969: 2018/03/20(火) 18:36:47.54 ID:t0wqhM/bo

武内P「結婚するなら、ですか」

970: 2018/03/20(火) 18:38:47.16 ID:t0wqhM/bo
部長「どんな家庭を築こうと思っているのかね?」

武内P「……いえ、しかし」

部長「相手が居ないのは百も承知さ」

武内P「……」

部長「だが、こういう家庭にしたい、というビジョン位あるだろう?」

武内P「……」

武内P「……そう、ですね」

971: 2018/03/20(火) 18:40:44.87 ID:t0wqhM/bo
部長「そうだろうそうだろう!」

武内P「本当に、ぼんやりと……ですが」

部長「それは興味があるねぇ!」

武内P「……はぁ」

部長「興味があるよねぇ!?」

武内P「……」

部長「……」

部長「よし、両隣の部屋に反応は無い! 続けよう!」

972: 2018/03/20(火) 18:44:12.40 ID:t0wqhM/bo
部長「結婚相手については置いておいて、だ」

武内P「……そう、ですね」

部長「子供は、何人欲しいと思う?」

武内P「……三人、ですね」

部長「三人? そりゃまた、どうして」

武内P「二人だと、どちらかを贔屓してしまうかも知れませんし」

武内P「三人ならば、どちらか、という形にはなりませんから」

部長「……驚いた、案外しっかり考えているね」

武内P「……」

973: 2018/03/20(火) 18:47:51.54 ID:t0wqhM/bo
部長「欲しいのは、全員女の子かい?」

武内P「いえ、男の子は一人は欲しいと、そう、思います」

部長「ほう?」

武内P「女の子だけだと、その……」

武内P「……家での立場が無いと、よく聞くので」

部長「……」

武内P「……申し訳ありません」

部長「……いや、良いんだ」

974: 2018/03/20(火) 18:50:45.92 ID:t0wqhM/bo
部長「そうだねぇ……本当に、立場が無くなるねぇ」

武内P「今も、仕事中にそれをよく実感します」

部長「……まあ、飲みたまえよ」

武内P「……はい」

武内P・部長「――カンパイ」

武内P・部長「……」

部長「……沁みるねぇ」

武内P「……ええ、本当に」

975: 2018/03/20(火) 18:55:30.42 ID:t0wqhM/bo
部長「子供の名前は、どうやって決めるんだい?」

武内P「相談して決められれば、それが一番です」

部長「ちなみに、キミの希望は?」

武内P「そう、ですね……」

武内P「男の子だったら、私の名前から一文字」

武内P「女の子だったら、妻の名前から一文字」

武内P「もしくは、季節を感じさせる名前が良いと、そう思います」

部長「……キミ、かなり結婚願望あるね?」

武内P「……いえ、そんな事は、決して」

976: 2018/03/20(火) 18:58:35.59 ID:t0wqhM/bo
部長「結婚はしたくないが、子供は欲しい、と?」

武内P「そういう訳では無いと思います。ただ……」

部長「ただ?」

武内P「誰かが成長するのを見守るのが、好きなのかも知れません」

部長「……なるほど」

部長「成長するのを! 見守るのが! 好きなんだね!」

武内P「……部長?」

部長「ああ、すまない。ちょっとした確認だよ、確認」

武内P「はぁ……?」

977: 2018/03/20(火) 19:02:30.55 ID:t0wqhM/bo
部長「まま、飲みたまえよ!」

武内P「はい……ぷはぁっ」

部長「体格に似合った、良い飲みっぷりだ」

武内P「ありがとう、ございます」

部長「今日はどんどん飲もうじゃないか」

武内P「……」

部長「そして、思っている事を全て言ってしまおう」

武内P「……はぁ」

978: 2018/03/20(火) 19:08:42.92 ID:t0wqhM/bo
部長「あとは……っと、少し待ってくれたまえ」

武内P「はい」

部長「あと確認するのは……ああ、そうだそうだ」

武内P「あの……部長?」

部長「いや、なんでもない。こっちの話さ」

武内P「……そう、ですか」

部長「まま! 飲もう飲もう!」

武内P「……」

979: 2018/03/20(火) 19:21:13.32 ID:t0wqhM/bo
部長「婿入りは、どうだい?」

武内P「婿入りですか……」

部長「大事な質問だよ、これは。いや、本当に」

武内P「……」

部長「……」

武内P「そうですね……それが必要であるなら、はい」

部長「よく言った! さあ、飲もう!」

武内P「は、はい」

980: 2018/03/20(火) 19:24:45.78 ID:t0wqhM/bo
部長「いやー、良かった良かった!」

武内P「あの、部長……?」

部長「嫁さんの実家の手伝いとかは、する気はあるかい?」

武内P「それは、当然すると思います」

部長「キミならそう言うと思ったよ! はっはっは!」

武内P「あの、何か様子が……」

部長「ままま! 飲みたまえよ! ささ、グイッと!」

武内P「……はぁ」

982: 2018/03/20(火) 19:28:16.05 ID:t0wqhM/bo
部長「……しかし、安心したよ」

武内P「安心、ですか?」

部長「そうとも。キミが、案外しっかりと考えていた事にね」

武内P「そう、でしょうか」

武内P「……自分では、あまりよくわかりません」

部長「いいや、キミはとてもしっかりとした答えを出していた」

武内P「……」

部長「これなら、安心だ」

983: 2018/03/20(火) 19:32:15.33 ID:t0wqhM/bo
部長「……っと、少し席を外すよ」

武内P「はい、わかりました」

部長「頑張りたまえ」

武内P「はぁ……?」

武内P「……」

武内P「……ん? LINEに、メッセージが?」

武内P「……」

武内P「……!?」

984: 2018/03/20(火) 19:35:40.03 ID:t0wqhM/bo
  ・  ・  ・

部長『――やあ』

武内P「部長! やあ、ではなく!」

部長『いやー、今日は寒いねぇ』

武内P「あの、今何処に居るのですか!?」

部長『勿論、家路についている所さ』

武内P「待ってください!」

部長『安心したまえ、そこは私の奢りだ』

武内P「……!?」

985: 2018/03/20(火) 19:39:16.33 ID:t0wqhM/bo
部長『まだ時間も早い、ゆっくりしていきなさい』

武内P「いえ、私はもう……!」

部長『入れ違いになったら、後々面倒だろうねぇ』

武内P「……!?」

部長『だが、安心したまえ』

部長『キミの答えは完璧だった、悪いようにはならないだろう』

武内P「……」

986: 2018/03/20(火) 19:43:20.55 ID:t0wqhM/bo
部長『男同士だからこそ、話せる事もあるからね』

部長『しかし、そんな話をこそ、気になってしまうものらしい』

武内P「あの……いつから、ですか?」

部長『……すまないね』

武内P「……最初から、ですか」

部長『最初は囲まれていると思ったんだがね』

部長『もしもそうだったら、私も逃げられなかったよ』

武内P「……」

987: 2018/03/20(火) 19:49:59.64 ID:t0wqhM/bo
部長『キミは、私が憎いかい?』

武内P「………………いいえ」

部長『はっは! 正直で、結構な事じゃないか!』

部長『私も、自分に正直に行動しただけさ』

武内P「……」

部長『私ももう若くない、あとは若い者たちだけで――』

部長『……』

武内P「……部長?」

部長『……』

988: 2018/03/20(火) 19:54:16.98 ID:t0wqhM/bo
  ・  ・  ・

部長「やはり、男の子は一人じゃ足りないと思うんだ」

武内P「そうですね。そう、思います」

部長「男は女に弱いもんだ。そうだろう?」

武内P「……はい」

部長「男女比が多少変わった所で、立場が無くなることに変わり無い」

武内P「ですが……とても、心強いです」

部長「そうか……そうかぁ」

989: 2018/03/20(火) 20:02:00.75 ID:t0wqhM/bo
部長「……さて、カンパイの挨拶がまだだったね」

部長「ゴホンッ!」

部長「既に、立場が無くなった私と彼だが……」

武内P「……」

部長「せめて、立場を忘れない程度に、大いに飲もうじゃあないか!」

部長「飲んで忘れるのはいけないよ! 良いね! 頼むよ、本当に!」

部長「酒は飲んでも呑まれるな!」

部長「……そんなに睨まないでくれよ、頼むから。私にも立場ってものがだね」

部長「はぁ……飲んで、忘れたいねぇ」


部長「……カンパイ!」


「カンパーイ!!」



おわり

引用元: 武内P「結婚するなら、ですか」