1: 2017/01/15(日) 18:02:07.19 ID:W/usQfX40
ヒュー
ルビィ「けほっ、けほっ」
花丸「強い風が吹くと砂が飛ぶからね。ルビィちゃん、マスクをつけるずら」
ルビィ「この街、滅んで千年以上は経ってるんだよね……」
花丸「うん、都市国家チカナン。別名、忘れられた街」
花丸「昔はそれなりに隆盛してたらしいけど」
花丸「つい最近、偶然発掘されるまで」
花丸「誰の記憶からも消えていた――」
ルビィ「……」
花丸「……」
花丸「マルの知識欲がうずくずら~♪」
ルビィ「頑張って調査しようね!」
2: 2017/01/15(日) 18:03:30.65 ID:W/usQfX40
花丸「新たな貴重資料でも見つかればいいんだけど」
ルビィ「あ、マルちゃん見て見て」
花丸「ん?」
ルビィ「ほら、短冊があるよ」
花丸「だいぶ砂かぶってるなー」
ルビィ「昔の人は七夕でどんなお願いをしたんだろう」
パラパラ
花丸「どれどれ」
つ――かなんさゃんとおなじ――す―――たい
花丸「ところどころ文字がかすれて読めないずら」
ルビィ「比較的長文は”かなんさゃんとおなじ”だけど。どういう意味かな」
花丸「うーん……」
花丸「これはプロの言語学者に解読してもらわないと」
ルビィ「やっぱりそうだよね」
花丸「特にこの”さゃん”が曲者ずら」
ルビィ「古代文字の一種だよ、きっと」
花丸「古代文字、ロマンずら~」
ルビィ「そうだね!」
3: 2017/01/15(日) 18:04:31.21 ID:W/usQfX40
ルビィ「でも何でチカナンは滅んじゃったんだろうね」
花丸「諸説あるけど、こないだ発表された論文によると」
花丸「ほら、あそこに火山が見えるでしょ?」
ルビィ「うん」
花丸「あれはアニメ火山といって」
花丸「あの火山が噴火したことが原因らしいずら」
ルビィ「そうなんだ…」
花丸「大量の火山灰が空を覆い、寒冷化で作物が育たず」
花丸「人々は飢え、街は日に日に衰えていったらしいよ」
ルビィ「苦しかっただろうね…」
4: 2017/01/15(日) 18:05:43.82 ID:W/usQfX40
花丸「あ!」
ルビィ「どうしたの?」
花丸「遺物ずら~」
ルビィ「今度はどんなのかな」
花丸「うーん、形状は昔地上を走った乗り物、バイクに似てるずら」
ルビィ「それにしては幅があるような……。それに、タイヤがないよ」
花丸「それじゃあ走れない。まさかオラたちの時代のように空飛ぶはずないし……」
花丸「は! もしかしてこれは、《おーぱーつ》では!?」
花丸「ろ、ロマンずら~」
ルビィ「あ、でもそういえばこの辺りの一部は昔、海に面してたんだよね?」
花丸「うん、資料にはそう書いてあったよ」
ルビィ「だったらこれ、海を進む乗り物だったりして。ほら、なんか下の部分は船底みたいだし」
ルビィ「海の乗り物だったら、古代人も作ってたよね」
花丸「…お」
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「オラのロマンがぁ~」ポロポロ
ルビィ「ひぃ! ご、ごめん」
5: 2017/01/15(日) 18:06:49.29 ID:W/usQfX40
ルビィ「ふぎゃ!」ドサッ
花丸「ルビィちゃん! 大丈夫!?」
ルビィ「うん。なにかにつまずいただけ」
花丸「地中から鉄が出てる」
ルビィ「何が埋まってるんだろう」
花丸「ここはマルの〈おうごんのつるはし〉の出番ずら!」
ルビィ「頑張って、マルちゃん!」
カンカンカン
花丸「よし、これなら引っ張り出せそう」
ルビィ「手伝うね」
花丸「ありがと。いくよ、せーのっ!」
ドシン
花丸「ふう」
ルビィ「なにかな、これ」
花丸「たぶん、大砲ずら」
ルビィ「た、大砲!?」
花丸「うーん、でもこの辺りで争いがあったなんて記述はないんだけど…」
花丸「ん? この砲身にも何か書いてある」
ルビィ「ホントだ」
マンガ砲
花丸「マンガ砲……」
ルビィ「マンガって、古代の人たちが紙で読んでたっていう、あの?」
花丸「うーん、マンガと大砲がどう関係するずら…?」
花丸「とにかく、これも解析してもらおう」
ルビィ「いい感じに資料が集まってるね」
6: 2017/01/15(日) 18:07:45.93 ID:W/usQfX40
花丸「ここだよ、ルビィちゃん」
ルビィ「うわぁ!」
花丸「この建物はね、チカナンの王宮だって言われてるんだ」
ルビィ「当時はもっと大きい宮殿だったんだろうね」
花丸「ホント、一部しか残ってないのが惜しいずら」
ルビィ「でも今残ってる遺跡を見るだけでも、感動っていうか」
花丸「ふふ、そうだね」
ルビィ「でも王宮ってことは、チカナンには王様がいたんだよね?」
花丸「うん。ただ、王の存在は確認できるんだけど」
花丸「それがどういう人物かは、まだ分かってないらしいずら」
ルビィ「そうなんだ」
花丸「でもね、この都市国家には王様が2人いたらしいよ」
ルビィ「2人の王様かぁ。その2人は仲良かったのかな?」
花丸「どうだろうね。権力を持つと、どうしても自分一人の手に収めたくなるから」
ルビィ「そうだったら、なんか悲しいね」
花丸「しょうがないよ。人間は所詮一人ずら」
ルビィ「もう、マルちゃんってば」
7: 2017/01/15(日) 18:08:38.72 ID:W/usQfX40
花丸「日が暮れてきたなあ」
ルビィ「ちょっと王宮の調査に時間かけすぎたね」
花丸「うん。しかもその割には成果なし」
ルビィ「そ、そういうこともあるよ」
花丸「やっぱりオラのようなペーペーが貴重資料を発見できるわけないか」
ルビィ「マルちゃん、気を落とさないで」
花丸「ふふ、大丈夫だよ。マルはくじけぬ心を持ってるから」
花丸「さ、ルビィちゃん。今日は王宮の前でテント張ろうか」
ルビィ「うん、分かった」
8: 2017/01/15(日) 18:09:19.65 ID:W/usQfX40
《夜》
花丸「さて、今日はもう寝よう」
ルビィ「うん」
花丸「ねえルビィちゃん」
ルビィ「なに」
花丸「せっかくだから、テントの外で寝ない?」
ルビィ「外で?」
花丸「うん。気候も温かいし、風も穏やかになったし」
花丸「それに、ここにはマルたち以外誰もいないずら」
ルビィ「いいよ。じゃあ寝袋出そうか」
花丸「うん!」
9: 2017/01/15(日) 18:10:24.49 ID:W/usQfX40
花丸「星がきれいずら~」
ルビィ「だねー」
花丸「昔の人たちも、同じようにこの星空を見てたのかなぁ」
ルビィ「ロマンずら~」
花丸「あー、真似したなー」
ルビィ「ふふ、ごめんごめん」
花丸「でも本当に、遺跡はいいものずら」
ルビィ「来て良かったね」
花丸「――ありがとうな、ルビィちゃん」
ルビィ「え?」
花丸「オラの遺跡調査に付き合ってくれて」
ルビィ「ううん、気にしないで。ルビィも遺跡大好きだから」
ルビィ「ルビィのほうこそ、誘ってくれてありがとうだよ」
花丸「ルビィちゃん……」
ギュ
ルビィ「ま、マルちゃん?」
花丸「ルビィちゃんの手、あったかい」
ルビィ「ふふ」
10: 2017/01/15(日) 18:11:54.36 ID:W/usQfX40
ルビィ「ねえ、マルちゃん。一つ聞いていい?」
花丸「うん?」
ルビィ「マルちゃんは、どうしてチカナンを課題研究に選んだの?」
花丸「それは――」
花丸「……」ゴソゴソ
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「テント行ってくるから、ちょっと待ってて」ダダダ
ルビィ「?」
花丸「はい」
ルビィ「古書?」
ルビィ「えっと、タイトルは…えーっと……」
花丸「ジーズ、って読むんだよ」
ルビィ「ジーズ?」
花丸「チカナンの民の聖書」
ルビィ「聖書、これが……」ペラペラ
花丸「人々は聖書片手に、GODという存在を崇拝していたらしいずら」
ルビィ「どんな内容なの?」
花丸「まだ解読が済んでないからマルも分からないんだけど」
花丸「でも最初のほうに記されている、ある一節は先生から教えてもらったんだ」
ルビィ「ある一節?」
花丸「『長年の仲良しの気心の知れた幼なじみの存在――』」
ルビィ「!」
花丸「マル、気になるんだ」
花丸「こんなことが聖書に書かれている、このチカナンっていう都市のことが」
花丸「だってマルにも、長年の仲良しの気心の知れた幼なじみがいるから」
ルビィ「……」
花丸「そんな単純な理由ずら」
花丸「なんてね」
ルビィ「……」
花丸「さ、もう寝よう。明日も朝から調査だよ」
花丸「おやすみ」
ルビィ「ねえ、マルちゃん」
花丸「なに?」
ルビィ「もうちょっと、そっちにいっていい?」
花丸「――うん」
ピト
ルビィ「えへへ」
花丸「ふふ、やっぱりルビィちゃんは温かいずら」
11: 2017/01/15(日) 18:12:54.65 ID:W/usQfX40
ホー ホー
花丸「zzz」スー スー
ルビィ「zzz」クゥ クゥ
ピカー
花丸「……ん」パチ
花丸「いま王宮で何か光って……」 スク
シーン
花丸「気のせいかな」
花丸「…」コテン
花丸「……」
花丸「………」
ガバ
花丸「気になるずら」
12: 2017/01/15(日) 18:13:48.65 ID:W/usQfX40
ルビィ「どうしたの?」
花丸「あ、ごめん、起こしちゃった」
ルビィ「ううん、大丈夫。それより――」
花丸「なんか、変な感じがするずら」
ルビィ「変な感じ?」
花丸「こう、誰かの気配というか……」
ルビィ「ま、ま、まさか、お、お化け」ガクガク
花丸「いや、それとは違うずら」
ルビィ「お化けの気配分かるの!?」
花丸「……」
ルビィ「ま、マルちゃん?」
花丸「ちょっと王宮の中見てくるね」
ルビィ「ええ!? あ、危ないよぉ!」
花丸「大丈夫大丈夫、ここにはオラたち以外誰もいないはず」
ルビィ「で、でも……」
花丸「何より、マルは調査に来たんだから」
花丸「ちゃんと一人で行くから。ルビィちゃんはここで待ってて」
ルビィ「ううん、ルビィも行く!」
花丸「え?」
ルビィ「二人なら、いざというとき安全かもしれないでしょ」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「さ、行こ」
花丸「よーし、調査開始ずらー」
ルビィ「オー!」
13: 2017/01/15(日) 18:15:01.54 ID:W/usQfX40
花丸「……」サクサク
ルビィ「……」トコトコ
ルビィ「何も変なところないね」
花丸「おかしいなー」
ルビィ「でも何か、夜の遺跡って神秘的だね」
花丸「これも遺跡の魅力ずら」
花丸「でもルビィちゃん、何があってもライトは離しちゃダメだよ」
ルビィ「う、うん」
ピカー
ルビまる「!」
ルビィ「ま、マルちゃん、い、いま、一瞬光が……」
花丸「やっぱり何かある」
ルビィ「行くん、だよね」
花丸「うん」
タタタ
花丸「確かにこっちの方角だったずら」
ルビィ「あ!」
花丸「!」ピタ
ピカピー
花丸「光の、かたまり……?」
ルビィ「や、やっぱりお化け!?」
花丸「……」スッ
ルビィ「ま、マルちゃん! 熱いかもよ!」
花丸「ううん、熱は感じない」
サワ
パァァァ
花丸「うわ!」
ルビィ「ひ、光が大きく――」
ピーカァピカァ
ルビィ「きゃあ!」
花丸「ずらぁ!」
14: 2017/01/15(日) 18:15:57.03 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
?『うんしょ』
?『かなんちゃん、もうすぐできるからね』
かなん『うん、ありがと、ちか』
*『! まあ、チカ様。そんなにお手をドロで汚されて!』
*『あらあら、しかも王様の大切なお皿にドロ水までいれたりなさって…』
ちか『だって、かなんちゃんにスープつくってあげてるんだもん』
ちか『はい、かなんちゃん』
かなん『わあ、おいしそう』
*『ふふ、チカ王女は本当にカナン王女がお好きなんですね』
ちか『うん! ちか、かなんちゃんがだいすき』
かなん『わたしも、ちかのことだいすきだよ』ギュ
ちか『えへへ///』
*『ふふ、お二人がこんなに仲がよろしいなら、チカナンは安泰ですね』
――――――
―――――――
15: 2017/01/15(日) 18:16:43.86 ID:W/usQfX40
花丸「……」
ルビィ「……」
ルビィ「ま、マルちゃん…」
花丸「今のは…?」
ルビィ「小さな女の子2人と、メイドさん…?」
花丸「ルビィちゃんも見えてたんだね」
ルビィ「うん…」
花丸「光も消えたずら」
ルビィ「この遺跡、呪われてるのかな」
花丸「ま、まさか。そんなことないよ」
ルビィ「だって、変な光がありもしない幻覚を見せたんだよ」
ルビィ「どう考えても普通じゃないよ!」
花丸「それはそうだけど…」
花丸「……」
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「ありもしない幻覚。ホントにそうなのかな?」
ルビィ「え?」
花丸「ルビィちゃん、眠い?」
ルビィ「? ううん…」
花丸「オラ、もう少しこのまま遺跡を歩きたいずら」
ルビィ「うん、一緒に行こう」
花丸「ふふ、ありがと」
16: 2017/01/15(日) 18:17:46.29 ID:W/usQfX40
ルビまる「あ!」
ピカピカ
ルビィ「ここにも光が…」
花丸「行くよ、ルビィちゃん」
ルビィ「う、うん」
サワ
パァァァ
―――――――
――――――
王A「では、これからは」
王B「あなたたち二人がチカナンの王よ」
大臣「それでは王、お二人にお名前に、聖なる文字たる漢字を」
王A「チカ、あなたは今日から”千歌”よ」
千歌「はい」
王B「カナン、あなたの名前は”果南”です」
果南「はい」
ワーーーワーーー
大臣「皆の者、静粛に」
大臣「これにて就任式を終える」
大臣「地価王、科難王、いままでお疲れ様でした」
大臣「そして千歌王、果南王。これからのチカナンをお願いいたします」
千歌・果南「はい!」
王A「あなたたちに精霊チカッチとカナーン」
王B「そしてGODのご加護がありますように」
王AB「ぐふっ!」ドサッ
大臣「王、王ーーーー!」
千歌「王さま…」グス
果南「千歌、王様たちは病身なのにわざわざ式を開いてくれたんだよ」
果南「先王様たちに恥じないよう、立派な国を築いていこう」
千歌「うん」
――――――
―――――――
17: 2017/01/15(日) 18:18:54.09 ID:W/usQfX40
ルビィ「……」
花丸「やっぱりそうだ」
花丸「この光は、過去のチカナンを見せてるずら」
ルビィ「か、過去の!?」
花丸「うん、多分、チカナンが滅ぶ前の記憶を」
ルビィ「ど、どうして私たちに? 誰がそんなこと!?」
花丸「それは分からない」
花丸「でもこれは、マルが一番知りたいことずら」
花丸「ルビィちゃん、もっと光を探そう!」
ルビィ「マルちゃん……」
ルビィ「うん!」
花丸「やっぱりそうだ」
花丸「この光は、過去のチカナンを見せてるずら」
ルビィ「か、過去の!?」
花丸「うん、多分、チカナンが滅ぶ前の記憶を」
ルビィ「ど、どうして私たちに? 誰がそんなこと!?」
花丸「それは分からない」
花丸「でもこれは、マルが一番知りたいことずら」
花丸「ルビィちゃん、もっと光を探そう!」
ルビィ「マルちゃん……」
ルビィ「うん!」
18: 2017/01/15(日) 18:20:08.28 ID:W/usQfX40
ルビィ「ひぃっ!」
花丸「ど、どうしたの!?」
ルビィ「あ、あれ……」
花丸「!」
(。8。)
花丸「石像…?」
ルビィ「これもかすかだけど、光ってるね」
花丸「さ、触るね」
ルビィ「うん…」
サワ
パアア
―――――――
――――――
(・8・)『ふーむ…』
Q.5 休日はどんなふうに過ごす?
スケジュールを教えて!
④10時 果南ちゃんちのある島へ船でGO!
(・8・)『……』ペラ
⑥10時 チカが来た!
(・8・)『やっぱり“ちかなん”なんだよちゅんなあ…』
(・8・)『のっけからこの絡み具合』
(・8・)『やはり幼馴染はラブライブにて最強』
(・8・)『しかも先代との差別化を図るために年の差幼馴染とは』
(・8・)『公式も中々考えてるちゅんなあ』
(・8・)『これはもう、このカプは“ことほの”のような』
(^8^)『王道覇権メジャーカプになること間違いなしちゅん』
(^8^三^8^)『テレビ放送が楽しみちゅんなー』
――――――
―――――――
(。8...:.;::..
石像は音もなく崩れ去った
19: 2017/01/15(日) 18:21:24.19 ID:W/usQfX40
花丸「一通り王宮をまわったけど」
ルビィ「光、もう見つからなかったね。これで終わりなのかな」
花丸「ううん、マルはあきらめない」
花丸「ルビィちゃん、こうなったらチカナン全部を見て回るずら」
ルビィ「ええ!? 夜が明けちゃうよ」
花丸「朝が来たら光も多分消える」
花丸「急がなくちゃ」ダダダ
ルビィ「ま、マルちゃん、待ってぇ~」
ルビまる「あっ!」
ピカー
花丸「やっぱり他の場所にもあった!」
ルビィ「チカナンの記憶……」
花丸「じゃあ行くよ」
こうして、花丸たちは次々と光に触れていった
20: 2017/01/15(日) 18:22:42.08 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
千歌『果南ちゃん、水取り換えてきたよ』
果南『ん、ありがと』
千歌『お掃除お掃除♪ ピーカピカー♪』ゴシゴシ
果南『ふふ、なにその歌』
千歌『いやあ、ちょっとでも楽しく作業できるかなって』
果南『そっか』
大臣『千歌王! 果南王!』
千歌『ん、どうしたの?』
大臣『それはこっちのセリフですぞ』
大臣『姿が見当たらないと思えば、このようなところで…』
果南『これだって大事なことだよ』
大臣『しかし、何も王自らが掃除などなさらずとも』
果南『王だからだよ』
果南『だって、このチカッチ像とカナーン像は』
千歌『私と果南ちゃんの、お母さんだもん』
大臣『…そうでしたな』
ゴシゴシ ゴシゴシ
大臣『この像を見てると、お二人が生まれなさった時のことをつい思い出します』
果南『私たちの?』
大臣『はい』
大臣『初めはカナーン像から果南王が誕生し』
大臣『その半年後にはチカッチ像から千歌王が』
大臣『チカナンの新たな継ぎ目がお生まれになり、それは国中でお祝いなさったものです』
千歌『でもなあ』
果南『どうしたの?』
千歌『どうしてチカッチ像はもう半年早く、それこそ果南ちゃんと一緒に産んでくれなかったんだろう』
果南『しょうがないよ。すべてはGODの導きだから』
千歌『でもそのおかげで、果南ちゃんとは同じクラスで勉強できなかったし』
千歌『結局最後までずっと別々だったんだよ』
果南『でもその分、クラスの色々な子と仲良くなれたじゃん』
千歌『それはそうだけど、でも果南ちゃんとも同じが良かったの』
千歌『あーあ、七夕のお願いも全然叶わなかったなあ』
果南『ふふ、でもあの短冊を見た時、私はとっても嬉しかったよ』
――――――
―――――――
21: 2017/01/15(日) 18:23:47.96 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
果南『じゃーん!』
千歌『うわぁ、水上バイクだあ』
果南『へへ、ついに買っちゃった』
千歌『かっこいー! いいなー、乗りたいなー』
果南『ホント、最近はこれのために仕事頑張ってたよ』
千歌『もう、果南ちゃんってば動機が不純だよ』
果南『い、いいじゃんたまには自分へのご褒美くらい』
千歌『ふふ、冗談冗談♪』
千歌『早速乗るんだよね?』
果南『うん、もちろん!』
千歌『海南2号発進!』
果南『また命名したんだね』
果南『よし、準備オッケー』
千歌『いってらっしゃーい』
果南『え?』
千歌『ん?』
果南『千歌、乗らないの?』
千歌『え、だって果南ちゃん最初に乗りたいでしょ?』
果南『まあ運転するのは私だけど』
果南『ほら、後ろまだ一人乗れるよ』
千歌『いいの?』
果南『あはは、どうしたの? 遠慮なんて千歌らしくもない』
果南『さ、乗って乗って』
千歌『うん!』
果南『千歌、しっかり私につかまっててね』
千歌『こお?』
ギュ
果南『そうそう、そうやって抱くようにしてれば大丈夫』
果南『じゃあ行くよ!』
ブォォォォ
千歌『わあ!』
――――――
―――――――
22: 2017/01/15(日) 18:25:29.24 ID:W/usQfX40
そして夜が明けた
花丸「おはよう」
ルビィ「おはよう。って、もう昼過ぎだけどね」
ルビィ「ねえマルちゃん」
花丸「ん?」モグモグ
ルビィ「昼ごはん食べたらどうするの?」
花丸「もちろん、昨日同様調査するよ」
ルビィ「でもあの光が見えないよ」
花丸「その分、いろんな遺跡が見れるよ」
花丸「昨日、マルたちが見た遺跡や物もね」
花丸「これだ」
ルビィ「うん」
花丸「千歌王と果南王は、この水上バイクって乗り物に乗ってたんだね」
ルビィ「……」ポロポロ
花丸「る、ルビィちゃん、どうしたの!?」
ルビィ「ごめんね。でも何か昨日まで仲良かった二人がもういないって考えると…」
花丸「ルビィちゃん…」
花丸「これが、恐らくチカッチとカナーンの石像ずら」
ルビィ「大分朽ち果ててるね」
花丸「昨日の話から察するに」
花丸「古来よりチカナンを治める王、チカとカナンはこの石像から生まれる」
ルビィ「そして王族たちはそれぞれ王になるときに漢字を与えられるんだよね」
花丸「オラたちがよく見た千歌王と果南王の場合はそうだったから、たぶん」
ルビィ「チカナンがなくなって、この石像も壊れちゃったんだね」
花丸「チカナンが滅んだからか、あるいは滅ぶ前に壊れてたか」
花丸「今夜の光で分かればいいんだけど」
ルビィ「ルビィ、怖いな」
花丸「ごめんね、付き合わせて」
ルビィ「ううん、違うの。そうじゃなくて」
ルビィ「チカナンの崩壊を目の前で見せられるのが怖いなって」
花丸「……そうだね」
23: 2017/01/15(日) 18:26:35.52 ID:W/usQfX40
ホーホー
花丸「夜だ」
ルビィ「今夜はどこから行くの?」
花丸「うん、昼間マルが当たりをつけたところから――」
ピカー
ルビまる「!」
ルビィ「また王宮から光が!」
花丸「昨日はもう見当たらなかったのに」
ルビィ「マルちゃん」
花丸「うん、こっちから先に行こう」
24: 2017/01/15(日) 18:27:34.15 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
果南『……』カリカリ
千歌『果南ちゃーん、今日はどこ遊びに――』
千歌『果南ちゃんが勉強してる!』
果南『そんなに驚く?』
千歌『だって』
果南『私も一応王になったしね』
果南『いつまでも大臣たちに頼ってばかりじゃいけないと思って』
千歌『そっか、そうだよね……』
果南『千歌?』
千歌『よし、私も勉強する』ダダダ
果南『行っちゃった…』
果南『じゃ、私ももうちょっと続けようかな』
果南『……』カリカリ
ダダダダダ バン!
千歌『果南ちゃーん、ここ分かんない、教えてー!』
果南『千歌……』
果南『はいはい、どこ?』
千歌『ここなんだけど…』
果南『……』
千歌『果南ちゃん?』
果南『……私も分かんない』
――――――
―――――――
25: 2017/01/15(日) 18:28:36.99 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
千歌『――その証として、伏礼を廃す』
果南『これをもって初勅とする』
ワーーー
果南『お疲れ、千歌』
千歌『お疲れさま』
千歌『じゃあ着替えたら果南ちゃんの部屋に行くからさ』
千歌『夕食、一緒に食べようね』
果南『うん』
果南『あれから大分経ったけど、千歌遅いなー』
果南『部屋に行ってみようか』
コンコン
果南『おぉーい、千歌ってばー』
果南『入るよー』ガチャ
果南『あ』
千歌『zzz』スピー
果南『着替えの途中で寝ちゃってる』
果南『千歌、よっぽど疲れてたんだね』
果南『無理もないか、あんな大勢の前で演説なんて、私も緊張したし』
果南『……』
サッ
果南『ちゃんとお布団の中で寝ないと風邪ひくよ』
果南『おやすみ』
――――――
―――――――
26: 2017/01/15(日) 18:31:26.49 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
大臣『果南王、こちらでしたか』
果南『どうしたの?』
大臣『少しお話がありますので、会議室までお願いします』
果南『千歌は?』
大臣『千歌王にも、先程お話ししておきました』
果南『そっか、分かった。行こう』
ガチャ
大臣『では、お席に』
果南『あれ、なんか空気が重くない?』
大臣『……』
千歌『果南ちゃん…』
果南『大丈夫だよ、千歌』
大臣『では、説明を』
学者『はい』
学者『実は、先日のことなのですが』
学者『アニメ火山に噴火のきざしがある、と観測されました』
千歌・果南『!』
学者『もし火山が噴火したなら、そのふもとにあるチカナンは』
学者『その影響を多大に被ることになります』
果南『どのくらい?』
学者『規模が最小なら、冷害に見舞われるくらい、でしょうか』
果南『最悪だとどうなるの?』
学者『大量の火砕流により、チカナンは一瞬で焼き尽くされます』
大臣『だれも助からないでしょうな』
千歌『そんな……』
果南『このこと、国民には?』
大臣『もちろん言ってません。知るのはここにいる我々だけです』
果南『最悪の事態も考えると、疎開の必要があるかもね』
大臣『つまり、民はチカナンを捨てることになると?』
果南『うん』
千歌『やだよそんなの!』
果南『千歌、でもほかに方法がないんだよ』
果南『生き延びるには、チカナンを捨てるしかない』
千歌『私はまだあきらめない』
千歌『チカナンが助かる方法を探してみる』
果南『そっか――うん、そうだね、あきらめるのはまだ早い』
学者『しかし、時間はもうあまりない、とだけは伝えておきます』
――――――
―――――――
27: 2017/01/15(日) 18:32:47.46 ID:W/usQfX40
―――――――
――――――
千歌『……』ペラ
果南『いないと思ったら、図書室にいたんだ』
千歌『ねえ、果南ちゃん。こんな本を見つけたんだけど』
果南『「アニメ火山の精霊」?』
千歌『この本によるとね』
千歌『アニメ火山には守り神がいて』
千歌『その神さまが火山を管理しているらしいの』
果南『それで?』
千歌『儀式で神さまを呼び出して、噴火をやめてくださいってお願いしてみようよ』
千歌『儀式のやり方もこの本に書いてあるし』
果南『なるほど、いい考えかもね』
大臣『なりません!』
千歌『どうして!?』
大臣『アニメ火山の精霊には手を出してはならない』
大臣『これは、チカナンに古くからある言い伝えです』
大臣『手を出せば、恐ろしい災厄があると…』
果南『でも今は非常事態だよ』
果南『そんな迷信なんか信じてる場合じゃない』
千歌『やってだめなら仕方ない。でもやる価値はあるよ!』
千歌『私、絶対にチカナンを守りたい』
千歌『だってここは、私や果南ちゃん、それにみんなが大切に想っている場所だから』
大臣『王……』
果南『大丈夫、責任は私たちがとる』
大臣『……分かりました』
大臣『我々もお手伝いします。やるからには必ずや成功させましょう』
千歌『うん!』
――――――
―――――――
28: 2017/01/15(日) 18:34:05.83 ID:W/usQfX40
花丸「いよいよ核心に近づいてきたずら」
花丸「と思ったけど、王宮にはもう光が見当たらない」
花丸「今夜はここまでなのかな」
ルビィ「マルちゃん、やっぱり光探すの」
花丸「え?」
ルビィ「ごめんね、こんなこと言って」
ルビィ「でもルビィ、やっぱり見たくないなって」
ルビィ「マルちゃんは平気なの? 目の前で人が焼かれたりするかもしれないんだよ」
花丸「そうかもしれないね」
ルビィ「だったら――」
花丸「それでもマルは、真実が知りたいんだ」
ルビィ「マルちゃん…」
花丸「マルが考古学やっているのも、過去の人々の姿が知りたいから」
花丸「それに、途中で見るのをやめたらきっと後悔すると思う」
花丸「千歌さんや果南さんのこと、チカナンのこと」
花丸「やっぱりマルは最後まで見届けたいずら」
ルビィ「そっか」
花丸「だからここからはマル一人で」
ルビィ「ううん、ルビィも行く」
ルビィ「マルちゃんの想いを聞いてたら、ルビィ、自分が恥ずかしくなっちゃった」
ルビィ「ルビィも最後まで見届けたい!」
29: 2017/01/15(日) 18:34:51.57 ID:W/usQfX40
ピカピカー
花丸「王宮の門前にあるチカッチとカナーンの像が光ってる」
ルビィ「これまでの光より断然大きいね。空が覆われるくらい…」
花丸「たぶん、この光はチカナン崩壊の姿を見せようとしている」
花丸「ルビィちゃん、大丈夫?」
ルビィ「うん。ただ、ひとつだけわがまま言っていい?」
花丸「え?」
ギュ
ルビィ「手、握っちゃダメ?」
花丸「ううん」キュ
花丸「実はマルも怖いんだ」
ルビィ「お揃いだね」
花丸「ふふ」
花丸「じゃあ、行くよルビィちゃん!」
ルビィ「うん!」
サワ
パアアアアアーー
34: 2017/01/16(月) 21:00:59.52 ID:GpGliUex0
―――――――
――――――
―――――
花丸「あれ?」
ルビィ「何も起こらない」
ルビィ「それに、周りの光景がやけに明るいような」
花丸「マルたちが見てた映像は、もやがかって青白く見えてたけど」
ルビィ「今回はちょっと違うね」
花丸「けどマルたちは確かに光の映像を観てるはず――」
兵士「君たち」
ルビまる「!」
兵士「こんなところで何してる。早く王宮に入りなさい」
ルビィ「ひぃ、お、男の人!」ガクブル
花丸「ま、マルたちが見えるんですか!?」
兵士「何を言っている。まあいい、今日は大事な儀式の日なんだから」
兵士「早く行くぞ」
花丸「は、はい。さ、ルビィちゃん行こう」
花丸(どうなってるんだろう……?)
35: 2017/01/16(月) 21:02:48.12 ID:GpGliUex0
兵士「もう王宮から出るんじゃないぞ」バタン
ルビィ「ま、マルちゃん…」
花丸「多分マルたちは過去のチカナンに来たんだよ」
ルビィ「ええ!? な、なんでぇ!?」
花丸「あの光の力だと思う」
ルビィ「そ、そんな……ルビィたちどうなっちゃうの……」
花丸「あ、あれは資料でみた土器!」ダダダ
ルビィ「マルちゃん、今はそんなの――」
花丸「すごいずらー! 宝の山ずらー! 来て良かったずらー!」
ルビィ「マルちゃん、あんなに喜んでる」
ルビィ「じゃあいいか!」
36: 2017/01/16(月) 21:04:10.67 ID:GpGliUex0
花丸「どうしてもダメ?」
ルビィ「ダメだよ、過去のもの持ち出したら未来に影響が出るかもよ」
花丸「うう…」
ルビィ「それより、せっかくだから千歌王たちに会ってみようよ」
花丸「でも相手は王だし、そう簡単に――」
千歌「呼んだ呼んだ?」
ルビまる「会えちゃった」
千歌「ん?」
花丸「い、いえ、ご、ご機嫌麗しゅう、千歌王」
千歌「あー! もう、そんな呼び方禁止って言ったでしょ!」
千歌「ちゃんと気軽に、チカっちって呼んでね」
千歌「まあ、精霊と同じ呼び方だから紛らわしいけど」
ルビィ「あの、じゃあ、千歌さん」
千歌「もう一押し!」
ルビィ「じゃあ千歌ちゃん!」
千歌「オッケー!」
37: 2017/01/16(月) 21:06:33.45 ID:GpGliUex0
千歌「そっか、花丸ちゃんたちは王宮に来て日が浅いんだ」
花丸「そ、そうなんです。それでどこに何があるかもさっぱりで」
ルビィ「はい」
千歌「私も、こんな日じゃなければ案内するんだけど」
花丸「儀式ですか?」
千歌「うん、アニメ火山の精霊を呼び出すんだよ」
ルビィ「え、でも噴火は皆には内緒でって――」
花丸「ルビィちゃん!」
ルビィ「はっ!」ムグ
千歌「うん、そのはずだったんだけど」
花丸(あれ? 怪しんでない…)
千歌「やっぱり隠し事はよくないって果南ちゃんが」
千歌「だから昨日、王宮のみんなには伝えたんだよ」
千歌「まさか忘れてた?」
花丸「い、いえ、そんな」
ルビィ「滅相もございません」
千歌「あはは、もっと普通に話そうよ」
千歌「見たところ、二人とも私と歳はそんなに変わらなそうだし」
花丸「はい、分かりました」
千歌「ほら、敬語なんてやめて」
花丸「うん、分かったずら」
千歌「ずら?」
花丸「あ、いや」
千歌「ふふ、花丸ちゃんって面白いんだね」
ルビィ「そうなの。でも面白いだけじゃなくて、マルちゃんはとっても優しいんだよ」
花丸「る、ルビィちゃん///」
千歌「二人は仲良しなんだね」
花丸「うん」
ルビィ「小さい頃からずっと一緒なんです」
千歌「そうなんだ」
花丸「でも千歌ちゃんもそうだよね」
千歌「もしかして果南ちゃんのこと?」
ルビィ「うん」
千歌「ふふ、そうだよ」
千歌「私にはルビィちゃんにとって花丸ちゃんの、花丸ちゃんにとってルビィちゃんみたいな人かなん」
千歌「あ、今のは果南ちゃんと疑問形の”かなん”をかけたー」
花丸「は、はあ…」
38: 2017/01/16(月) 21:07:43.94 ID:GpGliUex0
千歌「あ、ごめん。時間だから私行くね」
花丸「あ、うん」
ルビィ「ごめんね、引き留めたみたいで」
千歌「ううん、私すごく楽しかったよ」
千歌「またお話ししようね」
千歌「バイバーイ」ダダダ
花丸「行っちゃったずら」
ルビィ「いい人だったね」
花丸「さて、では調査再開!」
ルビィ「もう、マルちゃ~ん」
39: 2017/01/16(月) 21:08:50.23 ID:GpGliUex0
果南「あれ? 千歌は?」
大臣「千歌王なら先程トイレに行くと」
果南「そっか、まあ緊張するよね」
大臣「いよいよですな」
果南「そうだね。私もなんか落ち着かない」
大臣「しかし、腹筋はそろそろお止めになったほうがいいのでは?」
果南「ん、分かった」
コツン
大臣「王、何か落ちましたぞ」
大臣「これは王族に代々伝わる指輪?」
果南「千歌にさ、渡すつもりなんだ」
果南「この儀式が終わったら、私の気持ち伝えるつもり」
大臣「そうですか、歴代の王は皆結ばれました」
大臣「千歌王と果南王も、きっとそうなりますよ」
果南「ふふ、ありがとう」
40: 2017/01/16(月) 21:09:58.93 ID:GpGliUex0
花丸「どうやらここは台所みたい」
ルビィ「みんなの邪魔になっちゃうよ」
おばさん「あんたたち!」
花丸「は、はい!」
ルビィ「ほら、怒られる…」
おばさん「ちょうど良かった。これを儀式の間に届けておくれ」
ドスン
花丸「大量の骨、ですか」
おばさん「腰やっちゃったてさ、あんたたち若いんだから平気だろ」
ルビィ「は、はい」
41: 2017/01/16(月) 21:11:37.66 ID:GpGliUex0
花丸「ふう、いろんな人に聞いて何とかたどり着けたずら」
ルビィ「重かったね」
大臣「王、骨が届きました」
千歌「あー、二人が運んでくれたんだあ、ありがと!」
果南「知り合い?」
千歌「うん、さっき友達になったんだ」
果南「そっか。ありがとう、二人とも」
花丸「いえ、そんな」
ルビィ「本物の果南王だ」
果南「よし、じゃあそろそろ儀式を始めるよ」
千歌「危ないから二人は離れててね」
大臣「準備が整いました」
果南「うん」
千歌「いよいよだね」
果南「怖い?」
千歌「そりゃ、ちょっとは」
ダキ
千歌「か、果南ちゃん///」
果南「大丈夫大丈夫」
千歌「もう、ハグ魔なんだから」
果南「ねえ千歌。この儀式が終わったら言いたいことあるんだ」
千歌「そうなの? じゃあ、楽しみにしてるね」
果南「うん」
果南「じゃ、行くよ」
千歌「オッケー!」
果南「もんちゃらへっぴー」
千歌「もけもけさー」
42: 2017/01/16(月) 21:13:34.00 ID:GpGliUex0
ゴゴゴゴゴゴ
ピシャーン
しいたけ「わしを呼び覚ますのは誰だ」
果南「チカナンの王であります」
千歌「王さま、どうかアニメ火山の噴火を止めてください」
果南「街には多くの民がおります」
千歌「チカナンにお恵みを!」
しいたけ「わしは誰の指図も受けぬ!」
ビシャーン
千歌「きゃーー!」
ドサ
果南「ち、千歌!」
ビシャーン
果南「ぬわーー!」
ドサ
大臣「お、王!」
しいたけ「これでよし。では私は行くとしよう」
フッ
花丸「消えた…」
ルビィ「それより千歌ちゃんたちが!」
43: 2017/01/16(月) 21:14:57.92 ID:GpGliUex0
大臣「王、しっかりしてください。王!」
千歌「ん……」
果南「んう……」
スク
大臣「ご無事でしたか」ホッ
千歌「……」
果南「……」
大臣「どうされました?」
千歌「スクールアイドル、やってたんだよね?」
果南「千歌には関係ない!」
千歌「……」
果南「……」
千歌「梨子ちゃーん、曜ちゃーん」タタタ
果南「鞠莉ー、ダイヤー」ダダダ
大臣「王、どちらへ!?」
大臣「ええい、兵士たちよ何している」
大臣「早く王を追わんか!」
兵士A「では、我々は千歌王を!」
兵士Z「では、我々は果南王を!」
ルビィ「二人がそれぞれ別れてどこかに走って行った」
花丸「大変なことになったずら」
44: 2017/01/16(月) 21:16:07.63 ID:GpGliUex0
兵士たちの捜索もむなしく、千歌王と果南王の行方は分からずじまいとなった。
二人はそれぞれどこへ行ったのか。
大臣や王宮の人々は眠れぬ夜を過ごす。
そして、夜が明けた。
ゴゴゴゴゴ
グラグラ
ルビィ「地震だ!」
花丸「これはもしや!」
ドゴーン
大臣「アニメ火山が噴火したぞー」
学者「ですが、この規模なら最悪の事態は避けられそうです」
大臣「そうか」
学者「ですが、冷害は確実に訪れます」
学者「もしかしたら、一瞬で焼かれたほうがましだったと思えるくらい」
大臣「なに?」
45: 2017/01/16(月) 21:17:29.23 ID:GpGliUex0
その後、火山灰の影響により作物は甚大な被害を受ける。
大臣たちは奮闘するも、街は次第に痩せ衰えていった。
飢えた民は王宮に乗り込むが、そこにあるのは空位の玉座だけだった。
王がいないことを知ったチカナンの民はみな絶望にかられる。
そして1か月後――
花丸「……」
ルビィ「……」
花丸「オラたちがちょっと目を離した隙に」
ルビィ「街が荒廃してるね」
民A「王、王、ちかなん…」
民B「ちかなん、どこ」
民C「帰ってきて」
ルビィ「みんな苦しんでるね」
老人「ぐっ」コテ
花丸「大丈夫ですか!?」
老人「ああ、平気じゃ」
老人「あんたら、早くお逃げ」
老人「もうこの街は終わりじゃ」
花丸「そんな…」
老人「ごほっ ごほっ 明日は生きてるかのう……」
46: 2017/01/16(月) 21:19:23.29 ID:GpGliUex0
ルビィ「みんな、王がいないから希望を失っている」
花丸「様子、見てみようか」
ロボット「らぶらいぶ板……ケンサク…チュウ……」
ロボット「ちかなん SS キョウモ タタナイ……。ダレモ カカナイ……」
ロボット「カプスレ オチタ。ツクリナオシ……」
民D「このマンガ砲でアニメ火山を木っ端微塵にしてやる」
民E「そんな豆鉄砲で壊せるわけないだろ」
民F「このSSD肥料を持ってしても作物は実らん」
民G「もうチカナンはダメなのかのう…」
花丸「見てられないずら」
ルビィ「うん」
民H「おい、どこ行くんだよ」
民I「移住するんだよ」
民J「こんなところにいたら、命がいくつあっても足りねえ」
民K「聞けば、遠くにあるヨウチカ国、チカリコ国はかなり資源が豊富らしいじゃねえか」
民L「カナマリ国も同様らしいぞ」
民M「お前ら、チカナンを見捨てる気か!」
民N「黙れ! 愛国心なんて、命あっての物種だろうが!」
47: 2017/01/16(月) 21:21:21.48 ID:GpGliUex0
花丸「みんな、消えていく」
ゴゴゴゴゴ
ルビィ「地震!?」
ゴゴゴゴゴゴ
花丸「でかい!」
ルビィ「大臣さんのところに行ってみよう!」
花丸「大臣さん」
大臣「どうやら、来たる日が来てしまったようです」
ルビィ「どういうことですか?」
大臣「先程学者から教えられました」
大臣「今回の噴火は前回を遥かに上回るものだと」
大臣「おそらく、チカナンは終わりです」
花丸「そんな!」
ルビィ「なんとかならないんですか!?」
大臣「これもまた運命なのでしょう」
大臣「しかし、私には一つ仕事が残っています」
大臣「お二人とも、私たちの後についてきてくれますか」
48: 2017/01/16(月) 21:22:36.95 ID:GpGliUex0
兵士A「ふう」
兵士B「重かったなあ」
花丸「箱の中身は何なのですか?」
大臣「ふふ、それは国家機密ですぞ」
大臣「では皆の者、先に階段を上がってくだされ」
大臣「私は、これらを奥底まで運んだあと、この階段に蓋をします」
大臣「つるはしでもなければ、決して開くことはないでしょう」
花丸「分かりました。お達者で」
ルビィ「さようなら」
大臣「花丸さん、ルビィさん」
大臣「あちらの世界でも、どうかチカナンのことを覚えていてくだされ」
大臣「想ってくれる人がいる限り」
大臣「チカナンは滅びぬ。何度でもよみがえるさ」
花丸「大臣さん……」
49: 2017/01/16(月) 21:23:45.82 ID:GpGliUex0
花丸「さて、マルたちも――」
兵士A「君たち、こっちにくるんだ」
兵士B「さ、まだ噴火が始まらないうちに、できるだけ遠くに逃げるぞ」
ルビィ「はい」
兵士A「よし、チカナンの門を抜けたぞ」
ルビまる「あ……」
スゥ
―――――
――――――
―――――――
ルビィ「ここは」
花丸「朽ちたチカッチ・カナーン像の前」
花丸「マルたち、戻ってきた」
ルビィ「日付もまったく変わってない」
花丸「一夜の夢みたいずら」
50: 2017/01/16(月) 21:25:23.75 ID:GpGliUex0
《翌日》
花丸「あった!」
ルビィ「ここが、大臣さんと入っていった階段がある部屋」
花丸「よし、マルの〈おうごんのつるはし〉で」
カンカンカン
ルビィ「階段だ!」
花丸「行こう!」
コッコッコッ
ルビィ「洞窟に繋がってたんだね」
花丸「ルビィちゃん、あれ!」
ルビィ「ひぃっ! は、白骨」
花丸「多分、大臣さんだね」
花丸「南無南無」
ルビィ「マルちゃん、これ」
花丸「運ばれた箱」
ルビィ「開けてみる?」
花丸「うん」
カポ
ルビィ「こ、これは…」
花丸「古代に使われていた玩具やダイビング用品ずら」
ルビィ「玩具は水鉄砲、輪投げなどなど」
花丸「シュノーケル、タンク、水中ゴーグル」
ルビィ「このウェットスーツ、子ども用のだよ」
花丸「多分これは、果南さんや千歌ちゃんが子どもの頃遊んでいた道具だと思う」
花丸「ううん、もしかしたらチカナンの王たちは全員これで」
ルビィ「大臣さん、信じてたんだね」
ルビィ「いつか千歌ちゃんや果南さんが帰ってくることも」
花丸「いつかチカナンが復活することも」
ルビィ「……」
花丸「……」
ピカー
ルビまる「!」
ルビィ「ど、道具が光って」
パァァァ
51: 2017/01/16(月) 21:26:42.84 ID:GpGliUex0
―――――――
――――――
ちか『だ、だいじょうぶかな』
かなん『だいじょうぶ、ちゃんと手を握ってるから』
かなん『海の中ってさ、すごくきれいなんだよ』
ちか『うん、じゃあ行く』
ちか『はいっ』
かなん『はずれ~』
ちか『それっ』
かなん『お、うまく輪が入ったいったね』
ちか『えへへ、じゃあ約束通り』
かなん『うん。おやつの大きいほうは譲るね』
ちか『わーい』
かなん『もういいかーい』
ちか『もういいよー』
かなん『よーし怪盗ちかっちめ。見つけたら撃つぞー』
ちか『ふっふっふ。きみにできるかなん』
かなん『見つけた、それ』
ちか『きゃ、冷たーい』
かなん『はい、チカの負け』
ちか『なんで分かったの?』
かなん『いや、声出してたし』
ちか『あ、そっか』
かなん『もう、おばかさん』
ちか『わっ、急にハグしないでよー』
かなん『ごめんごめん、つい』
ちか『ねえ、かなんちゃん』
かなん『ん?』
ちか『わたしたち、ずっとこうやっていつまでも遊ぼうね』
かなん『うん!』
ちか『ずっとずっと、一緒にいようね』
かなん『うん!』
――――――
―――――――
52: 2017/01/16(月) 21:28:18.15 ID:GpGliUex0
ルビィ「二人とも、とっても楽しそうだったね」
花丸「そうだね」
カポ
ルビィ「戻していいの? 貴重資料でしょ?」
花丸「これはマルたちが持って行っていいものじゃないずら」
ルビィ「ふふ、マルちゃんってやっぱり優しいね」
花丸「ルビィちゃんだって同じ気持ちなくせに~」
ルビィ「ふふふ」
花丸「あはは」
ルビィ「行こっか」
花丸「うん」
花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「なに?」
花丸「マル、また今度チカナンに来て、いっぱいいっぱい調査する」
花丸「そして、いつか論文にして」
花丸「チカナンをたくさんの人に知ってもらおうと思う」
ルビィ「うん、頑張ろうね」
花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「ん?」
花丸「今度はマルのお願いきいてくれる?」
ルビィ「お願い?」
ギュ
花丸「手、握って帰っていい」
ルビィ「うん!」
おしまい
57: 2017/01/17(火) 18:22:14.04 ID:GM7G/lTTO
乙
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