1: ◆bncJ1ovdPY 2021/11/07(日) 03:33:41.76 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「到着ー……っと、あれ。かのんだけ?」
かのん「すみれちゃんっ。可可ちゃんとちぃちゃんは用事があるからって先に帰っちゃって」
すみれ「……、そう」
かのん「恋ちゃんは分からないけど……すみれちゃんは何か聞いてる?」
すみれ「恋は生徒会の仕事。書類作業がかなり残ってるから早めに終わらせたいって」
かのん「そ、そっか……」

すみれ「二人……ね。どうする?」
かのん「あはは、どうしよっか……」
かのん(すみれちゃんと、二人きり……かぁ……)

すみれ(流石に二人で練習は出来ないし。かといって、作業の疲れが残りそうな恋を待つのもね……)
すみれ(やれることもほとんどないし、少し話をしたら解散ってところね。……どうしようかしら)



2: 2021/11/07(日) 03:36:06.64 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「……そうだ。ちょうどクッキー持ってるんだけど、いる?」
かのん「クッキー?」
すみれ「コンビニで買ってたの、おやつに丁度良いかなって。ほら」
かのん「わぁ……いいの?」
すみれ「えぇ。早く食べないと勿体無いし」
かのん「ありがとう。早速もらうね」
すみれ「じゃ、私も座って……っと」

かのん「……す、すみれちゃんっ?」
すみれ「なによ」
かのん「えっと、その……」
かのん(ち、近くないっ?他の椅子空いてるのに、わざわざ隣の椅子に座るなんて……!)
かのん(しかもちょっと椅子が近付いてる気がするしぃ……!ちょっと体傾けたら当たっちゃうって!)
かのん「……、……な、なんでもない」
すみれ「そう?」

すみれ(わざわざ隣に座らなくてもとか、距離が近いとか。そんな感じのことを言いたかったんでしょうね)
すみれ(……ちゃんと意識、してくれてるのかしら。私のこと)

3: 2021/11/07(日) 03:37:07.39 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「よっ……と。ほら、好きに取って」
かのん「あ、ありがとう。えっと……」

すみれ(個包装されたクッキーが一個だけ手前に飛び出すように、わざわざ少し工夫して出してみたりして)
すみれ(そう、これはちょっとした悪戯心。あとは、かのんに合わせて手を伸ばして……)

かのん「これを……っ」
すみれ「……っと」

すみれ(ふふ、成功。ちょっと手が当たっただけなのに、肩が跳ねて)
すみれ(こんな悪戯をするのに、真っ当な理由なんてないけれど。かのんと二人の時は、気付いたらこんなことばかり考えてる)

かのん「あ……っ、ごめんねっ!?手、当たっちゃって……」
すみれ「別に。……食べないの?」
かのん「あ、食べる。食べるよっ」

かのん(そんな偶然ある!?なんかずっとすみれちゃんにドキドキしっぱなしなんだけど……!)
かのん(落ち着け私……最近ちょっとこういう偶然が多いってだけで、変な意味はないんだから……!)

すみれ(表情もコロコロ変わって面白い。私を惚れさせたあの時からは想像もつかないくらい)
すみれ(……。手、温かかったな……)

4: 2021/11/07(日) 03:37:53.46 ID:e/Ozt0/x0
かのん「……、……」
すみれ「あ、そういえば」
かのん「ひゃいっ!?」
すみれ「……何をそんなに驚いてるのよ」
かのん「ご、ごめんねっ。何かな」

すみれ「作詞。進んでるの?」
かのん「……えーっと」
すみれ「そう」
かのん「ま、まだ何も言ってないけどっ!?」
すみれ「見てれば分かるわよ。インプットが足りてないの?」
かのん「インプット……いや、今回はそんな感じでもなくて……」
かのん「最近は作詞しようとしても、ふっと変なことばかり浮かんでくるというか……」
かのん「で、そっちに意識を持っていかれて……みたいな?」
すみれ「……ふぅん。変なこと、ねぇ……それってどんなことなの?」
かのん「えっ、と……それは……」

5: 2021/11/07(日) 03:38:48.42 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「何よ、言えないこと?……もしかして、あんたも部室のパソコンで変なもの見たんじゃ……」
かのん「へっ!?いや、そんなのじゃないって!」
すみれ「なら、一体何なのよ」
かのん「うー……」

すみれ「悩みの類なら、解決すればスッキリ作詞出来るようになるかもしれないでしょ。現状、新曲は作詞待ちなんだし」
すみれ「それとも、話しにくい理由は……私が悩みの原因だから、だったりするのかしら」
かのん「えっ!?いや、すみれちゃんは何も悪くないよ!?うん。悪いのは私で……」

すみれ(つまり、私が原因であることは否定しないのね。……嬉しいけど、作詞が滞っているのは問題かしら)

6: 2021/11/07(日) 03:39:36.05 ID:e/Ozt0/x0
かのん(本人を前にして言えるわけないよー!でもこのまま言わないと、変な誤解されそうだし……)

かのん「……な、悩みというか……その……クラスの友達の話、なんだけど」
すみれ「友達の話?」
かのん「う、うん。その友達がね、よく一緒にいる子達がいるんだけど……」
すみれ「……」

かのん(よしっ、とりあえず誤魔化せてるっぽい。このまま友達の悩みってことにして、なんとか……っ)

7: 2021/11/07(日) 03:40:21.38 ID:e/Ozt0/x0
かのん「そのうちの一人がね、なんていうか……すごく、距離感が近いんだって」
すみれ「近い?」
かのん「うん。他の子には自分から距離を詰めたりしないんだけど、わ……その友達にだけは、近寄ってくるっていうか」
すみれ「スキンシップの範疇なんじゃない?友達にくっついてる人って結構いるでしょ」
かのん「確かにそうなんだけど……その友達以外には絶対しないし、逆にその友達に対してだけは密着ってくらい近付いてて」

かのん「でもそれは二人きりの時だけで、他の子がいるところではしないんだって。だけど、最近その……たまたま二人きりになる機会が多いから、どうしても気になってるらしくて」
すみれ「……ふぅん」

8: 2021/11/07(日) 03:41:24.15 ID:e/Ozt0/x0
かのん「私に気があるのかなーとか、意識してるのは私だけなのかなーとか。色々考えちゃって……聞こうにも聞けないし……」
かのん「……、……っていう友達の話、だったんだけどっ」
すみれ「なるほどねぇ」

すみれ(意識してくれてるのは確定。悪いのは私とか言っておいて友達の話だなんて、相当焦ってるみたいね)
すみれ(……こんなに反応してくれると、にやけそうになっちゃうじゃない。冷静じゃないのは私の方?)

9: 2021/11/07(日) 03:42:17.00 ID:e/Ozt0/x0
かのん「そ、その……すみれちゃんは、どう思う?」
すみれ「そうね……密着って言っても、どのくらいなのか分かりづらいし。周りに割とそういう子いるし」
すみれ「どのくらい近い?例えば……」
かのん「ふぇっ!?」
すみれ「……このくらい、かしら?」

かのん「え、えっと……!」
すみれ「それとも……こんな感じで、もっと近い?」
かのん「そ、そんな感じそんな感じっ。だから、離れて……!」
すみれ「はいはい」

すみれ(……ドクンドクンって、さっきからうるさっ。人の心臓って、こんなに強く鳴るのね)
かのん(今までで一番近かった気がする……!なんで、急に近付いて来たの……!?)

10: 2021/11/07(日) 03:42:57.85 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「それで、私がどう思うかだっけ」
かのん「う、うん」
すみれ「……結局のところ、その友達は何に悩んでいるの?」
かのん「な、何に……って……」
すみれ「距離が近いだけなら悩むことは無いわ。遠いならともかくね」
すみれ「大事なのは、距離が近いことに何を思うか。もしかすると、近過ぎるのは嫌なのかしら」
かのん「い、イヤじゃないよっ。イヤじゃないけど……恥ずかしいっていうか……」

すみれ「……恥ずかしい、ね。どうして?」
かのん「え、えっと……」
すみれ「恥っていうのは、第三者に見られることで初めて感じるもの。人におかしいって思われたくないって気持ち。だから人前に出る時は、恥をかかないように相応の準備を整えるものだけど……」
すみれ「相手の子はしたくてしているみたいだし、その友達もイヤがってはない。……何を、おかしいって思ったの?」
かのん「……、……」

11: 2021/11/07(日) 03:43:34.12 ID:e/Ozt0/x0
かのん「おかしい……っていうと、違うかもしれないけど。普通の友達の関係じゃ済まないような……」
かのん「一歩踏み込んだみたいな……そんな感じ?正直私はこれまで、そうじゃないんだろうなって思ってたから……」
かのん「このまま受け入れてもいいのかなって、モヤッとするんだ。でも今は曖昧なまま続いてて……踏み込みたくても、踏み込めない」

12: 2021/11/07(日) 03:44:37.64 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「……難しいわよね、人間関係って」
かのん「……本当にね」
すみれ「自分は踏み込みたくても、相手がそう思っているとは限らないし。お互いがそう考えていると、目の前に理想があるのに立ち止まったまま」
すみれ「……でも、その子は踏み込んだ」
かのん「あ……」
すみれ「後は、気持ち次第。同じように踏み込むのか、それとも……」

すみれ「……何にせよ、その子は普通の友達以上を望んでるからこそ踏み込んだってことじゃない?」
かのん「……そっか。そうだよね」

13: 2021/11/07(日) 03:45:39.42 ID:e/Ozt0/x0
すみれ「答えになっていたかしら」
かのん「うん。ちょっと、モヤモヤが晴れた気がする」
すみれ「そ、良かった。ふぁ……」
かのん「……欠伸?」
すみれ「寝不足なの。ちょっと寝てて良い?」
かのん「あ、うん。それなら避け……」
すみれ「椅子を繋げれば寝れそうね。よっ……と」
かのん「え、あっ、膝……!」
すみれ「おやすみぃー……」

かのん(ね、寝ちゃった。私の膝の上で……!)
かのん(そういうところなんだよ、すみれちゃん!いっつもそうやって私をドキドキさせて……!)
かのん(……でも、すみれちゃんの言ってたことが本当なら……踏み込んで、いいのかな)

すみれ(普通の友達以上を望んでるから踏み込んだ、なんて……ほとんど告白みたいなものじゃない)
すみれ(うわ、顔あっつ。多分真っ赤ね……かのんの膝で咄嗟に顔隠したけど、見られてないかしら)
すみれ(踏み込ませるために踏み込んだんだから、悩んでないでかのんも早く来なさいよ……ばか)

14: 2021/11/07(日) 03:46:22.86 ID:e/Ozt0/x0
かのん「……すみれちゃん、寝てる?」
すみれ「……、……」
かのん「起きてない……よね」

すみれ(寝てる?なんて聞き方、起きててほしくないからに決まってるものね)
すみれ(……聞き逃さないようにしないと。きっと、私の告白への答えなんだから)

かのん「……あのね、すみれちゃん」

15: 2021/11/07(日) 03:47:08.66 ID:e/Ozt0/x0
かのん「すみれちゃんのことはずっと、友達だって思うようにしてたけど……最近は、そうじゃないかもって感じるんだ」
かのん「偶然距離が近いだけでドキドキして、手が当たっただけで変な声出ちゃったけど……このドキドキも嬉しいし、なくなると寂しいから」

かのん「そもそも、すみれちゃんだけなんだよ?距離が近いだけでドキドキするのは」
かのん「すみれちゃんとだと、びっくりって感じじゃなくて……心臓がわぁーってなる感じ?……ダメだ、うまく言い表せないよ……」

16: 2021/11/07(日) 03:47:47.83 ID:e/Ozt0/x0
かのん「だから、えっと……私は、イヤじゃないっていうか……」
かのん「……ううん、こうやって立ち止まってるからダメなんだよね。すみれちゃんが踏み込んでくれたんだから、私も……」
かのん「すぅー……はぁー……」
すみれ「……っ」

17: 2021/11/07(日) 03:48:19.82 ID:e/Ozt0/x0
かのん「私もね、すみれちゃんともっと仲良くなりたい」
かのん「普通の友達より、もっと……特別な関係に、なりたい」
かのん「だから、もしもすみれちゃんが望んでくれているなら……」

18: 2021/11/07(日) 03:49:08.09 ID:e/Ozt0/x0
かのん「……なんて。聞こえてるわけ、ないのにね」
かのん「あーあ、すみれちゃんが起きるまで暇になっちゃった。どうしよっかなぁー」

すみれ(……さっきよりも心臓がうるさい。起きてること、バレてないわよね?)
すみれ(そっか……ちゃんと、伝わってたんだ)

かのん「わっ……すみれちゃん?」
すみれ「……、……」
かのん「急に抱き付いてくるなんて……抱き枕か何かとでも思ってるのかな」
かのん「……わ、髪サラサラだ……撫でてると気持ちいい」

19: 2021/11/07(日) 03:49:38.47 ID:e/Ozt0/x0
すみれ(ちょっと甘えてみようと思っただけなのに、まさか頭を撫でられるなんて)
すみれ(……あったかい。それに、ちょっと落ち着いて……あれ、ほんとに眠く……)
すみれ(……ま、いっか。寝てればきっと、このまま撫で続けてくれるわよね……)

かのん「ふふ、気持ち良さそうな寝顔」
すみれ「すぅ……すぅ……」
かのん「……、おやすみ」

20: 2021/11/07(日) 03:51:21.30 ID:e/Ozt0/x0
おわり。某板に一回貼ってたんですが、とんでもないミスが発覚したので修正して上げ直し。
すみかのの可能性を伝えたかった。

引用元: かのん「少しでも」すみれ「近くにいたいから」