1:◆6RLd267PvQ 20/01/29(水)07:15:29 ID:5ia
時期的に少し早いですが、一昨年ひっそりと書いていたバレンタイン前日SSです。

2: 20/01/29(水)07:16:00 ID:5ia
P「…と言うわけで、バレンタインミニライブ、その後でサイン会、この時来場者に一口チョコを配ることになってる。」

加蓮「手作り?」

P「いや、他にも別口で配るからな、チョコは発注してある。」

加蓮「そんなもんなんだ…ふうん」

P「引っかかる?」

加蓮「まぁ…やっぱりファンの人とかってさ、手作りのチョコレートが食べたかったりするんじゃないかなって」

加蓮「サインと一緒におまけでチョコ渡してさ、何か、軽い感じっていうの?誰でも貰えるチョコって、意味あるのかな」

3: 20/01/29(水)07:16:34 ID:5ia
P「だが実際、作るとなると…今回は会場のキャパが決まってるわけじゃない、いわゆるゲリラ的サプライズでもあるからな」

P「所属アイドルの予定もあるし、誰がどの時間にどの店でイベントをやるか等の仔細は伏せてるんだ」

P「だれが見に来るかもわからない。顔を売るための便乗商法だよ」

加蓮「………何て言うか、セコいね、それ」

P「それでも、確実に効果はあると思う。そもそもバレンタインは口実で、専門店なんかに来るのも女性が多いだろうし」

P「最近はチョコ男子、なんて老若問わず男性がチョコを買って配る、なんてのもあるらしいが」

加蓮「逆チョコとか友チョコとかね。女子同士でチョコ交換したりとかもあるし、不思議には思わないけど」

加蓮「ホントは彼に渡すつもりだったんだけどフラれちゃったから皆で食べて~、なんてのもあったりするのかな」

P「きついな、それ…」

4: 20/01/29(水)07:17:05 ID:5ia
加蓮「同情より笑い話にでもした方が実際楽なんじゃないかな」

加蓮「まあ、結構気は遣うけどね」

加蓮「でもさ、Pさん」

P「ん?」

加蓮「…私もさ、いい思い出があるわけじゃないから、バレンタイン」

加蓮「そもそもそんなイベントを楽しむ余裕なんて、今までずっとなかったから」

P「加蓮…」

加蓮「って愚痴を言いたいわけじゃないんだ、そうじゃなくてさ」

加蓮「気付かない?私が言いたいこと」

P「言いたいこと…?…愚痴じゃなくて、となると…んん?」

5: 20/01/29(水)07:17:38 ID:5ia
加蓮「学校でそういうの無かった私がさ、何で他人のチョコ事情みたいなこと、実感持って話せるのか、って」

P「…あ、そうか…お前」

加蓮「最近は友達もできた、って言ったでしょ?…だから、ね」

加蓮「そういうのに立ち合う機会も、そういう事で頼ってくる相手も、ちゃんとできたんだよ」

加蓮「Pさんのおかげだって、私は…そう思ってるんだ」

P「…そうか…」

P「でもな、加蓮」

P「それはやっぱり、お前自信が強くなった結果なんじゃないか」

加蓮「私が…どうだろ」

加蓮「私、まだまだだってわかってるよ、いつも駄々こねて、わがまま言ってさ」

加蓮「そんなひねくれものの私を、見捨てないでここまで連れてきてくれたのは、やっぱりPさんだから」

加蓮「だから、これはその感謝の気持ち」

6: 20/01/29(水)07:18:11 ID:5ia
P「これ…もしかして」

加蓮「バレンタインは明日だけど、バタバタして渡せそうにないから」

加蓮「それと、やっぱり真っ先に私がこれを渡したいのはさ…Pさんなんだ」

加蓮「なんて…アイドルの台詞じゃないか、あはは」

P「…少し前、年末くらいからか」

加蓮「ん、何が?」

P「お前、よく指に絆創膏貼ってたから」

加蓮「…ばれてた」

P「こんなうまそうなチョコケーキ、どの店にだって売ってないぞ」

加蓮「んー、残念、チョコケーキじゃなくてね」

加蓮「一口、食べてみてよ」

P「ん…?何だろ」

P「これ、風味が爽やかだな…酸味がチョコを引き立てて、うん、うまい…」

加蓮「ザッハトルテ…になってるかな?うまくできてるといいんだけど…ううん、味見したし、多分大丈夫、多分」

加蓮「大丈夫、だよね…?」

7: 20/01/29(水)07:18:58 ID:5ia
P「うまいって言ったぞ?…うまくないわけないだろ、指が火傷だらけになってまで練習して…まったく」

加蓮「ダメ、ちゃんと言って」

P「こんなうまいチョコ、初めて食べた」

加蓮「~~~~っ///」

加蓮「そ、そこまでちゃんと言わなくていいからっ」

P「どうしろって言うんだ…」

加蓮「とにかく、これは私なりのけじめ」

加蓮「一応バレンタインじゃなくて前日だし?それなりには頑張って作ったんだし?ついでに恥ずかしい思いもしたから」

加蓮「明日は切り替えて、チョコ、ちゃんと配れると、思う」

加蓮「…あああ……ダメだな、私…アイドルなんだけどなぁ…」

P「…最後の一線は越えてないんだから、セーフじゃないか?」

加蓮「悟られてる時点で…アウト…///」

P「わかりやすいからなぁ…お前…」

8: 20/01/29(水)07:19:34 ID:5ia
加蓮「あーもう、バカらしいから悩むのやめやめ、これじゃ一人相撲じゃん」

加蓮「私がこれだけ恥ずかしい思いして渡したんだから、Pさんも何か恥ずかしい事でお返ししてよね」

P「え、クッキーとかマシュマロじゃなくて?」

加蓮「弄るからPさんの失恋話ね」

P「ちょっと待て、失恋経験前提で話すのやめないか」

加蓮「だってPさん絶対バレンタインチョコとか貰ったこと…」

P「あるわ!…義理だけど」

加蓮「うわあ」

P「その哀れむような目をやめろ」

加蓮「よかったね、今年は貰えたね…」

P「…さりげに今自分で「義理じゃない」って言ったよな」

加蓮「あ、うん」

P「…あ、そこは認めるのか」

加蓮「そこ誤魔化しても…アレだし」

9: 20/01/29(水)07:20:06 ID:5ia
加蓮「けど、これ以上は無理」

加蓮「私、白黒はっきりしないのって、なんか辛くてさ」

加蓮「それこそわがままだってわかってるよ?けど…我慢しても手に入るか、伝わってるかわからないまま、なんてのはもう、嫌だから」

加蓮「…私の中の、気持ちは、Pさんに預かってて欲しいんだ」

加蓮「そうしたら…また、これからも頑張れるって思うから」

加蓮「だから、見ててほしいの」

加蓮「…ずるいね、私」

P「いや、ずるくないさ」

加蓮「ずるいよ、だって私は」

P「一方的だから、か」

P「…立場を理由にかわしてばかりで、何も伝えない男の方が、よほどずるいと思うけどな」

加蓮「Pさんは悪くないよ…だって本当に私が勝手に」

P「…加蓮」

10: 20/01/29(水)07:20:33 ID:5ia
P「きっと、返すから」

P「いつになるかわからないけどさ、絶対返すから」

P「待ってて、くれるか」

加蓮「……うん」

加蓮「Pさんも、ずるいね…」

P「…あぁ」

加蓮「ね、チョコ…一口」

P「食いかけだぞ」

加蓮「いいの、苦めに作ってるから」

加蓮「だってね…今食べないと、甘すぎて、倒れちゃうよ、私」

P「それは、困るな…明日、仕事なのにな」

加蓮「でしょ?だからほら。…あーん」

P「…お前なあ…人の気も知らないで…」

P「心臓止まりそうなのはこっちのほうだよ、まったく」

加蓮「♪」モグモグ

P「…はぁ…」

11: 20/01/29(水)07:21:02 ID:5ia
ーそして、お渡し会当日。ー

加蓮「はい、チョコレートとサインね。え、私の事、知っててくれた?本当に…?」

加蓮「いつもTV見てくれてるんだ?…ふふっ、嬉しいな」

加蓮「あ、はい、そうです、アイドルやってます、北条加蓮って…え、いやその、そういうのは聞いてみないと…」

加蓮「Pさーん、チョコの箱、もうなくなっちゃうー」

P「代わりはまだあるぞー」

P「あ、すみませんお騒がせして…ああ、はい、アイドルのお渡し会でして、ええ」

加蓮「もう少し待って貰えます?今代わりが…あ、きたきた」

P「よいしょ…もうこれだけだなぁ」

加蓮「足りる…と思うけど、一応列区切った方がいいかも」

P「了解、すみませーん、最後尾区切りでお願いしまーす」

12: 20/01/29(水)07:21:21 ID:5ia
加蓮「じゃ、もうひと頑張りしますか」

加蓮(…本当に、たくさんのお客さんが来てくれて)

加蓮(で、Pさんは今日も忙しく走り回ってて)

加蓮(私もバタバタしてるけど、でも、やっぱり楽しいんだ)

加蓮(大変なことでも、隣にPさんがいてくれるから、頑張れる)

加蓮(だから…見ててよ…ううん)

加蓮(目が離せなくなるくらい、私も、頑張るから)

加蓮(一緒に歩こうね、Pさん)

加蓮(今日という日を…ずっと!)

13: 20/01/29(水)07:21:29 ID:5ia
おしまい。

14: 20/01/29(水)07:23:27 ID:5ia
そう言えばまだスレには投下してなかったかなーと思い立って別所に投げてた過去作でしたが、いかがでしたでしょうか。

お店にチョコ関係の色々が並び始めていたので。

ではお目汚し、失礼をば。

引用元: 北条加蓮「バレンタイン-1=…」