2: 2013/08/11(日) 03:03:21.97 ID:9JmV4lM40
八幡「あれっ?」
戸部「へっ?」
結衣「ぶっ?」
雪乃「!?」
八幡(い、いや答えが違う・・・そこは断るべきでないと)
姫菜「私、比企谷くんとならうまく付き合えるかも」
八幡「・・・じょ、冗談なら止めてほしい。へ、返事間違ってないか?勘違いしてしまうぞ」
姫菜「勘違いしていいよ。」
八幡「うぐっ、・・・・・・な、何故だ?」
姫菜「私ね自分のことが嫌いなの、誰も私のこと理解できないし、理解されたくもない。
だから誰ともうまく付き合っていけないの、ヒキタニくんはそういうのわかるでしょ?」
八幡「そんなことは」
姫菜「あるよ。・・・でも比企谷君ならそんな私を変えてくれると思ったの。」
八幡「・・・・・・」
姫菜「話終わりなら私、もう行くね。・・・これから宜しく・・・・ひ・・八幡」
八幡「ごふっ」
海老名さんは最後に破壊力抜群のセリフを笑顔と共に置いて立ち去って行った。
戸部「へっ?」
結衣「ぶっ?」
雪乃「!?」
八幡(い、いや答えが違う・・・そこは断るべきでないと)
姫菜「私、比企谷くんとならうまく付き合えるかも」
八幡「・・・じょ、冗談なら止めてほしい。へ、返事間違ってないか?勘違いしてしまうぞ」
姫菜「勘違いしていいよ。」
八幡「うぐっ、・・・・・・な、何故だ?」
姫菜「私ね自分のことが嫌いなの、誰も私のこと理解できないし、理解されたくもない。
だから誰ともうまく付き合っていけないの、ヒキタニくんはそういうのわかるでしょ?」
八幡「そんなことは」
姫菜「あるよ。・・・でも比企谷君ならそんな私を変えてくれると思ったの。」
八幡「・・・・・・」
姫菜「話終わりなら私、もう行くね。・・・これから宜しく・・・・ひ・・八幡」
八幡「ごふっ」
海老名さんは最後に破壊力抜群のセリフを笑顔と共に置いて立ち去って行った。
3: 2013/08/11(日) 03:04:26.90 ID:9JmV4lM40
海老名さんが立ち去った後、戸部は口をあんぐりと開け、動くことができないでいた。
今も言葉を失ったままだ。ただ首だけがぎりぎりとこちらに向く。
戸部「ヒキタニくん・・・。それはないでしょうー。」ピキピキ
その後の戸部の襲いかからんばかりの追求に対しては、葉山が必氏に止めてくれた。
ただ戸部も振られたことと、自分ではどのみちダメそうな雰囲気を理解したようで、肩を落として帰っていった。
4: 2013/08/11(日) 03:05:30.25 ID:9JmV4lM40
しかしそんな修羅場が些細なものに思える程、俺の背後にはには恐ろしい気配が立ち込めていた。
気温がぐっと下がったように感じる。
八幡(なにこれコンビニの冷蔵庫の中?今すぐ逃げ出さないと特定されて俺の個人情報が暴かれちゃう)
しかしながら逃げ出した後のことを考えると、どっちにしろ登校拒否しか選択肢がない現実を予感し覚悟を決め、
これから起きることに戦慄を抱きながら二人の方へ歩いて行く。
5: 2013/08/11(日) 03:08:11.98 ID:9JmV4lM40
雪ノ下は直立不動で立ち尽くし、俺を睨みつけていた。
由比ヶ浜は困ったように下を向いている
雪ノ下の冷たく糾弾するような視線に、足が鈍る。
雪乃・結衣「・・・どういうこと?」ゴゴゴ、ウルウル
八幡「い、いや・・・想定と違うというか、本来であればこうはならなかったというか・・・」(ヤバイよー)
雪乃「つまり戸部くんの告白を阻止するのが目的だったということなのね?」
八幡「あ、あぁ」(お、イケルか?)
結衣「姫菜のことが、ほ、本当に好きで告白した訳じゃないよね?姫菜の返事が間違っていただけなのよね?」
八幡「お、おぅ」(な、なにか違和感が)
雪乃「じゃあ早速海老名さんにさっきのは嘘だったと告げなければならないわよね?」
八幡「さ、早速?い、いや、それはあまりにも・・・」
雪乃「嫌?いま嫌といったの?つまり海老名さんとお付き合いをするということなの?」
「その辺の馬鹿なバカップルと同様、ひと目もはばからず私の前でイチャイチャチュッチュするということ?」
八幡「い、いやなんでお前の前なんだよ?あとイチャイチャチュッチュとかお前の類語辞典に入ってないだろ
ってゆーか冷静に考えてみろ、俺と海老名さんだぞ、ほっといたらそのうち終わるだろ」
由比ヶ浜は困ったように下を向いている
雪ノ下の冷たく糾弾するような視線に、足が鈍る。
雪乃・結衣「・・・どういうこと?」ゴゴゴ、ウルウル
八幡「い、いや・・・想定と違うというか、本来であればこうはならなかったというか・・・」(ヤバイよー)
雪乃「つまり戸部くんの告白を阻止するのが目的だったということなのね?」
八幡「あ、あぁ」(お、イケルか?)
結衣「姫菜のことが、ほ、本当に好きで告白した訳じゃないよね?姫菜の返事が間違っていただけなのよね?」
八幡「お、おぅ」(な、なにか違和感が)
雪乃「じゃあ早速海老名さんにさっきのは嘘だったと告げなければならないわよね?」
八幡「さ、早速?い、いや、それはあまりにも・・・」
雪乃「嫌?いま嫌といったの?つまり海老名さんとお付き合いをするということなの?」
「その辺の馬鹿なバカップルと同様、ひと目もはばからず私の前でイチャイチャチュッチュするということ?」
八幡「い、いやなんでお前の前なんだよ?あとイチャイチャチュッチュとかお前の類語辞典に入ってないだろ
ってゆーか冷静に考えてみろ、俺と海老名さんだぞ、ほっといたらそのうち終わるだろ」
6: 2013/08/11(日) 03:09:24.44 ID:9JmV4lM40
雪乃「どういう意味かしら?」
八幡「修学旅行の高揚感で海老名さんも少し間違えただけだ、そのうち普通に別れるさ」
結衣「でもさ、なんかそういうのいい気持ちしないし」
「・・・付き合っているの、やだし」ボソボソ
難聴主人公(なにか最後のほうはよく聞こえなかったな)
結衣「そ、そのっ!なんか好きでもないのに付き合っているとかモヤモヤするじゃない?」
・・・まぁなんだまっすぐな奴なんだ、こいつは。けど俺は曲がりくねっているのである。
八幡「俺は付き合っているカップルを見て、実は好きでもないくせにとか想像して楽しむけどな」
結衣「正確悪っ!」
7: 2013/08/11(日) 03:11:32.06 ID:9JmV4lM40
雪乃「とにかく、海老名さんの動向、二人の内情をもうちょっと知ってから適切な処理を取りましょう。
私が海老名さんに直接言ってもいいのだけれど、それだと修羅場になるだけでしょうし・・・」
八幡「いや、これ俺が海老名さんと付き合ったところで、そのうち自然消滅するからなんもやんなくていいと思うんだけど。
誰にも実害ないし」
(修羅場はスルーしておこう)
八幡(海老名さんが受けいれたのはきっと一過性のものだ、戸部からのアプローチをごまかそう、風よけのための相手、
そんな相手として選ばれただけに過ぎない。黙っていればすぐに別れることになるだろう)
だが雪ノ下は納得行かないようで、俺から視線を外し、夕日のせいで頬を赤く染めて
雪乃「・・・実害なら、あるわ」
結衣「う、うんやっぱり付き合うとか困るしね!」
由比ヶ浜も夕日で頬を染めて、前のめりに賛同する。
鈍感主人公(なんだかこれは突っ込むと、不味そうなことが起きそうな予感がする。多数決の結果だと諦めその決定に従おう)
8: 2013/08/11(日) 03:15:59.95 ID:9JmV4lM40
八幡「・・・・。まぁいいけどよ」
俺が不承不承に言うと、満足気に雪ノ下が頷く。
雪乃「では、まず海老名さんの様子を見て、解決の糸口を探りましょう」
そう言われても既に夜も遅く、海老名さんもホテルに帰っているだろう。
八幡「んじゃ、とりあえず今日のところはもうできることはないな」
雪乃「そうね。・・・そろそろいい時間だし、早速お別れの旨を伝えるメールを送りましょう」
結衣「だね。今すぐ送ろう!」
八幡「いやいやいや、俺もうできることないっていったよね。おまえもそうねって返したよね?
ついでにいうと様子を見てとも言ったよね?まだなんの付き合っている様子もなかったじゃん」
雪乃「・・・八幡って呼ばれてた・・・」ボソボソ
難聴男「え、なんだって?」
雪乃「なにを言っているの引き伸ばしくん、明日から頑張るとか、本件は持ち帰り検討しますとか、
後日折を見て回答します。とか社会では最も忌み嫌われる行為よ」
「某予備校教師もさかんに叫んでいるでしょう、いつ殺るの?と」
9: 2013/08/11(日) 03:22:44.58 ID:9JmV4lM40
八幡「たしかに言っていることは全くもって正論なのだが、最後のフレーズは何故か違和感を感じたぞ」
「それに答えると俺の存在が消えてしまうよう気がしたぞ!あと俺の名前は引き伸ばしじゃねぇ」
いまでしょ。嫌な言葉だ。毎日上司から言われそうなくらいに嫌な言葉。
あ~早くブーム終わらねーかな~
雪乃「あら、いつも大事なことを引き伸ばしている鈍感主人公にはピッタリの名前だと思うけれど」
八幡(なにを言っているのかよくわからんが、突っ込むのはまたの機会にしよう)
八幡「いや、告白したすぐ後に嘘でしたとか、どんだけヒドイ行為だよ」
「それをされた人がどれだけ傷つくか知っているのか?俺の知り合いの知り合いの話なんだがそういうことをされてしまって
どんどん目が腐ってしまって、人間不信になってカリスマぼっちを極めるくらいになるんだぞ」ナミダメ
10: 2013/08/11(日) 03:25:51.56 ID:9JmV4lM40
結衣「ごめんねヒッキー!、辛いトラウマを思い出しちゃったね」ナミダメ
八幡「イヤオレノシリアイノシリアイのハナシダシー」
結衣「でもそうなるとある程度は付き合ってそのうち別れるようにするということ?」
雪乃「こうなると仕方ないわね、なるべく早く別れるように作戦を練る必要があるわね」
八幡「ってか、俺と海老名さんが別れる前提は変わらないのか?もしかしたらお互いが惹かれ合って付き合うとかは?」
雪乃「なに?あなた海老名さんのことを好きになるの?」ゴゴゴ
八幡「い、いや仮だ、仮の仮定の憶測での可能性の話だ」アセアセ
結衣「姫菜って腐ってるよ?あっ!腐っているという共通点が必要なの?私も腐ればいいの?どうやったら目が腐るの?」
八幡「いや腐っているのは困るってか、無理だから、腐らないから、あと友達のこと腐ってるとかいっちゃダメだからな」
八幡(どうやら俺と海老名さんが付き合うという未来日記は書けないようだ)
26: 2013/08/11(日) 20:03:13.77 ID:9JmV4lM40
修学旅行最終日
悲劇を生む乗り物新幹線だが、帰りの便ではどのようにポジショニングをするべきか。
俺と戸塚、そこが固まればあとはどうでもいい。
昨夜の話を無理矢理考えないようにし、なんとか戸塚の隣に座ろうと俺は画策する。
作戦はこうだ、戸塚の後ろにステルスし、戸塚が席に座ったとたん椅子取りゲームさながらのスピードで隣に鎮座。
作戦もクソもねーなこれ。
27: 2013/08/11(日) 20:05:29.58 ID:9JmV4lM40
さてそんなステルスヒッキーとして虎視眈々と戸塚に付いて行ってると、少し前であーしさんがキョロキョロ誰かを探している。
何事かと興味なく戸塚に目を戻したその時、不意に左手を引っ張られた。
バランスを崩し、通路側の席に倒れこむ。すると窓際の席に俺の左腕を抱き込んだ海老名さんが笑顔で座っていた。
姫菜「うーん・・・八幡は京都と東京どっちが受けだと思う?」
28: 2013/08/11(日) 20:09:08.44 ID:9JmV4lM40
八幡「は?」
理解不能の質問に固まる俺と口元から涎がでかかっている海老名さん
そんなやり取りを近くにいた戸部は怒りの形相で、あーしさんはキョトンとした表情で、由比ヶ浜は引きつった笑みで見ていた。
俺の考えがまとまらないうちに、海老名さんがさらにぐいっと左手を引いた。
姫菜「はいはい八幡はそこ、私がここ」
結衣「ちょ、姫菜」
文句を言いかけた由比ヶ浜の言葉をスルーし海老名さんは俺の手を握ると自分の隣へといざなう。
29: 2013/08/11(日) 20:12:57.09 ID:9JmV4lM40
姫菜「八幡、隣座ってね」
八幡「いや俺は戸塚のところに・・・」
いきなりの展開に俺はいやいやと首を振ったが、海老名さんが俺の手を引っ張ると
それには逆らえず座ってしまう。
押しに弱いんだな俺、だってしかたないじゃん左腕ホールドされて手握られてるんだもん。
これで断れる男子高校生がいたらそいつはきっと海老名さんの腐界ワールドの住人だろ。
30: 2013/08/11(日) 20:16:50.81 ID:9JmV4lM40
俺は仕方なく座ることにしたが、肘掛けに頬杖ついて居眠り体制に入った。
すると海老名さんは目をキラリと光らせ俺の耳元で布教活動を始めた。
姫菜「私が思うに、京都と東京って受けでもあり攻めでもあると思うんだよね
ほら東京と京都と文字を入れ替えるとほぼ同じ読み方じゃない?
つまり東京×京都でありつつ京都×東京だと思うのよ。
数字で例えると6と9の関係、キチンと言うならシックスナ」
八幡「すまん俺が悪かった。眠気も冷めた、ぜひ東京と京都の文化の違いにおける話をしようじゃないか」
姫菜「京都といえば新撰組よね。ねぇ知ってる?新撰組って最大の時には男の人が200人以上もいたんだって、
200人以上も男がいれば、それはそれは絶対にぐ腐腐腐な展開があったと」
八幡「すまん話題の選択を間違えた。男同士の恋愛の話ではなくもっと他の話をしようじゃないか」
そういや新撰組グッズをみてはぁはぁ言っていたな。
相変わらずの腐界ワールドへの墜落を、必氏で回避をするその努力を嘲笑うかのように、その先の質問は・・・
31: 2013/08/11(日) 20:25:57.90 ID:9JmV4lM40
姫菜「えーー、男同士がダメなら・・・男女の恋愛の話とか?」
八幡「うぐっ・・・」
姫菜「ねぇ・・?八幡、私達付き合ってるんだよね?」ウワメヅカイ
肩までの黒髪に赤いフレームのメガネ、薄いガラスの奥にある目は少し潤んでいる。
八幡「ぐはっ」
なんて破壊力だ、清楚系メガネ美人の上目遣い・・・
これ惹かれる可能性という段階とかではなく、ってかもう既に・・・
38: 2013/08/11(日) 23:07:50.01 ID:9JmV4lM40
姫菜「昨夜の告白は私の願望が見せた夢だったのかなぁ?」ナミダメ
八幡「い、いや、昨日のアレは・・・」
姫菜「・・・ア・レ・は?嘘じゃないよね?」ズイー
八幡「嘘じゃ・・・ない・・です」
姫菜「嘘つき・・・」
八幡「・・ハイ?」
39: 2013/08/11(日) 23:10:27.48 ID:9JmV4lM40
海老名さんは眼鏡をすっとあげた。レンズが反射し、その眼差しがわからなくなる。
けどやっぱり、と付け足すように言ってから海老名さんは顔を上げた。頬をわずかに染めて、いつもの明るい笑顔だ。
姫菜「昨日も言ったけど、私、ヒキタニくんとならうまく付き合えると思ったの」
ん?・・・あえてヒキタニくんと言い戻していることに気づき、違和感を覚える。
それに海老名さんのもつ雰囲気も少し変化した。やはりなにか真意は別にあるのか?
昨夜の二人からの追求で想定した仮定を思い出してみる。
40: 2013/08/11(日) 23:15:23.38 ID:9JmV4lM40
八幡「・・・相談はまだ終わっていないということか?」
海老名さんのチラリと見えたその眼差しには称賛と安堵が含まれ、そして小さな顔に仄暗い笑みを浮かべた。
周囲をさりげなく一瞥し、ささやくような声で話を続ける。
姫菜「やはりヒキタニくんに相談して正解だったね。・・・最近ね、戸部くんのような人が増えてきているの。
例えるなら私のATフィールドが効かないというより乗り越えてくるパターンかな」
わぁ的確ぅ
某超人気アニメの絶対防御を例えにした海老名さんは何故かぐ腐腐と付け加えた。
きっとカオルくんの顔を思い出したのだろう。
ちなみに俺も某アニメには非常に共感している。なんなら俺パイロットの適正ありすぎだと、
ATフィールド強度で俺に勝てる奴いるのというレベルまである。
41: 2013/08/11(日) 23:20:06.33 ID:9JmV4lM40
話を戻そう
たしかに三浦も危ないと心配していたな。器用さでこれまでなんとかなっていたがそれも限界にきたってことか。
高校2年の時期だしクラスのトップカーストに入っている容姿は十分にATフィールドを超えるモチベーションになりうる
戸部のように特攻する奴が他にいたっておかしくない。
姫菜「あのときヒキタニくんの告白を断ったとしても、きっと戸部くんは諦めてくれないでしょう」
たしかにあいつは諦めらんないっしょとか言ってたな
最後の最後まで頑張れとかいってた奴もいた気がする。無責任な奴だ、誰だっけ?
問題を先延ばしにするだけでは同じ問題は再発してしまう。
キャラクターで通用しないなら、他の手を講じるしかない。
42: 2013/08/11(日) 23:22:44.39 ID:9JmV4lM40
そういや俺も付き合っているカップルを見る度に想像していたことがあったな。
まさか自分の身にそれが起きるとは、やはり俺の考えは正しい、そうか俺が神だったのか。
初めて付き合った彼女がまさか自分を好きでないとか、そんな悲しい現実であることは無理矢理考えないようにした・・・
俺は一連の流れにようやく得心し、今後の展開にいろいろ想いを巡らす。
ふむ・・・俺にとってもこの展開で得するものがあるか・・・
43: 2013/08/11(日) 23:25:06.88 ID:9JmV4lM40
八幡「つまり俺は君にうっかり惚れたということでいいんだな?」
海老名さんは意味深な笑みを浮かべ答える
姫菜「そうやってどうでもいいと思っている人間には正直になるところ嫌いじゃないよ」
八幡「奇遇だな。俺も自分のそういうところが嫌いじゃない」
姫菜「私だってこういう心にもないことをスパっといえちゃう自分が嫌いじゃない」
44: 2013/08/11(日) 23:33:47.84 ID:9JmV4lM40
そう言った後、海老名さんの視線は遥か遠く、窓の外へと向けられた。
そして一言
姫菜「だから、私は自分が嫌い」
45: 2013/08/11(日) 23:35:33.41 ID:9JmV4lM40
変わる世界の中で、変わらずにはいられない関係は多分あるのだろう。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もが嘘をつく。
であれば一番の大嘘つきは俺であるべきだと思う。
73: 2013/08/13(火) 00:35:23.59 ID:7z3oNtyW0
お待たせしました。
もうすぐ投下します。
雑談はOKと言った手前、強くはいえません。言えませんが・・・
代わりに大ババ様に言ってもらいましょう。
大ババ様「腐海に手を出してはならぬ」
腐海が生まれてより○年いくたびも人は腐海を除こうと試みて来た
が、そのたびに腐の群れが怒りに狂い地を埋めつくす大波となって押し寄せて来た
スレを滅ぼし コミケを飲み込み自らのカバンが薄い本で埋まるまで腐は走り続けた
やがてSSのむくろを苗床にして腐子が少年少女に根を張り
広大な土地が腐海に没したのじゃ
腐海に手を出してはならん
やはり俺のヒロイン設定は間違っていた。
もうすぐ投下します。
雑談はOKと言った手前、強くはいえません。言えませんが・・・
代わりに大ババ様に言ってもらいましょう。
大ババ様「腐海に手を出してはならぬ」
腐海が生まれてより○年いくたびも人は腐海を除こうと試みて来た
が、そのたびに腐の群れが怒りに狂い地を埋めつくす大波となって押し寄せて来た
スレを滅ぼし コミケを飲み込み自らのカバンが薄い本で埋まるまで腐は走り続けた
やがてSSのむくろを苗床にして腐子が少年少女に根を張り
広大な土地が腐海に没したのじゃ
腐海に手を出してはならん
やはり俺のヒロイン設定は間違っていた。
74: 2013/08/13(火) 00:38:44.00 ID:7z3oNtyW0
やはりまだ顔が熱い・・・
晩秋の冷たい風が熱を持った身体に心地よく感じる。
青白い竹林と男色系の光を放つ灯籠が織りなす荘厳な道を、彼の視界から一刻も早く逃れたいと自然と早足で歩く。
・・・失礼・・暖色だったね
まさかあのような方法で戸部くんの告白を回避するとは思わなかった。
不意打ちのような告白に対し、我ながら最善の回答ができたこと、そしてその成果に対し満足の笑みがこぼれる。
75: 2013/08/13(火) 00:41:57.38 ID:7z3oNtyW0
彼は他の人とは違う。・・・実をいうと一緒のクラスになった時から気にはなっていた。
ほとんどオートマティックに人を避ける能力に共感と興味を抱いた。・・・存在感を消すそのスキルに同種の親近感を感じ、
いつか彼と話をしてみたいと考えていた。
今のクラスになった当初、私としては、彼同様クラスにひっそりと影を潜めるつもりでいたのだが、優美子と仲良くなった時点で方向転換を余儀なくされた。
決して優美子や結衣と仲良くすることが嫌ではなく、むしろ今ではその交流を大事に、壊したくないと思うようにまでになった。
昔の私を知る人にとっては驚くほどの変化だと自分でも思う。
76: 2013/08/13(火) 00:44:06.38 ID:7z3oNtyW0
でもそんな私でもいまでは友達と腐通に過ごすことができている。
・・・失礼、普通じゃなかったね・・・
誰にも理解できないし、理解されたいとも思わない。だから人ともうまく付き合っていけない、ずっとそう思っていた。
でも彼女らは私と仲良くなってくれた。 ・・・偽物の私を・・・
今では罪悪感もなく自然と擬態することで、やっていけるがそれでもやはり本当の自分でないため、多少の歪みがでてしまう。
一度、優美子がしつこく男を勧めてきた時には、やっぱりムリだ、もうやめてもいいやと半ば諦めた。
あの時の優美子の必氏の謝罪がなければ、もうとっくに友達をやめていただろう。
77: 2013/08/13(火) 00:47:17.35 ID:7z3oNtyW0
優美子は良い子だ。性格が悪いと思われがちだが、人のことを思いやれて面倒見がよく、行動も自分に正直なだけだ。
自分が悪いと思ったらちゃんと謝れる所は素直に尊敬できる。偽りの自分を演じ悪びれもせずのうのうとしている人とは大違いだ。
うすうす本当の私を感じているだろうけれど、ちゃんとそういう私には距離を置いていてくれている。
結衣も純真でまっすぐで、こんなにかわいい子がよく自分と友だちになってくれたと、その繋がりを手放したくないと切に思う。
彼女の胸に秘めた気持ちを知っているくせに、それを踏みにじろうとする女とは根本から人としての成り立ちが違うのだろう。
やはりそのような人間が本当の自分を隠して彼女らと友達面をしていることに、心底嫌気がさす。
78: 2013/08/13(火) 00:52:33.24 ID:7z3oNtyW0
そんな自己嫌悪に満ちた日々を送っているうちに、私と似た特徴を持つであろう彼であれば分かってくれるのではないか?
いや理解してほしいということではない、人に理解してもらっても救われる形のものではないのだから・・・
・・・では共感してほしいのか?・・・わかるよと言ってもらえれば気が楽になる?
答えの見えない問いに対し、ささやかな期待を胸に彼に近づこうとした。
・・・それまで私は彼のことを知っているつもりでいた。いや知っているのは私だけだと思い込んでいた。
しかし彼は私の妄想異常、・・・失礼、想像以上だった。
79: 2013/08/13(火) 00:56:26.87 ID:7z3oNtyW0
彼に最初に近づこうとした林間学校のボランティアでは、一人の少女を救ってみせた。
文化祭では、相模さんが救われている。どちらも臆病者の私にはとても考えつかないやり方でだ。
さまよえる孤高の魂は拠り所を必要としない。
そんな恥ずかしいセリフも彼の行動を鑑みるとあながち間違っていないのではないか。
私は彼に救いを求めていたのではなかった。彼の内面に自分でも気づかないうちにただ惹かれていただけだったと・・・
80: 2013/08/13(火) 01:16:26.59 ID:7z3oNtyW0
姫菜「ずっと前から好きでした。」口に出して呟いてみる。
・・・・先ほどの彼の告白を思い出す。自分が抱いていた気持ちを反芻し、冷めてきた顔がまた熱くなるのがわかった。
彼が私のことを好きでもなく、むしろどうでもいいと思っていることはわかっている。
彼が私のことを気にかけているといった期待は、彼を知っている私には元々ない。
81: 2013/08/13(火) 01:24:53.28 ID:7z3oNtyW0
しかし私はどうでもいいと思われているポジションから彼女というステータスを得ることができた。
それも彼からの告白という最高の形でだ。・・・・大丈夫、私はうまくやっていける。
・・・なぜなら私だけが彼を知っているから。
82: 2013/08/13(火) 01:29:33.74 ID:7z3oNtyW0
変わる世界の中で、変わらずにはいられない関係は多分あるのだろう。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もが嘘をつく。
私は彼が一番の大嘘つきだということを知っている。
83: 2013/08/13(火) 01:39:29.47 ID:7z3oNtyW0
冷たい夜風が京都の街を抜ける。
しかしまだ全身の熱はしばらくの間、収まりそうにない。
観光地の街明かりが、窓に映る自分の顔がまだ帰れない状態だと教えてくれる。
まずは明日の動向を考えないとね。結衣への対応もあるしね。
姫菜「少し遠回りして帰らなきゃね」
112: 2013/08/15(木) 00:11:26.62 ID:YYbcTSHP0
やはり顔が熱い・・・
青白い竹林のトンネルは凍えそうなほど冴え冴えとしている。
その中を吹き抜ける冷たい秋の夜風でもこの熱は冷めそうにない
この感情のが何なのか…怒りであることは間違いないと思う。
しかしこれまで体験してきたどの怒りの記憶を思い起こしても、今の心境とは結びつかない。
113: 2013/08/15(木) 00:12:53.09 ID:YYbcTSHP0
彼を問い詰めた時はあまりに冷静でいられなかった。
少し気持ちが落ち着いた後、彼のやり方に嫌悪を抱いている旨を告げ、その理由を説明する段階で言葉を失った。
・・・驚いた
自分の考えが論理的に説明できないなんて初めてのことだった・・・
もどかしさばかりが胸を占め、結局何も言えず先に戻るとだけ告げ、逃げ帰るように宿に向かっている。
115: 2013/08/15(木) 00:16:12.64 ID:YYbcTSHP0
彼はいつも私の思想の外を行動する。
その方角は前でも後ろでもない、完全に視覚外、認知できないところを歩いている。
一応、丸く収める方法はある
その言葉を聞いた時、嫌な予感がした。きっとまた見るものが不快な方法で解決を試みるのだろう。
決して周りの人間の気持ちを全く考えないやり方でだ。
文化祭での彼を思い出し、チクリと胸に痛みが走る・・・
それを分かっていながら私は彼に任せた。何故か・・・
多分私は見たかったのだ
彼のやり方を・・・思考を・・・彼自身を・・・
それを見ることで私はまた彼を嫌いになれる・・・
116: 2013/08/15(木) 00:24:24.26 ID:YYbcTSHP0
ダークヒーローという言葉がある
悪役なのにヒーローという矛盾を抱えた存在だ
私はこの間違った世の中を変えたいと、人を救いたいと奉仕部を立ち上げた。
しかし実際に救っているのは彼だ、本当に誰でも救ってしまう。
決してほめられたやり方ではない、きれいなやり方ではない、正しいやり方ではない。
しかし結果はその矛盾を抱えた存在が問題を解決している。
やはり私は人を救えないのだろうか?間違っているのではないのか?
彼を肯定することは、そのまま自身が否定されてしまうという恐怖に苛まれる。
安直だったと後悔する。
ただ恐怖に対し嫌悪という感情で逃避していることに・・・
124: 2013/08/15(木) 01:24:41.19 ID:YYbcTSHP0
戸部くんの告白ではやはり彼らしい方法で依頼に応じた・・・
告白した瞬間こそあっけに取られたが、すぐに彼の意図も読み取れた。
彼の思惑通りにことが進めば、その結果得られるであろう結果にも十分に納得がいく。
その最低な思考回路に嫌悪を抱くこともできた。
125: 2013/08/15(木) 01:30:52.48 ID:YYbcTSHP0
先ほどの光景を思い浮かべ、彼が告げた相手の顔を思い出す。
時によくわからない言葉を使うことと、どこかとらえどころのない性格をしている印象だった
今回の依頼を受け、初めて彼女を注意深く観察して気付いたことがある。
彼女は何かを隠している。いえ擬態という言葉が適切だと思う。
秘匿したその正体は分からない。
126: 2013/08/15(木) 01:33:39.87 ID:YYbcTSHP0
先ほどの彼女は、明らかに彼の意図を理解していた。本来であれば正しい答えを選択することもできていたハズだ。
しかし彼女はあえてそうしなかった。なんの根拠もなく、否定されても仕方ない考えだけれど何故かそれだけは確信できた。
海老名姫菜
比企谷くんの彼女
・・・胸に痛みが走る。最近感じる痛みだが、いつもよりずっと強い・・・
私にはこの痛みがなんなのかわからない・・・
127: 2013/08/15(木) 01:40:32.79 ID:YYbcTSHP0
彼が私と友達になりたいという意志を告げようとした時に、私は無理だと否定した。
私の防衛本能が働いた・・・というのが正しいかもしれない。
彼と近づきたい私と、距離をとりたい私がせめぎ合っている。
彼の内面に気づかないうちに惹かれている自分
彼を受け入れることで自身が否定される恐怖に怯える自分
128: 2013/08/15(木) 02:13:34.17 ID:YYbcTSHP0
熱かった頭が冴えてくる。気持ちを整理することで進むべき道が見えてくる。
雪乃「ありがとう・・・」 感謝の言葉を呟く。
彼女のおかげで私は決断することができた。
129: 2013/08/15(木) 02:27:11.68 ID:YYbcTSHP0
・・・今はあなたを知っている
文化祭の後の彼に告げた言葉を反芻する。
雪乃「でも今はあなたをもっと知りたい・・・」
159: 2013/08/15(木) 23:18:52.94 ID:uL1V0XPb0
ふと気づくと見覚えのない景色の中にいることに気づく。
何故かまれにこういうことが起きる。
道も方角もわかっているのに気づくと知らないところにいるのだ。
視界の遠方に古いというより、趣きのある神社が目に入った。
入り口に地図がないだろうかと、近づいてみる。
境内に人の気配がした。
一人の少女が目についた。遠くの空を眺めているその姿に目が引き寄せられる。
肩までの黒髪と、赤いフレームの眼鏡・・・
向こうもこちらの気配に気が付いたのか、くるりと振り返り目が会う。
しばし無言で向き合い、お互い数歩、歩み寄る。
「こんばんわ・・・海老名さん」
「雪ノ下さん・・・こんばんわ」
つづく
179: 2013/08/19(月) 06:22:45.94 ID:LlbqOtlKO
姫菜「どうして・・・ここに?・・・そうか結衣からの呼び出しだったし、雪ノ下さんもさっきの場所に立ち会っていた・・・という認識でいいのかな?」
雪乃「えぇ、失礼な行為だけれど、ある事情から様子を見ていたわ・・・貴女は既にその事情を察していたようだけど・・・
でも、ここで貴女と出会ったのは偶然よ」
180: 2013/08/19(月) 06:25:59.62 ID:LlbqOtlKO
姫菜「そう・・・私、雪ノ下さんに前から聞きたいことがあったんだ・・・、でも先に私に聞きたいことがある・・・んだよね?」
雪乃「・・・ええ、先ほどの貴女の行為について・・・一体どういうつもりなのか出来れば説明してほしいのだけれど・・・」
181: 2013/08/19(月) 06:29:09.73 ID:LlbqOtlKO
姫菜「それは彼の告白を受けたことについて?」
雪乃「そうよ・・・貴女は比企谷くんの意図に気づいていたのでしょう?何故、彼の告白を断らなかったのかしら」
182: 2013/08/19(月) 06:31:37.04 ID:LlbqOtlKO
姫菜「告白ね・・・・・・ねぇ少し話が逸れるけれど、雪ノ下さんはこの修学旅行で誰かから告白された?」
雪乃「・・・初日に3人からされたわ、・・・少し厳し目にお断りしたせいか、それ以来パッタリこなくなったけれど」
183: 2013/08/19(月) 06:34:15.85 ID:LlbqOtlKO
姫菜「私も他に一人告白されたの、もちろんその時は今はそんな気がないとお断りしたのだけれど」
雪乃「だったら何故、彼の告白は・・・? まさか」
184: 2013/08/19(月) 06:39:18.13 ID:LlbqOtlKO
姫菜「彼氏がいれば男子は近づいてこない・・・雪ノ下さんならこの気持ち解ってくれるんじゃないかな?彼ならばその辺の事情も理解して協力してくれると見込んでのことよ」
雪乃「・・・そういうこと・・・ならば話が早いわ、そんな不純な動機では付き合うことを認められないわ」
185: 2013/08/19(月) 06:48:52.34 ID:LlbqOtlKO
姫菜「何故?・・・雪ノ下さんに私と彼のことについてそこまで言う権利はないように思うのだけれど・・・
それとも彼のことが好きなの?」
雪乃「?! じょ、冗談でもそういうことは言わないで頂戴、クラスメイトと同じ事を言うのね。私が彼をす、好きだとかありえないわ
比企谷くんは私と同じ部活に所属しているというだけの関係でそれ以上でもないけれど、それ以下ならあるわ」
186: 2013/08/19(月) 06:53:10.45 ID:LlbqOtlKO
姫菜「それ以下はあるんだね・・・・・であれば、なおさら私と彼のことについては関係がないと思うのだけれど」
雪乃「わ、私は人道的な話をしているの、間違っている行為については正すのは人として当然のことよ」
187: 2013/08/19(月) 06:56:03.82 ID:LlbqOtlKO
姫菜「・・・・・・・・」
雪乃「・・・・・・・・」
245: 2013/08/26(月) 00:32:48.42 ID:VO1xB6FR0
先ほどの彼女の回答は、なるほどたしかに筋が通っていたように聞こえる
考えたこともないけれど、あの煩わしい男子からの告白を回避できるなら非常に魅力的な案だとも思う
確かに比企谷くんならそのへんの事情も斟酌して適切に行動してくれるだろう。人選的な意味でも納得できる
246: 2013/08/26(月) 00:36:55.20 ID:VO1xB6FR0
しかし先ほど思考の中にいた彼女・・・・、その正体不明の擬態の結果がそれなのだろうか?
だがその程度の賢しい内容で私がこれほど警戒するだろうか?
海老名姫菜・・・彼女は危険だ・・・・・私の中にある全神経が先ほどの回答が彼女の本音でないと告げる。
247: 2013/08/26(月) 00:38:09.26 ID:VO1xB6FR0
雪乃「海老名さん・・・貴女が比企谷くんと付き合った理由は、それだけではないのでしょう?」
姫菜「へぇ・・・・どうしてそう思うのかな?」
248: 2013/08/26(月) 00:41:50.58 ID:VO1xB6FR0
雪乃「理由はないわ。・・・強いて挙げるなら、こういう言葉を使うのは
全くもって遺憾なのだけれど、女の直感というのがそれにあてはまるのかしら?」
姫菜「ふーん・・・結衣は貴女のこと女子力が低いって言ってたんだけど、意外とそうでもないみたいね」
雪乃「・・・そう、由比ヶ浜さんがそう言ってたの?彼女には少しお灸を据える必要がありそうね」ゴゴゴ
姫菜「あははっ、お手柔らかにね、そこが可愛いって言ってたし」
249: 2013/08/26(月) 00:44:18.73 ID:VO1xB6FR0
雪乃「・・・で、どうなのかしら?」
姫菜「・・・・・雪ノ下さん、わたしね今でこそ優美子達と仲がいいけれど、最初はかなり無理していたの。
今のキャラクターに落ち着くまでは、それなりに試行錯誤だったのよね。
といっても逆に今は本当の私を出せない分余計に、作ったキャラクターを抑えきれていない感もあるけれど・・・」
雪乃「・・・・・」
姫菜「まぁ、簡単にまとめると本当の私は人格的にいろいろ問題があって、学校ではそれを隠していると・・・
そんな私が男の人と付き合えるわけないと思っていたところに颯爽と現れ、初めて惹かれた人が比企谷八幡くんってわけ」
250: 2013/08/26(月) 00:52:52.50 ID:VO1xB6FR0
雪乃「・・・・・そういうこと、貴女に感じていた違和感の正体がやっとつかめたわ」
姫菜「・・・・次は私のターンかな?私さっき雪ノ下さんに聞きたいことがあるって言ったよね?」
雪ノ下「・・・・えぇ」
251: 2013/08/26(月) 00:58:31.92 ID:VO1xB6FR0
姫菜「単刀直入に聞くね?雪ノ下さん、貴女は比企谷くんのことどう想っているの?」
雪乃「さっきも言ったと思うけれど、同じ部活に所属していr」
姫菜「雪ノ下さん」
姫菜「さっき私は貴女の質問について、私なりに誠意を持って応えたつもりなんだ・・・
できれば貴女にもはぐらかさないでちゃんと応えてくれると嬉しいんだけど・・・」
雪乃「・・・・・そうね」
270: 2013/09/07(土) 01:59:04.21 ID:bpikCYCZ0
周囲を包んでいた月の淡い光が、薄い雲によって遮られ、闇の密度が僅かに濃くなる
雪乃「・ ・ ・ ・私が比企谷くんのことをどう思っているか?・・・よね」
271: 2013/09/07(土) 02:02:29.89 ID:bpikCYCZ0
雪乃「 ・ ・ ・ まず奉仕部の部長という立場として私は彼を認めているわ、
奉仕部に来た依頼は直接的にしろ間接的にしろ実質ほとんど彼が解決している ・ ・ ・
敵味方関係なくどんな人であれ困っている人に救いの手を差し伸べる姿勢も、奉仕部の活動理念に沿っているわ
ただ・ ・ ・彼のもたらす結果に対しては納得はしている、だけどその解決手段については納得していない・ ・ ・
いえ、納得できないというのが正しいのかしら ・ ・ ・ ・
勝手に自分を傷つけて、損な役回りを引き受け、そのうえ言い訳もしないし、させてもくれない
誰かを救うために誰かが犠牲になる・・・私はそのやり方に嫌悪を抱いているのだけれど・ ・ ・
でも、私には他の解決方法を見いだせない以上、ただの負け惜しみと思われても仕方ないわね」
272: 2013/09/07(土) 02:05:05.06 ID:bpikCYCZ0
姫菜「敵味方関係なく救ってしまうか・ ・ ・ ・そうね彼はおそらく人の弱い部分を肯定できるんだね
人の痛みを誰よりも知っているからこそ、苦しんでいる人を理解し、優しくすることができるんじゃないかな・ ・ ・」
そう、きっと彼ならつい私のことも救ってくれるのじゃないかと期待してしまうほどに・ ・ ・
273: 2013/09/07(土) 02:06:22.40 ID:bpikCYCZ0
姫菜「・ ・ ・今のは同じ部活仲間として・ ・ ・だよね? 雪ノ下さん個人としてはどうなのかな?」
まだ・ ・ ・ もう少し踏み込める・ ・ ・
274: 2013/09/07(土) 02:09:07.33 ID:bpikCYCZ0
雪乃「・ ・ ・私個人から見た彼の人物評について言及すると・ ・ ・
そうね、まず彼の人としてのあり方における考え方については、少なからず共感出来る部分があるわね。
お互いずっと一人でいた私と彼だからこその収斂進化の結果でしょうけれど・ ・ ・
以前彼は趣味に人間観察を挙げたこともあったのだけれど、言うだけあって彼の観察眼には一目置く価値があると思うわ
こと他人の、特に負の感情や人間性に対してそれを洞察する能力は卓越しているわ、彼には人の悩みやコンプレックスが透けて見えるのかしらね」
(そう、私が抱いている「それ」にもきっと彼は気づいているのだろう・・・・)
雪乃「・ ・ ・ と、ここまでが彼を知っている一個人としての私の彼への認識よ」
275: 2013/09/07(土) 02:13:16.36 ID:bpikCYCZ0
彼女が言い終わるか否かの間際、薄い雲に隠れていた月がその姿を現す
その月の淡い光によって晒された彼女の表情を見てハッと息を呑む・ ・ ・
姫菜「さ、流石に一緒にいるだけあって彼のことよく理解っているのね・ ・ ・ ・ ・ 」
眼鏡に触れる手が少し震える・ ・ ・ 成果としては十分だ、これ以上はもう・ ・ ・でも
葛藤から生じる逡巡を振り払うように・ ・ ・
姫菜「で、でも、まだ肝心の部分が語られてない・ ・ ・ ・」
276: 2013/09/07(土) 02:24:03.29 ID:bpikCYCZ0
雪乃「・ ・ ・ ・えぇ・ ・ ・ でも・ ・ ・ ・やっぱり分からない・ ・ ・ ・ ・」
姫菜「・ ・ ・ ・ ・」
雪乃「・ ・ ・ ・ 貴女の満足のいく応えでなく非常に申し訳ないのだけれど、彼に対して抱いているこの感情についてうまく説明できない」
彼女は切なげな表情で視線を外す
雪乃「正直、私が身内以外の他人に対してここまで興味を持った人は初めてよ・ ・ ・
良し悪しの感情の差はあるものの・ ・ ・彼の行動、言動に私は時折り新鮮な驚きを感じているわ
さっきも言ったけど彼の考え方に共感できる部分もあれば、全くもって受け入れられない時もある
そんな正負の入り混じったこの気持ちが何なのか・ ・ ・ ・」
277: 2013/09/07(土) 02:29:54.25 ID:bpikCYCZ0
ここが最終ラインだ・ ・ ・これ以上は・ ・ ・ しかし
姫菜「・ ・ ・ ・ ・雪ノ下さん、冗談ではなく、本当に分からないの?」
つい語尾が強くなり、口調に棘が滲み出てしまう
雪乃「!?・ ・ ・ えぇ」
僅かに変化した雰囲気を読み取ったのか少しばかりその目が見開く
278: 2013/09/07(土) 02:34:20.41 ID:bpikCYCZ0
姫菜「よくもそんな表情をして、彼のことをどう思っているのか理解らないなんて言えたものね」
ついには声量すら抑えきれず、静寂な境内に声が響く・ ・ ・
雪乃「・ ・ ・どういうことかしら?貴女には理解るとでもいうの?」
明らかに変化した雰囲気を察知し、彼女の口調も真剣なものへと色を変える
279: 2013/09/07(土) 02:49:06.09 ID:bpikCYCZ0
驚きから、敵対へとシフトした彼女の鋭利な視線を見つめ返すことで、逆に冷静になれた
ここまできたら伝えるべきであろう・ ・ ・
この選択が私を後悔させる判断になるかもしれない恐怖に抗いながら、むしろこの選択ができた自分を少し好きになる・ ・ ・
姫菜「ええ理解るわ・ ・ ・雪ノ下さんが今、比企谷くんに抱いている気持ちは紛れも無く恋よ!」
288: 2013/09/28(土) 22:14:44.22 ID:kinieukb0
彼女が何を言うだろうか、多少の推察と予感はしていた。
好きとか恋愛とか、クラスメイトや告白してきた人達も同じようなことを聞いてきた……
そして案の定……
289: 2013/09/28(土) 22:16:48.96 ID:kinieukb0
確かに私は彼に惹かれている。彼をもっとよく知りたいと自覚もした。
しかしそれは彼の思考や行動への驚きや感嘆から生じた 興味や好奇心といった類のもので、恋愛感情といった類のものではない
………と思う……
その証拠に彼の思考に激しい嫌悪を抱くこともあるし、彼の捻くれた考え方は私のもつ理念とは大きく乖離する。
そんな彼を好きになるなんてことはやはりありえない
……………ハズ…、いまいち自信が持てないのは…………
290: 2013/09/28(土) 22:19:04.81 ID:kinieukb0
急に湧きでた不安を無理矢理振り払うように首を振り、思考に蓋をする
やはり私の持つこの気持ちは彼女の言う恋といった恋愛感情ではない!
自分の気持ちを半ば強引に決めつけるよう断定し、彼女の言葉を否定しようと彼女に向き直る。
291: 2013/09/28(土) 22:26:47.77 ID:kinieukb0
姫菜「もし彼の思考に嫌悪を抱くことがあるとか、理念が異なるといった理由で気持ちを認められないならそれは違うからね」
雪乃「え?……………う、嘘……何故……?」
彼女は私が唯一拠り所にしていた、根拠をあっさりと見抜き即座に否定した
私の狼狽える反応を見た彼女は怪訝そうな表情で
姫菜「ねぇ、間違っていたら申し訳ないんだけれど…………雪ノ下さん、あなたもしかして今まで恋をしたことがないの?」
私の不安材料を探り当てピンポイントで切り込む!
雪乃「きゅ、急に、なにを言い出すの?そ、そんな…恋なんてしたこと…あるわけないでしょう」
292: 2013/09/28(土) 22:46:47.65 ID:kinieukb0
慌てた彼女の朱に染まった表情からそれが虚言でないことが理解り、
冷たく大人びた空気を纏う彼女の雰囲気が幼いものへと変わる
そういうこと……これまで違和感を感じていた彼女の言動や行動一つ一つに辻褄が合い理解が広がる
姫菜「………いや、ふつうはあるんじゃないかな?……腐っている私でも流石に小学生の頃好きな男の子がいたよ……気になる男の子の一人や二人くらいこれまでできなかったの…?」
雪乃「嫌なことを思い出させないで頂戴、小学校の同級生なんて、意味もない幼稚な嫌がらせや、冗談という名を借りた暴言を浴びせて来るなど、もう嫌悪の対象以外のなにものでもなかったわ
しかも学年が上がるにつれて、今度は手のひらを返したように優しくして気を惹こうとするし、厚顔無恥とは彼達のためにあるような言葉ね」
293: 2013/09/28(土) 22:50:25.88 ID:kinieukb0
姫菜「そう……ということは今の抱いているものは初恋になるのね…それなら自分の気持ちが理解らないっていうのも、まぁなんとか理解できなくもないかな。特に彼のようなタイプの人だと、貴女ならなおさらその気持ちに気付き難いのかもね」
雪乃「…だからその不愉快な前提で話を進めないでくれるかしら?た、確かに私はこれまで恋をしたことがないわ。でもだからといって比企谷くんのことを、その、す、好きだとか、それはあなたの主観でしかないじゃない、貴女の主張についてもっと論理的に説明してくれないかしら?そうすればそのふざけた推論の根拠を尽く論破してみせるわ!」
姫菜「うーん、…恋なんてものを論理的に説明するのは難しいんだけれどね……」
294: 2013/09/28(土) 22:53:42.03 ID:kinieukb0
ついさっきの会話からヒントを紡ぎだし、彼女に問いかける
姫菜「じゃあ、さっき小学生の時に男子が嫌がらせをかけてきたと言ってたけれど、彼らは何故そんなことをしたのか動機はわかってる?」
雪乃「えぇ、好きな異性の気を惹くための行為だということみたいね、好きな相手に嫌な感情を発生させて何が得られるのかしら?私に言わせれば、幼稚で低俗な行為だわ、自覚がない分余計たちがわr」
姫菜「ストップ!それ以上は言わない方が貴女のためよ!」
295: 2013/09/28(土) 22:56:39.61 ID:kinieukb0
雪乃「……どういうことかしら?」
私の態度が気に食わなかったからか、興を削がられたからなのか、言葉と同時に細められた冷ややかな視線を受ける。
姫菜「えーーとね。……雪ノ下さんが普段彼に発している言動を少し振り返ってみてみようか?」
努めて明るく返す。
296: 2013/09/28(土) 23:01:52.50 ID:kinieukb0
雪乃「…何を言っている………の? え?…い、いや…あれはち、違っ…」
姫菜「自覚がない分たちが悪いよね?」ニコッ
雪乃「ち、ちがう、ちがうのよあれはそう違うから、ちょ、ちょっとまってちょうだい」
羞恥、怒り、疑問、葛藤、不安、全てがない交ぜになった表情で狼狽えている……ふふ、可愛い
297: 2013/09/28(土) 23:06:25.34 ID:kinieukb0
雪乃「えー…えっと、そ、それは違うのよ、えぇ全然違う、全くもって勘違いよ。
そ、その証拠に ほ、ほらっ、私、初めて彼と出会ったなんとも思っていない時から、ずーーとその態度だったわ、そ、そうよ。私は一貫して彼への態度を変えていないわ、最初は彼のことを好きとかありえないのだから、その行為から恋だと決め付けるのは十分条件ではあっても必要条件にはならないわ」
生じた葛藤を無理矢理、自分自身に言い訳できたことで、安堵し強がる彼女
298: 2013/09/28(土) 23:09:20.26 ID:kinieukb0
姫菜「えぇきっと[最初]はそうだったんだと思うよ。でも[最近]や[今]はどうなのかな?
彼を非難している時の貴女はいったいどういう気持ちなのかしら?
今でも嫌悪の延長としてその発言を言い続けているのかな?
会話を楽しんでいる自分は?彼の返答を期待している自分はいない?
……今のは答えなくてもいいよ。ただ自分の中でもう少し自問自答してみようか」
雪乃「………………」
傍目には気丈そうに振舞っているけれど、視線の先が定まっていない
心のなかに僅かばかりの嗜虐心が芽生えてくる
313: 2013/10/11(金) 23:18:30.96 ID:fLq14n7H0
姫菜「じゃあ次のテーマに行こうか?…雪ノ下さん嫉妬という感情についてどう認識している?」
声音は優しいそれだが、僅かに挑発の意図が見て取れる
雪乃「嫉妬ね…劣っている者が優れているものに対して抱く羨みや妬みのこと…と私の中では認識されているわ」
間違ってはいない、その言葉の持つもう一つの認識についてはあえて触れない…
姫菜「まぁそれも一つの回答よね?」
私の浅慮を嘲るように含み笑いを湛え応える
314: 2013/10/11(金) 23:25:15.61 ID:fLq14n7H0
姫菜「雪ノ下さんならこれまで多くの羨望と、同じくらいの嫉妬にさらされてきたんでしょ?」
嫌な記憶が呼び起こされる。周囲の羨望から嫉妬への変化、そしてそこから生じる嫌悪…その繰り返し
雪乃「そうね…でも仕方ないと思うわ、人はみな完璧でないから、
弱くて、心が醜くて、すぐに嫉妬し蹴落とそうとする。優れた人間ほど生きづらいのよ。
そんなの許されないでしょう。だから人ごと変えたいと思った、
それが奉仕部を立ち上げたきっかけ……この話をするのは貴女が二人目よ」
それでも彼だけはずっと変わらない…
変わったのは私……?
いや、今考えるのはそこではない…
316: 2013/10/11(金) 23:31:34.81 ID:fLq14n7H0
雪乃「…で、それが何だというの?
まさか私が比企谷くんに嫉妬しているなんて言うのではないでしょうね?
私が彼より劣っている点があるという事かしら?
そうであるならば私に対する相応の侮辱と見なさなければならないけれど…」
比企谷くんを羨むこと…うん、ないわ、大丈夫
…猫を飼っているのは正直羨ましいわね…
317: 2013/10/11(金) 23:37:18.96 ID:fLq14n7H0
姫菜「奉仕部って確か依頼を受けてそれを解決する、
又は解決の手助けをすることが活動内容であってるよね?
最近の依頼事項は大体彼が解決しているってさっき言っていたけど、
それは彼のほうが優れているって話にならないかな?
その点はどう思っているの?彼の能力に嫉妬することはない?」
相変わらず、触れて欲しくない嫌な部分を削ってくる…
318: 2013/10/11(金) 23:42:41.97 ID:fLq14n7H0
雪乃「それは違うわ!確かに彼の実績には一目置いている、しかし彼のやり方には納得していないと伝えた筈よ!
私が認める方法で解決を導いたのならば嫉妬もすれど、嫌悪すら抱かせるあんな方法での解決能力に嫉妬することなんてあり得ないわ!」
先程のやり取りで生じた鬱憤からか、若干強い口調になる
しばしの間瞑目し、冷静さを取り戻す
319: 2013/10/12(土) 00:06:26.00 ID:quXhhv9p0
姫菜「まぁ確かに彼の手法に嫉妬という感情は普通湧かないよね、真似できないし、したくないもの、
雪ノ下さんの言い分は、うん、納得できるわ。
でも私の言う嫉妬というのは、雪ノ下さんも本当は理解っている通り、恋愛感情から来るそれだよ」
雪乃「…確かにそれと思しき感情を向けられたことは多々あるわ」
それも技能や能力に対する嫉妬なんか比べるまでもない程の強い拒絶、排他だった。
そういった行為でしか自身の存在を確かめられない哀れな人たちだったのでしょうけれど
何故そこまでの激情に至れるのか?その理由に関しては今でも理解できない…
彼女との話で、少しでもそれが理解る?
320: 2013/10/12(土) 00:17:40.74 ID:quXhhv9p0
姫菜「嫉妬という感情は私の持つ文献ではかなり重宝されているの、具体的な例を挙げると…」
そう言うや彼女は淡々と語りだす
姫菜語り…その1
いつも一緒にいた友人(男)が今日は用事があるそうだ
そんなアイツを街でたまたま見かける
声を掛けようと近づくと、隣に俺の嫌いな男がいることに気付く…
何楽しそうにしゃべってんだよあんな奴と、
おいっ距離が近いぃ…くそっなんでアイツが俺以外の奴なんかと…
あ、あれ?なんでこんなに俺ムカついてるんだ?
この胸の痛みは何だよ?うそっ、も、もしかして俺…
姫菜「ぐ腐っ、と、とまぁ簡単な例だけど私の世界ではこんな風に気付くパターンが王道なんだ…けど…」
321: 2013/10/12(土) 00:21:01.43 ID:quXhhv9p0
雪乃「…………ごめんなさい、私少し引いているわ」
ダメね、やはり理解不能だったわ
姫菜「あ…、ゴメンね、少し暴走しちゃったかな。
まぁ本題は雪ノ下さんがその主人公のような気持ちを抱いた状況を紐解いていこうと、そういう趣旨なんだ」
322: 2013/10/12(土) 00:26:57.02 ID:quXhhv9p0
雪乃 「…………」
嫉妬なんてされたことはあっても、したことなんてない…
でも、さっきの時のように自覚していないだけだとしたら…
姫菜「あら?警戒してるの?そうよね、これまで恥ずかしい感情の一挙大放出だもんね?」
雪乃「~~~っ、前置きはもういいから早く続きを言ったらどう?」
ダメ、主導権が握れない
323: 2013/10/12(土) 00:43:42.02 ID:quXhhv9p0
姫菜「あなたのお姉さん、陽乃さんだっけ?あの人が文実の会議の時に比企谷くんと話ししている時のこと思い出せる?」
意外だった、彼女と姉との接点は全くといってない筈だし、
そもそも文化祭実行員のやり取りなど見てる筈もない、確かあの時私は姉さんに…
雪乃「質問に答える前に、そもそも貴女、姉さんと面識なんてあったかしら?」
姫菜「うん面識は殆ど無いわ、その文実の内情については私のネットワーク上の成果よ、日頃の腐教活動の賜物ね…
それに文実での活動ははやはちの宝庫だったようね、話を聞けば聞くほどそこにいなかったことを悔やんだわ…
どう雪ノ下さんも?今なら腐海の杜、ちょうど会員No30番目に入れるわよ」
324: 2013/10/12(土) 00:53:49.51 ID:quXhhv9p0
雪乃「…………ごめんなさい、私かなり引いているわ」
というか30人近くも居るの?あ、あの男の人同士が、そ、その~~
む、むり、考えるのは止しましょう、え、えーと姉さんと比企谷くんの話だったわね
雪乃「た、確かに実行委員の業務の際に、姉さんと比企谷くんが話していた事があったわね、確かスローガンを決めた後だったかしら。
そう思い出したわ、仕事をしていない彼と邪魔ばかりしている姉に苛立ちを感じた事はあったわ。
まさかその苛立ちを嫉妬だなんて言うわけ?すこし論理展開に無理があるように感じるのだけれど…」
姉と比企谷くん…チリっと胸に違和感が走る
325: 2013/10/12(土) 01:00:50.98 ID:quXhhv9p0
姫菜「まぁ雪ノ下さんの中ではきっとそう区分されていると思ってたよ。
でもね私も伊達に膨大な量の文献を読み腐けっているわけじゃないんだよね。
そんな貴方、いえ貴女の頑なな心の内側を見透かす効果覿面な方法があるの?試してみない?」
雪乃「ありえない勘違いに対し、そんな事をする必要性を全く感じないわ」
ダメ、嫌な予感がする、直感で拒否と判断…
姫菜「さしもの雪ノ下雪乃さんといえど恐れるものがあるのね……。そんなに見透かされるのが怖い?」
雪乃「~~~~っ、その安い挑発に乗るのは少し癪だけど、いいでしょう、やってご覧なさい」
もしかして私って負けず嫌いなのかしら?
326: 2013/10/12(土) 01:10:00.58 ID:quXhhv9p0
姫菜「じゃあ雪ノ下さんにはとある妄想をしてもらうわね。目を閉じてくれるかな?」
じゃあいくね、そういうと海老名さんは意を決したように語り始める
ピッ
姫菜語り…その2
とある休日、貴女は今駅前で人と待ち合わせをしている。うーん相手は結衣でいいかな。
待ち合わせの間、駅前のベンチで本を読んでいる。
すると比企谷くんと陽乃さんが、駅から二人で出てくる。
貴女はそれを二人からは気付かない少し離れた所から見ている。
よく見ると彼の右手には陽乃さんの左手が握られている。
それは指が交互に絡まる通称恋人繋ぎというもので…
雪乃(~~~~~~~~っ)
笑みを浮かべた陽乃さんは楽しそうに比企谷くんに身を寄せ彼の耳元で何かを囁きます
雪乃(-----------------っ)
彼は迷惑そうな顔で、仰け反るように距離をとる。
雪乃(ホッ、…そ、そうよ、それでこそ…)
それを受けすこし膨れた陽乃さんは彼の正面に周り込み、人目も憚らず比企谷くんを抱きしめる
雪乃(えっ?い、嫌っ)
お姉さんは上目遣いで彼を見上げそして目を瞑る…
最初躊躇していた比企谷くんも、ついには観念し、ひ、引き寄せられるように、その唇に…」
雪乃「やっ、やめなさい!!」
327: 2013/10/12(土) 01:16:35.74 ID:quXhhv9p0
姫菜「(ホッ)あれっ?、どうしたの?まだまだこれからが本番になっていくんだけど…
本当はもう少し描写を凝っても良かったんだけど、あまりリアルにするとわたs、
雪ノ下さんには耐えられないと思ったのでこのレベルにしたわ、でも十分効果があったようね」
勝ち誇った…何故か安堵も含む表情の彼女に対し、負けず嫌いな性根が承服を拒否する
雪乃「ち、違うのよ、これはその、実の姉が比企谷くんに穢されるのが耐えられなかっただけで…」
胸が熱い、焼けるような…、妬ける?これが…?
姫菜「…雪ノ下さん往生際が悪いんじゃない?もう貴女にも理解っているのでしょう?」
雪乃「………」
328: 2013/10/12(土) 01:20:49.81 ID:quXhhv9p0
姫菜「そうどうしても認めたくないようね、念の為に撮っておいて良かったわ」
海老名さんは右手に握られたスマホを私の眼前に晒す、
手慣れた操作で先ほどのやり取りがリフレインする。
画面には私の剥き出しの表情が…残酷なまでに自分の感情の起伏について客観視を強要される
姫菜「この表情を見ても否定するの?もう貴女のライフはほぼゼロに見えるけれど」
雪乃「……」
329: 2013/10/12(土) 01:23:20.14 ID:quXhhv9p0
彼女を睨めつける、もう残ったのは僅かな意地だけだ…
姫菜「じゃあ次が最後よ。雪ノ下さん耐えられる?」
雪乃「…」
ま、まだあるの?
339: 2013/10/19(土) 00:29:46.61 ID:86KewhdB0
結衣から聞いたお姉さんの印象から、雪ノ下さんとの間に少なからず確執があると踏んではいた。
兄弟間コンプレックス、いい響きだわ…捗りそう、いや姉妹間になるのか、ダメね、捗らないわ…
それに加え会員No4の文実での報告書を考察した結果、雪ノ下さんの行動理由に当たりを付けた。
340: 2013/10/19(土) 00:40:56.23 ID:86KewhdB0
報告書には葉山君と比企谷くんのやり取りが大半を占めていたが、周囲の雰囲気も克明に記載されていた。
スローガン事件前のヤリトリなんてティッシュなしでは読めなかったわ。
木を見て森を見ずという過ちを新人はよく犯すのだが、リアリティある周囲の描写こそが、妄想を捗らせる甘美なスパイスだと言うことを良く分かっている。
さすがオフィサーエージェント、まだ1年なのに将来有望ね、今度とっておきの薄い本を貸してあげよう。
…でも彼女とのカプ嗜好、合わないのよね、はちはやとかホントありえない。
341: 2013/10/19(土) 00:52:06.00 ID:86KewhdB0
でもあの雪ノ下さんが歳の離れた姉に嫉妬するとか、たしかにお姉さんに気に入られているみたいだけれど…
比企谷くんどこまで手を広げているんだろう…
まぁ彼は意図していないどころか迷惑だと思っていそうだけれど…
これからは彼女としてしっかり監視する必要があるようね…彼女として
大事なことなので二回言いました
342: 2013/10/19(土) 01:10:26.58 ID:86KewhdB0
さて話を戻そう、彼女と私のガールズトーク(修羅場編)もいよいよクライマックス…
後悔はしない… 見据える未来は未だわからないのだから…
343: 2013/10/19(土) 01:20:29.49 ID:86KewhdB0
姫菜「貴女が納得出来なくても、今貴女が感じている胸の痛みは嫉妬よ。痛い?それとも苦しい?切ない?」
目の焦点が未だハッキリと定まっていない雪ノ下さんを見据え、
姫菜「…でも雪ノ下さん、同種の痛みで今以上のそれを感じたことがある…そうよね?」
雪乃「………っ」
ビクッと肩が震える様相がより儚げに映る
姫菜「それもついさっきの出来事…忘れたなんて言えないくらいすぐ前よ」
344: 2013/10/19(土) 01:35:05.07 ID:86KewhdB0
姫菜「青白い竹林と暖色系の光を放つ灯籠、晩秋の冷たい風が吹き抜けるその中を駆け寄る彼の姿、そして放った彼の言葉…」
彼女の表情から血の気が引いていく…
姫菜「ずっと好きでした……俺と…」
345: 2013/10/19(土) 01:39:22.51 ID:86KewhdB0
終わりの言葉を言い終える前に
雪乃「…めて」
この静寂の中でさえ聞こえ難い掠れた声音と共に、掻き毟るように胸を抑える彼女、
顔は俯きその表情は見えないが拒絶の意思は伝わった…
346: 2013/10/19(土) 01:55:24.20 ID:86KewhdB0
雪ノ下さんが伏せていた顔を上げる…
焦点の合っていなかった眼差しは、弱々しいながらも慈愛を満ちたものに変わる…
彼女の中で、自身への気持ちが肯定へと遷移することがその表情から見て取れた。
姫菜「もういいんだよね?……貴女は比企谷くんのこと好き、彼に恋している…」
最後の方は絞りだすような声になってしまった。
言葉を言い終わるや否や、激しい哀しみが自身の中を駆け抜ける…
理解っている、哀しみの原因は…
彼女に気持ちを気付かせてしまったという事実……
この先訪れるであろう、取り返しがつかない程、壊れていく世界がこれで確定した…
347: 2013/10/19(土) 02:14:38.17 ID:86KewhdB0
そんな自分の気持ちを決して悟られないよう気を張りながら彼女の回答を待つ。
雪乃「………えぇ、認めるわ、どうやら私はくんのことす、好、好意を持っているようね//」カア
もどかしい…しかし頬を朱に染め、照れるその仕草は形容し難い愛らしさを備えている。
姫菜「ハァ、もうそこは愛してるまで言ってもいいんじゃないかな?」
雪乃「なっ、なんで…あ、愛し…む、無理よ」カアア
染めた頬が更に紅くなる…くそう、可愛すぎて悔しい、少し意地悪したくなる
348: 2013/10/19(土) 02:19:59.01 ID:86KewhdB0
姫菜「ふふっ、でも風の噂によると彼、『愛している』って二人くらいに言ったことがあるみたいよ」
照れた顔が一転、冷たい眼光を湛える醒めた表情へと変化する。
雪乃「……そう、それは非常に興味深い話ね」ゴゴゴ
サキサキも彼のこと好きなんだろぅなぁ、修旅中の態度、どうみてもあからさまだったしねぇ。
あれっ何?比企谷くんモテモテじゃない、まるでラノベの主人公みたい…
でもその言った相手、もう一人は誰なんだろう?
報告では電話の相手、男みたいだったんだけど、何故か私の食指が働かないのよね…
364: 2013/10/26(土) 23:59:20.96 ID:VWepgm460
どうやら私は比企谷くんに恋をしているらしい。
認めたくはないけれど、彼女の証明した論法からは、私のこの気持を他の言葉で代弁すること、その指摘を覆せる論拠を見出すことは出来そうにない。
この気持ちが恋……
365: 2013/10/27(日) 00:02:32.96 ID:PxZI9Y/+0
………!不意に思考の一フレーズが引っかかった、『認めたくない』?
そもそも私は何故、こうも頑なに彼を好きだという気持ちを認めたくなかったのだろうか?
367: 2013/10/27(日) 00:11:13.94 ID:PxZI9Y/+0
彼を貶める言葉が、実は好きの裏返しだったという憫然たる事実を認めたくないから?
周囲に彼のことを好きでないと言い張って来た、否定の文言が全て嘘となるから?
……確かにその気持ちがないとは言えない。
未だ彼への気持ちの整理がつかず、頭の中は混乱止みならぬ状態ではある。
しかし、心の深い部分にまだ何かが引っかかる。
368: 2013/10/27(日) 00:26:40.72 ID:PxZI9Y/+0
彼と出会ってからこれまでの軌跡を思い起こす。
初めて彼と出会ったのは、奉仕部の部室だった。
彼の捻くれた性格の矯正が、私の奉仕部での最初の依頼、第一印象は真っ先に嫌悪、そして忌避の感情を抱いた。
恐らく本能的なものであろうから、初対面の人は少なからず同じような印象を抱くのだろう。
しかし、私はこれまで奉仕部の依頼を通し、様々な過程を経て彼の中身を知ることとなった。
部室内の彼は寡黙で存在感も希薄であるにもかかわらず、そこに居るだけで得も知れぬ安心感を感じていたことが今になって気付かされる。
逆に彼が部室に来るまでの間、幾ばくかの寂寥感と待ち遠しさを感じていたことも…
369: 2013/10/27(日) 00:29:20.15 ID:PxZI9Y/+0
そして次に由比ヶ浜さんが奉仕部に来る、彼女は静寂を良しとする空気を掻き乱し、部室の雰囲気を賑やかにそして和やかにしてくれる。
暑苦しいと思いながらも、まんざらではなかった距離の近い彼女とのふれ合い…
そんな奉仕部の空間…比企谷くんとの他愛ないやり取り、由比ヶ浜さんの創る喧騒、そして三人でいることの安心感、絆…
キーワードが有機的に結びつく…
……そう、私にとって奉仕部のもつ雰囲気は既に何物にも代え難い程、居心地よく、安らかな気持ちで居られる唯一の空間であったと、そして私はその居場所を大切にしたいと願っている…
そこまで理解れば、自然と答えは出る…
370: 2013/10/27(日) 00:33:30.78 ID:PxZI9Y/+0
私は比企谷くんへの想いに気付いてしまうことで、その大切な空間が壊れる事を心の奥底で察知していた…
かつて由比ヶ浜さんが私達が付き合っているという勘違いをして奉仕部から疎遠になったことがあった…
誤解が解け、もう一度奉仕部に戻ってきてくれたけれど、あの時の喪失感は繰り返したくない…
きっと私の彼への気持ちはあの時のように奉仕部の成り立ちを崩壊させることになる…
しかし私は自分の気持ちに気付いてしまった、もう戻れない、知らなかったことには出来ない。
自分の気持ちに嘘をついて誤魔化し、やり過ごす…?
いえ、それは私の主義に反する、それをしてしまえば、それはもう私ではなくなってしまう。
371: 2013/10/27(日) 00:35:34.74 ID:PxZI9Y/+0
でも…今の由比ヶ浜さんとなら、ちゃんと話せば分かってくれるかも…
もう以前の時とは違う、よりお互い分かり合えている、そう、と、友達に近い状態だと思う。
だからもし私の気持ちを知ったとしても今までどおり仲良く、もしかしたら暖かく応援してくれるかもしれない…
372: 2013/10/27(日) 00:42:25.83 ID:PxZI9Y/+0
………?、ふと正面に対峙する人をみる
海老名さんの奉仕部訪問の際に言われたキーワード、『今までどおり仲良くやりたい』
今ではその旨が今のコミュニティを壊したくないという彼への依頼であったことが理解る、であれば…?
雪乃「ねぇ海老名さん、少し腑に落ちないことがあるんだけれど、いいかしら……」
姫菜「ここから先は…そうね、私に応えられる範囲であれば後ろ向きに検討するよ」
雪乃「後ろ向き、ね…そう、貴女は何故苦労して手に入れたコミュニティが壊れるリスクを払ってまでも、彼の告白を受けたのかしら?
貴女の最初の依頼の意図はその繋がりの瓦解を防ぐためだったのでしょう?」
373: 2013/10/27(日) 00:47:48.29 ID:PxZI9Y/+0
姫菜「……そうね、確かに私、今の対人環境は気に入っているわ、優美子や結衣のこと、とても好きよ。
普段の他愛ない会話や喧騒も嫌じゃない……
でもね結局そこにいる私は擬態した私でしか無いの…、あそこにいるのは私だけど私じゃない…
私はきっと何処かで本当の自分を出したかったのだと思う…
比企谷くんの事を見てて少し憧れたのよね、あれ程孤高に、独りで居られるのは何故なのか?
結局周囲に流されている私に、もしかしたらこの人なら答えを示してくれるかもしれない…そう思ったのね。
374: 2013/10/27(日) 00:49:01.14 ID:PxZI9Y/+0
私は比企谷くんのこと好きよ、それに彼の事を理解している自負もあるわ。
彼を理解しているからこそ彼と付き合う難しさは理解っている。
普通に彼に告白したところで、どうなるかは予想できる。
ほぼ間違いなく彼の捻くれた回答でお茶を濁されるに決まっているわ。
むしろ告白自体をさせてもらえないかもしれないわね。
だからこそさっきの告白は私にとって千載一遇のチャンスだったのよ。
これまで築いてきたコミュニティのある程度の瓦解も含め、その犠牲を出す程の価値があると判断した…
まぁ何だかんだと言い訳してるけれど結局、友達と好きな人を天秤に掛けて好きな人を取った、ただそれだけ…
375: 2013/10/27(日) 00:54:25.32 ID:PxZI9Y/+0
そんな質問をした雪ノ下さんも分かっているのよね?貴女の気持ちが今の奉仕部の関係を瓦解させるということを…」
雪乃「えぇ、そうかも知れない…いえ、でも由比ヶ浜さんなら正直に気持ちを伝えれば理解ってくれるんじゃないかと思う…」
姫菜「そう……そうよね、自分の気持ちも理解らない人が結衣の気持ち…理解るわけないよね」
雪乃「………どういうこと?由比ヶ浜さん?彼女の気持ちって…ま、まさか!?」
姫菜「……そう、結衣も比企谷くんの事を好きなのよ…」
376: 2013/10/27(日) 01:00:51.69 ID:PxZI9Y/+0
雪乃「う、うそ……な、何を根拠にそんなこと言うの?」
姫菜「まず彼女は入学式当日に飼い犬を彼に助けてもらっていること。
それと奉仕部に入る際の依頼って好きな人にお菓子を作ってあげたいんだったよね、その後彼女に彼氏が出来たとか落ち込んだとかそんな素振りあった?
あと知っているとは思うけれど彼と二人で花火大会に行ってるよね、まぁどれも根拠としては乏しいのだけれど…
結局、結衣の彼への態度を見てれば、普通気付くと思うよ、『友達』ならね」
雪乃「で、でもっ貴女、由比ヶ浜さんと『友達』なんでしょう?そんな、じゃあ貴女それを知ってさっきの告白を受けたってこと?」
377: 2013/10/27(日) 01:09:07.37 ID:PxZI9Y/+0
姫菜「そうよ…でも今の貴女なら理解るんじゃないかしら、じゃああえて聞くね?
由比ヶ浜さんの気持ちを知った今、雪ノ下さんは比企谷くんを諦めることなんて出来るの?」
雪乃「……っ!」
姫菜「……そういうことよ、なるべく考えないようにしていたのだけれど流石に心の負荷が大きいわね、
人を好きになる気持ちっていうのはそれまでの世界を全て壊していくってことなのよ。とても哀しいことだけどね…
雪ノ下さん…もう遅いしそろそろ終わりにしたいのだけれど…」
由比ヶ浜さんのことは正直、衝撃だった。でも今はそれよりも…
雪乃「…いえ、もう一つだけどうしても貴女に聞かなければならないことがあるわ」
401: 2013/11/09(土) 01:11:58.59 ID:INXxTvfC0
姫菜「……何かな?」
雪乃「……何故、私に気付かせたの?比企谷くんへの想いを」
姫菜「……答えたくないって言っても聞いてくれないよね…」
雪乃「私に彼への気持ちを自覚させる貴女のメリットってなんなのかしら?
理由をいくつか推定してはみたものの、貴女が何を考えているか、その真意がどうしても読めないの」
優越感の獲得、所有権の明確な主張による警告、友情の破壊、etc…
無理に考えればメリットはでてくるものの、どれもきっと違う…
402: 2013/11/09(土) 01:16:48.41 ID:INXxTvfC0
姫菜「…そうね、ホントの事言うと最初は雪ノ下さんが彼の事をどう思っているか、いえどこまで想っているか探るだけのつもりだったの、結衣を含め彼と一番近い距離で接してきた間柄だしね。
まずは比企谷くんのことをどこまで理解っているか、好きになっているか否かを知りたかった…
貴女が彼のことを語るその過程で彼をやっぱり好きなこと、そしてその気持ちに気付いていないことは分かった…
想定はしていたし、その際には現状維持、つまりあなたに恋心を気付かせないという意図も持っていたわ、貴女が疑問に思っている通り私のメリットがないしね。
この今でさえそうしておけば良かったと思う私がいることは否定しない、全く後悔してないという訳でもないわ…」
雪乃「じゃあどうして…?」
姫菜「それは端的に言うと、貴女に対して怒りを感じたからかな、
私にとっては計算外だったわ………、嫉妬?いえきっと悔しさだったんだと思う…」
雪乃「それは…」
姫菜「多分、雪ノ下さんの表情(かお)に彼への想いが溢れ出ていたから…
当然自覚はないんだろうけど、彼の事を語っている貴女の表情、とっても綺麗だった…
そうね、見る人誰もが恋する乙女の顔だって断言出来る程の表情だったわ」
雪乃「----っ!」
知らず知らずに溢れ出ていた気持ちを見透かされたことによる羞恥の感情が駆け巡る…
403: 2013/11/09(土) 01:24:02.82 ID:INXxTvfC0
姫菜「でも、そんな赤裸々な顔をしながら、気持ちが分からない?ふざけんなっ!…ってことだと思う」
確かにあの時の彼女は、怒りの衝動を抑えきれないでいた……
雪乃「……そう……貴女としても不本意ながらも私に気付かせてしまったということかしら?」
その割には迷いなく完膚なきまでに論破されたような気がする…
姫菜「えーと勘違いしないでね、私、雪ノ下さんが自分の気持ちに気付いてもらってさ、なんかやっぱり嬉しいんだ」
そう言った彼女の言葉はそれまでと正反対の意味にも関わらず、私の心にストンと入り込む。
雪乃「……それは…どういうことかしら?」
警戒もなく自然と湧いた疑問を口にする。
姫菜「うん…ほら比企谷くんっていろいろ誤解され易いじゃない、まぁあえて彼がそう仕向けているってのもあるんだけどさ…
でも、そんな彼を正しく知って、ちゃんと理解して、好きになった人がいたのはただ純粋に嬉しかったんだ。
自分の好きなものを認めてもらった喜びっていうのかな、価値観の共有っていうの?
えっと例えばイベントとかで同じ嗜好の同志が見つかった時の喜びっていうのが近いかな?…これが理由の一つ」
理解る……確かに私も由比ヶ浜さんが彼を好きだと聞いて、ショックでもあったが微かな嬉しさも感じた…
共感ってことかしら……
何のイベントなのかについては深く知らないほうがよさそうね…
404: 2013/11/09(土) 01:30:35.08 ID:INXxTvfC0
短いけれど深い呼吸の後で真っ直ぐに彼女を見る。
雪乃「……その言い方だと、まだ他にも理由があるのかしら?」
姫菜「そうね……私の目論見どおりであれば、雪ノ下さんの気持ちさえ誤魔化せれば、多分、私と彼は二人で上手くやっていけたと思うの…要は貴女や周囲を騙すという形をとり続けることによってね…
でも貴女のその秘めた気持ちを伝えたい、教えてあげたいって所は純粋に損得抜きの私の衝動からきたものだった…
こんな腐りきった私の中にまだそんな純粋な気持ちがあって、それを実行することができた自分のことが、今は少し好きになれたんだ…
これがもう一つの理由よ、まぁとても個人的な理由なんだけどね」
はにかんだ笑顔を湛えながらのその言葉は、何故かとても哀しい物語を語るように聞こえた…
雪乃「そういうこと…海老名さん、あらためて貴女にお礼を言うわ。ありがとう、感謝しているわ。
私独りでは、そして貴女でなければ今の段階で自分の気持ちに気付くことは出来なかったと思う……」
405: 2013/11/09(土) 01:34:19.53 ID:INXxTvfC0
姫菜「そう?じゃあそのお返しにぜひとも聞いて欲しいお願いがあるんだけど」
雪乃「ごめんなさい、それは無理」
姫菜「えー、まだ何も言ってないのにー」
口を尖らせ拗ねた仕草をしつつ、その顔はとても朗らかだった、
どこかで聞いたようなやり取り…、やはり彼女にはどこか彼と近いものを感じる…
雪乃「さっきはちゃんと言えなかったけれど、比企谷くんを諦めることは多分できそうにないわ」
変わっていく自分自身への戸惑いはある。独占欲、嫉妬、焦燥…
そんな以前の自分であれば無関心だったあまりにも人間らしい感情を含んで膨れ上がる気持ち…
それを抑えることはきっとできない……
406: 2013/11/09(土) 01:40:17.19 ID:INXxTvfC0
姫菜「ふふっ、そうよね、それを知ってしまったら、もう抑えられないよね、
あーあやっぱり失敗したかな~、結局最初からやり直しか~」
そういう彼女はどこか達観した表情で楽しげだ…
雪乃「一つ言っておくけれど、私は比企谷くんを諦めないとは言ったけれど、彼が貴女と付き合うことを邪魔するつもりはないわ」
であるならば、そう私は私らしく……
姫菜「……そんなこと言っていいのかな?」
思ったより意外な提案だったのか、警戒の眼差しが返ってくる。
雪乃「勘違いして欲しくないから言うのだけれど、少なからず私は貴女を認めているわ。
彼自身をちゃんと理解って、自分自身ときちんと向き合い、その結果、今の状況を得たあなたに賞賛の気持ちすら抱く程よ」
あんなやり方をした人を認めるなんて私らしくない…?
いや違う、やり方云々ではない、その人自身がどうなのかだ。
407: 2013/11/09(土) 01:52:46.77 ID:INXxTvfC0
雪乃「……それに比企谷くんへの気持ちを気付かせてもらったという借りがあるわ…
だから海老名さんが彼に秘めている気持ちについては誰にも他言しないし、今後の貴女の行動について私がとやかく口をだすことはしない…」
姫菜「……なるほど、それは大きなアドバンテージね…じゃあ私は遠慮無く行かせてもらうけれどいいのね?」
不敵な笑みを浮かべ挑むような視線をしっかりと見つめ返す…
雪乃「えぇ、でも比企谷くんと付き合っているとはいえ、今がやっとスタートラインといったところでしょう?
私はやっと自分の気持ちに気付いてこれからではあるけれど、挽回できない差とは思わないわ」
そう正々堂々と向き合う……これが私のやり方
408: 2013/11/09(土) 01:58:47.29 ID:INXxTvfC0
姫菜「ふふっ、恋愛初心者なのに言うわね」
雪乃「これまで私を初心者扱いした人達は、全て私の前にひれ伏してきたわ」
姫菜「恋愛も同じだったらいいのにね、初恋の成就率についてありがたい格言があるから後で調べることをオススメするわ」
挑戦的な眼が鋭さを増してくる、普段のおっとりした印象は既にもうない
409: 2013/11/09(土) 02:00:54.99 ID:INXxTvfC0
姫菜「ねぇ、面白い対比だと思わない?
同じ捻ねた性格を持っている私と比企谷くんだけど、対人関係では上手くやっている私と、独りの比企谷くん。
対して、正反対の性格である、真っ直ぐな雪ノ下さんと捻ねた比企谷くんだけど、どちらも独り…三者三様だよね」
たしかに面白い、しかし的確な視点だ…
雪乃「そうね…それに自分自身に対し、変わりたいと望んでいる私や貴女に対して、頑なに変わることを否定する比企谷くん…」
姉みたいに、と抱いていた願望に対し、『ならなくていいだろ、そのままで』と彼に言われたことがある。
ありのままの自分を肯定され、救われた気がした…
今の私は変わりたいのか、それとも…
410: 2013/11/09(土) 02:06:29.64 ID:INXxTvfC0
姫菜「恋愛における男女共通の大きなのテーマの一つにこんなのがあるのよ、
パートナーに対し、共通の価値観を求めるのか、お互いに持っていないものを求めるのか?
比企谷くんが求めているのは何なのか?そして誰なのか?興味深いよね」
何故だろう、彼女と話す度に気持ちが昂ぶってくる…理解り合えている?
そうたしか材木屋くんの作文に書いてあったフレーズがあったわね。
『好敵手と書いて友と呼ぶ』だったかしら。
あの駄作のなかでそこだけ、何故か気になったのよね、そう今、まさにそんな気持ち…
雪乃「えぇ確かに面白いわね。そのテーマによると私は自分に無いものを求めているのね、
なんでも出来る私が、欠陥だらけの彼を求めているのはそういうことなのかしら」
姫菜「ふふっ、違うよ、何も理解っていない雪ノ下さんが、いろんなことを理解っている彼を求めているのよ」
前言撤回…
どうやら友達を作るのは、やはり私にはハードルが高いみたいね…
411: 2013/11/09(土) 02:23:11.86 ID:INXxTvfC0
お互い強い瞳で相手を見据える…
「海老名さん…貴女には負けないわ!」
「私こそ負けるわけにはいかない……雪の下さん!」
私は今夜初めて海老名姫菜という存在を正しく認識した。
彼女が雪ノ下雪乃という存在を正しく認識したのと同様に。
彼女に捉えどころない印象は既になく、どこか苛烈さを秘めたその内面。
負ける訳にはいかないといった言葉に、遠慮など何一つないことを私は直感した。
412: 2013/11/09(土) 02:35:53.36 ID:INXxTvfC0
私と彼女、そうどちらかは必ず失ってしまう。
失ってからきっと嘆くのだろう。
でも後悔はしない、何もせず諦めて失うくらいなら、戦って、抗って、そして失うことを願う。
変わってゆく世界の中で、変わらないではいられない関係は多分ある。
取り返しがつかないほどに壊れてしまうものもきっとある。
だから誰もがみんな嘘をついている。
そんな欺瞞に満ちた世界であればこそ、虚言を吐かず真摯にこの世界に挑みたい。
413: 2013/11/09(土) 02:53:46.52 ID:INXxTvfC0
以上でこのSS
八幡「ずっと前から好きでした。俺と付き合って下さい。」姫菜「…いいよ」
は 第一部 ~完~ となります。
初投稿かつ公私共に忙しいため、更新が遅くなりがちでしたが、
忍耐強く応援していただいた読者の方々にはとても感謝しております。
この後の話ですが、番外編が入ります。書きためているので明後日までには投下致します。
415: 2013/11/09(土) 05:01:33.08 ID:378zD1kfo
乙ー
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