1: 2010/07/04(日) 19:54:54.10 ID:cf9hw+gc0
女「というわけで焼肉。 おなかすいた」

男「…食べに行ったら?」

女「一人で行くのは恥ずかしい」

男「なんでだよ?」

女「だって、ほら店の人とかに『わーあのひと一人で焼肉屋に来てるー友達とか家族いないんだー』とか思われちゃう」

男「…そのとおりだろ」

女「………まぁ、そのとおりなんですが。 というわけで、焼肉を。 プリーズギブミー!!」

男「お断りします」

女「まぁ、そう言わずに。 今なら洗剤3ヶ月分つけるから」

男「結構です。 間に合ってます。 必要ありません」
江戸前エルフ(1) (少年マガジンエッジコミックス)
6: 2010/07/04(日) 19:58:07.35 ID:cf9hw+gc0
女「ねぇ、焼肉。 君もスキでしょ? 焼肉」

男「すいません…俺、草食系だから」

女「大丈夫! 肉は私が全部食べる! 野菜は君が全部食べる!」

男「いやいや、ちゃんと野菜も食べなさい」

女「うん! 野菜も食べる! 褒めて!」

男「よし、えらい」

女「えへへー。 というわけで、ご褒美に焼肉が食べたい」

男「あー…明日も雨だってさ、天気予報」

女「ふーん、雨が続くねぇ…って、話そらさないでよ!」

11: 2010/07/04(日) 20:03:49.03 ID:cf9hw+gc0
女「ねぇ、焼肉。 焼肉ったら!」

男「……俺の名前は焼肉じゃない」

女「知ってる。 でも、これ以上焼肉を食べさせないなら、君のことを明日から焼肉と呼ぶ」

男「わかった。 俺もあんたのことを肉女と呼んでやる」

女「ひどい! 誰が肉壷女!? 私、そんな淫乱肉奴隷じゃないんだからっ!!」

男「あー…近くの山で土砂崩れとかやってるらしいな」

女「ふーん、あ、うそ、ここ知ってる。 めっちゃ地元」

男「あ、そうなの? 肉壷女?」

女「さっきは壷入ってなかったじゃん!!」

男「入れたの、あんただろ…」

12: 2010/07/04(日) 20:11:23.66 ID:cf9hw+gc0
女「やっきにく~♪ やっきにくぅ♪ やん♪ やっ♪ やきにく~♪」

男「………焼肉、焼肉とうるさい」

女「だって、焼肉食べたいんだもん」

男「別に焼肉食べないのが原因で氏ぬことはないだろ…3食栄養バランス考えたもん食べてるんだから」

女「いや氏ぬ。 私の氏因はたぶん焼肉の不摂取による孤独氏」

男「…意味がわからない」

女「だから、焼肉を食べさせなさい。 氏ぬよ? 氏んじゃうよ?」

男「俺に言わないで下さい」

女「この女頃し!」

男「…それ用法違うから」

13: 2010/07/04(日) 20:18:29.60 ID:cf9hw+gc0
女「う゛ぅ……」

男「今日は大人しいな。 焼肉女」

女「………なによ? 仕方ないでしょ…焼肉食べてないんだから」

男「そうなのか? 俺はてっきり――焼肉を食べてないからだと思った」

女「だからそう言ってぅ…ぅあ゛…気持ち悪い……ほら、君が焼肉食べさせないから…」

男「…寝てたらいいのに」

女「寝てても、気紛れないしぃ…」

男「………結構、重い方なんだな」

女「た、体重の話はしないで! 考えたくないの! 楽しく焼肉食べたいの!」

男「いや体重じゃなくて…」

女「………な、ちょ、なにまさか女の子に向かって、ダイレクトに生理痛の話とかセクハラ! このセクハラ焼肉男!!」

男「いやいや俺まで焼肉色に染めるなよ!」

15: 2010/07/04(日) 20:24:11.26 ID:cf9hw+gc0
男「う゛ぅ……」 

女「あれ? 元気ないね?」

男「………あぁ、おかげさまで」

女「あー…アレでしょ?」

男「…そう、アレ」

女「焼肉食べてないから」

男「違う。 それじゃない……ぅ………いや、そうなのかもな…だとしたら」

女「きつかったら、言いなよ? ベッドまで運んであげるから」

男「…できるもんなら」

女「できるし! どこかの草食系焼肉男と違って、ちゃんと焼肉食べてましたから!」

男「草食系焼肉男って…」

女「いるんだよねぇ…焼肉屋さんで、肉食べない子」

男「…いるかもしれないけど、そういう人を焼肉屋に誘うのはどうよ?」

17: 2010/07/04(日) 20:30:57.60 ID:cf9hw+gc0
女「……なんですか? これ」

男「知らないのか? 北海道の名産品、ジンギスカンキャラメル」

女「あ、うん、こういうのが北海道でよく獲れるのは知ってるんだけど」

男「友達にもらったんだけど…その、あんたが………焼肉焼肉うるさいから」

女「…あの、気持ちは嬉しいんだけどさ」

男「あ、もしかして、こういう甘いものダメだった?」

女「あ、ううん、そうじゃなくて…」

男「だったら」

女「ジンギスカンはきらい。 食べるなら、牛。 牛肉。 ビーフ。 霜降りとかなら、なお良し」

男「……わがままを言うな」

女「わがままじゃないもん。 好き嫌いだもん」

男「『もん』とかつけんな。 子どもじゃないんだから」

女「歳のこと言う!? そこで年齢について言及しちゃうの!? こっちも過剰反応とかせざるをえないよ!!」

男「するな…過剰反応するなよ…」

19: 2010/07/04(日) 20:40:27.71 ID:cf9hw+gc0
女「ふっふっふー」

男「なんだよ? 気持ち悪いな…今日は焼肉焼肉わめかないんだな」

女「うっふっふー。 となりの中原さんに聞いたんだけど、君、彼女いるんだってー?」

男「………は?」

女「隠したってダメダメ。 なるほどねぇ、私がこんなに焼肉屋さんに誘ってあげているというのに、なびかなかったのは
 恋人に操を立ててたんだねぇ…いいね! この草食系っ!」

男「いや、なんか全然褒められてる感じがしないし、そもそも恋人なんていないんですが」

女「えー…よく、ここらへんで一緒におしゃべりしてる女の子がいるって噂だよ? 何人も目撃者がいて、物的証拠は何も無いよ?」

男「噂かよ…しかも証拠無いのかよ……ていうか、ここらへんで、一緒にしゃべってるの、あんたくらいなんだけど」

女「………………そ、それって、もしかして、君の恋人は私だったってこと!?」

男「うん。 そう勘違いされてるんじゃないの? ヒマなおばちゃんたちにさ」

女「そ、そそそんな年下なんて、私、だいたいプロポーズとか早すぎるし! せっ…せめて最初のデートは焼肉屋さんで!」

男「落ち着きなさい」

女「う、うん。 落ち着く。 そうよね、最初のデートはフランス料理のフルコースで、メインはもちろん焼肉」

男「どんなフランス料理だ…」

21: 2010/07/04(日) 20:48:18.78 ID:cf9hw+gc0
女「や、やあ! きょきょ今日も焼肉日和だね」

男「どんな日和だよ」

女「あー…えー…なんだろう…今日も焼肉が食べたくなる天気だよね」

男「どんな天気だよ。 雨だよ。 豪雨にあんたは焼肉を食べたくなるのか?」

女「焼肉はどんな天気で食べてもおいしい」

男「…そうですか。 ところで、なんでそんなギクシャクしてるんですか?」

女「し、してない! してないよ!? そんなギクシャクとか意識してるとか!」

男「なにを意識?」

女「それはほら恋愛対しょ――ち、違うんだからっ!! 私は君より、焼肉の方が好きなんだからっ!!」

男「いや、それは知ってるけど」

女「そ、そりゃ、焼肉の次くらいには…」

男「…せめて、人類か動物を引き合いに出してもらえないものか」

24: 2010/07/04(日) 21:01:44.42 ID:cf9hw+gc0
女「…冷静になって考えてみました」

男「……なにを?」

女「私は君のこと、けっこう好きなんじゃないかなぁって」

男「………………そ、そそ、そう、っすか」

女「うん。 でも、骨付きカルビの方が好き。 もし川で君と骨付きカルビが溺れていたら、たぶん…ごめん」

男「は?……いや、ていうか、なにその状況? だいたい最近BSEで…いや、そうじゃなくて」

女「でもね、牛タンだったら、断然、君の方が好き。 ロースだと……ちょっと迷うけど」

男「迷うんだ…」


25: 2010/07/04(日) 21:02:15.07 ID:cf9hw+gc0
女「………だから、その、けっこう、す、好きかなぁ、なんて思うんだけど」

男「………なんだろ? バカにされてる? むしろバカにされてた方がまだマシか?」

女「そ、それでさ、君は私のことどれくらい好きなのかなぁ…なんて…」

男「…え? なにそれ? 答えなきゃダメなんですか?」

女「…その、もしかして焼肉より、好き? とか?」

男「そりゃ……まぁ、焼肉よりは」

女「……マジ? もしかして、愛? ラブ?」

男「マジだけど。 愛じゃないよな? どう考えても」

女「ああ、うん、冗談。 愛は冗談。 ふーん、でも、そっかー。 焼肉より好きかー…ふふっ…お姉さん困っちゃうなー」

28: 2010/07/04(日) 21:09:48.03 ID:cf9hw+gc0
女「…あー…焼肉が食べたい…」

男「…そうですか」

女「あれ? 気分悪い?」

男「…べつに」

女「じゃあ、機嫌悪い? あ、もしかして、嫉妬? やきもち? やだなぁ…そんな、そりゃもちろん焼肉の方がおいしいんだけど」

男「すいません。 実はちょっと気分が悪い」

女「ほんと? 歩ける? お医者さん呼ぶ?」

男「…大丈夫。 歩けるし、医者を呼ぶほどブルジョワジーじゃない」

女「そう。 よかった。 でも、ほんとにダメだと思う前に言ってね? いざとなったら、遅かったりするんだから」

男「あー……雨が続くなぁ…外にも出れない…」

女「…なにそれ? ひきこもり? ニート?」

男「…働く気はある」

女「そう。 じゃあ、初任給がでたら焼肉おごってね?」

男「………初任給が出たらな」

女「うん。 楽しみにしてる」

30: 2010/07/04(日) 21:20:22.79 ID:cf9hw+gc0
女「私が焼肉を食べなくなって何日が過ぎたのでしょう…?」

男「知らない」

女「…これって、もしかして日本の経済に結構影響があるんじゃないでしょうか? 今、不景気なのってもしかして…」

男「ないない……つか、一国の経済に影響を与えるほど焼肉食うなよ…」

女「実は、週一くらいで通ってたし」

男「…誰と?」

女「気になる? もしかして気になる? やっぱり元彼とかだったりすると気にする?」

男「べ、べっつにー、全然全くこれっぽっちも気にならないしー」

女「友達と。 安心しなさい。 女の子よ」

男「………別に安心もしないからな?……あれ、友達いるんだ?」

女「…なにそれ、私が友達のいないロンリーウルフガールだとでも思ってたわけ? いたし! とっても仲良いのが一人!」

男「………ガールって」

女「…な、なに? また年齢攻撃? 言っとくけど、四捨五入したら20歳なんだからね!」

男「四捨五入っていう発想が既に…」

女「…君、あとで体育館裏に来なさい」

31: 2010/07/04(日) 21:26:09.62 ID:cf9hw+gc0
女「…焼肉……焼肉…やき……はぁ…」

男「そろそろ焼肉トークにも飽きてきた?」

女「そんなわけないでしょ? 三食焼肉でもおっけーよ?」

男「…それはまた太り」

女「あァ?」

男「あ、あー…なんだ、そういえば、友達? いるんだったら、そいつに頼んでみたら? 焼肉。 少なくとも俺よりは望みがあるだろ」

女「………むり。 疎遠になっちゃったから」

男「…ごめん」

女「謝ることじゃないない。 女の子の友情とかって、わりと移ろいやすいものなの」

男「………そっか」

女「そう」

32: 2010/07/04(日) 21:36:28.16 ID:cf9hw+gc0
男「……カルビが490円…やっぱりコースで…かなぁ……とすると、最低でも…」

女「ん? 調べ物?」

男「………………そんなところです」

女「今、画面変えなかった? なんでヤフーのトップ?」

男「俺、ヤフー派だから」

女「私グーグル派。 すっきりしてて、たまに楽しいことのあるのがいいよね。 で、なに調べてたの?」

男「………アフリカの子どもたちの現状について」

女「あからさまに目をそらした。 ふむ、まぁ、君も年頃だし、工口いのに興味があるのも理解できないお姉さんではないよ?」

男「いやなんで工口いの検索してたことになってるの?」

女「隠さなくてもわかる。 君くらいの年頃は、みんな工口ース。 おっOいおっOい言ってる年頃だもんね」

男「すごい偏見じゃね?」

女「ちなみにグーグルで工口画像検索するならね、こうやって、フィルタリングを…」

男「いや、いいから。 公共のパソコンでそういう設定しなくていいから」

33: 2010/07/04(日) 21:47:00.53 ID:cf9hw+gc0
男「…あのさ、なんでそんなに焼肉が好きなの?」

女「おいしいから」

男「え、それだけ?」

女「…まぁ、それだけじゃないと言えば、ないこともない」

男「聞いてもいい?」

女「………昔、氏んじゃった家族でよく行ってて、今でもなんとなく、焼肉屋さんって好きなの…思い出とか、あるからさ」

男「あ………悪い」

女「なんてねー。 ほんとはただ単においしいからなんだけどねー」

男「……あんたもウソが下手だなぁ」

女「…君ほどじゃないと思う」

34: 2010/07/04(日) 21:48:28.07 ID:cf9hw+gc0
男「………」

男「………今日も雨かぁ…」

男「………」

男「………」

男「………来ないな」

37: 2010/07/04(日) 22:00:50.60 ID:cf9hw+gc0
女「……うわ…」

男「どーも、おはよーございます」

女「………………え? 夜這い?」

男「夜じゃないし」

女「ああ、そっか……なんで私の部屋知ってるの? ストーカー?」

男「ウデにIDついてるの忘れた? 名前がわかれば、あとは部屋探せばいいだろ?」

女「…個人情報保護的に、これ、名前とかわかんなくするべきじゃない? バーコードついてるんだし」

男「いざってときに、名前とか血液型とかわからないと困るんじゃない?」

女「あ、そっかー頭いいなー…」

男「………ここ2、3日、ラウンジに来なかったから、退院したのかと思った」

女「まっさかー。 薬が強くなってね、ちょっと慣れるまでアレだったから」

男「…そっか」

女「そうそう。 ごめんねー。 焼肉トークできなくて、むらむらしてたんでしょ?」

男「いや、俺はあんたみたいに特殊な性癖を持ってないから」

42: 2010/07/04(日) 22:15:29.28 ID:cf9hw+gc0
男「…平気?」

女「うん。 横になってれば、そんなには」

男「……となり中原さんだっけ?」

女「一時帰宅だって」

男「………ふーん」

女「…見られてたら、またなんて噂されてたか」

男「………そういえば否定してるんだよな? その噂」

女「……あ、あー…今日も雨かー…焼肉に行きたくなるよねー」

男「しろよ、全力で否定してよ」

女「だ、だって…若い身空で見舞いは来ないし、君の恋人疑惑がなかったら『ちょーさみしいんやつじゃねー? あいつ』とか思われちゃう」

男「…そのとおりだろ」

女「………まぁ、そのとおりなんだけどさ。 でも、実際、君のおかげで、さみしくはないわけだし?」

男「………そうっすか」

女「そうっすよ」

43: 2010/07/04(日) 22:17:36.94 ID:cf9hw+gc0
男「あんたはさ…」

女「ん?」

男「…あ…いや、その、一時帰宅とか、どうなんですか?」

女「さぁ…どうなんだろうねぇ……許可おりてもアパート引き払っちゃってるし」

男「…そっか」

女「君は?」

男「………今度の土日」

女「そか、楽しんできなよ?」

男「…うん。………あ、あのさ、もし良かったら、そのネットでさ…店、見つけてて」

女「私は今週中、ずっとこんな感じかなー寝たきり老人みたいなー…」

男「………」

女「私になんて気使わなくていいからね? せっかくなんだし、外で羽伸ばしてきなよ」

45: 2010/07/04(日) 22:28:21.03 ID:cf9hw+gc0
男「よ」

女「や。 今日も、天気悪いねぇ…焼肉食べたくなるよね…」

男「だな」

女「うんうん、君にもようやく焼肉の良さが………え? あれ?」

男「焼肉が食べたいなぁ」

女「…ちょ、ちょっと、草食系?」

男「………キリンだって思ってるさ、『たまには肉食いてぇなァ』って」

女「いやいやおなか壊すよ、キリン。 そういうこと言い出したこと後悔するって、キリン」

男「…実は、今まで黙ってたけど、俺、肉も食うんだ」

女「衝撃の告白!?…って、じゃなくて、ええっと…なにこれ? 焼肉トークのマンネリ化防止のためのイベント?」

男「でさ、今度の一時帰宅のときに焼肉屋に行こうと思うんだけど」

女「いいなぁ! うらやましい! も、もしかして、嫌がらせ? ベッドから起きるのもおっくうな私に対する嫌がらせ!?」

男「……一時帰宅の日、ずらしたから」

女「なによ! いいもん! 私はベッドの上で中落ちカルビやトントロの味わいを思い出して反すうしまくってやるんだから!」

男「…一緒に焼肉屋行かないか?」

48: 2010/07/04(日) 22:38:11.90 ID:cf9hw+gc0
女「い、行かないか…って、え………な、なにそれ?」

男「ほら、一人で行ったら店員に『友達とか家族いない』って思われるんだろ? 恥ずかしいじゃん」

女「…つまりはデートのお誘い!?」

男「ちがっ……くもないけど」

女「………仕方ないよねぇ、私が魅力的すぎるから……思わず焼肉屋さんに誘ってしまうなんて…」

男「違います」

女「…なんてね。 ありがと」

男「………それでさ、場所なんだけど」

女「ううん。 いいよ」

男「いや、一応、こだわりとかあるみたいだしさ、俺、そういうのわかんないからさ」

女「あ、そうじゃなくて………私、行かないから。 せっかくの一時帰宅なんだし、家族とか友達とかと一緒に行っておいで」

50: 2010/07/04(日) 22:48:16.20 ID:cf9hw+gc0
男「行かないって、なんでさ?」

女「私なんかと行っても、おもしろくないよ…それに、行けるかどうかもわかんないし…焼肉だって、許可おりるかわかんない」

男「聞いてみればいいだろ? ていうか、聞いたことないのか?」

女「ないよ…だって、『もう無理ですね。 焼肉とか食べられませんよ』なんて言われたら……生きていけない…なんていうのは流石に冗談だけど」

男「……だったら、俺も、行かない」

女「………行きなよ。 家族や友達と焼肉って、いいもんだよ」

男「あんたとじゃなきゃ、行かない」


51: 2010/07/04(日) 22:52:04.10 ID:cf9hw+gc0
女「…えぇっと、もしかして、そんなに私のこと好きだったのー? なんて、そんなわけないかー」

男「好きだよっ! 悪いかよっ!……あんたと会えなかっただけで、病院の中、上から下まで全部、あんた探すくらい……好きだ」

女「………そ、そう、なんだ」

男「な、なんだよ…ひくなよ」

女「ひいてないけど……その、困る」

男「………決めた。 意地でも連れて行く。 首に縄つけてでも、あんたを焼肉屋に連れて行く」

女「えぇっ!? ちょ、ちょっと、その、そういうプレイはっ!? せめて最初は普通で」

男「…調子が良くなったら、すぐ言って。 手続きからなにから全部、俺がやるから」

女「いやいやあの、そういうのって、本人の意思とかが…だいたい、お医者さんの許可もとれないって!」

男「いざとなれば、無許可で!」

女「むきょかダメ!!」

53: 2010/07/04(日) 22:58:24.45 ID:cf9hw+gc0
男「雨だなぁ……こんな日は焼肉が食べたくなるよなぁ」

女「………な、ならないしぃー」

男「雨の日こそ焼肉だよな。 こう冷えた体に、じっくりと焼いた塩ハラミが……」

女「…じゅるり」

男「………」

女「ち、ちがうの! 今のは、全然そんな、私、焼肉なんて食べたくないんだから!」

男「あ、そうなんだ?」

女「そうよ!」

男「俺と中落ちカルビ、どっちが好き?」

女「中落ちカルビっ!」

男「………」

女「あ、いや…その、ええと、そもそも、人間と焼肉を比べるのってどうなの?」

男「…どうなんだろうなぁ」

60: 2010/07/04(日) 23:10:30.97 ID:cf9hw+gc0
女「やっきにく~♪ やっきにく~♪」

男「今日は気分よさそうだな」

女「あ、うん。 やっきにく~♪ やっきに………べつに焼肉が食べたいわけじゃないけど」

男「……なにその今さら感のあふれる」

女「ち、違うの! 別に焼肉が食べれるかもとか、浮かれてたわけじゃなくて」

男「…浮かれてたんだ」

女「ち、ちがっ…その、つい、いつものくせで歌が」

男「なんかいいことでもあった?」

女「そりゃ、君が焼肉に誘って――違う! さっき、お医者さんから経過が良いって話を聞いて浮かれてたの!」

男「おぉ、そっか! 良かった! 一時帰宅も許可取れるかもな!」

女「うん!……だから、そうじゃなくて、せっかくの一時帰宅なんだから」

男「そうだな。 一番過ごしたい人と過ごすべきだよな」


61: 2010/07/04(日) 23:11:02.02 ID:cf9hw+gc0
女「そうそれ! だから家族とか友達とか」

男「恋人とかな。 よーし、店決めないとな。 予約とかした方がいいのかな?」

女「あ、うん。 コースとかで頼むんだったら――って、恋人!? いるの!? 私、だまされた!?」

男「…あんたのことに決まってるだろ」

女「………………え、ちょっと、なにそれ、聞いてないそれ…待って、私、プロポーズは三ツ星の焼肉屋さんでって決めてるのに」

男「まだプロポーズはしてないだろ…」

女「ま『まだ』って、予定あるの? する予定あるの?」

男「あー………今日は曇りかぁー…こんなときは焼肉が食いたくなるよなぁー」

64: 2010/07/04(日) 23:30:04.16 ID:cf9hw+gc0
男「さーて、店どこにするかなー。 どこか希望ある?」

女「…無いもん…私、行かないもん…」

男「だから…語尾に『もん』をつける歳じゃ――びょ、病院の近くにもあるんだなぁ、焼肉屋…ええとなになに」

女「…病院の近くは、お医者さんとか、職員のひとがいそうでイヤじゃない? ま、まぁ、私は行かないけど」

男「………それじゃあ、駅近くの…創業50年、今50周年セールもやってるっていうし…」

女「あぁ、あそこ、味はいいんだけど、禁煙席とかないからなぁ…たぶん私、今タバコの煙とかあんまり良くないし…」

男「そうか…となると……繁華街の方で」

女「うーん、値段もそこそこで、味もいいっていうところなら、ちょっと狭いんだけど、逆方向で隣町にね、オススメの――ええっと、グーグルマップ出して」

男「………はい」

65: 2010/07/04(日) 23:31:37.49 ID:cf9hw+gc0
女「…えーっと、ここ。 ここは良い店よー。 思わず常連になっちゃうくらい!」

男「へぇ、週1で通っちゃうくらい?」

女「うん! イベリコ豚とか普通にあるけど、お財布に優しいしねぇ………って、あれ?」

男「よし! 店も決まった! やっぱ予約してた方がいい?」

女「う、うん。 お店、狭いからね………ていうか、あの、私、行かない」

男「へー、コースとかいろいろあるの? オススメは?」

女「いつも食べてたのは上焼肉コースだけど、今回は君のオゴリだし、極上焼肉コース(おかわり自由)とかかなー」

男「…値段、聞いてから決めていい?」

女「冗談冗談っ! ちゃんと自分の分は自分で出すからー…さすがに年下からオゴってもらえないって」

男「でも、これデートだからなぁ…」

女「で、デートっ!? そ、そっか…デートか……あ! だ、だから、どこの店に決まっても私は行かないから、家族や友達とかと」

男「あとは日程だな。 あんたも調子良さそうだし、この分だと、来週とかには行けるかな、焼肉」

女「来週!! やったね!! やっきにく♪ やっきにく~♪」

男「………」

女「やっきに………だから、違うんだってば!」

66: 2010/07/04(日) 23:35:00.46 ID:cf9hw+gc0
医者「―――」

女「…はい」

医者「―――」

女「…はい」

医者「―――」

女「…はい、ありがとうございます」

71: 2010/07/04(日) 23:50:09.17 ID:cf9hw+gc0
男「どうだった?」

女「あ……」

男「医者と一時帰宅や焼肉の話してきたんだろ? もしかして話ができなかったなら、俺が」

女「は、話したよ! ちゃんと! それくらい子どもじゃないんだからできる!」

男「そっか。 で、結果は? いつごろ行けそう? 俺もその日に合わせるからさ」

女「……その前に、もう一度いい?」

男「…なに?」

女「君の一時帰宅、家族や友達と過ごさなくて、ほんとにいいの?」

男「…いいよ」

73: 2010/07/04(日) 23:51:09.93 ID:cf9hw+gc0
女「私は、両親がずっと前に氏んで…友達は、こんなになっちゃってからケンカ別れみたいになっちゃって…だからね、すごく、もったいないって思う」

男「………」

女「私なんかと過ごすより、家族や友達と…君の一番大事な人たちと過ごすのが一番良いって思うの」

男「…そうだな」

女「私には大事な人がいないから……いなくなってしまったから…だから、後悔してる…どうしてもっと一緒にいなかったのかって」

男「……俺も後悔すると思う」

女「うん、だから……せっかくだけど…ほんとに嬉しいんだけど…」

男「俺の一番大事な人って言ったら、一人しかいないから」

女「…うん?」

男「あんたと、ここで一緒に過ごして、好きになって…好きになったやつの、ちょっとしたお願いを叶えたいって思えて」

女「………」

男「…俺は、あんたと焼肉屋に行かなかったら、一生後悔すると思う…たとえ短い一生だったとしても…だから」

女「………ぅん」

男「だから、俺と一緒に、焼肉屋に行って下さい」

女「…うんっ」

74: 2010/07/04(日) 23:59:17.25 ID:cf9hw+gc0
―――

男「……あの」

女「(しっ! 静かに……よし、誰もいない…ゴー)」

男「(…どうして、こんな朝早くに出発しなければならないのでしょうか?)」

女「(だって、考えてもみなさい。 若い二人が揃って一時帰宅なんて風景を見たら、誰だって『あー若いなァー若いっていいなァ』とか
 セクシャルハラスメテックなことを考えるに決まってるじゃない)」

男「(……そうか?)」

女「(そうよ)」

男「(だいたい、こんな時間に出ても焼肉屋開いてないだろ)」

女「(いいじゃない、デートなんだから、焼肉屋以外に行っても)」

男「(………そうだったんだ)」

女「(…えぇー…デートがオンリー焼肉屋とか君モテないでしょ?)」

男「(………あんたがそれを言うか?)」

75: 2010/07/05(月) 00:07:28.62 ID:Ufeeol7i0
男「(すいません…焼肉屋以外なにも考えていませんでした)」

女「(ふむ。 よろしい、お姉さんに任せなさい)」

男「(……はい、おまかせします…)」

女「(うーん、でも、よく考えたら、長い入院生活で体力に自信ないし…美術館とか動物園は無理だなぁ…)」

男「(そうっすね)」

女「(映画館は……そもそも見たい映画ないし…)」

男「(あ、俺、見たいのあるんだよなー踊る大捜査)」

女「(そうだ! あそこにしよう! 焼肉屋さんの近くにあるし!)」

男「(…青島さんの活躍が見たいなぁ…なんて)」

女「(決まったよ。 とりあえず、病院の前でタクシーを探そう)」

男「(……はい)」

76: 2010/07/05(月) 00:13:16.19 ID:Ufeeol7i0
男「あ、タクシー」

TAXI「へい、お待ちっ! どこまで行きやしょう?」

女「あ、ファッションホテル・VIPまで」

男「!?」

TAXI「あいよ! ファッションホテル・VIPまで! 超特急で参りやすぜぇっ!」

女「あ、速さは普通でいいですよ?」

男「……あ、あの」

TAXI「心配すんなよ! 若い二人をムラムラ待たせるような野暮なことはしねぇぜっ!!」

女「あははー、そんなんじゃないですよー」

男「………」

77: 2010/07/05(月) 00:21:13.76 ID:Ufeeol7i0
女「さ、着いた着いたっと。 良かったねぇ…タクシーのおじさん、おまけしてくれて」

男「………ええと、ちょっとお伺いしたいんですが、ここは?」

女「ファッションホテル・VIPですが、なにか?」

男「いわゆるラOホテルというやつだと思うんですが?」

女「ああ、大丈夫大丈夫、料金安いから。 私がオゴってあげるよ。 こっちの都合で早く出てきたんだし」

男「いやいや、そうじゃなくて」

女「あ、もしかして、お姉さんが過去にどんな男とここに来たのかとか考えて、嫉妬? やきもち?」

男「え? あ……そんなことはないけど」

女「大丈夫! よく焼肉屋の開店前にヒマなとき友達と一緒に来てただけだから。 もちろん女の子よ?」

男「そ、そっか」

女「安心した? それじゃ行こうか」

男「いやいやいや、え? マジで?」

女「…正直、もう限界で、今すぐにもベッドに入りたいし」

男「な、ななななななにを」

女「初めてだと入りにくいのはわかるけど行くよー」

81: 2010/07/05(月) 00:28:21.09 ID:Ufeeol7i0
女「んっ……あぁ…っ……いいっ………はぁぁ…」

男「………」

女「……んっ……はぁんっ………ひうっ…」

男「………まぁ、こんなことだろうとは思ってたよ」

女「んー? どうしたの?…あ、もしかして、座りたくなった? マッサージチェア…もうちょっと待って…ねっ…」

男「…いいえ、別に全然疲れてないし」

女「はぁ…やっぱりココは最高ねぇ…マッサージチェアは高級だし、ベッド大きいし、焼肉屋さんに近いし」

男「そうですね。 最高ですね」

女「じゃ、私、疲れたから寝る。 お昼になったら起こして。 薬飲むから」

男「……疲れたって、あの、ほとんどエレベータとタクシーで移動だったんだけど」

女「うん疲れたマジ疲れた…寝る。 あ、テレビでえOちなの見てもいいけど、音小さくしてね」

男「見ません!」

女「じゃ、おやすみー」

83: 2010/07/05(月) 00:33:17.40 ID:Ufeeol7i0
女「…ZzzZzzZzz」

男「マジで寝やがった…」

女「ZzzZzzZzz」

男「あのーすいませーん…確かに俺、草食系だけど…おっOいおっOい言ってる年頃でもあるんですけどー」

女「ZzzZzzZzz」

男「実は草食系ってのはウソで焼肉も食べるんですけどー」

女「ZzzZzzZzz」

男「襲うぞ?」

女「……Zzz」

男「…起きてる?」

女「実は起きてた」

84: 2010/07/05(月) 00:40:23.91 ID:Ufeeol7i0
女「…君がそんなにおっOいおっOいおっOいおっOい言うなら、見せてあげないこともないけど」

男「言ってない。 そこまでは言ってない」

女「たぶん、見たら、性欲失せるよ?」

男「…え?」

女「…もしかしたら食欲も。 今から焼肉屋さんでせっかく、おいしいお肉を食べるのに」

男「………手術跡?」

女「うん。 自分で見て、『あーもうこの女ダメじゃね?』って思うくらいにはズタズタ」

男「………」

女「恋愛とかムリだなーって思えるくらい……それでも見る?」

男「………見る」

女「…やめておいた方がいいと思うけど」

男「…見たい……なんせおっOいおっOい言ってる年頃だし」

女「………わかった」

85: 2010/07/05(月) 00:45:11.83 ID:Ufeeol7i0
男「………」

女「ど、どどどうでしょう? やっぱりキモい? 氏んだ方がいい?」

男「…いや、思ったより、ひどくなくて……ほっとした」

女「……どんだけひどいと思ってたの」

男「いやほんとにズタズタだったら、困るかなぁとか思ってたけど、そんなことない。 きれいだ」

女「き、きききれーですか?」

男「うん。 これだったら、俺の胸の方がズタズタだなぁ…」

女「……見せて、くれる?」

男「…いいけど」

87: 2010/07/05(月) 00:48:10.29 ID:Ufeeol7i0
女「………」

男「…………ど、どっすか?」

女「………………これが草食系?」

男「…草食系ですけど」

女「けっこう鍛えてる?」

男「…入院生活で脂肪がつかないだけなんじゃないかと」

女「………そうなんだ」

男「…あんまり見ないで欲しいような」

女「ふっふっふ…そんなに恥ずかしがらずともよいではないか、よいではないか」

男「や、やめてっ…そんなっ……いやっ…」

88: 2010/07/05(月) 00:51:18.74 ID:Ufeeol7i0
男「……はぁっ…はぁっ…」

女「はぁっ…はぁぁ……ところでさ…」

男「…はぁっ……なんでしょうか?」

女「……はぁっ…なんで、年頃の男女が、おっOい丸出しでラOホテルでおっかけっこしなきゃならないの?」

男「……はぁっ…あんたが、追いかけるから」

女「だ、だって、君が逃げるから」

男「………」

女「………」

男「……疲れた」

女「私も」

90: 2010/07/05(月) 00:56:43.42 ID:Ufeeol7i0
男「……服着て寝よう」

女「………いいの?」

男「いいっす…もう疲れたし…お互い循環器に負担かけるの良くないでしょうし」

女「……そ、だね…」

男「なにより、初デートで、胸まで見れたらそれでいいんじゃないかと」

女「………」

男「続きは次回以降のお楽しみということで」

女「つ、続くの? いいの? 私、こんな、なんだけど」

男「……そりゃ、あんたがイヤって言うならムリヤリするんだけど」

女「ムリヤリするの!?」

男「…本当にイヤだって言うなら。 俺の顔も見たくないって言うなら…しないけど」

女「そんなことっ!……ないけど」

91: 2010/07/05(月) 01:02:02.63 ID:Ufeeol7i0
男「…まぁ、今日のところはこのへんで満足ってところです」

女「………そっか」

男「そう。 そして、焼肉屋のために体力を温存しておくことを提案します」

女「そうだった! 私には焼肉、極上焼肉コース(おかわり自由)が待ってるんだった!」

男「………ちなみに俺と極上焼肉コース(おかわり自由)じゃ、どっちが好き?」

女「………」

男「…どうした?」

女「………ご、極上焼肉コース(おかわり自由)っ!」

男「だよなぁ…」

93: 2010/07/05(月) 01:07:32.23 ID:Ufeeol7i0
―――

男「………」

女「………」

男「…そ、そろそろ、良いですか?」

女「まだ! 待って、後…3秒……2……1…今っ!! さあ食べてっ!!」

男「は、はいっ!!」

女「バカっ! タン塩にタレをつけるやつがどこにいるっ!」

男「俺、タレつける方が好きだもん…」

女「『もん』とかつけるな! 性別と歳を考えろ! ほら、ロースが良い感じだぞ! 構えろ!」

男「あ、あの、この構えの必要性って…」

女「……今っ!! 牛ロースはこれくらいの焼加減が一番おいしいっ!!」

男「は、はひっ!!」

95: 2010/07/05(月) 01:10:48.02 ID:Ufeeol7i0
―――

女「ん~食べた~…おなかいっぱい」

男「…食べた…なんとか食べきることが…できた…」

女「おいしかったねぇ」

男「確かに、おいしかったけどさ…」

女「ん? なにか不満? 店長さんもいい人だったでしょ?」

男「あんた、焼肉を前にすると人格変わりすぎだろ…」

女「そう? そっかな?」

男「……まぁ、いいけどさ」

女「んー…っ……はぁ……満足満足……もう、いつ氏んでもいいなぁ…未練もないし成仏できそう」

97: 2010/07/05(月) 01:16:15.97 ID:Ufeeol7i0
女「さ、後はこっそり病室に戻ろう?」

男「……なぁ」

女「ん?」

男「いつ氏んでもいいなんて、言うなよ」

女「あ…」

男「そりゃ、あんたにとってみれば、俺は焼肉以下かもしれないけど、俺にとっては焼肉より、ずっと…あんたと、居たくて」

女「…うん」

男「これからも、さ……焼肉ならオゴるし、デートのコースちゃんと考えるからさ…だから」

女「うん、そうだね…もうちょっと、あきらめないで……希望、持ってみようかなぁ」

99: 2010/07/05(月) 01:23:33.48 ID:Ufeeol7i0
女「ほんとはね、今日、君に抱かれてもいいかなぁ…なんて思ってたんだ」

男「…だっ!?」

女「もう大人の女だからね…あんな場所に男と行くんだったら、覚悟だってして行きます」

男「………ええと」

女「ほんとほんと。 ブラ、ちゃんとかわいいのしてたでしょ? 君が私のキズを見てもひかないならいいかなーとか」

男「ぶ、ぶら…って、そんなのマジマジと見ないし」

女「…見て欲しいから、かわいいのつけるんだけどな。……まぁ、どんな結果になっても、君の想い出にでもなれたらいいかなーとか思ってた」

男「それって…」

女「…でも、そだね……焼肉も食べて元気一杯だし…もうちょっと頑張ってみるかなー」

男「…ああ、元気なくなったら、また焼肉連れて行ってやるから」

100: 2010/07/05(月) 01:24:36.27 ID:Ufeeol7i0
女「ねぇ」

男「ん?」

女「私ね、さっきは、ああ言ったけど…」

男「……さっき?…ってどの?」

女「私、君のこと、焼肉と同じくら――」

男「え――」

102: 2010/07/05(月) 01:33:26.11 ID:Ufeeol7i0
―――――

男「あ、中原さん」

中原「あら、また来たの?」

男「……すいません…なんか探しちゃって、つい」

中原「…元気ないい子だったからねぇ……いなくなっちゃうと、寂しくなるだろうなぁって思ってたけど……やっぱりねぇ」

男「…そうですね」

中原「そういえば、あの日、一緒に焼肉食べてたんだって? 大変だったのよー…って、言っても、大変なのは病院の人だけだったけど」

男「…彼女が、ちゃんと医者の許可とってるって思い込んでて」

中原「いやぁ、もう私なんか絶対駆け落ちだって、一階から屋上まで走り回って言い触らして…大変だったわー」

男「………それはご迷惑をおかけしまして」


103: 2010/07/05(月) 01:34:04.35 ID:Ufeeol7i0
中原「…ムリだったのよねぇ…一日中歩き回って、焼肉食べて……なんて」

男「…はい……俺が、ムリに誘って」

中原「ああ、ごめんなさいね、あなたを責めてるわけじゃないのよ?」

男「あ、はい……すいません」

中原「…ううん。 こちらこそ、ごめんなさいね。 こんなおばちゃんの相手をさせちゃって…そろそろ時間でしょ?」

男「あ、はい…それじゃまた」

中原「また、ね」

104: 2010/07/05(月) 01:34:42.40 ID:Ufeeol7i0



男「……いい天気だなぁ」



106: 2010/07/05(月) 01:35:28.11 ID:Ufeeol7i0



男「…こんな日は、焼肉…食べたいなぁ」



113: 2010/07/05(月) 01:49:20.46 ID:Ufeeol7i0
女「じゃ、今度の一時帰宅で食べに行こうか? あ、さすがに次は退院かな?」

男「…遅かったな。 思わず病室とか探しちゃっただろ」

女「仕方ないでしょ。 こっちは仕事探しの真っ最中だし…」

男「まぁ、いいけどさ…どうだろうなぁ……手術の経過次第って話だし」

女「大丈夫、大丈夫! あきらめなきゃ、なんとかなるもの!」

男「あんたが言うと説得力があるなぁ」

女「でしょ? それで焼肉なんだけど、退院祝いってことで、三ツ星の焼肉屋さんを予約しようかなーっとか思うんだけど」

男「…二人とも無職なのに、どこにそんな金が?」

女「いいじゃん、お祝い事なんだし」

男「それに、三ツ星の焼肉屋は……いつか、俺のオゴリで行くから、今回はいいだろ?」

114: 2010/07/05(月) 01:50:11.79 ID:Ufeeol7i0
女「えー…私はすぐに、おいしいお肉が食べたいー」

男「……あんた、わかってて言ってたりする? それともプレッシャー?」

女「…何の話?」

男「だ、だから、ぷ、プロポー………なんだかバカらしくなってきた…」

女「………ああ! プロポーズ!!」

男「ああぁー! 今日もいい天気だなぁー!」

女「そ、そうだね、三ツ星はとっておこうね」

男「こんな日は焼肉が食べたくなるよなぁー!!」

女「ね」

男「やっきにくー♪♪ やっきにくー♪♪」

女「……私ね、焼肉より、あなたのこと…」

男「やっやっやっきにくー♪♪ やっきにくー♪♪」

女「やっきにく~♪ やっきにく~♪」

115: 2010/07/05(月) 01:50:43.00 ID:Ufeeol7i0

男「…え、続きは!? 言わないの!?」

女「あれ!? 歌わないの!?」

男「『焼肉より』…なんだよ!?」

女「好きだよ」

男「………」

女「焼肉より好き…だいすき」

男「………俺も」

女「うん」

118: 2010/07/05(月) 01:53:48.16 ID:Ufeeol7i0


男「…ちなみに最高級松坂牛カルビと俺が川で溺れてたら、どっちを助ける?」

女「牛カルビ!!……あ」

120: 2010/07/05(月) 02:01:37.33 ID:Ufeeol7i0
おしまい


ということで、おわります。

途中、なんかおさるさん規制されて書きこめなかったりしましたが、
なんとか終われました。 よかった。

なぜか今日はお昼から何も食べていません。
マジで焼肉が食べたいです。 遮二無二焼肉が食べたいです。
焼肉を食べるシーンがほとんどないのは、そんな悔しい思いが込められています。

>>109さん=エスパーじゃね?
いや、ありきたりな話ですよね…どっかで見たことある話ですよね…すいません。

というわけで、どうしようもなく肉が食べたいので、近くの牛丼屋さんに行ってきます。

最後になりましたが、皆さま読んで下さって、ありがとうございました。
今週も皆さまにとって、いい感じの一週間でありますように

121: 2010/07/05(月) 02:02:16.24 ID:yh0wMyRH0
いちょつ
なかなか楽しめた
近いうち焼肉行っておいで

122: 2010/07/05(月) 02:02:23.93 ID:Jk/s/CLn0
すっごく面白かった!!!
おつかれ!



引用元: 女「やき……にくぅ…焼肉が食べたい…」