1: 2014/12/21(日) 21:55:32.14 ID:il98ATwN.net
お昼休み。
部室に集まって、
みんなでお昼ご飯をつつくミューズ一同

そんな時だった。

穂乃果「そろそろクリスマスだね~」

ピタッ…

ことり(ピクッ)
海未「………」

穂乃果の発したなんでもない一言
しかし、楽しいお昼のランチタイムに訪れる刹那の静寂

海未「………」
海未、一言も発さず。
とりあえずの様子見。周りの出方を伺う。
保守的な判断。

海未「………」モグモグ

何事もなかったようにお弁当の箸を進める…が、
その箸先は僅かに震えているようだった

4: 2014/12/21(日) 21:59:41.01 ID:il98ATwN.net
ことり「………」ガタガタ

一方ことり。動揺、圧倒的な動揺。
どういった意図の発言なのか必氏に思索。
そして浮かび上がる次の展開

穂乃果『みんなクリスマスは予定入ってる?
もし空いてたらみんなで集まってクリスマスパーティーしようよー!』

甘い妄想、甘い誘惑。
自分の都合の良い妄想をすることり。
だがすぐにもう一つの可能性がよぎる

穂乃果『恋人がいる人はクリスマスはデートするんだろうなぁ、羨ましいなぁ』

穂乃果が恋への憧れに目覚めてしまったという可能性。

自分のよく知る彼女が一つ大人の段階へ進んでしまった…
そんな可能性に、ことりの胸がチクリと疼く

そして三つ目の可能性

穂乃果『みんなは行ってみたいデートスポットとかあるー?』
この発言がきたらやばい。
完全に、当事者の視点の発言。
すなわちそれは穂乃果にはすでに恋人が…

ぱきんっ!
無意識のうちに、プラスチック製のお弁当箸を握り割ることり。

沈黙のまま、穂乃果の第二声を待つ

5: 2014/12/21(日) 22:02:17.56 ID:il98ATwN.net
・・・

・・・

・・・

続きの発言が…こない!

ことり、海未、同時に安堵のため息。
よかった…特に深い意味のない発言だったのか…

海未は今まで通りに箸を進め、
ことりは割り箸に切り替えて食事を続ける

が、その時である

部室の空間を切り裂く一言が
またも部室に緊張を走らせる

にこ「そういえばあんた達はクリスマス予定とかあんの?」

8: 2014/12/21(日) 22:12:11.04 ID:il98ATwN.net
にこの一声にふたたびの緊張。

これにどう答えるか…

ことり「にこちゃんこそ、何か予定はあるの?」

ことり、質問に質問を返すというある種のタブーを犯す
いかにしてこの話題を逸らすのか

にこ「あたし?あたしは去年と同じよ
家で家族みんなと過ごすわ」

ことり「にこちゃんのお家は家族が
たくさんいるからクリスマス楽しそうだよね~」

にこ「え?ま、まぁそうね。
弟も妹もクリスマスは大好きだから、毎年飾り付けとかたくさんして
賑やかに過ごしてるわね」

海未「まぁ!それは楽しそうですね!」

ことり「!」

ここで海未の後方援助
2人は軽く目を合わせると、一つこくりと頷く。
ここに一つの同盟が生まれた

海未「にこの家のクリスマス…うふふ、とても楽しそうですね」

ことり「ねー!穂乃果ちゃんもそう思うでしょ?」

穂乃果「え?あ、うん!思う思う!」

にこ「そ、そんなことないわよ…///」

二年生組の巧みな共同戦線
話題は完全に逸れた…かと思ったが、

扉『ガチャ』
凛「メリークリスマース!!」

海未「!?」
ことり「!?」

19: 2014/12/21(日) 22:59:46.56 ID:il98ATwN.net
第三話 部室にてサンタ、現る

凛「メリークリスマス!」

ことり「………」

突然開かれた扉
そして現れたのは凛、否!
サンタコスに身を包んだ凛であった

海未「………」

まさかの伏兵に言葉を失う二年生組。

全身クリスマスを体現した人間が現れれば当然、

にこ「うわ!あんたなんつー格好してんのよ!」

凛「えー?だって後少してクリスマスなんだよー?
今のうちにクリスマステンション高めておかないといけないにゃ!」

にこ「どんな理屈よそれ!」


ことり「っっ!!」

海未「……ことり?」

ことり「……ごめん。大丈夫だから…」

海未「………」

ことり、舌打ちが喉のすんでのところまで出かかる。
が、ギリギリの瀬戸際でそれをこらえる。

違う。南ことりはそんなことするキャラじゃないわ…
ここは抑えるのよ…抑えるの…
胸に手を当て自分を抑えることり

だが、その歯を食いしばる形相はもはや、
南ことりではない別の何かと化していたのだった

20: 2014/12/21(日) 23:03:56.38 ID:il98ATwN.net
話題は自然にクリスマスに向かう
それは必然。
サンタが同じ空間にいれば、当然話題はクリスマスへと流れる

海未(最悪の状況ですね)

この絶望的な状況でありながらも、冷静を保つ海未

海未(………)

ことりと相談しようかとチラリと目をやるが
瞬時に諦める

ことり「………私はいいこなことりちゃん
ちゅんにゅんちゅんちゅ?たんゆらやはほまや…」 ブツブツ

あぁ、コレはもう使い物にならないな
即座に見捨てる切り離す。
旧友に対して、あるまじき冷酷さ。

だがそれも仕方ない。なぜならここはすでに戦場なのだから

22: 2014/12/21(日) 23:14:34.61 ID:il98ATwN.net
海未、だがここであることに気づく

凛「にこちゃーん!クリスマスプレゼント頂戴にゃー!」

にこ「はぁ?!あんたサンタなんだからむしろ渡しなさいよ!」

凛「それじゃあお昼のパンのあまりあげるにゃー」

にこ「え?ほんとにくれるの?
ありが……ってこれ食いかけじゃないの!!」

海未(そうか……)

話題はたしかにクリスマスに流れてしまったが…
このお子ちゃま2人コンビがいる限り、
絶対に話題が恋愛に向くことはない!!!

海未「ふふっ」

無意識に笑みの零れる。
勝者の余裕。勝利への確信。
あとはこの流れをただ眺めていればいいだけなのだ

海未「ふふふふ…ふふふ。
まったく、相変わらずですねあの二人は」

穂乃果「あはは、ほんとだねー」

海未「えぇ、ほんとうに」

だが、慢心からは何も生まれない。
真の勝者は驕らずに貪欲に勝利を求める者にのみ訪れる。

勝利を確信したとき、そいつは既に負けているのだ

穂乃果「そういえばさぁ」

海未「え?……あっ!」

ここで海未はある失敗を犯した。
そう、穂乃果のセリフに対して、相槌を打ってしまったのだ

穂乃果「海未ちゃんはクリスマスの日、何か予定あるの?」

23: 2014/12/21(日) 23:24:18.10 ID:il98ATwN.net
海未(くっ!!しまった!!!!)

穂乃果「?」

海未(にこりんのおバカな話題に乗っておくべきだったか…!!!)

そう、海未がしてしまった2人に対するあの嘲笑は線引き。

お子様コンビを見下すことで、
自分と彼らは違うのだと自ら線引きをしてしまったのだ。

戦略的には、
2人のおバカトークに乗っかるのが正解。
四人で仲良くお喋りをするべきだった。
だが、海未はそのチャンスを自らの手で切り捨てた。

四人グループで行動していれば、
自然といつのまにか2-2で分かれてお喋りするのは自然な現象を、
あろうことか、海未は自ら引き起こしてしまったのだ

最後の最後で伸ばされた救いの手を、
あろうことか自分の手で振り払ってしまうという愚行。

必然、
海未は穂乃果と会話をせざるをえない。
穂乃果の話題振りを無視するわけにはいかない

示されたクリスマスへの一本道

海未「………」

海未に言葉を発する気力はもう、残ってはいなかった

27: 2014/12/22(月) 00:14:13.38 ID:Vhj8govw.net
穂乃果「クリスマス、海未ちゃんはどうするの?」

海未「う…っ、あっ…」

逃げ場はない。
一縷の望みをかけて、扉に目をかける。
が、誰かが乱入してくる気配はない

話題を逸らすか?
いや…これ以上逸らすと穂乃果に嫌われるかもしれない…

それは考えうる最悪のケース
結果、絞り出した答えは…

海未「クリスマスの予定は…ありません」

戦略家海未が行き着いた答え、
それは武力の放棄。勝負を諦めたのではない。
愚かにも海未は、運命にその身を賭けたのだ

もしかしたら、穂乃果はただ世間話をしたいだけかもしれない…と、

その僅かな可能性に
なんの根拠もなく投資したのだ

穂乃果「へー、そうなんだ」

海未「はい……」

穂乃果「ちなみになんだけど、もし海未ちゃんならさ」

海未「………」

穂乃果「デートに行くとしたら
どんなところに行きたい?」

海未「ぶひゃっ…!」

31: 2014/12/22(月) 00:23:57.68 ID:Vhj8govw.net
ことり(終わったな…)
先ほどからずっと、机に突っ伏したまま
耳を傾けるだけだったことり。

状況は完全にーーー堕ちた。
ことりの表情は暗い。
これまで、恋愛なんてからきしだった穂乃果から
デートの話題が出るなんて…

きっと気になる人ができたのだろう。
一緒にデートをして、一緒に笑いあいたい誰かが、
穂乃果にもできてしまったのだろう

ーーーーポタリ

自然とこぼれ落ちる涙。ことりは声を頃して泣いた

…だが、海未は違った

海未「え?デ、デードですか?」

穂乃果「うん!クリスマスデートに行くとしたらどこがいい?」

海未「そ、それってもしかして……!」
海未「………////」

この女まさか…っ

穂乃果「?」

ことりは驚愕を隠せない。
も、もしかしてこの女…

海未「そうですねー…わ、わたしなら一緒に海を見に行きたいなーなんてっ」

自分が今穂乃果から遠回しに誘われようとしていると、
勘違いしてやがる……!!!

37: 2014/12/22(月) 00:33:27.31 ID:Vhj8govw.net
ことり「うっ…」

堪えきれず、ことりは嗚咽をもらした。
その涙は哀れみの涙などではない。

幼馴染として、ともに争ったライバルとして、ともに戦った友として、

ことりはただただ悲しかった。尊い涙だった

机に突っ伏した私からは、
海未の表情はうかがえない。

だが私には見える。
十数年と苦楽を共にした親友だ。
海未の表情は見えずとも、見えてしまうのだ。

にやけるのを我慢して、
顔を紅潮させながら楽しそうに話す海未の姿が

ことり(海未ちゃん…!それはだめだよ…!)

その先には何もない。あるのは絶望だけ。

穂乃果はきっと、参考としてデートの場所を聞いてるだけ。
その先に、あなたの思い描く未来は絶対にないのだ…

それを察しながらも、
ことりは何も言わずただじっと俯くだけだった…

(第一部完)

45: 2014/12/22(月) 01:10:19.94 ID:Vhj8govw.net
海未には一つの悩みがあった

自分の部屋で、
穂乃果からもらったぬいぐるみを抱きしめながら、1人悶々とする海未。

海未(穂乃果はいつクリスマスデートに誘ってくれるんだろう…)

誘いやすいように、毎日クリスマスの話題を振った
クリスマスは予定空いちゃってるんですよねー、と
何度も何度もアピールした

だがお誘いは来ない。
鳴らない携帯電話。届かないLINE通知

海未(穂乃果…どうして…?)

今日も眠れない夜は続く

47: 2014/12/22(月) 01:17:54.88 ID:Vhj8govw.net
あれからのことりは、穏やかなものだった。

穂乃果という大切な人を選び、
海未というかけがかえのない親友を失うのか、

それとも、

穂乃果を諦め、海未と穂乃果の仲が進展して行くのを遠くから眺めるのか


二つに板挟みになったことりの答えは、
『どちらも選ばないこと』だった

どちらが、ではない。
どちらもでなければならないのだ。
どんな形であれ、2人がそばにいてくれることが、ことりにとっての幸せなのだ

退役軍人のごとき心地で、
今日もことりは穏やかに衣装を縫い上げる。

…そんな時だった

絵里「ことり?」

ことり「あ、絵里ちゃん!どうしたの?真剣な顔して」

絵里「あ、あのね…少し相談があって…」

ことり「相談…」

絵里「ことりなら、」
絵里「クリスマスデートに行くとしたらどんなところがいい?」

ことり「ーーーーっ」

53: 2014/12/22(月) 10:05:56.51 ID:zrwqUSVh.net
絵里「デートに行くとしたらどんなところがいい?」

ことり「ーーーっ」

絵里(もじもじ…もじもじ…)

もじもじしながら質問をする絵里を、
冷めた眼差しで一瞥する

ことり(この恥ずかしがり方は……当事者か)
ことりは察してしまう。

この女は今年、本当にクリスマスデートに行くつもりなのだと。

もちろん根拠はない。
だが、ミューズのメンバーとしての直感がそう告げていた。

彼女と過ごした時間は、1年という短い期間だったけれども、
この1年は生涯で最も密度の高い一年だった。

自分の姉妹よりも長い時間を共にしたといっても過言ではない。そんな一年だ

そんな私が、彼女の微妙な変化を見逃すわけがなかった。

………こんな女は今、間違いなく恋をしている。

55: 2014/12/22(月) 10:16:35.84 ID:zrwqUSVh.net
なら相手はーーー誰?

バラバラだったピースが一つになる。

昨日の穂乃果の質問と
今現在、絢瀬絵里が全く同じ質問をしているという現状、

そして、絵里は今恋に落ちているであろうという推察

【ガタンっ!!】

絵里「こ、ことり?!だ、だいじょぶ!?」

ことり「い、いたた…だいじょぶ~」

あまりのショックに机から転げ落ちることり。
無理もない。今の想像は、傷心のことりにはあまりに残酷過ぎたのだ

ことり(でももしかしたら…もしかしたら…っ!)

ことりは違う可能性も模索する。
きっと絵里には違う相手がいるのだと。

……だが彼女は気づいていない。

友人どちらも大事と宣って戦線を離脱しておきながら、
また再び戦線へと戻ろうとしている事実に…

ことりという人間の人としての軸は既に、
大きくゆがんでしまっていた

57: 2014/12/22(月) 10:29:50.94 ID:zrwqUSVh.net
ことり(この会話で、絵里ちゃんの相手を特定する……!!)

ことり「デートスポットかー…そうだなぁ」

ことりは僅かに間を置いてから
絵里の質問に回答する

ことり「和菓子屋さん、なんていいんじゃないかな?」

絵里「わ、和菓子屋さん??」

ことり「うんっ」

クリスマスデートに和菓子屋さん?
一瞬「ん?」となる回答。だがこれには理由があった

ことりの知りたいこと、
それは正確に言えば絵里の想い人の正体ではない。

絵里の相手が穂乃果なのか、それともそうではないのかということだけ

単純な二者択一問題…!!

相手の答えがNoでもYesでも、
真理が導き出せてしまうような、そんな回答をすればいいのだ

58: 2014/12/22(月) 10:37:18.89 ID:zrwqUSVh.net
もしも相手が穂乃果だった場合。
和菓子屋の娘であり、かつ和菓子に飽きた穂乃果を
デートスポットに和菓子屋連れて行くわけがない

きっと、
『和菓子屋かー…和菓子屋は……うーん…どうだろ』
なーんて煮え切らない反応をするはずだ


ではもしも相手が穂乃果でなかったら、

『和菓子?ふーん、ことり変わってるわね。
でも参考にさせてもらうわ。
ありがとう!』

なーんて軽く参考にしますよー程度な反応が帰ってくるに違いない

絵里がどう答えても真理へと繋がる仕組み。
賽は投げられた…!!

ことりはじっと、絵里の反応を観察する
絵里の反応は…

絵里「そっか。うん。了解~」

61: 2014/12/22(月) 11:24:21.29 ID:zrwqUSVh.net
絵里「そっか。うん。了解~」

あっさりした回答。かるーく受け流す感じのやつ。

普通にかんがえれば後者のパターン。
絵里の相手は穂乃果ではないと考えるべきところ。

ことり(……?)

だが拭いきれない違和感。
言い知れぬ疑念がまとわりつく

ことり(もう一歩…踏み込んでみるか…)

ことりは更なる追求を試みる

ことり「ねぇ、絵里ちゃん。絵里ちゃんはもしかして…」

しかしことり、ここではたと気づく。

これまでのことりは、絵里という友人の問いかけに対して、
真摯に答えられていただろうか?

それはもちろんNo。誰がみてもNoだ。

南ことりという女は、
真面目に答えるどころか、適当な回答をして相手の腹を探ることしか考えていなかった

紛れもなく、自分のこと一辺倒だった

ことり(わたしは…)
ことり(わたしはなんて…最低なんだろう…)

絵里「?なに?」

ことり「……ごめん。なんでもない」
追撃は、ついぞ出てこなかった。

穂乃果との仲を諦めるようなことを言っておきながら、
結局はまた穂乃果の恋事情を探り出そうとし、
絵里の質問には真面目に答えない…

わたしは…わたしは……っ!!

66: 2014/12/22(月) 12:16:07.02 ID:zrwqUSVh.net
それからのことりは衣装製造マシンだった。
ただひたすらにライブ衣装を作る機械。それがことりだ

友人・絵里を欺く醜い自分。
綺麗事をぬかしておいて、結局穂乃果を選んで海未を裏切った自分。

そんな自分がことりには許せなかった。
汚くて醜い自分自身を、ことりは認められなかった

そんなのわたしじゃない。わたしの望むわたしじゃない。
そんなわたしはーーーー要らない

ことり「………」

にこ「………」

カタカタ…カタカタ…

ミシンの音だけが狭い部室に虚しく木霊する。
いつものガールズトークは見る影も無い。

にこ「………」

我関せずと、悠々自適に雑誌を読むにこにー。

にこ「……はぁ。」
…だが、よく見れば、
雑誌のページは先程からずっと同じページのまま。

にこ(なにやってんのよ…バカ…)
・・・・
・・・
・・

【バキイッ!】
海未の自室。

床には無残に叩き割られた携帯電話。もはや原型はとどめていない

海未「………」ブツブツ
部屋の片隅、
虚ろな目で虚空を見つめる海未。

彼女の見つめる先にあるものとは…

(第二部完)

74: 2014/12/22(月) 17:57:01.52 ID:zrwqUSVh.net
・・・
・・

朝。午前7時45分。登校の時間

海未「………」
待ち合わせ場所にて、2人を待つ海未。

海未の表情は平坦そのもの。
そこから感情を読み取ることは叶わない

穂乃果「うみちゃーん!!」

海未「穂乃果、おはようございます」

穂乃果「ご、ごめんねー!
朝の準備に手間どって遅くなっちゃって…」

海未「構いませんよこれくらい」

穂乃果「…あれ?ことりちゃんは?」

海未「それが…」

穂乃果「?」

海未「まだ来てないんですよね」

穂乃果「えっ」

海未「風邪でも引いたのでしょうか」

穂乃果「うーん…どうしたんだろう」

心配気にことりの家の方角を見つめる穂乃果。
ちなみにことりの家の方角は逆向きだ

一方

海未「さぁ…」

海未の表情は終始、無表情のままであった

79: 2014/12/22(月) 19:35:43.88 ID:zrwqUSVh.net
穂乃果「ほんとにどうしたんだろ…
この前も急に机に伏せてたよね、ことりちゃん…」

海未「そうですね…」
無表情。

穂乃果「心配だなぁ…」

海未「そうですね…」
無表情。
徹底した無表情。無表情無関心無感動。
今の海未からありとあらゆる人間らしさが失われていた

穂乃果「うーん…」
だが穂乃果はその異変に気づかない。
頭の中はことりのことばかり

海未「………」

そんな穂乃果を、ハイライトの抜けた瞳で見つめる海未。

海未の心は暗い闇の中にあった。
心を閉ざし、耳を塞ぎ、口も閉じ、
ただじっとうずくまる

たとえるならそれは、
2000m以上深海の底。
真性な暗闇につつまれた孤独な世界。

海未は深海の底でプカプカ揺れるワカメと化していた

穂乃果「家に行ってみようかなぁ」

【ーーーーートクンっーーー】

穂乃果が一言発するたびに、
海未の心は更に更に深くへと潜って行く。

今彼女は一体何を考えているのだろうか。
それはもう誰にもわからない。
彼女の元に光が届くことはもう、ない

80: 2014/12/22(月) 19:50:49.96 ID:zrwqUSVh.net
その後、穂乃果がことりに連絡を取るも
ことりからの返信はなかった

そして、なんやかんやと昼休みの時間

In 部室
海未「………」モグモグ
一人さみしい昼食

穂乃果は今日のお昼は生徒会で事務の仕事だそうだ

海未「………」モグモグ

扉『ガチャ…』

にこ「あら」

海未「あっ」

にこ「こんにちは」

海未「こんにちは、にこ」

にこの来訪。
そういえば、にこは昼休みでも放課後でも、
いつでも部室にいる気がする
もしかして、教室に居づらいのだろうか?

にこ「隣、いい?」

海未「えぇ。もちろんですよ」

まぁ…私には関係の無いことですね…
海未は思考を打ち切り、にこに席を譲る

ガタガタっ←椅子を移動する音

にこ「ありがと」

海未「いえいえ」

85: 2014/12/22(月) 23:31:34.33 ID:zrwqUSVh.net
にこ「………」

海未「………」

モグモグ…

静かな食卓。
隣り合わせになって、淡々と箸を口に運ぶ2人

…そういえば、にこと2人でお喋りすることって
意外と少ないんですよね
そんなことをぼんやりと考える

にこ「………」じとー

海未「………」

にこ「………」じとーーーー

海未「………」

見られている。明らかに見られてる。
なんだろう

海未「にこ。どうかしましたか?」

にこ「……別に」

海未「……?」

なんだ気のせいでしたか

にこ「………」
にこ「あんたさ」

海未「はい?」

にこ「何かあったでしょ」

海未「………」
海未「何もありませんよ」

にこ「ふーん」

90: 2014/12/23(火) 23:40:00.74 ID:kBkn3m3t.net
海未「何もありませんよ」

にこ「何もない、ねぇ」

海未「………」

カチャ…
静かに箸を置くにこ。その表情は厳しい

にこ「何もないわけ無いじゃない」

海未「………」

【トクン】

海未「にこは何か勘違いしてるようですね。私は何とも…」

にこ、海未の反論をすかさず遮る

にこ「あんたがおかしいってことくらい、
あんたの表情を見てればすぐにわかるわ!」

海未「………」

【トクン】
【トクン】
【トクン】

91: 2014/12/23(火) 23:50:21.84 ID:kBkn3m3t.net
にこ「ミューズとして過ごした時間はわずかだけれど、

でも私にとってのこの一年は…本当にかけがえのない一年だった」

にこの高校生活は、
満ち足りたものとはとても言えない三年間だった。
そんな彼女にとってのこの一年は本当にかけがえのない、
毎日が宝物のような日々だっただろう。

にこ「海未と…そしてミューズのみんなと過ごした一年は、
私にとって一生の宝物よ!」

海未「………」

手の震えが止まらない。
脚なんてさっきからガタガタ震えっぱし。

人に本音をぶつけるのは怖い。
拒否されるのが怖いから。
さらけ出した自分を否定されるのが怖いから。

にこ「………」ギュッ

それでもにこは、自分をさらけ出す。
ミューズのみんなとは、本当の意味で分かり合いたいから

にこ「あんたはどう思ってるのか知らないけれど、」

にこ「あんた達が辛そうにしてるの見るの…私すごく嫌なのよ…」

にこ「私は頼りない先輩かもしれないけど!
あんた達が苦しんでるのを黙って見過ごすなんて真似、私は絶対したくない!」

海未「………」

【トクン】

ギュッ…
海未の手を取り、その手を両手で包み込むにこ。
にこの必氏の説得
これに海未、どう答えるのか

にこ「お願い…話を聞かせて…?」

手と手から伝わる暖かいぬくもり。久しい人間の情。

海未「………」

【トクン】

92: 2014/12/24(水) 00:03:23.85 ID:qVwa1fyu.net
にこ、必氏の説得
これに対して海未は、
全く別のことを思考していた。


海未(にこは優しい人ですね…)

海未(私の異変にもすぐ気付いてくれた…)

【トクン】
海未(でも)

【トクン】
海未(にこは気付いてくれたのに…)

【トクン】
海未(穂乃果は…)

【トクン】
海未(私の異変に…気付いてくれなかったなぁ…)

ほのキチ。真性ほのキチ。

何を言われようとも、何をされようとも、
考えることはいつも穂乃果のことばかり。

完全なるほのキチ思考。
世界は常に穂乃果を中心に回っている。狂っている。狂っている。狂っている

94: 2014/12/24(水) 00:14:54.61 ID:qVwa1fyu.net
海未「………」
海未、複雑な表情でにこを見つめる

にこ「………」

祈るように、怯えるように、
ギュッと目を閉じて海未の手を握るにこ。
小さな手はずっと、小刻みに震えていた

その手を海未は…

海未「………」

にこ「あっ…」

振り払うでも、そのままにしておくでもなく、
海未はその手を優しく握り返した。

海未「それでは…少しだけ、話を聞いてもらえますか?」

にこ「!」

海未はほのキチである。
だが、ほのキチである以前に、
一人の人間でもあったのだ。

ミューズというグループで一緒に活動した仲間の言葉、
にこの全身全霊の言葉が、
心に突き刺さらないわけがない

にこ「少しと言わず、
洗いざらいきっちり話してもらうんだからね!」

海未「さぁ…それはにこの相談スキル次第ですね」

にこ「年上の人生経験豊富さを舐めるんじゃないわよ!」

わずかに涙ぐむにこと、
少しだけイタズラっぽく笑う海未

部室にはいつもの賑やかさが戻りつつあった

96: 2014/12/24(水) 01:03:17.81 ID:qVwa1fyu.net
海未「それがですね…」

にこ「うん」
・・・
・・

にこ「なるほどね」

海未「はい…」

にこ「つまり要約すると」
にこ「この前あんたは、
穂乃果に行ってみたいクリスマスのデートスポットを聞かれたと」

海未「はい」

にこ「そしてあんたはそれを、
穂乃果は自分をクリスマスデートに誘うつもりなんだと思ったと」

海未「はい…」

にこ「でも待てども待てども、
クリスマスイブ前日になっても、穂乃果からの誘いは来ない…
そして海未は気分が落ち込んでいた…ということ?」

海未「はい…」

にこ「ふーん…」
にこ「………そ、それだけ?」

海未「?それだけ、とは?」

にこ「それだけであんなに病んでの…?」

海未「?はい。そうですよ」

にこ「………」
にこ「ま、まぁいいわ。感じ方は人それぞれだもんね」

97: 2014/12/24(水) 01:07:11.84 ID:qVwa1fyu.net
にこ「で、どうしてあんたは携帯壊しちゃったわけ?

もしかしたらメールで穂乃果からお誘いがくるかもしれないじゃない」

海未「携帯…」
海未「ずっと連絡を待ちつのになんだか疲れちゃって…」

にこ「でも壊す必要は…」

パッ!

海未「見てくださいこの手」

にこ「…黒くなってるわね。これってもしかして…」

海未「はい。痣です」

にこ「どうしたら手のひらに痣なんてできるのよ」

海未「…連絡を待ちながら
ずーーーっと携帯を握っていたらいつの間にか…」

にこ「それにしたって…相当酷いわよ、これ」

海未「実はあの日からほとんど寝ずに連絡を待っていたんです。
携帯を手放した時間は一度もありませんでした…」

にこ「………」

海未「あれから三日間、眠らずにずっと…ずーーーーっと待っていたら…」

海未「だんだん自分でもよくわからない感情が
どんどん溜まっていて…それで、つい…」

にこ「………」

海未「あ!でも安心してください!
昨日はぐっすり眠りましたから!

携帯が壊れてしまえば、もう寝ないで待つ必要がないですからね」

にこ「こっ…」

海未「こ?」

『こいつやべぇ…』

にこ、出かかる言葉をグッとこらえる。
未知なる物への恐怖心よりも、
仲間への思いやる心が勝った

にこ「な、なんでもないわ」

海未「?はぁ、そうですか」

100: 2014/12/24(水) 01:37:59.93 ID:qVwa1fyu.net
海未「にこ…私は一体どうしたらいいのでしょうか…」

にこ「どうするもこうするも…」
にこ「どうしてデートスポットのことを聞いてきたのか、

本人に直接聞けばいいだけじゃない」

海未「そ、それはダメですよ!!」

にこ「なんでよ」

海未「だ、だって…

もしも穂乃果が誰か別の人とのデートで

参考にするために聞いたんだとしたら…わ、わたし…わたしは…っ!」

にこ「……でも、穂乃果の本心が気になるんでしょう?」

海未「それは…そう、ですけど…」

にこ「だったら穂乃果に聞くしかないじゃない」

海未「でも……でも…っ」

にこ「………」

海未「あ、あの…
もしよければ、にこから穂乃果に聞いてもらえたりはできないでしょうか…?」

にこ「………」

海未「私から聞くのは…なんだか…その…」

にこ「はぁ…」

パシッ!

にこ「しっかりしなさい!園田海未!」

海未「!」

101: 2014/12/24(水) 02:08:04.66 ID:qVwa1fyu.net
にこ「あんた…」
にこ「これから先も、そうやって生きていくつもり?」

海未「え?」

にこ「これから先の人生も、
そうやって誰かに引っ張ってもらうつもりなのか、って聞いてるの」

海未「………」

にこ「…あなたのその受け身なところ、
良くないと思うわ、私」

海未「………」

『人が歩んだ道の跡を、ただ堅実に歩く』
それが園田海未という女の16年間である。

幼少、穂乃果という己が道を邁進する少女の傍らで、
海未はいつも金魚のフンのごとく付き従っていた。

穂乃果がやりたいと言ったらそれを手伝うし、
穂乃果がやりたくないと言ったら自分もやらない。

穂乃果が楽しいと言ったら自分も楽しいし、
穂乃果が悲しいと言ったら自分も悲しい。

受け身。徹底した受け身。
誰かがいなければ自ら何もできない人形。

例えるならそれは、
ぜんまいバネの壊れたチョロQ。

バネの壊れたチョロQは、
ぜんまいを巻いても一人で進むことは決してできない。
誰かに押してもらわないと進むことさえできない。

置いておけば勝手に転がり出すゴム球の方がよっぽどマシ。

そんな壊れたチョロQこそが、園田海未という女だ

海未「………」

にこ「待ってるだけじゃ何も変わらない。

周りが勝手に自分に都合良くしてくれほど、世の中優しくないわ」

にこ「自分の意思で!自分から動くの!」

110: 2014/12/24(水) 12:24:27.58 ID:qVwa1fyu.net
海未「………」

にこの言う通り、海未の人生は受け身そのものであった。
いつも穂乃果の言うことに、くっついて着いていくだけ…

受け身な人生。穂乃果に依存しきった人生。
そんな人生で、自分は果たして良いのだろうか?

ほのキチ神『それでええ…それでええんじゃよ…』

高い空の上、太陽の少し上くらいの位置。
大神・ほのキチ神は悩める海未を和やかな表情で見つめる。

ほのキチ神『たしかにお前は穂乃果に頼りすぎかもしれん…。
だがそれは穂乃果も同じこと。

穂乃果は困ったことがあったとき、いの一番に相談するのは誰じゃった?

穂乃果が何かをやろうとした時、最初に声をかけたのは誰じゃった?』


ほのキチ神『お前はずっと受け身でいいんじゃ。穂乃果もそれを望んでいる。

お前達は二人で一人なんじゃ。
お前はずっと穂乃果に依存していていいんじゃよ…』

そう言って、ほのキチ神は優しく微笑む。

海未「………」

だが海未は決断する。

海未(そろそろ潮時なのかもしれませんね…)

112: 2014/12/24(水) 12:42:46.40 ID:qVwa1fyu.net
受け身人生からの卒業は、
穂乃果からの卒業に等しき行為。

海未(…でも、仕方のないことです)

だが海未は選択する。
穂乃果からの独立。ほのうみ独立宣言。
ほのキチの海未には本来あるまじき思考。

海未(いずれは選択しなければならないことでしたから…)

穂乃果にべったりとくっつくのは、
そろそろ辞めるべきなのかもしれない…

そんなことを考える裏で、
海未の脳裏には、ある事象が常にあった。
それはーーー失望。

今朝、穂乃果は私の異変に気付いてくれなかったこと。
クリスマスイブ前日になっても誘ってくれなかったこと。
私よりもことりを心配していたこと。

穂乃果への失望。
様々な事象が積み重なり。

自己中心的極まりない勝手な失望が、
ついには海未に選ばせてしまう。
ほのうみ独立という道を。

海未(私たちはもう高校生…昔とは違う…
私も、自分の力で行動しないと…!)


…もしかしたら、
穂乃果にデートのことを聞かれたあの日を境に、
園田海未という女はすでに壊れてしまっていたのかもしれない。

いや、壊れたというよりは直った、というべきか。

ふと、思う。
ほのキチというある種のステータスを捨てた今、
彼女は一体何者であるのか。
ほのキチでない海未を海未とよべるのか?
それはもう、誰にもわからない

115: 2014/12/24(水) 13:32:26.53 ID:qVwa1fyu.net
ほのキチを捨てた海未。
そんな海未を見たほのキチ神は…

ほのキチ『………』ニッコリ

悠然と、微笑む

ほのキチ『気付いていないのかい?海未ちゃん』

ほのキチ『お前は自分の意思で選んだつもりなんじゃろうが……』

ほのキチ『残念ながらそれは違う』

海未の決断。
それはにこの後押しがあったからこそのもの。

果たしてそれを、
「自分の意思で選んだ」と言って良いものだろうか?

ほのキチ神『ふふふ…』

海未の行動は、ただにこの言われた通りにしたに過ぎない。

人の言うがまま、
にこの言うがまま。
人の言葉の後ろにくっついて従うだけ。
それが海未という女。

園田海未の受け身人生。
これっぽっちも変わってなどいない

116: 2014/12/24(水) 13:34:56.58 ID:qVwa1fyu.net
ほのキチ神は続ける

ほのキチ『独立だなんだと大袈裟に言っておきながら、
結局お前が自分の意思で選んだことと言ったら

「穂乃果に自分でクリスマスの予定を聞く」たったそれだけじゃないか』

穂乃果から自立する!
これからは自分の意思で行動する!

…と言っておきながら、

結局することといったら
ただ穂乃果にクリスマスの予定を聞くだけ。ほんのそれだけ。

結局はまた穂乃果という存在に振り回されている。
無自覚に穂乃果を中心に据えている。
典型的なほのキチ思考。

園田海未は、何一つ変わってなどいなかった


海未「にこ、私決めました。
穂乃果に自分で聞いて見ます!」

にこ「偉い!よく言ったわ!海未!」

がしりと、肩を抱き合う二人。
そんな二人をほのキチ神は嬉しそうに眺めていた

(完)

125: 2014/12/24(水) 14:05:35.18 ID:qVwa1fyu.net
最終章 はっぴーめりーくりすます

にこ「…となれば、すぐさま行動ね!
明日はクリスマスイブなんだから!」

海未「はい!それじゃあ携帯で穂乃果に連絡を…」

にこ「…って、あんた携帯壊れてるんじゃなかったっけ?」

海未「あっ…」

にこ「……全く。仕方ないわね。
私の携帯かしてあげるから、
それ使って会う約束取り付けてきなさいよ」

海未「は、はい!ありがとうございます!にこ」

ぽちぽち、ぽちぽち
不慣れな携帯をぽちぽちする海未。

にこ「ふぅ…」
にこ「これでなんとか…あんたの方は解決しそうね…」

海未「?私の方?」

にこ「忘れたの?
ことりもなんだか様子がおかしいみたいじゃない」

ぴたり。
自然と止まる指先

にこ「ことりの方も…なんとかしてあげないとね…」

海未「……そう、でしたね」

そうだった…。
ことりも私と同じように苦しんでいるのだった…
すっかり忘れてしまっていた…

にこ「そうでしたね、ってあんた…少し冷たいんじゃない?」

海未「ここ最近は自分のことで手一杯で…」

にこ「ふーん…まぁ、いいけどね」

128: 2014/12/24(水) 14:30:29.61 ID:qVwa1fyu.net
にこ「ことりの方はどうして落ち込んでるのかしら…」

海未はすぐさま即答する。

海未「私と同じような理由で、落ち込んでいるのだと思います」

ことりはほのキチ。
元ほのキチである私には、
彼女の気持ちは手に取るようにわかった。

きっと私と同じような理由で苦しんでいるに違いない。
海未はそう確信していた。しかし…

にこ「え?それは違うんじゃない?」

海未「えっ」

にこ「穂乃果がクリスマスの話してきたのって四日くらい前の話よね?」

海未「はい」

にこ「あんたは四日前くらいからずっと変だったけど、
ことりはここ最近はいつも通りだったもの」

にこ「あんたとは別の理由で落ち込んでいるんだと思うわ」

海未「別の…理由…?」

にこ「………」

一瞬の逡巡。だがすぐににこは言葉を紡ぐ

にこ「……実はさ、ことりが急に落ち込んだのって、

実は絵里とクリスマスの話題をし始めてからすぐのことなのよね」

海未「………」

129: 2014/12/24(水) 14:38:19.69 ID:qVwa1fyu.net
絵里と…クリスマスの話題…。

海未の第六感が警笛を鳴らしていた。
この話はやばい、と。

何か、何かものすごく嫌な予感がする
ここから先は絶対に聞いてはいけない、そんな不吉な予感。

海未「ちなみにそれは…具体的にはどんな話ですか…?」

それでも海未は尋ねる。
好奇心で尋ねるのではない。
ことりの友人として聞かねばならないことだと思ったからだ。

…だがその判断は、
後に誤りであったと思い知らされることを、今の海未は知らない

にこ「えーっと…
絵里がことりに相談してたのよ。
クリスマスのデートにオススメな場所はどこかなとかなんとか」

海未「…………」

つい先日、私も同じような質問を誰かにされた。
そして絵里も、全く同じ質問をしていた。
この二つは果たして偶然か?

海未(偶然なわけが……無い)

否が応にも再生される光景
海未は想像する。この状況の裏に隠れた真実を…
・・・
・・

132: 2014/12/24(水) 14:55:17.92 ID:qVwa1fyu.net
穂乃果『ねー絵里ちゃん!今年のクリスマスはどこに行くー?』

絵里『そうねー…映画館とか?』

穂乃果『えー!また映画ー?
そんなのもう行き飽きちゃったよー!』

絵里『そう?それじゃあ…ってあのねぇ、穂乃果』

穂乃果『?』

絵里『私にばっかり考えさせないで、
少しは自分でも考えてみたらどうなの?

穂乃果はどこか行きたい場所とかないの?』

穂乃果『え?わたしー?
…うーん、私は和菓子屋さん以外ならどこでもいいよ?』

絵里『…真面目にかんがえなさい』

穂乃果『これでも真面目に考えてるのになぁ…
うーんと…そうだなぁ。
うーん…うーーーーん……!!』

絵里『まぁ、急にはなかなか思いつかないわよね。

それじゃあ二日後までに行きたい場所をそれぞれで考えておいて、
あとで二人で話し合いましょうか』

穂乃果『あ!それいいね!
穂乃果たくさん考えておくよ!』

絵里『ふふっ、期待してるわね』
・・・
・・

そんな会話がきっと裏では行われていたに違いない。

そしてこの会話から少し経って、

行きたい場所がなかなか思いつかない穂乃果は私に相談をし

一方、絵里も同じようにデートプランの思いつかず、ことりに相談した、と

海未「………ふふ」

にこ「?う、うみ?どうかしたの?」

なんということだろう。

私はただ、二人の惚気に振り回されていただけだったのだ。

クリスマスに穂乃果とデートできるかもしれないという妄想も、
デートに行くならどこに行こうかなぁという妄想も、
どこで夕食を食べようかなぁ、なんて妄想も、

全ては無意味だったのだ

133: 2014/12/24(水) 15:06:00.22 ID:qVwa1fyu.net
海未「ふふ…」

にこ「海未…」

実は海未はこの時点で大きな勘違いを犯している。

絵里が穂乃果と二人でデートに行くつもりはないことは
既にことりが実証済み。
海未の想像は明らかな誤りであった。

海未「あはは…」

だがもちろん、
海未はそんなことは知らない。知る由もない。

情報源には、そんな話は一つも書かれていないからだ。

第三者・にこから与えられた情報を信じて、
それを勝手拡大解釈して自滅する。
自業自得の勘違い。

不正確な情報に踊らされる情報弱者。情弱。ガチ情弱。
それが今の海未である。

海未「うふふふ…あはは…」

にこ「だ、だいじょぶ?どうかした?」

海未「大丈夫です。平気です」

にこ「………」

心配そうに海未を見つめるにこ。
情報源はにこにあったが、彼女は決して悪くない。

不正確とはいえ、にこは間違えたことは言っていなかった。
意図的な情報操作も何も行っていなかった。
そんな彼女を責めることは誰にもできない。

海未「うふふふ……あはは…」

情報を操作するマスコミと、それに踊らされる大衆の関係。
その縮図がここにあった

136: 2014/12/24(水) 15:49:24.39 ID:qVwa1fyu.net
・・・
・・

In ことりの部屋
【ピッ…ピッ…ピッ】

ベットの上。
布団を上手いこと丸めこみ、
見た目カタツムリのようなビジュアルでベットにくるまる南ことり

【ピッ…ピッ…ピッ】

ことり、布団に潜り込んで何かをしているようだが、
ここからでは何をしているかは確認できない。

【ピッ…ピッ…ピッ】

ここ数日間の南ことりの精神状態は、
一言でいえば『病んでいた』

自分の醜い内面をありありと見せつけられ、
ショックのあまり数日自暴自棄になる程度には病んでいた。

だが、病むといっても海未ほどの病みっぷりではない。

数週間すればあっさり回復してしまうような、その程度の病み。

【ピッ…ピッ…ピッ】
【テテコイ!俺ノ友達!】

南ことりは、見た目の可憐さほど弱くはなかった。

その精神的なタフさはダルマのごとし。
何度転んでもすぐに起き上がる。不氏身の精神。

心にどんなに深い傷を負っても、
数日すればヒョコっと起き上がる。

自己肯定の達人。
それがことりの強さなのである。

【ピッ…ピッ…ピッ】

事実、今のことりは数日前とは打って変わりケロッとしたもの。

今日も元気に妖怪ウォッ○2に興じることり。
今日もレアもん探してレッツ妖怪○ォッチ!

137: 2014/12/24(水) 16:03:45.61 ID:qVwa1fyu.net
ことり「………」チラリ

妖怪ウォッチに興じる最中、
時折チラリと携帯を見やることり。

携帯画面に表示されるLINEのメッセージ。
穂乃果『だいじょぶ?風邪ひいたの?何かあった??』

ことり「ふふふっ♪」
穂乃果からのメッセを見て、ほくそ笑むことり。

ことりにとって、
穂乃果に心配されることがたまらなく快感だった。

今のことりは病んでいない。健全そのもの。
精神的に充分回復しておきながら、
なぜ南ことりは今日は学校を休んだのか。

理由は言うまでもない。
穂乃果に構って欲しかったからだ。

【ピコン!】

再び届くLINEメッセージ。

だがことりはそれに返信しない。
ことりは返信をすることなくアプリを終了させる。

その後も続々とメッセージが届くが、それも無視。

すると…

【Prrr!Prrr!】

ことり「きたっ」

数時間経ってから、電話の着信音が鳴った。
液晶に表示されたのはもちろん穂乃果の三文字。

メッセージの返信がないことに業を煮やした穂乃果が
ついに電話をかけてきたのだろう

ことり「えへへへ…」

大事そうに、携帯を抱きしめることり
ふふふっ…幸せだなぁ…

液晶に表示された穂乃果の名前を見て、
天使のように微笑むことり…

そして慈しむように、
ことりは通話ボタンを押した…
・・・
・・

140: 2014/12/24(水) 16:54:33.44 ID:qVwa1fyu.net
放課後
In 昇降口
二年生の下駄箱前。

靴を履き替えて、続々と帰宅する同級生たちを尻目に
下駄箱に寄りかかって呆然と天井を見上げる海未。
その表情は暗い。

モブA「あ!海未先輩!さよならー」

海未「ひゃっ…」

急に声をかけられ思わず声が漏れる。
どうやらミューズのファンの子が挨拶をしてくれたらしい。

海未「え、えぇ。さよなら」ニコ

モブA「きゃーー!!
あのクール&ビューティ&プリティな海未さんが笑ってらっしゃるわー!!」

モブB「きゃああああ!!!!」

海未「気をつけて帰りましょうね」ニコ
海未(クール&ビューティ&プリティ…?)

モブ一同「「はーい!」」
・・・
・・

一年生の後輩たちを見送りながら、海未は考える。

海未(クール&プリティ&ビューティ、か。
それって褒め言葉なんだろうか…)

海未(やることもないし考えてみますかね….)

ぼんやりとその言葉の意味を考えてみる

142: 2014/12/24(水) 17:02:08.56 ID:qVwa1fyu.net
クール&ビューティ&プリティ。
その言葉は、例えるなら自称・超豪華な和鍋。

具材に高級和牛、ズワイガニ、キャビアにトリフとフカヒレと、
とりあえず美味しいものを山ほど入れてしまった鍋。

名前だけ並べるととても美味しそう。
だが、こんなものが本当に美味しいわけがない。
味をお互いに頃し合って不味いに決まってる。

性質が違いすぎるもの同士が共に共存するなんて、無理な話なのだ


海未(でも…)
でも、と。
海未は穂乃果と絵里の並んだ姿を思い浮かべる。

あの二人は性格や行動はかなり違っている。
お互い全く似ていない。

だが、
そんな二人並べてみると、不思議としっくりくる。
見たものを納得させるような妙な説得力があった。

海未「はぁ…」

こういう二人を、人はお似合いだと言うんだろうなぁ…

海未「はぁ…」
二度目の溜息をして、海未はまた思考の海に溺れていく

海未(それじゃあ…)
海未(私と穂乃果はどうなんでしょうね…)

143: 2014/12/24(水) 17:17:17.22 ID:qVwa1fyu.net
私と穂乃果。

性格は間違いなく正反対。
そういう意味では絵里と穂乃果の関係に似ているけれど

けれど…

海未(きっと私じゃ…ダメなんでしょうね…)

海未「はぁ…」
3度目の溜息。

頭の中の話題は、
いつしか高級鍋から大きく逸れて、自虐思考へ。
止まらない自虐思考。
どんどん深みへと落ちていく海未。

海未「はぁ…」
四度目の溜息。もう数えることも面倒臭い。

園田海未は、明らかに落ち込んでいた。
自分は穂乃果に選ばれなかったのだと思い、
落ち込みに落ち込んでいたのだった。

その落ち込みっぷりはもはや落ち込むなんてレベルじゃない。

落ちに落ちて、地面にぶち当たり、
それでも止まらず落ち続け、

地面をえぐり、進み込み、
ついには地球の中心部コアを貫いて地球の反対側へと到達。

それでも止まらず落下して、大気圏を突破しそのまま神秘なる宇宙へ…。

それほどの大スペクタクルな落ち込みっぷり。

落ちているはずなのに、
いつの間にか宇宙にむけて飛び上がっているという矛盾。

上下の概念の無意味さを実感させるほどの落ち込みっぷりであった

そんな時、

???「だーれだっ」

海未「えっ?ひゃん!」

149: 2014/12/24(水) 17:37:18.77 ID:qVwa1fyu.net
視界が突然真っ暗になる。
何者かが私の目を後ろから塞いでいるようだ。

???「わたしが誰かわかるかな~?」

どこぞのミッキーマウ○のような声が、
後ろの方から聞こえてくる。…カモフラージュのつもりなんだろうか

海未「ふふっ…」

後ろから抱きつくように目を隠される。
背中越しに伝わる懐かしいぬくもりに、自然と笑みが零れてしまう

海未「ふふ…誰でしょうか。わかりません」

少しでもこの時間を長く味わいたくて、つい嘘をついてみる

???「えーっ!わからないの??
それじゃあヒントあげるね~」

ポニョンっ!

海未「!?」

ポニョンっ!

背中に押し付けられる乳房。
おっOいの感触がヒントということですか……!?

ポニョンっ

海未「ぶひゃっ…!!」
たまりません。

???「ヒントはこの携帯の待受だよ!
さぁ、わたしが誰かわかるかな~?」

どうやら胸が当たったのは、
携帯の画面を見せるために前かがみになったのが原因のようだ。
ヒントをあげようと、私に携帯を見せようとする穂乃果。でも…

穂乃果「私の携帯の待受を見ればさすがの海未ちゃんもわかるんじゃないかな?」

ポニョンっ、ポニョンっ

海未(目を隠されているので見えません…)

そんな事実に気付いていながらも、
答えをはぐらかすこと数分間、至福の時間を過ごした海未であった

154: 2014/12/24(水) 18:09:30.59 ID:qVwa1fyu.net
にこの携帯を借りて穂乃果と会う約束を取り付けた海未。
そして放課後、待つこと数十分、
待ち合わせ場所の昇降口についに現れた穂乃果は…

穂乃果「やっほー海未ちゃん!」

ニコニコ

海未「………」

デートの件で苦悶していた海未やことりに対して、
いつも通り元気一杯の穂乃果。

海未「は、はい。やっほーです」

あまりにいつも通りな穂乃果に、
若干面食らう海未。

今朝一度会ってるはずなのに、
なんだか数年ぶりに再開したような錯覚。
うまく言葉が出てこない。

155: 2014/12/24(水) 18:10:28.98 ID:qVwa1fyu.net
穂乃果「にこちゃんからのメール見たよ?」

海未「は、はい」

穂乃果「携帯壊れちゃったんだってね…。
うーん…年末に連絡取り合えないのはちょっと不便だねー…」

海未「…言われて見れば、たしかにそうですね…」

穂乃果「ね、海未ちゃん」

海未「は、はい」

穂乃果「これから海未ちゃんの携帯電話、一緒に買いに行かない?」

海未「!」

完全に穂乃果のペース。
いつもの穂乃果のやりたいことに後ろからついていくパターン。

海未「………」

先程海未は言った。穂乃果から自立すると。

ここは甘い誘惑に乗らずに、
とりあえずまずはクリスマスのことを聞き出すべきところ…

穂乃果「ついでに私も新しいの買っちゃおうかな~

私もそろそろ機種変したかったんだよね。
あ!せっかくだし同じ機種にしようよ!」ニコニコ

それに対して海未は、

海未「はい。行きましょう!同じのにしましょう!」デレデレ

いつも通りの、海未だった。





ほのキチ神(ニコニコ)
ほのキチ神様が、見てる

157: 2014/12/24(水) 18:45:12.15 ID:qVwa1fyu.net
In 下校路
海未「~~~♪」
珍しくご機嫌な海未
久々の穂乃果との絡みにご満悦のご様子

しかし、

子雀『ょぅ…』

海未「……!」

ふと、地面の餌をついばむ雀が視界に入る。
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん

可愛い鳴き声を上げ、地べたを這い蹲り餌をついばむことり達。

子雀『どうしたぁ…』

海未「………」
そしてようやく海未は思い出す。彼女のことを。

海未(ことりは今頃…どうしているんでしょうか…)

絵里と穂乃果との仲を察して傷ついているであろう、ことりの身を案ずる海未。

きっとことりも、私と同じように落ち込んでいるに違いない…
今ごろ一人で泣いているのだろうか…

海未「……よし」
穂乃果と会えて浮かれポンチな脳みそを今一度戒める。

海未「穂乃果」
穂乃果「うん?」

海未「携帯ショップに寄る前に、ことりの家に寄ってみませんか?」

穂乃果「ことりちゃんの家に?」

海未「はい。今日学校を休んだのには何か理由があるみたいで…」
海未「ことりの家に行って、事情を聞いてみませんか?」

このままことりの家に向かい、
そこで穂乃果にクリスマスの事情を聞く、そういう算段だ

穂乃果「うーん…でも…」
海未「…?」

違和感。
今朝あれだけことりのことを心配していたのに、穂乃果の淡白な反応

海未「………???」
頭に疑問符が乱立する。
だが疑問はすぐに解消した

穂乃果「家に行かなくても大丈夫だと思う」
穂乃果「たぶんそろそろここに来ると思うんだけど……あっ!」

???「ホノカチャーン!!」

160: 2014/12/24(水) 19:10:06.95 ID:qVwa1fyu.net
通学路の向こうからこちらに走り寄って来る一つの影。

海未「あれは…ことり?」

夕日が逆光してシルエットしか見えないが、
あの揺れるサイドポニーテールは間違いなくことりのものだ

穂乃果「ことりちゃん!」

そのシルエットを見つけると、
穂乃果はその夕日に向かって走り出す。
それはさながら、どこぞのヒロインのような雰囲気

海未「………」
そんな穂乃果をポカーン顔で見つめる海未。

ことり「穂乃果ちゃん!」
抱きっ!

穂乃果「ことりちゃん…っ!心配したよー…」
ことり「ごめんね…ごめんね穂乃果ちゃん…っ」

お互いの存在を確かめ合うような熱い抱擁。

たとえるならそれは、最終回のエピローグ。

最終回のED後、
3年間フランス留学した愛しの彼と、
日本で彼の帰りを待つヒロインが
成田空港で3年越しの再会を果たす…そんな感動的なシーン

海未「………」

そんなメロドラマのような臭いシーン見せつけられる海未。
開いた口が閉まらない。

彼女らの織りなす世界観にまるで着いていけてない

ことり「………」
穂乃果「………」
ぎゅっと抱き合うことりと穂乃果

海未「…とりあえず、離れなさい」
それを半ギレ気味で二人を諭す海未

穂乃果「あっ。ごめんごめん、つい流れで」

ことり「えへへ~ホノカチャン、ホノカチャーンっ」デレデレ

海未「………」

キレつつも、
いつものことりの笑顔にホッとする海未。
でもあのハグはやりすぎだと思う

162: 2014/12/24(水) 20:32:22.81 ID:qVwa1fyu.net
海未「それで、どうしてことりがここに…?
今日は家で寝込んでるはずだったのでは…」

穂乃果「私が呼んだの!」

海未「穂乃果が?」

穂乃果「うん。ここのところ、
ミューズの活動ばかりで三人だけで遊ぶ機会って少なかったじゃない?」

穂乃果「久々に三人だけで集まって遊びたいなー、って思って」

遊ぶなら休日に遊べばよいのでは?

…と、言いかけるもすぐに察する。
穂乃果の行動の裏に隠れた思いやりを。

海未「穂乃果…」

きっと穂乃果は、
ここ最近元気のなかった私たちを見かねて.
気晴らしに誘うとしているのだ

なんて…優しい…っ

186: 2014/12/25(木) 08:13:03.14 ID:gPiFgONz.net
穂乃果「まぁ、もう夕方だから行く場所も限られちゃうけどね」

くるりと回って、ことりを見やる穂乃果

穂乃果「これから携帯ショップに行こうと思うんだけど…
ことりちゃんもそれでいいかな?」

ことり「携帯買うのー?」

穂乃果「うん。海未ちゃんの壊れた携帯の代わりと、
ついでに私も新しいの買おうかなーって思ってて」

ことり「えー!みんな新しいのにするのー?
じゃあ私も新しいのにしたいっ!」

海未「あれ?ことりはついこの前、
新しいのに買い換えたばかりじゃありませんでしたか?」

ことり「それが~、この前踏んづけて壊しちゃって~っ」

穂乃果「あー、そうだったんだ」

海未「………」

『えっ。じゃあどうやって穂乃果と連絡取り合ってたの?』
そんな疑問が湧き上がる。
が、海未はあえて口を挟まない

187: 2014/12/25(木) 08:15:25.49 ID:gPiFgONz.net
穂乃果「ことりちゃんも壊しちゃったんだ。
それじゃあすぐに新しいの買わなきゃだね!」

ことり「うん!
…あ、そうだ!みんなで買い換えるなら、
みんなでおんなじ機種を買おうよっ!」

穂乃果「うん!私もそうしたい!
ね?海未ちゃんもいいよね?」

グイグイ

ことり「三人同じのにしようよー!ウミチャン~っ!」

グイグイ

海未「………」

ことり・穂乃果(じーーーっ!)

海未「ふふっ」
海未「はい。もちろんいいですよ」

穂乃果・ことり「「やった!」」

朗らかに微笑む海未
ここ数日の海未はまるで嘘のような素直な笑顔

『穂乃果のクリスマスの予定は?』
『穂乃果がクリスマスのことを聞いてきた理由は?』
『穂乃果と絵里の関係の真偽は?』
『私と絵里、どっちが好き?』

聞きたいことはやまほどあった。

だが今の海未にとって、
そんな些細な疑問、心底どうでもいい。

穂乃果とことりが自分の隣にいてくれる。
ただそれだけで海未は満足だった。

今、海未が抱く願望はただ一つ。
この幸せな時間にずっと浸っていたい。ただそれだけだった

海未「さ、お喋りばかりしてないで急ぎましょう。
お店が終わってしまいます」

穂乃果・ことり「「はーい」」

かしましく、三人並んで歩く通学路。
園田海未は無邪気に笑う

190: 2014/12/25(木) 11:25:43.52 ID:MVHne++r.net
穂乃果「で、海未ちゃん昨夜はどうだったの!?」

海未「…」

穂乃果「え、まさか本当に…」

海未「もうっ!うるさいです穂乃果は!」

穂乃果「海未ちゃんおめでと~!パチパチパチ~!いやーこれで無事私たちみんな経験済みになったね!」

ことり「ことり心配したんだよ~海未ちゃん処Oのまま高校生活終えちゃうんじゃないかって~」

穂乃果「これからは心置きなくコイバナできるね~!」

193: 2014/12/25(木) 17:27:21.61 ID:gPiFgONz.net
ついさっきまで、壊れた笑い袋のように笑うだけだった海未。

海未「うふふふ…」

今やその影は感じさせない。いつものようにお上品に笑う海未。


ほのえりを恋仲だと思い込み、
精神的に追い詰められた海未が選んだ選択。
それは現実からの逃避であった。

絵里のことを問い詰めて真実を明らかにするか?
それとも、
今をこうして穂乃果とのほほんと過ごするか?

海未は辛い現実をなかったことにして、
穂乃果との幸せな時間を選んでしまったのだ。

現実からの逃避。穂乃果への逃避。愛の逃避行。




海未はまぎれもなく刹那主義である。

今この瞬間さえよければそれでいい。
穂乃果さえいてくれればそれでいい。

問題を先へ先へと遠くにおいやり、
今だけを楽しむ。

笑顔溢れる三人組。
これも仮初めの幸せにすぎない。

それを知りながらも海未は終始笑顔だった

194: 2014/12/25(木) 17:27:46.63 ID:gPiFgONz.net
それから少しして携帯ショップに到着。
あれやこれやと騒ぎながら物色して、携帯を購入。

お店を出る頃には、辺りは真っ暗な時間だった
・・・
・・

In ショップ前
店員「ありがとうございました~」

穂乃果「いやー、いい買い物しましたなぁ。」

ことり「いやはや全くその通りですなぁ。はっはっはー」

海未「何キャラですかそれ
……あっ。外がもう真っ暗…」

穂乃果「うわ暗い!いつの間に!?」

ことり「夢中になってて全然気づかなかったよ~」

穂乃果「だねー」

ことり「あ、でも時間は6時少し前くらいだね」

海未「冬は日が沈むのが早いですからね」

穂乃果「ほんとだね~」

そんな世間話をしながら、
ふいに穂乃果が軽い口調でことりに問いかける

穂乃果「そういえばさ、」
穂乃果「ことりちゃんはクリスマスって予定あるの?」

197: 2014/12/25(木) 18:45:56.80 ID:gPiFgONz.net
海未・ことり「「………」」

海未・ことり、思わず押し黙る

穂乃果「?」
穂乃果、キョトン顔で見つめ返す。かわいい

ことり「…クリスマスの予定?」

穂乃果「うん!」

ことり「………!!!」

もしかして…クリスマスデートに誘うつもりなのでは!?
私とクリスマスデートのお誘いフラグなのでは!?!?

ことりのテンションの針が一瞬にして振り切れることり。

しかし…

海未「………」じーっ
ことり(はっ!)

じっ…と、ことりを見つめる海未。
ことりを視線で嗜める。

『穂乃果が私をデートに誘おうとしてる!』という思い込み。
それは海未がここ数日かけて通った道のり。

穂乃果にデートを誘うつもりは毛頭ないことは、
海未のこの数日間が証明していた

ことり(……それじゃあ)
この質問の意図は……なに?
私たち二人に同じ質問をする意図は??

198: 2014/12/25(木) 18:48:38.82 ID:gPiFgONz.net
検討もつかぬまま、ことりは恐る恐ると回答する
ことり「クリスマスは…何も予定ないよ?」

穂乃果「そっかー」
穂乃果「それじゃあことりちゃんは、
クリスマスにいきたいところとかある??」

ことり「………」
海未「………」
続けざまの質問。圧倒的デジャヴ。
二人の時間が再び停止する。止まる会話のテンポ

穂乃果「?」

ことり「え、えーっと…」

とりあえず…ここは素直に答えるしかない…

相手の腹を探るために嘘をつくのはもう絶対にしたくない。
ことり、再び素直に回答する。

ことり「ハウステンボス」

穂乃果「な、長崎っ!?長崎は遠いよっ!
もうちょっと近場でないの?」

ことり「え?近場限定?
うーんと…それならイルミネーションが見れる場所がいいかなぁ」

穂乃果「イルミネーション!クリスマスっぽくていいね~」

ことり「あはは、そうだねー…」

207: 2014/12/25(木) 21:24:27.38 ID:gPiFgONz.net
穂乃果「そっかそっか。
それじゃあ二人ともクリスマスは予定ないんだねー」

海未「………」
ことり「………」

話題は完全にクリスマスの流れ。
あのことを聞くとしたら、このタイミング以外ありえない。

舞台は完全に、整った。

ことり(……よ、よしっ!)
海未「………」

ことりが抱き続けた疑問。
『どうして穂乃果はデートに行きたい場所を聞いたの?』

自分のデートの参考にするため?
遠回しに私をデートに誘うため?
それともただのきまぐれ???

それと、
私たち二人に同じ質問をした理由は??
どうして絵里ちゃんが同じ質問をしていたの??

様々な疑問が頭を駆け巡り、
そして、全ての答えに繋がる一つの質問文を導き出す

『穂乃果ちゃんの今年のクリスマスのご予定はどんな感じなの?』

これしか…ない…!

ことり(この質問をぶつけてみよう…!)

意気込むことり。


一方、海未。

海未「………」
一言も喋らず。

211: 2014/12/25(木) 21:48:59.49 ID:gPiFgONz.net
一方、園田海未の場合。

海未「………」

穂乃果の事情はもちろん気になるけど、
けどそれ以上に、怖い。
聞いたことで、今のこの幸せな時間が壊れるかもしれないことがすごく怖い。

それならいっそ、
クリスマスの一件はなかったことにするべきなのでは?

海未(だけど…)

だけど…やっぱり気になる。
穂乃果の手帳の25日の欄が誰の名前で埋まっているのか、ものすごく気になる

海未(だけど…)

…いや待て。
やっぱり今のまま、曖昧のままでも、
それはそれで良いのではないだろうか。

世の中知らなくてもいいこのとなんてたくさんあるし、
知らないままで幸せならそれでもよいのではないだろうか

海未(だけど…)

だけど、だけど、だけど、だけど…

延々と同じ思考がループする。
「だけどだけど」の無限回廊。

海未「………」
そして海未が出した選択は、

『とりあえずは様子を見よう』

決断の放棄。状況にただ身をまかせるだけ。

海未(ことりが何か質問するつもりみたいだから、
とりあえずはそれに任せましょう)

その在り方、まさに傍観者。
収穫時期の終わった田んぼに、ポツンと佇むカカシと同じ。

昼間のにことのやり取り、水泡と帰す。
まるで反省していない。
園田海未の受け身人生、ここに極まる

214: 2014/12/25(木) 23:16:55.09 ID:gPiFgONz.net
穂乃果「クリスマスは二人とも暇なんだね~」

ことり(………)
大事なのはタイミング。
会話の流れを遮るような質問の仕方は絶対にしてはいけない。
頃合いを正確に測る必要がある

ことり(………)スッ…
ことりは一人静かに目を閉じる。
余計な情報を削ぎ落とし、穂乃果の台詞一字一句に集中する。

穂乃果「そっかー」
穂乃果「そうなんだー」

・・

・・

・・

ことり(……!!)

ここ!
わずかに会話が途切れるこの瞬間!
会話のターニング地点!!
質問するならここが最も最適な場所!

ことり(ここだあああああ!!!)

ことり、動き出す。
『穂乃果の今年のクリスマスの予定は?』
そんな質問を胸に秘め、

南ことりは勝負にでる!

ことり「穂っ!」

穂乃果「実は私もクリスマス暇なんだー」

ことり「へけっ!」

穂乃果「へけ?」

海未「………」

220: 2014/12/25(木) 23:48:04.34 ID:gPiFgONz.net
えっ…ええええええ!!!

ことり・海未(穂乃果クリスマスに予定無かったの!?)

某然・驚愕する二人。いままでの苦悶はなんだったん?!

ポカーン顔の二人にお構いなしに、
穂乃果は話を続ける

穂乃果「それで、なんだけどね。えーっと…」

言うのを躊躇うように、
両手の人差し指をつーん、つーんとする穂乃果。かわいい

穂乃果「ことりちゃんも海未ちゃんも、
今年のクリスマスは予定がないんだよね?」

ことり「う、うん」
海未「は、はい」

穂乃果「…ほんとに予定無いんだよね??
もしかして、実は彼氏がいたりとかは…」

ことり「ないない(悟)」
海未「ないない(極)」

穂乃果「そう?よかったー…」

なんとなく遠慮がちな穂乃果に少し驚く。
こんな穂乃果はめずらしい。一体どうしたんだろう

穂乃果「それでね?…えーっと…あのー」
穂乃果「もしよかったらなんだけどね」

穂乃果「今年のクリスマスは、
ことりちゃんと海未ちゃんと、3人で過ごしたいの」

ことり「………」
海未「………」

穂乃果「…ダメかな?」

ことり「……ほほう」
海未「……ほほう」

・・・
・・

228: 2014/12/26(金) 00:04:11.20 ID:gPiFgONz.net
穂乃果「高校に入ってからの私たちって、

みんな忙しくなっちゃって
会う時間が昔よりも少なくなっちゃったじゃない?」

高校に入ってからの3人には、
それぞれにやりたいことが生まれた。

海未は部活。
ことりはバイト。
穂乃果はあんパン。

三人それぞれがやりたいことを見つけて、
別々の道を進んで行った。

少しずつ、ほんとうに少しずつだけれど、
三人の距離は少しずつ離れていく…

それが穂乃果には、たまらなくさみしかった。

穂乃果「でも…」

でも、と
穂乃果は言う。
穂乃果「二年生になって、ミューズを結成してからは
私たちいつもずっと一緒だったよね」

ミューズを結成してからの一年、
三人ずっと一緒だった。
一つの目標に向けて三人一緒に頑張れた。

穂乃果「ことりちゃんと海未ちゃんと、
また三人一緒にいられることがね、私すっっ…ごく、嬉しかったの」

ことり「………」
海未「………」

230: 2014/12/26(金) 00:10:07.37 ID:7jmtZAe0.net
穂乃果「だからね、今年の間だけは

最後までことりちゃんと海未ちゃんと一緒にいたいの」

穂乃果「クリスマスも、クリスマスイブも、大晦日もずーっと…」

高校、大学、社会人と進んでいけば、
いずれ三人はそれぞれの道を進んでいく。
みんな離れ離れになってしまう。

ずっと一緒にいるなんて夢、無理に決まってる。
そんなことは穂乃果もわかっていた。



でもそれでも、それでも今だけは、
一緒にいられる今だけは一緒にいたい。

まだ一緒にいられる時間が残っているのなら、

穂乃果はその残りの時間を精一杯、
ことりと海未との3人で過ごしたかった


穂乃果「クリスマス…一緒に遊べないかな…?」

ことり「………」
海未「………」

答えはもちろん、決まっている

232: 2014/12/26(金) 00:23:47.77 ID:7jmtZAe0.net
・・・
・・

12月25日 クリスマス
A.M. 10:00
In 穂乃果の部屋

【ジリリリリリ!ジリリリリリ!】
目覚まし時計『起きようやぁ…』

けたたましく鳴り響く目覚まし時計。うるせぇ。

この騒音の中でも、
ベットの主は変わらず気持ち良さそうに寝息を立てる

穂乃果「むにゃむにゃ……ゆきほ~…おちゃー…おちゃー…」


ぐーすかぴー、ぐーすかぴーと、眠る穂乃果。
ヘソ丸出しで寝る姿は、とても高校生とは思えない

???「はぁ…よくこんな中で眠れるなぁ」

【ジリリリリリ……カチッ】
目覚まし時計『起きようやぁ…起きy(ピタッ』

役目を果たさぬまま、止められる目覚まし時計

雪穂「………」
雪穂、だらしない姉の姿を冷めた目で見下ろす。
この姉の通う高校に進学して果たして良いのだろうか…?
そんな一抹の不安が去来する

穂乃果「ぐががぁ…」

雪穂「お姉ちゃんおきてっ。
今日はことりさんと海未さんとお出かけなんでしょー?」ユサユサ

穂乃果「………」
穂乃果「………」
穂乃果「……ぐがぁ」

雪穂「ダメだこりゃ」

233: 2014/12/26(金) 01:01:45.16 ID:7jmtZAe0.net
P.M.12:00

穂乃果「ぐがぁ」
穂乃果「……んー……?」
穂乃果「………」

がばっ!

穂乃果「はっ!い、今何時!?」

時計の時刻を見ると、
すぐさま飛び上がるようにベットから起き上がる

穂乃果「ち、ちこくうううううっっ!」
・・・
・・

In 一階
ほのママ「穂乃果降りてこないわね。まだ寝てるのかしら」

雪穂「たぶん」雑誌ペラペラ

ほのママ「あの娘今日はお友達と約束があるとか言ってなかった?」

雪穂「言ってたねー」ペラペラ

ドッドッド…

雪穂「あ、階段の音…。
お姉ちゃん起きたみたいだよ」

だっだっだ!
ガラッ!

穂乃果「ゆきほ!なんで起こしてくれなかったの!」

雪穂「わたしちゃんと起こそうとしたもん」

穂乃果「起こそうとしただけじゃなくて
ちゃんと起こしてよ!昨日起こしてって頼んだのに!!」

雪穂「…わたし何度も何度も起こそうとしたんだよ?
それでも起きないお姉ちゃんが悪いんじゃん」

穂乃果「そ、それは…っ」

ほのママ「ほらほら遊んでないで!
穂乃果は今日約束があるんでしょ?行く準備しなくていいの?」

穂乃果「ハッ!そうだったっ!
はやく準備しないとっ!」

だっだっだっ…

ほのママ「はぁ…全く…朝から騒がしい娘ねぇ」

雪穂「いま昼だよ?」

ほのママ「そうだったわね」

237: 2014/12/26(金) 10:02:01.40 ID:7jmtZAe0.net
穂乃果「いってきまーす!」

雪穂「いってらっしゃーい」

待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。
い、いそがないと!

家を飛び出し駆け出そうとする穂乃果
が、その脚はすぐに止められる

???「キャッ…」
穂乃果「ほにゃっ!」

家をすぐ出たところ、
穂乃果は通行人と衝突してしまう。

穂乃果「ご、ごめんなさい!お怪我はありませんか??」

もしここが訴訟社会アメリカなら即訴訟。即裁判。
民事裁判は避けられない。

相手よりも先に謝ったのは自分の非を100%認めたものと同じとされ、
穂乃果の敗訴は確定的だろう。

???「いたた…」

だが、そんな心配も杞憂に終わる。

???「え、えぇ。こちらはなんとか大丈夫です。
……ってあれ?穂乃果?」

穂乃果「ん?その声は…絵里ちゃん??」

ぱっぱっぱと、
膝についた土を払い落とすその人こそ、
ミューズが誇るスーパーアイドル絢瀬絵里。

突然のアクシデントにも動じることはなく、
品のある笑みは崩れない

そのダンス力、
バレエのコンテストで受賞するほどのレベル。

その美貌、
ファッション関係者から名指しでスカウトされるほどの美しさ。

その聡明さ、
生徒会長をつとめるほどの賢さ

あらゆるものを全て持つ完璧スーパーアイドル。
それが絢瀬絵里であった。

絵里「偶然ね、こんなところで」

穂乃果「わたしの家の前だからそんなにすごい偶然でもないかも?」

絵里「それもそうね」
絵里「穂乃果は怪我してない?」

穂乃果「うん!だいじょぶ!」

240: 2014/12/26(金) 10:31:46.68 ID:7jmtZAe0.net
穂乃果「絵里ちゃんやっほー!メリークリスマス!」

絵里「メリークリスマス、穂乃果。
穂乃果はこれからお出かけ?」

穂乃果「うん!デートにいくの!」

絵里「へぇー。そうなんだー」
絵里「……ん!?デ、デート!?」

穂乃果「うん!」

絵里「デートって貴女…」

穂乃果「これからことりちゃんと海未ちゃんとね、
3人でクリスマスデートに行くの!」

穂乃果「えへへっ」ニコニコ

絵里「あ、あぁ…そういうことね」

穂乃果「そういう絵里ちゃんはー」
穂乃果「………」

じーーーー……

絵里「?ど、どうかした?」

穂乃果「……なんだかやけにオシャレしてるみたいだけど。
もしかして……デート?」

絵里「ち、違うわよ!」
動揺する絵里
頬は明らかに紅潮してた

243: 2014/12/26(金) 11:23:57.57 ID:7jmtZAe0.net
絵里「ほんとに違うったら。
希の家に遊びに行くだけよ?」

穂乃果「ふーん?そうなんだ」

希ちゃんの家に遊びにいくだけでそんなにオシャレを?
若干の疑問は残る

穂乃果「よくわからないけど……」

穂乃果「高校生最後のクリスマスを
希ちゃんと一緒にいられて良かったね!絵里ちゃん!」

絵里「だっ!」
絵里「だからそういうのじゃないんだってば~……///」

・・・
・・


絵里「あ、そういえば」
絵里「穂乃果のお店、今日は開いてる?」

穂乃果「うん。うちはいつでも営業してるよ~」

絵里「そう。よかった。
それじゃあ穂むらで和菓子を買っていこうかしら」

穂乃果「えっ。クリスマスに和菓子…?」

絵里「えぇ。手土産に持って行こうかと思ってて」

穂乃果「ふーん…クリスマスにねぇ…
絵里ちゃんは変わってるね」

絵里「そう?クリスマスに和菓子って以外とメジャーみたいよ?」
ソースはことり

穂乃果「穂乃果なら断然ケーキだけどなぁ」

絵里「……あ。わたしそろそろ行かないと」

穂乃果「うわっ!穂乃果遅刻してるんだった!!

ま、またね!絵里ちゃん!」

絵里「あ、うん。またお正月にね」

穂乃果「うん!」

244: 2014/12/26(金) 11:40:19.51 ID:7jmtZAe0.net
A.M 8:00

In 某時計台前

ことり(うずうず)
海未(うずうず)

ことり・海未、うずうずしながら穂乃果を待つ
穂乃果との待ち合わせの時刻は11時30分。

予定の時間の三時間半前にもかかわらず、
両名ともにすでに到着済み

海未(うずうず)
うずうずしながら、
戦前の高ぶる足軽のごとく、震えて待つ海未。
だがこれは武者震いではない

海未(………さ、さむい)
単純に、寒かった

ことり「海未ちゃん、はいっ」
海未「あっ…ホッカイロ…」

震える海未に、ことりはそっと優しくホッカイロを手渡す。

マフラー一丁で震える海未に対して、
ことり、震え知らずの余裕綽々。

寒さ対策は完璧。ヒートテック、おしゃれ腹巻、毛糸のパンツは直用済み。
待ちのプロ。計画的犯行。計画的出待ち。

ことりの女子力、わずかに海未を上回る

海未「………」
なんか悔しい

海未「…あ!えっと、ことり、喉とか乾いてない??」

海未、対抗しようととりあえずことりの身を案じてみる。
海未の女子力がついに本領を発揮する…!!

ことり「いいの?」
海未「はい!わたしの分のついでに買ってきますよ!」

ことり「じゃあお願い~」
海未「はい!」

だが、女子を待たせて飲み物を買いにいくのは
女子力というより男子力なのでは…?

そんなことは露しらず、
勝ち誇った表情で自販機に駆け出す海未。
今日も世界は平和だ

246: 2014/12/26(金) 12:00:41.68 ID:7jmtZAe0.net
A.M11:30

今日が楽しみ過ぎて、
朝起きてすぐさまベットを抜け出し
そのまま待ち合わせ場所に直行してから数時間

ついにこの時がきた。
海未(ドキドキ!ドキドキ!)
ことり(ドキドキ!ドキドキ!)

二人のテンションは最高潮に達していた。


A.M12:00

海未「はぁ…」
黄昏て、鈍く濁る冬の空を見上げる海未。
今日も雲は遠い。

海未「はぁ…しにたい…」

ことり「………」

海未「はぁーー……」

海未のテンションはどん底のどん底のズントゴにまで落ちていた。

251: 2014/12/26(金) 12:24:45.14 ID:7jmtZAe0.net
海未「もしかして穂乃果、
私たちとのデートをすっぽかして今頃絵里と
デートしてるのではないでしょうか…?」

ことり「だ、だいじょぶだよ!きっと寝坊してるだけだよ!」

海未「………」

ことり「それに…穂乃果ちゃんがそんなことする娘じゃないのは、
私たちがよく知ってるでしょ?」

海未「………」
馬未「……そう、ですね」

ことり「そうだよ!」

それは、そうだ。
穂乃果がそんなことをするはずがない。
今は黙って穂乃果を信じよう。それが親友というものだ。

そんな時、ふいに別のの可能性が思い浮かぶ

海未「じゃあもしかして…事故!?」

ことり「!」
その可能性は…ありうる。
ことりも思わず黙りこむ

が、もちろん事故なんて起きていない。
心配する2人を他所に、一つの影が二人に近づいていく。

【タッタッタッ】

海未「あっ…」ことり「あ…」

この足音は…。

【タッタッタッ!】

遠くからドタバタと足音が聞こえてくる。
その音だけで、二人には十分だった。

???「ご、ごめーん!寝坊しちゃったー!!」

走りながら大声をあげる誰かさん。

……さて、今日はクリスマスデートにして初デート。
そんな日に三十分も遅刻した落とし前、どうつけてもらおうか


海未「ふふっ…」ことり「あはは…」
静かに笑う海未と、困ったような顔で笑うことり。

思考とは裏腹に、ニコニコ笑顔な2人であった

(おわり)

252: 2014/12/26(金) 12:30:53.24 ID:X+q4sexf.net

253: 2014/12/26(金) 12:35:47.14 ID:5jr4Tbqn.net
乙!かなり面白かったよ

引用元: 穂乃果「そろそろクリスマスかー」一同「ガタガタ!」