1: 2017/03/26(日) 20:34:39.09 ID:q8pPJrGg.net
恋ってどんなものなんだろう?
私が幼い頃疑問に思ってたこと
……あの頃はいくら考えても答えが出てこなかったっけ
そんな私が恋の意味を知ったのはあの子に出会ったからだったんだ

2: 2017/03/26(日) 20:35:34.04 ID:q8pPJrGg.net
初めて出会った時、綺麗な目だなって思ったの
私が今まで見た中で一番輝いていた目
でもそんな印象は次にあった時には吹っ飛んじゃった
……だってよく知らない人に一緒にアイドルになろうなんて普通は言わないと思うの
だから最初のうちは面倒な人って思ってた

3: 2017/03/26(日) 20:36:25.22 ID:q8pPJrGg.net
でもね、心のどこかでは彼女のことが羨ましかった
何度断られても、その目の輝きを無くすことなく私に向かってくる姿が
……私なら失敗したら諦めていただろうから
そして、心のどこかで期待してたと思うんだ
彼女なら私を変えてくれるかもしれないって

5: 2017/03/26(日) 20:36:55.61 ID:q8pPJrGg.net
あの日、手を差し出してくれたこと
あの時、背中を押してくれたこと
彼女のことだからたいしたことないって思ってるのかもしれないけど……
でもね、私にとってはとても大切なこと

6: 2017/03/26(日) 20:37:21.90 ID:q8pPJrGg.net
強そうに見えて、誰よりも繊細だった彼女
でも、誰よりも純粋でまっすぐな彼女
そんな彼女だから輝いて見えたんだろうな
……いつからだったんだろう
彼女の輝きを隣で見ていたいって思ったのは
……恥ずかしいからあの子には言わないけど

7: 2017/03/26(日) 20:38:21.41 ID:q8pPJrGg.net
でもね、今までこんなことはなかったんだ
誰かがこんなに私の中をいっぱいにしてくれるなんて
……最近よく考えるの
この気持ちが恋なんじゃないかって

8: 2017/03/26(日) 20:38:47.92 ID:q8pPJrGg.net
……変だよね
同性に恋しちゃうなんて
あの子はきっと、そんなことを考えたこともないだろうし
……もし伝えたら迷惑かけちゃうだろうなぁ
どう転んでも今の関係は崩れちゃうんだろうし
だからね、私はこの気持ちに蓋をすることにしたの
大丈夫、私が隠していれば誰も傷つく人なんていないんだから

9: 2017/03/26(日) 20:39:20.35 ID:q8pPJrGg.net
梨子「果南さん、急にどうしたんですか?」

果南「いやぁ…… 梨子のことが最近気になっててね」

梨子「果南さん!?」

果南「いやいや、そういう意味じゃなくって」

梨子「……じゃあどういうことなんですか?」

果南「私は遠回しに言うこととか苦手だから単刀直入に言うね」

果南「最近千歌と何かあった?」

果南「いや、違うな…… 千歌から何かされた?」

10: 2017/03/26(日) 20:39:56.04 ID:q8pPJrGg.net
梨子「……どうしてそんなことを言うんですか?」

果南「最近梨子が千歌とほんの少しだけ距離をとってるように見えてね」

果南「側から見たら気にしない程度なんだけど気になっちゃって」

果南「たまたまだったらゴメンね」

梨子「そ、そうですよ! 偶然ですって」

11: 2017/03/26(日) 20:40:25.70 ID:q8pPJrGg.net
果南「……いや、梨子嘘ついてるでしょ?」

果南「現に言い淀んでるし」

梨子「……少しだけ距離を置いてるかもしれません」

果南「どうして? 頼りないかもしれないけど話ぐらいなら聞くよ?」

梨子「でも、話したら引かれちゃうかもしれませんし……」

果南「大丈夫 どんなことでも私が受け止めてあげるから」

梨子「……果南さん」

12: 2017/03/26(日) 20:41:42.66 ID:q8pPJrGg.net
いつの間にか私は果南さんに全部話しちゃってたんだ
果南さんならきっとわかってくれると信じて
今思えば多分私は誰かに相談したかったんだろうな
強がっていても一人で抱えるには辛い気持ちだったから……

13: 2017/03/26(日) 20:42:11.89 ID:q8pPJrGg.net
果南「……そっか 梨子も千歌のことが好きなんだね」

梨子「私も……?」

果南「うん 私も千歌のことが好きだよ」

梨子「っ!?」

果南「……とは言っても家族的な意味でだけどね」

果南「ずっと昔から一緒にいたからねぇ 千歌は妹同然なんだよ」

梨子「……本当ですか?」

果南「ゴメンゴメン ちょっとからかいたくなっただけだからさ」

果南「恋愛的な感情はないから安心しなよ」

梨子「もうっ、本気にしちゃったじゃないですか!」

果南「だからゴメンって」

14: 2017/03/26(日) 20:42:48.12 ID:q8pPJrGg.net
果南「それで梨子はどうしたいの?」

果南「本当に気持ちを伝えなくていいの?」

梨子「……はい そうすれば誰も傷つきませんし」

果南「それは違うんじゃないかな?」

梨子「えっ?」

果南「梨子は傷ついてるんじゃないの?」

梨子「そ、それは……」

15: 2017/03/26(日) 20:43:33.01 ID:q8pPJrGg.net
果南「梨子はいい子だからね こういう時でも我慢できるのは偉いと思うけど……」

果南「でも、もっと自分に正直になってもいいんだよ?」

果南「それこそ千歌を見習ってさ」

梨子「……でもそれで取り返しのつかないことになったら」

梨子「きっとみんなに迷惑かけちゃう……」

果南「あーもうっ! ウジウジするの禁止ね」

果南「たとえ千歌と梨子に何かあったとしたってみんながなんとかするよ!」

果南「もちろん私もね」

果南「それに一人で抱え込まれるよりは迷惑をかけられた方が私たちは嬉しいんだよ?」

果南「きっとこのままだったら梨子は壊れちゃってたような気がするしね」

16: 2017/03/26(日) 20:44:29.34 ID:q8pPJrGg.net
梨子「果南さん……」

果南「それに千歌のことだけどね……きっと大丈夫だよ! 家族同然の私が言うんだし」

梨子「……そうですね」クスッ

梨子「なんだか果南さんに話して楽になったような気がします」

梨子「果南さん、ありがとうございました」

果南「お礼なんていいよ ちゃんと後で報告に来てくれさえすればね」

梨子「はいっ!」

17: 2017/03/26(日) 20:45:22.02 ID:q8pPJrGg.net
変わることのできなかった私
そんな私に手を差し出してくれた彼女
きっと彼女に出会わなかったらずっと立ち止まったままだったんだろうな
……うん、やっぱりこの気持ちを隠すことはできないみたい
私は今の気持ちを彼女に伝えたい
それに、ほんの少し足りなかった勇気ももらったんだ
今度は私から踏み出してみよう
この先も彼女の隣で並んでいられるように

18: 2017/03/26(日) 20:46:09.94 ID:q8pPJrGg.net
千歌「梨子ちゃん、話ってなに?」

千歌「はっ!? もしかして歌詞がまだ書けてないことに怒ってる?」

千歌「……もしかして、最近少しよそよそしくなってたのもそれのせい?」

梨子「違うの! 」

梨子「あのね、今から言うことはとっても大事なことなの」

梨子「……一度しか言わないからちゃんと聞いててね」

千歌「……うんっ!」

梨子「あのね、千歌ちゃん!」

19: 2017/03/26(日) 20:46:58.08 ID:q8pPJrGg.net
梨子「私、桜内梨子はあなたのことが……」

20: 2017/03/26(日) 20:47:51.29 ID:q8pPJrGg.net
おしまい

引用元: 梨子「未開封の勇気で」