1: ◆96XoVRe9oA 2011/07/24(日) 08:27:36.92 ID:Xyb7XGHi0
とある魔術の禁書目録の登場人物がおさかな、つまり水生生物の雑談をする。ただそれだけのSSです

コンセプトは『さかなくん先生が禁書SSを書いたら?』ですが、ストーリー展開もラブも工口もバトルもありません

それってSSなの? とか禁書でやる意味あるの? とかその辺は置いといてお楽しみいただければ幸いです

また、生き物の話なので、人によっては不快感を覚えるネタがあるかも知れません。ご注意下さい



一回の投下は以下の三つのパートで構成されていることが多いです。合わせても4~6レスくらいです


第一部 上条当麻とインデックス  インデックスは解説役。上条さんは質問とたまに軽いセクハラ担当

第二部 超電磁砲の四人組     『食』がテーマが多い。役割分担は特に無いけど、白井黒子はゲテ物担当

第三部 一方通行と打ち止め    一方さんの長い解説は読むのが大変かも。オチ担当ゲスト有り



そんな感じの「水槽を見てたら思いついたけど使えなかったネタ」、略して『水槽ネタ』の世界。いただきます
とある魔術の禁書目録 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
2: 2011/07/24(日) 08:31:35.24 ID:Xyb7XGHi0
とりあえず、これまでとある総合スレに投下したものを貼っていきます

一回分ずついきますね

3: 2011/07/24(日) 08:33:15.75 ID:Xyb7XGHi0
                     ☆


「なあインデックス、どうしてウナギは長時間水の外で生きていられるんだ? アレって魚なんだろ?」

「突然どうしたの? とうま」

「いや、なんとなく。なんでだろうなって」

「よくわかんないけど、ウナギはエラ呼吸以外にも皮膚呼吸が異常に発達しているからじゃないかな」


「あのぬるぬるに空気中の酸素が溶け込んで、それで呼吸するってことか。んじゃあドジョウも同じなのか?」

「ドジョウはエラと皮膚だけじゃなくて、口から空気を取り込んで腸で酸素を吸収できるんだよ」

「へえ~、じゃあドジョウがオナラするのは腸呼吸しているからだったんだな。あ、そうだドジョウと言えばドジョウ豆腐」

「ほえ? ドジョウが入ってるお豆腐のこと?」


「水を張った鍋に豆腐と生きたドジョウを入れて火に掛けると、熱さから逃れるためにドジョウが豆腐に飛び込んでいくっていう」

「出来上がりは見た目ただの湯豆腐だから、生臭が禁じられてたお坊さんが好んで食したってのは作り話みたいだよ?」

「そうなのか? まあ言われてみれば豆腐に潜る前にドジョウが茹で上がっちゃいそうだけどな」

「うんうん、ドジョウの潜る性質を利用した拷問なんてのはあるんだけどね」


「拷問? どんなことをするんだ?」

「それは……えっと……ど、ど忘れしちゃったんだよ!」

「(完全記憶能力……)そっか、ど忘れなら仕方ないよな。そうだ、シマドジョウって知ってるか?」

「日本中の河川にいる小型のドジョウの仲間で、日本産淡水魚には珍しく観賞用として欧米への輸出もされてる魚だね」


「さすがインデックスだなあ。そう、小さいんだよ。子供用だよな」

「え?」 「え?」


4: 2011/07/24(日) 08:34:07.32 ID:Xyb7XGHi0
                         ☆

初春「サザエのグルグルの部分って、お店で出てくるときなんで捨てておいてくれないんでしょう……」

佐天「ワタのこと? アレがおいしいんじゃない!」

初春「私はどうも苦手です。見た目気味悪いですし苦いじゃないですか」

白井「ワタは新鮮ならほのかに甘みがあって御刺身でもいけますのよ?まあ、苦い部分もありますけど」


御坂「新鮮なサザエかあ。この辺りではなかなか手に入るものじゃないわね」

佐天「あ、じゃあじゃあ、淡水の貝類はどうですか? タニシとか」

御坂「タニシって、テレビで見る水田のふちにがっつりケバケバしいタマゴつけてるアレでしょ?なんかイヤだなあ……」

白井「お姉様、それはスクミリンゴガイ、通称ジャンボタニシといって一般に食用とされるタニシとは別物ですの」


初春「古くから日本で食用とされてきたのはマルタニシとオオタニシいう種類ですね」

白井「だけど、淡水貝は寄生虫や病原体が心配だから生食は絶対ダメですのよ」

御坂「時間をかけて泥抜きしてからしっかり火を入れる必要があるわけね。御味噌汁や、サザエみたいに壷焼きもいいかなあ」

佐天「そう言えば、タニシ類は卵胎生かつ子沢山なんですよね。だからメスのタニシは肉の中に沢山の子貝……」


初春「すとーっぷ、佐天さんすとっぷ!」

御坂「大体想像出来ちゃったわよ……まあギリギリセーフ?」

白井「まあ、そういう食感をお好みでしたらカワニナがオススメですわよ? ジャリジャリバリバリ感は他の淡水貝の追随を」

               

「……」  「……」  「……」



白井「あら? 皆さん、どうかなさいまして?」


5: 2011/07/24(日) 08:35:06.25 ID:Xyb7XGHi0
                        ☆

打ち止め「ねえねえ、どうしてギンブナにはメスばかりなのって、ミサカはミサカは質問してみる」

一方通行「あァ? ンな事ワザワザどうして俺に聞く?」

打ち止め「ほら、この雑誌のプレゼントクイズの問題なんだってばって、ミサカはミサカは理由を述べてみたり」

一方通行「人を検索エンジン扱いしてンじゃねーぞ、クソガキ!」

打ち止め「……」

一方通行(ヤベ、言い過ぎたか?)

打ち止め「知らないならそう言ってくれればいいんだよって、ミサカはミサk」

一方通行「なめてンじゃねェえええ!!! イイだろう教えてやる、せいぜい覚悟しろってンだ!」

打ち止め「覚悟するともさ、ってミサカはミサカは計画通り!」ニヤリ





一方通行「端的に言えば3倍体のギンブナは雌性発生で繁殖するからなンだが……ふむ、ちっと噛み砕いて説明すンぞ」

打ち止め「どんとこーいって、ミサー」

一方通行「通常、オスとメスがいる生き物は御互いの遺伝子を半分ずつ出し合って子供を作るンだが、細胞の中の遺伝子が
     偶数セットある場合はソレでいいよなァ。だが奇数だった場合は半分にする事が出来ない。3倍体ってヤツだな。
     こォいう生き物は基本的には一代限りの命なンだが、ギンブナは3倍体であるにも関わらず、とある手段で繁殖に
     成功してる。タマゴをオスの遺伝子を受け取らずに成長さしちまおう、って方法だ。そうすると通常の雌雄交配で
     行われる遺伝子の混ぜ合せもなく、メスの遺伝情報がまるごとコピーされて子供が生まれる。結果、メスばかりに
     なったってワケだ。わかったかクソガキ!」

打ち止め「お、おう!……え、あれ? それってもしかして」

一方通行「あァ、そォいうことだな……。メスの遺伝情報をまるごと受けた子供は、遺伝子レベルで母親と同じ。クローンだ」


打ち止め「……そうなんだ。あれ? じゃあオスのギンブナって全く居ないのかなってミサカはミサカは当然の疑問を提示する」

一方通行「イヤ、オスとメスで繁殖を行う2倍体も少しは居るンで、ゼロじゃねェよ」

打ち止め「でも少ししかいないんだね。なんでクローンの方が多くなったの? ってミサカはミサカは新たに質問してみる」

一方通行「そりゃよォ、厳しい自然界で繁殖期に成熟したオスとメスがタイミングよく出逢って交配するより、メスだけで勝手に
     ポンポン増えるほうが簡単だからじゃねェの?」

打ち止め「ふーん、ってミサカはミ……10032号、『魚類も恋は大仕事です、フナなのにコイってぶふぃー』って面白くないよ?」


一方通行「やっぱり妹達も聞いてンのか……っと、3倍体クローンの繁殖にオスが完全に必要ねェってわけじゃねェからな」

打ち止め「ほえ?」

一方通行「むしろギンブナのオスは大変だぜェ。メスが産んだタマゴはオスの遺伝子をきっかけに成長をはじめンだわ。
     受け取るわけじゃなくきっかけとしてだけどな、だが必要には違いねェ。だから繁殖期にはあちこちでメスが
     オスをフェロモン出して誘ってくる。数少ないオスをなァ。まるでどこぞの三下みてェな話だが……」

打ち止め「クローンにモテモテ、ってワケだねってミサカはミサカはどこぞのヒーローさんを思い浮かべてみる」


一方通行「まァ、オスの数が全然足りないから仕様がねェンだけどな。けどここでウラ技がある。3倍体のタマゴにとって
     オスの遺伝子はきっかけに過ぎない、どうせ受け取らないンなら同じギンブナのオスの物じゃなくても構わねェ
     だろうと。例えばニゴロブナとかキンブナとか、そういう近縁のオスをフェロモンで誘って済ませちまうのが
     むしろ一般的らしィな。そのほうが競争相手も少ねェからな」



番外個体「ほうほう、それはつまり第2、第3のヒーローで妥協するみたいな?」

    


一方通行「……ウマヅラハギは淡水魚ですらねェ!!!」


6: 2011/07/24(日) 08:38:07.41 ID:Xyb7XGHi0
以上で一回分です。山も谷もありません。誰も得しません~

8: 2011/07/24(日) 09:05:15.79 ID:Xyb7XGHi0



「なあインデックス、お前タガメって食べたことあるか?」

「とうま? 一般的に食用とされるメンダーはタイワンタガメって言って日本のタガメとはちょっと違うんだよ」

「そうなのか。でもタガメには違いないんだし食べられないことはないんだろ?」

「強い毒があるわけじゃないから、実際に食べる人もいるみたいだね。オスのメンダーはキンモクセイの香りがするみたい」


「カメムシ目だもんな、ニオイもあって当然だろ。そういえばアレ、かなり強い虫なんだぜ」

「現出したとある悪魔が、陸海空を征し自身の数倍の体重の獲物を仕留める事の出来るタガメこそ最強の生物だ、って言ったらしいよ」

「悪魔? なんだそりゃ」

「なんでもないかも。ところで日本ではタガメを始めとした水生カメムシ類は多くが絶滅危惧種なんだよ」


「都市化やそれに伴う水質汚染なんかで生息域が減少したのが原因だろうな」

「広大で浅く綺麗な水溜りなんてもうめったに見れないもんね」

「ちょっとした田舎でもアメンボしかいないもんな」

「とうまも、ウエドッチとかシタドッチって知らないんじゃない?」


「馬鹿にするなよ?ミズカマキリのことだろ。長い触角と長い尻尾のある長細い体のせいでどっちが頭か分らないっていう」

「な、なんで分ったのかな……? 方言なんだよ、それ」

「へっへー。生き物の地方名ってのは結構いい加減でオカシイ名前が多いから何となく覚えちゃうんだよ。タイコウチの地方名とか」

「とうま!! それ以上は口に出すべからずなんだよ!!」

9: 2011/07/24(日) 09:07:54.01 ID:Xyb7XGHi0


佐天「橋の上から川を見ると、魚の群れがウヨウヨしてることがあるじゃないですか。あれって食べれる魚なんですかね?」

初春「さー、どうでしょう? 都市型河川の場合、コイを大量に放流することがあるみたいですが」

白井「綺麗になった川をコイが悠々と泳ぐ、そんなイメージ戦略でしょうけど。コイは相当な汚水でも平気な魚だというのに」

御阪「むしろ水底を引っ掻き回して水草をダメにしちゃったり、環境的にはマイナスも多い放流なのかもね」

白井「それはともかく、コイならもちろん食用。場合によっては高級魚扱いもされますわね」

初春「ただ、底棲魚類は雨の後のニオイと同じ成分を体内に蓄積してますし、生息地によってはその度合いが増します。結構クサイです」

佐天「時間をかけた泥抜きとニオイの元を分解する必要があるのね。食べるのにかなり手間がかかるなあ」ムー


御坂「河川の中流域で見つけた群れなら、オイカワかもしれないわね」

初春「地方によってはハエ、ハヤ、シラハエ、ヤマベなんて呼ばれるみたいですね。カワムツやウグイと混同されることもあるとか」

白井「まあ、学名に雑魚って付くくらいどうでもいい扱いの魚ですから。遊びで川釣りをなさる方には人気のようですけど」

佐天「で、それ食べれるんですかね?」

初春「オイカワは……食べられなくはないと思いますけど、もしこの魚が美味しかったら佐天さんどうします?」

佐天「え、そりゃあ網でも持ってきていっぱい捕まえて……あ、そうか」

御阪「沢山いるのに誰も捕まえないんだから、味は期待できないって事よね」

佐天「残念だなあ。やっぱりそんな旨い話はないよね……」ハァ


初春「佐天さん……。あ! ありますよ! 沢山いてしかも美味しい魚! 遡上を狙うんです!!」

御阪「遡上って、鮭とかアユとか? そりゃその辺りは味は保証済みだけどさ、沢山捕まえ放題って感じじゃないわよ?」

白井「それともマイナーなところでカワヤツメなど? アレも近年漁獲高が減って来ているとか。美味しいですけど」


初春「いえいえ、そんな一級品やググるな危険を用意したりはしません! 私がオススメするのは『ボラ』です!」


佐天「ボラ? あー、時々ニュースで川を大量に埋め尽くす魚って出てくるアレ? ……全く良いイメージ無いんだけど」

御阪「いやいや、なるほどね~。ボラは確かに美味しい魚よ? コイと同じく水底系だから生息域によってはニオイがあるけど」

白井「かなり大きな魚ですし、調理に際して特別な処理も必要ありませんわよ。確かにオススメですわね」

御阪「焼いてよし、揚げてよし、煮てよし、刺身でよし。タマゴはカラスミの原料だし。初春さん、いいとこ突いてくるわね」


初春「なにより、普通すぎて大量発生でニュースにならない限り誰も注目しない魚なんです。普通な佐天さんにピッタリです!」



佐天「」




御阪「いや、でもほら、ボラは出世魚だしさ……」

佐天「アタシの行き着く先はトドですかあああああああああああああああああああ!?」

10: 2011/07/24(日) 09:09:31.41 ID:Xyb7XGHi0
                             ☆

打ち止め「ねえねえ、ザリガニって美味しいのかなあ?ってミサカはミサカは突然疑問を投げかけてみる」

一方通行「なンだァそりゃ? お前最近俺をホンキでナメてンな?」

打ち止め「ミサカは日本の自然と農業、そして漁業を真剣に考えているんだよってミサカはミサカは大真面目な顔でアピールしてみたり!」

一方通行「くっだらねェ。なーンでそれがザリガニの味と関係すンだっつーの」

打ち止め「はっ、あなたは1から10まで説明しなければ理解が出来ないんだねってミサカはミサカは……痛っ、グリグリはやめてー!」

一方通行「ったく、調子にのンな。で、結局何が言ィてェンだよ?」


打ち止め「うぅ~……。んとね、ここでいうザリガニはおよそ90年前に輸入されてきたアメリカザリガニのことなの」

一方通行「聞いたことあンな。食用のウシガエルのエサとして仕入れたザリガニが20匹だけ逃げ出して爆発的に繁殖、日本中に広まったって」

打ち止め「その話は全く真実味がないよね、ってミサカはミサカは陰謀説を仄めかしてみたり」

一方通行「まァ、ブラックバスみたいに誰かの暗躍があったのかもな。ンな事ァ今更どうでもイイが」

打ち止め「とにかく日本全国に一気に広がったアメリカザリガニは色々な問題を起こすの、ってミサカはミサカは両手でチョキチョキ」


11: 2011/07/24(日) 09:10:47.36 ID:Xyb7XGHi0
一方通行「雑食性で繁殖力が強く、天敵が少ねェから他の生物は堪ったもンじゃねェ。水棲昆虫や両生類、魚卵に稚魚まで食い尽くす。
      それは植物も例外じゃねェ。ハサミで切り倒されて朽ちて土に返る事すらなくヤツラの食料になっちまう。というか朽ちた
      植物すら食べるンだったな。そンな多様すぎる食性を持ってるからどンな環境でも棲息しちまう。河川、湖沼、水溜り、池
      それに農業用水に水田にドブ川。タニシに匹敵するタフなヤロォだ」

打ち止め「結果としてアメリカザリガニが増えるとアメリカザリガニしか居なくなるの、ってミサカはミサカは誇張表現を使ってみたり」

一方通行「言い過ぎじゃねェよ。実際そォなっちまうとザリガニは共食いをして命を繋ぎつつ別の場所を探すンだがな。そォいや本場
      アメリカじゃコイツらの対策ってあンのか?」

打ち止め「天敵のブラックバスがいるアメリカでは爆発的発生はあんまりないみたい。それを日本でも真似てザリガニ対策にバスを放流
      したって例もあるんだって、ってミサカはミサカはバッカじゃねェの? って柄にも無く毒づいてみたり」

一方通行「逆にバスを駆除したからザリガニが増えたじゃねェか、とか言い出すヤツもいるだろォからその辺にしとけ。ンで? 増えすぎ
      たザリガニは水田では稲を切り倒したりもするらしィが。それでどォすンだよ、駆除かァ? 確かアメリカザリガニは特定外来
      生物に指定されてねェんだろ? 日本の侵略的外来種ワースト100には選ばれてどォして要注意生物なのか知らねェが法的には
      それほど脅威じゃねェって扱いされてンじゃねェか」

打ち止め「そうなの、だからこそだよ! 積極的に駆除するまで法律が動いていないんだったら、捕っちゃえばいいんじゃないかって」

一方通行「なるほどな、そこで最初に話が繋がるワケか。ウマイかどォか」

打ち止め「そういうこと、美味しいなら沢山捕って数を減らそうってミサカはミサカは今夜はエビフライがいいと希望を述べてみたり」


一方通行「アメリカザリガニは食える、それは間違いねェ。原産国アメリカじゃ名物料理になってンしフランス料理にだって使われる。
      寄生虫が怖いつってもそりゃ全ての淡水生物に言える事だ、火さえ通せば問題ねェ。大きさのわりに食えるトコが少ねェが
      そォいうもンだと割り切りゃイイ。肝心の味もマズくはねェらしィな。けどよォ、じゃなンで誰も捕らねェ?」

打ち止め「え……っと」

一方通行「イメージが悪ィンだよ。ドブ川に棲ンでる生き物ワザワザ食わなくても誰も困らねェくらいには豊かな国だしなァ。それと
      泥ン中で生活してるンで調理の前には長時間泥抜きしなくちゃいけねェ。そのまま使える旨いエビが売ってンなら誰しもが
      そっちを選ぶンじゃねェのか?」

打ち止め「そっか……食べつくして環境保護作戦は難しいかあ、ってミサカはミサカはあの美味しそうな赤色を恨んでみたり!」

12: 2011/07/24(日) 09:13:37.46 ID:Xyb7XGHi0
一方通行「考え方は悪くねェけどな。っと、あの赤色はカロチノイド由来だ。ザリガニが元から持つ色じゃねェ」

打ち止め「え、えっと、ビタミンAってこと?」


一方通行「ここではその理解でイイ。動物は基本的に作れない成分だよなァ。他にも鮭の肉の色やフラミンゴの色もそォだったっけ。
       カロチンを原料にして作るアスタキサンチンってやつだ。エビの場合にはそれとそれにタンパク質をくっつけた青い色素
      カロチノプロテインってやつが合わさって体色が出来上がってる。エビやカニを茹でると赤くなンだろ? アレはカロチノ
      プロテインのタンパク質が加熱による変性でアスタキサンチンを離しちまうからなンだわ」
    

打ち止め「カロチノイドで赤を作って、赤にタンパク質がくっつくと青くなって、青のタンパク質が壊れると赤……」ブツブツ


一方通行「そこでだ。もしザリガニがカロチノイドを含まないエサで育ったらどォなる? アメリカザリガニの赤い色はどんどん失われ
      次第に青くなり、更には白くなっちまうンだぜ。植物性のエサを避けてアジやイワシなンかで育てれば誰にでも出来ンぞ」


打ち止め「白いアメリカザリガニ!? なんだかとっても可愛い気がするって……あ、でもビタミンAを抜くってことなんだよね?」
     
一方通行「あァ、皮膚や粘膜の正常な分化、粘液の精製を司るんだったかなァ。そォいう白いザリガニは実は栄養失調って事だな」

打ち止め「し……氏んじゃあダメだよ!ってミサカはミサカは思わず抱きついてあなたの体を心配してみる!」ダキッ

一方通行「は、離せクソガキ、俺が白いのはカロチン不足じゃねェよ!……多分」

打ち止め「だってお肉しか食べないし、そういう理由か!ってミサカはミサカは天然さんじゃないあなたの白さがちょっぴり不安なの」

一方通行「ったく。大体なァ、肉だってカロチノイド貯めてる部位食やァ補給出来ンだよ。エビやカニでもイイしな。それと言っとくが
      天然の白いアメリカザリガニだって居るンだ。突然変異個体だが、アルビノって言うなよ?」

打ち止め「アルビノは先天的なメラニンの欠乏だよねって、ミサカはミサカはあなたはそうじゃない事を再確認してみたり」


一方通行「あァ……多分な。天然の白いザリガニは何らかの原因でアスタキサンチンの赤い色が発現してねェって事だ。だからエサで
      白くしたザリガニと違って栄養失調状態だったり弱ったりしていねェ可能性もある。だが自然界は厳しい。雪山でもなきゃ
      白い色の生き物なンて目立っちまうからなァ。当然外敵に襲われやすいンでそういう個体は寿命まで生きらンねェだろォな」


打ち止め「……頑張ったんだねってミサカはミサカは……」ダキッ

一方通行「俺は大丈夫だっつってンだろォが! ……もう、大丈夫なンだよ……今は」




ガチャっと『ただいまー』



番外個体「ちょっとお、 言われたとおりザリガニ沢山捕って来たんだけど、コレどーしたらいいのかな?」ビチビチビチビチビチビチ

芳川桔梗「エビフライ楽しみだわ。でも凄かったわよ、こうビビビッって。アレも電気漁っていうのかしら?」




一方通行「……せめて話を全部聞いてから行けェ!」

13: 2011/07/24(日) 09:25:55.50 ID:Xyb7XGHi0

というわけで2回分の過去作でした。

第二回分の最後のパート、カタカナ語がいくらなんでも多すぎました。

ところで、各ネタは本編の登場人物や出来事に見立ててることがあります。単なる自己満足です
コレってアレのことじゃねえ? とか思ったらたぶんそういうヤツです

22: 2011/07/24(日) 14:22:55.19 ID:Xyb7XGHi0
                           ☆

「なあインデックス、ナマズって何であんなに可愛いんだろうな?」

「へ……と、とうま? 今日はさすがに何を言いたいのか全然判らないかも」

「いやな、あの平ぺったい顔といい、つるっつるの肌といい、最高じゃないか!」

「とにかく、ナマズの話をすればいいのかな? ナマズの凄さに驚いて聞き終わったら嫌いになるかも」


「ふっ、面白い……。俺のナマズ愛を打ち砕けると思うなら、何処からでもかかって来るがいい!」

「その熱意、気味が悪いんだよ……。まあいいや。えっと……まずは、多くのナマズ目は電気魚なんだよ」

「え? 発電細胞を直列繋ぎ状態にして高電圧を発生させるデンキナマズとかの話じゃなくて、か?」

「そう。電気魚というのは強力な発電が可能な種に限らず、弱い発電を持続的に行うだけの魚、自らは発電しない魚も含むんだよ」


「弱い発電ってのは自家発電で出来た電場が乱れる様子を感知して視界不良でも周りの状況を確実に掴むための能力だよな」

「だね、『れえだあ』みたいなものだよ。で、発電しないタイプは獲物が発生する微弱な電気を感知するだけなんだけど」

「そういう微弱な電気を感知する能力があれば電気魚と呼ばれるわけか。で、ナマズもそうだっていうのか?」

「うん。他にはロレンチーニ器官を持つサメやエイなんかも含まれるの。電気魚はその能力で100万分の1秒すら知覚できるんだよ」


「へえ~、ナマズは軟骨魚と同じような器官を持ってるってわけか。でも別に嫌いになるようなことじゃないぜ?」

「む! いい、とうま? 例えばデンキナマズは最高350~500Vもの高電圧で人間だって麻痺させちゃうんだよ!?」

「……、え? なんだ。全然大したこと無いじゃないか」

「とうまは別の意味で麻痺してるかも……今日はこの辺にしておくんだよ」

23: 2011/07/24(日) 14:24:12.16 ID:Xyb7XGHi0
     ☆

佐天「聞いて下さいよ。この間実家からカニを送ってもらったんだけど、ハサミが一本無かったんですよ!」

初春「カニのハサミ一本は大きいですね~。そういえばそういう怪我したカニは治るんでしょうかね?」

白井「カニやエビ、ザリガニなどは外敵に襲われた際にハサミを自ら切り落としてその隙に逃げるんだそうですわよ」

御坂「で、無くなったハサミは脱皮するごとに徐々に再生していくみたいね」


佐天「へえ~。じゃあさ、カニはお腹が減ったら自分のハサミを食べればいいんじゃないですか?」

初春「そんな、タコの自足喰いじゃないんですから」

白井「タコが自分の足を食べた時はいつもと違って生え変わらない、なんて話もありますわよ?」

御坂「そうそう迂闊に手脚を切り落とすなんてしないほうがいいってことね、当たり前だけど」


初春「ですねえ、そもそも脚の欠損がそのまま回復するような生き物は下等動物に限られるんじゃないですかね?」

白井「プラナリアやコウガイビルなら切り分けた数だけ元の形に再生するんですの」

佐天「うげっ、体を3分割したら3匹に増えるって事ですか……それって記憶はどうなるんですか?」

御坂「そういう生き物の脳は神経節だっけ、全身で記憶する感じだから。結果全ての個体が同じ記憶を持つことになるかな?」


佐天「ふーむ。で、結局脊椎動物ではそういう驚異的な再生は出来ないんですかね?」

初春「トカゲの尻尾切りは有名ですけど、生え変わったシッポには骨がないんです。完全な再生とは言えませんね」

白井「うーん……いえ、居ないことは無いですわ。脊椎動物でありながら高い再生能力を持つもの」

御坂「なんだろ? 想像も付かないわね。教えて黒子」


白井「その生き物、異名も高き『半裂き』ですわ」


佐天「なんですかその、ジーンズの片脚切っちゃいました!みたいな名前の生き物は!?」

初春「んー、どこかで聞いた気が……あ! 思い出しました。サンショウウオの事ですね!」

御坂「捕まえたサンショウウオを引き裂いて半分食べて残りを川に流すといつの間にか元の姿に……って話だっけ?」

白井「実際はそこまで化け物ではありませんけど、脚が何本無くなっても再生可能な生き物なんですのよ」


御坂「へ~、両生類ってやっぱりスゴイのね。でも黒子、アンタよくそんなこと知ってたわね」

白井「ええ、ちょうどこの間イモリの黒焼きを購入する際にサンショウウオの燻製も一緒に入手いたしましたので」

初春「イモリの黒焼きはホレ薬として使われますね。とするとサンショウウオは精力剤でしょうか?」

白井「そうなんですの、ですけど燻製では余り効果が無かったようで。やはり生のまま丸呑みしていただかないと……あ゛」



御坂「アンタは誰でその効果を試したのかしら????」ビリビリ



24: 2011/07/24(日) 14:25:10.02 ID:Xyb7XGHi0
                            ☆

打ち止め「ねえねえ、この間のアメリカザリガニの大発生みたいな話が聞きたいなってミサカはミサカはおねだりしてみる」

一方通行「はァ? この間って……部屋中ザリガニだらけになったアレか……チッ、今度は何でだよ?」

打ち止め「えとね、良くも悪くも大量発生して繁栄している生き物っていうのは強いと思うの」

一方通行「まァな」

打ち止め「その生態を知ることで、ミサカ達の今後の生き方の指標が出来るかなってミサカはミサカは人生設計してみたり!」

一方通行「ふーン……だが、タメになるかどォかは知らねェぞ?」

打ち止め「教えてくれるの? やったー!ってミサカはミサカはクルクル回って全身で喜びを表してみたり! で、どんな生き物?」

一方通行「タニシ」

打ち止め「」

25: 2011/07/24(日) 14:26:17.24 ID:Xyb7XGHi0

一方通行「日本でアメリカザリガニが大量発生したよォに、アメリカで日本のマルタニシとオオタニシが大発生してンだってよ」

打ち止め「タニシは淡水に居る小さな巻貝だよねってミサカはミサカは今更ながら確認しておく」

一方通行「あァ。で、大発生の原因もザリガニと似ていて、日本人移民が異国の地でも故郷の味を、とタニシを放流したのが
       元らしィな。日本でも古くからタニシを食ってたンだが移民は19世紀末からなンで100年以上の歴史があンな」

打ち止め「淡水生物は人の手による移殖以外では遠距離移動しにくいからねってミサカはミサカは補足してみたり」


一方通行「海がフェンスになるからな。ンじゃ問題。北米での大発生を支えたタニシの強さってなンだ?」

打ち止め「ほえ?? うーんと、外敵の攻撃から身を守る硬い殻と、乾燥を防ぐ蓋かな?」

一方通行「不正解。硬い殻? ンなもンはカニの腕力やコイの噛み砕きの前じゃ無意味なンだよ。それと乾燥だって万全には守れねェ」

打ち止め「そっかあ、炎天下の石の上に居たら乾燥しなくても壷焼きになっちゃうもんねってミサカはミサカは再び思案……」


一方通行「時間切れだァ、正解はその食性の豊富さ。タニシは雑食性、と言うと普通だがここでは文字通り『何でも食べる』だ。
      肉だろォが魚だろォが植物だろォが何だか分ンねェ有機物だろォが、なンでも栄養に出来る。で食べ方も豊富なンだ。
      植物や肉を削り取って食べる、水底の沈殿物を掬い取って食べる、水をエラで濾して浮遊物を集めて食べる。こォいう
      食性があったからどンな場所でも、例え他の生物が棲めねェ低栄養な環境でさえ、生き残ることが出来たってわけだ」

打ち止め「へええ。魚が無ければ草を、草も無ければ水底のゴミを、それも無ければ水中の浮遊物を、かあ」

一方通行「そォいうことだ。オマエラも一つの事だけに囚われ過ぎると、万が一ソレを失ったら脱け殻みたいになっちまうからな」

打ち止め「次々と目的を持って生きていけ、ってことだねってミサカはミサカは余りに真っ当な教訓に正直ビックリしてみたり」



ガチャっと『ただいまー』



番外個体「で、お約束どおり大量に捕ってきたわけだけど、どうしたらいいのかな?」バケツ イッパイ

芳川桔梗「このジャンボタニシはタニシとは無関係なんだけどね。食べても美味しくないらしいし」




一方通行「……コレがタニシ的生き方だァ」ウンザリ

26: 2011/07/24(日) 14:33:35.62 ID:Xyb7XGHi0
以上が第三回です。最初のパートで中途半端だったナマズ話の完結篇が次回です。

ちなみに、ジャンボタニシことスクミリンゴガイ。作中では美味しくないとか書いてますが実際は
他の淡水生物同様、生息環境次第だったりします。

では、問題作の第四回。ナマズ話です

27: 2011/07/24(日) 14:35:00.79 ID:Xyb7XGHi0
【前回のおさらい】

とうまは、いつもいつも変なことを言うんだけど、今回は度が過ぎてたんだよ。「ナマズ可愛い」ってなにそれ?
だってナマズだよナマズ。あんなヌルヌルで扁平で美味しくて危険で食べやすくて、ってそんな事はどうでもいいんだよ!
魔道書図書館たる私の淡水魚知識を使ってナマズがどれだけ凄い魚かとうまに理解させて、二度と可愛いとか言えないよう
にしてやるんだから。覚悟するんだよ、とうま!!

で、とりあえずナマズ目の多くが電気魚だって紹介したんだけど、ここでおさらいしておくね。


電気魚とは

1)獲物の発する微弱な電気を感知することが出来る感覚器(ロレンチーニ器官など)を持つ

2)常時自ら微弱な電気を起こし、発生した電場の乱れる様子から周囲の状況をレーダーのごとく捉えたり
  同種の魚と電気コミュニケーションを行う(弱電気魚)

3)瞬間的に獲物や外敵を攻撃するための高電圧を発生させる(強電気魚)


このうち(1)さえ持っていれば電気魚である、と言えるの。あ、もちろん(2)が出来る魚は当然(1)も
出来るし、(3)が出来る魚は全ての能力を持ってるんだよ。

強電気魚は有名なデンキウナギやデンキナマズ、弱電気魚はアロワナ目のいくつか、自ら発電しない(1)だけの魚は
サメやエイ、チョウザメやハイギョなどが該当するんだよ。ナマズは大体(1)かも。これら電気魚はその優れた能力で
人間には絶対不可能な100万分の1秒単位の知覚が可能なんだよ。

総じて電気魚って古代魚と呼ばれるタイプに多いのかも。ではではそろそろ本編に行くんだよ!

28: 2011/07/24(日) 14:40:35.37 ID:Xyb7XGHi0

「あの~、インデックスさん? おさらい部分ちょっとクドくないでせう?」

「とうまはうるさいんだよ! 電気とかは子供にも判るから紹介しやすいんだよ、ホントはまだ書き足りないんだよ!!」

「えっと……なんでそんなにキレてるんだか分んねーけど、まあいいか。じゃ、どんどんいこうぜ」

「『そなあ』的なウェーバー器官の説明は面倒だから省くんだよ。ナマズは『れえだあ』常備な魚、って認識でいいかも」 


「ふむ、ところでナマズの仲間って多いのか?」

「魚類全体でいえばナマズ目は種類数で世界第三位のブランドだね」

「ナマズは第三位かあ、何故だか分らないけどしっくりくるな。ちなみに他の順位はどうなってるんだ?」

「2位はコイ目、1位は断トツでスズキ目だね。純淡水魚に限ればナマズ目がトップなんだよ」   


「へえ~、ということは世界中の淡水にナマズの仲間が居るってことか?」

「うん、基本的にどんな山奥の湖だろうが砂漠の小さな小川だろうが洞窟の水源だろうが、ナマズは居るんだよ」

「世界に広がるナマズネットワーク……。大陸移動説の根拠とかになりそうだな」

「その多様性は進化の不思議を読み解く鍵にもなるのかも。次は本当は怖いナマズの話なんだよ」


「ナマズの怖い話? 地震を起こしているのは地面の下に住むオオナマズ、とかじゃないよな?」

「それはナマズが天変地異の前なんかに大暴れする様子から昔の人が想像したお話だけど……」

「地震などの直前に暴れる理由は実際まだ良くわかってないんだってな」

「うん。だからそういう話じゃなくて、ナマズは素手で触ると痛い目をみるよってこと。多くのナマズはトゲがあるんだよ」


29: 2011/07/24(日) 14:41:47.90 ID:Xyb7XGHi0

「トゲ? 針みたいなアレか。ツンツンしてる」

「うん、背びれや胸びれに付いてるんだよ。かなり鋭いから刺さるとちょろっと血が出たりするかも。毒を持つのも居るし」

「うげぇ、痛いのは勘弁だなあ。って何? 毒??」

「ゴンズイって海に戻ったナマズの仲間はトゲに毒があるから絶対に触っちゃダメだよ。本体が氏んでいても毒はあるから」


「あの派手なゴンズイはナマズの仲間だったのか。明るいところで固まってゴンズイ玉なんか作ってるくせに」

「ナマズは臆病で夜行性が多いから意外かもね。ゴンズイの毒は怖いよ。刺されると熱が出たり腫れ上がったり大変なんだよ」

「氏亡例も無くはないからな。海水浴に行くなら特に気をつけようぜ」

「でも、もっと恐ろしいナマズも世界には居るんだよ!」


「もっと怖いナマズ? っていうとジャングルの奥地に居るという女性の股間を襲う『感じるぅう!ナマズ』のことか?」

「とうま! その魚は冗談じゃなく恐ろしいヤツなんだよ! それと感じる、じゃなくて『カンディル』!」

「そうそう、それそれ(まさか実在するとは……)。で、どんなナマズなんだ?」

「魚釣りや水遊びなどで川に入った人や、川で用をたそうとした人の……、開いてる部分から体内に侵入して食べるの」


「た……食べるって人の体をか? ふざけるなよ! そんなトコ食べられたら大変なことになるじゃねえか!」

「カンディルはアンモニアに反応するから、とくにその辺りから侵入してくるんだよ。細長い体も侵入に丁度いいしね」

「と、ちょっと待てインデックス。ナマズにはトゲがあるんだったな? じゃ、一度侵入されると……」

「そう、トゲが釣り針の返しみたいに引っかかって取れなくなるの。引っこ抜くのはまずムリだね。急いで外科処置しないと」

30: 2011/07/24(日) 14:42:50.97 ID:Xyb7XGHi0
「……えーと、その、カンディルの描写は過激になる恐れがあるのでこの辺にしておこうか」

「南アメリカのジャングルで川に入る事さえなければ大丈夫かも。そういう人食いナマズが居るってコトだけ覚えといてね」

「よし! やっぱり日本のナマズだよ、可愛い可愛い日本のナマズの話をしようぜ!」

「はっ……趣旨を忘れかけていたんだよ。じゃ、次はいわゆるナマズ、俗に言うマナマズを紹介するね」


「そういえばナマズは何を食べて生きているんだ?」

「日本の淡水魚としては珍しいほぼ完全な肉食魚なんだよ。獰猛で旺盛、淡水のサメって感じだね」

「ふーん、似たような感覚器官を持っていたし、サメと近い仲間なのかもな」

「だとしても種が分かれて数億年、ってレベルの話だから余り意味がないかも。あ、釣りの対象としてもナマズは人気だね」


「釣りねえ。エサは何を使うんだ?」

「ルアーかな? 生き餌を使うならカエルが一般的みたいだね。ゆさゆさ揺らしてたら飛びついてくるんだって」

「あの……インデックスさん、この話のオチが大体読めてきたのですが」

「そんなの最初からバレバレなんだよ。気にしたら負けかも」


「んー、まあ仕方がないから続けるか。で、釣ったナマズを食べるとして、ナマズって旨いのか?」

「ナマズは小骨が少なく匂いが無く、低脂肪高蛋白でクセの無い上品な白身魚だね。専門店じゃないと中々食べられないけど」

「確かにどうやって処理すればいいかとかわかんねえな。でも美味しいのか……。あと水槽で飼ってる人も多いみたいだな」

「マナマズも飼われてるけど、観賞用のナマズの仲間は豊富だからね。それと信仰の対象になってる地域があるね。九州とか」

31: 2011/07/24(日) 14:43:37.65 ID:Xyb7XGHi0

「とうとう神様になるナマズまで出てきやがったか。凄え、凄えよナマズ!」

「ふふっ……、食用、釣りの対象、観賞用、進化や大陸移動説などの研究材、そして信仰の対象」

「なんて利用価値の豊富な魚なんだ、魅力が多すぎて可愛いとか言ってる場合じゃねえええええ!!」

「そうなんだよ! 分ってくれたみたいでうれしいんだよ、とうま。じゃ最後に、ナマズの特徴をまとめておくんだよ」




電気魚で、ツンツンしてて、世界中至るところに居て、利用価値が非常に高い、カエルが大好きな第三位のブランド魚



「というわけで、あのビリビリは」  「短髪は」



『ナマズをパクッていたんだよーーーーー!!!』ドーン


32: 2011/07/24(日) 14:52:45.90 ID:Xyb7XGHi0
以上、三~四回分でした。

ナマズ話は、何かを考証する時に、最初に結論ありきで始めると筋書きに都合のいい理屈ばかりが目に入って
結論がイイカゲンになりがちだよね、って警告だったりするわけもなく、ただのナマズ話なのです。

40: 2011/07/25(月) 20:06:19.84 ID:USp6H7Zd0
第五回分、投下します。テーマは「みんな。何かを忘れてる」です

ヒル話が加筆されてます、ちょっと気持ち悪いかも。

41: 2011/07/25(月) 20:07:42.06 ID:USp6H7Zd0
   ☆

「なあインデックス、川や用水路にヒルっているだろ。アレは一体どんな悪意の産物なんだ?」

「とうま? 生きとし生けるものは全て我らの父の愛によって守られる尊い存在なんだよ、でもヒルはダメだよね」

「ああ、何しろ見た目がアレだからな。それに血を吸うってなんだよって話」

「あ、でも単に吸血ということだけであれば水生生物には珍しいことではないんだよ」


「へ~、たとえばどんなのが生き血をすするんだ?」

「とりあえず、簡単にヒルの説明をするね。大きく分けるとミミズの仲間だから、体がたくさんの節で出来ているんだよ」

「ふーん、ナメクジのような軟体動物とは違うんだ。それであいつらやたら丈夫なんだな……」

「引っ張っても千切れないし、陸生のヤマビルなんて踏んづけても潰れないらしいね。その不氏身の肉体、まさに吸血鬼かも」


「……ん? まあいいか。で、ヒルはどうして血を吸うんだ? 破裂するくらい吸ってるけどそんなに血ってウマイのかな」

「味は置いといて、実は人間から吸血するヒルは日本には三種しかいないんだよ。チスイビル、ヤマビル、ヌマビルだね」

「へえ。確か日本にはヒルが数十種類いるって話だから、割と珍しい食性なんだな。となるとますますなんで吸血なんだろう?」

「確かな事は言えないけど、例えばヤマビルは数ヶ月~1年に一度の吸血で生きていけるんだって。血って栄養豊富なのかも」


「むしろそれはヒルの生命力を評価する話かもな。ところで咬まれてるときは、実際どんな風になってるんだ?」

「人の体に吸盤状の口でへばり付いたヒルは、口の中の鋭い歯で皮膚を食い破り、ヒルジンなどの血液凝固阻害物質を注入しつつ…」

「…………、」

「血が止まらないようにして吸い続け、その間に水を排出して成分を凝縮しながら、約一時間のお食事が終わるとコロンと離れるの」


「ヒルに咬まれた後、血が止まらないのはそういうカラクリだったんだな……。しかしキツイ話題だぜ」

「唾液に麻酔成分があるから咬まれた事も分らなくて、気が付いたら血まみれなんだよね。吸血量はせいぜい2~3mlくらいだけど」

「血まみれで気付くのもイヤだけど、靴を脱いだら何匹もヒルがくっついていたら……いや、やっぱりダメだ。許せねえ!!」

「吸血で、ヌメヌメで、汚れた水に棲んでいて、知らないうちに血塗れにされる、とか嫌われ要素が多すぎるからね。でもねとうm」


「んああああああ、もういいだろヒルの話題は! もっと爽やかな吸血生物の話をしようぜ、なっ!」

「……、分った。私も正直ヒルの話は辛いんだよ。ケルススとか先端医療の話とか考えてたけど、話題を変えるね」


42: 2011/07/25(月) 20:08:32.68 ID:USp6H7Zd0

「さてさて、他にはどんなカワイイヤツラが生き血を啜るのですかなインデックスさん?」

「いつか話題にした水棲カメムシ類、タガメやアメンボは吸血どころか蛋白質を溶解する酵素を使って肉まで吸っちゃうんだよ」

「……意外と怖いじゃねえか。アイツら確か麻痺毒で獲物を動けなくするっていうし」

「うんうん、あとはホタルやトンボの幼虫も同じような食性だね。水生昆虫はほとんどそうなっちゃうかも」


「ええい、ちっとも爽やかじゃねえよ! 昆虫は無し、他のにしてくれよ!」

「むー、でもとうま? 血を吸うって言うだけでかなりの嫌悪感があるんじゃないかな。爽やかってのは無理かも」

「……、そっか。そもそも蚊やノミだって見た目だけなら悪くないのに嫌われ者だし。無茶な事言っちゃったな、ゴメン」

「いいんだよ。あ、ちなみに体内寄生虫や肉食獣は当然血を摂取するけど、吸血生物ではないからね。吸うってことが大事なんだよ」


「あくまで食性、というか食べ方で分けられるってことだな。で、他にはいないのか?」

「ええと、脊椎動物ではカワヤツメがそうだね。大きな獲物に、吸盤状の口でへばり付いてチュウチュウしちゃうんだって」

「傍目からだと巨大なヒルが憑いてるみたいに見えるんだろうな……、吸血方法もそっくりだし」

「繰り返しになるけどカワヤツメは検索注意なんだよ。人によっては見た目が激しくアウトな生き物だから」


「近縁のヌタウナギの英名が鬼ババアってのも頷けるよなあ……っと、もうそのくらいか?」

「まだまだ居るんだけど、ねえとうま。私たち大事な何かを忘れてないかな。このテーマに欠かせないような……」

「吸血生物を語る上で。欠かせない事? ん~。いや。心当たりは無いけど?」

「忘れるようなことだったのかも? まあ。別に問題ないんだよ」

43: 2011/07/25(月) 20:09:57.43 ID:USp6H7Zd0
            ☆

佐天「そういえばこの間、弟が渓流でイワナのつかみ取りをしたよってメールして来ました。そんな季節ですねー」

初春「涼しそうでいいですね~。イワナは美味しいし、楽しそうです」

白井「つかみ取りというと他にアマゴやニジマスなどが使われますわね。なにか関連性があるんですの?」

御坂「ん~……強いて言うならそれ全部サケの仲間よね。あ、サケのつかみ取りしてるトコもあるわよ」


佐天「サケのつかみ取り?? そりゃまた豪快ですねえ~。で、なんでサケの仲間がつかみ取りには使われるんでしょう?」

初春「そうですねぇ。食べるための遊びですから、食味が良く可食範囲が大きいというのが理由かもしれませんね」

白井「確かにサケ類は食用魚としてはトップクラスの人気ですわね。日本ではその種類も多いんですのよ」

御坂「私、それにはちょっと疑問があるんだけどね。サケ目サケ科はワンパターン過ぎるのよ」


初春「そう言われてみるとサケとマスの明確な違いって無いんですよね。英名の和訳くらいしか根拠が無かったり」

白井「生息する湖の違い以外、見た目も生態も変わらない物が異なる魚種で登録されていたりするんですの?」

御坂「そういうことよ。北海道のサケ類なんてほとんどどれも同じ……いや、もういっそのこと全部シャケって呼べばいいのよ」

佐天「そ、それは言い過ぎだと思います!! サケ類だって種類ごとにちゃんと違いを認めてあげるべきです!」


白井「ま、まあ、少し前に話題になった絶滅したはずのクニマスだってサケ類ですしね。これはお姉様が少々悪いのでは?」

初春「そうですよー、他にも今は外されちゃったけどキュウリウオ目やニギス目だって昔はサケの仲間だったんですから」

御坂「そのアユやハゲイワシの仲間が外れたせいでサケ目はサケ科だけになったんだけどね。でも確かに言い過ぎたわ、ゴメンね」

佐天「いえ、私も熱くなっちゃって。あ、あと、皆さん忘れてますよ。日本最大の淡水魚もサケ類です。なんて名前だっけなー?」


初春「それって、天然物はほとんど誰も見た事がない絶滅寸前のイトウのことですか?」

佐天「……名前だけで良いんじゃないかな、初春。まあとにかく2m以上にもなるらしいですよ。油が乗って美味しいですし」

白井「食用に養殖もされてるんですのね。あ、一応触れておきますけど、サケ目は全て白身魚ですわね」

御坂「サケの身があんな色なのはザリガニと一緒ね。……それにしてもさあ、今回オチがないのよね……どうしようかしら?」





鮭という字は魚へんに圭。うおけい、うおっけい、おっけー、だからオチがなくてもオッケー! どばーん。





白井「無理に落とそうとすると大怪我しますから、たまにはこんな終わり方もいいですの」  『ですよねー』

44: 2011/07/25(月) 20:11:10.95 ID:USp6H7Zd0
                          ☆

打ち止め「ねえねえ、ホタルでお部屋をいっぱいにしたら綺麗だよねってミサカはミサカはアニメを見過ぎてみたり!」

一方通行「……やらねェし、今回だけは番外個体にも捕まえに行かせンなよ? ホタルを捕まえンのは万氏に値すンだよ」

打ち止め「う、うん。分ったってミサカはミサカは聞き分けのいい振りをしてとりあえずやり過ごしてみる」

一方通行「洒落じゃなく今回だけは捕獲すンな、コレだけは絶対守れ。約束破ったら許さねェからな」

打ち止め「わ、分ったよ!ってミサカはミサカはあなたの真剣すぎる態度にますますホタルのことが知りたくなってみたり」

一方通行「良し、説明してやる。どォしてホタルは捕まえちゃいけねェのかしっかり理解しろよォ」


一方通行「と、その前にホタルそのものを良く知っておかねェとな。ンじゃ問題、日本のホタルと言えば?」

打ち止め「楽勝だよー、ゲンジボタルとヘイケボタルだよねってミサカはミサカは速攻即答大正解ー!」

一方通行「まァ、代表的なのはその二種だな。コイツらは淡水で幼虫時代を過ごすンだが、これはむしろ珍しい種類なンだ」

打ち止め「ほえ? 他のホタルは幼虫時代から陸に居るの?」

一方通行「そォだ。だからゲンジボタルなどは水ボタルって言って陸生の物と区別すンだ」

打ち止め「ふーん、でも確かホタルの幼虫の好物は貝だよねってミサカはミサカは博識を披露してみる」

一方通行「あァ。陸生の幼虫はカタツムリを食うのが多いらしィ。水中のほうが貝が多いからと川へ進出したのがその二種だ」


打ち止め「その水ホタルの幼虫は年を越して春に川から出てくるんだよね?」

一方通行「だな、そして夏まで待機だ。ちなみに産卵直後の卵と前蛹期以外は光ンだぜ。サナギもな」

打ち止め「へえ~って、ミサカはミサカは光るサナギって正直どうなのって思っちゃったり」

一方通行「何を主張してンだか分らねェよな……。そしてゲンジボタルなら上陸後1~2ヶ月、ヘイケなら2~4週で羽化だ」



45: 2011/07/25(月) 20:12:40.36 ID:USp6H7Zd0

打ち止め「ホタルの生態は何となく理解したけど、それでどうして捕っちゃいけないのかなってミサカはミサカは質問してみる」

一方通行「良く聞いとけよ。まず第一にホタルを追うのは危ねェんだよ。ホタルが一番湧くのは雨の直後の湿度の高い夜だ。
       暗く視界の悪い中、地盤も弱く水位も高い。そンな時に水辺に行くのは、背の低いガキには殆ど自殺行為なンだよ。
       いいか? 覚えとけ。ガキが雨ン中で川に落ちたらまず助からねェンだぞ」
       
打ち止め「う……うん、ミサカは気をつけるよ……。他にも理由があるの?」

一方通行「あァ。第二に、ホタルの成虫ってのは繁殖の為だけに存在してンだ。相手を探して水しか飲まねェで、命がけでなァ。
       長くて3週間で氏ンじまうその大切な時を、勝手に奪っていい訳ねェだろォ? 水ホタルなら卵は水辺に産まなきゃ
       いけねェンだ。見知らぬ部屋で無駄に光って終わらせる権利なンざ誰にもねェンだよォ!!」

打ち止め「う……、ミサカが間違ってたよ、ってミサカはミサカは短慮を深く反省してみたり」プルプル

一方通行「待て、まだあンだよ。例えばゲンジボタルの幼虫はカワニナって巻貝がエサなンだが一匹が生涯で20個ほど食う。
       ゲンジボタル一匹の命を無駄にするって事は、カワニナ20個、もし部屋中にホタルを撒こうとすンならお前は一体 
       どれだけの命を無駄にすることになるンだろォな? お前はそンな光を綺麗だって楽しめるクズなのか? ア?」



打ち止め「……ミサカは、ミサカは、うぅ……ごめんなさああい、ひっく、絶対捕まえたりしないんだからって」シクシク



一方通行「分りゃイイ、ウゼェから泣くな。……、『恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』って言うだろ?」



打ち止め「……え? 『恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』? ホタルの光は熱くないよね?」ルシフェリン?

番外個体「うんうん、『恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』って蛍光灯なら1万度のプラズマだけどね」アッシュク?

芳川桔梗「こらこら、『恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』、メルヘンでいいじゃない。からかわないの」メッ!




一方通行「……なンでホタルすぐ氏ンでしまうン?」 ズーン

46: 2011/07/25(月) 20:16:21.70 ID:USp6H7Zd0
以上、第五回でした。魚類の話がほとんど出ない、いわゆる中だるみ回だった気がシマス

ではではまた明日ー

47: 2011/07/25(月) 21:12:46.85 ID:USp6H7Zd0
と、間違いが一つ・・・。2パート目で「イトウ」を天然物を誰も見たことない、とか書いてますけど
場所によってはイトウ釣りが出来る場所があるんでした。お詫びして訂正いたします

イトウさんスイマセンでした。

49: 2011/07/26(火) 20:25:38.90 ID:0gZLPaqq0
第六回分の投下です。おさかな話が一切ない番外編なので、いつも以上にぼんやり見ていただければいいかと
無かったので第三パートを追加しておきました。それではどうぞ


50: 2011/07/26(火) 20:27:01.22 ID:0gZLPaqq0
   ☆

「なあインデックス、スシにはワサビが付き物だけど一体何でなんだ?」

「とうまはホントに日本人なのかな? そんなのサムライ時代から常識だと思うんだけど」

「いえーい、完膚なきまでにバカにされましたよっと。いや、食あたり対策だって事くらいは知ってるんだぜ」

「ふーん、それ以外を知りたいってことなんだね。じゃ、今日はおさかなはお休みしてワサビ講座だね」


「そうだな、せっかくだからワサビそのものにも詳しくなっておくか。あれはどんなものなんだ?」

「あ、その前に。今日はいわゆる本ワサビの話をするから、ワサビダイコンとかのことは自力で調べるんだよ」

「色々ゴチャゴチャ言われると混乱するからさ、まあ好きにしてくれよ」

「うん、わかった。まずワサビはアブラナ科の植物で、日本原産だから奈良時代の書物にも出て来るんだよ」


「日本原産の食用植物って意外と少ないんだけど、ワサビはその希少な例だったんだな」

「そうだね。で、あのツーンとしたワサビは主に地下茎をすりおろしたものなんだけど、ワサビの栽培風景って知ってる?」

「ああ、確か山奥で川の中にワサビが並んで育ってたのをテレビで見た気がするなあ」

「うんうん、それだよ。でもね、ワサビは別に水辺の植物じゃないんだよ」


「へえ、てっきり稲やレンコンみたいな物だと思ってたよ。なんでそんな面倒な育て方をしてるんだ?」

「理由はあの辛味成分なんだよ。最初にとうまが言ったようにワサビは殺菌作用で食あたりを防いでいるんだけど」

「ふむ、じゃあ水に漬けて育てるとより辛くなるとか、か?」

「違うよ。ほとんどの植物は根に菌根菌を付けてるの。菌は植物の成長を助けて代わりにデンプンを得るっていう共生関係だね」

51: 2011/07/26(火) 20:27:45.88 ID:0gZLPaqq0


「窒素固定をする根粒菌とかの話だな。……あ、そういうことか。畑で育てると周りの作物の菌を頃して枯らしてしまうんだな?」

「それだけじゃないよ。もし陸地にワサビがあるとワサビ自身も育てなくなるんだよ。ちなみに周辺の土がワサビ味になるんだよ」

「自分の辛味で自分が枯れちゃうのかよ。困ったヤツだなあ」

「だから水辺で栽培するんだよ。辛味成分がどんどん流されていくから、自家中毒を起こさないで大きく育つんだよ」


「強い殺菌力があるってことは分った。他にスシにワサビをつける理由ってあるのか?」

「昔は、ピリっとした辛味と香りで、生臭いネタや味がぼけたネタでも食べられるようにって事だったみたいだね」

「江戸時代はスシは屋台で出ていたんだってな。当然新鮮なネタばかりって訳でもないんだろうし。江戸前の技ってやつか」

「うんうん、でもねとうま。あくまでもおすしにとってワサビは引き立て役なんだよ。無いと寂しいんだけど目立っちゃダメなの」


「そりゃそうだ。ワサビ大増量のスシなんてただの罰ゲームじゃねえか」

「大量摂取すれば人間でも中毒を起こすしね。現代のおすしにとってワサビはネタの味をハッキリさせる為にあると言える、かな」

「味が気に入らないから辛口でネタを殺そうとすれば、ワサビが自分の辛味で枯れちまうようにスシを味わう舌も氏んじまうよな」

「おすしは美味しく食べたいよね。だったら嫌なネタは流すのがいいんだよ。そのほうがみんな幸せなんだから」


「よっし、ありがとなインデックス。じゃあ今晩の夕食は奮発して」

「なになにとうま、おすし食べに連れて行ってくれるの!?」

「シャキシャキモヤシのにぎり寿司風、豆もやしの軍艦巻き風、モヤシのソテー入りちらし寿司風の豪華フルコースだあ!」

「……ワサビをお寿司屋さんでは『なみだ』っていうんだよ。そのフルコースじゃあ『なみだ』も出ないんだよ!!!」

52: 2011/07/26(火) 20:28:32.01 ID:0gZLPaqq0
                       ☆

「白井さん、御坂さんって電撃を光速で撃ち出す事が出来るって本当ですか?」

「ええ、事実ですわよ初春。ご自身でもそのように理解して扱っておられるようですし」

「でも、それっておかしくないですか?」

「はあ? といいますと?」


「電子といえども質量のあるものですから、光速にしたら無限大まで重くなっちゃうじゃないですか」

「小学校で習いましたわね、物質は光速下では無限大の重力質量を持つように見えるって話。で、そこに何か問題でも?」

「無限大の質量を持つ粒子なんてブラックホールみたいなものじゃないですか。でもそういう現象は起きてないようですし」

「ああ、そういうことですの。でしたら電波、のような状態でお使いになっていると解釈するなら問題ないのでは?」


「え、でも電子線って粒子線ですよね? 波形であれば電磁波、それなら光速であっても当然ですけど……」

「確かに電磁波ではレーザーにはなっても電撃とは言えませんわね、ふむ。少々考えて見ましょうか、お姉様の電撃の正体を」

53: 2011/07/26(火) 20:29:31.32 ID:0gZLPaqq0

「とりあえず、光速で撃ち出されるものである、と決め付けて考察しましょう。そうなると粒子状態ではダメなんですよね」

「かといって波形でもダメ、となると。波形でも粒でもない状態、ということは考えられませんの?」

「どちらにもつかない曖昧な状態の電子を操って光速ビーム砲を……あれ、なんか違和感がスッゴイですコレ」

「ふむー、その状態ではエネルギー量も電荷も定かではありませんわね。別の方向を考えましょう」


「では、この考えはどうでしょうか。御坂さんが扱っているのは電気の性質を持つ別の何か、である」

「また何やら小難しくなりましたわね。つまり、光速になっても既存の物理法則に従わない物質を作り出していると?」

「そうですそうです、私の電撃に常識は通用しないのよ! みたいな。………………、なぜだか物凄い悪寒が。これも違いますね」

「良く考えたらそれは考察の放棄のような設定ですわよ? 他の可能性を当たってみましょう」


「うーん、ところで御坂さん自身は自分の能力の原理を良く理解されているんですかね?」

「当然でしょう初春。LV5がLV5である所以、そのものを疑ってどうするのですの」

「そう、ですよね。いえ、私たちが考えても答えがなかなか出ないから、ひょっとして自分でも良く分らない力なんじゃないかって」

「理屈も分らないままでは加減も何もあったものではありませんの。真面目に考えてくださいまし」


「……となると、こういうのはどうでしょう? 御坂さん自身も私たちも、勘違いをしているっていうのは」

「初春、何を馬鹿な事を言い出すのです。実際は光速で撃ってなどいない、そのつもりになっているだけだ、とでも?」

「ですです、仮に御坂さんが高位の精神系能力者であれば研究者すら巻き込んで事実を誤認させ続けることが……」

「その可能性だけは微塵もあってはならないですの!!! あんなの☆とお姉様を同じ仲間にしないで下さいですの!!!」





「むむ~~~、結局よく分りませんでしたね。まあご本人に聞いてみればいいんですけどね」

「それでもパーソナルリアリティに関わる問題ですから、他人が聞いても理解可能ではないかも知れませんわよ?」

「否定は出来ませんね。それにしても、もし本当に電子を光速で飛ばせるとしたら物凄い能力ですよねー」

「実際そういう装置がありますわね。たしか粒子加速器とか……、これこそ言っちゃいけないような気がするんですの」




「電撃を荷電粒子の玉突きと見做せば光速越えたっていいじゃない! ま、でもたまには頭使うのもいいわよね。ほっとこ」

54: 2011/07/26(火) 20:30:54.57 ID:0gZLPaqq0
                             ☆


打ち止め「ねえねえ、フルートって楽器は金属で出来てるのにどうして木管楽器の仲間なのってミサカはミサカは訊ねてみる」

一方通行「……ハァ? 俺はバカなクイズ番組の解答者じゃねェ。何でも聞きゃイイってもンじゃねェぞ!?」

打ち止め「あ、さすがにこういう文化的な疑問は答えられないのかな、ってミサカはミサカは聞く人を間違えたと後悔してみたり」

一方通行「ザケンなクソガキ! 質問が安易過ぎンだっつーの。『発音方法による分類』『元は木製だった』、好きな方選びやがれ!」


打ち止め「ちょ、ちょっと突き放しすぎかもって、ミサカはミサカはせめてもうちょっと分りやすい解説をお願いしてみる」

一方通行「チッ……、つまり前者は息を使って演奏する楽器、つまり管楽器のうち唇を閉じて息を吹く時の振動、いわゆるブルブル音を
       増幅することで音を出す、日本語で言うところのラッパかどうかって事だ。管楽器でありラッパであれば金管楽器って事だ。
       フルートはエアリードつって……、笛はラッパじゃねェから木管楽器ってこった。材質は関係ねェって分類だな」


打ち止め「今、一瞬誤魔化さなかった? ってミサカはミサカはスルーしようかどうか迷いつつ一応聞いてみる」
 
一方通行「エアリードの正確な説明なンてフルート奏者でも出来ねェンだよ! 空き缶の飲み口に息を吹きかけると鳴る現象、アレだ。
       まだ知りたきゃ自分で調べろ。ンで、後者は管弦楽にフルートが登場した当初は木製だったから、今も木管楽器ってこった」



55: 2011/07/26(火) 20:32:18.66 ID:0gZLPaqq0

打ち止め「ふうん。聞いてみればなーんだって理由なんだねってミサカはミサカは、あ! じゃあ反対に木製の金管楽器ってあるの?」
 
一方通行「あった、と言うのが正しいのかねェ。例えばコルネットとセルパンって楽器だ」

打ち止め「セルパンっていうのは知らないけど、コルネットって普通のトランペットじゃないの?」

一方通行「楽器名ではこォいう混同がしょっちゅう起きンだよな。そもそもお前の言ってるコルネットとトランペットは別の楽器だし。
       コルネットは若干小せェって覚えとけ。で、俺の言ってンのはまた全然別の楽器で、木製の縦笛のような格好をしてンだが
 それを強引に金管楽器の唇ブルブル音で鳴らすってヤツだ。音程の不安定さ、音量不足、それらが原因で演奏が難しいなど
       様々な理由で現在のトランペットやコルネットに負けて一線を退いた楽器だ。ちなみに、現在のコルネットと区別するため
       廃れた方はツィンクって呼ぶ事もあンだってよ」


打ち止め「ツィンクってなんかカワイイ名前だね。そしてセルパンっていうのはどういう楽器なの?」

一方通行「ツィンクはトランペットの音程、つまり高音を担当してンだが一方セルパンは低音、ベース音ってのか? そォいう楽器だ。
       原理はツィンクと同じ楽器なンだが、低音域を出すために管を長くする必要がありつつ、且つ一人での演奏を可能にするため
  ウネウネと曲げてある。見た目は名前通りセルパン(海蛇)って感じだなァ。コレもまたさっきのと同じ理由で後続の楽器に
       居場所を奪われちまったって訳だ。今はセルパンの楽譜はテューバが代わりに担当することが多いンだとよ」



打ち止め「栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常だねってミサカはミサカは風の中の塵のように儚い楽器達を思ってみたり」

番外個体「ベルリオーズの幻想交響曲の『断頭台への行進』でウッホウッホウッホウッホってヤってんのがセルパンだっけ?」

一方通行「……イヤ、ありゃオフィクライデだ。まァ楽譜ではそォ指定されててもテューバが演奏すンのが普通だろォがな」

芳川桔梗「じゃあ同じ幻想交響曲の『ワルプルギスの夜の夢』の Dies irae もそれなのね。弦バスとボントロだけだと思ってたわ」








打ち止め「あのね、みんないつもの見事なツッコミが入るの待ってるんだよ? ってミサカはミサカは催促してみたり」

一方通行「なンでも見境なくツッコむと思ったら大間違いなンだよ! どれ選んでも大怪我すンじゃねェか!」

56: 2011/07/26(火) 20:36:45.41 ID:0gZLPaqq0
以上、番外編の第六回分でした。第三パートは、音楽用語のカッコよさは異常だよねって思っただけなんです

次回からは通常のおさかな話に戻ります~。ではまた明日

57: 2011/07/27(水) 20:37:18.86 ID:eM8LnRjG0
第七回分、投下します。コレと次回分は総合の現行に投下したものの加筆修正版なのですが

多分コッチの方が読みやすいので、既読の方も良ければどうぞ。「帰って来たおさかな話」です

58: 2011/07/27(水) 20:38:45.87 ID:eM8LnRjG0
             ☆

「なあインデックス、スーパーで売ってるシジミって生きてるけど、そのまま水槽で飼育できるのか?」

「とうま? 日本で食用とされるシジミはほとんどが汽水域に生息するヤマトシジミなんだよ。半分くらいは宍道湖産かも」

「汽水域っていうと、河口みたいなの真水と海水が混じり合うトコだよな。ってことは普通の水ではダメだろうな」

「ちょうどいい飼育水を常時用意するのは困難かも。でも、真水でも大丈夫なシジミもいるんだよ。マシジミっていうんだけど」


「ふ~ん、マシジミねえ。それはちなみに食べられるのか?」

「うん、立派に食用だよ。ただ、汚い水の中でも平気な外来種と間違えやすいから見分けられない場合は食べないほうがいいかも」

「そこまで似てるニセモノがいるんだな。まあそれはいいとして、本物は川に行けば居るのか?」

「だね。本物かどうかは保証しないけど河川の中~上流、流れのゆるい岸で、砂利や砂地のトコをじっと見ると多分落ちてるよ」


「よーし、んじゃ拾ってきたとしてどうやって飼うんだ?」

「とうま!? 水槽ネタ水槽ネタと言いながら、飼育方法に言及するのってこれが初めてじゃないかな」

「んー、そうだっけ? まあどうでもいいじゃねえか。とりあえずいつものようにマシジミ講座してくれよ」

「飼うとなったらしっかり知っておかないとね。マシジミは繁殖も生活も淡水で行う、雌雄同体で卵胎生の二枚貝だよ。以上!!」


「オイ! いつも以上に適当過ぎやしませんかインデックスさん??」

「あ、いまのはヤマトシジミとの違いを言っただけだから。心配しなくてもこの後ゆっくり説明するんだよ。焦っちゃダメかも」

「くっ……、じゃあ水槽を用意しました。底に砂を敷きました。マシジミを入れました。後はどうするんだよ?」

「底砂はホントに川の砂じゃなくても、赤玉土とか細かい砂利でも水が濁らなければいいかも。次は水草を入れないとね」




59: 2011/07/27(水) 20:39:46.95 ID:eM8LnRjG0

「水草ねえ。あ、そういや水槽っていうとポンプとかフィルターとかそういうの要るんじゃないのか?」

「あればもちろんいいんだけどね、特に二枚貝は酸欠に弱いからエアレーション的に。でも今回は無しで、そのためにも水草なんだよ」

「ふむ。んじゃまあ、根を張らないような水草を入れました。水は生息地のもの、無ければ水道水を処理して。次は?」

「シジミは動きが少ない上に、水を吸って栄養を取る生き物だから水流が無いとダメなの。だから酸欠に強いメダカか金魚を入れるの」


「メダカや金魚は水面から底まで良く動くからね……って、オイ! これじゃ普通の金魚鉢じゃねえか! シジミ潜っちまうし!!」

「気づいちゃった……? でもでも、シジミは水を吸って、プランクトンを始めとする汚れの元を食べてくれるんだよ!」

「お陰で水槽の中はいつでもピッカピカって、いやいや。シジミを飼ってるって実感は持てねえのかよ?」

「……あるにはあるんだよ。貝類は氏ぬと体組織が溶けて広がるから、すっごく水が汚れるんだよ」


「あんまりだ……そんなのってねえよ! 元気な時は金魚やメダカが優雅に泳ぐ姿を演出し続けて、目立つのは氏ぬ時だけなんて」

「ま、まあ、温度だけ、水温が極端に上がりさえしなければ多分そんなに氏なないんだよ。水質浄化用に飼う人は割と多いかも」

「夏場は要注意ってことだな、他のおさかなを飼う場合にも言える事だけど」

「うん、水温を下げるのは難しいからね。それにしても派手な活躍は無くても地味にいい仕事するマシジミって素敵かも」シミジミ



「普段全然出てこないけど、その存在感の無さが活躍の証。じっと動きもせず一日中何か食ってるマシジミの話だったけど」

「飼育に関しての内容はかなり省略してるから、ホントに飼いたいって人はちゃんと調べることをオススメするんだよ」

「水替えとか掃除方法とか適正水量とかPHとか、雌雄同体かつ三倍体で雄性発生の自家受精って何? とか、ほんと説明不足だよな」

「私はマシジミだから。一人で何でも解決しちゃうヒーローになっちゃダメなんだよ。目立たないことが大切なのかも」ホクホク



「(マシジミは噛み付かねえし、静かだし、水槽の掃除役だし、エサ代かからねえし、……ここはツッコむトコなのか?)」ブツブツ


「とうま? 何か言いたいことがあるならハッキリ言えばいいんだよ?」キョトン

「イヤ、別に。…………、俺も貝になりてえ、ってな……」


60: 2011/07/27(水) 20:40:46.02 ID:eM8LnRjG0
                             ☆

初春「めーんめんメ~ダカは目がデカい~、デッカい目っ玉でメダカだよ~♪」

佐天「いや、ゴメン初春。そんな知らない歌じゃ盛り上がれないよ。それにメダカはかわいいけど、食べれないじゃん?」

御坂「え、佐天さん何言ってるのよ? メダカは地方によっては今も食用だし、昔は胸の薬としても使われていたのよ?」

白井「誤解のないように申し上げておきますけど、胸の薬と言っても肺の病や母乳の出を良くする、って意味合いですの」


初春「だれも誤解しませんよー。ところでメダカって身近なようで知らないことの多い魚ですよね」

佐天「ん、身近って言えるのかなあ? 確か絶滅危惧種なんでしょ?」

御坂「それにはちょっと複雑な事情があるんだけど、まあ地域ごとに大切に保護したい魚ではあるわね」

白井「メダカは特に繁殖行動の面で注目せざるを得ない魚なんですのよ。その点を私、白井黒子が説明いたしますわ」


61: 2011/07/27(水) 20:42:36.47 ID:eM8LnRjG0

白井「メダカのオスメスの見分け方は簡単で背びれに切れ込みがあって尻びれ……お腹の下の長いヒレですけどコレが
    平行四辺形ならそれはオスですわね。メスは背びれに切れ込みが無く尻びれが三角、繁殖期にはお腹がボテっと
してくるのでそれで判りますの。あとオスの中には胸ビレ……体の大体真ん中の下部にある一対のヒレですけど
コレが黒く変色するものがおりますのでそれも見分けるポイントになるかと。繁殖を観察するならメスに対して
    オスを多めに飼育する事をオススメしますわ……。では、ここまで何か質問がありましたら答えますわよー?」


初春「そんなの皆、小学校で習ってますよー、次へ行ってくださーい」


白井「ぐぬっ……、後で覚悟なさい初春! で、寒い冬を越して春に段々と水温が上がってまいりますと20℃を越えた
    頃から繁殖が始まり25℃くらいがピークになりますの。このころに水槽内で見られるのがメスを争うオス同士の
    戦いですの。オスは自分の力を見せ付けてメスにアピールして、いよいよ交尾……。とても体外受精をする魚類
    とは思えない熱い愛の抱擁をするんですの!」


御坂「さっき言ってたオスの背びれと尻びれでメスを横から抱きかかえてね、こう、揺さぶるのよ。タマゴを産むように刺激を与えて」



白井「ええのんかー、これがええのんかー、おっほ、ようけ出したやないか。よしよしオッちゃんが種付けたるさかいなあ、ですの」



佐天「ちょ、白井さん! お店の中でそんな大声で。後ろの人に見られてますよ! ……まあ、それでオスが放精して完了ですか?」

初春「そうですけど、世の中はそんな良い子だけで出来ていないんですよ、佐天さん」



白井「ですの。オス同士の戦いで勝利した個体がメスを獲得しましたけど、負けた魚たちも諦めませんの。彼らはカップルを
遠巻きに見て交尾の時をじっと待つんですの。そしてメスが産卵を始めたら一気に隙を突いて近寄りパパッと放精して
    逃げたり、交尾が終わったばかりのタマゴを持ったメスにパートナーの目を盗んで近寄って放精したり。とまあ、一見
かなり情けないことをするんですの」

御坂「メダカの場合はそういう行動をスニーキング、そういうオスをスニーカーって呼ぶわね。ただ似たような事をする魚は
   結構居るけど場合によって用語が変わることもあるから注意が必要ね」

白井「で、いろいろあって受精完了したタマゴはメスのお腹の下に10個くらいぶら下がってしばらく大事に守られるのですけど
   数時間後には水草や植物の根など簡単に流されない所に付けられて、そこで孵化を待つことになるんですの」

御坂「ただし、メダカのタマゴは川の生き物にとって良質のエサ……、あろうことか産んだ母親もその卵を喜んで食べちゃうのよ」

初春「淡水、しかも川っていうのは低栄養な環境ですから。口に入る大きさの物は迷わず入れるって本能があるので仕方がないですね」



佐天「本来守るべきものを食べちゃうのかあ、……それって悲劇ですよね」




??(自分はスニーカーでもストーカーでもないですし、守るべき者を食べるなんて考えられません。……卵、美味しいんですかね?)


62: 2011/07/27(水) 20:44:07.28 ID:eM8LnRjG0
                           
                             ☆

打ち止め「人は~だれで~も~、未知のォ世界に マコガレイ~♪ ってミサカはミサカはニモって男か女か気になっていたり」

一方通行「……。」

打ち止め「あれれ? 聞いてないのかなって、ミサカはミサカはニモの性別について質問を繰り返してみるー!」

一方通行「……あのなァ、流石に話題が古過ぎンだろ、ソレ? 渾身のギャグもダダ滑りじゃねェか」


打ち止め「むぅううううう、良い物は時代を超えて価値が受け継がれていくんだもんってミサカはミサカは懐古主義的発想を展開する!」

一方通行「ンな大げさなもンじゃねェ! まァイイ。ニモってアレだろ、クマノミ……だよな」

打ち止め「そうだよ、カクレクマノミ。サンゴ礁の海でイソギンチャクの中に住んでるんだよってミサカはミサカは説明してみる」

一方通行「で、ガキなンだよな。だったら簡単だ。性別は無い、つーか性的に未成熟だ」


打ち止め「むむむ? 良くわかんないんだけどってミサカはミサカはちゃんとした説明を要求してみる」

一方通行「チッ……、クマノミを理解するにはまず、魚類の性転換について知る必要があンだが」

打ち止め「え……男の子が女の子になっちゃうっていう、おネ……」

一方通行「そォいう余計な知識は捨てて聞けェ! まァざっくり説明すっと、ある種の魚類では体のサイズで性別が決まンだよ」


打ち止め「ますます混乱してきたよ??? ってミサカはミサカは黙って次の説明を促してみたり」

一方通行「黙ってねェけどな。で、成長に従いオス→メスになるのを雄性先熟、逆を雌性先熟って……、用語はどォでもイイか」

打ち止め「小さいとオスで大きくなるとメスになる、またはその逆ってことかなってミサカはミサカは脳みそフル回転ぐりんぐりん」

一方通行「ン、やりゃ出来ンじゃねェか、そォ言うこった。それを踏まえてクマノミの説明に入ンぞ」


63: 2011/07/27(水) 20:45:30.39 ID:eM8LnRjG0

一方通行「クマノミはカップルで卵や稚魚を守るンだが、オスとメスは一匹ずつしか居ねェ。これは群れの中での大きさの順番で性別が
       決まるからなンだ。その法則はこォなっている。一番大きな個体がメス、二番目がオス、第三位以下はオスでもメスでもない
       未成熟っていう具合にな。だからさっきの用語を使うならクマノミは雄性先熟ってことになるな」

打ち止め「ほぉお、第一位はメスで第二位がオス、第三位はまだお子様って事だねってミサカはミサカは……」

一方通行「その考え方だとこの先キツイぞ? 例えば、この群れから第二位が居なくなると、第三位が繰り上がってオスになる」


打ち止め「第三位が繰り上がってオスに変化……相手は第一位のメス……イメージ中」モンモン……       

                                               イヤーーーーーー…… オエッ、オエッ




一方通行「……どっかで関係ねェヤツがキツくなっちまったみてェだな。ンで、ニモの場合なンだが……」


打ち止め「あああああ、そっか! あの話だと……」

一方通行「だろォ? まァ、ガキとして描かれているンで性転換は何故かどちらにも起こらなかったと捉えるべきなンだろォが」

打ち止め「それにしても、第三位はオスになるしかないのかな、ってミサカはミサカはアイデンティティが崩壊の危機だったり」

一方通行「心配しなくても陸上の脊椎動物では種として性転換が起こるものはいねェから安心しとけ」


打ち止め「よかった、ってミサカはミサカは半分冗談なのに気を使ってくれたあなたの優しさがちょっぴり怖かったり」

一方通行「ウゼェ……まさに未成熟、ガキそのものだなァ」ケケッ

打ち止め「ひどーーーい!! ミサカを引ん剥いたりお風呂に入ってきたりして何度も裸を見てるのに、性別不定だなんて!!!」


 フラフラ~

番外個体「うぷっ、まだキモチワルイ……。おい、そんなことより第一位の性別がハッキリしないとこっちは寝てらんないんだけど!」






一方通行「……だから見りゃわかンだろォが!! その話題もそろそろ古ィンだよォ!!!」

64: 2011/07/27(水) 20:51:32.75 ID:eM8LnRjG0
以上、第七回分でした。

作中のスーパーで売ってるシジミ、コレを淡水で飼育する事は不可能ではありません。但し、一週間で半分は氏に
一ヶ月で八割は氏ぬくらい(体験談)なのでオススメはしません。繁殖も期待できませんしね。

次回で過去作は最後になります。なにかテーマは無いものかと探しつつ、また明日~。

70: 2011/07/28(木) 20:54:16.96 ID:Oc7893yo0
第八回分、投下します。コレで過去作はオシマイです。

本来、コレは最終回として書いたモノだったのですが、投下時にミスしたためサヨナラが言えなかった
そんな回でした。そして今に至る。

第三パート、最後に軽いオマケを付けておきました(長い解説が無かったから)。ではどうぞ。

71: 2011/07/28(木) 20:56:20.58 ID:Oc7893yo0
                     ☆

「なあインデックス、お前の好きな素麺がいっぱい届く季節なんだけど。そもそもお中元って何のためにあるんだ?」

「とうま? うん、美味しいけど……、それはともかくお中元は日ごろの感謝や息災を相手に示す、って行事だね」

「いや、分るんだけどさ。なんで贈り物をしなくちゃいけねえのかって。挨拶で充分だと思わないか?」

「とうまはイマドキの若者みたいな事を言うんだね。贈り物にはちゃんと意味があるんだよ。それは魔術的とも言えるかも」


「オイオイ、お中元が魔術儀式とでも言うのかよ。……、つっても否定できる知識も無いんだけどさ」

「歴史的には古代日本に渡ってきた中国の習慣が元になっているんだよ。今と内容は違うけどね」

「ふむ、そのころのお中元はどういうものだったんだ?」

「昔の中国のお中元は、今まで犯した罪の償いの為に、一日中焚き火をして神様に御供え物をする行事だったみたいだね」


「へえ。で、それが渡来して結局どう変化したんだ?」

「日本では土着の精霊信仰と結びついて、一年の中日に先祖の霊を呼び、御供え物をして感謝を示す日になったんだよ」

「ふーん。ご先祖、つまり氏者を祀る行事ね……。ってオイ! それは結局お盆のことって訳じゃねえのか?」

「仏教の盂蘭盆会、お盆が伝来するより前からお中元はあったんだよ。だから仏教浸透後に再びお中元は変化するの」


「そりゃ意味が被っちまうし、時期もほとんど一緒だからな。で、結局どんな日になったんだ?」

「ご先祖さまに感謝するのはお盆、じゃあお中元には自分達が生きている事を喜ぼう、って行事になったんだよ」

「お盆が氏者の祭りで、お中元は生者の祭り、って訳か。ちなみにそれはいつぐらいの話なんだ?」

「2つの行事が完全に分かれたのは室町時代のころかな。贈り物をする習慣が出来たのもこの頃なのかも」


「御供え物が精霊や神様からご先祖さまに渡って、で今度は生きている人間に渡り、今に至るって訳か?」

「そういう理解でいいかも。つまりお中元の贈り物っていうのは贖罪や感謝や生存報告、いろんな意味が詰まってるんだよ」

「なるほどねえ。まあギフトな行事にしたのは百貨店の陰謀だったりするかもだけど、ちゃんと根拠はあるんだな」

「うんうん。江戸時代には現在と同様の、親しい者同士や御世話になってる人への贈り物をする習俗になっていたんだよ」

72: 2011/07/28(木) 20:57:15.34 ID:Oc7893yo0

「ふむふむふむ。いや、いつもながらに勉強になったぜ。……、あ!!! おさかな話するのを忘れてた!!!」

「……。大丈夫、まだ慌てるような時間じゃないんだよ。私の知識を使えばここからでもおさかな話になるんだよ!」

「おお! 頼むぞインデックス!!」

「舟盛りに乗ったつもりで任せるんだよ! ……、お供え、贈り物、氏者、贖罪、魚…………、サバ!」チーン! 


「サバ? 魚へんに青いと書いて鯖、のサバか?」

「うん、江戸時代の将軍家へのお中元の贈り物はサバに決まっていたんだよ。町人はうどんやおそうめんだったんだけどね」

「ほほう、そりゃまたなんでサバ限定だったんだ?」

「太古、神への供物は生ものに限られてて、それは『生飯』って書いて『さば』って読むんだけど、それに因んだのかも?」


「伝統を受け継いで生飯(さば)を贈るってことは、将軍家は神に等しいって周知させる意図があったのかな?」

「そこは良く分らないけどね。ただ生サバはさすがにムリだったみたいで贈る際には開いて干物にしてたみたい」

「冷蔵なんてねえ時代にサバだからな。『サバの活き腐れ』なんていうくらいすぐ痛んじまうんだろ?」

「サバが痛みやすいっていうのは、氏ぬと食中毒の原因になるヒスタミンが生成されるのが一番の原因みたいだけどね」


「実際は全ての青魚がそうみたいだけどな。でもサバは脂肪分の多い魚だから実際に悪くなりやすいって事もあるだろ?」

「もちろんそうだね。あと、内臓に居る寄生虫(アニサキス)が鮮度が落ちてくると肉の中に入ってくるからそれも原因かも」

「釣りでサバを持ち帰りするなら、その場できちんと処理する必要があるって訳だな。サバ折りとか……」

「そして運搬は必ず氷温で。コレだけ守ればたぶん大丈夫なんだよ。でも残念だけどサバアレルギーってのもあるんだよね」


「そんなふうに食あたりの原因が多かったせいで、足の早い(腐りやすい)魚扱いされてた訳か。なんか気の毒だな」

「足なんて無いのにね。それはともかく、お中元の歴史からサバのお話になんとか繋げたよ! 私、えらい?」ドヤッ

「正直どっちの話も中途半端な感は否めないけどな。まあでも、うん、えらいえらい。ご褒美に晩飯は素麺だぜ!」

「とうま……、どうしてご褒美がおそうめんなんだよ!!!???」



「贖罪と氏者への供物、生命への感謝など様々な意味が詰まったサバの代用品の素麺、魔術サイドなら最高のご馳走だろ?」

「とうまに言い負かされるとは、一生の不覚なんだよ……」ズーン




73: 2011/07/28(木) 20:59:03.43 ID:Oc7893yo0
               ☆

佐天「ウニって、漢字で書くと『海胆』とか『海栗』とか『雲丹』とかありますけど、違いってあるんですか?」

初春「前の二つは同じでいいですけど、『雲丹』は既に氏んでますね」ウン

御坂「それはちょっと語弊があるんじゃないかな。『雲丹』は食べ物、それ以外は生き物って覚えるといいわよ」

白井「そう言えば、ウニは全ての生き物の中で最も好色な種類の一つなんですのよ。ウニの分際で」


佐天「好色って、工口いって事ですか? ……あのイガグリ頭の中は色々な工口工口が詰まってるのかあ」

初春「いえ、ウニには頭が無いんですよ佐天さん。だから顔も無いし前後左右の区別もありません」

白井「というか脳が無いのですの。だから目も鼻も耳もありませんし、ついでに言うと心臓も無いんですの」

御坂「殻を割ると分るんだけど、生殖腺以外はほぼ空洞なのよね。そんなシンプルな生物のくせに雌雄があるの」


佐天「ふむふむ、まさにエOチの為だけに生きてるようなヤツですね。でも、ちょっと変過ぎて理解が追いつかない……」

初春「空洞には海水が入ってそれが血液の代わりだったり、確かに常識外の生き物です。何の仲間なんですかね?」

白井「ウニは棘皮動物と呼ばれる種類ですけれども、その意味ではヒトデの親戚なんですの」

御坂「ヒトデは五芒星形☆してるでしょ? ウニも実はそうなのよね。トゲで見難いけど、五放射状に体が作られてるの」


佐天「ヒトデの仲間かあ……、正直ヒトデも良く分らないんですけど。そういえばウニって何を食べるんですか?」

初春「殻から触手みたいなのを出して移動しつつ、海草や海底の堆積物を探して食べるみたいですね」

御坂「感覚器官も無いのにどうやって食べ物を探すかというと、コレがまた常識ハズレなのよ」

白井「体全体を一つの目、一つの鼻として機能させて食べ物や交配相手を探すようですわね。光センサーのように」


佐天「前後左右の区別が無いだけに、却って全方位に氏角の無いセンサーってわけですね。すごいなあ、ウニって」

初春「それに、棘皮動物ってほぼ不氏身ですしね」

御坂「シンプルな構造してるからか、体のどこを切断してもまず氏なないし、傷もあっという間に回復しちゃうのよね」

白井「切断方法によっては分裂再生するくらいですのよ。まあでも無敵、と呼ぶには攻撃力が無さ過ぎますけど」


佐天「いくら不氏身でも、丸ごと食べられてしまえば負けですもんね」

初春「ですね、食べちゃえばいいんですよ。ウニなんて」

御坂「ん? なんだか分んないけど、ウニは美味しいわよね。獲れたて生ウニなら最高よね」

白井「何の話か分りませんけれど、ウニの白子は食べると猛烈にお腹を壊しますから、ぜーったい食べちゃダメなんですのよ!」




74: 2011/07/28(木) 21:00:18.32 ID:Oc7893yo0
                                            ☆

打ち止め「ねえねえ、魚類の中で一番強いのってなあに? ってミサカはミサカは割とベタな疑問を投げかけてみたり」

一方通行「また漠然としてンな……。強いってどォいう意味で言ってンだよ? サイキョーにも種類があンだよ」

打ち止め「え、あ、そんなに細かく考えて無かったよ、ってミサカはミサカはいろんなサイキョーを知ってみたくなったり!」

一方通行「メンドクセェ……、ンじゃ適当に答えてやっから気楽に聞ィとけ」


一方通行「まずは……、そォだな。一番デケェ魚。体の大きさっつーのはそのまま耐久力、繁殖力、攻撃力に繋がるからな」

打ち止め「コレはミサカも知ってるよー。一番大きな魚はジンベイザメだよね、ってミサカはミサカの先手必勝~」

一方通行「やるじゃねェか。そォ、ジンベイザメだ。最大体長18m、最大体重15t以上って文字通りのモンスターだ」

打ち止め「ちょっと想像もつかない大きさだよね、ってミサカはミサカはコレで決定しそうになってみたり」


一方通行「焦ンじゃねェよクソガキ。次は一番種類の多い魚、つまり一番繁栄してる種類って事だな」

打ち止め「一番種類が多いってことは、他の魚より優れた点が多かった証拠だもんね、ってミサカはミサカは補足してみる」

一方通行「だな。ンで魚類全体約三万種の30~50%を占める巨大な一群、圧倒的第一位、それがスズキ目だ」

打ち止め「そ、そんなにスズキ目が多いのって何でなの? ってミサカはミサカは不思議に思ってみたり」


一方通行「実はカラクリがあって、例えば種類別第三位のナマズ目などと異なりスズキ目には全体で共通する特徴がねェ」

打ち止め「え!? それじゃあ同じ仲間とは言えない気が……。どうやって分類したの?」

一方通行「その辺は細かくなるし面白くもねェから触れねェが、まァ簡単に言うとまだ研究途上ってトコか?」

打ち止め「代表的な特徴をどれか一つでも持ってれば仲間にしちゃってたのかな、ってミサカはミサカは短絡的に非難してみたり」

一方通行「鯛もマグロもヒラメも雷魚もスズキ目って事に違和感覚えとけばイイ。コレでスズキの話は終わりだ。」

打ち止め「分ったよ、ってミサカはミサカは今一つ納得いかない気分だけど次の話題に興味津々だったり」




75: 2011/07/28(木) 21:01:30.27 ID:Oc7893yo0

一方通行「ンじゃ次は環境適応性、何処でも生きて行ければそれもサイキョーだろ?」

打ち止め「他の魚よりタフってことだね、ってミサカはミサカはコワモテなゴッツイ魚を想像してみる」

一方通行「残念だがそのイメージじゃねェな。正解は三下の中の三下魚、メダカだ」

打ち止め「ほえ、メダカってあの小川で戯れる薄黄色の小魚だよね、ってミサカはミサカは念のため確認する」


一方通行「あァ、ヤツらはスゲェぞ? 熱帯魚が即氏する高水温に耐え、海水魚が苦しむ塩分濃度にも平気なンだ」

打ち止め「へええ。あ、それと酸欠にも強いって聞いたことがあるよってミサカはミサカは出所不明の情報をリークしてみる」

一方通行「そりゃ大抵メダカは水面直下にいるからな。ま、腕っぷしは全然だし、泳ぎも上手くねェ。氏なねェだけなンだが」

打ち止め「どんな絶望的状況でも生き残る。それはやっぱり強さだよ、ってミサカはミサカは三下魚を尊敬してみたり」


一方通行「ン。……、あとは速く泳ぐ魚、卵を一番多く産む魚、一番古い時代から姿が変わっていない魚……」

打ち止め「バショウカジキ(120km/h)マンボウ(一回の産卵で三億個)サメか、ハイギョのような肉鰭類かな?」ピピピ

一方通行「……寿命の長い魚、一番強い毒を持つ魚、最も長い時間泳ぎ続けられる魚……」

打ち止め「ジンベイザメ(150年?)ドクウツボ(マイトトキシン、フグ毒の200倍)クロマグロ(平均100km/h、一生涯)」


一方通行「こンなトコか? コイツらは解説するような事もねェよな。調べたけりゃ自分でヤレ」

打ち止め「答えたのはミサカだよ、ってミサカはミサカはミサカネットワークをフル活用した事実を隠して威張ってみたり!」

一方通行「隠してねェし、バレバレだったけどな。……、ケドよ、なンでサイキョーの魚なンて知りたかったンだ?」

打ち止め「あなたを魚に見立てたら何かなって。でもどれもピンとこなかったの、ってミサカはミサカは肩を落としてみる」



一方通行「フーン、それでサイキョーを並べたと。……まァ、安易にホオジロザメとか言わねェ辺りは分ってンじゃねェか」




ガチャッと『話は聞かせて貰ったわ!』ドーン




芳川桔梗「あなたたち、最強で探すから見つからないのよ。彼を魚で言うならコレに決まってるじゃない」ビシッ

番外個体「いや、ん~、コレ単に白黒のシマシマ柄ってだけじゃね? ってそれ以外に特徴無かったわー」ギャハ

打ち止め「これはイシダイ? ……おぉ~~~~!! ミサカはミサカはコレで決定って宣言してみる!!」




一方通行「……前言撤回、テメエ達のは安易なンてレベルじゃねェ。そりゃ単純(バカ)ってンだよ!!」




76: 2011/07/28(木) 21:02:45.11 ID:Oc7893yo0
【オマケ】

「ねえねえ、ちなみになんでマグロはずっと猛スピードで泳ぎ続けるの? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

「ンとな、大抵の魚はエラ蓋を開け閉めしてエラに新鮮な水、つまり酸素を送って呼吸すンだがマグロのエラ蓋は固ェ。
 自力で開け閉め出来ねェくらい固ェ。なンでそンなに固ェかっつーと、より速く泳ぐ為に魚雷系のスタイルに進化した
 からだ。だからエラ蓋の開け閉めによる呼吸が出来ねェ。エラ蓋開けンには、口を開けて高速で泳ぐ必要がある。水を
 口から取り入れてエラ蓋をその水圧で開けてエラに酸素を送りつつ、使った水は排出。そのための高速遊泳って訳だ。
 止まっちまえば再びエラ蓋は閉じちまうから、新鮮な水がエラに送られず呼吸困難になって氏ぬ。だからマグロは一生
 寝る事も無く泳ぎ続けンだよ。まァ、脳の半分だけ仮眠して、半分起きて、って事をするらしィがな。」

「ほ、ほぉ……。いつもながら読み飛ばしやすい説明だね、ってミサカはミサカは、あれ? ねえねえ?」

「今、スッゲェ聞き捨てならねェ事言ィやがった気のせいがしたンだが……、まァイイ。何だ、別の質問か?」


「マグロが速く泳がないといけないのは、止まったら氏ぬからなんだよね?」アレ?

「そォだ」

「マグロが止まったら氏ぬような進化をしたのは、より速く泳げるようになるためだったんだよね?」ワケワカラン?

「そォだ…………、自然って一筋縄じゃ行かねェンだよ! マグロをバカにすンなよ!!」

77: 2011/07/28(木) 21:15:31.16 ID:Oc7893yo0
以上、第八回分でした。お供えのサバ、ウニ、色んな最強などの直裁なネタで攻めてみました。

ちなみに第二パートで扱ったウニ、ヒトデなどが属する棘皮動物、他にはナマコも含まれます。かなりの例外生物達って感じ?

遅ればせながら、応援、感想ありがとうございます。何処までいけるかワカリマセンが行けるトコまで頑張ります~。
他のキャラを使ったお話は現在考え中です。もう少々お待ちを。

では、また明日~

82: 2011/07/29(金) 20:58:33.57 ID:RpqfmHaX0
今日の分、投下しまーす。第九回です。

新しく書いたもの、当然だけど未評価。面白ければいいんだけど、どうなるか

テーマは、やっちゃいけないこと、触れないほうがいいこと「禁忌」です。ではどうぞ

83: 2011/07/29(金) 20:59:45.77 ID:RpqfmHaX0
                            ☆

「なあインデックス、夏は薄着の季節だけどさ。カップルで外出する時とか相手の男はイヤじゃないのかな?」

「とうま? それを私に聞いても意味がないかも。むしろとうまは公共の場で相手が肌をいつもより露出してたらどう思う?」

「悪かったな!! 上条さんには、今までそんなステキなご縁がありませんでしたのことよ! だからどうなんだろってさ」

「……………………、一緒に海行ったのに。水着も着たのに。……、とうまはやっぱりとうまだね。じゃ、エビの話するね」


「唐突!? なにか薄着と関係あんのかよ?」

「とうまはうるさいんだよ! とにかく黙って聞けばいいの!! 日本の淡水エビは大きく分けて2種類だよね、分る?」ギロッ

「(……、なんだか分らんがココはインデックスに合わせよう)ん~、名前だけならな。ヌマエビとテナガエビだっけ」

「そう。エビは雑食性だけど、比較的小型で草食傾向の強いヌマエビと、長いハサミ脚が特徴で肉食傾向の強いテナガエビだね」


「ふむ。ところでテナガエビって言うとフランス料理なんかで出てくる高級品ってイメージだよな」

「それはたぶん海に居るアカザエビの事だね。ハサミが長いからテナガエビって呼んでるだけで全然違うエビなんだよ」

「へ~。とすると俺は本当のテナガエビって見たことないのかもな。珍しい生き物なのか?」

「ううん、何処の川にもいるなんでもないエビだよ。テナガエビ科、として見ればスジエビもそうなんだよ」


「ああ、釣りエサで言うブツエビ、川エビ、モエビ、シラサエビとかって色んな名前で売ってる透明なエビだよな」

「素揚げにしてお塩で食べたいよね。あれもテナガエビの仲間なんだよ。そんなに大きな種類じゃないよね」

「なるほど。確かにアカザエビみたいに一匹で一品料理になるようなサイズじゃねえな。で、ヌマエビってのは?」

「ヌマエビは地上で言うところのアリの役割を淡水中で担う川の小さな掃除役だよ。捕獲も飼育もわりと簡単な種類が多いかも」



84: 2011/07/29(金) 21:00:47.27 ID:RpqfmHaX0

「ふーん、それで今回はどうしてエビの話になったんだ? そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかと……」

「エビって、美味しいよね? 水中の生き物にとってもエビはご馳走なんだよ。普段は硬い殻で食べられるのを防ぐんだけど」

「ふむふむ。人間でもエビの殻はそうそう噛み切れるもんじゃないもんな」

「ところがこの殻の防御性が失われる事があるんだよ。とうまはソフトシェルクラブって知ってる?」


「あー、脱皮したてを調理するから殻ごと食べれるワタリガニの事だろ? つまり脱皮直後はエビの殻も柔らかいんだな?」

「そうなんだよ。ここで魚に狙われればひとたまりもないんだけど、エビは脱皮後にそれを周りに知らせるフェロモンを出すの」

「はあ? 何を考えてんだよ! そんなもん出したら腹を空かせた魚がウヨウヨ寄って来ちまうだろうが!」

「だよね。でもメスのエビはそれをする必要があるんだよ。エビの脱皮は成長に従って準備され、刺激によって開始するの」


「ん? 成長によって準備ってのは分る。今までの殻がキツくなるほど中身が増えるってことだろ。刺激ってのは何だ?」

「外部刺激、例えば水質や水温が突然変わることだよ。コレをきっかけにして脱皮をするんだよ」

「ふうん、んじゃ飼ってるエビを別の水槽に移し換えたりすると脱皮始めんのか?」

「その可能性は高いね。で、重要なのはこの時もしそのエビが抱卵していたら抜け殻と一緒にタマゴも落ちちゃうんだよ」


「え……、エビの受精卵は母エビが何百と抱えてて、新鮮な水を脚で送り続けながら保護しねえと孵らないんだろ? じゃあ……」

「うん、基本的に殻に付いてたタマゴは全滅するの。それを避けるために、脱皮直後のメスがフェロモンを出すんだよ」

「……、なるほど。終了直後なら万が一刺激があってもしばらく脱皮しねえから、それをオスに知らせて交尾するためなのか」

「子孫を残すための命懸けのメッセージなんだよ。魚に狙われる事も恐れず必氏でアプローチしてるんだよ。とうま分る??」





「ああ…………、エビってスゲエな! 二重の意味で『食べごろよ』ってフェロモンを出すのかあ。勇気あるよな」

「…………、へ? 感想それだけ?? とうま、コレがどういう話だったか覚えてる?」

「え、そりゃもちろん。アカザエビはテナガエビじゃない、ヌマエビは川のアリ、エビの殻は脱皮直後は柔らかい。完璧だろ?」

「とおおおうぅううううまああああああ!」ギラーン


                          
                           ガブリッ


「理不尽だあああああああああああああああ!?」

85: 2011/07/29(金) 21:01:50.44 ID:RpqfmHaX0
                                      ☆

白井「エスカルゴはカタツムリ、という認識はそろそろやめるべきだと思うんですの」

御坂「黒子? 唐突にどうしたのよ。エスカルゴってフランス語では食用かどうかに限らず一般にカタツムリを指す語でしょ?」

佐天「私、なんとなく白井さんの言いたい事、分る気がします。カタツムリを食べるってやっぱりイメージが……、ね」

初春「エスカルゴとは陸生の食用貝を調理したもの、って思えば確かにイヤな感じはないですね。そういうことですか白井さん?」


白井「全然違いますの。ブルゴーニュ種やプティ・グリではなくて日本のカタツムリ食を考えようってことですの」

佐天「ダメです、却下です、キモイです、やめてください、氏んでしまいます」

初春「第一、カタツムリや蛞蝓には怖い寄生虫がいるんですよ? 素手で触っちゃいけないような生き物を食べるんですか?」

御坂「海が遠い地方とかでは食べてた記録もあるみたいだけど……。黒子、なんでそんなオカシナ事を思いついたのよ?」


白井「お姉様も皆さんもよくお聞きになってくださいな。来るべき人口爆発時代、食糧難で深刻な動物性タンパク質不足に
    陥りますと今食べているような肉や魚はなかなか手に入らない食材になるでしょう。では代替に何を食べるかですが
    現在、その候補として特に上がっている生き物は何だと思います?」


佐天「お肉やお魚の代わりの生き物……、嫌な予感しかしませんが、それって脚がいっぱいあったりなかったりします?」


白井「ご想像のとおりですわよ、佐天さん。世界各地で昆虫食というものが盛んに研究されているのですの。昆虫は成長の
    為の栄養が家畜や水産物に比べて圧倒的に高効率、つまりコストが安いんですの。しかも高タンパク、高カ口リー。
    まあ、現在でも知らないだけで毎日たくさんの虫を私たちは食べているんですけれどもそれはひとまず置いといて。
    どうですの? 将来の食卓に毎回必ず、食べ物として虫が出てくるようになっても構わないんですの?」


初春「イナゴやハチノコやクマゼミは美味しいみたいですけど……。毎日食べたいものじゃないですね……」

御坂「ゴメン、私はダメだわ。埋葬虫とかカミキリムシの幼虫とかでしょ? アレを食べ……、想像したくもないわよ!」


白井「余りにも普段の食べ物と形体が違いますから、忌避感覚が起こるのは当然なんですの。ですから次善の策として私は
    カタツムリ食を提唱する訳なんですの。陸生とは言え貝である、地方によっては食べられていた、エスカルゴという
    成功例。このように、カタツムリを食用にすることは昆虫食に比べて敷居が低いのではないかと思うのですの!」ドーン

86: 2011/07/29(金) 21:02:54.78 ID:RpqfmHaX0

佐天「ふむ。かたつむりって何食べるんでしたっけ?」

御坂「草食であるって言っちゃっていいんじゃないかな。草や苔や木の葉を食べるみたい。蛞蝓は農作物を食害するわね」

初春「貰ったキャベツにアレが付いてたら丸ごと捨てちゃいますね……。あ、コンクリートを食べるって聞きましたよ?」

御坂「殻を作るのに必要なカルシウムが水中なら豊富だけど、陸では手に入りにくいからコンクリートを削って食べるみたいね」


佐天「そりゃまた変わった物を食べますねえ。ちなみにタニシと何処が違うんでしょう?」

御坂「蓋の有無、かなあ。カタツムリは蓋の代わりに殻の出口に粘膜を張って乾燥を防ぐのよ。あと雌雄同体ってトコ」

初春「雌雄同体ってことは単為生殖が可能なんですね。でも絡み合ってるかたつむりを見たことありますよ?」

御坂「一匹でも子孫を残せるけど、普通は交尾するみたいね。それも御互いが御互いに精子を渡して御互いが受精するのよ」


                   


                               『かたつむりってすごいなあー』





白井「黒子は……いらない子ですの? 何がいけなかったんですのおおおおおおお!?」ゼンゼン ムシ デスノ 


87: 2011/07/29(金) 21:03:52.37 ID:RpqfmHaX0
                                           ☆

打ち止め「ねえねえ、素手で触ると魚が火傷するって本当なの? ってミサカはミサカは半信半疑で訊ねてみる」

一方通行「……、ンだァ? 概ねその通りだけどよォ、そンなに不思議か?」

打ち止め「うん。だってね、人間の体温って36℃くらいでしょ? 夏場の気温だってそのくらいになるよね?」

一方通行「猛暑日ってやつだな。だが水温はそンなに上がらねェぞ。何が言いてェンだ?」


打ち止め「時々、水位の低い川で暑い日にピョンピョンおさかなが跳ね飛んでるでしょ? 火傷しちゃうんじゃないかなって」

一方通行「気体は熱を伝えにくいし、その程度なら問題ねェだろ。それにありゃそれどころじゃねェ緊急事態だ」

打ち止め「ちょっとだから大丈夫なのね。それより緊急事態って何? ってミサカはミサカはしっかり質問してみたり」

一方通行「水温が上がると水中の溶残酸素量は下がる、しかも水量が少ないってことは酸素も少ないって事だろ?」


打ち止め「あ……、つまりアレは息が出来なくて苦しいって事なの? ってミサカはミサカは悲しい現実に直面してみる」

一方通行「水位の低い川で暑い日ならその可能性が高いな。陸や空から獲物として狙われても構わねェくらい切羽詰まってンだよ」

打ち止め「かわいそう……。他にも飛び跳ねる理由があるのかなってミサカはミサカは補足を求めたり」

一方通行「そォだな、水面付近を虫が飛ンでりゃそれを捕食する為に跳ねンじゃねェ? あと何かに驚いて跳ンだりな」


打ち止め「なるほど~、よく分ったよってミサカはミサカは山よりも高く納得してみたり」

一方通行「アァ。…………、オイ待て、テメエの最初の質問は魚を素手で触ると火傷するって話じゃなかったか?」

打ち止め「うん、そうだけどそれはもう解決したよねってミサカはミサカは忘れちゃったの? って心配してみたり」

一方通行「オイ、あンまリ俺をナメンじゃねェぞクソガキ。じゃ聞くが、なンで魚は人間の体温程度で火傷すンだよ?」


打ち止め「え、あ、あれ? おやおや? ……、言われてみればなんでだろ? ってミサカはミサカはやっぱり理解してなかったり」

一方通行「ケッ、ンなこったろォと思ったぜ。……、多くの魚類は冷血動物、故にその体温は水温に準じる。分るか?」

打ち止め「鳥や哺乳類などの恒温動物は体温を一定に保つ仕組みがあるけど、魚類は環境で体温が左右されやすいってことかな」

一方通行「それが分ンなら、気温よりも低い水中の魚の体温が人間よりもずっと低いってのも分ンだろ? じゃ、行くぞ」

88: 2011/07/29(金) 21:05:18.17 ID:RpqfmHaX0

一方通行「淡水、特に川ってのは場所によって、また時間によってかなり水温が違う。高い水温で活発になるような魚の場合
       突然周りの温度が下がったら体温もそれに準じて下がるとする。途端に動きが鈍くなっちまったり、中には人間と
       同じようにショックで心臓麻痺を起こすよォな事もあるかもな。それを防ぐ為のシステムが無かったらの話だが。
       ……、魚類は一般的に体表に粘液による膜を張ってンだよ。直接外部と触れないよォにして急激な温度変化も膜を
       通して徐々に伝わるよォにな。だから例えば『冷てェ!』って感じたらそこから離れる程度の余裕があンだよ」


打ち止め「ふむふむ。ガードがしっかりしてるんだね、ってミサカはミサカは魚のぬめりを見直してみたり」

一方通行「だが、この粘液で出来た膜に乾いた手が触れると膜は剥がれちまう。そォなると人の高い体温が直接表皮に届く。
       コレで全ての魚が火傷するわけじゃねェが、特に泳ぎの速い魚は弱いと思っとけ。その上、触ることで起こる害は
      火傷だけじゃねェンだ。膜は温度変化だけでなく、病原菌や寄生虫、乾燥などからガードするためにも不可欠だ。
      それが剥がされた状態で水ン中戻されても、無防備極まりねェだろ? 膜が剥れたトコが傷付きゃ終わりだな」

打ち止め「そっかあ。だからこそ魚を素手で触るのはいけないんだね、ってミサカはミサカは今度こそちゃんと理解してみたり」


一方通行「一部が全部じゃねェ。素手で触ろうがタワシで擦ろうがビクともしねェ魚だっているがな。他にもヒレが鋭いとか
       毒針があるとか噛み付くとか、別の意味で触っちゃいけねェ種類もあるから何にしろ気ィつけろよ」


打ち止め「うん、分った! ってミサカはミサカは満面の笑顔で大納得してみたり」ニッカー




番外個体「時に第一位の体は、膜が剥れてもタワシでコスったってへっちゃらな頑丈さがあるのかねえ?」 ケケケ

芳川桔梗「あんまり虐めないの。彼は素手で触られただけでウロコが爛れて火傷しちゃうような虚弱に決まってるじゃないの」





一方通行「あァ、何しろ俺は超音速で移動するくらい速ェしな……、って乗せてンじゃねェぞ、この大ボケコンビがァアアア!」  

  

89: 2011/07/29(金) 21:17:26.39 ID:RpqfmHaX0
以上、第九回「禁忌」でした。

第三パート、よく知ってる魚であれば扱い方も分るでしょうし、魚に詳しい人なら触る事の可否も判断できるでしょうが
そうでない場合は、とりあえずは触らない方が魚にも人にも危険が無いです。ので、敢えて一切魚の名前が出てきません。
ワザとです。

次回は、実験的に他のキャラで書いたおさかな話の予定です。出来が心配でなりません。

ではまた明日~ 

95: 2011/07/30(土) 22:12:47.24 ID:GZUzibUI0
今日のおさかな話は、いわゆるテスト版です。

登場人物は第一パートがステ神裂、で第二パートが麦滝絹浜です。第三パートはオマケで、最初の2人が再登場です。
話の作り方も微妙に違ったり? キャラ崩壊極まりなかったり? 情報があやふやだったり?

いろいろ問題がある気がする、そんな今回の「おさかな外伝」 とりあえずどうぞ




96: 2011/07/30(土) 22:13:59.66 ID:GZUzibUI0


「悪いね神裂。急にロンドンに呼び戻したのはこっちだっていうのに、夕食まで用意して貰って」

「そもそも私の残務でしたし構いませんよ、ステイル。それと、この料理は是非あなたに食べてもらいたかったんですよ」

「ぶほっ、 きっ、君! 人聞きの悪い言い方をするなよ!! 僕らは決してそんな甘い関係ではないだろう?」

「はあ? 何を言っているのかこちらも分りませんが……。ともかく、もうすぐ焼き上がりますから」        チーン


「ん、どうやら出来上がったみたいだね。懐かしい香ばしさ……、もしかしてパイかい?」

「ええ、日本でもお馴染みの食材を使ったイギリスの伝統料理に挑戦してみたのですが。っと、綺麗に焼きあがっていますね」

「うんうん、いい色じゃないか。で、これは何のパイなんだい? 伝統料理っていうとミートパイかな?」

「そのミートパイの原型ですよ。到着してすぐテムズ川で捕れたウナギを使った英国伝統料理『うなぎパイ』です」ドゾー


「…………、」

「私なりに、ヨーロッパウナギの元気、勇気、根気、本気を引き出してみたつもりなのですが……」

「……、テムズ川のウナギって言ったか?」 ホント?

「ご心配なく、天草式の術式により化学汚染や泥臭さは瞬時に抜き取る事が出来ます。安心して食べてみてください」ドゾー


「君はどうして……、コレを僕に食べさせようと思ったんだい? 試食役なら女子寮のシスター達だっているじゃないか?」

「シスター達では感想にどうしても御世辞が入ってしまいます。ステイルなら、率直な意見を期待できると思ったんですよ」

「イギリス出身の僕がこの料理にどんな思いを持っているか、それも分った上で食べろと言うんだね。全く、君ってヤツは」

「ステイルの分際でゴチャゴチャと言い訳がましいですよ。さ、冷めないうちに」ドゾドゾー


97: 2011/07/30(土) 22:15:16.28 ID:GZUzibUI0

「くっ……、分ったよ、戴くとしよう」サク パクッ

「…………」

「むぐむぐむぐむぐ」ゴッキュン

「…………、出来はどうですか、ステイル?」  ドキドキドキドキ









                          「このうなぎパイは出来損ないだ、美味し過ぎるよ」パクパク ムッシャムッシャ




「は、え、……、美味しいのに、出来損ない、なのですか???」 

「神裂、君は伝統英国料理、と言ったね。ハフハフ。その真髄は『素材の全てを殺さず、全てがそのまま』、ゴキュン、って事なんだよ。
 ジャガイモはジャガイモの風味、つまり苦味もえぐみもそのままでなければいけない。たとえ肉の添え物になっていてもね。フゥ
 このうなぎパイはウナギの香りがパイの香ばしさとマッチして、ウーン、ぶつ切りであるにも関わらずその身はパイの食感と、サクッ
 重なり合って、ハムハム、全てが渾然一体、完璧な和の世界を体現してしまっているんだよ。ウマー。言ったとおりにウナギに臭みも
 無いし、皮のヌルつきだって感じない。ゲフッ。伝統英国料理を名乗るなら、もっと素材同士を喧嘩させなければいけないね」フキフキ


「……、味付けや外見に気をとられて、つい日本料理の感覚で作ってしまった、と言うわけですか。修行が足りませんでした」

「だけど、道は厳しいぞ? 本当のうなぎパイは、きっとあの子だって一口食べて止めるだろうからね……」 ゴチソウサマ




「あの子が食べ物を残す、考えられない光景ですね……。伝統英国料理、甘くみていたようです」   オソマツサマ
                                    


98: 2011/07/30(土) 22:16:16.46 ID:GZUzibUI0
                                             ☆


絹旗「ヒマです、超ヒマです。浜面、何か面白いことを5分以内に考えてください。3、2、1、どーん」パーンチ

浜面「ゲブゥーーーーーーッ。ちょ、それなんて麦野?? ……、突然面白い事って言われてもよお。……あ、そういえば」

麦野「人の名前勝手に使ってツマンネエ事言ったら、分ってるわよねえ。はまづらくーん?」 

滝壺「大丈夫だよ、一触即発の空気の中、絶体絶命のはまづらを私は応援してる」


浜面「ゴメンナサイ、アリガトウ、どういたしまして!! ったく。あのな、今、超能力者の間でおさかながブームなんだってよ」

麦野「あ? 私が知らないのに、超能力者の間でブームって何よそれ? いい加減な事言ったから拷問決定でーす、おめでとー!」

絹旗「麦野、浜面を処刑するのは構いませんけど私もそれ、聞いた事ありますよ。なんでも第一位は超無類のさかな博士だとか」 

滝壺「その噂は事実だよ、むぎの。超電磁砲は後輩とコンビで『常盤台のキャットフィッシュ』って呼ばれてるんだよ」


麦野「……、何か気に入らないね。そもそも、魚の何が面白いっての? そりゃシャケは美味しいけど……」グリグリグリグリ

浜面「気に入らないのは分ったから握り拳を俺の頭に押し付けんのは止めよう。いえ、お願いですから止めてください麦野様」

滝壺「大丈夫、私は虐められても笑顔を絶やさないはまづらを、それなりに応援してる。そして私は結構好きだよ、おさかな」

絹旗「あ、私も……ヨロイウオとかマツカサウオとかウロコフネタマガイとか、超硬い装甲のおさかななら詳しいですよ」 エヘン!


麦野「……! 絹旗お前、にわかだね? ヨロイウオは逆立ちで泳ぐ平ぺったい小魚じゃん。名前だけで選んだのバレバレよ?」

絹旗「え、そうなんですか!? 恥ずかしいこと言っちゃいましたね/// ……、って麦野。そんな魚なんで知ってるんですか?」

浜面「マリンダイビングが趣味ならヨロイウオは知ってるぜ? でも麦野にそんな趣味あるなんて聞いた事ねえけど」

滝壺「大丈夫だよ。私は本当は魚マニアなのに自分のイメージを心配して隠そうとしたむぎのを応援してるよ」



99: 2011/07/30(土) 22:18:17.59 ID:GZUzibUI0

麦野「…………、ああ、そうだよ。私だって第三位なんかに負ける気がしないくらいの魚知識があんのよ。いえ、通し回遊魚なら
    誰よりも詳しいって自負があるわね。でもね、もう遅いのよ。ブームが始まっちゃってから乗ったってさ、氏滅回遊だろ?
    無効分散なのよ! や、あー、何て言ったらいいかな。シャケの卵は川でしか孵化しないでしょ? 変な海流に親シャケが
    乗っちゃったら、繁殖行動できる体だってのに川に辿り着けなくて、老いて氏んじゃう。そんな感じになるだろうが!?」ガー!


絹旗「麦野……。(ダメです、言ってる事が超ほとんど理解できません。滝壺さん、何とかフォローお願いします!!)」チラッ

滝壺「ごめん、はまづら。後は任せたから」チラッ

浜面「ナニソレ!? 何この超上級問題! 回答間違えたらブチコロシが確定しちゃうのよ?? ……、あ、いいか? 麦野」コホン




海で捕れたシャケと川のシャケ、旨いのは海のシャケだ。川のシャケは寄生虫も増えるしよ。いいじゃねえか、出遅れたって。
大海原を悠々と泳いで、美味しく食われる鮭に何の不満があるってんだよ? お前はお前なりの魚道を行けよ。お前は回帰性の
強いベニザケじゃなかってだけの話だろ? カラフトマスみたいに迷い鮭になってただけなんだよ。恥ずかしがるなよ、なあ!





麦野「浜面……、テメェ」ゴゴゴゴゴ


絹旗「(え!? 滝壺さん、浜面の説得にダメな所があったんですか? 私、また理解できなかったんですが……)」ゴニョゴニョ

滝壺「大丈夫、カラフトマスは不細工で不恰好な魚だけど鮭缶の原料になるこの魚を私は応援してる」

絹旗「(はあー?? どうして麦野をブサイクにたとえたりするんですか??? 浜面はホント、超バカ面ですね……)」 ドキドキ

浜面「うるせえな、つい焦っちまったんだよ!! つーか滝壺は俺じゃなくてシャケの味方!? これでグッバイ俺の人生なの??」



                                       バン!

麦野「鮭って呼べるのはシロザケだけだろうが! ……、次にシャケを大雑把に扱ったら拷問から獄門に進化だからね~♪」 

浜面「晒し首!? (っていうか気に入らないトコそこ? 何か機嫌治ってるし。女ってホントにワケわかんねえ……)」





絹旗「な、なんとか事態は落ち着きましたか……。 鮭って元々シロザケって魚だけを指す言葉だったんですね。超勉強になります」

滝壺「……。(シャケ弁の鮭はギンザケ。むぎのなら当然知ってる。……、はまづらのヘタな説得に応じる為の照れ隠しかな?)」 


100: 2011/07/30(土) 22:19:52.98 ID:GZUzibUI0

【むぎのん ほんわかシャケ話】

本編が投げっぱなしで進んだからって、何で私が解説しなくちゃいけないのかにゃーん? ま、他のヤツじゃ出来ないかもね。
んじゃあ、難しいと思う単語やら魚の名前をおさらいしてあげるから、各自一回で完璧に覚えるように。おっけー?


まずは、最初のほうで絹旗が三種類のおさかなの名前を言ったよね。ヨロイウオ、マツカサウオ、ウロコフネタマガイ。
これが知ったかぶりだって私は見抜いたワケだけど、実はコレ仕掛けがあんのよね。とりあえず関係ないヤツから紹介するわ。

ウロコフネタマガイとは、インド洋の深海、熱水が噴出しその中に溶けていた金属などが沈殿堆積して出来た煙突状の構造物に
集団でへばり付いてる底棲の小さな巻貝ね。つい最近発見されたばかりのこの貝の最大の特徴は、貝なのにウロコがあること。
しかもそのウロコが鉄(正確にはウロコの材料が硫化鉄)で出来てるって事なの。低酸素で超高温な環境での生活に特化してて
普通の海に連れて行くと酸素が多すぎて体が本当に錆び付いちゃうっていう、常識ハズレの超硬質生物ね。

まあ、んで本題。ヨロイウオってのは銀色の体に一本筋が入った、笹の葉みたいな形の魚ね。さっきも言ったけどこの魚は
普段は集団で生活してて、頭を下にして浅い海中をふよふよと漂ってんのよ。ダイバーなら知ってるってのはそういうこと。
キスやイワシのようなヤワな魚じゃないけど、超硬いとは言えないわね。でも、仕掛けってのはそこじゃないの。
マツカサウオってのはちょっと深めの岩場なんかに居る15cmくらいの魚なんだけど、見た目はまるで『まつぼっくり』ね。
大きなウロコが綺麗に重なり合って、その体は頑丈そのもの。包丁なんて入る魚じゃないのよね。あと、チョウチンアンコウ
みたいに光る魚だって話もあるけど、そこはよく判んないからパス。

で、ここにどんな仕掛けがあったか。マツカサウオはその特徴から別名が沢山あんの。ヒレを動かす時、パタパタって音が
するから『パタパタウオ』、松毬に似てる、ってことは当然なんだけどコレにも似てる『パイナップルフィッシュ』、んで
その幾重にも重なり合ったウロコが中世の騎士を思い浮かべさせるから、『ナイトフィッシュ』、『アーマーフィッシュ』。
ん? わかんないかな? つまりね、ヨロイウオってマツカサウオの別名でもあるの。というかその名前で呼ばれることが
結構多いのよね。

だからまとめるとこう!


「あちし、ヨロイウオとマツカサウオ 超好き好き」パタパタ

超好きなのに、マツカサウオの別名を知らないはずがないよね? なのに止せばいいのに「詳しいですぅ」とか言っちゃう。
詳しいなら、紛らわしいヨロイウオなんか持ってこないでイシガニとでも言っとけばいいのに。にわかが露呈してるでしょ?

そこを見逃さなかった私、やっぱりすごいよねえ。ま、絹旗は勉強して立派なパタパタになればいいんじゃないかにゃ?



そして、次の用語なんだけど『通し回遊魚』……あ゛? まだ解説半分も終わってねえこんなトコでなんで終了なんだよ!?
……、次のパートだあ? なんでそんなもんに私が気を使わなきゃいけねえんだよ!! ちょ、待ちやがれテメエら!!!


                                  ワー キャー ドーン ギャー


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  

――――――――――――――――――――――

―――――――――



浜面「次回があると、約束はしないけど、お楽しみにー……」イキテタラネ

101: 2011/07/30(土) 22:21:07.62 ID:GZUzibUI0
                                           ☆

「たびたび悪いな神裂。日本に出張なんて珍しいことじゃないのにわざわざ道案内ごときに君の手を煩わせるなんて」

「構いませんよステイル。それにここ有明海は我々にとって拠点の一つ。土地勘に優れた者が動員されるのは当然ですよ」

「有明海というのは広大な干潟が有名な四県に跨る九州西部の湾で、その地政学的特長が生み出す独自の生態系がウリだってね」

「その説明口調、時々出てきますね。まあどうでもいいのですが。さて、準備しましたので地の物で食事にしませんか?」


「ふうん。この間のうなぎパイのリベンジでもするつもりかい? ま、僕は有明海の幸が戴けるならなんでも構わないが」

「いちいち引っかかる言葉遣いは止めたほうがいいですよ? 無用に敵を作りますから……、まずはムツゴロウですね」

「サガ県ではムツって言うんだったか? 干潟をカエルみたいにピョンピョン跳ねてる変な小魚ってイメージだね」

「まあ、そうですね。捕獲方法は干潟で寝そべってるムツに釣り針を直接投げて引っ掛けるっていう達人芸ですが……」ドゾー


「これは、ムツの串蒲焼、とでも言えばいいのかい? イタダキマス。ハゼ類は新鮮なうちでないと身が崩れてしまうというが」ハフハフ

「ええ、ですから捕ったら即調理しないと味が落ちますね。見た目がグロテスクで料理されていても手が出ない人もいるのですが」

「黒焦げにも見えるような、ハムハム、料理法だけど、脂が乗って肉質も柔らかく頭から、ボリボリ、尻尾までそのままいけるね」ウマー

「口に合ったようなら良かったです。続いてはタイラギ貝のバターソテーの軍艦巻きです」ドゾー


「へえ、スシかい。昔はこの海苔ってのがダメだったんだ。海の汚れの原因を食べるってどんな拷問なんだい? って」

「今は日本食が世界に広まり、スシやオニギリが日常で珍しくもなくなりましたからそういった偏見は消えましたね」

「そうでもない、爺さん達にはまだまだコケみたいなものさ。パリッ ムギュホロリ。ん、タイラギの貝柱の食感もいい」ムッコムッコ

「生ものにもまだまだ抵抗のある方が居ますから、今日は敢えて火を通してみました。さて、次で最後ですよ」ドゾー


「さて、これは一体なんだろうね。アム ムグムグ。味噌の味しかしない……、食感は噛み切れるゴムって感じだね」ギョムギョム
    
「それはフクオカの柳川というところの名物で、ワケの味噌煮と言う料理です。気に入りませんでしたか?」

「いや、確かに素材自体に味は無いんだが、この食感はなんかクセになるね。ムグムグ。で、ワケって何なんだい?」ゴッキュン

「イシワケイソギンチャク、Sea Anemone、ワケノシンノス、どれでもお好きな名前でどうぞ」フッ


「……、へえ、イソギンチャクは食べられるんだ。全く日本人の食への探究心には感服するよ。素材が弱ければ味を足せ、か」パクパク

「え、あれ、あれれ? ……、もっとゾーーッ! とかゲーーーーッ! とかそういうリアクションは無いのですか??」

「だって美味しいじゃないか、僕には何も文句は無いよ。ところで神裂、ワケノシンノスってどういう意味なんだい?」ゴチソウサマ

「ワケノシンノスは、あの、地元の方言ですが、その、えっと、自分で調べてください」               オソマツサマ

102: 2011/07/30(土) 22:29:04.28 ID:GZUzibUI0

以上、第十回「おさかな外伝」でした。ええと、まずは

本当は美味しい英国料理、本当は食事時に音など立てない英国紳士、ゴメンナサイ。
にしてもやっぱり難しいですね、色んなキャラを扱うのは。反省点の多い回だったかもです

次回は通常にもどる予定です~。ではまた明日


108: 2011/07/31(日) 22:06:52.55 ID:6k9hLXL90
今日のおさかな話は、書き立てホヤホヤ! ストックが尽きたとも言う!!

そんなわけで誤字脱字満載で? お送りする今回のテーマは「変態」 ではどうぞ

109: 2011/07/31(日) 22:08:17.67 ID:6k9hLXL90
                                       ☆

「なあインデックス。おさかなにも変態っているのかな?」

「とうま? 言いたくないけどそのネタは前に使ったんだよ。ちなみにアホロートルの話はこもえのイメージだったかも」

「違う違う、そういう言葉遊びじゃなくてさ。なんつうの? 本能の赴くまま、年上、年下、誰彼構わず抱きつくような変態だよ」

「それは本能って言葉を勘違いしてるかも。ある入力に対応して設定済みの決まった反応をする、そういうのの固まりが本能だから」


「えーと……。難しくてよく分んねえけど、つまり本能とは、意思と関係なく現れる行動を集約した、データベースってことか?」

「とうまの表現も意味不明だけど、まあそれでいいんじゃないかな。だから、誰彼構わず抱きつくのは本能じゃないよね?」

「ん? むう……。そう、かもな。少なくとも、女の子なら誰でもオッケー、って言ってる時点でそういう意思があるんだもんな」

「……、だ、だね。だから、たぶん人間よりはるかに本能での行動が多いおさかなにそういうのは……、いた! モクズガニ!」


「いるんかよ!? ……、モクズガニって西のほうじゃヅガニとかケガニって呼ばれる腕毛モサモサの淡水ガニのことか?」

「うん、地方によってはかなりの高値で取引されるとっても美味しいカニだよね。そもそも上海ガニの仲間なんだよ」

「まあ、そんな大きなカニじゃねえけどな。せいぜい甲羅の横幅が7~8cmってとこか。で、このカニのオスは変態なのかよ?」

「変態ってわけじゃないんだけど。繁殖期になると、未成熟の個体だろうとオスガニだろうととりあえず抱きついちゃうんだよ」


「なんだよそれ? まさに俺の言ってる変態そのものだと思うんだけど??」

「うんとね、なんて言うのか、このカニのオスは見る目が無いんだよ。繁殖行動が可能なメスガニを見分ける能力が無いの」

「ふうん、そういうことか。モクズガニの繁殖はオスガニのアタックで始まるけど、相手を間違える事があるんだな?」

「そんなお間抜けさんだけど、交尾に至るまでの道のりがすごく大変なカニなんだよ。簡単にモクズガニの一生を説明するね」

「おう!」


「海で生まれたモクズガニの幼生は他の海のカニと同様、最初はゾエアとかメガロパとか言うプランクトンみたいなものなの」

「完全に淡水に適応したサワガニは親と同じ姿で生まれるのにな。ってことはモクズガニの幼生も大半は魚のエサになるんだな」

「メガロパ幼生はエビみたいに多少泳げるけど、そこまで成長できる個体は少ないね。でもその流され体質で分布を広げたんだよ」

「海流に乗って全国、いや世界各地に行ける、か。何にでも理由ってあるんだなあ。……で、次はカニ時代の話かな?」



110: 2011/07/31(日) 22:12:59.07 ID:6k9hLXL90

「幼生が変態してカニの姿になるんだけど、その子ガニ達の特徴は長い移動脚だね。変態後に河口に入り川を上るんだよ」

「泳ぐだけじゃ越えられない障害物を乗り越えるための脚ってわけだな。で、どのくらい移動するんだ?」

「仲間内でエサの取り合いを防ぐ意味もあるかもだけど、かなり広範囲に分かれるみたい。場所は早い者勝ちなのかも」

「不幸なカニは下流も中流も既に占領されてて、仕方なく上流までの途方も無い距離をエOチラオッチラ……、負けんなよ!!」


「そういう上流まで行くカニは大型化傾向があるんだって。でね、この移動の時期のカニもまだまだ魚のエサなんだよ」

「頑張ってるのに……、自然界って厳しい。んじゃ、幸運に恵まれて住処を獲得する頃のカニはどのくらいの大きさなんだ?」

「ようやく1cmってとこだね。ここから2~3年を川で過ごすうちに成体になるんだよ。成体のモクズカニは無敵の暴君って感じ」

「アメリカザリガニの強さを10としたら?」    「モクズガニの成体は100くらいかな」    「そりゃすごい!」


「何しろ硬い、何しろ速い、何しろ怪力。そんなモクズガニなんだけど、主食は藻や苔なんだよ」

「そりゃまた似合わないベジタリアン……。いや、川のカニ漁って、魚のアラをエサにして捕まえるんじゃなかったっけ?」

「魚も肉も大好物だけど毎日じゃ胃がツライ、って事かな? だから懐かしのザリガニ釣りを川でやるとたまにモクズガニが釣れるよ」

「木綿糸の先にイカのゲソッ! を結びつけて用水路の中に投げ込んで、ザリガニがハサミで掴むのを待つっていう……?」 


「獲物を見ながらの釣りだからそういうのを見釣りっていうんだよ。それはともかく、成体になったカニは冬に海を目指すの」

「いよいよ繁殖の季節か。って、ここでまた上流まで行ったヤツが遠距離移動で可哀想だよな……頑張れよ!!」

「子ガニ時代と違って食べられちゃう事はほとんど心配しなくていいけど、危険な旅には違いないんだよね」

「滝に落ちんなよ! 道路に出て車に轢かれんなよ! 腹減らした仲間に襲われんなよ!」


「飼育下では共食いが起きやすいけど、個体ごとに距離が取れる川では心配ないかも。で、幸運にも海に辿り着いたカニ達は……」

「そうなんだよな…………、そこまで頑張って来て、なんで相手が分んねえんだよ!! 無神経で鈍感にもほどがあんだろうが!!」

「あ、でもね。例えば抱きつかれたのがオスガニなら当然だけど、準備の出来てないメスガニでもちゃんと拒絶するからいいんだよ」

「ふうん。ってことはオスよりメスの方が強いのか? 工口のパワーはすさまじいだろうに、ちゃんと断れるんだから」


111: 2011/07/31(日) 22:14:00.93 ID:6k9hLXL90

「モクズガニは平均的にメスの方が大きくて強いね。但し、最大個体はオスであることが多いの」

「強い女の子ばかりが目立つけど、ヒーローは常に男ってことか。どっかのラノベみたいな社会なんだな」

「そのたとえはよく分んないけど、オスでは大きな個体とそうでないものの間で外見的に差異があるんだよ」

「ノコギリクワガタの小さいヤツのアゴが直線的で短いのに対し、でかいヤツは湾曲した大きくてご立派なアゴを持つ、みたいな?」


「まさにそんな感じだよ。強いオスはその暴力に特化した巨大なハサミで他のオスから御目当てのメスを隔離、独占するんだよ」

「弱いオスは、とにかく交尾の成功率が低いからその機会を増やすべくナンパに特化。移動に邪魔なハサミを小さくするんだな」

「うんうん。生き残り、っていうか自らの遺伝子を残すための戦略だね。身長が多少低いからって、諦めないで!」マヤッ!

「……。ちなみになんだけど、繁殖行動の詳細ってどんな感じなんだ? ここまで来たら上条さんもがっつり聞いちゃうよ!?」


「浅い波打ち際あたりで交尾は行われるんだけど、まずオスはメスガニを探してぶらぶら海岸を放浪するの」

「海だから、違う種類のカニなんかもいるだろうな。まさかそれにも間違えて飛び掛ったり……、しねえよな、さすがに」

「しちゃうんだよ。モクズガニのオスのアタックは何の求愛行動も無く突然行われるからダメなんだけど」

「バカで放浪癖があって仲間じゃないヤツにも抱きつく。確認ぐらいすればいいのに、ホントどうしようもないな」


「まあ、いろいろあって正しい相手に出会えたら交尾。終了後にはオスはメスをガードするんだよ。一日だけだけどね」

「他のオスガニが寄ってくるのを防ぐんだったな」

「そうだよ。ここで腕力のあるカニは相手のいるメスを奪っちゃったり、その後しっかり守ったり出来るんだよ」

「……、結局強いヤツが勝つんじゃねえか。しかも一日でハイサヨウナラ、だろ? なんかムカつく生き物だなあ」


「まあ、強いオスは次々にメスを獲得するし、弱いオスはそれなりにってとこかな。で、数ヶ月に及ぶ繁殖期を終えると」

「その間、何も食べる事も無く繁殖に勤しんでいたオスもメスも疲れ果て、哀れ海のモクズになるってわけか」

「だね。ところで結構長くなっちゃった上にオチが付かないモクズガニ話、こんなのでいいのかな?」

「たまにはいいんじゃないか? ただコレだけは言わせてくれ。……、身長が多少低くても、諦めないで!」 マヤッ!





112: 2011/07/31(日) 22:15:07.72 ID:6k9hLXL90
                                               ☆


初春「日本の川魚って、なんて言うんですか、華が無いっていうか地味っていうか。真面目で素朴って感じですよね?」

佐天「頭に花乗せてる初春に言われちゃ世界中の魚が可哀想だけどね。まあでも確かに派手なヤツは居ませんねえ」

白井「いえいえ、日本にも派手な魚は居ます。ほら、ちょーーーっと前に話題にしたオイカワって魚、覚えてらっしゃいませんの?」

御坂「ええと……、>>9だったっけ? 雑魚も雑魚、特に利用価値も無い普通の魚として紹介しちゃってるわね」


佐天「どんな話だったか全っ然、覚えてないでーす。でも、そんなに派手な魚なのに雑魚扱いって酷くないですか?」

初春「ん~、あれ? オイカワは見た目も雑魚丸出しのはずですよ。銀色の魚体は確かに綺麗ですけど……」

白井「ええ、確かに普段は別段パッとしない魚ですけど、ある時期においてオイカワは覚醒するのです。そう、己の変態に!」

御坂「変態はアンタだけでいいわよ……。いわゆる婚姻色の話ね。夏場、繁殖期に入るとオスが見せる一種の……変態?」  アレ?



白井「そもそもオイカワは琵琶湖水系のアユを養殖の為全国へばら撒く過程において、アユの卵にオイカワの卵が混じってたことで
    日本中に蔓延した国内移入種、という扱い方をする地方が多いのですがそれはさておき、オスの派手な婚姻色で有名ですの。
    繁殖期に入るとオスの体は①尾びれ以外のヒレが赤くなる②横っ腹が緑色になる③下腹がピンク色になり、緑と混じって虹色
    のような体色を作り上げる、といった変化を致します。もともと成体のオスは尻びれが大きいので、ヒラヒラの赤いヒレを
振るうカラフルメタリックなその姿はまるで、一昔、いえ二昔前のアイドル。マトモな美的感覚を越えた姿ですわね」


御坂「ほかにも、オスは成体になると顔が黒くなって追星って言う、ん~……、突起物? がいくつも出来るのよね」

白井「オイカワにとって追星というのは、頭突きの効果を高めるもののようですわね。実際オイカワは縄張り意識の強い魚ですし」

御坂「複数匹を水槽で飼うと、一番大きなヤツが一日中他の魚を体当たりで追い払う様子が見られるわよ。ホントしつこくね」


白井「その暴れん坊を他の水槽に移すと、二番目に大きかったオイカワが同じ事を始めるんですの」

佐天「ふうん。じゃ、一匹だけで飼えば問題ないんじゃないですか?」

御坂「それがね、一匹で飼うと妙に神経質になっちゃって、多少の音や刺激で暴れまわったりエサを捕らなくなったりするのよ」

初春「なるべく同じくらいのサイズを複数で飼育、がベストですかね? それにしても困った性質です……。せっかく綺麗なのに」



白井「他人が見ていない変態なんて、何も燃え上がるものがありませんもの。オイカワの気持ち、私には良く分りますの」

初春「だからそっちの変態は白井さんだけで充分ですから」

113: 2011/07/31(日) 22:17:10.05 ID:6k9hLXL90
                                            ☆

一方通行「打ち止めァアアアアアア!!! 何処にも行かせねェ、お前は俺の、ずっと俺だけの女だァアアア!!」  ガシッ!

打ち止め「ミ、ミサカは!! ミサカも……、一生あなたと離れたくないって、ミサカはミサカは永遠の愛を誓ってみたり」 ギュッ






(作画・CV・演出  芳川桔梗)






芳川桔梗「と、こういう場面も、求愛行動の一端って言えるかしらね。まあ対象が対象だけに変態扱いしたくもなるけど」

番外個体「ふーん。行為としては正常の範囲内ってこと? にしても……永遠、とかずっと、とか適当な言葉だねえ」

芳川桔梗「言葉は全てを伝えられないのよ。だから割と大げさな表現でないと充分に気持ちが伝わらないのかもね」

番外個体「にしても、こんな話を聞かせて第一位はミサカにどうしろと言うのかね? あとアンコウ何処行った??」



それよりちょっと前)

114: 2011/07/31(日) 22:20:27.12 ID:6k9hLXL90

打ち止め「ねえねえ、お魚のカップルって産卵したらそれでサヨウナラばかりなのかな? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

一方通行「そォいう種類が多いのは確かだが、まァ当然なンだよ。オスメスで子育てするっつーのは難易度が高いからな」

打ち止め「自然界ではペアを組むとしたら子育ての為なのね。で、それが難しいっていうのはどういうこと?」

一方通行「例えばだ、産卵を水中に放出するように行う魚なら、無秩序に散らばっちまう。産卵数が極端に多くても同じだが」


打ち止め「つまり、子供の保護そのものが不可能だからペアを組まないってことねってミサカはミサカは納得してみる。他には?」

一方通行「メダカみてェに卵を親が喰っちまう魚なら、オスが一緒にいたらリスクが高いだけだ。コイツらもペア組む意味は無ェ」

打ち止め「悲しいお話……。逆にペアで子育てするお魚ってどんなのがいるのかな? ってミサカはミサカは質問を変えてみたり」

一方通行「前にやったろ? クマノミ。淡水魚ではトミヨやイトヨ……。ちょっと方向が違うが、オスが巣を作って子育てすンな」


打ち止め「鳥みたいなお魚が居るんだね。でもオスが作った巣に卵を産んで、オスが子育てしてる間、メスは何処に……?」

一方通行「……オスは、水草で作った巣に産み落とされた卵を受精させ、外敵から守り、新鮮な水を送り続ける。孵化までな。
      その間、全く食事も取らず警戒し続けるためかメスよりも短命っていう、まァ、苦労症なヤツだ」

打ち止め「あの、その、出来たらミサカは仲良し夫婦なお魚の話が聞きたいな、ってミサカはミサカは軌道修正してみたり」

一方通行「俺の話が気に喰わねェとは、エラくなったもンだねェ打ち止めちゃん? ンじゃ永遠の愛を誓う魚の話をしてやンよ」 


115: 2011/07/31(日) 22:21:57.99 ID:6k9hLXL90

一方通行「チョウチンアンコウ類のオスはメスに比べて非常に小せェ。同じ種として認識できねェくらい小せェこういうオスを
       矮雄(わいゆう)っつーんだが、その比は最大で13倍にもなンだとよ。メスが全長65cmならオスは5cmか。ンで
       そンなチョウチンアンコウのメスは常にオスを数匹従えてンだ。繁殖すンのにチビなオス一匹じゃ能力が足ンねェし
       時期が来てから探してちゃ見つかる保証がねェからな。ま、メスを探すのはオスの仕事らしィが」


打ち止め「すっごい女王様って感じだね、ってミサカはミサカはそのカックイイー! メスの姿を想像してみたり」


一方通行「深海魚だから、見た目はグロ系が多いがな。で、そンなチョウチンアンコウ類のオスの中には、メスに本当の意味で
       寄生するヤツがいる。その種のオスはメスを見つけるとその体に噛み付き、自分の体とメスの体を一体化させる。
       栄養もメスの血管を伸ばしてそこから吸収し、次第にメスの体の一部になっちまうンだ。つまり受精卵を一匹の魚が
       作っちまう、両性具有? 雌雄同体? ……、そンな魚なら仲良し夫婦に違いねェだろ?」



打ち止め「え、あの?? よく分んないよ?? そもそもそれまで一匹で生きてきたオスが何で寄生しちゃうの?」

一方通行「この種の魚は同化することによる刺激で性成熟すンだよな、つまり俺がオスのアンコウだとしてこう……」ガブッ

打ち止め「ひゃ!! メスのアンコウのお腹をガブっと、これが永遠の愛を誓うキスみたいなものなの?」イタイイタイ

一方通行「ほォはわ。っと、そォだな。もォずっと離れらンネェっつーか……、この刺激でペア双方が大人になン……」







番外個体「…………、変態?」 ジトー          







一方通行「番外個体!? バカ、白い目で見ンじゃねェ。待て!! 芳川に聞け! アンコウの話をしてただけなンだよ!!!」
     

116: 2011/07/31(日) 22:28:35.66 ID:6k9hLXL90

以上、第十一回「変態」でした。

いつもの事ですが、モクズガニをもし川で捕まえても、生食は危険です。美味しいカニですがちゃんと火を通しましょう

というわけで、今日はこの辺で。また明日~

122: 2011/08/01(月) 20:46:29.83 ID:K/VR1d5C0
乙がとっても嬉しい、そんな>>1はただのおさかな好きです。

今日はまだ新しいのが書けてないので、第一パートで触れてる「変態」のモトネタと軽いオマケを貼っておきます。

毎日更新できる人ってスッゲーって、あらためて思いつつ。ではどうぞ

123: 2011/08/01(月) 20:47:36.66 ID:K/VR1d5C0


「なあ、インデックス。変体でも編隊でもなく、変態について聞きたいんだけど」

「とうま、わざわざ確認しなくても判るんだよ。私は変態にはすごく詳しいかも。で、どんな事を聞きたいのかな?」

「おぉ! 助かるよ(正直こんな話に乗ってくるとは思わなかったぜ……)。じゃ、グチャグチャドロドロなヤツで頼む!」

「体がとろける感じかな? それは完全変態だね。チョウや蛾、甲虫などに見られるサナギを経由する変態のことなんだよ」


「え、あの、いや……、そういうことじゃなくてですね」

「そういう変態をする生き物は幼生状態では必要な栄養を摂取することに専念して、成体では繁殖に特化した体になるんだよ」

「ん~、どう言ったらいいのかなー」

「完全変態では成長した幼虫はサナギに変化するんだけど、その中では体組織を全部溶かして組みなおす作業がされるんだよ」


「あの、インデックスさん! 大変興味深い話ではありますけど、私、上条当麻が聞きたいのはその変態ではありません!!」

「あれ、そうなの? 完全変態じゃない、って事は……、不完全変態っていうのはサナギを経由しない変態だよ」

「……、ワザとだな。コレ」

「完全変態に比べると、羽が伸びるくらいで、そんなに見た目が変化しないのが多いかな。バッタやセミがこのタイプだよ」


「そういうのじゃねえ、もっと行き過ぎた感のある変態の話を聞きてえんだけど!」

「ほえ? 行き過ぎた変態?? ……それはたぶん、過変態や多変態のことかな。住んでる場所によって体の形が変化するんだよ」

「あー、もう! なんでそれが行き過ぎてるんだよ!!」

「だって、このタイプは完全変態の一種なんだけど、幼虫の間に何回もサナギになって劇的に体を変化させてしまうんだよ?」


「……なるほど。変態はリスクが高い行為。だけど一度だけでは満足できずに繰り返し手を出しちまうヤツラなんだな」

「サナギの間は敵に襲われ放題だし変態は失敗の可能性があるし、危ないよね。まあ、そうするべき意味は必ずあるんだろうけど」

「大規模に体を組みなおすためにドロドロに溶かすんだったな。失敗したら……。じゃねえよ! 俺の聞きたいのは」

「光沢材で有名なカイガラムシみたいに完全とも不完全とも言える変態もいるから奥が深いよね、この世界は」

124: 2011/08/01(月) 20:49:01.77 ID:K/VR1d5C0

「んあー、よーし分った。じゃあこう聞いたらどうする? 俺が聞きたいのは人間の変態だ!」

「むむ! とうま、そこに気が付くとは今日はやけに冴えてるね。でも人間の話をするためにはちょっと回り道するけどいい?」

「なんだ? まあここまで来たらどんな話でも付き合ってやるけど」

「うん、素直でいいかも。えとね、とうまはメキシコサラマンダーって知ってる?」


「魔術関連……、じゃねえよな。とするとアレか、1980年代に流行ったっていうウーパールーパーってやつか?」

「そう、メキシコの湖に住んでる両生類なんだけど日本ではアルビノ種がCMで有名になった事があったみたいだね」

「ピンクのヒラヒラと円らな瞳が印象的なカワイイ生き物ってイメージだけど、アレがどうかしたのか」

「うん、メキシコサラマンダーは本来両生類だから変態するはずなんだけど、幼生の形のまま性成熟してしまう種なんだよ」


「あー、聞いたことはあるぜ。子供の姿のまま大人になる、そういうのをアホロートルって言うんだよな」

「その名称はメキシコサラマンダー限定で、普通はネオテニーって言うんだけどね。ちなみにピンクのヒラヒラはエラなんだよ」

「エラが残るって事はカエルで言えばオタマジャクシの姿で繁殖行動するんだな。でもそれと人間の変態に何の関係があるんだよ?」

「チンパンジーの幼形と人間には外見での類似点が多いから、ヒトもネオテニーではないかと言われているんだよ」


「ん? つまり本来人間はゴッツイ毛むくじゃらになるはずなのに、ツルッツルの起伏に乏しい姿のままで成熟しちゃってるって?」

「うんうん。でもまあ、そういう説もあるって覚えておく程度でいいかも。進化の話に関わると立場上、説明が難しいんだよ」

「へ~。本来なら変態するはずがしていないのが人間、か。ありがとな、インデックス。面白かったぜ」

「どういたしまして、なんだよ」ニコッ




「(アレ、当初の目的を忘れちまった気がするんだけど……)」

「(私にえOちぃ事を言わせようとするなんて十万三千年早いんだよ、とうま!)」フフーン


125: 2011/08/01(月) 20:50:43.46 ID:K/VR1d5C0
【おまけ 生き物の名前の表記】


「なあインデックス、『おさかな目録?』ではほとんどの生物の名前がカタカナで書かれてるけどなんか意図があるのか?」

「とうま、今頃気付いたの? ……日本語が多様な表記法を持ち、文字による伝達性に優れた言語だっていうのは分る?」


姫神「漢字と仮名。難読漢字を多用すると内容が乏しくても高尚に見える。けど読みにくい。平仮名だけでも読みにくい」


「なるほど。つまり読みやすさと分りやすさの為、ってことなんだな?」

「だね。仮に、生き物の名前を漢字で書くとお話はこんな風になるかな?」



『なあ禁書目録、白黒熊こと大熊猫っているだろ? あれが発見されたのは小熊猫より後なんだよな?』

『当麻? 確かに大熊猫こと色分熊の発見は十九世紀後半で、小熊猫は前半だね。それがどうしたの?』

『道理に合わないとは思わないのかよ? 大、小ってのは何を持って決めたんだよ?』

『大熊猫って名付けた時には小熊猫はただ熊猫だったんだけど、大熊猫が有名になって、熊猫は大熊猫のことになったんだよ』

『それで熊猫より小さいから小熊猫って名前にされたのか。理不尽だなあ……、あんなにカワイイのによ』




姫神「ダメ。これだと誰も読まない。頑張って読んだところで面白くも無い」

「内容はともかく、読みにくいよね。じゃ、コレの続き。名前をカタカナにしたらどうなるか!」



『……俺は断然レッサーのほうが好きだけどな。レッサーが愛くるし過ぎて上条さんは夜も寝られませんよ~』

『むっ、とうま。パンダって名前が付く動物はみんな可愛いに決まってるんだよ』

『大体さあ、そっちはシロクログマとかイロワケグマって立派な名前があるじゃねえか。名前を持ちすぎなんだよ』

『あ、でもねとうま。レッサーだってパンダって呼ばれる一方で、英語や他の言語では「炎の狐」とも言われるんだよ』

『……Firefox??』




姫神「確かに読みやすい。だけどたぶんこれ。パンダを主題にしたのが間違い」


「別の何かの名前だったり、他の何かの事じゃないかと思わせちまったり。ワザとじゃない場合はこういうの、困るな」

「……複数の意味がある言葉は混乱を招くよね。こういう、適切な表記の選択が難しい事象は、最初から扱わないのも手なんだよ」

「この場面で何でアレが出て来ないんだ!? ってことがあったら、表現の都合上だと思ってくれってことか」

「うんうん。出番を無くしちゃうのは残念なんだけど。言葉にも、それぞれの書き手の力量にも限界があるんだよ」




姫神「つまり私。作者の日本語表現力の範疇に収まらない女?」

126: 2011/08/01(月) 20:57:36.94 ID:K/VR1d5C0
今日の投下は以上です。

ちなみに、ウーパールーパーって美味しいらしい・・・。

というわけで? 何を書こうか迷いつつ、また明日~

128: 2011/08/02(火) 20:27:21.68 ID:F4kTtFrF0
今日のおさかな話は、水槽にまつわる怖い話、「怪談」です

もちろん、全然怖くないですけどね。ではどうぞ

129: 2011/08/02(火) 20:28:57.74 ID:F4kTtFrF0
                                                                              ☆

「なあインデックス、シジミ飼育の話の時に水草を入れろって言ったけど、川で採ってくるのと店で買うので違いってあるのか?」

「とうま? 生き物の飼育は出来る限り生育環境を再現することが常にベストなんだよ」

「じゃあシジミが居たトコに水草があればそれを採ってくるのがいいのか。でも川なんて水草があるとは限らないんじゃ?」

「まあね。そういう場合は他の場所で採取したり、お店で買うことになるよね。でも、水草はちょっと注意が要るんだよ」


「ん? 水草の種類によって育ちにくいとか、逆に繁り過ぎるとか、そういうことか?」

「そんな当り前のことじゃなくって。安易に水草を水槽に入れると、とんでもないものを招き入れる事になっちゃうかも」

「なんだよその言い方。またあれだろ? 病原菌とか寄生虫とかお決まりのさ、火を通せば大丈夫デスー、ってのじゃねえの?」

「とうまはヤツらを知らないからそんな態度でいられるんだよ。水槽を愛する者にとってそれは悪夢、その名はスネイル!」


「出たな魔術師!!!」

「スネイル、スネールとも言うけど何種類かの巻貝のことなんだよ。コレが何でそんなに怖いかというとその増え方なの」

「………………、いや、うん、続けてください」

「中でも特に恐れられているのがサカマキガイって種類だね。これは雌雄同体の貝だから単為生殖する可能性すらあるんだよ」


「ふむ。そいつらが水草についてる場合があるから気をつけろ、って事か。ところでそいつらの繁殖期はいつなんだよ?」

「自然界では暖かい時期みたいだけど、高温で安定した水槽内では年中無休なんだよ。とにかく一匹でも入れちゃったら……」

「でもさあ、タニシみたいに卵胎生って訳でもないだろうし、そんなにすぐタマゴから成長しちゃうってことも無いだろ?」

「甘いんだよ! 卵塊っていうゼラチン質に包まれた平均50個くらいの卵は、二ヶ月もしないうちに繁殖可能な個体になるんだよ!」


「ほ、ほう……、そいつらが全部成熟しちまったらさすがに大変かもな」

「だからとうまは甘いって言ってるんだよ! サカマキガイは絶好調なら一日おきで産卵をするんだよ。分る!?」

「ちょ、おいおい……、そんなのが一年中続くってのか?? 貝だから他の魚を攻撃したりはしねえだろうけど」

「でも、水草を食害するし、ガラスにびっしりへばり付くし、水を綺麗にするバクテリアを食べちゃうし、何もいい事はないんだよ」



130: 2011/08/02(火) 20:30:03.18 ID:F4kTtFrF0

「ん~、これは確かに対策を考えないといけないかもな。第一に水槽に持ち込まないことだろうけど」

「うん。特に川や池で水草を採ってきた場合は、水槽に入れる前に流水で綺麗に洗って、目視で貝や卵の有無を確認すること!」

「店で買ってきた水草にだって、絶対付いてねえって保証は無いよな。自分の目で確認しといたほうが無難だな」

「でもね、どこまで慎重になってもある日突然、水槽内で見つかる事もあるんだよ。次はそうなった時の対策だよ!」


「だけどさ、水槽内で一匹サカマキガイを見つけたら50匹は居るってことだろ? 対策って……」

「正直、何が悪夢かって言うとコレが一番悪夢なんだよ。……見つけ次第、潰すの」

「………………、いや、あの、もっと、平和的解決っていうかさ、文明の利器を使った解決って無いのか?」

「誘引物質を使ってサカマキガイを集めるような商品も売ってるみたいだけど、集められたとして、どうするの?」


「そ、そっか。生態系を乱す行為だから絶対に川や池や用水や排水溝に放つことだけはしちゃいけないしな。つまり……」

「そう、やっぱり潰すしかないんだよ。直接手を下したくなければ貝を食べる魚を投入するって手もあるけどね」

「なんだよ、いい方法があるんじゃないか。まあ、貝にとっては可哀想なのに変わりないけど」

「だけど、魚を投入できるのは水槽内に小魚やエビなどの小さな飼育種が居ない場合に限られるんだよ」 


「ああ、殻のある貝を食べるほどの魚にとっちゃ、そういうのはいい獲物だもんな。んじゃ、その場合は地道にプチプチ……」

「でもね、毎日どんどん増えていくからそのうち本当にイヤになるんだよ。で、行き着く先は……、リセット」

「飼育種を別の水槽に移し変えて、貝が湧いた水槽を空にした後、完全に洗浄しちまって、始めから作り直すってことか」

「一回コレを経験するとトラウマになって、次にサカマキガイが沸いたときに水槽飼育を止めちゃう人がいるくらいなんだよ」


「見た目は小さな小さなアワビみたいな可愛い貝なのに。まさかその優れた生態が嫌われる原因になるなんてなあ……」

「肺呼吸も出来るし、水中での呼吸も出来て水の汚れにも強いから、初心者でも簡単に飼育可能な種のひとつではあるけどね」

「……、水温を低くしてやれば繁殖スピードを抑えられるんだろ? 仕草もかわいいみたいだし、飼ってみようかな」

「と、とうま!? ……、水槽の悪夢を育てるような余裕があるなら、私にお腹いっぱいご飯を食べさせるべきかも!!」バンバン


「確かにお前は、猛烈に増えないだけありがたい……、かな?」



131: 2011/08/02(火) 20:31:28.37 ID:F4kTtFrF0
                                               ☆

御坂「夏といえば怖い話よね。というわけで佐天さん。何か新しいネタ、ないかな?」

佐天「そうですねえ。……あ、にぼしの話しませんか? アレって結構、魚を飼い始めたばかりの人にはショックだと思いますよ?」

初春「にぼし、ですか? につぼうちょ……。イワシの小魚を塩茹でして干したダシの素のことじゃないですよね?」

白井「佐天さんが仰ってるのは、飼育している魚が水槽を飛び出して干からびることですわね。見た目は煮干しそのものですけど」


御坂「金魚を飼った経験がある、ってだけで他の魚を飼うと起こるのよね。ほとんどの魚は水面以上に飛び上がる事があるのよ」

佐天「川魚のジャンプ力はすごいですからねぇ。ドジョウの仲間は空気呼吸の為に頻繁に水面から顔を出しますし」

初春「驚いたり、敵から逃げようと瞬間的に大ジャンプするエビ類もそうですね。……、これは干しエビっていうべきかな?」

白井「あと巻貝類などは壁面を這って移動する都合上、意図せず水槽外に出る事がありますわね。大抵は自力で戻れませんけど」


佐天「このにぼし、何が怖いかって、まずは発生になんとなく気付いちゃうってことなんですよね」

白井「大抵飛び出しは深夜ですから。なんとなく『ポトッ』って音が何処からか。でも既に寝入っていて確認する事もなく」

御坂「朝起きて、そういえば昨日の音はなんだったんだろ? とか思っても原因を見つけられることはまず無いのよね」

白井「夜になって帰宅しますと、何となーく水槽周辺に違和感が。辺りに近づいてよーく見てみますと……」


佐天「電源コードや絨毯の影に隠れるように、哀れなにぼしが出来上がってるわけですね。埃や毛糸をいっぱい巻きつけて」

御坂「最後までもがいて、できるだけ乾燥を防ごうと物の影に隠れたのねって……。見つけられなかった罪悪感がスゴイのよ」

白井「それを一度経験しますと、寝ていてもほんの小さな物音で起き出して水槽の周りを見に行っちゃいますもの」

御坂「まあ、水槽に蓋をすればいいんだけどね。とにかく一度乾いちゃった魚が回復する事は難しいから気をつけてね」


白井「蓋を乗せるだけではモクズガニなどは5kgの重しがしてあっても逃げ出すそうですので、蓋は固定をお勧めしますの」

佐天「早めに見つけて、まだ生乾き状態で生きてるんだったら、運を天に任せて一応治療しても損は無いと思いますけど」

御坂「そうよね、乾燥に強い魚も居るし。……ところでさ、これって怖い話のはずじゃなかった? 全然怖くないわよね?」

初春「水槽あるあるネタを延々続ける皆さんの姿は、怖いといえば怖いですよ」 ニコッ



132: 2011/08/02(火) 20:33:19.00 ID:F4kTtFrF0
                                               ☆

打ち止め「お~ばけ~だゾォォオォオオオッ! ってミサカはミサカは微睡むあなたを恐怖のどん底に突き落としてみたり!」ドーン

一方通行「………………、前に言ったよな、俺の眠りを邪魔すンなって。…………、恐怖のどン底落ちンのはテメエだクソガキ!」

打ち止め「おっと!! 待ってよ、聞きたい事があるんだってば、ってミサカはミサカはオカルト雑誌を取り出してみたり」ゴソゴソ

一方通行「ンだァ? 胡散臭さの塊魂じゃねェかこンなもン……、メンドクセェからとっとと用件を言ェ!」パラパラリ


打ち止め「あのね? その本に書いてある、雪男や幽霊やブルトンやバーゴンって架空の生き物でしょ?」

一方通行「―――――、あのなァ、他のはどォだか知らねェが霊魂の実在は学園都市の科学が証明してンだろォが」

打ち止め「な、なにその爆弾発言?? ってミサカはミサカは寝ぼけて別位相に飛んでるらしいあなたを心配してみたり」

一方通行「氏ンだら終わり、だから霊魂はねェってンだから、他媒体や大人数で意識を共有出来るってはその否定だろォ?」


打ち止め「ちょ、ちょっと待ってねって、ミサカはミサカは余りの予想外の展開にフリーズ気味の頭をフル回転してみたり」

一方通行「適当に聞けばイイ。つまり個人の氏がその意識の断絶を意味しないって考えちまってる科学は、既にオカルトなんだよ」

打ち止め「えーと、つまり、科学で意識は掌握可能って考えた時点で、却って意識は非科学であるって認めたってこと?」ワケワカラン?

一方通行「……、と、こォいう論理の飛躍が胡散臭い話には蔓延してるから注意しろよ。で? 本題はなンだよ?」


打ち止め「よく分らないけど、ミサカは弄ばれたんだねって……。それはともかく、夏らしく魚のオカルト話が聞きたいなって」

一方通行「……、魚とオカルトは相性がイイのか、その手の話は枚挙に暇がねェんだ。エジプトの川の話なンざ考えたくもねェぞ」

打ち止め「お? 候補が多すぎるから絞れってことかな? ってミサカはミサカは気が付く女だから、幽霊な魚! って言ってみる」

一方通行「幽霊ね……。そォだな、ユウレイウオって呼ばれてる魚が居ンな。知ってるか?」


打ち止め「ううん、知らない。普通の名前が別にあるのね? ってミサカはミサカは確認してみる」

一方通行「あァ。ンじゃ、俺の解説でこの魚、ユウレイウオが何の別名か当ててみるか? 趣向を変えてクイズになっちまうが」

打ち止め「おお! 望むところだよーって、ミサカはミサカは……、実際に誰も名前を知らないような魚じゃないよね?」

一方通行「心配すンな、少なくとも名前だけなら誰でも知ってる……、多分な。じゃ、行くぞ」

133: 2011/08/02(火) 20:36:28.88 ID:F4kTtFrF0

一方通行「ユウレイウオは海を回遊する魚で、成体の全長は平均で1m、重さはせいぜい2kgってトコか。肉食で小魚やアミを
       食うための鋭い歯が特徴だ。主な生息域は沖合い、水面近くから水深100m程度の中層、そして泥底。群れを組んで
       生活し、稚魚は夜に、成魚は朝夕にそれぞれ活発になるっつー棲み分けがある。……さて、第一ヒントは終了だ」


打ち止め「え~~~~、何もそれらしいヒントは無かったんじゃない?? ってミサカはミサカはぶーたれてみたり」ブーブー
     
一方通行「そォかァ? サイズ聞いてオカシイと思わなかったンかよ? 分ンねェならテメエ自身と比べてみろ」

打ち止め「ほ?? あ!! 軽い、敵は圧倒的に軽い……。つまり細長系ってことだねってミサカはミサカは勘付いてみたり!」

一方通行「だな。ンじゃ続き行くぞ」


一方通行「柔らかく淡白で上品な肉質で、どンな料理にも合うユウレイウオは漁業種としてだけでなく釣りの対象としても人気
       がある。引きが強く、群れで生活してるから釣れ始めると止まらねェンで遊びで釣りするヤツにも人気だ。
       さて、ユウレイウオの別名はココで付いたとも言える。集団で素早い移動をするンで、さっきまでバカみたいに釣れ
       てても、一瞬で全く掛からなくなる。逆に全くアタリが無いと思ったら急に釣れだす。瞬間移動を思わせるこの習性
       が、幽霊のように神出鬼没だってことでユウレイウオと呼ばれるようになったワケだ。……さて、分ったか?」


打ち止め「細長くて、歯が鋭くて、美味しくて、釣りの対象だね。候補は絞れて来たよってミサカはミサカはワンモアプリーズ!」

一方通行「コレ以上は答えを言うよォなもンだけどな。……、まァイイか」


一方通行「集団で素早い移動をするユウレイウオだが、普段泳いでる姿からはそンな事が出来るとは思えねェ。何しろ頭を上にして
       立ち泳ぎしてンだからな、それも集団で。上を向いているのは、エサになるモノが落ちてくンのを直接見てンだろォな。
       で、この魚の体表にウロコは無く、代わりにグアニン質って銀色の層に包まれている。昔はコレから銀粉を作ってラメの
       原料にしたンだってよ。そンなもンに包まれた体はまるで細い金属片、それこそ日本刀みてェじゃねェか?」 


打ち止め「はいはーい!! 正解は、タチウオだねって、ミサカはミサカは終了間際の飛び込みセーフで大正解ー!」ヨッシャア!

一方通行「……、タチウオで正解は正解だけどよォ。罰ゲームも商品もねェのに、どォしてそんなにテンション高いンだよ?」

打ち止め「だってね。出題と回答、クイズを通して二人の意識が繋がってるのがなんだか幸せだなってミサカはミサカは、アレ?」




番外個体「だからね? 第一位のヤツ、今度はタチがどうしたとか言ってんでしょ。やっぱ変態なんじゃね?」ゴニョゴニョ

芳川桔梗「うーん。打ち止めも繋がる、とか言ってるし。二人にもちゃんと教育したほうがいいのかしら……」ヒソヒソ 





一方通行「前の設定を引きずンじゃねェ!! 大体、テメエらの論理の飛躍はオカルトレベルなんだよ!!!」


~おしまい~

134: 2011/08/02(火) 20:43:25.23 ID:F4kTtFrF0
以上、第十二回 「怪談」でした

ちなみにサカマキガイ。普通に水道で流しちゃうと、パイプの中で繁殖することもあるらしいです。コレもダメってことです
どうしても潰せないって人は、地面にばら撒くのがいいかな・・・

というわけでまた明日~

137: 2011/08/03(水) 23:26:23.88 ID:KIFxBpEx0
今日のおさかな話は、若干変化球気味・・・、第三パート無いし

ちょっと変化球気味ですが、よろしければどうぞ


138: 2011/08/03(水) 23:27:48.05 ID:KIFxBpEx0
                                         ☆ 

「なあインデックス、俺は常々疑問だったんだが、タツノオトシゴってアレはなんだ? 虫か? エビか?」

「とうま……、頭、大丈夫? 暑さでおかしくなってない?? ……、どう見たってタツノオトシゴは魚類なんだよ」

「おいおい。そりゃ魚だろうなって思ってはいたけど。『どう見たって』って、何処をどう見ろって言うんだよ!?」

「軟骨では無い骨格を持ち、エラ蓋のある呼吸器官を持ち、胸ヒレ、背ビレを持つ。私には硬骨魚以外には見えないかも」


「……、ハイハイソウデスネー。ペンギンは鳥デスネー。コウモリはホニュウ類デスネー。人類ミナ兄弟デスネー」

「ヤケになったとうまは全然かわいくないかも。……まあ、タツノオトシゴは変わった特徴の多い魚ではあるよね」

「だろ??? 言いたかったのはそういうことなんだよ。やあー、気持ちが伝わるっていいもんだよなー」

「調子がいいっていうかキャラがブレてるっていうか、なんだか気持ち悪いんだよ。まあ、とりあえず解説するね」


「おお、頼むよ! まず第一にアレは一体何の仲間なんだ? 近い種類の魚で有名なのっているのかな?」

「タツノオトシゴはトゲウオ目って分類なんだけど、まずはこのトゲウオ目を説明したほうがいいかも」

「トゲウオね……、とりあえず聞き覚えは無いなあ。ってことはそんなに多い種類でも無いんだろ?」

「少なくもないよ。トゲウオ目の代表的な特徴は、①小さな魚が多い②変わった姿が多い③オスが子育てする、だよ」


「ふーん。例外はあるだろうけど、タツノオトシゴもその特徴に対応してるわけだな」

「そうだね。①については20cm以下のサイズが多いんだけど、美味しいアカヤガラもトゲウオ目なんだよ」

「……そんな魚、誰でも知ってると思うなよ。全長1.5mを越す筒状の口を持つ細長い高級食用魚じゃねえか!」

「うんうん、これ以外のトゲウオ目は小さいからほとんど食用にはされないんだよ。でも、ヤガラも変な形の魚だよね」


「ああ、次は②だな。タツノオトシゴといえばあの形。直立しつつも顔は前方を向き、筒状の口はまるでラッパ」

「馬の顔みたいだよね。英語では『海の馬』って……、というか日本語でも海馬って言うよね?」

「だな。ちなみに短期記憶を司る脳組織、『海馬』はタツノオトシゴに形が似てるからそう呼ぶみたいだぜ」

「ウマヅラはドラゴンの子なんだよー! って、そんなオチはダメだよね……。でね、この変な形は擬態の為なんだよ」


139: 2011/08/03(水) 23:30:19.87 ID:KIFxBpEx0

「擬態ってのは、周囲の環境や他の生き物に姿を似せて、敵から逃れたり逆に獲物をおびき寄せたりする事だよな?」

「トゲウオ目の擬態は敵から逃れるためだよ。生息域に合わせて、海草や石やサンゴにそっくりな種類も居るね」

「ウロコが変化して出来た殻に包まれた柔軟性に欠ける体で、ヒレも小さいから、速く泳ぐのは無理だもんな」

「隠れる事に特化したってことだね。長い尾で海草などに巻きついて体を固定してたら、なかなか見つけられないよ」


「だよなあ。……で、③なんだが、魚ってそもそも育児をするもんなのか?」

「育児、と言ってしまうと人間のそれと混同するかも。要はタマゴが孵化するまでオスが保護をするってことだよ」

「ふむふむ、そういうことか。例えばどんなふうに?」

「トゲウオ目の中でも、種によって様々だね。水草で巣を作ってメスに卵を産ませてそれを保護するとか」


「あー、淡水魚のトミヨやイトヨってやつだろ? 他には?」

「オスの体表に卵を産み付けるとか、もっと徹底した種ではオスの育児嚢の中にメスが卵を産みつける、とかだね」

「育児嚢? カンガルーの袋みたいなもんか。ってことはオスのお腹が膨らんで、オスが稚魚を産むのかよ……?」

「うんうん、タツノオトシゴがまさにそうだよ。孵化後、オスは体を震わせて親と同じ姿の稚魚を放出するんだよ」


「変わってるのは形だけじゃないんだな……。解説してくれたインデックスには悪いけど、ますます魚には思えねえや」

「む、何が言いたいのかな? トゲウオ目のタツノオトシゴって海棲魚はこういう魚です。それじゃダメなのかな?」





「いいか……、何でも型にはめて、わかりやすくカテゴライズされて、勝手に付けられた番号順に並んだような、そんな
 そんな社会は、人間のそれだけで充分じゃねえか、なあ。人間中心の都合をタツノオトシゴに押し付けんなよ! 理屈
 じゃねえ。一目見れば誰だってそう思うに決まってる。アレが魚に見えるのかよ? アレをお刺身で食えんのかよ?
 ふざけた事言ってんじゃねえ! 甲板で守られた体躯はエビのよう、独特の風貌は馬のよう、ふよふよと海中を漂う様
 は妖精のよう、それがみんなタツノオトシゴなんじゃねえのかよ? オスが出産する、そんな魚が居るわけねえだろ!
 
 ……コレだけ言ってもまだ、タツノオトシゴはトゲウオ目ヨウジウオ亜目ヨウジウオ科の硬骨魚だって思ってんなら、
 まずは、まずはその幻想をぶち頃す!!!」  ドッギャーン!





「…………、おさかな話じゃ、お説教が出来なくてストレスが貯まってたの? でもちょっと無理矢理過ぎかも」

「~♪」 スッキリ

140: 2011/08/03(水) 23:33:34.13 ID:KIFxBpEx0
                                         ☆

初春「水槽でおさかな飼ってる人って、たとえば美味しい魚を飼育していても食欲沸かないんですかね?」

佐天「初春~、それは猫を飼ってる人に向かって『いい猫ね、いつ食べるの?』って聞くようなもんだよ?」

白井「まあ、絶対食べる気が起きないか? と言われれば中にはそういう方も居るかもしれませんけど」

御坂「ドジョウだろうとナマズだろうと、大事なペットであり家族なのよね。ただ、料理されたものは別よ?」


佐天「そうなんですよねぇ。馬が好きな人は桜肉を食べない、って聞くけど。魚好きは魚、普通に食べますよね?」

白井「それどころか、いろんな魚の調理法に詳しかったり、自分でさばく技術を持ってる方が多いですわね」

初春「そこなんですよ。食べるのも好きなら、飼ってる魚にだって食べたい気持ちが出るのが普通だと思うんですけど」

御坂「いや、ん~……、違うのよね。なんて言ったらいいんだろう?」


春上「それはこういうことだと思うの」



東城マミカ(10歳)さんがお友達に手伝ってもらってやっと捕まえたオタマジャクシは、彼女にとって初めてで大切な
オタマジャクシ。でも、ジャムの空き瓶に入れて大喜びで帰る途中で、マミカさんはいじめっ子に出会っちゃったの。

「なんだよこんなもん!」

いじめっ子はマミカさんから空き瓶を取り上げると道路に向かって投げつけたの。短い破裂音の後、ガラス片と水飛沫
が飛び散って、鉄製の蓋の付いた部分は勢いよく跳ね返って、そして、大切なオタマジャクシは短い一生を終えるの。

泣きながらトボトボと、いつもより時間をかけて家に帰ると、様子を見てた周りの友達から連絡がいったのか玄関先に
既にいじめっ子とその親が来ていたの。いじめっ子の手には、水の入った小さなビニール袋があったの。

「ごめんな。これ、お詫びに」

いじめっ子は親に殴られたのか怒られて泣いたのか、赤く腫らした顔を俯き気味に、いつ捕まえたのかオタマジャクシ
の入ったビニール袋をマミカさんに差し出すの。一瞬、きょとんとした後、マミカさんは言うの。

「なんだよこんなもん!」


ってことなの。

  

           「…………」     「…………」     「…………春上さん?」    「…………」


春上「かけがえの無い、世界にただ一匹だけのおさかなは他のものとは全く違う、大切な友達なの」

初春「……、春上さんのお話で私、わかりました! おさかな好きは理屈に合わない人種ってことですね?」

白井「いや、ええと……、愛は理屈では語れない、と言う次元であればそうだと言えなくも無いですけれども……」

御坂「うまく言葉に出来ないわ……。まあ、お友達の家に水槽があっても、食べないの? とは聞かないほうがいいわね」 


春上「それが無難なの」 ニマー


~おしまい~

141: 2011/08/03(水) 23:40:23.43 ID:KIFxBpEx0
以上、第十三回、「例外」でした。

ちなみに、トゲウオ目にはいつか話題に出たヨロイウオ(本物)も含まれます。甲板に包まれた魚なのです。

第二パートの飼ってる魚をどうのこうの、ですがシジミを飼育しつつ、シジミ狩りしてお味噌汁しちゃうあたり
私も理屈に合わない人種なのかもしれません。

次回はちょっと日が開くかと思います。見つけたら是非によろしくおねがいします。
では今日はこの辺で~

142: 2011/08/04(木) 00:12:41.26 ID:p8W2xKYJo

ヤガラは最近テレビで見る事が増えた希ガス

引用元: おさかな目録?