504: 2018/07/03(火) 20:48:13.42 ID:VKpcvG8Qo

505: 2018/07/03(火) 20:54:34.20 ID:VKpcvG8Qo
???「……貴女は?」

常務「私は、346プロ、アイドル部門統括重役の――美城という」

???「ほう? それで、私に何か御用かな?」

常務「強盗を刺激しないよう、牧師に扮し警戒を解く……見させて貰いました」

???「……」

常務「君の――いや、貴方のような人材こそ、我が美城に相応しい」

???「……ハッハッハ! 何を言うかと思えば!」


常務「共に、来ては貰えないだろうか」


常務「――我が、城へ」


???「……城、か」

506: 2018/07/03(火) 21:00:13.97 ID:VKpcvG8Qo
???「私はかつて、自らに課せられた使命から逃げた男」

???「そんな男が、違う城とは言え……」

???「……再び、光輝く道を歩めはしない」


常務「貴方が、輝く道を歩くのではない」

常務「貴方が、道を拓き、歩ませるのです」


???「この私が……歩ませる?」


常務「そうだ」

常務「もし、顔を晒すのに抵抗があるのなら――」


常務「――マスクでも被れば良いでしょう」


???「……」

507: 2018/07/03(火) 21:06:37.86 ID:VKpcvG8Qo
???「マスク……か」

常務「この業界では、ありふれた話です」

???「フッ……どこの世界も、大した違いは無いという事か」

常務「もしも、この話を受けるつもりがあるなら――」


常務「――このマスクを被りなさい」

スッ…


???「……」


???「……良いだろう。その話、受けようではないか」

パシィッ!


常務「……我が城へ、ようこそ」

常務「それで……君の事は、何と呼べば良いのかな?」


「……そうさな」


キン肉P「キン肉マン・プロデューサー」


キン肉P「……とでも、呼んで貰おうか」

509: 2018/07/03(火) 21:14:47.22 ID:VKpcvG8Qo
https://www.youtube.com/watch?v=UTSEe0NiWSs


  ・  ・  ・

常務「……!」

トン……トン……!


キン肉P「……落ち着きが無いな」

キン肉P「上に立つ者の取る態度ではないぞ?」


常務「……ここには、私と君しか居ない」

常務「故に、気を使う必要は無いでしょう」


キン肉P「……やれやれ」

キン肉P「しかし、理由くらいは聞かせて貰えるのだろう?」

キン肉P「その位の気遣いは、して頂きたいものだ」


常務「……」

常務「このままでは……城が、保たない」


キン肉P「……ほう?」ギラリ

510: 2018/07/03(火) 21:22:40.34 ID:VKpcvG8Qo
キン肉P「城が保たないとは、穏やかではないな」


常務「346プロダクションの――アイドル部門」

常務「その、アイドル部門の現状については、把握しているな?」


キン肉P「無論」

キン肉P「一人一人の、アイドルの個性を伸ばしていく」

キン肉P「それぞれに合ったペースで……大きく羽ばたけるように」


常務「だが、そのやり方は……非効率的で、成果が出るのが遅い」

常務「羽ばたける様になる前に、育つべき巣が……」

常務「アイドル達を守る、城自体が飲み込まれてしまう」


キン肉P「……芸能界は、いわば戦場のようなものと聞く」

キン肉P「他のプロダクションは……成る程、確かに待ってはくれんな」


常務「そうだ」

常務「……時計の針は、待ってはくれない」


キン肉P「……」

512: 2018/07/03(火) 21:42:11.22 ID:VKpcvG8Qo
キン肉P「この私に……そんな役目を任せて良いのかな?」

キン肉P「顔をマスクで隠し……己の本来の役目から、逃げた私に」


常務「……だからこそ、見えるものもある」


キン肉P「……」


常務「メンバーは、私が選出します」

常務「だが、そのメンバー全員が、輝きを放ち続けられる保証は無い」

常務「私は、自分の力をそこまでは過信する程、愚かではない」


キン肉P「つまり……」

キン肉P「メンバーが、耐えきれず、潰されてしまいそうになった時……」

キン肉P「……そんな、いざと言う時の、逃げ方を教えろ……と?」


常務「その通りだ」


キン肉P「……フ……ククッ……!」

キン肉P「……ハ――ッハッハッハ!」


常務「……」

513: 2018/07/03(火) 21:49:38.36 ID:VKpcvG8Qo
常務「……何がおかしい」


キン肉P「ハッハッハ! これが、笑わずにいられるものか!」

キン肉P「まさか、君がそんな事を言い出すとは思わなんだ!」

キン肉P「私はてっきり、その者達を引き連れ――」

キン肉P「――城を守るため、最期まで戦えと言うと思っていたぞ!」


常務「フン……何を言うかと思えば」

常務「私が、君について知っている事は、あまり多くない」

常務「……だが、ハッキリとわかっている事が、一つだけある」


キン肉P「ほう! 聞かせて貰おうか、その一つとやらを!」


常務「逃げ出すのは、得意だろう?」


キン肉P「……」


常務「それこそ、玉座から、星々を飛び越え、此処に居る程にはな」


キン肉P「……ハ――ッハッハッハッハ!」

キン肉P「違いない! ああ、確かにその通りだ!」

514: 2018/07/03(火) 22:03:01.32 ID:VKpcvG8Qo
常務「この話……引き受けて、くれますね?」


キン肉P「断る」

キン肉P「……そう言っても、君は諦めはしない」

キン肉P「その事は、」


常務「いや……始めから、その答えは想定していない」

常務「私の知る君は……」

常務「誰かを助けるのが、趣味のはずだが?」


キン肉P「フッ……大声で言うのは、憚られる趣味だな」

スッ…


常務「他人に言う必要は無いだろう」

スッ…


キン肉P・常務「……」

ガシッ!


常務「よろしく頼むぞ、キン肉マン・プロデューサー」


キン肉P「ああ……こちらこそ、よろしく頼む」

515: 2018/07/03(火) 22:20:47.60 ID:VKpcvG8Qo
  ・  ・  ・
クローネ プロジェクトルーム

常務「――君達には、対外的な346のブランドイメージを確立して貰いたい」

常務「君たちは、選ばれたのだ」

常務「――我が346の未来を担っていく、アイドルとして」


クローネ達「はいっ!」


常務「まだ、これでメンバーが全員という訳ではない」

常務「引き続き、相応しい者を選んでいくつもりだ」

常務「だが……此処に居る君たちには、先に紹介しておこう」

常務「彼が――」


キン肉P「……」


常務「――君たち、プロジェクトクローネ全体の、プロデューサーだ」


クローネ達「……!?」

ザワザワッ……!

「Pのマスク……?」

「あの人が……私達のプロデューサー……?」


キン肉P「……」



キン肉P「――静まれいッ!」



クローネ達「っ!?」ビクッ!

516: 2018/07/03(火) 22:32:18.59 ID:VKpcvG8Qo
クローネ達「……」


キン肉P「……お前達が集められた目的」

キン肉P「その目的の中に、無駄口を叩くという……」

キン肉P「……そんなものは、あると思うか?」


クローネ達「……」

奏「――それじゃあ、質問しても、良いかしら?」…スッ


キン肉P「良いだろう」

キン肉P(ほう……中々の胆力)

キン肉P(やはり、ただの小娘達を集めたわけではないらしいな)



奏「そんなマスクをしてて……ご褒美のキスは貰えるのかしら?」


キン肉P「……何?」


フレデリカ「はいはーい! フレちゃんもぉ、気になるんだよね」

フレデリカ「あれ? 何が気になったんだっけ?」

周子「あたしも、その気持ち、わかるなぁ~」

周子「気になることが多すぎて、どれを最初に気にしたらいいのやら」


キン肉P「……」

517: 2018/07/03(火) 22:47:21.80 ID:VKpcvG8Qo
唯「ゆいはねぇ、そのムキムキっぷりが気になるかも!」

唯「プロデューサーちゃん、チョー強そうじゃ~ん!」

ありす「みっ、皆さん! 今は、真面目な話をしてる最中です!」

ありす「そうやって、すぐふざけるのは、やめてください!」

奏・フレデリカ・周子・唯「ふざける?」

ありす「どうして首を傾げてるんですか!」


キン肉P「……」


奏「だって私、ふざけてなんかないもの。大事なことよ……とっても、ね」

ありす「それが、ふざけてるって言うんです!」

ありす「大人なんだから、ちゃんとしてください!」

フレデリカ「フレちゃんは19歳だから、まだ子供でセーフ! イェーイ!」

周子「シューコも、ぴっちぴちの18歳やから、大丈夫だね」

唯「おーっ! なら、ゆいは17歳だから、も~っとセーフだね!」

ありす「そういう事を言ってるんじゃありません!」


キン肉P「……彼女達が、歴史ある総合芸能企業、346グループの……」

キン肉P「……看板を背負って立つに、相応しいと?」


常務「その通りだが?」ニヤリ


キン肉P「――ハッハッハ!」

キン肉P「……なんとも、個性的なメンバーを揃えたものだ!」

518: 2018/07/03(火) 22:59:13.23 ID:VKpcvG8Qo
キン肉P「彼女達に、静まれ等と命じるのは、間違いだったようだ」

常務「ならば、どうする?」

キン肉P「……こうするまでよ」


キン肉P「――聞けいッ!」


クローネ達「……」

…シンッ……


キン肉P「私が、お前達――プロジェクトクローネを担当する」

キン肉P「キン肉マン・プロデューサーだ」

キン肉P「このマスクは……故あって、脱ぐことは出来ん」

キン肉P「……つまり、先程の質問への答えだが――」


奏「……」


キン肉P「――私に、このマスクを脱いでも良い、と」

キン肉P「そう思わせる事が出来たならば、その時にまた答えよう」


奏「……あら」

奏「それじゃあ、ファンだけでなく、貴方も魅了しないといけない……って事か」

奏「……ふふっ、苦労しそうだけど、とっても刺激的な保留の仕方ね」

519: 2018/07/03(火) 23:15:38.39 ID:VKpcvG8Qo
キン肉P「他にも、私に聞きたい事がある者が居るようだが……」


クローネ達「……」


キン肉P「――男というものは、あまりしゃべるものではない」

キン肉P「両の眼で、静かに結果だけを見ているものだ」

キン肉P「……その結果次第では、口が軽くなる事も、あるやも知れん」


クローネ達「……」


キン肉P「お前達が進むは、多くの困難が待ち受ける茨の道!」

キン肉P「その道を――346プロダクションを背負いながら、歩く覚悟はあるか!」

キン肉P「その覚悟の無い者は、今すぐこの場から去るが良いッ!」


クローネ達「……」


キン肉P「……どうやら、揃いも揃って――大馬鹿者のようだな」


クローネ達「はいっ!」


キン肉P「良いだろう! お前たちの覚悟、然と受け取った!」

キン肉P「ならばッ! この私も、全力を以て道を切り開かせて貰おうッ!」


キン肉P「プロジェクトクローネの始動をここに宣言するッ!」


クローネ達「はいっ!!」

520: 2018/07/03(火) 23:35:16.07 ID:VKpcvG8Qo
  ・  ・  ・

残虐の神「……そろそろ、奴らも気付く頃だな」

残虐の神「キン肉マンの超人強度が――変動するという事に!」

残虐の神「……フッフッフ!」

残虐の神「このままでは、奴は我々神をすら脅かす存在になるだろうなぁ!」


残虐の神「――だが、その存在……超人は、もう一人存在する!」


残虐の神「キン肉マン――キン肉スグルの兄、キン肉アタルが!」


残虐の神「キン肉星王家の正当たる後継者である、長男が!」


残虐の神「キン肉アタルをそそのかし……奴と一つになれば!」

残虐の神「そうすれば、知性、技巧、飛翔、剛力の四神を出し抜き……」


残虐の神「この残虐の神が……超人界を一手に支配出来るというものよ――ッ!」


残虐の神「……待っていろ、キン肉アタルよ」


残虐の神「お前をキン肉星の大王にしてやろうではないか……!」


残虐の神「フフフフフ……フハハハハハハ――ッ!!」

536: 2018/07/04(水) 19:50:49.33 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・

キン肉P「参加させるか、迷っているメンバーが居る?」

常務「ああ、そうだ」

常務「人数は……五人」


常務「一人は、精神的な面での不安がある」

常務「そして、ユニットとして参加させたい者が、三人」

常務「残る一人は、参加が決まればソロデビューをさせるつもりでいる」


キン肉P「……ふむ」

キン肉P「一人を除き、他の四人には問題がないように聞こえたが?」


常務「ユニットとしてデビューさせたい内の、一人」

常務「そして……ソロデビューをさせたいもう一人は――」


常務「――既に、シンデレラプロジェクトに、所属している」


キン肉P「ほう! 君の改革に異を唱えた人物が担当しているという、あの!」

キン肉P「私も、この業界に関してあまり詳しい方では無いが……」

キン肉P「……彼女らの活躍ぶりは、飛ぶ鳥を落とす勢いだと聞いている」


常務「中でも、渋谷凛、アナスタシアの両名は――」

常務「――私が思い描く、346のイメージを背負うに相応しいアイドル達だ」


キン肉P「……なるほど」

537: 2018/07/04(水) 20:02:25.24 ID:6aKeF2Ako
キン肉P「……ならば、迷うことはあるまい」

常務「何?」

キン肉P「その二人に、すぐにでも参加を要請するべきだろう」

常務「……だが」


キン肉P「何を躊躇う必要がある?」

キン肉P「君は最早、強引な改革を押し進めた結果……ハッハ!」

キン肉P「アイドル部門を統括する重役でありながら、一部アイドルの嫌われ者よ!」

キン肉P「今更、二の足を踏んだ所で、どうなるものでもないわ!」


常務「……フン! 随分、ハッキリと言ってくれるな」

常務「そもそも、その二人がこの話に乗ってくるとでも?」


キン肉P「ああ、乗ってくる」

キン肉P「君が見込んだアイドルは、挑戦を恐れるような者達ではないだろうからな」


常務「……」


キン肉P「そして、担当するプロデューサーが、真に彼女たちの事を思うならば……」

キン肉P「……その話を断る理由は無い」

キン肉P「して……シンデレラプロジェクトのプロデューサー殿は、どう出る?」


常務「……断りは、しないだろう」


キン肉P「ならば……答えはもう、出ているようなものだろう?」


常務「そのマスクの下で……どんな表情をしているか、見てみたいものだな」

539: 2018/07/04(水) 20:13:09.63 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
346プロダクション 前

文香「……」

文香「っ……!」

文香「……」



キン肉P「――そこで、何をしている」



文香「っ!?」

文香「あ、あの……私、は……」

文香「……」


キン肉P「此処は、346プロダクション」

キン肉P「関係者以外は立ち入り禁止……部外者の方は、お帰り願おう」

キン肉P「それで……君は、関係者なのか?」


キン肉P「――鷺沢文香」


文香「!? どうして、私の名前を知っているのでしょうか……?」

文香「貴方は……一体――」



ありす「プロデューサー!」



文香「……えっ?」


キン肉P「……」

540: 2018/07/04(水) 20:26:11.62 ID:6aKeF2Ako
キン肉P「橘か……どうした?」


ありす「どうした、じゃないです。早く来てください」

ありす「今日は、皆で話し合いをするって決めてましたよね?」

ありす「……なのに、予定の時間が迫ってて、こんな所に居るなんて」

ありす「プロデューサーなら、もっとちゃんとしてください」


キン肉P「ああ……そろそろ、時間だったな」

キン肉P「だが――他のメンバーは、全員集まっているのか?」


ありす「それは……その……」

ありす「兎に角! 早く、来てください!」

ありす「大人なんですから、責任を果たさないのは、いけないと思います!」


キン肉P「……そうまで言われては、仕方あるまい」


ありす「……もう、全く」

ありす「プロジェクトクローネ……前途多難すぎます」


文香「……プロジェクト……クローネ」


キン肉P「――聞いての通りだ」

キン肉P「鷺沢文香……‘そこ’から踏み出す覚悟があるのなら――」

キン肉P「――私に、付いて来るが良い」


文香「……私、は……」

文香「……」

文香「っ……!」

541: 2018/07/04(水) 20:46:52.92 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
クローネ プロジェクトルーム

キン肉P「――宣材写真のイメージ……か」


クローネ達「……はい」


奏「やっぱり、346のイメージを確立するためのプロジェクトな訳でしょう?」

周子「そうやねぇ~。あたしも……んー、テキトーにしちゃマズいかな~、とね」

唯「ゆいも、真面目な顔で撮影しないとダメだよねぇ。……アガんないケド」

フレデリカ「キリッ! どうどう? フレちゃんキリッとスマイル! キリッ!」

文香「私の知るアイドルの方達のような表情が……出来るでしょうか」

ありす「私は、一人だけ年齢が離れてるので、皆さんに合わせて大人の表情をするつもりです」


キン肉P「……」


クローネ達「……」


キン肉P「それが――お前達が最も輝ける、最高のパフォーマンスなのか?」


クローネ達「えっ?」


キン肉P「お前たちが、本当にそう思うのならば、止めはせん」

キン肉P「何があったとて、この私が責任を取ろう」


クローネ達「……!」


キン肉P「……フッ、目は口ほどに物を言うとは、この事か」

キン肉P「その目に宿るものが、本物か否か!」

キン肉P「この私も、見届けさせて貰うとしよう!」


クローネ達「はいっ!!」

542: 2018/07/04(水) 21:04:53.53 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
クローネ プロジェクトルーム キン肉Pデスク

キン肉P「私が、プロジェクトクローネの、担当プロデューサーだ」

キン肉P「メンバー達には、キン肉Pと呼ばれているが……まあ、好きに呼ぶが良い」


凛・アーニャ「……よろしくお願いします」


キン肉P「……なるほど、確かに良い面構えをしている」

キン肉Pだが、胸の内に抱える不安も見える」


凛・アーニャ「……」


キン肉P「お前たちは、シンデレラプロジェクトを裏切った」

キン肉P「彼の意見と対立する、美城常務のプロジェクトに入る事によって」

キン肉P「それによって起こる、不協和音への恐れ……か」


凛・アーニャ「っ!?」


キン肉P「……フン」

キン肉P「シンデレラプロジェクト……存外に情けない」


キン肉P「ただの馴れ合い集団など、解散した方がマシと言うものよ――ッ!」


凛・アーニャ「!」

545: 2018/07/04(水) 21:21:57.02 ID:6aKeF2Ako
凛「アンタに……アンタなんかに、何がわかるって言うの!?」

アーニャ「ダー! リンの、言う通り、です! 取り消して、ください!」


キン肉P「男が、一度吐いた言葉を容易に覆すと思うな」

キン肉P「そうさせたければ、証明してみるが良い」

キン肉P「シンデレラプロジェクトが、仲良しごっこで無いとな!」


凛・アーニャ「……!」


キン肉P「――真の友情とはッ!」


凛・アーニャ「!」


キン肉P「闇雲に助け合い、傷を舐め合うものでは無いッ!」

キン肉P「一人一人の固い自立心! そして、信念がなければ生まれんものだ!」

キン肉P「決して! ぬるま湯に浸かり、育まれるものではないッ!」


凛・アーニャ「……」


キン肉P「……お前達は、自立し、信念を持ってクローネに参加したのだろう」

キン肉P「そんな、友の挑戦の成功を祈れぬ者が……果たして友と呼べるのか?」


アーニャ「……ニェート、違います」

凛「……うん、呼べない」


アーニャ「――でも! きっと、皆は、応援してくれます!」

凛「きっと……色々あるかも知れないけど……でも、私は信じてる」


凛・アーニャ「シンデレラプロジェクトの皆は――友達だから!」


キン肉P「……良い答えだ」

546: 2018/07/04(水) 21:39:40.30 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
レッスンルーム

キン肉P「……」


マストレ「――5・6・7・8!」


クローネ達「――!」

――ピタッ!


マストレ「……如何でしたか、彼女達の動きは」

キン肉P「ふむ……そうだな」


クローネ達「……」


キン肉P「この短期間に、よくぞここまで仕上げた」

キン肉P「……そう言わざるを得んな」


クローネ達「……」


奈緒「――くっそ~っ! 今のは、よく出来たと思ったんだけどなぁ!」

加蓮「はぁ……アタシ、アイドルってここまでハードだと思わなかった」


キン肉P「……むっ?」


奏「もう一度始める前に、少し休憩を入れましょう」

フレデリカ「アタシ、まだまだ踊れるよん♪ アン・ドゥ・トロワ~♪」


キン肉P「お前達……何を言っている?」


クローネ達「……」

547: 2018/07/04(水) 21:56:38.09 ID:6aKeF2Ako
周子「あたしら、ちょっと話し合ったんだ~」

唯「そう! これは、キン肉Pちゃんへの挑戦なの!」


キン肉P「私への……挑戦だと?」


凛「他の皆はともかく、私達は、アンタと馴れ合う気は無いから」

アーニャ「でも、挑戦をするのは楽しいと、ランコが……友達が、言ってました」


キン肉P「……」


文香「アイドルをやってみて、楽しいと思った気持ち……」

文香「それは……挑戦して、得られたものです」

文香「そして……私達は、新しいページを開きたいと……そう、思っています」


キン肉P「……」


ありす「……よくぞ仕上げた」

ありす「そんな言葉じゃ、満足出来ないし、立ち止まれません」

ありす「それに……前に、言ったじゃないですか」


ありす「マスクを脱いでも良いと思わせてみろ、って」


ありす「プロデューサー一人、そう思わせられないようじゃ……」

ありす「ファンの人を笑顔にするなんて、到底出来っこありませんから」

奏「あら? ありすちゃんは、キスのご褒美がお目当てなのかしら?」

ありす「ちっ、違います! そういうんじゃありません!」

ありす「それと、橘です!」


キン肉P「……」

548: 2018/07/04(水) 22:09:09.92 ID:6aKeF2Ako
キン肉P「……お前達」


奏「挑戦、受けてくれるわよね? まあ、聞くまでもないか」

フレデリカ「逃げたら、追いかけちゃうよん! 賞金稼ぎ! 賞金いくら?」

周子「賞金か~。お金よりも、もっと楽しい物がいいなー」

唯「あっ! キン肉Pちゃんの、スーツの色を決められる権利とかは?」

奈緒「なんだよそれ? 普通に、今の黒いスーツで……迷彩柄とか?」

加蓮「あのさ、迷彩柄のスーツなんてどこに売ってるの?」

凛「何でも良いよ。とにかく、ギャフンと言わせたいかな」

アーニャ「ダー♪ キン肉P、ギャフンと言わせます♪」

文香「わ、私は、その……今の黒いスーツも、お似合いだと思います」

ありす「さすが文香さんです! 一人だけ、大人の女性という感じがします」


キン肉P「……面白い」

キン肉P「その挑戦――受けて立とう!」

キン肉P「お前達の……」


キン肉P「プロジェクトクローネのプロデューサーは!」


キン肉P「――逃げも隠れもせんぞ!」


クローネ達「……」


クローネ達「はいっ!!」

549: 2018/07/04(水) 22:23:01.37 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
クローネ プロジェクトルーム キン肉Pデスク

キン肉P「……フッ、ただの小娘達では無いと思っていたが」

キン肉P「まさか……この私に、勝負を挑んでくるとはな」

キン肉P「この私に、マスクを脱がせる……か」



「――見つけたぞ」



キン肉P「むうっ!? 誰だ!?」



「神に対しての……その言葉遣い」

「一度だけは、見逃してやろう」



キン肉P「何っ……!? 神、だと……!?」



残虐の神「――その通り」

残虐の神「我こそは、105神の内……残虐を司る神よ」

残虐の神「神の前で頭が高いぞ! ひれ伏すが良い!」


キン肉P「は……ははーっ!」

バッ!


残虐の神「フフフ……良い心がけだ」

残虐の神「逃げ出したとは言え、神への敬意は忘れてはおらんらしい」


キン肉P「……!」

551: 2018/07/04(水) 22:35:16.16 ID:6aKeF2Ako
キン肉P(残虐の神と言えば、105神の中でも邪悪5神と呼ばれる神……!)

キン肉P(それが、何故……此処に居るのだ……!?)

キン肉P「……!」


残虐の神「キン肉アタル……面を上げよ」


キン肉P「……はい」


残虐の神「お前に、栄誉を与えよう」


キン肉P「栄誉で……ございますか?」


残虐の神「そうだ、栄誉だ」

残虐の神「「……そう遠くない未来、戦いが起こる」

残虐の神「キン肉星の大王の座を賭けての……王子達の戦いが」


キン肉P「王子達の戦い!?」

キン肉P「おっ、お待ち下さい!」

キン肉P「この私は、20年以上前……とうの昔に、逃げ出した身!」

キン肉P「今更、おめおめと姿を現し……あまつさえ、大王の座を賭けて戦うなどと!」

キン肉P「そんな事は、絶対に有り得ません!」


残虐の神「いいや、戦ってもらう!」

残虐の神「――この、残虐の神と融合し!」

残虐の神「知性、技巧、飛翔、剛力……それぞれが力を貸す者達と!」

残虐の神「そして、お前の弟である、キン肉スグルをあの世へ送るためにな――ッ!」


キン肉P「……!?」

553: 2018/07/04(水) 22:49:18.95 ID:6aKeF2Ako
残虐の神「……どうだ、悪い話ではあるまい」

残虐の神「キン肉アタル……お前が、かつて捨てたものが、その手に戻るのだ」

残虐の神「――地位も! 名誉も! 超人界すらも!」

残虐の神「この残虐の神が、全てを与えてやろう!」


キン肉P「……恐れながら、申し上げます」


残虐の神「よい、許す」


キン肉P「……逃げ出した私には、あまりにも勿体無いお言葉」

キン肉P「ですが……私は、責任を放り出した、愚か者にすぎません」

キン肉P「戦いの場に……超人レスリングのリングに上がるなど、生き恥を晒すようなもの」

キン肉P「その様な栄誉を受ける資格など……有りはしませぬ」


残虐の神「……断る、と?」

残虐の神「神の誘いを……断ると言うのか、キン肉アタルよ」


キン肉P「……申し訳ありません」



残虐の神「――許さぬ」



キン肉P「っ!?」


残虐の神「たかが超人風情が、この残虐の神を愚弄した罪!」

残虐の罪「その罪、絶対に贖わせてやるぞ、キン肉アタル!」


キン肉P「おっ、お待ち下さい!」

キン肉P「どうか! どうか、怒りをお収めください、残虐の神よ!」

554: 2018/07/04(水) 23:05:07.96 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・
クローネ プロジェクトルーム キン肉Pデスク

キン肉P「……」


キン肉P(キン肉星の大王の座を賭けた……王子達の戦い)

キン肉P(邪悪5神が力を貸す者達……そして、我が弟――スグル)

キン肉P(6人の大王候補による……壮絶で、熾烈な戦いになるだろう)


キン肉P「……」


キン肉P(……今更、私が名乗りを上げたとして、何になる)

キン肉P(責任から逃げ出した私は……大王の器では無い)

キン肉P(キン肉アタルに……リングに上がる資格は、有りはしないのだ)


キン肉P「……」


キン肉P(……そして……神の怒りに触れてしまった)

キン肉P(それも、邪悪5神の……神々で最も非情と言われる、残虐の神に)

キン肉P(残虐の神が残した、あの言葉――)



キン肉P「――忘れるな」



ありす「――えっ?」

ありす「何を忘れるなって言うんですか?」


キン肉P「んっ……あ、ああ……何でも無い」

キン肉P「ただの独り言だ、気にするな」


ありす「……」

555: 2018/07/04(水) 23:21:46.90 ID:6aKeF2Ako
ありす「気にするな、じゃありません」

ありす「最近、様子がおかしいと思います」

ありす「マスクで顔が見えないけど……明らかに、変です」


キン肉P「……気にするなと言っているだろう」


ありす「~~っ! だからっ! 気になるから、聞いてるんじゃないですか!」

ありす「気にするなって言う位なら、しっかりしてください!」

ありす「もうすぐ、秋LIVEの……私達の、初舞台なんですよ!」


キン肉P「そんな事は、わかっている」

キン肉P「お前達の、これまでの努力を披露する場だ」


ありす「だから――」


キン肉P「――だから、私なぞを気にかけている暇は、無い筈だ」


ありす「っ!?」


キン肉P「橘。お前と、鷺沢のユニットは、多くの関心を集めている」

キン肉P「その、ファンの期待に応えるだけの――」


ありす「――バカッ!!」

タタタタッ…ガチャッ―バタンッ!


キン肉P「……」


キン肉P「……そんな事は、言われずともわかっている」

556: 2018/07/04(水) 23:43:27.01 ID:6aKeF2Ako
  ・  ・  ・

文香「ええ……最近、様子がおかしいと思っていました」

ありす「文香さ……じゃなくて、鷺沢さんも気づいてたんですか?」

文香「橘さんは……あの人が心配なのですね」

ありす「ち、違います! ただ、その……困るだけです!」

文香「……とても……人には言えない、大きな悩みを抱えているようですしね」

ありす「元々……全然、自分のことは話さない人ですし」


文香「だからこそ……挑戦だと、思うの」


ありす「えっ?」


文香「あの人は……私達には悩みを話そうとはしてくれない」

文香「けれど、私達は……アイドルでしょう?」


ありす「……はい」


文香「そんな……大きな悩みも、乗り越えられるように……」

文香「笑顔でいられるように、するのが……お仕事だと……思うんです」


ありす「!」


文香「出来るかは……わからないけれど」

文香「やり甲斐のある、お仕事だとは思いませんか?」


ありす「――思う……思います!」

ありす「さすが文香さ……鷺沢さんです!」

ありす「私達で、あの頑固なマスクの下を笑顔にしてやりましょう!」


文香「ええ……頑張りましょう、橘さん」


ありす「はいっ! 鷺沢さん!」

561: 2018/07/05(木) 16:38:20.60 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・

常務「――後任の者を選出しろ、だと?」


キン肉P「ああ、そうだ」

キン肉P「生憎だが、私にはこの業界の横の繋がりが無い」

キン肉P「しかし、君ならば、相応しい者の心当たりの一人や二人は居るだろう?」


常務「……何を馬鹿な事を」

常務「君は、自分が何を言っているか……わかっているのか?」


キン肉P「無論」


常務「……」


キン肉P「……この私、キン肉マン・プロデューサーは――」


キン肉P「――秋LIVEを最後に、此処から去るつもりだ」


常務「……理由は?」


キン肉P「私自身の問題だ」

キン肉P「その問題に……クローネのメンバー達や、君を巻き込むやもしれん」

キン肉P「本来ならば……今すぐにでも、姿を消すべきなのだ」


常務「……」

562: 2018/07/05(木) 16:50:27.41 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「だが……秋LIVEは、目前まで迫っている」

キン肉P「今、突然私が居なくなっては、彼女らを動揺させるだろう」

キン肉P「その様な状態でのLIVEなど、させるわけにはいかんからな」


常務「……ふむ、意見を変える気は、無いようだな」


キン肉P「……」


常務「だが、君は一つだけ、大きな勘違いをしている」


キン肉P「勘違いだと?」


常務「私の選んだシンデレラ達を――」


常務「――プロジェクトクローネを侮らないで貰おうか」


キン肉P「……」


常務「例え君が居なくなったとしても、彼女達は秋LIVEをやり遂げるだろう」

常務「私が選び出し……君が、プロデュースした」

常務「その、プロジェクトクローネには、成功が約束されて然るべきだ」

常務「彼女達は、とても強い……違うかね?」


キン肉P「……フッ」

キン肉P「確かに、その通りだ」


常務「そんな、強い輝きを持つアイドル達が――」


常務「たかが超人一人の抱える問題に、屈するとでも?」


キン肉P「――!」

563: 2018/07/05(木) 17:06:43.66 ID:P4TXUo9oo
常務「彼女達は――クローネのメンバー達は、私にこう言った」

常務「秋LIVEが終わるまでは、君を絶対に引き止めてくれ……とな」


キン肉P「……何だと?」


常務「彼女たちは、アイドルの前に、多感な十代の少女だぞ?」

常務「君の、最近の思いつめた様子に、何も気づかないわけがあるまい」

常務「……クローネのメンバー達は、気づいていました」

常務「君が、いずれ遠くない未来……此処を去るという事を」


キン肉P「だが……何故……」


常務「秋LIVEが終わるまでは……か」

常務「忘れたのか?」

常務「君は、彼女達の覚悟を受け取り、道を切り開くと約束した」

常務「秋LIVEの大舞台は、彼女たちが大きく羽ばたくための、最初の一歩となる」


キン肉P「……ああ、覚えているとも」

キン肉P「だから、私は……!」


常務「これ以上の問答は、意味がない」

常務「プロデューサーとアイドルの意見が、見事に一致しているのだ」

常務「私が口を挟める段階は、とうに過ぎている様だからな」


キン肉P「……すまない、迷惑をかける」


常務「全く……」

常務「私の選んだ者達の選択は、度し難いものばかりで困る」

564: 2018/07/05(木) 17:25:40.94 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・
秋LIVE当日 クローネ控室

キン肉P「……」


クローネ達「……」

奏「ねえ? こういう時は、何か言うべきじゃない?」

クローネ達「……」コクリ


キン肉P「……そうさな」

キン肉P「私は本来、此処に居て良い存在ではない」


クローネ達「……」


キン肉P「私はかつて……自らの宿命を投げ捨て、逃げ出した男だ」

キン肉P「それが、何の因果か……こうして、此処に立っている」

キン肉P「私が此処に居る理由……それは――」


クローネ達「……」


キン肉P「――お前達、プロジェクトクローネだ」

キン肉P「お前達の存在が、今、私が此処に居る理由の全てよ」


クローネ達「……」


キン肉P「……以上だ」


クローネ達「……」

565: 2018/07/05(木) 17:44:36.42 ID:P4TXUo9oo
ありす「――なら、証明します」

ありす「それが、間違いなんかじゃなかった、って!」


キン肉P「……」


フレデリカ「わお! ありすちゃん、やる気満々だね! 満々って、何味の肉マンかな?」

周子「肉まんなら、あたしはアンマンの方が良いなぁ~。それより、和菓子の方が良いけど」

ありす「何の話をしてるんですか! それと、橘です!」


キン肉P「……フッ」


唯「でもでも、あんな事言われちゃ、テンションアゲアゲだよね!」

奈緒「わかる! なあおい、ギリギリまでダンスの確認しとこうぜ!」

加蓮「アタシはパス。温存して、温存して……本番で最高のパフォーマンスをしたいから」

凛「そうだね……でも、さっきの言葉は……うん、悪くないかな」

アーニャ「ダー♪ 最高の、ステージにしてみせます!」


キン肉P「クックック……!」


クローネ達「見ておいて!」


キン肉P「ハーッハッハッハッ!」

キン肉P「言われずとも、そのために私は此処に居る!」

キン肉P「両の眼で、最後まで見届けようではないか!」


奏「――手、出して」


キン肉P「……」

スッ…


奏「最初は私……行ってくるわ」


――パシンッ!

568: 2018/07/05(木) 18:08:50.09 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・
関係者席

常務「――君は、彼女達の近くに居ると思っていたが」


キン肉P「始めは、私もそのつもりだった」

キン肉P「だが……全員に、言われてしまってな」


常務「ほう?」


キン肉P「……侮るな、とな」


常務「……フッ」

常務「どこかで聞いた言葉だな?」


キン肉P「そんな彼女達の誇り高さを……私が汚すわけにはいくまい」

キン肉P「その、高貴な姿を……此処で腰を据え、静かに見守らせて貰う」


常務「それは、有り難いな」

常務「君にここで大声を出されては、彼女達の歌が聞こえなくなってしまう」

常務「美城の名に相応しい……」


キン肉P「ああ――」


キン肉P・常務「――真のアイドルの姿を」

569: 2018/07/05(木) 18:27:18.45 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・
クローネ控室

文香「……」

文香(午前の部は……とても美しい、輝くようなステージでした)

文香(私に……あのような素晴らしいステージが、出来るでしょうか……)

文香(……一人では……やはり、難しいでしょうね)

文香(けれど……私は、一人では……ありません)


ありす「……」


文香「……」

文香(彼女が……橘さんが、一緒なのですから)

文香(それに、今日のステージは……私の、最初のステージ)

文香(あの人に見て貰える……恐らく、最後の機会)

文香(だから……私の、精一杯の……最高の姿を見て貰いたい)



????『――フハハハ! 残念だが……』

????『その願いが、叶うことは無い!』



文香「っ!?」

文香(頭に声が……!? 何故……どうして……!?)

文香(貴方は……誰、なのですか……!?)



残虐の神『神々の中で……最も残虐な神よ!』



文香「っ……!?」

570: 2018/07/05(木) 18:41:31.82 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・

キン肉P「っ……!」

ダダダダダッ!

キン肉P「入るぞ!」

ガチャッ!


文香「すみません……すみません……!」ポロポロッ!

ありす「な、泣かないで……泣かないで、鷺沢さん……」


キン肉P「……!」


奏「文香……控室に居た時は、元気そうだったのよ」

奏「でも、ここから出る時には、何だか様子がおかしくて……」


キン肉P「……」


奏「……ねえ、聞いてるの?」


キン肉P「すまないが……少し、鷺沢と二人にして貰えるか」


奏「……わかった」

奏「ありすちゃん、それに、皆も……一旦外に出ましょう」

ありす「で、でも……!?」


文香「すみません……私の、せいで……台無しに……!」ポロポロッ!


奏「ここは……あの人に任せましょう」

奏「だって彼は――私達の、プロデューサーだから」

ありす「……わかりました」

ありす「鷺沢さんを……お願いします」


…ガチャッ…バタンッ


キン肉P「……」

571: 2018/07/05(木) 18:53:18.00 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「……鷺沢」

文香「っ!?」ビクッ!


キン肉P「……すまなかった」


文香「あ、貴方が謝る必要は……あ、ありません……!」


キン肉P「……いいや、全て私の責任だ」


文香「私が……私が、悪いのです……!」ポロポロッ!

文香「絶対に、成功させたいと思っていたら……!」ポロポロッ!

文香「体が、言うことをきかなくなって……」ポロポロッ!

文香「変われない……私は、何も変われなかった……!」ポロポロッ!


キン肉P「……そんな事はないさ」

キン肉P「鷺沢……お前は、立派なアイドルだ」

キン肉P「例え、誰が何と言おうとも……」


キン肉P「――この私が、保証しよう」

――グイッ!


文香「! マスクを……」



キン肉P「フェイス・フラッシュ!」

パアアアアッ……!



文香「……何て……温かい光」

文香「とても穏やかで……優しい、陽だまりのよう……な……」

文香「……すぅ……すぅ……」


キン肉P「……」

――グイッ!

572: 2018/07/05(木) 19:10:30.82 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・
LIVE会場 外縁

キン肉P「……」


キン肉P「――ここならば、誰の邪魔も入らず話せるというもの」


残虐の神「……クックック!」

残虐の神「小娘達の世話はもう良いのか?」


キン肉P「……」


残虐の神「ハーッハッハッハ! これでわかっただろう!」

残虐の神「これが、神の怒りに触れるという事だ!」


キン肉P「……」


残虐の神「キン肉アタルよ……先程は、見事なフェイス・フラッシュであったぞ」

残虐の神「――やはり、お前こそが大王に相応しい!」

残虐の神「先の無礼は、あれに免じて許そうではないか!」

残虐の神「さあ! 我と共に来るのだ、キン肉アタル!」



キン肉P「――黙れッ!!」



残虐の神「なっ、何……!?」

残虐の神「神に対して、黙れだと……!?」



キン肉P「黙れと言っているのがわからんのか――ッ!!」



残虐の神「っ……!?」

573: 2018/07/05(木) 19:29:33.13 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「残虐の神よ!」

キン肉P「私は、神である貴方に対し、相応の敬意を払ったつもりだ!」

キン肉P「この私を己の欲望のため、利用しようとした事への怒りは無いッ!」


キン肉P「――だがッ!」


キン肉P「女子供に、いかなる理由があろうとも矛先を向ける痴れ者には――」

キン肉P「――払う敬意の、一片すらも持ち合わせておらんッ!」


キン肉P「――そしてッ!」


キン肉P「未来へ向けて、一歩を踏み出そうとする者の――」

キン肉P「――私の担当するアイドルの邪魔をしようなどとッ!」


キン肉P「……例え、相手が誰であろうと」


キン肉P「この私が……キン肉マン・プロデューサーが!」


キン肉P「絶対に許しはせんッ!」


残虐の神「許しはせんだと……?」


キン肉P「残虐の神よ!」

キン肉P「望み通り、リングに上がろうではないかッ!」


残虐の神「……何?」


キン肉P「346プロダクションは、芸能プロダクションとして存在していたのではないと知っているな!」


キン肉P「遥か古来より、超人界で罪を犯した者を――裁くための場!」


キン肉P「その本来の名は――Missing law(ミッシング・ロウ)プロダクション!」


キン肉P「そのリングこそが……私が再び上がり、貴様を裁く場所だ――ッ!」

576: 2018/07/05(木) 21:11:36.54 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・

吉貝「さあて! 一体誰が、この戦いを予想したでしょうか!」

吉貝「ななな、なんと! 346プロダクションのプロデューサーと――神の戦いです!」

中野「ぎくうっ!? アータね、今、髪の話しました!?」

吉貝「実況は私、吉貝と」

中野「解説は、おまたせシマウマ~! 世界に羽ばたくアデランスの中野さんです~!」

吉貝「――で、お送りします!」



キン肉P「……」



残虐の神「フフフ……身の程知らずが!」



吉貝「しかし、プロデューサーは、雰囲気が誰かに似ていますねぇ?」

吉貝「ブルーのパンツをまとってはいますし、マスクはPのマスクですが……」

中野「気のせいでしょう、そんなのは」

中野「大体ね、こんな試合の解説をする意味があるんですか?」

中野「プロデューサーと神の戦い~? 10秒で終わりますよ、10秒で!」

577: 2018/07/05(木) 21:28:22.70 ID:P4TXUo9oo
吉貝「ちょっと中野さん! 解説は、公平にお願いします!」ヒソヒソ

中野「はいはい、わ~かってますよ」

中野「……えー、ゴホン」

中野「プロフィールを見た限りでは、えー、何々?」

中野「彼は、新たに発足された、プロジェクトクローネのプロデューサーとなっていますね」


キン肉P「……」


吉貝「そのプロデューサーが、どうして残虐の神と戦う事になったのでしょうか?」

中野「私に聞かれたってわかりませんよ、そんなもの」

中野「あー、神様仏様! 早く終わらせて、お家でゆっくりビールを飲まさせてちょうだいませませ~!」


残虐の神「――だ、そうだ」

残虐の神「フハハハハハハ!」

残虐の神「神としては、願いは叶えなければならん所だが……」


残虐の神「ゆっくりと……ジワジワとなぶり頃しにしてくれるわ――ッ!」

残虐の神「ハ――ッハッハッハッハッ!」


キン肉P「……残虐の神よ」

キン肉P「今……私の中では、炎が渦巻いている」


キン肉P「――その炎とはッ!」

キン肉P「キサマの様な……悪を許さぬ正義の炎だ――ッ!」



カ――ンッ!



吉貝「今、プロデューサーと残虐の神の、戦いのゴングが鳴った――っ!」

中野「ふん、何が正義ですか。ちゃっちゃとやっちゃってください、神様!」

579: 2018/07/05(木) 21:39:51.44 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「おおおおおっ!」

ダダダダダッ!


吉貝「プロデューサー! 猛烈な勢いで残虐の神に迫る――っ!」

中野「足が速いのが自慢なら、かけっこで対決でも良かったんじゃないですか」


残虐の神「ククク……まずは、お手並み拝見といこうか」


吉貝「それに対し! 真っ赤な体をした残虐の神は、腕を組み余裕のスタンス!」

中野「頭の、三本の角が強そうですね~! これは、目が離せませんよ!」


キン肉P「――ふんっ!」

ヒュッ―

残虐の神「むうっ!?」


吉貝「プロデューサー! その勢いのままに跳び上がり――」


キン肉P「ソリャアア――ッ!」

ドガァッ!

残虐の神「ぐおっ!?」

ヨロヨロッ…


吉貝「ローリングソバット――っ! 残虐の神、たまらずよろめいた――っ!」

中野「……なんという、美しい軌道を描く蹴り! 今のはききますよ~っ!」

中野「はっ!? あいや、今のはマグレでしょう! マグレ!」

580: 2018/07/05(木) 21:53:31.87 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「まだまだ――ッ!」

ドッ! ゴッ!

残虐の神「うっ、おおっ!?」


吉貝「プロデューサー、一気に流れを掴んだーっ!」

吉貝「よろめく残虐の神に、左ジャブからのショルダータックルと、流れるような連携!」

中野「……!」

ガタッ!


キン肉P「フンッ!」

ガシィッ!

残虐の神「う、お……!?」

…フワッ


吉貝「ガードを固めた残虐の神! しかし、プロデューサーはその体を抱え上げ――」


キン肉P「テリャアア――ッ!」

ドガァンッ!

残虐の神「ぐほおあっ!?」


吉貝「ボディスラ――ムっ! あまりの衝撃に、リングが揺れる――っ!」

中野「……!」

吉貝「あの……ちょっと、中野さん? 解説をお願いしますよ、中野さん?」

中野「これは……とんでもない試合になりますよ!」

吉貝「えっ?」

中野「途中からでも、女房を質に入れて見るだけの価値はありまっせ~っ!」

581: 2018/07/05(木) 22:10:01.34 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「おおお――」

ヒュンッ―

残虐の神「う……ぐっ……!」


吉貝「プロデューサー! リングに横たわる残虐の神へ――」


キン肉P「りゃあっ!」

ズドォッ!

残虐の神「ごほおっ!?」


吉貝「全体重をかけた! 流星のようなエルボードロップだ――っ!」

中野「確実に、残虐の神の喉を狙っていますね」

中野「あれだけのパワーとテクニックのある超人は……見たことがありません」


キン肉P「……!」

残虐の神「……クックック」


残虐の神「どうした? もう、おしまいか?」ニヤリ


キン肉P「くっ……!」


吉貝「ああ――っと! 残虐の神、笑っている――っ!」

中野「あれだけの技を受けて笑えるとは、やはり、神とは恐ろしい……!」


残虐の神「ハハハハ! もうガス欠か?」

残虐の神「悪へ対する怒り……あまりにも小さな炎よなぁ!」

残虐の神「ハーッハッハッハァ!」


キン肉P「ぬ……ぬううっ!」

584: 2018/07/05(木) 22:26:21.98 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「……ええい、黙れ――ッ!」

ガキィッ!

残虐の神「……クックック」


吉貝「プロデューサー! 腕ひしぎ十字固めの体勢!」

中野「これは、完璧にキマっていますね。逃れる方法は無いでしょう」


キン肉P「おおおおおっ!」

グググググッ…!

残虐の神「どうした、片腕をへし折るチャンスだぞ?」


吉貝「ああっと!? これは、どうしたことでしょうか!?」

吉貝「完璧にキマっているはずが、残虐の神の表情は涼しげだ――っ!」


残虐の神「――ぬんっ!」

グワッ!

キン肉P「う……おおっ――!?」


吉貝「な、なんと! 残虐の神、プロデューサーの腕のロックをそのままに立ち上がり――」


残虐の神「ハーッハハハァ!」

ゴガァンッ!

キン肉P「……!」

…ドサッ!


吉貝「勢い良く、Pのマスクをリングに叩きつけた――っ! プロデューサー、たまらずダウーン!」

585: 2018/07/05(木) 22:43:17.37 ID:P4TXUo9oo
残虐の神「キサマの素のパワーは、たったの108万パワー」

ガシッ…グググッ……!

キン肉P「う……ぐふおぉ……!?」


吉貝「残虐の神! プロデューサーの首を掴み、片腕でのネック・ハンギング・ツリー!」

吉貝「プロデューサー! 脱出しようともがくが、残虐の神はビクともしていなーいっ!」

中野「これは……圧倒的な……根本的な力の差に見えますね」


残虐の神「一億パワーの神に対し、対抗する術は一つ!」

残虐の神「持てる全ての力を以て、早期に決着をつけるしかない!」

ググググッ……!

キン肉P「あ、が……あ……!」

残虐の神「長らくリングから遠のいていたキサマなら、なおのこと!」

ググググッ……!

キン肉P「ぐふうっ!? あ、おぉ……!」


吉貝「ああ――っと! 素晴らしいファイトを見せていたプロデューサー!」

吉貝「ブランクのためなのか、既に力を使い果たしてしまっていた――っ!」

中野「相手が、普通の超人ならばそうはならなかったのでしょうがねぇ」

中野「残虐の神という、一億パワーの相手と対するのは、消耗が激しすぎたのでしょう」



残虐の神「さあ、ショーの始まりだ」ニマァ~



キン肉P「……!」

586: 2018/07/05(木) 23:02:22.85 ID:P4TXUo9oo
  ・  ・  ・
LIVE会場

ありす「……」


莉嘉「? どうしたの、ありすちゃん?」

みりあ「もしかして具合でも悪いの? ねえ、ありすちゃん」


ありす「な、何でもありません」

ありす「それと、橘ですと……何度言えばわかるんですか」


莉嘉「LIVEで疲れたのかな? だって、サイコーのLIVEだったし☆」

みりあ「うんうん! 皆、す~っごくキラキラしてたよね!」


ありす「……」


莉嘉「そう言えば、クローネのプロデューサーはどうしたの?」

みりあ「そうそう! あの、ムキムキでPのマスク被ってる人!」


ありす「……あんな人、もう知りません!」

ありす「LIVEの途中なのに……居なくなっちゃうなんて、有り得ないです!」

ありす「せっかく……せっかく、最高のステージだったのに――」


小梅「そ、その人なら……あの子が、見たって言ってるよ」


ありす「えっ?」


小梅「なんだか……凄く、怒ってて……け、ケンカしてたみたい」

小梅「それで……その、事務所で戦うって、言ってたみたい」


ありす「事務所で……戦う?」

588: 2018/07/05(木) 23:39:29.88 ID:N++Mq/dHO
怖いですねぇ……恐ろしいですねぇ……

589: 2018/07/05(木) 23:42:34.47 ID:P4TXUo9oo
キン肉P「っ……! ぉ、ぁ……!」

グッ……グッ……!

キン肉P(体に……力が入らん……!)

キン肉P(全身が、バラバラになりそうだ……!)

キン肉P(だが、奴は……奴だけは、このままにして置くわけにはいかん……!)

キン肉P(この生命と引き返しにしてでも、せめて……力を削いでおかねば――)

キン肉P「……お、おおおっ……!」

グッ…グググッ……!


残虐の神「まだ立ち上がろうとするか!」

残虐の神「素晴らしい……素晴らしいぞ!」


キン肉P「おおおおああああっ!」

ググッ…!



ありす「何をやってるんですか!」



キン肉P「……た……橘……!?」

キン肉P「何故、お前が此処に居る……!?」


ありす「そんな事、気にしてる場合じゃないです!」

がしっ

キン肉P「なっ、何をする……!」

ありす「そんなボロボロなのに、起き上がった氏んじゃいます!」

キン肉P「……!」

591: 2018/07/06(金) 00:01:39.89 ID:KXsEVaf2o
https://www.youtube.com/watch?v=G-kQNi3WAvg


キン肉P「ええい、離せ! そこをどけ、橘!」

ありす「嫌ですっ!」


キン肉P「離せと言っているのが、わからんのか――ッ!」


ありす「絶対に離しませんっ!」

ありす「私が抑えてるだけで立ち上がれないのに……」

ありす「離したら……絶対、立ち上がろうとするじゃないですか!」

ありす「だから、絶対に離しません!」

がしっ!


キン肉P「……!」


ありす「聞きたい事が、沢山あるんです!」

ありす「言いたい事も、沢山あるんです!」

ありす「だから、大人しくしててください! 大人なんだから!」

ありす「立ったら氏んじゃうなんて……そんな事もわからないんですか!?」


キン肉P「……わかっている」


ありす「だったら――!」


キン肉P「だが……男には、命を賭してでも、やらねばならん時がある」

グ…ググッ…!


ありす「っ!? 駄目……駄目です! 起きちゃ駄目です!」


キン肉P「それが如何に困難でも、目を逸らす事は出来んのだ……橘よ」

ググッ…!


ありす「っ……!?」

592: 2018/07/06(金) 00:18:43.39 ID:KXsEVaf2o
ありす「なんで……どうして……!?」

キン肉P「……すまんな」


キン肉P「お前達のLIVEを――最後まで見れなんだ」


吉貝「プロデューサー! アイドル、橘ありすちゃんの制止を振り切り、立ち上がった――ッ!」

中野「しかし、何か策はあるんでしょうかねぇ?」

中野「ただ立ち上がるだけでは、また一方的にいたぶられるだけですよ」

中野「やっぱり、神様より仏様ですねぇ~、ナンマイダ~ナンマイダ~!」ぽくぽくぽく、ちーん!


キン肉P「……」

キン肉P(この私の……残りの命をすべて注ぎ込んだ、フェイス・フラシュ)

キン肉P(それを当てれば、倒せずとも……かなりの力を削ぐ事が出来るだろう)


キン肉P(全ては――そのための布石!)


キン肉P(橘のおかげで……少しだが、休むことも出来た)

キン肉P(あとは、奴が近づいた所で――)



残虐の神「ふむ……面白い余興を思いついたぞ」ニヤァッ



キン肉P「……余興、だと?」


残虐の神「フッフッフ……そらあっ!」

ガガガガガガガガガッ!


吉貝「ああ――っと! 残虐の神、リングにその角を突き立て、真っ二つに切り裂いた――っ!」

中野「リングが、見事に中央で真っ二つになりましたねぇ」

中野「私も、ケーキを丁度半分に切るのは得意ですよ、はい」

593: 2018/07/06(金) 00:31:56.22 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「……!?」

キン肉P(残虐の神め……一体、何をする気だ……!?)


残虐の神「クックック……!」

クイッ!


ありす「えっ――!?」

フワッ…


キン肉P「橘!?」


吉貝「残虐の神の指の動きに合わせて、な、なんと! 橘ありすちゃんの体が浮き上がったーっ!」


残虐の神「そうらっ!」

クイッ!


ありす「きゃ――あうっ!?」

フワアッ…ドスンッ!


吉貝「そしてっ! そのままリングの上に……こ、これはどういう事でしょうか!?」

中野「余興と言っていたので……あっ、わかりましたよ~!」

中野「長時間のファイトになったので、小休止も兼ねてコンサートですよ! 間違いありません!」


キン肉P「残虐の神! キサマ、橘に何をするつもりだ!?」

ヨロヨロッ…


残虐の神「神は、捧げ物として歌も好む」

残虐の神「フッハハハ!――聞かせて貰うのよ!」


残虐の神「キャンバスに挟まれ、潰される断末魔の叫び声をな――ッ!」


ありす「っ!?」

594: 2018/07/06(金) 00:54:04.48 ID:KXsEVaf2o
残虐の神「とくと見るが良い!」

残虐の神「普通の超人ならば、一人では成し得ない……」

残虐の神「キャンバスに挟まれ、全身が押し潰されるこの技!」


残虐の神「残虐技、キャンバス・プレッサーを!」


キン肉P「や、やめろおお――ッ!」

ヨロヨロッ…


残虐の神「ほうら、急げ急げ!」

残虐の神「神は、敬意を払わぬ者の言葉を聞き届けぬぞ!」

残虐の神「女子供に、矛先が向いているぞ! 走れ走れ!」


キン肉P「ぐうううっ!?」

ヨロヨロッ…

キン肉P「早くそこから逃げろッ! 離れるんだ、橘――ッ!」

ヨロヨロッ…


ありす「体が……体が、動かないんです……!」


キン肉P「!?」


残虐の神「さあ、聞けい! 人間が、潰れる音を!」

グワッ――!


キン肉P「うおおおおおおおおっ――!」


残虐の神「残虐技! キャンバス・プレッサ――ッ!」


――グワッシァ!

598: 2018/07/06(金) 09:21:11.52 ID:KXsEVaf2o
吉貝・中野「……!?」

吉貝「な……なんという事でしょうか!」

吉貝「橘ありすちゃんが乗っていたリングが……完全に、二つに折り畳まれています……!」

中野「残虐技、キャンバス・プレッサー……!」

中野「キャンバスをプレス機の如く利用し押しつぶす、なんという残虐で恐ろしい技なのでしょうか……!」


残虐の神「フハハハハ――ッ!」

残虐の神「神の裁きの間に、割って入るからこうなるのよ――ッ!」

残虐の神「さあ、どうだ!」

残虐の神「キサマの絶望する姿をじっくりと拝ませて……」


残虐の神「――何ッ!?」


残虐の神「ど……どこだ!?」


残虐の神「どこへ消えた……キン肉アタル……!?」


吉貝「ああ――っと! プロデューサーの姿が見えない! 一体、どこへ消えたのでしょうかーっ!?」

中野「あまりにも凄惨な光景に、耐えきれず逃げ出してしまったんでしょうかねぇ」

中野「私もね、女房が化粧をする前の顔を見たら逃げ出したくなりますよ」


残虐の神「どこに居る!? 姿を見せろ――ッ!」


グ……グググググッ……!


残虐の神「う、おおおっ!?」


吉貝「どういう事でしょうか!? 折り畳まれたリングが、ゆっくりと開いていく――っ!」

600: 2018/07/06(金) 09:36:42.29 ID:KXsEVaf2o
吉貝「何が起こったのでしょうか! ここで、VTRで確認してみましょう!」


  ・  ・  ・


キン肉P『うおおおおおおおおっ――!』


残虐の神『残虐技! キャンバス・プレッサ――ッ!』


キン肉P『!』ボワァアアッ!!

キン肉P『どりゃああああっ!』

―ダンッ!


ありす『! 来ちゃ駄目で――』


キン肉P『私を信じろ、橘』


ありす『! はいっ!』


――グワッシァ!


  ・  ・  ・


吉貝「なんと! 満身創痍だったプロデューサーの体から炎が立ち上り!」

吉貝「もの凄い速さで、リング上の橘ありすちゃんの元へと駆けつけていた――っ!」

中野「しかし、それだけでは説明がつきませんよ~っ!」

中野「駆けつけても、一緒にぺちゃんこになっていてもおかしくありませんからね~っ!」


グ……グググググッ……!


キン肉P「――アイドルは……輝いていなければならない」

キン肉P「そのためならば、プロデューサーは……」



キン肉P「己をスポットライトとする事すら……厭いはしない」

パアアアアッ……!

601: 2018/07/06(金) 09:50:53.29 ID:KXsEVaf2o
残虐の神「バ……バカなっ!?」

残虐の神「キサマのどこに、そんな力が残されていたというのだっ!?」


吉貝「ああ――っと! 無事! 無事です!」

吉貝「プロデューサーも、橘ありすちゃんも健在です!」


キン肉P「怪我は無いか?」

ありす「はいっ!」ニコッ!

キン肉P「フッ……良い笑顔、そして返事だ!」

キン肉P「このように畳まれたリングには、勿体無い程に!」


キン肉P「どおおりゃああっ!」


ブウンッ!……ドスーンッ!


吉貝「そしてそしてっ! 元の四角に、畳まれたリングを跳ね上げて戻した――っ!」


キン肉P「少し待っていて貰えるか?」

キン肉P「私には、やるべき仕事が残っている」


ありす「……その格好で、ですか?」


キン肉P「何?」


ありす「クライアントが、最初に会うのは貴方です」

ありす「だから……もっと、ちゃんとしてください」


キン肉P「……フッ!」


キン肉P「ハーッハッハッハ! その通りだな!」


キン肉P「――身だしなみには、気をつけねばならんッ!」

602: 2018/07/06(金) 10:11:49.01 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「ひとまず、お前はリングの外に出ていろ」

ありす「お前じゃありません!」

キン肉P「ああ、すまんな、橘」

ありす「……それも、違います」


ありす「……ありすで良いです」


キン肉P「……ふむ」


キン肉P「――ならば、ありす! よく見ておくが良い!」

キン肉P「これから見せるのは、お前の……お前達の!」


キン肉P「プロジェクトクローネのプロデューサー!」


キン肉P「キン肉マン・プロデューサーの、まことの姿よ!」

――バサアッ!


キン肉P「クローネのイメージカラーは黒……」

キン肉P「ならば! 当然、私のファイティングスーツも――黒色のスーツ!」

ビシィッ!


キン肉P「そして、クローネとは、ドイツ語で王冠を意味する……」

キン肉P「しかし……私は、その王冠を投げ捨てた身」

キン肉P「故に! その首には、道を切り開くための剣――ネクタイを巻く!」

キュッ!


キン肉P「……そして、勘違いを正しておこう」

キン肉P「私には、力はほとんど残されていなかった……」


キン肉P「だがッ! プロデューサーとはッ!」


キン肉P「アイドルのためならば、何度でも立ち上がるッ!」


キン肉P「真のプロデューサーのスタミナは尽きる事は無いのだ――ッ!」

ゴォォォォオオオッ!

603: 2018/07/06(金) 10:29:05.12 ID:KXsEVaf2o
https://www.youtube.com/watch?v=Jugt7mldTRc


キン肉P「残虐の神よ……お前は、許されざる罪を犯した」


残虐の神「罪だとぉ?」


キン肉P「私の担当するアイドルに……危害を加えようとした事だッ!」

キン肉P「その様な行い、この私が断じて許さんぞ――ッ!」


残虐の神「ぬぐぐぐぐ……許さん、許さんぞ――ッ!」

残虐の神「神に対し、その無礼!」

残虐の神「すぐにでも、その減らず口を叩けぬようにしてやるわ――ッ!」

ダダダダダッ!


吉貝「ああ――っと! 残虐の神、プロデューサーへと迫るーっ!」

中野「今までの、いたぶるような感じではありませんねぇ~」

中野「すぐにでも、血祭りに上げようという殺気がこちらにも伝わって……おーっ、怖い!」


キン肉P「……お前の様な輩の相手は、当然業務に含まれている」

キン肉P「白紙に戻すなどと、生易しい事は……私は言わんぞ!」


キン肉P「……業火の――」

残虐の神「うおおおおおっ!」

キン肉P「――メガトンパンチッ!!」

ドゴォンッ!

残虐の神「うぶぇあっ!?」

ヨロヨロッ…


吉貝「プロデューサー! その突進に、カウンターで強烈なパンチ!」

中野「もの凄い音がしましたね~っ! あれは、尋常ではない衝撃ですよ~っ!」

604: 2018/07/06(金) 10:52:09.10 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「せいっ! そりゃああああっ!」

ガッ! ガッガッガッガッガッガッ!

残虐の神「ぐうっ、おっ、がっ、ぐああっ!?」


吉貝「続いて、火の出るような裏拳! そして、チョップ! チョップの連打、連打、連打――っ!」

中野「不思議ですね~っ! スーツを着て動きが制限されるどころか……」

中野「私の目には……ゴングが鳴ってから、今が一番最高の状態に見えますよ~っ!」


残虐の神「ぐ、うおおっ……!」

…スッ


吉貝「残虐の神! たまらずガードを固めるーっ!」


キン肉P「甘いわあッ!」

ドゴァアッ!

残虐の神「うぶふうっ!?」


吉貝「ああ――っと! しかし、プロデューサー!」

吉貝「ガードを上げ、がら空きになった残虐の神の腹部へ、ニーバズーカ――っ!」

中野「意識が上に行っていたので、綺麗に入りましたね~っ!」


キン肉P「ふんっ!」

ガシィッ!

残虐の神「う、おっ――!?」


吉貝「プロデューサー! 残虐の神の体を肩に抱え上げた! あの体勢は――」


キン肉P「どおおおりゃあああっ!」

ギュワアアアアッ!

残虐の神「おああああっ!?」


吉貝「エアプレーン・スピン! リング上に、炎の嵐が吹き荒れる――っ!」

605: 2018/07/06(金) 11:06:57.71 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「せえいっ!」

ブゥンッ!

残虐の神「う、おおおっ――!?」


吉貝「プロデューサー! 残虐の神を空高く放り投げた――っ!」


キン肉P「そうりゃっ!」

―トンッ!


吉貝「そしてそしてっ! それを追って、自らも跳び――」


キン肉P「ぬうんっ!」

ガキィ!

残虐の神「うぐうっ!?」


吉貝「残虐の神の両腕と両足を完全にロック! 何かの技の体勢に入った――っ!」

中野「あんな技、見たことも聞いた事もありませんね~っ!」


残虐の神「さ、させるものか~っ!」

グ…ググッ!

キン肉P「むうっ!?」


吉貝「ああ――っと! 残虐の神、強引にロックを外しにかかる――っ!」

中野「残虐の神は、一億パワーを持つ神ですからね~っ!」

中野「並大抵の技では、簡単に返してしまうでしょう!」


残虐の神「たかが超人風情が、神に逆らうなど片腹痛いわ――ッ!」

ググググッ…!

キン肉P「ぬおおおっ……!?」

606: 2018/07/06(金) 11:22:14.67 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「……!」

残虐の神「惜しかったなぁ! キン肉アタルよ!」

残虐の神「だが! やはりお前の力は本物だ!」

残虐の神「パワーは落ちるが……頃した後、その体を存分に使ってやろうではないか!」

ググググッ…!

キン肉P「う……おおおっ……!」



ありす「頑張ってください! プロデューサ――っ!」



キン肉P「!!」

ゴォォォオオオッ!!



キン肉P「業火のクソ力ぁ――ッ!!」

グワァキィ!

残虐の神「ぬぐぅおおおっ!?」

残虐の神「バ、バカなっ!? キン肉アタル……何故、そこまでのパワーが!?」

キン肉P「それは……今の私が、キン肉アタルでは無いからだ」

残虐の神「なんだとっ……!?」

ミシミシミシミシッ…!

残虐の神「ぐうおおおっ……!?」


吉貝「ああ――っと! 残虐の神の胸に、Aの文字が刻まれていく――っ!」

中野「落下時の空気抵抗が、残虐の神の胸に集中しているんですね~っ!」

607: 2018/07/06(金) 11:35:58.32 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「今の私は――キン肉マン・プロデューサー!」

キン肉P「誇り高い、プロジェクトクローネの担当よ――ッ!」

ミシミシミシミシッ…!

残虐の神「よ、よせ! この技を解くのだ!」

残虐の神「私が力を貸せば、全てが思いのままになるのだぞ!?」

残虐の神「考えなおすのだ! うぐうううっ!?」


キン肉P「……残虐の神よ」

キン肉P「この技は……全てを一瞬の内に焼き払ってしまうナパーム弾並の威力を誇る!」

キン肉P「お前の下卑た思惑も、これでおしまいだ――ッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴ…!


残虐の神「や、やめろおおおっ!」


キン肉P「これが答えだッ!」

キン肉P「――くらえいッ!」


キン肉P「ナパーム・ストレッチ!!」


ゴガアァァンッ!!


残虐の神「……!」

残虐の神「ぐぶふあっ!?」

…ドサリッ!


カンカンカンカンカ――ンッ!


吉貝「ここで、試合終了のゴングが響き渡る!」

吉貝「一億パワーの神を倒し、勝ったのは……キン肉マン・プロデューサーだ――っ!」

608: 2018/07/06(金) 11:57:32.95 ID:KXsEVaf2o
ありす「プロデューサー!」

タタタッ…!

キン肉P「……ありす、か」

ヨロヨロッ……ガクッ!

ありす「だっ、大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

キン肉P「ああ……言われるまでもない」


キン肉P「私は……まだ、お前達のLIVEを最後まで見届けてはいない」

キン肉P「LIVEが終わるまでは……プロデューサーだからな」


ありす「~~っ! はいっ!」ニコッ!



残虐の神「フフフフ……この残虐の神を倒すとは……見事なり……!」



キン肉P・ありす「!」


残虐の神「だが! キン肉星の大王の座を巡る、運命の戦いは……誰にも止められん!」


残虐の神「――予言しよう!」


残虐の神「キサマは、必ずやその戦いのリングに上がると!」


残虐の神「そして、その戦いの中で命を落とし……存在すらも消滅するだろう!」


残虐の神「フフフフ……ハーッハッハッハ!」

シュウウウウ…


キン肉P・ありす「……」

609: 2018/07/06(金) 12:15:43.36 ID:KXsEVaf2o
キン肉P「……すまないが、LIVEの続きを見るのは――」

ありす「っ!」


キン肉P「――日を改めさせて貰う」


ありす「えっ?」

キン肉P「何、放り出していた家の問題に、ケリをつけようと思ってな」

ありす「……」

キン肉P「それを片付けたら――」


キン肉P「――必ずや、此処へ戻ってくると……約束しよう」


ありす「……LIVEの途中なのに、長期休暇ですか」

キン肉P「そうなるな。だから、コレを預かっていて貰えるか?」

グイッ!…スッ

ありす「……Pのマスク……って、その下にもマスクを着けてたんですね」

キン肉P「プライベートに、仕事を持ち込むわけにはいかんだろう」

ありす「……」



キン肉P「――待てるか?」



ありす「……そんなの、聞かれるまでもないです」

ありす「だって……勝負はまだ、お預けって事ですから」

…ぎゅっ!

ありす「戻ってくるまでに……マスクを‘脱いでも良い’と思えるような……」



ありす「素敵なアイドルになって、待ってますから!」


https://www.youtube.com/watch?v=6n9oklEdKWg




おわり

610: 2018/07/06(金) 12:21:38.71 ID:w4CPGPXuo
ヒロインはありすだったか・・・

611: 2018/07/06(金) 17:38:47.06 ID:YXgmlr4Wo
抜十歳だったか……

612: 2018/07/06(金) 18:21:39.65 ID:JZ7Db/kSO
ゆで理論しか知らなくても面白い

引用元: 武内P「今日はぁ、ハピハピするにぃ☆」