942: 2018/07/16(月) 13:00:35.15 ID:crtiB4eCo

「本当に、良いのかい?」


 談話スペースの椅子に腰掛けながら、視線を向けずに言う。
 私の隣に座るのは、無口で表情に乏しく、不器用で……とても、誠実な男だ。
 彼もまた、色々と思う所があるのだろう。
 だが、それを踏まえて尚、下した決断を変えるつもりが無いのは、伝わってくる。


「はい」


 何とも短い返事じゃないか、ええ?
 ……いや、そうとしか、言えないのかも知れないね。
 もしも私が君の立場だったとしたら、恐らく、同じ様な返ししか出来なかったろう。
 それ程、君が決めたことは、とても重大な事なのだから。


「彼女達は、階段を登り始めました」


 彼の言葉に、一抹の寂しさを感じたが、それ以上に、喜びが勝っているようだ。
 シンデレラプロジェクトのメンバー達は、今ではもう立派なアイドルだ。
 輝くステージを眺めるのではなく、そこに立ち、自らも光り輝いている。


 憧れるだけの少女ではなく――憧れられる、シンデレラガールズとして。


「目指す場所は、同じですが……」


 彼女達は、日々、努力を重ねている。
 その方法はとても様々で、同じものはない。
 個性的なメンバー故か……いや、誰一人同じ人間が居ないのと同じで、当然だ。
 だからこそ、その輝きが合わさった時、目が離せない程の光景を産んだのだ。


「……もう、時計の針は動き出しましたから」


 目線を向けずとも、彼の口の端が上がっているのが、わかる。
 君も、彼女達と関わって、随分と変わったものだ。
 はっは! 無口な車輪では、いられなくなってしまったねぇ!


 だが、それで良い。



「シンデレラプロジェクトを解散します」



 君は、彼女達に魔法をかけたのだから。


 彼女達は、プロジェクトの枠組みがなくとも、立派に輝いていけるだろう。
 いや、むしろ、シンデレラプロジェクトの存在が、彼女達の枷になる可能性が高い。
 枠組みの中に収めるのも大事だが、彼女達は、籠の中に収まり切るような、
そんな単純なものではない――個性的な、メンバー達だからね。


「本当に、良いのかい?」


 再度、問いかける。


「はい。もう、決めた事ですから」


 低い声が、力強く、響いた。
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(12) (電撃コミックスEX)
943: 2018/07/16(月) 13:29:41.78 ID:crtiB4eCo

「そうか……もう、決めた……か」


 シンデレラプロジェクトの解散を阻止するために奔走して居た男が、
今度は、自らの手で、その幕を下ろそうとしているのだから、不思議なものだ。
 椅子に深く座り直し、缶コーヒーを傾ける。
 苦味と酸味が口の中に広がり、乾いた喉を潤す。


「時期は?」


 彼女達、シンデレラプロジェクトへの注目度は、高い。
 今のまま継続したとしても、十分に346プロダクションの主力としてやっていけるだろう。
 解散をするにあたって様々な要件をクリアーしなければならない。
 それに関しては、どう対応していくつもりだろうか。


「三ヶ月後……始動から、丁度1年目を予定しています」


 三ヶ月後、か。
 ……ふむ、何とか、ギリギリでスケジュールの調整が出来る頃合いだね。
 方方への根回しや、メンバー達の解散後の方針も整えるには、十分だ。
 だが、それには条件がある。


「……参ったねぇ」


 右手を首筋にやって、深く、ため息を吐く。
 彼女達の――アイドルの寿命というのは、長いものではない。
 夜空に輝く星々のように、見上げれば、輝き続けているものではないのだ。
 その、時間にすれば短いが、とても強い煌めきを届けるのが、私達の役目とは言え……だ。


「たまの飲みには、付き合い給えよ?」


 私だってね、もう若くは無いんだ。
 それに、つい先日、喫煙所の設置のために本気を出したばかりなんだ。
 それなのに、君、簡単に言ってくれるじゃないか、ええ?
 仕事漬けになるとは言え、息抜きくらいはしないとやっていられないよ!


「はい、喜んで」


 やれやれ、苦笑交じりに言うだなんて、本当に変わったね、君も。
 以前の、臆病になる前の君に戻ってきたと思っていたが、それは間違いだったようだ。
 そうだったとしたら、君は、仕事があるからと誘いを断っていただろうからね!
 随分とまあ、可愛げがなくなったものだよ、全く!


「はっは! なら、彼女も誘おうか?」


 けれど、こんな風にやられっぱなしなのも、面白くは無い。
 わかるだろう? この顔を見て、そして、この場面で言う、彼女とは誰の事か。
 そうそう、その顔だよ、その顔!
 ようし、これで一本取り返せたから、イーブンだね!


「……」


 右手を首筋にやりながら、困った顔をしている彼を見る。
 それにしても、あんなに素直だったのに、人とは変わるものだね。
 本当、誰に似たんだか。

944: 2018/07/16(月) 14:04:09.75 ID:crtiB4eCo

「彼女達は、解散を受け入れるかな?」


 シンデレラプロジェクトのメンバー達は、あの場所をとても大切に思っている。
 それは、数々の困難を乗り越え、そう思えるだけの場所にしてきたという証明でもある。
 直接的に関わることは無いにせよ、旗から見ても、それは明らかだ。
 彼女達は、その居心地の良い場所から、飛び立つ勇気があるのか。


「ええ、必ず」


 人の気持ちを察するのが、あまり得意では無い君が、断言するとは。
 ……よっぽど、自信があるのだねぇ。


 君が見つけたシンデレラ達に。


 信じるという行為は、時として、相手にとっては負担にもなり得る。
 過度な期待は、重圧となって、足を止め、押し潰してしまう要因にもなる。
 だが、彼はそうなるとは、微塵も思っていないようだ。


 自分のアイドル達を……信用ではなく、信頼しているから。


「プロジェクトの皆さんは、素晴らしい、アイドルですから」


 解散は、彼女達だけに限った話ではなく、彼にとっても、大きな節目になる。
 彼自身の保身の事を考えれば、プロジェクトの解散などもっての外だ。


 メンバー達の伸び代に目を瞑り、心地よい揺り籠の中で終えさせる。


 ……それだけで安泰な位置に、居るのだから。


「ああ、そうだね。その通りだ」


 しかし、彼はそうしない……いや、そうは出来ないのだろう。
 アイドルの事を第一に考え、己を危険に晒してでも、車輪を回し続ける。
 なんとも不器用な男じゃないか、ええ?
 私としては、部下にはもう少し器用に立ち回って貰いたいものだが。


「この事を他に誰が知っているんだね?」


 ふと気になり、聞いてみる。



「いえ、今は、部長だけです」



 何も聞かなかった事にしよう。
 ……君ね! こういう立ち回りは、もっと場面を考えたまえよ!
 危うく、飲んでいたコーヒーを吹き出す所だったじゃないか!
 しかし、何ともまあ……変わったものだね、君も。


「それだけかい?」


 何も言わずに笑顔で返事など、器用になったものじゃないか。

945: 2018/07/16(月) 14:49:45.67 ID:crtiB4eCo
  ・  ・  ・

「……ふぅ」


 勝ち取った喫煙所で、紫煙を吐き出す。
 白い煙が換気口に吸い込まれていくのをぼんやりと見つめる。
 この、何も考えず、頭を空っぽにする瞬間が、たまらない。
 禁煙? そんな事をしたら君、ストレスで氏んでしまうよ!


「……すぅ」


 あれから、少しだけ彼と今後について話した。
 とても大事な話だから、また、改めて話し合う必要があるがね。
 それでも、部下の考えを知っておくというのは、重要だ。
 彼は、ただでさえ表情がわかりにくいんだから。


「……ふーっ」


 唇をすぼめ、勢い良く煙を吐き出す。
 全く、この一本は、彼の話を聞く前に吸いたかったよ。
 至福の一本が、これからの激務に対しての、景気付けの一本に早変わりだ。
 ……はあ、格好を付けて、彼女には先に私から話を通しておくなどと、言わなければ良かった。


「……すぅっ」


 煙草を加え、思い切り煙を肺に吸い込む。
 燃える火の赤が広がり、灰になった箇所が広がっていく。


「……ふー……っ」


 大きく吐き出された煙が、またもや換気口に吸い込まれていく。
 灰皿の上で人差し指と中指に挟んだ煙草を親指で弾き、灰を落とす。
 もう一口……いや、もう、十分か。
 中程まで灰になったそれを縁に押し付けて火を消し穴に落とすと、
中に溜められている水に触れて、ジュワッと音を立てた。


「……」


 喫煙所を後にし、行きがけにあったゴミ箱に、空になった煙草の箱を潰して捨てる。
 その際、封を開けていなかった次の煙草のビニールも開け、捨てておく。
 灰皿にそのまま捨てる人も居るがね、私はあれはいかんと思うよ。
 風でチラチラと揺れて、気になって仕方ないからね。


「さあて」


 彼女には、この話をどう切り出したものかな。
 最近では、大分表情が柔らかくなってきたが、まだまだお硬い専務様だ。
 ……とほほ、昔はもう少し可愛げがあったと言うのに、なんともまあ。


 しかし、時が流れるのは、誰にも止められない。


 時間の流れは、誰にとっても、平等に変化をもたらす。
 その変化を幸と捉えるか、不幸と捉えるかは、自分自身で判断するしか無い。
 だが、確実に、変化しているのだ。
 変わらないものなど、何一つ、有りはしないのだから。


「……ふぅ」


 勿論、私だって変化しているよ!
 息が切れやすくなったのも、そう……って、放っておいてくれたまえよ!



つづく

979: 2018/07/17(火) 22:05:53.37 ID:SogqjvoCo

「どうして、その事を……先に、私達に?」


 美波ちゃん、とぉ~っても真面目な顔してゆ。
 きらりんもぉ、ビシッ!……ってした方が良いと思うにぃ。
 でもでも~……今、きらりんは、きらりんがどんな顔してゆかわからないの。
 アイドルは、ニ~ッコリすゆのがお仕事お仕事!


 ……だけどねぇ。


「新田さんと、諸星さんが、プロジェクトの中心メンバーだからです」


 ちょおっと前までぇ、美波ちゃんとお話してたんだゆ。
 Pちゃんがきらりん達を呼び出すなんて、何かな何かな~、って!
 うぷぷ! もしかして、ユニットを組むのかなぁって話してたにぃ。
 それとも、もっとも~っとハピハピなサプラーイズかなぁ、って!


 ……なのにねぇ。


「でも……プロジェクトを解散するだなんて……!」


 にょわぁ……とぉ~っても、とっても、ビックリしちゃったにぃ。
 Pちゃんが、シンデレラプロジェクトを解散すゆ、って。
 み~んなで頑張ってきたのに、そんな事言ったらメッ、だゆ!
 そんな意地悪言っちゃうお口は~、それっ! きらりんパワー!


 ……しちゃうんだゆ。


「それが皆さんにとって一番だと、そう、考えた結果です」


 ……うん、Pちゃんは、意地悪でそんな事しないもんねぇ。
 いつだってぇ、きらりん達の事を考えてくれてゆ。
 最初から……今も、それで、これからの事も、い~っぱい、いっぱい考えてくれてゆもんね。
 Pちゃんがそう決めたんなら、きっと、それが一番なんだよにぃ。


 ……でもね、胸がキュ~ッってしちゃうの。


「そんなの……何が一番かなんて、わからないじゃないですか!」


 きらりんね、シンデレラプロジェクトがす~っごく大好きだゆ!
 シンデレラプロジェクトがあったから、皆に会えたんだもん!
 色々……たっくさんあったよにぃ。
 でもねぇ、思い出すのって、キラキラハピハピな事ばっかり! うぇへへ!


 ……だからね。


「……きらりちゃん?」


 きっと、今一番さみすぃーのは、Pちゃんだと思うにぃ。
 美波ちゃんもぉ、さみすぃーがボボーンッってなっちゃってゆんだよにぃ。
 にょわっ! 美波ちゃんの手、スベスベのしっとりーん!
 これは、きらりんハンドでギュッとしちゃうよ~? にゃは!


「……うぇへへっ」


 美波ちゃんがこっちを見てゆから、笑顔笑顔!

980: 2018/07/17(火) 22:41:59.45 ID:SogqjvoCo

「美波ちゃん、そぉ~ん、な怖い顔しっ、たら……メッ、だっゆ!」


 笑顔の力で~、きらりんパワーオブスマーイル! それーっ!
 ……あるぇ~? きらりんパワーオブスマイル! スマーイルッ!
 う~ん、なんだか上手くいかないにぃ。
 それなら、もっとも~っと、パワー全開! それーっ!


「美、波ちゃ……んっ、はっ、リーダーだかっ……ら、にぃ……!」


 美波ちゃんは、シンデレラプロジェクトをす~っごく大切にしてゆ。
 だから、解散なんてダメダメ~! って思ったんだよにぃ。
 きらりんもね、美波ちゃんとおんなじ気持ちだゆ!
 ずっと皆で、楽すぃー嬉すぃーでハピハピしてたいのです!


「だか、っら……どん、な時も……えが、笑顔で……!」


 でもねぇ……きらりん、わかってたんだゆ。


 シンデレラプロジェクトは、み~んながハピハピな場所。
 だけど、ず~っと続いていくわけじゃないんだ~、って。
 だって、シンデレラプロジェクトは、


 『女の子の輝く夢を叶えるためのプロジェクト』


 ……だからにぃ。


「うっ、ぐ……ひっぐ、うっ、ふううっ……!」


 本当はね、きらりん、アイドルになろうなんて、夢にも思ってなかったんだゆ。
 だってだって、きらりんはちょぉ~っと……ううん、とぉ~っても、おっきぃから。
 きゃわいい、キラキラで、ハピハピな、アイドルになれるなんて思って無かったの。


「諸星さん……!」


 でもね、Pちゃんが魔法をかけてくれたんだゆ! うっきゃ~っ!


 ――笑顔です。


 あの一言から、きらりんの夢が始まったにぃ!
 今では、アイドルとしてLIVEにお仕事に大忙し! にょっわ~っ!


「きらりちゃんっ!」


 うぇへへ、美波ちゃんにギュ~ッとされちゃったにぃ!
 美波ちゃんは良い匂ーい!……なんだけど、お鼻がつまりんしてゆの。
 でもでも、もっとギュ~ッとして欲しいけど、お口も大忙し!
 『あんきランキング』で、杏ちゃんとトークをシュピーンって出来るようになったのに、


「う……ぅえっ、うええっ……っ!」


 うぇへへ……じょーずに出来ません。

982: 2018/07/17(火) 23:16:45.53 ID:SogqjvoCo
  ・  ・  ・

「にょわぁ……ごめんにゃーしゃー」


 シンデレラプロジェクトは、笑顔笑顔でぇハッピハピ☆
 なのに、きらりんが泣くのなんてぜぇ~ったいダメダメ!
 Pちゃん、きらりんを中心メンバーだって言ってくれてゆんだもん!
 ……きらりんが、中心かどうかはわからないけど――


 ――Pちゃんが言ってゆから、きっと、そうなんだよにぃ~☆


「――びしぃっ☆」


 だから、メソメソしてるきらりんなんて……ポーイッ! バイバイビー!


 顔の横に、右手を持ってきて、腰に手を当てて……きらりんポーズ☆
 きゅんきゅんパワーで、きらりんのせいでジメジメ~っとしたのを……ピカピカー!
 にょわわ……まだお鼻がちょっぴり通行止め、ピーンチ!
 だ・け・どぉ~! ピンチの時こそぉ~――


「うっきゃ~っ☆ きらりん、ふっかーつ☆」


 ――笑顔、笑顔!


 ……まだ、お目々の端っこが濡れてるのがわかるゆ。
 きっと、シンデレラプロジェクトが解散するのは、もう決まっちゃってゆ。
 それがわかっちゃったから、きらりんポロポロしちゃったにぃ。
 うっきゃ~っ! 恥ずかすぃー!


「Pちゃん、美波ちゃん……ありがとにぃ」


 本当は、美波ちゃんも泣きたかったよにぃ。
 でも、きらりんが先に泣いて……甘えちゃったぁ~。
 やっぱり、美波ちゃんはリーダーで、一番のお姉さん!
 頑張り屋さんで、い~っつも皆を笑顔に、ハピハピのために頑張ってゆ!


「だから……それーっ☆」


 にょっわー☆ おっかえっしだゆ~☆


「むぐっ……!?」


 今度は、きらりんがギュ~ッとする番だゆ☆


 きらりん達は、きっと、この先他の皆をギュ~ッってするからにぃ!
 ギュ~ッてして貰う時はいついつ? どこどこ? ってなっちゃう!
 だからねぇ、今のうちに甘えんぼ対決~! ふぁいとー、おー!


「……」


 背中をポンポンってしたら、スンスンって聞こえてきたにぃ。
 だから、きらりんはい~っぱい、ナデナデ、ポンポンしてあげたゆ。

983: 2018/07/17(火) 23:50:51.16 ID:SogqjvoCo
  ・  ・  ・

「……何か、質問はありますか?」


 きらりんと美波ちゃんが泣いちゃって……落ち着いて、ちょっとして。
 どうして、プロジェクトを解散すゆのか。
 解散した後、皆はどうなゆのか。
 そーゆー事をきらりん達におせーてくれたのです。


「は~いっ☆」


 でも、最初から、わからない事があったにぃ。
 だから、しっつもーん! 挙手ー!


「はい、何でしょうか?」


 Pちゃんが、真~っ直ぐきらりんを見てるにぃ。
 うぇへへ、そんなに見られたら、恥ずかすぃー☆
 だけどきらりんは、アイドルだから……ニコッ! きらりんスマーイルッ!
 笑顔の力で、ハピハピさせちゃうゆ☆


「美波ちゃんは、リーダーでしょぉ~?」


 でも、


「どうして、きらりんも中心メンバーなのぉ~?」


 きらりんじゃなくてぇ、もっとシッカリした子はいっぱい居るでしょお~?
 喋り方もちゃんとしてて、皆をグイッ、それ~っ! って引っ張れる子が。
 なのにね、どうしてきらりんなのかなぁ~って思ってたんだゆ。
 どうしてなのか、教えてぷり~ず! おにゃーしゃー!


「えっ?」


 えっ?……って、もぉ~! ぷんぷんっ!
 ちゃ~んと手を挙げて聞いたんだから、聞いてないとメッ、だゆ!


「きらりん、中心メンバーじゃないゆ?」


 そう言ったら、Pちゃんは右手を首筋にやって困りんぐしちゃったにぃ。
 にょわ~? 美波ちゃんの方を見てゆのは何で何で~?


「……ふふっ」


 Pちゃんと顔を見合わせてた美波ちゃんが、笑ったゆ!
 ……にょわにょわ、どうしてだろな~? なんでだろな~?


「きらりちゃんったら……ふっ、うふふっ!」


 小さな笑いが、どんどんおっきくなっていってるにぃ☆


「……にゅぷぷ!」


 にょわ~っ☆ きらりんも一緒に、ハピハピ☆ 笑っちゃお~っ☆

984: 2018/07/18(水) 00:18:47.66 ID:QzcBRJx2o
  ・  ・  ・

「……」


 お布団の中でゴロ~ンっ、寝返り~☆


「……」


 明日もお仕事だから、早く寝ないと!
 きゅんきゅんパワーで、皆をハピハピにすゆからにぃ!


「……」


 目を閉じたら……にゅぷぷ! 楽すぃー思い出ばっかり浮かんでくゆ!
 それは、と~ってもキラキラ☆ す~っごくハピハピ☆ キラキラハピハピ☆


 シンデレラプロジェクトが解散するまで――残り、三ヶ月。
 あと……三ヶ月しかない。



「――うぇへへ!」



 ――な~んて、きらりんは思わないにぃ☆


 まだ、三ヶ月もあるんだゆ!
 それだけあればぁ、もっとも~っとキラキラハピハピ出来るにぃ☆


「~♪」


 きらりんもね、寂すぃーとは思うゆ。
 でも、そう思って過ごすより……楽すぃーと思った方がお徳だと思うにぃ☆
 にゅぷぷ! きらりん、欲張りぃ~! うっきゃ~っ!


「……んふふ」


 そのためにはぁ、早く寝ないと! スヤスヤ~☆


「明日からもぉ、ハピハピするにぃ☆」



つづく
 

947: 2018/08/15(水) 22:39:29.34 ID:V0sj96NBo

「……」


 ダンスレッスン終了後の、クールダウンストレッチ。
 これをしておくだけで、疲れが残りにくいんだよねー。
 カリスマJKアイドルは、ヘバってる暇なんて無いし。
 いつだって、チョー最高の笑顔で、ファンの声援に応えなきゃ★


「……」


 だけど……そのアタシの妹――莉嘉の様子が、最近ちょっと変。
 前までは、ストレッチをしながらもギャーギャー言ってて、
トレーナーさんに怒られたりしてたんだケド、ね。
 でも、ちょっと前からそんな事は無くなって……今も、黙ってストレッチをしてる。


「……」


 理由は……まあ、わかってる。
 莉嘉が、346プロダクションに所属して、最初に参加した企画。


 シンデレラプロジェクトの解散時期……が、告げられたから。


「……」


 シンデレラプロジェクトは――『女の子の輝く夢を叶えるためのプロジェクト』……。
 メンバーの皆は、その目的の……ううん、それ以上の輝きを見せるまでに成長した。
 うかうかしてたら、今度は、アタシがバックダンサーに……って、それは無いか。
 後輩達に簡単に追い抜かされる程、アタシはゆっくり歩くつもりは無いしね★


「……」


 解散時期を聞いて帰ってきた日の莉嘉は――まるで、あっけらかんとしてた。
 きらりちゃんから、解散の時期については、前もって聞いてたんだよね。
 それで、聞いて帰ったその日は落ち込んでるかもしれないから、見てやって、ってさ。
 きらりちゃんの、ああいう所はアタシも見習わないと……じゃなくて!


「……」


 とにかく!
 莉嘉が、何を考えてるかがわかんない!
 前までは、顔を見ればすぐに何を考えてるかわかってたのに、サッパリ!
 何か……思いつめてなきゃ良いんだケド。


「……」


 ……うん。


 ウジウジ考えてるなんて、アタシらしくない!


「莉嘉ー? 帰り、どっか寄って帰らない?」


 そう言ったアタシに、莉嘉のヤツってば、


「えっ? デート?」


 なんて返してきて……ホント、誰に似たんだろ。

948: 2018/08/15(水) 23:12:50.72 ID:V0sj96NBo
  ・  ・  ・

「へっへー! お姉ちゃんのナゲット、一個もーらいっ☆」


 莉嘉はそう言うと、アタシの返事を聞く前に、
ひょいと手を伸ばしてナゲットを口に放り込んだ。
 ニコニコと、満面の笑みを浮かべる莉嘉。
 その表情のどこにも、暗い感情は感じられない。


「太るよー?」
「成長期だからダイジョーブ! だから、もう一個食べてもぉ――」
「ダーメ。アタシの分が無くなっちゃうでしょ」
「太るよー?」
「確かに。これ以上胸が大きくなったら、モデルの仕事が減っちゃうカモ」
「あっ! じゃあ、その時はアタシがモデルの仕事変わってあげる!☆」


 話してても、全然フツー。
 むしろ、前よりも元気が良いくらい。


「――ねえ、莉嘉」


 声のトーンを変えて、言う。
 それで、莉嘉も察したのか、


「――うん……何? お姉ちゃん」


 と、さっきまでとは違う――アイドルの顔になった。
 今までアタシが見てきた……アタシを見てきた、莉嘉じゃない。
 それにちょっと驚いて、シェイクを一口だけ飲む。
 そして、トレーにカップを置いて、


「シンデレラプロジェクトの解散まで、もう三ヶ月を切ったよね」


 本題を切り出した――



「あっ、なーんだ! その話?」



 ――んだ、ケド……えっ!? 軽くない!?


「もーっ! 急に真面目モードになるから、何の話かと思ったじゃん!」


 莉嘉は、そう言いながら、「もーらいっ☆」と、アタシのナゲットの二個目を頬張った。
 それを咎めるには、呆気にとられすぎていて、タイミングを逃がす。


「お姉ちゃん?」


 言葉を失うアタシを見て、莉嘉は視線を彷徨わせ、


「はいっ、お返し! ポテトだけど……あーんっ☆」


 自分のトレーの上のポテトを一本つまみ、食べさせようとしてきた。

949: 2018/08/15(水) 23:45:50.05 ID:V0sj96NBo

「ちょちょちょ……ちょっとタンマ!」


 そう言って、ポテトから逃げるように、体を引く。
 慌てるアタシを不思議そうに見つめながら、
莉嘉は、行き場を失ったポテトをパクリと口に咥えた。


「お姉ちゃん、どうしたの? なんか変だよ?」


 その上、アタシを心配するような事まで、言ってくる。


「莉嘉、アンタ……プロジェクトの解散に関して、どう思ってるの?」


 自然と、口調が強くなる。
 だって、莉嘉はシンデレラプロジェクトを本当に大切にしてる様に見えたし、実際にそうだったと思う。
 家でも、プロジェクト内での出来事を楽しそうに……本当に、楽しそうに語ってた。
 それなのに……この反応は、何なんだろう。


「へっ?」


 わかんない。
 アタシ、莉嘉が何考えてるか……わかんないよ。



「チョー寂しいよ」



 莉嘉は、そう言って、シェイクを飲んだ。


「……でも、もう決まっちゃってるんだもん」


 そして、ほんの一瞬だけ、悲しげな表情を見せ、



「――だったら、カッコカワイク! パーッと、最後まで楽しみたいじゃん☆」



 そんな悲しみを吹き飛ばす程の、笑顔を浮かべた。
 顔の横のピースサインが、驚く程キマってる。


「カッコイイじゃん、莉嘉」


 アタシが心配する必要なんて、どこにも無かった。
 莉嘉は、アタシが思ってる以上に、成長してた。
 それに気付かなかったのがちょっぴり悔しくて……でも、それ以上に嬉しい。
 ああ……ヤバい、テンションアガってきた。


「トーゼン!」


 アタシの妹は、


「アタシは、カリスマJCアイドル、城ヶ崎莉嘉だからね☆」


 サイコーだ!

951: 2018/08/16(木) 00:25:34.33 ID:rjA4yfWso

「成る程ね……だから、最近レッスンも真面目にやってるんだ」
「アタシはいつだって真面目ですぅ~!」


 なんて言いながら、笑い合う。


「アンタの事だから、解散したくなーい、ってストライキするかと思った」
「もっ、もーっ! その話はもうしないって約束したでしょー!?」
「アハハッ、ゴメンゴメン★ ナゲット、もう一個食べる?」
「えっ、良いの!?」
「太るよー?」
「成長期だからダイジョーブ☆」


 こうしてる分には、全然お子様って感じなんだけど、ね。
 でも、アタシが見てない所で、いつの間にか大きくなっちゃって。
 これも、アイツのおかげなのかな。
 ……結構、やるじゃん。


「……」


 シンデレラプロジェクトに、今まで外から関わってきて。
 たまに、もどかしい思いをさせられながら、ずっと見てきて。


「あっ、そうだ! ねえ、お姉ちゃん」
「ん、何?」


 色々あったケド、こんなに立派に成長したんだよね。
 アイツに……見守られながら。



「お姉ちゃんって、Pくんのコト好きなんだよね?」



 ……。


「はっ? えっ、ちょっ……はあっ!?」


 な、何を急に言い出すの、アンタ!
 アタシが、アイツを!?


「えっ? 違うの?」


 何で!?


「どうしてそう思うワケ!?」


 それに、何で急にそんな話になったの!?


「えっ? だって、よくプロジェクトルームに来てたし」


 それは、違……!


「そう言うのじゃないって!」


 マジで!

952: 2018/08/16(木) 01:16:56.17 ID:rjA4yfWso

「えっ、本当に?」
「本当に! もうっ、怒るよ!?」


 アタシは、シンデレラプロジェクトのために顔を出してたの!


「……なーんだ、つまんないの」
「つまんなくない。変なコト言わないでよね」


 アタシはアイドルで、アイツはプロデューサー。
 莉嘉が居なかったら、接点もあまり無い。
 あっ、そう考えたら……解散したら、もっと顔を合わす機会が減る、よね。
 まあ……だから、どうって話じゃないんだケド。


「……」


 気持ちを落ち着かせるため、シェイクを――



「お姉ちゃんとPくん、両想いだと思ってたのに!」



 ――口に――


「へへっ! な~んちゃっ――」


 ――含んだら、



「んぶふうっ!?」



 ――むせた。


「おっ、お姉ちゃん!?」
「うえっほ! おっほ! ごほっ! ごっほ!」
「だっ、大丈夫!? コレ! はい、紙ナプキン! コレ使って!」


 左手で口元を抑えながら、右手で差し出された紙ナプキンを受け取る。
 そして、極力メイクが崩れないよう、吸い取るようにして拭く。
 莉嘉は、椅子から立ち上がってアタシの横に来て、背中をさすってくれる。
 言いかけた言葉から察するに、ほんの、冗談のつもりだったんだろうね。


「ごっ、ゴメンね!? こんなに驚くと思わなくて!」
「けほっ……っこほっ……!」


 アタシは、返す言葉がなかった。
 だって、何でこんなに驚いたのか、自分でもわかんないし。


「う、うん……大丈夫……けほっ」


 シンデレラプロジェクトが解散したら、アタシはどうするんだろう。
 ハッキリとわからないケド……でも、これだけは言っておかなきゃ。


「今の、絶対……絶対! 誰にも言っちゃ駄目だからね!?」



おわり

912: 2018/10/03(水) 22:21:01 ID:oFGrBJ0.

 ――アイドル辞める!


「……」


 思い出しただけで、その場でのたうち回りたくなるような台詞だよ。
 いやまあ、実際にやったりはしないよ?
 だけど、その位には、私にとって記憶に残った出来事なんだよね。


「……」


 でも、実際に辞めはしなかったし、
今でも私のアイドルとしての活動は順調に続いてる。
 それと言うのも……まあ、プロデューサーのおかげかなって思う。


「……」


 事務所のソファーに腰掛けながら、首だけ振り返って後ろを見る。
 無表情で、大柄で、一見怖い。
 いやー! パッと見で、何の職業の人か当てられる人って居ないんじゃないかな?


 それが、私のプロデューサー。
 シンデレラプロジェクトの、プロデューサー。

913: 2018/10/03(水) 22:29:55 ID:oFGrBJ0.

「……」


 今も、真剣な顔でパソコンの画面と睨めっこしてる。
 笑っちゃ駄目って勝負なら、前までだったらずっと勝負がつかなかったかもね。
 だけどさ! 最近、ほんっと、たま~にだけど……笑うんだよ!
 プロデューサーの笑顔が見られた日は、ラッキーデー!……って位の頻度だけど。


「……」


 首をひねったままなのが少しきつくて、体勢を変える。
 ソファーの背もたれに両腕を重ねて置き顎を乗せ、
腰掛けの部分に膝立ちになって、プロデューサーを見る。
 うんうん! プロジェクトのために、真面目に働いとりますな~!


「……」


 ……なーんて、そりゃそうか。


「……」


 だって、私達――シンデレラプロジェクトの……解散LIVE。
 それが、もう目前まで迫ってるんだから。

914: 2018/10/03(水) 22:42:33 ID:oFGrBJ0.

「……」


 解散するって聞かされた時は……まあ、ぶっちゃけさ。


 ――もう、その時期なんだ。


 ……って思ったんだよね。
 ああいや、勿論さ!? 寂しいー、とか、ショックーとかは思ったよ!?
 だけど、それ以上に、そう思ったってだけの話ね。


「……」


 シンデレラプロジェクトの企画概要は、さ。
 『女の子の輝く夢を叶えるためのプロジェクト』……だから。
 多分……ううん、きっと。
 プロデューサーは、私達の夢を叶えたって判断した。


「……」


 全員が、それがわかった……わかっちゃったんだよね。
 だから、反対意見は出なかった、と思う。
 私は、まあ、その場では笑って……家に帰って、コッソリ泣いた程度。

915: 2018/10/03(水) 23:00:14 ID:oFGrBJ0.

「……」


 わかってはいるんだけど、私も年頃の女の子って事で!
 だけど、朝のミーティングで解散の時期が発表された時は頑張っちゃったなー!


 ――それじゃあ、解散LIVEはサイッコーのものにしないとね!


 って、笑顔で元気大爆発って感じでさ!
 ふっふっふ! お芝居の勉強をした甲斐がありましたな~!
 ……うん、その言葉に……嘘はなかったよ。


 ――もうちょっとだけ……このメンバーで続けても良いじゃん!


 ――解散する理由はあるかも知れないけど、する必要も無いって!


 ……とも思ったけど。


「……」


 あんなに真剣な顔で、私達の事を考えてくれてるんだもん。
 それに精一杯応えるのが、担当アイドルの務めってものじゃない?

916: 2018/10/03(水) 23:13:44 ID:oFGrBJ0.

「……」


 まっ、そう言う風に思えたのもさ、やっぱりアレだよ。
 辞めようと思ったからこそかな……って。


 もしも、あの時本当に辞めてたら。


 うーん……まあ、それはそれで楽しく過ごしてたんじゃないかな。
 今みたいに、レッスンでヘトヘトになる事も無いし。
 舞台監督に怒られる事も――あの人、超怖いの!――無いしね。


 だけど、今みたいにキラキラはしてなかった。


「……」


 いやまあ、彼氏とか作って、学生生活を満喫してたかもしれないよ?
 ……なんて、自分で否定しようとしてみるんだけどさ。


 ほら、私ってばアイドルの神様に目をつけられちゃってますから。


 見られてるからには、最高の笑顔をしてなきゃでしょ?

917: 2018/10/03(水) 23:23:34 ID:oFGrBJ0.

「……」


 もしかしたら、この場に私は居なかったかも知れないんだよね。
 そしてそれは、ユニットの……大切な、二人の友達も同じ。
 詳しいことは聞いてないけど、欠員が出て、その補充。
 滑り込みの、補欠合格ってやつですよ。


「……」


 そんな幸運を自分から手放そうとしちゃったんだもんなー。
 ……あ、やっばい、のたうち回りたい。
 おおっ……ぐ、うおおっ……セーフ!


「……」


 離しかけた手を取って、ここまで歩かせてくれた。
 そんな、私の――私達のプロデューサー。
 無口で、滅多に表情を変えないあの人は――


「……」


 ――最高の解散LIVEを見たら、どんな顔をするのかな。

918: 2018/10/03(水) 23:33:58 ID:oFGrBJ0.

「……? どうか、されましたか?」


 さすがに、ジッと見つめすぎたみたい。
 プロデューサーは、私が見ていることに気付いた。
 作業の手を止めさせちゃって悪いんだけど、
悪いついでに、聞いてみちゃおうかな。


「――解散LIVEの時にさ」


 プロジェクトルーム内の空気が、ちょっと変わる。
 なんとも言い難いこの空気になっちゃったけど、



「プロデューサー、泣く?」



 私は、笑顔でそれを吹き飛ばしながら、言葉を続けた。


「…………えっ?」


 あっはっは! プロデューサー、戸惑ってる!
 珍しい表情、いただきました!

919: 2018/10/03(水) 23:42:50 ID:oFGrBJ0.

「あの、仰っている意味が……よく……」


 右手を首筋にやりながら、困ってる。
 皆も、私に「何言ってるの」って視線を向けてる。
 良いね良いね! 楽しくなってきた!


「ほら、解散LIVEってさ……集大成なわけじゃん?」


 シンデレラプロジェクトの。
 私達が、これまで歩いてきた道の。


「絶対……最高のものになるってなわけですよ!」


 そして、


「だから、プロデューサーは泣かずにいられるかな、ってね!」


 私達が、これから歩いていく道の!


 シンデレラガールズとしての、第一歩を見て!

920: 2018/10/03(水) 23:54:09 ID:oFGrBJ0.

「それ、は……」


 プロデューサーに、視線が集まる。
 それに気付いて戸惑っちゃうのが、可愛い所だよねぇ。


「……」


 私達は、ずっとプロデューサーに「笑顔」って言われてきた。
 笑顔で、お客さんを――ファンの人を笑顔にする。
 その想いは変わらないし、これからもそうしていきたい。


「あの……み、皆さん……?」


 なのに、嗚呼! ごめんなさいプロデューサー!
 私ってば、本当に罪な女ね! よよよよよ……!


「ま、待ってください! 何を期待されているのですか……!?」


 貴方に、涙を流させたいと、皆に思わせちゃうだなんて!


 あはは! アイドルの神様は、きっと許してくれるだろうけどね!

921: 2018/10/04(木) 00:06:11 ID:iF52EWBM

「――まっ! それは本番までのお楽しみかな!」


 そう言って、ソファーにきちんと座り直す。
 きっと、背後ではプロデューサーが困ってるに違いない。


「ねっ、皆!」


 そう言うと、皆は口々に意気込みを語りだした。
 中には、スタッフさんに撮影をお願いしよう、なんて意見まで!
 考えるだけでワクワクするし、


 ――絶対、最高のLIVEにしよう。


 ……って、皆のやる気が一段階上がったね、間違いなく。
 まあ、ちょっと意地が悪いけど、そこはファンの人には見せませんよ。


「……ふふふっ!」


 だって、私達はアイドルだからね!


「あははははっ!」

922: 2018/10/04(木) 00:15:18 ID:iF52EWBM

 プロジェクトルームに、笑い声がこだまする。
 これなら、絶対に失敗はしない。
 だってさ、


「……良い、笑顔です」


 ……なんだもん!
 笑顔の力――パワー・オブ・スマイル。
 皆、こんなにも良い笑顔なんだから。


 ――超大成功するしか無いよね!


「――はいっ!」


 プロデューサーも、そう思うでしょ?


 だから、楽しみにしててよ!
 私達の――シンデレラプロジェクトの……最高のLIVEを!



つづく

947: 2018/10/23(火) 21:49:18.05 ID:735jcq23o

「……」


 皆の――アイドルの子達の私物が置かれていた、この部屋。
 シンデレラプロジェクトの、プロジェクトルーム――だった場所。
 今では、もうすっかり片付けがされていて、机やソファーには白いシートが。
 ついこの間まで、此処には笑顔が溢れていたのが、まるで嘘のみたい。


「……」


 けれど、それは本当のこと。
 シンデレラの――夢のような物語。
 女の子達は、お姫様になり、そして……羽ばたいて行った。
 それがとっても嬉しくて、ほんのちょっぴりだけ、寂しい。


「……」


 壁にかけられたホワイトボードは、そのまま残してあった。
 それには、一緒に歩んできた事への感謝。
 そして、未来への想いが、カラフルに、個性的に綴られている。
 名前が書かれていなくても、誰が書いたかわかっちゃう程に、ね。


「……っとと、いけないいけない」


 思い出に浸っている暇は無い。
 だって、思い出話ばっかりしてたら、すぐに時間が過ぎちゃいますから。
 私達は、これからも見守っていくんですもの。
 成長していく、アイドルの子達の姿を。


「……」


 半分地下の、専務――あの時は常務だった――に言われて移動になった、この部屋。
 上階の、設備も新しく、綺麗だった最初のルームと比べると、やっぱりグレードは落ちる。
 でも、私はこの部屋が気に入っていた。
 だって、この部屋はプロデューサーさん専用のルームが無いから。


「……」


 電気を消して、ドアノブに手をかけながら、もう一度部屋を見渡す。
 薄暗く、陽の光もあまり差し込まない、追いやられた場所。
 私だって、最初はムッとしましたよ?
 ダンボールに入った資料も散乱してて、ひどい有様だったんですから!


「……」


 それをプロジェクトの皆で片付けて、掃除して。
 めげずに、前向きに。
 トラブルもあったけど、一丸となって乗り越え、やり遂げた。


 プロデューサーさんとメンバーの14人は。
 シンデレラプロジェクトを成功させたのだ。


「……」


 ドアを閉め、鍵をかけた。

949: 2018/10/23(火) 22:20:32.71 ID:735jcq23o
  ・  ・  ・

「――千川さん」


 廊下を歩いて居ると、前から、よく知った人が。
 背が高くて、声が低くて、真面目で。
 無表情……とは言わないまでも、感情をあまり表に出さなくて。
 不器用だったのが、ほんの少しだけ器用になった、


「プロデューサーさん」


 元、シンデレラプロジェクトの、プロデューサーさん。
 アイドルのプロデュースは続けているから、
こう呼ぶのは、別に不自然な事じゃない。
 それに、今更名前で呼ぶのも、気恥ずかしいものがある。


「あの部屋、少し掃除すれば大丈夫ですよ」


 ニコリと笑いかけながら、確認してきた事を報告する。
 それを聞いて、プロデューサーさんは右手を首筋にやった。
 ほんの少しだけ下がった眉尻と、ほんの少しだけ上がった口角。
 この人の笑顔は、とても優しい。


「そう……ですか」


 その様子が、おかしくって。
 込み上がってくる笑いを左の手の平で隠しつつ、
右の手を上げ、人差し指をピンと立てて、


「ふふっ、先回りです♪」


 してやったり、という表情でプロデューサーさんの顔を見上げた。
 本当の所は、偶然なんですけどね。
 それでも、先んじて行動出来たという事は、喜ばしい。
 だって、アシスタントとして優秀に感じるでしょう?


「一緒に確認を……と」


 そう、思っていたのですが……なんて。
 プロデューサーさんは、右手を首筋にやったまま、言った。
 この人の中では、そういう予定でいたらしい。


 ……もう、それならそうと、先に言っておいてください。


「……」


 プロデューサーさんにクルリと背を向ける。
 そのまま、努めて冷静な口調で、言う。


「ほらっ、行きましょう、プロデューサーさんっ」


 ……つもりだったのに、声が少し跳ねてしまった。
 今の私の表情と心情が、伝わってしまったかと思う程度には。

950: 2018/10/23(火) 22:47:09.30 ID:735jcq23o
  ・  ・  ・

「……それで、どちらにするつもりですか?」


 346プロダクションの敷地内にあるカフェの端のテーブル。
 正面に座るプロデューサーさんに、質問を投げかけた。
 どちら、というのは、ルームの事。


 シンデレラプロジェクトの――二期。


 その、二期生のためのプロジェクトルームをどこにするかの選択肢。


「正直、迷っています」


 あまりにも素直なその答えに、少し意表をつかれた。
 前までなら、「迷っている」とは言わず、「検討中」と答えていたから。
 驚きが顔に出てしまったのか、プロデューサーさんと目が合い、止まる。
 そして、数秒間の沈黙の後、



「千川さんは、どちらが良いと思いますか?」



 私に、意見を求めてきた。
 これまでも、事務的な事で意見を求められる場面は、何度もあった。
 けれど、今回の質問は……かなり、重要なもの。


 一年間に渡るプロジェクトの活動場所。


 それをどこで過ごしたいか、聞かれている。


「えっ、と……」


 さすがに、言い淀んだ。
 私は、あくまでもアシスタントだ。
 プロデューサーさんのお仕事をサポートするのが役割であり、
私の意見が直接アイドルの子達に関わってくるとなると、範疇を越えている。


「あくまでも、参考までに……ですので」


 なんて言ってるけど、わかってしまう。
 この人は、私の意見を重要視する……してくれる。


「……」


 だから、考える。
 考えて、考えて、考えて、考えて――結果、



「上階の、一期生の子達が、最初に使っていたルームです」



 そう、答えた。

951: 2018/10/23(火) 23:32:52.55 ID:735jcq23o

「……」


 ほんの少しだけ渇いた喉を潤すため、紅茶を一口。
 音を立てないよう、カップをソーサーにそっと置いた。
 紅茶はあまり詳しくないけれど、ここの紅茶は美味しい。
 今後のために、少し勉強してみようかしら。


「私、あのルームも好きなんですけど」


 一拍置き、


「でも、二期生の子達がそう思ってくれるかは……」


 正直、自信がない。
 過ぎ去った時間は、記憶を美化してしまう。
 思い出があるから、あそこは、かけがえの無い場所に感じられるのだ。
 だけど、やっぱり、


「客観的に見たら、広くて綺麗な方が良いんじゃないかな、って」


 ルームを主に使用するのは、二期生の子達。
 私の――私達の思いは、関係が無い。
 だったら、より良い環境を提供するのが、望ましい。
 346プロは――大手プロダクションなんだから。


「……」


 それに、本人には言えないですけど……プロデューサーさん、顔、怖いですから。
 プロジェクト始動時の親密度が低い状態だと、
アイドルの子達もきっと萎縮しちゃうと思うんですよね。
 勿論、私はそんな事ありませんけど。


「ありがとうございます。大変、参考になりました」


 ……ほら、やっぱり!
 気軽に答えちゃ、駄目な質問だったじゃないですか!


「はい、それなら良かったです」


 多分だけど、プロデューサーさんも私と同じ結論だったんだと思うんです。
 それを決定事項と判断するだけの材料が足りなかったんですよね?
 だから、私に――アシスタントに、意見を求めた。
 ですよね、プロデューサーさん?


「ええ、貴女の意見は重要ですから」


 ――アイドルの方達は女性なので、貴女の考えも聞きたかった。
 ――それに、これからも一緒に成長を見守っていくのだから。
 ――私一人で決めるのは、正しいとは思えなかった。


「……」


 ……なんて、そんな事を真剣にプロデューサーさんは語り出した。
 ピカピカに磨かれたカフェの窓ガラスには、
思わず頬を赤く染めた、アシスタントらしからぬ笑顔が映っていた。



 この時の会話があらぬ誤解を招き、その日の午後は仕事にならなかった。
 魔法使いさんも、誤解を解く魔法は使えないらしい。



おわり

952: 2018/10/23(火) 23:59:01.31 ID:GeNF94f1O
高層階も、地下も自由に行けても
誤解だけはままならなかったのか

953: 2018/10/24(水) 00:52:36.99 ID:hu3QiQGA0
ちひろさんとは一緒に続いていくんやな

58: 2018/10/27(土) 21:50:44.49 ID:tpe1QzXHo

「……」


 シンデレラプロジェクトのプロデュースをして、一年。
 この一年は、本当に色々な事があった。
 そう……本当に、色々な事が。


「……」


 オーディションとスカウトで集められたメンバー。
 誰もが個性的で、それぞれ、全く違う輝きを放つアイドル達。
 その、眩い光に照らされて、私にも変化があった。
 貴女達に変えられてしまった、と言ったら、彼女達はどんな表情をするだろうか。


「……」


 やはり、笑顔だろう。
 14人が、別々の想いを込めた笑顔を向けてくるに違いない。
 私は、プロデューサーだ。
 アイドルの方にプロデュースされてしまうとは、とんだ笑い話だと、そう、思う。


「……」


 デスクの上の資料ファイルに指を滑らせる。
 タイトルは『シンデレラプロジェクト』。
 この中には、この一年の、彼女達が歩いてきた軌跡が詰まっている。
 勿論、全てではないし、一冊のファイルに収まり切る程、
彼女達は容易く、軽快に階段を登ってきた訳ではないが。


「……」


 時に挫折し、苦悩し、涙を流した時もあった。
 すれ違いも、衝突も、危機も無かったとは言えない。


 だが、それがあったからからこそ、今の彼女達があるのではないか。


「……」


 何の壁にもぶつからず、ただ、決められたレールの上を走る。
 そこに、本人の意志は存在せず、強引に道を歩ませていく。
 ……昔の私は、そういった面があったかも知れない。
 かつて、私の元を離れていってしまった彼女達は、それを嫌ったのだろう。


「……」


 椅子に、深く座り直す。
 そして、もう一冊のファイルに、手を伸ばす。
 タイトルは『第二期、シンデレラプロジェクト』。
 表紙を開き、中のプロフィールを順に見ていく。


「……」


 今度は、決して手を離さないと、心に誓う。
 見つけて、見失い……そして、また探し出した、シンデレラ達の手を。

59: 2018/10/27(土) 22:31:07.95 ID:tpe1QzXHo
  ・  ・  ・

「――おや」
「部長」


 プロダクション内にある、休憩スペース。
 その、自販機の前で、今西部長と出会った。


 ――カタンッ。


 缶が落ち、音を立てた。
 恐らくだが、缶コーヒーで、喫煙所に煙草の供として持っていくつもりだろう。
 喫煙所の設置に関して、部長は本当に努力されていたので。


「缶コーヒーで良いかい?」
「いえ、部長、それは……」
「なあに、遠慮するな」


 部長は、鼻歌を歌いながら小銭を投入し、自販機のボタンを押した。


「ちょっと、小銭がいっぱいになってしまってね」


 そう言いながら、こちらにコーヒーの缶を差し出してくる。
 一瞬躊躇ったが、先の物と合わせてコーヒーの缶は二つ。
 受け取らないわけにもいかず、ここは、お言葉に甘えておこう。


「ありがとうございます」


 感謝の言葉。
 言うべき場面、当たり前の事にも関わらず、何故か部長は少し驚いた顔をしていた。
 私の反応は、驚くようなものだっただろうか。
 気が付かない内に、私の知り得ない何かをしてしまったのだろうか。


「……ああいや、すまんすまん」


 口を開きかけた所を部長に制止された。
 その顔には――笑顔が。
 ニコニコと、人の良さそうな笑みが浮かんでいた。
 一体、どういう事だろうか。


「すみません、ではなく……ありがとうございます、が来るとは思わなくてね」
「えっ?」


 言われて、ふと、気付く。
 以前の私だったならば、部長の言う通りの反応をしていただろう。
 それが、意識せずに、似ているようでまるで違う言葉が口から出た。
 小さいようで、とても、大きな変化。


「……」


 何と言っていいかわからず、右手を首筋にやり、言葉を探す。
 思えば、この癖も部長と接する内に、いつのまにか染み付いていた。
 先程の変化も、恐らくは、彼女達の影響だろうと思う。
 しかし……どう、返したものか。


「きっと、彼女達の影響だろうねぇ」


 自分の中で思い至った結論を言い当てられ、より一層、返しに困る。
 部長は、そうなるとわかっていて、先の発言をしたのだろう。
 この人は、私を試し、からかうような事を時折する。

60: 2018/10/27(土) 22:32:33.78 ID:tpe1QzXHo
  ・  ・  ・

「――おや」
「部長」


 プロダクション内にある、休憩スペース。
 その、自販機の前で、今西部長と出会った。


 ――カタンッ。


 缶が落ち、音を立てた。
 恐らくだが、缶コーヒーで、喫煙所に煙草の供として持っていくつもりだろう。
 喫煙所の設置に関して、部長は本当に努力されていたので。


「缶コーヒーで良いかい?」
「いえ、部長、それは……」
「なあに、遠慮するな」


 部長は、鼻歌を歌いながら小銭を投入し、自販機のボタンを押した。


「ちょっと、小銭がいっぱいになってしまってね」


 そう言いながら、こちらにコーヒーの缶を差し出してくる。
 一瞬躊躇ったが、先の物と合わせてコーヒーの缶は二つ。
 受け取らないわけにもいかず、ここは、お言葉に甘えておこう。


「ありがとうございます」


 感謝の言葉。
 言うべき場面、当たり前の事にも関わらず、何故か部長は少し驚いた顔をしていた。
 私の反応は、驚くようなものだっただろうか。
 気が付かない内に、私の知り得ない何かをしてしまったのだろうか。


「……ああいや、すまんすまん」


 口を開きかけた所を部長に制止された。
 その顔には――笑顔が。
 ニコニコと、人の良さそうな笑みが浮かんでいた。
 一体、どういう事だろうか。


「すみません、ではなく……ありがとうございます、が来るとは思わなくてね」
「えっ?」


 言われて、ふと、気付く。
 以前の私だったならば、部長の言う通りの反応をしていただろう。
 それが、意識せずに、似ているようでまるで違う言葉が口から出た。
 小さいようで、とても、大きな変化。


「……」


 何と言っていいかわからず、右手を首筋にやり、言葉を探す。
 思えば、この癖も部長と接する内に、いつのまにか染み付いていた。
 先程の変化も、恐らくは、彼女達の影響だろうと思う。
 しかし……どう、返したものか。


「きっと、彼女達の影響だろうねぇ」


 自分の中で思い至った結論を言い当てられ、より一層、返しに困る。
 部長は、そうなるとわかっていて、先の発言をしたのだろう。
 この人は、私を試し、からかうような事を時折する。

61: 2018/10/27(土) 23:15:45.80 ID:tpe1QzXHo
  ・  ・  ・

「……」


 廊下を歩いていると、前方から長身の女性――美城専務が。
 彼女とは、何度も衝突した。
 アイドルのプロデュース方針で……何度も。
 その方針の違いは今でも変わらず、しばしば、軽い口論のようにもなる。


「……」


 美城専務の改革は、成功したと言えるだろう。
 経営者としての彼女は、非常に優秀だ。
 強引な手法を取りながらも、寛容さも持ち合わせている。
 ロマンチシズムとリアリズムが、同居している方だ。


「……」


 彼女のプロデュース方針は、間違っているとは言えない。
 経営者としては当然の選択であるし、
多くのファンの方を得るという事に関しては、最短のルートとも言える。
 利益を出す、という点に関しては、正しい。
 時に、それがアイドルの方の意思を蔑ろにしてしまうのが難点だが。


「……」


 だからこそ、私達が――プロデューサーがいる。
 会社のために動く経営者ではなく。
 アイドルの方のために動く存在として。
 ……会社人として間違った考え方だろうが。


「……」


 それらを理解した上で、美城専務は経営に携わっている。
 彼女からしたら、私が一番問題のある人間なのかも知れない。
 しかし、その問題をこそ、彼女は望んでいるのでは無いかと思う節もあるのだ。
 そうでなければ、今、私はこの廊下を歩いては居ないだろう。


「おはようございます」


 距離が近づき、挨拶をした。


「ああ、おはよう」


 専務もまた、それに返した。
 すれ違いざま、チラリと私の首元に目をやったのは、身だしなみの確認か。


 ――クライアントに最初に会うのは、アイドルではなく君だ。


 かつて言われたあの言葉に従い、注意を払うようにしている。
 口元が微笑んでいた様に見えたのは、満足して頂けたからか、
それとも、彼女の態度が丸くなったと、そういう理由だからかは、わからない。


「……」


 私達は平行線ではあるが、彼女から学ぶ事は、多い。
 特に、その平行線を超えてくる、アイドルの方に関する事は。
 だが、意識してお互いあまり話さないようにはしている。
 ポエムバトルと言われるのは、私も専務も御免だからだ。

63: 2018/10/28(日) 00:00:08.66 ID:Y5yjIzLeo
  ・  ・  ・

「……」


 346プロダクションの、玄関ホール。
 以前はプロジェクトクローネの垂れ幕だけに染められていたが、今は違う。
 あれは、現在進行中の、別のプロジェクトのものだろう。
 いずれは、あそこにもシンデレラプロジェクトの、第二期のものがかかる予定だ。


「……」


 346プロダクションの外観は、少し、威圧感を感じる。
 その大きさと、大手プロダクションという肩書が、そうさせるのだろう。
 正に、城と表現するに相応しい。
 この城から、お姫様達――シンデレラ達は、階段を登っていく。


 時に、手を引き。
 時に、手を引かれ。
 時に、見守りながら。


 私は、それを誇りに思う。


「……」


 自分自身の力で笑顔を引き出す……それが力になる。
 笑顔の力――パワーオブスマイル。
 私達、プロデューサーが作ったものではない。


 アイドルの方の、本物の笑顔が魅力なのだ。


 ……と、そう、考えている。
 プロデューサーの仕事とは、それを引き出す手助け。
 そのためならば、おとぎ話の様に、魔法をかける事も厭わない。
 ……実際は、私は魔法など使えず、逆に助けられる場面も多いが。


「……」


 それでも、私は――毎日が楽しい。
 夢中になっている……夢中になれるものを探している――


 ――アイドルの方達を見続けているのだから。


 働きすぎ、仕事のしすぎだと言われてしまう時もある。
 しかし、ライフワークなのだから、仕方がない。



「プロデューサー!」



 正面玄関のドアが開き、アイドルが――シンデレラの方が、入ってきた。
 光を浴び、そして、自らもキラキラと輝くその姿を見て、



「良い、笑顔です」



 笑顔で言った。



おわり

64: 2018/10/28(日) 00:04:41.44 ID:Y5yjIzLeo
こんなくだらないもん最後の最後まで読んでくれてありがとう


良い一年だった!!!!!!

65: 2018/10/28(日) 00:19:07.39 ID:cjbaxfkT0
これで完結なのかな?大量のクオリティの高い作品達を楽しませてもらいました、お疲れ様でした

引用元: 武内P「今日はぁ、ハピハピするにぃ☆」