サターニャ「なにそれ？　私も混ぜなさいよ！」

ガヴリール「じゃあ今のうちにインストールしとくか」

ヴィーネ「“ポケモンGO”で検索すれば良いのよね？」

サターニャ「ポケモン……これね！」

ガヴリール「ラフィエルにもメールしとくか」

サターニャ「放課後が待ち遠しいわね！」

ガヴリール「お前なぁ……」

ヴィーネ「今日は短縮授業だから授業はもう無いわよ」

サターニャ「そうだっけ？　なんにせよ今から楽しみね！」

【放課後】

ラフィエル「最初の三匹……ですか」

ガヴリール「チュートリアルってやつだな。この中から一匹選ぶんだよ」

ヴィーネ「私はこの……亀をを選ぼうかな」

サターニャ「私のだけ変な英語が出てくるんだけど！　これバグってんじゃないの？」

ガヴリール「ちゃんと“ポケモンGO”で検索したのか？」

サターニャ「したわよ！　それでインストールしたら変なのが出て遊べないんだけど」

ラフィエル「どれですか？　あらぁ～」

ヴィーネ「え？　なにこれ」

ガヴリール「Guideじゃねえか！」

サターニャ「グイデ？」

スレタイの意味がわからない

>>5
これが元ネタです

ガヴリール「ガ・イ・ド！　金儲けのために勝手に作って配信してる説明書のアプリだよ」

サターニャ「じゃあ、これを読めば詳しくなれるってこと！？」

ラフィエル「サターニャさん！　頑張ってください！」

ガヴリール「まぁ、全部英語だけどな」

サターニャ「それを早く言いなさいよ！　ちんぷんかんぷんじやない！」

ラフィエル「サターニャさん、どんまいです！」

ヴィーネ「やったー！　ゼニガメってポケモンを捕まえたわ！」

サターニャ「ちよっとヴィネット！　私より先に捕まえるなんてズルいわよ！」

ガヴリール「インストールすらできない奴がそれを言うなよ」

ラフィエル「えーっと、私はこの球根を背負っている子にしますね」

サターニャ「えー、じゃあこのハゲてる恐竜っぽいのしか残ってないじゃない……まあいっか」

ガヴリール「よし、私は逃げるぞ！」

サターニャ「ちょ、どこ行くのよガヴリール！」

ガヴリール「さらに別方向に逃げるぞ！」

サターニャ「ガヴリールがついにおかしくなった！？」

ガヴリール「失礼な！　最後にもう一度逃げて……よし！」

ラフィエル「ああ、そう言うことですか」

サターニャ「どう言うことよ？」

ガヴリール「やった！　ピカチュウだ！！」

サターニャ「なにそれずっこい！　私にも教えなさいよ！」

ガヴリール「最初の三匹が居るだろ？」

サターニャ「うんうん」

ガヴリール「そいつが消えるまで逃げる！」

サターニャ「それで？」

ガヴリール「また出現するから、更に逃げる！」

サターニャ「ふむふむ」

ガヴリール「それを三回やるとピカチュウが出てくるんだよ」

サターニャ「先に捕まえちゃったらどうすんのよ？」

ガヴリール「サターニャ……」

サターニャ「急に肩に手を置いて……な、なによ」

ガヴリール「人生、諦めが肝心だぞ」

サターニャ「あーもう！　捕まえる前に言いなさいよ！」

ヴィーネ「そうよガヴ！　うぅ……私もピカチュウ欲しかったなぁ」

ガヴリール「あ……その、ごめん！　ヴィーネ！」

ラフィエル「まあまあ、そのうち捕まえられますよ」

ガヴリール「まあ、海外の情報だと出現率低いけどな」

ヴィーネ「じゃあ一生捕まえられないかも……うぅ……」

ガヴリール「あーもう！　ヴィーネ！」

ヴィーネ「は、はい！」

ガヴリール「アカウントをもう一回作ろう！　大好きクラブのアカウントを！」

ヴィーネ「ガヴリール……！」

ガヴリール「これをこうやって……よし！　ピカチュウ出たぞ！」

ヴィーネ「ありがとう、ガヴリール！」

ガヴリール「これくらい良いってことよ」

サターニャ「ちょ、ちょっと！　私にも教えなさいよ！」

ガヴリール「サターニャのはAndroidだから、Googleのアカウント使ってるし無理だろ。たぶん」

サターニャ「じゃあ私だけピカチュウ居ないじゃない！」

ラフィエル「あ、私も！　私も持っていませんからサターニャさんとお仲間ですよ」

サターニャ「え……あんまり嬉しくない」

ラフィエル「酷い！　ベッドで一緒に寝たあの日のサターニャさんは嘘だったんですか！」

サターニャ「あんたが勝手に侵入したんじゃない！　むしろ私は被害者よ！」

ガヴリール「どうでも良いけどポッポを捕まえたぞ」

ヴィーネ「あ、私も捕まえたわ！」

サターニャ「ちょっとちょっと！　なに私より先に捕まえてるのよ！」

ガヴリール「ラフィエルもサターニャもこっちに来いよ」

ラフィエル「ボールを……えい！　ガヴちゃん！　捕まりましたよ」

サターニャ「えい！　やあ！　とう！　……なんで当たんないのよ！」

ガヴリール「ちゃんと真っ直ぐ投げてるのか？」

サターニャ「投げてるわよ！　って！　当たったと思ったら読み込みが終わらないじゃない！」

ガヴリール「初日だし回線が重たいのかもな。リロードすれば治るぞ」

サターニャ「りろー……ど？」

ガヴリール「アプリを終了させて、もう一度起動させるんだよ」

サターニャ「なぁんだ、最初からそう言いなさいよね」

ガヴリール「リロードくらい誰でも知ってるだろ……なぁ、ヴィーネ？」

ヴィーネ「え？　あ、ああ。そうね」

ガヴリール「ヴィーネ？」

ラフィエル「ヴィーネさん、コラッタを捕まえてますね」

サターニャ「だから私より先に捕まえるんじゃないわよ！」

ヴィーネ「え？　あ、ごめん……なんかそこに居たからつい」

ガヴリール「そんなことより歩こうよ。ランダムエンカウント式のゲームは四方八方に歩いてナンボだからさ」

サターニャ「ちょっと待ってよ！　なんか集合写真みたいなのが出てきたんだけど！」




ガヴリール「この近く居るポケモンってなんだよ。押しても円が出るだけだし」

ヴィーネ「公式サイトの説明だと、そのポケモンの方向を向くと光って足跡が減るらしいわよ」

ラフィエル「ヴィーネさん、押してもなんにも変わりませんよ？」




サターニャ「ふぅ……やっとログインできたわ」

ガヴリール「シェルダーにボール当てたのに反応しないじゃねえか！」

ヴィーネ「一つだけ分かったことがあるわ」

ラフィエル「なんですか？」

サターニャ「あー！　シェルダーにタッチしたのに反応しないじゃない！」

ヴィーネ「明日にしたほうが良いんじゃない？」

ガヴリール「奇遇だなヴィーネ。今は人が多すぎる。明日にしよう」

サターニャ「な、なんだか出鼻をくじかれた感じね……」



【翌日】

ピンポン　ピンポン　ピンポーン！

ヴィーネ「もう……誰よこんな朝早くに」　ガチャ

ガヴリール「ヴィーネ！　ヴィーネ！！」

ヴィーネ「ガヴリールが土曜日に早起き！？　雪でも降るんじゃないでしょうね」

ガヴリール「失礼な！　私だって早起きくらいするぞ」

ヴィーネ「それで急にどうしたの？」

ガヴリール「今朝の新聞だよ！　ほらこれ！」

ヴィーネ「えーっと……なになに、鶴舞公園にポケモントレーナーが殺到、人が多すぎてアクセス障害も？」

ガヴリール「昨日繋がりにくかったのはこれが原因だろうな」

ヴィーネ「それで何時に行くの？」

ガヴリール「今から行くに決まってるだろ！　ありがとうございます！」

ヴィーネ「ちょ、ちょっと待ってよ！　まだパジャマだし、朝食もまだだからね！」

ガヴリール「仕方ないなぁ……早く準備するんだぞ」

ヴィーネ「なんだか私がお寝坊さんみたいな言い方だけど、まだ朝の六時だからね！」

ガヴリール「ポケモントレーナーの朝は早い」

ヴィーネ「はぁ……これが普段から早起きならどれだけ良かったか」

ガヴリール「なんか言ったか？」

ヴィーネ「なんでもありませーん！　さ、着替えなきゃ」

ガヴリール「私は今からでも行けるぞ」

ヴィーネ「ん？　そう言えばガヴって日焼け止め塗ってきたの？」

ガヴリール「なに言ってるんだヴィーネ。天使は日焼けなんかしないぞ」

ヴィーネ「天界と違って地上は普通に日焼けするわよ……もう、ちょっと待ってなさい」

ガヴリール「冷たっ！　もうちょっと温めてから塗ってくれよ」

ヴィーネ「紫外線はお肌の大敵なんだからね……よし！　これで大丈夫ね」

ガヴリール「ありがとうヴィーネ。お礼だけはタダだからな。いくらでもありがとうするぞ」

ヴィーネ「はいはい……っと、これもね」

ガヴリール「ぽふっ……なんだ帽子か」

ヴィーネ「熱中症対策は重要だからね」

ガヴリール「それで水筒も持ってきたのか。なんだかお母さんみたいだな」

ヴィーネ「ダメな娘を持つ母親は辛いわね！」

ガヴリール「悪魔の娘が天使とか親不孝にも程があるだろ」

ヴィーネ「良い子に育ってくれたって証拠じゃない！」

ガヴリール「なんだかヴィーネみたいだな」

ヴィーネ「ふぇ！？　いやいやいや、無いから無いから。私ほど悪魔然とした悪魔なんて……居ないよね？」

ガヴリール「それを天使に聞くなよ……うん、ヴィーネは天使の私を籠絡する立派な悪魔だよ」

ヴィーネ「それなら良かった！　……って？　ろう……なんて言ったの？」

ガヴリール「な、なんでもない！　ほら、早く出発するぞ！」

ヴィーネ「あぁ！　ガヴ待ってよー！」


【鶴舞公園】

サターニャ「……で、」

ガヴリール「うん」

サターニャ「なんで私たちまで一緒に来てるのよ！」

ラフィエル「まあまあ、道中でカビゴンが居ましたし良しとしましょうよ」

サターニャ「CP？？？とか驚いたけど、これって強いポケモンってことなの？」

ガヴリール「なんだっけ、自分の手持ちポケモンの最大CPより高いとハテナになるんだよ」

サターニャ「なんかやけに詳しくない？」

ガヴリール「昨日から色々と調べたからな」

ヴィーネ「だからって新聞の一面にこんな公園を書かなくても良いのに」

ラフィエル「上から見たらモンスターボールに見えるんでしたっけ？」

ガヴリール「原作のゲームに登場した“しぜんこうえん”の元になったとも噂されてる場所だな」

サターニャ「なんか凄いポケモンが居そうな場所ね」

ガヴリール「それよりポケストップの数がおかしいだろ。完全にチートだこれ」




ヴィーネ「この青いボールみたなの？　昨日開いたときは十個も無かったわよね」

サターニャ「この花びらみたいのはなによ？」

ガヴリール「ルアーモジュールってアイテムがあって、それをポケストップに使うと三分おきにポケモンが出現して、効果が三十分まで持続するんだよ」

サターニャ「なにそれ凄い！　ポケモン大量じゃない！！」

ヴィーネ「ほんと、下手なお祭りより人が多いわね」

ラフィエル「ゲームの中のお花見を実際にしているみたいですね」

ガヴリール「と言うか実際になにかのお祭りもやってるよな」

サターニャ「どこを見てもスマートフォン片手に歩いていて、イベントに参加してる人居ないでしょこれ」

ヴィーネ「なんのイベントか知らないけど……運営さんたちが可愛そうになってきたわ」

ガヴリール「ラプラス！？　レアなやつじゃんこ……なんだジムのポケモンかよ」

ヴィーネ「ジム？」

ガヴリール「ああ、なんでも赤青黄の三色から選べて、それぞれのカラーで戦うんだよ」

サターニャ「じゃあ天使と悪魔で競争ね！」

ガヴリール「まあ落ち着け。これは後から変更ができないとあるから、今は設定しないほうが無難なんだよ」

ラフィエル「後手に回るとか、そう言うことはないんですか？」

ガヴリール「どの道強いポケモンが居ないとジムで勝てないし、トレーナーレベルを上げてからでも大丈夫だな」

サターニャ「その辺の人たちより詳しそうねガヴリール」

ヴィーネ「その頑張りを天使らしさに向けてくれたら良かったのに……」

ガヴリール「なにか言ったか？」

ヴィーネ「なんでもないでーす」

サターニャ「ポケストップ？　を回して……出てきたアイテムをタッチすれば良いのね」

ヴィーネ「やった！　レベルが上がったわ」

ガヴリール「ポケモンがバカみたいにでてくるし取り放題だな」

ラフィエル「でもこれ、地元から来るまでに出現したポケモンと大差ないですよね」

ヴィーネ「やった！　コイキングを捕まえたわ！」

サターニャ「コイキング……って！？　進化に飴が400個とかおかしいでしょこれ！　百匹捕まえろってことじゃない！」

ラフィエル「正しくは百とんで一匹ですよ」

ガヴリール「101匹とか犬に好かれてるサターニャみたいだな」

サターニャ「好きで好かれてるんじゃないわよ！　あいつが勝手に来るんじゃない！　私のメロンパン……」

ヴィーネ「この、亀の池？　……ってところはストップが三つ同時に取れるのね」

ガヴリール「座ってるだけでアイテムとポケモンが取れるとか天国だこれ！」

ラフィエル「石垣に直接腰掛けるのは……ちょっと……」

サターニャ「みんな座ってるのに臆するとかラフィエルも意外と小心者ね！」

ラフィエル「サターニャさん、ハンカチありますか？」

サターニャ「え？　持ってるけどなんに使うのよ。はい」

ラフィエル「ありがとうございます、サターニャさん。これで座れますね！」

サターニャ「自分のハンカチを使いなさいよ！」

ラフィエル「えー、ハンカチが汚れるじゃないですか」

サターニャ「私のハンカチは汚れても大丈夫だって言うの！？」

ヴィーネ「やった！　ゼニガメを捕まえたわ」

ガヴリール「他のポケモンと比べてこいつだけ当てにくすぎだろ。すぐにボールから出てくるし」

サターニャ「だから勝手に捕まえてるんじゃないわよ！」

ヴィーネ「この木の実ってなに？」

ガヴリール「ああ、それを使うとポケモンが捕まえやすくなるんだよ」

ヴィーネ「へーえ、そうなんだ」

ラフィエル「全部のポケモンに使えば良いってことですか？」

サターニャ「ちょっと！　使ってみたけどゼニガメ捕まえられないじゃない！」

ガヴリール「問題が一つだけあって、ボールから出る。つまり捕獲に失敗したら実の効果が消えるんだよ」

ヴィーネ「持てるアイテムが限られてるのに何度も使わないといけないって意外と面倒ね」

サターニャ「……ねえ、このゲームって全部で100匹以上いるのよね？」

ガヴリール「海外限定や伝説を除いたら142匹でコンプリートだな」

サターニャ「朝からずっと捕まえ続けて、持てなくなったから博士に送って数百匹は捕まえたんだけどさ」

ガヴリール「みなまで言うな。私も同じこと思ってるから」

ヴィーネ「なんだか周りの人たちも珍しいポケモンが居ないってボヤいてるわよ」

ラフィエル「ここはサターニャさんに人肌脱いでもらう瞬間(とき)ですね！」

ガヴリール「ん？　なにか策があるのか？」

ラフィエル「ちょっとここに書かれた文字を叫んでくれますか？」

サターニャ「なになに、えーっと――――」

ガヴリール「ちょっとおい！　これ洒落にならないやつじゃないか！」

サターニャ「カイリューだぁぁああ！！！！」

ガヴリール「ちょ、バカ逃げるぞ！」

サターニャ「え？　え？　どうしたのよ急に」

　ﾄﾞ　ﾄﾞ　ﾄﾞ　ド　ド　ド 　├" 　├"　 ├"

ヴィーネ「はぁ……はぁ……」

ガヴリール「ぜえ……ぜえ……」

サターニャ「で、なんだったのあれ？」

ガヴリール「おま……はぁ……はぁ……あれはだな」

ラフィエル「なんでも、カイリューってポケモンが一番珍しいらしいですよ」

ヴィーネ「あー、サターニャが叫んだから勘違いした人たちが走ってきたって訳ね」

ガヴリール「それも千人単位だぞ！　あのまま居たらTwitterに晒されてたぞ」

ラフィエル「大丈夫ですガヴちゃん」

ガヴリール「どこにそんな根拠があるんだよ」

ヴィーネ「走ったらお腹が空いたわね」

ガヴリール「そろそろ昼食の時間だもんな。なにか希望とかあるか？」

サターニャ「私メロンパンが食べたい！」

ヴィーネ「特に希望はないわよ」

ラフィエル「私も希望はありませんし、パン屋さんに行きましょうか」

ガヴリール「パンかぁ……お、ちょうど駅ナカにパン屋さんがあるじゃないか」

サターニャ「えー、なんか駅にあるパン屋って量産型ってタイプなのよね」

ガヴリール「じゃあサターニャは食べない……っと」

サターニャ「わー！　食べます食べます！」

ヴィーネ「公園が凄い人なだけあって、店内も人でごった返してるわね」

ラフィエル「このカレーパンというのが人気らしいですよ」

ガヴリール「カレーかぁ……じゃあそれにするか」

ヴィーネ「えー、私はもう少し可愛いパンが良いんだけど……でもみんなカレーパン買ってるわね」

ガヴリール「むしろカレーパンしか買ってないぞ。カレーパンと他のパンを買ってる人は居ても、他のパンだけを買う人は見た限りだと居ないな」

サターニャ「えー、私メロンパンが食べたい！　メーローンーパーンー！」

ラフィエル「では私と半分こにしませんか？　それならサターニャさん、どっちも食べれますよ？」

サターニャ「へーぇ、天使のくせになかなか殊勝な考えじゃない。さっきのことは水に流してあげるわ」

ラフィエル「ありがたき幸せー」

ガヴリール「どこの学芸会だよ」

ヴィーネ「！？　このカレーパンすごいわよ！」

ガヴリール「はぁ？　カレーパンなんて高が知れてるだろ……うん！？　なんだこれ！！」

サターニャ「揚げたてでサクサクとした食感……」

ラフィエル「ゴロッとした牛肉……」

ヴィーネ「辛いのは苦手だったけど、パンの甘さがカレーの辛さを抑えてくれて香辛料の芳醇な香りが鼻を抜けるようね！」

ガヴリール「お腹が膨れたら眠くなってきたわ……もう帰ってもいい？」

ヴィーネ「帰るもなにも、ガヴが来たいって言ったんじゃない。もうちょっと居ようよ」

サターニャ「じゃあ次はメロンパンの感想ね！」

犬「ワンワン！」

サターニャ「あー！　私のメロンパンー！！　ちょっと！　これから本番なのよー！！」

ラフィエル「あらあら」

サターニャ「せめて取るならカレーパンにしなさいよ！」

ガブリール「いやいや、それだとカレーパンの感想が言えないだろ」

ラフィエル「安心してくださいサターニャさん！　ここに――」

サターニャ「そうだったわ！　ラフィエルに預けた私の正解だったようね」

ラフィエル「食べ終わったメロンパンがあります」

サターニャ「手で口を覆いながら喋るんじゃないわよ！　返しなさいよ私のメロンパン！」

ガヴリール「半分にして交換したんだから、既にお前のじゃないだろ」

ヴィーネ「まあまあ、カレーパンは食べられたんだから良しとしましょうよ」

サターニャ「そうよ！　パン屋さんのテーブルで食べてるんだからまた買えば良いじゃない！　ふふふ、我ながら天才的な発想ね」

店員「売り切れましたー」

サターニャ「ぎゃふん！」

ラフィエル「どんまいです、サターニャさん！」

ヴィーネ「明日があるわよ！」

ガヴリール「いや、レアなポケモンでないから明日は違う所に行こうよ」

サターニャ「なるほど、新天地でのまだ見ぬメロンパンを渇望するのね」

ガヴリール「パン屋さんがあるかは知らんけどな」

ラフィエル「それより、公園に戻ってきたら周囲がざわついていますよ」

ヴィーネ「さっきのが話題になってるとか、ないでしょうね」

ガヴリール「おい！　カビゴンだぞ！　カビゴン！」

ヴィーネ「初めて見るポケモンじゃない！　なんだか強そうね」

サターニャ「なにこれ弱っ！　行きに話してたカビゴンのほうが強かったわよ」

ラフィエル「どうやらみなさん、数字がバラバラみたいですね」

ガヴリール「いや、私とヴィーネは同じだぞ」

ヴィーネ「確かガヴと同じTL（トレーナーレベル）だったわよね」

ガヴリール「じゃあTLごとにポケモンのCP（強さ）が変わるのかな」


【夕方】

ガヴリール「なんだまたポッポかよ」

サターニャ「ちょっと！　コラッタしか居ないじゃない！！」




ヴィーネ「なんだか私、ここがコラッタの巣だと言われても頷ける気がしてきたわ」

ガヴリール「奇遇だなヴィーネ、それには私も同意せざるを得ない」

ラフィエル「試しに調べてみたんですが、この鶴舞公園ってコラッタの巣として登録されている様ですよ」

サターニャ「なにそれ酷い！　ネズミーランドじゃない！」

ガヴリール「コラ！　……タ」

ヴィーネ「これだけ捕まえても減らないって、この公園どれだけコラッタが居るのよ」

ガヴリール「ランダムエンカウント方式なら出続けるし、固定エンカウント方式なら時間経過による回復があるから、結局は出続けることになるな」

サターニャ「この足跡ってのバグじゃないの？　減るとか書いてあるのに変わらないじゃない」

ラフィエル「昨日から直ってませんよね」

ガヴリール「足跡が機能しててもコラッタの他にはポッポ、ドードーやコンパン、ズバットにイーブイにコイキングくらいしか居ないけどな」

サターニャ「歩くたびにポケモンと出くわすのに、図鑑が30匹も埋まらないとか逆に驚きよ」

ヴィーネ「それにしても、よくバッテリーなんて持ち歩いてたわね」

ガヴリール「このゲームってバカみたいに電池が減るから、モバイルバッテリーの持ち歩きが必須だと関連サイトに書かれててな」

ラフィエル「今回はガヴちゃんのお陰で事なきを得ましたけど、今度からは各自でバッテリーを買ったほうが良さそうですね」

ヴィーネ「ガヴのバッテリーも無くなりそうだしね」

サターニャ「流石に電池は魔界通販で買えないわね。ガヴリールはどこで買ったのよ？」

ガヴリール「am͜a͉zonってサイトで超速達で注文したんだよ。購入ボタンと同時に呼び鈴が押された時は目を疑ったよ」

ヴィーネ「早いとかそんな次元を超えてるわね……」

サターニャ「なるほど、am͜a͉zonってサイトで買えば良いのね」

ガヴリール「オススメはここと、am͜a͉zon専販のここだな」

ラフィエル「あれ？　注文ボタンが押せませんよ」

サターニャ「ちょっと！　それどころか他のバッテリーも買えないじゃない！」

ガヴリール「お前なぁ……そんなわけ無いだろ。えーっと……なに！？」

ヴィーネ「どうしたの？」

ガヴリール「am͜a͉zonからモバイルバッテリーの在庫が消えた……だと！？」

サターニャ「なにそれ凄い！」

ガヴリール「みんな！　今から大須に行って買いに行くぞ！」

ラフィエル「そこまでして買うべきなんですか？」

ガヴリール「このゲーム以外でも、遠出したときとか使い道はあるからな。持っておいて後悔はしないぞ」

ヴィーネ「確かに、旅行した先でスマホの電池が無くなりそうって話は聞いたことあるわね」

サターニャ「それで大須に来たわけだけど……」

ガヴリール「地域格差が酷いゲームだとは聞いてたけど、まさかこれまで差があるとは……笑うしかないな」

ヴィーネ「さっきの鶴舞公園も凄かったけど、ここって大須商店街が有名なんだっけ」

ラフィエル「商店街の全ての店舗を登録してるって言われたら、信じちゃいそうですね」

サターニャ「それでモバイルバッテリーはどこに売ってるのよ？」

ガヴリール「ツクモやバッド……じゃなかった、グッドウィルを見て安いところで買えば大丈夫だろ」

ヴィーネ「え……なにこのストップ」




ラフィエル「可愛らしい女の子……でしょうか？」

ガヴリール「あれだ、中に入ったら複製原画を買わされるぞ」

サターニャ「なにそれ？」

ガヴリール「絵を展示してあると思ったら、そのコピーが30万50万で売ってるんだよ。それを実際に購入した客が、その原画を部屋に飾ってる写真も貼られていたな」

ヴィーネ「それ本当に購入したお客さんなのかな」

ラフィエル「ハニートラップを彷彿とさせますね。こっちは絵の女の子がハニーとなりますけど」

ガヴリール「お、ダンボーのバッテリーで有名なあのメーカーのバッテリーあるじゃん。これオススメだぞ」

ヴィーネ「このバッテリーってメーカーによって倍以上も値段が違うけど、それだけ性能も違うってことなの？」

ガヴリール「元となるバッテリーはどのメーカーもエネループを使ってるから品質は一定だな」

ヴィーネ「じゃあ利益をどれだけ取っているかって話ね」

ガヴリール「バッテリーを覆うケースが薄いとシールド効果も薄れるから、ある程度の品質は必要だけど、日本メーカーは半分以下の容量で値段が倍だもんな」

ラフィエル「それって買う意味あるのですか？」

ガヴリール「知らない奴がメーカー名に釣られて買う程度だな。am͜a͉zonで検索したことのある奴は誰も買わないし」

サターニャ「大は小を兼ねるって言うし、この容量の大きいのを買えば良いのね！」

ガヴリール「まぁ、少なくて困ることはあっても大きくて困ることは重さくらいだしな」

ヴィーネ「なんか羊羹みたいね」

ガヴリール「乾電池を並べてるだけだしな。そりゃ平ぺったくもなるさ」

ラフィエル「なんだか外郎が食べたくなってきました」

サターニャ「拙者親方と申すは！」

ガヴリール「ラフィが言ってるのは食べる方の外郎な」

サターニャ「外郎怖い！」

ガヴリール「なんでさっきから落語なんだよ」

ヴィーネ「バッテリーを買ったは良いけど、大須も持ってないポケモン出てこないわね」

サターニャ「鳥！　虫！　鼠！」

ラフィエル「それにしても、どこを歩いても皆さんポケモンGOをやっていますね」

ガヴリール「正直、やってない人を探すほうが難しいレベルだな」

サターニャ「歩きスマホは危険とか言って、今日だけで何千人と歩きながらやってる人を見たけど誰もぶつかってないじゃない！」

ヴィーネ「サターニャ前！」

サターニャ「え？　はうっ！」

ガヴリール「あーあー、ちゃんと前を見ながらやらないから」

サターニャ「あうー、頭痛いー」

ラフィエル「サターニャさん」

サターニャ「な、なによ」

ラフィエル「痛いの痛いの飛んでいけー！」

サターニャ「ああ……なんだか痛みが和らいで……いくわけないでしょ！」

ラフィエル「ですよねー」

ガヴリール「子供騙しの文言だしなそれ」

ヴィーネ「そろそろ暗くなってきたわね……夜はどうする？」

サターニャ「名古屋と言えば？」

ラフィエル「うーん、背伸びしてる田舎？」

ヴィーネ「まぁ、東京や大阪と比べたら田舎よね」

ガヴリール「食べてみや～ち！」

サターニャ「それよそれ！　寿がきやラーメンが食べたい！」

ヴィーネ「寿がきや……ああ、どの店舗に行ってもおばさんしか働いていない所ね」

サターニャ「なぜパートのおばちゃんしか居ないのか……永遠の謎だわ」

ラフィエル「大須って個人のラーメン店が多いのにチェーン店ですか？」

ガヴリール「チェーン店を甘くみないほうが良いぞ」

ラフィエル「そうでしょうか？」

ガヴリール「いつ食べても、どこで食べても同じ味。変わらぬ安心感こそチェーン店の利点だよ」

ヴィーネ「ただ単に並ぶのが嫌なだけじゃない」

サターニャ「サッと食べてサッと出る！　ロット乱しは氏罪に値するわ！」

ガヴリール「いやいや、寿がきやにロットなんて概念ないから」

◆

ガヴリール「腹ごしらえも済ませたし、ポケモンやりながら鶴舞公園まで歩くか」

ヴィーネ「電車とかは使わないの？」

ラフィエル「このペースだと交通費が凄いことになりそうなので……」

ヴィーネ「ああ、なるほど」

サターニャ「実質無料とか謳っておいてリアル課金が酷いゲームじゃない！」

ガヴリール「地域によっては遠征しないと碌に集まらないって言う田舎涙目なゲームだしな」

ヴィーネ「なんだか子供が可哀想になってくるゲームね」

ガヴリール「札束で殴りあう日本のゲームよりはマシだけどな」

サターニャ「私は魔界通販が観たいから先に帰るわよ」

ヴィーネ「サターニャはそろそろあの通販で買うのやめなさいよ……」

サターニャ「豪遊！　圧倒的豪遊よ！」

ガヴリール「人はそれを無駄遣いと言う」

サターニャ「そ、そう言うのは言わなくて良いわよ」

ラフィエル「サターニャさんが帰るなら、私もおいとましますね」

ヴィーネ「サターニャをよろしくねラフィ」

ラフィエル「おまかせください」

サターニャ「どうして私が世話される側なのよ！」

ガヴリール「可愛い娘ほど世話が焼けるって言うしな」

サターニャ「え？　今なんて言ったの？」

ガヴリール「世話が……焼ける」

サターニャ「その前よ前！　さあ！」

ガヴリール「…………いい娘」

サターニャ「もっと大きな声で！」

ガヴリール「ああもう！　ほら、魔界通販が始まっちゃうだろ！」

サターニャ「そうじゃない！　あんたと喋ってたばかりに見逃したら悔やんでも悔やみきれないわ」

ガヴリール「それ私との時間が無駄だったってことか？」

サターニャ「なに言ってるの？　楽しかったわよ」

ガヴリール「え……あ、ありがとう」

サターニャ「ほらラフィエル！　早く帰るわよ！」

ラフィエル「それではガヴちゃん、ヴィーネさん、また明日です」

ヴィーネ「うん、またね！」

ガヴリール「じゃあな」

ヴィーネ「それでガヴリールはどうする？」

ガヴリール「さっきまでの鶴舞公園はたまたま乱数が悪かっただけだ。きっと、そう！　きっと珍しいポケモンに出会えるはず！」

ヴィーネ「はぁ……ま、せっかくだし付き合ってあげるわよ」

ガヴリール「ヴィーネ……」

ヴィーネ「な、なによ」

ガヴリール「ありがとうございます！」

ヴィーネ「はいはい。さ、行くわよ！」

ガヴリール「うん！」

【翌日】

ドンドンドン

サターニャ「ガヴリール！　おーいガヴリールってば！」

ドンドンドンドン

ガヴリール「なんだよこんな朝早くから……」　ガチャ

サターニャ「ガヴリール！　ミュウツーが出たらしいわよ！」

ガヴリール「ミュウツー？　そんな話は聞いたことないぞ」

サターニャ「昨日の公園よ！　鶴舞公園！」

ガヴリール「昨日……？　ちょっと待ってろ調べるから」

サターニャ「よく分かんないけどミュウツーって強いの？」

ガヴリール「確か……原作だとアルセウスが出るまではずっと最強の位置に居たポケモンだっけ」

サターニャ「くそう……そんなことなら魔界通販は後で観れば良かったわね」

ガヴリール「録画してても通販だから品切れたらそれまでだろあに」

サターニャ「あー、確かにそうね」

ガヴリール「ああ、カメックスだこれ」

サターニャ「カメックス？」

ガヴリール「これだよこれ」






サターニャ「これがカメックスって言うの？　それでミュウツーはどうなったの？」

ガヴリール「昨日の深夜1時過ぎにカメックスが出たと大騒ぎになってな。そのときの画像を使ったデマだぞ」




サターニャ「それよそれ！　……って、なんでガヴリールも捕まえてるのよ！」

ガヴリール「だから眠いんだよ」

サターニャ「え？　確か昨日ってヴィネットも一緒だったわよね」

ガヴリール「ああ、ヴィーネも一緒だぞ」

サターニャ「なんだかヴィーネが可哀想に思えてきたわ」

ガヴリール「そんなことで今の私は眠いのと、膝が……だな。笑ってるんだ」

サターニャ「バカねぇ！　膝が笑うわけないでしょ！　ガヴリールもゲームのやり過ぎでおかしくなったんじゃないの？」

ガヴリール「膝が笑うってのは、膝がガクガク震えることを例えた比喩だぞ」

サターニャ「それを早く言いなさいよ！」

ガヴリール「まぁ良いか、今日はポケモンセンターに行きたいな」

サターニャ「ポケモンセンター？」

ガヴリール「ああ、矢場町にあるんだけどな、噂では珍しいポケモンが出るとか出ないとか」

サターニャ「それなにも出ないってことじゃない！」

ガヴリール「まあまあ、行けば分かることだろ」

サターニャ「史実を事実にするって訳ね」

ガヴリール「じゃあヴィーネとラフィエルも呼ぶか！」

サターニャ「それまでガヴリールの部屋で待ってるわね」

ガヴリール「そう言えば昨日買ったバッテリーは持ってきたか？」

サターニャ「もちのロンよ！　ほら！」

ガヴリール「なんで未開封なんだよ！　充電し……ん？」

サターニャ「ふふ、ガヴリールったら充電済みのシールを見落とすとはまだまだのようね」

ガヴリール「まさかポケモンGOのためにわざわざ充電したのか？　店員も大変だな」

サターニャ「大悪魔さまが使うバッテリーよ？　それくらいしてもばちは当たらないわよ！」

ガヴリール「罰を与えるのって悪魔の仕事だっけ？」

サターニャ「うーん、宗教的な概念だし神様じゃないの？」

ガヴリール「よく分かんないけど、ヴィーネたちが来たからポケモンGO起動するか」

サターニャ「あー、ガヴリールったら知らないんだー！」

ガヴリール「じゃあお前は知ってるのかよ……」

サターニャ「え？　なんのこと？　あ！　ゼニガメ捕まえたわよ！」

ガヴリール「なに！？　私も捕まえよう」

ヴィーネ「おはよう、ガヴリール！　サターニャもおはよう！」

ラフィエル「ガヴちゃんもサターニャさんも、おはようございます」

ガヴリール「よし！　それじゃあ今日もポケモン捕まえよう！」

ヴィーネ「私たちは登り始めたばかりなのだ……この、ポケモンGOという名の坂に！」


第一部完
（ポケモンGOリリース初日から三日目朝まで）

愛知県名古屋市のローカルネタなので、読んでいて分からなかったらごめんなさいです。
鶴舞公園（つるまこうえん）は聖地と呼ばれ、リリース当時はコラッタの巣として有名でした。今はキャタピーの巣です。

乙