り直して次は特に汚い机の上の整理をするか。いらないプリントは捨てて、文房具は引き出しにしまって。ん、なんだこの写真の束。……そうか、俺はハーミットパープルのスタンド能力に目覚めたのか。ならいったい何が念写されているんだろうか。戸塚の背中のあざとか写ってねぇかな。

八幡「あっ……」

間違いない。俺が神樹ヶ峰に来た日の写真だ。確か初めは八雲先生が撮影係をしてくれてたはずだが、途中からそんなことおかまいなしにみんな撮りまくってたっけ。そのせいで後日、何百枚っていう写真を渡されたときはびっくりしたわ。

八幡「……」

今の心持ちで見たらいけないことはわかってる。でも写真をめくる手が止まらない。俺がチャーハン食ってる姿を隠し撮りされた写真。中学生組に纏わりつかれて撮った写真。年上お姉さん方に絡まれて撮った写真。せっかくだからと同い年で撮った写真。なぜかものすごくはしゃいでた先生たちと撮った写真。

どの写真でもみんな心から楽しそうに笑っている。チャーハンパーティーの時はもれなくずっと誰かに絡まれていた気がする。この前に大型イロウス相手に星月と氏にそうになりながら戦ってたってのに。

……思えば最初に会った時からみんな俺に積極的に絡んできてくれたな。星月なんかは、特に。

そう思いながら写真をめくっていると星月、成海、若葉と4人で撮った写真が一番上に来た。3人は笑いながら中央の俺を見ていて、そんな俺はきまり悪そうにカメラを見ている。でも、こうして見ると、今までの俺史上で最もまともに写っていると言ってもいい写真だ。よくある修学旅行の後に貼り出される写真とか、まず俺が写ってるのが存在しているのかどうか怪しいレベル。なんとか1枚見つけても俺の目が腐りすぎてて、親に「あんたもう少しまともに写ってるのないの?」と言われる始末。

俺、なんでこんなにちゃんと写ってるんだろう。いや、変に写りたいとかではないが、いつもの俺ならもっと目を腐らせていてもおかしくないはず。

小町「お兄ちゃーん!お風呂湧いたよー!部屋片付けたら入っちゃってー!」

おそらくリビングからだろう、小町の声が響いた。

八幡「へーい」

ま、そこそこ綺麗になったし、ちゃちゃっと入ってきますか。

俺は写真の束を引き出しの奥にしまってから風呂場に移動し、服を脱いで洗濯機に放り込む。浴室に入り、椅子に座ってふと顔を上げると鏡に自分の顔が映っていた。

八幡「え……」

その顔は、これまで見た中でも指折りのひどい顔だった。特に目の腐り方が半端ない。今時ハリウッドでもここまでしないだろうってレベル。そして脳裏にはさっき見た写真の中の自分の顔がちらつく。

八幡「……っ」

俺は脳内イメージをかき消すように力ずくで頭を洗った。泡を落として顔を上げると、もう鏡は湯気で曇ってて俺の顔はそこには映っていない。

八幡「ふぅ……」

結局俺は一度も鏡の曇りをとることなく、いつもより幾分か早く浴室をでた。

365: 2017/06/18(日) 22:22:46.82 ID:RbosLVBr0
本編4-11


それからの数日は、朝のHRを必要最低限で終わらせ、授業を適当に受け、放課後は少し雑務をして終わり次第すぐに帰るという無味乾燥の日々を過ごしていた。神樹ヶ峰に来た当初から待ち望んでいた平穏な生活を俺は手に入れたはずなのに、心は晴れるどころか暗鬱さに拍車がかかっている。そのせいで、放課後に廊下を歩く足取りも重い。

風蘭「おう、比企谷」

前方からいつもの白衣を着た御剣先生に遭遇した。

八幡「なんですか御剣先生」

風蘭「今手空いてるか?空いてるよな?ちょっと資料整理手伝ってくれ」

八幡「いや、俺は……」

風蘭「いいから手伝え」

いつもの感じとは違う、鋭い目つきとはっきりとした口調だ。そんな風に言われたら怖いんですけど。怖くて断れないんですけど。

八幡「はい……」

風蘭「よーし、じゃあラボに行くぞ~」

御剣先生は俺の返事を受けると打って変わっていつもの顔つきになって、さっさとラボに歩いていった。

---------------------------------

ラボに着くと、パソコンの周りに無数の紙が山となって積まれていた。

風蘭「この資料をパソコンに打ち込んで欲しいんだ。アタシはこっちの山から片付けるから比企谷はそっちの山を頼む」

八幡「……俺の持分のほうが明らかに多くないですか?」

風蘭「何言ってるんだ。アタシはこれ以外にもやらなきゃいけない仕事が残ってるんだよ。手伝うだけありがたいと思え」

いつの間にか俺が御剣先生に手伝ってもらってることになってましたー。

八幡「はい……」

この人相手にはどんな文句、言い訳、その他論理も意味をなさない。黙って機械のように指示されたことをこなすことだけが残された道。だから俺は抵抗を止め、紙の山に手を付けた。

八幡「つかこれなんの資料ですか?」

風蘭「あぁ、そっちの山のは星守たちの訓練データだ。紙に書いてある数値をデスクトップの左上の方の「星守特訓」のExcelに打ち込んでくれ」

八幡「はぁ、でもなんでこんなに溜まってるんですか」

風蘭「いや、最近アンタがみきたちと特訓をやってただろ?だから今まで押しつけてた仕事もアタシがやらなくちゃいけなくて、後回しにしてたんだ。それが昨日樹にバレて、めちゃくちゃ怒られた……」

八幡「なるほど……」

まぁ、俺が手伝わなくなった故に溜まった仕事なら、俺がその後処理をやらされるのは筋が通ってるようにも見える。でも御剣先生は俺がこの学校に来る前はどうやって仕事をこなしていたのだろうか。多分、なんだかんだ八雲先生が手伝ったのだろう。この2人、すごい仲良いしな。

風蘭「ほら比企谷、手が止まってるぞ。早く打ち込め」

八幡「は、はい」

おっと、注意されてしまった。ぼちぼちやらないと解放してもらえなさそうだな。えーと、これは、星月たち高1の特訓データか。2週間前から打ち込まれていないから、そこまでデータを遡ってっと。ほう。やっぱり徐々にではあるがシミュレーションでのイロウス撃破数が伸びてるんだな。他の学年に比べても最近の伸び率には目を見張るものがある。

八幡「ん?」

おかしい。今週に入ってから3人の記録が伸びていない。それどころか急激に下がっている。見間違えかと思い、書類の数値と照らし合わせても、やっぱり数値に誤差はない。他の生徒の成績も、今週に入って伸び悩んでいる人がほとんどで、何人かはほんの少し記録を下げているのもあった。

八幡「これって……」

風蘭「気づいたか?」

いつの間にか御剣先生が俺の左真横に座って、俺が作業しているパソコンの画面を見ながらつぶやいていた。

風蘭「今週に入ってから星守たちの動きに迷いが生じている。数人なんかじゃなく、全員の動きにだ。このまま放っておいていい状況じゃあない。特に、みき、遥香、昴の3人は深刻だ。そう思うだろ?」

八幡「……まぁ、そうですけど」

風蘭「……ホントはアタシがこうやってとやかく言うような役は似合わないんだ。でも今回は事情が違う。それはアンタが1番よくわかってるはずだ」

八幡「だからって俺にどうしろと……」

風蘭「そんなことアタシにはわからないよ。それに、こういうことを話すのはアタシとじゃなくてあいつらと、だろ?」

そう言って御剣先生が顔を向けた先には、星月、成海、若葉が立っていた。

風蘭「ほら!男らしく、けじめをつけてこい」

俺は御剣先生に思いっきり背中を叩かれて、椅子を立ち上がった。

367: 2017/06/21(水) 23:45:08.80 ID:1sHP3UWw0
本編4-12


八幡「……」

みき「……」

遥香「……」

昴「……」

誰も一言も話さない。俺が立ち上がった意味は何。沈黙は嫌いじゃないけど、こういうのは別です。俺にはどうしようもできません。誰かこの雰囲気誰かどうにかしてください。

風蘭「あー、そういやアタシ樹に呼び出されてたんだっけなぁー。早く職員室行かないとなぁー。そういうことだからアンタたちでここ自由に使ってていいから。比企谷、飲み物とお菓子でも出してやれ。じゃな」

そうして御剣先生は逃げるようにそそくさとラボを出ていく。……後は俺たちでどうにかしろってことですか。気遣いの仕方がわかりやすいですよ、御剣先生。

八幡「……とりあえず座れよ。今飲み物持ってくる」

昴「わ、わかりました」

遥香「……はい」

みき「……」

まさかこの場面でいつも御剣先生にお茶を出してる経験が生きてくるとは思わなかった。これからはもう少し御剣先生に優しくしよう。

だけど今はそんなこと考えてる場合ではない。この状況をどう打開する方法を見つけないと。このままだと1対3で確実に俺が負ける。いや、別に戦ってるわけではないけど。つか、あいつらこそ何をしにここに来たんだ?もう数日ろくに話してないし、とうとう決定的に絶縁を言い渡されるのか?あぁ。戻りたくねぇな。でも行かないとダメだよなぁ。待たせたらまたそれで何か言われそうだし。

八幡「お待たせ。冷蔵庫にあったのを適当に持ってきたから好きなの選んでくれ」

俺は目の前のブラックコーヒーに手を伸ばしながら声をかける。

遥香「ありがとうございます。私もコーヒーいただきます」

昴「アタシお茶。みきどれにする?」

みき「……じゃあリンゴジュース」

俺たち4人はとりあえず飲み物を啜りながら、誰が口火を切るかお互い目だけで確認する。すると意外にも成海がカップの中のコーヒーを一気に飲み干すと、俺の顔を真正面から見つめてきた。

遥香「先生。この前はすみませんでした」

成海は机に額がつくほど深く頭を下げた。

八幡「顔上げてくれ成海。なんでお前が俺に謝るんだ」

遥香「この前の特訓のとき、私が『最低』なんて言ってたことを謝ってるんです。先生のこと、傷つけてしまいました」

八幡「別に俺は傷ついてはない、わけじゃないが、正直ちょっと傷ついたが、それでも俺はお前に謝まる必要はない。俺の方こそ、お前らの気持ちも考えずひどいこと言った。すまなかった」

俺は成海と同じように、頭を下げた。

遥香「顔を上げてください。先生」

久しぶりに聞く、成海の温かな声を聞いて俺はゆっくり顔を上げる。

遥香「私は、今の先生の言葉を聞けてひとまず満足です」

成海はいつもの柔らかい笑顔を浮かべていた。この表情も久しぶりに見る気がする。

八幡「……そうか」

昴「つ、次はアタシです。先生、最近アタシたちの成績が悪くてすみません」

若葉も頭を下げる。

八幡「それについても、若葉が謝ることじゃないだろ。あの日の特訓以来の俺の態度が原因だ。俺こそ、余計なことで気を煩わせてすまなかった」

今度は若葉に向かって頭を下げる。

昴「や、やめてください先生!そういうことも含めて、もっとアタシたちが強くならなきゃいけないんです。でも、先生にそう言ってもらえて気が楽になりました。これからはもっと頑張ります!」

若葉はいつもの、いやいつも以上に元気な笑顔でそう宣言した。しかし、その後、また場に沈黙が流れる。未だ、星月は顔を俯かせたままでどんな表情をしているか向かいに座る俺からは判断できない。だが星月を真ん中に、両脇に座る成海と若葉は星月の肩にそっと手を置いて星月に囁くように声をかける。

遥香「さ、あとはみきだけよ」

昴「大丈夫。アタシたちもここにいる。ちゃんと自分の気持ちを伝えよ?」

368: 2017/06/21(水) 23:46:39.80 ID:1sHP3UWw0
本編4-12


八幡「……」

みき「……」

遥香「……」

昴「……」

誰も一言も話さない。俺が立ち上がった意味は何。沈黙は嫌いじゃないけど、こういうのは別です。俺にはどうしようもできません。誰かこの雰囲気誰かどうにかしてください。

風蘭「あー、そういやアタシ樹に呼び出されてたんだっけなぁー。早く職員室行かないとなぁー。そういうことだからアンタたちでここ自由に使ってていいから。比企谷、飲み物とお菓子でも出してやれ。じゃな」

そうして御剣先生は逃げるようにそそくさとラボを出ていく。……後は俺たちでどうにかしろってことですか。気遣いの仕方がわかりやすいですよ、御剣先生。

八幡「……とりあえず座れよ。今飲み物持ってくる」

昴「わ、わかりました」

遥香「……はい」

みき「……」

まさかこの場面でいつも御剣先生にお茶を出してる経験が生きてくるとは思わなかった。これからはもう少し御剣先生に優しくしよう。

だけど今はそんなこと考えてる場合ではない。この状況をどう打開する方法を見つけないと。このままだと1対3で確実に俺が負ける。いや、別に戦ってるわけではないけど。つか、あいつらこそ何をしにここに来たんだ?もう数日ろくに話してないし、とうとう決定的に絶縁を言い渡されるのか?あぁ。戻りたくねぇな。でも行かないとダメだよなぁ。待たせたらまたそれで何か言われそうだし。

八幡「お待たせ。冷蔵庫にあったのを適当に持ってきたから好きなの選んでくれ」

俺は目の前のブラックコーヒーに手を伸ばしながら声をかける。

遥香「ありがとうございます。私もコーヒーいただきます」

昴「アタシお茶。みきどれにする?」

みき「……じゃあリンゴジュース」

俺たち4人はとりあえず飲み物を啜りながら、誰が口火を切るかお互い目だけで確認する。すると意外にも成海がカップの中のコーヒーを一気に飲み干すと、俺の顔を真正面から見つめてきた。

遥香「先生。この前はすみませんでした」

成海は机に額がつくほど深く頭を下げた。

八幡「顔上げてくれ成海。なんでお前が俺に謝るんだ」

遥香「この前の特訓のとき、私が『最低』なんて言ってたことを謝ってるんです。先生のこと、傷つけてしまいました」

八幡「別に俺は傷ついてはない、わけじゃないが、正直ちょっと傷ついたが、それでも俺はお前に謝まる必要はない。俺の方こそ、お前らの気持ちも考えずひどいこと言った。すまなかった」

俺は成海と同じように、頭を下げた。

遥香「顔を上げてください。先生」

久しぶりに聞く、成海の温かな声を聞いて俺はゆっくり顔を上げる。

遥香「私は、今の先生の言葉を聞けてひとまず満足です」

成海はいつもの柔らかい笑顔を浮かべていた。この表情も久しぶりに見る気がする。

八幡「……そうか」

昴「つ、次はアタシです。先生、最近アタシたちの成績が悪くてすみません」

若葉も頭を下げる。

八幡「それについても、若葉が謝ることじゃないだろ。あの日の特訓以来の俺の態度が原因だ。俺こそ、余計なことで気を煩わせてすまなかった」

今度は若葉に向かって頭を下げる。

昴「や、やめてください先生!そういうことも含めて、もっとアタシたちが強くならなきゃいけないんです。でも、先生にそう言ってもらえて気が楽になりました。これからはもっと頑張ります!」

若葉はいつもの、いやいつも以上に元気な笑顔でそう宣言した。しかし、その後、また場に沈黙が流れる。未だ、星月は顔を俯かせたままでどんな表情をしているか向かいに座る俺からは判断できない。だが星月を真ん中に、両脇に座る成海と若葉は星月の肩にそっと手を置いて星月に囁くように声をかける。

遥香「さ、あとはみきだけよ」

昴「大丈夫。アタシたちもここにいる。ちゃんと自分の気持ちを伝えよ?」

372: 2017/06/24(土) 17:54:51.37 ID:P990LI0n0
本編4-13


星月は顔を上げずにぽつぽつと言葉を紡ぎ出す。

みき「……私、悲しいんですよ?」

八幡「……あぁ」

みき「……私、怒ってるんですよ?」

八幡「……あぁ」

みき「それをわかってて、ああいう態度をとってたんですか?」

八幡「……すまん」

まるで一番始めに戻ったかのような受け答えだ。あの頃と今とで、俺は何か変わったのだろうか。……いや、人間そう簡単に変わらないっていうのは俺が常々思ってたことじゃないか。どんなとこに来たって、どんなことをしたって、俺は、俺でしかない。

みき「そんな風に言われても、私引き下がれません」

星月は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら必氏な形相で体を投げ出して迫って来た。そして次には小さい子を慰めるかのように語り出す。

みき「……話して、くれませんか?」

八幡「それは……」

みき「私たちじゃダメなんですか?」

八幡「そういうことじゃない。この前も言っただろ。これは俺自身の問題だ。だから、俺が解決しなきゃいけないんだ。わざわざお前らに話すようなことじゃない」

みき「……わかりました」

観念したのか、星月は姿勢をもとに戻す。なんとか諦めてくれたようだ。よかった。

八幡「そうか。ならこの話は、」

みき「先生の話を聞くまで、私先生から離れません」

突然のトンデモ発言に思わず耳を疑った。

八幡「ちょ、ちょっと待て。なんでそういう結論になるんだ」

みき「だって先生、話したくないんですよね?優しい先生の事だから、私たちの負担になることはしなさそうですから」

八幡「……」

みき「先生は話したくない。でも私は聞きたい。そして知りたい。だったら、踏み込んでいくしかないじゃないですか。今までよりも、もっと」

星月の言葉に両脇の二人も顔を見合わせて頷く。

昴「うん、アタシもみきと同じ気持ち。だからアタシも先生の話を聞くまで帰りません!」

遥香「私も。先生の話聞きたいです。みきたちと一緒に」

八幡「若葉、成海……」

昴「さ、先生。これでもう逃げられませんよ?」

八幡「いや、俺話すなんて一言も言ってないんだけど」

遥香「私たち、本気ですからね?」

八幡「だとしても、いつまでも話さないかもしれないぞ」

みき「いつまでだって待ちます!」

昴「もし下校時間過ぎちゃったら、みんなで合宿所にお泊りだね」

みき「あそこのベッド、ふかふかで気持ちいいもんね」

遥香「楽しみね」

なぜか三人は俺を無視して楽しそうに会話を始めた。今までのシリアスな雰囲気はどこに消えたんだよ。人の話を聞かない星守はこれだから困る。

でも、そんなこいつらが俺の話を聞きたいと言ってきた。あの言葉に嘘はないだろう。成海はともかく、星月と若葉は嘘つくの下手そうだし。

……そうか。俺は変わってない。現に今、ぼっちで頭をフル回転させて思考しているんだから。でも、周囲は変わった。今までと違って、俺のことを知りたい、と言葉にして伝えてくる人が、俺に踏み込みたいと願う人がすぐそばに何人もいる。もしかしたら、こいつらだけじゃないのかもしれない。

もちろん言葉にしてもその意味が完全に伝わることなんてない。行動にしたってそうだ。特に俺は人の言動を深読みして、その裏に隠された真意までもくみ取ろうとしてきた。そして間違えてきた。

だとしたら、俺のことを知りたいと願われているこの状況で、今までと変わらない俺はどう行動すればいいのだろうか。

……ダメだ。いくら考えても答えが出ない。まぁ、当然だな。今まで間違ってきたんだから、答えが出たとしても多分間違ってるし。むしろ、このままずっと何も話さないままこいつらと一緒にいる方がいいかもしれない。

377: 2017/06/29(木) 00:48:16.00 ID:gK6Ho32c0
本編4-14


あれ。なんだろ。急に視界がぼやけてきた。目の前の三人の表情がわからなくなった。その代わりに、頬に熱いものが流れる。

昴「先生……?」

八幡「な、なんだよ」

遥香「泣いてるんですか?」

八幡「ばっか、ちげぇよ、単に目にゴミが入っただけだ」

俺はあわてて袖で涙を拭おうとするが、それより前に、ハンカチの柔らかな感触とその下から感じる指先の温かさがが俺の頬を包む。

みき「もう、私たちの前で強がらなくていいんですよ?」

星月は俺の涙を拭いながらなおも続ける。

みき「そりゃ、私たちじゃ力不足ですけど、それでも私たちが先生を思う気持ちは誰にも負けていないつもりです」

昴「そ、そうです!アタシたちを信頼してください!」

遥香「何でも言ってください」

三人はそろって俺の心にド直球を投げ込んでくる。でも、三人とも少し勘違いしている。それだけは、今ここで伝えなきゃならない。

八幡「俺は、別にお前らを信用していないわけじゃない。すべては俺自身の問題だ」

みき「どういうことですか?」

八幡「正直、今までこんなに周りに受け入れられた経験がなかったからな。受け入れてもらいたいとも思ってなかったのもあるが。だからなおさら、この学校に来てからの状況に疑問を持ってたんだ。何年も経ってすべてを知り尽くした関係ならまだしも、交流に来てすぐの時から無条件に求められることは、正しいことのか。交流が終わったら消滅するような関係なのに、それを大事にする必要があるのか。俺に、そんな風に求められる資格があるのかって」

俺の静かな告白にしばらく沈黙が続いた後、星月が口を開いた。

みき「私は、先生が私たちのことでそんな風に真剣に悩んでくれてたってわかって嬉しいです」

八幡「え?」

みき「いえ、正直半分くらい何言ってるかわからなかったです。私そんなに頭よくないので。でも、先生が私たちのことをちゃんと考えてくれてるんだなってことはわかりました。じゃなかったらそんなに深く悩まないですよね?」

確かに言われてみればそうかもしれない。俺は「なぜ」こんな風に考えるようになってしまったか、その理由を考えたことがなかった。いや、考えないようにしていたのかもしれない。

みき「それと、さっきの話で1つだけ私たちが答えられることがあります。ね、昴ちゃん、遥香ちゃん」

昴「うん!」

遥香「えぇ」

三人は頷くと立ち上がって同じ言葉を叫んだ。

みき、昴、遥香「先生は十分魅力的な人です!」

突然の言葉に俺は開いた口が塞がらない。

八幡「えーと、あの……」

昴「ち、違いますよ?男性として魅力があるってことを言ってるわけでは、まぁ全くないわけじゃないですけど、とにかく違うんです!」

遥香「先生は、屁理屈を使っていろんなことをすぐにサボろうとするし、そのくせ大事なことはこうして隠してるし、とっても面倒くさい人だと思うんです」

ちょっと?なんで成海は俺の事真正面からディスってくるの?歯を素っ裸にしすぎじゃないですか?温かい服着せてあげて。

みき「でも、おんなじくらい、いやそれ以上に私たちの事をすごく真剣に考えてくれて、私たちのために動いてくれてる人だってことも感じてるんです。でもどうしてそこまでしてくれるかわからない。そんな先生に、私たちは惹かれるんです。だから、先生の事もっと知りたくなるんです。だから、先生の傍にもっといたくなるんです」

みき「こんな理由じゃ、私たちが先生に近付く理由になりませんか?」

完全に言葉を失ってしまった。わからないから知りたい。知ったから傍にいたい。この両方を達成するために人に近付く。もしかしたら、こんなことは世の中のリア充連中は意識せにずやっているかもしれない。だとしたら、これは人間本来の欲求だと言い換えられる。人間は知って安心したい。安心するところへ行きたい。だから人と人は繋がりを持たずにはいられないのだろう。

八幡「でも、いつかは俺たちの関係は終わるんだぞ。少なくとも、交流が終わってしまえば……」

みき「そんなこと、その時にならないとわからないですよ!」

俺の言葉を遮るように星月は叫ぶ。

みき「これから先、いや今からでも私たちと先生が近づくことができれば、関係は終わりません。だって、『今』の関係の積み重ねが『未来』の私たちの関係になるんですから」

星月の言葉に、一度は止まっていた感情がまた目から溢れてきた。俺の思考とは裏腹に涙はとめどなく流れ続ける。

そんな俺の両脇に若葉と成海が座り、俺の肩に優しく手を置く。そして真正面からは星月があの太陽のような笑顔でにっこり笑う。

みき「先生。これからもよろしくお願いしますね!」

もう言葉は出てこない。それどころかまともに頭も働かない。ただただ腐った目だけが自分の汚れを落とすかのように涙を流し続けているばかりだった。

383: 2017/07/04(火) 22:02:21.24 ID:Lk++xY/20
本編4-15


ブーブー

突然ラボ内に警報音が鳴り響いた。

遥香「この音は」

昴「イロウス!」

みき「早く行かなきゃ!」

3人はすぐに転送装置に向かって走る。俺はその姿を見て、自然と足が動いていた。

昴「先生……?」

八幡「……俺も行く」

昴「大丈夫ですか?」

八幡「あぁ。むしろ連れってくれ。頼む」

なぜ積極的に戦場へ向かおうとしているのか自分でもわからない。でも、俺も一緒に行かないといけないってことは直感した。

そんな俺の言葉に星月が嬉しそうに反応する。

みき「もちろんです!行きましょう!」

八幡「……すまん」

昴「謝らないでくださいよ!」

八幡「す、すまん」

遥香「次謝ったら特訓メニュー倍にしますよ?」

成海が冷たい笑顔を浮かべながら忠告してきた。

八幡「す……わかった」

昴「遥香目が笑ってないよ……」

みき「あはは……」

俺は転送先の座標を設定してから転送装置に向かう。

八幡「準備はいいか?」

みき、遥香、昴「はい!」

八幡「よし、転送」

-----------------------------------

転送が終わると、俺たちは荒野に立っていた。

みき「ここにイロウスがいるんですか?」

八幡「あぁ。そのはずだ」

昴「どんなイロウスですか?」

八幡「それがよくわからないんだ。全くイロウスに動きがなくて判別できなかった」

遥香「動かないイロウス、ですか?」

八幡「あぁ。ひとまずここらへんにいるのは確実なんだ。あとは俺たちで動いて探すしかない」

みき「頑張ろう!昴ちゃん!遥香ちゃん!先生も!」

八幡「おう。じゃ、行くか」

俺が歩き出すと、3人は物凄く驚いた表情を見せる。

昴「せ、先生が自分からイロウスに向かって歩き出した……」

八幡「若葉、お前失礼だな。相手は得体のしれないイロウスなんだぞ。別行動するより、全員一緒にいた方が安全だ。幸いにも周りに人家はなさそうだし、時間かけても安全に仕留めることを優先してもいいだろ」

みき「な、なるほど」

遥香「やっぱり先生の頭の回転の速さにはかないませんね」

……実は俺1人でいると危険だから集団行動したかった、ってのは黙っておこう。

389: 2017/07/08(土) 09:33:50.15 ID:D/03jL2M0
本編4-16


そうして四人でしばらく歩いていると成海が何かに気づいたような声を上げた。

遥香「あら、あれはなにかしら」

みき「どうしたの遥香ちゃん?」

遥香「向こうの方に何か浮いてない?」

成海が指さす方向を見てみると、確かに丸っこい物体が空中に浮いている。

昴「先生、アタシちょっと見てくる」

八幡「おぉ。頼む」

若葉は元気よく走っていく。でも、物体に近付くにつれてそのスピードが遅くなっているような……?

少しして若葉が帰ってきた。

みき「どうだった昴ちゃん?」

昴「多分、あれがイロウスだよ。あいつの周りだけ重力が強くなってるみたいで体が重くなっちゃったし」

あぁ、だからスピードが遅くなってたのね。重力を扱うなんてプッチ神父か何かですか?

遥香「でもイロウスなら私たちで倒さないといけないわね」

みき「じゃあみんなで行きましょう!」

俺たちはイロウスの能力が届かない距離まで近づいた。

みき「遥香ちゃん、一緒に攻撃してみよ?」

遥香「えぇ」

そう言って星月はガンで、成海はロッドで攻撃するが、あまり効いているとは思えない。

遥香「遠距離攻撃じゃ効果がないのかしら」

昴「なら近距離攻撃するしかないね!」

八幡「じゃあ俺はここで待ってるからお前ら、」

みき「先生も行きますよ!」

八幡「ちょ、腕引っ張んなって」

なぜか俺までイロウスの傍に行くことになってしまった。そして重い体を動かし、なんとかイロウスの目の前まで来ることができた。

みき「なんか、このイロウスただ浮いてるだけだね」

遥香「何もしてこないイロウスなんているのかしら」

八幡「まぁ、何もしてこないならそれに越したことはないんだが」

昴「なら今のうちにサクッと倒しちゃいましょう!」

そう言って若葉はハンマーを出してすぐさま振りかぶる。

昴「やあっ!」

若葉は強烈な一撃をイロウスに加えた。

みき「あ、体が軽くなった!」

遥香「流石ね昴」

昴「へへ~」

3人はイロウスを討伐できたことに安心しているようだ。だが、このまま簡単に終わっていいのか……?

そう思ってイロウスを見てみると、灰色だった色が赤くなり、膨張しているようだ。これってまさか……

八幡「逃げるぞ……」

みき「え、なんですか?」

星月をはじめ3人ともキョトンとしている。

八幡「いいから逃げるぞ!」

状況を呑み込めていない3人を急き立て、俺たちはイロウスから離れた。次の瞬間、イロウスは盛大に爆発した。

390: 2017/07/08(土) 10:30:21.37 ID:D/03jL2M0
本編4-17


あ、危なかった。間一髪だった。

遥香「はぁはぁ、爆発して攻撃するイロウスだったんですね」

昴「はぁ、先生が気付かなかったらヤバかったよ」

みき「はぁはぁ、先生ありがとうございます」

八幡「ぜぇぜぇ、いや、ぜぇぜぇ、おう、、」

急にダッシュしたから息が整わない。返事どころかろくに呼吸すらできてない。

昴「じゃあ他にもイロウスがいないか探しに行こう!」

八幡「ちょちょっと待って。少し休憩させて……」

みき「先生……」

遥香「仕方ないですね。先生が落ち着いたら行動を再開しましょう」

数分後、なんとか息を整えて、俺たちは動き出した。するとほどなくして若葉が声を上げる。

昴「あ!またさっきのイロウスが浮いてる!」

みき「奥の方にさらにいっぱい」

遥香「なら私たちも別れて倒しに行きましょうか」

3人はハンマーを出してイロウスへ向かう。

八幡「……俺はここにいるわ」

これ以上俺にできることはないし、何よりもう走りたくない。

みき「はい。後は私たちで倒せますから大丈夫です!」

昴「安全なとこで待っててください!」

遥香「すぐ戻ってきますから」

……ん?なんか氏亡フラグに聞こえたのは俺の気のせい?

そんな俺の心配をよそに3人は次々にイロウスを倒していく。その度に大きな爆発があるから、待ってる身としては気が気じゃないんだが。

つか、改めてあたりを見渡すと、さっきのイロウスがどの方向にも浮いてるじゃん。どんだけ倒せばいいんだよ……

遥香、昴「先生」

いつの間にか成海と若葉が帰ってきていた。

八幡「おう。お疲れさん」

昴「けっこう倒したんですけど、それ以上にイロウスが湧いてきたんで、いったん引き返してきました」

遥香「私たちだけでどうにかできる数じゃなくなってしまったんですが、どうしますか?」

八幡「一番の策は星守の数を増やすことだな。こっちの手数を増やさないと、イロウスを減らすことはできないし」

昴「それなら、一度学校に戻りますか?」

八幡「あぁ、だけど星月も戻ってきてからじゃないとな。あいつだけ置いていくことはできない」

遥香「そうですね。無事だといいんですけど」

成海が心配そうに呟く。

昴「みきなら大丈夫だよ。すぐに戻ってくるって」

遥香「昴……そうね。みきなら大丈夫よね」

八幡「ほら、現に戻ってきたぞ」

俺の視線の先には必氏の形相で走ってくる星月の姿があった。なんであいつあんな急いでんの。

みき「みんな~!」

遥香「みき、おかえり」

みき「みんな、大変なの!」

昴「大変って何が?」

391: 2017/07/08(土) 15:19:58.36 ID:D/03jL2M0
本編4-18


みき「さっきあっちのほうまで行ってイロウスを倒してたんだけど、あるイロウスの爆発が他のイロウスを刺激しちゃって、どんどん爆発が広がってっちゃった……」

八幡「てことはつまり……?」

みき「ここら辺、爆発まみれです……」

遥香「何やってるのみき……」

みき「だ、だって!久しぶりに先生にいいところ見せられると思って、張り切っちゃって」

昴「そんなこと言ってる場合じゃないよ!爆発がそこまで迫ってるって!」

若葉の言う通り、星月が走って来た方角から大きな爆発音が止まることなく鳴り響いていて、段々音量も大きくなっている。

八幡「こうなったら早くここから逃げるぞ」

みき、遥香、昴「はい!」

俺たちはもと来た道を引き返していく。だが、なぜか嫌な感じがする。

遥香「なんだかこっちからも爆発音が聞こえない?」

昴「うん、そんな気がする……」

みき「ど、どうしよう先生?」

八幡「とにかくここから脱出する。爆発に巻き込まれるのだけは勘弁だ」

そうして俺たちは方向転換を繰り返していったのだが。

昴「……先生」

八幡「なんだ」

遥香「この状況は、どうやって打開しますか?」

八幡「そんなこと俺が聞きたい」

みき「そんな~」

八幡「もともとお前が撒いた種だろ……」

もうどこに行ってもイロウスが爆発しまくっていて逃げ場がない。いわゆる袋のネズミってやつだ。

昴「爆風を避けながら走れば、」

八幡「流石に無理だろ……」

遥香「私のスキルが先生にも効果があればよかったんですけど」

八幡「ごめんな。俺が星守じゃなくて」

成海はイロウスからのダメージを無効にする効果を持つスキルを持っているのだが、いかんせんただの人間の俺にはスキルが効かない。だから物理的にどうにかして爆発から逃げないといけないのだが、正直打つ手なくね?

みき「先生!私に考えがあります!」

なんでこんな状況になっても元気なんだこいつは。

八幡「……何」

みき「私があの爆発から先生を守ります!」

八幡「は?どうやって?」

みき「私の爆発系のスキルを使うんです!イロウスの爆発より強力なスキルが打てれば、爆発を相殺できて先生を守れます!」

思ったよりもまともなアイデアだった。でも致命的な欠陥を発見してしまった。

八幡「数体くらいの爆発ならともかく、四方八方から爆発は迫ってるんだぞ?お前1人でどうにかできるレベルじゃないだろ」

みき「あ、そっか……」

俺の指摘に星月はうなだれてしまう。が、成海と若葉は逆に明るい表情になった。

遥香「大丈夫よみき。私たちも一緒にスキルを使えばなんとかなるかもしれないわ」

昴「うん!3人で先生を守ろう!」

みき「遥香ちゃん、昴ちゃん……」

392: 2017/07/11(火) 00:46:35.61 ID:Rm0mq5+k0
本編4-19



八幡「……危険すぎる」

遥香「え?」

八幡「危険すぎるって言ったんだ。お前らのスキルがイロウスの爆発より強力な保証はないし、3人のスキルのタイミングと威力が少しでもずれたらバランスが崩れて、結果全員の命が危ない。そんな賭けに俺は乗れない」

昴「なら、先生はどうするのがいいと思うんですか?」

八幡「お前らが助かるのに最も確実なのは成海のダメージ無効スキルを使うことだ。俺に効果はないが、それでもお前らが助かる方を優先するべきだ」

最優先するべきは3人の安全だ。彼女たちはイロウスを倒せる唯一の存在、星守だ。そして、それ以前に俺の生徒だ。絶対に氏なすわけにはいかない。

だが、俺の言葉を聞いて、3人は明らかな怒りを顔に出しながら俺に詰問する。

みき「それじゃあダメです!私たちは、4人でイロウスに勝つんです!先生1人だけ見捨てるなんて、私たちにはできません!」

八幡「だけど、」

遥香「逆に先生は私たちが失敗すると、そう言いたいんですか?」

八幡「いや、そういうことじゃない。が、」

昴「ならアタシたちに任せて下さい!アタシたちが必ず先生を守ります!」

八幡「お前ら……」

この星の星守は、俺の生徒は、想像以上に心が強い子ばかりらしい。まぁ、それくらいの気概がないと、こんな危険なことを自分からやりたい、なんて言う筈がないか。

八幡「……わかった。俺の命、よろしく頼む」

みき、遥香、昴「はい!」

……あぶね。なんだか笑みがこぼれそうになった。笑ってられる状況じゃないってのに。むしろこれからが本番だ。気を引き締めないと。

八幡「よし。そしたら作戦を立てるぞ。まずは俺を中心に3人は正三角形の頂点に立ってくれ」

昴「ここらへんですか?」

八幡「あぁ。それと、スキル強化のスキルを誰か使ってほしいんだが」

みき「はい!私が使えます!」

八幡「よし。そしたら星月のスキルを使ってから3人でスキル発動だ。なるべく同じスキルがいいんだけど、なんかないか?」

遥香「それなら『炎舞鳳凰翔』は私たちみんな使えます。爆発系のスキルで威力も同じです」

八幡「ならそれでいこう。後はタイミングのそろえ方だな」

みき「合図は先生が出してください!」

八幡「俺?」

遥香「そうですね。3人の真ん中っていうちょうどいいポジションにいるわけですし」

昴「先生の合図なら、アタシたちさらに頑張れますから!」

……むぅ。正直気乗りはしないが、3人が一番やりやすい状況を作る方が大事だしなぁ。ここは腹をくくるか。

八幡「わかった……」

遥香「では先生の『炎舞鳳凰翔』の掛け声に合わせて私たちがスキルを使うということで」

八幡「待て。なんで俺もあの恥ずかしいスキル名を言わなきゃならないんだ」

昴「だってアタシたちがスキルを使うときはスキル名唱えないといけないですし」

みき「それに先生も一回くらい一緒に言いましょうよ!意外と楽しいかもしれないですよ?」

材木座ならともかく、今の俺にそんな中二病抜群のスキル名を意気揚々と唱えられるほどのメンタルは備わっていない。つか、それ以前に俺の必殺技でもないんだよなぁ。今回はただ合図として技名を叫ぶだけ。ダサい事この上ない。

八幡「……楽しいかどうかはともかく、お前らがそう言うなら合図はそれでいこう」

でも、一度くらいは必殺技大声で叫んでみたいよね?だって男はみな、一生少年なのだから!

昴「よし!これでなんとかいけそうだね!」

遥香「絶対4人で学校に帰りましょうね」

みき「さぁ、みんな!頑張ろう!」

397: 2017/07/11(火) 23:24:31.03 ID:Rm0mq5+k0
本編4-20


段々爆発が迫って来た。そろそろ作戦開始かな。

八幡「よし。始めるか。星月頼む」

みき「はい!『メガスキルバースト』!」

3人の周りを黄色いオーラが包み込む。例えるならちょっとしたスーパーサイヤ人みたいな感じだ。

八幡「あとはタイミングを合わせてスキルを撃つだけだ」

みき「は、はい!」

遥香「みき緊張してるの?」

みき「う、うん。正直かなり……」

昴「あはは、実はアタシもけっこう緊張してるんだ。でも遥香は大丈夫そうだね?」

遥香「だって、こういう絶体絶命なシチュエーションってよく少年漫画にあるでしょ?それを今実体験してると思うと少しワクワクしてるの」

お前強いなぁ!オラわくわくすっぞ!ってか?心までサイヤ人になっちゃったのかな?

八幡「おい、もう爆発がそこまで来てるぞ。準備しろ」

俺の言葉に3人の雰囲気ががらりと変わる。もうお互いの顔も見ずに、ただ真正面のイロウスにだけ集中している。

八幡「いいか。俺が『炎舞』と叫ぶから、1テンポおいて3人は攻撃してくれ」

みき、遥香。昴「はい!」

俺は3人の背中を順に観察する。星月はソードを、成海はスピアを、若葉はハンマーを構えている。こうして後ろから眺めることは今までなかったが、改めて見てみると、頼もしい背中をしてるんだな。俺を「守」るって意志をひしひしと感じる。

もう爆発が目の前まできている。今まで遠くに見えていたイロウスは爆炎でまったく見えない。だが、至近距離にもイロウスは浮いてるし、それらも爆発しそうに膨張している。

八幡「……いくぞ。『炎舞』!」

みき、昴、遥香「『鳳凰翔』!」

刹那、3方向から凄まじい爆炎が放たれた。ちょうど俺周りで爆炎がぶつかり相殺されているが、周りは360度爆煙で包まれており視界は遮られてしまっている。

八幡「くっ……」

てか爆風がすごすぎて立ってられないんですけど。音もすごいし、本当に星月たちがどうなってるかわからない。

やがて爆煙が薄くなってきた。俺は立ち上がり急いで周りを見渡してみたが、いるはずの人影が見えない。

八幡「嘘だろ……」

最悪のシチュエーションが頭をよぎる。3人は身を挺して爆発から俺を守ったのか?3人が3人とも?はは、まさか。冗談だろ?

八幡「星月……若葉。成海!」

俺はありったけの声を出して叫んでみた。だが返事は聞こえない。

八幡「なんでだよ……」

俺が3人を氏なせてしまった。否、頃してしまった。俺だけが犠牲になればこんなことにはならなかったはずだ。なんで俺はあの時、もっと強くあいつらを説得しなかったんだ……

その時、爆煙の下の方に何かの影が見えた。それはゆっくりとこちらへ近づいてくる。あぁ。イロウスの生き残りか。なら、いっそ俺もここで氏んでしまうのがいいかもな。俺の氏くらいじゃ償いにはならないが、俺にできることはこれくらいだ。

八幡「……殺せ!」

俺はその影に向かって泣き叫んだ。だが影はそこで動きを止める。

「何言ってるんですか先生?」

八幡「え?」

この声は、まさか……

みき「なんとかここまで這って来た私に『殺せ』ってどういうことですか?」

現れたのはぼろぼろの星月だった。

八幡「星月……?お前、なんで這って来たんだよ」

みき「全力でスキルを使ったら、歩く体力もなくなっちゃったんです。なのでこうして這ってきました」

八幡「……ふっ、なんだよ。そういうことかよ。ははっ」

俺は力が抜けて、地面に座り込みながら笑いだしてしまった。そんな俺を不思議そうに星月が眺めてくる。

398: 2017/07/11(火) 23:58:52.53 ID:Rm0mq5+k0
本編4-21


やがて成海と若葉も合流した。

昴「先生!無事だったんですね!」

八幡「あぁ。お前らも無事か?ケガはないか?」

遥香「はい。大丈夫です」

みき「ねぇ聞いてよ2人とも!先生ったら、私に向かって最初『殺せ!』って叫んできたんだよ?」

遥香「……どういうことですか?」

八幡「いや、なんか気が動転しててな。自分でもよくわからず口走っちまった」

お前らが氏んだと思ってた、なんて口が裂けても言えない。

昴「先生本当に大丈夫ですか?実はどこか爆発に巻き込まれてたりしてませんか?」

八幡「なんともねぇって。強いて言えば疲れだな。ラボから一緒にいて身も心も疲れた」

みき「それって、私たちといると疲れるってことですか!?」

八幡「ま、そうとも言うかもな」

昴「ま、まぁまぁみき。実際、アタシも色々あって今日は疲れちゃったし、大目に見てあげようよ」

遥香「そうね。私もお腹空いたわ。早く何か食べたい」

4人でこんな雑談をしていると、通信機が鳴りだした。

八幡「はい。もしもし」

樹『比企谷くん!?無事ですか?』

八幡「えぇ。星月たちも全員無事です」

俺の返答の後、八雲先生じゃない人たちの歓声が聞こえた。おそらく他の星守たちが後ろの方にいるんだろう。

樹『よかった……』

八雲先生は心の底から安堵したような声を出した。

八幡「あの、周囲にまだイロウスの反応はありますか?」

樹『いえ、レーダーには反応はないわ。完全に消滅しています』

八幡「そうですか、ありがとうございます」

樹『えぇ。じゃあすぐに転送装置を起動させますね。そこで少し待っててください』

八幡「わかりました」

そうして通信は切れた。

遥香「学校からの通信ですか?」

八幡「あぁ。八雲先生からだ。俺たちが無事だって聞いて安心してたよ」

昴「あの、イロウスは?」

八幡「それもこの辺には反応はないそうだ。完全に殲滅できたってよ」

みき「やったー!」

そう言って星月は若葉と成海に抱きつく。

昴「こ、こらみき!いきなり抱きついてきたら危ないって!」

みき「えへへ~」

遥香「もう、しょうがないわね」

3人はそのままお互いに抱き合って笑い合っている。ついさっきまで俺を守るために氏ぬ気で奮闘していた星守とは思えないくらい楽し気に。ゆりゆりに。

八幡「ほら、そろそろ離れろ。八雲先生はすぐに転送してくれるって言ってたぞ」

みき「は~い」

しぶしぶ3人は離れる。が、なぜか俺の両腕に絡みついてくる。やめて!柔らかい感触と女の子の香りが凄すぎて頭がクラクラする。

八幡「な、なにしてんだよお前ら」

みき、昴、遥香「先生!これからも私たちのことよろしくお願いします!」

399: 2017/07/12(水) 00:35:36.75 ID:krpYwvdr0
本編4-21


ラボでのやりとりと、イロウス殲滅の次の日の放課後。俺は総武高校のジャージを着てグランドにいる。なぜかと言うと。

昴「先生!ほらもっと頑張って!ワンツー!ワンツー!」

八幡「いや、もう、もう無理……」

このようにダンス特訓につき合わされているのだ。だが、なんだってあんな戦闘をした翌日からダンスしなきゃならんのだ。

遥香「ふぅ。そしたら少し休憩しましょうか」

八幡「そ、そうしよう……」

俺たちはグラウンドの木陰で休むことにした。

みき「あ、みんな!私、今日は疲労回復に効果のある料理を作ってきたんだ!」

八幡、昴「え?」

俺と若葉は同時にうめき声のような声を出してしまった。でも、この前みたいな料理だったらまだ食べられるかもしれない。もう絶望する必要なんて、ない!

遥香「何を作ってきたの?」

みき「えへへ~、じゃーん!」

星月が開けたタッパの中には、なにか得体のしれない茶色の物体が得体のしれない紫色の液体の中に沈んでいた。

昴「み、みき?これは、なに?」

みき「え-、見ればわかるじゃん!レモンのはちみつ漬けだよ!私なりに健康に良さそうなものを加えたんだ。疲労回復には効果抜群だよ!」

もうどこにもレモンもはちみつもいない。これを食べたら間違いなく「こうかばつぐん」で倒れてしまう。

だが成海は躊躇なく茶色い物体を口に入れる。

成海「美味しいわみき!この前のスランプは抜け出せたみたいね」

みき「うん!今回は前のサンドイッチのリベンジも兼ねて、いつもよりも気合入れて作ったんだ!ほら、先生と昴ちゃんも食べて食べて!」

八幡「いやあ、実は俺そんなに疲れてなかったな。さ、すぐにでもダンスを再開するか若葉」

昴「そうですね先生!次はf*fのダンス教えますね!」

みき「2人とも、食べてくれないの?」

遥香「こんなに美味しいのにもったいないですよ」

だからこそ危ないんだろうが!と心の中ではツッコめるが、星月の泣きそうな顔を見ると、そんなことは言えるはずもない。助けを乞うように若葉を見るが若葉も同じようにいたたまれない表情をしている。

八幡「……わかった。食べるよ。ほら若葉も食うぞ」

昴「はい……」

俺の言葉に若葉も諦めたように頷く。そして恐る恐るレモンには到底見えない茶色い物体を1つ取り出す。

八幡「……ふぅ。いただきます」

俺はそれを口に入れるが……

ナニコレ!今までの星月の料理の中でも1,2を争うほどヤバい味だ。口の中だけじゃなくて、鼻の中にも危険なにおいが通過するし、物体に触れた唾液までもが食道や胃を破壊していくようだ。若葉に至っては顔色も茶色じみてきている。もはやこれは凶器というより兵器だな。

みき「先生どうですか!?」

八幡「あ、あぁ……少し食べただけでもすごい効くなこれ……」

みき「ほんとですか!?まだまだありますよ?」

八幡「いや……1つで十分だ。ありがとう……」

これ以上食べたら間違いなく病院行きだ。生身のジョーイさんに治療してもらわなくてはならなくなる。

遥香「さ、ではそろそろダンス再開しますか」

昴「待って遥香。アタシもう少し休憩したい……」

八幡「俺も……」

みき「2人とも立って!私、先生を引っ張り出すから、遥香ちゃんは昴ちゃん引っ張って!」

遥香「任せて」

こうして俺と若葉は強引にグランドへ引っ張り出されてしまった。く、このままダンスなんてして大丈夫だろうか?イロウスと戦う時より不安だ……

400: 2017/07/12(水) 00:37:43.91 ID:krpYwvdr0
以上で本編4章終了です。この先もよろしくお願いします。

401: 2017/07/12(水) 02:37:10.33 ID:XFyX1Mono
乙です

169: 2017/01/18(水) 18:36:57.44 ID:1zhkurzx0
番外編「明日葉の誕生日前編」


今日は1月18日、楠さんの誕生日である。星守クラスのみんなは楠さんを驚かせるために教室を飾り付けしたり、プレゼントの準備をしたりと朝早くから元気に動いていた。俺も準備に駆り出され、馬車馬のごとく働かされた。そのほとんどが芹沢さんが用意した大量のプレゼントを運ぶためだったのだが…あの人、どんだけプレゼントに力入れてるんだ。気合の入れようが尋常じゃなくて軽く引くレベル。

そして、放課後、俺はそんな教室の後片づけをさせられていた。てか、なんで誰も手伝ってくれないの?俺の事便利屋か万事屋かなんかだと思ってるの?氏んだ魚の目をしてるとこくらいしか共通項ないよ?いや、けっこう大きいぞこの共通項…

明日葉「あ、先生、ここにいらしたんですね」

そうやって文句を心の中で垂れ流していると、今日の主役だった楠さんが教室に入ってきた。

八幡「楠さん。なんか用ですか?」

明日葉「はい、ちょっと生徒会室に来てほしいんですが、お忙しいですか?」

八幡「いや、今片付けも終わったんで大丈夫ですよ」

明日葉「そうですか。では行きましょう」

そうして俺たち二人は教室を出て生徒会室へ歩き出した。

八幡「あのー、生徒会室で何やるんですか?」

明日葉「ふふふ、着いてからのお楽しみです」

ん?年上の生徒会長と放課後の生徒会室でお楽しみ!?しかも楠さんは今日が誕生日。これは、つまり、そういうことですか、ごくり。

明日葉「さ、着きましたね。入ってください」

八幡「は、はい、失礼します」

そうしてドアを開けた向こうに待っていたのは。

八幡「…書道?」

明日葉「はい、ぜひ先生と一緒にやりたいと思いまして。ダメでしょうか?」

八幡「い、いえ、全然大丈夫ですよ」

俺の俗世にまみれた考えとは真逆の、心を落ち着かせることでした!いや、そりゃ楠さんがいかがわしいことを、しかも学校内でやるわけないでしょ。でもちょっとは期待しちゃうよね、だって男の子だもん!

明日葉「よかったです!では早速始めましょうか」

八幡「でも俺、書道なんて学校の授業でしかやったことなくて、うまく書けないんですけど」

明日葉「書はうまい、ヘタではなく、自分の心、気持ちをいかに文字に乗せるかです。その心によって相手の感情を揺さぶる、それが書道だと私は思っています」

八幡「なるほど」

そう言われると書けそうな気がしてきた。だが

八幡「何を書いたらいいんだろうか…」

明日葉「そうですね、少し日にちも経ってしまいましたが年も改まったので、目標を書いてみるのはどうでしょうか」

八幡「目標か…」

目標と言われたら、書くものはひとつだ。俺は筆を持ち、心を入れて文字を書いていった。

170: 2017/01/18(水) 18:38:38.31 ID:1zhkurzx0
番外編「明日葉の誕生日後編」


明日葉「先生、書けましたか?」

八幡「えぇ、なんとか書けました。楠さんはどうですか?」

明日葉「私も書けましたよ。これです」

そういって見せられた紙には、達筆すぎる文字で「日進月歩」とあった

八幡「うますぎる…」

明日葉「いえ、そんなことは。書も、星守としても、それ以外でも日進月歩で成長していきたいと思っているんです」

真面目だなぁ。とてもまっすぐにモノを考えていることが、この書にも表れているように思える。

明日葉「では先生の書も見せて頂いてもよろしいですか?」

八幡「えぇ、これです」

楠さんは俺の書いた書をじっと見て、それから目を伏せてしまった。

明日葉「先生、この書の説明をしてもらえませんか?」

八幡「楠さん、この言葉の意味がわからないんですか?」

明日葉「いえ、知っていますが、私が聞きたいのはどうしてこの文字を書いたか、ということです」

八幡「それは『専業主夫』こそが俺の信念だからですよ」

そう、俺が書いた文字は『専業主夫』。新年だけに、信念を書いてみました!

明日葉「…専業主夫が、ですか」

八幡「えぇ。古人曰く、働いたら負けですからね。だからより少ないリスクで最大のリターンを得るためには、働かずに家庭に入る、つまり専業主夫になることが最もいい方法だと思うんです。それに、現代は女性も男性も平等ですからね。外で仕事をする女性がいるならば、家庭で家事をする男性がいてもなんらおかしくはありません」

どうだ、この見事な論理は。一部の好きもない完璧なロジック。

明日葉「うーむ、確かに、そう言われると、そういう関係もありなのかもしれないと思えてきました…」

八幡「そうでしょう?」

明日葉「それに、私が仕事をしたとして、家に旦那さんがいるというのも悪くないかもしれない。そ、それが、先生のような方だったらもう言うことなしかな…い、いけない、何を考えてるんだ私は」

八幡「ん、何か言いましたか?」

明日葉「い、いえ、何も言ってないですよ!あ、もう下校時刻になりますね、早く片付けないといけませんね!」

なぜか楠さんは突然慌てふためいて、そそくさと書道道具をしまって帰り支度をしはじめた。

明日葉「さ、もう出ましょうか」

八幡「そうですね」

俺たちは生徒会室を出て、昇降口まで歩いていく。

明日葉「私は帰りますが、先生は帰られますか?」

八幡「いや、俺はまだやらなきゃいけないことが残ってるんです」

明日葉「そうですか…ではここでお別れですね」

そういって楠さんは靴を履き替え昇降口を出ようとする。さ、俺もさっさと書類片付けますか…

明日葉「先生!」

不意に楠さんに呼び止められた。

八幡「なんですか?」

明日葉「先生の目標、悪くはないと思いますけど、この学校で私たちとこうして接しているときの方が、ずっと輝いて見えますよ!今日は、ありがとうございました!」

そう言い残して楠さんは夕日のほうへ駆け出していった。意表を突かれた俺はしばらく立ち尽くすほかになかった。

後に残るのは、まだうっすら鼻の奥に残る墨の香りと、吹き抜ける冷たい風。でも不思議と寒くはなくむしろ顔は火照っている。その原因は明らかだが、思いだすのも恥ずかしい。だから落ち着くまでもうしばらくここで夕日を眺めていよう。

171: 2017/01/18(水) 18:39:46.40 ID:1zhkurzx0
以上で番外編「明日葉の誕生日」終了です。明日葉お誕生日おめでとう!

186: 2017/01/25(水) 23:51:07.07 ID:jVwZULjU0
番外編「星守センバツ試験①」


この神樹ヶ峰女学園星守クラスには特別な試験が存在する。それが「星守センバツ試験」である。これは3人1チームでの対決型試験であり、それぞれのチームのイロウス撃破数、タイムを数値化し競い合うものだ。星守ではない俺はどのチームにも入らないということだったから、俺は試験に苦労する星守たちを対岸の火事として見ていることができる。いやー。よかった、俺先生で。

などと朝のHR中他人事のように思っていると、試験の説明をしていた御剣先生が突然俺に話しかけてきた。

風蘭「比企谷、今回アンタも試験に参加してもらうぞ」

八幡「はい?」

なぜ?なんで?意味がまったくわからない。

風蘭「当たり前だろ。アンタは星守クラスの担任なんだから」

八幡「いや、俺は戦えないんで無理じゃないですか?」

風蘭「別に戦えとは言っていない。彼女たちのサポートをしてもらいたいんだ。」

八幡「サポートですか…」

まぁ、そのくらいならいいか。てっきり俺も武器を持たされ戦えと言われるのかと思った。

風蘭「だが、ただサポートするだけではいかんな。比企谷は先生だから、特別ルールを設けたいと思う」

八幡「特別ルール?」

風蘭「あぁ。比企谷には全チームの試験にサポートで参加してもらう。そして各チームの合計点がアタシが設定した基準点をクリアしてほしい」

八幡「なんなんですか、そのルール…」

風蘭「せっかく縁があってこの学校に来たんだ。どうせなら楽しんでもらいたいからな。あ、基準点をクリアできたら何か賞品をあげようと思うが、逆に下回ったら罰ゲームがあるぞ」

八幡「横暴だ…」

風蘭「心外だな。比企谷のために考えたんだぞ」

みき「御剣先生!その賞品や罰ゲームは比企谷くんだけにやるんですか?」

風蘭「今のところそのつもりだが、」

みき「なら、私も比企谷くんと一緒の条件で試験を受けます!比企谷くんだけそんなルールがあるのはかわいそうです!」

サドネ「おにいちゃんと一緒に頑張る」

ミシェル「ミミも賞品欲しい~!」

あんこ「そうね、賞品があるなら燃えるわ。絶対基準点をクリアしてみせるわ」

明日葉「では、私たちも先生と一緒の条件で試験に臨む、ということでいいかな」

楠の言葉にクラスのみんなは一様に頷く。そんな光景を見て御剣先生も楽しそうに笑い、

風蘭「ほぉ、面白くなってきたな。では、今回は全員これまでよりもさらに努力して、賞品を勝ち取ってくれ」

星守「おぉー!」

星守たちはやる気に満ち溢れた返事をして、にわかに教室中が活気づいてくる。

八幡「…あれ、俺の意志は?」

風蘭「アンタの参加は決定事項だ。ではみんな、お待ちかねのチームの発表だ」

187: 2017/01/25(水) 23:55:17.01 ID:jVwZULjU0
せっかくセンバツ試験が開催されているのでぞれに便乗してみました。ゲーム本来の「先生同士の点数対決」はできないので、名前だけ同じのオリジナル試験だと思ってください。

あと、これから忙しくなるので更新が遅くなります。すみません。

189: 2017/01/26(木) 09:17:38.59 ID:U5gAMuuHO
番外編「星守センバツ試験②」

風蘭「発表と言っても、チームはこれから決める」

八幡「どういうことですか?」

風蘭「だから今から決めるんだよ。これでな」

そう言って御剣先生は箱を取り出す。

風蘭「この中にアンタたちの名前が書いてある紙が入ってる。これからその紙を3枚ずつ引あて、その紙に書いてある名前の3人がチームだ」

望「面白いね!」

うらら「うららは誰が一緒でも1番輝くんだから!」

ひなた「桜ちゃん、大変だよ!ほら起きて!」

桜「zzz」

風蘭「では始めるぞ~」

御剣先生が箱に手を入れると教室中が静かになってその行方を見守る。俺もなんだか緊張してきた…

風蘭「よし引けた。まず最初のチームは、蓮華、みき、ゆり、この3人だ」

蓮華「あら~、2人ともよろしくね~」

みき「よろしくお願いします!」

ゆり「1番目指して頑張りましょう!」

風蘭「どんどん行くぞ。次のチームは、詩穂、心美、望だ」

心美「私、大丈夫かな…」

詩穂「3人で頑張れば大丈夫よ、朝比奈さん」

望「そうそう!望ちゃんにお任せあれ!」

風蘭「よーし、次だー。えーと、次は、桜、楓、昴!」

桜「おぉ。2人がいれば安心じゃ。わしは寝る」

楓「桜も戦うのですわよ!」

昴「罰ゲームだけは避けたい…」

風蘭「はいはい次引くぞ。ふむ、明日葉、あんこ、サドネか」

明日葉「やるぞ、あんこ、サドネ」

あんこ「賞品があって、点数もつくなら負けられないわ」

サドネ「負けられない、ですわ」

風蘭「大分決まってきたな。では次は、花音、うらら、ミシェル」

花音「やるからには1位目指すわよ」

うらら「当然よ!ね、ミミっち?」

ミシェル「うん、うん!」

風蘭「さ、そして最後のチームはひなた、遥香、くるみ」

ひなた「ひなた頑張っちゃうよー!ね、遥香先輩!くるみ先輩!」

遥香「うふふ、そうね」

くるみ「えぇ、頑張りましょう」

193: 2017/01/26(木) 16:41:01.80 ID:usvBj6cjO
番外編「星守センバツ試験③」


風蘭「さて、チームも決まったところでステージの発表だ。今回のステージはHPもMPも1の状態でバトルをスタートしてもらう特別ステージだ」

ゆり「かなり厳しい条件ですね」

蓮華「ゆりちゃんなら大丈夫よ~、蓮華もサポートするから」

おいおい、HPもMPも1ってのはとんだ縛りプレイだな。気合入れすぎだろ御剣先生。

風蘭「その代わり、イロウスは全武器種で相性が得意になるように設定されている。まぁ体力はかなり多くしてしまったが」

遥香「そうなるとどのような戦法でいけばいいのかしら」

くるみ「そういうことは先生とも一緒に考えればいいと思うわ」

八幡「え?」

おい、いきなりこっちに話を振るな。反応に困っちゃうだろうが。特に常磐の声は雪ノ下にそっくりだから余計にビビるんだよ。

風蘭「えー、それから武器は全員どれを使ってもいい。だがスキルはチームメートのスキルは自由に使っていいが、他のチームのスキルは使ってはダメだ」

花音「なら私は詩穂のスキルを使えない訳ね」

詩穂「花音ちゃんが私のスキルを使って大活躍するところ見たかったわ」

相変わらずあそこは百合百合してますねぇ。国枝の愛が重いのが時々怖いけど。うっかりブチ切れたら白い髪に赤い目なんかに変身しそう。

風蘭「では説明はこのくらいにして、早速試験を始めるぞ。まずは蓮華、みき、ゆり。試験会場に移動するから付いて来てくれ」

みき「緊張しますね」

ゆり「普段の実力を出せば必ず勝てるぞ、みき!」

蓮華「れんげも普段通り、2人の可愛い姿を観察してるわ~」

みき「蓮華先輩も戦ってください!」

…大丈夫なのか、このチーム。いやこのチームだけじゃなくて全部のチームに言えることなんだが、急造チームで倒せるのだろうか。まぁそれも御剣先生の狙いなんだろう。

風蘭「ほら、後もあるから早く行くぞ。比企谷、何してる。アンタも来るんだよ」

そう言って御剣先生は俺の襟を掴んで強引に引っ張っていく。

八幡「わ、わかりました、わかりましたから引っ張らないで」

風蘭「 わかったならいい。さ、行くぞ」

198: 2017/01/28(土) 18:30:34.47 ID:1xaMF35t0
番外編「星守センバツ試験④」


俺たちは御剣先生に連れられ、バーチャル空間に移動していた。

八幡「相変わらずすごいなここ」

VRなんか目じゃないほどのリアルさ。まるでSAOの世界の感じ。でもこのままログアウトできないで、アインクラッド編が始まるとかは勘弁してほしい。まずはじめに氏ぬのは多分俺だし。

風蘭「ふふ、アタシの自信作だからな。さぁ、試験を始めるとしようか」

ゆり「まずは戦略を立てなければな!」

蓮華「そうねぇ、HPもSPもないとなると、まずはそれをどう確保するか考えないと。ね、先生?」

八幡「…えぇ。タイムを縮めるためにはスキルを使うことが必須ですからね」

みき「小型ゲルを倒せばSPを回復できるんじゃないんですか?」

蓮華「うーん、でもそれだけだとどうしても足りなくなるわ。他のやり方も考えないと」

ゆり「SPを回復するにはイロウスを攻撃するしかないですよね!」

みき「そうですね!ならどんどん攻撃しちゃいましょう!」

八幡「あぁ、それがいいと思う。っつーかそれしかない」

蓮華「でもただ攻撃するだけじゃダメよね?」

八幡「そこはあれです、SP回復効率を高めればいいんです」

ゆり「どうやるんだ?」

八幡「手は色々ある。嵐や雷なんかで攻撃の手数を増やす。武器にSP回復の効率がよくなるものをセットする、とかな」

蓮華「それとSPの使用量自体を減らせるようにしておくことも大事かしら」

みき「なるほど!だんだん方向性が見えてきましたね!」

八幡「あとはそうだな…メインとなるスキルを決める必要がある」

ゆり「今の私たちにできるスキルから考えると、1番威力の高いのは蓮華先輩のスキルですかね」

みき「ガンからレーザー出すやつですよね!」

八幡「あれは確かに強力だな。ならそのスキルを軸にしていこう。芹沢さんがメインにスキルを使ってイロウスに攻撃、星月と火向井はその補助ってとこか」

蓮華「いいと思うわ〜」

ゆり「燃えてきました!」

みき「頑張ります!」

風蘭「お、決まったか。ではイロウスを出現させるぞ」

八幡「ちょっと待ってください。その前にクリアしなきゃいけない基準点を教えてほしいんですけど」

風蘭「ん?それはすべてのチームの試験が終わってから発表する。だからお前らは各々の全力を出して試験に臨んでほしい」

みき、ゆり、蓮華「はい!」

……なんかうまく煙に巻かれたような気がするが、御剣先生がそう言う以上、目の前の試験に集中するしかないだろう。ま、俺にできることはここまでだし、あとは彼女たちに任せるしかない。

八幡「じゃあ3人とも、頼んだ」

蓮華「え~先生、もう少し気持ちを込めて応援してくれないとれんげたち頑張れないかなぁ」

何言ってくれてるんだこの人。俺のピュアっぷりを弄んでやがる。顔もニヤついてるし…

八幡「あー、星月、火向井、芹沢さん、頑張ってきてください…」

みき「もちろん!」

ゆり「必ず高得点を取ってくる!」

蓮華「行ってきま~す」

3人はそう言い残すと俺のもとから離れていった。はぁ、恥ずかしかった…さて、俺はしばらく見学しときますかね。

224: 2017/02/22(水) 16:11:25.61 ID:QqOURr2f0
以上で番外編「星守センバツ試験」終了です。これからは本編を進めていきます。ちなみに>>1は初めてセンバツでSクラスに入れました。SクラスではなくAクラスだったら罰ゲームの展開にしようと思ってましたが賞品を与えられてよかったです。

引用元: 八幡「神樹ヶ峰女学園?」