1: ◆pdkDwyOMVs 2016/08/10(水) 03:36:38.20 ID:32EA8YsJo

どこかの会社、第三会議室


「……」

カリカリカリ

モバP「瞳子さん」

カリカリ

「……」

P「瞳子さん?」

カリカリカリ……

P「とーこさん! こらっ」

瞳子「あっ… ごめんなさい、つい」

P「手の甲を引っ掻く癖、治しましょう?」

瞳子「わかってはいるの… でも、つい無意識にやってしまうのよ」

P「もう夏なんですし、手荒れもだいぶましになってきたんじゃなかったですか」

瞳子「そう、なんだけれど…」

P「だけど?」

瞳子「手が冷えてしまうと、血管が疼くと言うか… 皮膚が、ぞわわ、ってなるのが気になってしまって」

P「そうなんですか……」


   服部瞳子は冷え性である。


アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)

4: 2016/08/10(水) 03:38:47.23 ID:32EA8YsJo

ーーー

P「冷房、効きすぎですかね」

瞳子「そうね…ちょっと、寒いわ…」

P「温度上げましょうか。スイッチは、と」

瞳子「でも、勝手にスイッチ弄って良いのかしら」

P「大丈夫でしょう、それくらい」

5: 2016/08/10(水) 03:39:43.77 ID:32EA8YsJo

P「あー、ダメだ、どっかで集中管理してるみたいです」

瞳子「それなら、仕方ないわ…」

P「温度上げてもらえるようにお願いしてきますね」

瞳子「ううん、いいの。今日は猛暑日だし、寒がってるのは私だけなんだから… 少しくらい、我慢しなきゃ」

P「いや、よくないですよ!瞳子さんは、お…… ウチの、大切なアイドルなんですから」

瞳子「でも、あちらさんだって大切な社員さんたちでしょう?」

P「いや、それは、そうですけど……」

瞳子「……」

P「(やっべ、ついうっかり『俺の大切な』って言うところだった)」

瞳子「(”お……”ってなにかしら…?)」


P「あー、とりあえず、場所変わりましょうか。こっち側なら冷房の風があんまりあたらないですし、俺が壁になるんでマシだと思います」

瞳子「ありがとう、そうするわ…」


6: 2016/08/10(水) 03:40:12.50 ID:32EA8YsJo

ーーー

瞳子「待ち時間、長いわね…」

P「まあ、早く来すぎたのはこちらですから」

瞳子「……」

P「やっぱり、寒いですか」

瞳子「いいのよ、上着もストールも忘れてきた私が悪いんだし」

P「せめて、俺がジャケットを着てたら。くそう、クールビズめ」

瞳子「いいじゃない、暑がりな貴方には。シャツ姿も、似合ってるわ…」

P「え、あ、ありがとうございます」


7: 2016/08/10(水) 03:40:44.67 ID:32EA8YsJo

瞳子「それに、暑い日続きなのに熱のこもる服なんか着て、貴方が倒れたりなんかしたら。 …それは、嫌よ」

P「大丈夫ですよ、大げさだなぁ」

瞳子「だって、最近はその…、熱中症? とか、怖いじゃない」

P「……!」

瞳子「?」

P「瞳子さん、今のもう一回言ってください」

瞳子「えっと…?」

P「あー、いや、なんでもないです」

瞳子「そう…?」


8: 2016/08/10(水) 03:41:14.72 ID:32EA8YsJo

ーーー

P「足元、寒くないですか?」

瞳子「脚は、ストッキング履いてるからあんまり気にならないのよね…」

P「あー、素肌に直接冷風が当たらないだけでも、だいぶ違いますよね、なるほど。……なら、腕はアームカバー、とかどうですか」

瞳子「アームカバーって、その、おばさんぽくないかしら…?」

P「デザインによりますよ。レースのとか、シルクのやつでも良いかもしれないですね…… 
  瞳子さんには似合うと思うんですよ、ああいった手合のものが」

瞳子「そうね、貴方が似合うって言うのなら… 試してみようかしら」

P「今度探しに行きましょうか。あんまり詳しいわけじゃないんで、店員さんに聞きながらいいの見つけましょう」

瞳子「ええ、そうね」


9: 2016/08/10(水) 03:41:42.62 ID:32EA8YsJo

ーーー

P「手の甲、赤くなってる」

瞳子「あんまり人には見せられないわね…」

P「汗疹ではないんですよね?」

瞳子「そうね… 湿疹とかではないのよ、手にブツブツができたりするわけではないし」

P「とにかく一度、どこかで診てもらった方がいいかもしれませんね」

瞳子「ええ、そうするわ… でもまず、根本の冷え性からどうにかしないと、って思うの」

P「元々の体質は、治し辛いんじゃないかなぁ」

10: 2016/08/10(水) 03:42:11.24 ID:32EA8YsJo

瞳子「漢方とか、マッサージとか、色々試してみてるのだけど、あとは…」

P「湯治とか?」

瞳子「いいわね、温泉。…でも、ゆっくり湯治に行くほど、時間がとれるのかしら」

P「仕事にかこつけて温泉めぐりでもしましょうか、秋の行楽シーズンに合わせて。……今年こそ、温泉レポートの仕事とってきますから」

瞳子「それは… 期待しても、いい?」

P「もちろんです」


11: 2016/08/10(水) 03:42:39.87 ID:32EA8YsJo


ーーー

P「それにしても遅いなぁ」

瞳子「そうね…」

 「……」

 「……」

カリカリカリ……



P「とーこさん」

瞳子「あっ…」

P「またやってる……」

瞳子「ごめんなさい…」


12: 2016/08/10(水) 03:43:10.29 ID:32EA8YsJo

瞳子「私だって、手を擦ったり引っ掻いたりする癖、なくしたいのよ…」

P「無意識となると、なかなか難しそうですね」

瞳子「どうしたらいいのかしらね…」

13: 2016/08/10(水) 03:43:37.82 ID:32EA8YsJo

P「あ、そうだ! 瞳子さん、手をだして下さい」

瞳子「えっ?」

P「いいから、ほら」

瞳子「ええと、はい」


14: 2016/08/10(水) 03:44:06.08 ID:32EA8YsJo

 ぎゅっ

瞳子「あっ…」

P「こうやって握っていれば、この手は悪さをしませんよね?」

瞳子「それは、そう… だけれど」

 「……」

 「……」

15: 2016/08/10(水) 03:44:33.86 ID:32EA8YsJo

瞳子「あの…」

P「はい」

瞳子「ずっとこうされていると、困るわ…」

P「?」

瞳子「だから、その」

P「あっ」

瞳子「ね?」

16: 2016/08/10(水) 03:45:05.27 ID:32EA8YsJo

P「ごめんなさい、あの」

瞳子「ええと、別に、嫌ではないのよ… でも、びっくりして」

P「いや、その、考え無しで」

瞳子「…ところで、貴方のそれも、”無意識”、なのかしら?」

P「え、あ、ははは……」

17: 2016/08/10(水) 03:45:33.95 ID:32EA8YsJo

瞳子「ふふっ」

P「?」

瞳子「…ごめんなさい、なんだか昔のことを思い出してしまって」

P「昔、ですか」

瞳子「少し前、かしら。あの時も、貴方ははこうやって、手を取ってくれたのよね」

P「そう、でしたっけ」

瞳子「そうよ?ちゃんと、覚えてるもの。…それに、あの、クリスマスの夜も…」

P「それは、……覚えて、ます」

 「……」

 「……」

18: 2016/08/10(水) 03:46:02.73 ID:32EA8YsJo

ーーー

瞳子「ねえ」

P「はい」

瞳子「よかったら、また… こうやって、手を握ってくれないかしら」

P「えっ?」

19: 2016/08/10(水) 03:46:41.63 ID:32EA8YsJo

瞳子「いつもじゃなくていいの。私が弱気になった時、悩んでいる時、怖くなった時に」

P「それぐらいなら、いつだって」

瞳子「そうしてくれたら、…私はまた、輝けるから」

P「……だったら、それは俺の仕事、ですね」

瞳子「ええ。 …貴方でないと、いやよ」

P「……はい」


<fin>

20: 2016/08/10(水) 03:47:16.65 ID:32EA8YsJo

はっ(8)とりとう(10)この日です、ということで
TBS(とーこさん・ビキニ・Y!!)での再登場おめでとう!

瞳子さんの血管が透けて見えるか細い手をただ握りたい、夏も冬もいつだって


21: 2016/08/10(水) 03:47:45.23 ID:32EA8YsJo

前作

・凜「特別な、芸名」
   

引用元: 瞳子「その手に、乗せられて」