1: 2022/11/28(月) 09:11:54.75 ID:fRkl0HjV.net
~空き教室~

音楽科A「オラッ! 生意気なんだよ高咲!」ゲシッ

侑「う“っ……や、やめてお腹は……」

音楽科B「じゃあ腕いっちゃおうよ♡」

音楽科A「腕はピアノが弾けなくなるからダメだろ。オラッ!」ドゴッ

侑「ん“ぉお”っっっ」ピクピク

音楽科B「いい悲鳴で鳴くじゃんwさすが音楽科w」

音楽科A「悲鳴にいいも悪いもないだろ。オラッもう一発ッ!!」ドゴゴォ

侑「う“ぉっ……ァ…ァアあ」ガクガク

音楽科C「……ほら、そろそろ昼休み終わるよ。ここらで終わっとこう。高咲もさっさと回復しろよ?」

音楽科A「ちっ……おい高咲。もう調子に乗るなよ?」ペッ

侑「……」

音楽科B「返事はどうした高咲ィ!!」

音楽科A「腹に入ってんだから答えられるわけないだろ。オラ、行くぞ」ガララ

侑「……ゲホッゲホッ。お腹ばかり狙うなよ……」

侑「うぅ……痣になってないといいな……」フラフラ

2: 2022/11/28(月) 09:13:59.43 ID:fRkl0HjV.net
~同好会の部室~

侑「お待たせっ! みんな!」ガララ

かすみ「侑せんぱ~い♡ 待ってましたよぉ!」ドーン

侑「うっ……」

かすみ「えっ」

侑「あ、あはは……勢いがトマホークミサイル並みだね! うん! 元気が一番!」ニコッ

侑(お腹の痣は隠さないと……)

かすみ「元気だけなら負けませんよっ!!」

ランジュ「聞き捨てならないわ! 元気があれば何でもできる! ランジュを差し置いて元気を語るなんて中国四千年早いラ!!」

愛「はっはーっ! 元気ならアタシも負けないよ! 今日は誰が最後までランニングできるか、元気対決だっ!」

せつ菜「対決ですか! バトルですかっ! デュエルですか! うおおおおおおおお!! 燃えてきました!! 本物の優木せつ菜がスタミナ耐久対決に出ますよおおおおお!!」メラメラ

5: 2022/11/28(月) 09:16:19.65 ID:fRkl0HjV.net
侑「はは……元気だね、みんな」

歩夢「……侑ちゃん。ちょっと」グイッ

侑「え、なになに……」

愛「おっ、逢い引き? 愛だけに!」

ランジュ「合い挽き肉があるの? どこ?」ジュル

歩夢「ちょっと個人的な相談があって……」ガララ

~空き教室~

侑「それで、何? 歩夢」

歩夢「侑ちゃん」

侑「えっ、なになに。って近い! ちょっと近いよ歩夢!」

歩夢「逃げないで」ドンッ

侑「ひぁああ……これが壁ドン……。って、なんで両腕を上で固定されてるの? 何されるの私」ナスガママ

歩夢「ごめんね、侑ちゃん」バッ

侑「あ」

歩夢「……ッ。お腹の痣はなに!? 侑ちゃん!! 誰にやられたの!!」

侑「うぁ……は、離してよ歩夢! なんでもないから!」

歩夢「なんでもないわけないでしょ! こんな痛々しい痣……誰かに殴られるか蹴られでもしないと付かないよ!」

侑「いいって! 私一人でなんとかできるもん! 離してよ!」

歩夢「このっ……。じゃあ侑ちゃん。私の手を振りほどいてみてよ。私は片手で侑ちゃんの両腕を固定してるだけ。普通なら振りほどけるでしょ?」

6: 2022/11/28(月) 09:19:22.01 ID:fRkl0HjV.net
侑「舐めすぎだよ歩夢っ! とりゃ! とりゃあああ!! うりゃああああああ!!」

歩夢「侑ちゃん……!!(あまりに非力過ぎて自分で驚愕してる)」

侑「はぁ……はぁ……」

歩夢「……こんなんじゃ安心できないよ……。非力で乙女な腕力しかない私の腕を振りほどけないなんて」

侑(非力……?)

歩夢「侑ちゃん。私、侑ちゃんの力になりたいの。侑ちゃんが困ってるなら助けてあげたい。幼馴染が大切な幼馴染のことを心配するのって、そんなにおかしい?」

侑「……おかしく、ないよ。私も、歩夢が同じ学科の人に暴力を振るわれてたら同じように心配すると思うし、一言言ってやりたいって思う」

歩夢「同じ学科……。侑ちゃんに手を出した馬の骨は音楽科の人間なんだね?」ジッ

侑「あっ」

歩夢「音楽科の誰? 使ってる楽器は何? その楽器で主に使う体の部位はどこ?」

侑「あ、歩夢? それを聞いてどうするつもりなの……?」

歩夢「……大丈夫。侑ちゃんが心配することじゃないよ」ニコッ

侑「心配するよ! より教えられないし、教えるつもりは絶対ない!」プイッ

7: 2022/11/28(月) 09:23:27.56 ID:fRkl0HjV.net
歩夢「なっ! 侑ちゃん! 教えてよ! なんで教えられないの!?」

侑「……私、音楽科に転科するって決意してから、これくらいの試練はあると思ってた。レOの童Oを捧げる代償に、大いなる音楽力を得るって有名な音楽科だもん。まぁでも、性的じゃない暴力で歓迎されるとは思ってなかったけど……」

歩夢「そうだよ! いくら夢を追うためとは言っても、侑ちゃんは怖いもの知らず過ぎるよ!」

侑「うん……ごめん歩夢。覚悟はしたつもりだったけど、想定が甘かった。それは認めるよ」

歩夢「それじゃあ──」

侑「でも、普通科(バイセクシャル)には戻らないよ。私は夢に殉じるって決めてるから」

歩夢「……。どうしても、考えを変えるつもりはないんだね?」

侑「うん」

歩夢「侑ちゃんのその決意を固めた目。私、大好き。でも、その目の輝きが、ときめきが失われることを、私は絶対見過ごせない」

侑「それでも──歩夢「だから」

8: 2022/11/28(月) 09:24:09.65 ID:fRkl0HjV.net
歩夢「だからせめて。一人でもこの状況を打開できる術。それを得る協力はさせて?」

侑「……分かったよ、歩夢」ハハッ

歩夢「ありがとう、侑ちゃん」ニコッ

侑「じゃあそろそろ手を離してもらっていいかな?」

歩夢「うん。とりあえず今日は練習に戻ろう? 詳しくは明日説明するから」

侑「うん。分かった」

9: 2022/11/28(月) 09:27:40.57 ID:fRkl0HjV.net
~次の日の空き教室~

音楽科A「お前、今日も調子に乗ってたよな? いい加減覚えろっつてんだよッ!」ドスッ

侑「か“はっ……」ゴホゴホ

音楽科B「メリケンサックとかwやりすぎでしょw」

音楽科A「生分解性プラスチックでできてるから大丈夫だ、よッ!!」ゴスッ

侑「アァ“ッ”ッ“……お、おぇええ……」ビチャビチャ

音楽科B「んほぉ~wこりゃ今日の昼めしは厚焼き玉子、かな?w」

音楽科A「どう見ても塩分控えめで甘めに作られた卵焼きだろ」

侑「んぐぇッ……ぜぇぜぇ……出したくないのに……はゆむ……」

音楽科C「ほら。そろそろ昼休み終わるよ。そこらでやめときなよ」

音楽科A「ちっ……おい高咲! もう二度と! 舐めた態度とんじゃねぇぞ?」

音楽科B「次やったら二度と口聞けなくしてやるかんな? 許さないかんな? はしもと~~???」

音楽科A・C・侑「……」

音楽科A・B・C「……」ガララ

侑「……は、はぁ、はぁ……くそぅ、いったい私の何が気に入らないって言うんだ」

侑「あぁ、折角歩夢が作ってくれた玉子焼き、出ちゃったよ……。ごめんね、歩夢……」ポロポロ

10: 2022/11/28(月) 09:30:05.92 ID:fRkl0HjV.net
~放課後の部室~

歩夢「さて、みんなこれで帰ったね」

侑「うん。それで、昨日の話の続き、だよね?」

歩夢「うん。まぁ、話すより実際に見て貰った方が早いと思うから……」

侑「見る?」

歩夢「出でよ!! 神龍(シェンロン)!!」

侑「えぇっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

スクールアイドルの神様「いや、呼ばれても困るよ。オレ、ドラゴボの神龍じゃないんだから」

11: 2022/11/28(月) 09:32:43.69 ID:fRkl0HjV.net
歩夢「でも出てきてくれたじゃないですか」

スクールアイドルの神様「んまぁ、そうだけど……それで要件はなに? オレ、ポケモンSVの色違い厳選作業で忙しいんだけど」

歩夢「後で私の色違い6Vミミズズあげますから」

スクールアイドルの神様「え、マジ? じゃあ……」

侑「って、私を置いて話を進めないでよ! なにこれ!? どういう状況!? というか別に話は進んでないけど!」

歩夢「彼はスクールアイドルの神様。本当に心の綺麗なスクールアイドルにしか見えない存在なの」

スクールアイドルの神様「そうだよ。まぁ君はスクールアイドルではないけど、スクールアイドルでも通用する容姿だし見えるよ」

侑「えぇ、スクールアイドルの神様!? え、えぇ……?」

スクールアイドルの神様「それで? 願いはなに?」

歩夢「侑ちゃん、この高咲侑に、一人でいじめに対抗できるほどの力をください」

12: 2022/11/28(月) 09:34:40.36 ID:fRkl0HjV.net
侑「歩夢……」

スクールアイドルの神様「えぇ? そんなの歩夢ちゃんが介入すれば一発で解決できるでしょ。オレが力を与えるまでもないっしょ?」

侑「あ、あのっ!」

スクールアイドルの神様「ん?」

侑「私、自分一人の力で解決したいんです……。こうやってあなたに頼んでいる時点で破綻してるのかもしれませんが……。支えられる人は多くいても、立ち向かう時は一人で行きたいんです! これが、私に与えられた試練だって、そう思うから」

侑「それに、私が応援して、勇気を貰った同好会のみんなはソロで頑張ってる。私もここは正念場だって思うんです! お願いします! スクールアイドルの神様!!」

歩夢「……分かったでしょ? スクールアイドルの神様。侑ちゃんはこうと決めたら頑固なの。そういうところが可愛いの。ふふっ覚えてる侑ちゃん?あれは──」

スクールアイドルの神様「詠唱破棄ッ!」ポワワワワワ

歩夢「アレハマダワタシタチガオサナカッタショウガクロクネンセイノアツイナツヒノコトダッタヨネワタシハハシルユウチャンニオイツクノガヒッシデフフッイマデハワタシノホウガスタミナモハシルハヤサガウエダケドネ──」

歩夢「──だよね? 侑ちゃん♡」

侑「あぁうん……」

スクールアイドルの神様「歩夢ちゃんに邪魔されたけど、君の想いは伝わったよ。なんかもう色々面倒くさいし、はい」ポワワワワワ

13: 2022/11/28(月) 09:37:09.86 ID:fRkl0HjV.net
侑「う“っ”あ“あ”アアアアアアア!!!!」バリバリバリバリバリ

スクールアイドルの神様「はい。力は与えたよ。でも、力に溺れはしないようにね。良いことが無いから」

歩夢「ありがとうございました。後でミミズズ送りますね」

スクールアイドルの神様「うん。ついでに対戦もしよう」

歩夢「はい。それじゃあまた」

スクールアイドルの神様「ばいばい」フワワワワワワ

~侑の部屋~

侑「……ここは。あ、私の部屋……。あの後歩夢が運んでくれたのかな……?」

侑「後でお礼言わないと……。うぅん、喉乾いたな。水飲みにいこ……」

侑「……」スタスタ

侑「……え? なにこの鏡……え、え、なにこの私……え、これ私!?」

15: 2022/11/28(月) 09:40:03.30 ID:fRkl0HjV.net
 私がいつも朝制服をチェックするスタンドミラー。そこに映っていたのは、一言で言えば、巨躯だった。
 途轍もなく発達した肩回りの筋肉と、大木ほどに思える首の筋肉。柔らかな脂肪ではなく、弾性より硬性の方が高いであろう胸筋。スカートで無ければ入らなかったであろう凹凸激しく隆起した大腿部。
 巨躯の中に内包された今にも飛び出さんとする筋肉群。
 私の体は巌と表現するに相応しかった。

侑「これが……私?」

侑「た、試しに……」

 私は実験とばかりに近くにあったかすみんBOXを手に取る。

侑「……!?」

 驚愕した。私は手に持った瞬間、軽く握るだけでこのかすみんBOXを容易く握り潰せると理解したからだ。

侑「……んっ」ゴグシャァア

 握り潰す。いや、粉砕した、という表現の方が正しかった。
 そして私は決意する。

侑「反撃、開始だぁ」ニヤァ

 ──笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である。

48: 2022/11/28(月) 15:48:37.15 ID:fRkl0HjV.net
~とある公園~

子供「うわああああん。風船が木に引っかかっちゃったよぉ」グスン

母親「ほらほら、風船よりママの手を握りましょう?」

子供「やだぁ……やだぁっ!!」

母親「どうしましょう……」オロオロ

侑「どうしました?」ヒョコッ

母親「あぁ。うちの子がデパートで貰った風船、木に引っかけてしまったんです。どうしようか頭を悩ませている最中で……」

侑「へぇ……。じゃあちょっと待っててください」

母親「えっ?」

侑「ふぅ……。ふんっ」ムキムキムキムキッ!!!!

母親「!? オール〇イト……!?」

子供「ひあぁああ……」ジョボボボ

スーパームキムキ侑ちゃん「大丈夫だよ、子供」ニコッ

スーパームキムキ侑ちゃん「何も心配することはないよ。なんてったって──」ギュゥゥウウンッ!!!!

パシッ

スーパームキムキ侑ちゃん「この私、SMY(スーパームキムキ侑ちゃん)が来たからね」スッ

子供「あ、あ、あ……ありがとう……SMY(スーパームキムキ侑ちゃん)……」

49: 2022/11/28(月) 15:51:11.92 ID:fRkl0HjV.net
スーパームキムキ侑ちゃん「ふふっ」スタスタ

母親「あ、あのあの!! ありがとうございました!!」オジギ

スーパームキムキ侑ちゃん「どうってことないですよ。大いなる力には大いなる責任が伴う。だから私はこうして力を振るっているだけです」

子供「か、かっこいい……」ジョボボボボ

スーパームキムキ侑ちゃん「それでは……」スタスタ

スーパームキムキ侑ちゃん「……」

スーパームキムキ侑ちゃん「さて、ここらでいいかな?」バビュン

 うん。何となく選んだ建物の屋上だけど見晴らしがいいや。
 そしてさっき拾った大きめの石を……。

スーパームキムキ侑ちゃん「ふんっ」ゴグシャア

スーパームキムキ侑ちゃん「さて、さっきの子供は……と。あ、いた。風船片手にもう一方はソフトクリーム、ね。随分甘やかされてるんだ」

スーパームキムキ侑ちゃん「本当は私みたいなヒーローが現れることはないんだよ。子供……。現実を、教えてあげる」

スーパームキムキ侑ちゃん「思い描くイメージは……寄生獣の屋上から島田を打ち抜く投球シーン!!」バビューン

スーパームキムキ侑ちゃん「……!!」

51: 2022/11/28(月) 15:54:13.90 ID:fRkl0HjV.net
 私が投擲した小石達は子供が持っていた風船を的確に打ち抜き──いや、打ち抜くことはなかった。全ての狙いは外れ、近くにあったマンション一つが倒壊した。
 マンションの住人が全員機敏な動きで着地しているのが見えた。

侑「なっ……この力は、全てを暴力で叶えられる力じゃ無かったの……?」シュボンッ

侑「い、いや……。まだ力を授かってすぐだから。イメージ通りに行かなくても仕方がない、よね。うん。そうに違いない」

侑「早く学校に行かないと遅刻しちゃうし、細かいことは考えずに行こう」

~昼休みのとある空き教室~

音楽科B「ね、高咲w今日も調子に乗ってたよね?w」

侑「の、乗ってないよ! 私は普段通り過ごしてただけだよ! 難癖付けてきたのはそっちでしょ!?」

音楽科B「おいおいwAとCがいないからって強気じゃんw私こう見えてAより武闘派なんだよ?wAより優しくないから手加減できないけど、いい?w」

侑「や、やめてよ……」ガクガク

音楽科B「AとCが私抜きで何やってんのか知らないけどさwそのせいで虫の居所が悪いんだよねw」

侑「単にBさんは二人から鬱陶しがられてるだけじゃないの……?」

音楽科B「は……? お前もう生きて帰れると思うなよ? 私は、嫌われてない」

音楽科B「くらえッ!」ゴォッ

侑「ひぇッ!!」

53: 2022/11/28(月) 15:57:34.66 ID:fRkl0HjV.net
音楽科B「……え」

スーパームキムキ侑ちゃん「?」ギュッ

音楽科B「え、え、え……? 何その姿……高咲」

スーパームキムキ侑ちゃん「……w」

音楽科B「は? え? 嘘でしょ?w嘘、嘘に違いないよw何その見掛け倒しwつまんねぇことしてんじゃねぇよ!」シュババッ

スーパームキムキ侑ちゃん「……」ドドドドドド

音楽科B「嘘……私の八卦六十四掌が、効かない……?」ヨロヨロ

スーパームキムキ侑ちゃん「すぅっ……」

音楽科B「えっ、大気が……揺れて、る?」

スーパームキムキ侑ちゃん「ダァァアアアラッシャアアアアアアアアアア!!!!」ドガアアアアアアアアン!!!!

音楽科Bだったもの「」

スーパームキムキ侑ちゃん「さらにもう一発っ!!」スゴガガガガアアアアアアン!!!!

音楽科Bだとしても分からなくなったもの「」

スーパームキムキ侑ちゃん「……」

スーパームキムキ侑ちゃん「他愛もない。弱い。弱すぎるよ」

スーパームキムキ侑ちゃん「つまらないな。全く。暴力は虚し過ぎるよ」

スーパームキムキ侑ちゃん「ほら、起きて」キュイーン

音楽科B「……アアアアア!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「起きた?」

55: 2022/11/28(月) 16:00:29.95 ID:fRkl0HjV.net
音楽科B「はぁ、はぁ、はぁ……あぇ……私今、氏んで……おっ、おぇええええッッ!!」ビチャビチャ

スーパームキムキ侑ちゃん「うわ……。まぁいいや。ねぇBさん。大丈夫? 記憶は正常?」

音楽科B「うぇっうぇええええ……」

スーパームキムキ侑ちゃん「う~ん。ダメ、かなぁ? もう一回壊して再生すれば治るかなぁ?」

音楽科B「ッッ!! だ、大丈夫です!! 大丈夫ですから!! お願いします!! もう殺さないでください!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ふふっ。それでいいんだよ。それで」

音楽科B「は、はい……。そ、それで、私にこれ以上何か……?」

スーパームキムキ侑ちゃん「うん。あのさぁ、明日からも私のことを積極的に虐めて欲しいんだよね」

音楽科B「えっ……」

スーパームキムキ侑ちゃん「むしろ今までよりも苛烈にお願い♡」

音楽科B「な、何のために!? なんで、なんで!?」

スーパームキムキ侑ちゃん「でもね、一つだけ条件があるんだ」

音楽科B「じょ、条件……?」

スーパームキムキ侑ちゃん「度を越したいじめをしたら、また脳汁脳漿ぜ~んぶぶちまけるからね♡」

音楽科B「えっえっ……」

スーパームキムキ侑ちゃん「んん? 理解力ないなぁ。もしかしてまだ脳みそが修復しきってないのかな? やっぱりもう一回──」

音楽科B「は、はいっ!! 分かりました!! 分かりましたから殴るのは、もう……」

スーパームキムキ侑ちゃん「あっは♡うん♡いいよいいよぉ♡その恐怖に怯えるその表情、素敵だよ……♡」

音楽科B「そ、その……もう一つだけ聞きたいのですが……」

スーパームキムキ侑ちゃん「なにかな」

音楽科B「度を越したいじめ、って……どこからどこまでを言うんですか……?」

スーパームキムキ侑ちゃん「……w」

音楽科B「えっ……」

侑「ばいばい。また明日、楽しみにしてるよ」シュルルルル

音楽科B「姿が、戻って……」

音楽科B「どどどどどど、どうすれば……」

59: 2022/11/28(月) 16:03:09.40 ID:fRkl0HjV.net
~同好会部室~

侑「ワンツーサンシー、ワンツーサンシー」パンパン

かすみ「侑せんぱい。その変な掛け声、やめま、せんか……?」キュッキュ

侑「ほら、無駄口叩かない。あ」

かすみ「へぶッ! ……いったぁ、かすみんの鼻、折れてませんかぁ?」

しずく「大丈夫かすみさんっ!? ……うん。大丈夫だよ。鼻血が出てるかすみさんも可愛いよ♡」

かすみ「そ、そっか。鼻血が出ててもかすみんは可愛いんだ……って鼻血出てるの!?」

しずく「ふふっ嘘だよ嘘。綺麗なお鼻のままだよっ」

かすみ「も、も~しず子~」

侑「……」

侑(きっと、血まみれになったかすみちゃんも、美しいんだろうな……)

侑(私の今の力なら、一瞬で肉塊にもできる、けど。それじゃあ情緒が無い)

侑(もっと……もっと……真綿でゆっくり首を絞めるようにじっくりと……)

しずく「侑先輩?」

侑「……っ! あ、ご、ごめん。ちょっと考え事してた」

しずく「大丈夫ですか? あんな表情されているなんて……」

侑「え、あんな表情?」

しずく「あ、いえ……何でもありません! 早く練習に戻りましょう!」アセアセ

侑「あぁ、うん……」

しずく(言えない……。まるで、獲物を目の前にした殺人鬼みたいだった、なんて)

60: 2022/11/28(月) 16:05:00.68 ID:fRkl0HjV.net
~放課後の帰り道~

歩夢「──それで、どう? 侑ちゃん」

侑「あぁ……。うん」

歩夢「どうしたの?」

侑「い、いや。何でもないよ。スクールアイドルの神様には凄い力を貰ったからね。あの人には感謝しかないよ」

歩夢「そう? でも侑ちゃん、気を付けてね」

侑「何に?」

歩夢「スクールアイドルの神様も言ってたけど、力に溺れないように、ってこと。凄い力を貰ったとしても、それを振るうに値する精神は貰ってないから。ここぞという時だけに力は使うんだよ?」

侑「うん……」

歩夢「それじゃあ、今日は一緒に私の部屋でSIF(すごいいっぱいクソゲーフェスティバル)しよ? 侑ちゃんも好きそうなクソゲーいっぱい集めたんだ!」

侑「あ、いや……今日はちょっと用事があるんだ」

歩夢「そう? それなら仕方がないかな……。って、また音楽科の馬の骨じゃないよね?」

侑「うぅん。全く別のことだから心配いらないよ」

歩夢「そう? 分かった。侑ちゃんを信じるね」

侑「うん」

61: 2022/11/28(月) 16:06:49.50 ID:fRkl0HjV.net
~深夜の繁華街~

ヤクザA「クソッ、なんだか無性にイライラするぜ……適当に女でも抱きてぇ……」

ヤクザA「おっ? ナリはちいせぇが、なかなか豊かなモン持ってんじゃねぇか……」

侑「……」スタスタ

ヤクザA「おい嬢ちゃん。俺と一晩ぽむろうぜ?」

侑「……こっち来て」

ヤクザA「なんだよ。お前そっちの人間かぁ?」スタスタ

侑「ここで、いいかな」

ヤクザA「なんだぁ? こんな路地裏でやんのか? まぁどこでもいいけど、よ!」カチャカチャ

侑「ふんっ!!」ムキムキムキムキ!!

ヤクザA「あ……? あぁ!?」

スーパームキムキ侑ちゃん「……粗末なモン、私に見せんな!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「アンダリャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」バツンッ

ヤクザA「おっほおおおおおおおおお♡♡♡♡♡」ビクンビクンビクン

スーパームキムキ侑ちゃん「玉を片方潰されて悦んでるよ。救えない」

ヤクザA「おっほ♡♡♡♡おっほ♡♡♡♡おほほほほ♡♡♡♡」ビクンビクンビクン

スーパームキムキ侑ちゃん「さらにもう一発!!」バツツンッ!!

ヤクザA「ん“ほ”お“お”お“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”♡♡♡♡♡♡♡♡」ビクンビクンビクン

スーパームキムキ侑ちゃん「……」

スーパームキムキ侑ちゃん「お、おかしい。何も、何も感じない……。確かに、音楽科Bを粉砕した時は……」

スーパームキムキ侑ちゃん「……あ、あれ。音楽科Bの時も言うほど……」

警察A「おいっ! そこで何してる!」

スーパームキムキ侑ちゃん「っ! 警察! ここは逃げよう……」ホワワワワ

一応両方の玉が戻ったヤクザA「」ビクンビクンビクン

警察A「うわっ!! なんだこれ!! どれだけ過酷なオXXーをしたらこんなんになるんだ……」

警察A「おそろしい……でもそれ以上に哀しいヤクザ」

警察A「日常がオXXーだったはず……今こうしてアへ顔でいられるのが奇跡的なほどの……」

侑「……」タッタッタッタ

62: 2022/11/28(月) 16:09:00.17 ID:fRkl0HjV.net
~侑の部屋~

侑「なんなんだよ……この力は、なんなんだよ……」

侑「誰かを破壊する力じゃ無かったの? いじめてる奴らを排除して、私の生活の安寧を手に入れる。そんな力じゃ……」

侑「……え、いや。そんな力じゃ元々無かったはず。私はただ……いじめに対抗できる力を欲しただけ。それがなんでこんな力を……?」

侑「……あ、かすみんBOX」

かすみんBOXだったもの「」

侑「うぁあ……ッ」ドキドキ

侑「な、なにこれ……壊れたかすみんBOXを見ると……ドキドキする」

侑「手が千切れて、顔がいくつにも分割されてる……。それが、それが、どうしようもなく、美しく感じてしまう……」

侑「あ、アァアアア!! アアアアアアアアアアア!!」

侑「胸が搔き立てられるっ! 血が沸騰するっ! 興奮が、脳を支配していく……」

侑「あ、あっ……あっ……」

侑「あ、アハハハハハ……」



侑「──好きなものほど……傷つけたい……」ニヤァ



侑「フフッ……フハハハハハハハッ!!」ポロポロポロ

 侑は嗤う。高らかに嗤う。
 喜悦と悲哀が混濁し、それがどんな感情なのか分からないまま、涙を流して嗤う。
 宵闇は全ての感情を吸い込み、消失させる。

──彼女はいったい今、誰なのだろうか。

88: 2022/11/29(火) 09:17:08.93 ID:bwbXEqmn.net
~某所~

テ口リスト「ククク……血の金曜日までもうあと少しだ……」

テ口リスト「俺の人生は酷くつまらないものだった。だが、多くの犠牲の上に立つことで、俺の魂はそれよりも上であることが証明される」

テ口リスト「無辜の民を一網打尽にして、インフラに壊滅的な被害を与える」

テ口リスト「シンプルだが、それが故に効果的だ」

テ口リスト「ククク……Xデーが楽しみだな」

テ口リスト「クハハハハハハハハハ!!!!」

89: 2022/11/29(火) 09:19:35.74 ID:bwbXEqmn.net
~通学路~

侑「……」フラフラ

歩夢「あ、侑ちゃん! 今日はどうして先に行っちゃったの? 私、ずっと待ってたんだからね!」ポムポムッ

侑「あぁ、歩夢……。おはよう……」

歩夢「って……侑ちゃん、その顔どうしたの……? 酷い隈だよ? ちゃんと寝られてないの?」

侑「ちょっと……考え事しちゃってね」

歩夢「もしかしなくても、スクールアイドルの神様から貰った力が関係してるよね? あぁ、私がバカだったんだ。どくどく・やどりぎのたね・かげぶんしん・あまごいを覚えたルンパッパを使ってくるような人なんて、まともな訳なかった」

侑「……?」

歩夢「侑ちゃん。今日は学校休もう? 今侑ちゃんがどんな状況なのか、何に悩んでいるのか」

歩夢「──誰に、いじめられているのか教えて?」

侑「フ……フフフフフフ」

歩夢「侑、ちゃん……?」

侑「……その相手なら頃したよ」ニヤッ

91: 2022/11/29(火) 09:21:21.38 ID:bwbXEqmn.net
~屋上~

侑「あぁ……」

 眼下に広がるのは呑気な街並みだ。
 私がスーパームキムキ侑ちゃんなって能力を解放すれば、こんな街、一瞬で塵にできる。塵にできてしまう私がいるのに、こんなにも街は呑気だ。
 ……私は、危険な存在だ。
 この呑気で平和な街を汚すのは、きっと私だろう。それならば、私はここにいない方がいい。いなくなった方がいい存在だ。
 私の奥底に眠る、力を貰ったことで覚醒してしまった怪物がいつ目を覚ますか分からないのだから。

ガララッ

侑「……?」

かすみ「あっここにいたぁ侑せんぱ~いっ!」

侑「かすみちゃん……っ」

 ダメだ。今私の前に来ては……っ。

侑「うぐっ……」ドキドキ

 ダメだ。かすみちゃんの無垢な笑顔を見ると……私の中の獣が……!!

かすみ「ど、どうしたんですかっ!? 侑せんぱい!」タッタッタ

 あぁ、かすみちゃんの柔らかな手が触れる。以前の私のような何の力もない、弱弱しく儚い手のひら。
 そして、目線を上にやると白磁の細い首筋が見える。今の私なら、引きちぎれるし引き裂ける。
 だが、そんなことをしては勿体ない。折角の獲物だ。恐怖の感情を少しずつ呼び覚まし、じわり、じわりと嬲っていく。それが最も強い悦楽だ。

侑「かすみちゃん……」

かすみ「何ですか? 肩を貸しますよ! 私の肩を借りられるなんてそうそうないことですからね~?」ニヤニヤ

 嗚呼。抑えられない。抑えられない。抑えられない。

 ──抑えたく、ない。

92: 2022/11/29(火) 09:24:24.38 ID:bwbXEqmn.net
バァンッ!

侑「──」

音楽科A「よぉ、こんなとこにいたか。高咲」

かすみ「だ、誰ですか!? 侑せんぱいは今体調を崩してるんです! 用事なら後にしてください!」

音楽科A「おぉ? そうか? それなら──」

侑「待ってよ」ジッ……

侑「私なら平気。ごめんかすみちゃん。先にこっちの用事を終わらせてくるね」ニコッ

かすみ「え、え……本当に、大丈夫なんですか? 侑せんぱい……」

侑「うん。ちょっとアンニュイな気持ちになってただけ」

音楽科A「それならちょっと面貸せ。すぐに終わるからよ」

音楽科C「昼休みは短いんだから、ASAPで頼むよ」

侑「うん。じゃあかすみちゃん、また部室で」

かすみ「……はい」

~空き教室~

侑「それで……? 今日は授業中おとなしくしてたはずだけど」

 面倒だなぁ。なんでこんなタイミングが悪いんだろう。

音楽科A「ん? あぁ、今日は別に痛めつけようってんじゃない。今日の高咲は変に大人しかったしな」

 痛めつけない?
 なぜ?

93: 2022/11/29(火) 09:26:55.88 ID:bwbXEqmn.net
音楽科C「あ、ほら。来たよ」

ガララ

音楽科B「あwみんなもういるんだwって高咲……サン……もか……」

侑「うん」

音楽科A「オラッ、C!」

音楽科C「うんっ!」

音楽科A「オラッ! めでたいBの誕生記念だ! オラッ!」ドドーン

音楽科C「誕生日おめでとう! B!」パフパフッ

音楽科B「え……な、なにこれwなんですか、これw」

音楽科A「いやよぉ、今日はBの誕生日だろ? 私とCで企画したんだよ。サプライズ誕生日パーティーをさ」

音楽科C「はい。私とAから」スッ

音楽科B「えwえwなにこれw……中開けてもいいの?」

音楽科A「おうっ! 俺とCで考えに考え抜いたプレゼントだ」

音楽科B「へぇ……。こ、これ……」

音楽科A「あぁ、首輪だ」

音楽科B「は?」

音楽科A「Bってよぉ。いつも私たちの後をくっついてくるだろ? それがなんだか犬っぽくて可愛いんだよな。だから首輪だ。よく似合うと思うぜ?」

音楽科C「一応言っておくけど、首輪じゃなくてチョーカーだから。オシャレでしょ?」

音楽科B「……w」ポロポロ

音楽科A「お、おいどうしたよB……」オロオロ

音楽科B「な、なんかさw昨日仲間外れにされたとか考えてたの馬鹿らしく思えてきてwあははっwやっぱお前らしかいねぇよw」ポロポロ

94: 2022/11/29(火) 09:29:14.64 ID:bwbXEqmn.net
音楽科A「B……」

音楽科C「意外とさみしがり屋だよね、C。だからいつも後ろをついてくるんだろうけど」

音楽科B「そ、それで……なんで高咲…サン…がいるの……?」

音楽科A「あぁ、誕生日には一人でも多い方がいいだろ? 憎み憎まれな関係でもダチはダチだろ?」

侑「……」

音楽科B「う、うん……w」

侑「……」

侑「ねぇ、茶番は終わり?」

音楽科A「茶番……? いや、まだ誕生日パーティーは終わってねぇぞ?」

侑「はぁ……ったく。私だって忙しいのにさ。こんな茶番に付き合わせないでよ」

侑「ねぇ、B。私、言ったよね? 度を越したいじめをしたら脳漿も脳汁も、ぜんぶぶちまけるって」

音楽科B「ひぃ……」ストン

侑「なにも知らない気楽なヤツらに……ほんの少し痛みを……」ムキムキムキムキッ

音楽科A「な、なんだぁ!?」

音楽科C「なにこれ……」

スーパームキムキ侑ちゃん「……」

 不思議だ。あれほどイラついてた頭が冷や水を浴びたように冷静だ。
 ただ、事務的な作業のように潰すだけ。拳を握り、振り下ろすだけ。ただ、それだけ

96: 2022/11/29(火) 09:31:27.89 ID:bwbXEqmn.net
スーパームキムキ侑ちゃん「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」ギュゥゥゥウウウウウ!!!!

スーパームキムキ侑ちゃん「クラアアアアアアアアアッシュ!!!!!!!!」ドゴオオオオオオオン!!!!!

音楽科A・B・C「ひええええええええええええ!!」

 狙いが外れた?
 いや、Bが二人を押しのけて回避したんだ。面倒だなぁ……。

スーパームキムキ侑ちゃん「オ、オアエラ……ウ、ウゴウナ……」

 なんだこの声。私が発しているの?

スーパームキムキ侑ちゃん「ダマッテ……コオサ工口……ッ!!」

 まぁそんなの関係ない。今はこのノイズを取り除くだけだ。

音楽科A・B・C「ぴぃいいやああああああああああ!!!!」

ガラララッ!!!!

歩夢「侑ちゃん!!」

かすみ「侑せんぱい!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「っ!!」

歩夢「何やってるの侑ちゃん! あなたがしたいことはそんなことじゃないでしょう!?」

かすみ「そうですよ! 一人で全て解決しないでください! 侑せんぱいの問題は侑せんぱいだけの問題じゃありません! 侑せんぱいの問題は! 同好会のみんなで悩んで解決すべき問題です!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ウッウウ……」フラフラ

歩夢「それに何より……侑ちゃん。あなたの指は、拳を握るためじゃない。誰かを抱きしめて、誰かを癒すピアノを弾くための指でしょ……?」

かすみ「負けちゃダメです侑せんぱい! 大好きなかすみんの声も届かないんですか!?」

97: 2022/11/29(火) 09:34:57.08 ID:bwbXEqmn.net
スーパームキムキ侑ちゃん「ウッウアアアアアアアアア!!!!」ドガアアアアアン

かすみ「ほら! そこの人たち! 早く逃げてください!」

音楽科A・B・C「!!」ピューン!!

歩夢「くっ……。今の侑ちゃんは半ば力に取り込まれている。どうすればいいの。どうすれば侑ちゃんに声が届くの……?」

かすみ「そんなの簡単です! 侑せんぱいには、侑せんぱいを思い出させてあげればいいんです!!」

歩夢「……っ! うん! そうだねかすみちゃん!」

かすみ「やってください歩夢先輩! いつもの詠唱チャンスです!!」

歩夢「うん!! ねぇ侑ちゃん覚えてる? あれは──」

スーパームキムキ侑ちゃん「ウッウッウオオオオオオオオオアアアアアアアアアアン!!!!」

かすみ「効いてる……! 侑せんぱいの自我を乗っ取ろうとする意志と、取り込まれないように抵抗する侑せんぱい自身の意志が拮抗してる……!」

歩夢「うん。分かるよ。侑ちゃん。苦しいよね。今すぐ解放してあげる! そう、あの真冬で外の景色が真っ白だった中学三年生のあの日を覚えてる侑ちゃん? あの日も苦しかったよね。でも私たちだったから乗り越えられ──」

スーパームキムキ侑ちゃん「ガッガッアアアアアアアアアア!! グオオオオオオオアアアアアア!! ダ……ダユ……ム……」

かすみ「!! 今、歩夢先輩の名前呼びましたよ!! ダユムって!! 流石最強幼馴染!! 重みが違います!!」

98: 2022/11/29(火) 09:37:15.10 ID:bwbXEqmn.net
スーパームキムキ侑ちゃん「ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

歩夢「くっ……ダメっ! 私の幼馴染力だけじゃ侑ちゃんの理性を取り戻せない!」バチンッ

かすみ「な、なんでですか!?」

歩夢「たぶん、私の幼馴染力で押したとしても、それは一方向の力に過ぎないの。一方向からだけじゃ力が分散しちゃうっ!」

かすみ「それじゃあ……」

歩夢「うんっ。私の幼馴染力だけじゃないっ! かすみちゃんの後輩力を使って二方向から押せば、圧力で押し切れるはず……!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ボボオオオオオオオオオオオオン!!!!」

かすみ「あぁっ!? せっかく歩夢せんぱいが自我を少し戻したのにっ!!」

歩夢「御託を言っている暇はないよかすみちゃん! 行くよ!」

かすみ「はい! 歩夢先輩!!」

しずく「──ふふっ。水臭いですよ。二人とも」スッ

99: 2022/11/29(火) 09:40:04.26 ID:bwbXEqmn.net
かすみ「しず子!? どうしてここに!」

しずく「私だけじゃありませんっ! 皆さん勢揃いです!」

璃奈「りなちゃんボード『待たせたな』」

栞子「少々準備に手間取りました」

せつ菜「仲間が苦悶に喘いでいるなら駆けつける! それが本物の優木せつ菜というものです!!」ペカー

愛「有事の際にはゆうゆの為に友人が駆けつけるってね!!」ビシッ

ランジュ「無問題ラ! こんなのビュッフェ前よ!」

ミア「ふんっ。こんなの問題にもならないよ。It's a piece of cake」

果林「部室に行こうとしたらいつのまにかここに来ていたわ!!」バンッ

エマ「大丈夫だよ侑ちゃん! スイスの風が、私たちをここに呼んだんだよ!」

彼方「ん……んゆ……? 彼方ちゃんにぜ~んぶ任せなさいっ!」フンスッ

歩夢「ありがとうみんな!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ン“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“」ドパアアアアアアア!!!!!

かすみ「あぁっ! 登場シーンに尺を使い過ぎて、侑せんぱいの99%が乗っ取られてます!!」

100: 2022/11/29(火) 09:42:55.19 ID:bwbXEqmn.net
エマ「大丈夫だよ! 私たちならたとえ侵食率100%の侑ちゃんだって取り戻せるよ! 侑ちゃんを、トリモロスっ!」グッ

せつ菜「うおおおおおおおおおああああああああああああああああ!! 大声勝負なら負けませんよ侑さああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!」ドガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!

スーパームキムキ侑ちゃん「ドゥルルルルラアアアアアアアアアア!! ……エ、エマ……セ、セツナ……」

しずく「いい感じです!! 皆さん、畳みかけましょうっ!!」

一同「はい!/うん!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”!!!!!!!!!!」

──
────

ランジュ「はぁ、はぁ……やったの……ラ?」

璃奈「あ、それ、フラグ……」

侑「み、みんな……ありがとう」フラフラ

歩夢「侑ちゃん……!」

かすみ「よ“か”った“ですぅ……」ダキッ

果林「ふふっ。これは流石の私も貰い泣きしちゃうわ」ポロロ

101: 2022/11/29(火) 09:44:12.11 ID:bwbXEqmn.net
侑「みんなの思い……伝わったよ。私、こんなにもたくさんの人に愛されてたんだね……」

ミア「そうさ。ちょっと鈍感過ぎやしないか? ベイビーちゃん」

愛「ま、ラブの権化たる愛さんがいるから霞むのも仕方がないけどね! 今度からラブさんって呼んでもいいよ!!」

侑「んひょひょw……うっ、まだ、後遺症、が……」ヨロッ

彼方「ほら、侑ちゃん。彼方ちゃんのおやすみ枕だよ。これでゆっくり休みなぁ?」

エマ「私の膝枕でもいいよ」ポンポン

侑「ありがとう……でも。ごめんね。みんなとはいられない」

しずく「え……何でですか!? これ、もうクライマックスじゃないんですか!? ここで終わりでいいじゃないですか!! これ以上は引き延ばし、蛇足って言われますよ!!」

侑「違うんだよ、しずくちゃん。スクールアイドルの神様から貰った力はまだ燻ぶってる。いつまた覚醒して私の中の獣に宿るか分からないんだ」フラフラ

栞子「……侑さんダメです。あなたは孤独になってはいけない人間です。私たちが必ずあなたを支えます。ですから……!!」

せつ菜「そうです!! 侑さんだけを独りになんてさせません!! 本物のスクールアイドルは、仲間を独りになんて決してさせません!!」

侑「……優しいね。みんな。でもだからこそ、私は行かなきゃいけないんだ」

歩夢「侑ちゃん! ダメ! 行っちゃだめだよ!!」ガシッ

侑「歩夢……」ナデナデ

102: 2022/11/29(火) 09:46:44.00 ID:bwbXEqmn.net
侑「大丈夫だよ、みんな。歩夢が言ってくれたように、私のこの手は拳を握るためじゃない。誰かの背中を押して応援して、私のピアノで笑顔にするための手なんだ」

侑「……っ! 力の使い時が、来たみたいだ」

侑「……これが最後、かな? ちょっと寂しい気がするけど……ふんっ」ムキムキムキムキッ

スーパームキムキ侑ちゃん「ごめんね、歩夢」バッ

歩夢「侑ちゃん……」

 そこにいたのは、一切の威圧感を覚えさせない、巨大な壁だった。
 眼差しからは慈愛が溢れ、その一挙手一投足には優しさが溢れている。

かすみ「ふふっ。分かってましたよ侑せんぱい」

スーパームキムキ侑ちゃん「え?」

かすみ「ほら、これ」

スーパームキムキ侑ちゃん「これは……私の、かすみんBOX」

かすみ「一度は壊しちゃったんでしょうけど、こうして接着剤とかテープで補修されてます。侑せんぱいの本性が獣なら、直そうとするはずないじゃないですか。侑せんぱいの本当の姿は、“それ”なんですよ」ニコッ

スーパームキムキ侑ちゃん「……うん。そうだね」ガララ

彼方「侑ちゃん? 窓を開けてどこへ行くつもりなのかなぁ?」

スーパームキムキ侑ちゃん「助けを呼ぶ声が、私を待ってるんだっ」ニコッ

 瞬間、侑が壁を突き破る轟音が聞こえた。
 一同が目を開けた時、そこに侑はいなかった。

103: 2022/11/29(火) 09:49:15.26 ID:bwbXEqmn.net
璃奈「み、みんな! これ見て!!」

 璃奈がすごい剣幕でスマホのとある画面をみんなに見せる。
 それはとある全国ニュースのワンシーン。



──【悲報】特急列車。テ口リストにジャックされる



アナウンサー「【悲報】です! こちらの特急列車、テ口リストにジャックされた模様です!」

アナウンサー「特急列車はどんどんスピードを上げています! このまま止まらなければ終点はどうなってしまうのでしょうか……!!」

かすみ「な、なにこれ……」

璃奈「もしかしたら……侑さんはこれを止めに出ていったのかもしれない」

しずく「そんな! いくら壁を突き破る力があったって特急列車なんて無茶ですよ!!」

果林「もしかしたら、それが侑なりの食材と思っているのかもしれないわね」

ランジュ「食材……?」

栞子「確かに侑さんは多少調子に乗っていた部分があるのかもしれませんが……それでもこんなのは酷すぎます……」

彼方「んん? それってどういうこと?」

栞子「え? あぁ、これは小耳にはさんだことなんですが……」ホワワーン

104: 2022/11/29(火) 09:52:20.01 ID:bwbXEqmn.net
~とある日の侑~

侑「っべーまじべーわ」

音楽科A「どうしたんだ高咲? 何がべーんだ?」

侑「いや、まじべーの。昨日、20分しか寝てねぇの」

音楽科A「なに? 大丈夫なのか?」

侑『「んん~まぁ、大丈夫、かなぁ? 一昨日も30分しか寝てないし。ってか、今週の累計睡眠時間、1時間いってないしw」

音楽科A「お、おう……」

侑「あ、まじべーわ。まじ忙しべーわ。あー、べーわ!! べーわ!!」

音楽科A「……」

~またとある日の侑~

侑「あー、なんか今日調子悪いべーわ」チラチラ

侑「悪いべーわ……悪いべーわなぁ!?」チラチラ

音楽科B「……wどしたんw」

侑「え? え? え?w 聞いちゃう? そこ聞いちゃう?w うわぁ、聞いちゃうんだそこぉ……うわぁ、マジで?w聞いちゃうんだねぇ?w」

音楽科B「あ、いやw別に……w」

侑「んほぉおおおああああああwいや、実はさ、昨日さw作曲の調子悪くってさぁw」

音楽科B「あ、それw課題曲発表とかマジだりぃねw」

侑「んぉおん!! んぉおん!!」コクコク

音楽科B「え、なにそれ。肯定のつもり?w」

侑「いやぁマジさw作曲の調子悪くてさw」

侑「8曲しか曲w作れなかったwたははのはぁ~w」

侑「困っちゃうよねwほんとw8曲しか作れないとか、それでも音楽科かってw」オデコペチー

音楽科B「……」

~またまたとある日の侑~

侑「うわぁ、今日ってラ・カンパネラをみんなの前で弾くんだっけ」

音楽科C「うん。自分なりの解釈とか、鍵盤に込めなきゃいけないらしいけど……正直言って自信ない」

侑「分かる分かる。私も全然ないよぉ」アセアセ

教師「はい。では今日はラ・カンパネラを皆さんの解釈で弾いてもらいます。では最初にやりたい人は──」

侑「はい先生! 私やります! 一番自信ないんで!!」

一同「……w」

侑「じゃあ弾きますね!」

教師「どうぞ」

侑「~♪」ポロロロン

一同「!?!?!?!?!?(流れる音色が心地よ過ぎて度肝抜かれてる)」

侑「はい! 終わり! ってアレwみんなどうしたの?w」

侑「またワタシ何かやっちゃいました?」タハハ…

侑「音楽科に転科してすぐなんだけどなぁ~。あんまり目立つのは困っちゃうなぁ~」

一同「……」

105: 2022/11/29(火) 09:55:10.75 ID:bwbXEqmn.net
~そして現代へ~

栞子「──ということがあったみたいなんです」

エマ「とってもなろう系で黙れドンがキマイラアントだよぉ~」

歩夢「だから侑ちゃんはいじめられてたんだ……」

せつ菜「えぇ!? いじめですか!? 確かに調子に乗っている部分があったかもしれませんが、暴力行為に走っていい理由にはなりませんよ!!」

歩夢「ふふっ。侑ちゃんの調子に乗っちゃって痛い目を見るところ、そういうところも可愛いの」

ランジュ「今はそんなことどうでもいいラ!! 重要なのはあの電車を止めに侑が行ったかどうか、ってことよね?」

アナウンサー「また次なる速報です!!」

一同「!!!!」

アナウンサー「【悲報】建設途中の鉄道橋が終点の模様です!!」

愛「えっ……それってやばくない? 猛スピードで鉄道橋に突っ込んでいったら……」

璃奈「うん。真っ逆さまに落ちてみんな氏んじゃう。橋の高さにもよるけど……」

アナウンサー「またまた速報です!! 【悲報】鉄道橋の高低差、4949mな模様です!!」

愛「4949って氏──」

璃奈「愛さん。流石にそれは不謹慎。りなちゃんボード『言っていいことと悪いことがある』」

しずく「で、でも。まだ侑さんがそこ向かったと決まった訳じゃないんですよね……?」

アナウンサー「またまたまた速報です!! 【速報】謎の恵体ネキがスパイダーマン2みたいなことしてる模様です!!」

歩夢「恵体ネキって……。侑ちゃんだ!! 侑ちゃんはやっぱりそこにいるんだ……」

106: 2022/11/29(火) 09:58:05.70 ID:bwbXEqmn.net
スクールアイドルの神様「そうだね。侑は今特急列車と戦ってるよ」

かすみ「そうなんですね……ってあなたは一体誰ですか!!」ビクビクゥ!!

スクールアイドルの神様「あぁ、突然ごめん。オレはスクールアイドルの神様。本当に心の綺麗なスクールアイドルにしか見えない存在」

かすみ「それが何の用なんですかっ!! 今忙しいんですよ!!」プンスコ

スクールアイドルの神様「いや、君たちに伝えておこうと思ってね。侑に与えた【神なる万能の能力】だけど、もうすぐ枯渇するよ?」

一同「……え」

スクールアイドルの神様「オレは力を与えたけど、それは一時的な話に過ぎない。ちゃんと底はあるんだよ」

せつ菜「じゃあ!! いつ力は枯渇するんですか!? もし、電車を止めている最中に無くなってしまったら……」

スクールアイドルの神様「間違いなく轢殺だね。そして君の予想は当たってるよせつ菜。力が途中で消えて無くなり、そのまま侑は轢かれる」

歩夢「嘘……」ペタン

彼方「……これは不味いね。流石の彼方ちゃんもお目目ぱっちりだよ……」

スクールアイドルの神様「絶望するにはまだ早いよ。オレにも今回の件には責任の一端があると思うからね」

ミア「早くしろファッキン!!」

107: 2022/11/29(火) 10:00:36.54 ID:bwbXEqmn.net
スクールアイドルの神様「オレはスクールアイドルには力を与えてやれる。でも、スクールアイドルでは無いが近しい存在だった侑には力を与えられた。……与えることができてしまった」

スクールアイドルの神様「本来なら器ではないはずの彼女に与えてしまったせいで、力は制御を失いコントロールが困難になってしまった」

スクールアイドルの神様「今、彼女が力を使いこなしているのは、侑の才覚によるモノと、同好会を想う気持ち、そしてこの力を使わなければという献身が大きいんだろうね」

歩夢「そんなのはいいから早く力を!!」

スクールアイドルの神様「あぁうん。大体話したからあげるよ」ポワワワワワ

一同「……!!」

スクールアイドルの神様「でも気を付けてね。オレが与えられるのは潜在能力を大幅に上昇させることだけ。本来持っていない力を伸ばすことはできないんだ」

歩夢「……これが、私の……力……」グッ

歩夢「みんな!! ノリで行くよ!!」

一同「ノリ?」

歩夢「うん! ここまで全てノリと勢いと流れでここまで来れた!! だからこれからもノリと勢いと流れで行けば必ず成功するに違いないよ!!」

108: 2022/11/29(火) 10:03:04.74 ID:bwbXEqmn.net
歩夢「まずは果林さん!!」

果林「何かしら」

歩夢「侑ちゃんがいるであろう方向を勘でいいので指差してください!!」

果林「あそこ、かしらね」ピッ

歩夢「よし。指差した方向とは逆方向に侑ちゃんはいる! 果林さんはそのまま指差し続けて!!」

果林「少し不満だけれど分かったわ! これが私の役目だものね!」ピピピッ

歩夢「ミアちゃん!!」

ミア「よし、なんだって言ってくれ!」

歩夢「ミアちゃんはラスボス戦とかに流れてそうないい感じの英語の歌を歌って!!」

ミア「OK!! How can I break the fall How can I find my way back
To Who I was before this shadow fell~♪」

歩夢「これでみんなの力にさらにバフが掛かったはず!」

歩夢「次はせつ菜ちゃん!!」

せつ菜「はい!! 本物の優木せつ菜です!!」

歩夢「侑ちゃんのいるあっちの方向が邪魔だから【せつ菜☆スカーレットストーム】で消し飛ばして!!」

せつ菜「え、でもそれだとたくさんの犠牲者が……」

歩夢「あ……」

109: 2022/11/29(火) 10:05:16.34 ID:bwbXEqmn.net
彼方「歩夢ちゃん」

歩夢「彼方さん……?」

彼方「焦らなくても大丈夫だよ。それに、こんなノロノロやってたんじゃあ、ノリでも勢いでも流れでもないよ」

歩夢「……すみません。我を失ってました」

彼方「いいんだよ。それに大丈夫。みんな、自分のやるべきことは分かってる」

歩夢「みんな……」グスン

歩夢「分かったよみんな!! 私から言えることはただ一つだけ!! エンジョイアンドエキサイティング!! 行こうみんな!!」

一同「おおおおおおおおお!!」

彼方「それじゃあ一時的に目に見える範囲のみんなを仮氏状態にするよぉ~【すやぴビーム】!!」ビビビビビビビ

せつ菜「はっ! そうなんですね!! 仮氏状態という状態異常にすることで、即氏級のエネルギーを浴びても仮氏状態のまま生きることができるんですね!!」

彼方「うんっ。だから盛大にぶっ放しちゃってよせつ菜ちゃんっ」

せつ菜「うあああああああああおおおおおおおおおお!! 本物の優木せつ菜の【せつ菜☆スカーレットストーム】ですよおおおおおおおおおおおお!!!!!」ズドドドドドドドドドドドド

ミア「I can not break the fall Ican not find my way back♪」

璃奈「すごい……辺り一切が更地になってる。すごい威力……」

110: 2022/11/29(火) 10:08:23.46 ID:bwbXEqmn.net
愛「よし!! それじゃあみんな!! 愛さんが持ってる巨大はがし(もんじゃ焼くヘラみたいな奴)に乗って!!」

歩夢・かすみ・しずく・エマ・璃奈・栞子・ランジュ「うん!/はい!/分かりました!/ラ!」ヒョイッ

愛「うおおおおおおおお!! 行くぞおおおおおお!! 愛さんの全力投球!! どんなもんじゃあああああああああああい!!」ギュウウウウン!!!!

歩夢・かすみ・しずく・エマ・璃奈・栞子・ランジュ「わああああああああああああ!!!!!!!」ビュウウウウウン!!

歩夢「よし! このスピードなら侑ちゃんにも追いつける……!!」

かすみ「で、でも。いくら愛先輩が全力で投げたとしても、この人数じゃ重さで高度を保てませんよ!!」

璃奈「大丈夫!! 私に任せて!!」

璃奈「りなちゃんボード『対空モード』!!」ギュンギュンギュン!!

エマ「わぁ、りなちゃんボードが足場になっていくよぉ~」

璃奈「私はここで巨大はがしの足場を作る! だから早く行って!」

歩夢「ありがとう璃奈ちゃん!」

栞子「くっ、ですが、段々進路とは別の方向にズレています……! どうにか舵を修正しないと……!」

しずく「私に任せてください! 一世一代、大女優の魅せ時ですっ!」

111: 2022/11/29(火) 10:11:01.24 ID:bwbXEqmn.net
しずく「私は……巨大はがしの舵取り係……稀代の麒麟児であり、仲間の為ならどこまでも運んでいける名手……!!」ギンッ

しずく「面舵一杯です!!」ギュルルルルン

かすみ「すごい……侑せんぱいまで一直線だ!! さすがしず子!!」

歩夢「みんな! 侑ちゃんが見えてきたよ!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ぐっうぅ……止まら、ない……!!」グググ…

スーパームキムキ侑ちゃん「……!? みんな、なんで……」

歩夢「侑ちゃんの問題は同好会みんなの問題だって言ったでしょ!! だから助けに来たの!!」

かすみ「一緒に帰りましょう!! 侑せんぱい!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「みんな……ぐすん」ドドドドドドドドド

ランジュ「侑!!」

ランジュ「助けに来たわ!! このランジュが来たからにはもう無問題ラ!!」

ランジュ「中国四千年の重みをあげるわ!!」シュピーン

スーパームキムキ侑ちゃん「お、おおおおおお!! 中国四千年の重みが加わって電車の勢いが減衰していく……!! ありがとうランジュちゃん!!」

ランジュ「ふふん♪ 帰ったらみんなでビュッフェよ!!」

113: 2022/11/29(火) 10:13:54.55 ID:bwbXEqmn.net
栞子「侑さん! 私の声をよく聞いてください!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「うん!! なにかな栞子ちゃん!!」ドドドドドドドド

栞子「【あなたには電車を止める適性があります】!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「お、あ……!! うおおおおおおおお!! 電車を止める力が湧いてくる!! これが言霊って奴なんだね!! ありがとう栞子ちゃん!!」ドドドドドドドド

栞子「ふふっ、一番の適性は【虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】の適性ですよっ」

エマ「侑ちゃん、この子達も使って!!」バビュビュン!!

エマ「巨大ネーヴェちゃん!! 侑ちゃんのクッションになってあげてっ!!」

ネーヴェ「ンメー」ドドン

スーパームキムキ侑ちゃん「すごい……! ありがとうエマさん! ネーヴェちゃんのおかげで腰の負担がだいぶ軽減されたよ! これなら腰を痛めることなく電車を止められるよ!!」ドドドドドドドド

エマ「えへへ。帰ったら私の膝枕で癒してあげるからね!」

かすみ「侑せんぱい!! かすみんの無敵級フラッグ、侑せんぱいに預けます!!」バッ

スーパームキムキ侑ちゃん「これは……かすみちゃんの無敵級で見る旗(フラッグ)!! すごい……! 体の傷がどんどん癒えていく……。ありがとうかすみちゃん! 私、無敵だよ!」ドドドドドドドド

かすみ「帰ったら電車を撫でるんじゃなくて、かすみんをいっぱいい~っぱいっ! なでなでしてくださいねっ! 待ってますよ侑せんぱい!」

114: 2022/11/29(火) 10:16:18.22 ID:bwbXEqmn.net
歩夢「よし……このタイミングしかないっ!」ヒョイッ

スーパームキムキ侑ちゃん「歩夢!? ダメだよ歩夢! はがしから降りたら電車に轢かれちゃう!!」ドドドドドドドド

歩夢「大丈夫っ!」ピカー

歩夢「私の想い! 侑ちゃんへの気持ち! 2000系の勢いよりちっぽけだと、誰が決めたの!?」ハラララララララ

スーパームキムキ侑ちゃん「こ、これは……」ドドドドドドドド

歩夢「高らかに咲き誇る私の大好きを……手放さない為に……ッッ!」

スーパームキムキ侑ちゃん「ローダンセの華が、咲き誇っていく……。そうかっ! ローダンセの花言葉は【変わらぬ想い】! 歩夢は変わらぬ想いに守られて、体が不変の存在と化しているんだ! だから削られないし傷も付かない!!」ドドドドドドドド

歩夢「それだけじゃないよ!」🌸🌸🌸ハラララララララ

スーパームキムキ侑ちゃん「これは……私にもローダンセが……!? 私だけじゃない! 電車にも咲き乱れていく!!」🌸🌸🌸

スーパームキムキ侑ちゃん「そうか! ローダンセの変わらぬ想いが、電車の速度を変わらぬもの、つまりスピードゼロにしようと働いているんだ!!」🌸🌸🌸ドドド…

スーパームキムキ侑ちゃん「いけるっ!! 必ず止められる!! 私たちなら絶対にできるよ!! 行くよ歩夢!! みんな!!」🌸🌸🌸🌸🌸🌸

かすみ・しずく・璃奈・栞子・せつ菜・歩夢・愛・ランジュ・果林・エマ・ミア・彼方「おおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!!!」

スーパームキムキ侑ちゃん「これが!! 虹のようにそれぞれの思いを束ねた一撃だあああああああああああああ!!!!!!!!」🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸パァアアアア……!!!!

115: 2022/11/29(火) 10:19:30.08 ID:bwbXEqmn.net
スーパームキムキ侑ちゃん「……っっ」トトト…🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸

スーパームキムキ侑ちゃん「……っ」トト…🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸

スーパームキムキ侑ちゃん「……止まっ、た」ト…🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸

ランジュ「きゃあっ! やったわ! やったわ栞子っ!」ダキッ

栞子「やりました!」ギュッ

かすみ「よしっ! ハッピーエンドですねっ!」

しずく「ふふっ、帰るまでが船旅ですよ皆さんっ!」

スーパームキムキ侑ちゃん「あ……」シュボンッ

歩夢「ふふっ、あと数センチで真っ逆さまだったね、侑ちゃん」ニコッ

歩夢「って、侑ちゃん、体もとに戻って……」

侑「はは……良かった……」フラッ

かすみ「侑せんぱいっ!?」

歩夢「侑ちゃん……!!」スカッ

侑「あ、あれれ……」ヒュゥ……

侑(あれ……みんなが、遠のいて……)

 手を伸ばしても、どんどん遠のいていく……。まだ、みんなとやりたいことがあるのに……。
 あれ、私の手、こんなに小さかったっけ……。いや、元の大きさに、元の女の子に戻ったんだ……。
 ふふっ、やっぱり自分の体が一番、だね……。
 あ、意識、が……。



プツン……

116: 2022/11/29(火) 10:22:09.81 ID:bwbXEqmn.net
~エピローグ~

 あれからの話を語ろうと思う。
 あの後、鉄道橋から奈落に落ちた、と思われた私だったけど、しずくちゃんが操縦してた巨大はがしに助けられた。歩夢が「一番いいところ持ってかれたぁ~」って嘆いていたけど、助かったんだからいいじゃんね。
 そして、私が持っていた、いや、与えられたあの力だけど、今は何も感じない。
 ふんっ、ってやっても何も起こらないし、音楽科Bさん……Bちゃんが若干びくつくくらい。
 どうやらスクールアイドルの神様が言う限りだと、与えたエネルギーの全てを消化したって話らしい。それと、私はスクールアイドルではないのに、スクールアイドルに与える力を持った結果暴走した、とも言われた。
 うぅん。どうなんだろう。あぁ、暴走したからしょうがないよね、で済む話でも無いし、私の中に大好きを傷つけたいって気持ちがゼロな訳ではないだろうし。
 ……まぁそこを考えてもしょうがない。私は私で、私の底の底の部分を変えるなんて並大抵のことではない。今回のことをどう活かすかが重要だ。
 今回のことで私が学んだのは以下の通りだ。
 私の問題は同好会みんなの問題。同好会の誰かの問題は私とみんなの問題ってことだ。
 私が普通科から音楽科に行こうと、夢を追うために行動しようと、私と同好会のメンバーは深い場所で繋がっている。それが分かれば十分だと思う。
 後は……そうだね。
 借り物の力なのに自分の力だって過信しないこと。たぶん私はこれから先、消費者金融とかでお金は借りないと思う。借りた何かに関してはちょっとトラウマ級かも。
 あ、そうそう。今回の事件の発端はそもそも私が音楽科の子達に虐められてた、ってことなんだけど。どうやら私にも原因の一端はあったっぽい。まいったねこりゃ。
 でも暴力に走るのはよくない、ってことで生徒会長たるせつ菜ちゃん、ではなく菜々ちゃんからお小言があったらしい。
 それから私は音楽科Aちゃんに呼び出しを食らって、また殴られるのかな?でも今回は同好会全員が相手だぞ……ってブルってたんだけど、「私をボコボコにしろっ!!」って言うもんだから笑っちゃったよ。喧嘩っ早いだけで、そう悪い人じゃないんだなって分かった。まぁ、言われた通りパンチとかキックしたんだけど、私の体の方が逆に悲鳴を上げちゃったよ。Aちゃんは暴力を振るう時手加減をしてたらしいけど、私にとっては手加減でも致命傷なんだよね。全く、やれやれだよ。
 それじゃあ、今の話をしようか。
 私の健康状態は良好も良好。まぁスーパームキムキ侑ちゃんの時の全能感の残滓なのか、たまに肉体と心のズレは感じるけど、それはいずれ治るだろう。
 せつ菜ちゃんが放ったせつ菜☆スカーレットストームで壊れた建物はスクールアイドルの神様が元通り直してくれた。彼方さんが仮氏状態にした人も元通り。
 あ、そうだ。あの時のテ口リストはあの後普通に見つかって逮捕されたよ。もしかしたら私が分不相応な力を貸してもらったのは、この時の為だったのかも。なんてことを歩夢にいったら「……はぁ?」って言われた。はぁ?って言う歩夢の顔って、なんだか癖になるよね。へへっ。
 ま、このくらいかな。じゃあそろそろ同好会が始まるからまたねっ!!


~同好会部室~

侑「みんな! お待たせ!」

歩夢「遅いよ侑ちゃん! もうみんな揃ってるよ!」

侑「ごめんごめん。じゃあみんな! 今日も張り切って練習しよう! の前に、同好会心得を言ってからスタート、だね!!」

侑「せーのっ!」

みんな「みんなは一人のために! みんなは一人のために!!」

侑「よーしっ!! 今日も張り切っていこーっ!!」オーッ

117: 2022/11/29(火) 10:23:55.59 ID:bwbXEqmn.net
終わりです。
あれ、スーパームキムキワイ(SMY)ってスーパームキムキ侑ちゃんじゃんって気づいた一発ネタだったんですが、ここまで長くなってビックリです。
2日に渡りありがとうございました!寝ます!!

119: 2022/11/29(火) 11:00:13.33 ID:S9IsGz9n.net

面白かった

127: 2022/11/29(火) 16:42:24.98 ID:+s9nBqjm.net
ゴッドイーターのBGMで草

引用元: 歩夢「SMY(スーパームキムキ侑ちゃん)?」