1: 20/07/05(日)09:13:10 ID:QE8
山奥に建てられた、知る人ぞ知る豚骨ラーメンの名店「雷来軒」。
店主の原住民が、今日も一人ラーメンを仕込んでいる。
(´・ω・`)「いただきます」
(´・ω・`)「うひょー、油に満ちたスープによく絡むちぢれ麺。今日の出来も最高だね」
(´・ω・`)「うん、味のバランスも絶妙だ」
雷来軒には、コショウも辛子高菜も置かれていない。原住民は、味のバランスに絶対の自信をもっているからだ。
(`・ω・´)「これなら、今日も店を開けられそうだ」
朝九時に自分のラーメンの味を見る。それが原住民のルーティーンだった。
2: 20/07/05(日)09:13:31 ID:QE8
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とある日
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(`・ω・´)「できた! 今日のラーメンはいつもよりすごいぞ!」
(´・ω・`)「なにせ三か月もかけた新作スープだ。油のうまみマシマシだよ!」
(´・ω・`)「さあ、さっそく味を見てみよう」
(´・ω・`)「と、そのまえにネギを切らなきゃ」とんとんとん
3: 20/07/05(日)09:13:58 ID:QE8
(´・ω・`)「……そういえば、やきうのお兄ちゃん。最近、ぜんぜん店に来ないなあ」
(´・ω・`)「前は、来るなって言っても毎日やってきて、お金も払わずにラーメンを食べて言っていたのに」
(´・ω・`)「ここのところ新作ラーメン開発に打ち込んでたからなあ、気にも留まらなかったよ」
(´;ω;`)「もしかして氏んだのかな?」
(´・ω・`)「……お兄ちゃんが最後に姿を見せたのいつだったけ」
4: 20/07/05(日)09:14:39 ID:QE8
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3か月前
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彡(゚)(゚)「原ちゃん。大盛りラーメン一丁」
(´・ω・`)「もう、来ないでって言ったでしょお兄ちゃん」
彡(●)(●) 「あん? ここで今から糞漏らしてもええんやで?」
(´;ω;`)「……わかったよ」
彡(^)(^)「最初から、素直にそう言えや」
5: 20/07/05(日)09:15:09 ID:QE8
(´・ω・`)「はいよ、ラーメン一丁」
彡(^)(^)「お、きたきた。うひょう、相変わらずうまそうやな。いただきまーす」ズルズル
(o'ω'n)「……」カランカラーん
(´・ω・`)「あ、おんちゃん。いらっしゃーい」
(o'ω'n)「!?」
(´・ω・`)(やきうのお兄ちゃんを凝視してる……どうしたんだろう)
7: 20/07/05(日)09:15:49 ID:QE8
(o'ω'n)「」じー
彡(゚)(゚)(なんやこいつ、なんかめっちゃこっち見てくる……)ずるずる
(o'ω'n)「」
彡()()(ひぃっ……なんやこいつ。こっわ)
彡(゚)(゚)「ご、ごっそさん! 」
(´・ω・`)「あ、お兄ちゃん! 今日こそお金払ってよ!」
彡(゚)(゚)「つけといてくれや!」すたこら
9: 20/07/05(日)09:16:26 ID:QE8
(´・ω・`)「あーあ、行っちゃった。……ってあれ?おんちゃんもいない」
(´;ω;`)「あ……お兄ちゃんラーメン残してる」
(´。ω゜`)「僕のラーメンを……残してる……」
(´●ω●`)「」
11: 20/07/05(日)09:16:50 ID:QE8
~~~~~
(´・ω・`)「そうだ、思い返せば僕が新作ラーメンにのめり込んだのは、お兄ちゃんにラーメンを残されたからだった」
(´・ω・`)「でも、あの日のおんちゃんは妙だったなあ」
(´・ω・`)「お兄ちゃんと、おんちゃん……もしかして二人の間に何かあったんだろうか」
どんどんどん
(´・ω・`)「!?」
(´・ω・`)「こんな時間になんだろう。まだ開店時間には程遠いってのに」
12: 20/07/05(日)09:17:23 ID:QE8
(´・ω・`)「あっ! やきうのお兄ちゃん」
彡(。)(;)「原ちゃん扉を開けてくれ!」
(´・ω・`)「ど、どうしたの。久しぶりだね」
彡(゚)(゚)「そんなことはどうでもいい。まずはラーメンをくれや!」
(´・ω・`)「ラーメン? ってお兄ちゃん。なんて格好してるんだ」
(´・ω・`)「その青色で薄い布切れみたいな服は何?」
15: 20/07/05(日)09:17:57 ID:QE8
彡(゚)(゚)「これは、手術衣ってやつや。手術を受ける患者が着る服や」
(´・ω・`)「それによく見たら、げっそり痩せちゃって」
彡(゚)(゚)「ちと病気しとってな。それより、早くラーメン作れや」
(´・ω・`)「そんなこと言ったって、まだ開店してない・・・・・」
彡(。)(;)「こっちは命をかけて原ちゃんのラーメン食いに来とるんやぞ!」
(´・ω・`)「わ、わかったよ」
16: 20/07/05(日)09:18:24 ID:QE8
とんとんとん
(`・ω・´)「へい、おまち」
彡(^)(^)「おおおおお! これをどれだけ待ち望んだか!」
彡(^)(^)「いっただっきま「待つおん!」
(o'ω'n)「それを食べたら氏ぬおん!」
(´・ω・`)「おんちゃん!」
17: 20/07/05(日)09:18:48 ID:QE8
彡(。)(;)「か、堪忍してくれ!」
(o'ω'n)「手術を抜け出してどこに逃げたかと思ったら、こんなところに来てるなんて!」
(o'ω'n)「ここのラーメンはしばらく我慢するよういったはずおん」
彡(゚)(゚)「で、でもおんちゃん。ワイはもう我慢ならんかったんや」
(o'ω'n)「あっさり出汁のラーメンなら病院食で出してやるおん。だから我慢するおん」
彡(゚)(゚)「ここのラーメンじゃなきゃ、だめなんや!」
18: 20/07/05(日)09:19:08 ID:QE8
彡(●)(●) 「いっただっきまーす!」
(o'ω'n)「やめるおん!」
彡()()「な、は、離せ! そんな組み付かれたラーメン食えんやないか!」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)(お兄ちゃんは、命をかけて僕のラーメンを食べに来てくれた)
(o'ω'n)「食べちゃダメおん!」
19: 20/07/05(日)09:19:38 ID:QE8
(´・ω・`)(おんちゃんは、お兄ちゃんの命を守るためにやってきた)
彡(゚)(゚)「邪魔するなや!」
(´・ω・`)(命をかけた男が二人。僕だけなんだか場違いだ)
(´・ω・`)(いや、僕だってこの3か月の間。新作ラーメンに命をかけたんだ)
(´・ω・`)(それに、ここは僕の店だっていうのに、僕は物語の蚊帳の外なんて許されるのか)
20: 20/07/05(日)09:20:10 ID:QE8
(`・ω・´)「ここは、僕の店なのに。僕がルールなのに!」
(`・ω・´)「ここは雷来軒。提供するのは自慢の『こってりラーメン』のみ」
(`・ω・´)「完璧なバランスのラーメンには、僕以外の誰も手を加えちゃいけない」
(`・ω・´)「だから机には辛子高菜もコショウすら置いてないんだ!」
22: 20/07/05(日)09:20:33 ID:QE8
(`・ω・´)「それに、このラーメンは朝9時一杯目のラーメン。僕のルーティーンだ!」
(`・ω・´)「このラーメンを食べていいのは僕だけだ!」
彡()()「な、なんや! 原ちゃんまで邪魔するって言うんか!」
(o'ω'n)「原ちゃん! 僕がやきう民を抑えているうちに早く!」
24: 20/07/05(日)09:21:05 ID:QE8
(`・ω・´)「うおおおおおおお!!!!!!」ずるずる
(`・ω・´)「ごちそうさまでした」
彡()()「」
(`・ω・´)「今日のラーメンはいまいちだったよ。悪いけど今日はもう店じまいだ」
25: 20/07/05(日)09:21:22 ID:QE8
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しばらくして
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(´・ω・`)「どう? 新作の『あっさりラーメン』は」
(o'ω'n)「絶妙な味のバランスがすごいよ! おいしいおん!」
彡(゚)(゚)「いや……確かにうまいけど、ワイが食べたいのは『こってりラーメン』のほうなんや」
彡(゚)(゚)「このラーメンにはパンチ力足りとらん」
(´・ω・`)「パンチ力ねえ」
26: 20/07/05(日)09:21:45 ID:QE8
(o'ω'n)「もう少しの辛抱なんだから我慢しておん」
彡(゚)(゚)「でも、まあワイのために新作作ってくれてありがとう。原ちゃん」
(´・ω・`)「どういたしまして」
(´・ω・`)「でも、パンチ力が足りないって言うなら。これを使っていいよ」
彡(゚)(゚)「なんやこれ! コショウやないか!」
(o'ω'n)「どういうつもり? 客には何もかけさせないのが雷来軒のルールだおん?」
27: 20/07/05(日)09:22:00 ID:QE8
(´・ω・`)「まあ、命をかけられるよりはマシってもんさ」
30: 20/07/05(日)09:22:23 ID:QE8
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おわり
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35: 20/07/05(日)09:28:07 ID:QE8
36: 20/07/05(日)09:29:45 ID:DS1
ひでえやおい
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