照「……それを取るのは少しだけ待ってほしい」

照「まずは私の話を聞いて」

菫「……嫌どす」

照「聞いて」

菫「とりあえず取ってから聞く」

照「……聞いて」ｺﾞｳｯ!

菫（なんだこの圧迫感は……！）

菫「わ、私は屈しないぞ！」

照「……今朝のことだった」

菫「お前も少しは人の話を聞け」

照「今朝私はテレビを見ていた」

菫「はぁ……それで？」

照「そしててきとうにチャンネルを変えていた」

照「もしかしたらその時の私には『もしかしたら咲が映るかもしれない』という小さな望みを持っていたのかもしれない」

菫「……まぁ朝の天気予報は外で撮影することもあるからな」

照「そして『もし咲が映ったら全力でその場に直行して咲を拉致しよう』というささやかな計画も持っていた」

菫「どこら辺がささやか？」

照「……さわやかな計画と言ってもいい」

菫「全然爽やかじゃないだろう」

照「とにかくそんな事を思ってテレビを見ていた」

菫「お前は朝っぱらからそんな感じなのか……」

照「そうやってチャンネルを変えていたら、私はあれを見つけた」

菫「あれ？」

照「……麻雀戦隊ツモルンジャー」

菫「ああ、日曜日の朝にやってるやつか」

菫「あれだろ？　賭けごとを子供番組に持ち込むとは何事だってPTAから苦情が来てるって言う」

照「そう、それ」

照「そしてそれを見て私は思った」

照「戦隊ものは基本五人。わが麻雀部一軍も五人」

照「つまり私たちは戦隊ものをやる運命にあると……」

菫「綺麗に着地したつもりだろうけど、途中おかしいからな」

照「そういうわけで、これから私たち麻雀部五人は宮永戦隊サキスキジャーとしてやっていこうと思う」

照「……おめでとう菫。君は私と咲愛を守るサキスキジャーに選ばれた」

照「今日から君はサキスキブルーだ」

菫「……辞退する」

照「な、何で！？」

菫「私にメリットがない」

照「……入隊特典は咲の全裸写真五分の一」

菫「それを私が貰ってどうしろというんだ……」

照「夜のおかずとか、神棚に飾るとか色々ある」

菫「使い方に夜のおかずと神棚が同時に出てくるってどうなんだ……」

菫「第一、五分の一ってなんだよ」

照「……五枚で一枚の咲全裸写真になる」

照「つまりみんなの力を合わせて初めて咲の全裸が拝める」

照「これでみんなの団結力もアップ！」

菫「……なんて嫌な団結の仕方なんだ」

菫「……ん？　ということはお前も五分の一を持っているって言うことか？」

照「私は持っていない」

菫「え？　でもお前だってその戦隊に入ってるんじゃないのか？」

照「私はサキスキマスターで司令長官。入隊も何も私が創始者だし、入隊特典は貰えない」

菫「……じゃあその全裸写真完成しないんじゃ」

照「……！？　い、いや、ちゃんと考えてある」

菫「いやいや、ちゃんと考えてなかったからそんなになったんだろう」

菫「算数の計算くらいちゃんとしろよ照」

照「ちゃ、ちゃんと考えてある……」

照「待ってて。……」

菫「ん？　窓何か開けてどうするんだ？」

照「入隊特典は咲の全裸しゃ」

和「失礼しますっ！」ﾊﾞﾀﾝ!

菫「！？　……お前は清澄の！」

照「……流石同志。あなたなら来てくれると思った」

和「……なるほど、事情は承知しました」

和「つまりその宮永戦隊サキスキジャーに入隊すれば」

和「伝説のオーパーツ（咲の写真）のかけらが貰えるということですね」

照「そう、その通り」

菫「オーパーツって……」

和「そうですか……いえ、しかし私はお断りせざる負えません」

照「な、何で！？」

菫（おお。さすが中学チャンプは高校チャンプよりはまともだったか……）

和「その戦隊ではお姉さんと咲さんの愛を守るためのものです！」

和「そんなものに私は入隊できません。今すぐ和咲戦隊モエルンジャーへの改名を要求します！」

菫（あ、やっぱり違った。チャンプはチャンプだった……）

菫（何で麻雀の王者はどいつもこいつも妹さんにご執心なんだ）

照「……そ、それはできない。咲は私のものだから」

和「咲さんがお姉さんのものだと誰が決めたんですか？」

和「咲さんは『まだ』誰のものでもありません。『まだ』誰のものでもないんです」

菫「なぜまだを強調するのか……」

照「……やはりあなたは敵。倒すべき相手」

和「そのようですね。私もやはりあなたと同じ道は歩めません」

菫「いや、ある意味お前らは同類だけどな」

照「……こうなったら、どちらがより咲を愛しているか。勝負」

和「私に勝てると思っているんですか？　高校生活を共にしてきた私に」

照「……それはたった数カ月のもの。一緒にいた時間は私の方が長い」

和「時間は関係ありません！　愛の問題です！」

照「……愛なら私も負けない」

和＆照「……ぐぬぬ」

菫（もうこのパンツ取って良いかな？）

照「……」

和「……」

菫「よいしょ」ﾇｷﾞ

菫「このパンツ、ここ置いておくぞ……あ、風で飛ばされて落ち」

ｻｷﾊﾟﾝﾂ「」ﾋｭｰ

照「……」ｺﾞｸｯ

和「……」ｺﾞｸｯ

ｻｷﾊﾟﾝﾂ「」ﾌｻｯ

照「喰らえ、口リ咲写真！」

和「行きます！　温泉に入った咲さん写真！」

照＆和「可愛いいいい」ﾌﾞｼｬｱｱｱ!

菫「……その鼻血、ちゃんとあとで拭いとけよ」

照「……中々やる。久しぶりに私のサキ眼が疼いてきた」

和「……お姉さんも中々ですよ。しかし私のエターナル・サキザードをくらって立っていられますか？」

菫（……まぁ実害はなさそうだし、放っておこう）

菫「私はジュース買ってくるからそれじゃ」

照＆和「うおおおおおおおっ咲ぃぃぃぃぃぃ！」

清澄宿泊ホテル

咲「ひっ！」 ﾋﾞｸｯ

久「？　どうしたの咲」

咲「い、いえ。なんだか寒気が」

久「大丈夫？　風邪かしら」

咲「……い、いいえ大丈夫です」

久「そう、あまり無理しないでね」

咲「ありがとうございます」

優希「それよりのどちゃん。どこ行ったんだじぇ」

久「本当、どこ行ったのかしらね」

咲（……ううっ。また寒気が）ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

照「はぁ……はぁ……」

和「はぁ……はぁ……」

照「な、中々やる」

和「お姉さんこそ……中々いいものをお持ちで」

照「し、しかし、負けるわけにはいかない！」

和「そうです、私たちは同じ女神を愛するべきではありません！」

照「どちらかが諦めるしか……ない！」

和「お姉さんがひいてください！」ｻｷｼｬｼﾝ

照「あなたが！」ｻｷｼｬｼﾝ

照＆和「ぶっはああ！　可愛いぃぃぃぃ！」ﾌﾞｼｬｱｱ

菫「ただい、ま……。部室が真っ赤に……」

照「くっ……さすがに貧血で目がかすんできた」

和「ふっ……もう終わりですか？　他愛無い」ﾌﾗﾌﾗ

照「あ、あなたもふらついている」

和「あ、あなたの方がふらついてますよ」

照「くっ……もう体力の限界……」

和「そうですね……次で決着をつけましょう」

照「最後まで立っていた方が……！」ｻｷｼｬｼﾝ

和「女神にリーチ棒を使う権利を得るのです……！」ｻｷｼｬｼﾝ

照「口リ咲写真夏休み海水浴版前屈バージョン！」

和「高校咲さん写真夏祭り浴衣版はだけ浴衣バージョン！」

照＆和「ぶふあああああああ！　可愛いいい」ﾌﾞｼｬｱｱｱｱｱ!

照＆和「……も、だめ」ﾊﾞﾀｯ

菫「……何なんだ本当に」

菫「……仕方ない。二人ともソファに寝かせておくか」ﾖｲｼｮﾖｲｼｮ

菫「ふぅ。しかし、実害はないと思ったが、これは……部室が血だらけだな」

菫「私一人じゃ掃除しきれない……どうするか」

淡「遅くなりましたー」

亦野「すみません」

渋谷「……少し用事が長引いた」ｽﾞｽﾞ

淡「な、なんですかこれ！」

亦野「……また宮永先輩ですね」

渋谷「……それ以外ない」ｽﾞｽﾞｽﾞ

淡「……ですよね」

菫「よくわかったな」

三人「それは……まぁ」

菫「……まぁ、な」

菫「まぁ厳密にいえば今回は照のせいだけじゃないんだけどな」

淡「そうなんですか？」

菫「ああ、この血の中には清澄の原村和の血も混ざってるんだ」

淡「そうだったんですか」

渋谷「……でも原因は宮永先輩」

菫「……その通りだ」

亦野「……もう檻作りましょうよ。あの人専用の」

菫「そ、それはさすがに……いいかもな」

淡「いいですね」

渋谷「……賛成」

菫「まぁでも、とりあえずは部室掃除しなきゃいけないから、手伝ってくれ」

淡「はぁ、いいですけど。本人たちは？」

菫「そこで寝てる」

照「咲ぃ……咲ぃ……」ﾀﾗﾀﾗ

和「咲さーん……こっちですよー」ﾀﾗﾀﾗ

亦野「……夢の中でもやってるんですね」

渋谷「……まだ鼻血流してる」

淡「……大丈夫ですかね、あれ。出血多量で氏にませんか？」

菫「……まぁその時はその時だろう」

淡「その時って……」

菫「自業自得だ」

淡「……ですね」

菫「じゃあ私はあっちを掃除するから、適当に分担決めてはじめてくれ」

亦野「分かりました。……じゃあ私は窓際を」

渋谷「私は麻雀卓付近を」

淡「え？　わ、私ソファ担当ですか？」

亦野「任せたよ」ﾀﾞｯ

渋谷「武運を祈る」ﾀﾞｯ

淡「あ、せんぱ……はぁ」

淡「この人たち怖いなぁ……」ﾌｷﾌｷ

照「咲好きぃ……咲ぃ……」ｽｰｽｰ

和「咲さーん……」ｽｰｽｰ

淡「……起きないよね？」ﾌｷﾌｷ

淡「ちょっと離れて……あ、髪が……」

照「……！？　咲と同じシャンプーの匂い！」

和「！？　咲さんの髪の匂いが！」

淡「お、起きたああああ！」

照「咲ぃ！」ﾌﾞｼｬｱｱ

和「咲さーん！」ﾌﾞｼｬｱｱ

淡「た、助けて先輩！」ﾀﾞｯ

菫「ど、どうした！」

亦野「な、何！？」

渋谷「……何事」

淡「た、助けてください先輩。亡者が……亡者が……」

菫「」

亦野「」

渋谷「」ｽﾞｽﾞｽﾞ

菫「すまん！」ﾀﾞｯ

亦野「ごめんね」ﾀﾞｯ!

渋谷「淡のことは忘れない」ﾀﾞｯ

淡「あ、ああっ！　先輩！」

照「咲ぃ……咲ぃ……」

和「咲さーん……遊びましょう……？」

淡「ひぃぃぃ！」

淡「だ、誰か、助けて……殺されちゃう……」

照「……大丈夫、殺さない」

和「頃しはしませんよー」

淡「……」

和「血は流してもらいますけどねー」

照「……股から」

淡「！？　助けて！　助けて！」

照「……右足抑えて」

和「分かってます。左足もちゃんと押さえておいてくださいね」

淡「ま、待って。私咲じゃな」

照「知ってる」

淡「……？」

和「でもとりあえず欲望をぶつけておきます」

淡「……！？　助けて、助け……」

照「さてと、リーチ棒用意」ｷﾗﾝ

和「こちらもオッケイです」ｷﾗﾝ

淡（もう、駄目……）

菫「……まずいな。時間がない早く所定の位置につけ」

亦野「ラジャ。いつでもオッケイです」

渋谷「……こちらもオッケイ」

菫「よし、各員武器は持ったな……行くぞ」

亦野「しかし、何で私たちはこんなこと……」

菫「可愛い後輩を亡者の犠牲にはできないからな」

亦野「そうじゃなくてですね」

渋谷「……なんでこんな技巧を持ってしまったのか」

菫「それは……照と一緒の部に入っているからだろう」

亦野「ですよねー」

渋谷「……はぁ」

菫「それより時間がないんだ、いくぞ」

亦野＆渋谷「……ラジャ」

照「……さぁ、まずはこのリーチ棒を舐めて淡」

淡「い、いやそのリーチ棒。形はリーチ棒そのものですけど大きさが十倍くらいになって」

照「……特注品」

和「ちゃんと振動もしますよ」ｳﾞｨｰﾝ

淡「いや、そのちゃんとの使い方はおかしいのでは……」

照「とにかく舐める」

淡「……た、助けて」

和「仕方ありませんね」

照「……無理やり行く」


菫「今だ！」

亦野「ゴゥゴゥゴウッ！」

照「うっ……」ｶﾞｸｯ

和「油断、しました……」ｶﾞｸｯ

亦野「目標の無力化に成功」

渋谷「……ミッションコンプリート」

菫「よくやった。無事か、淡」

淡「せ、先輩……もうだめかと……」ｳﾜｰﾝ

菫「よしよし、怖かったな」

淡「も、もうだめかと思いました」ｴｸﾞｴｸﾞ

菫「よしよし、分かったから。少し落ち着け」

亦野「先輩、目標のポケットから大量の写真が」

菫「？　ああ、妹さんの写真」

照「そ、それは……」

和「私の、コレクション……」

菫「かまわん、燃やせ」

亦野「イエスマム」

渋谷「……オールデリート」

照「あ、ああ、私の十八年間が……」

和「ああ、咲さん……咲さん……」

菫「よし、清澄の方は護送だ。照の方は……まぁ適当に縛りつけておけ」

照「……ひどすぎる」

和「うっうっ……咲さんの写真が無くなるなんて、そんなオカルトありえません」

亦野「存在がオカルトチックな人が何言ってるんですか。ほら行きますよ」

渋谷「……ロープ探してくる」

菫「淡、お前はもう帰って良いぞ。あとは私たちがやるから」

淡「うっうっ……すみません。お先に失礼します」

数日後

菫「淡、それロンだ」

淡「あーまたですか。はい」

渋谷「……また菫の勝ち」

亦野「最近淡ちゃん調子悪いね」

淡「はぁ、この間の件がまだ脳裏に焼き付いていて、集中できません」

菫「そうか……まぁ頑張れよ……」

渋谷「……応援することしかできないけど」ｽﾞｽﾞ

淡「はい、ありがとうございます」

亦野「そういえば、宮永先輩はどこへ……」

菫「……放っておこう」

淡「……そうですね」

清澄宿泊先

照（咲ぃ……咲ぃ……ベストショット取ってあげるからね）

和（咲さんこっち見てください……咲さん……）

咲（ううっ……嫌な視線感じて全然眠れないよぉ……）

終わり

乙乙