1: ◆t8EBwAYVrY 2020/05/01(金) 19:51:20.58 ID:jbRXinNV0


 ・・・・・・ 1 9 5 2 年 ・・・・・・


     ~初夏~

   ――大洗学園艦――


   【大洗女子学園】

教師「――さて、これで必要な書類は全部ね。明日からあなたは大洗の学徒よ」

 「ありがとうございます先生」

教師「それにしても遠くから引っ越してきて一人暮らしなんて大変ねぇ。ちょっと前までは学童疎開なんてのもあったけど・・・えっと、どこから来たんだっけ?」

 「九州です。南の」

教師「まあ、そんな遠くから・・・だけど、どうしてそんなに遠方から大洗に来たの?それも一人でなんて」

 「・・・それは――」

 ガラッ


冷泉久子(高校二年生)「おはようございます。遅刻届を提出に来ました」ダラ~

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3: 2020/05/01(金) 19:56:21.12 ID:jbRXinNV0
教師「あら、ずいぶんゆっくりの登校ね冷泉さん。財閥の令嬢でももう少し早く来るわよ。まあいつものことだけど」

冷泉「嫌味を言わんでくださいよ。大目に見てくださいや」

教師「でも丁度良かったわ。こっちにいらっしゃい。明日からあなたと同じ組に編入する子よ。仲良くしてあげてね」

 「・・・」モジッ

冷泉「学童疎開か」

教師「もう戦争は終わったの。七年も前にね。さあ、自己紹介して」


西住かほ「・・・西住かほです。大洗女子学園二年は組に編入することになりました」ペコリ


冷泉「冷泉久子。生まれも育ちもこの町、根っからの大洗っ子さ。よろしく」

西住「はい」

教師「西住さん、今日の用事は済んだから、校内を散策するといいわ。冷泉さんは授業に行きなさい。午後の授業には間に合うでしょう」

冷泉「ほいよ」

教師「はいは一回」

冷泉「は~い」

4: 2020/05/01(金) 19:59:37.40 ID:jbRXinNV0

冷泉「西住・・・かほさん、だったか?故郷はどこ?」トボトボ

西住「はい、南の方です。九州の・・・熊本から」トボトボ

冷泉「きゅうしゅう!?なんだってそんな遠くから」トボトボ

西住「・・・か、家庭の事情というかなんというか」トボトボ

冷泉「まあ、来ちまったもんはしょうがない。いいとこだからすぐに慣れると思うよ」トボトボ

西住「あ、ありがとうございます。あの・・・ところで私達、どこへ向かってるんですか?冷泉さんは授業に行くんじゃ・・・」トボトボ

冷泉「初めての土地で右も左もわからない女の子をほっぽり出して行くほど、私は冷たくはないよ。冷泉って名だけどね」

西住「・・・は、はあ」トボトボ

冷泉「ほら、こっちこっち」


 ――・・・

 ザザァ~~~ッ・・・

西住「わあ・・・綺麗」

冷泉「絶景だろう?学園艦から眺める海ってのはオツなもんだね。ほら、こっちは大洗の町が見える」

西住「ほんとだ・・・」

冷泉「ここの眺めを見ると活力が湧いてくる。日本は戦争でボロボロになったけど、また元気になる。あたしゃそう思うよ」

西住「・・・戦争・・・・・・」

冷泉「あんなひどいことはもう金輪際お断りだよ」

西住「・・・あの、冷泉さん、授業は?・・・」

冷泉「察しが悪いね。さぼりたいからここにいるんじゃないか」

西住「・・・そ、そうなんですね」

5: 2020/05/01(金) 20:01:55.64 ID:jbRXinNV0
 ――・・・翌日

西住「今日から新しい学校・・・もう故郷とは違う・・・誰も私のことを知らない場所なんだ」

 西住「よーし、西住かほ、心機一転がんばるぞ!」フンス

 西住「・・・ところで、学校ってどっちだっけ?」キョロキョロ


女子生徒「う~~~ん!・・・もう!いい加減シャンとしてよ久子!学校遅れちゃうよ!」ウーンショ!ウーンショ!

冷泉「ぐう・・・」ネムネム


西住「あ、昨日の・・・冷泉さん?」

女子生徒「!・・・そ、そこの彼女!ちょっと手を貸してくれない?このままじゃ遅刻しちゃいそうで」

西住「は、はい。えと、肩を貸せばいいんですね」ヨイショ

冷泉「むぅ・・・お~・・・西住さん・・・こんな夜遅くに会うとは・・・」ウトウト

女子生徒「確実に朝だよ!しっかりしてよ!」


 ~ソレカラドシタノ~

女子生徒「な・・・なんとか間に合った・・・」アブネー

冷泉「ぐう」

西住「冷泉さん、教室でもまだ寝てる・・・」

女子生徒「この子はいっつもこうなの。ところで君、転校生?久子の知り合い?」

西住「あ、はい。西住かほです。昨日冷泉さんと知り合いました」

女子生徒「私は武部 薫子(たけべ かおるこ)。同じ組だし、よろしくしてね!」

西住「は、はい。ありがとうございます」

武部「ところで、男前の兄弟とかいない?私、お見合いに憧れてるんだ~」

西住「・・・き、気が早いですね」

6: 2020/05/01(金) 20:05:34.32 ID:jbRXinNV0
冷泉「うーん・・・もう朝か」セノビー

武部「正午だよ」

西住「冷泉さん、午前中ずっと寝てましたね」

武部「この子、毎朝新聞配達の仕事してるんだよ。中学に上がった頃から毎日。自転車で学園艦を北へ南へ東奔西走」

西住「そ、それはすごいですね。だから眠いんだ・・・」

冷泉「大洗はあたしの庭」ブイ

武部「久子、今日の分ある?」

冷泉「ん」ガサッ

西住「武部さん、新聞読むんですね」

武部「世の中の動きを常に把握しておくのは乙女のたしなみだよ」

冷泉「こいつは早く嫁ぎに行きたくて色々と無駄な努力をしてるのさ。本性は田舎から出てきたド百姓の娘だ」

武部「誰がド百姓よ!」

西住「あはは・・・」

武部「あ、見てみてこの記事。《戦車道連盟、第二次大戦中の戦車の試合参加を正式決定》だって」ガサ

 西住「!」

冷泉「戦車道?」

武部「《1945年8月15日までに設計が完了して試作されていた車輌の試合への導入が新たに認められた》・・・だって。戦車道なんてまだやってる人いるのかな」

冷泉「戦争が始まって誰もやらなくなった・・・というか出来なかったからね。昔の車輌は全部軍に持ってかれたし」

武部「終戦したから戦車道人口を増やそうとしてんだろうけど、ねえ・・・今の御時世、誰が好き好んで戦車に乗るかな」

冷泉「相当の変わり者か、よほどの戦車好きかだね」

武部「それに、戦車に乗って大砲撃ち合うなんておっかないよね・・・せっかく平和になったのにまた戦争みたいなことするなんて、私はいやだなぁ」

冷泉「誰だってそうさ」

西住「・・・」

7: 2020/05/01(金) 20:09:34.65 ID:jbRXinNV0
>>6
せっかく平和になったのに~:第二次大戦で日本と戦争状態にあった連合国諸国と『サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)』が1951年に結ばれ、1952年の春に発効された
 このSSの時代は、戦後ようやく日本の主権が回復した時代であり、平和条約が発効されて2ヶ月ほど経ったばかりの夏の始まりの頃である

新聞配達:当時の新聞配達は早朝には配られず、夕方に配られることが多かったらしい

8: 2020/05/01(金) 20:11:09.58 ID:jbRXinNV0
女子生徒「・・・・・・あ、あの!」

西住「わ!?」ビクッ

女子生徒「あっ、わっ、す、すみません・・・驚かすつもりでは・・・」

西住「い、いえ・・・・・・えっと・・・あなたは・・・」

冷泉「あー、秋山ヤヱって子だよ。散髪屋の子」

秋山「秋山と申します。あの・・・西住さん、自己紹介の際に南の方から来られたと仰ってましたが、もしかして“あの”西住さんですか?」

 西住「!」

武部「あの?どの?」

秋山「戦車道の伝統ある流派、西住流のことです。九州地方に総本山があるのでもしやと思ったんです!私、戦車のことが好きで好きで!」

冷泉「物好きいた」

秋山「父が戦時中、戦車の製造をしてる工廠の技師でして、よく戦車の話を聞いてるんです!そして西住流戦車道は大昔から戦前まで続く歴史ある流派で――」

西住「――ご、ごめんなさい!私ちょっと用事思い出しました・・・!」バッ タタタ

武部「ちょ、ちょっとかぽりん!」

秋山「あっ・・・やはり人違いだったんでしょうか・・・」

武部「戦車道の西住流って・・・も、もしかして私達、きついこと言っちゃったかな?」

冷泉「・・・」

9: 2020/05/01(金) 20:19:52.28 ID:jbRXinNV0
 ――・・・

 ザザァ~・・・

西住「はぁ・・・」ショボン


冷泉「やっぱりここから眺める海は綺麗だろ」

西住「!・・・冷泉さん・・・ごめんなさい。突然飛び出して・・・秋山さんにも失礼だったかな」

冷泉「あたしゃ秋山と違うから計れんね」

西住「・・・・・・私・・・西住流の・・・戦車道の家元の子なんです」

冷泉「さっきの会話で察しはつくさ。すまんかった。知らなかったとはいえ」

西住「いえ・・・仕方ないことですよ」


西住「実家は戦車道流派の本家で・・・昔は良かったんです。歴史と伝統のある神聖な武道だと敬われて・・・」

 西住「だけど、戦争で全てが変わってしまった・・・」

冷泉「・・・」

西住「やっと戦争が終わったのに今さら誰も戦車になんか乗りたがらない。戦車道はもう廃れるだけ・・・」

 西住「戦車道に未来は無い・・・そう考えたお母さんは、私を戦車道から遠ざけるために大洗に引っ越しさせたんです」

 西住「西住流を・・・継がせないために」


西住「でも・・・私・・・戦車道が好きなんです・・・」

 西住「戦争は嫌いだけど、戦車は好き・・・この気持ちに嘘はつけない・・・」

 西住「一人じゃ無理でも仲間と一緒なら大きな戦車だって動かすことができる。そんな戦車が大好きなんです」

 西住「皆で力を合わせて一つの戦車を動かす・・・お互いに支え合って目標を成し遂げる・・・戦車道は人生の大切なことがたくさん詰まってる」

 西住「だから戦車道が好きなんです。その素晴らしさを・・・もっと多くの人にも知ってほしい」

 西住「でも・・・私にはどうすることもできない・・・どうすることも・・・」

10: 2020/05/01(金) 20:24:06.50 ID:jbRXinNV0
冷泉「よし、わかった」パン

西住「・・・?」


冷泉「あたしもやるよ、戦車道」


西住「!・・・え?・・・・・・な、何で・・・」

冷泉「なんにも知らないドが付く素人だが、あんたの話を聞いてたら興味が湧いた」

西住「!」

冷泉「あんたが好きだと言う戦車道がどれくらい面白いもんなのか気になったからね、一緒に戦車道やろうって言ってるんだよ」

西住「で、でも・・・」

冷泉「あたしらで戦車道の素晴らしさってやつを天下に響かせてやろうじゃないか」ニカッ

西住「・・・冷泉さん・・・」

冷泉「あたしのことは久子って呼んでくれ。敬語もやめだ。あたしもあんたのこと、かほって呼ぶからさ」

西住「・・・ほ、本当に・・・一緒に戦車道・・・やってくれるんですか?」

冷泉「勘違いしなさんな。やりたいからやるだけだよ」

西住「!・・・・・・あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」


西住「・・・・・・でも、このご時世に戦車道やるなんて、よっぽどの変わり者なんですね・・・」フフ

冷泉「お互いにな」ニヤリ

12: 2020/05/05(火) 17:11:11.18 ID:jKujAodT0

 ――・・・翌日

冷泉「ぐう・・・ぐう・・・」スヤァ!

西住「うーんしょ、うーんしょ・・・ひ、久子さん・・・しっかり歩いてよ~」ズリズリ

冷泉「起きてる・・・起きてるから・・・」スヤヤカァ!

西住「昨日あんなに威勢良かったのにこれだもん・・・」ズリズリ

風紀委員「学友の肩を借りて登校とはずいぶんな御身分ね冷泉さん」

西住「!・・・お、おはようございます」

冷泉「おお~そど子~・・・」ウトウト

風紀委員「そど子って呼ばないで!私の名前は園のど子!省略しないで呼びなさい!」

冷泉「わかったわかったそど子~・・・」ウトウト

そど子「こ、この寝坊助・・・っ!」ワナワナ

西住「す、すみません。久子さん朝からお仕事で大変だそうで・・・」

そど子「知ってるわ。だからって学徒の本文が疎かになっていい理由にはならないでしょ」

西住「あう・・・」

そど子「もう教室に行きなさい。転入生の西住さん、あんまり冷泉さんに関わりすぎるとあなたまで不良生徒になっちゃうわよ」

西住「えぇ・・・そ、そうなんですか?・・・伝染しないように気をつけます」

そど子「・・・もう遅いかもしれないわ」

13: 2020/05/05(火) 18:25:00.12 ID:jKujAodT0
 ――・・・

武部「せ、戦車道をやる~!?」ガタン

秋山「本当ですかぁ!?」パァー

冷泉「声が大きい。頭に響くからやめろ」

武部「昨日あんなけ戦車など流行らん言うちょったのになしてそなら心変わりしたべか!?」

西住「どこの言葉ですか・・・?」

冷泉「こいつはハイカラになりたくて普段は都会言葉で飾りたててるんだが、素はこんな感じの田舎っぺなんだ」

武部「かほちゃんの実家が戦車道のすごいとこだってことはわかったよ。昨日はひどいこと言っちゃってごめんね」

西住「あ、いえ」

武部「ほんでもこんなご時世に戦車て風代わりにもほどがあんべや!それにどこに戦車があるってんべ!」

冷泉「それならなんとかなる。この新聞記事を読んでみな」ガサッ

秋山「なになに・・・《戦車道連盟は、戦車道普及を目的として活動する自治体、教育機関から申請を受ければ、戦車を贈与すると発表した》・・・」

冷泉「ようするに連盟から戦車がもらえるってことさね。切符がいいねぇ」

西住「連盟もみんなに戦車道をやってほしいんですね」

冷泉「っちゅーわけでさっそく申請を出しておいた。今日の夕暮れには戦車が手に入るって寸法よ」

武部「手際がよろしい!」

冷泉「あたしらで落ち目の武芸を復権させようさ」

秋山「戦車道業界を盛り上げるということですか!?」

冷泉「日本中を巻き込んで戦車道人気を爆発させるつもりだよ」ニヤリ

武部「で、でもでも!どうやって人気を広めるの!?全国行脚してチラシでも配るの!?」

冷泉「大会を開くのさ。戦車の大会をな」

武部「な、なんじゃとて!」ガターン

14: 2020/05/05(火) 19:51:09.88 ID:jKujAodT0
冷泉「賞金を懸けた大会だよ。人口の少ない競技で大金をかけりゃ、素人でも勝てるかもって甘い考えの連中が大挙するよ」

武部「くち悪ぃ~・・・」

冷泉「戦前に戦車道やってた学校だってあるだろうさ。そいつらを呼んで大規模にやるのさ」

西住「なんだか大事になりそう」

秋山「私は戦車に関われるだけでもヨダレものですっ!」ズビッ

武部「・・・そうですか・・・それではみなさんがんばってください」シュタ

冷泉「待て。お前にやってもらいたいことがある」ガシ

武部「ほらきた!巻き込まれるのは目に見えてたよ!」

冷泉「あんた、他校にも連れ合いがいるだろう。他校の連中に戦車道大会のことを広めてくれ。話が広まっていくようにな」

武部「・・・ま、まあそれくらいなら・・・」

冷泉「それから大会の運営やら賞金やら援助してくれる支援者を探してくれ」

武部「無茶来たよこれ!」

冷泉「景気の良い人間を見つけだして手を組むように丸めこむんだ。大会には出資者が必要なんだよ」

武部「ほれほれ無茶苦茶言いよるよこの子は!」

冷泉「あんたの顔の広さなら羽振りの良い成り金の一人や二人見つかるだろ。上手いことだまくらかして金を出させな」

武部「く、くちわりぃ~・・・」

冷泉「任せたよ。やってやれねーことはねーだろう」

西住「がんばってください武部さん!」

秋山「大会の是非は武部殿の双肩にかかっております!」

武部「っ・・・わ、わかった。でも期待はしないでよ」

冷泉「あたし達は戦車を受け取って操縦練習に取り組むとするよ。かほも操縦したことないんだろう?」

西住「はい。物心ついた時からもう戦争だったので・・・」

冷泉「だったら目一杯練習しないとだね。せっかくなら一等賞取らなきゃな」

15: 2020/05/05(火) 21:35:43.36 ID:jKujAodT0




 ――・・・翌日

冷泉「・・・こ、これが戦車だと・・・」ワナワナ

 >バラバラ~ッ・・・<

秋山「まさかばらばらの状態で送られてくるなんて・・・しかも所々部品が欠けてる・・・」

武部「がらくたを押しつけられたんじゃないの?」

西住「戦車道連盟からの文書も同封されてますよ」ペラ

 手紙《現在、戦車道連盟が用意できる戦車はこれが精一杯です。すまんの》

冷泉「野郎・・・だまくらかしやがったな」

秋山「大丈夫です!私にお任せくださいぃ!闇市で部品を集めて完成させてみせます!」

西住「す、すごいですね」

冷泉「武部、出資者の件はどうだい?」

武部「ふっふーん、この私を甘く見ないでくれますかね!ちゃーんと資金援助してくれそうな人と連絡を取ったよ!」ブイ

西住「ほ、本当ですか!?」

武部「実はこれからその人の家に話をつけに行くことになってるの。皆で説得してたくさん資金を出してもらおうよ!」

秋山「私は残って戦車組み立てに尽力します!」

冷泉「ようし、そいじゃあ成金野郎を舌先三寸で踊らせてむしり取ろうじゃないか」

武部「く、く、くちわりぃ~・・・」

16: 2020/05/05(火) 22:18:51.01 ID:jKujAodT0
 ――・・・

 <カコンッ・・・

冷泉「こんな大きなお屋敷の広間に案内されるとは驚いたね」

西住「武部さん、お相手はどんな人なんですか?」

武部「中等学校の頃の友達でね、家業を継ぐために高等学校には進まず家で修行してるの」

西住「家業を継ぐために・・・」

 襖<ススーッ・・・

冷泉「来たよ」


五十鈴「ようこそいらっしゃいました。私、華道五十鈴流長女、五十鈴梅と申します」スッ・・・

武部「梅、久しぶり~」

五十鈴「そちらの方々が薫子さんのご友人の西住かほさんと冷泉久子さんですね」

西住「は、はじめまして・・・!」

冷泉「話が早いね。何故私達が出向いたかも知ってるんだろう?」

五十鈴「なんでも戦車道の催しを開きたいので資金面での援助をしてほしいと・・・我が五十鈴流に出資者になってほしいということですね」

冷泉「そこまでわかってて招き入れてくれたってことは、この話に乗ってくれるんだね」

西住「ほ、本当ですか!?」パァ

五十鈴「お断りします」

西住「ぁぅ」シュン

五十鈴「戦車道のような野蛮で下品な武芸に助力するつもりはありません。戦争を思い起こさせるようなものになぜ助力をする必要がありましょうか」

武部「梅ぇ・・・」グスン

17: 2020/05/05(火) 22:26:50.55 ID:jKujAodT0
五十鈴「――ですが・・・」

西住「・・・!」

五十鈴「戦後七年・・・先日、日本と米国の安全保障条約が発効され、日本は本当の意味で戦争から解放されましたね」

 五十鈴「これから日本は再生しなければならない。人々に活気をもたらすための『なにか』が必要だと日々考えておりました」

 五十鈴「あなた方の仰る戦車道の大会・・・この大洗の皆さんに景気を付けることが出来るかもしれません」

武部「!」

五十鈴「なにより、戦車道の大会を開くことは世が平和になったことの証」

 五十鈴「戦争の象徴でもあった戦車で女子が競い合い切磋琢磨するなど戦時中には考えられないことですからね」

武部「た、たしかに・・・」

五十鈴「平和になったからこその戦車道の復権・・・そこに大きな意義があると私は思います」

 五十鈴「そして・・・西住かほさん、あなたの真剣な眼を見て気が変わりました。お母様に・・・五十鈴流家元に話を通しましょう」

西住「ほ、本当ですか!?今度こそ本当ですか!?」パァ

五十鈴「戦争が終わった日本の・・・この大洗の復興に一役かえるのなら力は惜しみません。あなた方に五十鈴流は出資いたします」

西住「やったぁ!やったね久子さん!」ダキッ

冷泉「話のわかる奴で助かったよ」

武部「さっすが梅!いよっ!太っ腹~!」

五十鈴「戦車道と華道・・・武芸の道をゆく者同士、力を合わせましょう」

西住「はい!ありがとうございます!」

冷泉「これで金の工面はなんとかなったね。景気よく羽舞っておくれよ、五十鈴さんよ」ハッハッハ

五十鈴「・・・冷泉久子さん、あなたは少し眼に邪な色が混じっておりますね」

18: 2020/05/09(土) 21:22:38.66 ID:8RnpTjPs0
 ――・・・数日後


 ――・・・大洗女子学園

 <ジジジジ・・・

秋山「ふぅ・・・」ガパッ

冷泉「どうだい調子は」

秋山「なんとかやってますが・・・やはり部品が足りませんね。なによりエンジンが闇市でも手に入らなかったので困ってます」

西住「マトモなエンジンなんて今のご時世じゃ流通してなさそうですもんね」

秋山「このままじゃ走らせることもできません・・・なんとか手を考えなければ・・・」


五十鈴「皆さんおはようございます」

西住「五十鈴さん!お、おはようございます」

冷泉「出資者様のお通りだい」

秋山「ははぁ~っ!」ペコーッ

五十鈴「やめてくださいなそういうのは」

冷泉「へへへ」

武部「どしたの梅?学校にまでわざわざ来るなんて」

五十鈴「どしたのはないでしょう。先日もお話しした通り、お力添えをしてくれそうな方々との会合の日ですよ」

武部「え”っ」

西住「・・・はじめて聞きました」

五十鈴「『五十鈴流の他にも支援してくれる方々を見つけたので、大洗の皆さんと話し合いの席を設ける』と、皆さんにお伝えくださいと話しておいたのですが」

冷泉「・・・武部」

武部「ごめん・・・忘れてた」

19: 2020/05/09(土) 21:43:28.29 ID:8RnpTjPs0
 ――・・・大洗港

 デーーー《聖グ口リアーナ女学院学園艦》ーーーン

  ドーーー《サンダース大学校付属高等学校学園艦》ーーーン


冷泉「でっけぇ学園艦だね。金持ちは違わあ」

五十鈴「華道五十鈴流のお得意様である二校に話をしたところ、是非乗りたいとおっしゃられたので、わざわざ寄港していただいたんですよ」

西住「聖グロとサンダースも協力してくれるかもってことですか!?」

五十鈴「話がうまく纏まれば、ですが。これから両校の代表の方と会合です。一緒に行きましょう」


 ――・・・とある喫茶店

聖グ口リアーナ隊長「私、戦グ口リアーナ女学院の隊長を務めております、田尻と申します。ダージリンと呼んでください」

サンダースキャプテン「私はサンダースのキャプテン、おケイって呼んでね!」

西住「に、西住かほです。本日はわざわざお越しいただいてすみません」

冷泉「冷泉久子だ。ご両人、ウチのヤマに一口噛みたいってわけだね」

おケイ「ザッツライト!私達もスポンサーとして大会運営に協力するわ!」

田尻「世間に戦車道の灯火が燃え上がる様をお見せしたいと思っていたところですの」

西住「あ、ありがとうございます!」

五十鈴「では細かい話はまた後日私から通しましょう」

西住「久子ちゃん、聖グロとサンダースはお金持ちだから戦車もいっぱい持ってるし、戦前も戦車道やってた古株なんだよ」

冷泉「そいじゃものは相談なんだけどさ、ご両人」

おケイ「なにかしらん?」

冷泉「あたし達ゃ戦車を組んでるんだけどね、どうもエンジンやらなんやらが足りなくって困ってんだ。部品をカンパしてもらえないかね」

田尻「んっふ、そんな相談はじめてされたわ」

おケイ「おーケイ!戦車が完成してないと大会どころじゃないものね」

田尻「こんな諺があるわ。『敵に塩を送る』・・・仕方ないけれど、おケイの言う通り、相手がいないんじゃしょうがないものね」

冷泉「へっへへ、助かるよ。よかったなかほ」ポンポン

かほ「あはは・・・あ、ありがとうございます」

20: 2020/05/24(日) 19:30:16.10 ID:YlSpBz6i0
田尻「ところで、概要は決まってるのかしら。大会の競技内容、規定、参加資格・・・諸々を教えてちょうだい」

西住「そ、そういえば全然考えてなかった・・・」

おケイ「そんなの決まってるじゃない。対戦トーナメントで誰が一番強いか決めるのよ!」

冷泉「そりゃ反対だね」

おケイ「ワッツ!?なぜホワイ!?」

冷泉「ドンパチ勝負じゃ金持ってるアンタらが有利だ。余所の学校が参加を渋っちゃ困るよ」

五十鈴「なら何をするのでしょう?」


冷泉「戦車競走だよ」ニヤリ


おケイ「オー!戦車でレースってわけね!」

田尻「ルールは?」

冷泉「各校隊長を決め、隊長車が一番早く目標地点(ゴール)を通過した学校が優勝。それだけさ」

田尻「なるほど。逆に言えばそれ以外はなんでもアリ・・・と」

おケイ「会場はここ、大洗ね!チームの車輌上限は5輌でどう?」

田尻「コースを外れた場合、その地点から再開すること。白旗判定が出れば失格・・・と言ったところかしら」

冷泉「面白そうじゃないか」ニヤ

五十鈴「お野蛮な・・・」

田尻「大会要項を全国の学校に通達するわ。戦車道を再開している学校も多いからきっと参加するはずよ」

五十鈴「大洗の地元の方々にも協力を要請しましょう。町を挙げて大会を盛り上げ、復興の景気づけにいたします」

西住「な、なんだか・・・ほんとに戦車道の大会をやるんだって気になってきましたね・・・!」ワクワク

冷泉「小さな夢が大事になったもんだ」ニシシ

21: 2020/06/22(月) 21:01:40.14 ID:WpsWEF080
 ――・・・大洗女子学園

西住「――というわけで、聖グロとサンダースも協力してくれることになったんです」

武部「はぇ~、どんどん規模が大きくなってくね」

冷泉「そして先刻、サンダースと聖グロから届いた部品を秋山が組んでくれてるとこさ」

 秋山「みなさ~ん!」フリフリ

冷泉「おっ、噂をすれば」

秋山「ついに・・・ついに完成しました!」バッ

西住「あれは・・・」


 Ⅳ号<・・・・・・


西住「『Ⅳ号戦車』・・・!」

武部「ほんとに組み上げちゃった・・・よく作り方知ってたね」

秋山「説明書を読んだんです!」コマンドー!

冷泉「そいつを見せてくれ」

秋山「あ、はい」サッ

冷泉「・・・」パララララ・・・

秋山「わ・・・すごい。目にも止まらぬ速度で説明書を読んでる・・・」

冷泉「よし、動かし方はわかった。行くよかほ、さっそく運転だ」

西住「えっ」

冷泉「二週間でこいつを手足と同じくらい馴染ませなきゃならんのだ」

西住「は、はい・・・!」

22: 2020/06/22(月) 22:45:33.94 ID:WpsWEF080
 ――・・・

西住「本当にいいんですか?大会運営を生徒会にお任せして・・・」

生徒会長「いいのいいの~。ウチとしても大洗が盛り上がるのはうれしいし」

冷泉「地元の人達とは話はついてるのかい?」

会長「みんなお祭り気分でやる気いっぱいだよ。当日は屋台とか露天もたっくさん出るだろうよ」

五十鈴「先日開業した大洗水族館もいい宣伝になると乗り気です」

冷泉「町中を競争(レース)の行路(コース)にする許可の方は?」

会長「ちゃ~んと認可されたよ~ん」

西住「すごい。さすが会長さん」

会長「ふふふ、もっと褒めるといい」フンス

西住「・・・町中がコースなんですよね?もし戦車が建物にぶつかったりしたら・・・」

五十鈴「その辺りは我々すぽんさぁが保証しますので大丈夫です」

冷泉「町をブッ壊しても五十鈴流とサンダースと聖グロが修繕費を持ってくれるってこったね」

会長「地元の大工さんも儲かるし、ウハウハじゃ~ん」

五十鈴「・・・と言っても、無意味な破壊行為はご遠慮ください。特に冷泉久子さん」

冷泉「あたすかい?」

五十鈴「すぽんさぁがいるからと無茶な運転で家屋を壊さないように」

冷泉「ちぇっ、信用ないね」

五十鈴「無論です」

23: 2020/06/22(月) 22:47:17.94 ID:WpsWEF080
>>22

大洗水族館:県立大洗水族館(現アクアワールド・大洗)は、1952年6月に開業した

24: 2020/06/22(月) 22:49:57.18 ID:WpsWEF080
 ――・・・

西住「皆さん今日も打ち合わせに集まっていただきありがとうございます」

田尻「今日の議題は利益配分についてでしたわね」

冷泉「Zzz・・・」

五十鈴「約一名お眠りになられてますが」

おケイ「ヘイ!ヒサコ!スタンダップ!グッモーニン!」ユサユサ

冷泉「うぅむ・・・何ぴとたりとも私の眠りを妨げる者はゆるさん・・・」ムニャムニャ

西住「すみません、久子さん今日も朝から新聞配達をしてたので・・・」

田尻「冷泉さん、大会の収益に関する話をしたいのだけど」

冷泉「ん・・・ああ、そうか・・・ウチの生徒会が元締めで賭博をする。利益の2割をアンタ達にそれぞれ配分するのでいいやね」

五十鈴「私達は見返りが欲しくて援助してるわけではないのですが」

冷泉「スポンサーなんだから黙って受け取りな。その後で寄付するなり懐に入れるなり好きにしなよ」

五十鈴「・・・ぶっきらぼうな方」

冷泉「ウチとしては見物客がたくさん来て大洗に金を落とすことが目的だよ」

おケイ「オ~ゥ、さっすがヒサコ。竹を割ったようなサッパリした性格ね」

冷泉「その代わり客はたくさん呼んでおくれよ」

おケイ「おっケ~イ!」

冷泉「ガッポリ稼がせてもらおうじゃないの」ニヤ

田尻「邪悪な笑み」

25: 2020/06/22(月) 22:52:09.02 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 Ⅳ号<ギャラギャラギャラ!

秋山「すごい!もう運転を完全にモノにしてますねェ!」

 Ⅳ号<・・・ギキィーッ <パカッ

冷泉「いや、まだまだだ。曲線での舵取りが甘い。それに速さも足りないね。改善点は山積みだ」

西住「厳しいなあ」

冷泉「かほの指示は的確だよ。運転席じゃ見えない範囲までキチンと見通してくれてる」

西住「えへへ」

冷泉「だが状況判断からの操縦指揮に時間差(ラグ)がある」

西住「えっ」

冷泉「車長は操縦手に足で指示を出す。アンタの指示はエンリョして腰が引けてるから正確さに欠けてんだよ」グイ

西住「うぐっ」

冷泉「もっと本気で蹴らんかい!判断が鈍るんだよ!」

西住「そ、そんなこと言ったって・・・」

冷泉「本気で勝つ気あんのかい!?エンリョしないでガンガン蹴るんだよ!わかったかぃ!」

西住「ふえぇ~」

冷泉「秋山!闇市に行くよ!もっとⅣ号を改造して速度と操縦性を尖らすんだよ!」

秋山「わっかりましたぁ!」

武部「んなことやって大丈夫なの久子?」

冷泉「どあほう、マトモなままじゃ勝てんわ」ニヤリ

武部「やな予感~・・・」

26: 2020/06/22(月) 23:04:05.87 ID:WpsWEF080
 ――・・・

そど子「大洗で戦車競走~!?」

冷泉「ひいてはそど子達風紀委員に警備を任せたい」

そど子「なに考えてんのよ!町中で戦車のかけっこなんて危ないじゃない!」

冷泉「生徒会長も大洗の町人も了承済みだ」

そど子「んなっ・・・!」

冷泉「安全面の確保やら人員規制やら、手が回らない。ケガ人を出さないにはそど子と風紀委員の協力が不可欠なんだよ」

そど子「調子いいこと言っちゃって・・・」

冷泉「安全のために尽力してくれるよな?」

そど子「あなたねえ・・・」

冷泉「風紀委員総動員すりゃなんとかなるだろ。アンタにしかできないことだよ。頼むぜ風紀委員長さん」

そど子「~っ!・・・わかったわよ!言っておくけど冷泉さんのためじゃなくて世のため人のためだからね!」

冷泉「期待してるよ」


そど子「・・・冷泉さん、なんだか楽しそうね」

冷泉「あ?」

そど子「今までのあなたって、もっと無気力というか、いつもけだるそうにしてたじゃない。今のあなたはハキハキしてるわ」

冷泉「ま、戦車道ってのも案外楽しいからね。そいじゃあ大洗の安全を任せたよそど子」

そど子「そど子って呼ばないで!」

27: 2020/06/22(月) 23:05:54.14 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 おケイ「学園艦に住んでる生徒以外の人達も観光に来てもらうわ」ガヤガヤ

    五十鈴「優勝賞金は我々出資者がカンパし合った額ということで」ガヤガヤ

  田尻「大会名は《大洗ダービー》にしましょう」ガヤガヤ

 冷泉「地元の連中は生徒会がガッチリ抱え込んでる。心配はいらないよ」ガヤガヤ


西住「・・・」フフ・・・

冷泉「ム、どうしたんだいかほ」

西住「みなさん・・・改めて本当にありがとうございます。力をかしてくれて・・・」

おケイ「ハッ!うぉーたーくさいこと言わないの!」

田尻「戦車道の復権は私達の望みでもあるわ。むしろきっかけをくれたかほさんに感謝してるくらいなのだから」

五十鈴「町の復興の一翼を担えるのなら多少の出資も惜しみません」

西住「みなさん・・・」

五十鈴「戦車道大会はあなた一人の夢ではなく私達の夢でもあります」

冷泉「尽くしてもらって悪いが、勝つのはウチだよ」

おケイ「それはこっちの台詞よ」ニカ

田尻「『イギリスは恋と戦争では手段を選ばない』・・・慢心してると痛い目を見ることになるわよ」

冷泉「上等だ。あたしらの走りを見せてやるよ。な、かほ」グイ

西住「は、はい!」

五十鈴「ふふ・・・」

28: 2020/06/22(月) 23:23:16.76 ID:WpsWEF080
 ――・・・

 Ⅳ号戦車改<カチャカチャ

冷泉「よし、調整終わったよ」フキフキ

西住「お疲れ様。いよいよ二日後だね・・・大会」

冷泉「明日は参加校が前入りして最後の打ち合わせだ。戦車をイジれるのは今日までだろうさ」

西住「と言っても、聖グロとサンダースの他に来てくれる学校があるかわからないけどね」

冷泉「私達だけだったとしても精一杯やってやろうや」

西住「ありがとう冷泉さん・・・」

冷泉「ん?」

西住「色々と力になってくれて・・・本当に戦車道の大会ができるなんて・・・冷泉さんがいなかったら、きっと無理だった」

冷泉「よせやい。あたしゃ好きでやってんだ。礼を言われるようなことじゃないよ」

西住「・・・冷泉さん」

冷泉「あと、いい加減冷泉さんってのはやめとくれ」

西住「・・・そうだね、久子ちゃん。本当にありがとう」

冷泉「あん?」

西住「私と友達になってくれて・・・私、久子ちゃんにあえてよかった」

冷泉「・・・・・・馬鹿だね・・・まったく」


 冷泉(逆だよ・・・かほ)

 冷泉(かほ・・・・・・あたし)

 冷泉(あたし・・・あんたとあえて本当によかった)

29: 2020/07/20(月) 14:49:36.39 ID:tkpwGIEV0

 ――・・・

 \ワイワイガヤガヤ/ \トンテンカン トンテンカン/ \ワイワイガヤガヤ/

 「お~い、これ持ってっていいのか~?」ドヤドヤ

   「よーし、持ったぞー。いくぞ、せーっの!」ガッシャン

  「誰だここの木材持ち出したやつ~!」ヤイヤイ


西住「わあ・・・道にたくさん露店が」

冷泉「町をあげてのお祭りだからね」

西住「こ、こんなに大事になっておいて参加校少なかったらどうしよう」

秋山「運営の方は生徒会の皆さん中心に問題なく動いてるようです」

冷泉「今のところは順調だね」

西住「ど、ドキドキしてきた・・・」

冷泉「賽は投げられたんだ。出目は変えようがないよ」


武部「大変でんがなたいへんでんがな~!」ドタバタドタバタ

西住「た、武部さん!」

秋山「港で受け付けをしているはずがなぜここに・・・ま、まさか何か事故でも!?」

武部「とんでもなーことになっとるべや!みんな来てくんろ!」

冷泉「かっぺ言葉を出すな。なにがどうしたかちゃんと言ってくれ」

武部「どーもこーもにゃーよ!めっちゃくちゃたくさんの学園艦が寄港してんべや!」

西住「!」

30: 2020/07/20(月) 14:51:47.02 ID:tkpwGIEV0
 \\\ ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン ///

   《プラウダ高校》
            《アンツィオ高校》
 《聖グ口リアーナ女学院》
                  《BC高校》
  《サンダース大学校付属高等学校》
《知波単学園》
        《黒森峰女学院》
               《自由学園》
    《継続高校》

 /// デーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン \\\


秋山「!・・・」アゼン

西住「すごい・・・学園艦がこんなにたくさん・・・」

冷泉「こんな光景そうそう見れないね」

秋山「見てください。次々と学園艦が来ますよ!」

西住「ベルウォールに楯無高校、ボンプルや竪琴、コアラの森まで!」

冷泉「どうやらあんたの悩みは杞憂だったようだね、かほ」


田尻「ごきげんようかほさん」

おケイ「ハーイかほ!いろんな学校に声かけてたくさんウェルカムしたわ!」

西住「ダージリンさん、おケイさん!あ、ありがとうございます!まさかこんなにたくさん色んな学校が来るなんて・・・」

田尻「参加はせずとも大会を見に来た学校も多いみたいよ。マジノ女学院や青師団もそう」

おケイ「戦車道を盛り上げたいって人は日本にいっぱいいたってことね♪」

西住「・・・はい!」

31: 2020/07/20(月) 14:55:44.92 ID:tkpwGIEV0
プラウダ指導者「大洗の西住と冷泉ってのはどの子?」ザッ

西住「!・・・は、はい!私達ですが・・・」

冷泉「なんだい」

プラウダ指導者「あなたたちね、この大洗の戦車道大会を企画したのは」

西住「え、えと・・・そうですが・・・な、なにか・・・?」

プラウダ指導者「ハラショー!ピロシキー!」ダキッ

西住「!?・・・え、え!?」アタフタ

プラウダ指導者「よくぞやってくれたわ!貴方たちが大会を開いてくれたおかげで戦車道復権のキッカケになったわ!」

 プラウダ指導者「この大会で世間に戦車道のすばらしさを知れ渡らせることができる!ありがとう!」

西住「い、いえ・・・私達だけの力では・・・」

プラウダ指導者「私はプラウダ高校のシドーシャよ!でも、言っておくけど優勝は私達のものよ!」ニカッ

冷泉「そいつは聞き捨てならないね。勝つのはウチだよ」

 プラウダ生徒「ドテチン」

冷泉「!?・・・な、なんだって?」

シドーシャ「その子はクララ。ソビエト連邦から来たウチの生徒よ!砲撃の名手なんだから!」フンス

クララ「ドッテチ~ン(※よろしくお願いします)」

冷泉「そびえと・・・北方の国だね。そんなよくわかんないお国の人間を招き入れるなんて、少しおっかないね」

シドーシャ「あら、生まれた所や皮膚や目の色で一体この子の何がわかるっていうの?クララはすごいんだから!」

クララ「ホッホホ~イ(※照れますな~)」

冷泉「む・・・そうだね。あんたの言う通りだ。すまんねクララとやら、失礼なことを言っちまったよ」

クララ「ええんやで」

冷泉「!?」

32: 2020/07/20(月) 14:56:55.72 ID:tkpwGIEV0
>>31

ソビエトから来た~;戦後当時、アメリカ人が日本に来ることはよくあったが、ソ連人は滅多にいなかった。北海道等の東北には来てたかもしれないそう

33: 2020/07/20(月) 20:13:11.27 ID:tkpwGIEV0
知波単隊長「おお!あなた方が西住さんと冷泉さんですね!本日はお招き頂きありがとうございます!」ペコォー

西住「い、いえいえ。こちらこそ来ていただいてありがとうございます」

知波単隊長「我々知波単学園も本大会に参加させていただきます故、お互いに尽力いたしましょう!」アクシュ ブンブン

西住「は、はい。こちらこそがんばります」

冷泉「かほ、戦う前に気圧されるんじゃないよ」

西住「う・・・そうだね。知波単学園さん、負けませんよ~!」グググ

冷泉「阿呆か」

知波単隊長「むむむっ!闘争心を燃やしておりますな!我々とて負けるつもりは毛頭ありませんよ!」

西住「私達も負けないですよ!私と久子ちゃんが一緒なら10万馬力だもん!」フンス!

知波単隊長「おお!それは手強そうですな!貴校の検討を祈ります!」アクシュ!

西住「こっちだって祈ります!」アクシュ!

冷泉「どあほうか」

34: 2020/07/20(月) 20:13:51.19 ID:tkpwGIEV0
>>33

10万馬力~:1952年の4月に『鉄腕アトム』の連載開始された

35: 2020/07/20(月) 20:19:32.61 ID:tkpwGIEV0
BC高校隊長「君がこの大会の開催者だね。我らもレースに参加させてもらうよ」

西住「もちろんです。ありがとうございます」

BC高校隊長「君達の熱い戦車道愛・・・我々も感銘を受けたよ。共に日本戦車道を復活させよう」

西住「はい、ありがとうございます」

BC高校隊長「ところでこの後ヒマかな?どうかな、一緒にお茶でも・・・おっとお互いまだ名乗ってもいなかったね。君の名は?」

西住「ふぇ!?え、えっと・・・――」

自由学園隊長「ちょ~っと待ったァ~!油断するな西住さん!そいつらは何か企んでるに違いない!」

西住「え、ええ!?」

自由学園隊長「レース前に主催者に取り入ってポイントを稼ごうとしているんだろう!こすっからいやつめ!しかもナンパまでしようとは!」

BC高校隊長「な!人聞きの悪いことを言うな!なんなんだ君は!」

自由学園隊長「自由学園の隊長だ!キサマのような軟派な輩が戦車道のイメージを悪くしているんだ!自覚を持て自覚を!」

BC高校隊長「な、なんて言いようだ!ちょっと美人だからって調子に乗っているな!この!」

 \ヤイノヤイノヤイノヤイノ!/

西住「お、お二人とも、ヤイノヤイノと喧嘩するのはやめてください」

冷泉「やる気十分だね」

自由学園隊長「いいだろう!我ら誇り高き自由学園が野蛮な貴様らを叩きのめしてやる!」

BC高校隊長「フン!我がBC高等学校が悪趣味な貴様達をコテンパンにしてくれる!」

冷泉「へっへっへ、せいぜいつぶし合っておくれよ」

西住「久子ちゃん笑い方が邪悪・・・」

36: 2020/07/20(月) 20:20:03.97 ID:tkpwGIEV0
>>35

君の名は~:1952年の4月に『君の名は』というタイトルのラジオドラマが放送開始された

37: 2020/07/20(月) 20:53:12.36 ID:tkpwGIEV0
生徒会広報「え~、大会参加希望校の代表者はこちらで受付を済ませてくれ~」

生徒会副会長「選手の皆さんには宿を手配します。人数を用紙に記入してくださいー」

生徒会広報「それが済んだら明日のレース会場を開放するから練習なり下見なりしてくれ~」

 \ザワザワ/ \ガヤガヤ/ \ワイワイ/

武部「はーい、順番にならんでくださーい」

西住「薫子さん、私も手伝うよ」

武部「いいのいいの。かぽりんは選手なんだから。運営は私達と生徒会に任せといて」

西住「すみません。ありがとうございます」


 「かほ」

西住「!」

黒森峰隊長「久しぶりね」

西住「ゑり子さ・・・逸見さん!」

逸見「大洗で戦車道の大会があるって聞いて、まさかと思ったけどやっぱりあなただったのね」

西住「き、来てくれたんですね・・・!」

逸見「私達が優勝したら、黒森峰に戻ってきなさい。西住流家元とも話はつけてあるわ」

西住「!・・・お母さんに・・・」

逸見「きっとあなたを連れ戻してみせるわ。じゃあね」ザッ

冷泉「知り合いかい?」

西住「元いた学校の友人です」

冷泉「古巣の盟友か。やりづらいかい?」

西住「・・・ううん、今の私は大洗の生徒だから」

冷泉「その意気だ」

38: 2020/08/18(火) 23:34:13.94 ID:HUsAjosR0
 ――・・・夜

冷泉「大会前夜に呼び出しとはずいぶんなことしてくれるね」ザッ

西住「あの・・・お話って何ですか?えっと・・・継続高校の方ですよね?」

継続高校隊長「応じてくれてありがとう」ポロロン♪

冷泉「そりゃなんだい?琴か?なんだってそんなもの持ってるんだい?」

継続隊長「私は継続高校の美川という者さ。みかと呼んでくれて構わないよ」ポロリンチョ♪

冷泉「人の話聞かない奴だね」

 ザッ!

アンツィオ統帥「待たせたな!アンツィオ高等学校の統帥(ドゥーチェ)参上だー!」バーン

みか「待ってたよ」ポロン♪

西住「アンツィオの隊長さんまで・・・一体どういう理由で呼んだんですか?」

みか「単刀直入に話すよ。私達継続高校は保有車輌がBTの1輌しかない。君達大洗高校もⅣ号戦車1輌、そしてアンツィオはCV33だけだね」

ドゥーチェ「仕方ないだろお金ないんだから!」

みか「うちもそうさ。そこで一つ提案があるんだ」

 みか「我々で同盟を組まないかい?」ニッ

冷泉「ほう」

西住「ま、待ってください。それってアリなんですか?」

みか「ルールには『走行不能になれば失格』としか書いてない。それ以外は何でもアリだろう?」

ドゥーチェ「まてまて!それじゃあ優勝賞金はどうなるんだ!」

みか「山分けでも十分な額が入ると踏んでる」

冷泉「アンタと組んでうちに利があるかい?」

みか「言わせてもらうが、単機で優勝するのはかなり厳しいだろう。1本の矢も束になれば・・・というやつさ」

 みか「どうだい、悪くない話だろう?」

西住「・・・秘密の同盟・・・かっこいい・・・」

ドゥーチェ「よし!のったァ!我らアンツィオ高校は仲間になるぞ!」

冷泉「・・・」

西住「久子ちゃん、どうする?」


冷泉「悪くないね」ニヤリ

40: 2020/09/10(木) 20:08:00.96 ID:Lrldmgtt0





 ――戦車道大会当日――

武部【グーーーーーーーッドモーニング大洗ーーーーーっ!】


武部【さァーやってまいりましたやってまいりました!大洗の町を舞台に繰り広げられる戦車道大会!】

 武部【町内の防災無線を使って実況放送させていただきますわこの私!武部薫子でーす!】

秋山【助手を務めます、秋山です。ところで武部殿、ぐっどもーにんぐってなんですか?】

武部【おケイさんに教えてもらった外来語だよ♪色々教えてもらったんだ~】


武部【さあ今日は待ちに待った戦車道大会《大洗ダービー》の開催日!会場は大いに盛り上がっておりまーす!】

 \\\ワアーーーーーーーーーーー!/// \ヒューヒュー!/ \ワイワイガヤガヤ!/

武部【お聴きくださいこの大歓声!聞こえない!?聞こえないなら字を読んで!】

 武部【他校の学園艦の住人も大勢やってきており、すでに経済効果はかなりのものが期待されます!】

秋山【大洗の町が舞台ということだけあって町のいたるところで見学できますからねぇ】

武部【いろんな屋台が露店しててまさにお祭り騒ぎだね!それもこれも色んな人が支援してくれたおかげ!】

秋山【この大会は華道五十鈴流、サンダース大学校付属高等学校、聖グ口リアーナ女学院の提供でお送りしております】

 五十鈴「よしなに~」ヒラヒラ

秋山【実況席の隣には五十鈴流後継者の五十鈴梅さんに来ていただいてま~す】

武部【他にも大洗の町も色々と提供してくれてるよ~。大洗ダービーはごらんのスポンサーの提供でお送りいたしまーす】

41: 2020/09/10(木) 20:10:53.47 ID:Lrldmgtt0
>>40

防災無線:1952年7月29日、日本のアマチュア無線が再開された

42: 2020/09/10(木) 20:11:29.20 ID:Lrldmgtt0
武部【さてここで大洗ダービーの概要を説明いたしましょう!】

 武部【ルールは簡単、『走行不能になれば失格』ただそれだけ!】

秋山【町をぐるりとまわるコースを一番早く3周した人が優勝です。コースを外れてゴールした場合は無効になります】

 秋山【なお、各校1輌『隊長車(フラッグ)』を選定し、その車輌がゴールを通過しなければ勝利は認められません】

 秋山【優勝校には賞金として金一封が授与されます。スポンサー様々ですねぇ!】

武部【お花のことなら華道五十鈴流にご相談を~】

 五十鈴【お待ちしております~】フリフリ

秋山【それでは参加校を簡単に説明していきましょー】


秋山【登録番号1番、聖グ口リアーナ女学院。登録車輌は『チャーチル歩兵戦車Mk.Ⅶ』が『三輌』】

 武部【2番はサンダース大学校付属高等学校。登録車輌は『M4シャーマン』が『五輌』だよ】

  秋山【3番はアンツィオ高校。車輌は『カルロ・ヴェローチェCV33』の『一輌』】

   武部【4番は継続高校。車輌は『BT-42』の『一輌』だよ】

    秋山【5番は由緒正しき伝統校、知波単学園です!登録車輌は旧チハこと『九七式中戦車』が『五輌』】

     武部【6番のチームは北国からの参戦、プラウダ高校!登録車輌は『T-34/76』が『三輌』と『IS-2』が『一輌』です】

    秋山【7番はBC高校です。登録車輌は『ソミュアS35』が『二輌』」

  武部【8番は自由学園。登録車輌は『ARL44』が『二輌』です】

 秋山【9番は黒森峰女学園。登録車輌は『ティーガーⅠ』が『三輌』、そして『ティーガーⅡ』が『一輌』です】

武部【そして最後は地元の星!我らが大洗女子学園だよ!登録車輌は『Ⅳ号戦車』が『一輌』!がんばれ久子!かぽりん!】


武部【果たしてどの学校が優勝の栄冠を手に入れるのでしょうか!】

秋山【ちなみにどの戦車も諸々改造されているのでカタログスペックは参考になりません!】

武部【さァ張った張った!賭けて大金をせしめよう!】

秋山【レースの賭けは大洗生徒会まで~】

43: 2020/09/10(木) 20:33:24.59 ID:Lrldmgtt0
西住「いよいよ本番だね」

冷泉「ウズウズしてくるねぇ」

西住「秘密の同盟作戦・・・うまくいくかな」

みか「やってみせるさ。優勝はいただきさね」

ドゥーチェ「フッ、アンツィオはアンツィオだけでも優勝だけどな」トクイゲッ

冷泉「そいじゃあアンツィオは同盟除外にするか」

ドゥーチェ「わー!冗談だ冗談!ちゃんと作戦通りにやるから仲間にいれてくれー!」

冷泉「わかったわかった」

みか「条約通り、優勝賞金は山分けだよ」

ドゥーチェ「優勝賞金・・・いったいどれだけの大金なんだろうか。ぐへへ」ジュルリ

みか「楽しみだね」ポロロン♪

冷泉「既に勝敗予想賭博もかなり稼いでるようだし、その上賞金まで手に入るならウハウハだよ」

 ドゥーチェ「ぐっへっへっへっへ・・・」

 みか「ふふふ」ポロン♪

 冷泉「ひ~っひっひっひ」

西住「ワルモノだぁ・・・」

44: 2020/09/10(木) 20:34:42.82 ID:Lrldmgtt0
武部「かぽりん」タタ

西住「武部さん、実況のお仕事があるのにこんなところにいてていいんですか?」

武部「まだ開始10分前だからね。久子は?」キョロキョロ

西住「戦車の最終調整してます」

武部「ちょうどよかった。かぽりんに言っておきたいことがあったんだ」

西住「私に?」

武部「久子、かぽりんと戦車道やるようになってからすっごく活き活きしてるの」

 武部「あの子、今までずっと退屈そうにしてたっていうかさ、毎日を無駄に過ごしてたって感じだったんだ」

 武部「なにかやりたいけど、なにがやりたいのかわかってないっていうか、つまんねーってよく言ってたもん」

 武部「でもかぽりんと出会って、戦車道やるぞってなってから、青春してる!って雰囲気で楽しそうなんだ」

西住「・・・」

武部「戦車の練習してる時も、大会の準備してる時も、すっごく楽しそうで。あんな久子はじめて見た」

 武部「ありがとうね、かぽりん。久子も感謝してるはずだよ。へそまがりだから絶対素直に言わないだろうけど」

西住「い、いえそんな!お礼を言うのは私の方で・・・」


冷泉「なにを駄弁ってるんだい。そろそろはじまる頃合いだよ」

西住「あ、そうですね」

武部「じゃあねかぽりん。がんばってね!久子も!」

西住「はい!」

冷泉「かほ、何をしゃべってたんだい?」

西住「ふふふ・・・ひみつ」

冷泉「?」

45: 2020/09/10(木) 20:35:55.21 ID:Lrldmgtt0
秋山【スタート5分前~!スタート5分前~!】

 \ヒューヒュー!/ \ハヤクハジメロー!/ \ガヤガヤ!/

武部【おききくださいこの大歓声!大洗の町は大賑わいでございます!】

秋山【皆さん是非とも大洗の町を堪能していってくださいね~】

武部【旅館もいっぱいあるし、おいしいご飯屋さんもたくさんだよ!】

秋山【先日には大洗水族館も開館しましたので、是非お立ち寄りくださ~い】


武部【さァ~これから始まる大レース!スタート地点で戦車達がひしめき合っています!】

 武部【参加校全ての車輌が出そろいました!レースの開始を今か今かとエンジンを吹かしていなないております!】

 武部【注目すべきは我らが大洗のⅣ号戦車!サンダースと聖グロから部品を頂いた、まさに天下のサラブレッドでございます!】

 武部【今日は夢にまで見た大洗ダービー!めでたいこの大会を我々はきっと忘れないでしょう!】

秋山【スタート2分前~!】


 Ⅳ号<ドルルン・・・! ドルルルン・・・!

西住「・・・始まるね」ゴクリ

冷泉「調子は良好。負ける気がしないよ」フンス

西住「私も・・・勝ちたい。負けたくないから、勝ちたい」フン

冷泉「振り落とされるんじゃないよ、かほ」

46: 2020/09/10(木) 20:36:47.20 ID:Lrldmgtt0
>>45

大洗水族館:1952年に開館した大洗の水族館。現在は『アクアワールド・大洗』と改名されている

47: 2020/09/10(木) 20:37:31.26 ID:Lrldmgtt0
秋山【スタート10秒前~!】


西住「・・・久子ちゃん」

冷泉「あ?」

西住「楽しかったね」

冷泉「・・・どあほう」


秋山【3・・・】

 秋山【2・・・】

  秋山【1・・・】


冷泉「こっからが本番だよ」


   秋山【0!】


 戦車's≪グオオオオォォォォオオオオオオオオオン!!!

武部【各車!一斉に!スタート!】

48: 2020/09/17(木) 20:54:39.84 ID:qth/4+z90

 \\\ウオオオーーーーーーーーーー!///

秋山【今大洗ダービーの幕が上がりました!】


冷泉「・・・」ガコン!

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【あーっと!口火を切ったのはⅣ号だ!大洗のⅣ号が群れから一抜けました!】

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【加速度を上げていく!後続との差は1馬身、2馬身、3馬身と大きくなっていきます!】

秋山【戦車なのに馬身という単位でいいのでしょうか?】

武部【意味が伝わるなら大丈夫。一気に引き離していきます!ドしょっぱつから全速全開だー!】

49: 2020/09/17(木) 20:55:19.33 ID:qth/4+z90
知波単隊長「うおおおお!我々も負けてはいられん!全車続けー!】

 知波単's≪ドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【Ⅳ号のケツを追って知波単の五輌が突貫ー!】

秋山【先頭のⅣ号からその差は5馬身程、さらに後方に他校の戦車が群れを形成しています】

おケイ「ヒサコってばトバしてるわね。でも・・・それは大きなミステイク!」

武部【こんなに加速して大丈夫なのか!?この直線の先には・・・】

 Ⅳ号<ドドドドドドドドド!

武部【剃刀のような急カーブが待ち構えている!この速さで曲がりきれるのか!?】

 Ⅳ号<ドドドドドドドドド!

冷泉「捕まってな、かほ」ガコン!

 Ⅳ号<ドドドドドギャラギャラギャラギャラギャラ!

西住「わわわ・・・!」

 Ⅳ号<ギャラギャラギャラギャラギャラ!

 Ⅳ号<ギャララララララララ――ッ!

冷泉「あらよっと」ガコン!

 Ⅳ号<ギギギドドドドドドドドドドドドド!

50: 2020/09/17(木) 20:55:45.97 ID:qth/4+z90
 おケイ「!」
        シドーシャ「!?」
   田尻「!」
         逸見「なっ・・・!」

武部【曲がりきったァー!カーブをスッパリ斬り捨てたァー!】


知波単隊長「ううおおおおおおおおおおおおお!」

 知波単's≪ドドドドドドドドドドド――ガンッ!ドガガガゴゴゴゴゴギャギャギャギャ!

知波単隊長「おおおおおおおおおおわあああああああああああああああ!」

 知波単's≪ギャギャギャガゴゴゴゴゴゴガンッゴゴガガンッゴゴゴゴン!

武部【知波単は曲がりきれずコースアウトー!いきなり全滅だー!】

51: 2020/09/17(木) 20:56:19.32 ID:qth/4+z90
おケイ「やるじゃないヒサコ!」ニヤリ!

シドーシャ「大した腕前ね」

 シャーマン's≪ドドドドドドギャラギャラギャラギャラギャラ!

武部【続いて後続チームがカーブを抜ける!トップのⅣ号との差は5秒程!】

秋山【大洗以外のチームは出方をうかがっているみたいですね。群れで走っています】

武部【さあ次は心臓破りの坂道にさしかかります!】

 T-34<ドドドドドドドドド

プラウダ生徒「指導者、大洗の先行をゆるしていいのですか?」

シドーシャ「放っておいても自滅するわ」

プラウダ生徒「え?」

シドーシャ「あの速度であの急カーブを抜けるのはかなりの集中力と操縦技術が必要。あんな操縦、消耗が激しすぎて最後まで保たない」

プラウダ生徒「な、なるほど・・・」

52: 2020/09/17(木) 20:56:48.88 ID:qth/4+z90
 戦車's≪ドドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【Ⅳ号を先頭に全車が坂道にさしかかりました。戦車の群れが坂を上ります】

おケイ「ゴー!サンダースゴー!」

 シャーマン's≪ドドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【あーっと!ここでサンダースのシャーマン5輌が前に出た!】

シドーシャ「クララ、狙い撃ちよ」

IS-2車長兼砲手クララ「ヤー(※了解)」

 IS-2<ドドドドドドドド・・・

武部【おっと?プラウダのIS-2が足を止めた!】

 ISー2<ウィーン・・・

  IS-2<ドッ!

 \ドゴーーーン!/

みか「!」

おケイ「ワッツ!?」

武部【あーっと!足を止めての砲撃!坂を上る敵チームを狙い撃つ気だー!】

ドゥーチェ「ぬゎんだと!?レースなのに砲撃ー!?」

シドーシャ「ルール無用のレースなんだからこれくらい当たり前よ!クララ!やっちゃいなさい!」

53: 2020/09/17(木) 20:57:23.96 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<ドドドドドドドドド!

西住「!」

冷泉「どしたい、かほ」

西住「砲撃音・・・後ろで誰かが撃ったみたい」

冷泉「聞こえたのか?」

西住「うん・・・たぶんIS-2の砲撃だよ」

冷泉「音で利き当てられるなんて、こいつはとんでもねえ戦車バカだね」


クララ【バケラッタ!(※狙い撃つぜ!)】

 IS-2<ズドッ!

サンダース生徒A「危ないキャプテン!」

 シャーマン<ギャララララ!

 \ドゴワッ!/   シャーマン<ドゴーン! シュポッ

おケイ「!?・・・私達の盾に・・・!」

武部【あーっと!IS-2がサンダースのフラッグを狙ったが別のシャーマンがかばった!走行不能だー!】

クララ【クピポ・・・!(※今度は外さない・・・!)】

 IS-2<ズドォ!

サンダース生徒B「キャップはやらせない!」

 シャーマン<ギャギャギャギャ!

 \ドッゴォ!/   シャーマン<ドガーン! シュポッ

おケイ「みんなーっ!」

武部【フラッグへの砲撃を再び仲間が防ぐ!さすがの連携だサンダース!】

クララ「ポプテピピック!(※クソ!)」

 シドーシャ【焦ることないわクララ。2輌撃破でも大したものよ】

クララ「チョケップリィ・・・(※ありがとうございます、指導者・・・)」

54: 2020/09/17(木) 20:59:02.74 ID:qth/4+z90
 戦車's≪ドドドドドドドドドドドドドドド

武部【さぁ全車が坂を登り切った。依然トップを独走する大洗Ⅳ号】

 武部【その後ろを5秒差でサンダース、プラウダ、継続、アンツィオ、聖グロ、BC、自由、黒森峰の順で集団を形成しています】

秋山【みんな腹の探り合いをしていますね。ヘタに前に出たら先程のサンダースのように狙い撃ちされますからね】

 秋山【そして砲弾を積んでる車輌は早めに砲撃して、車体を少しでも軽くしたいはずです】

 秋山【砲弾を載せてる車輌はいつ砲撃するかも駆け引きになるんです】

 
 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドド!

西住「・・・」チラ

 戦車's≪ドドドドドドドドドドドド!

西住「久子ちゃん、後続は動きがないみたい」

冷泉「ちぢこまってるみね」

西住「継続とアンツィオと私達の秘密同盟の作戦では――」

55: 2020/09/17(木) 20:59:46.05 ID:qth/4+z90
 ――・・・―前日夜―・・・――

みか「それじゃあ私達の秘密の同盟作戦を伝えるよ」

ドゥーチェ「おおっ、なんかかっこいいな」

みか「まず大洗のⅣ号さんはアクセルを全開にして、常に先頭を走ってくれ」

冷泉「どうしてだい」

みか「敵に揺さぶりをかけるのさ。誰かが独走してると周りは焦る。釣られて周りもアクセルをベタ踏みにするだろう」

 みか「そうして敵を無理にトバさせて、エンジンの過熱や操縦ミスを誘発して潰すって寸法さ」

西住「つまり私達はエサ役になって、他の戦車の自滅を誘うんですね」

みか「そういうことだ。アンツィオは私達のすぐ後ろに常に付いてきてくれ」

ドゥーチェ「うしろ?」

みか「私達が風除けになって君達を守る。終盤にさしかかったらスリップストリームで君達を引き上げるよ」

ドゥーチェ「すりっぷ・・・ああ、あの一気に速くなるやつな!」

みか「CV33を優勝させるためにBT-42が援護に回るのさ」

西住「私達が周囲の注意を引きつけて、アンツィオさんを最後まで温存する作戦ですね」

みか「そうさ。出来る限り敵を巻き込んで、ふるいにかけておくれ」

冷泉「任せな」

 ――・・・――・・・――

西住「このままじゃ私達が勝手にカラ回っちゃうだけだよ」

冷泉「だと言って他に何も考えつかん。いくとこまで行くっきゃない」

西住「うん。久子ちゃんならエンジンをオーバーヒートさせずに走りきれるもんね」

冷泉「そういうこった!」ガコン

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドドドド!

武部【おっとここにきてさらに速度を上げる大洗Ⅳ号!】

秋山【エンジンの回転数を常に調節して、過熱しすぎないように工夫して走ってます。冷泉殿の操作技術ですね】

武部【なるほどこのままトップを独走だ行けー!久子ー!】

56: 2020/09/17(木) 21:00:36.67 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドドド!

武部【Ⅳ号から遅れること7秒、後続集団が後を追いかけます!】

 武部【さあ先頭のⅣ号が連続カーブ地帯にさしかかります!】

シドーシャ「動くわよ。構えなさい」

プラウダ砲手「え?」

シドーシャ「この先は曲がり角が続くわ。大洗が減速して下がってくる。仕留めるわよ」

 Ⅳ号<ドドドドドド!ギャラギャラギャラ!

武部【右へ左へのカーブが続きます!】

 Ⅳ号<ギャラギャラギャラギャラ!

 後続集団≪ギャラギャラギャラギャラ!


シドーシャ「・・・?」

 Ⅳ号<ギャラギャラギャラギャラ!

 後続集団≪ギャラギャラギャラギャラ!

 Ⅳ号<ギャギャギャギャ!ギャギャギャギャ!ギャギャギャギャ!

シドーシャ「!・・・下がってこない!」

57: 2020/09/17(木) 21:01:08.29 ID:qth/4+z90
武部【Ⅳ号と後続集団の差が縮まらない!縮まらない!むしろ開いているか!?】

田尻「減速を最小限に抑えて・・・出来うる限りの最大速度で連続してカーブを切り抜けてる」

シドーシャ「なんて操縦技術なの!?」

武部【さっすが久子!毎日自転車で新聞配達してるから大洗の土地は慣れたもの!】

秋山【どこで減速すべきか、どこで加速すべきか、身体が覚えてるんですね】

武部【元々の運転技術も才能あるけど、それに加えて日々の積み重ねだね!大洗は久子の土俵だぁ!】


田尻「・・・天才はいる。悔しいけれど」

 Ⅳ号<ギャギャギャギャギャ!ドドドドドドドドドド!

 シャーマン<ギャギャギャギャギャ!

おケイ「チィ!こんなに左右に振られるトコをどうしてあんなスピードで進めるのよヒサコってば!」

みか「振り落とされないようにくっついて来ておくれよ、アンツィオさん」

ドゥーチェ「おわー!置いてかないでくれー!」

 後続集団≪ギャラギャラギャラギャラ!

58: 2020/09/17(木) 21:01:36.12 ID:qth/4+z90
武部【そして最後の直線!スタート地点に帰ってきましたー!】

 \\\ワアアーーーーーーーーー!///

秋山【これで1周です。このコースをあと2周したチームが優勝となります】

武部【でも誰かがほとんど同時にゴールしたらどうなるの?】

秋山【参加校の生徒会長さんを審査員として迎えてあります。各生徒会長さんが目をこらして審査し、誰が一位か多数決で決まります】

武部【結局人の目で計るしかないもんね】

秋山【各校の代表ということでひいき目なしに公平に審査もできますから】


秋山【――1周目を終えて順位は、大洗・プラウダ・サンダース・継続・アンツィオ・BC・自由・聖グロ・黒森峰となりました】

武部【さあ2周目に入って依然トップはやはり!飛ばしに飛ばして大洗Ⅳ号!】

 武部【後続との差は10秒程!速さは自由か孤独か!このまま優勝は大洗のものかー!】

59: 2020/09/17(木) 21:02:21.02 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドド!

  後続集団≪ドドドドドドドドドドドド!

冷泉「かほ、後ろはどうだい?」

西住「そろそろ誰か仕掛ける」

冷泉「つぶし合ってくれたら楽なんだけどね」

西住「ドゥーチェさんとみかさん・・・大丈夫かな」


 戦車's≪ドドドドドドドドドドドドド!

BC高校隊長「・・・いくぞ」

自由学園隊長「・・・ああ」

 ソミュア<ドドドドドドドド!ギャラギャラギャラ!

 ARL<ドドドドドドドド!ギャラギャラギャラ!

  ティーガーⅡ(黒森峰フラッグ)>ガガンッ!<

逸見「!?」

武部【あーっと!BC高校と自由学園の車輌が黒森峰に左右から激突!】

BC高校隊長「撃て!」

自由学園隊長「砲撃!」

 ソミュア<ドォン! ARL<ドン!

  ティーガーⅡ<ドゴォン!バゴンッ!

逸見「なっ!?」

武部【そして身動きとれないティーガーⅡをBC自由のフラッグ車が砲撃!履帯を破壊したー!】

60: 2020/09/17(木) 21:02:52.60 ID:qth/4+z90
BC高校隊長「ハーッハハハハ!どうだ!我らの連携力!」

自由学園隊長「なにを隠そう我々自由学園とBC高校は密約を結んでいたのだー!」

武部【なんとー!敵同士が秘密裏に同盟を結んでいたようだー!】

 ティーガーⅡ<ガギンッ!ギギギギギギ・・・!

逸見「くそっ!」

武部【黒森峰の足がとまった!黒森峰の足が止まった!集団から落とされたー!】

BC高校隊長「やったぁ!」

自由学園隊長「うまくいったな盟友よ!」

田尻「砲撃」

 チャーチル<ドッ!ドワッ!

  ソミュア<ボガァン! シュポッ

  ARL<ドカァン! シュポッ

自由学園隊長「あっ」

BC高校隊長「し、しまった!」

武部【聖グロの攻撃!これでBC高校と自由学園はそれぞれフラッグのみとなりました!】

田尻「『勝利を確信したものは既に敗北している』・・・敵を撃破することに気をとられていてはダメよ」

61: 2020/09/17(木) 21:03:36.62 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<ドドドドドドドドド!

 戦車's≪ドドドドドドドドド!

武部【二度目の剃刀カーブを全車通過!そして先頭の大洗は坂にさしかかるが――】

 IS-2<キュラキュラキュラ・・・

武部【坂では一週遅れのプラウダのIS-2が待ち構えているー!】

クララ「ロックオンストラトス!(※狙い撃つぜ!)」

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドド!

西住「・・・」


クララ「ファイエル!(砲撃!)」

西住「久子ちゃん!左!」ガン

 IS-2<ドォ!

  \ドコォォォン!/

 Ⅳ号<ドッッドドドドドドドド!

クララ「!?・・・ワザマエ!?(※避けた!?)」

 Ⅳ号<ドォッドドドドドドドド!

武部【Ⅳ号が砲撃をかわしてIS-2の横をすり抜けたァー!】

クララ「ナァンテコッタ!(※なんてこった!)」

シドーシャ「クララ!Ⅳ号は放っておいて私達と合流しなさい!」

クララ【サラリマン!(※了解しました!)】

 戦車's≪ドドドドドドドドドド!

武部【一週遅れのIS-2がプラウダと合流。坂を上ります!】

62: 2020/09/17(木) 21:04:12.59 ID:qth/4+z90
シドーシャ「行くわよ・・・!」

 T-34&IS-2<ドドドドドドドドド!

おケイ「抜け駆けは無しよお嬢ちゃん!」

 シャーマン<ドドドドドドドド!

武部【集団からプラウダが前へ出た!それに釣られてサンダースも速度を上げる!】

田尻「いい位置」

 チャーチル<ドワッ!

  シャーマン<ドゴォン! シュポッ

おケイ「!」

武部【あーっと後ろから聖グロの砲撃だー!プラウダに釣られたサンダース、背後がガラ空きだったー!】

シドーシャ「っしゃ」ニヤリ

おケイ「今の動き・・・・・・まさか――」


 シドーシャ「フッフッフ、まさかウチと聖グロが密約を結んでるとは思うまい!秘密回線で連絡を取り合ってるのよ」

 田尻「手を組んでるのがBC高校と自由学園だけとお思いなら、おケイさんは甘いわ」フフ


おケイ「――まさか聖グロとプラウダが同盟を?・・・それなら合点がいくわ。でも、だからって負けてらんないんだから!」

 シャーマン<ドォ!

  \ドゴォン!/

シドーシャ「チィ!こっちも撃ち返しなさい!」

 T-34<ドォ!

  \ドゴォン!/

63: 2020/09/17(木) 21:04:45.48 ID:qth/4+z90
武部【坂を上りながらサンダースとプラウダが撃ち合う!】

おケイ「全車、狙って狙って~・・・」

 シャーマン's≪キリキリキリ・・・

おケイ「今よ!」

 シャーマン's≪ドッ!

プラウダ生徒「指導者の壁となれ!」

 T-34<バッ!

  ≫ボガアァン!≪

武部【あーっと!サンダース2輌が同時に砲撃!プラウダのフラッグをかばったT-34に命中し――】

 \ ゴ ワ ッ !/

武部【戦車が宙を舞ったァー!】


おケイ「ワッツ!?」

ドゥーチェ「吹っ飛んだァ!?」

 \ゴッガン!\

   \ゴギャン!ゴゴンッ!\

     \ガガンッ!ゴゴガガンッ!\


武部【プラウダのT-34が坂道を転げ落ちたー!】

64: 2020/09/17(木) 21:05:13.83 ID:qth/4+z90
聖グロ生徒「わっ!」

 チャーチル<ゴゴォン!

武部【転がったT-34がチャーチルに激突!さらにまだ転がり続けるー!】

  \ゴガンッ!ゴガンッ!\

みか「!」

ドゥーチェ「あぶないっ!」


 [BT-42] Σ[CV33]=<ガンッ!

  \ゴガァン!/


  T-34<シュポッ

  CV33<シュポッ

  チャーチル<シュポッ

武部【あーっとこれはハプニングー!坂道を転がってきたプラウダの車輌が後続車と次々に激突ー!】

 武部【このアクシデントでプラウダのT-34とアンツィオのCV33が走行不能に!さらに聖グロも脱落の大クラッシュだーっ!】

秋山【アンツィオは継続を庇ったように見えましたが・・・】

65: 2020/09/17(木) 21:05:43.36 ID:qth/4+z90
みか「ドゥーチェさん!大丈夫かい・・・?」

ドゥーチェ【あ、ああ・・・そっちは平気か?】

みか「おかげさまで・・・だけど、作戦を忘れたのかい?君達を最後まで温存して優勝させる算段だったのに」

ドゥーチェ【あっ、そうだった!すまん!最初にやられてしまった】ハハハ

みか「・・・どうして私達を庇ったんだい?君達こそ生き残るべき側だったろう」

ドゥーチェ【人を助けるのに理由なんかいらないだろ】

みか「・・・お人好しだね」

66: 2020/09/17(木) 21:06:12.25 ID:qth/4+z90
 CV33<プスプス

ドゥーチェ「あ~あ、派手にスっ飛んだなァ」

アンツィオ生徒A「まさか巻き込み事故で脱落なんて予想もしてませんでしたね」

アンツィオ生徒B「しっかし惜しいことしたな~。せっかくウチが優勝する予定だったのに」

 シャーマン<ギャラギャラギャラ・・・キキィーッ!

おケイ「ヘイ!大丈夫!?ケガはない!?」バッ タタタッ

ドゥーチェ「!?・・・サンダースの隊長!?まだお前は走行不能になっていないだろう!なぜ戦車を降りているんだ!?」

おケイ「だ、だって・・・あなた達があんなに吹き飛んだから心配になって・・・」

ドゥーチェ「お前はまだレースの途中だろう。心配してくれるのはありがたいが早く戻れ」

おケイ「でも・・・」

ドゥーチェ「謝るんじゃないおケイ、勝負じゃないか」

おケイ「・・・ごめんね。ワザとじゃなかったの。・・・またあとでね!」タタタ

ドゥーチェ「お人好しにもほどがあるぞ・・・」

 おケイ「あなた達、大丈夫?」

 プラウダ生徒「は、はい・・・!」

 聖グロ生徒「お、おきづかいどうも・・・」

アンツィオ生徒A「プラウダと聖グロの乗員にも気を配ってる・・・」

ドゥーチェ「おいコラー!そんなことしてるとドンドン遅れるぞー!」

アンツィオ生徒B「勝敗よりも相手の心配か。いい人ッスね~」

ドゥーチェ「まったく、あいつは勝負事には向かん性格だな」

67: 2020/09/17(木) 21:06:40.43 ID:qth/4+z90
みか「西住さん、聞こえるかい?」

西住【はい。どうしました?すごい音がしましたけど・・・】

みか「アンツィオさんが脱落した。私達の同盟の作戦はご破算になったよ」

西住【えぇっ!?そんな・・・どうします?】

みか「そうだね・・・それじゃあ新しい作戦を伝えるよ」


みか「君達はこのまま逃げ切ってくれ」


西住【!】

みか「一位を独走したままゴールまで駆け抜けるんだ。それしか勝つ方法はない」

西住【・・・】

みか「君達に賭けてもいいかい?」


西住【・・・はい!】

68: 2020/09/17(木) 21:07:27.15 ID:qth/4+z90
 戦車's≪ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

武部【全車、坂を越えて現在トップ大洗、7秒差でプラウダ、聖グロ、BCと自由、やや遅れて継続】

 武部【そこから5秒差で履帯修理を終えた黒森峰が上がって来ており、そこから遅れること2秒差でサンダースが戦線に復帰しました】

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドドドド!

 T-34&IS-2≪ドドドドドドドドドドドド!

西住「少しずつだけど・・・後続が距離を詰めてきてる。気をつけて久子ちゃん」

冷泉「おうよ」

シドーシャ「甘いわねカホーシャ、ヒサコフ。この距離ならクララ(IS-2)の射程距離。ここから狙撃するために合流させたのよ」ニヤ

 シドーシャ「クララ!やっちゃいなさい!」

クララ「モイ!(※はい!)」

 IS-2<ズドッ!

西住「!久子ちゃん左ッ!」

冷泉「おうよ!」ガッ!

 Ⅳ号<グォオン!
        \ドゴォーン!/

シドーシャ「!?よけた!?」

69: 2020/09/17(木) 21:08:06.39 ID:qth/4+z90
武部【プラウダが長距離狙撃!しかし大洗Ⅳ号はギリギリで回避したー!】

クララ「ボボボーボ・・・ボーボボ!(※外した・・・次こそは!)」

 IS-2<ズドォ!

西住「今度は右!」

 Ⅳ号<グオン!
        \ドゴォン!/

クララ「ザンヌイユ!ヨーガリー!ヒーガリー!(※またよけた!装填お願い!急いで!)」

 IS-2<ズドォ!

西住「また右!」

 Ⅳ号<ガオン!    \ズゴォン!/

クララ「っ・・・!」

武部【プラウダの連続狙撃を立て続けにかわすⅣ号ー!さっすがー!】

秋山【ですがいつまで避けきれるか・・・】


冷泉「ちっ!しつこいねぇ!」

西住「このままじゃ・・・」

 Ⅳ号<ドドドドドドドドドド!

冷泉「まずいよかほ!エンジンが燃えちまう!」

 IS-2<ドドドドドドドドドド!

シドーシャ「仕留めなさいクララ!」

 クララ「ラリホー!(※はい!)」

西住「久子ちゃん!」

冷泉「まずい!やられるっ!」

70: 2020/09/17(木) 21:09:04.66 ID:qth/4+z90
 BT-42<グオオォォォオオオオオン!

みか「そうはさせないよ」


 BT-42<ドンッ!

  IS-2<グワァアア! シュポッ

クララ「!?」

シドーシャ「な、なに!?」

武部【あーっと!継続高校がプラウダを奇襲!IS-2を撃破ー!】

西住「みかさん!」

みか「西住さん、ウチは完走まで保たない。君達が走り切るんだ。私達が道を切り開く」

西住【道を・・・って、まさか・・・!】

みか「いくよ」ポロロン♪

 BT-42<グオォォオオオン!

  BT-42<ドン!

   T-34<ボカァン! シュポッ

みか「それそれ」ポロン♪

 BT-42<ドンッ!

  チャーチル<ドカァン! シュポッ

 BT-42<ドンッ!

  シャーマン<ガカァン! シュポッ

シドーシャ「んにゃにぃー!?」

おケイ「アメイジング・・・ッ!」

71: 2020/09/17(木) 21:09:31.47 ID:qth/4+z90
武部【なんとー!立て続けに4輌撃破!】

秋山【す、すごい!獅子奮迅の活躍!】

武部【大洗の地でも高らかに唄うはクリスティー式だぁー!】

秋山【あっ、で、でも――】


田尻「そこまでよ」

 チャーチル(フラッグ)<ドッ!

  BT-42<ボカァン! シュポッ

みか「・・・」フッ・・・

武部【聖グロの一撃が継続を仕留めた!継続高校脱落です!】

西住【みかさん!だ、大丈夫ですか!?】

みか「私達はここまでみたいだ。少しは役にたてたかな?」

武部【継続がもたらした大波乱!これでプラウダと聖グロとサンダースはフラッグ車を残すのみとなりました!】

72: 2020/09/17(木) 21:10:04.58 ID:qth/4+z90
自由隊長「我らも行くぞ、盟友(とも)よ」

BC隊長「ああ」

 ARL44<ギャラギャラギャラ! ソミュア<ギャラギャラギャラ!

武部【BCと自由が動いた!】

田尻「!」

 ARL44<ドォン! ソミュア<ドォン!

  チャーチル<ゴゴガァンッ!

武部【聖グロを左右から攻撃!BCと自由の抜群のコンビネーションだー!】

 チャーチル<バキンッギギンッ・・・!

武部【聖グロ耐えた!白旗判定は出ず!ですが左右履帯破損!ここにきて大きなタイムロスです!】

田尻「くっ・・・!」

BC隊長「次はキミ達だ!」

自由隊長「トップからひきずり降ろしてくれよう!」

武部【返す刀で加速!前に出る!次の標的は・・・大洗のⅣ号だー!】

西住「久子ちゃん!来る!」

冷泉「!」

 ARL44<ドォンッ! ソミュア<ドォンッ!

  \ドゴォン!/ \ボカァン!/

武部【BC自由の砲撃が大洗Ⅳ号を襲う!狙い撃ちだー!】

73: 2020/09/17(木) 21:10:51.55 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<ギャラギャラギャラ! ARL44&ソミュア≪ギャラギャラギャラ!

武部【ものすごいスピードでBC自由が大洗Ⅳ号に迫る!迫るっ!】

冷泉「かほ、あたしの考えてることわかるな?」

西住「うん、タイミングは任せて」

 Ⅳ号<ギャラギャラギャラ!

 ARL44&ソミュア≪ギャラギャラギャラギャラギャラ!

武部【あーっと!BCと自由がⅣ号を左右から挟む形で真横につけたァー!】

自由隊長「天に二つの禍つ星・・・!」

BC隊長「うけてみるのだな!」

西住「停車っ!」


 ≫ドォン!≪

 ≫ドゴガァン!≪

74: 2020/09/17(木) 21:11:20.68 ID:qth/4+z90
 ARL44<シュポッ

 ソミュア<シュポッ

自由隊長「なっ・・・!」

BC隊長「あっ・・・!」

武部【あーーーっと!左右からの挟み撃ちと同時にⅣ号がブレーキ!見事にかわしたー!】

 武部【BC自由の挟み撃ちがお互いを撃ち合ってしまい、両車走行不能となりました!】


自由隊長「コラ!なにをするだァー!仲間を撃つなんて!さては最初からこれが目的だったなー!」

BC隊長「なにを言うかー!貴様らこそ不意打ちしおってからにー!同盟なんて破棄だ破棄ー!」

自由隊長「なにをー!」

BC隊長「やるかー!」

武部【三週目に入る直前でBC高校と自由学園が脱落!残るは大洗、聖グロ、プラウダ、サンダース、黒森峰のみとなりました】

75: 2020/09/17(木) 21:11:48.51 ID:qth/4+z90
 戦車's≪ドドドドドドドドドドド!

武部【さあそして最後の三週目に突入しました!泣いても笑ってもこれが最後の一週です!】

 \\\ワアアアーーーーーーーーーー!///

武部【大洗、聖グロ、プラウダはフラッグ車一輌ずつ、サンダースは二両、そして黒森峰は四輌全車が残っております】

 武部【足を壊された聖グロが大急ぎで修理にかかります。この間に黒森峰とサンダースは追い上げる!】

 武部【はたして最後に笑うのは誰なのか!】


ドゥーチェ「よいしょっ・・・どうだ、今どんな感じだ?」ヒョッコ

五十鈴「あら、アンツィオの皆さん、それに継続の方々も。ここは関係者用の席ですよ」

アンツィオ生徒B「細かいこと言うない。私達は盟友ッスよ盟友」

みか「レースを見るにはここが特等席だからね」ポロリンチョ♪

アンツィオ生徒A「ドゥーチェ、大洗がトップのままみたいですよ」

ドゥーチェ「そうかぃよーし!がんばれ西住!冷泉~!」

武部【なにやら実況席の隣がやかましいですが、レースはいよいよ佳境です!】

秋山【はたして大洗ダービーの栄冠を手にするのはどの学校なのでしょうか】

76: 2020/09/17(木) 21:12:58.32 ID:qth/4+z90
 黒森峰's≪ドドドドドドドドドドド!

秋山【ティーガーⅠが三輌、フラッグにティーガーⅡを構える黒森峰は縦に整列したまま走行しておりますね】

武部【レース開始から一糸乱れぬ隊列を組んでるね。キレイなもんだぁ】

秋山【堅実に走る作戦なのでしょう。終盤で一気に追い上げてくるはずです】


西住「5秒程後方にプラウダ、その3秒程後に黒森峰、そこから2秒後にサンダース、修理が終わった聖グロは3秒後にいるよ」

冷泉「かほ、あんた黒森峰にいたころ無線を扱ってたかい?」

西住「うん、通信訓練はやってたよ」

冷泉「黒森峰の無線周波数を捕まえるんだ」

西住「ええっ、通信を盗み聞きするの?」

冷泉「人聞きが悪いね。ちょいと聞き耳を立てるだけさ」

西住「同じだと思うけど・・・えーっと、周波数は・・・」ザ、、ザザー、、、

冷泉「なんだかんだ言いながらやるんかい」

77: 2020/09/17(木) 21:13:27.18 ID:qth/4+z90
 【――~ザ―ッ――ザ――・・・】

 黒森峰生徒【―ザザ・・・――ッ――こちら2号車、逸見隊長―ザ――ッ―どうします?】

 逸見【――ッ―・・・――ッザ―・・・で一気に追い上げるわ】

西住「捕らえたよ」

冷泉「何を企んでる黒い虎ども」

 逸見【訓練通りにやればきっと勝てる。私達は勝たなきゃならない。かほを黒森峰に取り戻すために】

 黒森峰生徒【はい。では作戦通りに――】

 逸見【うっ・・・――】フラァ

西住「・・・?」

 フラッグ車乗員【逸見さん!?大丈夫ですか!?】

 逸見【――・・・ええ・・・大丈夫・・・少しめまいがしただけ・・・】

 フラッグ車乗員【顔色が悪いですよ!ちょっとオデコを・・・って!すごい熱じゃないですか!】

78: 2020/09/17(木) 21:13:57.32 ID:qth/4+z90
逸見「いいのよ・・・平気だから」

黒森峰生徒【どうしたんですか?逸見さんに何か・・・】

フラッグ車乗員「こちらフラッグ、逸見さんがひどい熱なんです!」

逸見「平気だってば!レースに集中しなさい」

 西住【逸見さん!】

逸見「!」

 西住【大丈夫ですか!?すぐに病院に行った方が――】

 冷泉【かほ!なにやってんだい!自分から割って入るやつがあるか!】

逸見「かほ・・・」

 西住【だ、だって・・・無茶したら・・・】

 冷泉【はやく無線を切りな!】

 西住【でも――ザザッ――~ッ―・・・―】

逸見「・・・聞き耳立てるなんて趣味が悪いわね」

黒森峰生徒【大丈夫なんですか?逸見さん】

逸見「平気よ・・・作戦通り、最後に勝つのは私達よ」

79: 2020/09/17(木) 21:14:24.84 ID:qth/4+z90
冷泉「まったく馬鹿かいアンタは!せっかく敵の内情を探れる好機だったのに!」

西住「ごめんなさい・・・でも・・・昔、噂で聞いたんだけど・・・逸見さん、重い持病を患ってるって・・・」

冷泉「なに?」

 武部【あーーーっと!こ、これはどういうことだぁーーー!】

冷泉「!・・・後ろで動きがあったみたいだよ。後方を見ておくれ」

西住「う、うん」ガパッ

 西住「!・・・あ、あれは・・・!」


武部【馬鹿なッ!脱落したはずだッ!彼女達は・・・!】

 知波単's≪ドドドドドドドドドドドドドドド!

知波単隊長「はっはっはー!」

80: 2020/09/17(木) 21:14:53.26 ID:qth/4+z90
武部【知波単だァーーー!チハがいるッ!あれは知波単学園の戦車部隊だァーーー!】

秋山【一週目で脱落したと思われた知波単がここに来て驚異の追い上げを見せています!】

西「我らの道に壁など無し!突撃するは我にありー!」

 知波単's≪ドドドドドドドドドドドドド!

おケイ「ワッザ・・・!?」

田尻「・・・!」

武部【並ばない並ばない!あっという間にかわした!あっという間にかわしたっ!聖グロとサンダースをごぼう抜きだー!】

 知波単's≪ドドドドドドドドドドドドド!

 黒森峰's≪ドゴゴォン!

逸見「んなっ!?」

武部【黒森峰とぶつかったー!】

 知波単's≪ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!

 黒森峰's≪ギャギャギャギャギャ!――ガガァーン!

武部【真っ直ぐ突き進む知波単学園!黒森峰を押しのけて猪突猛進ー!】

 武部【ぶつけられた黒森峰はコースをそれて建物に激突!ここで大きなタイムロスを喰らったー!】

逸見「くそっ!修復急ぐわよ!」プシュ~

81: 2020/09/17(木) 21:15:19.90 ID:qth/4+z90
 T-34<ドドドドドドドドドドドドド!

 知波単's≪ドドドドドドドドドドドドド!

シドーシャ「っ・・・!」

知波単隊長「突貫んんん~!」

武部【知波単がプラウダに迫る!プラウダに迫る!そしてそのまま――】

 知波単's≪ドドドドドドドドドギャギャギャギャギャゴガンッ!ドガララガガガガガガガガガ!

知波単隊長「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああ!」

シドーシャ「えっ!?」

 知波単's & T-34≪ガガガガガガガガガドッゴオオォォーーーン!

武部【またしてもカーブを曲がりきれずにコースアウトー!しかもプラウダも巻き込まれたー!】

 知波単's≪シュポポポポッ!

武部【知波単ズ、今度こそ走行不能!全車リタイアだー!】

シドーシャ「――ぐっ・・・ここまできてっ・・・こんなことで負けるものかっ!」ガララ・・・

 T-34<ギャラギャラ・・・ギャラギャラギャラ

武部【プラウダフラッグはまだ走れるようだ!不氏身かプラウダはー!】

秋山【ものすごいガッツですねぇ!】

 T-34<ギャラギャラギャラ!

 チャーチル<ギャラギャラギャラ!

 シャーマン<ギャラギャラギャラ!

武部【ここに来て3校が並んだ!トップは大洗Ⅳ号!その後方3秒差でプラウダ、聖グロ、サンダースが追い上げるカタチだー!】

 \\\ワアアアーーーーーーーーーー!///

82: 2020/09/17(木) 21:15:54.08 ID:qth/4+z90
ドゥーチェ「すぐそばまで来てるぞー!気をつけろ西住冷泉ー!」

アンツィオ生徒A「大洗は勝てるんでしょうか・・・」

みか「さあ、勝負は水物だからね」ポロリン

アンツィオ生徒B「がんばれー!大洗~!」

秋山【いよいよ終盤・・・ここから大波乱が予想されます】

 Ⅳ号<ドドドドドドド!

武部【坂を登るっ!】

 戦車's≪ドドドドドドド!

武部【後続集団も坂を登る!最後の大舞台だ!】

83: 2020/09/17(木) 21:16:29.74 ID:qth/4+z90
田尻「行きますわよ、かほさん、久子さん」ニヤ

 田尻「脱着(パージ)」

 チャーチル<バキンッ!バカバカバカッ・・・!

武部【あーっと!聖グロのチャーチルの装甲が剥がれてゆき――】

 クルセイダー<ドドドドドドドドドドド!

武部【中から別の戦車が姿を現したー!】

秋山【巡行戦車クルセイダーです!チャーチルの装甲を覆い被せて偽装していたのですね!】

田尻「加速」

 クルセイダー<ギャラギャラギャラギャラギャラ!

武部【速いッ!なんて速さだ!加速度が違う!一気にⅣ号戦車に攻め入るのかーっ!】

シドーシャ「ちょっとダージリン!なによそれ!聞いてないわよ!」

田尻「『敵を欺くには味方から』・・・優勝をいただくのはこの私よ」フフ

おケイ「ハッハー!負けないわよダージリン!クライマックスに出し惜しみは無しよ!」ポチットナ!

 シャーマン<パカッ・・・ウィー・・・ガコンッ

武部【おーっと!サンダースフラッグ車のシャーマン、後部が開いて――】

おケイ「ニトロエンジン、ゴー!」ガコン

 シャーマン<グオォォォオオオオオン!

武部【火を吹いたー!闇を裂くかの如くスーパースピードで駆け抜けるー!】

シドーシャ「ムッキー!この私を出し抜くなんて!そうはさせないんだから!砲塔旋回!」

 T-34<ウィーン

武部【プラウダのT-34、砲身を後ろに向けた!】

シドーシャ「撃って撃って撃ちまくりなさ~い!」

 T-34<ドォン!ドォン!ドォン!

武部【後方へ砲撃し、その勢いで速度を上げたー!】

84: 2020/09/17(木) 21:17:04.88 ID:qth/4+z90
 クルセイダー<ギャオオオオオ!

  シャーマン<グオオオオオオ!

   T-34<ゴオオオオオオ!

武部【聖グロ、サンダース、プラウダの三校が大洗に迫る!迫る!怒濤の追い上げだァー!】

冷泉「ちぃ!」

 Ⅳ号<ドドドドドドド――

 クルセイダー&シャーマン&T-34≪グオオオオォォォオオオオオン!

武部【抜いたァーーー!とうとうトップが変わった!大洗Ⅳ号が抜かれたァーーー!】

 田尻「ここまでよく頑張られたわ。でも、勝つのは私達」

 おケイ「このまま一気にゴールしちゃうわよー!」

 シドーシャ「最後に笑うのはウチなんだから!」


冷泉「ちくしょう!直線の速さじゃこっちが不利だ!」

西住「・・・!」

冷泉「どしたいかほ!」

西住「軍靴の音が聞こえる・・・」


 <――ドドドドドドド・・・

武部【!・・・あれは!後方から黒い影が!】

 冷泉「!」

85: 2020/09/17(木) 21:17:40.37 ID:qth/4+z90
 ティーガー軍団≪ドドドドドドドドドドド!


武部【黒森峰だー!三輌のティーガーⅠとフラッグのティーガーⅡが縦一列にキレイに並んで追い上げてきたァー!】

 \\\ワアアアーーーーーーーーーー!///

西住「逸見さん・・・!」

逸見「待たせたわねかほ・・・!」

 ティーガー軍団≪ドドドドドドドドドドドド!

武部【定刻通りの運行!正確さ世界一!】

 Ⅳ号<ドドドドドドド!

武部【ああっ!前が見える!捕らえた!捕らえました!黒森峰が先頭を見据えた!徐々に距離を詰められている!】

逸見「うっ・・・」

 ティーガーⅡ<ドドドドドド――ドドドド!

武部【おっとフラッグのティーガーⅡ、少しヨレているか!?】

逸見「はあ・・・はあ・・・」

フラッグ車乗員「逸見さん!大丈夫ですか!?やっぱり具合が・・・」

逸見「平気だってば・・・はあ・・・ゴールはすぐそこよ。集中して――」

 西住【逸見さん!】

逸見「!」

86: 2020/09/17(木) 21:18:10.54 ID:qth/4+z90
西住「逸見さん!もうやめよう!レースなんかやめてすぐ病院に行かないと!無線越しでも息が荒いのが聞こえてくるよ!?」

冷泉「おい!かほ!まだ勝負の最中だ!何を言い出すんだい!」

西住「持病があるんでしょ!?レースは中断しよう!皆さんも事情を説明したらわかってくれますよ!」

 逸見【っ・・・】

西住「もう勝負なんてどうでもいいよ!このままじゃ逸見さんが・・・こんなこともうやめましょう!」

 逸見【・・・西住かほ】ザザ

西住「・・・!」


逸見【私はあなたを買いかぶっていたようだわ。あなたは最低の戦車女子よ】


87: 2020/09/17(木) 21:18:43.40 ID:qth/4+z90
 ティーガー軍団≪グオオオォォォオオオオオン!

西住「!?」

武部【黒森峰が仕掛けた!】

 ティーガーⅠ<ドドドドド――

  ティーガーⅠ<ドドドドド――

武部【三輌のティーガーⅠが全速力で走り、フラッグのティーガーⅡを引き上げるー!】

秋山【風圧盾走法(スリップストリーム)です!三輌のティーガーⅠはフラッグに加速度を付与させて離れていきます!】

 ティーガーⅠ<ドドドドド――! ティーガーⅡ<ドオォォォオオオオ!

武部【連続でのスリップストリーム!ものすごい速度で――】

 ティーガーⅡ<グオオォォオオオオオン!

武部【抜いたァーーー!黒森峰のティーガーⅡが大洗Ⅳ号を抜き去ったァー1】

 クルセイダー<グオオオオオオ!

  シャーマン<グオオオオオオ!

   T-34<グオオオオオオオ!

武部【あーっとティーガーⅡ、続け様に聖グロサンダースプラウダを追い抜く!ゴボウ抜きだァ~!】

 シドーシャ「なんですってぇ~!?」

 おケイ「ワオ!すごい速さだわ!」

 田尻「これが黒森峰の底力・・・!」

西住「っ・・・!」

武部【日本の戦車道界を牽引していくのは自分だと言わんばかりの脅威の走り!日本の旗役は黒森峰に決まりかー!?】

88: 2020/09/17(木) 21:19:10.27 ID:qth/4+z90
 \\\ワアアアーーーーーーーーー!///

武部【三週目にして順位が大きく変動だ!先頭を黒森峰!2馬身差でサンダース、聖グロ、プラウダ!大洗Ⅳ号は大きく出遅れたー!】

 Ⅳ号<ドドドドドドドド

武部【さあコースは終盤!連続カーブ地帯にさしかかろうとしているー!】


 ティーガーⅡ<グオオオオオオオオオ!

  クルセイダー&T-34&シャーマン≪グオオオオオオオ!

武部【黒森峰が一番乗り!続いて聖グロプラウダサンダースがカーブ地帯へ!】

 戦車's≪ギュオオオオオォォォ!

武部【右へ左へ振られるっ!車体が振り回される!】

秋山【四校は加速して来た分コーナーで大きくヨレてしまっていますね!】

武部【大洗はまだ後方だ!もはや脚は残っていないかー!?】

89: 2020/09/17(木) 21:19:39.73 ID:qth/4+z90

冷泉「かほ、逸見が最低だって言ったのは盗み聞きしたからじゃない。わかってるだろ?」

西住「・・・」

冷泉「このまま負けてもいいのかい?車長はあんただ。私はあんたの指示に従うよ」

西住「・・・それは・・・」

冷泉「ただこれだけは言っておく。このまま負けたら今日のことを一生後悔することになるよ。あんたも、私も」

西住「・・・」

冷泉「あんたの人生で一番楽しかったのはいつだい?入学式か?誕生日パーティーか?」

 冷泉「あたしは・・・」


冷泉「あたしは今なんだよ」


西住「!――・・・・・・」

90: 2020/09/17(木) 21:20:17.40 ID:qth/4+z90

西住「・・・」

 西住「久子ちゃん・・・今からでも・・・勝てる?」


冷泉「あたぼうよ」

 ペダル<ガンッ!

 Ⅳ号<グオオォォォォオオオオオオオオ!


武部【あーーーっと!Ⅳ号が息を吹き返した!加速度を上げて!雲を突き抜けて!一気に遅れを奪い返すー!】

91: 2020/09/17(木) 21:20:46.03 ID:qth/4+z90
武部【ものすごい勢いだ!Ⅳ号がものすごい勢いで追い上げている!なんなんだこの速さは!】

秋山【他の車輌がカーブで大きくふくらんでいるところをⅣ号は内側を最短距離で曲がり切っているからです!】

武部【Ⅳ号のエンジンが唸る!息を切らしながら焼き付けてゆく!限界ギリギリの走りだー!】

  クルセイダー&シャーマン&T-34≪グオオオオオオオ!

 Ⅳ号<グオオオォォォォォオオオオン!

武部【抜いた!抜いた!Ⅳ号が抜き返した!得意のカーブ地帯で逆襲のラン!最大の敵は諦めだー!】

おケイ「ウッソォ!」

シドーシャ「なんであんな操縦でバテないのよ!脚が保つわけないのにっ!」

武部【そして黒森峰も――】

 ティーガーⅡ<グオオオオオオオ!

 Ⅳ号<グオオォォォオオオオン!

武部【ブッ差したァーッ!】

 \\\ワアアアーーーーーーーーーー!///

92: 2020/09/17(木) 21:21:17.87 ID:qth/4+z90

逸見「っ・・・!」

久子「帰ってきたぜ」ニヤ

 Ⅳ号<グオオオォォオオオ!

武部【まさしく奇跡か神がかり!先頭集団ゴボウ抜き!Ⅳ号が再び先頭に躍り出たァー!】

ドゥーチェ「うおおーーー!すごいぞっ!大逆転だー!」

五十鈴「さすが西住さんです」パチパチ

みか「・・・風が吹いた」


武部【さあカーブ地帯を抜けて最後の直線だ!先頭はⅣ号!3馬身差でティーガーⅡ!そしてクルセイダー!T-34!シャーマン!」

 武部【果たして勝つのは“異次元の逃亡者”大洗か!?】

 武部【“怪鳥”サンダースか!?“女帝”聖グ口リアーナか!?“不氏鳥”プラウダか!?】

 武部【はたまた“日本総大将”黒森峰か!?】

93: 2020/09/17(木) 21:22:00.57 ID:qth/4+z90
 Ⅳ号<グオオオオオオオ!

            ティーガーⅡ<グオオオオオオオ!

             クルセイダー&T-34&シャーマン≪グオオオオオオオオ!


武部【並んだッ!並んだッ!並んだッ!Ⅳ号を追って四校が並んだァァーーー!】 

 \\\ワアアアーーーーーーーーーー!///

武部【残り500メートル!最後の正念場だ!】


西住「久子ちゃん!少しでも減速したら負けだよ!」

冷泉「おうよ!このまま行けば――!」


秋山【!・・・あっ、で、でもあれは――】


  [ソミュア]  [ARL44]


武部【走行不能になったBC高校と自由学園の車輌が!ゴール手前で障害物と化しているー!】

西住「!」

94: 2020/09/17(木) 21:22:27.04 ID:qth/4+z90
武部【道のど真ん中で二輌が壁となっている!Ⅳ号の直線軌道上だァー!】


シドーシャ「Ⅳ号はあの二輌を避けるために大きく逸れなきゃならない。それで十分私達が追いつける!」

おケイ「わずかに減速するだけで勝ちは逃げるわ!」

田尻「不運ね、かほさん、久子さん」



西住「久子ちゃん」

冷泉「わかってる。細かい指示をくれ」

西住「うん」


 Ⅳ号<グオオオオオオオオ!

逸見「・・・!?・・・・・・」

武部【あーっとしかしⅣ号、逸れる気配がないぞ!・・・ま、まさか!】

95: 2020/09/17(木) 21:22:59.64 ID:qth/4+z90
逸見「まさか――・・・あの二輌の『間』をすり抜けるつもり!?」


シドーシャ「正気じゃないわ!ソミュアとARL44の間には戦車一台ギリギリ通れないくらいの隙間しかないのよ!?」


おケイ「このままじゃ激突して大事故になっちゃう!」


田尻「いけない!」


逸見「かほ――」


 Ⅳ号<グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!

96: 2020/09/17(木) 21:23:26.91 ID:qth/4+z90


ドゥーチェ「待て!」

              五十鈴「ダメです!」

  武部「久子!止まって!」

                秋山「西住殿!」
 
 みか「行け」


97: 2020/09/17(木) 21:24:27.87 ID:qth/4+z90

        ≫ """ッッッ!!! ≪


 Ⅳ号<――ガオオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオンッ!


武部【抜けたァァァーーーーーっ!】


シドーシャ「まさかっ!」

田尻「なっ・・・」

おケイ「ウソッ!?」

逸見「――っ!」

98: 2020/09/17(木) 21:27:50.37 ID:qth/4+z90
 ティーガーⅡ<ドドドドドドドドドド!


武部【あと200メートル!】


 クルセイダー<ドドドドドドドドドド!


 T-34<ドドドドドドドドドド!


 シャーマン<ドドドドドドドドドド!


武部【100メートルっ!】



冷泉「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 Ⅳ号<ドドドドドドドドドド!



武部【50メートルッ!】

99: 2020/09/17(木) 21:30:18.42 ID:qth/4+z90


 「   う           お        お               お     お   お      お       お   お     お

      お     お        お         お    お               お         お    お     お


  お      お         お    お                    お        お        お      お   お

         お    お                  お              お       お    お            お

お          お            お     お             お         お                 お

           お           お         お           お            お

   お                お          お          お                お         お         お

  お                              お          お  お              お      お     」


100: 2020/09/17(木) 21:30:46.36 ID:qth/4+z90


武部【ゴオォォォーーーーーーーーールッッッ!】


101: 2020/09/17(木) 21:34:28.98 ID:qth/4+z90
 武部【5輌がほぼ横一線でのゴール!――】

 武部【大接戦!脅威の大接戦でした!どの車輌が一番だったのか素人目では判断がつかないほとんど同着!】

 武部【ここで参加各校の生徒会長達が審議に入ります!10名の公正な瞳が審判をくだします!】


 \ザワザワザワ・・・/ \ドヨドヨドヨ・・・/

武部【審査結果が出ました!第一回大洗ダービーのレース結果は・・・・・・――】

102: 2020/09/17(木) 21:34:56.50 ID:qth/4+z90

 武部【大洗女子学園の勝利!!!】


 \\\ワアアァァァァァーーーーーーーーーー!!!///



103: 2020/09/17(木) 21:35:24.10 ID:qth/4+z90

武部【栄光のダービーを勝利したのは!我らが大洗!大洗の優勝です!お聴きくださいこの大歓声!】

 武部【しかしどの学校も大健闘いたしました!その差はほんの刹那!わずかな違いだけです!】

 武部【準優勝は聖グ口リアーナ、サンダース、プラウダ、黒森峰の同着と相成りました!】

 \パチパチパチ・・・!/ \パチパチパチ・・・!/

武部【白熱の勝負を演じた各チームに惜しみない拍手が送られます!途中脱落したチームもよくがんばった!】

 \パチパチパチ・・・!/ \パチパチパチ・・・!/

武部【本大会は、参加者だけでなく大会に関わった全ての方、そして観戦するために大洗に来てくださった全ての皆さんのおかげで大成功をおさめました】

 武部【世紀の一戦をその目に焼き付けた全ての人々へ、本当にありがとうございました!】

  武部【そして今日この日、皆さんの心に灯された『戦車道』という小さな火は、きっとこれからも大きく燃え上がることでしょう】

   武部【みなさん、本当にありがとうございました!】

104: 2020/09/17(木) 21:37:19.85 ID:qth/4+z90

 \パチパチパチ・・・!/

観客A「いや~、すごい勝負だったな」ザワザワ

観客B「生で見れてよかったよ!」ザワザワ

観客C「戦車道ってすごいんだな」ザワザワ


児玉(幼少時)「・・・・・・す、すごかった・・・戦車道って・・・めちゃくちゃかっこいい・・・」プルプル

 児玉「・・・よーし!オイラ、大きくなったら戦車道やる!」

 児玉「でも男は戦車道やれないから・・・大きくなったら戦車道のすごさをみんなに広める!」

 児玉「あの人達みたいに戦車道のかっこよさをみんなにわかってもらうためにがんばる!」

 児玉「日本の戦車道を世界一にしてみせる!きっと!」

105: 2020/09/17(木) 21:44:17.14 ID:qth/4+z90
ドゥーチェ「やったーーー!優勝だーーー!」ワーイ!

アンツィオ生徒A「やりましたね統帥!」

アンツィオ生徒B「これで賞金は私達のモンだー!」ドドンガドン♪

秋山「さすが西住殿と冷泉殿ですねぇ!」

五十鈴「やれやれ・・・久子さんの度胸試しには肝が冷えます」

武部「おめでとう、久子、かぽりん」

みか「ふふ・・・」


冷泉「――・・・はあ・・・はあ・・・」

西住「――・・・はあ・・・久子ちゃん・・・私達・・・勝ったよ」

冷泉「・・・当たり前だろ。そんなもん、ハナから決まってたこった」

西住「ふふ・・・」

冷泉「へへ・・・」

田尻「・・・負けたわ。優勝おめでとう」パチパチ

おケイ「ハーッハッハッハッハ!あーーー楽しかった!サイッコーのレースだったわ!コングラッチュレーション!カホ!ヒサコ!」

シドーシャ「悔しいけど、カホーシャとヒサコフの勝ちね。でも、次は私達が勝つんだから」フンス

西住「みなさん、ありがとうございます」

冷泉「あんたらも大したもんだよ。ま、あたし達にゃ及ばないけどね」


西住「――あっ!・・・逸見さん!」

冷泉「!・・・そうだった!」

 冷泉「そど子!そど子!担架だ!急病人がいるんだ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・

106: 2020/09/17(木) 21:45:11.80 ID:qth/4+z90
 ――病院

冷泉「よう、平気かい?逸見」

逸見「もう、大丈夫だって言ったじゃない」

西住「でも熱中症は油断したら命に関わるんですよ。無事でなによりです」

逸見「2,3時間安静にしてれば元気になるって医者にも言われたし、そんな大ごとじゃないわよ」

冷泉「あんたにゃ重い持病があるってかほが言うもんだからさ」

逸見「・・・それ、冷え症のことよ」

西住「えっ」

逸見「私が文武両道で欠点がないからって学友達が冗談半分で広めた話。かほ、あなたかつがれてたのよ」

西住「なぁんだぁ・・・安心しました」ホッ

逸見「それよりあなた達、大会は?閉会式とかあったんじゃないの?」

冷泉「無事に終了したからこうやって病院に寄ったのさ。ほれ、優勝杯」ペカー

逸見「見せびらかしにきたのね」

冷泉「そんなことないよ?」ニタ~

逸見「ふんっ・・・おめでとう、二人とも」

冷泉「どうも」

西住「どんな優勝杯なんかより、あなたが生きている今日の方がどんなにも意味があります」

逸見「かほ・・・優勝したらあなたを黒森峰に連れ帰るつもりだったけど、余計なお世話だったみたいね」

西住「え・・・」

逸見「あなたの居場所はここだもの」

西住「逸見さん・・・」

逸見「さ、そろそろ行きなさい。私達も支度をして九州に帰るわ。冷泉、次に勝負した時は私達が勝つからね」

冷泉「おうよ」

西住「それじゃ・・・お体にお気を付けて、逸見さん」

107: 2020/09/17(木) 21:46:13.57 ID:qth/4+z90
 ――・・・

 ザザァ~~~・・・

西住「何度見ても学園艦から眺める海は綺麗だね」

冷泉「昼間はあんなに賑やかだったのに、今は潮も穏やかなもんだ」

西住「・・・大会・・・うまくいったよね?また戦車道をやろうって人・・・増えるかな」

冷泉「さあてね。なるがままさ」

西住「むう・・・そこはお世辞でも賛同してよ。久子ちゃんってホントへそまがりだよね」

冷泉「性分なんでね」

西住「・・・ふふ」

冷泉「・・・ふっ」


 ザザァ~~~・・・

西住「ねえ、久子ちゃん」


冷泉「あん?」


西住「楽しかったね」


冷泉「・・・どあほう」


冷泉「まだまだこれからだよ。あたし達の人生はね」ニカッ



  ~おわり~

108: 2020/09/17(木) 21:48:00.05 ID:qth/4+z90
 ~おまけ~

 黒電話<ジリリリリ・・・

 ガチャ

おばあ「あいよ」

おばあ「――なんだ、あんたかい。元気にしてるのかい?」

おばあ「――余計なお世話だよ。で、用件はなんだい?」

おばあ「――・・・ああ、あんたの孫娘ね。元気にやっとるよ」

おばあ「――ウチの孫と連れだって楽しくやってるようさ。心配しなさんな」

おばあ「――・・・たまにはこっちに来たらどうだい?大洗は第二の故郷だろう。家元も娘に継がせたんだ、余生を楽しむ頃合いだろう」

おばあ「――あいよ、そいじゃあね。そうだ、今度のお中元は肉でも送っておくれよ。期待してるよ」

 ガチャ

麻子「電話?だれ?」

おばあ「あたしが学生時分からの連れだよ」

麻子「昔のおばあ・・・どんな女の子だったの?」

おばあ「さあてね」

 ~おしまい~

109: 2020/09/17(木) 21:48:36.59 ID:qth/4+z90
これにて完結です。ここまで読んでくれた方、ありがとうございました

引用元: おばあ「戦車道時代」