1: ◆USZbC4nXcg 2012/09/21(金) 08:33:31.54 ID:D7EdyixIO
書き溜め無しのリアルタイム更新につき横レス歓迎。
設定は考えてあるけどストーリーはそんなに考えてないから行き当たりばったり。

本編四話からのスタート
おりマギ、かずマギ、モバマギのキャラが出る可能性もあるかもしれない。


2: 2012/09/21(金) 08:39:49.73 ID:D7EdyixIO
治らないと宣告されてヤケになった恭介に『奇跡も魔法もある』とタンカ切って病室を飛び出して来た。

マミさんにああは言われたけど、やっぱりあたしはあんな状態の恭介を見ていられない。


さやか「キュゥべえ、来て」


QB「契約してくれる気になったのかな」

さやか「うん」

3: 2012/09/21(金) 08:49:16.44 ID:D7EdyixIO
QB「さぁ、君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」


迷うことなど無い、願いは一つ。

さやか「あたしの願いは……」

   「恭介の腕が完治すること…!」


あたしの体が強い光を放つ。
これがソウルジェムの輝きか……

QB「君の願いはエントロピーを凌駕した」

  「受け取りたまえ、これが君のソウルジェムだ」


マミさんのソウルジェムは花のようなツカだったけれど、あたしのは三日月の様な形だった。

それを早速指輪に変え、あたしは家路についた。

4: 2012/09/21(金) 08:58:52.23 ID:D7EdyixIO
あたしは夜までソウルジェムを眺めていた。

さやか「ソウルって言うだけあってやっぱり重みありがたみがあるねぇ……」

   「一端の女子中学生がこんな大きい宝石なんて普通持ってないよねぇ……大事にしないと」

『さやか、僕だ。窓を開けてくれないかい?』

キュゥべえか。いかにも魔法少女のマスコットらしい外見しているよなぁ。

さやか「はいよ、今開けるよ」

QB「どうやら君の初仕事のようだ。場所は廃工場、君の友人の志筑仁美が口付けを受けていて、更にまどかがそれについて行ってしまって居る」

さやか「ちょっ、それは急がないと……」


あたしは家を飛び出し、廃工場に向かう。
まどかや仁美が危ないと思う一方で、初陣に対しての意気込みもかなり大きかった。

5: 2012/09/21(金) 09:06:32.02 ID:D7EdyixIO


まどか「嫌……」

魔女の口付けを受けた人から逃げたと思ったらそこは魔女の結界で、ニヤニヤした顔の使い魔がわたしに向かってくる。

まどか「弱い子でごめんなさい……氏にたくないよ……」

氏にたくないと言いつつも、氏ぬんだろうなと思い体を縮こまらせていると、青色の光が使い魔を貫いた。

6: 2012/09/21(金) 09:15:24.72 ID:D7EdyixIO
さやか「へへっ、魔法少女さやかちゃん参上!」

まどか「さやかちゃん!?契約したの?」

さやか「気持ちの変化ってやつ?まぁ、ちょっと片付けてくるから待っててよ」


あたしは剣を二本出し、それを構え結界の奥へと進む。

使い魔がチョロチョロ飛び回っていて鬱陶しいので全て切り刻んでおいた。
魔女もこれくらい簡単に倒せたら良いのになぁ……

7: 2012/09/21(金) 09:20:03.46 ID:D7EdyixIO
白いブラウン管にコウモリの様な翼が生えた化け物を見つける。

多分あれが魔女……!

あたしに気付いた魔女は、ブラウン管に何やら映し出してきた。
……さっき恭介がキレた時のことだ。
なんでそれが……?

さやか「……あたしのことおちょくってるのか?」

8: 2012/09/21(金) 09:22:52.35 ID:D7EdyixIO


さやか「案外あっさり倒せるもんだね」

最初に大きいのを食らわせてやると魔女は上手く動けなくなったようで、近くに陣取って只管斬りつけてやったらどうやら倒せたようだ。

QB「あのマミでさえ初陣は撤退したのに君は凄いな」

さやか「それほどでも……えへへ」

9: 2012/09/21(金) 09:26:39.64 ID:D7EdyixIO
さやか「お待たせ、まどか」

まどか「警察に連絡しないと……」

仁美が口付けを受けるなんて、どうしたんだろうか……あたし達が仁美をほったらかしてマミさんと魔法少女体験なんてやってたからかな……

さやか「ところで……」

   「随分遅かったね……転校生」


ほむら「……」

10: 2012/09/21(金) 09:29:33.95 ID:D7EdyixIO
さやか「マミさんが氏んでこの街で好き放題できると思っただろうけど、残念だったね」

まどか「さやかちゃん、そんな言い方は……」

ほむら「……」

さやか「この街はあたしが護るんだからね、あんたの好きになんかさせない」

ほむら「……」


黙りこくった転校生はその場から走り去って行った。

11: 2012/09/21(金) 09:41:24.67 ID:D7EdyixIO


ほむら「また、美樹さんが契約してしまった……」

美樹さんは、私にとってのまどかの様な人。
そして彼女が契約すれば、私の時間停止が使える期間中に魔女となってしまうことが殆ど。
当然、そうなればまどかは契約してしまう。

魔女とならなくても、まどかが釣られて契約してしまう。
……美樹さんが契約してしまった以上、この時間軸は……

12: 2012/09/21(金) 09:49:45.87 ID:D7EdyixIO
まどか「おはよ、さやかちゃん」

さやか「あれ?仁美は…?」

まどか「昨日のアレで家族会議だって……仁美ちゃんからしたら覚えがないだろうに……」

さやか「でも……口付けを受ける以上何か悩んでたんだよね」

まどか「……多分ね」


あたし達は暗くなりつつ、学校へ向かった。

20: 2012/09/21(金) 16:28:50.38 ID:D7EdyixIO


その日、仁美だけでなく、転校生もまた学校にくることはなかった。

さやか「あたしが学校に居る間に魔女を狩るってかぁ~~?意地汚い奴だな」

まどか「そういう考え方良くないよ……」

さやか「……まぁそれは置いておいて……今日は恭介の……ね、まどかも来る?」

まどか「……うん、行こうかな」

さやか「そうと決まれば、さ、行くぞ!」

21: 2012/09/21(金) 16:33:11.54 ID:D7EdyixIO


恭介「腕が動く様になったんだ……先生達も奇跡だって……」

  「……この奇跡はさやかが起こしてくれたんじゃないかって思ってるんだ」

  「昨日はゴメン、さやかに当たり散らしたりして……」

さやか「ううん、気にしてないよ。それで……ちょっと外出ない?」

22: 2012/09/21(金) 16:37:18.18 ID:D7EdyixIO


恭介父「捨てろと言われたけど、どうしても棄てられなくてな……」

さやか「さ、何か弾いてよ」

恭介「父さん……さやか……」


恭介が奏でたのはアヴェ・マリア。
このバイオリンが聴けるなら、あたしは……あたしはこの街を護りつづけることを覚悟できる。

23: 2012/09/21(金) 16:43:59.73 ID:D7EdyixIO



ほむら「どうせ今回もダメ……美樹さんはどうせ魔女になるし、上條恭介は最後まで美樹さんの想いになんか気付かないし、志筑さんは美樹さんの空元気を見破れずに……」

   「もう嫌……何度繰り返しても無駄……無駄……」


自棄になった暁美ほむらは、それの重要性を知りながらもソウルジェムを放り投げる。


「ちょっ……落としま……」

ほむら「落としたんじゃない!捨てたのよ!」

暁美ほむらは走り去る。
しばらく走った後、糸が切れた様に倒れ込んだ。

24: 2012/09/21(金) 16:48:00.98 ID:D7EdyixIO



「こんな大きい宝石……しかも子供のおもちゃじゃなくて本物っぽい……」

「いつか渡してあげられる様に私が持っておかないと……これはきっと大事な物だ」

「あれはうちの制服だったよね……?」

不登校児は暁美ほむらの魂を懐にしまい、家路についた。

25: 2012/09/21(金) 16:51:54.13 ID:D7EdyixIO



「……ここどこ?」

「なんで私はこんなところに……?」

「……病院に帰らないと」

「でも制服着てる……ってことはアパートに行くべきなのかな……?」

「何がなんだかわからないよ……」

26: 2012/09/21(金) 16:59:30.32 ID:D7EdyixIO


さやか「昨日はキュゥべえが教えてくれたけど、これからは自分で探さないと……」

マミさんの見よう見まねでソウルジェムを手のひらに乗せ、反応を見ながら魔女を探し回る。


さやか「む、反応あり!橋の方だ」

あたしはソウルジェムを指輪に戻し、橋の方へ駆けて行く。

27: 2012/09/21(金) 17:08:24.86 ID:D7EdyixIO
駆け付けた鉄橋には、既に結界が展開されていた。

さやか「……早く片付けちゃおうか」

あたしは足早に結界に足を踏み入れる。

しかし、あたしは引き返すことを考え始めた。
何故ならそこには、見慣れた二股の黒髪の少女が居たから。

28: 2012/09/21(金) 17:14:19.99 ID:D7EdyixIO
あいつは使い魔に囲まれている。
それでも変身しようとしない。
これくらい余裕というのか、全く嫌な奴め……

使い魔が攻撃体制に入る。

……おかしい。

あいつなら瞬間移動なりでかわしているはずなのに、日常生活でハチが来たのを避ける様に避けようとしている。
ギリギリで避けているようで、それも狙ってやってるわけではないらしく、かなり必氏だ。

これじゃあまるで……


普通の女の子だ。

29: 2012/09/21(金) 17:19:30.55 ID:D7EdyixIO
よく見ればおかしいところはまだある。
あいつにいつもの高慢な態度はカケラもなく、猫背で内股で表情は困惑で満ちている。

……これ以上放っておくとヤバい。
マミさんを見頃しにしただけど、見頃しにしたらあたしも同じになってしまう。

あたしは変身し、剣を二つ取り出して、転校生の元へ駆けていった。

30: 2012/09/21(金) 17:28:58.25 ID:D7EdyixIO
さやか「おい!なにやってんだ!」

ほむら「ひゃっ、ひゃい!?」

さやか「なんで変身しないんだ!」

ほむら「へ、変身!?なんのことですか!?」

   「さっきから何が何だかわからないよ……」

転校生はその場にへたり込んでしまった。

さやか「あ、あんたこんな時に……」

流石にまずい気がしたのであたしは転校生を連れて、この結界から逃げることにした。

マミさんみたいにバリアでも出せれば良かったのに……

31: 2012/09/21(金) 17:35:01.60 ID:D7EdyixIO


ほむら「その……助けてくれてありがとうございます……」

さやか「……あんたさっきからどうしたの?あたしの知ってるあんたはもっとこう……ツーンとしてて……」

ほむら「あの……私達会ったことあるんですか?」

……あたしが馬鹿なのを差し引いても訳がわからない。
一つだけわかるのはこいつも多分わかってないということ。

さやか「……とりあえず家まで送って行くよ」

52: 2012/09/23(日) 11:39:11.20 ID:CQEhru/Ho


転校生を家に送り届けた後、あたしは家に帰って少し考えることにした。

転校生があんな弱々しい小動物みたいな性格に変わってしまったこと、そして魔法少女でなくなってしまったことを。

前者はキャラを作っていると考えれば、あたしのことを知らないと言ったのも納得が行くけど、そんなことをする必要なんてあるのか?氏にかけてまで……

53: 2012/09/23(日) 11:43:45.19 ID:CQEhru/Ho
さやか「そういえば転校生、指輪もつけてなかったな……」

でも、他人の空似にしては似過ぎている。
それにうちの制服、しかもうちの学年であることがはっきりわかる。

ましてや、黒タイツなんて背伸びしたものを履くのはあいつくらいだ。

……

さやか「さっぱりだぁ」

ともあれ、転校生が居なければ魔法少女として動きやすいだろうし、この状況を利用してやろう。

さて、ご飯を食べて、お風呂に入ろう……

54: 2012/09/23(日) 11:46:47.53 ID:CQEhru/Ho


ほむら「あれ……アパートってこんな部屋なの…?」

   「でも、どう見ても広いよね……」

   「なんで振り子なんてあるの…?」

   「この壁の資料は……さっきの化け物もある……」

55: 2012/09/23(日) 11:54:31.71 ID:CQEhru/Ho


次の日、転校生は学校に姿を表した。
しかし、その姿は私達の知っているものではなく、二股の三つ編みを紫色の髪留めでまとめ、黒タイツではなく普通のハイソックスを履き、極め付けに赤縁のメガネをかけていた。

「暁美さん、イメチェンかな……」

「なんかオドオドしてない…?」


まどか「ほむらちゃんどうしたのかな…?」

さやか「昨日ちょっと見かけた時からなんかオドオドしてたんだよね……ホントどうしたんだろ」


ちょっと様子を見させて貰おうか。

57: 2012/09/23(日) 12:00:05.35 ID:CQEhru/Ho
正直、見ていて可哀想になった。

数学で当てられた時は散々慌てふためいた挙句、黙りこくり、体育は準備運動だけでバテていた。
まどかだけじゃ保健室には連れていけないからあたしが負ぶって行ったけど、その身体は恐ろしい程に軽かった。

心臓の病気とか言っていたけど、魔法で抑えてたのかな……?それとも契約の願いでああいう性格や身体に……?
となるとあたしが魔法少女をやめたら恭介の腕は……
ますます頑張らなくちゃいけないな……

58: 2012/09/23(日) 12:05:55.69 ID:CQEhru/Ho
ほむら「美樹…さん……昨日は…よくわからないですけど…ありがとうございました……」

ベッドから身体を起こそうとする転校生。
でも産まれたての鹿みたいで、危なっかしい。

さやか「起き上がらなくていいよ、先生からちゃんと休む許可貰ってるし……それに、あたしもサボれるし?」

ほむら「サボるなんて良くないですよ……私は後から戻るんで、美樹さんは……」

さやか「あんたがぶっちぎり県内記録出しちゃうから、もうあたしやる気なくしちゃってさぁ……」

   「あんた、魔法使ってズルしてたわけ?」

ほむら「魔法?…そんなもの私は使えません……美樹さんは使えるんですか?」

記憶喪失か何かか……?

59: 2012/09/23(日) 12:12:30.90 ID:CQEhru/Ho
ほむら「もう昨日から何がなんだかわかりません……昨日目覚めたら街中で、しかも変な空間で化け物に襲われて……そこに変な格好の美樹さんが助けに来て……家は変だし、カレンダー見たら半月くらい経ってるし……」

さやか「半月……?半月前の記憶はあるの?」

ほむら「えっ…はい……入院してました……」

記憶喪失にしても変だ。
半月前から転校の日まででそんな性格が変わるなんて……

さやか「本当にあたし達のこと覚えてないの?」

ほむら「知りません……美樹さんだって今体操着の名前を見て……」

……そろそろ頭がオーバーヒートしそうだ。

60: 2012/09/23(日) 12:22:18.69 ID:CQEhru/Ho
授業の終わりのチャイムが鳴る。
昔ながらの音だけど録音だから鳴る直前にノイズが入るから鳴る時がわかる。

この前中沢が時計を見ながらカウントダウンをしていた。
それでもってノイズが入った瞬間、ガッツポーズして早乙女先生に怒られてたっけ。

さやか「じゃ、あたしは教室戻るから」

   「まどかが……いや、混乱するか。あたしがあんたの荷物持ってくるよ」

ほむら「ありがとうございます……」


あっちと違ってこっちの転校生は可愛いな……

62: 2012/09/23(日) 12:26:58.16 ID:CQEhru/Ho


ほむら「……記憶が無いのは仕方ないとしても、早く学校に馴染まないと……」


……隣のベッドから寝返りの音が聞こえる。

「ん……ん?」

「その声は……」

カーテンが急に開けられる。

ほむら「きゃっ!?」

63: 2012/09/23(日) 12:34:54.93 ID:CQEhru/Ho
「君は……昨日の…?」

私と同じくらいの身長、焦げ茶がかった黒髪の女子生徒が私に話しかけてくる。
かなり暗い雰囲気で、少し安心感がある。
でも、やっぱり私のことを知っているみたい。

「昨日、君が捨てた物……大事……なんじゃない?」

その人は私に大きな紫色の宝石を差し出す。
多分記憶が無い間に私が捨てたんだろう……

ほむら「ありがとうございます……」

その宝石を受け取ろうと、金属部分を掴む。

64: 2012/09/23(日) 12:35:36.91 ID:CQEhru/Ho





その瞬間

65: 2012/09/23(日) 12:40:59.87 ID:CQEhru/Ho
『かっこ良くなっちゃえばいいんだよ』


『間一髪……ってところね』


『君にはその才能があるようだ』


『時間停止……ねぇ』


『うわぁぁぁぁぁぁっ!!!』


『そんなことしてなんの得になるわけ?』


『貴方も…私も!!』


『キュゥべえに騙される前のわたしを助けてあげて』


『この運命を変えたくないかい?』


『魔法少女のままならね』


『何度繰り返したの?』


『飲み込みが悪いのね』


『遅かったじゃん、転校生』

66: 2012/09/23(日) 12:43:36.56 ID:CQEhru/Ho



……

ほむら「嫌っ!」

つかんでいたその手を離してしまった。
全ての記憶が見えてしまった。

「ど、どうしたの?」

ほむら「それは……貴方が持っていてください……」

私は見えてしまった運命から逃げた。

75: 2012/09/24(月) 06:59:00.03 ID:6QMJ92nIO
……

私は逃げた。

あの宝石…ソウルジェムの中には記憶の無い半月……そしてこの先半月の合計一ヶ月を何度も何度も性格が変わる程に繰り返した私が居る。

そしてその私が過去に戻る度、滅亡が約束された世界、もしくは彼女の大事な人が欠けた世界に何も知らない私が取り残された。

76: 2012/09/24(月) 07:05:47.10 ID:6QMJ92nIO
失敗し続けた『私』を責めるつもりは欠片も無いけれど、私が何もしていない内に手詰まりの状態に放り出されるのはゴメンだ。

だったらある程度は自分で足掻いてやろう。
自分でやったことなら納得が行く。
最悪、この身体が残っていればあの『私』を過去に送り出すことが出来る。


私は私なりに戦うことにした。

78: 2012/09/24(月) 07:11:07.07 ID:6QMJ92nIO
……

ほむら「でも、契約なんてしたくないな……」

   「第一、私が契約しちゃったら鹿目さんに示しがつかないし……」

……

ほむら「でも、私が戦う必要なんてないよね。美樹さんが生きてて、佐倉さん?…が戦ってくれれば勝てる…よね?」

   「うぅ……不安だな……」


まぁ、簡単に行く話なら『私』は何度もやり直すことは無かった訳で。

79: 2012/09/24(月) 07:17:09.27 ID:6QMJ92nIO
しかも今回のスタートは……
既に巴さんが亡くなっていて、美樹さんが契約している……

ほむら「美樹さんは手数勝負なんだから、どうせ契約するなら巴さんが氏ぬ前にしてよ……お菓子の魔女と相性が良いんだからさ……」

目下の問題は美樹さん。
放っておけば……佐倉さんと揉め事を起こし、魔法少女の真実を知って絶望し、志筑さんに宣戦布告され、自棄を起こして修羅の如く魔女を狩り続け、最後には魔女になり、酷い場合佐倉さんが心中に持ち込む。

80: 2012/09/24(月) 07:23:48.38 ID:6QMJ92nIO
佐倉さんまで氏んでしまっては、魔法少女がゼロ……
戦う人が居ない。
鹿目さんが契約してしまう。
例え私が一人で向かっても勝てないし、鹿目さんも私の力を信じてはくれない。

ほむら「美樹さん……あなたがキーなんだよ……」

会ったことも無い人や化け物の名前を平気で口にする自分に疑問を抱きつつも、私は私の戦いの指針を決める。

ほむら「ごめんね『私』、私は私が生きる為に戦う。でも貴方の想いも無駄にしないよう頑張ってみるよ」

81: 2012/09/24(月) 07:27:25.07 ID:6QMJ92nIO


「落し物を渡すことも嫌がられるなんて、私ってそんなに……」

「……こんな暗い奴誰でも嫌だよね」

「あぁ……いっそ」


『氏ンデシマイタイ』


「えっ」

82: 2012/09/24(月) 07:33:15.63 ID:6QMJ92nIO
ふと見回すと、さっきまで居た路地の風景ではなく、ラーメン屋の濃ゆい臭いもしない。

爽やかな風が吹く大空にロープが張り巡らされ、そこにセーラー服が干してあるというワケのわからない風景。

ロープを下半身だけの制服姿の女子がスケート履で滑っている。

そして、遠くには首の無い巨大な女子生徒が……よくみると腕が四本あるし、足も手になっている。

「ばっ……化け物…!」

83: 2012/09/24(月) 07:37:19.32 ID:6QMJ92nIO
意味不明な空間だが、危険なことだけはわかる。

ロープから足を踏み外せば奈落の底へ真っ逆さま、そしてあのスケート履で蹴られたらひとたまりも無い。
そして、あの巨大な女子生徒にはたかれれば当然足を踏み外す。


逃げないと……どの道氏ぬ

私は逃げ道を探す。
だが、見回したところで鬱陶しい程に爽やかな空が広がるのみ。

84: 2012/09/24(月) 07:41:48.60 ID:6QMJ92nIO
そうこうしている間に、下半身だけの化け物がこちらに向かってくる。

逃げなければならないはずなのに、下半身にこれ以上力が入らない。
普通なら腰を抜かしてしまうところを、必氏で耐えて、足を踏み外さないようにしている。
それが精一杯だった。

……何か考えるんだ。
一人で居ることが多かったなら考えることはよくしていたはずだ……

「宝石……そうだ、この宝石がなんとかしてくれそうな気がする」

しかし、動転した頭では大したことは考えられず、日曜朝の世界のようなことしか思いつかない。

85: 2012/09/24(月) 07:44:39.63 ID:6QMJ92nIO
「この宝石に……念を込めたりすれば……」

紫色の宝石を握り、その手を睨みつける。

「お願いだ!助けてくれ…!」


どうやらこの世界は日曜朝とまでは行かずとも、幾分か優しかったようだ。

私の視界を奪うほどに宝石が輝き……



意識が途切れた。

86: 2012/09/24(月) 07:49:08.89 ID:6QMJ92nIO





「……不思議なこともあるものね。自分の身体で無くとも……それも生きている人間の身体でもソウルジェムで動かせるとは」


「一先ずこの場を切り抜ける為に、身体を借りるわよ。呉キリカ先輩」


光が収まった後には、紫と白の衣装に包まれ、左手に盾を携えた呉キリカが立っていた。

87: 2012/09/24(月) 07:54:52.46 ID:6QMJ92nIO
キリカ「拾ってくれてありがとう。この二日で頭が冷えたわ。私はまた戦うことができる」

盾から爆弾を取り出し、時間停止をかける。

キリカ「慣れない身体でこんな狭いところを走れるかしら?」

本来の自分の身体より胸が大きく、髪が短く、脚が短い為に上手く動ける自信は無いものの、やるしかない。
私はロープの上を駆ける。

キリカ「魔翌力での補助がいつも以上に多いのは仕方ないわね」

88: 2012/09/24(月) 07:59:28.73 ID:6QMJ92nIO
キリカ「この人の身体なら爪が使えると思ったけど、残念ながらそれは無いわね。あったならそのセーラー服を引き裂いてやろうと思ったのに……」

どこまで身体があるのかは気になる。

一気に駆け寄り、スカートの中に爆弾を投げ込み、撤退し、停止解除。

どうやらスカートの中が弱点のようだが、あそこは闇に包まれるのみで、ショーツや鍵穴などが見えるわけでもなく、本来の場所に無い首があるわけでもない。
一体どうなっている。

89: 2012/09/24(月) 08:06:32.96 ID:6QMJ92nIO
相変わらずの爆発音が起き、結界が崩れ始め、爽やかな広い空と柔軟剤の匂いの代わりに建物に切り取られた空とラーメン屋の匂いがある場所に戻される。

キリカ「いつまでも他人の身体を借りるわけにも行かないわね……早く元の身体に戻らないと」

   「それより、どうやったら彼女に身体を返せるのかしら?」

変身解除の要領で……
視界が真っ暗になる。
どうやら、これで良いようだ。

キリカ「……」

   「助かったのか……」

90: 2012/09/24(月) 08:17:08.82 ID:6QMJ92nIO
夢を見ていた。
いや、夢のように見ていた。

宝石に意識を奪われた後、自分の身体が勝手に動くのがわかった。
すぐに意識は取り戻したが、身体は自分では動かせない。

更に意識を傾けると、私はやけに滑らかな生地の制服の様な衣装に着替えていて、盾と爆弾を持ってあの奥の化け物に向かって走っていることがわかった。

そして何やらブツブツ言っているがそれは聞き取れなかった。

……あの子はこんなもので何をしていたのか。
確かに面白いものだけど、やっぱりあの子に返した方がいいんじゃ……

91: 2012/09/24(月) 08:21:40.22 ID:6QMJ92nIO


「何?マミの奴がくたばった上に、イレギュラーがソウルジェムを捨てて、今見滝原に魔法少女は新人が一人だけ?」

QB「そうだ、新人が契約してイレギュラーが何故か自棄を起こしてね」

「ふーん……じゃあその新人ぶっ潰してあの魔境を頂いちまおうか」

92: 2012/09/24(月) 08:28:04.76 ID:i+lbC4MIO



「……見滝原中学で、授業中に心臓病の発作を起こして倒れた子がいる?なんでそんなことをあたしに云うんだ?」

QB「君は病気の子供の治療をやっていただろう?しかも心臓病と言ったら君の……」

「いや、アンタが人助けを促すとは思わなくてさ」

QB「見滝原は魔女の量に対して、現在魔法少女が一人しか居ない。そっちの面でも足を伸ばす価値はあるんじゃないかい?」

「へぇ……そういうことなら」



「この飛鳥ユウリに声をかけたのは正解だな」

94: 2012/09/24(月) 09:00:27.23 ID:i+lbC4MIO
今回はここまで(ヽ'ω`)

・真ユウリとさやか、杏子が出会ったら
・キリカとほむらのソウルジェムの色が似てることから、魂の波長が合うのでは…?

とかやりたいことを無理しない程度に詰め込んでみました。

予め言っておくと織莉子、ゆまの登場予定はありません。
あいりはユウリの回想程度かと。

かずマギ時系列は、聖団結成前くらいで。

読んでくださりありがとうございます。
六時ごろまた更新します。

97: 2012/09/24(月) 13:32:31.61 ID:i+lbC4MIO


ほむら「……恐らく今日の夕方に」

佐倉さんと美樹さんが衝突する。
しかし、止められる魔法少女が居ない……

でも美樹さんを止めることなど出来ないだろうし、佐倉さんに前以って接触しようにも佐倉さんはハナから美樹さんを監視している。

ほむら「……結界に巻き込まれないギリギリのところで張り込んで、大声出せば止まるかな……?」

街の境界辺りの路地に向かうことにした。

98: 2012/09/24(月) 13:35:09.95 ID:i+lbC4MIO


さやか「別にまどかは来なくても良いんだよ?」

まどか「さやかちゃん一人じゃ心配だから……」

さやか「ははっ、なんだそれ!あたしはまどかが居る方が不安だけどなぁ。まぁ良いけど」


あたしはまどかと二人で魔女捜しをすることにした。

99: 2012/09/24(月) 13:43:16.57 ID:i+lbC4MIO
まどか「……なかなか見つからないね」

さやか「氏んじゃったとはいえ、粗方マミさんが狩りつくしてたのかな……」

街の外れまで来てしまった。

さやか「ここら辺に居なかったら今日は帰ろうか…?」

まどか「そうだね……あれ?ソウルジェム光ってない?」

さやか「ん、本当だ!…あっちか!」

微弱な魔翌力の匂いのする方へ向かっていく。

さやか「路地裏か……まどかはここで待ってて」

まどか「うん、わかった」


あたしは変身し、不安定な結界に突入した。

100: 2012/09/24(月) 13:49:58.85 ID:i+lbC4MIO
まどかに似た声を発する、落書きの飛行機が飛び回る。

さやか「見つけたぞ…ッ!」

マミさんの如く剣を大量にマントの裏に召喚し、使い魔を追いかける。

さやか「でやぁぁぁっ!!!」

力に任せて袈裟斬り、横払いで体力を削ってやる。
なかなかタフな使い魔だ。
あのヒゲの使い魔はマミさんのバット一発で倒せたのに……でも

さやか「これで終わりだぁっ!!」

実はこの剣、刃を飛ばすことが出来る。
突きで勢いを強め、刃を飛ばす。
橋の下のドラム缶で試した時はドラム缶を突き抜け、対岸の柱に刺さって埋まる程の勢い。
あたしは勝利を確信した。

101: 2012/09/24(月) 13:56:38.78 ID:i+lbC4MIO



ガキン


金属と金属のぶつかる音。
それが意味するのは、使い魔以外にあたしの刃が当たったこと。

さやか「!?」



杏子「ちょっとちょっと……そいつ使い魔だよ?」

あたしと同じくらいの身長の赤髪の魔法少女が槍を地面に突き刺してこちらを見ていた。
さっきはたき落とされたあたしの刃が半分に折れ、地面に埋め込まれて居る。

さやか「わかってる、邪魔しないでよ」

あたしはもう一本の剣を取り出し

杏子「わかってるならどうして使い魔なんて頃すのさ?」

102: 2012/09/24(月) 14:04:09.63 ID:i+lbC4MIO
さやか「はぁ?使い魔も人を襲うんだよ?」

杏子「そうだよ?だからさぁ……」

  「あと四、五人食わせればグリーフシード孕むじゃん?」

  「卵産む前の鶏シメてどうすんの?」


こいつ…ッ!

さやか「それで人が氏ぬんだよ?」

杏子「あのさぁ……全然わかってないなアンタ……学校で習ったよね?食物連鎖」

  「使い魔が人を食って、成長して魔女になった使い魔をあたしら魔法少女が食う。そんなことも巴マミは教えてくれなかったのか?」

103: 2012/09/24(月) 14:08:58.34 ID:i+lbC4MIO
マミさんのことまでバカにされたあたしは頭に血が昇って、目の前のそいつに斬りかかっていた。



杏子「はぁ……トーシロだなぁ……」

あっさりと避けられてしまっていた。

杏子「それにしてもさ……先輩に対しての口の聞き方もなってないよね?」

さやか「誰があんたなんか…ッ!!」

杏子「ったく……言ってダメならさぁ」

  「やっちゃうしかないよねぇ!!」


槍を構え直し、あたしに突っ込んでくる。
……避けるのが精一杯!


「なにやってるんですか!!」

104: 2012/09/24(月) 14:21:54.56 ID:i+lbC4MIO
杏子「一般人か…チッ」

さやか「……転校生?」

転校生、そしてその後ろをまどかとキュゥべえが歩いている。

さやか「なんだよ……邪魔するなっ……」

転校生がにじり寄ってくる。
三つ編みに眼鏡、ハイソックスの方だ。
しかし、その目はあの気弱な目でもなく、冷淡な目でもなく……

怒りの目だ。


ほむら「美樹さん、何をやっているんですか?」

さやか「なっ…魔法少女でもないあんたには関係な……」

ほむら「関係無い?それが人に刃を向けて言うことですか?誰だって咎めますよ?」

さやか「こいつのやってることは魔女と同じだ!」

ほむら「そんなの屁理屈です!」

さやか「んな……何も知らないくせに偉そうに……ッ!」

108: 2012/09/24(月) 17:38:18.34 ID:i+lbC4MIO
ほむら「何も知らない……」

   「知ってますよ?何を話していたかも全部聞いてました」

さやか「だったらなんで……なんで止めるんだよ!」

   「こいつは……マミさんのことまでバカにしたんだぞ!」

杏子「なぁ……あんたさ、さっきからマミさんマミさんって、一体マミの何なの?」

……


さやか「あたしは……マミさんの遺志を継ぐ者だ」

109: 2012/09/24(月) 17:47:04.69 ID:i+lbC4MIO
バシッ


さやか「……痛っ」

ほむら「……」

転校生が血走った目でビンタをかましてきた。

ほむら「何も知らないのは美樹さん、貴女です。貴女はこの人のことはおろか、巴さんのことすら何もわかってない」

   「わかろうともしていない!」

さやか「な、なんだよ……さっきから……まるでマミさんのことも、あいつのことも全部知ってるみたいな……」

ほむら「少なくとも貴女よりは考えています」

   「佐倉さん……この場は私に免じて見逃してくれませんか?」

さやか「あんた勝手なこ…」

杏子「ああ、いいよ。……おい、ボンクラ、あんたはそのセンセに徹底的に叩き込んでもらうこったな」

  「……じゃあな」

110: 2012/09/24(月) 18:06:16.47 ID:i+lbC4MIO
ほむら「……美樹さん、貴女が巴さんの何を知っているんですか?」

   「あの人がどんな気持ちでいつも戦っていたか考えたことはあるんですか?」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「わかってもいないのに勝手に巴さんの名前を使わないで下さい」

   「……今晩ちゃんと考えて下さい」

転校生は踵を返し、去って行った。


さやか「……なんだよ……なんなんだよぉぉ!!」

111: 2012/09/24(月) 18:16:32.12 ID:i+lbC4MIO
……

あたしは家でソウルジェムを見つめつつ、考えていた。

さやか「ねぇ、キュゥべえ」

QB「なんだい?」

さやか「転校生が言ってた、マミさんの本当のこと、教えてよ」

QB「……良いだろう。マミはずっと一人で戦い続けていた。周りが皆放課後の生活を楽しんでいる中、マミは一人そそくさと帰り、魔女退治に明け暮れていた」

  「マミは恐らく寂しかったんだろうね。君達を魔法少女に誘ったのもそれがきっかけさ」

さやか「でもマミさんは街の為に頑張っていたのは変わらないよね?」

QB「半ば嫌々さ。技名を叫んだり、派手に魅せる戦闘をするのもアニメのヒーローになりきり自分を鼓舞していると言っていたね」

さやか「……」

112: 2012/09/24(月) 18:22:29.48 ID:i+lbC4MIO


マミさんのことを聞いたけど、やっぱりあたしの中のマミさんはヒーローなんだ。

あたしは……あのマミさんのようなヒーローになりたい。

いや、ならなくちゃいけない。


さやか「よーし!見滝原の平和はさやかちゃんが護りまくっちゃいますよ!」

113: 2012/09/24(月) 18:25:32.85 ID:i+lbC4MIO



QB「まさか暁美ほむらが普通に動いているとは……」

  「しかし、ソウルジェムは無いし、性格が全く違う……」

  「それにしても……美樹さやかは頭が固いね」

  「予測より早く魔女になってくれそうだ」

114: 2012/09/24(月) 18:33:09.70 ID:i+lbC4MIO


ほむら「巴さんをダシにすればなんとかなると思ったけど……」

   「多分美樹さんはわかってない。わかってくれたら苦労しない……」

   「戦いを止められただけ良いか……」

   「怖かった……二人とも刃物持ってるんだもん……」


次は……歩道橋の決闘。
鹿目さんをどうにかしないと……ここで詰む。

115: 2012/09/24(月) 18:43:52.22 ID:i+lbC4MIO


ユウリ「なんだ……この病院には私の魔法で治せる子供は居なそうだな……」

「誰かをお探しですか?」

ユウリ「ん?あぁ……いや、少しね」

   「あんたはなんで入院してるんだ?」

「僕?事故で腕と脚をやっちゃってね……腕はもう治らないって言われていたのに今は……この通りさ」

ユウリ「へぇ……もう少しで退院だろう?リハビリ頑張れ!」

「あぁ、もうすぐ松葉杖無しでも歩けるようになるから明日の昼には退院出来るんだ」

ユウリ「そうか……おめでとう、じゃあな」

117: 2012/09/24(月) 18:53:23.26 ID:i+lbC4MIO


ユウリ「それにしても……心臓病の女子中学生なんてどうやって見つけろって言うんだ……」

   「病院に居るならまだしも……」

   「……どっか宿取ろうかな」

   「その前に魔女をちょっと……」


ソウルジェムを取り出し、気配を探る。


ほむら「魔法少女…?」

118: 2012/09/24(月) 19:05:35.43 ID:i+lbC4MIO
『私』の記憶には金髪ツインテールの魔法少女なんて居ない。
何者なんだろう……?

ユウリ「ん?アンタ今魔法少女って言ったか?」

ほむら「え?はい、いいえ!」

ユウリ「いやいや、まぁ、聞いてたけどさ……」

   「キュゥべえがこの街の魔女の量と魔法少女の数が釣りあってないから遠征したらどうかって言うからあすなろから来たんだ。アンタがこの街の魔法少女か?」

ほむら「違います……魔法少女のことは知ってますけど」

ユウリ「そうか……じゃあ…もう一つ、キュゥべえから言われたんだけど……あたしは病気の人を魔法で治したりしてるんだけど……」

   「アンタの学校で、授業中心臓病の発作で倒れた女の子って居る?」

ほむら「……私です」

122: 2012/09/25(火) 10:42:38.59 ID:u7tpyWEIO


ユウリ「成る程、だからわざわざキュゥべえが知らせたんだな」

   「アタシに勧誘させようって魂胆で」

   「でもアタシは魔法少女が増えることには反対だな」

なんでキュゥべえは私の体調を気遣ったりしたんだろう……
この人に治療して貰わなくても、私が契約してしまえばどんな願いであれ、発作とかは止めることが出来るのに。

ほむら「今、お茶出しますね」

遠征したは良いものの宿が無い飛鳥さんを急遽泊めることになった。
それが治療代ということになるのかな?


ユウリ「でもアンタ、本当に魔法少女じゃないの?この部屋なんてどう考えても魔法で出来てるじゃないか」

ほむら「前の住人がどうやら……」

ユウリ「へぇ……」

123: 2012/09/25(火) 10:48:54.27 ID:u7tpyWEIO
ユウリ「じゃあ治療するからさ、薄着になってくれないか?」

ほむら「はい……」

パジャマに着替え、ついでに飛鳥さんに貸すパジャマも出しておく。

ユウリ「じゃあ力を抜いて……呼吸を落ち着けて……」

……

ユウリ「……心拍数上がってるよ?これじゃ……」

ほむら「……顔が近いんです」

ユウリ「……ゴメン、もっと小さい子供相手ばっかだったからその時のクセで」

……

124: 2012/09/25(火) 10:53:04.33 ID:u7tpyWEIO


ユウリ「これで終わりかな…?」

   「一週間後くらいにもう一度やれば人並みに動けるようにはなるよ」

変身を解除しながら、お医者さんのようなことを言う。

ユウリ「……うーん、当分魔法は使えないな」

ソウルジェムを卵型にして手のひらに乗せて呟く。
それを見て私は戦慄した。



ほむら「真っ黒じゃないですか!?」

125: 2012/09/25(火) 10:59:42.81 ID:u7tpyWEIO
ユウリ「そうだな……魔法が使えなくなるのは痛いな」

ほむら「すぐに浄化してください!なんでその状態で私の治療なんてしたんですか?」

ユウリ「いや……だって魔法を使うための物だろう…?」

言葉に詰まる。
普通はそう思う。歩道橋の悲劇だってそれが原因で起こるんだ。

だけど、巴さんは縄張りの特性上、獲物が沢山居るから沢山グリーフシードを持っていて、佐倉さんは常にピカピカを保つようにしているため知らずの内に真っ黒を回避していた。

けれど飛鳥さんは……

126: 2012/09/25(火) 11:07:51.20 ID:u7tpyWEIO
制服のポケットを漁る。
私の記憶が正しければ……

ほむら「あった!」

キャンディの包み紙のような装飾のついたグリーフシード、と何故か砕けた巴さんのソウルジェムの金属部分。

ほむら「これを使ってください。今すぐ!」

ユウリ「あ、あぁ……なんで持ってるんだ?」

ほむら「……」

グリーフシードを渡し、もう一つをポケットに戻す。どういう考えで拾ってきたのかはわからないけれど、何かに役立つかもしれない。そうでなくとも形見として持っておこう。

ほむら「ソウルジェムは絶対に黒いままにしちゃダメです」

   「理由は言えないけど……絶対ダメです」

ユウリ「あぁ……わかったよ」

127: 2012/09/25(火) 11:16:29.40 ID:u7tpyWEIO


杏子「ったく……マミの奴……魔女にやられちまうなんてさ……」

廃教会の庭の一角に木で作られた簡単な十字架、それに寄り添うように置かれたぬいぐるみ。

QB「氏体も無いのに墓を建てるなんておかしい話だね」

杏子「形だけでもさ……あいつの証が無いと浮かばれないだろ?」

QB「氏んだら魂なんて霧散してしまうのに浮かばれないも何もないと思うんだけどな」

杏子「野暮ったいことばっかいうんじゃねえよ。宗教全部否定する気かよ」

QB「機嫌を悪くしたなら謝るよ」

128: 2012/09/25(火) 11:19:07.14 ID:u7tpyWEIO
【ごめんなさい】

恭介の退院日を間違えました。
>>115は無かったことにしてください。
申し訳ございません。

130: 2012/09/25(火) 11:33:19.98 ID:u7tpyWEIO
杏子「それで、あの青いのがマミの後継者って本当か?」

QB「マミに勧誘されてたのは事実さ。でも契約したのはマミが氏んだ後だよ」

杏子「成る程ね……マミの縄張りの後継者ってことか」

QB「本人はマミの精神を受け継いでるつもりみたいだけどね」

杏子「ハッ、マミはあたしのやり方に理解は示してくれたよ。人に押し付けたりはしなかった」

QB「君は押し付けたじゃないか」

杏子「バーロー、あれは試しただけだ」

QB「へぇ……それで試した結果はどうだったんだい?」

杏子「まだわからない。あの一般人のおかげでな」

131: 2012/09/25(火) 11:41:12.17 ID:u7tpyWEIO


次の日、転校生は携帯をずっと見ていた。
時折まどかに話しかけていたが、普通の会話をするだけで、魔法少女のことには触れようとしない。

そして昼休みの終わりに一人でそそくさと保健室に行ってしまった。
サボるつもりか。どっちのあいつもそういうイメージは無かったんだけどな……

132: 2012/09/25(火) 11:44:11.28 ID:u7tpyWEIO


ほむら「……午後はここでゆっくり考えよう」

保健室のベッドに腰掛ける。
先生はどうやら居ないようだ。
別に必要無い、むしろ居ない方が良い。
サボりだから。

今日の夕方、上條くんは美樹さんに連絡も入れず、退院して家でバイオリンを弾いているだろう。
そこで佐倉さんと……



キリカ「ちょっと」

133: 2012/09/25(火) 11:50:37.87 ID:u7tpyWEIO
ほむら「また貴女ですか……」

キリカ「これはやっぱり貴女が持っていた方が良いと思うの」

   「大事な物なんでしょう?」

……

……なんだこの違和感。


ほむら「貴女……『私』ですよね?」

   「そのソウルジェムですよね?」

キリカ「……えぇ、そうよ」

ほむら「だったら尚更受け取るわけには行きません」

134: 2012/09/25(火) 12:03:51.72 ID:u7tpyWEIO
先輩の身体を乗っ取った『私』はたじろぐ。

キリカ「何故?私は貴女なのよ?」

私は昨日同様強い声で言う。

ほむら「『私』が失敗してどうしようもなくなった世界に放り出されるのはごめんなんです。だったら自分でやった方がいい。そうすれば失敗しても諦めがつく」

   「私は自分で戦いたいんです」

キリカ「貴女に何が出来るの?武器も時間停止も持たない貴女に!」

ほむら「出来るじゃない、やるんです」

キリカ「甘い、甘すぎるわ!根性論でどうにかなるような問題じゃないわ!」

……

ほむら「昨日既に美樹さんと佐倉さんの戦いを止めました」

   「多分、今日もあの二人は戦うでしょう」

   「魔法の力なんか無くてもどうにかして見せる…!」

私は足早に保健室を去る。
屋上に行こう。

135: 2012/09/25(火) 12:11:51.44 ID:u7tpyWEIO


キリカ「……こんなはずじゃあ」

魔法少女暁美ほむらには混乱と迷いが生じていた。

ソウルジェムの無い自分の身体は脱け殻ではなくループ前の自分の魂が入っていることや、その自分が魔法少女のことを知っていて自分で戦うなどと言い出したことは彼女のソウルジェムを濁らせるには十分すぎる衝撃的事象であった。

キリカ「……しばらくはこの身体で戦わせて貰わなければ。本来の持ち主には悪いけど」

風車のマークの入ったグリーフシードでソウルジェムを浄化した後、頬を叩きソウルジェムに意識を向け、身体の主導権を本来の持ち主に戻す。

136: 2012/09/25(火) 12:19:48.26 ID:ENtcHVSIO


今日はまどかは保健委員の仕事で少し遅れるそうだ。
あたしは一人家に向かう。
荷物を置いたら魔女捜しにでも行くか。

……バイオリンの音が聴こえる。
恭介の家だ。
弾いている音楽で録音したものではなく、恭介が弾いているのがわかる。

さやか「退院したんだ……」

そんなことは知らされていない。
連絡くらいくれても良いのに……

137: 2012/09/25(火) 12:28:03.87 ID:ENtcHVSIO
杏子「よぉ、新人。しっかり叩き込んで貰ったのか?」

さやか「……何の用?」

杏子「キュゥべえから聞いたぜ?あんた契約の願いであのバイオリン弾いてる坊やの腕を治したんだって?」

さやか「……そうだけど」

杏子「バカだよなぁ……たった一度の願いを他人の為に使うなんて。それともアレか?その坊やを自分の物にしたいのか?だったらもっといい手があるだろ?」

  「今から乗り込んで手脚落としてあんた無しで居られない身体にしちまうのさ。なんならあたしがやってやってもいい」

よくもまぁこいつはあたしをバカにするようなことを……
あたしの視界が赤く染まって行く。

さやか「あんたは絶対許さない……」

杏子「なんだ?やろうってのか?だったら場所を移そうか」

込み上がる怒りを抑えながら、あたしたちは人通りの少ない歩道橋に向かう。

138: 2012/09/25(火) 12:40:29.95 ID:ENtcHVSIO
杏子「ここなら誰にも邪魔されねえな」


「……邪魔?」


さやか「またあんたか……」

ほむら「……昨日止めたのに、今日またやったら意味が無いじゃないですか」

杏子「おっと……今日はそいつがふっかけてきたんだ」

さやか「こいつが!」

ほむら「……結局何もわかってくれなかったんですね」

   「美樹さんには私で十分です」

杏子「魔法少女でもない奴が?おかしなこというなぁ……」

  「ま、妥当かもな」

さやか「バカにしやがって……ッ!!」

139: 2012/09/25(火) 12:42:30.46 ID:ENtcHVSIO
美樹さんは手のひらを広げソウルジェムを卵型にしようとする。

そこを奪い取れば止めることが出来る……はず。
幸い鹿目さんも今は居ない。

私は走り出し、美樹さんの手のひらに手を伸ばす。




まどか「さやかちゃんゴメン!!」

140: 2012/09/25(火) 12:50:36.57 ID:ENtcHVSIO
私の頭が凍てついた。

歩道橋を駆け上がってきた鹿目さんが美樹さんのソウルジェムを奪い取り、歩道橋の下に投げ捨てた。

さやか「あんた!何してっ……」

まどか「だってこうしないと……」


糸の切れた人形のように美樹さんが崩れ落ち、希望が絶たれた私も同じく失意のあまり崩れ落ちる。

ほむら「鳴呼……全部終わりだ……」

ガラにも無く強気に出ていたツケも同時に返って来たのか、鹿目さんの後ろに飛鳥さんの姿が見えたのを最後に私は気絶した。

141: 2012/09/25(火) 12:56:43.57 ID:ENtcHVSIO

遡ること十分程

キリカ「また身体を貸して欲しいって……?」

私はこの宝石と意思の疎通ができるようになった。
どうやらさっきの話を聞くに、あの子は二重人格かなにかで、片方がこの宝石に入っているようだ。

キリカ「止まった時間の中を自由に私も動いてみたいな……」

宝石に促されるまま、身体を明け渡す。

142: 2012/09/25(火) 13:03:43.86 ID:ENtcHVSIO


キリカ「……もうこんな時間…!」

   「歩道橋に急がなくては……!」

保健室のベッドから飛び起きると、すぐさま歩道橋のある方角へ駆けて行った。


……


歩道橋の上で杏子と美樹さんが対峙している後ろから三つ編みの『私』が割り込む。

……指をちょいちょいしている?
あの子なんてバカなことを…ッ!

私が歩道橋へ駆け上がると、反対側から登ってきたのだろうか、見知らぬ魔法少女と一緒に居るまどかが美樹さんのソウルジェムを下に投げ捨てていた。

キリカ「どうしてこうも愚か者ばかり…ッ!!」

私は時間停止をかけ、美樹さんのソウルジェムが乗ったトラックを追いかけ始めた。

147: 2012/09/25(火) 16:23:51.47 ID:x73+QgfIO


杏子「おい……どういうことだ……」

  「こいつ氏んでるじゃねえか!!」

ユウリ「……こっちは…生きてる」

QB「鹿目まどか、君は酷いことをするなぁ……」

まどか「さやかちゃんはどうしちゃったの!?」

QB「どうしたもなにも…」


  「君が投げ捨てたんじゃないか」


三人分の張り詰めた沈黙と、二人分の糸の切れた沈黙が立ち込める。

148: 2012/09/25(火) 16:34:54.89 ID:x73+QgfIO


キュゥべえがいけしゃあしゃあとソウルジェムと魂の話をする。
まるで聞かなかったこちらが悪いかのように。


杏子「てめぇ……それじゃあたしらゾンビにされたようなもんじゃねえか!!」

杏子がキュゥべえを締め上げる。
だが、痛覚を持たないキュゥべえは変わらぬ口調で話し続ける。

QB「わからないな。君達は真実を知るといつも決まって同じ反応をする。どうして君達は魂の在処にこだわるんだい?」

ユウリ「……なんで言わなかった」

ユウリが杏子からキュゥべえを奪い取り、頸を少しづつ捻る。

QB「僕はちゃんとお願いしたはずだよ?魔法少女になってくれと。それがどのような物かの説明は省いたけれどね」

ユウリ「なんで省いたんだ!」

   「言ったよな、『いつも同じ反応をする』って。わかってるなら何故先に言わなかった!!」

QB「別に君達がどういう反応をしようが僕に大した不都合はないからね」

ユウリ「━━━━ッ!!」

ブチッ

堪えきれなくなったユウリがキュゥべえの頸をねじ切る。

149: 2012/09/25(火) 16:42:52.11 ID:x73+QgfIO

まどか「きゃっ!?」

……

歯を食いしばる杏子、半ば腰を抜かしたまどか、息を荒げるユウリ、そして……


QB「勿体無いじゃないか」

ねじ切られた氏体を淡々と頬張るもう一匹のキュゥべえ

まどか「ひっ……」



キリカ「そいつは何体潰しても無駄よ」

今まで居なかったところに突然現れたのは、見慣れた衣装に身を包んだ見慣れぬ少女。

その少女の手には青色のソウルジェム。
彼女は倒れ伏したさやかの手にそれを握らせ、一歩後ろに下がった。


さやか「ん……」

150: 2012/09/25(火) 16:53:41.18 ID:JjYEjvqIO
さやか「何……どういうことなの……」

QB「ソウルジェムが君達の本体ってことさ。体の方はただの脱け殻人形。と言ってもソウルジェムがあれば正常に動かせるし、身体強化の要領で代謝をよくすることもできる」

さやか「何それ……全然意味わかんない……」


まどかはさやかを連れ、杏子は一人そそくさと帰って行った。


キリカ「……結局何もできていないじゃない」

   「それどころか貴女までなんで倒れてるのよ……」

彼女が倒れた自分に渡したのは、紫色の宝石ではなくグリーフシードと拳銃。

キリカ「ほら、起きなさい。美樹さんは起きたわよ」

151: 2012/09/25(火) 17:03:12.82 ID:JjYEjvqIO
ほむら「……ごめんなさい、やっぱり私じゃ……」

キリカ「いいえ、まどかが来るのは誰も予想できなかったわ。それに二回目ともなれば美樹さんは口では止まらない」

   「貴女のやったことは正解ではなくとも、間違っては居なかったはずよ」

先程の責めるような言葉とは打って変わって優しい言葉をかける。


ユウリ「その……悪いな。あたしがあのピンク色の髪の子を連れてきたからこんなことに……」

   「あたしのソウルジェムを見て、魔法少女の知り合いを探してるなんて言うからあたしもこの街の魔法少女に会おうと思ったら……」

申し訳なさげに語る。
それに対して私は『気にしなくていいですよ』とは言えなかった。

152: 2012/09/25(火) 17:15:28.82 ID:JjYEjvqIO

キリカ「いいわ、しばらくは貴女に任せる」

   「この身体の主には申し訳ないけど、しばらくはこの身体で戦わせて貰うことにする」

   「貴女なりに足掻いてみなさい」


『私』はその場を去って行った。


ユウリ「……立てるか?」

ほむら「……はい、なんとか」

拳銃をカバンに仕舞い、飛鳥さんに肩をかりて家に帰ることにした。

153: 2012/09/25(火) 17:30:06.63 ID:JjYEjvqIO


ほむら「……飛鳥さんはアレを知ってどう思いましたか?」

調理場に立つユウリは少し手を止め、言葉を探す。

ユウリ「……真実自体はどうでもいい。アタシの大切な人はゾンビがどうこうなんて言うような人じゃないし、アタシは気にしてないよ」

   「でも、隠されてたことに腹が立つ。騙したとは思っていないなんて言っていたけどそんなの詭弁だ」

……

鍋の中身をおたまで掬い、味見をする。
納得行ったような表情をした後、器に盛り付け始める。

ユウリ「さ、やなこと忘れてご飯でも食べよう?」


この人の心は……強い。
ガス欠さえしなければ氏ぬことも無いだろう。

154: 2012/09/25(火) 17:37:36.30 ID:JjYEjvqIO


ほむら「すっ……ごい美味しいです!」

   「料理ってここまで美味しく作れる物なんですか?」

ユウリ「ふふん、ありがと。アタシ料理には自信があってね……今度大会の本戦にも出るんだ」

ほむら「えっ……すごいじゃないですか!」

   「ああいうのって予選がすごい厳しくてレシピの審査とかもかなりあるって……」

ユウリ「そうそう、いつもなら感覚でいれちゃうのをレシピ作るために計るのに苦労したんだよ」

ほむら「実力以外にも苦労が……」

155: 2012/09/25(火) 17:42:13.87 ID:JjYEjvqIO


ユウリ「じゃ、挨拶がてらさっきの青髪の子に会ってくるよ」

ほむら「えっ……」

ユウリ「あのピンク髪の子曰く、あの子の願いはアタシと似てるし」

   「あと杏子にも顔合わせしないとね」

ほむら「……佐倉さんと知り合いなんですか……?」

ユウリ「ちょっと……昔ね」

少し暗い顔をしながら、飛鳥さんは部屋を出て行った。

一人加わっただけで、どう転ぶかさっぱりわからなくなっていく。
ましてや更に私が二人もいるとなると……

156: 2012/09/25(火) 17:50:57.12 ID:JjYEjvqIO


恭介の腕を治して、そして街を裏から護るヒーローになったつもりが、ゾンビにされていた。

初めはあんなに綺麗に見えていたソウルジェムも、自分の本体だと知ればちっぽけな石ころに見えてくる。
あたしの魂はこんな物なのか。

さやか「いるんでしょ、キュゥべえ」

QB「居るんじゃない、君が今呼んだから来たんだ」

こいつも最初は可愛いと思っていたけど、今思えばウサギ以上に無表情で気持ち悪い。


さやか「……どうしてこんな石ころなんかにしたのさ」

157: 2012/09/25(火) 18:14:11.36 ID:JjYEjvqIO
QB「魔女と戦う時に生身で戦ったら動きが鈍ったりして危ないだろう?

  「例えば、マミが最初に戦って見せた薔薇園の魔女の時だって、マミは君達に危険性を示すためにわざと攻撃をくらって叩きつけられて居たけど、生身だったらあそこでどん詰まり、痛みで動けなくなって居ただろうね」

さやか「なっ……」

QB「君はあの槍を見ただろう?彼女と戦う時、弾き返したり避ければいいなんて考えて居たんだろうけど彼女はマミ並みのベテランだ」

  「あのまま戦っていたら君は間違いなく刺されていただろうね。それで……刺された時、生身だったら感じる痛みがこれだ」

キュゥべえがソウルジェムに触れる。

さやか「━━━━ッ!!!」

あたしが今まで経験した痛みとはなんなのかわからなくなるほどの激痛。
……また気絶しそうだ。

QB「君の願いは癒しの願い。恐らく治癒が得意だから傷の心配は無いだろうけれど、ソウルジェムに魂を隔離しないと痛みで動けなくなってしまうだろうね」

  「むしろ便利なんじゃないかな。魔法を更に使えば痛覚を完全に消すことだって出来るよ」

……


『すいませーん』


聞き慣れない声のテレパシーが入る。

QB「おや、君にお客さんのようだね」

158: 2012/09/25(火) 18:26:42.68 ID:JjYEjvqIO


ユウリ「始めまして、いや、さっきあの場に居たから正確には違うか……」

   「まぁ、始めまして。アタシは飛鳥ユウリ。あすなろ市の魔法少女だ」

気の強そうな金髪ツインテールの少女。
少し気が早いような、マフラーを巻いている。

さやか「始めまして……美樹さやかです……」

ユウリ「この街は魔法少女が少ないって言うから来たんだけど、他に二人も居るんだね……まぁ、顔通しって感じかな?」

   「アタシと似たような願いで契約したって言うし、もし良かったら仲良くしようかと思ってな」

さやか「……プライバシー無いなぁ。そうだな……公園で話そうか?」

159: 2012/09/25(火) 18:32:25.37 ID:JjYEjvqIO


さやか「へぇ、治癒の魔法で子供の治療を……」

ユウリ「あの三つ編みの子も今治療中なんだ」

なんであいつが出て来るんだ。
第一あいつは魔法少女だったのに、なんでソウルジェム無しでどうして生きてるの?

ユウリ「それで、その幼馴染ってのは男なのか?女か?」

さやか「え……男だけど」

ユウリ「そうか……付き合ってるのか?」

さやか「まさか、そんなんじゃないよ」


そんなんじゃない……
そうだとしてもあたしは……

160: 2012/09/25(火) 18:44:14.15 ID:JjYEjvqIO
さやか「そういえばユウリは……使い魔は狩る?」

ユウリ「……それで杏子と揉めてたのか。あぁ、杏子ってのはあの赤髪の奴」

   「アタシは助けられる命は全部助けるって言って、アイツは使い魔に食われるような奴はほっといても口づけ無しに氏ぬから放っておけって言って揉めたことがあるんだよ」

……

ユウリ「アタシはアタシの身勝手で条理を捻じ曲げてあいりの心臓を治した。だったらアタシは条理を捻じ曲げ人を助け続ける。それがアタシの道だ」


この人こそ……
やっぱり本物の正義はあったんだ……

169: 2012/09/26(水) 08:49:14.23 ID:fnYkuglIO


ユウリ「よ、久しぶり杏子」

軒並み閉まった商店街で、似たようなお菓子を頬張る二人。

杏子「……てめぇもこの街を狙って来たのか」

ユウリ「人聞きが悪いな。アタシは人助けがしたいだけなのに」

杏子「ハン、相変わらずの甘ちゃんだな」

  「人の為に魔法なんか使っても、結局自分すら救えやしないってのによ」

視線を逸らしながら、そう言った後に、箱の中のお菓子を全て口に放り込む。

ユウリ「……なんだよ、意味深なこと言うね」

   「アンタがその口なの?」

杏子と正反対に食べるペースを落とす。
挙句、箱に書いてあるコラムを読み始める。

170: 2012/09/26(水) 09:04:33.42 ID:fnYkuglIO
杏子「……あの青いのを見ただろ。あいつも人の為に契約の願いさえも使って……」

ユウリ「『も』?」

杏子「……お前のことだ!茶々入れるんじゃねえ」

ユウリ「ゴメン……あんまりにもさっきから引っかかるからさ」

その言葉を聞いた杏子は目を丸くした後、ふてぶてしい顔をしてため息をつく。


杏子「……もう、隠せないか」

ロザリオとボロボロの黄色いリボン、そしてバナナを取り出す。

杏子「食うかい?」

ユウリ「うん、熟れ具合も丁度アタシ好みかな」

ユウリは違法駐輪のビッグスクーターに腰掛け、お菓子の残りを頬張りバナナを剥き始める。

171: 2012/09/26(水) 09:19:00.37 ID:fnYkuglIO
杏子「あたしもさ、人の為に契約の願いを使って、人の為に戦うなんて意気込んでた魔法少女だったんだ」

ユウリ「へー、そりゃ意外。てっきり願いは……」

杏子「だから茶々入れるなって……」

  「あたしはその頃は、この間くたばったこの街の魔法少女、マミの弟子だったんだ」

黄色いリボンを突き出す。

杏子「武器も全然違うのに、あたしを特訓してくれたばかりか、自分も槍の練習してあたしの戦闘スタイルを考えてくれた」

  「あいつほど面倒見の良い師匠は居ないよ。まぁそれは寂しさから来る物でもあったんだけどな」

ユウリ「へぇ……師匠か。アタシにはそういうのは居ないからな……」

杏子「……お前は元から強いから要らないだろ」

172: 2012/09/26(水) 09:26:39.29 ID:fnYkuglIO
杏子「そういや分身魔法をあいつのアドバイスでやった時は凄いことになったな」

  「紅い幽霊(ロッソ・ファンタズマ)とか云う名前を付けられたの笑っちまったけどな」

ユウリ「へぇ……見せてよ、紅い幽霊」

ユウリが戯けて言ったのに対し、杏子は暗い顔で云う。


杏子「……もう使えないんだ。……話を戻す」

  「ある日、あたしの契約の願いがバレたんだ。」

173: 2012/09/26(水) 09:36:24.26 ID:fnYkuglIO
杏子「それを知ったそいつは大激怒して、あたしを魔女とさえ言いやがった…ッ」

ユウリ「魔女、か……かなり皮肉」

杏子「そいつはもう大荒れ、挙句にあたしを残して一家心中」

   「善かれと思ってやったことが最悪の結果になったのさ」

ユウリ「……」

杏子「その時もあいつはあたしに対して親身になってくれた……でもその優しさが痛かった…ッ!」

ユウリ「それでこの街を出た……」

杏子「あぁ……自分への罰とか言ったけど、その結果あいつまで一人にして……結局未練タラタラでこの街に戻ってきたって訳だ」

ユウリ「……」

174: 2012/09/26(水) 09:45:43.83 ID:fnYkuglIO
杏子「お前も人の為に契約の願いを使って、人の為に魔法を使い、使い魔から魔女まで全部狩ってるんだろうけどな」

  「それをやっていられるのはお前が特別だからだ」

ユウリ「特別って……」

杏子「他の奴は絶対に破滅する。絶対だ」

  「なぁ……あたしはあたしと同じ道を辿る奴を見たくないんだ」



ユウリは何も言い返せなかった。

175: 2012/09/26(水) 10:00:34.99 ID:2KL7xAvIO


暗闇の中、紫色の宝石に話しかける少女。

キリカ「……構わないよ、私なんかで役立つならいくらでも使って」

   「私には君の力の全てが新鮮で楽しくて……」

   「ごめん……無神経だった……」

   「それより……三つ編みの彼女は本当に君なのかい?」

   「私には私の様な取り憑き先程度にしか見えないよ」

   「……そうか。まぁ…頑張って」

176: 2012/09/26(水) 10:06:07.04 ID:2KL7xAvIO


ユウリ「さやかに会って来たよ。少し元気出してくれた…かな?」

ほむら「本当ですか?良かった……」

ユウリ「それにしても……さやかから聞いたけど、生身で魔法少女に挑むなんて凄い度胸」

ほむら「あそこであの二人が争いを起こしていたらそれはそれで大変なことが起こってしまうと思ったんです」


   「それをわかっていて何もしないなんて、氏んでるのと変わりません……」

182: 2012/09/26(水) 17:59:07.16 ID:nmtcLW/IO


次の日、学校に行くとクラスが騒がしくなっていた。
恭介だ。

皆に囲まれ質問攻めにされている。
転校生と違って一人一人丁寧に答えている辺り、恭介の性格が伺える。

まどか「行かないの?」

さやか「今行ったら彼女気取りみたいでしょ?」

あたしはゾンビだ。
コープス・ブライドかっての。


「美樹さんにはその権利があると思うけど」

転校生の声が聞こえた気がしたけど、声の主の姿どこにも無かった。

183: 2012/09/26(水) 18:08:25.47 ID:nmtcLW/IO


ゲームセンターの一角。
足でパネルを踏むタイプのリズムゲームを赤い髪を揺らしながらプレイする杏子と、それをただ見つめるほむら。


ほむら「昼間からゲームセンターに居るとは思いませんでした……」

杏子「新曲入ったんだよ、今日。まぁ最近みんな手でやる方に夢中だからこれは空いてるけどね」

  「それで、学校サボってまであたしに何か用か?魔法少女でもないアンタが」

警戒というより純粋に疑問を以って聞く。


ほむら「美樹さん……あの青色の彼女のことです」

杏子「……話せ」

184: 2012/09/26(水) 18:19:43.18 ID:23qsoBcIO
ほむら「彼女は元々直情型で、しかも盲信的です」

   「もし彼女が塞ぎ込んだりしても、決して貴方からアプローチをかけたりしないでください」

杏子「……敵と思ってるあたしの話はハナから否定的に聞いちまうってことか」

ほむら「……はい。だから彼女のことは暫く飛鳥さんに任せてください」

杏子「……まるであたしがあいつに何かするみたいな口の聞き方じゃねえか」

  「第一あんた何者なんだ?」

いつか来るであろうと思っていた質問がとうとう来てしまったことに顔を顰める。

ほむら「……元・魔法少女です」

当たらずとも遠からずな表現で誤魔化す。
その言葉に杏子はやはり疑問が隠しきれない。

杏子「なんだそりゃ……一体どうやって辞めるっていうんだよ」

  「このゾンビの身体や呪われた運命をさ」

185: 2012/09/26(水) 18:26:29.06 ID:23qsoBcIO


仁美「さやかさん、放課後少し二人でお話しよろしいですか?」

さやか「ん?まどかは?」

仁美「申し訳ございませんが、今日は席を外して貰えませんか?」

まどか「……わかった」


仁美の奴、どうしたんだろう。

仁美「いつもの『ちょっと贅沢めの時』の喫茶店で良いでしょうか?」

さやか「あいよ、お金はあるかな……」

仁美「いきなりのお誘いですし私が奢りますわ」

いつもお金持ちを見せびらかさない為なのか頑なに奢らない仁美が……どうしたんだろう。



キリカ「……」

186: 2012/09/26(水) 18:32:16.60 ID:23qsoBcIO


休み時間は嫌いだ。
手持ち無沙汰だし、周りの目線が気になる。

今の私の味方は水筒に入れた甘い紅茶と、後輩の魂が閉じ込められた不思議な宝石だけ。


……二年の教室に行け?

キリカ「恥ずかしいよ……」

   「……切羽詰まってるんだね、わかった。行く」

水筒を鞄に入れ、鞄を持って二年の教室に向かう。
帰りはそのまま保健室に向かって、最後はそこからそのまま帰ってやろう。

187: 2012/09/26(水) 18:37:38.39 ID:23qsoBcIO


緑髪のおっとり系美人が、この前の青髪の子に何か言っている。

よく聞き取れないが少し別の方向を向いて言った『席を外して貰えませんか?』だけはなんとか認識できた。


キリカ「何かマズイの…?」

   「……いや、鞄を持って来たのはそういう訳じゃ」

   「君の身体を探しに……?一刻も早く?」


……

キリカ「面倒だよ……電話番号教えて」

188: 2012/09/26(水) 18:43:44.82 ID:23qsoBcIO


ほむら「導火線はもう一つあったんだった……」

知らない番号からかかってきたかと思えば『私』だった。
今日の放課後、美樹さんに志筑さんが宣戦布告する……ッ!

これで着いた炎を、影の魔女の戦闘後までにどうにかしないと……


ほむら「美樹さんは魔女化する……」

189: 2012/09/26(水) 18:52:22.05 ID:23qsoBcIO
ほむら「どうすればいいんだ……」

   「『私』はまずどうしていたんだっけ……?」


美樹さんが契約した時に、美樹さんがワルプルギスの夜との戦いまで生き残っていたのは稀だ。

生き残った時は、ハコの魔女の口付けで志筑さんが氏んでいた時、鹿目さんが契約して美樹さんを人間に戻した時、そして上條君が真に美樹さんのおかげで腕が治ったことに気付いた時……。

ほむら「……男の人と話したくないんだけどな」

上條君と交渉するしかない。
いざとなれば……


チャキ

ほむら「美樹さんの魔法を目の前で見てもらえば良い」

190: 2012/09/26(水) 19:03:00.57 ID:23qsoBcIO


少し高めの喫茶店。
雰囲気もそれなりだ。

さやか「なんだよ仁美、かしこまっちゃって……」

仁美「……恋のご相談ですわ」

  「私、上條恭介君を以前からお慕い申し上げてましたの」

……仁美が?恭介を?

さやか「へ、へぇー、そうなんだ。恭介も隅におけないなぁ……」

仁美「とぼけないでください」

  「私、自分の気持ちに正直になることに致しましたの」


  「さやかさんも本当の自分の気持ちと向き合えますか?」

191: 2012/09/26(水) 19:14:13.99 ID:23qsoBcIO
さやか「……どういうことさ」

仁美「貴方のことも大事な友達だと思っています。だから抜け駆けや横取りなんて真似はしたくありませんの」

  「さやかさんは上條君を見つめていた時間は私より長いはずですわ。だからさやかさんには先を越す権利があるはずです」

仁美は何を言ってるの?
あたし全然わからない、わかりたくない。

仁美「丸一日待ちます。明日の放課後上條君に告白致します」


仁美「さやかさんも後悔なさらないよう……」


「ほぉ~、お嫁さんが上手に作れたら嬉しい料理に味噌汁なんて入ってるのか」

聞き覚えのある声が仁美のセリフを遮る。


ユウリ「アンタらは味噌汁の具、何が好き?」

192: 2012/09/26(水) 19:24:06.84 ID:23qsoBcIO
仁美「……すいません、今大事な話をしてるので」

ユウリ「さやか、聞いてよ。ほむらの奴がクラスの男子を遊びに誘ったんだって」

   「何話していいかわからないから好きな料理を聞けって言ったら、何故か味噌汁限定にしちゃってさ……」

さやか「ちょっと…ユウリ後にしてよ……」

ただでさえわけわかんないのに、あんたまで来たら……

ユウリ「良いから聞けって、その男なんて答えたと思う?」

   「アラ汁だってさぁ……アラなんか普通家に無いっての……」

   「しかも骨はとってくれた方が良いとかさ、子供かよ!」


……


さやか「転校生ァァァァッ!!!!」


あたしは唖然とする仁美もユウリも無視して喫茶店を飛び出した。

193: 2012/09/26(水) 19:29:46.98 ID:23qsoBcIO
━━━━

恭介「……骨が刺さって痛い」

さやか「そんな大きいんだから先に取りなよ……」

恭介「うー、さやかが取ってくれよ」

さやか「しっかたないな……これに懲りてアラ汁頼むの辞めたら?」

恭介「僕も男だ、実をがっつり食べたいんだ」

さやか「なぁ~~にが男だ、魚の骨くらい取れるようになってから言いたまえ!」

恭介「さやかこそ女っぽくな……」

さやか「なんか言った?」


━━━━

194: 2012/09/26(水) 19:40:39.00 ID:23qsoBcIO


恭介「暁美さんって変わった子だなぁ」

  「さっきから変化球の質問ばっかしてきて、退屈しないよ」

  「勝手に地味な子かと思っててゴメンね」


……過呼吸を起こしそう。
男の人は苦手なのに、つい変な質問ばっか……
飛鳥さんのバックアップが無かったら卒倒しそう……

恭介「でもどうして、僕なんて?」

ほむら「えっ…その、男の人が苦手で……優男な上條君なら話しやすいかと思って……男の人に対しての苦手意識を……」

恭介「優男か……クラスメイトの一部にはむしろオカマの域って思われてるかもしれないよ」

ほむら「そ、そんなことないですよ……」


なんとかして美樹さんの話に……
でも緊張して思うように話せない!

205: 2012/09/27(木) 07:34:53.61 ID:9fSj7XuIO


キリカ「佐倉杏子」

スーパーのお菓子売り場にて、借り物の身体の少女と、アウトローの少女は出会う。

杏子「……今日はあたしに客が多いな」

  「あんたは魔法少女か?」

キリカ「一応ね」

杏子「一応ってなんだよ。あんたも同じゾンビなんだろ?」

キリカ「その質問はNOよ。この身体は生きている。ソウルジェムを手放せばすぐに本来の人格が出てくるわ」

杏子「要するに人様の身体をソウルジェムだけになったあんたが借りてるってことか」

キリカ「ええ、そうよ。まさか動くとは思わなかったけど、どうやら魂の波長が合うみたいでね」

杏子「……普通は出来ないとおもえってコトか」

206: 2012/09/27(木) 07:46:15.57 ID:9fSj7XuIO
杏子「で、要件はなんだ?」

キリカ「……あと二週間もしないうちにこの街にワルプルギスの夜が来る」

その名前を聞いて、杏子は表情を変える。
ベテランの魔法少女は皆知っているのだろう。

キリカ「それの討伐に協力して欲しい。勿論タダとは言わないわ」

杏子「報酬は……?」

キリカ「あいつのグリーフシードとこの街ってところでどうかしら?」

杏子「……ユウリはともかく、あの青いのはどうするつもりだ?」

やはり気にかけている。

キリカ「……あの子は恐らく永くはない。それに仮に生きていても、あの子一人にこの街は荷が重過ぎるわ」

杏子「……そうか、じゃあ協力させてもらうよ」

キリカ「助かるわ」

杏子「ん、そうだ……食うかい?」

差し出されたのはスーパーの外で売っていた小さいドーナツ。

キリカ「頂くわ」

207: 2012/09/27(木) 07:49:48.01 ID:9fSj7XuIO


ワケがわからない。
仁美になんか宣戦布告されて、それをユウリが邪魔しに来て、そして恭介は今、転校生と二人で遊んでいる?

さやか「どういうことだよぉぉっ!!」

恭介が人と話しこむ時は……
コンサートホール近くの喫茶店!

今日は喫茶店のハシゴか……
まぁお金はかからないからいいけど。

208: 2012/09/27(木) 07:55:45.07 ID:9fSj7XuIO
恭介「そういえばさっき暁美さん、味噌汁がどうとか言ってたけど暁美さんはどんな味噌汁が好きなの?」

ほむら「……病院食の味噌汁は全体的に美味しくなくて……オススメの味噌汁を聞こうかと」

なんであんなバカな質問しちゃったの……
変な軌道のブーメランが直撃しちゃったよ……

恭介「あ、暁美さんは向こうの病院だったのか。あっちは病院食美味しくないのか」

  「まぁこっちもそんな大したことなかったけどね」


ほむら「そうなんですか……そういえばバイオリンをやってるんでしたっけ?」

音楽の話をすればCDの話になって……
これで行ける…!

209: 2012/09/27(木) 08:02:43.65 ID:9fSj7XuIO
恭介「ああ、この手が治ってまた弾けるようになったんだ」

  「なんで治ったんだろう……いまの医学では治らないって言われてたのに、ある日急に治ったんだ」

……事情を知ってるこっちとしては反応しにくいよ。

ほむら「……どういうのを弾くんですか?アヴェ・マリアとか…?」

記憶の中の美樹さんが聞いていた音楽の名前を適当に上げる。

恭介「そうだね、そういうのを聴いたり弾いたりするかな。アヴェマリアはさやかも大好きな曲なんだ」

美樹さんの名前が出た…!

恭介「そういえば暁美さんはさやかと仲良いの?」


……行ける!

210: 2012/09/27(木) 08:10:45.30 ID:9fSj7XuIO


仁美「なんなんですか、いきなり来て……真面目な話をしていたのに」

ユウリ「いや、ゴメンね?でもさっきの話はアンタも聞いておいた方が良かったんじゃない?」

   「その男の名前は……そう、上條恭介くんだったかな?」

それを聞いて仁美は慌てふためく。

ユウリ「ほむらにその気があるかは知らないけど、年頃の男子なら女の子と二人きりで居たら靡いちゃうかもね」

   「それにしても可哀想だよね、さやかは。異性とも思われてないんだって言うんだから」

仁美「……」

  「筋違いとは言え、私……暁美さんを赦せません…ッ!」

211: 2012/09/27(木) 08:18:13.55 ID:9fSj7XuIO


さやか「ちっくしょ!学校を挟んで反対か……!」

息を切らしながら走る。
体力に自信はあるし、魔法だってある。
これは気分的な話なのか。

さやか「コンサートホールが見えた!」


あの音楽喫茶のカウンター席の端っこ。
そこが恭介の定位置。ラテアートで毎回違う音楽記号をいれてもらって……


あと少しだ。

212: 2012/09/27(木) 08:24:38.62 ID:9fSj7XuIO
さやか「ハァ……ハァ……」

魔法に頼らないで走って、走ることに集中すれば仁美のことを忘れられる。

もう電柱が見えた。あと50mも無い。

さやか「転校生…!覚悟しとけよ!」

店の看板……

中に入る前に窓から中を覗き込む。
本当にこの店に居るか確かめる為に。




それが絶望に繋がるとも知らずに。

213: 2012/09/27(木) 08:28:12.62 ID:9fSj7XuIO


転校生が眼鏡を外し、恭介に顔を近づけている。

その一方、恭介はニヤニヤしている。


さやか「ハハッ……恭介も本当に隅におけないなぁ……」

   「仁美と転校生が相手じゃ勝てないよ……」


あたしは店に入ること無く、家に帰ることにした。

214: 2012/09/27(木) 08:43:15.89 ID:gBrbJHAIO
ほむら「美樹さんですか?」

   「とっても素敵な女性で、是非仲良くしたいと思ってます」

恭介「女性……さやかを女性だなんて凄い違和感だな」

この人はやっぱり美樹さんを異性と思ってない!!

ほむら「そんなことないですよ!女の子からしたら憧れの対象ですよ!」

   「出るとこ出てるあんなワガママボディに、明るくて面白いなんてズルいです……」

私の見た美樹さんは運命に弄ばれる受難の乙女だけなんだけどね……

恭介「ええ……そんなの気にしたこと無かったな……というか暁美さんはそんな目でさやかを見て居たの?」

なっ、私がレOみたいに…!
ならそれで突き通そう。

ほむら「私、ミッション系の……『お姉様』とかある女子校から転校してきたんです。だから美樹さんみたいな人を……」

   「女を見る目はあるつもりです。眼鏡なんか無くても」

眼鏡を外し、目を指差し顔を近づける。

恭介「なんだか、そう言われるとなんか…うーん……」

ほむら「ほら、顔の筋肉は正直ですよ。ニヤニヤしてます」

恭介「ご、ゴメン」

215: 2012/09/27(木) 08:55:06.39 ID:gBrbJHAIO
ほむら「それにほぼ毎日、お見舞いに来るなんて普通の幼馴染じゃ絶対にしません」

   「一押しすれば絶対落ちます。保証します」

恭介「えぇ……」

ほむら「むしろ向こうは待ってるんです。このチャンスをモノにしないなんて……」

   「上條君は三毛猫のオスか何かなんですか?」

恭介「……そうだよね。よく考えれば無意識に僕もさやかを必要としていたのかもしれない」

  「明日の晩、ミニホールでさやかに告白するよ」

  「今日はありがとう、初対面の僕なんかに」

ほむら「こちらこそ……」


これで行ける……!!!
私の勝利が約束された!
やった…!

221: 2012/09/27(木) 17:05:47.09 ID:2iJGc9hIO


最近いっつもベッドに腰掛けっぱなしな気がする。
契約した日の様にソウルジェムを見てみる。

さやか「……濁ってる」

   「あたしの魂だもんね、落ち込んだら濁るのも当然か」

……

携帯が鳴る。
時代錯誤の言わば着メロと呼ばれるような音で作られた着信音。

さやか「まどかか……」

   「もしもし」

まどか『もしもし、仁美ちゃんなんだって?』

さやか「……」

まどか『あれ?言えないようなことだったら…ゴメンね?』

さやか「……仁美は恭介が好きでね……明日告白するんだって」

まどか『えっ……』

さやか「しかも恭介は今日は転校生と二人で出かけて随分楽しそうだったよ」

まどか『ほむらちゃんが……?』

さやか「……あたしね、あの時仁美を助けなきゃ良かったって思っちゃった……正義の味方失格だよ……これじゃマミさんはおろか、ユウリにも顔向け出来ないよ……」

   「仁美に、転校生に恭介を取られちゃうよ……でもあたしゾンビなんだよ?氏んでるんだよ?……何も出来ない、してもらう資格も無いよ……」

まどか『さやかちゃん……』

さやか「こんな話に付き合わせてゴメンね……あたし今日はもう寝るよ」

まどか『……おやすみ』

222: 2012/09/27(木) 17:15:26.09 ID:2iJGc9hIO


ユウリ「で、どうだった?デート」

ほむら「その……まぁ思ったよりは話しやすかったです」

   「あ、思ったよりっていうのは……」

ユウリ「だんまりにならないで済んだってところ?」

   「それでその彼はどうだった?」

ほむら「はい、明日の夜、美樹さんに告白するそうです」

ユウリ「え?」

   「上條恭介君なの?」

   「あのワカメみたいな女の子にハッタリで上條恭介君って言ったけど、まさか本当に……」

ほむら「上條恭介君ですよ?」


みるみるうちにユウリの顔が青くなる。

223: 2012/09/27(木) 17:21:55.29 ID:2iJGc9hIO
ユウリ「待って、さやかのあの呻き声は……もしかして、アンタさやかに『転校生』って呼ばれてる?」

ほむら「はい……」

ユウリ「……実はさ、今日喫茶店でさやかとワカメみたいな女の子が話してて、さやかの顔が青くなってたから、ほむらのメールの話で割り込んだんだ」

ほむら「えっ……」

ユウリ「それで彼の好きな味噌汁を言ったらさやかが呻いて店を飛び出して行ったんだ」

……


……

ユウリ「もしかしたらアンタら見られて勘違いされてるかもしれない」

   「アタシのせいだ……ゴメン」


もし見られていたら……最悪明日の告白を待たずに……

224: 2012/09/27(木) 17:27:16.06 ID:2iJGc9hIO


次の日、あたしは学校を休んだ。
そんな気分じゃない……
夜の魔女狩りのために体力を温存しておこう。

……いや、保健室登校しよう。
転校生が来たらやっぱり問いただしてやろう。

225: 2012/09/27(木) 17:32:09.97 ID:2iJGc9hIO


ほむら「美樹さん来ない……」

上條君は普通に男子仲間と話していて、鹿目さんは青い顔で、志筑さんは刺す様な目で私を見てくる。

多分二人とも飛鳥さんか美樹さんの言葉で……
別に私は口説き落とそうなんて思ってたわけじゃなくて……


まどか「ほむらちゃん、ちょっといいかな?」

誤解を解くなら今しか……

226: 2012/09/27(木) 17:40:15.83 ID:2iJGc9hIO
まどか「昨日上條君と二人で遊びに行ったんだって?」

ほむら「はい……」

まどか「何してたの?」

ほむら「喫茶店でちょっとお話を……」

まどか「……何を話したの?」

なんだか鹿目さん、怒ってる様に見える。
誤解なのに……
ちゃんと言えば……わかってくれるのかな?
『私』の時と違って、聞かれてる訳なんだし……

ほむら「……早く美樹さんに告白しろって」

まどか「……ほむらちゃんのこと信じて良いの?」

ほむら「……今晩、ミニホールで告白すると約束してくれました」

まどか「……わかった、信じるよ」

227: 2012/09/27(木) 17:57:58.75 ID:2iJGc9hIO


さやか「……仁美もズルいよね」

   「自分は散々考える時間あったろうに、あたしには一日か」


キリカ「カウンセリングルームは隣よ?」

いきなり私に話しかけてくる声が。

さやか「……ただのサボり、こんなことカウンセリングの先生には言えないよ」

キリカ「そう……じゃあ私が聞こうかしら?」


隣のベッドの先輩はソウルジェムを取り出す。

キリカ「覚えているかしら?あなたのソウルジェムを取って来た魔法少女よ」

さやか「……そのせつはどうも」

今思えばあのまま目覚めなきゃ良かったかもしれない……
そうすればあたしはなんの後悔もせず散って逝けた。

キリカ「貴方の悩みは大体わかっているわ。昨日貴方の教室にたまたま行った時に緑色の子が貴方に何やら厳しい表情で話しかけていたのと、さっきの独り言と……この間のゾンビの一件のことからね」

さやか「気持ちはありがたいけど……これはあたしの問題だから……」

必要かもわからない七限目開始のチャイムを合図にあたしは保健室を飛び出した。



キリカ「美樹さん……」

228: 2012/09/27(木) 18:05:13.45 ID:2iJGc9hIO


ベンチに仁美と恭介が座っている。
仁美が身を乗り出して話している。

そういえば期限か。
どうせあたしは告白なんかできないってわかってたクセにね。
恭介への想いを察する前にあたしの精神状態を察してよ。



帰ろう……

229: 2012/09/27(木) 18:09:50.01 ID:2iJGc9hIO

恭介「ごめんなさい、志筑さん」

  「……僕は心に決めた人が居るんだ」

  「この想いに正直にならないと、僕は……僕自身とその人と……暁美さんを裏切ることになるから」

仁美「……」

  「昨日、暁美さんと何を…?」

恭介「……僕の目は節穴だったって話だよ」

  「君の想いに応えることはできないんだ。志筑さんにはもっと良い人がきっと現れるよ」

  「今晩の準備をしないと……じゃあね」



仁美「……完敗ですわ。上條君が意識していれば勝ち目なんてありません」

  「それにしても、暁美さんは一体何がしたかったんでしょう?」

230: 2012/09/27(木) 18:32:37.25 ID:2iJGc9hIO

自由の女神の腕の上のようなモノクロの結界。
もしそれのモチーフが自由の女神の腕なら、その手に持つは太陽。
地面から湧き出す触手の様な使い魔、


まどか「……」

杏子「……なんだ、また一般人か」

  「ちゃんと魔女を狩ってるとは言え……危なっかしくて見てられねえよ」


湧き出す使い魔が襲い来るのも気にせず、切っ先を払い奥へ奥へ進むさやか。

それに耐えかねた杏子が槍を取り出し、さやかの前に位置取る。

杏子「ったく、戦い方ってのを見とけしっかり」

しかし、さやかは横をすり抜けまた同じ様に進む。

さやか「邪魔しないで、これはあたしの獲物」

231: 2012/09/27(木) 18:39:36.27 ID:2iJGc9hIO
使い魔や魔女の触手の攻撃を受けても、めちゃくちゃの太刀筋で自分に傷をつけても何事も無かったかのように斬り続ける。

さやか「捕まえたァ…!」

魔女のマウントポジションを取り、只管切り刻む。
結界の瘴気の濃さからある程度強い魔女であることがわかるが、修羅と化したさやかの前ではしぶといだけの使い魔と変わらない。



さやか「なんで今までこうしなかったんだろ……いいよ、凄くいい。……痛みなんてその気になれば完全に消せちゃうんだ」

244: 2012/09/28(金) 08:33:45.53 ID:FqVQkCRIO
ユウリ「……酷い戦い方だな」

後から来たユウリがさやかを険しい表情で見る。

まどか「……」

さやか「あんた、これが欲しいんでしょ?あげるからあたしに口出さないでくれる?」

さやかはグリーフシードを突き出し、杏子に押し付ける。

杏子「……ッ」


杏子は何も言い返すことができなかった。
自分が何を言っても心に響かないことがわかっているから……

245: 2012/09/28(金) 08:40:13.99 ID:FqVQkCRIO
まどか「さやかちゃ……」

杏子「待て」

さやかに心配そうに駆け寄ろうとするまどかを制する。

杏子「今あいつにあたしらが何を言っても無駄だ。グリーフシード目当てに戦う悪い魔法少女と、契約すれば強いのに契約してない一般人、そういう風にしかあいつには見えないだろ」

まどか「でも……」

目線をズラす。

ユウリ「ん?」

杏子「……あんたが行って来てくれ」

  「あんたくらいしか頼れない」

ユウリ「……わかった」

去って行ったさやかをユウリは追いかけて行った。

246: 2012/09/28(金) 08:52:28.00 ID:FqVQkCRIO
まどか「ねぇ……」

杏子「……なんだ」

俯いていた顔の視線だけをまどかにやる。

まどか「もし……もし私が契約すれば……さやかちゃんを人間に……」

杏子「ッ!!」

反射的とも言うべき速度でまどかの胸ぐらを掴む。

杏子「絶対にそんなことするな!あんな追い詰められたところに、お前が命を懸けた願いで人間になんか戻されてみろ!」

  「どうなるかなんて目に見えてるだろ!?使い魔にすら食われる程の自己嫌悪になるぞ!?」

まどか「だって…だってぇ……」

まどかは泣き出す。しかし杏子の憤怒の表情は崩れない。

杏子「第一契約なんかに頼ろうって魂胆も気に入らねえ……契約なんかしてみろ……」

  「真っ先に八つ裂きにしてやる……」

杏子の頬にも涙が伝う。

247: 2012/09/28(金) 09:01:14.35 ID:FqVQkCRIO


ユウリ「ちょっとさやか」

さやか「……何?」

振り返ったさやかの表情は笑っているのか泣いているのか怒っているのかわからない物だった。
全部なのかもしれない。

ユウリ「なんださっきの戦い方は?」

さやか「……あたし、才能無いからさ、ああでもしないと」

ユウリ「ああでもしないと?あそこまでしてどうして魔女を狩るのさ」

さやか「あたしが魔女を狩らないと……あいつは放置とかしたりするし、ユウリは子供の治療とかするんだろうし、先輩はよくわからないし……」

ユウリ「なるほど、人の為……か」


   「ふざけんな」

248: 2012/09/28(金) 09:16:20.59 ID:FqVQkCRIO
ユウリ「自分の為に動けない奴は人の為になんか動けやしな……」

さやか「あたしの為って何さ?あたしなんて魔女を倒すだけのゾンビで、魔女を倒せなかったらそれで用済み……」

ユウリ「違う、あんたはその剣みたいに取っ替えの効く使い捨ての人形なんかじゃない」

さやかの剣を一本奪い取り、へし折る。

さやか「なっ…!」

剣自体は無限に出せるが、この行動の意味を考え慌てふためく。

ユウリ「今のあんたにコレを握る資格なんてない。自分の命を大事にする騎士道にも、プライドを大事にする武士道にも反してる」

   「前に剣士<ヒーロー>になるんだとか言ってたけどね、あたしには今日のあんたは斬り裂き魔<スクワルタトーレ>にしか見えなかった」

249: 2012/09/28(金) 09:23:58.61 ID:FqVQkCRIO
ユウリ「ヒーローに成りたいならまず自分が幸せになること」

   「この街の魔法少女がどうだったかは知らないけど、あたしはそういうもんだと思ってる」

険しい表情を急に崩し、携帯を取り出す。

ユウリ「そういえば魔女結界の中は携帯通じないからね……」

   「ちょっとセンター問い合わせした方がイイかもね」

薄い微笑み浮かべ、マフラーに顔をうずめながらユウリはその場を去って行く。



From:恭介
「最後に出た大会の前日練習で使ったミニホールまで来てくれないか?」


……どういうこと?

250: 2012/09/28(金) 09:45:17.90 ID:FqVQkCRIO


キリカ「……どこへ行くの?」

ほむら「……本来の身体の持ち主の方ですね?」

キリカ「……うん」

ほむら「……上條君が美樹さんに告白するのを見届けに行きます。最後は自分で確かめないと不安なので」

キリカ「宝石から君は……もっと弱い人間だと聞いていたんだけどね……」

ほむら「……なんでなんでしょう。宝石から読み取った記憶の中でぼんやりした物があったんですけど……それの受け売りなんです」

キリカ「そうか……でも…こんな根性無しに言われたくないかもしれないけど……根性でどうにかならないことも……ある」

   「だからこの宝石が…必要になると思うんだ。……彼女も君の意識を無理矢理乗っ取るつもりは無いみたいだし、君が持っててくれ」

ほむら「……わかりました」

自分のもう一つの魂を受け取り、私もミニホールに向かった。


キリカ「でもなんだか……嫌な予感がするんだよなぁ……」

251: 2012/09/28(金) 09:56:47.65 ID:FqVQkCRIO


杏子「なんであたしまで呼び出したんだ?」

ユウリ「さやかが幸せになれるか、ずっと気にしてたんでしょ?」

杏子「そん……そうだな、あいつが幸せになれれば、あたしも過去と決別できる気がするんだ」

ユウリ「あっさり認めるんだね」

杏子「つまんねえ意地張るのは辞めたんだ」

ユウリ「またなんで?」


杏子「……なんでだろうな、ちゃんと向き合いたくなったんだ」

252: 2012/09/28(金) 09:58:10.68 ID:FqVQkCRIO
午前中はここまで。

やっとユウリがプラスに働いた気がする。

259: 2012/09/28(金) 18:53:50.67 ID:GL7/WyYIO


ホールの中は真っ暗で、人の影が三つ。
ユウリと…赤いあいつと、転校生……
なんであいつらが……


杏子「……おいでなすった」

ユウリ「カーテンアップ!ヒュー!」

ほむら「……」


転校生は黙って拍手し、ユウリは指笛を吹く。

……カーテンが上がり、スポットライトが光る。

照らされたのは、バイオリンを持った長身の男の子、恭介だ。


恭介「キザな演出でごめん……今日は僕のライブに来てくれてありがとう」

  「さやか……暁美さん……とその友達お二方」


キザな演出だなぁ……
でもユウリが居るってことは……ユウリがセッティングしたのかな?

260: 2012/09/28(金) 19:02:09.03 ID:GL7/WyYIO
あたしの幸せ……ユウリが言ってたけど、それってなんだろう……


……あたしの幸せは


恭介が幸せになってくれること。
その為に契約したんだ。

ってことは……なるほど


恭介は転校生に告白するのか。

さっきは仁美と良い感じだったのに……


……でもそれが恭介の幸せならあたしはそれを見届けよう。


あたしは多分もう永くない。

261: 2012/09/28(金) 19:06:44.06 ID:GL7/WyYIO
恭介「まず……一曲目は…梶浦由記で……」


聴いたことも無い曲だ。
きっと転校生の趣味の音楽なんだろう……

大好きなはずの恭介のバイオリンの音のはずなのに、全く心に入ってこない。


恭介の幸せはあたしの幸せのはずなのに……


気がつけば五曲が終わっていた。

262: 2012/09/28(金) 19:12:27.80 ID:GL7/WyYIO
五曲が終わったところで、バイオリンを置いて、マイクに持ち替える。


恭介「いきなりの依頼だから長くは借りられなかったからあと二曲なんだけど……」

  「その前に言いたいことがあるんだ」


ユウリ「来た?」

杏子「……静かにしろ」

ほむら「とうとうですね……」

……転校生も何が起きるか知ってるの?
なんで?サプライズの類じゃないの?
心の準備とかの配慮?

恭介「まず、暁美さん」


……?
まず?
話が読めない……

263: 2012/09/28(金) 19:18:32.19 ID:GL7/WyYIO
恭介「僕の背中を押してくれてありがとう。気づかせてくれてありがとう」


背中を押す……?
仁美と付き合うことになった打ち上げなの?

少し自分のことを考えたけれど、三秒もしないうちにあたしはそれを考えるのを自然と辞めた。


ユウリ「ありがとーっ!!」

杏子「だからうるせぇ!ロックじゃないんだよ!」



恭介「そして……さやか」

  「もう勿体ぶらない」


  「僕は君が好きだ」


  「いや、ずっと君のことが好きだった」

264: 2012/09/28(金) 19:23:30.01 ID:GL7/WyYIO



えっ?

耳を疑い、それを認識した脳を疑い、それを動かすソウルジェムを疑った。


恭介「━━━━……」


恭介がなにやら言っているが、あたしの耳には入らない。
今起きていることが信じられないから。

ユウリがクネクネして、赤いのが痒がっているのと、転校生がガッツポーズをしてるのだけがわかる。



恭介「だから、僕の想いを受け取って欲しい。僕と付き合ってくれ……さやか」


……あたしの頬を涙が伝う。

265: 2012/09/28(金) 19:27:31.09 ID:GL7/WyYIO
ユウリ「これで……一件落着?」

杏子「……だな」

  「あいつが幸せになってくれて良かったよ……」

ほむら「良かった…良かった……」

この場に居る少女で涙を流さない者は居なかった。





『いいえ、運命の車輪は残酷に廻る物よ』

涙を流すことができない少女を除いては。

268: 2012/09/28(金) 19:31:53.16 ID:GL7/WyYIO
さやか「……嬉しいな……恭介もあたしのこと好きだったなんてな……」

   「でもね……あたしは愛してもらう資格なんて、抱き締めてもらう資格なんて無いんだ……」


手を天井にかざす。

その指が銀色の光が反射することから嵌められた指輪があることがわかる。

しかし、そこから青色の光は出ていない。




杏子「オイ…どういうことだよ……」

  「なんであいつのソウルジェムあんな……あんな真っ黒なんだよ!!!」

271: 2012/09/28(金) 19:38:04.71 ID:GL7/WyYIO
ほむら「なんで……なんで?」

『ソウルジェムの濁りは精神状態が悪くなっても生じる』

『逆に言えば、ソウルジェムが濁っていれば精神状態が酷くなるわ』

テレパシーで話しかけるは、魔法少女暁美ほむら。
冷徹に廻る運命の車輪を幾度となく目にした少女だ。


杏子「……何だよそれ…悪循環じゃねえか」

ユウリ「だから……ゾンビだからその資格が無いとか言ってるっていうのか」

『恐らくね……そして、あそこまで黒くなったら……まず助からない』

杏子「ッ!!!」

272: 2012/09/28(金) 19:42:29.43 ID:GL7/WyYIO
杏子はさやかに駆け寄り、グリーフシードを使う。

さやか「……あんたさ、悪い奴かと思ってたけど……悪ぶってただけなのかもね」

   「今よく考えればわかるよ。マミさんのことで怒ったのも……」

   「もっと早く気付……」

杏子「るせぇ!!今際の言葉なんて聞きたくねぇ!!」

  「畜生!!なんで取れねえんだよ!!」

まるで穢れたグリーフシードと綺麗なグリーフシードを一緒に置いておいても平均化しないのと同じように……

273: 2012/09/28(金) 19:50:59.73 ID:GL7/WyYIO
『貴方はよく頑張ったわ。でもね、運命なんてそう簡単に変えられないの』

『巴さんだって今回もまた氏んでしまった……今回は最期に上條君や杏子の想いが届いただけ良い方よ……』

時を繰り返した少女は運命の残酷さを語る。
そのトーンは決して冷たいものではなく、哀しく……自分達の無力さを悔やむものだった。




ほむら「……まだワイルドカードがあります」

ユウリ「……契約か」

274: 2012/09/28(金) 19:57:19.02 ID:GL7/WyYIO
『ダメよ!気でも狂ったの!?』

『美樹さんのようにならなくても、杏子のように願いに裏切られ、私のように何か大事なものが欠け、最期は巴さんのように惨めに氏んで行くのよ!?』

ほむら「いいえ……『私』の記憶、『私』の言葉、そして飛鳥さんを見ていて最適解を見つけました。美樹さんも私も……誰も犠牲にしない…させない」

   「あとは……それへの後押しだけです」


ステージ上で、美樹さんの異変に漸く気付き始めた恭介に、ほむらは声をかける。

275: 2012/09/28(金) 20:04:52.17 ID:GL7/WyYIO
ほむら「上條恭介ッ!」

オドオドしていた少女が剣道の選手のような声で呼びかけてくるので、飛び上がりかける。

恭介「ななっ、なんだい?やっぱりキザすぎ……」

ほむら「もし……美樹さんがどんなに残酷な運命を背負っても……決して見捨てずに共に寄り添い歩むことを誓えますか!?」

恭介「何のはな…」

ほむら「誓えますか!?」

恭介「……」

ほむら「誓いなさい!!!」


恭介「誓う!誓うともッ!!」

  「さやかと運命を共にすることを誓うよ…!」

276: 2012/09/28(金) 20:14:08.69 ID:GL7/WyYIO


ほむら「その言葉が聞ければ十分、私は私に呪いをかけることができる……」

『もう何も言わないわ……貴方を信じる』



ほむら「キュゥべえ!!」

呼びかけると直様現れる白い獣。

QB「……まどかではなく、君だとは予想外だったけれど契約だね」

  「さぁ君の願いは……」

淡々と話すのを遮り、私は契約を決行する。

ほむら「今更言葉なんていらない!私の願いを叶えて!!」

QB「……やれやれ、僕をただの変換機に使うとはね」

  「感情の上下を大きくしたり、色々なことに首を突っ込んだのは素質を増やすためかな?」

  「良いだろう、受け取りたまえ、これが君のソウルジェムだ」


私は二つ目のソウルジェムを手にした。

283: 2012/09/29(土) 14:52:01.64 ID:IFIfVUZio
杏子「……濁りが…取れた?」

ソウルジェムに溜まった穢れが外に流れ出す。

さやかがソウルジェムは再び輝きを取り戻す。

さやか「え……あたし……」

杏子「さやか……!」



ユウリ「なんて願ったんだ?」

ほむら「上手く言えません……」

   「ただ言えるのは……」


『奇跡を起こした。しかしそれの代償を支払わなければならない』



ほむら「助かって終わりではありません……来ますよ!」

284: 2012/09/29(土) 15:00:01.75 ID:IFIfVUZio
さやかのソウルジェムから漏れ出た穢れがホールに充満し、いつのまにかそれが濃くなっていた。

それはやがて空間を歪め結界を成す。

QB「さやかのソウルジェムは砕けなかった物の呪いは残っていた様だね。それが塊を成して魔女のような物になったようだ」


大きなコンサートホールに、青い影の使い魔、そして中央には……

『人魚の魔女ッ!!』

ユウリ「でも小さいなぁ……」

ほむら「中核となる魂が無いからです。でも……私の予想だとこれから大きくなります……」

   「それが『私の奇跡』の代償です」

285: 2012/09/29(土) 15:04:01.52 ID:IFIfVUZio
結界が更に歪み、背の高い僧侶の様な化け物が現れる。

ユウリ「もう一体魔女が居るの!?」

QB「いや……魔女などじゃない……」

  「あれは僕らの関係する物ではない」


人魚の魔女が剣をかざすと、僧侶のような化け物は霧散する。
そして人魚の魔女は大きくなっていく。



恭介「な、なんなんだ……この化け物は……」

287: 2012/09/29(土) 15:09:41.48 ID:IFIfVUZio
僧侶のような化け物は無数に湧いてくる。
人魚の魔女は本来より1.5倍程大きくなったあたりで、化け物を襲うのを辞めた。

ほむら「恐らく……アレは世界意思」

   「私の起こした奇跡を否定し、均衡を図る為に現れた」

   「一体一体は見かけ的にそこまで強くは無いです。硬めの使い魔程度に思ってください」

ユウリ「でもこの数相手に…しかもデカイ魔女も居て勝てるのか?」


ほむら「……」

290: 2012/09/29(土) 15:17:19.29 ID:IFIfVUZio


まどか「さやかちゃんの為なら……」


━━━━

杏子「契約なんかに頼ろうって魂胆が気に入らねえ」

━━━━


QB「君がグズグズしている間に、どうやら僕を必要とする者が現れたようだ」

  「さやかを助ける為だろうね」

  「僕は行くよ。彼女については僕も気になって居るからね」

291: 2012/09/29(土) 15:21:03.97 ID:yV7mAFkIO
まどか「……優柔不断」

   「あの赤い子の云うことを聞くか、聞かないかはっきりしないで他の子を……」


夜の公園でしょぼくれるまどかを突如僧侶のような化け物が取り囲む。

まどか「魔女……!?」

   「わたしがこんなだから……」

   「いや……氏にたくない……」



キリカ「……!」

292: 2012/09/29(土) 15:29:35.28 ID:yV7mAFkIO


考えろ私。
今の私に宝石など無い……
しかも契約を行うあの饅頭も後輩の方へ行ってしまった。

あの桃色が氏にそうだとしても、私に何ができるという……



キリカ「いや、なんだってできる」

   「……今ならなんだってできる気がする」


何時の間にやら、黒衣に身を纏った私は鉤爪を携え、疾風の如く化け物の前に躍り出た。



キリカ「……一体三秒だ」

まどか「……ぁ……」

293: 2012/09/29(土) 15:34:17.08 ID:yV7mAFkIO


『運命を変え、美樹さんを助けてもあんな数の敵じゃ勝てないわよ!?』

ユウリ「あまり言いたくないけど、勝てる気がしない…!」


ほむら「漸く言葉が見つかりました。私の願いは……」

   「運命を変え、屠り、平らげる力を私達に寄越せ」

ユウリ「ってことは……」


ほむら「こいつらを倒す力は既に与えられているはずです!」


辺りを紫の光が包む。

296: 2012/09/29(土) 17:01:00.89 ID:yV7mAFkIO


さやか「全部わかったよ。あたしの本当の戦い方はマミさんみたいに沢山剣を出すんじゃない」

さやかはソウルジェムを卵型にし、変身する。

さやか「たった一本の剣に、それを大事に護る鞘を……!」


失神しかけている恭介に近寄る。
彼の手には微妙に水色がかった灰色の鞘が握られていた。
それを取り、自分の剣を納める。


さやか「うーん…しっくり来るな」

もう一度その剣を抜くと、素人目にもわかる程の業物の刀に変わっていた。

さやか「……これが本当のあたしだ」

297: 2012/09/29(土) 17:10:32.64 ID:IFIfVUZio


ユウリ「……アタシも負けてらんないよね」

   「あすなろに帰って、見滝原は良い街だったって言ってやらなきゃいけないんだからさ!」

ナースキャップに看護婦のトップを示す三本のラインが入り、注射器のピストン部分に魔法陣が現れる。


ユウリ「屠って、平らげるならアタシが料理しないとね」

298: 2012/09/29(土) 17:19:56.03 ID:IFIfVUZio


杏子「やっぱさ……過去に踏ん切りつけられても……」

  「マミのことはまだ……未練タラタラなんだよ……」

黄色のリボンを取り出す。
しかし、それは薄汚れていて……
でも微かに動いている。


ほむら「……これを」

ほむらは懐から何かを取り出し、杏子に投げ渡す。

杏子「こいつは……ッ!?」

299: 2012/09/29(土) 17:28:12.98 ID:IFIfVUZio
それはマミのソウルジェム、の金属部分。
それの中の空間が黄色い光を放ち始める。


杏子「あぁ、全部向き合える。幻覚だってまた使えるさ」

  「でも今あたしが必要なのは沢山のあたし<ロッソ・ファンタズマ>なんかじゃない」

  「たった一人の師匠、相棒、半身だッ!!!」


マミのソウルジェムにリボンの端が結び付けられ、リボンが伸び出す。


杏子「射手座宮の幽霊<イル・ファンタズマ・ディ・サジッターリオ・ミーヤ>」


リボンが女性の姿をとる。
巻いた髪、ふくよかな胸からそれがマミを模っていることが判る。

300: 2012/09/29(土) 17:36:26.14 ID:IFIfVUZio


ほむら「さて、私は……」


格好は元々の暁美ほむらと余り変わらない。
変わった点と言えば要所要所の紫色が青紫や赤紫に変わっていることだろうか。

そして武器は……

ほむら「……十手?」

手に持つと非常に重いことがわかるが、それ以上に自分の力が強くなっているのがわかる。

『……ひと暴れしてらっしゃい』


ほむら「はい!」

301: 2012/09/29(土) 17:44:38.64 ID:IFIfVUZio

別に変身バンクの間空気を読んで敵が攻撃してこなかったわけではない。

世界意思の僧侶の化け物と、ほむらの新しい魔法で作り出されたイレギュラーな魔女。
呪い同士が潰し合っている。
しかし、それらにとって吸収以外の集結はなく、呪いの絶対量は変わらない。
つまりこの戦いを終わらせるには魔法少女を交えた三つ巴の戦いになる必要がある。



ほむら「さて……行きますか」

ユウリ「さやか、立てるか?」

さやか「迷惑かけた、ゴメン。もう大丈夫」

杏子「行くぞ逃げんなよ、化け物共」

302: 2012/09/29(土) 17:58:41.49 ID:IFIfVUZio
ユウリ「そらそらそらそらァッッ!!!」

巨大な注射器の機銃掃射で魔法弾を大量にばら撒き、世界意思の呪い共を駆逐する。

ユウリ「地味だけど一撃の重さが変わった気がする…!」


杏子「マミ、有幻覚の銃だ」

  「あんたのより消耗は激しいけど、威力は保証するぜ?なんたってあたしの槍や鎖ベースの銃弾だからな」

  「それに単発で終わりじゃあないよ?」

リボンは渡された銃を手に取り、僧侶擬きに向け放ち始める。
その狙いは達人級、一撃一撃的確に急所に当て、少ない弾数で確実に仕留める。

杏子「動き回って鬱陶しいならあんたの十八番だってあたしは真似できる」

  「あんたが撃つ前に頃しちまうかもしれないけどな」

  「絞首刑<レガーレ・アッペデント>」

杏子の手のひらから無数の鎖が噴き出し、周りの化け物を無差別に縛り上げる。

303: 2012/09/29(土) 18:04:06.93 ID:IFIfVUZio
化け物を縛り上げた鎖は一体分ずつキツく締まり、化け物を砕く。

リボンはそれに対してもそんなに動じず、まだ順が回ってこない化け物から順に撃ち抜いて行く。


恭介「……何がなんだかわからないけど、これが暁美さんが言っていた運命か?」

  「後でさやかにゆっくり聞くとしよう。今はさやか達の戦いを見守る外無い」

結界で化け物があまり現れない辺りに逃げ込む。

恭介「……情けない話だけど…信じてるから」

304: 2012/09/29(土) 18:15:37.48 ID:IFIfVUZio
ほむら「……」

十手の本来の使い道は刀を折ることであるが、折るべき刃は人魚の魔女が持っている二本のみ。

そこに辿り着くまでには僧侶擬きや弦楽隊を倒さなければならない。

しかし、この十手、鈍器としても非常に優秀……いや、優秀過ぎる。
触れた瞬間、相手を叩き潰している。

『時間停止を見せられてる側の気分ね。まるで過程を省略して、叩き潰した結果だけを残してるみたい』

ほむら「……威力に限度がありますけどね」

降り注ぐ車輪は当たっても砕け散ることはなく、歪んで進路が逸れるだけだった。


『十分よ。ここからは私も戦うわ』

暁美ほむらの身体が再び紫に輝く。

311: 2012/09/30(日) 10:51:02.43 ID:qge2FmiGo
ほむら「……行くよ」


右手に十手、左手に盾、髪型は片側だけを三つ編みに、そして左手の甲には砂時計を模ったソウルジェムが。

時間停止をかけ、十手で道を切り拓き、魔女に詰め寄る。

ほむら「まさか時間停止で近接武器を使うなんてね……」

恐らく、魔女の鎧は十手で破壊することはできない。
よくわからないがあの鎧は斬撃の方に弱い。

ならばまずやるべきことは……

ほむら「剣を折る…!」

312: 2012/09/30(日) 11:38:19.09 ID:qge2FmiGo
魔女の身体を駆け上る。
着地する度に魔女が僅かに動くものの、さしたる問題では無い。

頭頂部まで上りきり、剣の方を向き、膝を曲げ深呼吸をする。


ほむら「跳んで、落下の勢いも使って折るわよ」

魔女の頭を蹴り出し、剣に向かう。

313: 2012/09/30(日) 11:53:48.74 ID:qge2FmiGo


ほむら「剣は折ったわよ!!」

時間停止を解除し、呼び掛ける。

剣を折ったということは魔女と僧侶の均衡が破られたということ。
魔女は小さくなる一方だ。


さやか「オーケー、もうその魔女はあたしに任せな」

僧侶共を滑るように斬り落としていた剣を一度納め、魔女の方向へ向き直り、一歩踏み込むと共に……


さやか「いっけぇぇぇぇっ!!!!」

抜刀斬りで斬撃の衝撃波が飛んだ。
僧侶共が両断され、魔女までの道が開かれる。

314: 2012/09/30(日) 12:01:01.78 ID:qge2FmiGo


さやか「こいつって多分あたしなんだろうね……」

   「使い魔もなんか恭介っぽいの居たしさ」

   「だからさ、せめて……」

剣道でいうところの上段の構えを取る。



さやか「苦しまないように逝かせてあげるよ」

あたしは魔女に斬りかかった。

315: 2012/09/30(日) 12:24:22.11 ID:qge2FmiGo


ユウリ「大体片付いた…かな?」


ほむら「こっちも終わった……ね」


杏子「あっちはどうだ…?」



さやかの方に目をやると、乱切りにされた魔女と、それに黙祷を捧げるさやかの姿があった。

316: 2012/09/30(日) 12:32:17.26 ID:qge2FmiGo


さやか「……ごめんね、あんたら二人のこと誤解してたよ」

杏子「いや、あたしが間接的に人を頃してたのは事実だし……な」

ほむら「私も誤解を招くようなことをしたのもあるし……」

さやか「……そういえばさ、あんたの名前聞いてなかったね」

   「改めて自己紹介しよう!あたしは美樹さやか」

杏子「……上條さやかじゃないのか?」

  「あたしは佐倉杏子、元はこの街の魔法少女だ」


……

317: 2012/09/30(日) 12:48:47.42 ID:qge2FmiGo
ユウリ「そういやほむらさ」

ほむら「……何?」

ユウリ「アタシに始めて会った時、ソウルジェムの濁りで騒いでたけど……」

   「ソウルジェムって濁りきったら魔女になるの?」

……

ほむら「そう、本来ならソウルジェムが砕けてグリーフシードが産まれる。当然魔法少女は氏ぬ」

ユウリ「だからあんなに……ね」

   「あの時は焦らせてゴメンね」

ほむら「いえ……」

318: 2012/09/30(日) 12:56:11.13 ID:qge2FmiGo
ユウリ「自分達が悪だと思って倒してたのが、同族だと思うとちょっとショックだけどさ」

……

ユウリ「もう元には戻らないなら、楽にしてやるべきなんだろうなって」

   「だったらやるべきことは変わらないでしょ?」

ほむら「……そうだよね」

   「私は……そんなことを考えたことも無かったかな……グリーフシードを集めるのに精一杯で」

ユウリ「……?グリーフシードをそんなに集めてどうするの?」

ほむら「……あとで美樹さんにも話さなくちゃいけないから、それは今度にしましょう」

319: 2012/09/30(日) 13:03:47.72 ID:qge2FmiGo


美樹さん達は散々クサいセリフをお互いに並べた後に付き合うことになったらしい。

流石に目の前で変身して戦っていたら魔法のことはバレてしまい、腕が治った理由もバレてしまったが、上條君も美樹さんの想いを汲んでくれたようで感謝こそしても、負い目に感じることはしないよう努力してくれているとか。

320: 2012/09/30(日) 13:09:32.09 ID:qge2FmiGo

キリカ先輩は保健室に現れなったので、三年生の教室を覗いてみると巴さんの席に手を合わせた後、頑張ってクラスメイトに話しかけたりしていた。


ユウリさんの秋休みももうすぐ終わり、そしてもうすぐあの魔女がやってくる。

321: 2012/09/30(日) 13:14:07.41 ID:qge2FmiGo


ほむら「美樹さん、今夜私の家に集まってくれないかしら?大事な話があるの」

さやか「ほー、略奪ですかい?あたしはなかなか落ちないぞー?」

ほむら「……」

さやか「ちょっと!黙んないでよ!わかってるよ、魔法少女のことでしょ?」

ほむら「ええ、そうよ」


まどか「あ…さやかちゃん……もう大丈夫なの?」

さやか「大丈夫大丈夫!」

   「でもあんたは契約しちゃダメだよ、あたし達にどーんと任せて!」

まどか「う、うん……」

322: 2012/09/30(日) 13:19:16.64 ID:qge2FmiGo
さやか「それにしてもねぇ……魔女が魔法少女から産まれるなんて思わなかったよ」

ほむら「私がなんとかしなかったら貴方もね」

まどか「えっ?えっ?魔法少女が魔女?それにほむらちゃんがなんかまた性格変わってるし……」

さやか「まどか、あんたは気にしなくていーの!あたし達のこと信じて!」

   「別に強い心を持ってれば魔女になんてならないんだから!」

ほむら「言っちゃってるじゃない……」

323: 2012/09/30(日) 13:38:37.16 ID:qge2FmiGo


ユウリ「杏子、そのカップ麺熱湯二分だよ」

杏子「げっ」

ほむら「カップ焼きそばにソースを入れるのはお湯を捨てた後だと思うけど」

ユウリ「げぇっ」

三人がそれぞれ手抜きの晩御飯を用意する中、扉の音が響く。

さやか「お待たせ!」

杏子「遅え!」

ユウリ「来たか」

さやか「いやぁ……今日は恭介と会わないしラーメン食べても良いかなと思って……」

ラーメン屋のレシートを見せる。

ほむら「辛ネギチャーシュー麺味玉付き?」

   「私絶対そんな量食べられないわ……」

杏子「あそこチャーシュー麺頼むとチャーシューでどんぶりの表面埋まるよな」

さやか「へへ、ごめんごめん、で、話って?」

324: 2012/09/30(日) 13:51:59.60 ID:qge2FmiGo

ほむら「壁の資料を見て」

ワルプルギスの夜の資料を指差し、説明を始める。


……


……

杏子「あたしは既に約束したから戦うよ」

  「こいつも戦いたがってるしな」

黄色のリボンはネズミの様な形にされており、杏子はそれを操りユウリに飛ばす。

ユウリ「ちょっ、それ生きてるとか魔法とかじゃなくて手でやってるだけでしょ!」

杏子「へへっ……」

ユウリ「……アタシも戦うよ。あすなろに帰ったらミチルに自慢してやるんだ。伝説の魔女を倒したってね」

……

ほむら「美樹さんは……聞くまでも無いよね?」

さやか「おう!剣は振られるためにあり、鞘に納まるためにある!戦って勝って祝勝会するぞー!」


多少の温度差はあるものの、四人……いや、五人は団結を正式に誓った。

325: 2012/09/30(日) 14:04:41.08 ID:qge2FmiGo
数日後、避難所にて



QB「まどか、戦いを見届けなくて良いのかい?」

まどか「……わたしはさやかちゃん達を信じてるから」

QB「彼女達が勝てるかどうかは怪しいけどね……戦況を少し見てみるかい?」

まどか「じゃ……」


キリカ「その必要はないよ」

   「……私達は彼女達がピースサイン掲げて帰ってくるのを待つだけ良いんだ」

   「私達がやるべきなのはその饅頭の声に耳を貸さないことだ」


まどか「先輩……」

326: 2012/09/30(日) 14:07:51.82 ID:qge2FmiGo
QB「やれやれ、君達の行動は合理的でないよね」

  「まぁ僕はこの戦いを見届けさせてもらうよ」


キリカ「しっしっ!」

まどか「……」

327: 2012/09/30(日) 14:17:57.42 ID:qge2FmiGo


杏子「思ったより役者が多いんじゃないのか?てっきり宝塚みたいに女しかいないと思ってたけどさ」

舞台装置の魔女と魔法少女のシルエットの様な使い魔、そして先日の僧侶の様な化け物。

さやか「そういえばさ、ある映画でエキストラが大量に必要だったんだけど、お金が足りなかったんだって」

   「それでどうしたと思う?」

剣を滑らせ、使い魔や僧侶を斬り落としながらアメリカンジョークを切り出す、

ユウリ「へぇ、どうしたの?」

無数の魔法弾を撃ち出しながらそれに乗っかる。

ほむら「簡単よ、武器を全て本物にしたの」

   「こんな感じにね」

水の中から対艦ミサイルが顔を出す。


ほむら「Fire」

328: 2012/09/30(日) 14:23:40.12 ID:qge2FmiGo


杏子「そろそろぶっ放したいって?」

  「オーケー、いつでも良いよ」

リボンがマミの形から、筒の様な形になり大砲へと変化する。


杏子「魔女さんよ、この街のヘッドがてめぇに物申したいそうだ」




杏子「沈め」


対艦ミサイル顔負けの砲撃が繰り出される。

329: 2012/09/30(日) 14:30:50.21 ID:qge2FmiGo


ほむら「あらかた撃ち尽くしたなら後は十手で叩くしか無いわよね」

熱線を盾で弾き返し、飛び交う瓦礫を避けつつ、魔女に詰め寄る。

さやか「あたしもそろそろ本体をどうにかしたいかな」

ユウリ「跳んで行くか」

杏子「っしゃ、行くぞ!」


他の三人も魔女に向かって行く。

330: 2012/09/30(日) 14:40:10.37 ID:qge2FmiGo


QB「四人がかりとは言え……伝説の魔女がああも容易く屠られるとは……」

  「下手したらこの間の人魚の魔女の方が苦戦していたかもしれないね」


魔女の本体たる歯車は……

十手と砲撃で凹み、注射を打ち込まれ中から歪み、槍と剣で引き裂かれていた。


ほむら「空が晴れて行く……」

さやか「終わったんだね……」

杏子「あたし達が……」

ユウリ「伝説だな……」

331: 2012/09/30(日) 14:53:48.40 ID:qge2FmiGo


ほむら「漸く……まどかが契約しないでワルプルギスの夜を越えることができた……」

さやか「……そういや、マミさんが生きてる時、やけにまどかの契約阻止に熱心だったね」

   「全部知ってたから……?」

ほむら「……話すと長くなるけど、さっき言ったのが私の目的」

   「口下手だからなかなか言えなかったんだけどね……」

さやか「……あたしもこれからは手伝うよ」

   「絶対まどかをまきこむわけには行かないからね」

ほむら「……頼もしいわ」

332: 2012/09/30(日) 15:03:39.67 ID:qge2FmiGo
一ヶ月後

あすなろドームにて


杏子「よう、あんたも来てたか」

ミチル「なんたって相棒の晴れ舞台だからねー」

   「ユウリは本当になんでも出来るよね。魔女退治もちょっと強すぎて自信失っちゃうかも」

杏子「仲が良さそうで何よりだよ」

  「あたしとケンカした後に決別したっていうから少し焦ったよ」

ミチル「わたしが狩らなかった分、ユウリが狩れば良いってユウリがこの間言って来てさ」

杏子「ハハッ、うちのところもそんなんだよ」

333: 2012/09/30(日) 15:08:11.75 ID:qge2FmiGo
知久「秋山は実は僕の大学の同期でね」

まどか「半裸で料理するの…?」

恭介「なんで僕を見るのかな?さやか」

さやか「いや、恭介が脱いでも情けないだけかなと思って」


ほむら「ユウリと張り合うってことは彼も相当の……」

知久「そりゃ彼もプロだからね」

まどか「あ、出てくるよ!」

335: 2012/09/30(日) 15:14:28.52 ID:qge2FmiGo


ほむら「ねぇ、『私』」

   「もう私と『私』はほぼ一つになったのかな?」

   「切り拓いた未来、救えなかった分の私の分まで楽しんで行こうね」

   「やっと手に入れた未来、これからも切り拓いて行きましょう?」


「おーい、アタシの相棒と親友を紹介するよ!」

「恭介ぇー!反応しないのはそれはそれで失礼だぞー!」


ほむら「行こっか?」


FIN

336: 2012/09/30(日) 15:16:02.76 ID:CmBjBnR2o

337: 2012/09/30(日) 15:18:44.46 ID:qge2FmiGo
なんだか打ち切りエンドっぽいですが、これで完結。
本当はオクタヴィア倒して終わりにしようか迷った。
まだ未熟ゆえ許してください。

大会までミチルが生きているのは、聖団メンツに会う前に魔女化のことをユウリに知らされていたから。
聖団メンツは多分契約すらしてません。

ご不明な点等ありましたらご質問下さい。

347: 2012/09/30(日) 17:26:17.49 ID:qge2FmiGo



おまけ

348: 2012/09/30(日) 17:28:21.63 ID:qge2FmiGo
>>276から


ほむら「その言葉が聞ければ十分、私は私に呪いをかけることができる……」

『もう何も言わないわ……貴方を信じる』



ほむら「キュゥべえ!!」

呼びかけると直様現れる白い獣。

QB「……まどかではなく、君だとは予想外だったけれど契約だね」

  「さぁ君の願いは……」

淡々と話すのを遮り、私は契約を決行する。

ほむら「今更言葉なんていらない!私の願いを叶えて!!」

QB「……やれやれ、僕をただの変換機に使うとはね」

  「感情の上下を大きくしたり、色々なことに首を突っ込んだのは素質を増やすためかな?」

  「良いだろう、受け取りたまえ、これが君のソウルジェムだ」


私は二つ目のソウルジェムを手にした。

しかしそれは私の胸から現れる物ではなく、私の手の中の空間に突如現れた。

349: 2012/09/30(日) 17:32:26.27 ID:qge2FmiGo
ほむら「……私を呼び出したのね」

   「三つばかり質問させてもらうわ」


『……わかったわ』

ほむら「一つ、今はどういう状況かしら?」

『上條恭介が美樹さんに告白したけれど、ソウルジェム真っ黒の美樹さんは負の感情のスパイラルに陥っていて魔女化寸前』

……

ほむら「一つ、まどかは今?」

『……あの子は呼んで居ないわ。今頃家に居るはずよ』

350: 2012/09/30(日) 17:36:41.15 ID:qge2FmiGo
ほむら「最後に一つ……」

『……』

ほむら「この金髪の羨ましいスタイルの女は誰かしら」

『あすなろの魔法少女、飛鳥ユウリさんよ』

……


ほむら「……大体飲み込めたわ」

   「全て委ねなさい。ソウルジェムがそのグリーフシードで浄化できなくてもまだ手はあるわ」

髪をかき分け、すぐさま変身する。

351: 2012/09/30(日) 17:40:08.78 ID:qge2FmiGo
さやか「……転校生?」

ほむら「相変わらず生臭いわね、さらに生臭い物が生まれて来そうね」

   「ソウルジェムを貸しなさい」

杏子「何か出来るっていうのか?」

ソウルジェムを奪い取り、盾から取り出したのはグリーフシード。

杏子「だから浄化できないんだっ……」

  「どういうことだオイ……」

グリーフシードを見て顔を青くする。


杏子「なんでその二つ、ツカがそっくりなんだよ!!」

352: 2012/09/30(日) 17:48:01.08 ID:qge2FmiGo
ほむら「そうよ、このグリーフシードはそのソウルジェムの慣れの果て」

グリーフシード「ホラ、ナニヤッテンノアタシ」

さやか「あた…し……?」

ソウルジェムの穢れがグリーフシードに移る。

QB「そんな!あり得ない!ソウルジェムが存在するグリーフシード、喋るグリーフシード、移るはずの無い穢れ……ツッコミ処が多すぎる!」

思わず驚きを隠せなくなる淫獣。

ほむら「黙りなさい、畜生風情に発言権は無いわ」

グリーフシード「アタシガアンタノセオッテヤルカラアンタハキョウスケトシアワセニナリナ」

さやか「あたしぃぃぃ!!!」

自分の成れの果ての献身に涙するさやか。
しかし、それはどうでもいいと言わんばかりに別のことを考えているほむら。

杏子「そのグリーフシード、孵るぞ!」

グリーフシード「コンナアタシデモヤクニタテテヨカッタヨ。アンタライゴヲミトッテモラエルナラアタシモシアワセダヨ」


グリーフシードが孵り、結界が辺りを包み込む。

353: 2012/09/30(日) 17:52:39.63 ID:qge2FmiGo
魔女「ヴォォォォォォッ!!!」


鎧を纏う人魚の魔女。
その手には大きな剣。

ほむら「青魚、貴方は上條恭介の護衛に徹しなさい」

さやか「青魚…?わかった……」


ほむら「あんこ、あと…ユウリさん、良いかしら?」

ユウリ「……いつでも良いよ」

杏子「あんこ言うな」

355: 2012/09/30(日) 18:01:41.27 ID:qge2FmiGo
ユウリ「そらそらそらそらァッ!!!」

一掃せんと、弦楽隊に機銃掃射を仕掛ける。

ユウリ「王室お抱えのオケバン並に多いな…!」

そして腰からフォークを取り出し、投げ付ける。


杏子「紅百鬼夜行<スカーレット・ナイトストーカーズ>ッ!!」

黄色のリボンを腕に巻き付け、幻術を展開する。
現れたるは、色とりどりの金魚、古風な格好をした小人、そして陶器のような木馬のような馬に跨った、中華服を纏ったロウソク頭の……


ほむら「武旦の魔女……!」

   「……二ケツしたいわ」

356: 2012/09/30(日) 18:12:08.86 ID:qge2FmiGo
ほむら「さて……私の相手は……」

ノリノリで踊る緑色の髪の使い魔。

ほむら「こいつも塩くさいわね……味噌汁ならワカメより豆腐派よ」

   「私の武器は……」

   「これよ」

盾から取り出したのは弩<ボウガン>

ほむら「魔翌力を込めるならモチベーションが上がる武器の方が良いでしょう?」

   「行くわよ、逃げないで頂戴、ワカメドール」

弦を高速で引き絞り、踊る使い魔ににじり寄る。

357: 2012/09/30(日) 18:21:12.61 ID:qge2FmiGo
ほむら「触れたら……ボンッよ」

一体一体的確に額に撃ち込む。
すると予告通り、爆ぜる。
呪いが漏れ出るのはもちろん、何故か無駄に血飛沫の様な物が飛び散る。



さやか「仁美に似てる使い魔が見るも無惨にィィィッ!!?」

恭介「ねぇ、あの弦楽隊……」

さやか「言うな」

358: 2012/09/30(日) 18:34:40.24 ID:qge2FmiGo
杏子「どきやがれッ!!」

騎手のロウソクの炎と、紅いポニーテールを揺らしながら二匹の馬が使い魔を蹴散らし魔女へ向かう。

降り注ぐ車輪に金魚が体当たりし、それを無効化する。

小人達も叩き落とされた車輪を砕く。


杏子「さぁ、力比べしようぜ?」

359: 2012/09/30(日) 18:44:24.12 ID:qge2FmiGo
杏子と武旦に向かって剣が振り下ろされる。

人魚「ヴォォォ!!」

金属同士の当たる音が響く。

杏子「ハン!質量に任せたところで、こちとら武器一本でマミと別れてから戦ってきてんだ、負けるわけ無いよねェッ!?」

武旦「……!!」

二人の騎手が槍で巨大な剣を受け止めている。

ほむら「ダンサー共もざっと片付いたわよ!」


人魚「ヴォォォォォォァ!!!」

使い魔を全滅させられ、魔女は一層激しく呻く。

360: 2012/09/30(日) 18:49:50.86 ID:qge2FmiGo
さやか「……詳しい話は抜きにするけどね、あの鎧の人魚は…いや、この空間全体は別の世界のあたしだったもの」

   「あたしも一歩間違えれば、ああなってた」

恭介「それで……弦楽隊は僕そっくりで、ダンサーは志筑さんに……」

さやか「あの人魚は恭介の演奏を聴いていたい、でもあの弦楽隊は殺されてしまった。だから怒ってる」

   「だからさ、ユウリ達があの人魚を倒す前にさ、最期に……恭介のバイオリン聴かせてあげてよ」

   「大丈夫、恭介はあたしが護るから」

361: 2012/09/30(日) 18:54:27.09 ID:qge2FmiGo
結界の奥で人魚と、二人の騎手が鍔迫り合いしている。

ユウリとほむらはさやか達の方を向く。

ほむら「もやし男、今回は漢気を出して告白したそうね。褒めてやるわ」

   「……曲がりなりにもあいつも美樹さやかよ」

ユウリ「最期に一曲、聴かせてやりな」



恭介「分かったよ」

恭介はバイオリンを構え、目を閉じ旋律を思い出す。

370: 2012/10/01(月) 07:14:33.38 ID:k7+mCUBIO
恭介「……」


彼が奏でたのはアヴェ・マリア……そして結界の弦楽隊が弾いていた『魔女達の饗宴』



さやか「あの状況でコピー!?」

ユウリ「やはり天才か…!」

ほむら「いや、解説キャラとかきょうび流行らないから」


杏子「魔女の動きが止まった…?」

人魚「ヴォォォ……」


弾き終えた恭介は深くお辞儀をした。

371: 2012/10/01(月) 07:20:11.12 ID:k7+mCUBIO
杏子「そろそろこいつも我慢の限界みたいだ…!」

武旦「……!!」

剣を弾き、腕を切り落とす。


さやか「あとはあたしが決着をつけるよ」

ほむら「さっさとケリをつけて来て頂戴。こんなところ生臭くてかなわないわ」

ユウリ「行って来い」

恭介「……頼んだよ」


さやかは剣を一本だけ取り出し、両腕の力を振り絞り、人魚の腰を斬り裂かんと横方向の斬撃を放つ。


さやか「ありがと、ごめんね」

372: 2012/10/01(月) 07:25:30.49 ID:k7+mCUBIO
上半身と下半身を分割された魔女はもはや意識を保つことが出来ず、微かな呻き声をあげるのみであった。


さやか「……」

杏子「さやか……何をしてるんだ?」

さやか「これはあたしが使った方が良いかなって。どうせ消えちゃうし」

大きい赤いリボンを人魚の胸から解き、腕ごと落とされた剣を拾う。

杏子「……」

杏子も黙ってもう片方の剣を拾う。



ほむら「さ、帰りましょうか?」

   「私が出て来てからも相当時間は経ってるわよ」

373: 2012/10/01(月) 07:30:38.61 ID:k7+mCUBIO
杏子「……」


廃教会の庭の一角、マミの墓がある場所。

━━━━

ほむら「これは……巴マミのソウルジェムだったものね」

   「貴方が持っていなさい」

━━━━

杏子「これで、からっぽの墓なんかじゃないな……」

墓の下にそれを埋める。
そして、人魚の魔女の剣をその隣に突き刺し、小さい槍を取り出す。

杏子「剣の墓碑なんてマミが羨ましがりそうだな……」

剣に何か文字を入れ、二つの墓に手を合わせ杏子は街へと戻って行った。

374: 2012/10/01(月) 07:36:23.57 ID:k7+mCUBIO


ユウリ「お疲れ様!かんぱーい!」

ほむら「かんぱーい」

……どうやら私はユウリを居候させているらしい。
あの青魚カップル成立パーティを殆ど話したこともない人と二人でしている状況だ。

ここはあのカップル成立に奔走したらしい、私を呼び出した私を……

ユウリ「いやー、アルコール無くても身体熱くなっちゃうね」

パタパタと音を立てて、服の中の空気を入れ替えるユウリ。
それを見て私は確信した。

ほむら「これも含めて私の出番ね」

ユウリ「ん?」

ほむら「こっちの話よ」

375: 2012/10/01(月) 07:42:51.99 ID:k7+mCUBIO
どう契約をしたか知らないが、私のソウルジェムは二つ、そして身体の中に魂が一つ。

契約したのに、魂を取り出されていないなんてタダ同然じゃない、全く強かな女ね……

代償として色々頼ませて貰うわよ…!

ユウリ「さっきからホムッホムッってあざとい効果音が鳴ってるのは何なの?」

ほむら「そ、そんなことないですよぉ」

ユウリ「気のせいなのかな……酔いが回ってきたみたい」

376: 2012/10/01(月) 07:47:34.14 ID:k7+mCUBIO


私はあの時「この状況を……いや、残酷な運命を退けられる『私』を私のソウルジェムとして呼び出して」と言った感じに願ったんだと思う。

なんかよくわからないけどその『私』のおかげで美樹さんは助かり、あの場は収まった。

しかし、この『私』……とんでもない問題児で……

記憶に触れたことを後悔してます……

377: 2012/10/01(月) 07:51:17.21 ID:k7+mCUBIO
━━━━

ほむら「豚なら豚らしく泣きなさいティロフィナーレ(笑)」

マミ「キィィィッ!!!!!」

━━━━

ほむら「ローファーをピカピカに磨いたの」

まどか「うわぁ……すごい綺麗で鏡みたいになってる!」

ほむら「これでまどかのパンツも見えるわ」

   「可愛い刺繍ね」

まどか「最高の笑顔で何言ってるの!?」

━━━━

378: 2012/10/01(月) 07:54:34.27 ID:k7+mCUBIO
━━━━

ほむら「美樹さやかはこの日は統計的に紐パンだから盗めるわね」

さやか「……なんかスースーするな」

━━━━

ほむら「あんこちゃんあんあん!!」

杏子「やめろぉぉ……」

ほむら「ムッハークンカクンカスーハー」

杏子「やめてくれよぉ……」

━━━━

379: 2012/10/01(月) 07:59:23.77 ID:k7+mCUBIO
━━━━

ほむら「保健室でサボる悪い子にはお仕置きが必要ね」

スパコーンスパコーン

キリカ「あだっ!?がっ!いだっ!」

━━━━

そしてさっきも……

━━━━

ほむら「これがもう一つの私のソウルジェム……」

ぺろっ

『ちょっと!?やめなさ…あぁっ!?』

ほむら「自分とは思えない程の可愛い反応ね。これを考慮すれば自分の下着どころか自分の髪の毛でもソウルジェムの濁りは取れそうね」

━━━━


といった具合に……
しかも、今も出ているということは……

飛鳥さんが危ない…!

380: 2012/10/01(月) 08:03:56.86 ID:k7+mCUBIO


ユウリ「ん?ほむらはもうお腹いっぱいなのか?」

ほむら「ちょっと疲れちゃって……少し休んで良いかな?」

ユウリ「そっか……じゃあ膝枕してあげるよ」

ほむら「えっ」

ユウリ「嫌だった?」

ほむら「ううん、むしろ嬉しいよ!」

ユウリ「良かった、さ、おいで」

381: 2012/10/01(月) 08:09:39.11 ID:k7+mCUBIO
……私が膝枕してもらったことのある人物は、看護師と母親と巴マミと美樹さやかとあんこちゃん、もとい杏子。

感触としては美樹さやかと杏子の間くらいね。

ユウリ「アンタも良く頑張ったよ、よしよし」

心地が良い、どうやら『私』はこういう立ち位置だったようだ。

ユウリ「あ、そうだ。またちょっと服脱いでくれない?」

……


……はい?

382: 2012/10/01(月) 08:16:46.07 ID:k7+mCUBIO
ユウリ「早く早く!それとも今は嫌か?」


早く脱げ!?今はダメか!?
どういう関係なの!?
居候って……


━━━━

「ほむらは女の子に好かれるタイプだから女子校に入れた方が良いと思うんだ」

「そうね……あの子を支えてくれる姉貴分が居てくれたら良いわね」

「ミッション系なんてどうだろうか?」

━━━━

お父さん、お母さん。
女子校辞めて共学に転入したけど、運命は後から追いかけてくる物でした。
この幸せを噛み締めます。

383: 2012/10/01(月) 08:28:39.50 ID:k7+mCUBIO
ゆっくり一枚一枚ずつ脱ぐ。
凹凸も括れも贅肉もない棒体型だけれど、きっとわかってくれる人はわかってくれるこの魅力があるに違いない。

ユウリ「?……なんでそんなゆっく…下まで脱がなくて良いよ!?」

   「もしかしてアンタも酔ってる?」

下は脱がなくて良い?
その言葉の意味を考えてる内に、ユウリの額が私の額にあてられる。

ユウリ「熱は無い……単に身体が火照ってるのかな?」

   「そのままお風呂入ってきたら?」

ほむら「……倒れないか不安だから……一緒に入ってくれない?」

ユウリ「えっ、別に良いけど?」


勝った!第三部完!
ウォーアイニーソッ!!

384: 2012/10/01(月) 08:33:15.74 ID:k7+mCUBIO


ユウリ「こらこら、そっちは触るな。あいりにシバかれるよ?」


ぐすん。

脱げと言ったのは心臓の治療の話だったらしい。
私は触ることが許された上半身を堪能し、身体の持ち主に主導権を返した。



ほむら「ごめんなさい!さっきまでのは契約で呼び出したソウルジェムの魂で……」

ユウリ「わかってるよ、今は変な効果音無いし」

385: 2012/10/01(月) 08:38:10.74 ID:k7+mCUBIO


さやか「魔法の波長が合うからなのかな?」

   「このデカい剣も変身時だけ呼び出せるみたいだね」

巨大な赤いリボンを使って家まで運んできたけど、何時の間にかリボンはその剣の鞘となっていた。

さやか「これからはこの剣一本を大事に使おう」

386: 2012/10/01(月) 08:44:22.80 ID:k7+mCUBIO




ユウリ「アタシ達が伝説になる!」



杏子「来やがれッ!!」


武旦「……」



ほむら「彼女出来るまで氏んでたまるかァーッ!!」



さやか「ワルプルギスだかワルキューレだかプルコギだか知らないけど今のあたしに斬れないものは無いよ!」

387: 2012/10/01(月) 08:49:25.18 ID:k7+mCUBIO


QB「参ったな。まどかに契約を迫ろうにも杏子の使い魔がまどかの周りと避難所の外周りに居て手を出せない」

  「戦況も怒涛の勢いで攻撃を浴びせていてどう見ても不利には見えない……」

  「当分契約は望めないな。魔女化もしてくれなさそうだし、この街も諦めるしかないか……」


キュップィ

388: 2012/10/01(月) 09:06:25.58 ID:k7+mCUBIO


『貴方はこれだけ強いのにどうしてループを続けているの?』

ほむら「……私の願いには欠陥があるの」

   「私は永遠にこの一ヶ月を繰り返す宿命にある。この一ヶ月でまどかを護り続けなくてはならない宿命にある」

   「一ヶ月が終わったら、いつ勝手に遡行するかわからないわ」

『そんな酷い話……』

ほむら「一度、耐えられず魔女化したけど、何時の間にやらソウルジェムに戻っていたわ。その時からかしら?暴走しだしたのは」

   「ソウルジェムを砕いたって同じよ。何時の間にか再生し元に戻る。永遠に閉じ込められてたのよ」

『……』

389: 2012/10/01(月) 09:11:47.01 ID:k7+mCUBIO

ほむら「でも、安心したわ。遡行した後にもちゃんと私は居るって気付けて」

   「それに、今回はイレギュラーに呼び出されたワケだし勝手に遡行することも無いかもしれない」


ユウリ「おーい!親友と相棒を紹介するよ!」


ほむら「……とりあえず遡行してしまうまでを楽しむわよ」

   「さ、行きましょ?」

『えぇ……』


杏子「一々箸袋に箸戻すなよ!」

  「箸の真ん中まで汁がついちまってるじゃねえか」

さやか「いやぁ……納刀が癖になっちゃって……」

まどか「ん、ユウリちゃんこれ美味しい!」

ユウリ「ホント!?」

ミチル「あったりまえだよー」

あいり「なんたってユウリはチャンピオンだからね!」

390: 2012/10/01(月) 09:18:52.85 ID:k7+mCUBIO

ほむら「貴方達、網が低いからって腰を後ろに突き出しているのは後ろから見ると凄い扇情的よ」

   「ほむっ!!」

杏子「なっ、なんであたしなんだよぉ!!」

杏子の臀部に抱きつき腰に頬ずりしだすほむら。
クールさもか弱さもあったものではない。

まどか「こういうのはさやかちゃんが……」

さやか「なにそのキャラ付け」

ユウリ「確かにさやかは尻キャラだね」

あいり「成る程」

ミチル「確かに」

さやか「なんでぇ!?」


杏子「お前らそんなこと言ってないで助けてくれ……」

ほむら「ほむほむほむほむ……」


『好き勝手やり過ぎよ……』

(事情を知らない鹿目さんには私が変態だと思われそう……)

ほむら「貴方達今日は下着無しで帰るものと思いなさい!!」


fin.

391: 2012/10/01(月) 09:21:35.42 ID:k7+mCUBIO


これでホントに終わり。
どっちのルートがトゥルーかは好きな方をどうぞ。
読んでくれた方々、ありがとうございます。
明日の夜辺りHTML依頼出します。

次回作は夕方立てます。
それに役立てたいので良ければ感想、批評など頂ければ幸いです。

398: 2012/10/01(月) 12:45:06.14 ID:k7+mCUBIO
織莉子「流浪のギタリスト」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349062496/

引用元: さやか「あたしの刀の納め処」