1: 2022/10/18(火) 19:21:50.04 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル「ホー…」

マンマル(私はマンマル。澁谷家の飼いコノハズクである)

マンマル(職業はカフェのマスコット。多くの人が私に会いに店にやってくる。優秀な客寄せコノハズクである)

カランカラン♪

ありあ「いらっしゃいませ~。お好きな席へどうぞ」

マンマル「ホー…」

マンマル(これは澁谷ありあ。いつも私にエサをくれる。カフェ店員としても優秀なやつである)

かのん「ありあー。この前買ってきた新譜のCD知らなーい?」

ありあ「えぇ~?この前そこに置いたって言ってたじゃーん」

かのん「おっかしいなぁー、確かにしまっといたはずなんだけどなー……」ガサガサ

マンマル「……」

マンマル(こっちの人間は澁谷かのん。澁谷ありあの姉である)

マンマル(こいつは私にエサをくれない。なぜなら)


かのん『うぎゃぁぁぁ~!!ネズミ無理っ!!虫とかもっとむりぃぃぃ~っ!!ありあ代わりにお願いぃぃぃ~!!!』


マンマル(こいつは生肉と虫が大の苦手らしい。私は新鮮なウズラが大の好物であるというのに、である)

ありあ「はい、マンマル。ご飯だよ」

マンマル「ホ…」

ありあ「はい、あ~ん」

マンマル「……」ガツガツ

マンマル(おいしー……♡)

2: 2022/10/18(火) 19:24:10.41 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル「……」ウトウト

マンマル(コノハズクは基本的に夜行性である。昼に眠って夜に起きる。だからこの時間帯はいつも眠い)

マンマル「……」

千砂都「うぃっすー!」バタン!

マンマル「……ホ」

マンマル(こいつの名前は嵐千砂都。飼い主であるかのんのオサナナジミというやつらしい)

千砂都「マンマルも~、うぃっすー!」

マンマル「……」

千砂都「うぃっすー!」ブイッ!

マンマル「……」

千砂都「ありあちゃんありあちゃん、マンマルにごはんあげてもいーい?」

ありあ「はい。大丈夫ですよ」

千砂都「やった~!はいマンマル!あ~んっ!」

マンマル「……」

千砂都「あーん!」

マンマル「……」

マンマル(……さっき食べたぞ)

3: 2022/10/18(火) 19:25:30.12 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「マンマル?」

マンマル「……」

千砂都「もーっ、ダメだよマンマル!いっぱい食べないとキレイなま~るになれないよ?」

マンマル「……」

千砂都「それとも~……あっ、わかった!もしかしてもーっと脂肪がたっぷりの部分が食べたいとか!?」

マンマル「ホ!?」

千砂都「えへへ、わかった!じゃあこっちの脂身の部分をあげるね!はい、あーん!」

マンマル「ホ……」

千砂都「いっぱい食べて、キレイなまんまるになろうね!」

マンマル「ホー……」

ガツガツガツ

千砂都「むふふっ。マンマルはお食事する姿も可愛いね~♡」ナデナデ

マンマル「……」ガツガツ

5: 2022/10/18(火) 19:27:33.27 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル「ホー……♡」

マンマル(ごちそうさまでした)

マンマル「……」

千砂都「?」

マンマル(嵐千砂都は、私をいっつも可愛がってくれる。他所の家の子供のくせに、優秀なやつである)

マンマル「……」

マンマル(千砂都はたくさん私にエサをくれる。どうやら私を太らせようとする魂胆らしい)

マンマル(だが、コノハズクだって鳥類の端くれである。美しく飛ぶためには「ぷろぽーしょん」を維持する必要がある)

マンマル(だから、無為に太らせようとするのは本当はやめて欲しいものである)

千砂都「ん~、マンマル~!わしわしわし~♡」ツンツン

マンマル「ホ……」

マンマル(もっとも、長い時間をこいつらに可愛がられて過ごす私には、飛行能力など無用の長物なのかもしれないが)

6: 2022/10/18(火) 19:28:26.25 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「マンマルってさ~……」ナデナデ

マンマル「ホ-……?」

千砂都「悩みごととか、ある?」

マンマル「?」

マンマル(ほ……?)

千砂都「マンマルっていつも何考えてるんだろ」

マンマル「……」

マンマル(千砂都は知らないのかもしれないが、実はコノハズクというものは、元来丸い生物ではない)

7: 2022/10/18(火) 19:29:24.92 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル(もふもふの羽で隠れて一見するとわかりづらいかもしれないが、フクロウの足と胴は細くて長い。シュン!としたボディを持つ凛々しい動物なのである)

マンマル(だから私も本当の姿は細長い。決して丸くなんかないのである)

マンマル「……」

マンマル(本当はそれを、なんとかして千砂都に理解して欲しいものなのだが)

マンマル「ホー……」

千砂都「私?私はね~———

かのん「あれ、ちぃちゃん!?もしかしてもう練習!?」

千砂都「あっ、かのんちゃん。ううん違うよ、私がちょびっと早く来すぎちゃっただけだよ」

9: 2022/10/18(火) 19:30:04.55 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル「……」

マンマル(千砂都とかのんは、一年くらい前に「すくーるあいどる」とやらを始めたらしい)

マンマル(りえら。それが最近人気になっているらしいというのは、私も客の「すまーとふぉん」を覗いていれば察しがつく)

マンマル(千砂都とかのんは、それだけ皆の期待を背負っているということである。私も飼いコノハズクとして鼻が高い)

かのん「じゃあ行ってくるね、マンマル!」

千砂都「ばいば~い!」

マンマル「ホー!」

10: 2022/10/18(火) 19:31:49.06 ID:8pjrbQ4e.net
***

マンマル(その夜)

マンマル「……」

千砂都「こんばんは~」カランカラン

ありあ「おかえりお姉ちゃ……って千砂都さん!?」

マンマル「ホ……」

千砂都「ごめんね夜遅くに。かのんちゃんいる?」

ありあ「あっ、えっと、お姉ちゃんならトレーニングに……」

千砂都「そっか。入れ違いになっちゃったのかー……」

ありあ「あとちょっとで帰ってくると思いますよ」

千砂都「わかった。じゃあちょこっとだけ待たせてもらってもいい?」

ありあ「はい。大丈夫ですよ。ねっ、マンマル?」

マンマル「ホー……」

千砂都「ありがと。マンマル~っ!」

千砂都「もふもふもふ~!遊びに来たよ、マンマル!」

マンマル「……」

11: 2022/10/18(火) 19:33:04.94 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「それっ、くしくしくし~!」ワシワシ

マンマル「……」

千砂都「うりゃうりゃうりゃ~!」

マンマル「ホ……」

千砂都「……」

マンマル「……」

千砂都「……はぁ」

マンマル「ホ?」

千砂都「マンマルって……いっつもどんなこと考えてるんだろ」ツンツン

マンマル「……」

千砂都「えっ、私?私はね~、んっと~」

千砂都「……スクールアイドルのことかな、やっぱり」

マンマル「ホ-……」

12: 2022/10/18(火) 19:34:27.61 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「あのね、マンマル。私ね、ついにセンター任せてもらえることになったの。ダブルセンター」

マンマル「……」

千砂都「もちろん嬉しいよ。ついにセンター来た~!って思ったもん」

千砂都「でも、私にかのんちゃんの隣、務まるのかなぁ……」

マンマル「……」

千砂都「あーあ、ダメだなぁ。またまた不安になってきちゃった。部長なのに」

千砂都「はぁ……」

マンマル「……」

マンマル(私はマンマル。澁谷家の飼いコノハズクである。だから人間の言葉はわからない)

マンマル(だけど、こいつの気持ちはよくわかる。コノハズクとはそういう生き物なのである)

マンマル(千砂都は……)

マンマル「ホー、……」

14: 2022/10/18(火) 19:35:39.91 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「でもやっぱり、私って才能とか全然カケラもないもんね~……かのんちゃんとは違って」

マンマル「……」

マンマル(知ってる。コノハズクも、小さくか弱き生物なのである)

マンマル(人間は私をちっこくて可愛いともてはやすのであろうが、この小ささなど野生の中では何の役にも立ちはしない。狩りにも不向きであり、暖を取るにも適していない。現に野生のコノハズクは年々数を減らしているらしい)

マンマル(だが、それが何だと言うのであろうか。コノハズクはコノハズク。毎日小さな体を必氏に使って、必氏に今を生きているのである)

マンマル「ホー……」

千砂都「ん、マンマル~……」

マンマル「……」

マンマル(私は千砂都を、千砂都の努力を知っている。見てきているから知っている)

15: 2022/10/18(火) 19:37:10.73 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル(千砂都が毎日欠かさず努力しているということを、私は知っている。たとえ才能なんかなかったとしても、千砂都の小さな体には、無限の努力が、可能性が秘められているということを、私はしっかりわかっている)

マンマル(だから千砂都はそれでいいのだ。周りになんと言われようと)

マンマル(コノハズクはコノハズクで、千砂都は千砂都なのだから)

千砂都「はぁ……」

マンマル「ホー、ホー」

千砂都「……?」

マンマル「ホー!」パタパタ

千砂都「マンマル……?」

マンマル「ホー、ホー、ホー」パタパタ

千砂都「もしかして……励ましてくれてるの?」

マンマル「ホ」

16: 2022/10/18(火) 19:37:58.76 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「そっか……」

マンマル「ホ-……」

千砂都「ん~、マンマルってばやっぱ優しいね~。よしよし」

マンマル「ホ-」

千砂都「ありがとね、マンマル。なんか勇気もらえた気がする」

マンマル「ホ…」

千砂都「なでなでなで」

マンマル「……」

千砂都「よしよ~し。やっぱりマンマルはキレイなまるだねぇ~♪」

千砂都「すっごく癒されるよ~」モフモフモフ

マンマル「ホー……♡」

17: 2022/10/18(火) 19:39:04.88 ID:8pjrbQ4e.net
***

かのん「ただいま~……ってちぃちゃん!?」

千砂都「すぅ……」

かのん「寝てる……」

千砂都「すぅ、すぅ、すやぁ……」

かのん(……)

かのん「……そっか、フォーメーションの細かいところ、決めちゃおうって言ってたっけ」

かのん「お~い、ちぃちゃ~……」

マンマル「ホー」

かのん「マンマル?」

マンマル「ホー、ホー」パタパタ

かのん「えっ、寝かせておいて欲しい……?」

マンマル「ホー」

かのん「そっか、わかった。じゃあ毛布とってくるね」

マンマル「……」

千砂都「すぅ、すぅ……」

マンマル「ホー……」

マンマル(こうして、喫茶店の夜は更けていく)

18: 2022/10/18(火) 19:40:31.20 ID:8pjrbQ4e.net
マンマル(そして、次の日)

千砂都「じゃじゃーん!紹介するね、マンマル!」

マンマル「ホ?」

千砂都「同じLiella!の桜小路きな子ちゃんだよ!動物の声がわかるんだって!」

きな子「えっ!?えっと、話せるって言っても、こ~んな感じのこと考えてるんだな~ってのがわかるだけで……」

マンマル「ホ-……」

千砂都「それでね、今日はついに決着をつけようと思うの!私とかのんちゃんのどっちがよりマンマルに好かれているか!」

かのん「え゛っ!?」

マンマル「!?」

19: 2022/10/18(火) 19:41:57.44 ID:8pjrbQ4e.net
かのん「い、いや~、いくらちぃちゃんがマンマルと仲良しだからって、さすがに私より上はないんじゃないかなぁ~。私とマンマル、ここの家族だし~……」

マンマル「……」

かのん「ねっ、ねっ!?そうだよね、マンマル!!?そうだと言ってよ!!?」

マンマル「ホ-……」

マンマル(でも、お前はご飯をくれないし)

かのん「うっ」

千砂都「マンマル!やっぱり私だよね!いっつも遊んでる私だよね!?」

マンマル「……」

千砂都「はいマンマル!これもお食べ!」

マンマル「?」

かのん「ってズルい!食べ物で誘惑するのズルいよ~!!」

マンマル「ホー……」

マンマル(ご飯はさっき、ありあからもらったばかりだし)

21: 2022/10/18(火) 19:42:56.07 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「きな子ちゃん!マンマルなんて言ってる?」

きな子「えっ?えっと~……」

マンマル「ホー」

きな子「えっと、千砂都先輩は~……」

千砂都「ん~、私が~?」ニッコリ

きな子「ひっ!?」

千砂都「私が、なんて?」

きな子「え、えっと~……」

千砂都「うんうん!」

マンマル「……」

きな子「ち、千砂都先輩の方が………すっごく素敵だって言ってるっす」

マンマル(……)

22: 2022/10/18(火) 19:44:20.29 ID:8pjrbQ4e.net
千砂都「ほんとに!?やった~!」

かのん「う、うぇぇ!!?ほんとに言ってる!!?絶対忖度だよ~!!」

マンマル「ホー……」

千砂都「よしよ~し、マンマルは偉いね~!ご褒美だよ!もうひと切れお肉あげる!」

マンマル「……」

千砂都「はい、あーん!」

マンマル「……」

千砂都「あ~ん!」

マンマル「……ホー」

マンマル(はぁ)

カプリ♡

マンマル「……」ガツガツガツガツ

千砂都「えへへ。やっぱりマンマルはいつ見ても癒されるなぁ~♪」

マンマル(でも、ご飯おいしー……♡)


小さな体をしてるけど、意外に大食いなコノハズクなのでした

23: 2022/10/18(火) 19:44:42.14 ID:8pjrbQ4e.net
おしまい。お読みいただきありがとうございました

25: 2022/10/18(火) 19:46:03.39 ID:iAG+Welh.net
かわいい乙

引用元: 千砂都「ん~、マンマルっていつ見てもま~るくって癒されるよね~♪」マンマル「……」