1: 2017/04/02(日) 08:40:44.26 ID:Vb2Wm26P.net
――朝 高海家・台所


梨子「すみません。わたしまで朝食を頂くことになってしまって」

志満「いいのよ。独りよりもみんなで食べたほうが楽しいしね」

志満「それに梨子ちゃんのご両親、所用で明日の朝に戻られるんでしょ?」

梨子「はい。冷蔵庫に材料はあるので、自炊することも出来ましたけど」

志満「あとごめんね。せっかくお誘いしたのに、朝食作るの手伝わせちゃって」

梨子「いえ。自宅でも母の手伝いをしていますから」


美渡「本当に偉いよねえ、梨子ちゃんは。それに比べてウチの愚妹ときたら……」ジトー

千歌「むぅ~、そういう美渡姉だって料理は志満姉に頼りっぱなしじゃないっ!」

志満「もう2人とも、ここはいいから食器の準備をして下さい」

千歌・美渡「はーいっ」

2: 2017/04/02(日) 08:46:00.60 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「ふふっ、千歌ちゃんが羨ましいな。いつもお姉さんたちと食事できて」

千歌「えーっ、そんなことないよ?」

千歌「美渡姉とはおかずの取り合いでよくケンカしてるし」

梨子「わたし一人っ子だから、前から姉妹に憧れて……」


しいたけ「わんっ!」ヒョコ

梨子「…………えっ!?」ビクッ

しいたけ「わんわんっ!」


梨子「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」ガタッ

千歌「えっ、しいたけ!?なんでここにいるのっ!?」

しいたけ「はっ、はっ、はっ、はっ……」しっぽフリフリ

3: 2017/04/02(日) 08:51:12.02 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「あわ……あわわ……あわわわわわわわわわ…………」ガクガク

美渡「こら、しいたけ!調理中に台所に来ちゃダメでしょ!」

しいたけ「くぅ~ん……」ショボーン

美渡「ほらこっちに来なさい。どうして今日に限って……」ブツブツ


志満「ごめんなさい梨子ちゃん。大丈夫だった?」

梨子「え、ええ……大丈夫です……」ブルブル

千歌「梨子ちゃん、本当にごめんねっ!」

千歌「しいたけ、普段なら声をかけない限り台所に来ることはないんだけど……」

志満「今日は朝から梨子ちゃんが家にいるから、匂いを辿って来ちゃったのかも」

志満「よっぽど梨子ちゃんのことが好きなのね、しいたけってば」

梨子「出来れば常にひもを繋いで頂けるとありがたいです……」オドオド

4: 2017/04/02(日) 08:56:12.43 ID:Vb2Wm26P.net
――居間


志満「それでは皆さんご一緒に」

全員「いただきまーすっ」

梨子「……………………」チラッ チラッ

千歌「大丈夫だよ梨子ちゃん。しいたけはちゃんと繋いであるから」

梨子「そ、そう?それならいいんだけど………」

千歌「さーて、今日のおかずは…………うっ!?」

梨子「ん?……千歌ちゃん、どうかしたの?」


千歌「ねえ、志満姉。どうしてこの料理……しいたけが入ってるの……?」

梨子(えっ、しいたけっ!?)ドキッ

志満「修善寺の『しいたけの里』に行ったご近所さんからお裾分けでもらったのよ」

梨子(なんだ、そっちのしいたけか……)ホッ

【参考リンク】
修善寺しいたけの里
http://www.office-web.jp/shiitakenosato/

6: 2017/04/02(日) 09:00:32.60 ID:Vb2Wm26P.net
千歌「しかも、わたしの器にしいたけがたくさん入ってるんだけど……」

美渡「ああ、それは私が特別によそってあげたんだから、感謝して食べなさいよね」フフンッ

千歌「もうっ!美渡姉ったら、またそんな意地悪してぇ!」

千歌「志満姉も、わたしがしいたけ嫌いなの知ってるくせに~!」

梨子「えっ、千歌ちゃんしいたけ嫌いだったの?」

千歌「う、うん……匂いと食感がちょっとね……」


※このSSでは千歌ちゃんは椎茸が苦手という設定です。


志満「千歌ちゃんももう高校生なんだし、好き嫌いは無くさないと」

美渡「だから千歌はいつまで経ってもお子ちゃまなのよ~」

千歌「うるさいなあ~!」プンプン

梨子「ああっ、千歌ちゃんのしいたけならわたしが食べますから、ケンカは……」

千歌「り、梨子ちゃあん……ありがと~っ!」スリスリ

梨子「ちょ!?食べてる時に抱きつかないで~っ!!///」

7: 2017/04/02(日) 09:05:36.58 ID:Vb2Wm26P.net
――学校・2年教室


千歌「……って言うことがあったの。ひどいと思わない?曜ちゃんっ!」

曜「うーん、好き嫌いを無くして欲しいって志満さんの気持ちも分かるけど……」

曜(それよりも、千歌ちゃんに抱きつかれた梨子ちゃんが羨ましいなぁ……)ボソッ

梨子「曜ちゃん、何か言った?」

曜「ううん。何でもないヨーソロー」


梨子「それにしても千歌ちゃん、しいたけは嫌いなのに飼い犬の名前はしいたけだよね?」

千歌「うん。しいたけが子犬の頃にね、台所に置いてあったしいたけを食べちゃったの」

千歌「それから自然とみんな『しいたけ』って呼ぶようになっちゃってね……」

梨子「犬の名前にしいたけって、改めて思うとすごいネーミングセンスよね……」

梨子「でも、犬にしいたけを食べさせても良かったんだっけ?」

千歌「それなら大丈夫。けど、しいたけとかきのこ類は消化しにくいから」

千歌「本当は細かく刻まないといけないんだけどね。でもしいたけってば……」


曜「2人ともごめん」

千歌・梨子「え?」

曜「さっきから会話が『しいたけ』だらけで頭がこんがらがって来ちゃった」

千歌・梨子「ああ……」


※以降、犬は『しいたけ』きのこは『椎茸』まとめて言う時は『シイタケ』と表記します。

9: 2017/04/02(日) 09:10:55.79 ID:Vb2Wm26P.net
曜「そう言えば、梨子ちゃんは椎茸平気なの?」

梨子「うん。煮物やバター焼きとか、どんな食べ方でも好きだよ」

梨子「この間は家族と一緒に「しいたけバーガー」を食べに行ったんだ」


【参考リンク】
THIS 伊豆 SHIITAKE バーガーキッチン
http://burger-kitchen.jp/


曜「なんだか面白いね。梨子ちゃん椎茸は好きなのに、しいたけは苦手だなんて」

梨子「えっ?」

千歌「そうだね。逆にわたしはしいたけは好きだけど、椎茸が苦手で……」

梨子「言われてみれば……確かにそうかも」

千歌「何だか、わたしたちって正反対で面白いね」クスッ

梨子「くすっ、そうかもね」フフッ


曜(ぐぬぬ……2人がシイタケトークでいいムードになってるよ……)ムスー

曜(何だか、仲間外れにされてる気分……)シュン

10: 2017/04/02(日) 09:15:46.73 ID:Vb2Wm26P.net
――夜 ベランダ


千歌「ああ~……」グッタリ

梨子「元気ないね千歌ちゃん。どうかしたの?」

千歌「うーん、今日の夕飯も椎茸尽くして大変だったよぉ~」

梨子「それは大変だったね……」

千歌「でも……やっぱり椎茸をちゃんと食べられるようになりたいなぁ」

千歌「これ以上、美渡姉にバカにされたくないしっ!」拳グッ

梨子「ふふっ、千歌ちゃんの負けず嫌いの見せ所だね」


千歌「そういう梨子ちゃんはどうなの?」

梨子「え?」

千歌「しいたけと、仲良くなりたくないの?」

13: 2017/04/02(日) 09:20:59.76 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「ええっ!?仲良くはなりたい……よ?でも、犬だけはちょっと……」

千歌「梨子ちゃんが犬が苦手なのは分かるよ。でも……」

千歌「わたしは、梨子ちゃんとしいたけには是非仲良くなって欲しいって思ってる」

千歌「だって、しいたけが家族以外であそこまで懐いたの、梨子ちゃんが初めてだもん」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「梨子ちゃんは、このままでいいの?しいたけと仲良しになれないままで……」


梨子「それは……嫌だな。正直、すごく怖いけど……」

梨子「でも、わたしのことが大好きなんだよね?しいたけちゃん」

千歌「うん。それは間違いないよ」

梨子「だったら……わたしも、しいたけちゃんと仲良くなりたい。本気で」

千歌「じゃあ決まりだね!」

梨子「うんっ、一緒に……」


千歌・梨子「シイタケを克服しようっ!」

14: 2017/04/02(日) 09:26:31.83 ID:Vb2Wm26P.net
――休日 高海家・台所


梨子「もうすぐ出来るからね、千歌ちゃん」ジュー

千歌「梨子ちゃんも料理作れたんだね」

梨子「曜ちゃんほど本格的なものは作れないけど、一応ね」ジュー

千歌「すごいなぁ。わたしも何か作れればいいんだけど……」

千歌(けどこの椎茸の匂い。梨子ちゃんには言えないけど、なかなか強烈だなぁ……)


梨子「はいっ、出来上がり」

梨子「千歌ちゃんには、わたしの手料理を食べて椎茸に慣れてもらうからね」コトッ

千歌「う、うん……ねえ梨子ちゃん、この料理は?」

梨子「『椎茸のチーズ焼き』。傘の上にチーズを乗せて焼いた、シンプルな料理よ」


【参考リンク】
椎茸のチーズ焼き
https://erecipe.woman.excite.co.jp/detail/08f1ac9050a60190dd9d2f121a42294e.html

15: 2017/04/02(日) 09:31:07.38 ID:Vb2Wm26P.net
千歌(ううっ……チーズで隠れているとはいえ、やっぱり椎茸が目立つなぁ)

千歌(でも、せっかく梨子ちゃんがわたしのために作ってくれたんだもんね……)ゴクリ

梨子「焦らなくていいから、チーズと一緒に食べてみて?」

千歌「それじゃ、いただきます……」パクッ


梨子「……どう?千歌ちゃん」ドキドキ

千歌「うん。やっぱり、椎茸の味が後から来るけど……」

千歌「チーズと一緒に食べれば何とかなりそうだよ。意外に合うんだね」

梨子「椎茸は風味が強いから、苦手という人の気持ちは分からなくはないの」

梨子「だからチーズの味で出来る限り香りを消してみたんだ」

梨子「それからマヨネーズとマスタードも少し入っているわ」

千歌「そうだったんだ」

梨子「最初は、自分が好きな味付けで食べていって慣れていけばいいと思う」

梨子「最終的には、椎茸が美味しく食べられるようになれると思うから」

千歌「うん。ありがとう梨子ちゃん。少しずつ慣らしてみるね」

16: 2017/04/02(日) 09:35:59.68 ID:Vb2Wm26P.net
――十千万・玄関前


千歌「次は梨子ちゃんの番だね。しいたけ連れてきたよ」

しいたけ「…………」ノッソノッソ

梨子「……………………」ドキドキ

千歌「しいたけ。梨子ちゃんは本気でしいたけと仲良くなりたいと思ってるから」

千歌「追いかけ回したり、脅かしたりしちゃダメだからね?」

しいたけ「……ばう」コクン

梨子(本当に……大丈夫なのかな……?やっぱり怖いな……)ガクガク


千歌「それじゃ梨子ちゃん。まずしいたけの顎を撫でてみよっか」

梨子「えっ!?あ、顎から!?だ、大丈夫?……噛まない?」

千歌「大丈夫だよ。飼い主のわたしが言うんだから、わたしとしいたけを信じて?」

梨子「ううっ、千歌ちゃんがそう言うなら……」ドキドキ

しいたけ「はっ、はっ、はっ、はっ」しっぽフリフリ

梨子「そーっと……そーっと……」ドキドキ

17: 2017/04/02(日) 09:41:03.24 ID:Vb2Wm26P.net
顎スリスリ


しいたけ「……くぅ~ん♪」

梨子「あっ……」サワサワ

千歌「やったね梨子ちゃん、初めてちゃんとしいたけに触れたねっ!」

梨子「う……うん。わたし、しいたけちゃんに触れてるっ!」ドキドキ

千歌「いきなり頭から撫でると、犬は怖がって噛み付くことがあるんだ」

千歌「初めて触れる時は、顎を撫でながら自分の手の匂いを嗅いでもらって」

千歌「ゆっくり慣らしていくのがいいんだよ。頭を撫でるのはそれから後がいいの」

千歌「まあ、しいたけは人を噛むような子じゃないけどね」エヘヘッ

梨子「さすが飼い主ね。犬のことに詳しいんだ」

千歌「まぁ、飼っている以上ある程度の知識は身につけているつもりだよ」

18: 2017/04/02(日) 09:46:05.74 ID:Vb2Wm26P.net
――


梨子「あっ……思い出した」

千歌「何を思い出したの?梨子ちゃん」

梨子「わたしね。小さい頃は犬が大好きだったの」

千歌「えっ、そうだったの?」

梨子「うん。でも、ピアノコンクールが控えた前日にね」

梨子「散歩している犬の頭を撫でようとしたら、手を噛まれたんだ……」

千歌「そうだったんだ。それで犬嫌いに……」

梨子「結局コンクールの参加は辞退せざるを得なくなって、大泣きしたっけなぁ……」

千歌「それはトラウシだね……」

梨子「トラウマね」

20: 2017/04/02(日) 09:51:25.54 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「でも、今こうやってしいたけちゃんに触れられてる……」

梨子「千歌ちゃんの言うことを聞いて、大人しくしてくれてるおかげでもあるけど」

梨子「わたし、これならしいたけちゃんと仲良くなれるかもしれない」

しいたけ「はっ、はっ、はっ、はっ」しっぽフリフリ

千歌「わたしも。梨子ちゃんの料理で椎茸をちゃんと食べられるかもしれない」

千歌「だから頑張ろう、一緒に!」

梨子「千歌ちゃん……うんっ!」


しいたけ「わおんっ!」

梨子「きゃああああっ!」ギュー

千歌「こら、しいたけ!いきなり吠えたらダメでしょ!」

しいたけ「くぅ~ん……」シュン

梨子「うっ、ううう……ぐすっ」ブルブル

千歌「あはは、吠えるのにも慣れないとね……あと、しがみつきだよ梨子ちゃん///」

21: 2017/04/02(日) 09:57:06.42 ID:Vb2Wm26P.net
――後日 高海家・千歌の部屋


美渡「おーい千歌。志満姉がプリン買ってきてくれ……」ガラッ

千歌「……………………」本ペラッ

千歌「なるほど、なるほど……」ノートカキカキ

美渡(嘘でしょ……あのバカチカが勉強してるっ……!?)

美渡(……さすがに今のあの子をからかうのは止めたほうがいっか)

美渡「プリン、残しておくから後で食べに来なさいよ」ピシャ


千歌「……そっか。『犬恐怖症』ってれっきとした病気だったんだ」

千歌「大人になると治すのが難しくなるって書いてあるし……」

千歌「でも……梨子ちゃんはわたしと同い年だし、今ならまだ間に合うみたい」

千歌「わたしがしっかり接し方を教えれば、梨子ちゃんだってきっと治せるよね」

千歌「早くしいたけと仲良くなって欲しいなぁ……」


千歌「あっ、でもわたしの椎茸嫌いも治さないと」

千歌「梨子ちゃんもわたしのために椎茸料理を考えてくれてるんだし」

千歌「わたしも頑張らないと!」

22: 2017/04/02(日) 10:01:18.54 ID:Vb2Wm26P.net
――同日 桜内家・台所


梨子「ねえお母さん、椎茸を美味しく食べられる料理って他にないかな?」

梨子ママ「どうしたの梨子ちゃん。最近1人で台所に立つことが増えたけど」

梨子「うん。千歌ちゃんと一緒に『シイタケを克服しよう』って決めてね」

梨子ママ「シイタケ?あなた椎茸は食べられたはずじゃない」

梨子「椎茸が苦手なのは千歌ちゃんの方で、だから……」

梨子ママ「なるほど。そういうことね」フフッ

梨子「え、お母さん?///」

梨子ママ「うん、分かった。お母さんが梨子ちゃんに色々とレシピを教えてあげるっ!」

梨子「本当?ありがとうお母さん!」


梨子ママ「シイタケを克服って、あなたもしかして高海さん家のしいたけちゃんと……」

梨子「うん。怖いけど……千歌ちゃんが犬との接し方を教えてくれるから……」

梨子ママ「そっか。早く犬嫌いを治して、しいたけちゃんと仲良くなれればいいわね」

梨子「……うん。頑張るよ」


梨子(こうして、わたしは千歌ちゃんから犬の正しい接し方を教わり)

千歌(わたしは、梨子ちゃんの作った椎茸料理を食べながら)

梨子(お互いに協力し合い、少しずつシイタケに慣れていきました)

千歌(そして……)

23: 2017/04/02(日) 10:06:27.67 ID:Vb2Wm26P.net
――数週間後 朝 高海家


志満「またご近所さんから椎茸をもらってね、炊き込みご飯にしてみたの」

美渡「うわぁ、しいたけたっぷり。これは千歌もさすがに食べられ……」


千歌「いただきまーす!」モグモグ

美渡「……ええ!?千歌が椎茸を食べてる……!?」

千歌「うん、美味しいっ!美味しいよ志満姉!」ニコッ

志満「くすっ、美渡ちゃん気が付かなかった?千歌ちゃん、椎茸を克服したのよ?」

美渡「嘘でしょ!?あれだけ嫌がってたのに……」

千歌「ふふ~ん!わたしだっていつまでも子どもじゃないからね!」エッヘン

美渡「ぐっ……まぁ、少しは成長したと褒めてあげてもいいわ」

千歌「もう、素直じゃないなぁ美渡姉は。もっと褒めてくれてもいいんだよ?」ニヤニヤ

美渡「調子に乗るなっ!」

24: 2017/04/02(日) 10:11:09.00 ID:Vb2Wm26P.net
ガラガラ


梨子「おはようございます」

美渡「あっ、梨子ちゃん。おはよう」

志満「おはよう梨子ちゃん。あっ、朝ごはん食べてく?」

梨子「いいえ、自宅で済ませましたので……あっ、この匂い」

千歌「梨子ちゃんおはよ~。きのこの炊き込みご飯食べてるんだっ!」パクパク

志満「こらこら、そんなに勢い良く食べたら詰まらせるわよ?」

梨子「ふふっ、良かった。千歌ちゃんすっかり椎茸が食べられるようになって……」


しいたけ「わんわんっ!」

美渡「ちょっ、しいたけ!また梨子ちゃんを脅かして………」

梨子「よーしよし、今日も元気だねしいたけちゃん」ナデナデ

しいたけ「くぅ~ん♪」ハッハッハッ


美渡「何…………だと…………?」

25: 2017/04/02(日) 10:16:20.73 ID:Vb2Wm26P.net
志満「梨子ちゃんと千歌ちゃん、お互いに助け合ってシイタケを克服したんだよね」

千歌「えへへっ」

梨子「はいっ」モフモフ

しいたけ「はっ、はっ、はっ、はっ」しっぽフリフリ

美渡「いつの間に……あっ、そう言えばこの間、千歌が勉強してたのって」

千歌「ああ、あの時ね。梨子ちゃんの犬恐怖症を治す方法を調べてたの」

千歌「わたしは、美渡姉をぎゃふんと言わせるために椎茸嫌いを治したけど」

美渡「それがあんたの本音か」

千歌「梨子ちゃんは、『本気でしいたけと仲良くなりたい』って言ってくれたから」

千歌「だから、梨子ちゃんのために一生懸命調べたんだ」

梨子「千歌ちゃんには本当に感謝してるよ……」

しいたけ「くぅ~ん、くぅ~ん……」スリスリ

26: 2017/04/02(日) 10:21:47.58 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「完全に恐怖心が無くなった訳じゃないけど、こうやって触れることが出来てるし」

梨子「これなら、松月のわたあめちゃんだって大丈夫だと思うから」

梨子「本当にありがとう、千歌ちゃん」ニコッ

千歌「そんなっ!お礼を言うのはこっちの方だよ」

千歌「梨子ちゃんのおかげで椎茸を美味しく食べられるようになったんだから」

千歌「こちらこそありがとう、梨子ちゃん」ニコッ

梨子「うんっ///」

千歌「えへへっ///」

しいたけ「わんっ!」


美渡「おやおや。朝からお熱いわね、お2人とも~」ニヤニヤ

志満「お互いに苦手なものを克服して、一段と仲良しになったみたいね」フフッ

28: 2017/04/02(日) 11:09:37.49 ID:Vb2Wm26P.net
――放課後 三津海水浴場


しいたけ「わんわんっ!」

梨子「よーしよし可愛いねえ、しいたけちゃん」ナデナデ

しいたけ「ぺろぺろ♪」

梨子「きゃっ!もお、くすぐったいよ~」フフッ

しいたけ「くぅ~ん、くぅ~ん」仰向け

梨子「お腹撫でて欲しいの?しょうがないなぁ~」モフモフ

梨子(はぁ~、しいたけちゃんの身体ってなんて温かいのかしら……クセになりそう)


曜「すごい……」

曜「あの梨子ちゃんがしいたけを撫でてるし、舐められても平気になってる……」

千歌「そうだよ~、すごいでしょ?」

30: 2017/04/02(日) 11:15:26.53 ID:Vb2Wm26P.net
梨子「まだちょっと怖い時もあるけどね」ナデナデ

梨子「でも、以前みたいにすっごく怖いって気持ちはなくなったわ」

梨子「これも千歌ちゃんのおかげね」

しいたけ「わんっ!」

曜「そっか……それで、千歌ちゃんも椎茸嫌いを克服したんだよね……?」

千歌「うん!梨子ちゃんの椎茸料理を食べて克服したんだっ!」

曜「へ、へえ……梨子ちゃんの手料理を……ねえ……」


曜「……………………」

梨子「曜ちゃん?」

千歌「どうかしたの?具合でも……」

曜「…………いよ」ボソッ

千歌・梨子「えっ?」

31: 2017/04/02(日) 11:20:53.52 ID:Vb2Wm26P.net
曜「2人とも……本当にすごいよ……」

曜「苦手だったものをあっという間に克服しちゃうんだもん」

曜「でも、わたしも……2人の力に、なりたかったなぁ……」ジワッ

千歌「えっ、曜ちゃん……」

梨子「……泣いてるのっ!?」

曜「……あっ、違うの!目にゴミが入っちゃって……本当に大丈夫だからっ」エヘヘ

梨子(曜ちゃん、もしかしてわたしたちが何も相談しないで解決しちゃったから……)


千歌「…………そうだっ!」

千歌「今度のお休みの日にさ、『シイタケパーティ』やらない?」

梨子・曜「シイタケ……パーティ?」

千歌「そう!せっかく椎茸を美味しく食べられるようになったから」

千歌「みんなで椎茸料理を作ってパーティをするの!椎茸なら山ほどあるしね!」

千歌「是非、曜ちゃんにもパーティに参加して欲しいんだっ!」

32: 2017/04/02(日) 11:25:45.31 ID:Vb2Wm26P.net
曜「えっ、わたしも?で、でも……わたしは無関係なのに……」

梨子「わたしも、曜ちゃんの椎茸料理が食べてみたいな。一緒に料理も作りたいし」

梨子「それに無関係なわけないじゃない。わたしたち親友なんだからっ」

千歌「だからお願い、曜ちゃん!一緒にパーティしよ?」

曜「梨子ちゃん……千歌ちゃん……」ジワッ

しいたけ「……ぺろぺろ」

曜「……しいたけ、慰めてくれてるの?」

しいたけ「わんっ!」

曜「……ありがとう」

曜(みんな優しいなぁ……いつまでもくよくよしてもしょうがないよね)


曜「分かったよ。わたしも参加する。美味しい椎茸料理を振る舞ってあげるからねっ!」

梨子「曜ちゃん……!やったね千歌ちゃんっ!」

千歌「うんっ!それじゃあ週末は、ウチでシイタケパーティだぁ~!」

33: 2017/04/02(日) 11:31:05.36 ID:Vb2Wm26P.net
――夜 ベランダ


千歌「曜ちゃんに悪いことしちゃったなぁ……」

梨子「知らない間に曜ちゃんに寂しい思いをさせてたんだね。わたしたち……」

千歌「ここ最近、どうやって梨子ちゃんの犬嫌いを治すかってことばかり考えて」

千歌「曜ちゃんとそんなに会話してなかった気がするし……」

梨子「わたしも、千歌ちゃんにいかに美味しく椎茸を食べてもらうかばかり考えてて」

梨子「料理が得意な曜ちゃんにも相談するべきだったよ……」

千歌「曜ちゃん、完璧なように見えて、寂しがり屋なところがあるから」

千歌「わたしたちが何も言ってくれなかったのが辛かったんだろうね、きっと」

梨子「うん……」


千歌「だから、今度のお休みはパーッとシイタケパーティしようねっ!」

千歌「わたしたち3人と、しいたけも一緒に!」

梨子「……うん、そうだねっ!」

しいたけ「わんっ!」(小声)

千歌「うわっ、しいたけ!まだ起きてたのっ!?」

梨子「ふふっ、しいたけちゃんもシイタケパーティが楽しみなんだね」

しいたけ「ばうっ!」(小声)

梨子「偉いね。夜だからちゃんと声を小さくしてるのね」クスクス

35: 2017/04/02(日) 11:36:31.73 ID:Vb2Wm26P.net
――


梨子「ねえ、千歌ちゃん」

千歌「ん?なあに?」

梨子「本当に……ありがとね」

千歌「え、どうしたの?急に」

梨子「千歌ちゃんがスクールアイドルに誘ってくれたのをきっかけに」

梨子「ピアノともう一度向き合うことが出来たし、コンクールも入賞出来たし」

梨子「そして何より……苦手だったしいたけちゃんを好きになることが出来た」

しいたけ「はっ、はっ、はっ、はっ」しっぽフリフリ

梨子「これも、全て千歌ちゃんのおかげだから……ありがとう」

千歌「えへへ、どういたしまして///」

千歌「でも全部、梨子ちゃんが頑張った結果だから。わたしはお手伝いしただけだよ」

梨子「それでも、本当に感謝してるの。わたし、そんな千歌ちゃんのことが……あっ」


梨子(この想いを今言うのはやめよう。きっと曜ちゃんだって千歌ちゃんのことが……)

36: 2017/04/02(日) 11:42:31.46 ID:Vb2Wm26P.net
千歌「わたしは……梨子ちゃんのこと、好きだよ」

梨子「…………えっ?///」ドキッ


千歌「もちろん、曜ちゃんと……しいたけもねっ!」ナデナデ

しいたけ「くぅ~ん♪」

梨子「あっ、ありがとう……千歌ちゃん」

梨子(ま、まぁ……今はこのままの関係でいいよね……)


しいたけ「ふわぁ~」

千歌「ふわぁ~、今日はもう遅いからそろそろ寝ようか」

梨子「くすっ、そうだね。一緒にあくびして可愛いなぁ」

千歌「えへへ……じゃあ梨子ちゃん、おやすみなさい」

梨子「おやすみなさい。しいたけちゃんもね」手フリフリ

しいたけ「わんっ!」(小声)


千歌(…………梨子ちゃん。わたし、本当に梨子ちゃんのことが大好きだよ)


おわり

37: 2017/04/02(日) 11:44:05.28 ID:Vb2Wm26P.net
ご覧いただきましてありがとうございました。
途中、連続投稿で規制が入ってしまい、またエタるところでした。

2期では少しでも梨子ちゃんの犬嫌いが治まって、しいたけとの距離が
縮まればいいなと思ってます。あと>>1は椎茸が大好きなので
次に沼津に訪れた際には、三島に寄って「しいたけバーガー」が食べたいです。

39: 2017/04/02(日) 12:15:47.71 ID:/a0iq+IH.net
おつ

引用元: 千歌・梨子「シイタケを克服したい」