3: 2010/10/01(金) 20:20:26.78 ID:fzCEjSpl0
紬「………ん」

律「おはよ」

紬「また寝ちゃってた?」

律「うん。でも五分ぐらいだよ」

紬「そっか」

律「気にしなくていいよ。澪なんかそのまま朝まで起きないこともあるから」

紬「そうなんだ」クスッ



澪ちゃんはりっちゃんの恋人

私は、りっちゃんの友達
けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
4: 2010/10/01(金) 20:21:56.26 ID:fzCEjSpl0
りっちゃんのあのテクニックは澪ちゃんから…ううん

澪ちゃんと、二人で学んできたもの

澪ちゃんに触れた手で私の髪を撫で、服を脱がし、愛撫する

全部、澪ちゃんからのお下がり

それでもいいの

だってそう望んだのは他ならぬ私だから

6: 2010/10/01(金) 20:23:33.72 ID:fzCEjSpl0
紬「りっちゃん…」スッ

まだ、私しかイってない

律「今日はいいよ」

紬「でも…」

律「いいからいいから」

紬「うん…」

こうして私だけで終わらせることが多い。それじゃあこの関係が成り立たないような気がして私はいつも申し訳なくなる

でも彼女が言うには「人にするだけでも気持ちよくなれるんだよ」だそうだ

実際澪ちゃんともそういうことがしばしばらしい

本当に彼女はそれで満足なのだろうか

でも私にはりっちゃんのその言葉を信じるしかない

だって私は澪ちゃんみたいにりっちゃんの全てを分かってあげることができないから

7: 2010/10/01(金) 20:24:45.01 ID:fzCEjSpl0
律「そろそろ出ようか」

紬「うん。ねぇ…やっぱりお金私が出すよ」

律「いやワリカンでいいよ」

紬「でも…」

澪ちゃんとのデート代でお金大変でしょ?

そう言いかけて口を紡ぐ

単なる嫌味にしか聞こえないだろうし、澪ちゃんとのデート代を優先するために私ともう会わないと言う選択肢を選ばれたら困るから

律「大丈夫だって。ここそんなに高いホテルじゃないし」

紬「…………」

律「ごめんな?いつもこんな汚いホテルで」

紬「ううん」

場所なんかどこでもいい。あなたといられれば

8: 2010/10/01(金) 20:26:18.30 ID:fzCEjSpl0
でもそれじゃダメなんだよね

私の家は常に誰かがいるから落ち着かないし、りっちゃんの家ならみんなが留守にすることもあるんだけど…絶対にダメ

りっちゃんと澪ちゃんは幼馴染。家も近い

だからわざわざ隣町の駅から離れたラOホテルでしか二人で会えない

これは彼女と私の約束の一つ

『りっちゃんの家では会わない』

だから私はこれを守らなくてはいけない

9: 2010/10/01(金) 20:27:48.42 ID:fzCEjSpl0
ホテルを出て駅まで二人で歩く

ここからは別々

電車は同じ路線だけど彼女は私より一本遅いのに乗って帰る

本当はホテルの中で別れたいのだろうけど、基本的に帰りは暗くなってることが多いので一人で帰らせるのを心配してくれているのだろう

だから優しい彼女は私をこうして駅まで送ってくれる

ホテルから少し離れたところからなら斎藤に迎えに来させればいいがそれはしない

少しでも彼女の優しさを独占していたいから

10: 2010/10/01(金) 20:28:27.96 ID:fzCEjSpl0
紬 自室

紬「ふぅ…」ぽふっ

洋服のままベットに倒れこむ

少し神経質なのか外に出た服でベットに横になるのが嫌で普段は絶対しないのに彼女とあぁいう風なことをした日だけは何故かしてしまう

彼女はもう家に着いただろうか

メールをしてみようか悩む…けどしない

今まで澪ちゃんに嘘をついて私に時間を使ってたのに今日はもうこれ以上私のために時間を使わせるわけにはいかない

11: 2010/10/01(金) 20:29:49.44 ID:fzCEjSpl0
ふわっ

紬「……」ドキッ

洋服から彼女の香水の匂いがした

ユニの甘すぎない爽やかな香りの香水

澪ちゃんと、お揃いの香水

紬(いい匂い…)


でも


紬「大嫌い」

私は起き上がりお風呂場へ向かった

12: 2010/10/01(金) 20:30:51.01 ID:fzCEjSpl0
翌日 紬 自室

休みの日だというのに部屋でぼうっと時間を浪費している私

なにもする気が起きない

今日彼女は澪ちゃんとデート

『澪ちゃんといるときはメールしない』

この約束のために私はいつも澪ちゃんとのデートの日時を聞かされる

ううん。聞かされるなんて言い方は違う

だって私が言い出したことだもんね

今二人はなにをしているのかな

お買い物かな

それとも映画でも観てるのかな

りっちゃんはホラー映画が好きなんだよね

ううん。ホラー映画で怖がる澪ちゃんが好きなんだよね

13: 2010/10/01(金) 20:32:25.60 ID:fzCEjSpl0
あぁそっか

りっちゃん家でDVDでも観てるのかな

私にはない選択肢だから思いつかなかった

りっちゃんの好きなホラーか澪ちゃんの好きなメルヘンチックな映画を二人で観て過ごしてるのかな

きっと澪ちゃんはなんの違和感もなくりっちゃんの部屋に溶け込んでるんだよね

それでDVDが終わったらりっちゃんが優しく澪ちゃんの髪を撫でるの

それが合図かのように口付けて、舌を絡ませて、慣れた手つきでブラのホックを片手で外すんでしょ?

りっちゃんうまいもんね。ブラ外すの

それはりっちゃんが女の子だからじゃない

何度も何度も澪ちゃんのブラを外してきた証拠

焦らすような手つきも荒々しい指使いも全部澪ちゃんのと証

今日もまたその証を刻んでいくんだね

そんなことを考えながら私は一人、りっちゃんの指使いを思い出しながら下半身に手を伸ばしていた

15: 2010/10/01(金) 20:36:32.50 ID:fzCEjSpl0
放課後 軽音部

紬「こんにちはー」ガチャ

澪「ムギ」

紬「まだ澪ちゃんだけ?」

澪「うん。そっちは?」

紬「唯ちゃんが掃除当番でりっちゃんは生徒会に書類を出しに行ってるわ」

澪「そっか」

紬「お茶淹れるね」

澪「うん。お願い」

紬「どうぞ」カチャ

澪「ありがと」コクッ

澪「ん…おいしい」

紬「ふふっありがと」にこ

16: 2010/10/01(金) 20:38:25.57 ID:fzCEjSpl0
澪「……」ソワソワ

廊下から足音がする度にチラチラとドアの方を見る

そんなに彼女が待ち遠しい?

昨日も一緒にいたんでしょ?

小学生の時からずっと一緒にいたんでしょ?

紬「……りっちゃん早く来るといいね?」

そう言ってからかうように笑う

澪「うぇ!?べっべつに私そんなこと思ってないよ!」

ははっとわざとらしい笑いをしてバレバレのうそをつく澪ちゃん

紬「バレバレよ?」クスッ

澪「う……」かぁぁぁっ

顔を赤くして恥ずかしそうに俯いてしまった

…可愛い

18: 2010/10/01(金) 20:40:04.59 ID:fzCEjSpl0
紬「ふふふー」ツンツン

ほっぺをつんつんしてみる

指先でもわかるほど澪ちゃんの頬は熱かった

澪「うー…ムギ意地悪だ…」

紬「ごめんね。あんまりにも澪ちゃんが可愛いからいじめたくなっちゃった」

にこにこと悪気のなさそうな笑顔を見せる

実際悪気などないし可愛いと言うのも本当

澪ちゃんは本当に可愛い

彼女が好きになるのが分かる

19: 2010/10/01(金) 20:42:19.65 ID:fzCEjSpl0
澪「あっそっそういえばさ!」

わざとらしく話を変えようとする

紬「なぁに?」

でもそれに気づかないフリをして話に乗ってあげる

もうこれ以上いじめたくないの




──自分を、ね

20: 2010/10/01(金) 20:43:10.38 ID:fzCEjSpl0
澪「昨日DVDで少し前に話題になってた映画観たんだ」

紬「……そうなんだ」ニコッ

変わっていなかった

無意識だろうか

それとも他の話題がないくらい澪ちゃんの日々は彼女で満たされているのだろうか

澪「でね、予告と全然違っててさ途中で観るのやめちゃったんだよね」

やめてなにをしたの?

澪「それほどつまんなかったからさ、ムギももし観る機会あっても観ない方がいいよ!」

紬「うん、ありがとう」

笑顔で返事をする

澪ちゃんも話題変更に成功したのが嬉しいのかほっとした顔を浮かべた

22: 2010/10/01(金) 20:45:09.73 ID:fzCEjSpl0
紬「…それで誰と観たの?」キラキラ

答えが解ってる質問。聞きたくもない質問

でも前の私だったらこの流れが自然だったから

だからなるべく以前のままで居ようと自分一人で決めた約束を守るために必要な質問

澪「えっ……ひっ一人だよ…」

そう言って私から目を逸らす

紬「ふーん…」ジー

澪「……」ビクビク

純粋なのね

嘘がつけないのね

それでいいと思う

笑顔で嘘をつく人間なんて最低だもの

笑顔で嘘をつくなんてつらいもの

嘘なんて苦手でいい

23: 2010/10/01(金) 20:46:41.60 ID:fzCEjSpl0
澪「……り、律と…」

私の視線に耐えかねて白状した

嘘ついてくれればよかったのに

そうすれば少しは楽になれるのに

紬「やっぱりね」にこっ

澪「はは…ムギはなんでもお見通しだな」

それは違うわ

本当に知りたいことは全然解らないの

知りたくないことだけ解ってしまうの

紬「そうね。澪ちゃんがりっちゃん大好きって言うのもお見通しよ?」にこっ

澪「う……」カァァァッ

25: 2010/10/01(金) 20:48:54.88 ID:fzCEjSpl0
紬「好きでしょ?りっちゃん」

澪「…うん。好き」

恥ずかしがりながらもはっきりとした声で答えた

羨ましい

澪ちゃんだけなのよ?

そうやって声を大にしてりっちゃんが好きだと言えるのは

紬「りっちゃん優しいもんね」

澪「………うん」

まるで自分が褒められてるかのように、嬉しそうに、誇らしげに、目の前の人は笑った



その笑顔が、とても眩しかった

26: 2010/10/01(金) 20:50:54.71 ID:fzCEjSpl0
律「おーっす」ガチャ

澪ちゃんと私を見て一瞬顔を強張らせる彼女

そんな顔しなくても澪ちゃんに言ったりなんかしないわ

澪「遅いぞ」

律「ん…あぁごめん」

紬「お茶淹れるね」にこっ

律「うん」

澪「ちゃんと和に渡したのか?」

律「大丈夫だよー小学生じゃあるまいし心配すんなって」

澪「おい小学生に失礼だろ」

律「どういう意味だコラー!」

澪「ふふっ」

28: 2010/10/01(金) 20:53:13.95 ID:fzCEjSpl0
楽しそうな声が聞こえる

いつもは平気なのに今日はなんだか耳にまとわりつく

分かってる。昨日と一昨日のことが原因

彼女としたこと。澪ちゃんとのデート。

この二つが私をおかしくさせてる

連続は…きつい

お願い

誰か早く来て

30: 2010/10/01(金) 20:54:54.82 ID:fzCEjSpl0
梓「こんにちはー」ガチャ

私の願いが届いたのか可愛い後輩がやってきた

律「遅いぞー!」

梓「ごめんなさい今日日直で…」

澪「あぁいいよ気にしなくて」

律「えー!?ずるい!私には遅いって言ったのにー!」

澪「うるさい」

甘えるようにしてふざけるりっちゃん

ずるいわ本当に

でもりっちゃんはそんなこと思ってない

嬉しいのよね

梓「あっムギ先輩こんにちは。…手伝いましょうか?」

ちょこちょこと梓ちゃんがこっちにやってきてそう言った

31: 2010/10/01(金) 20:57:09.49 ID:fzCEjSpl0
紬「………」

梓「?あの…」

紬「いいこいいこ」ナデナデ

私の願いを叶えてくれた可愛い後輩の頭を撫でる

梓「にゃっ!?」

びっくりしてる。可愛い

紬「あずにゃーん」ぎゅむっ

唯ちゃんのマネをしてみる

…少し体格がりっちゃんと似てるかも

でも違うわ

りっちゃんのが頼りがいがあるというか…梓ちゃんのがやわらかい感じがする

梓「あああああのっ!」カァァァッ

目を回し、耳まで赤くしてる梓ちゃん

33: 2010/10/01(金) 21:00:21.81 ID:fzCEjSpl0
唯「ふへー…」

疲れた様子で入ってくる唯ちゃん

掃除当番お疲れ様

唯「あー!ムギちゃんがあずにゃんに抱きついてるー!」

紬「ごめんね唯ちゃんこういうことだから」ぎゅっ

梓「はわわわわ…」

唯「えー!ずるい!私もあずにゃんに抱きつく!」

紬「だーめ」ぎゅっ

唯「むー…あずにゃんの浮気者!」

梓「なに言ってんですか」

紬「梓ちゃんは私のがいいよね?」

梓「ムギ先輩までなに言ってんですか!」カァッ

唯「うぅ…私のときのが冷たい…」シュン…

梓「あっ…」

34: 2010/10/01(金) 21:02:00.25 ID:fzCEjSpl0
紬「唯ちゃんケーキ食べる?」

唯「食べるっ!」キラッ

澪「立ち直りはやっ」

紬「じゃあお茶淹れるからね」

唯「うんっ!」

紬「梓ちゃんも待っててくれていいわよ?ありがとね」

そう言って解放してあげる

梓「はい」

……ありがとね

35: 2010/10/01(金) 21:04:04.44 ID:fzCEjSpl0
紬「はいどーぞ」カチャ

唯・律「わーい!」

澪「ありがとう」

梓「いただきます」

唯「おいしい!おいしいよムギちゃん!」

紬「ふふっありがとう」ニコッ

今日は家からホールケーキを持ってきた

ホールケーキや羊羹など切らなくてはならないものはいつも少しだけ彼女のを大きくしてしまっていたのだけど…

あぁいう関係になってからは絶対にしなかった

澪ちゃんに少しの違和感も与えたらいけないから

だって私は澪ちゃんから奪いたいわけじゃないの

片想いでいいの

紬「…………」

さっきの澪ちゃんの笑顔が頭にこびりついていた

36: 2010/10/01(金) 21:05:22.90 ID:fzCEjSpl0
翌日 夕方 ホテル

紬「昨日部室に入ってきたときのりっちゃんの顔…」クスクス

律「うっうるさいな!」カァッ

紬「ふふっ」

律「…ふんっ」

拗ねたような顔をする

大丈夫。大丈夫よ

紬「……言ったでしょ?遊びだって」



律「…………」

紬「だからあんな顔しなくてもいいのよ。二人の仲が拗れるのを望んだりなんかしてないわ」

これは、本当

律「…そうだったな」

紬「えぇ」にこっ

37: 2010/10/01(金) 21:06:30.38 ID:fzCEjSpl0
紬「……ねぇ」

そっと太ももに手を置く

律「あぁ」

何が言いたいのか解ってくれた

そっと私の服を脱がし始める

乱暴な手つきは一切しない

それは

彼女が優しいからなのか

私にはぶつけるような性欲も激情もないからなのか

どっち、なんだろう

38: 2010/10/01(金) 21:08:19.58 ID:fzCEjSpl0
脱がしながら眺めるように私の体を見る

ひとつひとつあの人との違いを比べられているのだろうか

胸、肌、スタイル

どれか一つでも勝ってるものはあるかな

実は少し痩せたのよ

気づいてくれてる?

肌もボディクリーム塗って気を使っているのよ

下着だって毎回かぶらないように気をつけてる

この小さな努力は、あなたに届いてるかな

40: 2010/10/01(金) 21:11:54.37 ID:fzCEjSpl0
目が覚めると、彼女の顔があった

律「おはよ」

紬「うん…」

頭がぼうっ…とする

律「大丈夫?」

紬「え…?」

律「いやなんかいつもと様子が違ったから…」

紬「うん…」ぎゅっ

律「……」なでなで

紬「……」ぎゅうう…



ふいに、昨日の澪ちゃんの顔が脳裏によぎった

41: 2010/10/01(金) 21:13:52.74 ID:fzCEjSpl0
紬「……!」ドキッ

律「……」なでなで

紬「……………」

紬「…ねぇ」

律「うん?」

紬「頃して…?」

律「え…?」

42: 2010/10/01(金) 21:15:39.08 ID:fzCEjSpl0
紬「…………」

律「ム……ギ…?」

紬「……ふふっ冗談」

律「な…なんだよびっくりしたなー!」

そう言って安心したかのように笑う

本当は冗談じゃないの

このままこうしてあなたに愛されてる錯覚をしながら氏ねるならそれは私にとって、とても幸せなこと

でも許されないのよね

きっと私のそんな些細な願いすら澪ちゃんの許可がいる

ううん。許可なんてしないでしょうね

好きな人を犯罪者にしたくない…というのもあるけど…


嫉妬


他の女を頃すなんて許さないわ

それが女の本音

43: 2010/10/01(金) 21:16:26.60 ID:fzCEjSpl0
こうして二人きりでいる時ですら澪ちゃんは彼女の中にいる

私と彼女の間にいる

いくら彼女に抱きしめられても間に澪ちゃんがいるから私と彼女の距離は縮まらない

紬「…………」

律「ムギ…?」

心配そうに私を見つめる彼女

紬「ごめんなさい…今日はもう…」

律「あぁ…うん。帰ろう」

紬「うん…ごめんね?」

律「いいよ。気にしなくて」

44: 2010/10/01(金) 21:17:52.59 ID:fzCEjSpl0
紬 自室

紬「………」

ばふっとベットに倒れこむ

なにやってるんだろう

せっかく彼女と二人きりだったのに

頃して、なんて…びっくりしたかな

したよね

でも本音だよ?

澪ちゃんから奪って独り占めするよりも

錯覚しながら彼女に殺されるほうが私にとって幸せなの

45: 2010/10/01(金) 21:19:49.02 ID:fzCEjSpl0
ブーッブーッ

紬「………」

のそのそと鈍い動きでカバンの中で震えている携帯電話を取り出す

【田井中律】

紬「!」

ガバッと起き上がり急いで通話ボタンを押す

紬「はいっ」

律『あ、律だけど』

紬「う、うん」

律『家ちゃんと着いた?』

紬「あ…うん」

もしかして心配してくれたの?

律『具合は?』

紬「うん…大丈夫」

心配…してくれたんだ

46: 2010/10/01(金) 21:22:54.73 ID:fzCEjSpl0
律『そっか…よかった。なんか無理させちゃったのかなって…』

紬「ううん…そんなことないよ」

律『なら、いいんだけどさ。具合悪いときとかちゃんと言ってくれよ?』

紬「うん…」

優しい声…優しい言葉…なんだか泣きそうになる

律『今日は早めに寝るんだぞ?』

紬「うん」

律『よしっ!じゃあまた明日な』

紬「うん…ありがとう」

律『いーってことよ!』

明るくて、聞くだけで元気が出そうな声

47: 2010/10/01(金) 21:25:07.21 ID:fzCEjSpl0
紬「じゃあ、おやすみ」

律『おやすみ~』

紬「………」カチッ

紬「…ふふっ」

なんでもないような電話が何故かすごく嬉しかった

こんな風に浮き沈みの激しい複雑な思いをしながらも彼女と私の関係は続いていった



……
………


でも

それは、突然だった

48: 2010/10/01(金) 21:26:55.84 ID:fzCEjSpl0
律「……今日で終わりにしないか」

十数回目のホテルでの密会で彼女は私にそう告げた

律「………」スッ

左手を私に見せる

彼女の左手の薬指に光る証があった

それは夫婦や恋人同士がつける証

この人は私のものだって主張する証

その指輪を買おうと言ったのはどっちだろう

その指輪をプレゼントしたのはどっちだろう

その指輪は二人でお互いの指輪を買ってプレゼントし合ったものなのだろうか

お互いの指輪を買ってプレゼントし合う

私が憧れていた夢の一つをこんな形で目にするなんて思っていなかった

49: 2010/10/01(金) 21:29:11.50 ID:fzCEjSpl0
紬「いいよ」

律「…いいのか?」

紬「だって最初に約束したじゃない」

律「……そうだな」


『終わりにしようとどちらかが言ったら必ず「うん」と返事をする』


これだけは絶対に守ろうと思っていた約束


紬「もう帰る?それとも最後にする?」

わざと挑発的な態度をとる

律「………」

紬「…しよっか」

そう言って抱きしめる

紬「最後にヤらせろなんて言いにくいもんね?」クスッ

律「………」

お願い。そんな泣きそうな顔しないで

50: 2010/10/01(金) 21:31:20.64 ID:fzCEjSpl0
舌を絡め合わせる

いつもリードするのは彼女の方だった

最後くらい私がしてもいいよね?

律「……っ」

ねぇ

澪ちゃんはこういう風にリードしてくれた?

ないよね

りっちゃんの様子見れば分かるよ?慣れてないって

紬「……っちゅ」

律「…ふっ」

紬「ふふ…おいし」

51: 2010/10/01(金) 21:32:30.62 ID:fzCEjSpl0
顔を赤くする彼女

そんな顔するんだね

初めて見たわ

澪ちゃんの前ではそうなのかな

そんな弱弱しい顔も見せるのかな

首筋を舐めながら服を脱がす

されるがままのあなたからはいつもの男の子のような格好よさはなく、どこまでも女の子だった

56: 2010/10/01(金) 21:41:55.35 ID:fzCEjSpl0
律「ムギ…」

紬「もう一回?」

律「いや…その…最後に……二人で…」

紬「……もう時間ないよ?」

律「でも…」

彼女が恋人にどんな嘘をついたのか知らないがここに入ってもう3時間以上経つはず

そろそろ連絡したりしないとまずいでしょ?

紬「いいから」

律「…うん」

いつだか彼女が私を諭したように私は彼女を諭した

58: 2010/10/01(金) 21:43:17.09 ID:fzCEjSpl0
二人でするのは彼女との一体感がほしかったから
私は二人でする方が好きだった

何でかなんて考えなくても分かる

だから

最後だから

しない

偽りの一体感なんていらない

そう思ってはっと気づく

偽りだらけだったのに私はなにを考えているのだろう

笑いが出た

『本気にならない』

これが最初に彼女とした約束

この時点で偽りだったのに

59: 2010/10/01(金) 21:45:18.16 ID:fzCEjSpl0
でもねりっちゃん

私知ってるよ

りっちゃんが本気になりかけていたこと

でも澪ちゃんを愛してるのも本当

だから怖かったんだよね

大事な大事な澪ちゃんを傷つけるのが

心だけは裏切りたくなかったんだよね

優しいりっちゃん

大好きだよ

60: 2010/10/01(金) 21:46:51.43 ID:fzCEjSpl0
紬「着替え終わった?」

律「…うん」

紬「今日はここで別れようか」

律「え…でも…」

紬「ね?」

律「………うん」

笑顔の私。泣きそうなあなた。

紬「じゃあね」

律「……ムギ」

そっと私の腕を引き優しく口付けた

61: 2010/10/01(金) 21:48:42.23 ID:fzCEjSpl0
それは幼い恋人同士がするような一瞬触れるだけもの

いつもの快楽のために舌を絡ませるようなものとは違う

こんなキスしたことなかったね

だってこのキスはあの人だけのもの

あなたの大事な大事なあの人だけのもの

律「………」

パタン

ドアの閉まる音がした

ベットに倒れこむ

さっきまで彼女がいたベット

さっきまで彼女が乱れていたベット

さっきまで彼女と私だけのものだったベット

62: 2010/10/01(金) 21:50:16.25 ID:fzCEjSpl0
ふわっ


彼女の香水の匂いがした

ユニの甘すぎない爽やかな香りの香水

あの人と、お揃いの香水

紬「っ…」


大嫌い


私は声を上げて泣いた


大嫌いな、香水の香りを嗅ぎながら──




おわり

引用元: 律紬「ふれんど」