1: 2013/01/13(日) 22:20:18.59 ID:OVQSC0L50
沙織「ううっ…ひっく…」

麻子「沙織…」

麻子(またか…)

麻子「飲みすぎだぞ沙織」

沙織「まこぉ…まこぉ…」

麻子「ああ…ここにいるぞ」

麻子(……)

麻子(どうしてこうなったんだろうな…)
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4: 2013/01/13(日) 22:24:16.46 ID:OVQSC0L50
沙織と私が一緒に住むようになってもう数年になる

私はなんとか高校を無事卒業することができた

その後、私と沙織は同じ大学へと進学した

――――――――――――――――

6: 2013/01/13(日) 22:28:27.25 ID:OVQSC0L50
沙織「ついに大学生だよ麻子!」

沙織「モテモテのキャンパスライフの始まりだよ!」

麻子「そうはしゃぐな」

麻子「人にはできることとできないことがある」

麻子「沙織がモテるなんてことは後者だな」

7: 2013/01/13(日) 22:31:55.02 ID:OVQSC0L50
沙織「ひどいよまこー!」

麻子「色恋だけじゃなくて勉学にも勤しめよ」

麻子「ルームメイトになるんだからそこは面倒見てやる」

沙織「よろしく頼みます麻子先生!」

麻子「そのかわり朝起こすのは頼んだぞ」

沙織「うん!…っていままでどうりの関係だね…」

沙織「まあ私達らしいかな?あはは」

――――――――

――――

――

8: 2013/01/13(日) 22:35:56.71 ID:OVQSC0L50
そう、この時までは良かったんだよな…

本当に沙織に色恋沙汰なんて向いてなかったんだ

沙織「わたしなんてぇ~ほんと~」

沙織「このよにひつようないそんざいだよね~」

沙織「ひっく」

沙織「ううう…もうやぁ…」

麻子「沙織…」

沙織「ごめんねまこぉ…いつもまこにめいわくかけてさあ…」

沙織「うわーん!!」

9: 2013/01/13(日) 22:40:11.02 ID:OVQSC0L50
沙織「もう私に優しくなんてしないでよ…」

沙織「いっそ見捨ててよ…うぐっ…ぐすっ…」

麻子「私は沙織がいて助かってるぞ」

麻子「毎日起こしてくれるし、料理も作ってくれる」

麻子「だから泣かないでくれ…な、な?」

沙織「まこ…まこぉ…」

麻子「よしよし」

麻子(時々こうやってヒスを起こすんだよな…)

13: 2013/01/13(日) 22:47:52.92 ID:OVQSC0L50
沙織は大学で痛い目にあった

勿論恋愛で

何度か異性と付き合うことはできたものの

途中で別れを切り出されるのがしょっちゅうだった

最初から結婚前提な沙織の恋愛観は…重かったらしい

それは恋愛に疎い私でもよくわかることだった

さらに運の悪いことに傷心の沙織の前に現れたのが…悪い男だった

散々好き放題された挙句沙織は無残にも捨てられたのだ

沙織にとってこれはトドメとなる出来事になった

15: 2013/01/13(日) 22:54:00.77 ID:OVQSC0L50
大学を卒業した後も沙織は半ば放心状態だった

あんなに活発だった沙織が…

私はとても見ていられなかった

そんな沙織を私は引き取り二人で暮すことにした

ずっと傍にいながら助けてやれなかった負い目が動機だったのか

今となってはよく憶えていない

私は未だに後悔している

あの時沙織をもっと見てやれれば、と

16: 2013/01/13(日) 23:01:24.31 ID:OVQSC0L50
麻子「テレビでも見るか沙織」

沙織「うん…」

ピッ
『…ですねー』

『さて続きましては西住流家元の西住みほさんに話を…』

沙織「あっ、みぽり……西住さんだ…」

麻子(ま、まずい…)

麻子(ち、チャンネルを変えよう!)

ピッ

沙織「…西住さん出てたね麻子」

麻子「あ、ああ…そうだな」

19: 2013/01/13(日) 23:08:07.27 ID:OVQSC0L50
沙織「あはは…すごいよね」

沙織「姉妹で西住流の跡継ぎかー…」

沙織「私とは大違い…」

麻子「さ…沙織?」

沙織「華だって五十鈴流の跡を継いで立派に活躍して」

沙織「ゆかり……秋山さんも自衛隊に勤めて幸せそう」

沙織「麻子も小説家として成功してるもんね…」

沙織「私だけ…私だけなにも…!!」

麻子「よせ!もうやめろ!」

21: 2013/01/13(日) 23:10:28.36 ID:GdZAIGM50
なんでゆかりんだけ名字なんだよ!

22: 2013/01/13(日) 23:10:53.06 ID:3OsuPHop0
ゆかりん自衛隊かぁ

24: 2013/01/13(日) 23:16:18.65 ID:OVQSC0L50
麻子「今日はもう休め」

麻子「お前は酔っておかしくなってるんだ」

沙織「いやぁ…嫌いにならないでぇまこ……」

麻子「なってない、嫌いになんてなってないから」

麻子「だから安心しておやすみ」

沙織「うん…」

麻子(沙織…)

麻子(嫌いになんか…なるものか)

25: 2013/01/13(日) 23:19:23.26 ID:NkIABg9C0
西住さんって呼び直したのが切ない

26: 2013/01/13(日) 23:23:20.23 ID:OVQSC0L50
沙織「…………」

沙織「…すぅ…すぅ…zzz…」

麻子「寝たか…」

麻子「…小説でも書くかな」

かきかき

麻子(沙織…)

麻子(このままじゃ…)

今の生活が非常に危ういバランスで成り立っているのはわかっていた

こんな毎日はきっと長くは続かない

だけどどうしようもなかった、沙織はもう長い間こうである

今の生活が崩れるのは明日かもしれないし、数年後になるかもしれない

そんなこと誰にもわかるはずがなかった

28: 2013/01/13(日) 23:30:37.04 ID:OVQSC0L50
~翌日~

麻子「じゃあおばぁのお見舞いにいってくる」

麻子「…本当に来ないのか?」

沙織「…いい」

沙織「麻子のおばあちゃんに顔…合わせられないよ…」

麻子「そうか」

麻子「…行って来る」

沙織「いってらっしゃい…」

30: 2013/01/13(日) 23:36:51.51 ID:OVQSC0L50
がらっ

麻子「おばぁ、久しぶり」

久子「おや、あんたかい」

久子「見舞いになんて来なくていいんだよ!」

久子「そんな暇あったら執筆でもしてな!」

麻子「そう言わないでくれ」

麻子「おばぁが心配だったんだから」

久子「…そうかい」

久子「……ありがとよ」

31: 2013/01/13(日) 23:38:23.56 ID:rdpBYdXj0
おばぁしぶてぇなwww

32: 2013/01/13(日) 23:42:27.23 ID:OVQSC0L50
久子「友達とはまだ付き合いあるんだろうね?」

久子「無愛想なあんたのことだから縁切られてないか冷や冷やするよ」

久子「沙織とは仲良しかい?」

麻子「…ああ、仲良しだよ」

麻子(一緒に住んでるなんて…言えるわけないよな)

久子「あんたみたいのと昔っから仲良くしてくれたんだ」

久子「大切にするんだよ」

麻子「わかってる」

34: 2013/01/13(日) 23:48:53.19 ID:OVQSC0L50
久子「ところでだ、麻子」

久子「あんた縁談受けてみる気はないかい?」

麻子「…縁談?」

久子「そうさ、縁談さ」

麻子「…正直興味がない」

久子「どうせあんたのことだからそう言うと思ったよ」

久子「でもね、こんな物騒な世の中だ」

久子「女一人で生きていくのは大変だよ」

36: 2013/01/13(日) 23:55:32.96 ID:OVQSC0L50
久子「あんたもいい年だ」

久子「そろそろ伴侶を見つけてもいい頃合だろ」

麻子「……」

麻子(私が結婚したら沙織は…)

久子「あたしも…もう長くないんだ」

久子「だから…だからあたしを安心させておくれよ麻子」

麻子「おばぁ…」

久子「受けてくれるかい」

麻子「………」

麻子「わかっ…た…」

39: 2013/01/14(月) 00:02:43.48 ID:OVQSC0L50
麻子「…」

ガラガラ

麻子「ただいま…」

沙織「おかえり麻子!」

沙織「おばあちゃんどうだった?」

麻子「いつもどうり元気…だった」

麻子「大声で怒鳴られたよ」

沙織「相変わらずだね、あはは」

沙織「ごはんできてるよ、一緒に食べよ!」

麻子「ああ」

40: 2013/01/14(月) 00:10:44.83 ID:inqV5Lqc0
もぐもぐ

沙織「おいしい?」

麻子「おいしい」

沙織「よかった!」

沙織「私の特技なんてもうこれしかないから…」

麻子「やめろ」

麻子「自分を卑下するな沙織」

麻子「悪い癖になってるぞ」

沙織「ごめん」

42: 2013/01/14(月) 00:18:22.58 ID:inqV5Lqc0
麻子「醤油とってくれ」

沙織「はい」

麻子「ありがと」

沙織「小説書き終わりそう?」

麻子「なんとか締め切りまでにはな」

沙織「麻子の新作私も楽しみにしてるから!」

麻子「あまり期待はするなよ」

麻子(今日は安定しているな、よかった)

43: 2013/01/14(月) 00:22:33.16 ID:inqV5Lqc0
麻子(縁談か…)

麻子(沙織…)

麻子(今日の沙織は調子が良いみたいだし)

麻子(冗談のふりをして聞いてみるか)

麻子「なあ…沙織」

沙織「なに?」

麻子「私が結婚するって言ったらどうする?」

沙織「……………………」

沙織「え」

パリーン

沙織の手から容器が落ちた

46: 2013/01/14(月) 00:28:51.19 ID:inqV5Lqc0
麻子「なっ…大丈夫か沙織!?」

麻子「ケガはないか!」

沙織「だい…じょうぶだよ…」

沙織「うん」

沙織「するの?」

麻子「え?」

沙織「結婚」

沙織の目は怯えていた

まるでこの世の終わりのように

48: 2013/01/14(月) 00:35:05.18 ID:inqV5Lqc0
沙織「あはは…そうだよね」

沙織「麻子もいい年だもんね」

沙織「結婚して当然だよね」

沙織「そうだよね、うん」

沙織「うふふ…あははは…」

麻子(や…やばい!)

麻子「冗談だ!今のは冗談なんだ沙織!」

麻子「私が結婚なんてするわけないだろ、な?な?」

49: 2013/01/14(月) 00:42:44.75 ID:inqV5Lqc0
沙織「うそ!うそだよ!」

沙織「うそだあああああああああああああ!!!」

沙織「麻子だって私みたいに売れ残るなんて嫌だもんね!!!」

沙織「ごめんね…こんな私が幼馴染でさぁ!!!」

沙織「とっとと私なんか捨てて幸せなりたいでしょ!!!?」

沙織「そうだ~そうに決まってるよぉ~」

沙織「はぁ…!はぁ…!!」

麻子「落ち着け沙織!!」

麻子「本当だ!信じてくれ…」

私は沙織を抱きしめながらそう言った

52: 2013/01/14(月) 00:47:20.52 ID:inqV5Lqc0
沙織「はぁ…!はぁ…」

麻子「頼む、私を信じてくれ」

沙織「ホント…?ホントなの麻子…?」

麻子「本当…本当だ」

麻子「絶対に結婚なんてしない」

麻子「お前を一人になんてしないから…」

沙織「…信じてもいいの麻子…?」

麻子「ああ、だからこれからも私と一緒にいてくれ…」

沙織「うん…うん…!」ぎゅうううう

今度は沙織のほうから私を抱きしめてきた

とても強い抱擁だった

54: 2013/01/14(月) 00:55:38.24 ID:inqV5Lqc0
沙織「麻子…大好きだよまこぉ…」

麻子「うんうん…」なでなで

麻子(…ああ…)

そのとき私は動揺していた

沙織と思わず口約束をした

それももちろん要因の一つだ

だが一番私を動揺させていたのは

麻子(沙織…)

私に依存しきった沙織を見て

私を離さまいとする沙織の抱擁を受けて

心の奥底でそれをひどく悦んでいる自分がいたことだった

55: 2013/01/14(月) 01:01:40.21 ID:inqV5Lqc0
麻子(なんだこの気持ちは…?)

いままで気が動転した沙織を世話してきた

充足したことは多々ある

だが今回の感情は明らかにそれとは異質だった

沙織「麻子…?」

麻子「…っ」

麻子「ちょっと…疲れただけだ」

沙織「ご、ごめん…私またヒスって…」

沙織「だけど…嬉しかった」

麻子「…ああ」

麻子(私は…狂ったのか?)

57: 2013/01/14(月) 01:07:15.00 ID:inqV5Lqc0
~翌日~

麻子「じゃあ出版社に原稿届けてくる」

沙織「うんっ!」

沙織「行ってらっしゃい!」

沙織「美味しいもの作って待ってるからね!」

麻子(元気だな、昨日の約束のおかげか)

麻子「行ってきます」

58: 2013/01/14(月) 01:11:02.71 ID:inqV5Lqc0
…………………………………………

………………

………

麻子「―――…はい、ありがとうございます」

麻子「今回はそういう形で、はい」

麻子「失礼しました」

麻子「…………………………」

麻子「ふう…疲れた…」

麻子(出版社の空気は慣れんな…)

麻子(まあうまくまとまったしよしとするか)

麻子(…縁談はどうしようかな)

麻子(……昨日の私はなんだったんだろう)

60: 2013/01/14(月) 01:18:36.42 ID:inqV5Lqc0
麻子(…………)

麻子(軽く気でも紛らわせるか)

帰宅の途につきながら私は携帯を手にした

麻子(久しぶりだな…あいつらに電話するのも)

ぷるるるる…

みほ『あっ、もしもし麻子さん?』

麻子『久しぶり』

62: 2013/01/14(月) 01:23:59.29 ID:inqV5Lqc0
みほ『どうしたの?』

麻子『いや、最近どうかなって』

麻子『テレビに出てる西住を見かけたから』

みほ『ああ、あれねー!』

みほ『もう大変だったよー』

みほ『取材って緊張するねー』

みほ『お姉ちゃんはすごくテキパキ答えられるけど』

みほ『私は全然慣れないよー』

麻子『緊張がにじみでてたぞ』

みほ『やっぱりわかっちゃった?あはは』

64: 2013/01/14(月) 01:27:46.90 ID:inqV5Lqc0
みほ『ところで沙織さんのこと知らない?』

みほ『最近連絡つかないの』

麻子『…ああ、知ってる』

麻子『元気だよ』

みほ『そっかーよかった』

麻子『またみんなで集まれるといいな』

みほ『うん!』

みほ『あっ、いま行くよー』

みほ『ごめんね麻子さん、お姉ちゃんが呼んでるから』

麻子『いや、急に電話かけて悪かったな』

みほ『ううん、いいよじゃあね』

66: 2013/01/14(月) 01:33:48.55 ID:inqV5Lqc0
ピッ

麻子(………)

麻子(変わってなかったな西住)

麻子(そして幸せそうだった)

麻子(姉妹仲もいいみたいだな)

麻子「…他のやつはどうかな」

麻子(今度は五十鈴にかけてみよう)

ぷるるるる…

67: 2013/01/14(月) 01:38:24.72 ID:inqV5Lqc0
華『もしもし、冷泉さんですか』

麻子『久しぶり』

華『お久しぶりです』

華『どうなさったんですか?』

麻子『最近どうしてるかなって』

華『最近ですか?そうですね…』

華『戦車道と華道の融合を試みようと日々奮闘してます!』

麻子『そ、そうか』

華『なかなか好評なんですよ~』

華『力強さと繊細さが兼ね備わったって感じです』

70: 2013/01/14(月) 01:41:24.70 ID:inqV5Lqc0
華『今度展示会があるのでよかったら是非』

麻子『う、うん』

麻子『機会があれば』

華『はい!よろしくお願いします』

華『ところで沙織さんのことなんですが…』

麻子『ああ…』

さっきと同じことを私は伝えた

華『あっ、お母様』

華『はい、今参ります』

華『では、ここで』

麻子『ああ、ありがとう』

71: 2013/01/14(月) 01:47:46.00 ID:inqV5Lqc0
麻子(戦車道と華道か)

麻子(当時からミスマッチだと思ってたんだが…)

麻子(でも…楽しそうだったな)

麻子「最後か…」

麻子(秋山はどうしてるかな)

ぷるるるる…

73: 2013/01/14(月) 01:52:34.90 ID:inqV5Lqc0
優花里『もしもし!冷泉殿ですか!』

麻子『久しぶり』

優花里『お久しぶりですね~』

優花里『どうしたのですか?』

麻子『最近どうしてるかなって』

麻子『楽しいか、自衛隊』

優花里『はいっ!勿論ですよ!』

75: 2013/01/14(月) 01:57:37.98 ID:inqV5Lqc0
優花里『同士と熱く語りあう日々!』

優花里『最新鋭の戦車がいっぱい!』

優花里『私にとっては天国です!!』

麻子『そうか』

麻子(まあわかっていたけど)

優花里『ところで冷泉殿、武部殿のことですが…』

麻子『ああ』

………………………………

………………

………

78: 2013/01/14(月) 02:03:51.33 ID:inqV5Lqc0
麻子「……」

麻子「みんな…幸せそうだったな」

麻子「沙織は…」

麻子(やっぱり断ろう、縁談)

麻子(沙織は…私がいないとダメなんだ)

麻子(おばぁには…どう伝えたものか…)

そう考えながら私は家に着いた

80: 2013/01/14(月) 02:10:35.27 ID:inqV5Lqc0
麻子「ただいまー」

シーン

麻子「沙織?いないのかー?」

麻子(買い物か…?)

麻子「…ッ!?」

そこには開かれた封筒があった

麻子「まさか…もう来てたのか!?」

麻子「沙織…!」

82: 2013/01/14(月) 02:16:58.46 ID:inqV5Lqc0
麻子「はぁ…はぁ」

麻子(どこだ!?どこにいった!?)

麻子(今の沙織なら自頃しかねない!)

麻子(くそ…私はなにやって…!)

また私は後悔していた

今回沙織を傷つけたのは紛れもなく私だった

麻子(助けるどころか…)

麻子(あっ)

気づけば目の前に大洗女子学園があった

83: 2013/01/14(月) 02:22:57.93 ID:inqV5Lqc0
麻子「……」

麻子「もしかして…」

学校の周りを注意深く探すと

沙織「……」

沙織(懐かしいな…)

沙織(あの頃みんな仲良しで…でも私だけ…)

沙織「…あっ」

麻子「…見つけたぞ」

沙織がそこにいた

その沙織の絶望に満ちた表情を見て

私のなかでなにかが崩れた気がした

85: 2013/01/14(月) 02:28:52.52 ID:inqV5Lqc0
沙織「…」

麻子「…」

沙織「…ごめんねいままで」

沙織「私邪魔だったよね麻子…」

沙織「…もういいんだ」

沙織「そろそろ実家に帰ってやりなお…」

麻子「大学を卒業した後、ずっと塞ぎこんで」

麻子「無気力に生活してきたお前を家族は歓迎するのか?」

沙織「う…」

89: 2013/01/14(月) 02:36:15.55 ID:inqV5Lqc0
沙織「だって…もうそれしか…」

麻子「無理だろ」

麻子「もうお前に社会適応なんてできやしない」

沙織「あう…」

麻子「どこかに嫁ぐしかないんじゃないのか」

沙織「…そんなの無理」

沙織「だってもう男性恐怖症みたいなもんだし」

沙織「あはは…もうやってらんない…」

沙織「いっそ氏んじゃおうかな…」

92: 2013/01/14(月) 02:41:05.52 ID:inqV5Lqc0
麻子「……」

沙織「……」

麻子「実はあの縁談、断るつもりだったんだ」

沙織「…もういいよそういうの」

麻子「だけど私は結婚するつもりだ」

沙織「…はい?」

麻子「男性恐怖症だったよな」

麻子「じゃあ女性は大丈夫なんだな」

麻子「総合すると沙織は女性に嫁ぐしかないわけだ」

96: 2013/01/14(月) 02:47:33.74 ID:inqV5Lqc0
沙織「からかってるの麻子…?」

沙織「いままでの腹いせ…?」

沙織「あはは…喜んで聞くよ…」

沙織「そもそも私が悪いんだしね…」

麻子「私と結婚しよう、沙織」

沙織「……」

麻子「あの約束は嘘じゃない」

麻子「私はずっとお前の傍にいる」

沙織「…なにそれ」

沙織「おかしいよ…」

99: 2013/01/14(月) 02:53:23.04 ID:inqV5Lqc0
麻子「いままで後悔してきた」

麻子「大学のときお前を守れなくて」

麻子「私はあの時沙織の傍にいたのに」

沙織「もう忘れてよ…」

沙織「あれは…私がバカだっただけで…」

沙織「麻子は…麻子は悪くないって…」

沙織「ていうか女同士は結婚できないじゃん…」

麻子「沙織が憧れてきた結婚ってなんだ?」

沙織「え?」

101: 2013/01/14(月) 03:00:12.95 ID:inqV5Lqc0
麻子「式場でみんなの前で鐘を鳴らすことか?」

麻子「役所に婚姻届を提出することか?」

麻子「私が思うに結婚っていうのは」

麻子「一生この人の傍にいたいと願う二人がお互いにそうすることを誓い合う」

麻子「そんなことだと思うんだ」

沙織「ま、麻子…」

沙織「で…でもそんなのおかしいよ!」

沙織「いままで私が一方的に依存してばっかで…」

沙織「麻子は私と一緒になんかもう嫌でしょ…」

104: 2013/01/14(月) 03:07:36.51 ID:inqV5Lqc0
麻子「一緒にいたいよ」

沙織「うそ…うそだよ…」

麻子「沙織は自分だけが依存してると思ってるみたいだが」

麻子「私も沙織に依存していたんだ」

麻子「この前わかった」

麻子「沙織が私に依存しきってるのを見て」

麻子「私は…とても満足していたんだ」

麻子「好きだよ沙織」

沙織「えあ…うう…」

麻子「沙織は私と一緒にいたいか?」

沙織「……」

沙織「…いたい…麻子と一緒にいたいよ…」

107: 2013/01/14(月) 03:11:52.25 ID:inqV5Lqc0
麻子「ありがとう、沙織」

麻子「沙織が果たせなかった夢を私は叶えたい」

麻子「結婚しよう沙織」

沙織「……わ」

沙織「わたしいっぱい麻子に迷惑かけるよ…」

沙織「絶対またいつものようにヒス起こすよ…?」

沙織「いいの…?それでも…?」

麻子「いいよ」

沙織「ううっ…」

沙織「まこぉ…うわああああん!!」

泣きじゃくる沙織を私は抱きしめる

109: 2013/01/14(月) 03:15:42.68 ID:inqV5Lqc0
この前の私は狂ってなんかいなかった

ただ沙織への友情が愛情に変わってたことに

戸惑っただけだったんだ

沙織「ごめん…ごめんねまこぉ…」

麻子「あやまるな」

もう沙織を傷つけない

この毎日を終わらせない

一生私は沙織を見守っていくんだ

110: 2013/01/14(月) 03:17:21.37 ID:inqV5Lqc0
――――――――――――――――

――――――――

――――

麻子「おばぁ、見舞いに来たよ」

久子「なんだい…またあんた…って」

沙織「お久しぶりです、おばあちゃん」

久子「おお沙織かい」

久子「久しぶり、大きくなったねえ」

久子「こんなうちのと大人になっても仲良くしてくれてありがとよ」

麻子「おばぁ」

久子「なんだい」

麻子「縁談を断ろうと思う」

麻子「――――好きな人がいるんだ」

おしまい

111: 2013/01/14(月) 03:17:49.47 ID:MTtjJYNo0
乙、面白かったです

117: 2013/01/14(月) 03:20:55.67 ID:inqV5Lqc0
途中で麻子をヤンデレにしようとしたがちと難儀しそうだったんでやめたよ
遅くまで付き合ってくれてありがとさん

引用元: 武部沙織(2×歳)「あはは…もうやってらんない…」