1: 2016/10/06(木) 08:24:30.60 ID:6VIckkeH0
短めです。
よろしくお願いします。



2: 2016/10/06(木) 08:25:01.13 ID:6VIckkeH0
暑さも過ぎ、すっかり涼しくなってきた秋の午後。

事務所でのんびりしていると、紗枝ちゃんがそんなことを言い出した。

3: 2016/10/06(木) 08:25:33.22 ID:6VIckkeH0
いつき「えっ、そう?」

そう返しながら、テーブルに置いてあったおせんべいの詰め合わせ袋の封を開け、一枚頬張る。

あ、こののりせんおいしい。

4: 2016/10/06(木) 08:26:03.40 ID:6VIckkeH0
紗枝「なんや、いつ見ても何かしら食べてはる思て。」

肇「確かに。今日もレッスン終わりにケバブ食べてましたね。」

給湯室からお茶を持ってきてくれた肇ちゃんがそう続ける。

5: 2016/10/06(木) 08:26:45.12 ID:6VIckkeH0
いつき「そうかなー。そんなに食べてばっかりじゃないと思うんだけど……あ、ありがと。」

そう返しつつ、お茶を受け取る。

湯呑みは肇ちゃんのお手製だ。

6: 2016/10/06(木) 08:27:22.04 ID:6VIckkeH0
この間オフで帰省した時に、私たちの分を作ってきてくれたらしい。

ちなみに、丸に紗の字が入っているのが紗枝ちゃんの。

來の字が入ってるのが聖來さんので、いの字が入っているのが私のだ。

なかなか渋いデザインが気に入ってて、愛用させてもらっている。

7: 2016/10/06(木) 08:28:18.16 ID:6VIckkeH0
いつき「まぁでもほら。食欲の秋っていうくらいだし、いいじゃん。この時期おいしいもの多いしねー。」

そう言って、淹れてくれたお茶を啜る。

おせんべいにお茶。

シンプルだけど、鉄板の組み合わせ。

やっぱり日本人はこれだよね。

8: 2016/10/06(木) 08:28:55.47 ID:6VIckkeH0
紗枝「でも、それだけ食べてそのスタイルやもんなぁ。……羨ましいわぁ。」

肇「いつきさん、お腹周りも引き締まってますもんね。」

いつき「まぁ、食べた分は身体を動かせばいいしね!」

答えつつ、次のおせんべいに手を伸ばす。

お、今度はわさびせんべい。

ツンとくる感じが癖になるね。

9: 2016/10/06(木) 08:30:22.96 ID:6VIckkeH0
聖來「たっだいまー!」

わんこ「わん!」

ガチャッ!と勢いよく事務所のドアが開く。

わんこの散歩に出ていた聖來さんが帰ってきた。


10: 2016/10/06(木) 08:31:06.33 ID:6VIckkeH0
いつき「おかえりなさーい。」

紗枝「おかえりやす~。わんこはんも、おかえりやす~。ん~♡」

紗枝ちゃんが出迎えつつ、わんこをわしゃわしゃ撫で回す。

11: 2016/10/06(木) 08:32:14.53 ID:6VIckkeH0
実家では犬を飼わせてもらえなかった分、事務所でわんこに会えるのが嬉しいらしい。

わんこも気持ちよさそうに目を細めてされるがまま。

最近この2人(?)は仲がいい。

見ているこっちも和む。

12: 2016/10/06(木) 08:33:57.68 ID:6VIckkeH0
肇「おかえりなさい。聖來さんもお茶、飲みますか?」

聖來「あ、うん。もらおうかな。」

肇「じゃあ淹れてきますね。」

いつき「あ、だったら急須に入れてきてー。私もおかわり飲みたい。」

肇「わかりましたー。」

そう言って、肇ちゃんはパタパタと再び給湯室へ。

13: 2016/10/06(木) 08:35:22.80 ID:6VIckkeH0
……こっちも、しっぽが付いていたらぶんぶん振っているんじゃなかろうか。

まるでわんこが2匹いるみたい。

肇ちゃん、この間みんなで出掛けてから、随分と聖來さんに懐いてるなぁ。

14: 2016/10/06(木) 08:35:58.81 ID:6VIckkeH0
聖來「で、いつきはまた食べてるの?」

いつき「えー、聖來さんもそういうこと言いますー?」

聖來さんからも指摘をされつつ、胡麻せんべいを齧る。

15: 2016/10/06(木) 08:37:00.13 ID:6VIckkeH0
聖來「だってあなた最近食べてばっかりじゃない。聞いたよー?この間オフに自分のPさんと買い物出かけた時も、大盛りケバブ二つも食べたんだって?」

いつき「あ、あれは店のおっちゃんが……って違う!一つはPさんの分!いくら私でもPさんの前でそんなには食べないもん!」

紗枝「Pはんの前や無かったら食べるんやろか……」

いつき「そ、それは……運動した後はお腹空くし……。」

16: 2016/10/06(木) 08:37:35.29 ID:6VIckkeH0
もじもじしつつもおせんべいに伸ばす手は止まらない。

カレーせんべい。

ピリッとした辛味がさらに食欲をそそる。

17: 2016/10/06(木) 08:38:03.87 ID:6VIckkeH0
聖來「少しは気をつけなさいよ?大体、私もってことは他の人からも言われたってことじゃない。誰に?」

いつき「さっき紗枝ちゃんに……よー食べはるなーって。あ、でも、食べてる割にそのスタイルだから羨ましいなーって。」

聖來「……あのね、いつき。よく聞きなさい。」

18: 2016/10/06(木) 08:38:32.79 ID:6VIckkeH0
いつき「な、なんですか……。」

急に真剣な表情になる聖來さん。

私も思わず、ザラメせんべいを持つ手に力が入る。

19: 2016/10/06(木) 08:39:49.74 ID:6VIckkeH0
聖來「京都の人が言う事を、額面通り受け取っちゃダメよ。ちゃんと裏があるんだから。」

いつき「!?」

紗枝「せーらはん?」

20: 2016/10/06(木) 08:41:17.59 ID:6VIckkeH0
聖來「紗枝ちゃんのそのセリフはね、『あんた食べ過ぎやろー』とか、『そんなに食べるからお腹出とるんやでー』って意味よ。」

いつき「そうなの?!」

紗枝「ちゃいますえ!?」

思わず、持っていた梅せんべいを落としそうになるショックだったけど、紗枝ちゃんは慌てて否定する。

21: 2016/10/06(木) 08:42:14.44 ID:6VIckkeH0
いつき「もー、驚かさないでくださいよ……紗枝ちゃんはそんなこと言わないのわかってるけど。」

聖來「ごめんごめん。どっちかというと、思った事をズバズバ言っちゃうよね。」

ぺろっと舌を出しつつ、紗枝ちゃんの方を見る。

いつの間にかいじる対象が私から紗枝ちゃんへシフトしたらしい。

相変わらずお茶目な人だ。

22: 2016/10/06(木) 08:43:26.73 ID:6VIckkeH0
紗枝「むー……せーらはん、あんましいけずなことばっかり言うてると、この子返さへんよ?」

そう言って、撫で回していたわんこを後ろからぎゅっと抱え込む紗枝ちゃん。

人質ならぬ犬質だ。

23: 2016/10/06(木) 08:43:53.82 ID:6VIckkeH0
聖來「大丈夫よー。わんこだってちゃんと飼い主はわかってるもんねー。」

紗枝「せやろか?キミやて、いけずなご主人はいややんな~?」

ニッコリとわんこに笑いかける聖來さんと紗枝ちゃん。

わんこはキョロキョロと二人の顔を見比べて

24: 2016/10/06(木) 08:44:22.48 ID:6VIckkeH0

紗枝ちゃんの顔に頬ずりした。

25: 2016/10/06(木) 08:46:55.86 ID:6VIckkeH0
聖來「!?」

紗枝「や~ん♡ キミは正直えぇ子やね~♡今日は一緒にお風呂入ろなー♪」

聖來「ちょ、ちょっと?!わんこ!?わんこさ~ん?!」

26: 2016/10/06(木) 08:47:23.49 ID:6VIckkeH0
いつの間にか立場が逆転した聖來さんが、大慌てでわんこに呼びかける。

聖來「また!?またあたしはわんこに裏切られるの!?」

紗枝「ほらー、キミも言うてやりぃ。『僕はいけずな人はいややー』って。」

聖來「わんこにはいけずしてないでしょー!」

27: 2016/10/06(木) 08:47:51.20 ID:6VIckkeH0
それからはもう二人でわんこの気を引こうとてんやわんやだ。

大人しく、えびせんを食べつつ観戦していよう。

28: 2016/10/06(木) 08:49:47.13 ID:6VIckkeH0
肇「聖來さん、お待たせしまし……いつきさん、あの人たち何やってるんですか?」

いつき「んー?あー、どっちが飼い主でshow?」

肇「なんですかそれ……」

いつき「さぁ?」

29: 2016/10/06(木) 08:50:27.72 ID:6VIckkeH0
戻ってきた肇ちゃんに軽く状況説明。

隣に腰掛けた肇ちゃんは、苦笑しつつも楽しそうに眺めている。

普段よくいじられている肇ちゃんも、騒がしいのを見ているのは好きみたいだ。

30: 2016/10/06(木) 08:52:13.30 ID:6VIckkeH0
いつき「あ、おせんべい、醤油とみそが残ってるけど、食べる?」

肇「じゃあみそで。……っていうか、もうそれだけしか残ってないんですか。食べ過ぎですよー。」

いつき「いやー、おいしくて止まらなくってねー。」

肇「まったく。…お茶のおかわりは?」

いつき「いただきまーす。」

31: 2016/10/06(木) 08:52:45.72 ID:6VIckkeH0
いやー、肇ちゃんは気が利くねぇ。

いい同僚を持って幸せだなぁ。

そんなことを思いながら、2人でおせんべいをぽりぽりする。

32: 2016/10/06(木) 08:53:15.92 ID:6VIckkeH0
いつの間にか、飼い主争いもすっかり収まって、じゃれ合いになっていた。

仲良きことは美しきことかな、ってね。

いつき「まぁ、今日も平和だねぇ。」

肇「そうですね。」

33: 2016/10/06(木) 08:54:39.53 ID:6VIckkeH0
本当に、今日も平和だ。

さて、おせんべいも食べ終わったことだし、のんびり食休みでも……

と思ったところで、肇ちゃんに呼び止められた。

34: 2016/10/06(木) 08:55:25.99 ID:6VIckkeH0
肇「ところでいつきさん。」

いつき「ん?どしたの肇ちゃん。」

肇「これ、どうしましょうか。」

35: 2016/10/06(木) 08:56:25.82 ID:6VIckkeH0
困ったような笑顔でこちらを見る肇ちゃん。

彼女の手には、空になったおせんべいの袋。

その袋に付いていたメモを見て私は平和の終焉を悟った。

36: 2016/10/06(木) 08:57:11.20 ID:6VIckkeH0
……ひとまず、摂取したカ口リーのいくらかは消費できるだろう。

いつき「……買ってきます!」

肇「なるべく急いでくださいね!」

そう言い残すと私は、あとを肇ちゃんに託して、ポカンとする紗枝ちゃんと聖來さんを残して、全速力でスーパーを目指して走り出した。

37: 2016/10/06(木) 08:58:05.50 ID:6VIckkeH0
メモにはこう書かれていた。

「このおせんべい、依田は芳乃のもの。勝手に食すべからず。もしも食したら……」

彼女が帰ってくるまでに、間に合わせないと。

38: 2016/10/06(木) 09:00:43.51 ID:6VIckkeH0
以上になります。

とにかく運動好きのいつきちゃん。
消費カ口リーすごそうだから、よく食べそう。


関連作はこちら。
よろしければこちらも読んでいただけると幸いです。


水木聖來「えっ?肇ちゃんウインク出来ないの?」

いつき「肇ちゃんの下着ってさぁ」


ありがとうございました。

39: 2016/10/06(木) 12:21:25.35 ID:scopWtM2O
これは天地鳴動の危機

40: 2016/10/06(木) 15:53:22.99 ID:XgPUOVQ40
存在そのものが無かったことにされそう、乙

引用元: 紗枝「いつきはん、最近よー食べるなぁ。」