1: 2010/03/06(土) 08:14:16.35 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「綾波」

シンジ 「あ、消えちゃった……。(結局最後まで傍にいてくれたのは綾波だったな……)」

キキキィィィーー!!!

ミサト 「碇シンジくんよね? 乗って!!」

シンジ 「はい」

ミサト 「かっ飛ばしていくわよ。しっかり掴まっててね」

シンジ 「……」

ミサト 「あれね、使徒っていうの。私たちネルフはあれを倒すためにいるのよ」

シンジ 「父さんの仕事ですよね」

ミサト 「そうよ。シンジくんのお父さんはそのネルフの総司令よ」

シンジ 「父さんが何を想って生きているのか……今なら少し分かるような気がします」
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5: 2010/03/06(土) 08:21:17.30 ID:zO3k7DkU0
ミサト 「……」

シンジ 「父さんは自分の信念を曲げずに生きていると思うんです」

ミサト 「そう」

シンジ 「僕はいつも周りに流されて、もうどうでもいいやってこれまで生きてきました」

ミサト (諜報部による報告書と食い違いがあるわね……)

シンジ 「でも父さんは違ったんです。自分の信念を持って曲げずに生きてきたと思うんです。今なら分かります」

ミサト (今なら?)

シンジ 「ミサトさんのお父さんてどんな人でした?」

ミサト 「……家庭を顧みない人だったわ」

シンジ 「そうですか」

ミサト 「よく分からない人でもあったわ。あのことが起きるまで」

シンジ (セカンドインパクト……)

7: 2010/03/06(土) 08:29:30.85 ID:zO3k7DkU0
ミサト 「もう氏んじゃったんだけどね」

シンジ 「すみません」

ミサト 「いいのよ別に。気にしないで。でも本当によく分からない人だった……」

シンジ 「……」

ミサト 「私を助けてくれたのよ、今まで自分の仕事のために全てを犠牲にしてきた人だったのに……」

シンジ 「……」

ミサト 「それでね、なんだか分からなくなっちゃった私も」

シンジ 「自分を見て欲しかったんですか? ミサトさんは」

ミサト 「うん、そうだと思う。もっともっと見て欲しかった」

シンジ 「そうですか」

ミサト 「お母さんのことももっと見て欲しかった。それのせいもあってよく分からなくなっちゃった」

シンジ 「僕も父さんにもっと見てほしかったって思います」

9: 2010/03/06(土) 08:35:06.78 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「でも……」

ミサト 「でも?」

シンジ 「もういいんです。ケジメがついたと言うか諦めがついたと言うか」

ミサト 「どうして?」

シンジ 「父さんが見てる人はただ一人だけなんです」

ミサト 「……」

シンジ 「見向きもしてくれない人にこっちから歩みよったって無理な話なんです」

ミサト 「そう」

シンジ 「家族だから……家族だから僕のこと必ずいつかは見てくれるだろうって」

ミサト 「……」

シンジ 「たとえどんなことがあっても見てくれるだろうって、そう思ってました」

11: 2010/03/06(土) 08:46:43.88 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「自分がいて他人がいて」

シンジ 「相互の思いやりがあってそれらを積み重ねてって共に生きていく」

ミサト 「……」

シンジ 「自分にとっての身近な人たちと生きるのってそういうことじゃないんですか」

ミサト 「……」

シンジ 「僕はそうだと思います」

ミサト (……そうね。)

シンジ 「僕が生きたいように生きる。僕にとってもうそれだけで十分なんです。なんだか屁理屈みたいな感じがしますけど」

ミサト 「屁理屈じゃないと思うわ。自分が生きたいように生きるってのはすばらしいことよ。(例え憎まれるとしてもね)」

シンジ 「そうですか……。(だからもうエヴァには乗らない)」

15: 2010/03/06(土) 08:53:39.96 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「父さん、どうして呼んだの?」

ゲンドウ 「おまえの考えている通りだ」

シンジ 「これに乗って戦えって言うんだね?」

ゲンドウ 「あぁ、そうだ」

シンジ 「……」

ゲンドウ 「説明を受けて乗れ。早くしろ」

シンジ 「……」

ゲンドウ 「シンジ、愚図愚図している暇はない。乗るなら早くしろ! でなければ帰れ!!」

シンジ 「ごめん父さん……乗りたくないんだ、いや乗らない。乗らないよ僕は」

ゲンドウ 「冬月、レイを起こしてくれ」

17: 2010/03/06(土) 08:59:08.11 ID:zO3k7DkU0
カランカランカラン

ゲンドウ 「レイ」

レイ 「はい……」

ゲンドウ 「予備が使えなくなった。もう一度だ」

レイ 「はい……」

シンジ 「……」

リツコ 「初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!!」

マヤ 「了解。現作業中断。再起動に入ります!」

シンジ (ごめんよ綾波……)

18: 2010/03/06(土) 09:06:49.04 ID:zO3k7DkU0
ガシャァァァアアアアンン!!!!

ミサト 「危ない!」

シンジ 「綾波!」

オペ 「エヴァが動いた! どういうことだ!?」

オペ 「右腕の拘束具を引きちぎっています!」

リツコ 「まさか…ありえないわ! エントリープラグも挿入していないのよ。動くはずないわ!」

ミサト 「インターフェースも無しに反応している……というより守ったの? 彼を……」

レイ 「うぅ……くぅっ」

シンジ 「大丈夫綾波!?」

レイ 「くぅ……あなた……だ、れ」

ゲンドウ 「乗れシンジ。乗らなければ」

シンジ 「この娘が乗ることになるんでしょ? でも僕は乗らないよ」

ゲンドウ 「諜報部員に告ぐ。至急、サードチルドレンを拘束しエヴァゲリヲン初号機に搭乗させろ」

20: 2010/03/06(土) 09:17:25.96 ID:zO3k7DkU0
シンジ (結局、無理やり乗せられるはめになっちゃったじゃないか……)

マヤ 「エントリープラグ、注水」

シンジ 「何ですかこれ?」

リツコ 「大丈夫。肺がL.C.L.で満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ」

シンジ 「気持ち悪い……」

ミサト 「我慢しなさい! 男の子でしょう!!」


マヤ 「第二次コンタクトに入ります」

マヤ 「A10神経接続、異常無し」

リツコ 「思考形態は、日本語を基礎原則としてフィックス。初期コンタクト、すべて問題なし」

マヤ 「双方向回線開きます。シンクロ率、6.5%。ハーモニクス誤差0.4」

マヤ 「起動しません」

28: 2010/03/06(土) 09:28:06.92 ID:zO3k7DkU0
ゲンドウ 「どういうことだ」

冬月 「分からん」

リツコ 「マヤ。もう一度、最初からお願い」

マヤ 「はい!」

シンジ (母さんが一つになろうって言ってきてるのが分かる)

マヤ 「第二次コンタクトに入ります」

シンジ (でもごめんよ母さん……僕はシンクロするつもりはないんだ)

マヤ 「A10神経接続、異常無し」

シンジ (僕は僕であり続けたいんだ……だから一つにはならない)

マヤ 「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス。初期コンタクトもすべて問題ありません」

シンジ (拒絶し心を閉じる方法も知ってる)

マヤ 「双方向回線開きます。シンクロ率、6.5%。ハーモニクス誤差0.4」

シンジ (僕自身でいたいんだ……だからもうエヴァは必要ない。必要ないんだよ母さん)

マヤ 「起動……しません」

33: 2010/03/06(土) 09:40:00.78 ID:zO3k7DkU0
冬月 「まずいぞ、碇……どうする」

ゲンドウ 「現状維持。赤木博士、続けろ」

リツコ 「はい」

ミサト 「リツコ! 起動しないじゃないのよ!!」

リツコ 「葛城一尉、現時点では起動の準備を続けろとの命令だわ。今は仕事中なんだから名前で呼ぶのはやめてちょうだい」

ミサト 「……ムリだったのよ……何もかもが初めての子を乗せるってのが間違いだったのよ」

リツコ 「マヤ、もう一度するわよ」

マヤ 「はい……」


マヤ 「ダメです……シンクロ率が起動数値に達しません」

リツコ 「どうして……」

冬月 「困ったことになったな。まさかの事態だぞこれは」

ゲンドウ 「初号機のパーソナルパターンをレイに書き換えろ。予備は所詮予備だ。急げ!」

35: 2010/03/06(土) 09:50:24.67 ID:zO3k7DkU0
冬月 「彼は碇シンジ、本人なのかね?」

リツコ 「現時点での暫定調査の結果においては本人かと」

冬月 「う~む」

ゲンドウ 「……あれは間違いなくシンジだ」

冬月 「親の勘か」

ゲンドウ 「そのようなものだ」

リツコ 「シンジくんが今後、訓練を積んでいっても今の数値では起動する見込みはありません」

ゲンドウ 「何故……シンジはシンクロせんのだ……ユイに」

リツコ 「端的に申し上げますと親を、碇ユイ自身を必要としていないかと思われます。それか」

冬月 「……」

リツコ 「拒絶しているかのどちらかと」

ゲンドウ 「……」

39: 2010/03/06(土) 10:02:21.77 ID:zO3k7DkU0
冬月 「成長したとも言えるな。やらねばいかんことがたくさんだな碇」

ゲンドウ 「あぁ……赤木博士、ご苦労。レイでの初号機の搭乗準備を続けてくれ」

リツコ 「はい」

冬月 「親を必要としていない、か」

ゲンドウ 「……」

冬月 「悲しいか碇? 必要としてくれなくなったのが」

ゲンドウ 「……」

冬月 「お前が想像している以上にシンジくんは成長していたんだな。良かったな」

ゲンドウ 「……はい」

ゲンドウ (ユイよ、お前が実現させたかったことはいらないだそうだ)

ゲンドウ (生きていればどこだって天国になるか。シンジが今、生きているこの世は天国なんだろうな)

ゲンドウ (おまえの言った通りだなユイ……)

41: 2010/03/06(土) 10:11:17.13 ID:zO3k7DkU0
シンジ (綾波、ごめん。キミを乗せることになっちゃうね)

オペ 「ファーストチルドレン、搭乗しました」

シンジ (氏んじゃうだろうな恐らく。氏んでも三人目になるのか……)

マヤ 「第二次コンタクトに入ります」

シンジ (でも僕はこれでいいんだと思う)

マヤ 「A10神経接続、異常無し」

シンジ (僕が生きたいように生きる。エヴァにだって乗らなくてもいい人生をさ)

マヤ 「思考形態は日本語を基礎言語としてフィックス。初期コンタクトもすべて問題ありません」

シンジ (綾波に構ってられないんだ。精一杯今を生きたいから。僕のためだから)

マヤ 「双方向回線開きます。シンクロ率、39%。ハーモニクス誤差0.5」

シンジ (思い出をありがとう綾波)

ミサト 「エヴァ初号機、発進!!!」

43: 2010/03/06(土) 10:21:14.34 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「すみません」

諜報員 「何だ」

シンジ 「僕はこれからどうしたらいいんでしょうか」

諜報員 「あ、あぁ、そうだな。今連絡してみr」

ゲンドウ 「シンジ」

シンジ 「父さん」

ゲンドウ 「どうした」

シンジ 「僕、ここは危ないから避難したいんだけど」

ゲンドウ 「そうか。保安員をつける。それでいいか?」

諜報員 「あの、いいんでしょうか? 彼は大事なパイロットですが……」

ゲンドウ 「構わん。保安員を呼んでくれ」

諜報員 「はい」

シンジ 「ありがとう父さん」

ゲンドウ 「予備は予備だ。使えなくなったら捨てるだけのこと。ネルフにいさせる意味はない」

45: 2010/03/06(土) 10:28:04.71 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「地上のどこか、シェルターでもいい。そこに避難したいんだ」

ゲンドウ 「何故だ」

シンジ 「氏ぬなら……もし氏んでしまうのなら地上で空の下で氏んだほうがいいからさ」

ゲンドウ 「そうか。勝手にしろ」

シンジ 「ありがと」


冬月 「ずいぶんと素直だな。おまえも、シンジくんも」

ゲンドウ 「……」

冬月 「シンジくんのあの表情……親離れしたな」

ゲンドウ 「そうだな」

50: 2010/03/06(土) 10:46:22.61 ID:zO3k7DkU0
シンジ 「このエレベータ、ちゃんと動くんですか? どう見てもこの状況じゃ……」

保安員 「大丈夫だ。動く」

シンジ 「はぁ、そうですか」


シンジ (乗ってもう2分ぐらい経つな……こんなかかったっけ)

保安員 「……」


ブゥゥゥ…ゥ…ン


シンジ 「止まっちゃいましたけど」

保安員 「あ、あぁ。今制御パネルで操作する。待ってなさい」

ガコォォォオオオオオオン!!!

シンジ 「”今回”はここまで……か……」


エレベータの小窓から外を覗いてみると使徒がこちらに光の槍を撃ってくるのが見えた。


51: 2010/03/06(土) 10:47:35.84 ID:zO3k7DkU0
終わりっす
土曜日を楽しんで。それじゃ

55: 2010/03/06(土) 10:51:39.87 ID:L5dGDp++0
終わりかよwwwww

61: 2010/03/06(土) 11:08:24.63 ID:J8QeRqp30
次の周回も期待してます

66: 2010/03/06(土) 12:03:47.26 ID:DCzKLTgK0
逆行ものとか懐かしいな

67: 2010/03/06(土) 12:03:51.72 ID:wQmTB5uoO
ループ設定なら限りなく 声 響きってのがあったな

引用元: シンジ 「もうエヴァには乗らない……絶対に乗らない」