885: 2018/06/16(土) 19:46:07.22 ID:4E5u70Peo

886: 2018/06/16(土) 19:49:19.75 ID:4E5u70Peo
武内P「しかし……意外ですね」

奏「そうかしら?」

武内P「はい。速水さんのイメージでは……」

奏「何でも、そつなくこなすと思った?」

武内P「ええ、皆さんのイメージも、そうだと思います」

奏「そんな事は無いんだけどね」


奏「ふふっ、進級出来るかわからない位だもの」


武内P「……」

武内P「えっ?」

887: 2018/06/16(土) 19:54:07.21 ID:4E5u70Peo
武内P「まっ……待ってください、速水さん!」

奏「あら、何?」

武内P「その……随分と余裕があるように、見えるのですが?」

奏「あら、そう見える?」

武内P「速水さん? あの、まさか……私は、からかっているのでしょうか?」

奏「そうね……プロデューサーさんはどっちだと思う?」

武内P「! やはり、からかって……」


奏「進級出来るか、出来ないか」


武内P「……」

武内P「どうやら、本当の……ようですね」

888: 2018/06/16(土) 19:58:02.12 ID:4E5u70Peo
武内P「しかし、何故……そのような事に」

奏「私って、学校じゃマジメだったのよね」

武内P「ええ、そういった話は、聞いています」

奏「へぇ? 私の学校生活に、興味があるんだ?」

武内P「そうですね……今は、必要な事かと」

奏「もうっ、つれない返事ね」


奏「進級出来なかったら、辞めた方が良いかな?」


武内P「待ってください! 速水さん!」

武内P「まだ! まだ、諦めないでください!」

889: 2018/06/16(土) 20:02:11.17 ID:4E5u70Peo
武内P「あ、あのっ! どれくらい、成績が下がったのですか!?」

奏「そうね……テストの点は、あまり変わってないわ」

武内P「えっ?」

奏「でも、アイドルを始めてから、忙しくなったでしょう?」

武内P「え、ええ……そう、ですね」


奏「花壇に水遣りとか、そういう所で点数を稼ぐ時間が減っちゃって」


武内P「速水さん!? あ、あの、速水さん!?」

武内P「学校ではマジメとは、そういう部分の事だったのですか!?」

890: 2018/06/16(土) 20:07:55.10 ID:4E5u70Peo
武内P「これは……何と、言えば良いのか……!」

奏「ほら、私って大人っぽいって言われるでしょう?」

武内P「え、ええ……そう、ですね」

奏「そういう子がさ、掃除にマジメに取り組んでると、ね?」

武内P「多少点数が低くても、許してしまう……と」

奏「ふふっ、それはちょっと勘違いかな」

武内P「えっ?」


奏「点数は、物凄く低いわよ♪」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「……」

武内P「いや、待ってください! 笑っている場合ではありませんよ!?」

891: 2018/06/16(土) 20:14:57.07 ID:4E5u70Peo
武内P「その、生活態度ではなく……テストで点数を稼げば良いのでは!?」

奏「そうね、それは私も考えたんだけど……」

武内P「! ならば、その方向で!」

奏「今から頑張っても、どうしようもないかなって」

武内P「頑張ってください! 速水さん、頑張ってください!」

奏「ふふっ、そんなに必氏になっちゃって」


奏「でも、必氏すぎるのは……アイドル、速水奏らしくない、でしょ?」


武内P「必氏になるべき時です!」

武内P「でなければ、高校生、速水奏ではなくなってしまいますよ!?」

奏「……驚いたわ、アナタが‘さん’付けせずに私の名前を呼ぶなんて」

武内P「それは、今は良いですから!」

892: 2018/06/16(土) 20:21:07.08 ID:4E5u70Peo
奏「まあ、それでね? アナタに聞きたいのよ」

武内P「何を……ですか?」

奏「成績の事を言ったら、専務は怒ると思う?」

武内P「そう、ですね……怒る以上に、驚かれると、そう、思います」

奏「そっか、じゃあ、それを言うのはやめておいた方がよさそうね」


奏「高校を辞めて、アイドルに専念したい、って言おうかな」


武内P「待ってください!」

武内P「仕事を理由にするのは、大人びていますが……その、違います!」

894: 2018/06/16(土) 20:26:36.18 ID:4E5u70Peo
武内P「速水さん、考え直してください!」

奏「あら、どうして?」

武内P「成績不振での中退は、その……」

武内P「……今までの、速水さんのイメージを壊してしまう恐れがあります」

奏「……そうかもしれないわね」

奏「でも、壊れた後だからこそ、見通しが良くなって、見つかるものがあるかもよ?」

武内P「それは……一体……?」


奏「情熱的な――パッションな、速水奏」ニコリ


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「……」

武内P「待ってください! パッションな方へのそれは、誤解です!」

895: 2018/06/16(土) 20:32:21.06 ID:4E5u70Peo
武内P「速水さんは、誤解されています!」

奏「ねえ、私が今よりも情熱的になったら……ふふっ、どうなっちゃうと思う?」

武内P「は、速水さん!?」

奏「ご褒美にキスをねだるだけじゃ、済まなくなっちゃうかもね?」

武内P「……!?」

奏「もっと先まで、全力で行こうとしちゃうかも、ふふっ!」

武内P「……」


奏「そんな私も、悪くないと思わない?」


武内P「……少し、待ってください」

奏「?」


武内P「助けを呼びます」

896: 2018/06/16(土) 20:36:23.83 ID:4E5u70Peo
  ・  ・  ・

奏「……ねえ、誰を待ってるの?」

武内P「速水さん。私は、速水さんを信じています」

奏「私を?」

武内P「はい。速水さんは――やればできる子だと」

奏「どういう事? それと、助けを呼ぶのと、何の関係が?」

武内P「私がお呼びしたのは……」

奏「……」


武内P「家庭教師の――」


ガチャッ!


茜「トラーイ!!」


武内P「――アイドル、日野茜さんです」


奏「……」

奏「えっ?」

897: 2018/06/16(土) 20:46:46.61 ID:4E5u70Peo
奏「ねえ、私の聞き間違いよね?」


武内P「日野さん、急なお話で、申し訳ありません」

茜「大丈夫です! 困った時は、お互い様です!」

武内P「早速……速水さんに、勉強を教えて上げて頂けますか?」

茜「ボンバー!!」

武内P「ありがとう、ございます」


奏「えっ!? 今のって、返事なの!?」


茜「一人は皆のために! 皆は一人のために!」

茜「目指せ、成績トップ! 全力で、頑張りましょー!」


奏「……!?」

898: 2018/06/16(土) 20:53:49.20 ID:4E5u70Peo
奏「ねっ、ねえ! 本当に大丈夫なの!?」

武内P「はい、問題ありません」

茜「問題が無い!? じゃあ、作らないといけませんね!」

奏「まるで大丈夫そうじゃないんだけど……!?」

武内P「いえ、そんな事はありません」


茜「10分後に、テストをしますね!」

茜「それで、わからない所をハッキリさせましょう!」

茜「10分後までにテスト作り……くーっ! 燃えます!!」


奏「はっ!? えっ!?」

武内P「日野さんは、全てに全力を出す方です」


茜「バーン! ドゴーン! ファイヤー!」

カリカリカリカリカリカリカリカリッ!!


武内P「彼女は、勉強にも……全力です」

奏「……!?」

900: 2018/06/16(土) 21:00:36.70 ID:4E5u70Peo
  ・  ・  ・

奏「……一応、出来たわ」

茜「はい! おつかれさまです! では、次のテストを!」

奏「ま、まだやるの?」

茜「はい! 気合ですよ、気合! ボンバー!」

奏「……はぁ、わかったわ」

茜「ボンバー!」

奏「……始めて、良いのよね?」

茜「ボンバー!」コクコク!

奏「……」


茜「バーン! ドゴーン! ファイヤー!」

カリカリカリカリカリカリカリカリッ!!


武内P「速水さんがテストをしている間に、次の問題作り……」

武内P「……良い、効率です」

902: 2018/06/16(土) 21:10:06.24 ID:4E5u70Peo
  ・  ・  ・

奏「……これで全部?」

茜「はい! おつかれさまです! ボンバー!」

奏「ふふっ、テストの結果を見て、驚いたでしょう?」

茜「はい! 予想以上だったので、驚きましたよ!」

奏「でしょう? もう、諦めた方が良いと思わない?」


茜「いえ! そんな事はありません! 何とかなります!」

茜「気合爆発! 熱血1000%なら、三日あれば十分です!」

茜「ボンバー!!」


奏「えっ?」


武内P「……三日ですか」

武内P「仕事のスケジュール調整と、ご自宅に連絡しておきます」

武内P「速水さん、何も心配はいりません」


奏「えっ!?」

903: 2018/06/16(土) 21:24:44.98 ID:4E5u70Peo
  ・  ・  ・

武内P「――学校の……学業の方の、調子はどうですか?」

茜「バッチリに決まってますよ! 勉強も、青春です!」


奏「――ええ、おかげ様でボンバーよ」ニコリ


茜「ボンバー!!」キャッキャッ!

奏「この小テスト、見て。前とは比べ物にならない位、バゴーンしてるでしょ?」

茜「うおおおおっ!! 満点じゃないですか!! 完全燃焼ですね!!」

奏「ふふっ、これも……熱い指導のパスのおかげ」


奏「ファイヤーだった私の成績も、ナイスタックルする事が出来たわ」

奏「これも、家庭教師の――」


茜「トラ――イッ!!」


奏「――の、おかげ……ふふっ!」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

904: 2018/06/16(土) 21:34:40.59 ID:4E5u70Peo
奏「ねえ、ドゴーンしたご褒美は無いの?」

武内P「ご褒美、ですか?」

茜「えっ!? 何か、貰えるんですか!? ありがとうございます!!」

武内P「あの、お手伝い頂いた日野さんはともかく、速水さんは……」

奏「まあ、そうよね……ファイヤーしすぎてた私が悪いんだし」


茜「ボンバー!!」


武内P・奏「っ!?」


茜「何を言ってるんですか! ご褒美、貰いましょう!」

茜「頑張った! 成績が上がった! 嬉しい!」

茜「それでご褒美を貰ったら、もっと嬉しいですよ! ファイヤー!」


武内P「……日野さん」

奏「……キャプテン」

905: 2018/06/16(土) 21:41:58.51 ID:4E5u70Peo
茜「一緒にご褒美、貰いましょう!」

ガシッ!

奏「……ふふっ、そうね……遠慮してたら、タックル出来ないものね」

茜「ボンバー!! その通りです!!」


武内P「しかし……ご褒美と、言われましても……」

武内P「何か、ご希望はありますか?」


茜「……奏ちゃん」

奏「……キャプテン」

茜・奏「せーのっ……」


茜・奏「カレー!!」ニコッ!


武内P「……良い、笑顔です」

906: 2018/06/16(土) 21:51:16.58 ID:4E5u70Peo
  ・  ・  ・

専務「やってくれたな」

武内P「何が、でしょうか?」

専務「速水奏の件に関してだ」

武内P「成績が下がって、お困りのようでしたから」

専務「それについては、感謝している」

武内P「いえ、プロデューサーとして、当然の事をしたまでです」


専務「だが、彼女の挨拶が『ボンバー』になった」

専務「……他の言葉は、抜けたにも関わらずだ」

専務「一刻も早く、何とかしなさい」


武内P「待ってください!」


専務「待つはずがないだろう」

907: 2018/06/16(土) 22:02:36.75 ID:4E5u70Peo
専務「そして、それだけではない」

専務「クローネのプロジェクトルームに、カレーの匂いが充満している」

専務「カレーの匂いは、城に相応しくはないとは思わないか?」


武内P「待ってください!」

武内P「インドにも、城はあります!」


専務「何を言っている?」

専務「……君は、速水奏があのままでも良いと?」


武内P「はい」

武内P「……ご褒美にと、キスをねだってこないので」

武内P「あのままでいてくれた良いと、そう、思います」


専務「……成る程、君の意見はよくわかった」

909: 2018/06/16(土) 23:20:49.70 ID:4E5u70Peo
専務「では……以前の速水奏は、全く魅力的では無いと?」

武内P「それは誤解です! 決して、そういう訳では!」

専務「ほう? ならば、君は速水奏をどう思っている?」


武内P「……速水さんは、とても17歳とは思えない、色気のようなものがあります」

武内P「そして、時折見せる、年齢相応の反応もまた可愛らしい、と」

武内P「キスをねだられるのは困ってしまいますが……それも、彼女の個性かと」

武内P「勿論、応えられはしませんが、その時の笑顔は、輝いて見えました」

武内P「それが見られなくなるのは、はい……残念ではありますが……」

武内P「背に腹は変えられません」


専務「……――今の君の発言は、録音させてもらった」


武内P「……えっ?」

武内P「ま、待ってください! 何をなさるつもりですか!?」


専務「私と君の意見は、平行線だ」

専務「私は、家庭教師という手段はとらない」


専務「通信教育だ」



おわり

911: 2018/06/17(日) 00:32:39.59 ID:MaAE9mASO
通信教育で魔法を覚えるのか…

引用元: 武内P「アイドル達に慕われて困っている?」