1: 2010/06/05(土) 01:34:30.82 ID:MaiLil8O0
08月09日/18時33分33秒 平沢唯

唯「う…ここは…音楽室…?」

唯「そうだ、私…音楽室に忘れ物取りに来て…みんなには先に帰ってもらって…」

唯「あれ…?どうして寝ちゃってたんだろう…」

唯「もう外暗くなってきてるし…」

唯「まあいっか。とにかく帰らなきゃ。」

ノロノロと起き上がり、音楽室のドアに向かおうとしたその時だった。
知ってはいるが聞きなれない、しかしなぜか人の心の奥底から焦燥と恐怖を駆り立てる、奇妙な音が鳴り響く
―――まるで何か獣の鳴き声のような

唯「ひっ!」

唯「何…これ…」

唯「サイレンの音…?」
けいおん! ストーリーアンソロジーコミック (3) (まんがタイムKRコミックス)
3: 2010/06/05(土) 01:36:43.83 ID:MaiLil8O0
音楽室を出て階段を下りる。
夏休み中のためかほかに残っている生徒はいないようで、校舎内は静まり返っている。
気味の悪さを感じながらも廊下を進むと、前方にポツリと立つ見知った後姿を見つけた。

唯「さわちゃん先生?おーい!」

声に気づいた教師は振り返る。心なしか顔に生気が無いように見える。

唯「休みなのにお仕事大変だね!」

無表情のままさわ子は応えない。

唯「あ、私?デヘヘ、なんだかいつのまにか音楽室で眠り込んじゃっててさ」

さわ子は応えない。

唯「どうしたの?なんだか顔色悪いよ?」

応えない。
しかし代わりにその顔に変化が見られた。
異常なほどに見開かれた、さわ子のその瞳から一筋の涙が―――紅い涙が流れ始めた。

4: 2010/06/05(土) 01:38:19.84 ID:MaiLil8O0
唯「え!?さわちゃんどうしたの?大丈夫?病気?」

あわてて駆け寄ろうとする唯を見て、ようやくさわ子は口を開いた。

さわ子「フ…ヒヒヒ…ゆいちゃん…」

さわ子「こんな時間に学校にいて…ダメじゃない…おしおき…しなきゃね…」

そういってノロノロとこちらに歩き始める。

唯「えっ…?おしおき…そんなことよりその目、大丈夫なの?」

普段と違う様子に戸惑う唯。
その時少しずつ近づいてくるさわ子の手に握られているものをはじめて視界が捕らえた。
赤黒い染みのついた、金属製のバットだった。

さわ子「悪い子ね…ゆいちゃん…ヒッ、ヒヒヒッ」

唯「へ、ヘンだよ先生…冗談でしょ…」

さわ子は後ずさる唯との距離をジリジリと詰め
―――そして奇声を上げるとともにそれを振り上げた。

唯「キャアアァァァッッ!!!」

終了条件:校舎内からの脱出

6: 2010/06/05(土) 01:40:30.00 ID:MaiLil8O0
間一髪だった。
振り下ろされたバットをかろうじてかわした唯は下駄箱に向かって走り出した。
わけがわからない。
しかしさわ子の振る舞いが冗談ではないことは本能でわかった。
そして、後ろを振り返らなくても、その足音と常軌を逸した笑い声から未だに追いかけてきていることが感じられる。
殺される―――

廊下を全力で駆け抜け、やっとの思いで玄関口にたどり着く。
しかしドアには鍵がかかっていた。

唯「どうしてっ!?なんで開かないの!?」

廊下の向こうからはあの声が近づいてきている

7: 2010/06/05(土) 01:43:12.04 ID:MaiLil8O0
唯「どうしよう…そうだ、非常口!」

必氏に場所を思い出す。

唯「えっとぉ、たしか少し戻った廊下の先…」

今来た廊下の奥を見ると非常口の青いランプが見える。
しかし、そこにたどり着くにはバットを持ったさわ子のそばを通り抜けなければならない。

唯「どうしよう…」

時間は無い。悩む唯の視界の端に、あるものが映る。

唯「コレ…しかないよね…」

唯はそれを掴んで近づくさわ子を待ち構え、そして―――

唯「さわちゃん、ゴメン!」

勢いよく消火器の栓を抜いた。

8: 2010/06/05(土) 01:45:00.00 ID:MaiLil8O0
突然視界を奪われとまどった様子をみせるさわ子。
その脇をすばやく駆け抜け、非常口を開けて外に飛び出した。

唯「はぁっはぁっ…」

唯「うぅ…さわちゃん先生…どうしちゃったの…?」

唯「…帰ろう…」

外は雨が降っていた。
傘がないので仕方が無く濡れながら歩くことにする。
雨水が妙に甘く感じられた気がした。


―――終了条件達成

10: 2010/06/05(土) 01:47:02.08 ID:MaiLil8O0
08月09日/18時49分12秒  平沢唯

家路を歩く唯。
先ほどの異常な出来事を思い返してみる。

唯「やっぱり普通じゃなかったよね…」

唯「何かの病気だったのかな…」

唯「勢いで逃げ出してきちゃったけど…放っておいたらやっぱりまずいよね…」

唯「そうだ!救急車を呼んであげよう!学校に病人がいますって言えば来てくれるよね」

唯「あれ、圏外だ。どうして…?」

唯「うぅ…困ったなあ」

12: 2010/06/05(土) 01:49:08.69 ID:MaiLil8O0
唯「それにしてもずいぶん濡れちゃったな…つぅっ!」

不意に頭痛に似た眩暈を感じ、おもわず目を閉じる。

唯「へ?何コレ…?」

唯「目をつむってるのに…何か見える…」

唯「なんだろう、この風景…誰か別の人になっちゃったみたい…」

唯「映ってるこの道って…今私がいるとこ…」

唯「あ、私だ!」

“誰か”の視界に映る自分の後姿。

唯「え?じゃあひょっとして…」

目を開き、振り返る。
思ったとおり、視界の主はそこに、いた。

13: 2010/06/05(土) 01:50:17.51 ID:MaiLil8O0
知らない男だった。
しかし、手に持たれた凶器、そして何より、流れる紅い涙が先ほどの悪夢のようなできごとを嫌でも彷彿させた。

唯「ウソ…」

脚がすくむ。

唯「なんなの…」

頭では危険を感知している。
しかし動けない。

「何やってるんですかー!」

唯「へっ?」

14: 2010/06/05(土) 01:52:58.76 ID:MaiLil8O0
08月09日/18時52分02秒  中野梓

目を閉じて意識を集中する。
知らない誰かの視界が見えてくる。

梓「うーん…この先の道は…いるなぁ…」

梓「この息遣い、普通の人じゃないよね…」

梓「迂回していこう…」

梓「こっちの道は…うわ、2人も…」

梓「うん…?この人って…ゆ、唯先輩!?」

梓「唯先輩が、お、襲われちゃう!」

盗んだ視界をたよりにして走り出す。

梓「こっちの道…いた!」

梓「何やってるんですかー!」

駆け寄って、唯の手をつかむ。

唯「へっ?あ、あずにゃん!?」

梓「はやく、こっちです!」

17: 2010/06/05(土) 01:54:43.77 ID:MaiLil8O0
―――

梓「はぁっ…はぁっ…」

梓「どうやら…うまくまいたようですね…」

唯「うひー…さっきから走ってばっかりだよぅ…」

梓「でもよかった。先輩、無事だったんですね。」

唯「あずにゃーん!こわかったよぉー!」

梓「ちょ、ちょっと!こんな時に抱きつかないでください!」

唯「…あずにゃんは、さっきのがどういうことなのか知ってるの?」

梓「…知りませんよ。」

梓「ただ判ったのは、あの紅い涙を流している人達は私たちを襲ってくること。」

梓「もう、どこもかしこもおかしくなった人ばかりですよ。」

唯(さわちゃん…)

18: 2010/06/05(土) 01:56:01.49 ID:MaiLil8O0
梓「それから、目を閉じて意識を向けるとそこにいる誰かの視界を盗み見ることができるようになったこと。」

唯「それじゃあ、さっきのはやっぱり…」

梓「やっぱり先輩もできるんですね…このわけわかんない状況と関係あるんでしょうか。」

唯「うん…あずにゃんはどうしてここに?」

梓「私、部活の帰りに商店街に寄ってたんです。」

梓「だから、今から家に帰ろうと思うんですけど…その途中で先輩を見つけて」

唯「そっか…じゃあ家の様子を見に行くんだ。心配だもんね。」

唯(あ、そうか、私も…)

19: 2010/06/05(土) 01:58:03.66 ID:MaiLil8O0
梓「はい…先輩はどうするんですか?」

唯「本当はあずにゃんに着いていってあげたいんだけど…」

唯「ごめんね、私も家に戻るよ。」

梓「そうですね…憂が心配ですもんね。」

梓「でも、大丈夫ですか?ひとりで。」

唯「うん!さっき聞いたやりかたで、みつからないように帰るから大丈夫だよ!」

梓「わかりました。それじゃあ私は行きますね。」

梓「唯先輩…お気をつけて」

唯「うん、あずにゃんもね!」

22: 2010/06/05(土) 02:00:40.76 ID:MaiLil8O0
08月09日/18時03分58秒  秋山澪

自分の部屋でうたたねをしていた澪は鳴り響くサイレンの音で目を覚ました。

澪「ひっ!」

澪「何…この音…?」

澪「こわい…何かの鳴き声みたい」

澪「つう…頭が…」

澪「え…なにこれ…うちの前の道?」

澪「なんだ…?誰かの視線…走って…まっすぐこっちに来る…」

澪「うそっ、入ってきちゃう!玄関の鍵、閉めてなかった…!」

足音が聞こえる。

澪「やだ…私の部屋に来る!」

足音が近づく。
視界は部屋の扉にたどり着く。

澪「いや…いや…!」

そして勢いよくドアが開かれた。

24: 2010/06/05(土) 02:03:11.47 ID:MaiLil8O0
08月09日/17時13分36秒  田井中律

律「クソっ、なんだってんだよ!」

どうやら、今この町はおかしいらしい。
近所の自販機へ買出しに出たときに、見知らぬ女に襲われた。
あわてて助けを求めた男も、振り返ると紅い涙を流していた。
逃げる途中遠めに男をふたり見つけたが、一人は鋏を、もう一人は金槌を手に握っていた。

律「町中あんなやつらばっかりなのかよ…!」

そうなるとやはり心配になるのは幼馴染の安否だ。
気の弱い彼女はこんな状況に耐えられないだろう。

律「澪…頼む、無事でいてくれ…!」


終了条件:秋山家に到達

25: 2010/06/05(土) 02:05:17.42 ID:MaiLil8O0
律「さっきの連中はなんとかまいたものの」

律「あんなのがウジャウジャいるんじゃあ澪ん家まで骨が折れるぞ…」

律「えっとぉ…」

目を閉じる。

律「お、そこの角にひとりいるな」

律「むこう向いてる隙に、ササッとね」

この他者の視界を盗む能力は随分と役に立つ。
こうして隙を見てやり過ごすことができなければ、今頃は人の心配などできる状況ではなかっただろう。
しかし気になるのはこの能力がいったい何によってもたらされているのかということ。
ひょっとしたら自らも人ではないものに少しずつ近づきつつあるのかもしれない…
そんな不安を振り払うように、律は走った。

26: 2010/06/05(土) 02:06:54.11 ID:MaiLil8O0
律「げぇ、澪ん家の前ウロウロしてるやつがいる…」

律「うーむ」

律「!」

律「これをこうして…2分後に…」

律「私はこっちに隠れて、と」

―――二分後

携帯『トゥララートゥララートラーイアングルー♪』

27: 2010/06/05(土) 02:09:15.32 ID:MaiLil8O0
「ウィ?」

癪に障る声を上げて、音を聞きつけた屍人が放置された携帯電話に引き寄せられる。

律「もったいないけど背に腹は代えられない、か」

楽しそうに携帯電話を拾い上げる屍人の後ろを足音を忍ばせながら通り抜け、澪の家へと駆け込む。
鍵を閉めてから一気に階段を駆け上がり部屋のドアを開けた。

律「澪!無事かっ!?」

澪「律!?今見えてたのはじゃあ…」

律「よ、よかったぁ…」

澪「ど、どうしたんだよ律。無事か、っていったいどういうことだ…?」

澪(今律の視界が見えた…これってまさか愛の力!?)

―――終了条件達成

29: 2010/06/05(土) 02:12:08.81 ID:MaiLil8O0
唯「りんくなびげーたー!」

17時[律 澪宅へ          ]
18時[澪 律と合流         ]
   [唯 学校から脱出       ]
   [梓 唯と遭遇、その後自宅へ  ]
   [唯 梓に救われる その後自宅へ]


今後時間が前後することが増えるので、定期的にリンクナビゲーターを置こうと思います。

初SSですので、他に何か至らぬ点があったらなんなりと言ってくださいね

31: 2010/06/05(土) 02:16:29.52 ID:MaiLil8O0
08月09日/19時09分55秒  琴吹紬

身を案じる友人の家へ向かうため町を歩く紬。
その手には女子高生の外見には不釣合いな鉄の塊が鈍い光を放っていた。
先ほど受けた左腕の傷は不思議なことにすでに癒えている。

紬「…!」

何かの気配を感じてとっさに身を隠す。
視線の先を一人の少女がかけていった。

紬「あれは…」

32: 2010/06/05(土) 02:19:02.27 ID:MaiLil8O0
08月09日/19時12分46秒  平沢唯

唯「ふぅ…やっと帰って来れたあ…」

何度も迂回をしながらの帰り道。
途中危ない場面はあったものの、一度も“奴ら”に見つからずにここまで辿り着けたのは幸運であった。

玄関のドアノブに手を掛ける。しかし、拭い切れない不安がそれを開くことを躊躇させる。

唯「きっと大丈夫だよね…!」

意を決してドアを開ける。

唯「ただいまー!」

努めて明るい声を出した。
リビングの奥、キッチンに立つ妹の姿が見える。

憂『お姉ちゃんおかえり!』

いつものように包丁でまな板を叩きながら振り返り
いつものような優しい笑顔で、いつもと同じことを言う妹
いつもと変わらない平和な光景


―――そう思いたかった。

34: 2010/06/05(土) 02:22:13.17 ID:MaiLil8O0
唯「そんな…ウソだよ…」

憂「イヒッ…ヒッヒッ…アハハハハハッ!」

まな板の上には何か判別できない赤い塊が乗せられている。
それを狂ったように包丁で叩き続ける憂は、紅い涙を流していた。
妹の姿を直視できず、その場にへたり込む。

唯「ウソだよね…憂ぃ…」

その声に気づいた憂がゆっくりとこちらに振り返る。

憂「おねえ…ちゃん…」

包丁を握ったままゆっくりとこちらに近づいてくるが、立ち上がれなかった。
とめどなく涙がこぼれた。
目の前で包丁を振り上げるのを見ながら、この子になら殺されてもいいかな、と思った。

35: 2010/06/05(土) 02:24:44.20 ID:MaiLil8O0
「唯ちゃん!」

二回の爆音とともに憂の体が後ろに倒れる。
驚いて振り向くと、ひとりの少女が銃を構えて立っていた。
もう一度視線を戻す。憂は少しあがくような素振りを見せた後、蹲るような格好で動きを止めた。
唯は思わずその妹の体にすがり付く。

唯「憂!憂ぃ…!」

「唯ちゃん…悲しいけれど、それはもう憂ちゃんではないわ」

「行きましょう。しばらくすると、また動き出すの。」

唯「いやだよ…憂ぃ…」

少女は少しだけ、その姉妹に時間を与えたあと、唯の腕を掴んで無理やり立たせた。

「しっかりして!憂ちゃんは起き上がったらまた唯ちゃんを襲わなきゃならないの。」

「そんなこと、憂ちゃんが望むわけないでしょう!」

唯「ムギちゃん…」

36: 2010/06/05(土) 02:27:37.24 ID:MaiLil8O0
―――

紬「落ち着いた?」

唯「うん…ごめんね、ムギちゃん」

紬「いいの。唯ちゃんのつらさは、よくわかるから。」

紬「さあ行きましょう?どこか安全な場所を見つけて、それからりっちゃんや澪ちゃんを探さなきゃ。」

唯「うん!…ところでムギちゃん」

紬「?」

唯「どうして鉄砲なんて持ってるの?」

紬「ふふふ、ヒ・ミ・ツ」

唯(琴吹グループ恐るべし…)

37: 2010/06/05(土) 02:30:37.38 ID:MaiLil8O0
08月09日/17時31分17秒  琴吹紬

紬「うう、どうしよう…」

紬「家に帰ったはいいものの、まさか皆手遅れだったとは思わなかったわ…」

紬「慌てて自分の部屋に逃げ込んでしまったけれど…ずっとここに居るのは危険だよね」

紬「どうにかして逃げだそう。」

腹をくくった紬は部屋の壁にかかる絵の入った額を取り外す。
その裏の壁には小さなへこみでスペースが作られてあった。
そこに置かれた一丁の拳銃といくつかの弾薬を手に取り、扱い方を思い出してみる。

紬「『備え在れば憂いなし』…当時私は反対したけど、親の言うことは聞いておくものね。」

マガジンをカチャリとはめ込み、安全装置をはずす。

紬「よし…!」

終了条件:琴吹家からの脱出

40: 2010/06/05(土) 02:35:09.59 ID:MaiLil8O0
目を閉じて視界を覗く。

紬「一階はエントランスホールに一人、客間に一人…今いる二階は廊下に一人…」

紬「!」

紬「もうひとりこの部屋に向かってくる!」

とっさにドアから離れ、銃を構えて待ち構える。
しばしの後、だいたい予想していたタイミングでドアが開かれた。

紬「斉藤…」

銃を握る手が震えた。当然だ。
いくら奇矯な父親から特殊な教育を受けていたとしても、自分はただの女子高生だ。
できることなら、撃ちたくなんてない。ましてや相手は見知った顔だ。
一縷の望みをかけて、語りかけた。

紬「少しでも意思が残っているなら、下がってください…!」

だが期待もむなしく、長年琴吹家に仕えた老執事は腰の無線装置で誰かと何事かを通信する“真似事”を見せた後
銃をこちらに向けてつぶやいた。

斉藤「了解…射頃します…」

42: 2010/06/05(土) 02:38:25.82 ID:MaiLil8O0
斉藤の銃から放たれた弾丸が、顔の横を抜けて背後の壁に当たったとき、
頭の中で、何かの糸が切れた気がした。

紬「わああああぁぁぁぁ!」

引き金を引く。
斉藤はよろけるが、まだ倒れない。
もう一度撃ち込んで、ようやく倒れた。
丸く蹲るような、奇妙な体勢をとっている。

「イイイィィイィィ!!!」

銃声を聞きつけたのか、奇声とともに調理着姿の男が部屋の入り口から現れた。

紬「ああああああぁぁぁぁああ!」

もう、ためらいは無かった。

43: 2010/06/05(土) 02:43:35.79 ID:MaiLil8O0
紬「ハァ…ハァ…」

蹲る二体の氏体を見下ろす。

紬「私…こんなこと…できちゃうんだぁ…」

自分の薄情さに、涙が出そうになったが堪えた。
泣いている場合ではない。
自分ができてしまうのなら、できない誰かを代わりに守ってあげなければいい。
それが正しいのかどうかはわからなかったが、こんな異常な状況では少なくとも間違ってはいないだろう。
そうやって自分の薄暗い面に蓋をするようにして、紬は歩き出す。

紬「行こう…」

1階のエントランスホールでもう一人を処理して ―もう何も、考えないことにした― それから玄関から外へ出る。

紬「一番心配なのは…よし、まずは唯ちゃんを探しに行こう。」

前庭を歩き始めたその時、またサイレンの音がどこかから響き始めた。

44: 2010/06/05(土) 02:45:20.48 ID:MaiLil8O0
銃声が鳴り、左腕に激痛が走る。

紬「つぅっ!」

振り返ってみると、さっきまで自分がいた部屋のバルコニーから、
倒れたはずの斉藤が銃を向けているのが見えた。
どうやら弾は左腕をかすったようだ。

紬「そんな…」

うつろな顔でもう一度発砲する斉藤。
今度は少し離れた地面の土が跳ねた。

紬「いやっ」

あれが、あれらがいったい何なのか、直感的に解った。
あれになってしまった人はもうすでに人ではない、別の何かに―――
紬は、全力で駆け出した。


―――終了条件達成

47: 2010/06/05(土) 02:50:56.21 ID:MaiLil8O0
澪「りんくなびげーたー!」


17時[律 澪宅へ          ]
   [紬 琴吹家から脱出      ]new!
18時[澪 律と合流         ]
   [唯 学校から脱出       ]
   [梓 唯と遭遇、その後自宅へ  ]
   [唯 梓に救われる その後自宅へ]
19時[紬 帰宅中の唯を見かける   ]new!
   [唯 帰宅、その後紬と合流   ]new!

実は斉藤さんについて詳しく知らないのは秘密

51: 2010/06/05(土) 02:53:34.50 ID:MaiLil8O0
うわぁ、リンクナビゲーター猛烈にズレてる
何が原因なんだろう?


08月09日/21時04分41秒  秋山澪

澪「またサイレンだ…」

澪「なあ律、あれはいったい何なんだ…?」

律「わかんねーよ…とにかく、事が収まるまでこの部屋からは出ないでおこうぜ。」

澪「そうだな…」

澪(みんな、無事かな…)

不意に玄関を叩く音が響いた。

澪「!!」

律「シッ!静かに!」

「せんぱーい!」

澪「えっ…?」

53: 2010/06/05(土) 02:55:55.67 ID:MaiLil8O0
08月09日/19時58分02秒  平沢唯

紬「唯ちゃん、電気をつけると危ないから、そこにあるライターでこのロウソクに火をつけてくれる?」

唯「うん!」

言われたとおりに火を灯し、ライターはポケットにしまう。

唯「ムギちゃん…みんなは大丈夫かなあ?」

紬「きっと大丈夫…もう少ししたら探しに行きましょう?」

唯「うん、そうだね!なんだか今日はいっぱい走って疲れちゃったよ。」

紬「ふふふ…唯ちゃんはどんな時も変わらないわね。」

とある民家の一室。
平沢家を出た唯と紬は当面の安全を確保するために手頃な一軒家を拝借して体を休ませていた。

紬「ねえ唯ちゃん…」

紬「…?」

紬「くすっ、寝ちゃってる…」

55: 2010/06/05(土) 02:57:14.18 ID:MaiLil8O0
08月09日/20時41分35秒  琴吹紬

サイレンが聞こえる。
その音を聞いているうちに、奇妙な感覚を覚えるようになった。
自分の中の理性ではなく、別の何かがざわざわと呼び起こされるような―――
―――呼ばれている

隣では安らかな顔で唯が寝息を立てていた。

紬「唯ちゃん…ごめんね。」

自分の残り時間がもう少ないことを察した紬は、何事かを親友に書き残して部屋を後にした。

57: 2010/06/05(土) 03:02:43.36 ID:MaiLil8O0
08月09日/20時40分53秒  中野梓

町を一人彷徨う梓

梓「先輩方…どこに…」

梓「そういえば私…どうしてこんな所を歩いてるんだろう…」

梓「確か一度家に帰って…ううん、思い出せない…」

梓「とにかく、ここから一番近い澪先輩の家に行ってみよう。」

不意に雪のようにほのかな光が舞っているのに気が付いた。
思わず顔を上げる。

梓「わぁ、きれい…!」

梓「オーロラみたい…」


終了条件:秋山家へ到達

60: 2010/06/05(土) 03:06:09.03 ID:MaiLil8O0
梓「えっと、確かこっちの道だったよね」

梓「うう、でもここは迂回していかないとまずいな…よしっ」

梓「ふう、このやりかたにも随分馴れたなあ」

梓「暗さにも馴れて、夜目が利くようになったし」

梓「どれ、他に周りに居ないかもう一度確認を…」

目を閉じて意識を自分の後ろに向けたとき、自分の後姿を眺める“誰か”の視界が飛び込んできた。
その荒い息遣いから人ではないことは瞬時に判断できる。

梓「!  しまった!」

慢心からか迂闊にも背後を許してしまったらしい。
咄嗟に目を開けて逃げ出した。

64: 2010/06/05(土) 03:09:03.51 ID:MaiLil8O0
角を一気に二つ曲がり、もう一度目を閉じる。
どうやら追っては来ていない様だ。

梓「よかった…」

安心して辺りを見回すと、前方に見慣れた後姿を見つけた。

梓「あれは…憂!?」

思わず駆け寄って、声を掛ける。
すぐにまずは確認するべきだったと後悔した。先ほどからどうにも頭が回らない。
振り返る憂。

梓「…!」

梓「ウソ…憂まで…」

すぐに身構えるが、予想に反して憂はこちらを見ても動かない。
一度にぃ、と笑い、それから奇声を上げながらどこかへ駆けていった。

梓「…?」

67: 2010/06/05(土) 03:11:20.46 ID:MaiLil8O0
どうやら助かったようだ。
親友の変わり果てた姿。
なぜ助かったのだろう?
鳴り響くサイレン。
憂もだとすると唯先輩は?

多くの疑問が頭の中を回る。
しかし、どれも一向に像を結ぶことは無かった。
―――そしてそのまま、どうでもよく思えていった。

気が付くと澪の住む家の前に立っていた。
何も考えずに玄関のドアを叩く。

梓「せんぱーい」


―――終了条件達成

70: 2010/06/05(土) 03:13:50.79 ID:MaiLil8O0
08月09日/21時06分59秒  田井中律

「せんぱーい」

澪「えっ?」

律「この声…梓!?」

2人で顔を見合わせてから、玄関に走る。

「あけてくださいよ、せんぱーい」

澪「梓、今開けるぞ!」

「せんぱーい」

玄関の鍵を開けようとする澪を、律は制止した。

律「澪…ちょっと待て」

澪「なんでだよ!梓が危ないだろ!」

律「…なんかおかしくないか?」

「せんぱーい」

72: 2010/06/05(土) 03:16:05.92 ID:MaiLil8O0
澪「え?」

「せんぱい、あけてください、せんぱーい」

ビクリとして硬直する澪をどかし、ドア越しに語りかける律。

律「お前、梓か…?」

「せんぱーい」

まさか。まさか。まさか。
澪が隣で泣き始めた。
うそだ、そんなことがあっていいはずがない。
震える体を抑えて、玄関の覗き穴から覗き込んだ律の目が見開かれる。

「せんぱあぁい、あけてくださいよぉぉぉぉ」

律「梓…」

律はその場にへたり込むことしかできなかった。

75: 2010/06/05(土) 03:19:13.98 ID:MaiLil8O0
紬「りんくなびげーたー!」

17時[律 澪宅へ          ]
   [紬 琴吹家から脱出      ]
18時[澪 律と合流         ]
   [唯 学校から脱出       ]
   [梓 唯と遭遇、その後自宅へ  ]
   [唯 梓に救われる その後自宅へ]
19時[紬 帰宅中の唯を見かける   ]
   [唯 帰宅、その後紬と合流   ]
   [唯 民家で体を休める     ]new!
20時[紬 民家を出る        ]new!
21時[梓 秋山家へ         ]new!
   [律 梓と遭遇         ]new!


これでだいたい半分くらいです

77: 2010/06/05(土) 03:20:43.43 ID:MaiLil8O0
08月09日/22時34分12秒  平沢唯

唯「うん…?」

唯「ふわぁ、寝ちゃったぁ…ごめんねムギちゃん。」

唯「ムギちゃん…?」

部屋を見回すが紬の居る気配は無い。
ふと机の上に置かれた一枚の紙が目に入った。

唯「なんだろうこれ…書置き?」

79: 2010/06/05(土) 03:23:04.59 ID:MaiLil8O0
『唯ちゃんへ
 
 黙って出て行ってごめんね。でももう、時間がない気がしたから…

 ねえ、唯ちゃん。私はね、今みんながおかしくなってしまった原因はあのサイレンにある気がするの。

私はさっき一度倒れたはずの人が、あの音を聞いてまた動き出すところを見たわ。

だからあの音を止めることが出来れば、みんな元にもどるんじゃないかしら。

例え戻らなくても、氏んだまま動き回るような悲しいことはきっと…

唯ちゃんは裏山に大きな鉄塔があるのを知ってる?

あの音は、たぶんそのサイレン塔から響いている。

私は今からそこに行くわ。でも、ひょっとしたら私の体が間に合わないかもしれない。

だから唯ちゃん、もし少し経ってもあの音が止まないようなら

お願い、みんなと一緒にこの町から逃げて。

一緒にいてあげられなくてごめんね。                琴吹紬   』

81: 2010/06/05(土) 03:25:13.49 ID:MaiLil8O0
08月10日/01時05分39秒  秋山澪

公民館
鍵を掛けた会議室の隅で一人膝を抱えて座る澪。

澪「…」

澪「グスッ…」

澪「律…」




08月09日/22時34分10秒  平沢唯

秋山家の玄関前に立つ唯。
ドアには一枚の張り紙が貼ってあった。

唯「『公民館で待つ!   律&澪』…」

唯「公民館かぁ…」


終了条件:公民館へ到達

82: 2010/06/05(土) 03:27:25.03 ID:JMy5BWbm0
SIRENか、あのゲーム慣れるまでキツいんだよな

83: 2010/06/05(土) 03:27:43.04 ID:MaiLil8O0
唯「公民館…って、確かこっちであってたよね…」

唯「…」

唯「心細いな…」

定期的に周囲に意識を巡らせて視界を確認する。
ふと、ひとつの視界に違和感を覚えた。
妙に位置が低い。ちょうど四つん這いになっているかのような高さだ。
とても嫌な予感がした。
なるべく関わらないよう迂回しようと考えたとき、その視界の主の声が聞こえた。

「せんぱい…」

唯「!!」

別段珍しい単語ではない。
しかし、その声には ―随分と感じは変わってはいるが― 聞き覚えがあった。

唯「あずにゃん…?」

85: 2010/06/05(土) 03:30:46.18 ID:MaiLil8O0
“それ”はどうやら目の前の角を曲がった先の公園にいるようだ。
もちろんもうかつての彼女ではないだろう。
そんなことは解っている。
しかし、どうしてもそれを認めたくなかった。
いや、むしろ現実を見ることで吹っ切れてしまいたかったのかもしれない。
とにかく、深くは考えないことにして覗き込んだ。

唯「あず…にゃん…?」

梓はすでに、人の形すらもやめてしまっていた。
両手をつき、以前は艶やかだった長い髪を引きずりながら四足で歩いている。
こちらを見つけると、嬉しそうな笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

唯「…!」

今さらながら身の危険を感じ、近くの民家に逃げ込む。

88: 2010/06/05(土) 03:33:00.42 ID:MaiLil8O0
鍵を内側から閉めて身構える。
外からはドアを引っかくガリガリという音が聞こえてきた。

梓「せんぱーい…」

ノブを回すことすら出来なくなった後輩を哀れに思う。
かつての活発で、少し生真面目で、優しい心を持った彼女は見る影も無い。
それでももう、涙は涸れていた。


―――

しばらくじっとしていると、あきらめたのか梓はどこかへ消えていった。

唯「行かなくちゃ…澪ちゃんとりっちゃんが待ってる…」

公民館とはもう目と鼻の先だ。


―――終了条件達成

90: 2010/06/05(土) 03:34:45.82 ID:MaiLil8O0
08月10日/03時31分03秒  平沢唯

澪「そうか…ムギが…」

唯「うん…それにあずにゃんも…」

澪「そっか。2人だけになっちゃったな…」

唯「そうだね…」

澪「それで、どうするんだ?町をでるのか?」

唯「私は、裏山に行くよ。皆をおいて行くなんてできない。」

澪「…そうだな。私も行くよ。」

澪「2人であの音を止めるんだ。」

唯「澪ちゃん…」

唯「うん!行こう!」

唯「でも大丈夫なの?澪ちゃん…怖くない?」

澪「大丈夫だよ。もう、弱音は吐けない。」

唯「…」

91: 2010/06/05(土) 03:37:04.54 ID:MaiLil8O0
08月09日/00時03分43秒  田井中律

澪の部屋で眠っている律と澪。
しかし突然の物音で目を覚ます。

澪「きゃあ!」

律「おわぁ!」

律「な、なんだぁ…?」


終了条件:秋山澪の公民館到達

97: 2010/06/05(土) 03:39:38.00 ID:MaiLil8O0
慌てて視界を確認する。

律「げぇ、1階の窓破って入ってきやがった…」

澪「そんな!どうするんだよ律ぅ!」

律「どうするったって…立ち向かうか?」

澪「バ、バカ!相手が武器持ってたらどうするんだ!」

律「じゃあどうすんだよ!早くしないと上ってくるぞ!」

澪「わ、わかんないよ!」

律(ダメだコイツ…)

律(どうする?奴はまだ二階に居る私たちに気付いてないようだけど…)

98: 2010/06/05(土) 03:41:51.86 ID:MaiLil8O0
律「!」

律「ははーん、今日のりっちゃんは冴えてるぜ!」

律「澪!アイツが入ってきた窓って、この部屋のベランダの真下だよな?」

澪「う、うん、そうだけど…」

律「オッケー、ちょっと蛍光灯とそこのイス借りるぜ」

澪「いいけど、そんなものどうするんだ!?」

律「まあまあ、見てなさいって」

律「まずはコレを…」

そういって蛍光灯をベランダから下に落とし、すかさず視界を確認する。

律「うひひ、キタキタ」

目論見どおり、階下の屍人は割れた蛍光灯の音を聞きつけ外に出てくる。

100: 2010/06/05(土) 03:43:23.82 ID:MaiLil8O0
律「お、出てきやがったな」

律「お次はこれだ…!」

イスを手に取る。

澪「律、お前まさか…!」

流石に気が引けた。
いくら状況が状況だとしても、人に向かって―――
だが、迷っている時間は無かった。

律「おっちゃん、ゴメン!」

ゴツンという嫌な音を立ててイスは屍人に直撃した。

律「ふう…」

104: 2010/06/05(土) 03:45:23.42 ID:MaiLil8O0
律「さて、ここはもう危ないな」

律「今のうちにどこか安全な場所…公民館なんていいかな、そこに避難しよう。」

律「…?澪?」

澪の顔は、恐怖に引きつっていた。
そしてその恐怖の対象が、今の自らの所業であることはその目から判ぜられた。

律(ちょっと刺激が強すぎたかな…)

それでも、生きたかった。守りたかった。

律「ほら行くぞ、澪。」

澪「う、うん…」

律「あ、そうだ、玄関に張り紙しておこうぜ!」

律「ほら、もし唯やムギがここに来てもわかるようにさ。」

律「『公民館で待つ』…っと、これでよし!」

106: 2010/06/05(土) 03:47:25.94 ID:MaiLil8O0

―――

公民館に向かう道を歩く律と澪

律「なあ澪」

澪「どうした?律」

律「必ず、生き残ろうな」

律「ふたり一緒で、だ。」

澪「…うん」

澪「私たちは、ずっと一緒だ」

律「へへっ」

銃声。

108: 2010/06/05(土) 03:50:44.74 ID:MaiLil8O0
律「!」

銃声は背後からだった。
咄嗟に四つ辻の左右別々に分かれて角に隠れる。
澪がこちら側に来ようとすると、もう一度銃声が鳴った。

澪「ひっ!」

律「渡ろうとしたらだめだ!狙われるぞ!」

澪「そんなこと言っても…!」

律「ここはこのまま二手に分かれて別々の道で公民館を目指そう!」

澪「そんな…律ぅ!」

律「大丈夫だ!こっちの道からでも公民館には行ける!」

逡巡する表情を見せる澪。

律「大丈夫だから、な…?」

そういって、にんまり笑ってみせる。
その笑顔に安心したのか、澪は不安そうながらも立ち上がり

澪「絶対だからな!約束だぞ!」

そして向こう側へ駆けていった。

109: 2010/06/05(土) 03:54:35.29 ID:MaiLil8O0
律「約束…か」

律「ごめんな」

その場に座り込む。
ワイシャツの腹のあたりが見る見る赤く染まってゆく。

足音が近づいてくる。

律「もう、動けそうにないや…」

足音の主、狙撃手が角から姿を現した。

律「なんだ…お前かよ…」

律「ムギ…」

琴吹紬は、ゆっくりと銃口をこちらに向ける。

律「澪…生きろよ」


―――終了条件達成

112: 2010/06/05(土) 03:58:08.97 ID:MaiLil8O0
梓「りんくなびげーたー!」

17時[律 澪宅へ          ]
   [紬 琴吹家から脱出      ]
18時[澪 律と合流         ]
   [唯 学校から脱出       ]
   [梓 唯と遭遇、その後自宅へ  ]
   [唯 梓に救われる その後自宅へ]
19時[紬 帰宅中の唯を見かける   ]
   [唯 帰宅、その後紬と合流   ]
   [唯 民家で体を休める     ]
20時[紬 民家を出る        ]
21時[梓 秋山家へ         ]
   [律 梓と遭遇         ]
22時[唯 紬の書置きを発見     ]new!
23時[唯 公民館で澪と合流     ]new!
00時[律 澪を公民館へ送り届ける  ]new!
01時[唯 澪と合流         ]new!
02時
03時[唯 澪と共に裏山サイレン塔へ ]new!

115: 2010/06/05(土) 03:59:47.19 ID:MaiLil8O0
08月10日/04時59分42秒  秋山澪

夏の木々が鬱蒼と茂る山道を懐中電灯の明かりを頼りに登り行く澪と唯。
昼間は近くの小学生がハイキングで訪れる程度の簡単な道であるが
流石に明かりの乏しいこの時間帯に登るのは骨が折れる。

唯「フゥフゥ…疲れたよう…」

澪「山頂までもう少しだから頑張れ」

唯「澪ちゃん、わかるの?」

澪「小さい頃、何度か登ったことがあるんだ。」

澪(律と…)

117: 2010/06/05(土) 04:02:27.52 ID:MaiLil8O0
唯「そっかぁ。よし、じゃあもう少しがんばろー!」

澪「あ、あんまり大きな声だすなよ」

唯「えへへ、ごめんごめん」

澪「まったく…」

―――ミオ

澪「!」

唯「どうしたの澪ちゃん?」

澪「いや…」

澪「…」

118: 2010/06/05(土) 04:04:31.44 ID:MaiLil8O0
澪「悪いんだけど唯、ここからは一人で行ってくれるか?」

唯「え、どうして?一緒じゃなきゃやだよう!」

澪「ほ、ほら、ここからは山頂までもう少しだって言ったろ?」

澪「私はここで誰か追ってきたらすぐに知らせられるよう、見張っておくからさ」

唯「で、でも…」

澪「頼むよ、唯。私もすぐに行くから。」

唯「うう…わかったよ、でも必ず来てね!」

―――
再び登り始めた唯の背中が見えなくなる頃

澪「…お前と同じようなこと言って…ようやくお前の気持ちが理解できたよ」

澪「友達に心配させたくないんだよな」

澪「だから、お前の気持ちを無駄にするようなことはしたくない。…けど」

澪「やっぱり放っておけないよ、律」

律「……ヒヒッ」

終了条件:田井中律を倒す

121: 2010/06/05(土) 04:07:06.09 ID:MaiLil8O0
山頂への道を外れて木々の間を走る。
背後からはかつての幼馴染が迫る音がする。

澪「こっちだ!律!」

以前共に幾度も訪れた場所を記憶を頼りに目指す。

澪「たしか、こっちに…」

突然視界が開ける。

澪「ハァ…ハァ…」

目の前には狭い広場があり、その奥は地面が突然途切れ、谷になっている。
小さな山なのでそれほど深くはない。
とはいえ、下は大きな石が転がる河原だ。落ちれば無事では済まない。
その割には危険防止の小さな杭とロープが張られているだけのため、今までに何人か氏人もでている場所だった。

その谷の縁に立って振り返り、見据える。

澪「律!来い!」

124: 2010/06/05(土) 04:10:46.47 ID:MaiLil8O0
木々の間から律が現れる。

澪「来るんだ…!」

奇声を上げ、律はこちらに駆け出す。

澪「そう、まっすぐ…まっすぐだ…!」

澪との距離が詰まる
両手を突き出し、澪の体を掴まんと突進してくる。
澪はそれをギリギリまで引き付け―――

―――受け止めて、共に背後の谷へと落ちていった

126: 2010/06/05(土) 04:11:59.52 ID:MaiLil8O0
2人で落ちてゆく
時間にしては一瞬の間

澪「律…」

受け止めた体をギュッと抱きしめる

澪「約束、してたからな」

澪「これからもずっと一緒だ」

澪「ありがとう、律」

―――みおー!

懐かしい声が、聞こえた気がした。


―――終了条件達成

129: 2010/06/05(土) 04:13:35.47 ID:MaiLil8O0
08月10日/05時24分21秒  平沢唯

目の前に広がる山頂の広場
見渡すと小さな物置小屋と、聳え立つ鉄塔が見える。

唯「あれが…ムギちゃんが言っていた…」

唯「!」

鉄塔の前に人影を見つけ、急いで身を隠す。
いや、それは人影と呼ぶにはあまりにいびつな形をしていた。

首が常人の数倍長く、ブヨブヨと奇妙に肥大した脂肪のようなものがそれを覆っている。
腕も不自然に細く伸びていた。

唯「ひっ…」

唯「さわちゃん…」

終了条件:サイレンの停止

132: 2010/06/05(土) 04:15:12.47 ID:MaiLil8O0
唯「うう、さわちゃんがいたら鉄塔に登れないよぅ…」

唯「あそこの小屋に何か役に立つものあるかな…?」

さわ子の目を盗み、こっそりと物置小屋に入る。

唯「わ、いろいろあるけど…どれも役に立たなさそう」

唯「あれ?これって…ガソリンだよね…」

唯「こっちにあるのは殺虫スプレー」

唯「…」

唯「…よし」

134: 2010/06/05(土) 04:16:46.92 ID:MaiLil8O0
物置小屋の入り口に立ち、声を張り上げる。

唯「おーい!さわちゃん、こっちだよー!」

さわこ「イィー!!」

かつての彼女からは想像もつかないような声を上げてこちらに走るさわ子。
唯はポリタンクを構えながらドアのわきに潜む。

唯「えい!」

声に誘われたさわ子が小屋の中に入った途端、真横からガソリンを浴びせた。
そして素早くさわ子の脇を抜けて小屋の外に出る。
さわ子はその場のドラム缶をやすやすと持ち上げ、振り向いてこちらに投げつけてきた。

唯「うわっとぉ」

間一髪それをかわし、殺虫スプレーを構える。

135: 2010/06/05(土) 04:18:08.65 ID:MaiLil8O0
近づいてくるさわ子。
スプレーの出力を最大にし、噴射口をさわ子に向けたままポケットからライターを取り出し構える。
さわ子の手が届くかどうかすんでのところで、噴射と着火を同時に行った。

火の手はガソリンに引火し、見る見るうちにさわ子の全身を包む。

さわ子「ギィィィィィィ!!!」

聞くに堪えない悲鳴を上げ、暴れまわるさわ子。
しかしやがて地面に倒れ、そのまま動かなくなった。

唯「さわちゃん先生…」

あたりにはなんとも言えない嫌な臭いが立ち込めていた。

137: 2010/06/05(土) 04:19:31.52 ID:MaiLil8O0
唯「よし、あとは…」

鉄塔を見上げると、天辺付近にスピーカのようなものが見える。

唯「あれを壊すだけだよね」

近くにあった角材を拾い、鉄塔備え付けの梯子を上る。

―――
スピーカの周りは踊り場のように足場が巡らされていた。
ようやくそこまで上りきり、スピーカの横に立つ。
そして、手にした角材を思い切り振り下ろした。
ガツンという音が鳴る。手ごたえはあったがまだ壊れない。

唯「お願い…」

もう一度振り下ろす。

唯「壊れて…!」

唯「壊れてよ!」

何度目かの衝撃を与えたとき
相当老朽化していたのだろう、ついにそれは根元からポキリと折れて
眼下へと落ちていった。

唯「やった…!」

139: 2010/06/05(土) 04:20:55.43 ID:MaiLil8O0
空が明るくなり始める。
どうやら夜が明け始めたようだ。

―――ようやく光の戻った町を見渡して、唯は愕然とした。

唯「え…?」

自分たちが住む町。
その町は、真っ赤に染まった海が四方を取り巻いていた。

唯「なに…コレ…」

見渡す限りの紅い海原。
その向こうから
忌まわしい、あの音が響き始めた。

唯「そんな…こんなの…」

唯「こんなの、どうしようもないよ!」

絶叫したその時、左足をガシリと掴まれた。
驚いて見ると、そこには、紅い涙を流した満面の笑みの―――


―――終了条件未遂

144: 2010/06/05(土) 04:22:51.43 ID:MaiLil8O0

――
―――

「ねえ、やっぱり肝試しなんてやめて返ろうよぉ」

「何言ってんのよ、ここまで来て」

「だってヘンだよこの町。どうして家はあるのにだれも住んでないの?」

「え、あんたニュース見なかったの?この町も前はちゃんと人が住んでたんだけどね、

 それが2年前のある日、一夜にして忽然と消えちゃったんだって。」

「え?住人全員?」

「うん。当時は『謎の集団失踪!』なんて随分騒がれたのよ。」

「そっか。だからこんなに人探しのポスターが貼ってあるんだね。」

「そうだね。ほら、このポスターなんて見てよ。…私たちと同じくらいの年の女の子。」

「ほんとだ…そう考えるとなんだか、怖い、というより…」

「うん、ちょっと悲しいよね。」

「帰ろっか。」

「うん。」

146: 2010/06/05(土) 04:24:58.61 ID:MaiLil8O0
『 探し人
  
この姉妹を探しています。
 
平成22年の××町集団失踪事件以降行方がわからなくなりました。
 
もし見かけた方がいましたらご一報下さるよう、よろしくお願いします。


○ 平沢唯(当時17歳)

○ 平沢憂(当時16歳)

  
連絡先 □□□-△△△-××××
                                      』



―――― 糸冬


149: 2010/06/05(土) 04:26:31.96 ID:MaiLil8O0
唯「という夢を見たのさ」

律「どんな精神状態してんだよオマエ…」

梓「でも確かに徹夜でゲームするとそのゲームの夢みちゃったりしますよね」

律「それにしてもぶっ飛びすぎだろ!いくらムギでも部屋に銃なんか隠してないよな?」

紬「ギクッ」

紬「あ、あれ~?そういえば澪ちゃんは~?」アセアセ

梓「ああ、澪先輩ならさっきからずっとそこで…」

澪「あーあー聞こえない聞こえない聞こえない」

律「…」

律「ま、まあそういうわけで…」

唯律紬梓「サイレン新作よろしく!」


おしまい!


150: 2010/06/05(土) 04:26:52.83 ID:CedXxCXCO

サイレン知らないけど面白かったよ

151: 2010/06/05(土) 04:27:24.24 ID:EH/W+86G0
え、新作でるの?

152: 2010/06/05(土) 04:28:14.70 ID:VGdqLJjO0
追いついたと思ったら終わった!
終了条件完遂版も見たいなあ

つーか新作!?mjd

153: 2010/06/05(土) 04:29:14.88 ID:MaiLil8O0
これで本当に終わりです
こんな時間にも関わらず支援してくれた方々、本当にありがとうございました
夢落ちは個人的にバッドエンドに抵抗がったのでそうしました(SIRENは大好きですが)

最後に投下中に思いついたネタをひとつ書いて寝ます

>>150>>152
いや、「早く作ってね!」って意味です。申し訳ない

157: 2010/06/05(土) 04:31:12.71 ID:MaiLil8O0
憂「おねえ…ちゃん…フ、フフッ!」

包丁を握ったままゆっくりとこちらに近づいてくるが、立ち上がれなかった。
とめどなく涙がこぼれた。
目の前で包丁を振り上げるのを見ながら、この子になら殺されてもいいかな、と思った。

「破ああぁぁぁぁあああぁ!!!」

爆音とともに憂の体が青い炎に包まれる。
驚いて振り向くと、ひとりの少年が立っていた。羽生蛇育ちのSDKさんだ。

憂「おねえちゃん!」

唯「憂!正気に戻ったんだね!」

SDK「約束したんだ。美耶子と…」

そういって立ち去るSDKさんを見て、羽生蛇育ちってスゴイ、改めてそう思った。

187: 2010/06/05(土) 08:28:04.20 ID:SWjPrOZ90
おつ

引用元: 唯「サイレンの音…?」