1: 2015/07/25(土) 11:12:43 ID:74yxF3EI
ヒカル「え、奈瀬?」
奈瀬「久しぶりね」
ヒカル「そうだな」
奈瀬「あんた、こんなとこで何してんの?」
ヒカル「ああ。下宿でも探そうかなって。そういう奈瀬こそなんでこんなとこに?」
奈瀬「私は大学の帰り」
ヒカル「へー」
奈瀬「久しぶりね」
ヒカル「そうだな」
奈瀬「あんた、こんなとこで何してんの?」
ヒカル「ああ。下宿でも探そうかなって。そういう奈瀬こそなんでこんなとこに?」
奈瀬「私は大学の帰り」
ヒカル「へー」
2: 2015/07/25(土) 11:18:35 ID:74yxF3EI
奈瀬「そうだ。この間本因坊になったんだって?おめでと」
ヒカル「ありがと」
奈瀬「それにしても、あんたも随分偉くなったわよねぇ。まさか桑原先生から
タイトル奪うなんて」
ヒカル「結構苦労したよ。あの爺さん、対局で仕掛けて来るよりも、盤外戦
仕掛けてくる方が多かったかから」
奈瀬「そうなの?」
ヒカル「うん。最終戦までオレに封じ手させないようにしてあったし。聞いてくれよ。
最終戦でオレが封じ手したら『どうじゃ、書き間違えてないか不安になって来るじゃろ』
とか言って脅してくるし」
奈瀬「うわー」
ヒカル「緒方さんにその話したら『お前もやられたか』って。あの爺、本当に
あの手この手で本因坊の座に座ってやがった」
ヒカル「ありがと」
奈瀬「それにしても、あんたも随分偉くなったわよねぇ。まさか桑原先生から
タイトル奪うなんて」
ヒカル「結構苦労したよ。あの爺さん、対局で仕掛けて来るよりも、盤外戦
仕掛けてくる方が多かったかから」
奈瀬「そうなの?」
ヒカル「うん。最終戦までオレに封じ手させないようにしてあったし。聞いてくれよ。
最終戦でオレが封じ手したら『どうじゃ、書き間違えてないか不安になって来るじゃろ』
とか言って脅してくるし」
奈瀬「うわー」
ヒカル「緒方さんにその話したら『お前もやられたか』って。あの爺、本当に
あの手この手で本因坊の座に座ってやがった」
3: 2015/07/25(土) 11:24:18 ID:74yxF3EI
奈瀬「なかなかえげつないわねぇ。でも、そんな相手からタイトルとったんだし、
やっぱあんたは凄いよっ」
ヒカル「あはは……。でも、オレの本当の闘いはこれからだよ」
奈瀬「えっ?」
ヒカル「オレはまだ桑原先生からタイトル奪っただけ。本当に
大変なのはこれからさ」
ヒカル「……上を倒してくのはそんなに大変な事じゃない。本当に怖いのは
下から追いかけて来る奴だから」
奈瀬「……」
ヒカル「まあ、オレもまだ若手だから、下っていうよりは同期だけどな。あと、
上もまだまだ返り咲く気まんまんみたいだから、そいつ等に負けないように
しないと」
やっぱあんたは凄いよっ」
ヒカル「あはは……。でも、オレの本当の闘いはこれからだよ」
奈瀬「えっ?」
ヒカル「オレはまだ桑原先生からタイトル奪っただけ。本当に
大変なのはこれからさ」
ヒカル「……上を倒してくのはそんなに大変な事じゃない。本当に怖いのは
下から追いかけて来る奴だから」
奈瀬「……」
ヒカル「まあ、オレもまだ若手だから、下っていうよりは同期だけどな。あと、
上もまだまだ返り咲く気まんまんみたいだから、そいつ等に負けないように
しないと」
4: 2015/07/25(土) 11:29:03 ID:74yxF3EI
奈瀬「……」
ヒカル「奈瀬?どうかした?」
奈瀬「あ、ご、ごめん。いや、なんだか進藤随分と大人っぽくなったなって」
ヒカル「そう?」
奈瀬「うん。私の知ってる進藤は生意気で目上の人に対してもタメ口で、背の低い
やんちゃ坊主だったもの」
ヒカル「タメ口は今もだけどな」
奈瀬「あはは」
ヒカル「でも、オレだって少しは成長したさ。奈瀬の知ってるオレって院生の頃の
オレだろ?奈瀬って和谷の研究会も来なかったし」
奈瀬「うん」
ヒカル「あれからもう3年だぜ。オレももう17だし」
ヒカル「奈瀬?どうかした?」
奈瀬「あ、ご、ごめん。いや、なんだか進藤随分と大人っぽくなったなって」
ヒカル「そう?」
奈瀬「うん。私の知ってる進藤は生意気で目上の人に対してもタメ口で、背の低い
やんちゃ坊主だったもの」
ヒカル「タメ口は今もだけどな」
奈瀬「あはは」
ヒカル「でも、オレだって少しは成長したさ。奈瀬の知ってるオレって院生の頃の
オレだろ?奈瀬って和谷の研究会も来なかったし」
奈瀬「うん」
ヒカル「あれからもう3年だぜ。オレももう17だし」
5: 2015/07/25(土) 11:34:09 ID:74yxF3EI
奈瀬「そっか。……そうよね。進藤がプロ試験受かってからもう3年かあ」
進藤「そういえば奈瀬は今どうしてんだ?大学生ってさっき言ってたけど、
今年のプロ試験受けないのか?」
奈瀬「私は……進藤みたいに実力ないし。院生も卒業しちゃったし」
ヒカル「そっか。院生は18歳までだっけ」
奈瀬「うん」
進藤「そういえば奈瀬は今どうしてんだ?大学生ってさっき言ってたけど、
今年のプロ試験受けないのか?」
奈瀬「私は……進藤みたいに実力ないし。院生も卒業しちゃったし」
ヒカル「そっか。院生は18歳までだっけ」
奈瀬「うん」
6: 2015/07/25(土) 11:39:40 ID:74yxF3EI
ヒカル「でも、なんだかもったいないな」
奈瀬「えっ?」
ヒカル「奈瀬の碁、オレは結構好きだったよ。ツボに嵌ったときなんか
怒涛のように攻めてくるし。たまに思いがけないとこに打ったかと思うと
劣勢の局面でも跳ね返してくるし」
奈瀬「本因坊のタイトル持ってる進藤に言われてもなあ」
ヒカル「んなことないって。奈瀬は調子良いとき本田さんにも勝ってたじゃん。
本田さんだってプロで頑張ってる。そんな本田さんに調子が良いときだからって
勝ててる奈瀬が弱いハズない」
奈瀬「ありがと。お世辞でも、そう言ってもらえると嬉しいかな」
奈瀬「えっ?」
ヒカル「奈瀬の碁、オレは結構好きだったよ。ツボに嵌ったときなんか
怒涛のように攻めてくるし。たまに思いがけないとこに打ったかと思うと
劣勢の局面でも跳ね返してくるし」
奈瀬「本因坊のタイトル持ってる進藤に言われてもなあ」
ヒカル「んなことないって。奈瀬は調子良いとき本田さんにも勝ってたじゃん。
本田さんだってプロで頑張ってる。そんな本田さんに調子が良いときだからって
勝ててる奈瀬が弱いハズない」
奈瀬「ありがと。お世辞でも、そう言ってもらえると嬉しいかな」
7: 2015/07/25(土) 11:49:35 ID:74yxF3EI
ヒカル「世辞じゃねえよ」
奈瀬「ふふっ。それより進藤。なんでまた下宿先なんか探してんのよ」
ヒカル「ああ、それ?それは家族と生活時間が合わなくなっちまったからかな」
奈瀬「ふーん?」
ヒカル「オレの家ってさ。おとうさんは普通のサラリーマンだし、おかあさんも
普通の主婦なんだよ。オレがプロになるまで碁界のことなんか何も知らなかった
普通の一般人」
奈瀬「ふんふん」
ヒカル「最近さ。オレ、対局で地方行ったり、いろんな研究会に顔出して夜まで
打ったり、たまに泊りがけで打ったりしてるんだ」
奈瀬「うん」
ヒカル「でも、オレがそんなんだから家族に迷惑かけててさ」
ヒカル「おかあさんもオレが家にいるのかいないのか分かんないから、ご飯の
準備してもいいのかしない方がいいのかとかで困ってたり、夜中にオレが家
に帰ったときなんか、疲れて寝てるおとうさん起しちゃったりさ」
奈瀬「ふふっ。それより進藤。なんでまた下宿先なんか探してんのよ」
ヒカル「ああ、それ?それは家族と生活時間が合わなくなっちまったからかな」
奈瀬「ふーん?」
ヒカル「オレの家ってさ。おとうさんは普通のサラリーマンだし、おかあさんも
普通の主婦なんだよ。オレがプロになるまで碁界のことなんか何も知らなかった
普通の一般人」
奈瀬「ふんふん」
ヒカル「最近さ。オレ、対局で地方行ったり、いろんな研究会に顔出して夜まで
打ったり、たまに泊りがけで打ったりしてるんだ」
奈瀬「うん」
ヒカル「でも、オレがそんなんだから家族に迷惑かけててさ」
ヒカル「おかあさんもオレが家にいるのかいないのか分かんないから、ご飯の
準備してもいいのかしない方がいいのかとかで困ってたり、夜中にオレが家
に帰ったときなんか、疲れて寝てるおとうさん起しちゃったりさ」
8: 2015/07/25(土) 11:52:16 ID:74yxF3EI
奈瀬「ケータイで家に連絡とかは?」
ヒカル「仕事中は邪魔になるから切っちゃうんだよな。そうすると電源
つけるのも忘れちゃって」
奈瀬「ああ。和谷もそんなこと言ってたわね確か」
ヒカル「うん。家族はオレに何も言わないけど、やっぱりオレも和谷みたい
に下宿先さがしてそっちに移った方が良いかなって」
奈瀬「なるほどねー」
ヒカル「仕事中は邪魔になるから切っちゃうんだよな。そうすると電源
つけるのも忘れちゃって」
奈瀬「ああ。和谷もそんなこと言ってたわね確か」
ヒカル「うん。家族はオレに何も言わないけど、やっぱりオレも和谷みたい
に下宿先さがしてそっちに移った方が良いかなって」
奈瀬「なるほどねー」
9: 2015/07/25(土) 11:56:49 ID:74yxF3EI
奈瀬「でも、あんた料理とかできんの?」
ヒカル「う……」
奈瀬「はあ。そんなとこまで和谷を見習わなくても良いのに」
ヒカル「あはは……。それより奈瀬、時間あるなら今から少し打たない?」
奈瀬「え?」
ヒカル「久しぶりに会ったんだしさ。一局打とうよ」
奈瀬「でもあんた、下宿先さがしに来たんでしょ?」
ヒカル「そーだけど。別に急いでないからな」
奈瀬「そうなの?それなら私は別に構わないけど…」
ヒカル「じゃ、そこに碁会所あるから入ろうぜ」
ヒカル「う……」
奈瀬「はあ。そんなとこまで和谷を見習わなくても良いのに」
ヒカル「あはは……。それより奈瀬、時間あるなら今から少し打たない?」
奈瀬「え?」
ヒカル「久しぶりに会ったんだしさ。一局打とうよ」
奈瀬「でもあんた、下宿先さがしに来たんでしょ?」
ヒカル「そーだけど。別に急いでないからな」
奈瀬「そうなの?それなら私は別に構わないけど…」
ヒカル「じゃ、そこに碁会所あるから入ろうぜ」
10: 2015/07/25(土) 11:58:31 ID:74yxF3EI
そんなわけで碁会所。
ヒカル「んじゃ、オレが握るな」ジャラ
奈瀬「これで」
ヒカル「2,4、6、……12。奈瀬が黒」
奈瀬「お願いします」
ヒカル「お願いします」
奈瀬「……」パチ
ヒカル「んじゃ、オレが握るな」ジャラ
奈瀬「これで」
ヒカル「2,4、6、……12。奈瀬が黒」
奈瀬「お願いします」
ヒカル「お願いします」
奈瀬「……」パチ
11: 2015/07/25(土) 11:59:58 ID:74yxF3EI
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル(……なんだか、懐かしいな。こういうの)
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル(……なんだか、懐かしいな。こういうの)
12: 2015/07/25(土) 12:03:45 ID:74yxF3EI
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル(最近ずっとピリピリした空気でばっかり打ってたからかな。あかりも
高校忙しそうにしてるし、あいつとも暫く打ってない)
ヒカル(ピリピリした空気が嫌なわけじゃないけど、たまにはこういうのも
いいかも)
ヒカル(佐為も言ってたっけ。気持ちを落ち着けるのに気楽に打つのも
悪くないって)
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル(最近ずっとピリピリした空気でばっかり打ってたからかな。あかりも
高校忙しそうにしてるし、あいつとも暫く打ってない)
ヒカル(ピリピリした空気が嫌なわけじゃないけど、たまにはこういうのも
いいかも)
ヒカル(佐為も言ってたっけ。気持ちを落ち着けるのに気楽に打つのも
悪くないって)
13: 2015/07/25(土) 12:08:09 ID:74yxF3EI
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬(……やっぱり強い。危機迫る感じはしないし、落ち着いた雰囲気で
打ってるから本気じゃなのは分かってる)
奈瀬(でも、やっぱり進藤は強い。まるで指導碁打って貰ってる感じ)
奈瀬(……って、それもそうか。私、院生の最後の年でも上位に8位以内
に入れなくてプロ試験は予選から。かたや進藤は本因坊のタイトル持ってる
トッププロ。レベルが違って当たり前)
奈瀬(……やっぱり、プロを諦めて正解だったかな。こんなに強いのがゴロゴロ
いる世界じゃ私なんか)
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬「……」パチ
ヒカル「……」パチ
奈瀬(……やっぱり強い。危機迫る感じはしないし、落ち着いた雰囲気で
打ってるから本気じゃなのは分かってる)
奈瀬(でも、やっぱり進藤は強い。まるで指導碁打って貰ってる感じ)
奈瀬(……って、それもそうか。私、院生の最後の年でも上位に8位以内
に入れなくてプロ試験は予選から。かたや進藤は本因坊のタイトル持ってる
トッププロ。レベルが違って当たり前)
奈瀬(……やっぱり、プロを諦めて正解だったかな。こんなに強いのがゴロゴロ
いる世界じゃ私なんか)
15: 2015/07/25(土) 12:16:15 ID:74yxF3EI
そして、ヒカル優勢の盤面のまま対局は進み。
奈瀬「ありません」
ヒカル「ありがとうございました」
奈瀬「ありがとうございました」
奈瀬「あー、やっぱ進藤には敵わなかったか」
ヒカル「でも、奈瀬も良く打ててた。強くなってるよ、奈瀬」
奈瀬「そ、そう?」
ヒカル「うん。やっぱりオレ、奈瀬の打つ碁好きだよ」
奈瀬「ありません」
ヒカル「ありがとうございました」
奈瀬「ありがとうございました」
奈瀬「あー、やっぱ進藤には敵わなかったか」
ヒカル「でも、奈瀬も良く打ててた。強くなってるよ、奈瀬」
奈瀬「そ、そう?」
ヒカル「うん。やっぱりオレ、奈瀬の打つ碁好きだよ」
16: 2015/07/25(土) 12:38:56 ID:74yxF3EI
奈瀬「そんなにおだてないでよ。勘違いして、いつまでも未練たらしくプロ
になる夢追いかけさせるつもり?」
ヒカル「……」
奈瀬「ごめん。でも良いんだ。院生卒業した年に師匠からも離れたし」
奈瀬「今の私の周りに碁を打てる人なんて全然いない。伊角くんなんか
と違って、私の腕じゃ棋譜並べだけしてても上達しないもの」
ヒカル「奈瀬の周り、碁を打つ人いないの?」
奈瀬「うん。だから、久しぶりに進藤と打てて今日は楽しかったよ。ありがと」
になる夢追いかけさせるつもり?」
ヒカル「……」
奈瀬「ごめん。でも良いんだ。院生卒業した年に師匠からも離れたし」
奈瀬「今の私の周りに碁を打てる人なんて全然いない。伊角くんなんか
と違って、私の腕じゃ棋譜並べだけしてても上達しないもの」
ヒカル「奈瀬の周り、碁を打つ人いないの?」
奈瀬「うん。だから、久しぶりに進藤と打てて今日は楽しかったよ。ありがと」
17: 2015/07/25(土) 12:44:24 ID:74yxF3EI
ヒカル「オレも楽しかった」
奈瀬「そう?私みたいなへぼと打って楽しかったの?」
ヒカル「へぼなんかじゃねえって。オレ、久しぶりに奈瀬と打てて楽しかったよ。
気心が知れてるからかな。ピリピリした空気じゃなくて凄く打ちやすかった」
奈瀬「だからそれ、私が弱いからでしょ」
ヒカル「だからあ!」
奈瀬「はいはい。分かった、分かったから!もう自分が弱いなんて言わないから!」
奈瀬「でもね、私とあんたじゃ住む世界が違うの!そこんとこは自覚しときなさいよ」
ヒカル「…む」
奈瀬「やれやれ」
奈瀬「そう?私みたいなへぼと打って楽しかったの?」
ヒカル「へぼなんかじゃねえって。オレ、久しぶりに奈瀬と打てて楽しかったよ。
気心が知れてるからかな。ピリピリした空気じゃなくて凄く打ちやすかった」
奈瀬「だからそれ、私が弱いからでしょ」
ヒカル「だからあ!」
奈瀬「はいはい。分かった、分かったから!もう自分が弱いなんて言わないから!」
奈瀬「でもね、私とあんたじゃ住む世界が違うの!そこんとこは自覚しときなさいよ」
ヒカル「…む」
奈瀬「やれやれ」
19: 2015/07/25(土) 12:53:22 ID:74yxF3EI
奈瀬「そーゆーとこは子供のままなんだから」
奈瀬「あんまりそんなこと言ってると、無理やり私の師匠にしちゃうわよ!
私がプロになるの諦めさせないんだから、それくらい面倒みる覚悟で言
ってるのよね!?」
ヒカル「な…」
奈瀬「ほら、困るでしょ。あんた忙しいんだから、私なんかに構ってないで
タイトルの防衛戦、どうやって戦うかでも考えときなさいよ」
ヒカル「……」
奈瀬「なによ」
ヒカル「分かった。オレ、奈瀬の師匠やるよ」
奈瀬「はあ?」
ヒカル「オレだって本因坊のタイトル持ってんだぜ。弟子を
取ってもおかしくねーだろ」
奈瀬「あんまりそんなこと言ってると、無理やり私の師匠にしちゃうわよ!
私がプロになるの諦めさせないんだから、それくらい面倒みる覚悟で言
ってるのよね!?」
ヒカル「な…」
奈瀬「ほら、困るでしょ。あんた忙しいんだから、私なんかに構ってないで
タイトルの防衛戦、どうやって戦うかでも考えときなさいよ」
ヒカル「……」
奈瀬「なによ」
ヒカル「分かった。オレ、奈瀬の師匠やるよ」
奈瀬「はあ?」
ヒカル「オレだって本因坊のタイトル持ってんだぜ。弟子を
取ってもおかしくねーだろ」
20: 2015/07/25(土) 12:58:20 ID:74yxF3EI
奈瀬「そりゃどーだけど、あんた本気で言ってんの?」
ヒカル「本気も本気。大真面目に言ってるよ」
奈瀬「なんで私にそんなに」
ヒカル「さっきも言ったろ。もったいねえって。それに奈瀬も諦めてないみたいだし」
奈瀬「わ、私は!」
ヒカル「本当に諦めてんなら、オレにそんな態度取るはずない!諦めきれないから
オレを挑発して自分に踏ん切りつけようとしてんだろ!見てて分かるぜ」
奈瀬「う…」
ヒカル「図星みたいだな」
奈瀬「し、進藤には分かんないよ!どれだけ頑張ってもプロ試験受からなかった
私の気持ちなんて!」
ヒカル「うん。分かんない」
奈瀬「だったらなんで!」
ヒカル「本気も本気。大真面目に言ってるよ」
奈瀬「なんで私にそんなに」
ヒカル「さっきも言ったろ。もったいねえって。それに奈瀬も諦めてないみたいだし」
奈瀬「わ、私は!」
ヒカル「本当に諦めてんなら、オレにそんな態度取るはずない!諦めきれないから
オレを挑発して自分に踏ん切りつけようとしてんだろ!見てて分かるぜ」
奈瀬「う…」
ヒカル「図星みたいだな」
奈瀬「し、進藤には分かんないよ!どれだけ頑張ってもプロ試験受からなかった
私の気持ちなんて!」
ヒカル「うん。分かんない」
奈瀬「だったらなんで!」
21: 2015/07/25(土) 13:03:25 ID:74yxF3EI
ヒカル「……オレも昔、碁をやめようとしたことあったんだ」
奈瀬「な…進藤が?」
ヒカル「うん。もう二度と自分は打っちゃいけないって、自分に
言い聞かせてた時期があった」
奈瀬「……」
ヒカル「でも、自分が打ちたいって気持ちは消えることはなかったな」
ヒカル「そして、ある日。囲碁仲間と打って気付かされたんだ」
奈瀬「何を?」
ヒカル「オレが碁を打つ理由」
奈瀬「!」
奈瀬「な…進藤が?」
ヒカル「うん。もう二度と自分は打っちゃいけないって、自分に
言い聞かせてた時期があった」
奈瀬「……」
ヒカル「でも、自分が打ちたいって気持ちは消えることはなかったな」
ヒカル「そして、ある日。囲碁仲間と打って気付かされたんだ」
奈瀬「何を?」
ヒカル「オレが碁を打つ理由」
奈瀬「!」
22: 2015/07/25(土) 13:07:23 ID:74yxF3EI
ヒカル「他の人から見たら、すごくちっぽけな事かもしれないけど、オレから
したら凄く大切な理由なんだ」
奈瀬「……」
ヒカル「だからかな。プロを諦めようとしてる奈瀬が、昔の自分にダブって見えた」
ヒカル「好きなんだろ、碁?」
奈瀬「……うん」
ヒカル「だったら奈瀬がプロになれるの手伝うよ。仲間だろ、オレ達」
奈瀬「進藤……。いいのかな?私、まだプロ目指しても」
ヒカル「やれるとこまで、やってみようぜ」
奈瀬「そっか……。うん、そうだね!」
したら凄く大切な理由なんだ」
奈瀬「……」
ヒカル「だからかな。プロを諦めようとしてる奈瀬が、昔の自分にダブって見えた」
ヒカル「好きなんだろ、碁?」
奈瀬「……うん」
ヒカル「だったら奈瀬がプロになれるの手伝うよ。仲間だろ、オレ達」
奈瀬「進藤……。いいのかな?私、まだプロ目指しても」
ヒカル「やれるとこまで、やってみようぜ」
奈瀬「そっか……。うん、そうだね!」
23: 2015/07/25(土) 13:16:29 ID:74yxF3EI
奈瀬「よろしくお願いします、師匠!」
ヒカル「ああ!」
この翌年、奈瀬はプロ試験を受験する。
結果は惜しくも敗れてしまうが、女流枠での合格を決め、プロとなる。
その後、プロ試験に合格したときの気持ちを取材で聞かれた時、
彼女はこう答えた。
「自分の実力だけで受かったとは思っていません。
私は良い仲間、良い師匠に恵まれました。
いつか私も師匠のように、自分以外の誰かの為に存在
出来たらと、思っています」
千年、二千年が、そうやって積み重なっていく。
遠い過去と遠い未来をつなげるために。
奈瀬「あら?進藤じゃない」 終
ヒカル「ああ!」
この翌年、奈瀬はプロ試験を受験する。
結果は惜しくも敗れてしまうが、女流枠での合格を決め、プロとなる。
その後、プロ試験に合格したときの気持ちを取材で聞かれた時、
彼女はこう答えた。
「自分の実力だけで受かったとは思っていません。
私は良い仲間、良い師匠に恵まれました。
いつか私も師匠のように、自分以外の誰かの為に存在
出来たらと、思っています」
千年、二千年が、そうやって積み重なっていく。
遠い過去と遠い未来をつなげるために。
奈瀬「あら?進藤じゃない」 終
24: 2015/07/25(土) 13:20:37 ID:74yxF3EI
おまけ
奈瀬「ねえ、師匠」
ヒカル「呼び方まで師匠にしなくていいよ。今まで通り進藤でいいよ」
奈瀬「じゃあ進藤」
ヒカル「ん、なに?」
奈瀬「進藤って下宿先さがしてたよね」
ヒカル「うん、まーな」
奈瀬「じゃあ、私の部屋に来ない?」
ヒカル「奈瀬の家?でも奈瀬の家族に迷惑掛るだろ」
奈瀬「それなら大丈夫、私一人暮らししてるから」
ヒカル「そうだったの?奈瀬の家って都内だったろ」
奈瀬「ねえ、師匠」
ヒカル「呼び方まで師匠にしなくていいよ。今まで通り進藤でいいよ」
奈瀬「じゃあ進藤」
ヒカル「ん、なに?」
奈瀬「進藤って下宿先さがしてたよね」
ヒカル「うん、まーな」
奈瀬「じゃあ、私の部屋に来ない?」
ヒカル「奈瀬の家?でも奈瀬の家族に迷惑掛るだろ」
奈瀬「それなら大丈夫、私一人暮らししてるから」
ヒカル「そうだったの?奈瀬の家って都内だったろ」
25: 2015/07/25(土) 13:25:07 ID:74yxF3EI
奈瀬「いつまでも親元にいたくなかったの」
ヒカル「ふーん」
奈瀬「それで、どうする?」
ヒカル「たしかに一緒に住んだらいつでも指導碁打てるか。オレはいいぜ」
奈瀬「えっ?あっ、そう?」
ヒカル「うん」
奈瀬(あれ、冗談で言ったんだけど、まさか進藤本気で言ってる?)
奈瀬「ね、ねえ進藤」
ヒカル「なに?」
奈瀬「ほんとーに私の部屋来る?」
ヒカル「うん。その方が奈瀬も勉強できていいだろ?」
奈瀬「あ、はは…」
奈瀬(今更冗談なんて言ったら怒られるかな。いや、でも進藤の言ってる事も
当然と言えば、当然か。もしかして気にしてるの私だけ!?)
ヒカル「ふーん」
奈瀬「それで、どうする?」
ヒカル「たしかに一緒に住んだらいつでも指導碁打てるか。オレはいいぜ」
奈瀬「えっ?あっ、そう?」
ヒカル「うん」
奈瀬(あれ、冗談で言ったんだけど、まさか進藤本気で言ってる?)
奈瀬「ね、ねえ進藤」
ヒカル「なに?」
奈瀬「ほんとーに私の部屋来る?」
ヒカル「うん。その方が奈瀬も勉強できていいだろ?」
奈瀬「あ、はは…」
奈瀬(今更冗談なんて言ったら怒られるかな。いや、でも進藤の言ってる事も
当然と言えば、当然か。もしかして気にしてるの私だけ!?)
26: 2015/07/25(土) 13:35:52 ID:74yxF3EI
奈瀬「あのー。先に言っとくけど、エOチな事とかしないでよ?」
ヒカル「お前、オレを何だと思ってんだよ」
奈瀬「だって、こんなに可愛い女の子と一緒に住むのよ!間違いが起こっても
おかしくないでしょ!」
ヒカル「あ……」
ヒカル「ご、ごめん!そっか、奈瀬は女だったな」
奈瀬「な、なに!?もしかしてあんた、私を女として見てなかったの!?」
ヒカル「いや、奈瀬って気が強いし、仲間って意識が強すぎて」
奈瀬「しんどぉぉぉぉ!!!」
ヒカル「わわわわ……」ダッ
奈瀬「こらっ!待ちなさいっ!」
ヒカル「ご、ごめんってばぁ!」
奈瀬「いーや、許さないんだから!」
ヒカル「お前、オレを何だと思ってんだよ」
奈瀬「だって、こんなに可愛い女の子と一緒に住むのよ!間違いが起こっても
おかしくないでしょ!」
ヒカル「あ……」
ヒカル「ご、ごめん!そっか、奈瀬は女だったな」
奈瀬「な、なに!?もしかしてあんた、私を女として見てなかったの!?」
ヒカル「いや、奈瀬って気が強いし、仲間って意識が強すぎて」
奈瀬「しんどぉぉぉぉ!!!」
ヒカル「わわわわ……」ダッ
奈瀬「こらっ!待ちなさいっ!」
ヒカル「ご、ごめんってばぁ!」
奈瀬「いーや、許さないんだから!」
27: 2015/07/25(土) 13:36:36 ID:74yxF3EI
この後、ヒカルの下宿先探しは白紙となり、しばらく自宅から奈瀬
の部屋に通ったり、奈瀬がヒカルの家に通ったりすることになる。
しかし、結局面倒だという理由で二人が同居生活するのに、そう時間は
掛らなかったという。
あかり「えええええぇぇぇぇぇっ!?」
今度こそ終わり
の部屋に通ったり、奈瀬がヒカルの家に通ったりすることになる。
しかし、結局面倒だという理由で二人が同居生活するのに、そう時間は
掛らなかったという。
あかり「えええええぇぇぇぇぇっ!?」
今度こそ終わり
28: 2015/07/25(土) 15:11:21 ID:NzKYy7Ps
続きの同棲編はよ
29: 2015/07/25(土) 15:43:13 ID:sIkalVnc
これからだろ?
30: 2015/07/25(土) 18:51:18 ID:MSKzUcT2
プロローグ終了か
続きはよ
続きはよ
34: 2015/07/25(土) 23:18:38 ID:74yxF3EI
あっちはもう少しあかり活躍させれたらいいかなと思ってます
ヒカ碁ssは大抵あかりと奈瀬(とくに奈瀬)の出番がないので、
たまには奈瀬メインのssがあってもいいと思う今日この頃
ヒカ碁ssは大抵あかりと奈瀬(とくに奈瀬)の出番がないので、
たまには奈瀬メインのssがあってもいいと思う今日この頃
引用元: 奈瀬「あら?進藤じゃない」
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