1: 2014/01/09(木) 20:09:48.87 ID:PIb6e4jP0

「くそっ、此処までか……」


俺は勇者。

自分から名乗った覚えは無いけど、旅を続ける内、勇者と呼ばれるようになった。

本名はありふれたものだし、それ程目立つ方じゃない。

初めて行った町で、俺を知っている人がいた時は驚いた。こっちは知らないのに、向こうは俺を知っているのだ。

俺には、それがとても怖ろしい事のように感じた。

世界を平和にしたい、人々を助けたい。

そんな単純な理由で旅に出た。

別に有名になりたかったわけでも無いのに、時には妬まれたりもした。

でも、俺は旅を続けた。



2: 2014/01/09(木) 20:12:09.33 ID:PIb6e4jP0

少しでも魔物を減らし、世界中に笑顔を取り戻したい……その一心で。


「それなのに、何でこんな……」


俺を追いつめているのは、魔物じゃない。

魔物など比べ物にならない程、怖ろしい生物だ。

奴等は執拗に俺を狙い、気付けば其処にいる。

幾ら周囲に気を張ろうと、奴等は人混みに紛れ、此方を見ているのだ。

たがら、最近はずっと野宿していたのだが、無駄だった。

纏わりつく視線から逃れる為、変装もした。なのに、なのに、なのに!!

奴等は、必ず俺を見つけ出し、追ってくる。

奴等には剣も魔法も役に立たない。為す術は、無い。

4: 2014/01/09(木) 20:15:43.92 ID:PIb6e4jP0

「何故だ!! 何故、俺を付け狙う!?」


以前も同じ質問をしたが、返ってくる言葉は決まってる。

見てくれが違っても、奴等は必ず、それを口にするんだ。


「勇者様に、私の想いを伝えたくて……あのっ!!」

「ひっ!! いきなり大きい声出すな!! バカ!! アホ!!」


こえぇ、超こえぇ、マジでこえぇ。

何がこえぇって、まず目がこえぇんだよ。

何か、光がねえっつーか……上手く言えねーけど、とにかく、こえぇんだよ!!

これってストーカーって奴だろ? こんなのが沢山沢山居るんだぜ? 沢山沢山沢山居るんだぜ?

5: 2014/01/09(木) 20:18:25.84 ID:PIb6e4jP0

だから怖くてさ、その時滞在してた街の兵士に話したんだよ……


お願いします、助けてくださいって。

土下座して、地面に額擦り付けて、涙と鼻水を流しながら、そりゃ必氏にお願いしたさ。

そしたらさぁ、


『いやぁ、羨ましい限りですな。流石は勇者!! はっはっは!!』


だってさ……


『はっはっは!!』


だってさ!!

ふざけんな!! 耳腐ってんの!? その勇者様が鼻汁垂らしてお願いしてんだよ!?

あなたは兵士でしょ!! 助けてよ!! って言ったらさ……


『あの、お連れ様が待っていますよ?』




連れなんていねーよ……



9: 2014/01/09(木) 20:55:26.69 ID:PIb6e4jP0

でも、コイツはあの時の奴じゃない。

確かコイツは……コイツは……

えーっと、ああっ!! そうだそうだ!!

親父さんが病気で、それを治す薬草は魔物が多数生息する山中にあると言う。

母親は早くに亡くなったらしく、二人暮らし。かなり切迫した状況のようだった。

その話しを聞いた俺は、その山へ行き、薬草を取ってきた。

親父さんは無事快方に向かい、コイツも笑顔を取り戻したんだ。

10: 2014/01/09(木) 20:57:15.04 ID:PIb6e4jP0

それでいいじゃん。

それでいいじゃん?

それでいいじゃん!!

そ・れ・で・い・い・だ・ろ!?

それで、いいじゃねーか……


「あの、勇者様……聞いてますか?」

「ひっ!! ち、ちょっと待って!! 実は色々準備中」


「何で? 私、頑張って勇者様を追い掛けて来たのに……」


11: 2014/01/09(木) 20:58:20.64 ID:PIb6e4jP0


来る!! 奴等が最も得意とする……


「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で………」



「はぁはぁ……ねえ? な・ん・で?」


ほら出た。

これさぁ、滅茶苦茶こえぇよ? 一回やられてみ?

ちびるよ? または縮むよ? 股は縮むよ? 


ごめん、調子乗った。


13: 2014/01/09(木) 21:01:38.65 ID:PIb6e4jP0

「大変だったね、そうだよねー、頑張ったよねー。息、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。やっぱり、勇者様は優しいですね」


よく、息続くね。海女さんにでもなったら?

つーかさぁ……

ねえ、何でこうなったの? ねえ、君に何があったの?

明るい笑顔は、何処に行ったの?

その吸い込まれそうな仄暗い瞳の底には何がいるの? 貞子?


「……そこにいるのは誰? 邪魔する気?」

「黙れ、悪辣なストーカーめ!! 僕の勇者様に、手を出すな!!」



誰の物でもなーい、誰の物にもならなーい、君の物では決してなーい。


14: 2014/01/09(木) 21:37:01.79 ID:PIb6e4jP0

海女(仮)と僕(剣士)は、互いに武器を取った。

海女は鉈を、剣士は剣を手に睨み合っている。

彼女達が発する気で、森はざわめき、木々は震えに震えた。


「ストーカー? ストーカーは、貴方でしょ? 勇者様も怖がってるもん。なら、排除しないと……」

「やれやれ、君には、言葉が通じないようだね」


そして、遂にぶつかり合う。

足場が悪いにも拘わらず、二人はバランスを崩す事は無い、鋭く振るわれる鉈と剣が火花を散らす。

海女(仮)が振るう鉈の威力は凄まじいが、剣士はそれを直接受けず、華麗に流す。

15: 2014/01/09(木) 21:39:09.39 ID:PIb6e4jP0

力と技のぶつかり合い。

両者の力量は拮抗している。

何故、剣士相手に素人である海女が着いて行けるのか?

理由は単純。

海女は、愛しの勇者を追う道中、数多の魔物を葬ってきたのだ。

それも、鉈一つで、だ。

勇者に対する変わらぬ想い、揺るがぬ愛が、彼女を勇敢な戦士に変えた。


「貴方は、勇者様に相応しく無い」

「ふん。僕を、なめるな!!」

「きゃっ!!」


受けに徹していた剣士だが、此処へ来て攻めに転じた。

今までのやり取りで太刀筋を見極めた剣士は、海女に斬り掛かる。

彼女は負けられない。


彼女もまた、勇者を愛しているのだから……


16: 2014/01/09(木) 21:56:12.06 ID:PIb6e4jP0

「めろ……めてくれ」


俺は、こんな事を望んじゃいない。

みんなが笑顔で暮らせるように、その為に頑張って来た。

それなのに何で、そんな顔で斬り合う? 海女(仮)だって、あの時は笑顔だったのに……

何が、彼女達を変えたんだ?

つーか、剣士の方、全く知らないんだけど……


「くそっ、なにが、なにが勇者だ!!」


勇者ってのは、俺がやってきた事の結果なんだろう。

俺の頑張りが評価されて、親しみや願いを込めて、皆は、俺を勇者と呼ぶのだろう。

泣いてる人は見たくない。笑顔でいて欲しいんだ。

そう!! 俺には、やるべき事があるんだ!!




「逃げよう」



17: 2014/01/09(木) 22:13:14.36 ID:PIb6e4jP0

「ふーっ、今日は疲れたな……」


俺は逃げた。

現在は、宿屋のベッドでくつろいでる。

だって、だって、あいつ等怖いんだもん。

だから逃げた、エストマして、トラエストして、ヴァニシュして、何度も何度もルーラした。


「風呂に行くか」


流石に追っては来れないだろう。此処は、辺境の村だ。

少なくとも、今日中に追い付かれる事は無い。

しかし、いずれ奴等は現れる。

何故この村を選んだかと言うと、誰も救ってないし、女性に好かれる要素がないから。

それに割合、お年寄り方が多いし、若者は少ない。

女性より男性の方が多いくらいだ。なら、安心出来る。

久々に、ゆっくり眠れそうだ。

19: 2014/01/09(木) 22:19:44.63 ID:PIb6e4jP0
>>3 分かってても言わないで。予想当てられた人の気持ち考えて。

結構、キツいんだよ……

今日はこの辺で!!

22: 2014/01/09(木) 22:44:45.26 ID:PIb6e4jP0

「くそっ、此処までか……」


俺は勇者。

自分から名乗った覚えは無いけど、旅を続ける内、勇者と呼ばれるようになった。

本名はありふれたものだし、容姿だって、それ程目立つ方じゃない。

初めて行った町で、俺を知っている人がいた時は驚いた。こっちは知らな いのに、向こうは俺を知っているのだ。

俺には、それがとても怖ろしい事のように感じた。

世界を平和にしたい、人々を助けたい。

そんな単純な理由で旅に出た。

別に有名になりたかったわけでも無いのに、時には妬まれたりもした。

でも、俺は旅を続けた。

23: 2014/01/09(木) 22:45:30.11 ID:PIb6e4jP0

少しでも魔物を減らし、世界中に笑顔を取り戻したい……その一心で。


「それなのに、何でこんな……」


俺を追いつめているのは、魔物じゃない。

魔物など比べ物にならない程、怖ろしい生物だ。

コイツ等は執拗に俺を狙い、気付けば其処にいたんだ。

剣も魔法も役に立たない。為す術は、無い。

24: 2014/01/09(木) 22:47:01.27 ID:PIb6e4jP0

「何故だ!! 何故、俺を付け狙う!?」


何度も同じ質問をしたけど、返ってくる言葉は決まってる。

見てくれが違っても、奴等は必ず、それを口にするんだ。


「勇者様に、オレの[ピーーー]を伝えたくて……あのっ!!」

「ひっ!! いきなり大きい声出すな!! バカ!! ホ〇!!」


こえぇ、超こえぇ、マジでこえぇ。

何がこえぇって、まず目がこえぇんだよ。

何か、ギラギラっつーか……上手く言えねーけど、とにかく、こえぇんだ よ!!

これってホ〇っやつだろ?  こんなのが沢山沢山居るんだぜ?


目の前に、沢山沢山沢山居るんだぜ?


25: 2014/01/09(木) 22:48:42.48 ID:PIb6e4jP0

だから怖くてさ、風呂から脱出してすぐに、村の兵士に話したんだよ……

お願いします、助けてくださいって。

土下座して、地面に額擦り付けて、涙と鼻水を流しながら、そりゃ必氏に お願いしたさ。

そしたらさぁ


『いやぁ、羨ましい限りですな。流石は勇者!! はっはっは!!』


だってさ……


『はっはっは!!』


だってさ!!

ふざけんな!!  耳腐ってんの!? その勇者様が鼻汁垂らしてお願いしてんだよ!?

あなたは兵士でしょ!! 助けてよ!! って言ったらさ……

ん? ちょっと待て、羨ましい? 羨ましいって何だ?


『あの、私のモノは……どうです?』



お前もなのかよ……



26: 2014/01/09(木) 23:00:31.05 ID:PIb6e4jP0


勇者は戦う。



「うおぉぉぉぉぉ!!!」



生きる為、人々の笑顔を取り戻しす為、戦い続ける。



「よし、ホ〇とストーカーは、居ないな……」



後、安住の地を求めて世界をさまよう。


しかしその道中、思わぬ人物が勇者を待ち受けていた……





続く



27: 2014/01/09(木) 23:04:42.67 ID:PIb6e4jP0
勢いありきだし、この辺で終わった方が良さそうなんで依頼出す。

28: 2014/01/10(金) 00:14:13.00 ID:g9/zUw8oo
>>27
ざんねんだな
もっと見たかった

引用元: 勇者「俺は、勇者じゃない……」