556: 2017/12/22(金) 22:22:14.29 ID:hM2/6zoso

 わたしのプロデューサーさんは、とっても優しいです。


「緒方さん、お疲れ様です」
「はい……ありがとう、ございます」


 引っ込み思案だったわたしがここまで頑張れたのも、かな子ちゃんや杏ちゃん、
それに、この人が居たら、です。
 こんな事恥ずかしくて言えないけど、この気持ち、伝わってると良いな。


「……なんて」
「? どうか、しましたか?」
「あっ、いえ……何でもありません」


 いけない、声に出ちゃってた。
 うぅ……変な子に思われちゃったりしてないかな。
 もしそう思われてても……えへへ、きっと、大丈夫。


 ――この人は、わたしを見捨てない。


 だって、見捨てないって言ったもんね。
 わたしがアイドルとして頑張る限り、見捨てないって。
 だから、わたしはいつも頑張ってます。
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(12) アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場 (電撃コミックスEX)
557: 2017/12/22(金) 22:30:53.42 ID:hM2/6zoso

 わたしのプロデューサーさんは、とっても忙しいです。


「……それでは、私は次の現場に」
「はい……あの、頑張ってください」

 
 わたし以外にも、担当しているアイドルがいっぱい居ます。
 だから、ずっとわたしに付きっきりという訳にはいきません。
 だけど、必ず現場には顔をだしてくれます。


「はい。緒方さんも、頑張ってください」
「はい。約束……」


 しましたもんね、頑張るって。


「? あの、何か?」
「い、いえ……何でもないです」


 いけない。
 こういうおまじないって、口に出したら効果を失っちゃうんだよね。
 だから、約束の事は大切に心にしまっておかなくちゃ。


 ――そうでないと、見捨てられちゃう。


 よし、今日も頑張ろう。

558: 2017/12/22(金) 22:36:08.01 ID:hM2/6zoso

 わたしのプロデューサーさんは、とっても責任感が強い。


「……すみません、今日は現場には向かえそうにありません」
「だ、大丈夫ですよ。忙しいから……しょうがないです」


 二期生の事で、前よりももっと忙しそうにしてます。
 だから、最近はこういう事が多くなってきました。
 その度にこうやって謝ってくれるけど、逆に申し訳ない気持ちになっちゃいます。


「申し訳ありません」
「へ、平気です。頑張ります!」
「緒方さん……」


 本当は、ちょっぴり寂しい。
 でも、ワガママなんか言ったらダメだよね。


 ――見捨てられちゃうかもしれない。


「はい……頑張ってください」


 頑張って、見捨てられないようにしないと。

559: 2017/12/22(金) 22:43:15.98 ID:hM2/6zoso

 わたしのプロデューサーさんは、とっても不器用。


「緒方さん……すみません」
「い、いえ……気にしないでください」


 今日は、お仕事に一緒に言ってくれるはずだったんです。
 けれど、二期生の子達の方でトラブルがあったみたい。
 それで、プロデューサーさんが行かなきゃいけないみたいなんです。


「トラブルですから、しょうがないです」
「ですが……」
「も、もう行かないとですよ!」
「……はい、申し訳ありません」


 えへへ、わたしはワガママなんか言いませんよ。
 安心して、他の子の所に行っても良いですよ。


 ――だけど、見捨てないでくださいね。


「緒方さん、頑張ってください」
「はい。頑張ります」


 だって、こんなに頑張ってるんだもん。

560: 2017/12/22(金) 22:53:49.66 ID:hM2/6zoso

 プロデューサーは、大嘘つき。


「担当を……変わる?」


 どうして?


「緒方さんは、人気、実力共にトップアイドルの仲間入りを果たしました」


 はい、だって、智絵里、頑張りました。


「しかし、現状……私は、貴女のプロデューサーとして相応しくありません」


 なんで?


「スケジュール的な事も含め、貴女の専属プロデューサーを会社では――」


 なんで?


 あれだけ必氏に、言われたとおり、 ワガママ言わずに頑張ってきたのに。


「――緒方さん……?」


「なんで、私を見捨てるんですか?」

561: 2017/12/22(金) 23:04:15.97 ID:hM2/6zoso

「いえ……見捨てるわけではなく……」


 やっぱり、智絵里は見捨てられちゃうんだ。
 約束したのに、えへへ、見捨てられちゃうんだぁ。


「見捨てるんですよ?」
「っ!? それは……」
「プロデューサーは、智絵里を見捨てるんです」
「……申し訳、ありません」


 やっぱり、見捨てるんだ。


「ですが、これは貴女がアイドルとして、今以上に――!」


 そんなの!


「そんなの、一度も、言わなかったです!」
「っ!?」
「頑張れって言うから頑張った! 寂しいけどワガママも言わなかった!」
「緒方さ――」
「なんで? なんで? 智絵里をどうして見捨てるの? なんで? なんでなんでなんで!?」


 見捨てないで、って!


 智絵里は、それしかお願いしなかったのに!

562: 2017/12/22(金) 23:13:24.01 ID:hM2/6zoso

「……申し訳ありません」


 モウシワケアリマセン。


 何を……言ってるんだろう?
 智絵里は、どうして見捨てるのかを聞いてるのに。


 だって、それがわからないと、また見捨てられちゃう。
 言われた通りに頑張ったのに見捨てられるなら、どうすればいいか教えてよ。


「ねえ、なんで? なんで見捨てるの?」
「……私の、力不足です」


 ……なーんだ、そうだったのか!


 プロデューサーさんは、わたしを見捨てたくて見捨てるわけじゃないんだ!


「――えへへ、良かった! それなら、安心です!」
「緒方さん……? あの、何を――」


「――頑張ってください」


 わたしは、頑張りましたよ?

563: 2017/12/22(金) 23:23:26.34 ID:hM2/6zoso

 わたしのプロデューサーさんは、とっても優しくて、


「プロデューサーさん。お願い、聞いてくれますよね?」


 とっても忙しくて、


「忙しくても、頑張ってください」


 とっても責任感が強くて、


「ワガママ言わずに、頑張ってください」


 とっても不器用。


「引っ込み思案だったわたしでも出来ました。だから、きっと出来ます」


 すごく驚いてるけど、そうすれば見捨てずに済みますよ!
 わたしも、見捨てられず、とっても嬉しいです!


「緒方さん……!?」


 だから、約束しましょう。
 えへへ、おまじないですよ、プロデューサーさん。


「私は、約束通り頑張ります。だから、プロデューサーさんも頑張ってくださいね」


「幸せの――お呪い」


おわり

引用元: 武内P「便秘、ですか」