1: 2014/02/15(土) 22:34:37.11 ID:ARbA0vQZO
僧侶「そうですか?」

勇者「だってさ、最初の町に居た人が、ある程度の距離や方向から砦の数まで知っていたんだぜ」

僧侶「たまたまじゃないですか?」

勇者「魔王城から一番遠い町なのにか?しかも、兵士じゃなくてただの村人」

僧侶「その人は町に来るまで旅人だったとか」

勇者「魔王が現れてから半年もたってないのに?もしかしたらそんな可能性があるかも知れないけど、他の人はどうよ」

僧侶「他の人とは?」

勇者「例えば3つくらい前の町の人」

5: 2014/02/15(土) 22:38:02.61 ID:ARbA0vQZO
僧侶「あのボスの特徴とか弱点とか教えてくれた人ですね。助言が無ければ危うく負ける所でした」

勇者「有難い助言だったけど、なんであの人はそんな事知っていたんだ?」

僧侶「なんでって言われましても、誰かが先に行って伝言を残したのかもしれません」

勇者「でも、あの洞窟、宝箱全く開いてなかったし、ボスも久しぶりの人間だとか言ってたぞ」

僧侶「魔物は記憶力が著しく悪いとすれば、おかしくはありませんよ」

勇者「可能性が無くはないな」

僧侶「そういうことなんじゃないですか。真実が拍子抜けするほど単純なことは、多々ありますし」

6: 2014/02/15(土) 22:41:32.97 ID:ARbA0vQZO
勇者「そうかもしれないな。でも、もうひとつ凄く気になることがあるんだ」

僧侶「何ですか?」

勇者「色んな町で様々な情報をくれた人がいっぱい居たよな。僧侶、お前はその人達の顔、覚えている?」

僧侶「そんなことあたり・・・あれ?」

勇者「俺はさ、どんな人がどんな情報をくれたかは覚えているさ。でも、誰一人として顔だけは思い出せないんだよ」

僧侶「言われてみると、顔だけがすっぽり抜けたかのように思い出せません」

勇者「しかも、そんなことが二三回続けば、すぐに不審に思うはずじゃん。けど、ここまで一回も違和感すら感じなかったんだ」

僧侶「確かにそうですね」

7: 2014/02/15(土) 22:45:49.82 ID:ARbA0vQZO
勇者「これって、何か仕組まれているのか?」

僧侶「あり得なくはないでしょう。しかし、それでしたら、嘘の情報を流しますよね」

勇者「そうなんだよな。情報を変えて頃すなら、もっと早くしてもいいはずなのに」

僧侶「どうします?一回確認のため、戻りますか?」

勇者「そうしたいのは山々だけど、俺は勇者だから。こうしている間にも人は殺されている。それなのに、戻っている暇なんか無いよ」

僧侶「罠かもしれませんよ?」

勇者「罠であっても、退くわけには行かないさ。それに、敵の罠を打ち破ってこその勇者だろ?」

僧侶「そうですね。私も最後までお供しましょう」

9: 2014/02/15(土) 22:50:04.96 ID:ARbA0vQZO
勇者「いいのか?相手は魔王なんだ。氏ぬかもしれないんだぞ」

僧侶「今までだって、氏にそうになることは何回もありましたから」

勇者「けれど今回は!」

僧侶「大丈夫ですよ。危なくなったら勇者様が助けてくれますから」

勇者「守れる自信なんてないぞ」

僧侶「勇者様は世界を救うんですよね。なら、目の前にいる私一人救えなくてどうするんですか!」

勇者「そうか・・。そうだよな。よし!俺はお前を絶対守る!」

僧侶「その意気です」

勇者「いくぞ!」

僧侶「はい!」

10: 2014/02/15(土) 22:54:16.05 ID:ARbA0vQZO
―魔王の間―

勇者「氏ね!魔王!」ズシャ

魔王「グアアア!」

僧侶「やりましたか!」

魔王「クククク、これくらいで良い気になるなよ勇者!我は滅びぬ!数百年間、休んだ後必ず復活する。しばし眠るだけだ。さらば勇者よ!」

僧侶「消えましたね」

勇者「ああ。それより魔物は!?」

僧侶「先程まで外に見えたのに、今はいません!」

勇者「魔王と一緒に消えたのか?」

僧侶「みたいですね」

14: 2014/02/15(土) 22:58:05.94 ID:ARbA0vQZO
勇者「じゃあ!」

僧侶「はい!世界は救われました!」

勇者「ついにか・・・。僧侶、いままでありがとう」

僧侶「いえ、勇者様が居てくれたからです。約束通り守ってくれましたし」

勇者「当たり前だろ。ここまで二人で来たんだ。終わりも二人じゃなきゃな」

僧侶「これで旅も終わりですね」

勇者「ああ。でも、魔王はまた蘇るのか」

僧侶「そうですね。しかし、数百年の平和は約束されました。今はそれを喜びましょう」

勇者「魔物ももう居ないしな。俺達の国に帰ろうか」

僧侶「はい」

16: 2014/02/15(土) 23:02:16.31 ID:ARbA0vQZO
―王の間―

王様「勇者よ!よくぞ魔王を倒してくれた!これで世界も平和になるじゃろう」

勇者「私だけの手柄ではありません。これは旅の途中で出会った人々の支えがあったからです」

王様「おお、なんと謙虚なのじゃ。勇者よ、お主が望む物はなんでも用意してやろう。さあ、何を望むんじゃ」

勇者「望む物ですか。私が望むのはこの」スッ

僧侶「え?」

勇者「この僧侶との平和な暮らし、ただそれだけです」

僧侶「勇者様?」

18: 2014/02/15(土) 23:05:23.39 ID:ARbA0vQZO
勇者「少し遅くなったな。僧侶、結婚してくれ」

僧侶「・・・私で良いんですか?」

勇者「お前じゃなきゃ嫌なんだ」

僧侶「で、でも・・・」

勇者「俺と結婚するのは嫌か?」

僧侶「そんなわけありません!」

勇者「なら!」

僧侶「・・・不束者ですが、よろしくお願いします」

勇者「こちらこそよろしく」

21: 2014/02/15(土) 23:08:21.68 ID:ARbA0vQZO
王様「これはこれは、めでたいのう」

勇者「王様!申し訳ありません」

僧侶「あ、あの・・・」

王様「良い良い。そうじゃ、お主達の式を国を挙げて行おう。魔王退治とその英雄の結婚。祭となりそうじゃな」

僧侶「良いんですか!」

勇者「ありがとうございます」

王様「これくらいどうてことあるまい。他には何かないかのう」

勇者「充分です」

王様「僧侶、そちもか?」

僧侶「はい」

22: 2014/02/15(土) 23:13:05.11 ID:ARbA0vQZO
王様「住むところはどうする。決めてないのなら斡旋しようではないか」

勇者「いえ、二人で平和になった世界を回り、それから決めようと思います。気になることもあることですし」

王様「ほう。気になることとな」

勇者「旅の道中で何回かおかしなことがありまして、それについて少し調べようかと思いまして」

王様「どんな事だ」

勇者「様々な町で情報をくれた方々が、あまりにも知りすぎていたということです」

王様「そういうこともあるんじゃないか」

勇者「あれは明らかに異常です。まるで、誰かが先にやったかのようでした」

24: 2014/02/15(土) 23:16:38.76 ID:ARbA0vQZO
王様「はぁ。勇者よ。このままなにも知らずに僧侶と幸せに暮らすのが良いか、それとも・・・」

勇者「それとも?」

王様「全てを知り、氏に行くののどちらが良い?もし前者を選ぶのなら、特別にその疑問やこの記憶を消してやろう」

勇者「何か知っているのですか!?」

王様「二人で選べ。後悔の無いようにな」

勇者「僧侶、どちらが良い?」

僧侶「勇者様、わかってます。私は大丈夫ですよ」

勇者「ありがとな。王様、俺達が選ぶのは全てを知ることだ!」

25: 2014/02/15(土) 23:20:11.05 ID:ARbA0vQZO
王様「愚か者が。仕方がない、楽しませてくれたからな。命を助けてはやらないが、教えてやろう。まず、お前達は魔王の顔を覚えているか?」

勇者「忘れるわけない・・・はずだよな」

僧侶「まさか!」

王様「そうだ。魔王も町民も全て同一人物だ。もっとも人ではないがな」

勇者「何故お前がそんなことを知っているんだ!?」

王様「決まっているだろ。それの人物は私だからだ」

勇者「そんなバカな!!」

僧侶「どうして!?」

26: 2014/02/15(土) 23:23:42.73 ID:ARbA0vQZO
王様「理由か。簡単なことだ。暇潰しだよ」

勇者「暇潰しだと!何様のつもりだ!」

僧侶「神にでもなったつもりですか!」

王様「その通りだ。私が神だ。この世界を作った、な。お前達が生まれる何千年も前のことだ」

僧侶「じゃあ、私達が崇めているのは」

王様「私だな。一部は私以外を神と崇めている集団もいるが」

僧侶「そんな・・・」

勇者「証拠は!何か証拠はないのか!」

27: 2014/02/15(土) 23:27:50.88 ID:ARbA0vQZO
王様「証拠か。そうだな」

村人「こんなのとか」

町民「こんなの」

魔王「こんな所でどうだ?」

勇者「情報をくれた人や魔王まで・・・。本当だったのか・・・・」

僧侶「じゃあ、あの時消えたのは!?」

王様「消えたのではなく、こちらに戻っただけだ。それにしても残念だ。結構手間暇かけて育てたお前達を頃すのはな」

僧侶「なんで殺されなければならなのですか!?」

勇者「俺達の、人間の命をなんだと思っていやがる!」

29: 2014/02/15(土) 23:31:21.45 ID:ARbA0vQZO
王様「仕方あるまい。忘れさせることはできるが、他の神が嫌がらせでお前達に力を与えているせいで、完全には消せないからな。言い伝えでも残ったら次のゲームに支障が出る」

勇者「力を与えているって、まさか・・・」

王様「お前達が神の加護とか言っているものだな。少々スパイスとなるが、シナリオを壊されて手を焼いている。さて、もう終わりにするか」

魔王「ついでだ。こっちの姿で頃してやろう」

勇者「簡単にやられてたまるか!例え神だとしても、俺は最後まで抗ってやる!」

僧侶「勇者様との幸せ。享受せずに氏んではいられません」

魔王「苦しまずに頃してやろうと思っていたのに。あまり暴れるなよ?照準が狂うと苦しむこととなるぞ」

勇者「最終決戦だ!勝つぞ!」

僧侶「はい!」

30: 2014/02/15(土) 23:35:45.41 ID:ARbA0vQZO
  

  










勇者・僧侶「」

魔王「やれやれ、何回やってもこれだけは慣れぬものだ。せめてもの慈悲だ。次生まれてくる時は幼馴染みにしてやろう」

王様「後始末をしないとな。まず勇者と僧侶の人形でも作り、祭が終わったらどこか遠くに住んだことにするか。四十年位は生きているテイで、代筆とかもしなくては」

王様「やることが多すぎる。奴等が力なんぞ与えなければ、こんなにも面倒なことにならずに住んだのに」

32: 2014/02/15(土) 23:38:25.51 ID:ARbA0vQZO
王様「さて、後始末も終えたことだ。数百年ほど次のゲームの構想を練ったり下準備したりするか」
















??「その前に奴に仕返ししないとな。どうせ、またクトゥグアの仕業だろ。全く。いつまでたっても懲りぬ奴だ。クトゥルフでも連れていくかな」

―fin―

35: 2014/02/15(土) 23:43:50.98 ID:ARbA0vQZO
以上です
魔王勇者のベースに少しクトゥルフ神話をいれてみました
知ってる人はわかると思いますが、一応補足です

王様はナイアルラトホテップ
無貌の神、黒いファラオ、千の顔を持つ男などと呼ばれ様々な形に変形することが可能


詳しいことは調べてください

36: 2014/02/15(土) 23:50:42.78 ID:8EJY+QYR0

引用元: 勇者「村人詳し過ぎね?」