1: 2016/07/16(土) 01:43:38.40 ID:r9MGIgBw.net
・微ホラー、残酷な描写あり
・時系列: アニメ2話直後

◎過去作リンク
 ことり 「悪魔のゲームソフト」
 ことり 「私の来世!?」

穂乃果 「ペルソナッ!」

3: 2016/07/16(土) 01:44:19.17 ID:r9MGIgBw.net
千歌 (どうしよう…まっっったく分からないっ…!)


千歌は苦難していた。
机の上に置かれた1枚の小テスト用紙に、額から垂れた汗がポツポツと落ちる。

ここ最近、スクールアイドルのことに気を取られすぎていたせいで、数学の小テストの存在を、すっかり忘れていたのだ。


千歌 (…なぁんて言っても、言い訳にしかならないよねぇ…。先生だって認めてくれないだろうし…。)


大問1から、一向にペンが進まない。
しかし時は無情にも過ぎていき、ついに教師が 「残り10分」 と口にした。


千歌 (まずい……これは本当に…)

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ーーーー
ーー

4: 2016/07/16(土) 01:44:48.36 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「まずいよぉぉぉぉっ!!!!」ガバッ!


…目が覚めた。窓の外から、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
千歌は布団の中で、汗まみれになっていた。


千歌 「ゆ……夢かぁ…。」


母 「千歌ー!? いつまで寝てるの! 早く起きないと遅刻するわよー!」


千歌 「えっ…うわぁぁぁ! もうこんな時間!?」

5: 2016/07/16(土) 01:45:28.23 ID:r9MGIgBw.net
千歌が慌てて身支度をしていると、家のインターホンが鳴った。


千歌 「ん…? 曜ちゃんかな?」


千歌が玄関の扉を開けると、そこには長髪の美少女がいた。


千歌 「梨子ちゃん!」

梨子 「おはよう、高海さん。」

千歌 「おはよう! どうしたの、こんな早くに…。」

梨子 「いや、一緒に学校に行こうかなー…なんて思ったんだけど…。」


梨子は千歌の格好を見て、軽くため息をついた。
スカートのチャックはしまっていない。それどころか、上半身はパジャマのままだ。
髪にいたっては、いつも以上にくせっ毛がひどいことになっている。

6: 2016/07/16(土) 01:45:59.00 ID:r9MGIgBw.net
梨子 「その様子じゃ、今日は先に行った方がいいかな…?」

千歌 「うわぁぁ! ちょ、ちょっと待って! すぐ準備するから!」ピシャン!

梨子 「えっ…ちょっ…」


梨子の言葉を待たず、玄関の扉は閉められてしまった。


梨子 「えぇっと…こ、ここで待つの…?」


梨子が困惑していると、また勢いよく扉が開いた。


千歌 「ごめん忘れてた! 中で待ってて!」

梨子 「う、うん…。」


梨子 (本当に大丈夫かな…この子。)

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7: 2016/07/16(土) 01:46:27.75 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「ほへぇー…。間に合ったぁ…。」

曜 「ごめんねぇ…私が遅れたばかりに。」

梨子 「あはは…。」


梨子が千歌の家に訪れた数分後に、曜も千歌の家にやって来た。
3人は学校前へと向かうバスに揺られていた。


千歌 「うぅー…寝坊したのもあの夢のせいだぁ…!」

曜 「いや、寝坊はいつもじゃないかな。」

梨子 「夢って?」

千歌 「よくぞ聞いてくれた梨子ちゃん!」

8: 2016/07/16(土) 01:46:58.75 ID:r9MGIgBw.net
曜 「数学の小テストの夢?」

千歌 「そうなの! いやー、夢だってわかって安心したよー。」

曜 「心臓に悪いねぇ。」

梨子 「……。」

千歌 「り、梨子ちゃん? どうしたの、そんな顔して…。」

梨子 「いや、その…数学の小テストだけどさ…。」

曜・千歌 「「…??」」


梨子 「今日あるよ?」

9: 2016/07/16(土) 01:47:33.21 ID:r9MGIgBw.net
曜と千歌は顔を見合わせた。お互い最初は無表情だったが、次第にその表情は絶望に染まり始めた。


曜・千歌 「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

梨子 「本当に忘れてたの…。」

曜 「どどどどどうしよう!? 確か範囲は…」


曜は慌てて鞄から数学の教科書を取り出し、ペラペラとページをめくり始めた。


千歌 「梨子ちゃぁんっ! どこだっけ!?」

梨子 「はぁ…12から20ページでしょ。しかも、その中の応用問題から3つそのまま出されるらしいよ。」

曜 「本当に!? こ、これはもうヤマをはるしか…うぬぬ…!」

千歌 「……?」

梨子 「千歌ちゃん? どうしたの?」

10: 2016/07/16(土) 01:48:06.55 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「…曜ちゃん、ちょっと貸して。」


千歌は曜から教科書をかり、自分のペンで応用問題3つに印をつけた。


曜 「ち、千歌ちゃん…?」

千歌 「ここと…ここと…ここ…。」

梨子 「…?」

千歌 「今日の夢で出てきた小テストの問題! これと全く同じだった!」

曜 「おぉ…! すごいよ千歌ちゃん! これで100点間違いなしだ!」

梨子 「えぇ…。」

11: 2016/07/16(土) 01:48:35.30 ID:r9MGIgBw.net
梨子 「えっと…つまり千歌ちゃんの夢に出てきた小テストの問題が、この3つだったってこと?」

千歌 「そう! つまり、今日のテストの問題もこれなんだよ!」

曜 「すごいよ! まるで予言者だ!」

梨子 「いや…でもだからって…」

千歌 「いや、もうこれを信じるしかないよ!」


応用問題は全部で20問あった。そこから3つとなると、ヤマが当たる確率はおよそ1/7。
もはや2人には、夢に出てきた小テストしか頼りがなかった。

12: 2016/07/16(土) 01:49:04.53 ID:r9MGIgBw.net
曜 「よし、この問題の答えだけ覚えておけばいける! 頑張ろう、千歌ちゃん!」

千歌 「うん! みんなで100点をとろう!」

梨子 「えっ、私も含まれてるの…?」

曜 「勿論だよ! ふぁいっ、おー!」

千歌 「おーっ!」

梨子 「お…おー。」


運転手 『えー…車内ではお静かにお願い致します。』


3人 「「「す…すいませーん……。」」」

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13: 2016/07/16(土) 01:49:35.63 ID:r9MGIgBw.net
~数学の時間~


教師 「よーし、テスト用紙行き渡ったかー?」


梨子 (2人とも、あんなこと言ってたけど大丈夫かな…。)


教師 「今から20分だぞ。テスト始め!」


教師の合図で、全員がテスト用紙をめくり、問題を解き始めた。
…その問題を見て、梨子は大きく目を見開いた。


梨子 「こ…これって…!」

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14: 2016/07/16(土) 01:50:04.18 ID:r9MGIgBw.net
~昼休み~


曜 「ありがとうございますぅ…神さま仏さま、高海千歌さまぁ…!」

千歌 「ふっふーん! もっと崇めよー! フハハハ!」

曜 「ははぁーっ、千歌さまぁー!」


梨子 「まさか、本当に夢のとおりになるなんて…。」

曜 「すごいよ! 千歌ちゃんがいれば、もうテストなんて怖くないっ!」

千歌 「これでテストはオール100点だ!」

梨子 「…ちゃんと勉強しなさい。ていっ。」


梨子は軽く二人の頭を叩いた。

15: 2016/07/16(土) 01:50:30.02 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「うぅ…ひどいよ梨子ちゃん…。」

梨子 「こんな偶然が何度も続くわけないでしょ? ちゃんと勉強しないと、いつか痛い目にあうからね?」

千歌 「はぁーい…。」


曜 「でも、偶然にしてもすごいよね。夢に見たことが、そのまま現実に起こるなんて。」

梨子 「多分…“予知夢” ってやつじゃないかな?」

千歌 「予知夢…?」

16: 2016/07/16(土) 01:51:00.39 ID:r9MGIgBw.net
梨子 「未来に起こることを夢に見る…それが予知夢だよ。」

曜 「じゃあ千歌ちゃんは、夢の中で未来を予知したってこと?」

千歌 「すごい! 私超能力者だ!」

梨子 「誰にでも、たまにあることらしいよ。だから、今回に味を占めて勉強しないってのはダメだからね?」

曜・千歌 「「うぐっ…。」」

梨子 「はぁ…本当にこの人達と一緒で大丈夫かなぁ…。」

千歌 「だ、大丈夫だってー! そうだ、昨日の作詞のことだけどさ…」

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17: 2016/07/16(土) 01:51:27.75 ID:r9MGIgBw.net
~夜 千歌部屋~


千歌 「うぅーんっ! 今日はテストもいい感じだったし、なんかいい気分!」

千歌 「…今日も“予知夢” ってやつ、見られるかな?」

千歌 「まっ、それは寝てからのお楽しみ!」

千歌 「おやすみー……」

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18: 2016/07/16(土) 01:51:55.00 ID:r9MGIgBw.net
曜 『本当に!? もう曲できたの!?』

梨子 『うん。まだ試作品って感じだけど。』

曜 『すごいよすごいよ! これで遂に、ライブが出来るね!』

梨子 『ラ…ライブ?』

曜 『そりゃそうだよ。アイドルなんだから、ライブをするのは当然でしょ?』

曜 『ねっ、千歌ちゃん?』

千歌 『そうだよ! 梨子ちゃん、頑張ろうね!』

19: 2016/07/16(土) 01:52:40.74 ID:r9MGIgBw.net
曜 『よーし、そうと決まったら、早速生徒会に講堂の利用許可を貰いに行こう!』

梨子 『あっ、曜さん! ちゃんと前見て歩かないと…』


曜は嬉しさのあまり、前をよく見ず走り出した。…その時だった。
凄まじい轟音とともに、曜の体めがけ、トラックが突っ込んできた。

千歌と梨子は、咄嗟に手を差し伸べた。
曜もその手を握ろうと、手を伸ばした。
しかし、曜の手は、千歌と梨子のどちらとも触れることは無かった。
…千歌と梨子の2人の制服の所々に、赤いシミがついた。

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20: 2016/07/16(土) 01:53:12.76 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「あぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」


千歌は絶叫しながら目を覚ました。
…全身に汗をかいていた。しかしそれは、前日目覚めた時の汗とは、違う汗だった。
全身の震えが止まらない。両手で二の腕部分を強く握り、震えを止めようとする。
その時、外から声が聞こえてきた。


曜 「おーい、千歌ちゃーん! 起きてるー?」

千歌 「…ッ!」


千歌は今にも転びそうな体制で階段を駆け下り、玄関の扉を開いた。


曜 「千歌ちゃん、おはよ…」

千歌 「曜ちゃぁんっっ!!!」


千歌は思わず、曜に抱きついた。

21: 2016/07/16(土) 01:53:39.65 ID:r9MGIgBw.net
曜 「えっ…ち、千歌ちゃん? どうしたのさ急に…。」

千歌 「ひぐっ…うぇぇ……。」


言うべきだ。また予知夢かもしれない。
曜ちゃんに、今見た夢の内容を話すべきだ。そんなことはわかっている。

…だが、千歌は曜にそれを話すことが出来なかった。むしろ、話したくなかったのかもしれない。
一刻も早く、その残酷な現実…いや、夢を忘れてしまいたかったのだ。


梨子 「どうしたの? 2人とも。」

曜 「あっ、梨子ちゃん。おはよう。いや、それが私にもさっぱり…。」

千歌 「曜ちゃん……うぅぅ…。」

22: 2016/07/16(土) 01:54:19.59 ID:r9MGIgBw.net
~通学路~


千歌は暗い表情をしたまま、2人と一緒に学校へと向かっていた。


曜 「本当に!? もう曲できたの!?」

梨子 「うん。まだ試作品って感じだけど。」

曜 「すごいよすごいよ! これで遂に、ライブが出来るね!」

梨子 「ラ…ライブ?」

曜 「そりゃそうだよ。アイドルなんだから、ライブをするのは当然でしょ?」

曜 「ねっ、千歌ちゃん?」

千歌 「えっ…あっ、うん…。」

23: 2016/07/16(土) 01:54:52.04 ID:r9MGIgBw.net
曜 「よーし、そうと決まったら、早速生徒会に講堂の利用許可を貰いに行こう!」

梨子 「あっ、曜さん! ちゃんと前見て歩かないと…」


千歌 「……! 待ってえぇっ!!」


千歌は一目散に走る曜の体を、後ろから抱きしめた。曜は驚き、その場に留まった。


曜 「えっ、ど、どうしたの千歌ちゃ…」


その時、曜の目と鼻の先を、トラックが轟音とともに通り過ぎた。
それを見た千歌は、曜の体から離れ、尻もちをついて倒れ込んだ。


千歌 「よ…よかったぁ…。」

曜 「千歌ちゃん!?」

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24: 2016/07/16(土) 01:55:21.68 ID:r9MGIgBw.net
~教室~


梨子 「ということは、あれも夢で見たことだったの?」

千歌 「うん…なんとなくだけど、ふたりの会話の内容も同じだった気がする。」

曜 「千歌ちゃん…本当にありがとうっ!」

梨子 「二日続けて予知夢を見るなんて…しかも、こんなに正確なものを…。」

千歌 「もしかして私、本当に…。」

曜 「千歌ちゃん?」


…そうだ、この力を無駄にしてはいけない。
もし、毎日予知夢を見れるのだとしたら、私はみんなの力になれるかもしれない。今回のように、人の命を救う事だって出来るかもしれない。

25: 2016/07/16(土) 01:55:51.25 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「…決めた!」

梨子 「千歌ちゃん?」

千歌 「私、この力をみんなのために使う!」

曜 「おぉ…千歌ちゃんがいつにもなくたくましい…!」


梨子 「それも大事だけど、ライブの件はどうなったの?」

曜 「あっ…。」

梨子 「はぁ、そんなことだろうと思った。」

26: 2016/07/16(土) 01:56:22.29 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「そうだ、明日は土曜日だし、どこかで振り付けの練習しない?」

曜 「そうだね、あと歌の練習も。」

梨子 「あぁー…。」

千歌 「ん? どうかしたの、梨子ちゃん。」

梨子 「ごめんなさい! 私、明日からお父さんとお母さんと一緒に千葉に行くの。」

千歌 「そんなー!」

曜 「旅行?」

梨子 「まぁ、そんなところ。遊園地に行くの。ごめん! お土産ちゃんと買ってくるから…。」

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27: 2016/07/16(土) 01:56:51.10 ID:r9MGIgBw.net
~夜 千歌部屋~


千歌 「よーし、どんな夢でもどんとこい!」

千歌 「救世主 高海千歌様が、運命を変えて見せるっ!」

千歌 「ふぁーあ、おやすみぃー…。」

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ーー

?? 『本当に大丈夫なのか?』

??? 『安心しろ、この家に住んでる奴らは全員、千葉に旅行中。明日の午後まで帰ってこない。』

?? 『さっすが、下調べは完璧だな。』

??? 『盗みに入る家の事はとことん調べる。常識だろ?』


千歌 (なに、この夢。私の視点じゃない…。)

28: 2016/07/16(土) 01:57:19.66 ID:r9MGIgBw.net
2人の男は、ある家の前で話していた。
千歌にはその家に、見覚えがあった。


千歌 (ここって…梨子ちゃんの家? しかもこの人たち、盗みに入るって…!)


強盗A 『時間は…22時。予定通りだ。』

強盗B 『よし、入るぞ。』


二人の強盗は、鉄で出来た道具で玄関の鍵を開け、梨子の家に入っていってしまった。

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ーーーー
ーー

29: 2016/07/16(土) 01:57:46.21 ID:r9MGIgBw.net
~朝~


千歌 「…!」ガバッ!

千歌 「まずい…このままだと、今夜梨子ちゃんの家に強盗が…。」

千歌 「警察…は無理か…。『今から強盗が入ります!』って言っても信じてもらえっこないし…。」

千歌 「取り敢えず、梨子ちゃんに教えなきゃ!」

30: 2016/07/16(土) 01:58:17.42 ID:r9MGIgBw.net
梨子 『もしもし、高海さん?』

千歌 「梨子ちゃん! 今どこ!?」

梨子 『どこって…今ちょうど千葉に向かってるとこだけど…。』

千歌 「大変なの! 今日の夢、梨子ちゃんの家に強盗が入る夢だったの!」

梨子 『えっ…それって本当!?』

千歌 「このままだと、今日の夜、強盗に入られちゃう…!」

梨子 『でも…お父さんやお母さんに言っても、信じてもらえるか…。』

31: 2016/07/16(土) 01:58:43.71 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「もし戻ってこれるなら、戻ってきて! 家に誰かいれば、強盗も諦めるかも…!」

梨子 『うん…一応、言ってみる。ありがと。』

ーーー

千歌 「どうしよう…やっぱり、警察に!」

千歌 「…でも私、強盗の特徴とか、何もわからない…。」

千歌 「…そうだ! もう一度寝れば!」

千歌 「もう一度寝れば、さっきの続きが見られるかもしれない。そうしたら…」

千歌 「よし、そうと決まれば早速…」

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32: 2016/07/16(土) 01:59:09.84 ID:r9MGIgBw.net
強盗A 『おいっ、ガキが逃げたぞっ!』

強盗B 『どういうことだ!? 明日まで帰ってこないんじゃなかったのかよ!?』

強盗A 『予定が変わったんだろ…。とにかく、姿を見られた以上、生かしとくわけには!』


千歌 (えっ…ど、どういうこと? 梨子ちゃんが…見つかっちゃった…?)

33: 2016/07/16(土) 01:59:39.71 ID:r9MGIgBw.net
強盗A 『おい、こっちに逃げたぞ!』


強盗は、トイレのドアの鍵を強引に壊し、勢いよく扉を開けた。
するとそこには、涙目になりながら震える、一人の少女がいた。


強盗A 『…手間かけさせやがって。』


強盗はその少女にナイフを向け、そのまま彼女の腹部を刺した。

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34: 2016/07/16(土) 02:00:08.52 ID:r9MGIgBw.net
~夕方 千歌部屋~


千歌 「……まずい。」

千歌 「私が戻ってきてなんて言ったばかりに…梨子ちゃんが家に戻ってきちゃったんだ。」

千歌 「いや…今ならまだ間に合う! 強盗が来るまで、あと5時間はある!」

ーー

千歌 「もしもし梨子ちゃん!?」

梨子 『高海さん? 今度はどうしたの…?』

千歌 「お願いっ! やっぱり戻ってこないで!」

梨子 『えぇっ!? ど、どっちなの…。』

千歌 「とにかく、戻ってきたらダメ! 大変なことになるから!」

35: 2016/07/16(土) 02:00:38.60 ID:r9MGIgBw.net
梨子 『で、でも強盗は…』

千歌 「それは……私が何とかする!」

梨子 『なんとかって…。』

千歌 「大丈夫、私にはこの力がある!」

梨子 『高海さん…。』


梨子 『…分かった。高海さんの言う通り、戻らない。でも絶対無理しないで。』

千歌 「うん…。ありがと、梨子ちゃん。」

ーー

千歌 「…よし、これで大丈夫。」

36: 2016/07/16(土) 02:01:12.52 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「警察に行くにしても、まず信じてもらえない。」

千歌 「梨子ちゃんには悪いけど…強盗には1度盗みに入ってもらおう。」

千歌 「そしてその瞬間を、このカメラに収める!」

千歌 「それを警察に見せれば、きっと強盗は捕まる。…よし、完璧だ!」


千歌 「…強盗が来るまであと4時間。」

千歌 「もう少しだけ…情報があった方がいいよね。」


千歌は家の薬箱から睡眠薬を取り出し、それを飲んだ。

37: 2016/07/16(土) 02:02:11.78 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「梨子ちゃん…。絶対に、私がなんとかしてみせるから!」

千歌 「私…に……ま…か……」

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ーー

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千歌 「……。ん…?」

千歌 「あれっ…私…。」


千歌は枕元にあった時計を見た。時計は21時を指している。


千歌 「今私、確かに寝たはず…でも…。」

千歌 「夢を…見られなかった…。」

千歌 「最悪…このタイミングで予知夢が見られないなんて…。」

38: 2016/07/16(土) 02:02:42.04 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「悔やんでもしょうがない。…行かなきゃ。」


千歌は部屋の窓から身を乗り出した。


千歌 「ごめん…梨子ちゃん! たぁっ!」


千歌は、窓から隣の梨子の家のベランダへと、飛び移った。


千歌 「ひ、ひぃ…。高いよぉ…。」

千歌 「窓、しっかり鍵しまってる。当たり前だよね…。ごめん、今度バイトして修繕費払うから…。」


千歌は肘で窓ガラスの一部を割り、そこから手を通し、鍵を開けた。

39: 2016/07/16(土) 02:03:12.02 ID:r9MGIgBw.net
千歌 「あとはここで強盗が来るのを待つだけ…。そしたらこのカメラで…。」


その時だった。
1階から、なにやら物音が聞こえた。
それは、玄関の鍵が、ゆっくりと開けられる音だった。


千歌 「……! 来た…!」


急に鼓動が早くなる。
全身に冷や汗をかきつつも、千歌はゆっくりと階段をおり、強盗の姿を探し出した。

…何もかも予定通り…のはずだった。
強盗を発見し、カメラを構えたその時、手の汗がカメラをすべらせた。
そしてカメラは、床に叩きつけられ、大きな音を立てた。


強盗A 「…!? おいっ、誰かいるぞ!」

千歌 「……! ま…まずいっ!!」

40: 2016/07/16(土) 02:03:36.75 ID:r9MGIgBw.net
必氏に逃げた。もう足音などは気にせず、全力で走った。


強盗A 「おいっ、ガキが逃げたぞっ!」

強盗B 「どういうことだ!? 明日まで帰ってこないんじゃなかったのかよ!?」

強盗A 「予定が変わったんだろ…。とにかく、姿を見られた以上、生かしとくわけには!」


千歌 「このままじゃまずい…。どこかに隠れなきゃ…!」


千歌は慌てて、2階のトイレに身を潜め、鍵をかけた。

41: 2016/07/16(土) 02:04:06.11 ID:r9MGIgBw.net
強盗A 「おい、こっちに逃げたぞ!」


千歌は頭を抱え、泣き出した。
…もう、どうしようにもない。なぜ武器もなにも持たずに来たのか…。

トイレの部屋の鍵が、外から何か鈍器のようなもので殴られている。開けられるのも時間の問題だろう。


千歌 「やめてやめてやめてやめて……お願いしますお願いします許して許して許して許して…!!!!」


…ドアが開けられた。
強盗はナイフをこちらに向けている。
千歌はただ頭を抱え、涙目で強盗を見上げていた。


強盗A 「手間かけさせやがって。」

42: 2016/07/16(土) 02:04:31.88 ID:r9MGIgBw.net
…今やっとわかった。なぜ最後、予知夢を見られなかったのか。

あれが…
あの時見た夢が…


私が最後に見た景色だったからだ


ーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー

43: 2016/07/16(土) 02:05:00.01 ID:r9MGIgBw.net
~朝~


曜 「……ッ!!!」ガバッ!


目が覚めた。…全身に汗をかいていた。
ここまで長い夢は久しぶりだったし、ここまでリアルな夢は初めてだったからだ。

…いや、それ以上に、親友が酷い目にあう夢を見たことが、一番の苦痛だった。


曜 「今のは…夢…?」

曜 「…ってやばい! 早く千歌ちゃんの家に行かないと遅れちゃう…!」


曜は慌てて準備をし、千歌の家へと向かった。
テストの予習をしようと持ち帰ったまま、何も手をつけなかった数学の教科書と一緒に。

ーーーーー


44: 2016/07/16(土) 02:06:27.73 ID:r9MGIgBw.net
短いですが、これにて完結です。読んでいただき、ありがとうございました。

サンシャインのアニメが始まったということで、試しにサンシャインのSSを書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
各キャラの喋り方だとか、まだ甘い部分があるので、次回作からは改善していきます

改めて、ありがとうございました
なにか感想等あれば、是非お願いします

引用元: 【SS】千歌 「私目覚めたんだ…超能力に!!」 【世奇妙】