Fateの星【前編】
533:◆/hNrdthYBw 2016/01/17(日) 09:17:06.43 ID:8WE6KaQjO
セイバー「逃げられましたね……」

アーチャー「奴の執念のもたらした結果だ」

アーチャー「だが、あの深手ではもう」

士郎「……」

凛「士郎? どうしたのよ」

凛「なんだか怖い顔してるわよ」

士郎「! あ、いや、少しな」

士郎「……」

534: 2016/01/17(日) 09:24:17.86 ID:8WE6KaQjO
葛木 宗一郎

キャスターを使役し、町の人たちを苦しめた事は決して許されない

しかし、完全な悪人かと思えば、とてもそうは見えなかった

キャスターを守り、逃がそうとしたアイツは

誰よりも人間らしい輝きを放っていた気がする

そう、自分よりも

『お前は、今の私よりも空虚で、中身がない』

『意味ならある』

『少なくとも、衛宮、お前よりはな』

アーチャーに続き、葛木にまで自分を否定された

だが、それでも腹を立てないのは、薄々自分でも気づいているからじゃないのか?

















――――自分が、ただ正義を行うだけのロボットだということに

535: 2016/01/17(日) 09:25:28.80 ID:8WE6KaQjO







              パーティー編








536: 2016/01/17(日) 09:27:35.28 ID:8WE6KaQjO




          



            何がクリスマスじゃあい!!

               ――伴 宙太――


           





542: 2016/01/18(月) 06:21:54.57 ID:RZ/rKwcNO
柳洞寺の決戦から数日が経った

結局、葛木とキャスターの行方はわからない

突然の失踪に焦る一成の声を電話越しに聞くたびに胸が傷んだ

当面の目的であるアインツベルンの決戦に備え、遠坂は一時家に戻った

調べものがあるらしい

そして、俺達は――――




 隣町



セイバー「あの、シロウ。私はこういう場所には来たことがなくてですね」

セイバー「う、浮いてませんか?」

士郎「大丈夫! 全然浮いてない!」ガツガツ

士郎「溶け込んでるから!」ムシャムシャ

士郎「ん、なんだセイバー? 食べないのか? ケーキ」

セイバー「ダメです! これは私のです!」モシャモシャ

士セ「「おかわり!」」

543: 2016/01/18(月) 06:28:38.22 ID:RZ/rKwcNO
息抜きをかねての、隣町探索

俗に言うデートである

士郎「たまにはケーキもいいな」シーハー

セイバー「私は毎日でも構いません」シーハー

山と積まれた皿

お客『なんだあの二人組……』ドンビキ


 ラーメン○郎 冬木店


士郎「セイバー、前から思ってたけど箸使うの上手いな」ズルズル

セイバー「聖杯からの情報による賜物です」ズズズ

士セ「「おかわり!」」

544: 2016/01/18(月) 06:38:26.81 ID:RZ/rKwcNO
士郎「ふー、食った食った」シーハー

セイバー「現代の食べ物屋は面白いですね」シーハー

山と積まれたどんぶり

店主(なんだこの二人組)ドンビキ










セイバー「シロウ、次は何処へ?」つクレープ

士郎「雑貨屋」つクレープ








士郎「冬はやっぱりこれだな」タイヤキガツガツ

セイバー「……」アタマト シッポ ナヤム

545: 2016/01/18(月) 06:48:30.74 ID:RZ/rKwcNO

 バッティングセンター

セイバー「ふんッ」

ブオオンッ

ガッキィイイイイン!

ス,スゲェ

160キロヲカンタンニ

ナニモンダアノジョウチャン

士郎「あれも聖杯からの情報かな?」

士郎「……」

デート、か。

そう言えば、女の子とデートなんて初めてだな

毎日毎日修行、訓練、特訓で、友達と遊ぶことも少なかったし

藤ねぇの薦めで弓道部に入ってなかったら、ずっと一人だったろうな

桜とも知り合えたし、生徒会にも顔出すようになって……

 





           ロボットに友達はいらない







――――違う、俺は機械なんかじゃない

546: 2016/01/18(月) 07:10:34.95 ID:Oouuj1IdO
セイバー「さあ、次はシロウの番です」

士郎「あ、ああ」

シュバッッ

ブォンッ

スカッ

士郎「あれ」

セイバー「さすがに160キロは速すぎましたかね」

士郎「……」







120キロ

スカッ

士郎「くっ!」

セイバー「し、シロウ?」

おかしい

いくらなんでも、一発も当たらないなんて

まさか……



士郎「スランプかよ……」

547: 2016/01/18(月) 07:16:33.71 ID:Oouuj1IdO

 公園

ベンチに座りながら、サンドイッチを食べる

しかし、自分で作っておきながら、なんだか味がわからなかった

セイバー「……」モシャモシャ

士郎「……」モシャモシャ

セイバー「シロウ、家に帰りましょう」

士郎「……」

セイバー「道場で訓練するべきです」

セイバー「やはり、ここ最近の貴方は精彩に欠ける」

訓練

修行

特訓

頭を駆け巡る単語

まるで、お前にはそれしかないとでも言いたいのか

548: 2016/01/18(月) 07:22:38.49 ID:Oouuj1IdO
違う、違うはずだ

もっとこう、人間らしいというか

普通の学生らしい生活を送ってもいいはずなんだ

いいじゃないか今日一日だけでも

俺だって、人間なんだから

セイバー「シロウ?」

士郎「……決めた」









士郎「セイバー、今夜はは皆でパーッとやろう」











549: 2016/01/18(月) 07:28:26.74 ID:Oouuj1IdO
セイバー「シロウ!?」

士郎「遠坂も呼んでさ、ああ、せっかくだから桜や一成も呼ぼうか」

セイバー「シロウ、正気ですか!?」

士郎「藤ねぇは……入院中だったか」

士郎「今日は鍋でもつついてゆっくりと――――」

セイバー「シロウッッ!」

士郎「なんだよ、セイバー」

セイバー「士郎、聖杯戦争は夜に行われるのですよ」

セイバー「日中だからこそ息抜きができたのです。夜に皆を家に集めるなど危険です!」

550: 2016/01/18(月) 07:42:10.35 ID:Oouuj1IdO
士郎「心配性だな、セイバーは」

セイバー「心配するのも当然です!」

セイバー「やはり、ここ最近の貴方はおかしい!」

セイバー「最初に会った時の燃えるような闘志が、全く感じられない」

 例のBGM

セイバー「いいですか、士郎。友を手にかけてしまった貴方の気持ちはよくわかります」

セイバー「その傷を癒すには時間がかかる事も……」

セイバー「安穏を求めたいのはわかりますが、今は戦争中です」

セイバー「どうか、それを自覚してください」

士郎「……」

セイバー「今の貴方は、どこか焦って、道を踏み外しているような気がます」

士郎「黙れ、セイバー」

セイバー「……いいえ、黙りません」

セイバー「戦場に立ったときの、相手を焼きつくさんばかりの闘志は、一体何処に行ったのですか!」

士郎「黙れ、セイバー……!」

セイバー「正義の味方を目指し、サイボーグ・エミヤと称された、あの衛宮士郎は何処に行ったのですか!」




サイボーグ

機械

ロボット








士郎「黙れセイバー!!」







551: 2016/01/18(月) 07:49:11.90 ID:Oouuj1IdO


セイバーと俺の目が空中で火花を散らす

初めてセイバー対し、苛立ちと怒りを覚えた

だが、俺は認める訳にはいかなかった

自分が、機械

ロボットであることを

セイバー「く……」ワナワナ

552: 2016/01/18(月) 07:50:24.49 ID:Oouuj1IdO





          セイバー「何が鍋パーティーだ!!!」

553: 2016/01/18(月) 07:54:24.85 ID:Oouuj1IdO
セイバー「ちくしょおおおおおおおおお!!」

セイバーが駆け出す

その顔にはうっすらと涙が見えた

士郎「……そろそろ、帰ろう」

士郎「準備しなくちゃな」

557: 2016/01/18(月) 10:21:16.52 ID:Oouuj1IdO

 その日の晩

アーチャー「マスター、今夜は衛宮士郎からパーティーの誘いがあったんじゃないか」

アーチャー「いいのか? 行かなくても」

凛「いつアインツベルンと戦ってもおかしくないのに、そんなことする暇あるわけないでしょ」

凛「アイツ、とうとう頭がおかしくなったのかしら」

アーチャー「ふ、かもしれんな」

アーチャー「衛宮士郎などやめとけやめとけ」

凛「……あんた、今スゴくいい顔してるわよ」

559: 2016/01/18(月) 10:25:22.00 ID:Oouuj1IdO

 間桐邸

桜「先輩、お誘いは嬉しいんですが……」つ電話

桜「その、兄さんのことで」

桜「はい……ごめんなさい。せっかく誘ってくえたのに」

桜「では……先輩、おやすみなさい」

ガチャン

桜「先輩……どうしちゃったんですか」

560: 2016/01/18(月) 10:29:25.62 ID:Oouuj1IdO

 柳洞寺

一成「衛宮、急にどうしたんだ」つ電話

一成「学校の件で休みとは言え、少し浮かれているんじゃないか?」

一成「それに、今は家も葛木先生の件で忙しいんだ」

一成「パーティーは一件落着してからでも遅くはないだろう」

一成「それじゃぁな、体に気をつけろよ」

ガチャン

562: 2016/01/18(月) 11:08:54.56 ID:Oouuj1IdO

 午後八時

 衛宮邸

士郎「……」パーティー帽

士郎「……」

結局

結局、誰一人

士郎「来なかったって訳か……!」ブルブル

アーチャー?『フフフ、そう、誰も来ない』

アーチャー?『何故だかわかるか?』

アーチャー?『それは皆お前の事を柄にもない奴と見たからさ』

士郎「!」

アーチャー?『あれだけ張り切ってパーティーの準備をしても、誰も来ない』

アーチャー?『お前の事をロボットと理解してるからさ』

アーチャー?『なんならどうだ? ロボット同士で、私とやらんか?』

士郎「う、うるさい! 黙れ!」

アーチャー?『ロボットと同士のパーティーに乾杯だ!』

士郎「うるさいぃいいいい!」

563: 2016/01/18(月) 11:12:16.30 ID:Oouuj1IdO
誰もが皆、俺をロボットとして見てるのか?

違う

違う!

違う!!

俺は人間だ!!!

ロボットなんかじゃない!!!!

お前と一緒になんかするな!!!!!

士郎「ちくしょおおおおおおおおお!!」

ガッ!

怒りと悔しさのあまり、鍋に手をかけ俺は――――


564: 2016/01/18(月) 11:12:57.03 ID:Oouuj1IdO
 



        



         ピンポーン









565: 2016/01/18(月) 11:14:24.89 ID:Oouuj1IdO

  




      大河「士郎ーッ!」


      大河「ごはん食べに来たよーッ!」






士郎「!!!?」

567: 2016/01/18(月) 12:06:35.30 ID:Oouuj1IdO
士郎「ふじ、ねぇ?」

大河「あれ、どしたの士郎?」

大河「こんなに多いんじゃ一人で食べきれないよ?」

士郎「ふ、藤ねぇは入院中じゃ」

大河「病院のごはんじゃ満足できるわけないでしょ」

大河「だって」










       ――――士郎のごはん、お姉ちゃん大好きだもの










568: 2016/01/18(月) 12:13:18.64 ID:Oouuj1IdO
士郎「藤ねぇええええええええええ!!」

ガバッ

大河「きゃあっ!」

大河「ど、どーしたのよぅ急に」

大河「って士郎?」

士郎「うっ……うっ……」

大河「泣いてるの? 士郎」

士郎「だってっ、俺、ずっと一人なんだと思って!」

士郎「皆俺の事を、機械か何かみたいに思ってるんじゃないかって!」

大河「……」

大河「バカねぇ、士郎」

大河「士郎は、こんなにあったかいじゃない」

大河「お姉ちゃんは知ってるよ?」

大河「士郎が機械なんかじゃないってね」

士郎「藤ねぇ……」

大河「私は、士郎の味方だよ」

569: 2016/01/18(月) 12:18:27.55 ID:Oouuj1IdO
藤ねぇと俺の目が合った

もう、記憶にない母の姿

それを彷彿させる、優しさがあった

大河「士郎、泣きたかったらいつでも泣きなさい」

大河「お姉ちゃんがいつだって――――」

バッ

大河「――――っん」

藤ねぇの言葉を遮るように、その唇を奪った

いとおしい

なんていとおしいんだろう

こんな素敵な人が近くにいたのに、俺は

俺はバカだ――――

571: 2016/01/18(月) 12:19:46.30 ID:Oouuj1IdO
士郎「藤ねぇ」

大河「なぁに、士郎?」

士郎「俺、藤ねぇを抱きたい」

大河「…………」








大河「おいで、士郎」













572: 2016/01/18(月) 12:21:56.52 ID:Oouuj1IdO
衛宮邸に二つの影が浮かんでいる

やがて影はゆっくりと重なり、

大きな一つの影になる

そのまま影は倒れこみ、

炎のように、激しく、うねり始めた

573: 2016/01/18(月) 12:22:54.35 ID:Oouuj1IdO

 物陰







               桜「せん、ぱい」










591: 2016/01/21(木) 18:20:47.55 ID:AS/mkvE8O
数分前

 衛宮邸

桜「やっぱり、来ちゃいました……」

桜「お爺様も最近は家を空けてるし……大丈夫ですよね?」

桜「先輩、やっぱり兄さんの件のショックで……」

桜「こ、ここは後輩として、先輩を元気づけるのが一番!」

桜「それに、もしかしたら……」

士郎(イケメン度30%増し)『ありがとう、桜。やっぱりお前がいないとダメだよ』

桜「キャー! キャー!」

桜「よ、よーし、桜、がんばります」

桜「ってあれ?」

桜「鍵が開いてる?」

592: 2016/01/21(木) 18:24:56.73 ID:AS/mkvE8O
桜「先輩のギプス……」

桜「いつも大事に持ってたのに、何で玄関に放って」





――っ あ ろう!

――  ねぇ!






桜「……?」

593: 2016/01/21(木) 18:33:17.28 ID:AS/mkvE8O


――――ふ、藤ねぇ! 俺、また……!

――――士郎……! もっと、もっと抱きしめてぇ!










桜「」

594: 2016/01/21(木) 19:54:22.47 ID:pONJQVShO
目の前の二人から目が離せない

間桐 桜にとっての日常の象徴である二人

衛宮 士郎 

藤村 大河

端から見ればまるで姉弟のような二人が今

炎のように激しく絡み合っている

大河の無駄のない肢体

それに覆い被さる士郎の鋼のような肉体

圧倒的だった

性交に関して良くない思いを持つ自分の目から見ても、徹底的に純粋な光景に見えた

桜(嘘……)

士郎が打ち付ける大河の臀部から伝わる赤色の血が鮮明に映る

桜(先生……はじめてなんだ)

私のはじめては














うらやましい

うらやましい

うらやましい

衛宮士郎に愛されるあの人がうらやましい

あの逞しい腕に抱かれるあの人がうらやましい













――――憎い

595: 2016/01/21(木) 20:04:52.44 ID:pONJQVShO
桜「――――っ」

今 私は 何を

桜「~~~!」

耐えきれず、その場を後に逃げるように駆け出した

惨めだった

一瞬でも嫉妬に駆られた自分が

その手には想い人のギプスが握られていた

596: 2016/01/21(木) 20:21:00.78 ID:pONJQVShO
――――桜、おはよう。いつもメシ作ってくれて悪いな!

――――おはよー 桜ちゃん! もう先生おなかすいちゃったよぅ



壊れて行く


自分を取り巻く日常が



――――また腕をあげたんじゃないか?

――――すっごーい! 桜ちゃんどんどん本格的になってきたわねぇ!



大切な毎日が


幸せな毎日が







もう、戻れない




私はお邪魔虫















桜「うっ、うああ」


桜「あああああ」

597: 2016/01/21(木) 20:32:11.66 ID:pONJQVShO
家に着くなりベッドに倒れるようにとびこんだ

うつ伏せの状態で咽び泣き、枕を濡らす

自分を選んでくれないのは、仕方ないと思っていた

自分は汚れているから

先輩に相応しくないから

だから、姉やセイバーを選ぶならまだ理解できた

だけど、こんなのあんまりではないか

何故、よりによって、藤村大河なのか

これからどんな顔をしてあの二人に会えばいいのか

桜「先輩……」

もう、あの家には行けない

598: 2016/01/21(木) 22:25:50.48 ID:O2oqnv16O
手にしたギプスは重く、冷たかった

しかし、確かにあの衛宮士郎のぬくもりを感じた

桜「先輩……」

自分の側に、彼がいる気がする

無意識のうちに、左手がその豊かな胸に

右手が秘所に伸びる

桜「先輩、先輩」

ギプスを抱き締めながら、自分を慰める

愚かな行為

ただの自己満足

それでも、やめられない

衛宮士郎に愛される藤村大河の姿を自分にすり替える









――――もっと

――――もっと抱き締めて

――――私を愛して

599: 2016/01/21(木) 22:35:22.15 ID:O2oqnv16O
桜「っあ、あ」

達しても満足感が得られない

当然だ、今ごろ当人たちはこれの何倍もの幸福を感じているのだから

足りない

足りない

足りない

もっと

もっと

もっとほしい

ギプスの留め金に手が延び、バネを緩める

そして、それを纏い

バチン!

完全に身につけた

601: 2016/01/21(木) 22:43:07.78 ID:O2oqnv16O
桜「あああああ」

ギ、ギギ、ギギギギ

苦しい

全身が張り裂けそうだ

なのに気持ちいい

先輩の腕に抱かれていると錯覚する

桜「せん、ぱい」

桜「すき、ぃ……」

今までの行為の中で最大の快楽が桜を襲う

既に頬は上気し、胸の先端は隆起し、下腹部はびしょ濡れだった

桜「あ……あ……!」

やがて大きな波が来る

今までで一番大きな波が

桜「あ」





そして








ついに

602: 2016/01/21(木) 22:44:53.65 ID:O2oqnv16O





 


                ピシッ















               

603: 2016/01/21(木) 22:48:08.95 ID:O2oqnv16O
――――破滅の、音







桜「あ」











桜「あああああ」







本来、魔術回路に大きな負担をかける大魔術師養正ギプス



天性の才能を持つ桜の体には、余りにも――――








桜「ああああああああああああ!」







泥が、溢れた

607: 2016/01/22(金) 17:13:04.71 ID:X8UD0j1eO

 明朝

セイバー「くくっ……シロウの分からず屋め……」フラフラ

セイバー「私はあくまでシロウの為を思って言ったのに」フラフラ

ぐ~きゅるるるる~

セイバー「お、お腹が空いて力がでない」フラフラ



――――今夜は鍋でもつついて――――




セイバー「……はっ」

セイバー「わ、私は! なんて事を!」

――――今一瞬、鍋パに出てりゃ良かったと

セイバー「な、何が鍋パーティーだ!」きゅるるるる

セイバー「それもこれも士郎が腑抜けてたから!」ぐ~ぎゅるる

セイバー「……」きゅるる

セイバー「……余りがあるかもしれない」キリ

セイバー「朝食はおじやですね!」

608: 2016/01/22(金) 17:38:43.32 ID:X8UD0j1eO

 衛宮邸

士郎「…………」ムクリ

士郎「…………」チラリ

大河「くー、くー」スヤァ

士郎「……本当に、やっちゃったんだな」




――――昨晩、藤ねぇを抱いた






士郎「ふぅ」

士郎「……俺は、何を焦ってたんだろう」

士郎「自分の近くの大切な人も見えてなかったのに」

――――慎二を手にかけてから、自分の生き方に疑念を抱いていた

――――自分の存在意義が戦う事だけなのかと

士郎(でも、違った。俺の事を誰よりも見ていて、愛してくれる人が、近くにいたんだ)

俺の青春は青春と呼ぶには余りにも暗いモノだと思っていたが、大きな勘違いだったらしい

士郎「俺の青春は藤ねぇだったんだ」


――――もう、迷う事はない

これ以上の幸福はない!


士郎「青春なんかもういらん!」

士郎「青春よ、終われ!」

セイバー「終わるのはまだ早いです!」バン

士郎「ファアアアッ!?」

セイバー「私を差し置いてごちそうなど、断じて許しません!」

士郎「セ、セイバー!?」

セイバー「昨日一食抜いただけでもう氏にそうです」

セイバー「シロウ! 早く朝食の用意を」

609: 2016/01/22(金) 17:50:58.99 ID:X8UD0j1eO
士郎「セイバー! どこから入って来たんだ!?」

セイバー「鍵が開いてましたよ」

セイバー「無用心にも程があります」

士郎「あー、そいや閉め忘れてたっけか」

セイバー「……」ジッ

士郎「ん? なんだセイバー」

セイバー「いえ、何も」

士郎「?」

セイバー(男子三日逢わざれば刮目して見よといいますが)

セイバー(いい顔になりましたね、士郎)


――――どうやら吹っ切れたようです

610: 2016/01/22(金) 17:57:19.96 ID:X8UD0j1eO
大河「ん~、おはよー。セイバーちゃん」

セイバー「おはようございます、タイガ……!?」

士郎「あ……!」

大河「ん?」


セイバーの目に映るのは服を乱して着た大河

ほぼ半裸の状態で女の子座りをしている

セイバー「シロウ」

士郎「はい!?」

セイバー「昨晩、ナニをしていたのですか?」



612: 2016/01/22(金) 18:36:58.29 ID:X8UD0j1eO
士郎「あの、それは、その」

セイバー「私が空腹で苦しんでる時に貴方は……」

大河「セイバーちゃん」

大河「あまり士郎をいじめちゃダメだよぅ?」

セイバー「タイガ……」

セイバー「……わかりました」

セイバー「シロウ、話は道場でまた」

士郎「あ、ああ」

何かを察したのか、セイバーはその場を後にした

士郎「藤ねぇ……」

大河「おはよう♪ 士郎♪」

士郎「藤ねぇ、その、昨日は」

大河「んっ」

士郎「――――っん」

続きを言わせない勢いで唇を塞がれた

そのまま舌を絡まれ、淫らな音が響き渡る

大河「――――っはぁ!」

士郎「っ藤ねぇ……」

唾液による銀色の橋が二人を繋ぐ

否が応でも理解した

もう姉弟じゃない

男と女なんだと









大河「士郎、ごはんにしよっか♪」

士郎「…………」









士郎「うん」






俺は、この人を愛している

613: 2016/01/22(金) 21:58:30.62 ID:398j23/aO
士郎「」ガツガツ

セイバー「」モシャモシャ

大河「」ムシャムシャ

衛宮家の食卓にしては珍しく静かである

しかし、その本質は大食いが三人集まった結果の沈黙

食事は美味しければ美味しいほど静かになるのだ

大河「おかわり!」

士郎「はい、藤ねぇ」

馴れた手つきでごはんをよそる

その自然な動作は熟年の主夫を連想させた

士郎「セイバー、メシが終わったらでいい」

士郎「ちょっと相手してくれないか?」

大河「む、士郎? また危ない訓練やるんじゃないでしょうね」

士郎「大丈夫さ、今回は少し違うんだ」

士郎「ちょっと、キャッチボールするだけだよ」

セイバー「?」

614: 2016/01/22(金) 22:16:28.89 ID:398j23/aO

 中庭

セイバー「士郎、これは一体どういった訓練なのですか?」

士郎「その前に、セイバー、昨日は悪かったな」

士郎「いや、昨日だけじゃない」

士郎「ここ最近はずっと心配ばかりかけちまった」

士郎「例えどんな心境でも、一つの目標に進むならやるだけの事はやらなきゃいけなかったんだ」

セイバー「士郎……!」

士郎「俺とお前は一心同体、一つの目標に突き進む同士だ」

士郎「もう甘えは言わない。公と私は分ける。そしてこの戦争を勝ち抜く!」

士郎「今一度俺と一緒に戦ってくれるかセイバー!」

セイバー「シロウ! その言葉を聞きたかった!」

セイバー「それでこそ私が見込んだ男だ!」

士郎「セイバー……!」

セイバー「士郎……!」

結束を新たに闘志を燃やす

不氏鳥は、再び甦った

615: 2016/01/22(金) 22:26:05.81 ID:398j23/aO
士郎「ならば、今は黙ってこのボールを受けてくれないか!」

士郎「今、俺の中で何かが変わろうとしている!」

士郎「これはそのための訓練だ!」

セイバー「よし、来なさい士郎!」

セイバーがバットを構える

イメージするのは先日のキャスター戦でのアーチャー

葛木の右腕を破壊した、あの不自然な軌道の投擲!

士郎(あれを見た瞬間、何故か腑に落ちた)

士郎(出来ないというイメージが全く沸いてこなかった)

集中、兎に角集中しろ

針の穴を通す集中力は、修行で鍛えられている

後はそれを実現するのみ!

士郎「名付けて大魔術ボール1号!」

運命の一球 投げる!





















凛「何やってんのあのバカたちは」

616: 2016/01/22(金) 22:36:10.50 ID:398j23/aO
衛宮士郎の尋常ではない筋力から繰り出される投擲

それにプラスされる絶妙なコントロールと集中力

更にギプスで鍛えられた鋼のような魔術回路

四つの要素が混じりあい、奇跡を起こす

ッカーン!

セイバー「……!」

凛「嘘……」










アーチャー「……」

ニヤリ

617: 2016/01/22(金) 22:46:32.94 ID:398j23/aO
士郎「で、できた……!?」

自分でも驚くほどあっさり出来た

左腕から繰り出されたボールは正しくセイバーのバットの先端に直撃したのだ

精巧なコントロール等という話ではない

明らかにおかしい

実現不可能な投擲

凛「まぐれ当たりにしては不自然ね……」

士郎「遠坂、来てたのか?」

凛「一応同盟組んでるよしみ、現状報告よ」

618: 2016/01/23(土) 10:49:52.43 ID:ZTqUdpZt0
士郎「何かわかったのか?」

凛「深山町にある閉ざされた森」

凛「通称アインツベルンの森」

凛「仕掛けるなら今がチャンスよ」

バーサーカーを擁する最強のマスター

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

圧倒的身体能力と魔力を併せ持つ奇跡の存在

そして、士郎のきょうだい

衛宮 切嗣の実の娘

士郎「いよいよか……」

セイバー「シロウ、貴方にとっては因縁の相手ですね」

凛「最近の貴方はどうもへんだったけど」

凛「どうやら立ち直ったみたいね」

士郎「ああ、俺はもう平気だ」

士郎「悪いな、遠坂にまで心配かけちまった」

凛「分かればいいのよ」

凛「それにしても、何? 朝っぱらから野球?」

凛「セイバーまでノリノリじゃない」

セイバー「リン、これは遊びではなくあくまで訓練です」

セイバー「あなたも見たでしょう。あの恐るべき変化球を」

凛「確かに、前回柳洞寺でアーチャーが見せた変な投擲に似てたけど

凛「士郎、貴方なんだってアーチャーのまねなんか――――」










大河「士郎」







大河「あんた、どこでそれを覚えたの?」

619: 2016/01/23(土) 11:15:00.84 ID:ZTqUdpZt0
士郎「ふ、藤ねぇ?」

いつのまにか藤ねぇが俺たちの訓練を見ていた

もうとっくに帰ったモノだと思ってたのに

その顔は見たこともないくらいに真っ青になっていた

まるで、信じられないものでも見たかのように

大河「言いなさい! どこでそれを覚えたのよ!」

セイバー「タイガ、落ち着いて下さい。これは決して危険な特訓では」

大河「あんたは黙ってて」

セイバー「……!」

静かに、そして恐るべき迫力で言い放たれた

セイバーを見つめるその顔は能面のように無機質で、しかし確かな意思が感じられた




――――邪魔をするな




大河「帰って」

士郎「え」

大河「セイバーちゃんも、遠坂さんも、今すぐこの家から出てって」

士郎「ふ、藤ねぇ!? 何言ってんだいきなり!」

大河「いいから出てってよ!」

凛「……」

普段の底抜けの明るさが微塵も感じられない、悲痛な叫びだった

一体、何が彼女をそこまで駆り立てるのか

セイバー「……わかりました」

士郎「セイバー!?」

セイバー「今のタイガには、どんな言葉も通じないでしょう」

セイバー「ですが、これだけは分かってもらいたい」

セイバー「私は、シロウを守るためにこの家に来たという事を」

凛「私もお邪魔したわね」

凛「士郎、さっき言ったことはよく頭に覚えておいてね」










それだけを言い残し、二人は衛宮邸を後にした


620: 2016/01/23(土) 11:24:40.50 ID:ZTqUdpZt0
士郎「……」

大河「……」

すっかり静まり返った衛宮邸に、気まずい空気が流れる

士郎「なぁ、藤ねぇ」

大河「……」

士郎「どうしちまったんだよ、急に――――――」






ガバッ









士郎「あ……」



いきなり抱きつかれた



その体は、怯えたこどものように震えていた



士郎「んぐ……」



そして縋るように、その唇同士が重なり合った

624: 2016/01/23(土) 15:14:08.22 ID:PIbPUXuxO
大河「ん……んぅ」

水音がやけに鮮明に聞こえる

体がどんどん熱くなる

士郎(……っ)

俺って奴は

昨日あれだけしたのに、もう

士郎「っは、はぁ、はぁ」

士郎「藤ねぇ、まだ、朝だよ」

ダメだ

いくらなんでも自堕落過ぎる

そう頭で理解していても、体が動かない

まるで甘い痺れに全身が麻痺してしまったみたいだ

大河「士郎……」

口づけを終えた大河が迫る

普段の子供っぽさは微塵もない

底無しの色気

情愛の炎を帯びた瞳





――――飲み込まれる










士郎「うぁ……」

いつの間にか、大河の右手が士郎の股座に触れていた

撫でるように、そしていとおしむように

厚い胸板にしなだれかかり、その体を士郎に預ける

そのまま耳元でこれまた扇情的に囁いた







大河「ねぇ」

大河「…………しよ?」













抗う理由なんか、無かった

628: 2016/01/23(土) 18:15:18.45 ID:PIbPUXuxO
凛「見事に二人とも追い出されたわねー」

セイバー「……」

凛「ねぇ、セイバーは気付いた?」

セイバー「何がです?」

凛「藤村先生の、士郎を見る目」

セイバー「……」

凛「教師と生徒、か。まさか身近な人間でやられるとはね」

セイバー「あの二人は、どうなると思いますか」

凛「士郎はともかく、先生のあの様子じゃもうメロメロね」

セイバー「…………」

違う

タイガから感じたモノは、そんな優しいモノではない

姉弟の愛 恋人の愛

親子の愛 

それらが全て混じりあったかのような、濁ったモノを感じる

タイガはシロウを無償で愛し、そして愛されるだろう

まるで今までの時間を取り戻すかのように

凛「ほんとはね」

凛「少し……羨ましいかなって、思ってた」

セイバー「羨ましい?」

凛「意外? だけどね、生きてる内は、一回ぐらいはそういう恋愛もしてみたいって思うモノよ」










――――身も心も燃やし尽くすような、熱い恋愛をね

630: 2016/01/23(土) 18:33:09.14 ID:PIbPUXuxO
大河「士郎! 士郎……! あぁっ!」

士郎「うぅっ……あ……!」

畳に敷いた布団の中で、お互い生まれたままの姿になった二人の男女が愛し合っている

決壊したダムのように激しく、止まらない

理性が吹き飛んだ獣のように互いを貪る

大河「もっと……! もっと乱暴にして!」

大河「私を士郎だけのモノにしてぇ!」

士郎「ううぁ……!」

大河「あぁあああ……!」

大河の哀願に答えるように力強く激しく犯す

もう何度達しただろうか、わからない

抱けば抱くほど、犯せば犯すほど大河は燃え上がり、士郎に凄まじい快楽を与える

その凄まじさに士郎は圧倒されっぱなしだった

しかし、生命力に満ち溢れた若者に底など無い

ただ目の前の女を犯す獣になり、士郎は大河を求め続けた

636: 2016/01/24(日) 14:54:38.45 ID:EZN3u77f0
士郎「……っ! ……っ!」

大河「あ……!」

もう何度目かすら分からない昂りを大河の中に放出する

大河のよく鍛えられたしなやかな両足が士郎の腰に巻きつく

両腕が背に回され、立った爪が皮膚に食い込む

士郎も負けじと大河を精一杯抱きしめる

そのまま一つになってしまうのではないだろうか

互いに口づけを交わしたまま二人は多幸感に身を任せた










――――私、士郎の赤ちゃんが欲しい










--
--



士郎「なぁ、藤ねぇ」

大河「うん?」

士郎「俺、藤ねぇとこんな関係になるなんて、夢にも思ってなかったんだ」

大河「それは私もおなじだよ」

大河「士郎はいつまでも可愛い弟で、私は後ろで士郎を見守ってるお姉ちゃん」

大河「いつか、士郎がちゃんと独り立ちするまでそうするつもりだったけど」

大河「当の士郎から告白されちゃ、お姉ちゃん我慢できないよ」

大河「それ位嬉しかった」

大河「桜ちゃんや遠坂さんでもない、私を選んでくれたことが」

士郎「ごめんな、藤ねぇ」

士郎「今まで散々心配かけまくってきた俺を受け入れてくれて」

士郎「今はちょっとゴタゴタしてて時間が作れないけど」

そこまで言って言葉に詰まる

言うべきか、言わざるべきか

士郎「・・・よし」

顔を真っ赤にして、決心を固めた

士郎「もし、一息ついたら、俺と――――」

637: 2016/01/24(日) 15:00:30.68 ID:EZN3u77f0
大河「ストップ」

士郎「むぐ」

掌が士郎の口を押さえる

大河「そういう大事なセリフは、全部終わってから言いなさい!」

士郎「ご、ごめん」

大河「……ホントはね、士郎がなにか危ない事に巻き込まれてるって、薄々気づいてたの」

士郎「藤ねぇ・・・」

大河「切嗣さんの子だもの、いつかはって、分かってたけど」

大河「士郎が、氏んじゃうんじゃないかって考えたら、もう止まらなくて」

大河「セイバーちゃんや遠坂さんにも酷い事言っちゃった」

士郎「そうだ・・・忘れてたけど、藤ねぇはなんであんなに取り乱したんだ?」

士郎「あの大魔術ボール1号を見たときの藤ねぇ、普通じゃなかった」

大河「……」

大河「士郎には、ずっと黙ってるつもりだったけど、ばれちゃったか」

大河「士郎、あの技はね」















大河「昔、切嗣さんに見せてもらったのよ」



















士郎「……え?」

638: 2016/01/24(日) 15:09:41.61 ID:EZN3u77f0
士郎「じいさんが? あの技を?」

大河「切嗣さんが亡くなる少し前に、中庭でボールを投げてるのを偶然見かけたの」








どれもみんなおかしな雰囲気を放つ、三種のボールを








士郎「三種の、ボール」

639: 2016/01/24(日) 15:22:23.95 ID:EZN3u77f0
大河「私に気づいた切嗣さんはひどく慌ててた」

大河「今思うと、私が近づいてるのに気がつかなかった時点で、体はもうぼろぼろだったのかもしれない」

大河「だから無念そうに言ってた」

大河「士郎にこれを授けられないのが悔しいって」





――――じいさんが、俺に授けたかった?

――――この技を?





大河「イヤな予感がしたの」

大河「あの技を全て士郎が覚えたとき、何か悪いことが起きるんじゃないかって」

大河「だから今朝セイバーちゃんとの特訓を覗いたときは、背筋が凍ったわよ」




藤ねぇの言葉を聴きつつ、俺はある疑問を抱いた

なぜ、アーチャーが、この技を知っていたのか

じいさんが伝えようとしていた、三種のうちの一つを

640: 2016/01/24(日) 15:50:55.67 ID:EZN3u77f0
大河「切嗣さんと最後の口げんかをしたのもあの日」

大河「けっきょく、喧嘩別れしたまま切嗣さんは亡くなった」

大河「その時、心の底から後悔したの。なんで仲直りできなかったのかって」

大河「知ってた? 私の初恋の人って切嗣さんだったんだよ」

大河「不器用で世渡りの下手なひとだったけど、士郎に対する想いは本物だった」

大河「そんな所に惹かれてたのかもね」

士郎「……」

大河「だからね、士郎」

大河「士郎は、氏なないでね?」

大河「どんなに無茶をしても、お姉ちゃんできるだけがまんする」

大河「だから、命だけは粗末にしないで」

士郎「・・・わかった」

士郎「約束するよ、藤ねぇ」

大河「破ったら怒るわよ?」

士郎「ああ」

士郎「藤ねぇも、セイバーたちと仲直りしてくれよ」

大河「えー、どうしよっかなあ」

大河「あんな若くて可愛い子達がいたら、士郎浮気しちゃうんじゃなあい?」

士郎「す、するわけないだろ」

士郎「俺はもう藤ねぇひとすじ――――」







チュッ









士郎「・・・ん」

大河「ありがとね、士郎」


















――――大好き



641: 2016/01/24(日) 15:58:54.04 ID:EZN3u77f0





                 もう青春なんかいらん 終われ!!


                    ――星 飛雄馬――





647: 2016/01/25(月) 20:17:08.18 ID:r5qb/3vuO
よるのまちはいろんなひとがあるいてます

しごとがえりのおとうさん

がっこうがえりにあそぶがくせいたち

つめたいかぜにあたりながら、みんなからだをかがめてます

そのなかでもめをひくのは、なかよくてをつなぐおとこのひと、おんなのひと

とてもしあわせそうです

とてもあたたかそうです

とても――――
















――――気に入りません



















――――氏んでください

648: 2016/01/25(月) 20:24:31.73 ID:r5qb/3vuO
「随分と派手に喰い散らかしたのぅ」

「それもまた若さのなせる業か?」

「カッカッカ」



――――だって、何もしてなくてもおなかがすくんですよ


――――だったら、できるだけおいしそうなのを食べたいじゃないですか


――――先輩だって、そう言ってます


「衛宮の小倅? 何処に居るんじゃ?」


――――あれ、お爺様には見えませんか?


――――先輩は、ほら、ずっと私を抱き締めてくれてるじゃないですか


――――ほら、今も





ぎぎがガガガギギギがぎごぎ

ギギギゴギギぎガガががぎぎぎ

giがggiっがぎぎぎぎぎっががっっガガがgi

649: 2016/01/25(月) 20:34:26.84 ID:r5qb/3vuO
――――ああ、待っててください


――――もうすぐ、二人であの人たちも食べましょうね


――――姉さんと、セイバーさん。美味しそうだなぁ


――――え?



――――あの人はダメです



――――あの人は食べません



――――なぜだかわからないけど、すごくいやな気分になるんです



――――あの人だけは、滅茶苦茶にしてやります



――――身体中を汚して、壊して、苦しめて



――――犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して犯して














――――ばらばらにして、捨ててやります

650: 2016/01/25(月) 20:36:00.74 ID:r5qb/3vuO









                修羅場編











651: 2016/01/25(月) 20:39:17.75 ID:r5qb/3vuO








       
       金が名誉が女が追っかけてくるような男になれ。

              ――大山倍達――








652: 2016/01/25(月) 21:07:53.16 ID:r5qb/3vuO
結局、藤ねぇとセイバーたちは、藤ねぇが先に謝る形で仲直りした

いつもの笑顔の藤ねぇに戻って二人とも安心してた

ただ、家にいるときに限っては、藤ねぇは俺に必用以上に接近する事が多くなった

今もセイバーと遠坂が目の前にいるってのに――――

653: 2016/01/25(月) 21:15:12.74 ID:r5qb/3vuO
大河「はーい、士郎。あ~ん♪」つお箸おかず

士郎「ふ、藤ねぇ、さすがに恥ずかしいって……」

セイバー「……」

凛(うわぁ)

二人の引いた視線が痛い

大河「未来のお嫁さんに対して冷たーい!」

大河「昨日も一昨日もあんなにいっぱいあいしあっt」

士郎「わーっ! わーっ!」

凛「不潔」

セイバー「節操なし」

なんつー言いがかりを!

これでも真剣なんだぞ俺は!

655: 2016/01/25(月) 21:27:50.95 ID:r5qb/3vuO
士郎「それにしてもなんか久々にワイワイやってる気がする」

士郎「藤ねぇと桜と俺の三人でメシ食べてた時が懐かしいな」

凛「……桜、か」

士郎「ん? どうした遠坂」

凛「なんでもないわ」

大河「桜ちゃん最近来ないからねぇ」

大河「私も桜ちゃんのごはんが食べたいなぁ」


656: 2016/01/25(月) 22:33:56.94 ID:hcYTZwO7O
そうだ、早く聖杯戦争を終わらせて、桜を家に呼ぼう

俺と藤ねぇの関係を喋ったら、きっと驚くだろうな

その為にも

士郎(イリヤ……全力で君を倒す)








決戦の日は、目前

657: 2016/01/25(月) 22:41:21.73 ID:hcYTZwO7O

 アインツベルンの森

 アインツベルン城

リズ「イリヤ、ヘラクレスの最終調整はおわった」

イリヤ「ごくろうさま」

セラ「イリヤ様、そろそろ来る頃でしょうね」

イリヤ「向こうも全力で来るのはわかってた」

イリヤ「だったらこっちもそれなり用意をするまでよ」

イリヤ「ねぇ? バーサーカー」

イリヤ「ううん」

イリヤ「超ヘラクレス」





バーサーカー?「グルル……」






ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ

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ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ

658: 2016/01/25(月) 22:47:51.01 ID:hcYTZwO7O
リズ「イリヤ、ムチャをする」

イリヤ「キリツグにできることを、私が出来ない訳ないじゃない」

イリヤ「アインツベルンの総力を使って探し当てた、古代ウルクの秘宝」

イリヤ「シュメールの擬似霊装」

659: 2016/01/25(月) 22:52:08.39 ID:hcYTZwO7O










        天のギプス
     (ギプス・オブ・エルキドゥ)  










660: 2016/01/25(月) 22:55:46.81 ID:hcYTZwO7O
イリヤ「私自らが与える最後の試練よ」

イリヤ「乗り越えなさい、バーサーカー」






――――あなたならできるわ

















バーサーカー「■■■■■■■■■■!!!」









ギャリギャリギャリギャリ

ギャリギャリギャリギャリ

664: 2016/01/25(月) 23:15:27.38 ID:hcYTZwO7O

 衛宮邸


士郎「ない ない! ない!!」

セイバー「ど、どうしたのですか」

士郎「ギプスが! 親父の形見のギプスがない!」

セイバー「なんと」

士郎「ああ~、もうダメだぁ」ヘナ

士郎「あれがないと俺はダメなんだぁ」ヘナヘナ

凛「うわー……」

士郎「……セイバー!」

セイバー「なんでしょうか」

士郎「この際だからもうお前のギプスを貸s」

セイバー「」つ中日ドラゴンズバット ブオン!

ゴシャァ

ギェアアアアア












アーチャー「阿呆が」

665: 2016/01/25(月) 23:42:40.50 ID:hcYTZwO7O
士郎「確かに玄関に置いてあったはずなんだ……」ボロッ

士郎「なんで、何処にいって」

凛「えーい! いつまでもぐじぐじ言わない!」

凛「今日は決戦の日よ!」

セイバー「シロウ、無くしてショックなのはわかりますが、戦闘中はしっかりしてください」

対アインツベルンに望む遠坂の作戦はこうだ

サーヴァント二体でバーサーカーを足止めし、本命のイリヤを倒す

なんともシンプルだが、これしかないのが現状だ

不意討ちこそ理想だったのだが、アーチャーの偵察の結果、アインツベルンの森自体に強力な結界が張られていた

回り込もうにも結界のせいで正面からしか突破出来ない

今まではなんとか倒してきたが、今回ばかりは命を落とすかもしれない

666: 2016/01/25(月) 23:57:37.81 ID:hcYTZwO7O
凛「士郎、イリヤスフィールは……」

士郎「わかってるさ」

あの子は俺に大きな憎しみを抱いている

俺自らがあの子と向き合わなきゃならないんだ

士郎「その為の切り札は、用意した」

大魔術ボール1号

一発逆転のカギ

この技でイリヤを止める!

671: 2016/01/26(火) 18:14:03.79 ID:LcTM6YMPO

 アインツベルンの森

凛「それじゃ、作戦通り行くわよ」

士郎「ああ」

士郎「セイバー!」

セイバー「いつでも行けます」

凛「アーチャー!」

アーチャー「了解した」





セ ア「「解 放!!」」




バチン!

















士郎「いいなぁ……」

672: 2016/01/26(火) 18:18:46.53 ID:LcTM6YMPO
イリヤ「……!」

リゼ「イリヤ、敵、来たみたい」

イリヤ「いい度胸じゃない。望むところよ」

イリヤ「リゼ」

リゼ「ん」

イリヤ「お客人を出迎えなさい」

イリヤ「モーレツにね」

リゼ「わかった」

673: 2016/01/26(火) 18:25:21.59 ID:LcTM6YMPO
セラ「イリヤ様、御召し物の用意ができました」

イリヤ「ええ、着替えさせて」

イリヤ「……もう少し何とかならなかったのかしら、これ」

イリヤ「なんかお子様っぽい」

セラ「ホムンクルスの穴の特製です」

セラ「イリヤ様の全力の動きに耐えられる服はこれしかありません」

イリヤ「わかってるわよ……」

674: 2016/01/26(火) 18:30:05.58 ID:LcTM6YMPO






      『カレイドルビー』
      ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ







675: 2016/01/26(火) 18:38:07.00 ID:LcTM6YMPO
凛「もうすぐアインツベルン城よ」

凛「城全体がそのまま術式になってると思ってかかりなさい」

――――ィン

士郎「いざとなったらセイバーに強引に壊してもらおう」

士郎「遠坂も気を付けて――――」

セイバー「シロウ!」

ィィィイイイン!

士郎「!」

バッ



ドゴォアアアアア!



回転する何かが俺のいた所に衝突し、爆音をあげる

これは


士郎「斧?」



リズ「ちっ。はずした」

676: 2016/01/26(火) 18:44:06.39 ID:LcTM6YMPO
声のした方向には、真っ白なメイド服に身を包んだ少女が

凛「ホムンクルス……!」

士郎「あれが?」

リズ「ようこそ、アインツベルンへ」

リズ「私はリズ」

リズ「こんばんは」

士郎「あ、どうも」

リズ「氏ね」

士郎「!?」

ギュオオオオオッ

また斧!?


679: 2016/01/26(火) 19:35:30.89 ID:LcTM6YMPO
超重量の斧をまるで毬のようにポンポン投げてくる

いや、どこから出してるんだ!?

セイバー「皆は下がって」

嵐のような攻撃に臆せず前に出るセイバー

一体何を





セイバー「ノックアウト打法 × ∞ !!」






ズガガガガガガガ!




リズ「!」

凛「!?」

す、スゴい! あの攻撃を次々に打ち返した!

それだけじゃない!

リズ「む、む」

ドォン ズオワ!

的確に相手を狙い打ってる!

リズ「やっぱり、サーヴァント相手じゃ、きつい」



680: 2016/01/26(火) 20:24:56.46 ID:LcTM6YMPO
リズ「撤退」

凛「あ! 逃げる!」

アーチャー「追いかけるか?」

セイバー「迂闊に追うのは危険です。罠があるかもしれません」

――そんな姑息な手を使うと思う?

士郎「!」

四方から声が聞こえる

魔術を使った伝声方法?

――リズを退けたのは褒めてあげる

――まあこれで氏なれても困るんだけどね、おにいちゃん

士郎「イリヤ! どこだ!」

――慌てる必用はないわ

――そのまままっすぐいらっしゃい














――――最高のステージを用意してあるわ

681: 2016/01/26(火) 20:30:59.19 ID:LcTM6YMPO

 アインツベルン城正面

セイバー「こ、これは」

アーチャー「……」

豪奢な城の目の前に不自然な建造物がある

一段高くなった所に正方形に敷かれた白色のマット

その四隅に立つ黒色のポール

そして全体を逃げ場なく覆う鎖のロープ


その威容はまさに――――





士郎「四角い、ジャングル」
















凛「なんだかイヤなよかんがしてきた」

682: 2016/01/26(火) 20:41:31.27 ID:LcTM6YMPO
リズ「あかーコーナー」

凛「な、なに!?」

突如城の方から先程のホムンクルスの声が

なんだか妙にノッているきがする

リズ「ホムンクルスの穴しょぞくー」

リズ「嵐のリベンジャー」







リズ「プリズマ~ イリヤ~!」











セイバー「シロウ! あれを!」




そして、その声と共に城の頂上に立つ影が


月明かりを逆光に立つその姿は――――!



「ハァアッ!」


ババッ

684: 2016/01/26(火) 20:47:09.30 ID:LcTM6YMPO

 入場曲

~行け! タイガーマスク~

常人なら氏亡確定の高さから飛び降りた影は、そのまま隅の鎖のロープに着地する!

アーチャー「なんと言うバランス感覚だ」

セイバー「あのままの体勢を保ちながら着地するとは」

士郎「やっぱり君だったか」





士郎「イリヤ!」









イリヤ「久しぶりね、おにいちゃん」
















凛「なに、あれ」

685: 2016/01/26(火) 20:57:38.63 ID:LcTM6YMPO
イリヤ「今日は時間無制限のデスマッチ」つマイク

イリヤ「そのつもりで来たんでしょう?」

マイクを片手に指を指しながら挑発す
そっちがその気なら!


セラ「マイクをどうぞ」

士郎「あ、すいません」


士郎「……いや、正確には違う……」つマイク

士郎「君を倒し、仲直りするために来た!」









凛「ねぇ、何であの二人普通に会話してんの?」

アーチャー「何かおかしい所でもあるのか」

セイバー「べつに普通じゃないですか」

凛「…………」

686: 2016/01/26(火) 21:05:19.48 ID:LcTM6YMPO
イリヤ「わざわざ殺されに来るなんて律儀ねぇ」

イリヤ「仲直り? 寝言は寝て言いなさい」

イリヤ「あなたたち一人たりとも逃がさないわ」

イリヤ「皆頃しよ」


パチン!


凄惨な笑みと共に指をならす

ガゴン!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

城の正門が開き、中から何かがやって来る!


イリヤ「紹介するわ」

イリヤ「今夜の私のパートナー」






――――英雄山脈 ヘラクレス・ザ・ジャイアント!!









バーサーカー「■■■■■■■■■■!!」















687: 2016/01/26(火) 21:16:21.17 ID:LcTM6YMPO
凛「ねえ、まさかとは思うけどタッグマッチなんてするつもりじゃないわよね」

イリヤ「あれ? わかった?」

凛「あーやっぱりそうかーってバカじゃないのアンタ!」

凛「そんなものに乗る訳ないじゃない!」

イリヤ「リンはイヤなの?」

凛「当たり前でしょ!?」

イリヤ「そー言うと思った」カチッ

パカッ

凛「へ?」

アーチャー「む」

イリヤ「お邪魔虫はボッシュートで」






凛「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ………」ヒュー







士郎「遠坂ぁああああああああ!!」

アーチャー「……」

イリヤ「行かなくていいの?」

アーチャー「……ふっ」

ババッ

ヒュー






イリヤ「これで邪魔物はいなくなったね」

688: 2016/01/26(火) 21:30:27.74 ID:LcTM6YMPO
イリヤ「私とバーサーカーのタッグ」

イリヤ「そっちはシロウとセイバーのタッグ」

イリヤ「どちらかが氏ぬまで遊びましょう?」

士郎「セイバー!」

セイバー「望むところです!」

ババッ

セイバーの声と共にリングへあがる

眼前のイリヤを睨む瞳に炎が宿る

久しぶりだ、こんなに熱くなるのは

士郎「行くぞ、イリヤ!」

イリヤ「頃してやるわ、おにいちゃん」









メーンイベント


時間無制限デスマッチ


 マジカル・バーサーカーズ

      VS

 ファイアー・フレンドシップス






ファイッ

ッカーン!

696: 2016/01/29(金) 20:28:08.49 ID:t/LPX0VlO
セラ「さぁ世紀の決戦の火蓋が切って落とされました! 聖杯戦争も今夜の戦いで最高に盛り上がる事でしょう」

セラ「実況は私、セラ。解説は」

リズ「リーゼリットがお送りします」

セラ「おっといきなり衛宮士郎イリヤ様に飛びかかった! 端から見れば小児性愛の変態にしか見えません!」

リズ「みぐるしい」

セラ「しかしイリヤ様避けた ああっと! これは!」

セラ「衛宮士郎そのまま連続ラッシュだー! 速すぎて拳が見えない!」

セラ「イリヤ様は悉くかわしてってなんと!?」

リズ「だいたん」






――――いきなり大技だーーーーッ!



697: 2016/01/29(金) 20:34:07.77 ID:t/LPX0VlO
手数による制圧を試みたが、やはり強い。

あっさりとかわされた

それどころか

士郎「ムグゥ!?」

突如目の前が真っ暗、いや、真っ白な何かが

これは

まさか

フニ







イリヤ「このまま氏ねたら幸せなんじゃない?」










セラ「フランケンシュタイナーだぁあああ!」

リズ「これは氏ねたらほんもう」

698: 2016/01/29(金) 20:39:44.03 ID:t/LPX0VlO
両頬にイリヤの白い太股が万力の如く挟みこんでくる

真正面は言わずもがなってそれより息が!

セイバー「シロウー! 何をやってるんですかー!」

イリヤ「このまま捻れば、天国へ行けるよ?」

天国?

そりゃ結構

だがな――――











士郎「ふうんぬ!」

イリヤ「あ、こら しゃべるな」

699: 2016/01/29(金) 20:46:53.57 ID:t/LPX0VlO
セラ「首だけの力で一人スープレックス!?」

リズ「強いレスラーは、くびがつよい」

ッダァアアアアアン!

士郎「グウウッ!」

何とか脱出できた

いきなり首の骨を狙うなんて、恐ろしい子だ

何とか体勢を立て直して――

士郎「あ、あれ」

イリヤが、いない

セイバー「シロウ! 上、上です」

上?








イリヤ「ウルトライリヤードロップ!!」





バキャァアアアアアッッ!!

703: 2016/01/29(金) 21:14:42.20 ID:t/LPX0VlO
タイガーマスク時代の三沢光晴も使った背面を用いた当て技

士郎の後頭部にクリーンヒットし、その脳髄を揺らす

士郎「ぐあ、が」

セイバー「シロウーッ!」

セラ「これはきつい!」

リズ「直撃」

きついなんてものじゃない

これ以上は、まずい!

イリヤ「まだ終わらないよ」

イリヤ「ふん!」


バキッ



士郎「ごあっ!」

イリヤの強烈な前蹴りが俺を空中高くあげる


バッ


イリヤ「とっておきだよ」







イリヤ「アルプス・イリヤー・ブリーカー!!」









ガギッ!


士郎「が、あ」

706: 2016/01/29(金) 21:41:41.52 ID:t/LPX0VlO
空中からの加速度を利用し、アルゼンチン式背骨折りで止めをさす

雪を頂いた厳しく美しいアルプスの如き必殺技

士郎「があああ……!」

背骨が

背骨が折れ

セイバー「助太刀のドロップキーック!!」

バキッ

イリヤ「うあっ!」

セイバー「乱入、反則はカウント5まで大丈夫です!」

セイバー「シロウ! タッチを!」

707: 2016/01/29(金) 21:44:27.20 ID:t/LPX0VlO
士郎「う、ぐうう」

再びリングの外へ出たセイバーの手をつかもうと伸ばす

しかし

バーサーカー「グルル……!」

セラ「ここでジャイアントのとうじょうだぁああ!」

リズ「これはまずい」


710: 2016/02/02(火) 20:42:19.01 ID:a7aD1BUtO
バーサーカー「■■■!!」アッポ

メッシャアア!

セイバー「へプッ!」

メシゴキャッ

バーサーカーの巨体から繰り出された片足蹴りがセイバーの細身に直撃する

セラ「十六文キックか!?」

リズ「いや、これは」




   英霊エグゾセミサイル!!




故 ジャイアント馬場氏が生み出した正面蹴り
十六文キックを更に巨体のレスラーであるアンドレ・ザ・ジャイアントが繰り出した際、実況の古舘伊知郎が形容したビッグブーツキック

イリヤ「バーサーカー! こっち!」

バーサーカー「■■■」

ブンッ

ブンッ!

ブンッ!!

ブンッ!!!

イリヤの声に答えるかのように、セイバーの両足を掴んでぶんまわす



ジャイアントスイングからの――――



バーサーカー「■■■!!」

ビョオオッ!

セイバー「」シロメ


ブオン!!


旋風と化したセイバーを、イリヤに向け投げ飛ばす!


イリヤ「これで沈みなさい!」

イリヤ「必殺!」


ガシイッ

グオオッ!


711: 2016/02/02(火) 20:43:18.60 ID:a7aD1BUtO





    

    イリヤ「イリヤーV!!!」









712: 2016/02/02(火) 20:48:34.58 ID:a7aD1BUtO
ゴッシャアアアア!!

セラ「決ィまったぁああああああ!!」

リズ「イリヤの必殺技」

相手の突進とリングロープを利用したスープレックス

その威力は、かつて暴走し突進してきたバーサーカーをも黙らせた

ホムンクルスの穴の数多の戦闘ホムンクルスを葬った殺人技

士郎「セ、セイバー」








セイバー




撃沈

713: 2016/02/02(火) 21:02:50.29 ID:a7aD1BUtO
イリヤ「さーて、次はシロウの番だよ」

イリヤ「徹底的にいたぶってやるんだから」

白い悪魔がこちらに近づく

どうやら自分の手で始末しなければ気が済まないらしい


士郎「クッソォオオオ!」

ババッ

士郎「スクリュースピンスライディング!」

ギュオオオオオッ!

イリヤ「ムダだよ」

ギュオオオオオッ!

士郎「な……!?」










イリヤ「スクリュースピンスライディング!」


714: 2016/02/02(火) 21:07:19.40 ID:a7aD1BUtO
賢明な読者諸君ならお分かり頂けるであろうが、スクリュースピンスライディング同士の激突とは、言わばコマとコマのぶつかり合い

すなわち後から出した方のコマのほうが有利なのである

誰がなんと言おうと有利なのである

バシュゴオオ!

士郎「ぐ、ぐあああああああ!」

当然、弾き出されるのは衛宮士郎




イリヤ「その技は前食らったからね」

イリヤ「一度見た技は私には通用しないよ」

715: 2016/02/02(火) 21:12:27.54 ID:a7aD1BUtO
士郎「が、あがが」

ま、まずい

このままじゃ本当に殺される

こうなったら……!

士郎「魔術を使わざるをえない……!」










――――じいさん、俺に力を貸してくれ!

717: 2016/02/02(火) 21:22:21.09 ID:a7aD1BUtO
士郎「はぁああああ……!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

イリヤ「む……!」

士郎の周囲を恐るべき闘志が包む

今までにない感覚に思わずイリヤも動きを止める

士郎「投影、開始(トレース・オン)!」

ようやく聖杯戦争においてまともに魔術を行使した士郎

それは亡き父である切嗣が禁術として戒めた奥の手




創造の理念を鑑定し

基本となる骨子を想定し

構成された材質を複製し

製作に及ぶ技術を模倣し

成長に至る経験に共感し

蓄積された年月を再現する




士郎(生半可な刀剣じゃダメだ! イリヤに、バーサーカーに届きうる剣を!)

士郎「そう、アイツが使ったような――――!」






脳裏に浮かんだのは、赤い騎士の使った夫婦剣

718: 2016/02/02(火) 21:25:53.22 ID:a7aD1BUtO
士郎「で、出来たぁっ!」

黒い中華剣

アーチャーの使用したモノの片割れが、士郎の左手に握られていた






セラ「衛宮士郎 ここで凶器使用だ~!」

リズ「実はヒールだった」

719: 2016/02/02(火) 21:37:59.68 ID:a7aD1BUtO
イリヤ「へぇ、シロウってかわった魔術を使うのね」

イリヤ「でも、そんななまくら出しても意味ないんじゃないの?」

士郎「やってみなきゃわからないさ」

イリヤ「やっても無理よ」

イリヤ「いい加減わかりなさい!」

士郎「できるさ……!」

そう、あの頃の自分と今の自分は違う!

何よりできると思う自信が、魂が奇跡を呼ぶんだ!

士郎「イリヤ! 行使したこれは親父が使った技だ!」

イリヤ「!?」

士郎「親父の、衛宮切嗣の魂を受けとれ! イリヤ!」



ズサァッ




大魔術ボール(凶器)1号!!




720: 2016/02/02(火) 21:43:06.22 ID:a7aD1BUtO
ギュオオオオオッ!

士郎の投げた剣がイリヤ目掛けて襲いかかる

イリヤ「!」

(この剣、軌道が読めな――――)


ガカッ!



イリヤ「あっ……!」






気がついた時には、イリヤの白い細腕に剣が突き刺さっていた







士郎「イリヤ……済まない……!」

721: 2016/02/02(火) 21:51:25.05 ID:a7aD1BUtO
イリヤは少しの間、腕に突き刺さった剣を茫然と見ていた

イリヤ「……くくっ」

士郎「……?」

突然笑いだす少女に困惑の表情を見せる

腕を怪我したのに何故?

イリヤ「そっか、これがキリツグの技か」

ガシ

ズルリ

士郎「う……!」

空いた左手で何ともないかの如く剣を引き抜く

まるで楽しそうに、そしていたぶるような笑顔を士郎に向けた

――ペ口リ







イリヤ「決めた」

イリヤ「ばらばらにしてあげる」

722: 2016/02/02(火) 22:02:15.34 ID:a7aD1BUtO
バキリ

イリヤの手の内で中華剣がくだけ散る

ついに本気を出し、士郎を言葉通りばらばらにするつもりだろう

士郎「望むところだ……!」






――――投影、開始




バチッ


士郎「ぐ、う」

流石に連続の行使はつらい

背中に熱い鉄串を入れたような痛みが走る

それでも何とか再び剣を投影し、イリヤに相対する

士郎「こい……!」


勝負!!

723: 2016/02/02(火) 22:12:45.61 ID:a7aD1BUtO

 
        Fixierung,EileSalve――――!


瞬間、聞き慣れた怒声が響き渡った


イリヤ「!」

士郎「へ!?」


ズワオォオオオ!




 


 「こぉおおおおおむぅううううううすぅううううううめぇええええ!!!!!」










凛「もう、絶対に許さないわよおおおおおおああああああ!!!」










あかいあくま、降臨







セラ「乱入だー!」


リズ「冬木の悪魔」




セラリズ「「トーサカ・ジェット・リン!!」」






凛「誰がインドの狂虎だー!」



732: 2016/02/05(金) 14:24:02.87 ID:XsqCNy0yO
凛「Funf、,Drei、,Vier……!
 Der Riese、 und brennt、 das ein Ende――――!」

宝石魔術の嵐がイリヤに襲いかかる

キャスター戦でも使わなかった切り札中の切り札

イリヤ「ちっ……!」

バオッ!

ズゴアッ!

移動範囲の限られたリング上では行動が限定される

次々と場が破壊される

たまらずリング外へ飛び出るが――――!


凛「逃がすか小娘ぇぁあああああ!」


まるで黒豹のごときしなやかな動きで一気に距離を詰める

凛「stark────Gros zwei!」

ミシリ
バキ
バキ

筋肉の鳴る嫌な音が聞こえる

魔術刻印を露にし、全身を強化する

凛「崩  拳!」

メシゴキャッ

イリヤ「かふっ」

大地を震脚で踏みしめ、渾身の一撃をイリヤに叩き込む

余りの衝撃に思わず息を吐き出すイリヤ

凛「まだまだぁ!」


遠坂式八極拳


――――絶招



崩拳!

バゴォッ!

鉄山靠!!

バキャァアアッ!



凛「とぉどめえええええええ!!」





――――白虎双掌打!!!




ズンッ!!!

瞬間、凛とイリヤを中心に気炎が爆発する!





――――崩 撃 雲 身 双 虎掌 ! ! ! !

733: 2016/02/05(金) 14:28:17.74 ID:XsqCNy0yO
凛「弾けろっ! neun! 」

ドッギャァアアアアアン!!

イリヤ「うぐぁああああああああ!!」


絶招

中国拳法における奥義を意味する

だめ押しの宝石魔術が炸裂し、きりもみ回転しながら猛スピードで吹き飛んだ










士郎「なに、あれ」ガタガタ

734: 2016/02/05(金) 14:41:09.35 ID:XsqCNy0yO
凛「うらー! とっとと立てイリヤスフィール!」

凛「立たないなら遠慮なく行くわよぉおおおおあああああ!!」

              
Fixierung,EileSalve――――!


ドガガッガッガガガガガガ!!!

嵐のようなガンドが倒れ伏すイリヤに襲いかかる

しかし

バーサーカー「■■■!!」

主を守らんと、巨人が身を挺して立ちはだかる!










アーチャー「私を忘れてはいないかな?」





――――赤 原 猟 犬 ! !








735: 2016/02/05(金) 14:49:18.90 ID:XsqCNy0yO
バオッ!

音をぶっち切った証拠である衝撃音が木霊し、バーサーカーの頭部を吹き飛ばす

アーチャーの本来の戦法である超遠距離からのサポートである

ズガガガガガッガッガガガガガ!!!

遮るものがなくなり、一斉射撃がイリヤに直撃する

士郎「イ、イリヤ……」








凛「あースッキリした」キラキラ

736: 2016/02/05(金) 14:56:05.88 ID:XsqCNy0yO

――――驚いたわよ、リン

凛「!!?」

――――まさか、あなたにこんな底力があったなんてね


士郎「ま、まさか」






イリヤ「でも、チョーーーッとだけ届かなかったみたいね」



イリヤの周りには、半透明の鳥のようなモノが浮いていた

恐らくあれでガンドを防いだのだろう


イリヤ「私に魔術を使わせるなんて大したモノよ」

イリヤ「これは褒美よ」

ズオッ

イリヤの顔に魔術刻印が浮かぶ

凛「ヤバイ……!」











イリヤ「狂いなさい、バーサーカー」

737: 2016/02/05(金) 15:05:51.90 ID:XsqCNy0yO
その時、天が、地が、揺れた



バーサーカー「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」



士郎「遠坂ッ! 逃げ―――――!」


イリヤ「殺っちゃえバーサーカー!!」


バーサーカー「■■■■■■■■!!!」


ダブルラリアート!!






メシゴキャッバキバキ






凛「タイプッ!」

士郎「ムンッ!」






フライングボディプレス!!!


メシャップチ


士郎「キノコッ!」

凛「こうべっ!」

738: 2016/02/05(金) 15:10:30.80 ID:XsqCNy0yO
強い

強すぎる

バーサーカーの巨体から繰り出される殺人技の数々が俺たちを破壊していく

こんなの

まともに、敵うわけ

凛「ぐ、ああああああああああ!」

ミシミシミシ

士郎「と、遠坂ァ!!」

遠坂がバーサーカーの腕に捕まった

あのままじゃ磨り潰されちまう!


739: 2016/02/05(金) 15:17:40.61 ID:XsqCNy0yO
士郎「くっそ、だったら……!」

感覚を研ぎ澄まし、もう一度あれを造る――――!


――――投影、開始!



士郎「う、おおおおおおおおお!!」


今度は両手に完全な夫婦剣が現れる

士郎「デカブツめ! 遠坂を放――――」

バーサーカー「」ブンッ

バゴシャッ

士郎「ボリショイ!!」

だ、ダメだ、片手間であしらわれちまう

740: 2016/02/05(金) 15:36:01.12 ID:XsqCNy0yO
イリヤ「リンは頑張ったからね」

イリヤ「お礼にじっくり絞め頃してやりなさい」

凛「あ、ああああ……!!」

ギリギリギリギリ

不味い

遠坂の顔色が土気色を帯びてきた

だけど、もう俺にはどうすることも――――





――――諦めるのか?




士郎「……!」

脳裏にアーチャーの声が聞こえた気がする




――――どんな者にも弱所は存在する

――――足りない頭を使ってよーく考えろ

――――少なくとも、今の貴様なら思い付く筈だ





弱所?



あの圧倒的なバーサーカーに?





そんな事言われても、急に分かるわけ




凛「ああああああああああ!!」




士郎「……!!」


違う

そんな弱気を言ってる場合じゃない

この場で遠坂を救える手を持ってるのは、俺だけなんだ

考えろ、バーサーカーの隙を

一瞬だけでいい

アイツから遠坂を救いだす隙を!

741: 2016/02/05(金) 15:48:45.05 ID:XsqCNy0yO
――――いいか、士郎よ、自分より大きい者を倒す時は――――

士郎「!!!」



投影、開始!!!



イリヤ「またその剣?」

イリヤ「いい加減ワンパターンじゃ――――」




士郎「うぉおおおおおおおおおお!!」



ブォン!






イリヤ「!?」


士郎が夫婦剣を予想外の方向へ投げた

いや、正確にはバーサーカーの足下へ――――


士郎(頼む、成功しろ!!)


――――創造の反対が破壊なら――――


――――あいつにできて、俺に出来ない筈がない!!!――――








バゴンッ!!

742: 2016/02/05(金) 15:50:46.67 ID:XsqCNy0yO





      アーチャー「………………」


         ――――ニヤリ








743: 2016/02/05(金) 15:53:10.57 ID:XsqCNy0yO
バーサーカーの足下に投げられた夫婦剣が

爆発した

バーサーカー「グオ……」

よろっ


イリヤ「あっ……!」







士郎「今だぁああああああああああ! ! !」








ガシイッ!

744: 2016/02/05(金) 15:57:05.97 ID:XsqCNy0yO
士郎「ぬぅあああああああああああ!!!」

ぐ、ぐぐぐぐ……!


イリヤ「う、うそ」


イリヤ「バーサーカーが、浮いた……!?」


衛宮士郎、人生最大のバカ力

今まで鍛えぬいた筋力を総動員し、目前の英雄山脈を持ち上げる!




そして――――!







745: 2016/02/05(金) 15:58:40.37 ID:XsqCNy0yO




      




      士郎「必 殺!!」


     士郎「衛宮バスター!!!」









746: 2016/02/05(金) 16:00:53.58 ID:XsqCNy0yO

――ズドォオオオオオオオオオオン! ! !




渾身の垂直落下式ブレーンバスター!!




更に――――!





士郎「ああああああああああ! ! !」

747: 2016/02/05(金) 16:01:59.08 ID:XsqCNy0yO




    



    士郎「衛宮落とし! ! !」











748: 2016/02/05(金) 16:06:47.72 ID:XsqCNy0yO
ズドォオオオオオオオオオオン!!!




アルゼンチンバックブリーカー 首極め 足極め!!!



どちらも絶命必至の大技!

更にバーサーカーの巨体による体重が技の威力を底上げする!!!



バーサーカー「■■■■■■■!!??」


当のバーサーカーも余りの衝撃に困惑している

当然である

彼は生前、誰かに持ち上げられたことなど無かったのだから


749: 2016/02/05(金) 16:13:35.77 ID:XsqCNy0yO
士郎「ぶ、ぶは、は」

やった

やったぞ、俺は

ここ最近の成長には自分でも驚かされるが

まさかサーヴァントを持ち上げるなんてな

これも、日頃の訓練のお陰か――――

凛「う……」

遠坂

良かった

バーサーカーから抜け出せたか

だったらあとは……!

ガシイッ

士郎「逃げるのみ……!」

遠坂を背負い、全力で逃走する!

750: 2016/02/05(金) 16:17:38.27 ID:XsqCNy0yO
イリヤ「逃げる!? つまらない真似を!」

イリヤ「バーサーカー! 逃がさないで!」

イリヤ「ひねり潰しなさい!」

バーサーカー「■■■■■!!!」





――――いえ、ひねり潰されるのは貴方の方です






イリヤ「え……」





751: 2016/02/05(金) 16:20:41.78 ID:XsqCNy0yO





セイバー「シロウ、リン。よくぞ持ちこたえました」

セイバー「今度は私の番です!!」


セイバーが両手に輝く剣を構える

星々の光を集めたその剣は――――!!






752: 2016/02/05(金) 16:22:20.56 ID:XsqCNy0yO






      約束された勝利の剣

     ――エクスカリバー!!――







753: 2016/02/05(金) 16:31:10.92 ID:XsqCNy0yO
セイバーが必殺の宝具を開放する!

流星のごとき衝撃はバーサーカーを飲み込み、辺りを光で満たした








士郎「これが、セイバーの必殺技」

――――なんて綺麗なんだろう

セイバー「う……」

セイバー(魔力が足りない。やはりシロウではパスも録に通ってないためか)

セイバー(これでは大エクスカリバーは……)






「■■■■■■■■■■!!!」






セイバー「な……!?」




士郎「う、嘘だろ!?」

754: 2016/02/05(金) 16:36:53.89 ID:XsqCNy0yO
幾ら全力でないとは言え、エクスカリバーを喰らって無事でいられる筈がない

なのに

イリヤ「流石に、今のは焦ったわ」

イリヤ「でもね、私のバーサーカーはエクスカリバー対策はバッチリなのよ」

イリヤ「天のギプスの試練を乗り越えたヘラクレスは、自らの限界を超越した!」

イリヤ「エクスカリバーではバーサーカーを頃しきることは出来ないわ!」

755: 2016/02/05(金) 20:52:05.19 ID:lbsHpBKbO

――――十二の試練改
  (ゴッドハンド・プラス)

神の試練というある種の限界を越えた、ヘラクレスの新たなる伝説への対価

神を律するギプスさえ破壊したその強靭な肉体と魂は、己の精神力によって最後の一瞬まで消えない命の炎となる

――――最早、十二の命などという話ではない


イリヤ「それに、一度受けた技はもうバーサーカーには通用しないよ」

イリヤ「あなたたちの勝利の目は、消えてなくなった!」

これが、バーサーカー

これが、最強のサーヴァント

まさに圧倒的

イリヤの言う通り、俺たちが勝てる可能性はもう

ドサ

士郎「セイバー!?」

セイバー「う、あ……」

急に倒れたセイバー

俺の目からも分かるほどに衰弱している

まさか

士郎「魔力の枯渇」

イリヤ「みたいね。まぁ、シロウみたいなヘッポコマスターじゃしょうがないかもね」

イリヤ「少々拍子抜けだけど、けっこう楽しめたわ」

イリヤ「バイバイ、シロウ」

いつの間にか目の前にいたイリヤが拳を振るう

避けきれない。首を叩き折るつもりか

こんな、こんな所で、終わるなんて

セイバー、遠坂

――――すまない






アーチャー「ま、半人前にしてはよく頑張ったと言った所か」

ガッ

イリヤ「!!」


士郎「あ……!」


イリヤの放った拳は、目の前に現れた弓兵によって阻まれた

アーチャー「マスターとセイバーを連れて逃げろ」

アーチャー「お前には、まだ使い道がある」


756: 2016/02/05(金) 21:05:05.74 ID:lbsHpBKbO
凛「……もう、そうするしかないみたいね」

士郎「遠坂! 気を失ってたんじゃ」

凛「氏んだふりってのも、なかなか面白かったわよ」

気を失うふりをしながら、軽い治癒と宝石のチャージを行っていたらしい

その手には輝く宝石が握られていた

凛「アーチャー、殿を頼むわよ」

凛「出来る限り時間を稼いで」

アーチャー「了解した。マスター」

士郎「と、遠坂!?」

凛「士郎、貴方は黙ってて」

凛「貴方はセイバーに集中してなさい」

757: 2016/02/05(金) 21:13:11.86 ID:lbsHpBKbO
凛とアーチャーの目が合う

とうとう慣れなかった、灰色の視線

アーチャー「どうした?」

凛「なんでもない」

それでも、少しの間だったが、二人の仲は悪いものではなく、戦闘の際の息も合っていた

遠坂凛にとって、間違いなく当たりのサーヴァントだっただろう

凛「アーチャー、負けんじゃないわよ」

――――貴方は、この私のサーヴァントなんだから

礼呪を使用し、二人の間に誓いを

アーチャー「……ああ、分かってるさ」

758: 2016/02/05(金) 21:33:06.92 ID:lbsHpBKbO
イリヤ「何? まだ諦めないつもり?」

イリヤ「それならこっちも徹底的に殺るまでよ!」

イリヤ「バーサーカー!! こいつを頃しなさい!!」

イリヤの命令と共に、バーサーカーが殺到する

大きく跳躍し距離をとったアーチャーは残る三人を気にしつつ話し続ける

アーチャー「衛宮士郎」

アーチャー「私からの最後のレクチャーだ」

士郎「アーチャー?」




――我が骨子は捻れ狂う

――偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

手に現れるのは捻れた剣

アーチャー「お前の未来は、破滅だ」

アーチャー「そして私が願い、果たせなかった夢だ」



――――2号

ズサァッ

大きく右足を上げ、砂埃がアーチャーの周囲を眩ます

アーチャー「お前は、手を放すな」

アーチャー「一度掴んだ手は、最後まで責任を持って掴み続けろ」


――――そうすれば、お前はたどり着く

――――あの満天の星空の星座に




ビュン!!

759: 2016/02/05(金) 21:40:05.39 ID:lbsHpBKbO
イリヤ「そんな攻撃!」

イリヤ「バーサーカー! 打ち落としなさい!」

バーサーカー「■■■!!」

アーチャーの投げた剣を叩き落とすべく、斧剣を手にし振りかぶるバーサーカー

誰もが砕け散る螺旋剣を想像した

しかしその時!




――ヒュイィン



バーサーカー「!?!?!?」


イリヤ「え、あ!?」







剣が、掻き消えた

760: 2016/02/05(金) 21:47:45.77 ID:lbsHpBKbO
――――ザクッ!

バーサーカー「――――――」

アーチャー「私から言うことはこれだけだ」

バゴンッ!

アーチャー「後は自分で見つけるんだな」



消えた剣は、バーサーカーの頭に突き刺さっていた

そしてやはりその剣も爆発し、バーサーカーの命を一つ奪う

士郎「アーチャー……」

お前は

お前は、一体

凛「士郎! 行くわよ!」

遠坂が手を引っ張る

確かに今を除いて逃げるチャンスはない

だけど

アーチャー「お互い、生きていたらまた会おう」

アーチャー「その時は、ロボット同士でパーティーだ」

764: 2016/02/06(土) 14:33:54.62 ID:2/f0i1RfO
今から40年以上も前

マウンドの魔術師と言われた一人の男が球界を去った

彼が産み出した数々の球種はそれまでの常識を打ち破る全く新しいモノだった

それらの球種を当時の科学で解明した結果、一応の科学的説明は可能とされた

しかし

それでも、それを人間が投げる事が可能なのか

それは現在でもスポーツ科学の悩みの種となっている












だが、表の技術である科学で投げられずとも

裏の技術。正真正銘の魔術であったなら、どうであろうか











765: 2016/02/06(土) 14:35:00.83 ID:2/f0i1RfO





――――そう、なんて事はない


――――マウンドの魔術師は、正真正銘の魔術師だったのだ








766: 2016/02/06(土) 14:44:55.33 ID:2/f0i1RfO
アーチャー「少なくとも、本人たちに自覚は無かった」

アーチャー「天然の魔術師。そうしたのは呆れ果てるほどの努力」

アーチャー「そして絶望に打ち勝つド根性が、奇跡を産み出した」

アーチャー「人間の可能性とは、不可能の壁に立ち向かう魂そのものだったのだ」

アーチャー「……父が目を着けるのも、当然といえる」

アーチャー「筋肉に絡んだ魔術回路に多大な負荷を与えるこれ等の投球は、通常の回路と筋力を持つ魔術師ではまず行使することは出来ない」

アーチャー「このギプスは、全てはその為のモノ」










――――衛宮の家は、受け継いだのだ






――――不氏鳥の魔球を、あの輝く星の一族の力を

767: 2016/02/06(土) 14:58:12.01 ID:2/f0i1RfO
だが、これを身に付ける代償は

余りにも大きかった

たった一つの勝利の為に

全てを投げ捨てる覚悟が必要だった

私が全てを修める頃には




「勝利」




それ以外の言葉に意味など無かった

破滅

そう、破滅だ

これを投げる者は、身も心も破滅しなければならないのだ

しかし、心は破滅しても

今尚無様にあがき続ける自分に













真の破滅は、訪れなかった




















769: 2016/02/06(土) 19:46:54.91 ID:2/f0i1RfO
イリヤ「アーチャー一体だけでバーサーカーを止められると思うの?」

イリヤ「とんだ愚か者ね。身の程を知りなさい」

アーチャー「……そうやって罵られるのも、随分と久しい」

イリヤ「?」

アーチャー「私は、手を放してしまった」

アーチャー「数多ある世界で、私だけが」


――――今の奴なら、もう大丈夫だろう


――――この世界での俺の役目は、終わった


アーチャー「後は最後の仕上げだ」

アーチャー「精々足掻くとしよう」










――――I am the bone of my sword


Steel is my body, and fire is my blood


アーチャーが詠みあげた詠唱は、夜の空を赤く照らす

炎が走り、風景が書き換えられる

本来の筋書きならば、荒野を埋め尽くす剣の丘が現れただろう

しかし、この世界のアーチャー

いや、エミヤシロウだった者の心象は

770: 2016/02/06(土) 19:55:11.50 ID:2/f0i1RfO






――――Unlimited Blade Works
    無限の剣製

――――Special Edition
   我が魂の氏に場所






マウンドの魔術師が最後に踏んだ




中日球場

772: 2016/02/06(土) 20:06:55.84 ID:2/f0i1RfO
イリヤ「これは……」

固有結界

でも、こんなモノは

アーチャー「このマウンドを踏む者にとって、打たれるという事は敗北に等しい」

アーチャー「そして、敗北は氏を意味する」

それだけの価値があった

あの頃の球場には

アーチャー「私がたどり着いた境地には、人の営みは欠かせぬモノだった」

アーチャー「我が身が滅びる少し前に気付いたのだ。遅すぎたがな」

アーチャー「そして、心象に変化が生まれ、このように成った」

アーチャー「ずっと、一人で戦っていたと、勘違いをしていた」

アーチャー「その思い上がりのせいで、破滅する事を許されなかった」

――――私の役目は、全ての自分を、破滅に導く事

完全な破滅こそが、衛宮士郎にとっての救いなのだ




773: 2016/02/06(土) 20:20:06.74 ID:2/f0i1RfO
イリヤ「さっきから何を……!」

アーチャー「もう、この世界の時計は動き出した」

アーチャー「君は救われる。いや、君だけじゃない」

アーチャー「桜も、藤ねぇも。かつて俺が捨て去った全ての人たちが」





衛宮士郎という生け贄によって救われる







アーチャー「いくぞ、バーサーカー」

アーチャー「プレイボール(戦闘開始)だ」


1号

2号

3号


贋作の宝剣達が、様々な軌道でバーサーカーに襲いかかる

バーサーカーは打ち返せない

掠りもしない

次々と削られる命

しかし、ただで倒れるバーサーカーではない

時にアーチャーに迫り、斧剣を持ってアーチャーの肉体を削る

最早どちらが勝つか誰にもわからない

774: 2016/02/06(土) 20:46:32.33 ID:2/f0i1RfO

 廃墟

凛「来るときにアーチャーが見つけてあったの」

凛「ここならちょうどいいでしょ」

ベッドにセイバーを寝かせて、これからの対策を練る

もう、あまり時間がない

凛「あのバーサーカーに対抗する手段はたった一つ」

凛「エクスカリバーの上位互換」



――――大エクスカリバー!



士郎「大エクスカリバー……」

衛宮切嗣とセイバーが十年前に造り上げた、最大最強の技

しかし


士郎「俺の魔力じゃ、セイバーが放つ事は」

凛「まず不可能よ」

凛「でも、完全に無理って訳でもないわ」

士郎「本当か!?」

士郎「遠坂、教えてくれ! 俺に出来ることならなんでもする!」

凛「……」

士郎「遠坂?」

凛「士郎、あんた今、なんでもするって言ったわね?」

775: 2016/02/06(土) 20:52:06.06 ID:2/f0i1RfO
士郎「へ?」

遠坂の顔が赤い

なんだろう、なんだかイヤな予感が

凛「……しなさい」

士郎「え、な、何?」

凛「士郎、セイバーとエOチしなさい」

……

………………

………………………………







士郎「はい?」

777: 2016/02/06(土) 21:07:33.37 ID:2/f0i1RfO
遠坂が言うには、血液や精液には純粋な魔力が多く含まれてるらしい

輸血の器具がない以上、どう考えてもこれしかないらしいって

待て

ちょっと待て

俺、浮気はしないって言ったばかりで

藤ねぇ一筋って言って、まだ三日も経ってない

凛「そんなどーでもいいプライド捨てなさい!」

士郎「遠坂! 幾らなんでもそりゃあ無いぞ!」

士郎「セイバーもなんか言って――――」

セイバー「シロウ………」

セイバー「あなたにだったら、私は構いません……」

何故頬を染める!

一瞬ドキッとしたぞ!

凛「私も手伝うから、ちゃちゃっと済ませるわよ!」






なんだろう

今を生き残っても














藤ねぇに殺される

778: 2016/02/06(土) 21:19:00.29 ID:2/f0i1RfO
士郎「その、セイバー。失礼な事聞くけど」

士郎「経験って、あるか?」

セイバー「私は出す方ならあります」

出す!?

出すって何を!?

セイバー「受け入れるのは、あなたがはじめてです……」

セイバー「こんな形で、あなたと閨を共にするとは、思いもしませんでした」

セイバー「あなたとは、ずっと、良き友であり続けると思っていたのでしたが」

セイバー「何故だかよからぬ事をしているような、背徳の空気が……」

益々顔を紅潮させるセイバー

目がとろんとなってる

かわいい







――――ごめん、藤ねぇ







俺、セイバーを抱くよ

780: 2016/02/06(土) 21:33:00.89 ID:2/f0i1RfO
士郎「じゃあ、セイバー、始めるぞ」

セイバー「シロウ、で、できれば、やさしくおねがいします」


 5分後

士郎「せ、セイバー!! また……!」

セイバー「ひぃいいいいああああっ!」

セイバー「こんな……! こんなの……! 凄すぎ……!」



 10分後

セイバー「あーーーっ! あーーーっ!」

セイバー「ひゅご、ひゅごいぃいい!」

士郎「うっ うっ」

セイバー「も、もっとぉ! もっとしてくださいぃい!」


 20分後

セイバー「ひゃうぅうううう!」

ビクビクッ

セイバー「か、からだがぁ!」

セイバー「まりょくが、あふれてっ!」

セイバー「ああああああああああ!」







セイバーの体は、驚くほど生気に満ちていたが

藤ねぇに散々鍛えられた俺にはちょうど良かった

というより藤ねぇがやばすぎるのだ

ある意味俺は不幸なのかもしれない

藤ねぇの体じゃなきゃ、満足出来ないようにされちまったらしい

783: 2016/02/09(火) 05:07:57.94 ID:IV+CzjsUO
士郎「ふぅ」キラキラ

セイバー「」グッチョリ

30分後

そこには良い顔をした筋肉質の少年と、それに寄り添い白目で気絶してる金髪の美少女の姿が

凛(全く付け入る隙が無かった)

凛(っていうか、何? 何でコイツこんなに慣れてるの?)

ツー

凛(は、鼻血が……!)

例えるなら、清純な女子中学生に無修正のAVを見せたようなえげつなさ

特にセイバーが気を失ってからも犯しまくる士郎にはある種の恐怖すら抱いた

士郎「遠坂」

凛「ひ」

思わず情けない声が出る

目の前の少年が、なんだか急激に大きく見える




――――一瞬、自分が犯される姿を想像した


784: 2016/02/09(火) 05:16:22.67 ID:IV+CzjsUO
士郎「遠坂、セイバーに魔力は戻ったか?」

凛「あ、あああ! そう、そうね! うん! ダイジョブ!」

凛「早くセイバーを起こしなさい! アーチャーを助けに行くわよ!」カオマッカ

凛の礼呪はまだ消えていなかった

きっとまだアーチャーは一人でがんばっているんだ

きっとこれが、最後のチャンス

逃すわけにはいかない!

士郎「よし、アーチャーの所に行こう」

士郎「セイバー! 起きろ!」ユサユサ

セイバー「あひゅ、も、もっとぉ……」

セイバー「もっとおかして……」

凛「いつまで寝惚けてんだぁあああああああ!」ギャース


785: 2016/02/09(火) 05:39:29.54 ID:IV+CzjsUO
アーチャー「はぁ、はぁ」

バーサーカー「■■■■■■!!」

ブォン!

アーチャー「ぐっ!」

迫り来る斧剣をなんとかギリギリで避ける

既に長時間の戦闘により身体中が切り裂かれ、時に叩きつけられ、文字どおり満身創痍

通用する宝剣もほとんど残ってない

イリヤ「バーサーカー! 何時まで遊んでるの!」

イリヤ「早くそんな奴潰しなさい!」

バーサーカー「■■■■■■■■■■!!」

ついに痺れを切らしたイリヤがバーサーカーをしかりつける

一つ一つの言葉がまるで令呪のように働き、バーサーカーの動きをより激しくする

ヒュルルル

イリヤ「! また!」

いつの間にかゆっくりと迫る剣

バーサーカーの豪腕でも掠りすらしないその投擲は、屈辱だが避けるしか無かった

しかし

バゴンッ!

イリヤ「くっ!」

避けた先で急に爆発に襲われる

見えない剣の爆発がバーサーカーの身体を揺らす

ズガン!

バーサーカーの握った斧剣の柄の先端部分に剣が突き刺さり、またもや爆発する

思わず斧剣を手放すバーサーカー

士郎よりも遥かに洗練された、神の制球秘術

3種の魔球を完璧に使いこなし、バーサーカーを翻弄する



786: 2016/02/09(火) 06:43:12.15 ID:IV+CzjsUO
しかし、一度仕留めた技ではバーサーカーは止まらない

一つ、また一つと決定打が潰されて行く

アーチャー「ごふっ……!」

とうとう腹部に強烈な一撃を貰う

血を吐き出し、空中を舞い、壁に激突する

イリヤ「とうとう仕留めた」

イリヤ「ほんと、しぶといんだから」

私たちに勝てるわけ――――







アーチャー「ぐ、ううぅう……!」









イリヤ「え……」







赤の弓兵は倒れてなどいなかった

787: 2016/02/09(火) 06:52:16.62 ID:IV+CzjsUO
口から、全身から血を吹き出し

それでも倒れない

折れない

イリヤ「なに、なによ」

イリヤ「何で氏なないのよ!」

アーチャー「……」

うつむいたアーチャーは何も言わない

白髪は血によって染まり、垂れ下がっている

荒れた呼吸が段々と落ち着きを取り戻す





――――不意に、顔を上げた








アーチャー「――――――――」













イリヤ「ひぃっ!」











まるで幽鬼のような、生気の抜けた顔








しかしそれでも失われない


瞳に宿る、ゆらゆらと燃え盛る炎


788: 2016/02/09(火) 06:58:53.45 ID:IV+CzjsUO
違う

違う

コイツは英雄なんかじゃない

英雄はこんな泥臭いまでのおぞましさは持ち得ない

どんなに反英霊と呼ばれても、ここまでの空気は

人間だ

自分が相手にしてるのは

どこまでもおぞましく、諦めることを知らない人間だ

そう、かつての修行中の自分や













――――あの赤毛の少年のような――――















イリヤ「…………シロウ?」

789: 2016/02/09(火) 07:14:07.87 ID:IV+CzjsUO
アーチャー「……!」



一瞬、驚愕の顔をあげる

しかし、すぐに何処か悲しげな顔に戻り、イリヤたちに向かって歩を進める

イリヤ「私は、何を」

ほんの一瞬、あのアーチャーと衛宮士郎の姿が重なった

聖杯戦争の初日の夜

切嗣を信じると叫んだ時の、あの少年に

どんなにズタボロにされようとも立ち上がった、あの衛宮士郎に

イリヤ「……頃しなさい、バーサーカー」

イリヤ「今度こそ、本当に」

令呪が光り、バーサーカーを更に強大にする

負けられない

衛宮士郎

アイツにだけには

目の前のアーチャーが衛宮士郎と同じ空気を纏うと言うならば







――それすらも、無慈悲に叩き潰すのみ




790: 2016/02/09(火) 07:23:07.30 ID:IV+CzjsUO
「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

これまでに無い烈昂の雄叫びと共に、アーチャーに進撃する

アーチャーは逃げない

退こうともしない

自分を粉砕するバーサーカーの一撃を

最後の瞬間まで、睨みつけていた











「「「スクリュースピンスライディング!!!」」」








そして、その諦めぬ魂が、ついに実を結ぶ

793: 2016/02/09(火) 14:02:36.65 ID:og50aBXqO
始めに目に飛び込んだのは、今にも叩き潰されそうなアーチャーの姿

言うなれば九回裏二氏満塁の際にピッチャーゴロを打ってしまったような状況

走っても跳んでも絶対に間に合わない

――ならば、無理にでも間に合わせるのみ!

士郎「行くぞセイバー! 遠坂!」

セイバー「はい!」

凛「ええいこーなりゃヤケよ!」

士セ凛「「「トゥアア!!」」」

ババッ






スクリュースピンスライディング――――















――――三位一体、別ルートver!!

794: 2016/02/09(火) 14:12:10.81 ID:og50aBXqO
この時、三人の心が一つになった!

ただ、アーチャーを救う。それだけの純粋な思いが、スクリュースピンスライディングの威力を増大させる!

ギュォオオオオオオ!!

魂のテンペストとなった超回転がバーサーカーの後頭部に炸裂した!

バーサーカー「■■■!?」

イリヤ「また性懲りもなく!」







士郎「ギリギリセーフだったみたいだな」

セイバー「当然です。私たちにアウトは有り得ない」

凛「め、目が回った……」フラフラ

795: 2016/02/09(火) 14:24:02.40 ID:og50aBXqO
アーチャー「どうやら……私の我慢勝ちだったようだな」

ドサッ

凛「アーチャー!」

セイバー「大丈夫です。気を失っただけです」

士郎「アーチャー、ありがとう。よくがんばってくれた」

士郎「今度は俺達の番だ!」

イリヤ「何かと思えば、尻尾を巻いて逃げた負け犬がよく吠えるわね」

イリヤ「わかってるわよ。大エクスカリバーでしょ?」

イリヤ「私がそれを撃たせる隙を与えると思う?」

確かに、大エクスカリバーを撃つ際には溜めの時間が必須

だが、隙が出来るならば補えば良いだけの話!

士郎「技を借りるぞ! セイバー! そして……」






――――アーチャー!!









投 影 開 始 ! !











796: 2016/02/09(火) 14:34:14.50 ID:og50aBXqO
士郎「ぬぅあああああああああ!!!」

バチバチバチバチ!!

イメージするのは、自分が持つ最大最強の存在

セイバーを抱いた時に伝わってきた、記憶の中の一振り

打ち直す前に存在した、セイバーの、アルトリアの運命を決めた黄金の――――

セイバー「まさか、シロウはあれを!?」

即ち

797: 2016/02/09(火) 14:37:19.39 ID:og50aBXqO



       


       カリバーン
     勝利すべき黄金の棍棒!!!












セイバー「違ぁあああああああああう!!?」
       

798: 2016/02/09(火) 14:43:56.68 ID:og50aBXqO
これがアーサー王伝説の真実!!

セイバー「いや、待て!」

蒼と金に彩られた聖なるバット!!

セイバー「だから違う!!」

凛「どうやら記憶の中のセイバーと今のセイバーのイメージがごっちゃになったみたいね」シロメ

士郎「そしてぇええええええ!!」

パァン!!!

気合いと共に上半身の服が弾け飛ぶ!

士郎「これが、アーチャーと俺の魂の技!」






――――大魔術ボール(バット)2号!!







801: 2016/02/09(火) 14:56:25.93 ID:og50aBXqO
士郎「そう、この聖なるバットはかつて470人のサクソン人の軍勢を一振りでサヨナラホームランにしたぁ!!」

士郎「バットならばそれが出来る! 納得出来る!」

セイバー「シロウ!? ちょっと落ち着いて」

凛「諦めなさい、セイバー」

凛「むしろこのままのほうが都合が良いわ。本人もノってるし」

凛「ほら、チャージする」

セイバー「む、ぐ、ううぅうぅぅぅぅ」

803: 2016/02/09(火) 15:06:40.76 ID:og50aBXqO
ズサァッ!!

天高く脚を上げ、砂ぼこりが宙を舞う!

士郎「これが二大サーヴァントの魂の合体攻撃だぁあああああああああ!!」








凶 器 投 擲









士郎「スローイング・カリバァアアアアアアアアアアアアン!!!」









キュヴォォオオオオオオオオオオ!!

804: 2016/02/09(火) 15:11:44.99 ID:og50aBXqO
士郎の豪速球(?)が光に変わり、奔流がバーサーカーを飲み込んだ!

と言うか消える魔球も何も最初から極太ビームに変わってるのであまり合体の意味がない!

しかし、細かい事は良いのだ! とにかく魂が繋がっていれば即ち合体攻撃なのだ!

805: 2016/02/09(火) 15:19:12.18 ID:og50aBXqO
イリヤ「嘗めるな衛宮士郎!」

イリヤ「バーサーカーが、私のバーサーカーが、そんな急造の粗悪品に負けるものか!」

イリヤ「伝説を嘗めるなぁああああああ!!」

イリヤの令呪がまた一つ光り、バーサーカーが光の奔流から飛び出す!

バーサーカー「■■■■■■■■■!!!」

士郎「……!」




ザシュッ






凛「士郎!」

806: 2016/02/09(火) 15:24:22.70 ID:og50aBXqO
士郎「っぐうぅうう!」


間一髪、致命傷を避ける


しかし、士郎の投擲を支え続けた左手は


バーサーカーの一撃により、叩き斬られた


だが、この一瞬が、両陣営の明暗を分けた!











士郎「今だ、セイバァアアアアアアアアアアアア!!!」














セイバー「士郎! よくやったぁあああああああああああ!!!」

807: 2016/02/09(火) 15:27:15.39 ID:og50aBXqO







     



     大エクスカリバー
    伝説を超えた勝利の剣!!!













808: 2016/02/09(火) 15:31:28.48 ID:og50aBXqO
この日、日本の人工衛星は冬木市の上空で奇妙な光を観測した

天を超え、宇宙の彼方へ飛び出す、彗星のような謎の光

後に観測員はこう語る












――――まるで夢のように綺麗だった











812: 2016/02/13(土) 04:18:33.71 ID:dfdzWhnyO
大エクスカリバーの奔流がバーサーカーを飲み込んだ

そのまま光は天空を切り裂き、彼方へと消えた

かつてその体が星座になった時と同じように、天へ昇る。

それは士郎達の完全勝利を意味した

士郎「うぐ……」

失った左手が今になって激痛を覚える

バーサーカーとイリヤ相手に左手だけの犠牲で済むなら安いモノだと思うが、それでも長年使い続けた手を失う事は少しショックだった

セイバー「シロウ、早く手当てをしましょう」

セイバー「出血が過ぎれば命に関わります」

士郎「ああ……、ありがとう、セイバー」

凛「バーサーカーは完全に消滅したわ」

凛「終わったのね、この戦いが」








イリヤ「まだよ……! まだ終わってないわ!」




813: 2016/02/13(土) 04:29:12.23 ID:dfdzWhnyO
ブォン!

士郎「うわ……!」

ドゴンッ!

イリヤの拳が士郎の居た場所を砕く

後少し避けるのが遅ければ命に関わっただろう

セイバー「イリヤスフィール! まだやるつもりですか!」

イリヤ「そうよ! まだ私は戦える!」

イリヤ「もう聖杯戦争もアインツベルンも関係ない!」

イリヤ「コイツは! シロウだけは頃す!」

イリヤ「それすらできなきゃ、私はなんのために……!」

士郎「イリヤ……」

イリヤ「そんな目で私を見るな!」

イリヤ「私は負けない! あんたにも! 運命にも!」

――――私の人生は、無意味なんかじゃない!




814: 2016/02/13(土) 04:36:13.06 ID:dfdzWhnyO
イリヤの体が弾け、士郎に向かい全速で突き進む

これまでの速さを上回る突撃

ただ士郎を頃す

それだけに全てを賭けた、氏を覚悟した突撃

避けるのが間に合わない

体がもう限界をとっくに超えている

氏――――







ズグッ


815: 2016/02/13(土) 04:41:01.15 ID:dfdzWhnyO
士郎「あ……?」

セイバー「……!」








凛「何で、何でよ……!?」

士郎は氏ななかった

しかし





アーチャー「ご、ふっ」










士郎の代わりに、その一撃を受ける、アーチャーの姿

816: 2016/02/13(土) 04:51:20.44 ID:dfdzWhnyO
イリヤ「そんな、こんなことって」

アーチャーの体を貫いたイリヤが呆然とした声を発する

他人のサーヴァントが、違うマスターの身を庇う

誰もが唖然としていた

ただ一人、士郎を除いて

士郎「あ、アーチャー! お前!?」

アーチャー「……」

アーチャーは何も答えない

ただ、いつもの氏んだような顔で目の前のイリヤを見つめる

炎が消え去った、鉄の瞳

イリヤ「うあ」

イリヤ「あ、ああ」

イリヤ「あああああああああ!」

絶叫と共に、その場を逃げ出した

取り返しのつかない事をした

そんな顔をしていた

817: 2016/02/13(土) 05:08:52.96 ID:dfdzWhnyO







--
--





士郎「アーチャー! しっかりしろ! アーチャー!」

セイバー「シロウ、もう彼は……」

士郎「うるさい! しっかりしろアーチャー!」

必氏になってアーチャーに呼び掛ける

その場に控える凛は顔をうつむかせ、アーチャーに話しかける

凛「こんな、こんな終わりかたで、アンタは満足なの」

アーチャー「……」

凛「何か言いなさいよ……」

アーチャー「……」

凛「アンタには叶えたい願いとか、無かったの?」

アーチャー「…………」














アーチャー「私の願いは、衛宮士郎の、完全な破滅だ」




凛「え……?」








818: 2016/02/13(土) 05:17:46.00 ID:dfdzWhnyO
士郎「お、俺の、破滅?」

アーチャー「中途半端に、燻る事なく、完全なる燃焼を」

アーチャー「私はできなかった。だからこうして今も燻り続けている」

アーチャー「そう、私にはできなかったから、違う私に遣らせようとした」

アーチャー「私はお前。極端な道のり、最悪の選択を選び、歩み続けた者の末路」

アーチャー「燃え残りのガラクタ。それが私だ」

820: 2016/02/13(土) 07:57:52.13 ID:p9uvZ1QoO
士郎「俺が、お前」

何となくだが、アーチャーの言ってる事が理解出来る

何度も壊れては蘇る宝剣

魔球

自分とアーチャーを繋ぐ共通性

凛「未来の、士郎」

アーチャー「結末を知る私が揺さぶりをかけねば、お前は止まらなかった」

アーチャー「あのまま、何の迷いもなく突き進めば、お前は必ず道を誤った」

アーチャー「迷いなき努力など、ただの独り善がりでしかないからな……」

迷い、苦しむ事で人は成長し、何度でも蘇り、より強くなる

苦悩という炎に投げ込まれなければ、不氏鳥は空に羽ばたく事はできないのだ

ザシュッ

凛「あ、アンタ!」

セイバー「アーチャー!?」

気づけば、アーチャー、いや、エミヤシロウだった者は、己の左手を叩き切っていた

吹き出す血染めの左手を士郎に差し出す














エミヤ「持っていけ、小僧」

エミヤ「いつか必ず役に立つ」


















821: 2016/02/13(土) 08:05:00.94 ID:p9uvZ1QoO
士郎「……」

震える右手が、血染めの左手を掴む

重い

なんて重さだ

ゴツゴツとしたそれは、ただ重いだけじゃない

目の前の人間の全てが詰まった重さ




――――託された魂






これが、アーチャーの

エミヤシロウの左手





















知らず、涙が流れた


822: 2016/02/13(土) 08:41:30.82 ID:p9uvZ1QoO
エミヤ「……何故、泣く」

エミヤ「それでも男か」

何故だって? 

そんなの当たり前だ








士郎「男が仲間のために泣いて、何が悪い」









強く、ハッキリと言いはなった

エミヤ「なかま……」

懐かしい響き

かつて捨て去り、そして後悔した

かけがえのない人達

人の価値は、最期に泣いてくれる人が居るかどうかで決まるなら

エミヤ「ふ、ふふふ……」

ならば、このどうしようもない人生にも、少しは意味があったと言えるのではないか

凛「何笑ってるのよ……! バカ……!」

同じくその瞳から雫を溢す、己のマスター

エミヤ「君も、泣くことがあるんだな」

凛「当たり前よ! バカシロウ!」

凛「私だってね! あなたの事」

凛「ただのサーヴァントじゃなくって、本当の仲間だって……!」

エミヤ「いい、ムリするな遠坂」

エミヤ「俺は、お前のサーヴァントになれて本当に良かった」

エミヤ「だけど、もう終わりのようだ」

力なく崩れ去る

凛、あわててその体に駆け寄る

凛「シロウ」

エミヤ「もういい、もういいんだ」

エミヤ「この世界の俺は、もう大丈夫だ」

エミヤ「ようやく、少しだけ、眠れる」

エミヤシロウの頭を膝に乗せ、その最期を看取る

髪を下ろしたその姿は、確かに成長した士郎の姿だった

士郎「…………」


俺は、瞬きすら忘れてその光景を見ていた

一人の男の最期

目をそらすなど、あってはならなかった


エミヤ「…………」

823: 2016/02/13(土) 08:43:56.71 ID:p9uvZ1QoO





――――そうだ、答えなんて、とっくに出てたのに

――――気づかないふりをしたまま、走り続けて

――――本当に、バカだな、俺は









824: 2016/02/13(土) 08:49:17.56 ID:p9uvZ1QoO
エミヤシロウの体は消滅した

灰すら残らず、消えて無くなった

凛「……」

士郎「遠坂」

凛「さっさと始めるわよ」

士郎「え」

凛「その左手、無駄にはできないわ」



――――アイツの魂、アンタに繋げる

828: 2016/02/13(土) 17:13:54.37 ID:1lPLaGcHO
走った

走って、逃げ続けた

もう何がなんだかわからない

頭の中はぐちゃぐちゃで

涙で目の前が霞む

イリヤ「あうっ」

木の根に躓き、その体を泥に晒す

惨めだった

十年の歳月を費やして、勝つことすら出来ずに、無様に這いつくばる自分が

イリヤ「私は、……私は!」

一体、何の為に生まれたの?

イリヤ「おしえてよ……。だれでもいいから」

何の為に苦しんだの?

イリヤ「おかあさま……」

何で私を産んだの?

イリヤ「キリツグ……」

何で私を捨てたの?

イリヤ「何で」


――――何で、私ばかりこんな目に会うの?











「それはあなたが聖杯(バケモノ)だからですよぉ?」










829: 2016/02/13(土) 17:20:58.47 ID:1lPLaGcHO
イリヤ「……っ!」

ビュルン!

黒色の影が、イリヤを襲う

間一髪で避け、距離を置く

動揺してるとは言え戦闘の勘は冴えていた

「あれ? 逃げられちゃいました」

「まぁいいか」






桜「ご飯は活きが良ければ良いほどおいしいから」








ぎぎgギギガッガガッッッッガガガガガ

がっがががggぎgigigigagaガガギギ

ゴギガッギギガゴッガガガガガgigagi

830: 2016/02/13(土) 17:37:08.75 ID:1lPLaGcHO
イリヤ「あなたは!」

解る

自分と似た空気

聖杯の気配

桜「あなたばっかり、美味しそうなのを溜め込んで、ズルいじゃないですか」

桜「どうせ、もう脱落したんだし、私が食べてもいいでしょう?」

寒気がするほど嫌な笑顔を浮かべる

恐らく本人の自我も聖杯に呑まれているのだろう

イリヤ「……お断りよ! たかが聖杯に意識を呑まれるような小物に、誰が!」

桜「元気はいいみたいですけど」

桜「体はさっきより鈍くなってますよ?」

イリヤ「何が……!」

くらっ

イリヤ「!?」

体が、だるい

思うように動かない

桜「立て続けに二体もサーヴァントを取り込んじゃって」

桜「だいぶまいってますね」クスクス

831: 2016/02/13(土) 17:46:13.60 ID:1lPLaGcHO
イリヤ「……上等よ!」

イリヤ「アンタなんか!」

イリヤ「このくらいが丁度いいハンデよ!」

桜「ほんとに活きがいいですねぇ」

桜「でも、あなたじゃ私たちには勝てません」

桜「私には、先輩が側にいるんですから」

イリヤ「?」

この女はさっきから何を言ってるんだ

「私たち」等と、どう見ても一人しか


ガガギギgigagigaギギガゴ

ギギガッガガッッッッガガガガガ


いや、さっきからたまに聞こえるこの嫌な音は何だろう

何か、とてつもなく嫌な感じが


桜「紹介します」

桜「私だけを抱き締めてくれる」

桜「私だけを愛してくれる」

桜「私だけの先輩です」

832: 2016/02/13(土) 17:49:00.37 ID:1lPLaGcHO
泥に呑まれ、変容した物体

悪意を鍛えるモノ




     




     アンリマユ・ギプス
    この世全ての悪ギプス








835: 2016/02/13(土) 21:44:02.14 ID:1lPLaGcHO
イリヤ「それは、シロウの」

間違いなく衛宮士郎のギプス

しかし、あの色とおぞましい感覚は一体

桜「私と先輩は、とても腹ペコなんです」

桜「あなたを食べれば、だいぶましになると思いますから」

桜「おとなしく、食べられてくださいね」

ビュオッ

影が迫る

今度は複数

イリヤ「ちっ! 嘗めないで!」

身を捻って避ける

捕まればアウト

あの影は生易しい魔術ではない

恐らく極大の呪いを塗り込められた醜悪なモノ

触れれば即汚染される

桜「よく避けますねぇ」

桜「でも、もうわかりました」

ゾンッ

イリヤ「あ……!?」

着地地点にも、影が

桜「ここら一帯はもう私が埋め尽くしてるんですよ?」

桜「逃げられるわけないじゃないですか」

ゾブリ

桜「あれ」

イリヤ「――――うぅうッ!」

空中で強引に体勢を変え、何とか避けきる

――しかし、肩口からゴッソリと腕が無くなっていた

桜「へぇー」

桜「まだそんな動きができるんですね」

桜「でも、もう限界ですね」

イリヤ「調子に、乗らないで」



イリヤ「アンタなんかねぇ!」






イリヤ「片腕一本で充分なのよ!!」










いつの間にか、暗雲が夜空を覆い、うすら寒い風が吹き始めた

まるでこれからの運命を、呑み込むかのように

836: 2016/02/13(土) 22:13:47.02 ID:1lPLaGcHO
その頃



凛「何とか、繋がったわ」

士郎「これが、俺の新しい手」

元が同じ人間の為、思いの外巧く接合できた

しかし、それでも士郎の体には耐えられない為、左手には包帯のように聖骸布が巻き付けられている

凛「たぶん、無茶をすればアーチャーの技も幾つかできると思う」

凛「でも今は絶対に使わないこと! 最悪氏ぬかも知れないからね!」

士郎「わかった。気をつける」

凛「絶対に無理すんじゃないわよ……」

凛「こうなったら、あなたには意地でも生き抜いてもらうんだから」

凛「アーチャーのようには、させない」

セイバー「彼は、恐らく幾つも枝分かれした未来から召喚されたのでしょう」

セイバー「シロウ、もしかしたら貴方も」

士郎「俺は、アイツのようにはならないさ」

士郎「……いや、正確にはなれない」

士郎「あんなスゴい奴には、とてもなれない」



だけど




士郎「俺は、アイツの分まで、がんばってみるよ」






837: 2016/02/13(土) 22:25:18.97 ID:1lPLaGcHO
士郎「それじゃあ、そろそろ帰ろっか」

士郎「もう深夜になっちまった」

セイバー「イリヤスフィールには、逃げられてしまいましたね」

士郎「イリヤなら、大丈夫さ」

士郎「あの子は、俺を頃すまで何度でもやって来る」

士郎「分かるんだ、あの子の強さを」

凛「ま、あのやんちゃは頃しても氏なないだろうし、心配するだけ無駄ね」

凛「……あー、それから、今日はあなたたち二人で帰りなさい」

セイバー「どうかしましたか? リン」

凛「うん、ちょっと家に用事がね」

士郎「?」

遠坂がいつになく焦ってる気がする

気のせいだろうか

冷や汗をかいてるような

凛「ま、後は当人たちで話合いなさい」

凛「じゃあね、士郎、セイバー」

凛「生きてれば、また明日」

士セ「「???」」

840: 2016/02/14(日) 10:29:01.26 ID:lyeTVzOQO

 衛宮邸


結果から言うと、俺達は玄関前で立ち往生していた

なぜなら家に近付くにつれ、事の重大さが認識できたからだ



――――家に、明かりが就いてる










逃げやがったな、遠坂









841: 2016/02/14(日) 10:35:48.97 ID:lyeTVzOQO
セイバー「シロウ、先に入ってください」

士郎「いや、ここはセイバーに譲るよ」

セイバー「ここはあなたの家でしょう」グイ

士郎「セイバー、遠慮すんなって」グイグイ

不毛な言い争いを始めてもう5分は経過する

入りたくない

入ったらヤバイ









――――士郎














脳裏にやけにねっとりとした表情の姉の姿が思い浮かんだ

842: 2016/02/14(日) 10:47:04.08 ID:lyeTVzOQO
士郎「セイバー、サーヴァントってのはマスターを守るモノなんだろ?」

士郎「今こそその時だと思うんだが」

セイバー「シロウ! それはあまりに都合が良すぎます」

セイバー「頼まなくても前線を突っ走るあなたこそ先陣を斬るべきだ」

士郎「セイバー、令呪を以て」

セイバー「なに令呪を使おうとしてるんですかあなたはッ!」

大河「ねぇ、夜中にあまりうるさくしない方がいいと思うよぅ?」

士郎「そうだぞセイバー? 大声なんかだしてさ」

セイバー「シロウがあまりに非常識だからですッ!」

セイバー「………」

士郎「………」

844: 2016/02/14(日) 10:58:02.20 ID:lyeTVzOQO

ファサ

後ろから、首に腕を回すように抱きつかれた











    大河「おかえり♪ 士郎」














848: 2016/02/14(日) 13:13:41.08 ID:lyeTVzOQO
士郎「ふ、藤、藤ねぇ」

大河「こんな時間までナニしてたのかな♪」

大河「セイバーちゃんと二人きりで」



大河「二 人 っ き り で」




士郎「プ、プロレス! 知り合いとプロレスの研究やっててさ!」

士郎「いやぁ~ほんとにスゴかったよ!」

士郎「セイバーも夢中でさ!」

士郎「なぁセイバー!?」

セイバー「へ!?」

セイバー「そ、そうです! プロレスです!」

セイバー「丁度寝技の研究をやってまして!」

858: 2016/02/17(水) 11:09:13.59 ID:e8lmDrF6O
大河「へー? プロレス? 寝技?」

士郎「そう! プロレス!」

大河「お姉ちゃんもプロレスできるよ♪」

士郎「え?」

ムギュ

士郎の額に大河の右腕が抱きつくように回される

大河「はい、ぎゅっと♪」


ギリギリギリ



士郎「ぎぃえぁああああああああああ!!?」


――ヘッドロック


数あるサブミッションの中で最も地味で、最も凶悪な技

鍛えようのない頭蓋骨を締め付けるその技は、必殺というよりもむしろ拷問のような激痛を長時間相手に与える

そのままズルズルと衛宮邸に引きずり込む

大河「セイバーちゃん」

セイバー「ひゃい!」

大河「明日の朝ごはんはセイバーちゃんが作ってね♪」

大河「それでちょっとだけ許したげる♪」

セイバー「あの、タイガ、私は炊事に関しては切嗣にダメ出しされる程度で」

大河「セイバーちゃん」





――――できる、できないじゃないの


――――や れ よ









セイバー「わかりましたぁあああ!!?」




860: 2016/02/17(水) 11:36:41.81 ID:e8lmDrF6O

寝室に辿り着くなり蒲団に押し倒された

仰向けの状態から藤ねぇが覆い被さってくる

士郎「藤ねぇ、ちょっと、おちつ」ゼェゼェ

大河「私も士郎とプロレスしたいなぁ?」

ギリギリギリ

士郎「ぎぃやあああああああああああ!!?」


容赦のないギロチンチョークスリーパーが士郎に襲いかかる


大河「士郎、セイバーちゃんとプロレスやったわね?」

士郎「そ、それは」ゼェゼェ

大河「セイバーちゃんのいいにおいがするもの」

大河「それと」

大河「えOちなにおいも」

士郎「」

大河「士郎、例え話するけどね」

大河「もし、お姉ちゃんが士郎以外の男の人に犯されたら士郎はどう思う?」

士郎「それは」

大河「許せないよね」

大河「今、そんな気分」

チュグ

士郎「むぐっ!?」

歯がぶつかるんじゃないかという勢いで口と口が合わさる

大河「ん、んん……」

チュグ

グチュ

苦しい

窒息するかも

でも

セイバーとしたときに得られなかった満足感がそこにあった

だんだん、芯からみなぎってくる

欲しい

藤ねぇが欲しい

大河「ぷはっ」

ようやく解き放たれる

お互い既に爆発しそうな情欲の炎にくるまれている

大河「ねぇ、士郎」

大河「これから上書きするよ?」


――――誰にも渡さないから






863: 2016/02/17(水) 19:02:34.69 ID:qwXh7UnsO
翌朝

士郎「……」

大河「……」

セイバー「うっ、うう」ナミダメ

エプロンを着たセイバーが包丁を持ちながら涙目でこちらを見ている

食卓の上はまさに悲惨の一言だった

真っ黒に炭化した魚のようなモノ

無造作に踏み切り散らされたサラダのようなモノ

ダマが所々に浮いた味噌汁

ぐちゃぐちゃの粥のような白米

ガリ

狙ったように芯が残ってた

何故だ

大河「士郎、良かったわねぇ」

大河「セイバーちゃんの手料理よ」

藤ねぇ、まさかこれを俺一人で食べろってか

大河「私は自分ちで食べるから」

大河「こんなのいらない♪」

虎じゃねぇ、鬼だ

悪魔だ

外道の極みだ!


864: 2016/02/17(水) 19:13:14.99 ID:qwXh7UnsO
士郎「……」

ジャリ、ジャリ

真っ黒な魚を咀嚼する

苦い

じいさんがダメ出ししたのも頷ける

こんなの命に対する冒涜――――

セイバー「し、シロウ、どうですか?」

セイバーがエプロンの端を掴みながら上目で尋ねてくる

それはちょっと反則なんじゃないか

士郎「……旨い、よ」

セイバー「ほ、本当ですか!?」

セイバー「良かった、おかわりはまだ沢山ありますからね!」

助けて、誰か

865: 2016/02/17(水) 19:38:57.59 ID:qwXh7UnsO
凛「それで、結局全部食べたの?」

士郎「まさか戦闘以外で氏にかけるとは思わなかったよ」

凛「ま、これもモテる男の宿命だと思って諦めなさい」

士郎「遠坂に言われると腑に落ちねぇ……」

凛「それよりもここからが正念場よ」

凛「ライダー、アーチャー、バーサーカーの脱落」

凛「それに恐らくはアサシンも脱落。後は行方不明のキャスター」

凛「ランサーは未だに動向がわからないけど、そろそろ仕掛けてきてもおかしくない」

士郎「いよいよ終わりが近い、か」

866: 2016/02/17(水) 19:48:04.74 ID:qwXh7UnsO
凛「今夜は見回りするとして、日中はどうしようかしら」

凛「本当ならその左手の様子を見たかったんだけど」

聖骸布の巻かれた左手首は、少しずらしただけでも恐ろしい痛みを伴う

馴染むにはまだ少しかかりそうだった

凛「デートなら仕方ないわねぇ? 士郎くん?」

士郎「か、からかうなよ……」

藤ねぇとのデート

学校がライダーの件で休校とは言え、後ろめたいモノがない訳じゃない

でも、いつまた氏ぬかわからない自分は、一日の平穏を大切にしたかった

平穏が壊れる前に、藤ねぇとの思い出をたくさん作りたい

愛する人との思い出を

867: 2016/02/17(水) 20:00:04.69 ID:qwXh7UnsO

 新都

大河「士郎とデートなんて久しぶりねぇ!」

大河「今日はいーっぱい遊ぶわよ!」

士郎「藤ねぇ、一応休校中なんだから自重しろよ?」

大河「むぅ! 固いこと言わないの!」

士郎「まぁ、付き合ってるのにデートの一つもしないなんて甲斐性が無さすぎるしな」

士郎「俺も今日は羽を伸ばすよ」

大河「よろしい! それじゃあそうと決まればまーずーはー…………」





士 大 「「腹ごしらえから行くか」」






873: 2016/02/17(水) 23:25:28.50 ID:qwXh7UnsO
士郎「……なんだか、人が少ない気がする」

大河「昏睡事件や殺人事件とかたくさんあったからね」

大河「最近もまだ行方不明者が出てるみたいだし」

大河「夜中は怖がって誰も出歩かないそうよ」

士郎「行方不明者……?」

一連の犯人であるライダー、キャスターは打倒した

ランサーがそんな卑劣な真似をするとは思えない

なのに、まだ行方不明者が出ている?

大河「……昨日もね」

大河「士郎の家に電話しても、誰も出ないから、心配して来ちゃったのよ」

士郎「藤ねぇ……」

士郎「ありがとう。でも、藤ねぇこそ夜出歩くのは危ないよ」

士郎「俺のことは大丈夫だからさ、藤ねぇも自分の心配をしろよな」

大河「うん」

まばらな新都をぶらりと歩く

もうすぐ終わる聖杯戦争

だが、この活気のない町を見ていると、どうしても実感が湧かない

何か、嫌な予感がする






――――そう言えば、ここ最近、桜と会ってない










874: 2016/02/17(水) 23:40:28.41 ID:qwXh7UnsO

 ???

たまに、昔の夢を見ます

一番最初に暗い穴に落とされたとき

気持ちの悪い蟲にはじめてを奪われたとき

おじいさまの知り合いの大勢の男の人に犯されたとき

兄さんに弱虫と罵られたとき

夕焼けの校庭で、先輩の姿を見たとき

先輩の家に行ったとき

先輩から合鍵を渡されたとき

先輩から料理を教わったとき

先輩

先輩

せんぱい

えみや、しろう

――――せんぱいとせんせいが、あいしあってるとき

グシャ






この夢は、いりませんね






今のせんぱいは好きですけど、やっぱり体がないとかわいそうですよね






せんせいは、せんぱいの目の前で、めちゃくちゃに犯してやりましょうか?

せんせいのくせに、せんぱいをたぶらかすわるいひと

わるいひとは、おしおきしなきゃ

そうですよね? せんぱい

881: 2016/02/21(日) 14:24:40.47 ID:1K26lqX3O

 遠坂邸

凛「どういうことよ、これ」

凛「行方不明者、意識不明者の数が全然減ってない」

凛「それどころか、日を追う毎に増えてる」

ランサーは典型的な騎士タイプ。魂喰らいを行うとは考えずらい

マスター単独での行使としても範囲が広く、何よりもここまであからさまにやるのはおかしい。

なにか、猛烈に嫌な予感がする

行方不明になっているキャスターがまたやらかしているのだろうか

凛「あとはイリヤスフィールがやってる可能性もあるけど」

そうではない

そうではないのだ

うまく言葉に出来ないが、気持ちの悪い違和感

毒々しい何かを感じる

凛「こういうときの勘って、よく当たるのよね……」

凛「大丈夫かしら、士郎」

882: 2016/02/21(日) 14:33:07.10 ID:1K26lqX3O

 深山町

日ももう暮れ始め、赤い夕陽が街を照らす

大河「あー! 遊んだ 遊んだ!」

士郎「殆ど食べ歩きだったけどな!」

大河「むぅ、士郎だっていっぱい食べたじゃない!」

士郎「藤ねぇの食欲にはかなわないよ」

士郎「んじゃ、そろそろ帰るか?」

大河「あ、待って」

大河「最後に、ちょっと行きたい所があるんだけど、いい?」

士郎「行きたい所?」


883: 2016/02/21(日) 15:19:39.21 ID:1K26lqX3O
穂群原学園

 教室

士郎「なんか久し振りだなあ」

士郎「慎二の時以来、か」

士郎「……」

慎二

俺に勝利した男

そして、今はもういない親友

士郎「時が来たら、桜にも話すべきだろうな」

俺が、慎二を頃したという事実を


大河「あ、いたいた! 士郎、待たせたわね」

藤ねぇが駆けながらこっちに来る

士郎「藤ねぇ、用件はもう終わったのか?」

大河「うん、ちょっと資料の確認にね」

大河「私だって一応先生だもん。休んでる分は働かなきゃね」

士郎「うわ、藤ねぇが真面目なこと言ってる」

大河「そうやってまたお姉ちゃんをからかうな~!」

ガシッ

士郎「うわ! ちょっと藤ねぇ! 危な――――
―!」

バタン

軽く埃をあげて、リノリウムのゆかに倒れこむ

大河「あ……」

士郎「ふ、藤ねぇ」

ちょうど、俺が藤ねぇを押し倒してる形になる
小ぶりだが形のいい胸を右手が掴む

士郎「ご、ごめん。藤ねぇ」

士郎「すぐに退くからさ――――」


ガシリ


士郎「あ……?」

後頭部を掴まれる感覚

大河「……」

迫る顔



夕焼けに照らされた、二つの影が一つになる
何分か後、ようやく影が離れる
お互いの口を結ぶ銀色の橋が、夕陽に照らされてキラキラと輝く

士郎「藤ねぇ……」

大河「ねぇ、士郎」

――――する?

士郎「……」




うん

885: 2016/02/21(日) 17:05:38.19 ID:u/AmzRd80
四つんばいになった半裸の藤ねぇの姿は俺には刺激が強すぎた

誰もいない教室で、教師の藤ねぇと

そんなシチュエーションが俺をどうしようもなく興奮させ、狂わせる

まるで強姦魔のように後ろから襲い掛かる

それでも、藤ねぇは嫌がるどころか、歓喜の嬌声をあげる

たった一回だけの交合いが、永遠のように永く感じる

やがて、お互い頂点に達する

ずっと

ずっと、この幸福が、続けばいいのに








--






大河「遅くなっちゃったね」

士郎「いいさ、たまには」

日が落ち、薄暗くなった道を歩く

お互いに手を繋ぐ

誰もいない暗い道だからできる、恋人同士の行為

大河「士郎はさ」

大河「学校を卒業したら、どうするの?」

士郎「どうって、それは」

じいさんのような、正義の味方に

でも、具体的に、何になるのか?

魔術の道、裏の世界に入るのか?

藤ねぇを、置いて?

大河「時々思うの、士郎が将来何になるのか」

大河「でも、ぜんぜん想像できないの」



だからこう考えちゃう

士郎が、どこか遠くへ行っちゃうんじゃないかって




大河「私は、もう少し先生をやりたいけど」

大河「ほんとはね、士郎のお嫁さんにって思ってる」

士郎「俺と、結婚?」

大河「だめ?」

上目遣いで首をかしげる

少し、涙がにじんでいる

886: 2016/02/21(日) 17:37:19.18 ID:u/AmzRd80
俺は、藤ねぇを置いて、夢を追いかけるのか?

じいさんなら、何て言ってくれるだろうか

夢か、大切な人か

どっちを選んだら良いか




――――キリツグ




ふと、脳裏に今にも泣き出しそうな、イリヤの顔が浮かんだ

士郎「俺は……」



「あれ、いけないんだぁ」


士郎「!!?」

やけにじっとりとした声が後ろから浴びせられる

「もうお日様も沈んだのに、なにをしてるんですか?」





桜「先輩」





士郎「桜」



俺は、正義の味方という言葉に酔っていたのかもしれない

容赦なく襲いかかる現実

非常な現実



藤ねぇ

理想

現在

未来

過去

何かを切り捨て、何かを得る

そんな決断を、俺は迫られる




切嗣『士郎よ、青春とは聞こえは良いがそんなに甘いものじゃない!』

切嗣『青春とは果てしなき戦いあるのみ!』

栄光の後にも!

敗北の後にも!

人の生きる限りなんらの差別なく戦いあるのみ!




戦い

俺の、真の戦いは、ようやく幕を上げたばかりだった

887: 2016/02/21(日) 17:44:58.33 ID:u/AmzRd80



  


   




    幸福は肉体の健康によろしい だが精神力を発達させるのは心の悲しみである
    
               ――プルースト――









888: 2016/02/21(日) 17:49:42.98 ID:u/AmzRd80
修羅場編は以上で終了

いよいよ最終章

天翔編

藤ねぇルートは五秒で終わる?

知らんよ、そんなことは

ぶっちゃけ見切り発車で始めたこのSSも気づけばこんなになって

これからも最後まで容赦のない感想をお願いします


892: 2016/02/22(月) 13:56:31.40 ID:PyCFXtvyO
どーも皆様

いつも感想有り難うございます

Fateの星の最終章ですが、どう考えても残りで完結するのは不可能と判断したので次スレに移ります

感想などで一通り埋まったらhtml化依頼します

これからもよろしくお願いいたします


901: 2016/02/22(月) 20:06:37.95 ID:mOe6ruFp0
うっし! 小ネタのイメージが固まった!!


おまけ2

地獄! 切嗣道場!!



おっす! オレ 衛宮 士郎!!

正義の味方を目指す高校二年生だ!

・・・正確には、「だった」が正しい

そう、オレこと衛宮 士郎は「氏んだ」

それはもう盛大に氏んだ

何故こんなことになってしまったのか

理由は簡単

オレがセイバーどころか、遠坂にまで手をだしてしまったせいで

藤ねぇの目から光が消えた

迫る無言の藤ねぇ

その両手に握る包丁

「私といっしょに天国へ逝こ?」

そんな台詞が聞こえた頃には、オレの心臓に刃が突き刺さっていた

・・・まぁ、自業自得というやつだ

そして、オレは天国らしき所に辿り着いたのだが




オンボロ長屋




士郎「……」





古き良き昭和のかほりがする、木造建築

はて、オレはタイムスリップでもしたのだろうか?





「よく来たな、士郎」





――――聞き覚えのある、懐かしい声

902: 2016/02/22(月) 20:14:25.25 ID:mOe6ruFp0
「お前が来ることはある程度予想はしていた」

「もっとも、こんな理由で来るとは思ってもみなかったがな」

士郎「あ、ああ!?」





切嗣「久しぶりだな」




――――じいさん






ずっと、会いたかった

不可能だと分かってても、そう願った

オレがこの世で最もあこがれた人物が

今、目の前に――――!




士郎「じい、さん」

切嗣「士郎よ」

士郎「じいさーーーーーーーーーん!!」

目に涙を浮かべて駆け寄るそんなオレを迎えるかのように、じいさんはその大きな右手を振りかぶり――――





――――振りかぶり?

903: 2016/02/22(月) 20:28:54.33 ID:mOe6ruFp0
切嗣「このたわけがぁあああああああああああ!!!」

スパァアアアアアアアン!

士郎「はぶぅお!?」

鬼の平手打ちがオレの頬を勢い良く張り倒した

あー、これも懐かしい

よく張り倒されたっけか

火花を散らしながら目を開けるとそこには、

最大級の怒りの形相をしたじいさんの姿

あ、やばい。オレ、氏んだ

もう氏んでるけど


切嗣「志に殉じて氏ぬならばともかく、痴情の縺れで命を散らすとは・・・」

切嗣「しばらく見ん間に随分と腑抜けたようだな? 馬鹿息子よ」

士郎「じ、じいさn」

切嗣「言い訳は無用!!」

切嗣「どうやら久しぶりにしごきが必要と見える」

切嗣「その腑抜けた根性、叩き直してやる!」

切嗣「弟子甲号!!」

舞弥「はい」

いつの間にかじいさんの側に見慣れぬ黒髪の女性が現れた

なぜか体操服にブルマという小学生みたいな格好をしている

切嗣「アレを準備せい。この馬鹿息子の性根を叩き直すには丁度良い」

舞弥「了解」

なんだろう、猛烈に嫌な予感がしてきた

906: 2016/02/22(月) 20:45:28.95 ID:mOe6ruFp0
士郎「じ、じいさん、これは・・・?」

ギリギリギリギリギリ!!

切嗣「根性叩き直しギプス!!」

切嗣「気をしっかりもたんと全身が潰れるぞ!!」

そう、全身くまなく装着された、キ●ガイ染みた特製ギプス

油断するとほら・・・なんだろう・・・!!

別次元のオレがバーサーカーにやられた、「行儀の良い潰され方」・・・!!!

あれになりかねん、というかもうなる!!

切嗣「そして、これがホムンクルスの穴のしごきを参考に作り上げた・・・!」



きゅいいいいいいいいいいいいいいいん!!!




切嗣「回転鋸つきルームランナー!!」




士郎「」

907: 2016/02/22(月) 21:01:58.80 ID:mOe6ruFp0
切嗣「さあ、走れ」

頃す気かじいさん!?

もう氏んでるけど

士郎「無理無理無理!? さすがにこんなモノつけて走るなんて・・・!」

切嗣「さっさとはじめんかぁああああ!!」つ竹刀

ばしぃいいいいいん!

士郎「わかりましたあああああああ!?」

きゅいいいいいいいいいいいいいん!!!

士郎「うぉおおおおおおおおおお!!!」

少しでもスピードを緩めたら、バラバラだ!?

士郎「ふぉおおおおおおおおおお!!!」

切嗣「ほう、少しは成長したみたいだな」

そうだ!! オレだってあの頃のオレとは違う!

じいさんにみせてやる!このオレの真のちかr

切嗣「弟子甲号、スピードを上げろ」

舞弥「了解」




士郎「」

908: 2016/02/22(月) 21:07:30.76 ID:mOe6ruFp0
三十分後

士郎「し、しぬ、ぜったいに、しぬ」フラフラ

切嗣「まだまだいけるな」

士郎「も、ほんと、むり」

切嗣「聞こえないな」

士郎「だれか、たす、たす」

士郎「ふじ、ねぇ」

切嗣「ん、なんだ士郎。弟子ゼロ号に会いたいのか?」

士郎「へ?」

切嗣「そんなに会いたければ呼んでやろう!」

切嗣「来い! 弟子ゼロ号!!」







大河「……」

909: 2016/02/22(月) 21:25:07.95 ID:mOe6ruFp0
士郎「ふ、藤ねぇ・・・!?」

じいさんに呼ばれて現れたのは、ジャージにブルマ姿の藤ねぇ

だけど、これは

士郎「若い・・・!」

そう、若いのだ

まるで初めて会った時のような若さ

自分と同い年位の、ポニーテールの美少女

士郎「で、でも、なんで」

大河「士郎、お姉ちゃん、きれい?」

・・・ん?

大河「私もみんなみたいに若かったら、士郎も浮気なんかしないよね?」

これは

この藤ねぇは、まさか

大河「士郎、今度は誰にもじゃまされないね?」白目

藤ねぇえええええええええええ!?

【Fate】Fateの星 完結編【梶原一騎】

引用元: Fateの星