1: 2016/01/19(火) 22:20:30.795 ID:ywxXCoB+0.net
男が仕事から帰ると、そのを目にした。そのは、『島崎外科』という医院のもののようだった。しかし、いつも同じ帰路を通っているのに、島崎外科もも目にしたことがなかった。自分のことを注意深い人間だと思っていただけに恥ずかしかった。
男「うさんくせえなあ」
そう呟きながらも、男はその永遠の命とやらに好奇心を揺さぶられていた。そして「ちょっと実態を探るだけだ」と自分に言い訳をしながら、その医院の下に足を運んだ。
男「うさんくせえなあ」
そう呟きながらも、男はその永遠の命とやらに好奇心を揺さぶられていた。そして「ちょっと実態を探るだけだ」と自分に言い訳をしながら、その医院の下に足を運んだ。
2: 2016/01/19(火) 22:21:36.887 ID:ywxXCoB+0.net
鉄筋コンクリート造りの古びたビル。そのうらぶれた外観から、それが病院だということを察することはできない。一階は『三橋商事』という商社で、二階が島崎外科だった。男は恐る恐る階段を上り、重いドアを開けた。
中は外観とは裏腹に、極めて清潔だった。リノリウムの床はきれいに掃除されていて、蛍光灯の光を柔らかに反射している。
ドアの横にあった観葉植物の葉を手でなぞってみても、埃はつかなかった。「何を姑みたいなことをしているんだ」そう思いながら、受付の女性に話しかけた。
男「外のを見てきたんですけど」
女「無料体験をご希望ですか」
男「ええ、そうです」
女「かしこまりました。しばらくソファにお掛けになってお待ちください」
中は外観とは裏腹に、極めて清潔だった。リノリウムの床はきれいに掃除されていて、蛍光灯の光を柔らかに反射している。
ドアの横にあった観葉植物の葉を手でなぞってみても、埃はつかなかった。「何を姑みたいなことをしているんだ」そう思いながら、受付の女性に話しかけた。
男「外のを見てきたんですけど」
女「無料体験をご希望ですか」
男「ええ、そうです」
女「かしこまりました。しばらくソファにお掛けになってお待ちください」
3: 2016/01/19(火) 22:22:05.692 ID:ywxXCoB+0.net
待合室のソファはあまり男の腰にはなじまなかった。クッションが薄く、包み込むような感じがしないのだ。これならパイプ椅子に座った方がましだと思った。
そして男は受付嬢について考えた。あんな美しい女性は今まで見たことがない。最高のパーツをそれぞれ持ってきて取り付けたようだった。整形しているのかもしれない。そして、余りに美しすぎると欲情しないものだなと思った。
そんなことを考えていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと白い口髭を生やした白衣の老人が立っている。
老人「無料体験をご希望の方ですか?」
男「ええ、そうです」
老人「それではこちらに」
老人はそうとだけ言って、受付の裏にある診察室へと案内した。
そして男は受付嬢について考えた。あんな美しい女性は今まで見たことがない。最高のパーツをそれぞれ持ってきて取り付けたようだった。整形しているのかもしれない。そして、余りに美しすぎると欲情しないものだなと思った。
そんなことを考えていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと白い口髭を生やした白衣の老人が立っている。
老人「無料体験をご希望の方ですか?」
男「ええ、そうです」
老人「それではこちらに」
老人はそうとだけ言って、受付の裏にある診察室へと案内した。
5: 2016/01/19(火) 22:22:27.644 ID:ywxXCoB+0.net
老人「それでは、早速説明に移らせていただきます。よろしいでしょうか?」
男は「はい」と言いかけたが、思いとどまって、医院について質問した。
男「この医院は昔からここにあったのですか?」
老人「ええ、父の代からやっております」
男「それは妙だな。私はいつもここを通っていますが、こんなとこに病院があるだなんて知りませんでしたよ」
老人「はっは。昨日看板を取り付けたのですよ。今まではひっそりとここらの老人の相手をしていたのですが、この不景気で生活が大変になりましてな。それで客を呼ぼうと看板を取り付けたのですよ」
男「なるほど。そういうことでしたか。納得しました。じゃあ説明お願いします」
老人「はい。それでは説明させていただきます……」
男は「はい」と言いかけたが、思いとどまって、医院について質問した。
男「この医院は昔からここにあったのですか?」
老人「ええ、父の代からやっております」
男「それは妙だな。私はいつもここを通っていますが、こんなとこに病院があるだなんて知りませんでしたよ」
老人「はっは。昨日看板を取り付けたのですよ。今まではひっそりとここらの老人の相手をしていたのですが、この不景気で生活が大変になりましてな。それで客を呼ぼうと看板を取り付けたのですよ」
男「なるほど。そういうことでしたか。納得しました。じゃあ説明お願いします」
老人「はい。それでは説明させていただきます……」
6: 2016/01/19(火) 22:22:49.361 ID:ywxXCoB+0.net
老人は精神医学の専門家だった。そして永遠の命の獲得方法を発見したのだ。それは冬眠状態にすることで、夢の中にいさせ続けるというものだ。明晰夢を発展させたもので、思い通りに夢を構築することができるということだった。
老人「何か質問はありますか?」説明を終えると老人はそう言った。」
男「その間、身体はどうなっているのですか」
老人「眠ったままです」
男「もし夢から覚めたいと思った時は?」
老人「夢の中で目を覚ませと念じれば、我々が目覚めさせます。脳波でわかりますから」
男「なるほど」
老人「もっとも、夢から覚めたいと思うものなどはいませんけどな。どうです?無料体験をされていきますか?一時間の短い間ですが、その魅力がわかりますよ」
男「お願いします」
老人「何か質問はありますか?」説明を終えると老人はそう言った。」
男「その間、身体はどうなっているのですか」
老人「眠ったままです」
男「もし夢から覚めたいと思った時は?」
老人「夢の中で目を覚ませと念じれば、我々が目覚めさせます。脳波でわかりますから」
男「なるほど」
老人「もっとも、夢から覚めたいと思うものなどはいませんけどな。どうです?無料体験をされていきますか?一時間の短い間ですが、その魅力がわかりますよ」
男「お願いします」
7: 2016/01/19(火) 22:23:16.348 ID:ywxXCoB+0.net
男は早速ベッドに寝かされて、頭にチューブを取り付けられた。
老人「それでは行きますぞ」
男はすぐに眠くなり、夢の世界へと旅立った。
老人「それでは行きますぞ」
男はすぐに眠くなり、夢の世界へと旅立った。
8: 2016/01/19(火) 22:23:59.471 ID:ywxXCoB+0.net
男は草原に立っていた。空は高く、青い。芝生は柔らかな風に撫でられて、さわさわと揺れていた。
男「これが夢の世界だな」
そう呟いてから、男は女とのを思い浮かべた。すると草原の中から裸の女が現れた。その女の顔を見ると初恋の女の子だった。
中学生の時に好きになった女の子だ。彼女は中学生の時のままの初々しい肉体で、男に近づいてきた。
男は彼女に抱き着き、激しくキスをした。女は嫌がることなくそれを受け入れた。彼女の方から舌を差し入れてきて、冷たい唾液の味を感じることができた。「現実そのものじゃないか」と思った。
男「これが夢の世界だな」
そう呟いてから、男は女とのを思い浮かべた。すると草原の中から裸の女が現れた。その女の顔を見ると初恋の女の子だった。
中学生の時に好きになった女の子だ。彼女は中学生の時のままの初々しい肉体で、男に近づいてきた。
男は彼女に抱き着き、激しくキスをした。女は嫌がることなくそれを受け入れた。彼女の方から舌を差し入れてきて、冷たい唾液の味を感じることができた。「現実そのものじゃないか」と思った。
9: 2016/01/19(火) 22:24:40.437 ID:ywxXCoB+0.net
ことを終えた後、女と男は裸のまま草原に寝そべり、会話を始めた。
男「僕のこと覚えてる?」
女「うん、覚えてるよ」
男「君のことが好きだったんだ」
女「知ってるよ。でも言ってくれなかった」
男「勇気がなかったんだ。告白してたら付き合ってくれた?」
女「もちろん。わたしだってあなたのことが好きだったんだよ」
男の顔は見る見るうちに赤くなった。そしてそれを隠すかのように、彼女にキスをした。
男「僕のこと覚えてる?」
女「うん、覚えてるよ」
男「君のことが好きだったんだ」
女「知ってるよ。でも言ってくれなかった」
男「勇気がなかったんだ。告白してたら付き合ってくれた?」
女「もちろん。わたしだってあなたのことが好きだったんだよ」
男の顔は見る見るうちに赤くなった。そしてそれを隠すかのように、彼女にキスをした。
10: 2016/01/19(火) 22:25:06.100 ID:ywxXCoB+0.net
男は「つかれたよ」と言って、彼女に寄り掛かった。彼女は細い指先で男の首筋をなでた。徐々に指先が下降してきて、それが腹部を触れた時、激痛が走った。
男は突如の出来事に叫び声をあげた。想像を絶するほどの激痛だった。「何をする!!」恨みがましい目で彼女の方を見たが、そこにあったのは悪魔の姿だった。悪魔は鋭い爪で男の腹を切り裂いたのだ。
男は目を覚ませと念じた。何度も何度も。しかし不幸なことに目は覚めなかった。
☆☆☆
男は突如の出来事に叫び声をあげた。想像を絶するほどの激痛だった。「何をする!!」恨みがましい目で彼女の方を見たが、そこにあったのは悪魔の姿だった。悪魔は鋭い爪で男の腹を切り裂いたのだ。
男は目を覚ませと念じた。何度も何度も。しかし不幸なことに目は覚めなかった。
☆☆☆
11: 2016/01/19(火) 22:25:26.413 ID:ywxXCoB+0.net
老人は三橋商事に足を踏み入れ、そこの社長にクーラーボックスを手渡した。
社長「捗るな」
老人「おかげさまで」
社長「どこだ」
老人「全部です。いくらになりますかね」
社長「お前に渡る分でも億はくだらないだろう。取引が成功したら連絡する」
老人「ありがとうございます」
老人はそう言って醜く笑った。
男はまだ覚めぬ夢の中である。
社長「捗るな」
老人「おかげさまで」
社長「どこだ」
老人「全部です。いくらになりますかね」
社長「お前に渡る分でも億はくだらないだろう。取引が成功したら連絡する」
老人「ありがとうございます」
老人はそう言って醜く笑った。
男はまだ覚めぬ夢の中である。
12: 2016/01/19(火) 22:25:57.839 ID:ywxXCoB+0.net
『夢のような生活』
終わり
終わり
13: 2016/01/19(火) 22:26:13.566 ID:47StwXDf0.net
乙
15: 2016/01/19(火) 22:30:41.945 ID:h2dQub4pa.net
星新一っぽい
おもしろい
おもしろい
19: 2016/01/19(火) 22:38:14.596 ID:ywxXCoB+0.net
これ書くのに70分を要した
引用元: 男「永遠の命と幸福 無料体験?」
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