634: 2018/08/05(日) 22:28:42.93 ID:ugRUmuoao

「貴女のプロデューサーさんって、素敵よね」


 テレビ収録の、休憩時間に、そんな事を言われました。
 そう、言ってきたのは、アー、共演者の女優さん、です。
 事務所にも色っぽい人、大勢居ます。
 でも、この人みたいな人は、あまり居ませんね?


「ダー♪ プロデューサーは、とっても優しいです♪」


 始めは、私をどう思っているか、わかりませんでした。
 でも、今は違います。
 プロデューサーは、私をとても大切にしてくれています。
 今日も、一緒に収録に来てくれたのが、その証拠、です!


「まあ! 見た目によらず、ジェントルマンなのね」


 女優さんは、少し、アー、砕けた? 感じで、言いました。
 私は、それがおかしくて、クスクスと笑ってしまいました。
 そんな私を見て、女優さんも、笑います。
 色っぽくて、優しい人だと、思いました。



「――夜は、見た目通りワイルドだと良いんだけど」



 この言葉を聞くまでは。


「……シトー?」


 私は、最初、この人の言っている意味が、わかりませんでした。
 だから、ゆっくり、落ち着いて、考えます。


「ちょっと、彼に挨拶してくるわね」


 女優さんは、ニッコリと笑いながら、言いました。
 そして、プロデューサーの方へと、歩いていきます。


「……アー」


 女優さんは、プロデューサーに、笑いかけました。
 その笑顔は、とっても、可愛い!


 さっき見た笑顔とは……まるで、違いますね?


 だから、ゆっくり、落ち着いて、考えます。
 考えて、考えて……考えて、考えて――



「――ヴラーク」



 答えが、出ました!
 あの女優さんは、ヴラーク、ですね?


 ヴラーク……アー……敵、です。
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(1) (電撃コミックスEX)
635: 2018/08/05(日) 22:58:55.53 ID:ugRUmuoao

「……」


 女優さんは、笑顔で、プロデューサーに、話しかけています。
 プロデューサーは、笑顔が好き、です。
 笑顔で話しかけられて、ンー、少し、表情が……アー、柔らかく、見えます。
 でも、その笑顔は、本当の笑顔じゃない、です。


「……」


 プロデューサーと、女優さんの話が、続いています。
 全部は聞こえないけど、少しだけ、内容、聞こえます。
 私の話をしていますね?
 フフッ! プロデューサーが、私を褒めてくれてます!


「~♪」


 プロデューサーと、女優さんが、こっちを見ました。
 私は、笑顔で、手を振ります。
 プロデューサーに、本当の、笑顔を向けます。
 ……ハラショー! プロデューサーが、笑って、くれました!


 なのに、



「もう、手を振り返してあげたら?」



 女優さんが、プロデューサーをポンと叩いて、


「は……はあ」


 笑顔を止めてしまいました。
 プロデューサーは、右手を首筋にやって、困っています。
 女優さんは、それを見て、笑いました。


「……」


 シトー? 何が……おかしいのですか?
 エータ ストゥラーンナ……変、ですね。
 ミシャエシュ、アー、邪魔をしたのに?


 プロデューサーが、私に、笑いかけてくれたのに。


 邪魔をして、何故、笑っていますか?


「……ヴラーク」


 ヴラーク、ヴラーク、ヴラーク、ヴラーク!
 あの人……ニェート! あの女は、敵、です!


 だから、もう――


「……フフッ!」


 ――許さない、です。

636: 2018/08/05(日) 23:32:31.49 ID:ugRUmuoao

「――私の話、ですか?」


 プロデューサーの隣に立って、聞きます。
 プロデューサー、私の笑顔、見てください。
 可愛い、ですか? プロデューサー?
 

「はい。とても、よく頑張っていると――」


 ウラー! 嬉しい、です!
 今日も、とっても、頑張りました!


「ええ! 彼と話してたのよ、ねっ?」


 女は、そう言って、また、プロデューサーに笑いかけます。


「スパシーバ! とっても、嬉しい♪」


 私は、そう言って、プロデューサーの腕に、抱きつきました。
 少し、恥ずかしいけど、全然嫌ではない、です。
 当たり前ですね?
 プロデュサーは、私の、プロデューサー、です。


「あっ、あのっ!?」


 プロデューサーが、慌てています。
 フフッ! とっても、可愛い、です!
 可愛いプロデューサーと、スキンシップ!
 ポカポカ、します♪


「――イズヴィニーチェ、すみません」


 でも、プロデューサーを困らせるのは、いけませんね?


「少し、アー、はしゃぎすぎました」


 両手を後ろにやって、謝ります。


 プロデューサーのポケットから、ムゥーサラ、アー、ゴミを取って。


 このゴミは、女が、プロデューサーのポケットに入れた物、です。
 プロデューサーは、気付いていませんでした。
 だけど、私は気付いていました。


 ゴミは、ちゃんと、ゴミ箱に捨てないといけませんね?


「あらあら、貴方達って仲が良いのね!」


 私が何をしたか、女は、気付いてないみたい、です。


「ダー♪」


 笑顔で、手の中のゴミを握りつぶしました。

637: 2018/08/06(月) 00:07:45.50 ID:fLkM7tp8o
  ・  ・  ・

「……」


 収録が終わって、控室。
 私は、ポケットに入れておいたゴミを取り出し、広げました。
 思った通り、名前と、電話番号と、一言が、書いてありました。
 思った通り、ゴミでしたね?


「……」


 でも、このまま捨てるのは、良くない、です。
 このゴミは、あの女が、プロデューサーに押し付けたもの、です。
 もしも、何かあったら、プロデューサーが悪者になってしまいます。
 それは、いけません。


「……」


 ゴミは、持って帰ります。
 本当は、今すぐ、捨てたいです。
 こんな汚いもの、持っていたくない、です。


「……」


 プロデューサーに近づくのは、敵、です。
 プロデューサーは、私のプロデューサー、です。
 プロデューサーを困らせるのは、私が許さない、です。
 プロデューサーには、笑顔でいてもらいたい、です。


「……」


 でも、プロデューサーは、私だけのプロデューサーじゃ無い、です。
 プロデューサーは、シンデレラプロジェクトの、プロデューサー、です。
 他の部署とも、アー、連携する、とっても凄い人、です。
 だから、346プロダクションの人は、近づいても許します。


 それ以外は、


「……」


 こうやって、全部、握りつぶします。


 プロデューサーは、忙しいけど、とっても、優しい。
 こんなゴミを渡されたら、困ってしまいます。
 だから、気づかれないように、こう、します。


 フフッ! とっても、良い子ですね?


「……」


 プロデューサーが、待っています。
 もう、行かないといけませんね。


「~♪」


 帰りは車で、二人っきり、です♪
 プロデューサーを独り占め、出来ます♪

638: 2018/08/06(月) 00:39:53.01 ID:fLkM7tp8o
  ・  ・  ・

「――あら、帰るの?」


 プロデューサーと廊下を歩いていると、後から、声がしました。
 プロデューサーは、立ち止まって、振り返ります。
 この声は、あの女、です。
 私は、早く、プロデューサーを独り占めしたい、です。


「ねえ――」


 どうして、また、邪魔をしますか?
 時間に、アー、余裕があれば、どこかに寄ったり、出来ます。
 アヴィヤダチ、夕食を一緒にする事も、出来ます。
 だから、早く、行きたいです。


「――プロデューサーさん?」


 フフッ!


 ……ブリン ナダィェロ……もう、うんざり、です。


「ダー。お疲れ様、でした」


 プロデューサーが、何か言う前に、私が先に、言います。
 私は、今、プロデューサーの少し後ろに、立っています。


 つまり――今、私がどんな顔をしているかは、見えませんね?


「っ……!?」


 女が、一歩、後ろに下がりました。
 少し、顔が、アー、青くなる? 青ざめて? います。


 ――どうしましたか?


 ――体が震えて……寒いのですか?


「あ、あの……どこか具合でも、悪いのですか?」


 プロデューサーは、優しい、です!
 でも、その優しさは、この女に向ける必要は、ありません。


 ――そうですよね?


「えっ、ええ……お、お疲れ様!」


 女は、そう言うと、私達に背を向けて、早足で行ってしまいました。
 私は、そっとプロデューサーの横に行って、顔を見ます。
 ……フフッ! プロデューサー、キョトンとしています!


 プロデューサーは、とっても、可愛い♪



おわり

640: 2018/08/06(月) 00:56:08.96 ID:+h5kMZhsO
アーニャ最高や…綺麗な娘って笑顔も見方によっては怖くなるよね

641: 2018/08/06(月) 02:34:28.80 ID:pFOK76UJO
アーニャさん素敵
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キュートとパッションから愛の重そうな子で

引用元: 武内P「『次はお前だ』」