127: 2018/07/20(金) 22:06:08.89 ID:ddppTFcpo
「「ケンカ?」」
正直に言いなさい、って言われたから、本当の事を言ったのに。
早苗さんも、瑞樹さんも、信じられないという顔でこっちを見てる。
一度顔を見合わせたと思ったら、また、私に視線を向ける。
缶コーヒーの縁を指でなぞりながら、同じことを言う。
「はい。彼と……些細なことで、ケンカを」
普段は、ほとんどそういう事は無いのだけど。
……でも、やっぱり駄目ね。
一緒に生活するとなると、それにあたって、考え方の違いが出てくる。
今回のケンカの原因も、それ。
「二人がケンカ……って」
「……想像出来ないわ」
これでも、ちょっとした事での言い合いはするんですよ?
どれも、小さな事で……すぐ、仲直りしますけど。
だって、彼ったら、すぐに私を優先しようとするんですもの。
支え合っていくって、そういう事じゃないと思うんです。
「長引きそうなの?」
早苗さんが、横に座りながら、聞いてくる。
その表情は心配そうで、それが、ちょっと心苦しい。
だって、きっとケンカの原因は、人から見たら大した事じゃないんですもの。
言ったら、そんな事でケンカしたらタイホ、って怒られちゃうかも。
「どうでしょう……わかりません」
これに関しては、お互い譲るつもりがないんです。
だから、余計に話がこじれちゃって。
お仕事中、顔や態度に出さないように気を遣っていたつもり。
でも、この二人には、バレちゃうのね。
「良ければ、話してみない?」
瑞樹さんが、早苗さんとは反対側に座りながら、聞いてくる。
その表情は優しげで、それが、ちょっと嬉しい。
だって、こんな風に気兼ねなく接してくれる人は、とっても少ないから。
そんな、素敵なお友達が居る事は、とても幸せだと、そう、思う。
「……居酒屋で?」
なんて言ったら、
「「んっ!」」
と、両側から、肩で小突かれた。
「……ふふっ!」
そのせいで……ううん、おかげで、笑みがこぼれた。
128: 2018/07/20(金) 22:45:33.75 ID:ddppTFcpo
・ ・ ・
「これなんか、どうですか?」
「いえ、二つに分けましょう」
当然、受け入れられると思った提案が、却下された。
彼の発言に驚いて、カタログに向けていた顔を上げる。
向けた視線の先には、平然とした、彼の顔がある。
自分の発言が、当り前の事だと思っている時の表情で。
「? どうか、されましたか?」
キョトンと、こっちを見ている。
私の指は、まだ、二人が一緒に寝られる大きなサイズのベッドから、動いていない。
今は、どんな家具にしようかと、カフェで相談中。
とっても楽しい時間だったのに、どうして、そんな事を言うのかしら。
「そのお話、お受け出来ません」
絶対に、ベッドは一つです。
見てください、このベッド。
二人で寝ても十分に広いし、背の高い貴方も、ゆっくり出来ますよ。
シーツを替えるのがちょっと大変そうだけど……でも、それだけです。
「……」
彼は、困ったような顔をして、右手を首筋にやった。
そして、ビシッと人差し指をカタログに突き立ててる私の左手を取り、優しく持ち上げた。
そのまま、ツイッと横に滑らせて――トスリ。
隣のページの、シングルサイズだけど、大きめなベッドの位置に、置き換えた。
「……むー」
カタログに接した指先を支点に、左手をグリグリと動かして、抗議。
すると彼は、また、私の左手を包み込み、さっきと同じ様に移動させていく。
ふふっ! 寝具にシングルベッドは使いません……うふふっ!
トスリ。
指先が、さっきの場所のすぐ近く……シングルベッドの位置に、置かれた。
「……むーっ!」
今度は、指を動かさずに、目で抗議する。
子供っぽいとは思うけれど、少し、ほっぺたも膨らませて。
だって、こういう風にした方が、私の意見を聞いてくれるんですもの。
……下手に口を開いたら、説得されちゃうかもしれないでしょう?
「その……ですね」
彼は、ベッドを分ける理由を語りだした。
帰りが遅くなった時、先に眠っている貴女を起こしてしまうかも知れない。
眠る時は、一人の方がゆっくり眠れるだろう。
そうやって、色々と、ベッドを分けるメリットを言ってくる。
「一緒が、良いです」
お互いお仕事があるから、一緒に居られる時間が少ないんだもの。
寝る時くらい一緒で……目が覚めたら、すぐ近く、手の触れられる所に居て欲しいの。
「これなんか、どうですか?」
「いえ、二つに分けましょう」
当然、受け入れられると思った提案が、却下された。
彼の発言に驚いて、カタログに向けていた顔を上げる。
向けた視線の先には、平然とした、彼の顔がある。
自分の発言が、当り前の事だと思っている時の表情で。
「? どうか、されましたか?」
キョトンと、こっちを見ている。
私の指は、まだ、二人が一緒に寝られる大きなサイズのベッドから、動いていない。
今は、どんな家具にしようかと、カフェで相談中。
とっても楽しい時間だったのに、どうして、そんな事を言うのかしら。
「そのお話、お受け出来ません」
絶対に、ベッドは一つです。
見てください、このベッド。
二人で寝ても十分に広いし、背の高い貴方も、ゆっくり出来ますよ。
シーツを替えるのがちょっと大変そうだけど……でも、それだけです。
「……」
彼は、困ったような顔をして、右手を首筋にやった。
そして、ビシッと人差し指をカタログに突き立ててる私の左手を取り、優しく持ち上げた。
そのまま、ツイッと横に滑らせて――トスリ。
隣のページの、シングルサイズだけど、大きめなベッドの位置に、置き換えた。
「……むー」
カタログに接した指先を支点に、左手をグリグリと動かして、抗議。
すると彼は、また、私の左手を包み込み、さっきと同じ様に移動させていく。
ふふっ! 寝具にシングルベッドは使いません……うふふっ!
トスリ。
指先が、さっきの場所のすぐ近く……シングルベッドの位置に、置かれた。
「……むーっ!」
今度は、指を動かさずに、目で抗議する。
子供っぽいとは思うけれど、少し、ほっぺたも膨らませて。
だって、こういう風にした方が、私の意見を聞いてくれるんですもの。
……下手に口を開いたら、説得されちゃうかもしれないでしょう?
「その……ですね」
彼は、ベッドを分ける理由を語りだした。
帰りが遅くなった時、先に眠っている貴女を起こしてしまうかも知れない。
眠る時は、一人の方がゆっくり眠れるだろう。
そうやって、色々と、ベッドを分けるメリットを言ってくる。
「一緒が、良いです」
お互いお仕事があるから、一緒に居られる時間が少ないんだもの。
寝る時くらい一緒で……目が覚めたら、すぐ近く、手の触れられる所に居て欲しいの。
129: 2018/07/20(金) 23:24:05.99 ID:ddppTFcpo
・ ・ ・
「お兄さ――ん! 生! 大ジョッキで!」
「二つで! 飲まなきゃやってられないわ!」
早苗さんと瑞樹さんが、大声で注文する。
二人は、さっき来たばかりの唐揚げを自分のお皿に取り、
早苗さんはそのままで、瑞樹さんはレモンを絞って、パクリと一口で頬張った。
やっぱり熱かったのか、ちょっとだけ顔を歪めた後、
半分ほど残っていたジョッキの残りを盛大に飲み干し、
「「――ノロケか!」」
口を揃えて、言った。
私としては……そんなつもりは無かったんですけど。
だって、ベッドを分けようなんて言われたんですよ?
それが、どうしてノロケになるんですか、もうっ。
ちょっとムッとしちゃって、お猪口に残っていた日本酒をクイッと飲み干す。
「まあ、そうは言っても、重要な事よね」
「わかるわ。ノロケなのは、置いておいて」
二人が、うんうんと、頷いてる。
……てっきり、そんな事でケンカするなと言われると、思ってたんですけど。
もしかして……このまま、彼を説得するのを手伝ってくれるのかしら?
ふふっ! 強力な、協力者ね……うふふっ!
「ベッド、分けるべきよ」
「ええ、その方が良いわ」
えっ?
「えっ……と、待ってください」
もしかして、早苗さんも瑞樹さんも……彼の味方をするんですか?
「だって、ねえ? 帰りが遅くなった時、起こしちゃ悪いじゃないの」
私は、むしろ起こして欲しいです。
美容のために夜更かしは出来ないけれど、せめて、「おかえりなさい」は言いたい。
その位なら何の苦にもなりませんし、全く問題ありませんから。
「眠る時は、一人の方がよく眠れるもの。むしろ、寝室も分ける?」
寝室も分ける!?
瑞樹さんは、どうしてそんな怖い事を言うんですか!?
あぁ……ビックリしちゃった。
「だって……」
「……ねえ?」
目を見開いて、固まる私に、
「「ゆっくり、休んで欲しいじゃない?」」
二人は、笑いながら言った。
その言葉の意味を理解して、私は、ベッドを分ける事に決めた。
寝室を分けるのは、さすがに……寂しいから、嫌です。
「お兄さ――ん! 生! 大ジョッキで!」
「二つで! 飲まなきゃやってられないわ!」
早苗さんと瑞樹さんが、大声で注文する。
二人は、さっき来たばかりの唐揚げを自分のお皿に取り、
早苗さんはそのままで、瑞樹さんはレモンを絞って、パクリと一口で頬張った。
やっぱり熱かったのか、ちょっとだけ顔を歪めた後、
半分ほど残っていたジョッキの残りを盛大に飲み干し、
「「――ノロケか!」」
口を揃えて、言った。
私としては……そんなつもりは無かったんですけど。
だって、ベッドを分けようなんて言われたんですよ?
それが、どうしてノロケになるんですか、もうっ。
ちょっとムッとしちゃって、お猪口に残っていた日本酒をクイッと飲み干す。
「まあ、そうは言っても、重要な事よね」
「わかるわ。ノロケなのは、置いておいて」
二人が、うんうんと、頷いてる。
……てっきり、そんな事でケンカするなと言われると、思ってたんですけど。
もしかして……このまま、彼を説得するのを手伝ってくれるのかしら?
ふふっ! 強力な、協力者ね……うふふっ!
「ベッド、分けるべきよ」
「ええ、その方が良いわ」
えっ?
「えっ……と、待ってください」
もしかして、早苗さんも瑞樹さんも……彼の味方をするんですか?
「だって、ねえ? 帰りが遅くなった時、起こしちゃ悪いじゃないの」
私は、むしろ起こして欲しいです。
美容のために夜更かしは出来ないけれど、せめて、「おかえりなさい」は言いたい。
その位なら何の苦にもなりませんし、全く問題ありませんから。
「眠る時は、一人の方がよく眠れるもの。むしろ、寝室も分ける?」
寝室も分ける!?
瑞樹さんは、どうしてそんな怖い事を言うんですか!?
あぁ……ビックリしちゃった。
「だって……」
「……ねえ?」
目を見開いて、固まる私に、
「「ゆっくり、休んで欲しいじゃない?」」
二人は、笑いながら言った。
その言葉の意味を理解して、私は、ベッドを分ける事に決めた。
寝室を分けるのは、さすがに……寂しいから、嫌です。
130: 2018/07/21(土) 00:09:59.59 ID:NEnjp6wvo
・ ・ ・
「……」
カチャリ。
寝室のドアを開けて、ベッドに向かう。
今日は、彼は帰りが遅くなると、前から聞いていた。
だから、今日は先に寝ておくの。
「……」
ベッドに腰掛け、枕元に置かれた時計に手を伸ばす。
私は、明日の仕事は午後からだけど、彼はいつも通り、朝早くに起きる。
その時間に合わせて、アラームをセット。
彼ったら、食には関心があると言っておきながら、朝ご飯を抜いたりするんですもの。
「明日は、トーストにしようかしら」
ご飯とお味噌汁が続いたから、少し、気分を変えて。
冷蔵庫には、えっと……レタスを千切って、トマトもあったわね。
目玉焼きかスクランブルエッグかは……うん、明日聞いてから決めれば良いわ。
何にせよ、ちゃんと食べて、元気を出して貰わないと!
「……」
トースト、トースト……トースト……通すと。
トースト、食べる、通すと……トーストを食べるまで、通すと……思わないでくださいね?
……ふふっ! うふふっ!
ダジャレの仕込みも、バッチリ。
「……うん」
ボフリと、横になる。
ベッドのシーツは、白。
枕カバーは、青と緑で、どちらも淡い色合い。
これを決める時にも、彼は、私が顔を赤くするような事を言ったのよね。
「……ふふっ」
そんな、ちょっとした一幕を思い出しながら、布団に潜り込む。
イメージカラーという事で、私の枕カバーは、緑色。
だけど私は、青いカバーがかかっている枕に、顔を沈めた。
「……うふふっ!」
きっと彼は、帰って来て、仕方の無い人だと、右手を首筋にやるのだろう。
その姿を見られないのは残念だけど……でも、良いの。
早く寝た分、私の方が、寝起きはハッキリしてますから。
可愛らしい、寝ぼけた顔をゆっくり見られるんだから、ベッドを分けて正解だったわ。
「おやすみなさい」
彼のベッドは、私のもの。
私のベッドは、彼のもの。
ベッドを分ける事には同意したけど、一緒に寝たいとは、思ってるのよ?
だから、こうする事くらいは、許してくださいますよね。
ふふっ! 眠りにね、無理、は禁物……うふふっ!
おわり
「……」
カチャリ。
寝室のドアを開けて、ベッドに向かう。
今日は、彼は帰りが遅くなると、前から聞いていた。
だから、今日は先に寝ておくの。
「……」
ベッドに腰掛け、枕元に置かれた時計に手を伸ばす。
私は、明日の仕事は午後からだけど、彼はいつも通り、朝早くに起きる。
その時間に合わせて、アラームをセット。
彼ったら、食には関心があると言っておきながら、朝ご飯を抜いたりするんですもの。
「明日は、トーストにしようかしら」
ご飯とお味噌汁が続いたから、少し、気分を変えて。
冷蔵庫には、えっと……レタスを千切って、トマトもあったわね。
目玉焼きかスクランブルエッグかは……うん、明日聞いてから決めれば良いわ。
何にせよ、ちゃんと食べて、元気を出して貰わないと!
「……」
トースト、トースト……トースト……通すと。
トースト、食べる、通すと……トーストを食べるまで、通すと……思わないでくださいね?
……ふふっ! うふふっ!
ダジャレの仕込みも、バッチリ。
「……うん」
ボフリと、横になる。
ベッドのシーツは、白。
枕カバーは、青と緑で、どちらも淡い色合い。
これを決める時にも、彼は、私が顔を赤くするような事を言ったのよね。
「……ふふっ」
そんな、ちょっとした一幕を思い出しながら、布団に潜り込む。
イメージカラーという事で、私の枕カバーは、緑色。
だけど私は、青いカバーがかかっている枕に、顔を沈めた。
「……うふふっ!」
きっと彼は、帰って来て、仕方の無い人だと、右手を首筋にやるのだろう。
その姿を見られないのは残念だけど……でも、良いの。
早く寝た分、私の方が、寝起きはハッキリしてますから。
可愛らしい、寝ぼけた顔をゆっくり見られるんだから、ベッドを分けて正解だったわ。
「おやすみなさい」
彼のベッドは、私のもの。
私のベッドは、彼のもの。
ベッドを分ける事には同意したけど、一緒に寝たいとは、思ってるのよ?
だから、こうする事くらいは、許してくださいますよね。
ふふっ! 眠りにね、無理、は禁物……うふふっ!
おわり
131: 2018/07/21(土) 01:04:09.40 ID:LLj1ZAmDO
甘ーーーい!
甘いよ楓さん、甘すぎるよ
甘いよ楓さん、甘すぎるよ
132: 2018/07/21(土) 04:41:21.89 ID:0p7aEPIQo
こういうのを見るたびにしぶりんは敗北者なんやなあって痛感するわ
引用元: 武内P「『次はお前だ』」
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