131: 2023/02/19(日) 03:26:50.23 ID:FO0yL1bR.net
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


夏美「さぁて、エントリーも終わりましたしこれで一安心ですの」

四季「夏美ちゃん、たんこぶ出来てる」

かのん「ほんとに私の名前書こうとしたからね」

夏美「もうっ、かわいいオニナッツジョークですのに」

かのん「かわいくないし」

夏美「かわいいですの♡」キャピッ

かのん「かわいくない」

夏美「かわいいですの!ね?四季」

四季「うん、かわいいよ」

夏美「ほーら!ですの!」

かのん「言わせてるだけじゃん」


???「あれー???あー!!くぅくぅちゃんだー!!」


可可「はっ!!!!この声はっ!!」

悠奈「やっぱりくぅくぅちゃんだ!奇遇だね!こんなところで」

可可「あわわっ……悠奈サンっ!!」

夏美「だれですの?」

かのん「うーん、なんかテレビか何かで見た事あるかも……?」

四季「サニーパッションの悠奈さん。サニパは可可先輩の憧れの人達」

かのん「可可ちゃんの?」

夏美「それで先輩ったらあんな府抜けた顔をしてるんですのー?」

かのん「あはは、かわいいね。可可ちゃん」

四季「……」コクコク

夏美「ここに来てるという事はライバルでしょうに」

かのん「本人があんなに嬉しそうなんだから茶々入れないの」




かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」【前編】
132: 2023/02/19(日) 03:27:29.55 ID:FO0yL1bR.net
可可「こんなところで会えるなんてククも感激デス!!!」

悠奈「もしかしたら運命かもねー☆」

可可「えええ!!運命なのデスか!!!」


夏美「まったく先が思いやられますわ」


???「ふん、あれがSunny Passion……?」


かのん「?」

夏美「どうしました?」

かのん「なんか凄い敵意を感じて……」

夏美「もうっ、なにしたんですの?かのん先輩」

かのん「いや、私にじゃなくて」

夏美「ほんとヤンキーは、ちょっと目を離すとすぐ問題を起こすんですから。これは修学旅行じゃないんですよ?喧嘩番長みたいな真似はやめてください」

かのん「……」

四季「あの人?敵意を感じたの」

かのん「うん、たぶん……もう後ろ姿しか見えないけど、外国の人かな」

四季「見た感じ、あれはオーストリア人」

かのん「あー、コアラの?」

四季「ラリアじゃなくてリア。ヨーロッパの方」

夏美「なんでそんなことがわかるんですの」

四季「骨格」

夏美「ふーん。じゃあじゃあ?私の骨格は?」

四季「成長途中」

夏美「にゃは~!ですって、聞きましたかのん先輩?1年で成長途中なら追い越しちゃうかもですよ?あなたの身長を」

かのん「はいはい」

夏美「私を見上げないといけないかもしれませんね。だって、この人一年の時とプロフィール変わってないですの!!」

かのん「たぶんそっちも変わらないよ」

四季「ふふ、ほんとに元気だね。夏美ちゃんは」

133: 2023/02/19(日) 03:28:17.25 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~




可可「あー!こんなところで悠奈サンに会えるだなんてっ……!思い返すだけでステキナオモイデニ…♡」

夏美「いつまで浮かれてるんですのー」

可可「いつまでも浮かれていたいデス……」

かのん「ははは、ほんとに好きなんだねー」

可可「んんっ……」

かのん「どうしたの?」

可可「んっ、声が出づらいデス」

かのん「大丈夫?」

可可「調子に乗って喋り過ぎました……」

四季「……」


四季「あっ……」


夏美「?」

四季「そういえば」

夏美「なんですの?」

四季「ある研究室での話。そこでは何年にも渡ってある菌を研究してた。でも、ある日そこのある研究員が研究室で納豆巻を食べたの」

夏美「急になんの話ですの?あなたはそういうところがありますよね。言葉足らずというかなんというか」

四季「夏美ちゃんのせいで可可先輩の調子が戻ってないのかも」

夏美「はい?」

134: 2023/02/19(日) 03:28:51.13 ID:FO0yL1bR.net
四季「菌の培養中、隣で納豆巻食べてる子がいた」

夏美「つまり?」

四季「その子のせいで悪い菌をやっつけてくれる菌が氏んじゃったかもしれない」

夏美「まったく、かのん先輩。何してくれてるんですの?」

かのん「ねぇ、これどう思う?同級生としてさ」

四季「憎めない子」

かのん「まったく、甘やかすのしか周りにいないんだから」

四季「それより大丈夫?可可先輩」

可可「んっ……んっ……へーきデスよ。このくらい」

四季「急いで作り直すから」

かのん「でも元気だったよね。さっきまで」

四季「きっとプラシーボ効果。思い込んでると効果が出る事がある。原理は不明だし限度があるけど」

夏美「ていうか無菌室とか言ってませんでした?そこで作ったんじゃないですの?」

四季「膝に置ける簡易無菌室。だからペラペラ。隙間もある。隣で納豆菌みたいな強力なもの食べられたら流石に無理」

夏美「やっぱり納豆の力は偉大ですの!」

可可「けほっけほっ」

夏美「どーですか!!納豆の力に敗れた気持ちは?納豆はさいきょーなんですの!にゃははは!」

かのん「こら、いい加減にしなさい」ペシッ

夏美「いたっ!!」

かのん「たたくよ」

夏美「もう叩かれたですの!体罰反対ですの!」

四季「とにかくなんとか間に合わせる」

135: 2023/02/19(日) 03:29:59.67 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「て、言ってたけど」


ワーワー ワーワー


夏美「大会、始まっちゃいましたの」

かのん「まぁエントリーしたのがギリギリだったから順番も最後の方だし、それまでに間に合うんじゃないかな」

可可「大丈夫デスよ!シキシキは言った事は守りますから!こほんっ!」

かのん「可可ちゃんって、四季ちゃんの事すっごい信頼してるんだね」

可可「はい!シキシキは凄い人デスからね!それに後輩を信じるのは先輩の務めデス!」

かのん「凄いなぁ。そんなに信頼してて」

夏美「ほんとですの。どっかのだれかさんも見習っていいですの」

かのん「こっちの後輩は信頼できないから無理かなー」


『次はエントリーナンバー5番……』


可可「今5番目の方の出番デス。ククの番は当分先なんで大丈夫デスよ」

夏美「四季なら間に合わせるでしょう」

かのん「うん、信じるしかないよね」

可可「はいデス!」

かのん「うぅっ、でも、こういう会場はちょっと緊張するなぁ……」

可可「どうしてですか?」

かのん「うん……この空気感がね」

夏美「出るわけでもないのにですのー?」

かのん「……」




─────かのんちゃん!



─────もう始まってるよ!



─────はやく歌わないとっ!



─────かのんちゃんってばっ!




かのん「……っ」ゾクッ…

夏美「?かのん先輩?」

136: 2023/02/19(日) 03:31:12.16 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「……ふん、くだらない」


夏美「?」


ウィーン「遥々来てみたけど、日本の、それもスクールアイドルなんかの音楽レベルなんて所詮はこの程度よね。わかってはいたけど」


夏美「な、なんか、一人でべらべら喋ってる人がいますのっ……街でたまにエンカウントするヤバい人ですの……」


ウィーン「なのになんでこんな国に来なければいけないのかしら?ほんとに理解に苦しむわね。理解不能よ」


夏美「斜め後ろの席からやっべー電波をビンビン送受信してる人がいますの……!まじでやべーですの……!」


ウィーン「私って見ての通り。由緒正しい音楽一家の生まれなのよ?なのにこんなちんけな島国に来させられて、『今のお前に足りない大事な事を学んでこい。』ですって。ふん、なんておかしな命令なのかしら?貴方達風情がこの私にいったい何を教えてくれるの?ねぇ?」


夏美「ひぃーっ!!こっちガン見しながら喋ってますの!怖過ぎますの!!だれか助けてください!!!」


ウィーン「ふざけないでほしいわ……!スクールアイドルだなんてレベルの低い子達から、学べるものなんてあるわけないでしょうっ!!!!!」


夏美「なんか怒鳴ってるですのー!!まじでやべー奴ですのっ!!」

可可「なんデスか……さっきから好き放題言って……」ジロッ…

夏美「可可先輩!しーっ!しーっ!これは日本ではたまにいる異次元の扉を開いちゃった人で、絶対に関わっちゃいけないタイプの人なんですの!」

137: 2023/02/19(日) 03:31:52.08 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「事実を述べてるだけでしょ?くだらないものにくだらないと言って何が悪いの?」

可可「くだらなくないデスっ!!!」

夏美「ダメですの!可可先輩!その人と話しちゃ!かのん先輩止めてください!大変な事になっちゃいますから!先輩っ!先輩ってば!」

かのん「……え?」

ウィーン「くだらないでしょ?こんなちっぽけなステージでしか歌えないだもん。ふんっ、もう一度言ってあげましょうか?くだらない!こんなちっぽけなステージのために貴方達は頑張ってきたのかしら?だとしたらその頑張り自体もくだらないわねっ!」

可可「家伙っ!!(こいつっ!!)」

かのん「えっ?なに?なに?どうしたの?」

夏美「やっばいやつに絡まれてるんですの!!」

かのん「あっ、さっきの!」

可可「取り消しなさい。彼女たちを侮辱する事は許しません」

ウィーン「取り消さないわ。取り消す理由がないからね」

可可「伝わらないのならもう一度言います。取り消しなさい。貴方は人として言ってはいけない事を発しました」

ウィーン「いやよ」スッ


ウィーン「どうしてもというなら実力でわからせてみなさい?」


ウィーン「貴方も参加するならね」フンッ

夏美「……い、行きましたの」

可可「っ!待ちやがれデス!逃げるんデスかー!このーっ!!」

夏美「しーっ!せっかく向こう行ってくれたんですの!呼び戻さないでくださいですの!」

かのん「……ええっと」


かのん「な、なんだったの?いまの?」

138: 2023/02/19(日) 03:32:37.80 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~




可可「……」ムッスゥ…

かのん「あはは、ご機嫌斜めだね……可可ちゃん」

夏美「元気出してください。たまにああいう人に絡まれる事はありますからね」

かのん「ほらっ、次は可可ちゃんの大好きな人だよ!ほらほらっ!」

可可「……はっ!」


『次はエントリーナンバー19番。聖澤悠奈』


可可「あああああああーーー↑↑!!!!」

かのん「ふぅ、よかった。いつもの可可ちゃんで」

夏美「いや、これもいつものではないでしょう」

可可「げほっ!!げほっ!!げほっ!!」

かのん「ちょ、大丈夫?可可ちゃん」

夏美「そういえばそうでしたね。ちょっと四季のところにいって様子を見てきますの」

かのん「はい、お水」

可可「んっ、んっ、ん……ぷは。ありがとうございます。かのんさん」

かのん「あんまり大きな声出しちゃだめだよ」

可可「すみませんデス……」

かのん「ほら、声は抑えて見ようね。悠奈さんの」

可可「はい!」

139: 2023/02/19(日) 03:33:06.69 ID:FO0yL1bR.net
悠奈「今日は来てくれてありがとー!!!なーんて、私だけのためにきてくれたわけじゃないだろうけど……えへへ☆」


可可「ククはいきますよー!貴方のためならどこまでも!」

かのん「ふふっ、しずかにね」


悠奈「じゃあ、さっそくいってみよー!私の歌、最後まで聴いてねっ☆」


可可「ああ↑↑(歓喜)」

かのん「ほんとに好きなんだね」


かのん「でも、歌でこんなに人を笑顔に出来るなんて」


かのん「すごいなぁ」





ウィーン「……ふん」

141: 2023/02/19(日) 03:34:27.03 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美「もうすぐ出番ですの!どうするんですの!」

四季「焦らない。ちょっと成長するのに時間のかかる菌なの」

夏美「とはいってもですね」

四季「なんとかするから」

夏美「……」

四季「っ……」

夏美(こんなに焦ってる四季、はじめて見ますの)

四季「間に合って……」




『えー、次はエントリーナンバー22番』




かのん「もうそろそろ出番だから舞台端で待機になっちゃったけど……」

可可「けほっ、けほっ」

かのん「まだ四季ちゃんは来ないし……」

可可「げほっげほっげほっ!!!」

かのん「いったいどうなっちゃうのぉー!?」

142: 2023/02/19(日) 03:35:37.68 ID:FO0yL1bR.net
夏美「なんですの。そのおちゃらけた顔は」


かのん「おちゃらけてない!ピンチを感じてる顔なの!これは!」

夏美「ふーん」

かのん「それより四季ちゃんは?」

夏美「……」

かのん「?」

夏美「思ったよりやばい状況かもしれませんね」


『次はエントリーナンバー23番!』


かのん「や、やばい……」

夏美「可可先輩のエントリーナンバーは24番ですの」

かのん「間に合わなかったらどうしよう……」

可可「……ん?あれは……」


『ウィーン・マルガレーテ!』


ウィーン「ふん、どうも小国の皆さん。こんにちは、であってるかしら?ここでの挨拶は」


かのん「あの子は……」

夏美「ひぃ!!ついには勝手にステージにまであがってるですの……!あの人ヤバ過ぎるですの……!」

かのん「違うっ……スクールアイドルだったんだ……あの子」

可可「スクールアイドル……?あんな人が?」

143: 2023/02/19(日) 03:36:29.91 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「今日は貴方達に『本当の歌』を教えてあげるわ。理解できるかはわからないけどね。でもきっと、ここで歌った子達は音楽を諦めるんじゃないかしら?『本当の歌』を知って自分たちの歌が偽りだと気付いてしまうんだからね。流石に本物の前で偽ブランド品はつけていられないでしょ?それと同じ事よ」


夏美「ひぃっ!誰も聞いてないのにまーたひとりでぺらぺら喋ってますの!」


ウィーン「けれどまぁ、そうなった方が幸せなんじゃないかしら。日本人は日本人らしく寿司でも握っていればいいのよ。自国に閉じこもって。適材適所って言葉があるでしょ?出来ない事はしない方がいい。こういう繊細なセンスが問われるような分野は優秀な白人。それも、渡米した連中や流刑送りにされたようなまがい物じゃない、本物の白人(ヨーロッパ人)である私達に任せておけばね?その代わり貴方達は私達には出来ない事をしてくれればいい。例えば、神妙な顔で米粒を握ったりとかね。ふふっ」


夏美「あの人めちゃくちゃ言ってますの……なんでつまみだされないんですの?」

可可「なんですかあの差別主義者は」ギリッ

かのん「……なんであんなに攻撃的なの?本物である事にやたらこだわってるし」


ウィーン「歌は力よ。『本当の歌』はちっぽけなもの全部吹き飛ばしてくれる。だからここで全部壊してあげるわ」


ウィーン(そして私はもう一度、本物の未来を……作り直す(ビルドする))


ウィーン「聴きなさい、私の歌を」



ウィーン「─────♪」



可可「っ!!」ビクッ

かのん「ひっ……」ゾクッ

夏美「?」


悠奈「うーん、これは……」

悠奈「油断できない相手だね」

144: 2023/02/19(日) 03:37:45.86 ID:FO0yL1bR.net
かのん(なに、この歌……)

可可「……っ」

夏美「ふたりとも怖い顔してどうしたんですの?」

かのん(こわいっ……)ガクンッ

夏美「かのん先輩?」

かのん(心が不安になるっ……)ガクガクッ…

夏美「ちょっと、しっかりしてくださいですのかのん先輩。びびりだからって流石に歌で怯えるのあざとすぎますよ?そういういきすぎた反応は視聴者から反感を買うんですからね」

かのん「ちょっと……今はしずかにしてっ……!!」

夏美「か、かのん先輩……?!」

かのん「……余裕ないからっ」ハァ…ハァ…



可可「ふん、あの人はスクールアイドルにふさわしくありません」

可可「あの人がほんとうにスクールアイドルなら」

可可「見てくれてる人が、皆笑顔にならなければいけないからデス……!」



悠奈「うーん、ピリついた空気。会場が完全にあの子の歌に支配されてる」

悠奈「これは良くも悪くも私より印象に残っちゃってるだろうなぁ。皆の心に」

悠奈「これは今回は負けたかもね」

悠奈「でも……」

悠奈「ラブライブ前に貴方を知れてよかったよ☆」



ウィーン「─────。」


ウィーン「ふん、この辺にしといてあげるわ」


ウィーン「だって貴方達には刺激が強すぎたでしょ?」


ウィーン「私の『本当の歌』は?」

145: 2023/02/19(日) 03:38:50.65 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


四季「……」

夏美「し、四季……」

四季「なつみ……ちゃん」

夏美「可可先輩……」

四季「……」

夏美「……もう、出番ですの」

四季「……」

夏美「あ、あの四季……」

四季「間に、合わな、かった」ポロ…ポロ…

夏美「っ……四季……」

146: 2023/02/19(日) 03:39:55.43 ID:FO0yL1bR.net
可可「大丈夫デスか?かのんさん」

かのん「うん、ごめんね。心配かけて。大変なのは可可ちゃんの方なのに」

可可「いいえ、あの人が全部悪いデスから」

かのん「声、大丈夫?」

可可「……所々出ない音程がありますが大丈夫デス!なんとかやりますから!」

かのん「……可可ちゃんは凄いね」

可可「えー?クク、凄いデスか?」テレテレ

かのん「自分が一番大変なのに……そうやっておちゃらけて和ませようとしてくれるし」

可可「でも貴方に凄いと言われて嬉しいのはほんとデスから!」

かのん「……ねぇ、なんでそんなにがんばれるの?」

可可「?なんでって言われても、答えに困っちゃいますね。うーん、やらなければならないからとか?」

かのん「……なんでやらなくちゃいけないことなの?」

可可「それは当然、ククがやりたいって決めた道だからデス!」

かのん「決めた道……?」

可可「スクールアイドルはククにとって初めて心からやりたいと思えたことですから」

可可「だから逃げたくないんデス。一度でも逃げてしまったらその気持ちが嘘になってしまいます」

可可「クク、嘘つきには絶対なりたくないデス」

可可「なので例えちゃんと歌えなかったとしても、それで恥をかくことになるとしてもククは逃げませんよ」

可可「それが決めた道を進むという事デス!」

かのん「うたえなくても……」

可可「……そろそろ出番が来てしまいますね。レンレンもいないし、いろいろ緊張しちゃうデスね。ははっ」

かのん「……っ」ゾクッ

可可「どうしました?そんなに震えて。まさかまだあの人の歌が?」

かのん「違う……違うの。ごめんね、このままステージにいっちゃう可可ちゃんを想像してっ」

可可「どうしてそれで怯えるのデスか?」

かのん「私、怖いの。ステージ……」

可可「?」

147: 2023/02/19(日) 03:40:44.20 ID:FO0yL1bR.net
かのん「私ね、歌がとっても好きだった。歌う事が大好きだった。でも、ある日突然、歌えなくなったの。ステージに立つのが急に怖くなって、たくさんの人が、視線が、皆の期待が急に怖くなって、うたえなくなって」

可可「……」

かのん「ごめんね、可可ちゃんは、いま、そんな場合じゃないのに、こんなこと言われても、困るよね……でも、あの日の私と同じ事が起きるって思ったらっ……わたしっ……こわくてっ……!」

可可「落ち着いてください、かのんさん。大丈夫ですから。一度深呼吸しましょう?」

かのん「ねぇ、行かないで!わたし、可可ちゃんに、行って欲しくないっ……!だって、だって……こわいよっ……」

可可「─────かのんさん」



ギュッ…



かのん「っ?可可……ちゃん?」

可可「ククは怖くないデス。だからかのんさんが不安になる必要はありませんよ」

かのん「……」

可可「大丈夫デス。貴方が笑顔になれるステージにしますから」

かのん「く、可可ちゃん……」

可可「だから、そんな顔しないでください」

かのん「……」

可可「ククは皆に笑顔でいてもらいたいデス。かのんさん。貴方にも」


『次はエントリーナンバー24番、唐可可』


可可「呼ばれてしまいましたね」

かのん「可可ちゃんっ……」

可可「じゃあ、行ってくるデス!」

かのん「あっ……」

148: 2023/02/19(日) 03:41:32.49 ID:FO0yL1bR.net
かのん(まって……だめだよ……だって、歌えないのにっ)


かのん「くぅくぅちゃん……」


かのん(このままだとどうなるかなんて簡単に想像出来る……)

かのん(だって私はそれを経験してるからっ)


かのん「うっ……」


かのん(思い出すだけで気持ち悪い……あの生々しい感覚がよみがえってくる)


かのん「うぅっ……うっ……」


かのん(あの時の会場のどよめきと視線を鮮明に思い出す)

かのん(そしてそれがここで繰り返されるんだ……)

かのん(見たくない、逃げてしまいたい、耳も目も塞いで……)

かのん(でも、それ以上に……)


可可『大丈夫デス。貴方が笑顔になれるステージにしますから』


かのん(可可ちゃんにあんな思いして欲しくない)

かのん(でもどうすれば……)

かのん(そうだっ……私がかわりに……)

かのん(私が代わりに歌えば……可可ちゃんを助けられる)

かのん(そうだよ、状況的にも私が歌うしかっ……)


かのん「っ……」


かのん(一歩踏みだせばステージに出れる)

かのん(でも……その一歩が出ないっ。どうやっても……出ない)

かのん(踏み出す勇気も……歌う勇気も……)

かのん(なんでっ……)


かのん「なんで歌えないのっ!!!」


かのん「……はぁ……はぁ」


かのん「ぜったいっ……」


かのん「絶対、うたってやるんだからぁっ……!!」

149: 2023/02/19(日) 03:42:28.39 ID:FO0yL1bR.net
可可「……っ」

可可(歌い出しの音程が……出ない)



四季「可可先輩……」

夏美「四季、だいじょうぶですの。きっと……」ギュッ…



可可(シキシキってばなんて顔してるのデスか。ククは皆を笑顔にしたいって知ってるでしょう?まったく……)

可可(……ククは絶対あきらめません)

可可(歌える部分だけ歌いましょうか。ちぐはぐになりますが何も歌えないよりましデス!)

可可(きっと、大丈夫ですっ……)

可可(だから─────)


かのん「可可ちゃん!!」

可可「……っ!?」

可可「かのんさん?どうしてっ……」

かのん「うろおぼえだから。間違えたらごめんね!」



四季「かのん……先輩?」

夏美「なっ!?何やってるんですの?あの人!!ずぶの素人がいきなり出てきて!これは大会ですの!そんなことしたらとんでもない事にっ」


かのん「……っ」


かのん(こわいっ……!でも、なにもかんがえるなっ……!)



かのん「─────♪」



可可「えっ……」


夏美「なっ!!」


四季「……っ」


悠奈「……ほほーう」


ウィーン「っ!」


ウィーン「…なに…あの子……」

150: 2023/02/19(日) 03:43:36.84 ID:FO0yL1bR.net
かのん(わたし、うたえてる?わからないっ)

かのん(でも、続けなきゃ)

かのん(可可ちゃんを助けたいのっ!!)


かのん「─────♪─────♪」


かのん(きっと、大丈夫。歌えてる。私は歌えて─────)



─────歌えない。


─────みんなの前で歌えないよ。


─────私、怖いよ。



かのん「─────っ」

可可「かのんさん!」


─────ギュッ


かのん「!!」

可可「ククの目を見てください。誰も意識せずククだけを」

可可「ククだけに聴かせるように歌ってください」

可可「ククも歌います。だからひとりじゃありません」

可可「あなたの歌、初めて聴くけど、とてもすばらしいデス」

可可「だから……一緒に歌いましょう?」

可可「きっと楽しいデス。笑顔になれますから」

かのん「……」



かのん&可可「─────♪」

151: 2023/02/19(日) 03:44:24.70 ID:FO0yL1bR.net
夏美「……」ポカーン


悠奈「きゃー!熱いなぁ!パッションだよ☆」


ウィーン「……私の方が上よ。上のはずっ!」


かのん「─────♪」


ウィーン「なのにどうしてっ」


ウィーン「こんなにも心が苛立つのっ」ギリッ


かのん「─────。」


パチパチ……パチ……


パチパチパチパチパチパチ!


かのん(拍手……?ああ歌ったんだ。歌いきったんだ……)

かのん(あんな大勢の前で……)


かのん「っ……!」

可可「大丈夫デス。なにも見ないで」

かのん「……」

可可「ありがとうございます」


可可「かのん─────」

152: 2023/02/19(日) 03:45:51.02 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「いやぁ~失格になってしまいましたね」

夏美「当たり前ですの。エントリーしてない人が勝手に舞台にあがって歌ったんだから当然こうなりますの」

可可「でも、失格ですから。負けではありません!失格してなければかのんは勝っていました!」

夏美「ものはいいようですのー」

可可「昔、あるレジェンドアイドルも似たような事やって失格になってました。歴史は繰り返すデス」

夏美「今なら大炎上ですの」

可可「当時もしてたデス」

四季「……」

可可「もう!シキシキはいつまでメソメソしてるのデスか?」

四季「だって……」

可可「ほら、今度こそ元気になりましたよ!シキシキのおかげデス!」

四季「ごめんなさい……ごめんなさいっ」

可可「まったく、出来た後輩といってもまだまだ子供デスね。泣き虫なんですから」


ギュッ


四季「……っ」

可可「シキシキは大事な後輩デス。だからもう泣かないで」

四季「うっ……うっ……」

可可「ほーら、よしよしデス」

夏美「……」

可可「ふふーん、ナッツ?指なんかくわえてうらやましいんですか?」

夏美「は?くわえてませんけど」

可可「寂しいならナッツの事も抱きしめてやるデスよー?」

夏美「なにをバカな事を、意味不明ですの。寂しくなるなんて意味がわかりません。私はもう高校生なんですよ?小さいからってそんなレッテル貼るなですの!ふん」

可可「ちょっと、どこいくデスかー?」

夏美「かのん先輩の所です」

可可「ふーん」


可可「やっぱり寂しいんじゃないデスか」

153: 2023/02/19(日) 03:46:54.86 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん(歌えたっ……歌えたんだ!)

かのん(でも、まだ震えが治まらない……)

かのん(まだ誰かに見られてるような気がする)

かのん(そわそわして落ち着かない)

かのん(なにかに掴まってないとそのまま飛んで行っちゃいそうな……)


夏美「こんな夜の人気のない公園なんかにいてなにしてるんですのー?怖がりのくせに」

かのん「ひっ!」

夏美「そんなに怯えなくてもいいでしょう?」

かのん「……なんだ、誰かと思えば、いつも問題ばっかり起こしてくれる子か……」

夏美「ふん、なんだとはなんですの。日常にサプライズという彩りを与えてるといってくださいですの」

かのん「はいはい、トラブルメーカーね」

夏美「ムードメーカーですの」

かのん「……」

夏美「……」

かのん「……で、なにかよう?」

夏美「……ようがなきゃ一緒にいちゃいけないんですか」

かのん「べつに、すきにすればいいけど」

夏美「……」

かのん「……」

夏美「……で、明日はどうします?散々したがってた観光でもしますか?」

かのん「いい、早く東京に戻ろう」

夏美「せっかくきたのにですの?」

かのん「うん、もう帰りたいの」

夏美「……そうですか」

かのん「……」

夏美「なら、今日見ていくですの!」

かのん「え?」

グイッ

かのん「ちょっと!なによ!」

夏美「ついてくるですのー!」

155: 2023/02/19(日) 03:48:05.72 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美「ここですの!」

かのん「もう、なんなの。無理矢理引っ張って。ていうかどこ、ここ」

夏美「複合施設ですの。レストランがあったりー、映画館があったりー、たーのしい施設ですの!」

かのん「ふーん、そんな気分じゃないけど」

夏美「まぁ、気分だとしても利用しませんけどね。お金がかかりますから」

かのん「じゃあなんでつれてきたの」

夏美「ここの15階には無料の展望スペースがありますの!それを見に来たんですの」

かのん「景色が見たかったの?ならあっちにある大きい建物から見た方がいいんじゃない。なんか変な名前してる。蔑称みたいなあれ」

夏美「ハルカスは入るだけでも2000円近く取られますの。そんなのもったいなくて入れませんの」

かのん「けちんぼ」

夏美「それにあっちは床が透明ですの。びびりのかのん先輩と行ったら腰抜かしておぶって帰らないといけなくなりますの」

かのん「ふーん、じゃあどっちも腰抜かすかもね」

夏美「はい?」

かのん「そっちは私おぶろうとして『ぎっくり』ってなっちゃうから」

夏美「むっ」

かのん「あはは、若いのにぎっくり腰なんて、ほんとおもしろいよね」

夏美「なにもおもしろくありません!一度やるとくせになっちゃうんですよ?」

かのん「しってる。だから荷物運びも超びびりながらやってたよね。見てたよ今日」

夏美「気付いてるならもっと手伝ってくださいよ」

かのん「いやだよ、だってめんどくさいし」

夏美「ふん、それにこれは労働者の証ですの!働いてる人は皆ぎっくり腰になるんですの!だから笑われるような事じゃありませんの!」

かのん「ふーん、どうだか」

156: 2023/02/19(日) 03:49:02.79 ID:FO0yL1bR.net
夏美「もうっそんな事より夜景を見ますよ。ほら、かのん先輩、東京との違いわかりますか?」

かのん「なんか色がカラフルっていうかパチンコ屋みたいな感じだね」

夏美「行った事あるんですの?」

かのん「ないけど」

夏美「なんて、不良だからほんとはあるんじゃありませんの~??」

かのん「ないってば」

夏美「パチスロ動画も人気ですの、今度一緒にやりますの!」

かのん「炎上するよ、未成年なんだから」

夏美「では、おとなになってからということで」

かのん「しないけどね」

夏美「それより、もっと下を見てください。ほら、高い所から府民たちをあざ笑えますの!」

かのん「見えないよ小さくて」

夏美「米粒くらいちっちゃいですの!」

かのん「うーん、そうだね。見えないけど」

夏美「……」

かのん「……」

夏美「あんなに……小さいと……」

かのん「?」

夏美「ほら、ちっぽけな存在に、見えて……くるですの!」

かのん「……」

夏美「その、気にする価値もないくらい……に、というか。見られても気にならないというか……」

かのん「……」

夏美「この人達にどう思われても、どうでもいいじゃん……みたいな……?」

かのん「……ふっ」

夏美「?」

かのん「あははははっ!!」

夏美「な、なにわらってるんですの!」

157: 2023/02/19(日) 03:49:50.85 ID:FO0yL1bR.net
かのん「ううん、別に。ただ気とか使ったりするんだなって思ってさ」

夏美「は?気なんか使ってませんし」

かのん「ぎこちなさ過ぎでしょ。なに?その羽がふわふわ降りてくるみたいなおぼつかないお喋りは」

夏美「ぎこちありますのー!おぼついてますのー!」

かのん「慣れない事しなくていいよ別に」

夏美「だから……使ってませんし」

かのん「はいはい」

夏美「むぅ……」

かのん「……うーん、じゃあそろそろいこっか」

夏美「そうですね」

かのん「観光に」

夏美「はい……ってえ?」

かのん「ほら、せっかくきたんだからいろいろ見ておかないとね」

夏美「もう夜なんですけど」

かのん「まだ20時前だよ。いけるいける」

夏美「かのん先輩は大丈夫でも私は16歳未満なので問題ありますの。20時以降16歳未満の外出は条例で禁止されてます」

かのん「保護者同伴なら大丈夫だよ。ほーら、お姉ちゃんと手繋ごうねー?」」

夏美「だーれが妹ですの!手なんかつながねーですの!」

かのん「ちぃちゃんにたこ焼き買って行ってあげないといけないしさ」

夏美「いや、そんな日持ちしないですの」

かのん「あと、やっぱり大阪といえば道頓堀で白ひげのおじさん突き落したりしないといけないもんねー」

夏美「そんなお決まりはありません」

かのん「とにかく行くよどうせ暇でしょ」

夏美「はぁ、もう、ちょっとだけですの。気が済んだら戻りますよ」

かのん「はいはい」


かのん「ありがとね」

158: 2023/02/19(日) 03:51:09.82 ID:FO0yL1bR.net
─────翌日。



すみれ「はぁ、やっと東京に帰ってこれた」

千砂都「夏休みの新幹線は込んでて大変だったね」

恋「でも、お友達と電車に乗るなんてしたことありませんでしたから、とても楽しかったです!」

千砂都「冷凍みかんおいしかったねー」

恋「はい!」

すみれ「ていうか、まだ一仕事あるのよね」

千砂都「ふふーん、でも結局やるんだ?」

すみれ「まぁ、一度手伝ったなら最後まで付き合ってあげるわよ。どうせ明日で最後だし」

千砂都「そうだね」

すみれ「その代わりあんたも出なさいよ」

千砂都「はいはい、わかってるよ。でもこれが最後だからねー」

恋「……最後ですか」

すみれ「なに?恋」

恋「あのっ、……よければこれからも一緒にやりませんか?」

千砂都「えー、なにを?」

恋「スクール……」

すみれ「……」

恋「アイドルを……」

すみれ「……」


すみれ「いや、やらないけど」

159: 2023/02/19(日) 03:51:54.38 ID:FO0yL1bR.net
恋「っ」

千砂都「あー!せっかく恋ちゃんが勇気出したのにー!」

すみれ「興味ないし。それに昨日のサニパって人達が揃って明日の大会に出るっていうから私はリベンジしたいだけだし」

千砂都「負けず嫌いだなぁ」

すみれ「明日は絶対勝つし、だからそれで終わりよ」

千砂都「絶対か~」

すみれ「千砂都、あんたはどうなのよ?」

千砂都「え?」

すみれ「昨日『ひとりじゃないからこれからも一緒にやってこう!』みたいな事言ってなかった?」

恋「千砂都さんっ」

千砂都「だからあれは、求められればサポーターとして力を貸してあげるって意味で、正式にメンバーになるっていう意味じゃないってば」

恋「っ」

すみれ「なによ、昨日はこれからも一緒みたいな言い方してたのに」

千砂都「いや、一緒ではあるけどそれは裏方的な意味で言ったんであって」

恋「……」シュン

すみれ「おちこませてんじゃないわよ」

千砂都「ええ?私だけのせい?」



メイ「ううっ、私はあの二人をどういう目で見ればいいんだぁぁぁぁぁ!」

きな子「……」

メイ「一旦とはいえあの二人はスクールアイドルになった。たしかに昨日は負けたけど私達の心に残る最高のパフォーマンスをしてくれた。あの二人はまぎれもなくスクールアイドルだ!でも、これまでの関係性もあるし。正式なメンバーじゃないみたいだし。でも、一時的だったとはスクールアイドルだったのは事実で……」

きな子「メイちゃん、うるさいっす」

160: 2023/02/19(日) 03:53:00.58 ID:FO0yL1bR.net
ブウウウウウンッ



千砂都「あっ!かのんちゃん達の車来たよ!ほら、お出迎えしよう!」

すみれ「ふーん、話しそらすのね」

千砂都「昨日は負けちゃったから、たこ焼きは仲良く分け合おうね!」

すみれ「いらないけど」


かのん「あー、つかれた」

夏美「こっちの台詞ですの。昨日はあのまま迷子になるし散々でした」

かのん「ふん、なにそれ。そもそも誰かさんが言い出したんじゃん『観光でもしますの~』って」

夏美「はぁ?」

かのん「私は最初気分じゃないって言ったのにさ」

夏美「ふーん、気分じゃなかったわりに随分楽しんでたようですけどぉ???」

可可「いつまでやってるデスか。はやく降りてください。こっちは早くレンレンに会いたいんデス」

四季「メイときな子ちゃんがいる。元気そうでよかった。なんかメイが騒がしくしてるけど」

夏美「だいたい、昨日はかのん先輩が責任者だったんですから。年下をちゃんとリードしてくれないと困りますのー」

かのん「ふん、昨日はずいぶんかわいげがあったのに一日経つとこうも変わるんだね~??」

夏美「はぁ?私には可愛げしかありませんけど??」

かのん「かわいくないし」

夏美「かわいいですのっ♡」

かのん「かわいくない」

夏美「それに引き換えかのん先輩は可愛げもないし頼りにもならないし、ほんとダメなおねぇちゃんですのー」

かのん「はぁ?こんな生意気な妹、出来た覚えないんだけど??」

夏美「それはこっちの台詞ですの、べぇ~っだ」

かのん「ふーん」ガシッ

夏美「ちょっ、離してください!オニナッツのかわいいお手てがっ!」

かのん「ほんとちっさいんだから。ちょっと力入れたら折れちゃいそう」

夏美「ちょっ、す、すみれ先輩っ!!!!たすけてー!!!かわいい後輩が暴力を振るわれそうになってますの!!」


すみれ「はぁ、相変わらず騒がしいわね」

千砂都「でも、なんかうれしそうだね?すみれちゃん」

すみれ「ふん、別に」

161: 2023/02/19(日) 03:54:16.92 ID:FO0yL1bR.net
可可「レンレン!!」

恋「可可さんっ」

可可「大丈夫デスか?レンレン。昨日は他の参加者にいじめられたりしてませんよね?」

恋「あっ、えーとっ、はい!大丈夫です!」

可可「ならよかったデス!」

恋「ただ……」

可可「?」

恋「ごめんなさい……私、負けてしまって……」

可可「レンレン……?」

恋「可可さんの期待に応えられず……」

可可「なにいってるデスか!勝つ事だけが全てじゃないデス!レンレンは頑張ったんですからククがたくさん褒めてあげますよ!」

恋「可可さん……」

可可「それにククもですねっ」

恋「?」

可可「ふがいない負け方をしてしまいましたから……」

162: 2023/02/19(日) 03:55:09.27 ID:FO0yL1bR.net
かのん「ちぃちゃん!」

千砂都「かのんちゃん!大丈夫だった?」

かのん「うん!大丈夫!」

千砂都「よかったー」

かのん「はい、これお土産ね」

千砂都「わぁ~、たこやきだぁ」

すみれ「ほんとに買ってきてるし」

千砂都「じゃあ皆で食べよっか?」

すみれ「まちなさいよ。これいつ作ったやつ?変なもの食べるとお腹壊すわよ」

千砂都「たこ焼きは変なものじゃありません~」

かのん「大丈夫だよ。冷凍のやつで昨日は冷凍庫に入れてたし、車ではさっきまでクーラーボックスにいれてたから」

千砂都「じゃあ、安心だね!このまま食べちゃおう!」

すみれ「は?このまま?」

千砂都「きっとアイスみたいでおいしいよー♡」

すみれ「なにバカみたいな事いってんのよ。はい、没収ね。これ」

千砂都「ああ!たこ焼きアイスが!」

かのん「普通のたこ焼きだよ」

すみれ「ほんと、まともな子がいないんだから」

163: 2023/02/19(日) 03:55:50.34 ID:FO0yL1bR.net
夏美「いててですの……」

きな子「あー!夏美ちゃん!四季ちゃん!」

四季「うん」

きな子「ふたりとも元気そうでよかったっす!」

夏美「私はおもいっきり負傷してますけど」

四季「きな子ちゃんも元気そうでよかった」


メイ「スクールアイドルがスクールアイドルじゃなくなったとして、じゃあそれはファンから見てもスクールアイドルではなくなったといえるのか?例えば卒業したとして、それでスクールアイドルじゃなくなる?いや、スクールアイドルだった事実は変わらないんだから、ファンの心の中にはスクールアイドルである彼女が残り続けるわけで」


四季「あっちはなんか元気過ぎ」

きな子「あはは、いろいろあったっすからね」

四季「そっか」

夏美「まぁ、とりあえず」


夏美「お疲れ様ですの」

164: 2023/02/19(日) 03:56:48.82 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美「さて、明日がこの遠征最後の日。ばっちり決めますの!」

かのん「そうだね。最後くらいはばっちり決めて欲しいよね?」

夏美「なんですか、その嫌味っぽい言い方は」

かのん「べっつに~」

夏美「明日の大会は昨日より大規模ですの。それにとても凝った大会ですの」

可可「凝った大会?」

夏美「その名もミステリーライブですの!」

恋「なんですかそれ?」

すみれ「ミステリーツアーみたいなものかしら?」

夏美「そうですの!各チームが迷宮のような施設に放り込まれて脱出する新感覚ライブ!至る所に謎解きやアトラクションがあって競い合うんですの」

千砂都「うーん、ライブ要素あるのかな?」

夏美「それは行ってみるまでわかりません」

すみれ「ふーん、結局あんたも詳しくしらないのね」

かのん「最後まで頼りにならないなぁ」

夏美「もしかしたら脱出したチームだけがライブが出来るとかそういうのかもしれませんの!レースで1等を取ったらセンターでライブが出来る的な!」

すみれ「まぁ、どういうルールでも負けないけどね」

かのん「え?」

165: 2023/02/19(日) 03:57:37.41 ID:FO0yL1bR.net
千砂都「おー、さすがすみれちゃん」

すみれ「あんたもやるんでしょ」

千砂都「まぁ、乗りかかったからねー」

かのん「??」

恋「千砂都さん、すみれさん。こっちに来てください。改めて可可さんに紹介したいです」

千砂都「そんなかしこまらなくてもいいのにー」

すみれ「そうよ、一時的な助っ人みたいなもんなんだから」

かのん「???」

恋「可可さんっ!」

可可「はい?なんですかレンレン。そんな大きな声出して」

恋「こほんっ、それはですね」

可可「?なんでそのふたりはやけにレンレンにくっついてるんですか?」

千砂都「ふふっ、ねとられってやつだねー?可可ちゃん♪」

可可「はい?」

すみれ「やめなさい。変な言葉教えるの」

恋「千砂都さんとすみれさんについて大事な話があります」

可可「?」

かのん「????」

きな子「あははは~、さっきから状況についていけてないかのん先輩おもしろいっす」

夏美「あなたはいいですね。なんでもお見通しで」

恋「実は昨日、千砂都さん達と大会に出たんです!!」


かのん「ええええええええええ!!!!!!」

166: 2023/02/19(日) 03:58:17.81 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「うるさいわよ、かのん」

かのん「ど、ど、どういうこと!?」

すみれ「今あんたには話してないから黙ってなさい」

かのん「え?出たの?すみれちゃんが!?ちぃちゃんが!?」

すみれ「しずかにして」

恋「それで、なんといいますか……この二人も明日の大会に出て欲しくて」

可可「はい、いいデスよー♪」

千砂都「おおっと!あっさりオッケーもらっちゃったー!」

すみれ「ずいぶん軽いわね」

可可「だってレンレンがそうしたいなら拒む理由がありませんし。それにレンレンからかしこまってお願いなんてほとんどありませんからね。いい加減な理由ではないのでしょう」

恋「可可さん……」

可可「そんな事より!!そこのおふたり!貴方達にもスクールアイドルへの情熱があったんデスね!!そうなら早く言ってくださいよ!!なーんで隠してるデスかー♪」

すみれ「いや、別にそういうわけじゃないけど……」

千砂都「しーっ、話あわせておこ?」

恋「あの、ごめんなさい……可可さん」

可可「何がデス?」

恋「一人で頑張るって約束したのに。一人じゃなくて」

可可「ふふっ、そんな事ですか。いいんですよ助けてくれる人がいるっていうのは人望という、いってみればスキルですからね。それもレンレンのちからというやつデス!」

恋「そうでしょうか……」

可可「それに、ククも……ひとりじゃありませんでしたし」

恋「え?」

可可「実はいろいろあって、かのんさんにほとんど歌ってもらいまして」


千砂都「ええええええええええ!!!!!!」

167: 2023/02/19(日) 03:59:03.89 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「うるさいわよ、千砂都」

千砂都「だって!かのんちゃんあれなんだよ!知らないの?」

すみれ「知ってるわよ」

千砂都「じゃあなんでもっと驚かないのっ!!すみれちゃん!!」

すみれ「つめてこないでってば」

可可「ええっと、これが……ねとられってやつデスね!千砂都!」

千砂都「」

可可「この言葉はこういう時使うのであってます?」

かのん「いや、わたしもわかんないし」

千砂都「……が、がーん!とられちゃったよー!あははははっ」

すみれ「おちゃらけてるけど、本気で動揺してたわね」

千砂都「そっか、歌ったんだかのんちゃん……」

すみれ「……」

千砂都「そっか、歌えたんだ。……えへへ」

すみれ(でも、誰よりも嬉しいのね)

可可「でも、いきなりメンバー増やしても大丈夫デスか?ナッツ~」

夏美「別に問題ありませんよ。明日の大会は誰でも何人でも参加していいみたいですからね」

すみれ「ずいぶんいい加減な大会ね」

夏美「いいえ、これは表に出る人間だけじゃない。裏側でスクールアイドルを支える人達も参加出来る形にすることで彼女たちの絆を確認し合うためなんですの」

すみれ「まぁ、そういうと聞こえはいいわね」

夏美「ですの!裏方にも優しくしてるところを見せつけて好感度を上げる最高のエンタメショーですの!」

すみれ「たった今、台無しになったけど」

夏美「じゃあ、私達一年は先輩のためがんばってるとこアピールしまくりますのでやさしくしてくださいね?でーすの!」

すみれ「はいはい」

夏美「じゃあ、よろしくですの!!」

168: 2023/02/19(日) 04:00:11.95 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「……」

可可「かのん」

かのん「……可可ちゃん」

可可「どうかしましたか?ずっと考え事してる顔デス」

かのん「ちょっとね」

可可「ふたりの事ですか?」

かのん「うん。まさか、ふたりが大会に出たなんて思わなかったから、ちょっとびっくりして」

可可「それはどうしてですか?」

かのん「そんな事するようなタイプじゃないと思ってたし」

かのん「だから先越されちゃった……みたいな事も思ったり?」

可可「?」

かのん「ふたりともほら、いつも余裕そうにしてるじゃん」

かのん「だから、そんな子の側にいると。無気力な私も、ちぃちゃんやすみれちゃんみたいに凄い力を秘めてるんだぞ~と思えてきて」

かのん「がんばらなくてもいいんだって、夢なんてなくていいんだって思えてきて……」

かのん「でも、今日会った二人はなんか輝いてて。目標が出来たみたいな?」

かのん「ちぃちゃんは前に目標をもって留学しちゃったんだけど、なんかその時よりもやる気満々にみえた」

かのん「まるで自分が心からやりたい事が決まったみたいに」

かのん「でも、私にはなにもない」

可可「なにもなくなんてないデスよ」

かのん「え?」

169: 2023/02/19(日) 04:00:56.94 ID:FO0yL1bR.net
可可「かのんにはとっても素敵な歌声があります!クク、感動しました。あの日ふたりで歌えてゾクゾクしましたもん!今でも鮮明に思い出せるんデスよ?」

かのん「でも、私は……歌えないから」

可可「歌えないのにククのために歌ってくれました。それはとてもすごいことでは?」

かのん「……っ」

可可「自分をもっと褒めてあげてください。貴方は素晴らしい人デス!」

かのん「……私もね」

可可「?」

かのん「可可ちゃんと歌えて、凄くたのしかった」

可可「おー!おそろいデスね!」

かのん「また一緒に歌いたいくらい」

可可「……そうですか!」

かのん「でも、もう……」

可可「ねぇ、かのん」

かのん「?」

可可「一緒にやりませんか?スクールアイドル」

かのん「え?」

可可「うん!一緒にやるデス!かのんの友達もいるんですから絶対楽しいデスよ!」

かのん「でもっ」

可可「歌えなくてもいいデス」

かのん「……なんで?」

可可「歌えなくたっていいじゃないですか!一緒にやってても!」

かのん「それじゃ、何の役にも立たないよっ!」

可可「いいえ。例えあの日、かのんは歌えなくても、同じステージに立ってククの隣にいて助けてくれたはずです。だから、歌えなくたって何の役にも立たないなんて事はありえません」

かのん「でも……」

可可「それに貴方に恩返しがしたいんデス。押し付けかもしれませんけどね」

かのん「え……?」

可可「暗い顔してるかのんが笑顔になれるように、最高の景色をみせたいんデス!クク達がいつも見てる景色を」

かのん「なにそれ?」

可可「ふふっ、それは一緒にやってからのお楽しみデス!」

かのん「一緒に……」

可可「例え歌えなくても踊れなくても、一緒にステージに立てなくても構いません。貴方と一緒にやりたいんです」

可可「素敵な世界を知って欲しい。最高の景色を見て欲しい。それはステージからでも例えステージじゃなくても見える輝きです」

可可「だから、一緒にやりましょう?」

171: 2023/02/19(日) 04:01:51.07 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


千砂都「そっかぁ、歌ったんだぁ」

すみれ「……」

千砂都「歌えたんだぁ」

すみれ「うるさいわね。さっきから」

千砂都「だって嬉しくないの?かのんちゃんが歌えたんだよ?」

すみれ「私はあんたみたいにかのんに大きな幻想を抱いてないのよ」

千砂都「えー!?そんな人いるのぉ!?」

すみれ「逆にあんただけよ。そんなのは」

千砂都「はぁ、でも聴きたかったな~かのんちゃんの歌」

すみれ「そうね」

千砂都「そういえばすみれちゃんは聴いた事あるの?かのんちゃんの歌?」

すみれ「……どう思う?」

千砂都「え?」

すみれ「もしかしたら私達、千砂都のいないうちに一緒にカラオケとか行ってたりしてね?」

千砂都「」

すみれ「……っふふ」

千砂都「な、なに急に笑い出して」

すみれ「別に、ただあんたもからかいがいがあるのねって思って」

千砂都「あー!やったなぁ?」

すみれ「たまにはあんたが慌てるのもいいものね」

千砂都「むむむ」

すみれ「ふふっ」

千砂都「……それでどうなの」

すみれ「なにが?」

千砂都「あるの?」

すみれ「……さぁ、どうかしら?」

172: 2023/02/19(日) 04:02:54.18 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「……」

夏美「こんなとこで黄昏て何やってるんですの?」

かのん「別に、ぼーっとしてるだけだけど」

夏美「ふーん、ですの」

かのん「……」

夏美「……かのん先輩も一緒にやるんですか?可可先輩と」

かのん「なんで?」

夏美「すみれ先輩と千砂都先輩に触発されて、あなたもやるのかなーと思って」

かのん「……さぁ、どうしよっかなって」

夏美「やめた方がいいですの」

かのん「いきなりずけずけと切り捨ててくれるじゃん」

夏美「向いてないですの。やめとけやめとけですの。ぜったいやんない方がいいですの」

かのん「なんかむかつくなぁ」

夏美「かのん先輩のために言ってるんですのー、ほんとに向いてないからやめとけですの」

かのん「やっぱむかつく。ねぇ、怒らせたいの?」

夏美「かのん先輩」

かのん「?」

173: 2023/02/19(日) 04:03:44.88 ID:FO0yL1bR.net
夏美「私は本気で言ってるんですの。だからやめてください」

かのん「なに、急に」

夏美「ステージで歌うかのん先輩はたしかに凄かったです。皆の心を奪ってました」

かのん「ほんとになんなのよ、急に」

夏美「けど、そのたびにあんなことになるならやらない方がいいです」

かのん「……なんで」

夏美「私が見たくないからですの」

かのん「……なにそれ」

夏美「……」


夏美「かのん先輩を苦しめる役目は私なんですの。だから勝手にひとりでなにかやって苦しまないでもらいたいですの。動画に出来ないだなんてもったいないですの」

かのん「はぁ?結局それ?ほんとこの子はっ」

夏美「だからぜっっったいやっちゃダメですの!認めませんから!」

かのん「どういう立場で言ってんのさ」

夏美「とにかくダメですからね!べーっだ」

かのん「あっ、ちょっと」

夏美「ぜったいだめですのーー!!」


かのん「なんなのよ。まったく」

174: 2023/02/19(日) 04:05:15.58 ID:FO0yL1bR.net
─────翌日。


可可「ついに最後の試練デスね!レンレン」

恋「はいっ!」

すみれ「さぁ、さっさと片付けて帰るわよ」

千砂都「いや、そんな簡単には片付かないと思うよー?」

かのん「すっごいね。ほんとにここでやるの?」

きな子「なんか古代遺跡みたいっすね。都会の真ん中にアンバランスっす!」

四季「その中央に電波塔みたいなタワーが建てられてる。これはアンマッチ」

メイ「そもそもスク-ルアイドルというのはアイドルという訳で、ただのアイドルになったとしたらそれは元スクールアイドルの」ブツブツ

夏美「まーだ言ってるんですの?いい加減にするですの」


悠奈「あー!いたー!!」


可可「はっ!!!???」


摩央「今日は勢揃いね」

悠奈「賑やかでいいね!たのしそう!」


可可「あわわわわわわっ悠奈サン摩央サンっ……ゴニョゴニョゴニョ」


すみれ「なにあれ」

恋「あぁ、可可さんは二人の前だとこうなってしまうんです」

すみれ「致命的な弱点じゃない」

千砂都「あははー、照れててかわいいね」

きな子「幸せって気持ちが流れてくるっす~♪」

すみれ「まったく、しっかりしてよ。今日は勝ちに来たんだから」

悠奈「おおっ、凄い自信だね!この子は手ごわそう!」

摩央「ええ、でしょ?執念深いのよ。こういう子は」

すみれ「ふん、負けると思って戦う子なんていないでしょ?」

悠奈「あー!たしかに!」

175: 2023/02/19(日) 04:06:19.39 ID:FO0yL1bR.net
???「ふん、くだらない馴れ合いに興じてるわね。Sunny Passion」


夏美「はっ!!」


ウィーン「だから、一昨日の大会に負けたのよ。この私に。でも、そういったら『一昨日はひとりだったから』だとか言い訳するのかしら?ふん、見苦しいわね。どうして素直に負けを認められないのかしら」


夏美「ひぃぃっ!!!またやべーやつが入り込んでますの!またひとりでペラペラ喋ってますの!」


摩央「悠奈、あの子が昨日いってた子?」

悠奈「そだよー」


可可「むっ……貴方は」

ウィーン「あら、私に負けた人じゃない。こんにちわ。名前も知らないけど」

夏美「ひっぃ!!!話の輪に入ってきましたの!どんだけアクティブなタイプのやべーやつなんですの!」

千砂都「だれ?」

恋「さぁ?すみません、私も初めて会う方なので……」

すみれ「ここにいるってことはこの子も敵でしょ?それだけわかってれば十分よ」

ウィーン「あら貴方……」

すみれ「?」

ウィーン「なんだ違ったわ。綺麗な髪の毛をしてるから私達と一緒かと思ったけど、よく見るとこてこての日本人じゃない。華がない顔してるもの」

すみれ「は?」

ウィーン「でもいいチョイスよ。その髪色は。私達に憧れて、私達にコンプレックスを感じてるのよね。そういう子を見ると愛しくなって抱きしめたくなっちゃう」

すみれ「ここで潰すのってルール違反かしら?まだ始まってないからこそセーフだと思うんだけど」

千砂都「おもいっきりアウトだと思うよ」

恋「喧嘩はやめましょう?ね」

176: 2023/02/19(日) 04:07:08.60 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「とにかく今日はわざわざ集まってくれてありがとう?全員私に負けるためにね」

摩央「ふふっ、おもしろい子ね」

悠奈「でしょでしょ?」

可可「今日勝つのはクク達デス。貴方の出番はありませんよ」

ウィーン「おもしろいジョークね。私の足元にも及ばないくせに」

可可「そうやって言ってるといいデス。足元をすくいやすくなりますからね」

ウィーン「そう?辿り着く事さえ出来ないと思うけど、まぁそれもすぐにわかることよ」


ウィーン「……」チラッ

かのん「……?」

ウィーン「澁谷かのんっ!!」ギリッ!

かのん「えぇっ!?」


ウィーン「ふん」スッ


千砂都「あ、行っちゃった」

すみれ「なにやったかしらないけど、よくやったわ。かのん」

かのん「え?なにもしてないよ!わたし」

夏美「やっべー奴にフルネームで覚えられてますの!!完全に目つけられてますの!!」

かのん「なんでっ!!?」



『はーい、そろそろ締め切りまーす。まだの方はお早めにエントリーを済ませてくださーい』



悠奈「あっ!はじまっちゃうよ!みんな!」

夏美「もうそんな時間ですの?余裕をもってきたはずなのに」

すみれ「変なのに絡まれたからよ」

恋「とにかく急ぎましょうか!」

可可「はいデス!」

177: 2023/02/19(日) 04:08:17.18 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


悠奈「間に合ったねー☆くぅくぅちゃん!」

可可「はいデス~!」

すみれ「デレデレしちゃって、緊張感のない」

恋「大丈夫です。可可さんは始まればスイッチの切り替えが出来る人ですから」


『それでは開催します。第一回ミステリーライブ』


すみれ「ふーん、第一回なんだ」

千砂都「という事は何が起きるかほんとにわからないね」

恋「大会というものは回を重ねるごとにルールを見直され洗練されていきますからね」

可可「混沌とした大会になりそうデス!」

かのん「ひぃ……、中は薄暗くてなんか不気味だなぁ」

夏美「ほんとびびりですのー、かのん先輩は」

四季「先輩たちをサポートする。今日こそは」

メイ「そもそもアイドルってなんだ?どこから生まれてどこにきえてくんだ?私はなにも知らないじゃないか」ブツブツ

きな子「メイちゃん始まるっすよ」


『それでは始まります!お怪我などしないよう気をつけてくださいませ』


かのん「怪我?」

178: 2023/02/19(日) 04:09:06.29 ID:FO0yL1bR.net
バンッ!


かのん「え?」

千砂都「あれ?床が」

すみれ「なくなったわね」

四季「私達、落ちてる」

夏美「ひいっ!なに冷静に言ってるんですの!」

恋「あわわわわわっ!」

メイ「うわぁ!!!!なんだこれ!どうして私はこんな所に?てかどこだここ?てかなんでおちてるんだぁーーー!!!」

きな子「あははははっ!深いっす~」

可可「みなさんっ!!!しっかりするデス!!!」






ヒュウウウウウウウウン ドス!

179: 2023/02/19(日) 04:09:43.57 ID:FO0yL1bR.net
かのん「いてて、……っていいたいけど何故か痛くない。なんで?」


かのん「……まぁ、いっか無事なら。それで」


かのん「それよりどうなったの?私達」

すみれ「……どうやらバラバラになったみたいね」

かのん「あっ!すみれちゃん!大丈夫?」

すみれ「ええ、なんとかね」

かのん「他の皆は……」

すみれ「はぐれたというか分断されたというべきかしらね」

180: 2023/02/19(日) 04:10:22.20 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


メイ「……っは。わ、わたしはいったいどうなって?」

千砂都「あー、気が付いた?メイちゃん」

メイ「えっ?」

千砂都「ふふ♪」

メイ「ちちちちちちちさと先輩っ!!すみません!先輩を下敷きにして寝ちゃってて!」

千砂都「いいよー、怪我がなくてよかったよかった♪私がクッション代わりになれたのかな?」

メイ「私のやろーなんてことを!こんな小さい先輩をクッション代わりにするなんて!この野郎っ!このっ!このっ!」ドス!ドス!

千砂都「こーら、メイちゃん。自分の事殴らないの」

181: 2023/02/19(日) 04:11:06.98 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「レンレン!大丈夫デスか?」

恋「はい、なんとか」

可可「よかったデス!」

恋「不思議とあんなところから落ちたのに怪我ひとつありません」

可可「衝撃を吸収するやつという事でしょうか?」

恋「なるほど四季さんが車に使っていた素材ですね」

可可「しかし、めちゃくちゃしますねこの大会。おかげでみんなとはぐれちゃったじゃないデスかー!」

182: 2023/02/19(日) 04:11:58.46 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


四季「この材質、すごい」

きな子「そうなんすか?」

四季「あんなところから落ちても私達、怪我してない」

きな子「四季ちゃんがつくったあのくるまさんよりもっすか?」

四季「凄い。いったいどうなってるか調べたい」

きな子「でも、皆の事も気になるっすよ」

四季「うん……でも、これも後々のために役立つから気になる」

きな子「……う~ん、あっ!じゃあ調べながら探せばいいじゃないっすか?」

四季「?」

きな子「きな子は道民っすから炭鉱はおてのものっすよ~掘りながら探すっす!」

183: 2023/02/19(日) 04:12:49.62 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


ウィーン「ふん、なるほどね。これがこの国の言うおもてなしってやつかしら?ずいぶんなことしてくれるじゃない」

夏美「……」ボーゼン

ウィーン「これが粋ってやつなのかしら?くだらない。ほんとに何をやらせてもくだらない事しか出来ないのね。貴方達は」

夏美「ひぃ~!!なんでこんな人とふたりっきりなんですの!!」

ウィーン「貴方達のセンスってほんと独特よね。これはもちろん悪い意味でいってるのよ?わかるかしら?」

夏美「誰か来てですのっーーー!!!」

184: 2023/02/19(日) 04:13:49.71 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「分断?」

すみれ「そう。私達はあえてバラバラにされた」

かのん「なんでまたそんな事を」

すみれ「夏美が言ってたわよね。ゴールしたチームだけがライブが出来るんじゃないかみたいな事」

かのん「でも、あれはあの子の予想だし」

すみれ「いいえ、きっとあってたのよ。でも、厳密には少し違ってる」

かのん「?」

すみれ「チームじゃなく生き残ったメンバーでだけってこと。つまりここから抜け出せたメンバーでのみライブが出来るって事よ」

かのん「ってことは」

すみれ「全員揃うかもしれないし私一人で歌わないといけないかもしれない」

すみれ「この迷宮を脱出させる目的は、ふるいにかけて人数を減らし、体力も減らす事で個々のコンディションを下げる事」

すみれ「つまり不完全な状態でもライブをやりきれるのか?そういうのが見たいんじゃない?そしてやりきれたチームのみが優勝できる」

かのん「スクールアイドルってそんな過酷な競技だったの?」

すみれ「知らないわよ。でもまぁ、運営の魂胆はわかったわ。おもしろい、やってやろうじゃない」

かのん「ううっ、肝が据わってるんだから。すみれちゃんは」

185: 2023/02/19(日) 04:14:30.62 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「ほら、いくわよ。まずはここから出ないと話にならないんだから」

かのん「待ってよ!ひとりにしないで~!」

すみれ「早く来なさいってば」

かのん「うぅ、ここって地下だよね?薄暗くておどろおどろしくてほんと不気味。なんか出てこない?出てこないよね?」

すみれ「さぁね」

かのん「出ないっていってよ!!!」

すみれ「耳元でうるさいわね。こんなに騒がしくしてたらおばけもでてこれないんじゃない」

かのん「おばけっ!!!??きゃあああああああっ!!!!」

すみれ「いや、おばけって言っただけじゃない……びびりすぎよあんた」

かのん「すみれちゃん!私から一ミリも離れないでよ!離れたらどうなるかわからないから!」ギロッ

すみれ「はいはい、あんたがね」

かのん「ね?ね?あれ顔に見えない?見えるよね?」

すみれ「こういう時、あんたとは一番一緒になりたくなかったわ」

186: 2023/02/19(日) 04:15:20.18 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


メイ「千砂都先輩は絶対私が守りますからね」

千砂都「おー、頼もしいー♪ナイトだねぇメイちゃん」

メイ「千砂都先輩は御二人のコーチで友人で、スクールアイドルだ!この命に代えても守るぞ!」

千砂都「ふふ、たよりにしてるねー」

メイ「しかしなんだこの迷宮は、さっきから同じところをぐるぐるまわってる気がするぞ」

千砂都「まるみたいに?」

メイ「もしかしたら隠し通路でもあってそこからじゃないと出れないんじゃないだろうな」

千砂都「隠し通路かぁ~あっ、あそこのでっぱり怪しくない?」

メイ「どれですか?」

千砂都「これこれ、なんか見るからに押して欲しそうだよ」

メイ「罠っぽくないですか?」

千砂都「うーん、でもこういう時恋ちゃんなら押すと思うなぁ」

メイ「そうかもしれませんけど……って何押してるんですか!」

千砂都「成功も失敗もやってみないとわからないからね~」

メイ「んな事いってる場合じゃ」


ドドドドドドドドドドッ


メイ「なななな何の音だ?」

千砂都「うーん、あっ!あれじゃない?」

メイ「っ!!!!???」

千砂都「おおきなまるがこっちに転がってくる音♡」

187: 2023/02/19(日) 04:15:56.43 ID:FO0yL1bR.net
メイ「うおおおおおおおおっ!!!!!」



千砂都「わー、メイちゃんって大胆だね。私を小脇に抱えて走り出しちゃうなんてさ」

メイ「先輩がぼーっとしてるからだろ!」

千砂都「うーん、だってまるに潰されるならそれも本望かなって……♡」

メイ「なにいってんだよ!!」

千砂都「ほーら、早く走んないとぺちゃんこになっちゃうよ」

メイ「このぉぉぉぉっ!!!」

千砂都「でも疲れちゃったら私の事離しちゃっていいからね~」

メイ「絶対離すかっ!このやろうっ!!!」

千砂都「あははははっ!がんばれがんばれー」

188: 2023/02/19(日) 04:16:44.48 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~




可可「う~ん、この不自然に置かれてるブロックは?」

恋「謎解き要素ですね!」

恋「ゲームでもよくあります!突然の謎解き要素!」

恋「それはたいてい考える必要もないくらい単純なものでゲームのテンポを著しく悪くしてる要素のひとつです!」

可可「最近なんのゲーム始めたんですか?レンレン」

恋「これも考えるまでもありませんよ。このブロックをそこのくぼみまで移動させればいいだけの話です」

恋「すごく単純ですね。可可さん、これを謎解きと呼んでいいと思いますか?」

可可「知らないデス」

恋「私はよくないと思いますね」

可可「タネがわかっているなら早くやっちゃいましょうよ。レンレン」

恋「そうですね。いたずらに時間を費やすものでもありません。こんなものに」

可可「じゃあ、押しますよー」

恋「はい」

可可「せーのっ」


可可&恋「んんっ!?」

189: 2023/02/19(日) 04:17:22.39 ID:FO0yL1bR.net
可可「お、おもいっ、重いデスこれ!」

恋「はぁ、はぁ……っ!」

可可「ちょっと……これは、クク達だけでは無理ですね」

恋「……なるほど」

可可「こうなったら誰かと合流しましょう。人数が多い方がいろいろと有利ですし」

恋「そういうアイテム。もしくは技が必要なんですね」

可可「はい?」

恋「ゲーム上に設置された動かせそうな岩。とおせんぼするようになっていて、それをどかせば向こう側にいけるのにと私達をもやもやさせます」

恋「でも、ある程度物語を進めるとそれをどかす事ができるようになるんです!」

恋「その時の世界が広がった感じときたらほんとに感動して」ウットリ…

可可「むぅ、レンレンってば自分の世界に入り込んじゃって、まったく子供なんデスから」

恋「はぁ、ゲームとはいえ自分に出来る事が増えるのはどうしてあんなにも快感なんでしょう!それが現実で出来るなんて!」

可可「ふふ、でも、レンレンが楽しそうならククも幸せデス!」

190: 2023/02/19(日) 04:18:13.06 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


きな子「えっほ、えっほ」

四季「なるほど、合成樹脂に一定の空間を作る事で衝撃を吸収してるんだ」

きな子「えっほ、えっほ」

四季「その空間はハチの巣上になってる。虫たちの知恵を借りてるんだね」

きな子「虫さんっすか?」

四季「そう、やっぱり昆虫の世界は凄い。学べることがたくさんある」

きな子「えー?四季ちゃんみたいな賢い人がわざわざ虫さんから学ぶんすか?」

四季「……きな子ちゃん、こんな話がある」

きな子「なんすか?急に」

四季「ある国にとても聡明な人がいて皆から尊敬されていました。でも、そんな凄い人でも虫の知恵を借りる事があるの」

きな子「へぇーどんな時にっすかね」

四季「山の中で迷って飲み水に困った時」

きな子「それは大変っす。水がなきゃ人間は一週間も生きれないっすよ~」

四季「そんな時、その人は蟻の知恵を借りました」

きな子「ありさんっすか?」

四季「蟻にも飲み物は必要。だから蟻塚の真下には水脈がある。なのでその人は蟻の巣を掘り当てて飲み水を得ました」

きな子「おーっ」

四季「どんなに凄い人でもこうやって小さな存在に助けを乞う事がある。ほんとに頭のいい人は虫でも鳥でも動物でも、自分より下等な生き物と見下さずに、素直に学びを乞える人の事をいうの」

きな子「なるほど、……でもそれって虫さんから直接教えてもらったわけじゃないっすよね」

四季「?」

191: 2023/02/19(日) 04:18:59.70 ID:FO0yL1bR.net
きな子「それを調べた人がいてだから蟻さんの巣の下はそうなってるって知識があっただけっす」

四季「……」

きな子「だから虫さんたちに教えてもらったわけじゃないっすよそれ。やっぱり凄いのは人間っ」

四季「その人もきな子ちゃんみたいに動物の気持ちがわかったの」

きな子「えええ!ほんとっすか?」

四季「ほんと、まじ」

きな子「きな子はさすがに虫さんの気持ちまではわからないんすけど、その人はわかったんすかね?」

四季「うん、絶対そう」

きな子「わ~!すごいっす~!」

四季「だからきな子ちゃんも尊敬してね。虫のことを」

きな子「はいっす!」

192: 2023/02/19(日) 04:20:11.77 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


ウィーン「ふん、ここはヨーロッパの古代遺跡を意識して作られたって所かしら?日本人ってほんと私達の先祖が好きなのね?」

夏美「……」

ウィーン「オーストリアって国はね?ヨーロッパの中央に位置してるの。世界の中心であるヨーロッパのさらに中心。あら、それを知って目の色が変わったわね?そうよ、今貴方の前にいるのは本物のヨーロッパ人なの」

夏美「ほんとこの人うるさいですの……聞いてもない事べらべらと……」

ウィーン「ほら、貴方達の憧れてる白人が目の前にいるわよ?握手してあげましょうか?」

夏美「憧れてねーですの……まったく。……ん?ここは」

ウィーン「あら、行き止まりね」

夏美「げ~、ここまできたのに引き返すんですの?」

ウィーン「ふん、節穴ね。日本人の目は。あれを見なさい」

夏美「?あれは……」

ウィーン「そう趣味の悪い絵。これが貴方達の日本人のセンスを表してるわ」

夏美「パズルですの!9×9のパネルを動かして正しい絵にかえるやつですの!これを解けば脱出できるんじゃっ……!」

ウィーン「ぐちゃぐちゃでまるでどこかとどこかが入れ替わってるみたい。貴方達はどういう神経でこんな絵を描いてるの?信じられない。精神鑑定を受ける事をおすすめするわ」

夏美「だからパズルだって言ってるですの!そんなもんそっちが受けてろですの!」

193: 2023/02/19(日) 04:21:31.80 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「あぁ、貴方達の大好きなIQクイズってやつかしら?意味のない数字にすがってるのね」

夏美「ええっと、この模様がここと繋がるからこれとこれをスライドさせて」

ウィーン「あんなものがいくら高くてもね。何をしてるかが重要なのよ。貴方はその数値に自信があるのかしら?だとしたら今やってる事はなに?バカみたいに趣味の悪い絵を動かして、それって意味のある行動なのかしら?頭のいい人間がする行動?知能があってもね、知識がなければバカと一緒なのよ。そんな絵を変えれても偉人のように世の中を変えることは一生できないわ」

夏美「あー、これが邪魔ですの!これがなきゃこれを向こうにやせて完成するのに!」

ウィーン「ほんとにマヌケね。貴方達って」


バキッ!!


夏美「ちょっ、何やってるんですの!?」

ウィーン「こんなもの壊して作り変えた方が早いでしょ?回りくどい事して。貴方達ってどうしてそんなに効率の悪い事を好むの?」

夏美「そんななんでもありが許されるわけないでしょ!ばかなんですの!あなた!」

ウィーン「あははははっ!おもしろい冗談を言うわね。私達、白人に向かってバカだなんて」

夏美「ほんと話しになんないですの!もう向こう行けですの!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ


夏美「ん、な、何の音ですの!?」


サーッ


夏美「なっ!床が沈んでいきますの!この下は、砂っ!?きゃあああっ!!?どんどん沈んでくですの!蟻地獄ですの!」

ウィーン「貴方達ってほんとこういうトラップが好きよね。流砂だとか底なし沼だとか。そういう性癖なの?そういうのはまって落ちていきたいのかしら。そういえば何かに熱中する事を最近は沼にはまるって言うらしいじゃない。どんだけ好きなのよ落ちていく事が」ズブブブブブッ

夏美「ひぇっ……!沈みながらしゃべってるですの!眉1つ動かさずに……!」

194: 2023/02/19(日) 04:22:22.86 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「まぁ、たしかに落ちていく快感、沈んでく快感というのあるかもしれないわ。でもそれって諦めって気持ちの裏返しじゃない?もうなにもかも諦めてしまいたいという願望からそういうのに快楽を見出してるのよ。倒錯ってやつね。毎日奴隷みたいな人生を過ごしてる事への諦め。そこから抜け出せないのならいっそ沈んでしまって楽になりたいという気持ちからなんでしょう?」ズブブブブブッ

夏美「なにやってるんですの!さっさと這い上がるですの!しんじゃいますよ!」

ウィーン「でも諦めたいなんてくだらない願望よね。いい?人間には諦めないといけない時なんてないの。環境のせい時代のせい、そんなの全部言い訳だわ。だって全部ぶち壊してしまえばいいだけじゃない。回りくどい事を好み過ぎてバカになってるんじゃない?自分の進む道に邪魔なものなんてね。全て壊してしまえばいい。そうやって全部ぶち壊せばね。諦めなきゃいけない状況なんてやってこないのよ!」ズブブブブブッ

夏美「諦める諦めない以前にあなたは動き出しなさい!ほんとにしんじゃいますよ!ほら、手を掴んで
っ」

ウィーン「あらなんだ、やっぱり握手がしたかったんじゃない。そうよね、この世にいる全人類は私達白人に強い憧れを抱いているものね」ズブブブブブッ

夏美「ほんとむかつく!こんな奴たすけたくねーですの!!あなたっ!一度でいいから助けを乞いなさい!そしたら助けてやるですの!」

ウィーン「助けを乞う?誰が誰に?まさかとは思うけど白人である私が日本人である貴方にではないでしょうね?」ズブブブ…ブブッ…

夏美「あーもうっ!命乞いをしろですの!そしたらこっちも助けてやろうって思えるんですの!だから早くっ」

ウィーン「夢みたいなことはまぶたを閉じてから宣いなさい。わかりやすくいうなら寝言は寝ていえってやつかしっ……ごぼ、ごぼぼぼぼぼ」

夏美「あっ…ちょっと……!」

ウィーン「ごぼ、ごぼっぼごぼぼぼぼぼぼっ」

夏美「沈んでいってるのに、まだなんか喋ってるですの……どうかしてるんじゃないですのっ……!」



ゴボボボボ……



夏美「………………」

195: 2023/02/19(日) 04:24:42.39 ID:FO0yL1bR.net
夏美「し、しずんじゃったですの!見頃しにしちゃったですの!」


夏美「わ、わ、わたしが……こ、ころした……?」


夏美「……はぁ……はぁ……はぁ」


夏美「ち、違いますの!勝手にあいつが沈んでいっただけですの!わたしは関係ないですの!」


夏美「だいたいそうですの!あいつはとってもいやな奴でした。そんな人が沈んでいっても何も感じないですの!いい気味ーってやつですの!」


夏美「あんないやなやつ!世の中いない方がいいまでありますの!だったらどこまでも沈んでしまえばいいんですの!そ、それが世の中のためですの!」


夏美「そうっ、これはスカッとする系の出来事ですの!悪い人が懲らしめられただけですの!にゃはははははっ!!!!」


夏美「それに私は助けようとしました!なのにあいつが意味の分からないことをずっとぺらぺら喋ってるからでっ……」


夏美「だから、わたしは悪くないですのっ!!!!」


夏美「……はぁ……はぁ……はぁ」


夏美「…………っ」



ウィーン『私って見ての通り。由緒正しい音楽一家の生まれなのよ?』

ウィーン『ほら、貴方達の憧れてる白人が目の前にいるわよ?握手してあげましょうか?』

ウィーン『あらなんだ、やっぱり握手がしたかったんじゃない。そうよね、この世にいる全人類は私達白人に強い憧れを抱いているものね』



夏美「ううううっ!!ろくな思い出がないですのっ!!ぜったい助けたくないですのっ!!!」


夏美「っ…………」


夏美「でもっ…………でもっ!!!」


夏美「あーーーっもうっ!!!」



バッ ズボッ ボボボボボボ……

196: 2023/02/19(日) 04:25:52.61 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「ちょっと!離れないでっていったよね?どういうつもりなのすみれちゃんって?」

すみれ「ちょっと数ミリ離れただけじゃない。うるさいのよあんた」

かのん「一ミリも離れないでっていったよね?なんで私のお願い聞いてくれないのかな!!」

すみれ「あー、ほんとめんどくさい」

かのん「きゃああああああああああっ!!!!」

すみれ「なによ」

かのん「びっくりした!よく見たらすみれちゃんの影じゃない!あんま好き勝手させてんじゃないよ!」

すみれ「はいはい、私の影、お願いだからおとなしくしててね」

かのん「ばかじゃないの!影になんか話しかけて。今そんなふざけてる場合じゃないってわかってるよね?」

すみれ「いい加減怒るわよ」

かのん「もうっ!早くこんなとこ抜け出してよ!」

すみれ「今やってるでしょうが」


ガンガンガン


すみれ「?」


ガンガンガン


かのん「ひぃっ!な、何の音!?」


ガンガンガン


すみれ「……近づいてくるわね」


ガンガン、ガンッ!!!


かのん「ひぃっ!!!」



きな子「でたっす~」



かのん「きゃああああああああああっ!!!!」

すみれ「ちょっと!引っ張るんじゃないわよ!!!」

かのん「でたああああああああああっ!!!!!」

197: 2023/02/19(日) 04:27:26.05 ID:FO0yL1bR.net
きな子「?」

四季「どうしたの」

きな子「なんか先輩たちに会えたけど逃げられたような?」

四季「そう。どっちに行ったか分かる?」

きな子「あっちっす!」

四季「じゃあ、追いかけよう」

きな子「はいっす!」



かのん「でたっ!でたっ!でたぁ!!!きな子ちゃんがでたぁ!!!」


かのん「って、出てきたのきな子ちゃんじゃん!!」

かのん「きな子ちゃん相手になに逃げてんの?ほんと信じらんないっ!いい加減にしないとぶん殴るよ!」

すみれ「やってみなさいよ。そしたらこっちもやっと手が出せるわ」



きな子「いたっす!」

四季「うん、いたね」

きな子「でも、なんか険悪っすけど」

四季「そうだね」

きな子「どうするっすか?」

四季「触らぬ神に祟りなし」

きな子「わかったっす!落ち着くまでここで眺めてるっす」

四季「うん」



かのん「すみれちゃんがしっかりしないからっ!」

すみれ「はぁ?全部こっちの台詞なのよあんた」

かのん「だいたいすみれちゃんっていっつもそうっ!」

すみれ「なによ」

かのん「なにさ!」

すみれ「ふん」

かのん「ぐぬぬぬっ……いつもそうやってスカしてぇ!」

198: 2023/02/19(日) 04:28:38.08 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「レンレンのいう、そのアイテムというのはどこにあるんですかねー」

可可「そもそもほんとにあるんでしょうか」

恋「ありますよ。ゲームのお約束なんですから」

可可「あるといいデスけど」

恋「この先にいくとなにかありそうな気がします!」

可可「ほんとデスかー?」

恋「ほら、ここに!」

可可「……なにもない行き止まりデス」

恋「……まぁ、最初に行き止まりを引くのはあたりですからね。この手の探索ゲームでは」

可可「はーい、じゃあ、さっきの分かれ道戻りますよー」

恋「あっちの道が正規ルートなんでしょうね。きっとその道すがらにあるんでしょう。そういう必須アイテムは」

可可「あるといいデスけど」

恋「さぁ、いきますよ!可可さん」

可可「先にいかないでください。危ないデスよ」

恋「このツタをくぐって……今度こそ、ここにはっ!」

可可「……こっちも行き止まりデス」

恋「………」

可可「レンレン」

恋「詰みましたね」

199: 2023/02/19(日) 04:29:51.96 ID:FO0yL1bR.net
可可「ほら、諦めないデス。さぁ、誰か探しますよ。そっちの方が手っ取り早いですから」

恋「とはいっても、うまい具合に誰かと会えるでしょうか」


コッチニイッテミヨー ソウネ


可可「そのうまい具合があるものデスね!向こうから人の声がしますよ!レンレン」

恋「ほ、ほんとですね……!なんてタイミングのいい」

可可「どこのどなたかわかりませんが助けてもらいましょう!ちょっとーそこのおかたー」

恋「うーん、でも聞いたことがある声のような……?」

可可「助けてデ─────」


悠奈「うーん?」

摩央「あら」


可可「あ、あ、あ。悠奈サン、摩央サンではありませんか、ホンジツハオヒガラモヨク…」

悠奈「あー!くぅくぅちゃんっ!また会えたね!」

摩央「無事だったみたいね」

可可「は、はい、おかげさまで、スコヤカナイチニチヲスゴサセテモラッテ」

恋「悠奈さん?摩央さん?」

悠奈「やっほー!そっちもふたり一緒だったんだ☆」

摩央「私達とおなじね」

悠奈「ライバル同士が勢揃いだー!」

摩央「出会ったからにはここで勝負でもする?」

可可「えええ!?今ここで勝負ですか?」

恋「お引き受けしたい所ですが、今はやめましょう」

悠奈「えー?つれないなー」

恋「だって、お互いここを出てからした方が面白いと思いまして」

摩央「お互い……ね。という事はもしかして、今から協力を持ちかけられるのかしら?」

恋「はい」

可可「ちょっとレンレン!そんな厚かましいお願い失礼デスよ!」

悠奈「わー!楽しそう!そーだよね。一緒にクリアして正々堂々と戦った方が面白いもんね!」

摩央「ふふ、いいわね。それ」

可可「ええっ!!いいんですか!!」

可可「そんなっ、おふたりとご一緒出来るなんてクク夢みたいデスっ♪」

悠奈「あははは~、くぅくぅちゃんかわいい~」

可可「や、やめてくださいっ!からかうのは!顔が熱くなっちゃいマスっ!!!」


恋「もう、可可さんは……」


悠奈「じゃあ、せっかく協力するなら円陣でも組んじゃう?」

可可「え、えぇ!?いいんデスかぁ~」デレデレ


恋「……ふふっ、でも、可可さんが楽しそうなら私も幸せです♪」

200: 2023/02/19(日) 04:31:24.82 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美「げほっげほっげほっ!!!」


夏美「あー、ひっどい目に遭いましたの……!」


夏美「でもまさか砂の下にこんな空間が広がってるとは……」


夏美「これならほっといても助かってたですの。あーあ、こんな人助けようとして飛び込まなきゃよかったですの」


ウィーン「ふん、自分から飛び込んだくせにずいぶん被害者面するじゃない」

夏美「誰のせいですの!こっちは貴方を助けようとしてっ!」

ウィーン「助けてあげた……ね。貴方達ってそうやって恩を売る事でしか、私達に対等に見てもらえないと思ってるわよね。それってなんて言うかわかる?自信のなさの表れっていうのよ。自分に魅力がないがないから、そういう形でしか好きになってもらうきっかけがないと思ってるんでしょう。まぁ実際その通りなんだけれど」

夏美「ほんとになんでこんなのためにっ……!」

ウィーン「日本人は皆、自分に自信がないのね。命をかけないと誰かに好きになってもらえないって本気で思ってる。まぁ、貴方が私の事をそんなにも好きなのはわかったけど」

夏美「はぁ!?ぞっとするような事を言うなですの!!気色悪いっ!」


夏美「あーもうっ、そんな事よりさっさと出るですの。こんなところ」

夏美「落とされた上に更に下にまで落とされたんですからゴールにはかなり遠くなってるはずですの」

ウィーン「ふん、陳腐で単純な発想ね。ご丁寧に地下3階から2階1階と経て地上に出れるとでも?これは迷宮。いわば立体的な迷路なのよ?地上へのゴールが地下1階にあるとは限らない。もしかしたら地下2階にあるかもしれないし3階にあるかもしれない。ちゃんとゴールしたければそういう固定観念は捨てる事ね」

夏美「ぐぬぬ、ムカつきますが一理あります。確かにそうですね。でも、急にまともな事をいうなですの!」

ウィーン「でも、その単純な貴方達日本人が作ったものだからそんな複雑に作られてるわけないかしら?ふふっ、そうよね所詮は貴方達が作ったものですもんね。今言った事は忘れて頂戴」

夏美「前言撤回ですの。やっぱりこいつは何一つまともじゃないですの」

201: 2023/02/19(日) 04:33:02.42 ID:FO0yL1bR.net
ゴゴゴ…


夏美「?……この音は?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ


夏美「っ!も、もうっ!今度はなんですの!」


アハハハハハ~!イケイケ~!


夏美「はい?なんですかこの声は……」


メイ「うおおおおおおおっ!!!!」


夏美「メイッ!?」


千砂都「わたしもいるよー」


夏美「ていうかその後ろ!」

ウィーン「大きな岩が転がってきてるわね。ふん、実に安直な展開。こういう場所でピンチといえばこういう展開しか思いつけないのかしら?天井が落ちてくるとか槍が降ってくるとかいろいろあるでしょう?大蛇に襲われるとかいうのもあるわよ。どう?この白人の発想力。何をとらせても貴方達より秀でているでしょう?」

夏美「やっばいですの!こっちくるなですの!」

メイ「別に行きたくて行ってる訳じゃねぇよ!」

夏美「きゃあああっ!くるなですの!」

ウィーン「ふん、ほんと日本人って逃げてばっかりね」

夏美「あなたも!いつまでもくだらない事言ってないで逃げるですの!」

ウィーン「いいえ、逃げないわ」

夏美「もうっ!ほんとこのひとはっ!」

ウィーン「だって、言ったでしょう?全部壊せばいいって」

夏美「はぁ?」

ウィーン「私の『本当の歌』は全てを破壊する─────」

夏美「ばかは氏ななきゃ治らないというのはほんとなんですね。なにが『全てを破壊する─────』ですの!じゃあ一生歌でもうたってろですの!ばーか!」

ウィーン「いいわよ。そんなにいうなら聴かせてあげる。さっきのお礼にね?」

夏美「は?お礼?」

202: 2023/02/19(日) 04:33:56.61 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「─────」スゥ…


千砂都「っ!メイちゃん!あの人の後ろに滑り込んで!」

メイ「ええ!?」

千砂都「いいからはやく!」

メイ「あーっ、よくわかんねぇけどこうなったらやけだっ!おらぁ!!!」


ウィーン「─────♪」


千砂都「セーフ!!」

メイ「なんだ?あいつ急に歌い出してって……っ」


メイ「なんだこいつの歌っ、ナイフみたいに心に刺さってくるっ!!」ゾクッ…


千砂都「おー!スクールアイドル大好きメイちゃんだからこその感受性の高さだね」


夏美「……?」


千砂都「おおっと!こっちは感受性ゼロだー!」(両手でまる!)


ピシッ


メイ「なっ!歌で、岩にヒビが!」

千砂都「すごいねー」

夏美「はぁ?そんなバカな事……」


バァァァンッ!!!!


夏美「……」

メイ「っ!」

千砂都「おー!」パチパチパチ


ウィーン「ふん、だから言ったでしょ?」


ウィーン「全部壊してしまえばいいって」

203: 2023/02/19(日) 04:35:02.26 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「きな子ちゃん達と合流出来てよかったぁ〜、こっちはすみれちゃんと一緒だったから不安で仕方なかったよぉ」

すみれ「こっちの台詞なんだけど」

かのん「ほんとこういう時、頼りにならない人って嫌だよね」

すみれ「……」イラッ

きな子「ど、どんまいっす、すみれ先輩っ」

四季「どんまい」

すみれ「どうも」

かのん「ふぅ、やっと落ち着いてきた」

すみれ「これで足を引っ張る子もいなくなってくれたって事でいいのかしら」

きな子「でも、どうするっすか?こっから」

かのん「皆で協力して早く出口見つけようよー」

きな子「そうは言うっすけど、きな子達は今自分がどこにいるのかもわからない状態っすよ」

すみれ「誰かさんがビビって連れ回してくれたおかげで余計にね」

四季「こういう時は、風の吹く方向に進むのが吉」

かのん「なにそれ。占い?」

四季「ううん、科学的なこういう時の抜け出し方」

きな子「でもこんな地下で風なんか吹かないっすよ」

すみれ「いえ、出口があるという事はそこから空気が入り込むはずよ」

四季「そう、つまり風を感じてその方向に進んでいけばいつかは出口に着く」

204: 2023/02/19(日) 04:37:16.30 ID:FO0yL1bR.net
きな子「風を感じる……でも、どうやって感じるっすか?じっとしてても風なんて感じないっすけど」

四季「微量な風じゃ感じづらい。けど、肌が濡れてると風を感じやすいでしょ?」

きな子「なるほど、濡らすんすね。丁度きな子水持ってるっすよ」

四季「ううん、水は貴重になるかもしれない。それよりもっとちょうどいい事に、かのん先輩汗だく」

かのん「さっきから冷や汗かきまくりだからね」

四季「しばらくじっとしててください。そしたら冷たい風を感じるはずです」

かのん「うん、わかった……休憩したかったしちょうどいいや」


かのん「ふぅ……」



…………



すみれ「そういえばあんた達どっから出てきてたのよ」

きな子「あー、きな子達は壁の中を掘り進んでたんすよ」

すみれ「へぇ、次からは出禁レベルの事やってるじゃない」

四季「でも、おかげで次の発明の参考になった」

すみれ「ふーん、よくわかんないけど調べてたのは振動を吸収する素材ってやつ?」

四季「そう、この迷宮の素材は私が開発したものより高性能」

すみれ「あんたが作ったあの車も十分すごいと思うけどね」

きな子「四季ちゃんは向上心の塊なんす」

205: 2023/02/19(日) 04:38:26.84 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「ていうかよくそんなの掘れたわね、衝撃は吸収されるんじゃないの?」

四季「吸収といっても緩衝材として肩代わりしてもらうだけ。ダメージというものを無くすことは出来ない。人体に達する前に無にする事は出来てもそれは衝撃エネルギーをたくさんの身代わりで減らしてるだけ」

きな子「だから同じところを何回も叩けば削れちゃうんすよね」

すみれ「なるほどね。あるものはゼロにはできないと」

四季「あの車だって傷だらけになってた」

きな子「あはは、あの時めちゃくちゃ文句言ってたっすよ、くるまさん」

すみれ「車が文句……?」



かのん「きゃあああああっ!!!!」

きな子「な、なんすか?」

すみれ「はぁ」

かのん「ひんやりしたっ!今ひんやりしたって!!絶対冷たい手の人に触られたっ!!」

四季「落ち着いて。それが風です」

かのん「おばけに触られたぁっ!!!いやぁああああっ!!!!!」

きな子「あっ、かのん先輩、走ってどっかいっちゃったっす」

四季「ひとりで騒がしい人」

すみれ「……ふーん、あの方向に逃げたって事はその逆方向から風が吹いてきたってことね。なら私達はそっちに行きましょうか」

きな子「え」

すみれ「いくわよ。きな子、四季」

四季「はい」

きな子「は、はいっす」

206: 2023/02/19(日) 04:39:03.57 ID:FO0yL1bR.net
きな子「……いいのかな?かのん先輩置いていっちゃって」

すみれ「大丈夫よ」

きな子「そうっすか?」

すみれ「だってほら」

きな子「?」

すみれ「どうせほっとくとあんな風に戻ってくるから」


かのん先輩「ちょっとー!!!私置いてどこ行くのよっ!!!」


すみれ「ね?」

きな子「あ、ほんとっす」

すみれ「だからさっさと行きましょう」

きな子「はいっす!!」


かのん「もうっ!!!いい加減にしてよっ!私を置いてくなんてどういうつもりなの?ねぇ!すみれちゃん!!!」

207: 2023/02/19(日) 04:40:31.38 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


摩央「これ?ふたりだけじゃ動かせなかったブロックって」

可可「そうデス」

恋「私達だけでは、びくともしませんでした。でも4人がかりなら動かせるはずです」

悠奈「うーん」

摩央「そうはいってもね」

恋「なにか問題でも?」

摩央「このブロックのサイズ的にふたりで押すのが限界じゃない?」

恋「……たしかに、言われてみれば」

可可「はっ!無我夢中でそういう細やかな点に気付きませんでした……ごめんなさいせっかく来てもらったのに」

恋「ならば、押してるふたりの背中を押しましょうか」

可可「そ!そそそそんな失礼な事出来ないですよっ!」

摩央「あまり得策ではないわね。その押し方だと力が分散するわ」

恋「力の効率ですか。考えてませんでした。たしかに、女性4人が集まってそんな押し方をしても非効率かもしれませんね」

悠奈「あんま無茶な事して怪我とかしたくないしねー」

恋「では、どうしましょう……」

摩央「ねぇ?一回、私達だけで押してみましょうか」

悠奈「あー、なるほど」

可可「えっ?でもすごく重かったですよ?ほんとにククとレンレンじゃびくともしなかったんですから」

摩央「別に信じてない訳じゃないわよ。ただ、そんなに言うなら私達の力を試してみたくなってね」

悠奈「うん、いいね!ちから比べだー!」

恋「あの不動さはちょっと鍛えれば動かせるような代物じゃなかったですよね……」

可可「はい、クク達も鍛えてますけどビクともしませんでした……」

悠奈「じゃあ、セーノでいくよー!」

摩央「ええ、せーのっ」

208: 2023/02/19(日) 04:41:19.21 ID:FO0yL1bR.net
グッグググググ……


可可「!!!」

恋「う、うごきました……」

可可「凄いです!さすがサニパですっ!!!」

悠奈「やったー!特訓の成果だね」 

可可「い、いったいおふたりはっ、どのような特訓をなされているのデスか?凄すぎますっ!!」

悠奈「ふふっ、ないしょ〜♡」

可可「あぁっ〜!ナイショにされてしまいましたぁっー!!」

摩央「さて、貴方達の読み通り。そこの窪みに落としたら扉が開いたわね」

可可「あっ、本当デス!」

摩央「じゃあ行きましょうか」

恋「……摩央さん」

摩央「なにかしら?」

恋「どこかでそういうアイテムを拾ったのですか?それともそういう技を伝授してもらったとか」

摩央「?」

可可「レンレンっ!自分の事をあまり知らない方にそういう部分見せないでください。引かれますよ」

悠奈「あはは〜、れんちゃんも面白い子だねっ!」

恋「私の知識ではこういう時、『ぱわーぶれすれ』っとだとか『ひでんわざ』だとかが必要なのですが……」ブツブツ…

可可「と、とにかくありがとうございました!おふたりのおかげで先に進めマス!!」

摩央「いいのよ」

悠奈「私達も先に進めるしね」

摩央「ええ、じゃあ先に進みましょうか」

可可「はいデス!!」

恋「そういえば近所の力自慢のおじさんにどかしてもらうという展開もありましたね。どこかにそういったおじさまが配置されていたのでしょうか?それとも摩央さん達がそのおじさま……」

可可「レンレンっ!!失礼なこと言ってないでいきますよ!」

209: 2023/02/19(日) 04:43:04.18 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


千砂都「凄いねー。あんな大きな岩壊しちゃうなんて」

メイ「いったいどういう原理だ?」

夏美「手品みたいなものでしょう。歌なんかでものが壊せるわけありませんもの」

千砂都「いや、そうとも言い切れないよ」

夏美「というと?」

メイ「どういう事ですか?」

千砂都「世の中にはさ。音だけでガラスを割れる人がいるらしいじゃん。ということはウィーンちゃんは歌でそれをやってみせたんじゃないかな〜って」

夏美「ガラスと岩じゃ全然違いますの」

メイ「でも、実際に見せられちまったからなぁ」

ウィーン「貴方達、いつまで無駄話をしてるの?さっさと進むわよ」

夏美「無駄話のテーマは貴方なんですけど」

千砂都「でも、たしかにそうだね。いつまでもこんなところで感心してても仕方ないし先に進もう」

210: 2023/02/19(日) 04:44:02.01 ID:FO0yL1bR.net
…………



千砂都「おっ、なんか大きい部屋に出た!」

メイ「なんだここは?」

夏美「広いですの!狭苦しい通路ばかりで息が詰まりそうだったのでちょうどいいですの!すぅ……はぁ〜……ですの」

ウィーン「ふん、大広間ね。だだっ広いだけで無駄な空間。大方、迷宮を作っては見たけれど通路ばかり作るんじゃ手間も費用もかかるから、こういうので楽しようって魂胆でしょ?貴方達のやりそうな浅知恵なんて私達にはお見通しよ」

夏美「あー、うるさい!そんなの私に言うなですの」

千砂都「…………?」

メイ「どうかしましたか?千砂都先輩」

千砂都「……あー、なんかきそうだなって思って」

メイ「なんか?それっていったいなんですか……って、うわっ!!!」


ヒュンヒュンヒュンヒュン!


夏美「な、なんですの!!!」

ウィーン「ふん」

千砂都「おおっ!なんか吹き矢みたいなのが私達のおでこに刺さっちゃったぁ!」

メイ「なんだこれ!!」

千砂都「でも先っぽは吸盤になってて全然痛くない!」

ウィーン「くだらない、子供騙しもいいところだわ。本物を使えば私達を始末出来たのに。何を考えてるの?これを作った日本人は」

夏美「貴方こそ何考えてるんですか。本物なんか使えるわけないでしょうがこのバカ」

メイ「なんだこれ?矢に紙がくくりつけられてる?」

千砂都「なんだろうねー?とりあえず皆それぞれの紙広げて見てみようか」

211: 2023/02/19(日) 04:45:10.55 ID:FO0yL1bR.net
スルッ… ペラッ…


千砂都「えーと?『この紙に選ばれし者、この世の真理を捧げよ』だって」

メイ「私は『命をかけられる物を捧げよ』って書いてる」

夏美「『この世で最も価値のあるもの』でーすの」

ウィーン「ふん」ペラッ

千砂都「えーと?ウィーンちゃんのは『親愛なるもの』だって」

ウィーン「親愛?何よそれ。ほんと貴方達って何々愛みたいな薄っぺらい言葉が好きよね。愛って言葉に頼り過ぎなんじゃない」

夏美「静かにしろですの。謎解きパートでのおしゃべりは日本では禁止されています」

メイ「謎解きなのかこれ?単純に書いてある通りの事をすればいいだけだと思うんだが」

千砂都「うーんとね。親愛っていうのは例えば家族のこととかー」

ウィーン「家族……ふん、私をこんなところに島流ししてくれた人達ね」

夏美「あら、家族に捨てられたんですの?ぷぷ、かわいそーですのw」

メイ「こら、そういう事言うなよ。なんか理由があるんだろ」

千砂都「恋人とかー」

ウィーン「恋人?そんなのいないわ。でも、強いて言うなら音楽が恋人かしら」

夏美「ならさっさと音楽でも掲げてみろですの。その両手に持って。ほら、ほらっ」

メイ「そいつとなんかあったのか?お前そこまで性格悪くなかっただろ」

212: 2023/02/19(日) 04:46:08.00 ID:FO0yL1bR.net
千砂都「あとはそうだなぁ、友達とか?」

ウィーン「ともだち……?」

夏美「ぷっ、友達という概念すら理解してないですよ、この人w」

メイ「友達って日本語の意味がわからないだけだろ。こいつ外国の人みたいだし」

夏美「こんな余計な事ばかりぺらぺら喋ってる人に今更知らない言葉なんてある訳ないでしょ。困惑してるんですの。友達なんていたわけがないですからね。悲しきモンスターですの」

千砂都「友達っていうのはねー。うーんと、困った時助けてくれたり。話を聞いてくれたり。笑ってくれたりする相手の事かな」

ウィーン「……」


ウィーン「……」ジィッ… 

夏美「は?なに私を見てるんですの」

千砂都「ほうほう」

メイ「なるほどな」

夏美「どういう事ですの」

メイ「きっとお前に助けてもらったり話聞いてもらったり笑ってもらったりしたんだろうな」

千砂都「そっかそっか♪夏美ちゃんが友達か」

夏美「はぁ?」

メイ「よかったな。私達以外に友達が出来て」

夏美「笑えない冗談はやめてください」

千砂都「よし!お題はわかったみたいだし、とりあえず捧げてみようか!」

夏美「私はこんな奴に捧げられませんよ」

213: 2023/02/19(日) 04:47:38.81 ID:FO0yL1bR.net
千砂都「じゃあ私からね!この世の真理……それは、これだよ!!」(両手でまる!)


ガガガガ…


メイ「なんか音がしたな」

千砂都「きっと鍵が開く音だね。4つすべて捧げたらあの扉が開くんじゃないかな」

夏美「ああ、あの奥にある仰々しい扉ですか」

メイ「ていうか捧げるってあれでいいのか……?」

千砂都「いいんです!だってまるはこの世の真理だからね!」

メイ「まぁ、それでいいなら別にいいけどさ。じゃあ次は私な」

千砂都「さぁ、メイちゃんの命をかけられるものはなんだろうね!」ワクワク!

夏美「ふん、どうせあれでしょう」

メイ「私はやっぱりスクールアイドルだな。んで、これは可可先輩と恋先輩の隠し撮り写真。特にこの御二人のためならなんだってするぜ。私は」

千砂都「なんでもするだって!かっこいい!メイちゃん!」

夏美「捧げてる写真がその真逆を象徴してますの。ていうか2人の前に自分の欲望のためになんだってしちゃってますの」


ガガガガ…



メイ「お、これでよかったみたいだな」

夏美「ちょろあまですの」

千砂都「いいね!命をかけられるものがあるって!メイちゃんはまるだよ!まんまる!」

メイ「や、やめてくださいって、褒められるの慣れてないんすから」

214: 2023/02/19(日) 04:48:48.24 ID:FO0yL1bR.net
夏美「はいはい、じゃあ次は私ですの」ピラッ

千砂都「んー?それは?」

夏美「千円札ですの」

メイ「金かよ」

千砂都「うんうん、お金は大切だもんねっ!」

メイ「お前ってほんとブレないな」

夏美「なんですの?『それは友情ですの!』とでもいって貴方たちの手でも握ればよかったですか?」

メイ「いや、それはいいよ。なんか気持ち悪いし」

夏美「気持ち悪いとはなんですか失礼な」

千砂都「じゃあ次、ウィーンちゃんお願い!」

ウィーン「……ん」

夏美「はぁ?なんですか手なんか出してきて」

千砂都「なんか幼稚園児みたいで可愛いねー」

メイ「ほら、早く捧げられろよ」

夏美「メイ、あなたね?時代が時代ならとんでもない薄情な事を言ってますよ。友達に生贄になれっていうんですか?」

メイ「別に捧げたもんなくならなかったしいいだろ。どうせ減るもんじゃないってやつだ、お前の好きな言葉じゃなかったっけ」

夏美「そんな言葉好きじゃねーですの!だいたい減らないのは大前提。好きなのは増える事ですの」

ウィーン「ん」

夏美「催促するなですの!こっちはいやだって言ってるんですの!」

メイ「夏美」

千砂都「夏美ちゃん」

夏美「たしなめるみたいに名前呼ぶなですの!私が駄々こねてるみたいでしょうが」

メイ「実際そうだろ。お前だけが今この状況で足引っぱってんだぞ」

千砂都「あんまりイジワルしちゃダメだよ?夏美ちゃん」

215: 2023/02/19(日) 04:49:43.30 ID:FO0yL1bR.net
夏美「ぐううううううっ!2人はこの女の本性をまだ知らないから私を悪者に出来るんですの!」

メイ「外国の人だから日本語で上手く気持ちが伝えられないんだろ。それで感じが悪く思われてるだけだ」

千砂都「メイちゃんも誤解されやすいタイプだもんね……ほんとはこんなに優しくて可愛いのに」

メイ「っ!だから可愛いっていうのやめろっ!!」

夏美「いちゃいちゃするなですの!ほんと鬱陶しい人しかいませんね!」

ウィーン「ねぇ?早くしてくれない?貴方達ってなんでそんなに決断が遅いの?だから長い過渡期を抜け出せずにいるのよ。これってマラソンでビリ走ってるようなものなんだけど恥ずかしくないのかしら?」

夏美「人にものを頼む態度じゃないですね。貴方たち今の聞きました?私はムカついたので絶対協力してやらないですの」

メイ「ほら、やっぱり伝えるのが苦手なんじゃないか。不器用なとこわかってやれよ」

夏美「おめでたい頭してますね。バリバリ嫌味いってきてるじゃないですか。どこを切り取っても炎上しますよこんなの」

千砂都「……ねぇ、夏美ちゃん?」ニコニコ…

夏美「え、笑顔で『早くしろ』と威圧するなですの……!それ後輩が先輩にやられて一番怖いやつですの……」

ウィーン「……」

メイ「……」

千砂都「……」

夏美「ちょ、私を囲んで無言になるなですの……!」


夏美「……っ」


夏美「あーもうっ、わかりましたよっ!やればいいんでしょ!やれば!もう好きにしろですの!ふんっ!」

216: 2023/02/19(日) 04:51:03.83 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「ん」スッ

千砂都「はーい、これがウィーンちゃんの親愛なるものでーす!」

夏美「……」ムッスゥ…


…………


ウィーン「開かない」

夏美「当然ですの!だって友達じゃないんですから!」

ウィーン「壊れてるのかしらね」

夏美「どうしてそういう発想になれるのか疑問ですね。該当してないから以外にないでしょ」

千砂都「うーん、おかしいなぁ……夏美ちゃんはウィーンちゃんの親愛なる人のはずなのに」

夏美「改めて言葉にするなですの!!かわいい私のお耳がおぞましい言霊にびっくりしてますの!」

メイ「お前がそんな態度だから開かないんじゃないか?」

夏美「まーた、貴方は私を悪者にしようとしてるんですの?」

ウィーン「はぁ、もういいわ。くだらない事に時間を費やしてる場合じゃないものね」

夏美「はぁ?」

ウィーン「やっぱり私の理屈は正しわね。改めて確信したわ。邪魔なものは壊した方が早い。そうでしょう?」

夏美「ふん、また手品ですの?」

千砂都「まぁ、確かにそっちの方が早いかー」

メイ「そんな今までの事全部否定するような……」

ウィーン「私の歌は『本当の歌』神様から授かったこの力で私は本物である事を証明し続ける。だってどんな障害も障壁も破壊する力なんだから、それを振るって本物である事を証明しろって神様がいってるようなものでしょ?」

夏美「まーたなんかお喋りが始まりましたの」

ウィーン「だから私は感謝して歌うわ。私にこの歌を授けてくれた、音楽の神様に」


ガガガガ…


ウィーン「?」

千砂都「あれ?遅れて扉が開いちゃった」

メイ「不具合でも起きてたのか?」

千砂都「うーん」

217: 2023/02/19(日) 04:52:08.46 ID:FO0yL1bR.net
千砂都「もしくは……ウィーンちゃんにとって親愛なるものは音楽の神様だったって事かも??」

メイ「あー、なるほど。別に捧げるのは千砂都先輩のまるみたいに思うだけでもいいんだもんな」

千砂都「……」

メイ「……」

夏美「は?なんですの……私の事見て」

千砂都「どんまい。夏美ちゃん」

メイ「まぁ、これからもっと仲良くなって行こうぜ」

夏美「うううっ、なんかとてつもない屈辱を味わってますのっ!!なんで私が選ばれなかったみたいになってるんですの!!!」

ウィーン「ほら、早く行くわよ」

夏美「仕切るなですの!こうなったら一刻も早くゴールしますよっ!もうこの組み合わせは耐えられないですの!」

千砂都「やる気いっぱいだね!夏美ちゃん」

メイ「こいつはへこんでる時こそ頑張れる奴なんだ」

千砂都「なるほど!ウィーンちゃんにいいとこ見せるぞ!ってなってるんだね」

メイ「ああ、きっとそうだ」

ウィーン「ふーん」

夏美「あーもうっ!!早く私を地上に出すですのぉーーー!!」

218: 2023/02/19(日) 04:53:00.58 ID:FO0yL1bR.net
~~~数時間後~~~



かのん「あー、やっと、出てこれた」

すみれ「もう、あんたとはごめんよ。こういう場所ではね」

きな子「ふー、助かったっすね四季ちゃん」

四季「うん、でも皆は?」

恋「呼びました?」

かのん「あっ恋ちゃんっ!」

四季「恋先輩っ」

すみれ「先に出てたのね」

恋「はい、強力な仲間がいましたので」

悠奈「やっほー」

摩央「こんにちわ」

かのん「あっ、ど、どうもです」

すみれ「……仲間?」

恋「はい、一時的ですが出るために協力関係を結んでました」

すみれ「それであんなデレデレしてんのね」

可可「えへへへへ」

恋「はい!」

すみれ「まったく」

219: 2023/02/19(日) 04:54:59.21 ID:FO0yL1bR.net
夏美「ぜぇ、ぜぇ、……っ」

四季「あっ」

きな子「夏美ちゃんっす!」

メイ「出口か?ここ」

四季「メイ。よかった、無事で」

夏美「や、やっと……やっと出てこれたっ……!」

千砂都「うんうん、皆がんばったねー。まるあげよう!」

かのん「あああああ!ちぃちゃんっ!!!」

千砂都「あーかのんちゃん!あちゃー先越されてたかー」

かのん「うぇぇぇぇんっ!!」

千砂都「あらまーあらまーどうしたの?」

かのん「こわかったよぉぉぉぉっ!!!」

千砂都「おーおー、こわかったねー。よしよーし」

すみれ「怖いのはこっちの台詞よ」

ウィーン「感動の再会というやつかしら?まぁそれも一時の幸せだけど。だってこれから貴方達は私にねじ伏せられるんですから。私の『本当の歌』でね。だからせいぜいこの平和な瞬間をかみしめてるといいわ」

夏美「あーもうっ!私にばっかり話しかけるなですの!いい加減ノイローゼになりそうですの!」

かのん「出てこれたのは……」

千砂都「うん、私達3グループだけみたいだねー」

すみれ「でも、誰も欠けなかったわ」

220: 2023/02/19(日) 04:55:40.80 ID:FO0yL1bR.net
『生還おめでとうございます』



夏美「生還って、ころすつもりだったんですの!?」

メイ「流石にそんなわけねーだろ」



『無事、脱出できた御三方には特別ライブをご用意しました』



すみれ「やっと本題ね」

千砂都「ここまで長かったねー」



『この頭上に用意した天空ステージで存分に歌ってください』



四季「っ!電波塔からステージが展開していく」

きな子「すごいっすね~ハイテクっす!」



『最高のライブ期待してます』



可可「もっともっと期待していいデスよ!応えてあげますから!」

恋「私達があそこでライブをっ、なんだかそわそわしますねっ」





かのん「…………ライブかぁ」

221: 2023/02/19(日) 04:56:46.29 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


恋「ここが内部ですか。凄いですね。なんだかゲームの終盤にピッタリのステージです!」

可可「天空ダンジョンはファンタジーゲーム終盤の基本デスよね」

千砂都「わー!ずいぶんたっかいなぁ!かのんちゃん大丈夫?」

かのん「う、うん……」

可可「東京を一望出来ます!」

すみれ「ふーん、こんな凄い舞台に立てるんだ。スクールアイドルって……」ソワソワ…

千砂都「あれ?めちゃめちゃ嬉しそう?」

すみれ「え?べ、別に……」

可可「しかし、本番はこれから。この4人でのライブは初ですし気合いをいれなければ!」

千砂都「練習する暇もなかったもんね」

すみれ「まぁ、やったところで付け焼刃よ」

恋「私もそう思います。千砂都さんとすみれさんには応用力がありますから、私達にその場その場であわせてもらったほうが結果的にいいパフォーマンスになる気がするんです」

千砂都「すみれちゃんは器用だからねー」

すみれ「あんたもね」

可可「なんだかワクワクしますね!」

恋「え?」

222: 2023/02/19(日) 04:57:48.93 ID:FO0yL1bR.net
可可「この新しいことをする感じがデスよ!」

恋「ふふっ、そうですね。可可さんとスクールアイドル始めた頃みたいです」

可可「なにもかも手探りで」

恋「でも、とっても楽しかった、あの頃みたい」

可可「そうですね。いつからか勝つことにこだわり過ぎてたのかもしれません。勝っても負けてもただレンレンとアイドルをやれていただけでとっても楽しかったのに」

恋「可可さん……」

可可「よーし、初心に戻れてわくわくしてきましたよー!」

すみれ「楽しんでどうすんのよ」

可可「ちっちっち、楽しむ事が一番重要デスよ?クク達が笑顔じゃなければ見てる人を笑顔には出来ません!」

すみれ「笑顔ね……」

かのん「……」

千砂都「かーのんちゃんっ♪さっきから浮かない顔してどうしたの?」

かのん「え?……あ、そんな顔してた?」

千砂都「うん、してたよ」

可可「どうかしましたか?かのん」

かのん「ええっと、なんだろう。なんか、なんていったらいいかわからない気持ちで……」

恋「なにかお悩みですか?」

かのん「そういうんじゃなくて……ちぃちゃんや、すみれちゃん達を見てると……私、今のままでいいのかなって」

千砂都「どういうこと?」

かのん「あははは、なんかうまくいえないや」

すみれ「……」


すみれ「……ねぇ、かのん」

かのん「え?……なに?」

すみれ「あんた、私と初めて喋った日、覚えてる?」

かのん「……えっ、覚えてるよ。すみれちゃんこそ覚えてたの?忘れたとか言ってたのに」

千砂都「えー?なになに?なんかあったの?」

すみん「別になにもないわよ」


すみれ「なにもなさ過ぎて、特別なくらいね」

223: 2023/02/19(日) 04:58:40.84 ID:FO0yL1bR.net
~一年前~



かのん「……」

すみれ「……」


チュンチュン チュン


かのん「……」

すみれ「……」


かのん「なんかさ」

すみれ「……」

かのん「最近だるくない?」

すみれ「……」

かのん「……だるいよねー」

すみれ「……?」


すみれ「……」キョロキョロ


すみれ「え、私に言ってるの?」

かのん「夏休み明けだからかな?五月病っていうのはあるけど七月八月病っていうのはあるのかな?あるんだったらきっとこの状態の事だよね」

すみれ「……し、しらない」

224: 2023/02/19(日) 04:59:17.05 ID:FO0yL1bR.net
かのん「すみれちゃんって留学とかって興味ある?私の友達がさ、行ったんだぁ留学。急にだからびっくりしたよ、ほんと」

すみれ「……そう」

かのん「でも海外で暮らすって凄いよね。勇気があるよ。私だったら絶対したくないなぁ」

すみれ「ふーん」

かのん「そういえば昨日なに食べた?わたしはねー?ハンバーグ!うらやましい?」

すみれ「うらやましくない」

かのん「とかいって、うらやましいんでしょ。わかってるよそんなことは」

すみれ「なんなのあんた」

かのん「ちょっと、すみれちゃん。私にはかのんって名前があるんだよ。ちゃんと名前で呼んであげて」

すみれ「私達、今日まで話した事あったかしら?」

かのん「ないよ」

すみれ「なら、いきなりおかしいでしょ」

かのん「そうだよね。初めて話す相手にあんたはないよね」

すみれ「あんたよあんた」

かのん「あー!」

すみれ「……なんかめんどくさい子に絡まれたわね」

かのん「同じクラスメイトなんだから仲良くしよう?ね?」

すみれ「普通に話しかけられたら仲良くできたけどね」

かのん「普通に話しかけたじゃん」

すみれ「友達じゃない相手にする普通じゃないでしょ」

かのん「友達じゃない!??」ガーン!

すみれ「なんなのよ。この子」

225: 2023/02/19(日) 05:00:02.18 ID:FO0yL1bR.net
チュンチュン チュン


かのん「……」

すみれ「……」

かのん「すみれちゃんってさ」

すみれ「なに」

かのん「夢とか希望ってある?」

すみれ「なによ急に」

すみれ「いや、全部急なんだけど……」

かのん「やりたい事とかあるのかなって思って」

すみれ「別に」

かのん「ない?」

すみれ「そうね」

かのん「一緒だぁー、おそろってやつだね。女子高生らしい」

すみれ「それをおそろいとは言わないわよ」

かのん「私もね。夢も希望もやる気もない、人生に絶望した負け犬なんだ~」

すみれ「私はそこまでいってないんだけど」

かのん「いっしょだね~」

すみれ「一緒じゃないわよ」

226: 2023/02/19(日) 05:00:56.17 ID:FO0yL1bR.net
かのん「……」

すみれ「……」

かのん「すみれちゃんってさ」

すみれ「なに」

かのん「なんかで見た事ある顔してるよね」

すみれ「……」

かのん「よく誰々に似てるとか言われる?なんかテレビで見た覚えがあるんだよね」

すみれ「気のせいよ」

かのん「ほんとかな」

すみれ「えぇ」

かのん「そう、ならあれはすみれちゃん本人だったり?」

すみれ「……」

かのん「あっ、そっか。フルネームで調べてみたらいいのか」

すみれ「やめなさい」

かのん「なんで?」

すみれ「なんでも」

かのん「なんでなんでなんで?」

すみれ「前科があるの」

かのん「……」

すみれ「……」

かのん「……っ」

すみれ「……嘘よ。嘘」

かのん「……ほんと?でもなんか怖いな。調べるのやめとこ」

すみれ「そうしてちょうだい」

かのん「……」

すみれ「……」

かのん「でもやっぱ、あとでしらべちゃおーっと」

227: 2023/02/19(日) 05:01:38.15 ID:FO0yL1bR.net
チュンチュン チュン


かのん「……」

すみれ「……」



すみれ「……ねぇ、かのん」

かのん「……」

すみれ「……」

かのん「……?」


かのん「……」キョロキョロ


かのん「わたし?」

すみれ「呼んだでしょ。かのんって」

かのん「すみれちゃんから話しを振ってくるなんて思ってなかったからびっくりしたよ。意外と馴れ馴れしいんだね、すみれちゃんって」

すみれ「あんたには負けるわ。いろんな意味でね」

かのん「で、なに?」

すみれ「ずっと、座ってるのって好きじゃないの。ちょっと散歩するけどあんたも来る?」

かのん「……え?」

すみれ「どうする?」

かのん「……うん、いく!」

228: 2023/02/19(日) 05:02:33.64 ID:FO0yL1bR.net
かのん「新設されたばっかだから綺麗だよねーこの学校」

すみれ「そうね」

かのん「うっとうしい先輩もいないしね」

すみれ「そうね」

かのん「あー、はやく来年にならないかな。私達がうっとうしい先輩になりたいよ」

すみれ「……」

かのん「あっ」

すみれ「?」


恋「可可さん、これは?」

可可「ふっふっふ!これは回転する舞台デス!次のラブライブへ出場するための課題。テーマは回転でした!普通の人は自分が回る事、すなわちダンスにおけるスピンを連想するでしょう。で・す・が!クク達は違います!!ステージを回転させることでライバルとの違いをアピールするんデス!!!」


すみれ「ああ、あの子達ね」

かのん「なんだっけ?スクール……」

すみれ「アイドルね」

かのん「それそれ、詳しいの?すみれちゃんは」

すみれ「いいえ、まったく」

かのん「ふーん、私も全然知らないや」



恋「可可さん、このボタンはなんですか?」

可可「あ、それは絶対押しちゃダメですよ。回転速度がマックスになっちゃいますからね」

恋「そうなんですか。すみません、可可さん。もう押してしまいました」

可可「え」

229: 2023/02/19(日) 05:03:21.09 ID:FO0yL1bR.net
グゥルゥンッッッ!!!!


恋「あわわわわわっ!!!」

可可「レンレン!!クク、知らないボタンは押しちゃダメっていいましたよねー!!!」

恋「すみません!つい気になって触ってしまうんです」

可可「もうっ!すぐこういう事するんデスから!!」



すみれ「相変わらず騒がしいふたりね」

かのん「でも楽しそうだねー」

すみれ「今のあの状況は楽しんでないと思うけど」

かのん「やっぱ目標があるっていいなぁ~」

すみれ「かもね」

かのん「私達もなにかやってみようか?」

すみれ「聞くだけ聞いてみてあげる」

かのん「他校と抗争」

すみれ「いいわね」

かのん「え」

すみれ「冗談よ」

かのん「もう、笑えないよ。すみれちゃんってそういう雰囲気出てるんだからさぁ」

すみれ「そう見えてるならたいした度胸してるわね。あんた」

230: 2023/02/19(日) 05:04:27.99 ID:FO0yL1bR.net
グゥルゥンッッッ!グゥルゥンッッッ!グゥルゥンッッッ!


恋「なんだかコーヒーカップみたいです!昔お父様と遊園地に行った時こんな速度でまわしてくれました!」

可可「こんな速度出ないデスよ!ククの国の遊園地でも!」

恋「可可さんは私に素敵な思い出を、たくさん思い出させてくれますね!本当にありがとうございます!!」

可可「今、そんな事いうなデス!そんな事言われたら怒れないじゃないですかー!!」



かのん「青春だね」

すみれ「そうかしら」

かのん「……」

すみれ「なによ。あんたもやってみたいの?」

かのん「え?あのアトラクション?」

すみれ「スクールアイドル」

かのん「えー?いいよ、私はああいうのは」

すみれ「そう」

かのん「あー、でもすみれちゃんがやるならやろうかな」

すみれ「ふーん、しないけど」

かのん「隣できゃぴきゃぴしてるすみれちゃんを白けた目で見るの」

すみれ「じゃあ絶対しない」

かのん「たのしそうだな~」

すみれ「……まぁ、そうね」

かのん「え?」

すみれ「あんたとなにかやるのは退屈しなそうだわ」

かのん「そうかな」

すみれ「ええ」

かのん「じゃあ、お互いなにか始めたらそれを一緒にやるってことでどう?」

すみれ「……いいわねそれ。普通科の生徒らしくて」

かのん「え?なにそれ」

すみれ「ふふっ」

かのん「?」

すみれ「じゃあ、人生に絶望してるもの同士で競争ね」

かのん「え?」

すみれ「やりたい事、先に見つけた方が勝ち」

231: 2023/02/19(日) 05:05:01.48 ID:FO0yL1bR.net
~現在~



可可「なつかしいですね。時速200キロ回転事件。レンレンのせいでククまで叱られました」

恋「ごめんなさい可可さん……」

千砂都「そんな事件も起こしてたんだねぇ」

かのん「結構事細かに覚えてるね。すみれちゃん。なんか意外」

すみれ「ええ、終始失礼な子だったからね」

かのん「でも、そのおかげで親近感を抱いてくれたんだよね」

すみれ「それで、約束思い出したかしら?」

かのん「え?」



かのん『じゃあ、お互いなにか始めたらそれを一緒にやるってことでどう?』



かのん「まさかっ……」

すみれ「そう」

かのん「……」

すみれ「先に見つけた方が勝ちって約束よね」

かのん「?」

すみれ「私の勝ちだからあんたは一生私の小間使いよ」

かのん「え?」

232: 2023/02/19(日) 05:05:36.12 ID:FO0yL1bR.net
~一年前の続き~



すみれ「じゃあ、人生に絶望してるもの同士で競争ね」

かのん「え?」

すみれ「やりたい事、先に見つけた方が勝ち」

かのん「勝ち?そんな勝負事みたいな」

すみれ「そう、勝負よ。私が先にやりたい事見つけたらあんたの負け。負け犬だとかチンピラだとか好き放題言ってくれたけどあんたが負けたら私の下って事になるから、その時は正式に私の小間使いにしてあげるわ。よかったはね?やる事が出来て。こきつかってやるから覚悟なさい」

233: 2023/02/19(日) 05:06:19.72 ID:FO0yL1bR.net
~現在~



千砂都「いや、めちゃくちゃ怒ってるじゃん」

可可「やはり初めて話す相手にああいう態度はよくないですよーかのん」

恋「フランクになり過ぎるのは諸刃の剣ですからね」

かのん「え?え?」

すみれ「というわけで私は迷宮脱出でお腹が空いたの。かのん、下のコンビニに行ってパン買ってきなさい」

かのん「ええ?ここ何階かわからないくらい高い……」

すみれ「ならダッシュで」

かのん「……」

すみれ「お願いね」

かのん「……は、はい」

234: 2023/02/19(日) 05:07:29.39 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


千砂都「すみれちゃんは優しいね」

すみれ「なにが?」

千砂都「かのんちゃんが苦しそうだからここから出ていけるようにしたんでしょ」

すみれ「別に」

可可「不器用な優しさですね」

すみれ「ちがうし」

恋「あ、あのー、間違ってたら申し訳ないのですが」

千砂都「なに?」

恋「かのんさんは歌いたかったんじゃないですか?私達と」

可可「……」

千砂都「うーん、それはね。部分的にはそうなんだろうけど……」

すみれ「かのんは今、やりたいけどやる決心がつかない状態にいるのよ」

恋「決心がつかない?」

千砂都「普通なら、そういう決心がつかないなら引っ張てあげたり背中をおしてあげるべきなんだろうけどね」

すみれ「かのんが歌えない理由が理由だけに、他人が決心を強いるべきじゃないわ」

千砂都「自分で決めて、自分で決心しないと。かのんちゃんはまた歌えなくなると思う」

すみれ「だから、進むのも逃げるのもあの子に選ばせるのよ」

235: 2023/02/19(日) 05:08:35.75 ID:FO0yL1bR.net
可可「かのんはいい友達に囲まれてますね」

千砂都「だって参謀コンビだからね!私達」

すみれ「なにそれ」

千砂都「切れ者二人の友情コンビだよ!ほら、すっごい頼りになったでしょ?恋ちゃん」

恋「はい、ふたりのおかげで私も成長できました!」

すみれ「私はなにもしてないわよ。恋が他の参加者にいじめられてたから見てられなかっただけ」

可可「なぁっ!!!?い、いじめ!?いじめられたのですか!!レンレン!!どうして黙ってたデスか!いったいどこのどいつに……!!今からそいつの家に怒鳴り込みにいきますよ!!」

恋「い、いえ、そんな大袈裟なものではっ、もうっ!すみれさん!余計な事いわないでください!」

すみれ「はいはい、ごめんなさいね」

千砂都「あははは、怒られてる~」

恋「でも、本当に頼りになりました。ありがとうございます」

可可「……ククも貴方達を頼りにしてます。だから一緒に頑張りましょう!」

千砂都「おー!任せとけー!」

すみれ「まぁ、努力はするわ」







かのん「……」



かのん「いっしょ……か」

236: 2023/02/19(日) 05:10:00.07 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「さぁて、そろそろ始まっちゃいますね!トップバッターはなんとサニーピースですよ!!!きゃあああああ!!」

恋「順番はサニーパッション、私達、そして彼女……」


ウィーン「天空ステージなんて面白いもの作るじゃない。今の安全にうるさい日本でこんな危険で攻めたもの作るなんて、戦後当初でも生き抜いた人が関わってるのかしら?高度成長期並みの建設物ね。少しは楽しませてくれそうじゃない。やはりこういうショーはスリリングじゃないと。けれど芸術的価値ではコロッセオには遠く遙かに劣るわ」

夏美「……」ゲッソリ

ウィーン「バカと煙はなんとやら、高ければいいと思ってるんでしょう?もしくは貴方達日本人が感じている日々の閉塞感から解放されたいという願望からかしら?この広い空を眺めることで社会という牢獄から飛び出したいという強いあこがれを」

夏美「もう勘弁してほしいですの……」




すみれ「ねぇ?この手のライブもトップバッターは不利なのかしら」

千砂都「あー、どうだろう?会場があったまるも何もお客さんがいないしね」

四季「ううん、お客さんはいる」

千砂都「えー?どれ?」

四季「この空に飛んでるドローン。あれにはカメラがついていてリアルタイムで配信されてる」

すみれ「配信?そんな大きな大会だったの?……いや、この規模をみたら当然かしら」

きな子「なんだかテンションあがってくるっすね~」

メイ「すっげぇな!!この会場!地上から500メートルは上のステージ!そこでアイドル達は360度広い空に囲まれて超開放的なライブが出来る!そして観客はそのステージ下の階層にいて、超大型モニターで見る事が出来るんだぁ!生で見るよりも大きい彼女たちを……!いや、小さくても生で見たいって気持ちも当然あるんだけどな?大画面で大迫力の彼女たちを見れるのもやはりいいもので」

四季「メイは上がり過ぎ」

可可「はっ!!!」



悠奈「やっほー☆おまたせ!!」

摩央「みんな、こんにちは」



可可「悠奈サン!摩央サン!!」



悠奈「 私たち、サニーパッションです!ぱぁ!」

摩央「ふふ」(ぱぁ)



可可「きゃあああああああっ!!!!!生ぱぁですよ!みなさんっ!!!」

すみれ「なにそれ」

237: 2023/02/19(日) 05:10:44.43 ID:FO0yL1bR.net
メイ「ああぁぁっ、一昨日の摩央さんもオーラがあって凄かったけど、衣装を着てふたり揃ってこんな壮大なステージで曲を披露してくれるのかと思うと鳥肌が止まらないいいいいいい……」ガタガタガタ

きな子「寒いんすか?メイちゃん」

四季「はい、小型ヒーター」

メイ「そういう事じゃねぇよ!!」

千砂都「どんな踊りを披露してくれるのかなー?わくわーく」

恋「凄いですよ、あの二人は」

ウィーン「ふん、ついにふたりそろったわね。Sunny Passion」ジッ…

夏美「……はっ、関心が向こうにいってる!今のうちに、逃げるですの……この人の相手は、精神がもちませんっ」



悠奈「こんな凄いステージでライブが出来るなんて夢みたいだね!」

摩央「そうね」

悠奈「でも、ここにこれたのも」

摩央「ええ、支えてくれた皆のおかげよ」

悠奈「よーしっ!神津島に届くくらい大きな声で歌うぞー☆」

摩央「ええ、それどころか世界中に私達の声を響かせましょう!」

悠奈「いいね!それ!」

摩央「私達はこの大会に勝って、そして今年のラブライブも優勝する」



ウィーン「ふん、この大会もラブライブも勝つのは私よ」



可可「あああああ!!感激デスぅぅぅ!!!あ、でも、今年のラブライブを優勝するのはクク達ですから」



悠奈「うーん、ライバルの敵意が気持ち良いね!緊張感が出てくるよ!」

摩央「ええ、慢心は罪よ。どんな場所でも全力で挑まなくちゃね」


摩央「じゃなきゃ二連覇は成し遂げられない」

238: 2023/02/19(日) 05:11:39.05 ID:FO0yL1bR.net
『チーム名 Sunny Passion 楽曲名 Till Sunrise』


『まもなくはじまります。』


悠奈「……」

摩央「……」


悠奈&摩央「Go with the flow─────♪」



可可「─────っ!!!!!(声にならない叫び)」

すみれ「ちょっと隣で高音波出さないで。可可」

千砂都「……」

恋(千砂都さん、凄い真剣なまなざしです)


メイ「ああああああ……」ガタッ

きな子「なんか膝から崩れ落ちてるっす。東京の人は寒すぎるとこうなるんすか?」

四季「ならない。メイだけ」

メイ(わたしもなんねぇよっ!!!)



かのん「……すごい」

夏美「なにやってるんですのー?こんな皆から離れた所で」

かのん「え?……ああ、なんだ、おちびちゃんか」

夏美「だれがおちびちゃんですの」

かのん「そっちこそどうしたの、こんなところで」

夏美「あの人から逃げてきたんですの!ほんとにいい加減にしてほしいですの!」

かのん「ええっと、ウィーンちゃん……だっけ?」

夏美「知りませんよ名前なんて。覚えたくもない!」

239: 2023/02/19(日) 05:12:37.47 ID:FO0yL1bR.net
悠奈「はぁだしになって♡、すなをけぇって♡、こどもみ↑たいに─────♪」



可可「─────っ!!!!!(ここの歌い方良すぎますよねっ!!!)」ブンブンブン!

すみれ「なに?集中したいからおとなしくしててくれる?」

千砂都「これがふたり揃ったサニーパッションかぁ」

恋「千砂都さん?」

千砂都「うーん、これは今回も勝てないかもね」

恋「え」



ウィーン「……ふん、そういうこと」

ウィーン「スクールアイドルは単純に音楽のレベルが高いだけでは意味がないという事ね」

ウィーン「歌と踊りの完成度や正確さだけじゃない、細かい視線の動きや挙動、呼吸するタイミングまで観客は見てる」

ウィーン「そこにメッセージを込めれるものが観客を魅了することが出来る」

ウィーン「スクールアイドルに一番重要なのは表現力」

ウィーン「これが私に足りないものといいたいのね?」



悠奈&摩央「Oh my─────♪」


悠奈「星空のStage light─────♪ このPassionはずっと揺るぎないっ─────♪」



かのん「……」ポケェ…

夏美「なんですの。そんな女児が夢中でテレビアニメ見てるような顔して」

かのん「は?そんな顔してないしっ!」

夏美「してましたのー」

かのん「ふん、ならあんたは女児そのものじゃん」

夏美「は?そんな小さくないですの!」



悠奈&摩央「らぁららららら So nice─────♪」

摩央「じゃれあえば Two step─────♪ 」


可可「─────っ!!!!!(ククもふたりとじゃれあって踊り明かしたいデス!ってそんなことできるわけないじゃないですかーーーー!!)」バシッ!バシッ!バシッ!

すみれ「ちょっ、痛いわね。いい加減にしなさいよ、あんた」


メイ「わ、わたしがっ前見た時よりも、す、すすすすすすすすっ……」

きな子「すすきのっすか?」

四季「スカートが短すぎる」

メイ(すごすぎるっ!!!!)



悠奈&摩央「Till sunrise─────♪」

240: 2023/02/19(日) 05:15:11.04 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「あああああ!!凄かったデスね!凄かったデスね?」

千砂都「うん、凄かったねー」

すみれ「……凄かった」

千砂都「おおっと!やけに素直だね?すみれちゃん」

すみれ(……スクールアイドルがこんなにレベル高い世界なんて思ってなかった)

千砂都「もう、すみれちゃんったら神妙な顔しちゃってー。ほっぺでたこ焼き作っちゃうよー」

恋「それよりどうします?今更、作戦会議というわけにもいきませんが、あそこまでの実力差を見せられると……」


可可「─────当然、勝ちますよ。クク達が」


恋「く、可可さん……!」

すみれ「……」

千砂都「おー」パチパチ

すみれ「そうね。やるなら勝たなきゃ意味ないものね」

可可「そうデス!あっ!もちろん楽しむ事が大前提ですけどね!」

すみれ「はいはい、私達が笑顔じゃないとってやつね」

可可「はいっ!!ちゃんと覚えててくれてますね!」

恋「……」


可可『レンレン!当然、勝ちますよ。クク達が!』


恋(貴方は去年もそう言いましたね)

恋(結果は負けてしまいましたが)


可可『大好きな人と全力で戦って、負けるのが、こんなもっくやしいだなんてしりませんでしたぁっ……!』


恋(もう、貴方のあんな泣き顔は見たくありません)

恋(初めての頃の楽しいという気持ちみたいに、勝ち負けに拘りすぎると大切なものを失うかもしれません)

恋(でも、私は今、絶対無理だとしても、絶対勝ちたいですっ……!!)


恋「千砂都さん」

千砂都「なに?れーんちゃん」

恋「やるからには本気でお願いしますね」

千砂都「えー?」

恋「私も全力で臨むんですから諦めるのはなしです」


千砂都「……」


千砂都「うん、いいよ♪」

241: 2023/02/19(日) 05:16:25.14 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「……うたってみたいなぁ」

夏美「……」

かのん「……」

夏美「……」


夏美「は?」


夏美「なんていったんですの?」

かのん「うたってみたい」

夏美「気は確かですか?」

かのん「うん」

夏美「これは重症ですね。医務室に行きましょう。あるかわかりませんけど早急に診てもらわなければ」

かのん「歌えてた頃の気持ちにね。戻れそうなの」

夏美「?」

かのん「あの頃はなにも考えずに歌えてた。誰かに見られてても、間違えちゃっても、期待を裏切っちゃっても。何も感じないで歌えてた」

かのん「でも、いつからか。歌うことを意識してた、音程を間違えちゃダメだ、歌詞を間違えちゃダメだ、皆の前で間違えちゃダメだって」

かのん「さっき可可ちゃんが言ってた。勝つ事にこだわりすぎて最初の頃のような楽しむことを忘れてたって」

かのん「私も似たような感じで正しくあろうとして、皆の期待に応えようとし過ぎて、楽しむ事を忘れちゃってたのかもしれない」

かのん「自分が楽しめないのに頑張って、なのに皆を喜ばせようって意識して……凄い歌を披露しようって思って……」

かのん「そうやってなにかを意識してると次第にぎこちなくなって自然に歌を紡げなくなっていく」

かのん「正しくなくちゃダメだって、思い過ぎて……歌うことが苦しくなる」

夏美「……だったら、歌わない方がいいじゃないですの」

かのん「でも、今は歌いたいの」

夏美「なんでまた急に」

かのん「この前、急に歌わないといけない状況に立たされたから」

夏美「……」

242: 2023/02/19(日) 05:17:42.24 ID:FO0yL1bR.net
かのん「そして私は歌った。無我夢中で、怖くてとっても苦しかったけど、歌えたの」

夏美「そんなに苦しかったのにまた歌いたいと?」

かのん「うん」

夏美「どうして?」

かのん「その『どうして』がないからだよ」

かのん「だって、歌うのに理由なんかいらないんだよ……?」

かのん「私は今とっても歌いたいの。たしかにステージに立つのは怖い。みんなの前で歌うのだって怖い。でも、さっきの人達みた?あんなに楽しそうに歌ってた。あんなに輝いて歌ってた」

かのん「あんなの見せられたら私もあんな風に歌いたいって思っちゃうよ」

かのん「可可ちゃんやちぃちゃん、すみれちゃんや恋ちゃんと歌いたいって」

夏美「……」

かのん「歌いたい」

かのん「……なのにっ」ゾクッ…

かのん「皆のところに飛び込みたいのにっ」

かのん「こんなにも歌いたいって思ってるのに」

かのん「なんであの場所にいけないの……?」

夏美「……無理するなーですの。足が震えてるじゃないですか」

夏美「そんな状態じゃいけませんの。あなたには無理ですの」

夏美「それにほーらっ、これを見てください」

かのん「……っ!」

夏美「どうやらこのライブ、全世界に配信してるようです」

夏美「何千何万という人が見てるんですよ」

夏美「私があげてる動画みたいにモザイクも加工音も入りません」

夏美「しかもこれは配信ですからね。カットも出来ません。かのん先輩が失敗してもずっとその様子が配信され続け、リアルタイムに視聴者のざわめきコメントが流れていきます」

夏美「あなたの一番苦手な環境ですの」

夏美「だから、できないですの。かのん先輩には」

かのん「……でも」

夏美「でももへちまもありません。かのん先輩はここでおとなしく先輩たちの活躍を見てればいいんですのー」

かのん「ここで歌わなかったら、一生歌えない気がするのっ!」

夏美「歌えなくたっていいじゃないですの!」

かのん「よくないっ!」

243: 2023/02/19(日) 05:19:21.93 ID:FO0yL1bR.net
夏美「……出来ない事が、そんなに悪い事なんですの?」

かのん「……そうは思わない」

夏美「だったら」

かのん「でも、出来てた事がずっと出来ないままなのは苦しいのっ!!」

夏美「……そんなの私にはわかりません。私は最初からなにも出来ない人間ですからね」

かのん「……」

夏美「だから、出来ないスペシャリストとして忠告してあげるんです。出来ないなら諦めた方がいい。出来ないなら無理なんかする必要ないんですの」

かのん「……なんで、そんなに引き留めるの」

夏美「先輩に恥をかかせないための後輩の優しさです」

かのん「……」

夏美「あなたは恥ずかしがりやなんですから、ひっこんでるべきですの!」

かのん「そうだね、……それでも行きたいの」

夏美「っ……!」

夏美「なら、さっさといけばいいじゃないですの!」

かのん「……っ」

夏美「どうせいけないくせにっ!うたえないくせにっ!」

夏美「私はそれがわかってるからわざわざ止めてあげてるんですよ!」

かのん「いくもんっ、だってわたしは、大丈夫だから……っ!」

夏美「大丈夫じゃないですの!!!」

かのん「……っ!!」

夏美「貴方はちっとも大丈夫な人なんかじゃないっ!!!」

かのん「だいじょうぶじゃ……ない……?」



『かのんちゃん、大丈夫?』


うん!へーきだよ!


『かのん、大丈夫?』


へーきだってば、もう!


『かのんさん、大丈夫?』


はい。大丈夫です。



かのん(大丈夫だって言い続けてた。歌えなくなっても大丈夫だって。人前に出るのが苦手になっても大丈夫だって。音楽科に落ちても大丈夫だって)

かのん(でも、実際は不服そうに学校に通って、やさぐれたように学校生活を過ごしてて、歌えない事にこんなに苦しんで、なんにも大丈夫じゃないじゃん……)

244: 2023/02/19(日) 05:20:06.36 ID:FO0yL1bR.net
かのん「……そっか」

夏美「……っ?」

かのん「大丈夫じゃない……か。わたしは」

夏美「……で、ですのっ」

かのん「大丈夫だって思ってた」ポロッ…

夏美「せんぱい……?」

かのん「でも、ほんとは……大丈夫だって思われようとしてたのかな」

かのん「なにもへーきじゃないのにね、あはは」

夏美「……な、なに笑ってるですの」

かのん「ありがとね」ポンポン

夏美「?」

かのん「……」


かのん「行ってくる」

245: 2023/02/19(日) 05:21:16.34 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


可可「クク達が観客を圧倒させますから、おふたりはお膳立てよろしくお願いします」

すみれ「なによそれ」

可可「だってクク達の方がスクールアイドルとして先輩ですからね」

すみれ「それ言われるとなんにも言えないじゃない」

千砂都「ずるい先輩だねー」

恋「もう出番ですよ、みなさん。そろそろ行きましょう」



かのん「うん!行こう!一緒に」バッ!!



千砂都「へ?」

すみれ「……は?」

可可「かのん?」

恋「か、かのんさんが私達を追い抜いて、ステージに飛び出してしまいました……」

千砂都「」

すみれ「……なにその反応?感激?」

恋「ど、どうしましょう?」

可可「……ふふっ、追いかけるデスよ!!」





かのん「……!」バッ!!




きな子「あれ?かのん先輩が出てきたっす」

メイ「な、なにやってんだあの人?これから恋先輩たちの舞台だぞ?」

四季「……」



摩央「あの子?」

悠奈「そう!すごかったんだよ!あの子の歌声」



ウィーン「澁谷かのんっ……!やはりでてきたわねっ!」

246: 2023/02/19(日) 05:23:02.44 ID:FO0yL1bR.net
かのん「……」

すみれ「ちょっと、かのん」

かのん「すみれちゃん」

すみれ「どういうつもりよ。勝手に飛び出して、舞台まであがっちゃって」

かのん「歌いたくなっちゃった」

すみれ「あんた、そんな軽いノリでね……」

可可「ふふっ、また、かのんと歌えるなんてククは果報者デス!!これは絶対勝ちましたよ!」

かのん「可可ちゃんってば、おおげさ」

千砂都「かのんちゃんっ」

かのん「ちぃちゃん」

千砂都「……こんな急に来ると思わなかったっ」

かのん「うん、いきなり飛び出しちゃったからね」

千砂都「……ううん、そうじゃないよ」

かのん「……」

千砂都「ずっと夢みてた。この日が来るって」

かのん「……うん、わたしも!」

恋「大丈夫なんですか?かのんさん」

かのん「あはは、全然大丈夫じゃない」

恋「ええっ!?」

かのん「でも、やっとそれがわかったから楽になれたの」


かのん「心につっかえてたものがとれたみたいでっ」


かのん「自分がもう大丈夫じゃないってわかったから、大丈夫であろうとしなくてよくなったから、もう自分に嘘つかなくてよくなった!」


かのん「かっこいいところが見せられなくても、かわいいところが見せられなくても、失敗したってへーきなんだってわかったから!」


かのん「もう繕わなくたっていい!わたしは自分が楽しみたいって気持ちだけで歌っていいの!」


かのん「だからやっとわたしはっ!!!!」


かのん「自由に歌えるんだぁ──────────♪」



悠奈「おおっ!紹介も待たずにいきなり歌い出した!」

摩央「ふふ、たしかに悠奈のいってた通りの歌声ね」


摩央「まるで心に響かせるように旋律を奏でている」

247: 2023/02/19(日) 05:23:54.57 ID:FO0yL1bR.net
きな子「なっ─────!!?」カオムギュウッ…!

四季「きな子ちゃん、変な顔しない」

メイ「うううううぅぅぅぅぅぅっ、なんだこのうたぁぁぁぁはっ、かのんのうたごえはぁ!!なぜだかなけてくるぅっ!」ポロポロポロ

四季「メイは感受性豊か過ぎ」


四季「……でも、私も。初めて聞いた時心を奪われた」



すみれ(これが、かのんの歌)

すみれ(ふーん)

すみれ(やるじゃない)


恋(なんでしょう、この気持ち)

恋(かのんさんの歌を聴いてるとさっきまでの緊張がなくなってる)

恋(勝ちたいって気持ちは残ってるのに、それ以上の感情が押し寄せてくる)

恋(かのんさんが自由な気持ちで歌ってるから?私も自由な気持ちでアイドルをしようと思っている……?)

恋(なんだか懐かしい感じ……)

恋(これは、可可さんに手を引かれスクールアイドルを始めた時の高揚感と同じ?)

恋(自分を未知の世界に連れ出してくれるわくわくとどきどきっ……)

恋(─────っ)

恋(そうか、わたくしはっ、すでに可可さんから教えてもらっていたんだ)

恋(ぜんぶが初めて過ぎてわからなかったっ)

恋(次第に可可さんの後についてくのに必氏になり過ぎて忘れていたっ)

恋(でも、やっと思い出した、やっと気付けた……)

恋(これが、お母様の言ってたっ……)

恋(『さいこう』って気持ちっ……!)

248: 2023/02/19(日) 05:25:39.08 ID:FO0yL1bR.net
千砂都(夢にまでみたこの日がきたっ!)

千砂都(この日のために生まれてきたんだって本気で思えるくらいに)

千砂都(今、幸せをかみしめられてるっ)

千砂都(全部が報われるような)

千砂都(……でも、もうかのんちゃんばなれしないとね)

千砂都(だって、これからはかのんちゃんの、みんなの前を歩いていきたいってやっと思えたんだから)

千砂都(隣じゃなくて、私は前に行く。やっとそう思えたんだっ!)

千砂都(誰の意思でもない。私の意思でっ)


可可(ふふっ、かのん)

可可(やっぱり貴方の歌は素敵デス)

可可(ククを助けてくれた歌。でも、今はあの時と違う)

可可(貴方がほんとうに心から楽しんで歌を奏でている)

可可(そんな貴方と、今ここで一緒に歌えることを幸福に思います)

可可(でも……)

可可(流石に好き勝手やり過ぎデス)

可可(だって、今はまだ、ククとレンレンのスクールアイドル部なんですからね!)


可可「レンレン!!」

恋「っ!」

可可「私達も負けられませんよ!」

恋「え?え?」

可可「サニパにもっ!あいつにもっ!かのんにもっ!他の誰にも絶対!私達は負けません!!!」

恋「可可さんっ……!」

千砂都「ふふっ、いいね!それ。みーんなライバルだ!」

可可「そうです!ライバルです!だからみなさん競い合う事を楽しみましょう!」

可可「勝つ事だけに拘るんじゃなくて、こんな凄い人たちと競える事に!」

可可「だってそれが青春なんですから!!!」

249: 2023/02/19(日) 05:26:41.36 ID:FO0yL1bR.net
メイ「─────っ!!!!!(みんながそれぞれ競い合うように歌ってる!踊ってる!なんだこれ!こんなライブみたことないっ!!!)」ブンブンブン!

四季「快音波出さないでメイ」

きな子「」クルクルクルクル




夏美「せいしゅん……」


夏美「それ、わたしが適当に言った事ですの」


夏美「……本気にしなくていいですのに」




すみれ(みんな、凄いやる気になっちゃって、私も本気出さなきゃいけないじゃない)

すみれ(まぁ、最初からそのつもりだったけどね)

すみれ(カッとなったとはいえ恋を助けるために本気になっちゃった、なのに負けっぱなしなんてダサ過ぎるでしょ)

すみれ(遠く及ばない実力差を見せられても勝つ気で挑む)

すみれ(でも、可可達には悪いけど今でもスクールアイドルに興味はないわ)

すみれ(けどね、そのおかげでやっと自分が本気で演じたいものが見つかった)

すみれ(だから演じてみせるわ)

すみれ(最高のスクールアイドルを)



メイ「─────っ!!!!!(おい、すみれ先輩を見ろ!!なんだあれっ!!!あの人あんな顔するのかよっ!!ていうかあんな顔見せられて私はこれからどうやってすみれ先輩と接すればいいんだぁぁ)」バンバンバン!

四季「メイ、いたい」

きな子「……ばたんきゅーっす」トテッ




かのん(うわぁ、すみれちゃん……なにその顔……)

かのん(これって約束通り白けた目で見た方がいいのかなぁ……?)

250: 2023/02/19(日) 05:27:38.39 ID:FO0yL1bR.net
かのん(……でも、みんなすごいっ……!向こう側で見てるだけじゃわからない。同じステージに立つ事でわかる凄さがあるんだ)

かのん(……これが可可ちゃんのいってた最高の景色?)

かのん(そうかもしれない、でも違うかもしれない……でもこの先に続く景色がまだあるような気がする)

かのん(今は私はまだ歌うことしか出来ないけど、いつかその最高の景色をみんなで見たいっ!)

かのん(……歌うことしか出来ない?)

かのん(あはは、不思議だな。今まで歌うことだけが出来なかったのに)

かのん(でも、それがとても嬉しい)

かのん(今ここでみんなみたいに踊れなくたって、歌えるだけで心の底から嬉しいの)

かのん(やっと、出来ていたことが、もう一度出来るようになったんだからっ)

かのん(もうっ絶対、はなしたくないって心から思える!!!!)



かのん「─────♪─────♪」



ウィーン「っ……あの子に苛立つ理由はそういう事ねっ」

ウィーン「私にないものをもってるからっ」

ウィーン「歌における表現力、それは聴く人の脳内に世界を創造する事っ」

ウィーン「それは全てを破壊する歌と対極する存在っ!!」

ウィーン「なるほどね。これが真に私に足りない、私に必要なものっていいたいのね」


ウィーン「ふざけないでっ!!!!」


ウィーン「そんな私の歌を、全て否定するような事するわけないでしょうっ!!」

ウィーン「全てを破壊する私の歌を否定するような真似するわけないでしょうっ!!」

ウィーン「……こんな歌は認めない」


ウィーン「『本当の歌』は私の歌よ」





夏美「かのん先輩……」


夏美「ふんっ、ですの……」


夏美「勝手に遠くに行ってろでーすの」


夏美「なつみがバカでした」


夏美「あなたは私とは全然違う人ですもんね」

251: 2023/02/19(日) 05:29:27.98 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「─────。」


かのん「……う、うたいきった」

千砂都「かのんちゃんっ!!」

可可「かのんっ!!!!」

バッ!

かのん「うわっ、ちぃちゃん!可可ちゃん!」

恋「かのんさん、あなたのおかげで気付けていなかった大切な事に気付けました」

かのん「え?なんの話?」

恋「ありがとうございますっ!」

かのん「?」

すみれ「かのん、そんな事より焼きそばパンはどうしたのよ?あんた」

かのん「え?え?」

すみれ「私に逆らうなんていい度胸してるわね」

かのん「ちょ、だからそういう冗談やめてってば、洒落になんないんだよすみれちゃんがやると」


ウィーン「─────本物の歌は『私の歌』よ」


かのん「……え?う、ウィーンちゃん?」

すみれ「……ふん、こっちもいい度胸してるわね。私達がまだいるのにノコノコステージに上がり込んでくるなんて」

可可「貴方、ほんっとうに礼儀知らずデスね!」

252: 2023/02/19(日) 05:30:11.86 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「私の歌は全てを壊してくれる」


千砂都「おー、なんかただ者じゃないオーラをまとってるように見えるね。実際ただ物じゃないんだけど」

恋「RPGで見ました!同じサイズだったはずなのに戦闘が始まったら私達より大きくみえるやつです!」


ウィーン「この力を持って生まれたって事は、その力によって本物の未来に辿り着けって事なのよ」



きな子「……はっ!気付けば先輩たちのライブがおわってるっす」

メイ「ううううっ!!余韻に浸りてぇ!けど、なんか乱入者が出てねぇか?」

四季「……あの人、なにをするき?」



ウィーン「だから、私の未来に邪魔なものは全て壊して、壊し続けてあげる」



きな子「なんかあの人、物騒な事言ってるっすね」

メイ「だけど、笑って聞き流せねぇな。こっちは岩をぶっ壊すとこ見せられたからよ……」

四季「あの雰囲気、なんだかよくない感じがする」



ウィーン「たとえその結果、この世界がなにもない、空っぽになったとしても……」



夏野「なんですの。歯切れの悪い。いつもみたいにぺらぺら喋ってみろですの」



ウィーン「私は、破壊し尽くすっ──────────♪」



悠奈「おおっ!こっちも紹介待たずに歌い出した!」

摩央「…………たしかに、悠奈のいう通りね」


摩央「あの子の歌は危険だわ」

253: 2023/02/19(日) 05:31:10.43 ID:FO0yL1bR.net
きな子「ひぃっ!なんか怖いっすよ!あの人の歌ぁー!」

メイ「くっ、やっぱり聴いてるだけで苦しくなってくるっ!」

四季「……!」

メイ「どうした!?」

四季「あの人の歌でこのステージにダメージが入ってる」

メイ「はぁ!?」

四季「ほんとに全部壊すつもりだ」




かのん「っ!!」ゾクッ

千砂都「あははー、だいじょーぶ?かのんちゃん?」

すみれ「なんであんたはそんな余裕そうなのよ」

千砂都「えー?すみれちゃんも余裕そうじゃん」

すみれ「なんともないよう装ってるだけよ。私は役者なの」

千砂都「やくしゃ?」




恋「っ!!ステージに亀裂が!」

可可「ちょっと!この礼儀すらずのあんちくしょー!なにやってるデスか!!今すぐ歌うのをやめなさい!!」

恋「可可さんっ!これあれですよ!よくある踏むと足場が抜けるギミックですよ!」

可可「なににテンションあがってるんデスか!レンレン!!」




夏美「……みんな歌ひとつにぎゃーぎゃーうるさいですの」


夏美「私はなーにも感じないですのー」

254: 2023/02/19(日) 05:32:00.25 ID:FO0yL1bR.net
四季「き、きな子ちゃん、くるまさんとテレパシー出来る?」

きな子「え!?今っすか?まぁ、出来なくはないっすけど」

メイ「なんだよ!あの車に迎えに来てもらうつもりか?」

四季「ううん、あの車に12人乗せるのは違反になる」

メイ「ここにきてそんな事いってる場合かっ!!!」

四季「大丈夫、私にいい考えがある」

メイ「ほんとかよっ!」

四季「きな子ちゃん、くるまさんにテレパシーした?」

きな子「は、はいっす!」

四季「じゃあ衛星と通信してもらって」

きな子「うぬぬぬぬ……はいっ!し、してもらったっす!!」

四季「じゃあ、つぎはっ」


千砂都「あははは、落ちちゃった~」


メイ「っ!!!やべぇぞ!千砂都先輩が崩壊するステージから落っこちてる」

四季「めいっ」

メイ「いわれなくてもいくよ!!!!」




夏美「はぁーあ、歌ひとつでほんと大袈裟ですの」

夏美「歌そのもので建物が崩壊するわけないでしょうに」

夏美「つまりこれはライブ機材等の振動ごときで崩壊する建物だったって事ですの」

夏美「つまりこれは建築法違反ですの」

夏美「つまりこれは動画のネタ。スキャンダルですのー!!」

255: 2023/02/19(日) 05:32:48.47 ID:FO0yL1bR.net
かのん「あわわわわわっ!ちぃちゃんが落っこちゃったよー!!どーしよー!!!」

すみれ「まぁ、あの子は大丈夫でしょ」

かのん「って!すみれちゃん!すみれちゃんの足元もどんどん下がっていってるよ!」

すみれ「あら、ほんとうね」

かのん「なんでそんな余裕なの!」

すみれ「慌てても仕方ないでしょ」

かのん「だからって!」

すみれ「ていうか、かのん、あなたも落ちてってるわよ」

かのん「え??」


かのん「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」




千砂都「ふふっ、メイちゃんってばこんな所で大胆だなぁ~私をお姫様だっこだなんて」

メイ「こんな時までからかうなっ!!!ただキャッチしただけだ!」

千砂都「なんだかロマンチックだね。こうして崩壊してくステージの中、ふたり静かに抱き合うなーんて♪」

メイ「抱き合ってねぇ!もうっほんとこの人はっっ!」

千砂都「あー!あれ見て、かのんちゃんが落っこちてるよ」

メイ「なっ!!ていうかすみれ先輩もっ!」

千砂都「メ-イちゃん♪ふたりとも助けてあげて?お姫様のお願いです」

メイ「こんな時でもふざけんなっ!私はあんたほど余裕ねぇんだよっ!!」

千砂都「でも、いってくれるんだねー」

メイ「あたりまえだろ!!!」




きな子「はぁ……はぁ……」

四季「だいじょうぶ?きな子ちゃん」

きな子「はい、なんとかっ……頼まれたとおりにやったっすよっ……」

四季「なら、絶対、大丈夫」

きな子「ううううぅ……」バタン

四季「大丈夫だから休んでて」

きな子「あぁ、四季ちゃんのふとももムチムチっす」

四季「きな子ちゃん」

256: 2023/02/19(日) 05:33:28.12 ID:FO0yL1bR.net
メイ「ぜぇ……ぜぇ……」

千砂都「おー、すごいすごい」パチパチ

かのん「あ、ありがとうっ……」

すみれ「ご苦労様、メイ。よくやったわ」

メイ(っすみれ先輩の顔っ、さっきの見せられてから近くで見るとやばいっ!)

すみれ「なによあんた、そんな目でじろじろ見ないでくれる?」

メイ(うぅっ、めちゃくちゃ塩対応だっ……!!)

メイ「ほ、ほんとあんたらはっ、もうちょっと取り乱したりしろよな……」

すみれ「ふーん、取り乱して欲しいの?なら、かのん」

かのん「な、なに?」

すみれ「下みてごらんなさい」

かのん「え?」


かのん「─────っ!!!!!!!!!」


かのん「きゃあああああああっ!!!!高いたかい高いたかいっ!!!!!おろしておろしてっおろしてよぉっ!!!!」

メイ「ちょっ!暴れんなバカ!」

千砂都「あははは、かのんちゃんかわいい~」

すみれ「ほら、よかったわね。取り乱してもらって」

メイ「あんたなぁ~!!!」

257: 2023/02/19(日) 05:34:16.19 ID:FO0yL1bR.net
恋「あわわわわわっ、どんどん足場がなくなっていきますっ」

可可「レンレン!こっちにくるデスよ!」

恋「はいっ!」

可可「だ、だ、だいじょうぶデス!シキシキがなんとかしてくれますからっ」

恋「そうですねっ四季さんはいつも助けてくれます」

可可「だから、おおおおびえなくていいいいいですよっレンレン!」

恋「く、可可さんっ……」

可可「あ、あわわわわ。れんれんっだいじょぶですからねっ!」

恋「……」

可可「ククの側にいればへーきですからねっ!怖くないデス!だから、はなれちゃだめデスよ!ずっと一緒なんですからっ!!!」

恋「……はい、大丈夫です。あなたと一緒なら」

可可「……?れ、れんれん?」

恋「だって、あなたが側にいてくれるんですから。なにも怖くないですよ」

可可「れんれん……」

恋「可可さん。いまさらですけど、私と出会ってくれてありがとうございます」

可可「なっ!それはこっちの台詞ですよ!ククこそありがとです!レンレンに会えてありがとうデス!!!」

恋「貴方に出会えて、ほんとうによかったって、さいこうだって、わたくしはこころのそこからっ……おもってますっ!」

可可「っ!ククもデスっ!!くくもですよっ、れんれんっ……あなたに出会えて、ほんとうにしあわせでしたっ」

258: 2023/02/19(日) 05:35:18.08 ID:FO0yL1bR.net
千砂都「あー、メイちゃんあれみて」

メイ「今度はなんだよ……っておい!あれは!」

千砂都「うん、可可ちゃんと恋ちゃんが今生の別れみたいな事してる」

メイ「そっちじゃねぇ!そっちも気になるけどっ、もっとやばい事が起こってるじゃねぇか!」

すみれ「……あれなに?隕石?」

メイ「おいっ四季!!!!あれ、お前が作ったやつだろ!!見覚えある人工衛星じゃねーか!ジンコーエーセイ!!」

四季「うん、引き寄せてここに落とそうとしてる」

メイ「はぁ!?なに考えてんだ!お前ー!!」

四季「大丈夫、このまま落ちたら私達氏んじゃうけど。この地下には迷宮がある」

メイ「なんのはなしだよっ!?」

四季「あの人工衛星に落っこちてきてもらって、地下迷宮まで穴をあけてもらうの」

メイ「だから、そんなことして今なんになんだよっ!!!」

四季「そうしたら私達はそこに落っこちればいい。だって地下迷宮になら落っこちても私達平気だったでしょ?」

メイ「なっ!そんな簡単にいってるけどなっ!そんなうまくいくわけっ」

四季「いく。大丈夫。きっと。たぶん」

メイ「自信なくなってってんじゃねぇか!!」

四季「みんな無傷は難しいかも。でも、いまさら後には引けないし覚悟を決めるしかない」


四季「それにもう衝突する」




すみれ「……」


すみれ(なんか……)


すみれ(ハリウッド映画に出てる気分……)キラキラキラ




ズゴォォォォォォッ!!!!!

259: 2023/02/19(日) 05:36:49.36 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美(……う、ううっ)

夏美(……ここは?どこですの……まっくらですの……)

夏美(いや、違う……これは私のかわいいかわいいおめめが開いてないだけですの。これは中途覚醒ってやつですの)

夏美(意識だけ目覚めてて体の方はまだおやすみ中のやつです)

夏美(なんでこんな状態になってるんですの?……ええっと、なにがあったんでしたっけ)

夏美(たしかライブをやってて、みんながたかが歌ごときに慌てふためいてて、違法建築したステージが崩壊し始めて……)

夏美(その後、何かが衝突してきて、途端に凄い衝撃が襲ってきて、それで気を失って)


???「─────、─────。」


夏美(ん?だれかの呼ぶ声……?)


???「─────、─────?」


夏美(だれですの?四季?すみれ先輩?)


???「─────、──────────。」


夏美(それとも、かのん先輩……?)

260: 2023/02/19(日) 05:38:25.45 ID:FO0yL1bR.net
…………………………



ウィーン「ほんと、めちゃくちゃな事してくれるわね。私が歌っているステージに人工衛星なんて落っことしてくるなんて。貴方達のやる事は本当に理解に苦しむわ」


夏美「ああっ!!!よりによって一番見たくない顔ですの!」

ウィーン「貴方達ごときが白人である私達の邪魔をするだけでもありえないっていうのに、さらにありえないことをやってくれるなんてね。そういえば貴方達に礼儀知らずだとかなんとか言われたけれど、貴方達の方がよっぽど礼儀を知らないんじゃない?」

夏美「ううっ、体が動かない!逃げたいのに逃げれないですの!意識と顔の感覚だけありますけど他が全部おねむのまま!これならもう全部眠っててもらったほうがましですの!!」

ウィーン「まったく、遥々こんな所に来させられて受ける仕打ちがこれなのかしら?よくも私の未来を邪魔してくれたわね……」

夏美「……はぁ?未来?」

ウィーン「でも、再確認したわ。やはり破壊こそが正義。破壊に対抗できるのは破壊だけ。表現や創造じゃないってね……だから、私の歌こそが本物っ……!」

夏美「……ふん、なんでそんな全部ぶっこわそうとするんですの」

ウィーン「それは私が本物であることを証明するためよ」

夏美「本物って、そんなものいったいどう証明するんですの?質屋にでも出すんですの?」

ウィーン「簡単な話よ。一番になればいい、ただそれだけ。逆にそんなこともわからないのかしら?」

夏美「いちばん……」

ウィーン「一番優れているものこそがこの世で唯一絶対のもの。唯一のものとは本物しか存在しないという事よ。そして本物になるには一番になるしかないっ……!」

夏美「……ふん、あなたもですの?」


夏美「……一番にコンプレックスを抱いてるかわいそーな人は」ボソリ

261: 2023/02/19(日) 05:39:05.22 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「なにか言ったかしら?声が小さくて聞こえなかったわ」

夏美「なにも言ってないですのー」

ウィーン「ほんと、貴方達日本人ってそういう思わせぶりな言動が好きよね。電車が来てるタイミングで告白したり、友達としての好きとしか捉えなさそうな相手に中途半端な告白したり、そういうのってどうしてかわかる?断られたくない、でも気持ちは伝えたいっていう一番ダサい身勝手な感情からきてるのよ。ほんと自己中なのね。貴方達って」

夏美「あー!もう、うるさいですね!1人でペラペラペラペラ喋るなですの!」

ウィーン「とにかく私は本物である事を証明したいだけよ。だから一番以外は価値がないの。だから、それを邪魔するものは全て破壊する」

夏美「……ま、理解できなくはないですの」

ウィーン「……?」

夏美「たしかに、一番になれなきゃやる価値ねぇーですの」

ウィーン「ふーん、わかってるじゃない。貴方」

夏美「一番に……一等になれなきゃなんの意味もありません」

ウィーン「えぇ、その通りよ」

夏美「でも、世の中そうじゃない人ばっかですの」

ウィーン「?」

夏美「一番になれなくても挑戦し続ける人、そもそも順番なんか気にしてない人、ただそうしたいという理由だけでやってる人。どうやらそういうのが普通の人らしいですの。やる事に価値があるか意味があるかなんて考えない人の方が多数なんですの」

夏美「だってそんなの考えたら、人生の大半は意味も価値もないものですからね」

夏美「だからそれが普通の人の価値観なんですの」

ウィーン「……普通ね」

262: 2023/02/19(日) 05:40:26.65 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「その普通の人というのは貴方達日本人にのみ当てはまるものの事?普通だなんて言葉を偉そうに使っているけれど、この世界で普通を語っていいのは私達だけなのよ?人生の大半は意味も価値もないっていうけど、それは貴方達日本人の人生であって私達白人の」

夏美「あーっ、もううるさいですの。静かにしろですの」

夏美「私は貴方と同じく一番以外は意味がないと思ってますの。一番になれなきゃやる意味がないと。価値がないと。だから私はお金稼ぎになること以外やる気が出ないんですの。それが私に出きる事で唯一意義を見出せるものですから」

ウィーン「そう、なら貴方はいい価値観を持ってるわ。私と一緒でね。これは光栄な事よ?私と同じ価値観を所有しているんだから」

夏美「あー、はいはい、そうですね。一緒ですの、一緒ですの」

夏美「そうやって自分の思い通りにならなそうなら全部ぶっ壊そうとしたり、……決心しようとしてる先輩の邪魔をしようとしたり。あなたは私と同じ幼稚なクソガキ仲間ですの」

ウィーン「……くそがき?」

夏美「それにあなたも私とおなじで一番になれませんでしたね。だったら、貴方にも価値がないってことですの。これも私と一緒ですの」

ウィーン「……なんですって?」

夏美「だって、貴方は負けたんですから」

ウィーン「はぁ?なにを寝言を言ってるの!私の歌はSunny Passionにも!貴方達にも勝っていた!確実にっ!!」

夏美「うたぁ?そんなもん知りませんの。そんなふわふわしたものでどう競うんですの?鐘の数でも競うんですの?売れたCDの枚数ですの?私が言ってるのはコレですの」

ウィーン「?」

夏美「この惨状を見てみなさい。これはおそらくうちの四季が巻き起こしたものですの。これがどういうことかわかります?」

ウィーン「知らないわね。そんなこと」

夏美「ふん、なら教えてあげますの。あなたは歌で全部をぶち壊すっていいました。破壊こそが正義だと。でも、現実はこれです。歌なんてちっぽけなものじゃこんな惨状は引き起こせませんの。あの高くそびえたってた塔は消え、そこにこーんな大穴が空き、這い上がるのも不可能な奥底にまで落っことされ、力尽きた私達は奈落の底から物欲しそうに月を見上げる事しか出来ません。貴方の歌でここまでの事ができますか?所詮は人を怯えさせるだけですの。この圧倒的絶望と孤独は引き起こせない。つまりあなたの歌なんてぜんぜんちっともこれっぽっちも凄くなんてないって事ですの!」

ウィーン「…………」

夏美「どーしたですの!いーかえしてみろですの!」

ウィーン「……んんっ、……けほっけほ」

夏美「?」

ウィーン「……もういいわ」

夏美「は?」

263: 2023/02/19(日) 05:41:32.45 ID:FO0yL1bR.net
ウィーン「今日は貴方のせいで……声を使い過ぎた。喉は大切にしないとね。だって私の喉は……『本物の喉』だから」

夏美「なーにが『本物の喉』ですの!バカバカしい!」

ウィーン「もう疲れたの。静かにして」

夏美「あーっ!!むかつきますの!この人に静かにしろだなんて言われるなんてっ!!!」

ウィーン「……はぁ」

夏美「ため息なんかつくなですの!あなたみたいな人は他人にため息つかれる側の人間ですの!皆の目の上のたんこぶであれですの!」

ウィーン「…………」フッ…

夏美「アンニュイとした顔するなですの!儚さとかそういう部分一切出すなですの!」

ウィーン「…………」スッ…

夏美「目なんか閉じて、うんざりしてるみたいな感じだすなですの!さんざんうんざりさせられたのはこっちなんですの!!」

ウィーン「…………」

夏美「静かにするなですの!あんだけ騒ぎ立ててたぶんざいで!あーっ!ほんとむかつくですの!この人はっ!きーっですの!」


グラッ…ガガガガッ……


夏美「……ん?」


ガガ ガガガッ……!!


夏美「ちょっ!!あれはっ!が、瓦礫が落ちてくるですの!!」

ウィーン「……え?……あぁ」

夏美「余裕かましてんじゃないですの!のんびりしてないでさっさと私担いで逃げるですの!」

ウィーン「静かにしてっていったでしょ……」

夏美「命令するなですの!あなたが私の言うこと聞いてろですの!あなたとこんなところで心中なんてごめんですからね!いいから早くってにゃああああっ!瓦礫が落っこちてくるですのぉっ!!!!!」

ウィーン「……うるさい」

夏美「これがうるさくせずにいられますかぁっ!!!あなたも少しは騒げですの!だいたいですねっ!」

ウィーン「─────♪」

夏美「!!?」


バァァァン!!!!


ウィーン「……ほら、これでいいでしょ」


パラパラパラパラ……


夏美「………っ」


夏美「あ、あなたみたいな人が、人のためになにかするなですの!しかも私なんかのために!」

ウィーン「なんなのよ。助けろと言ったり、するなと言ったり」

264: 2023/02/19(日) 05:42:17.60 ID:FO0yL1bR.net
夏美「……」キョロキョロ


夏美(……よく見たら、私達のまわりだけを避けたような形で瓦礫が積まれてますの)


夏美(雨の中、そこにだけ傘がさされてたみたいな………)


夏美(まさかっ─────)



ウィーン『今日は貴方のせいで声を使い過ぎた』



夏美「あなたっ、ずっとわたしをっ」

ウィーン「……静かにして、いい加減」

夏美「は、はぁ???なーにうんざりしてんですのっ!かっこよく決めてるつもりですの?あなたみたいな身勝手な人が!まったく余計な事してくれて!絶対感謝しませんからね!」

ウィーン「…………」フゥ…

夏美「疲れ切ったみたいに空なんか見上げるなですの!だいたい意味不明ですの!なんでわたしなんかをっ!理解不能ですの!」

ウィーン「……月が綺麗ね」

夏美「っ!日本人相手にそういう事いうなですのっ!!!気色悪いっ!!」

ウィーン「……?」

夏美「はぁ……はぁ……」

ウィーン「…………」

夏美「……もう」

ウィーン「…………」

夏美「……わたしも疲れましたの」

ウィーン「…………」

夏美「はぁ……」

265: 2023/02/19(日) 05:42:56.12 ID:FO0yL1bR.net
ブルルルルル


夏美「?」


ブルルルルルルルルッ


夏美「へ、ヘリコプターですの!救助に来てくれたですの!見てみるですの!」

ウィーン「…………すぅ」

夏美「なーに子供みたいな寝息立ててるんですの!さっさと起きてその本物の喉とやらで情けなく私達日本人に命乞いしやがれですの!!!」

ウィーン「…………」

夏美「はやく大声出しやがれですの!この本物の白人とやらっ!!好き勝手言われて悔しくないんですの?それとも白人には悔しいって感情がないんですの?」

ウィーン「…………」

夏美「もうっ!あんだけぺらぺら喋って疲れたらおねむですか!どこまでも自分勝手な!わたしの番も回せですの!そしてこんどはあなたがノイローゼになれですの!」

ウィーン「……」

夏美「振り回されっぱなしですの……わたしは振り回す側なのにっ」


夏美「もう、あなたとなんか二度と関わりたくないですの!ふんっ!」

266: 2023/02/19(日) 05:44:00.58 ID:FO0yL1bR.net
─────翌日。

267: 2023/02/19(日) 05:44:53.44 ID:FO0yL1bR.net
かのん「ううぅっ、夏休み始まって数日で病院送りだなんて……」

すみれ「たまっていた本が読めてラッキーだわ」

かのん「全然ラッキーじゃない!だいたいそんなの入院してなくても読めるじゃん!」

すみれ「環境って大事なのよ?入院中は暇だからどんどん読み進められる」

かのん「なんだって急に読書なんてしてるの?そんなのするキャラだったっけ?」

すみれ「別に本くらい読むでしょ。あんたの前では読んでなかったけど。こんな風に話しかけてくるから」

かのん「人を邪魔者みたいにいって」

すみれ「そういったんだけど」

かのん「ちぃちゃん!すみれちゃんがいじめるぅっ!!」

千砂都「ごめんね、すみれちゃん。うちのかのんちゃんが迷惑ばかりかけて」

かのん「もうっ!ちぃちゃんまでぇっ!!」

千砂都「でも、よかったよねー。あんな大事故に巻き込まれたのに今日1日安静にしとけば明日退院出来るってさー」

かのん「まぁ、それは不幸中の幸いなのかもだけどさ……」


可可「みなさん元気してるデスかー?」

恋「お見舞いにきましたよ」

かのん「あー!可可ちゃん恋ちゃんのずるいものコンビだ!」

恋「なんですかそれは?」

かのん「だって、ふたりは入院してないじゃん!」

恋「あぁ、それは……」

可可「だってクク達の事はシキシキが完璧に助けてもらえましたからね!」

かのん「ずるいっ!私達も完璧に助けて欲しかった!もしくは可可ちゃん達も私達と入院するような事態に陥って欲しかったよ!」

可可「なんてこと言うデスか!かのん」

かのん「だってぇ~!」

恋「はいはい、果物を持ってきましたのでそれを食べましょうね」

かのん「うぅ、それは食べるけど」

すみれ「いいわね。ちょうど小腹が空いてたのよ」

恋「はい、千砂都さんのためにまるい果物も持ってきましたよ」

千砂都「れんちゃんっ!さすがだね!まるあげる!まるっ!」

すみれ「貰うのはあんたでしょ」

可可「ああ、そうそう。ついでに御三方に書いてもらいたいものがあります!」

すみれ「?」

千砂都「んー?」

かのん「え、なに?」

可可「これデス!!!」

268: 2023/02/19(日) 05:46:08.12 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


四季「たまにはこういうのも悪くない」

メイ「入院するのがか?」

四季「うん」

メイ「私はごめんだよ」

四季「そう。きな子ちゃんはどう思う?」

きな子「あ~日向ぼっこ気持ち良いっす~」

四季「ふふ、よかったね。窓際のベットで」

きな子「っす~♪」

メイ「まったく、呑気なんだからよ。きな子は」


夏美「はーい、鬼塚商店のものがお見舞いにきてあげましたよ~」


メイ「おう、お前か」

四季「夏美ちゃん」

きな子「っす~」

メイ「お前はいいよな頑丈で」

四季「夏美ちゃん、ほとんど無傷でよかった」

夏美「ま、まぁ、私の日頃の行いのおかげってやつですの……」

きな子「なるほど、鶴の恩返し的な事があったんすね~」

夏美「なっ!あんなもんツルじゃありませんの!」

メイ&四季「?」

夏美「それよりほら、お見舞いにうちの売れ残りもってきてあげましたよ」

メイ「いや、ほとんどガラクタばっかじゃないか」

夏美「なんてこというんですの。メイ」

四季「そう、ガラクタなんてない。なんでも改造すれば使える」

メイ「頼むから変なもん作らないでくれよ。入院中くらい静かにさせてくれ」

夏美「ちゃんとお菓子もありますの。みんなで食べるですの!」

きな子「わーいっす!」

夏美「あ!おまけのカードはもらいますね」

メイ「売るつもりだろ、お前」

夏美「この車のカードが入ってるお菓子は特に激熱ですの!この青いスポーツカーが出たら10万はくだらないですの!」

メイ「お前な、そんな事言ったら、もし出たとしても誰も渡さなくなるぞ」

夏美「げげっ、そうですの……ってそんなわけないですよね?だって私達友達なんですから!ね?ね?」

メイ「ほんと調子良い奴」

きな子「……はっ!!!」

四季「どうしたの、きな子ちゃん」

きな子「忘れてたっす!約束!!」

メイ「は?約束?」

きな子「くるまさんを青くしてあげないといけないんすよ!約束したっすからね。退院したらすぐやるっすよ!」

四季「それ、私も手伝う。私が作った車だし、傷だらけのままはかわいそう」

夏美「塗装仕事ですか?う~ん、では時給1500円ってところで私も手伝ってあげるですの!」

メイ「しょうがねぇな。病み上がりで怪我でもしたら大変だから私も手伝うよ。友達3人で仲良くやろーぜ」

きな子「わーいっす!」

夏美「って!私を仲間外れにするなですの!」

四季「ふふ」

269: 2023/02/19(日) 05:46:41.56 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


悠奈「みんな大丈夫だったかな~」

摩央「大丈夫よ。彼女たちなら」

悠奈「急にあっちこっち崩れてくから先に脱出しちゃったけど」

摩央「仕方ないわよ。スクールアイドルという過酷な世界にいるんだから、ああいう緊急時は咄嗟に体が動いてしまうわ」

悠奈「これが強くなり過ぎたものの代償……悲しき定め、だね☆」

摩央「救助のヘリも呼んだし、きっと大丈夫よ。だからまた近いうちに会えると思うわ」

悠奈「そうだね!だってまだあれが残ってるんだから!」

摩央「そうよ、だから悠奈」

悠奈「なぁに?」

摩央「もっと強くなるわよ」

悠奈「ふふ!それ、いいね☆」

270: 2023/02/19(日) 05:47:58.37 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


夏美「あーあ、結局10万のレアカードは出ませんでしたのー」

夏美「他のお菓子でレアなのは出ましたけど……」


きな子『わー!これキラキラしててすごいっすー!』


夏美「なんてきな子がはしゃぐもんだから、もらえなかったですの」

夏美「……あれ、いくらくらいしたんでしょう?」


恋「あら、夏美さん」


夏美「ん?あぁ、恋先輩ですの」

恋「こんな所で奇遇ですね」

夏美「そうでもないですの。全員同じ病院に送られたんですから」

恋「夏美さんもお見舞いですか?」

夏美「ですの、四季たちは私がいないとダメダメですからねー」

恋「ふふ、そうですか。私も今かのんさんたちを見てきたんです」

夏美「かのん先輩……」

恋「それで今から四季さん達の方も見ようかなと思って。あっ可可さんも来てるんですけど、今お手洗いで。すぐ追いついてくると思いますけど」

夏美「ふーん、それは四季が喜ぶですの。ふたりのことが大好きですからね。ついでにきな子も喜ぶですの。騒がしいのが好きですからね。メイは氏ぬかもですの」

恋「えええ!?そんなに悪いんですか!!」

夏美「まぁ、見てあげてくださいですの。みんな喜びますから」

恋「……夏美さんはこれからかのんさんのところに?」

夏美「……いや、他に用事があるんでそれをしに行くところですの」

恋「そうですか」

夏美「……」

恋「夏美さん」

夏美「なんですの?」

恋「りんご食べますか?剥いてあげますよ?」

夏美「なんですの急に。私は病人じゃないですの」

恋「そうですか」

夏美「……でも、そんなにいうなら食べてやるですの」

恋「ふふ、ありがとうございます♪」

271: 2023/02/19(日) 05:51:07.29 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「あー、暇だぁー」

すみれ「……」

かのん「ひまだよー」

千砂都「そうだねー」

かのん「ひ、ま、だ、よ!」

すみれ「……千砂都、かのんに静かにしてって言って」

千砂都「わかったー、かのんちゃん静かにしよ?」

かのん「直接言ってよ!感じ悪いなぁ!」

すみれ「あんたこそ、かまって欲しいからってうわごとみたいに暇ヒマ言うのやめて」

かのん「わかった、はっきり言うね。すみれちゃんトランプしよ」

すみれ「いやよ」

かのん「─────っ!!!」バンバンッ

すみれ「千砂都とふたりでやりなさい」

かのん「ふたりで出来るのなんて限られてるじゃん!」

すみれ「スピードとかあるでしょ」

かのん「ちぃちゃんそういうのめちゃくちゃ強いんだよ!」

千砂都「強くてごめんねー」

かのん「だいたいなんで読書なんてしてんの!せっかく友達と入院してんだよ?もったいないと思わないの?」

すみれ「何がせっかくなのよ。だいたいいつも一緒にいるんだからこんな時くらい私の好きにさせてよ」

かのん「真面目に本なんか読んで、あんなの何の役に立つんだろうね?ちぃちゃん」

千砂都「本をよく読む人は言葉がすらすら出てくるようになるらしいよー」

かのん「ふーん、そんなの何の役に立つんだか。私達と遊ぶ方が百倍有意義でしょうが!」

すみれ「ほんとうるさいわね」

かのん「だってだってぇー!!」

すみれ「あーもう、じゃあ、あと1時間だけ待って。そしたら読み終わるから」

かのん「そしたらやってくれるの?!」

千砂都「よかったねー!かのんちゃん」

すみれ「ええ、一試合だけやってあげるわ」

かのん「けちっ!!」

千砂都「あはははは!」

272: 2023/02/19(日) 05:51:39.97 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「……あ、そういえば大事な事思い出した」

かのん「?」

すみれ「あんたいい加減、焼きそばパン買ってきなさいよ」

かのん「え」

千砂都「あー、そういえばそうだ」

すみれ「ほんとかのんは、お使いの一つも満足に出来ないんだから」

かのん「え?ほんき?」

すみれ「あたりまえでしょ。こんなの冗談として成立しないじゃないの。ね?」

千砂都「うん、しない。冗談として意味わかんないもん」

かのん「わたしのためについた優しい嘘なんじゃなかったの?」

すみれ「意味わからない。そんな嘘存在しないわよ。ね?」

千砂都「うん、しない。そんなの優しい嘘になりえないもん」

かのん「え?え?」

すみれ「というわけで、かのん」

かのん「……」

すみれ「ダッシュで……」

かのん「……」

すみれ「おねがいね?」

かのん「……はい」

273: 2023/02/19(日) 05:52:49.72 ID:FO0yL1bR.net
~~~~~~~~~


かのん「はぁ〜、こっちは入院中なのにパシリにするなんてほんとすみれちゃんってばヤンキーなんじゃないの?」

かのん「病院の売店って何売ってるんだろ。きっとたいしたもん売ってないよね」

かのん「う~ん、一階にあるって言ってたけどどこにあるんだろう?」

かのん「えーと、……あっ、ここかな?」


夏美「いらっしゃいませですの〜」


かのん「……」

夏美「……」

かのん「なにやってるの」

夏美「バイトですけど」

かのん「ふーん」

夏美「……」モグモグ

かのん「なに食べてるの」

夏美「りんごですの」

かのん「接客中に?」

夏美「はい」

かのん「炎上するよー」パシャ

夏美「させようとしないでください」

かのん「で、この仕事は勝手にやってるのかな?」

夏美「勝手にやってるわけないでしょう。ちゃんと店員さんに話して交代という形で手伝わせてもらってるんですの。時給880円ですの。都の最低時給を大きく下回ってますの。足元を見られましたの。でもやらないよりましですの」

かのん「ふーん、よくそんな交渉が出来るよね」

夏美「なんでも行動してみないとわかりませんからね」

274: 2023/02/19(日) 05:53:35.65 ID:FO0yL1bR.net
かのん「それで、せっかくお見舞いにきたんだからついでに売店でもバイトしたいなって?」

夏美「はい、あなた達が病院送りにされたのでひと笑いしに来ましたけど、ただ見て帰るだけじゃ勿体ないと思いこうなりました」

かのん「ふーん、相変わらず現金な奴」

夏美「世の中マニーですからね」

かのん「まぁ、そっちがなにしてようと勝手なんだけどさ」

夏美「ですの」

かのん「……そんな事よりさ、焼きそばパンある?」

夏美「え?そこにパンの売り場があるのでそこ見てください」

かのん「いや、なんも置いてないから聞いてんだけど」

夏美「そこになければないですの」

かのん「感じ悪っ、奥から出してきてよ」

夏美「奥なんか見ても焼きそばパンなんてありませんよ。パンなんて日持ちしないのに大量にストックしてるわけないじゃないですか」

かのん「えぇ~?どっかにない?」

夏美「ありません。ああいうのはその日搬入の人が持ってきてくれた分で終わりですの」

かのん「じゃあ持ってこさせてよ」

夏美「来る時間が決まってますの。なので今呼んだって来ません」

かのん「はぁ〜、さっきから使えないバイトだなぁ」

夏美「かのん先輩の要求はバイトの領分を超えてます」

かのん「じゃあなんか代わりになりそうなのない?」

夏美「うーん、じゃあ、カップ焼きそばでも買えばいいんじゃないですか」

かのん「あぁ、なるほど。それをなんかパン的なもので挟めばいいか」

夏美「デザート売り場にワッフルがありますの」

かのん「うげぇ……じゃあそれでいっか」

夏美「リアクションと言ってることが噛み合ってませんよ」

かのん「私が食べるわけじゃないし」

夏美「ふーんですの。で、買いますか?」

かのん「あっ、そうだ。先輩後輩の関係なんだからさ、あれやってよ」

夏美「?」

かのん「レジ通したふりしてくれるやつ」

夏美「そんな事するわけないでしょ」

275: 2023/02/19(日) 05:55:01.29 ID:FO0yL1bR.net
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


恋「皆さんおかげんはよろしいでしょうか?」

可可「ククとレンレンが来ましたよ!大事な後輩のためにっ!」

四季「可可先輩っ、恋先輩っ」

可可「シキシキー!会いたかったデス!」

きな子「あー、先輩たちっす!」

メイ「あっ、あわわわわわっ!」プシュー

きな子「あ、メイちゃんが病室という逃げ場のない環境で先輩たちと対面し、脳がショート状態っす!」

恋「みなさんの大変な事に巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」

四季「ううん、私達が勝手に手伝いに行っただけ。先輩たちのせいじゃない」

きな子「大変だったっすけど、それ以上に楽しかったっす!また先輩たちのライブみたいっす!」

可可「ほんとですか?ならこれからもいっぱい見せてあげますよ!」

恋「メイさん。体調が悪いと伺ったのですが大丈夫でしょうか?」

メイ「あ、あのっ……は、はいっ……そ、そ─────」

きな子「ふたりに会えてよくなったっていってるっすー」

恋「そうですかっ、よかったです♪」

メイ「─────!」ドキッ…!

きな子「メイちゃんこれ心臓止まっちゃうんじゃないすか」

四季「そうなっても大丈夫なようさっき心臓マッサージ機作った」

可可「シキシキ、きなきな!今回の旅、ほんとうに手伝ってくれてありがとうございました!」

きな子「どういたしましてっす」

四季「私が手伝うのは当たり前。だってふたりが必要としてくれるから」


四季「それに私も、ふたりと一緒にいたいし……」


恋「四季さんっ」

可可「あぁ~!なんて可愛いんでしょう!シキシキは!こんな後輩一生大事にしますよ!ね?レンレン!」

恋「はい!」

四季「……えへへ」

276: 2023/02/19(日) 05:56:08.99 ID:FO0yL1bR.net
可可「そしてメイさん!」

メイ「!!!」ドキッ

可可「ファンとして応援し続けてくれた貴方が今回スタッフとして活躍してくれた事、とても感謝してます」

メイ「あっ……あ……」パクパク…

きな子「メイちゃんの心拍数、もう限界っす」

四季「破裂されるのは困る、それは心臓マッサージ機じゃ治せない」

恋「それで話あったのですが、メイさんも四季さんと同じように私達をこれからもサポートしてくれませんか?」

可可「はいっ!クク達には貴方が必要です!スクールアイドルが好きな貴方には部活にひとりはいなければならないデータキャラとしてっ!一緒に活動してもらいたいのデス!」

恋「でーたきゃら?そういうキャラが部活には、なくてはならない存在なんですか?」

可可「はい、そうデス!」

恋「知りませんでした!そうだとするならメイさん!改めてお願いします!私達を支えてくださいっ!!」

可可「いやだっていっても先輩命令使っちゃいますからね!なのでこれからよろしくデス!メイメイ!」


メイ「っ!!!!!!」


きな子「あっ、メイちゃんが気絶しちゃったっす」

可可「?こうしないとメイメイは素直になってくれないとナッツに教わったのですが」

四季「大丈夫。十分口説き落とされたから」

きな子「四季ちゃん、メイちゃん心拍停止っす。あの世まで落っこちちゃうっすよ」

四季「それは困る、じゃあこれ使おう」

きな子「はいっす!」

可可「おぉ?お医者さんごっこですかー?ほんとに1年生はみんなかわいいデスね!」

恋「ふふ、そうですね」

可可「あっ、きなきなもよかったらクク達の事手伝ってほしいデス!」

きな子「きな子もっすか?別にいいっすよ。四季ちゃん達と一緒なら楽しそうっす♪」

可可「わー!嬉しいです!ついでにいうならスタッフじゃなくてみなさんもスクールアイドルを目指してもいいんですよ?というか一緒にやりませんか?うん、やりましょうアイドル!」

きな子「いや、それは遠慮しとくっす」

四季「うん」

メイ「─────(私にはあいどるなんて……柄じゃねぇ……///)」

可可「そ、そうですか……」ガーン

恋「……ざ、残念ですね、可可さん」

可可「で、でもでも、へーきです!だってククたちの元には五つの星が揃ったのデスから!」

恋「そうですね!これからどうなるか、楽しみですっ」

可可「はい!」

きな子「いつつの?」

四季「ほし?」

メイ「─────(あぁ、お星さまが見える……)」キラキラ…

277: 2023/02/19(日) 05:56:56.23 ID:FO0yL1bR.net
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


すみれ「遅いわねかのん」

千砂都「1時間経っちゃったね」

すみれ「そうね」

千砂都「あーあ」パタパタ

すみれ「……」

千砂都「……」

すみれ「じゃあ、やりましょうか」

千砂都「え?」

すみれ「トランプ」

千砂都「かのんちゃん抜きで?」

すみれ「だって、あんた暇そうだし」

千砂都「ふーん、私とはそういう理由でやってくれるんだ」

すみれ「かのんは甘やかすとつけあがるからね」

千砂都「厳しいお母さんだぁ、でも私もこれからは見習わないとねー」

すみれ「それで、やるの?」

千砂都「でもふたりで出来るのなんてスピードくらいだしなぁ」

すみれ「それでいいじゃない。強いんでしょ?あんた」

千砂都「まぁ、反射神経はいいと思うよ」

すみれ「私も負けないわよ」

千砂都「おー!負けず嫌いのすみれちゃんに勝負挑まれちゃった。これは長くなりそうだなぁ」

すみれ「なに自分が圧勝する前提で話してんのよ。初戦で私が勝って終わりよ」

千砂都「ふーん、そんなことさせないもんねー。よーし!じゃあ今日は徹夜でスピード対決だぁ!」

すみれ「まぁ、私に勝ち続けたらね?」

千砂都「やってやるぞー」

すみれ「ふん、きなさい」

千砂都「ふふ、なんかライバルみたいでいいね私たち!」

すみれ「かもね」

278: 2023/02/19(日) 05:57:50.21 ID:FO0yL1bR.net
〜〜〜〜〜〜〜〜〜




かのん「ふわぁ〜、いい天気だなぁ〜」

夏美「ふわぁ〜ですの」

かのん「やっぱり日向ぼっこは最高だよ」

夏美「お年寄りみたいな事言わないでくださいですの」

かのん「ていうか、いいの?抜け出してきて」

夏美「別に病院の売店なんて店員がいてもいなくてもどうでもいいでしょう」

かのん「どうでもいいわけないと思うけど」

夏美「セルフレジがありましたし問題ないですの。それに都の最低賃金を下回ってる環境で働くのはやはり不服ですの」

かのん「まぁ、なにしようとそっちの勝手だけどさ」

夏美「ですの」

かのん「そういえば、ウィーンちゃんはどうしたの?」

夏美「は?誰ですのそれ」

かのん「いや、ずっとあの瓦礫の中を一緒にいたって聞いてるけど」

夏美「知らないですの」

かのん「私達と同じ病院にいるの?」

夏美「……一眠りした後、私は本物の医療以外受けないのとか言ってどっかいきましたよ」

かのん「ふ~ん、そっか」

夏美「ですの」

かのん「残念だね。せっかく友達が出来たのに」

夏美「は?だーれがあんなの友達ですか!」

かのん「でも、また会えるよ。私達と一緒にいれば」

夏美「もう結構ですの」

かのん「照れちゃってさ」

夏美「照れてません」

かのん「はいはい」

279: 2023/02/19(日) 05:58:44.83 ID:FO0yL1bR.net
夏美「…………」

かのん「…………」

夏美「……あの」

かのん「なに?」

夏美「ということはあなたもやるんですね。スクールアイドル」

かのん「……うん、やる」

夏美「そうですか」

かのん「また反対しないの?」

夏美「別に、かのん先輩の勝手にすればいいですの」

かのん「ふーん、素っ気ないなぁ」

夏美「勝手にどこにでも行ってろですの」

かのん「どこにでも行かれたら寂しいくせに」

夏美「はぁ?そんな事ないですの」

かのん「素直じゃないね」

夏美「別に素直ですもん」プイッ

かのん「……でもまぁ、ありがとね」

夏美「……お礼を言われるようなことは何もしてませんけど」

かのん「こんな旅に出るはめになったのも、私が歌うはめになったのも、そこから歌いたいってまた思えるようになったのも全部そっちのせいだからね」

夏美「せいって、悪いことみたいに言いますね」

かのん「結果オーライなだけで、一歩間違えれば全部とんでもない事になってたからさ」

夏美「結果オーライじゃありませんの。ぜーんぶ私の計画通りなんですから!」

かのん「はいはい」

夏美「なんですの!適当に聞き流して!」

かのん「でもまぁ、感謝はしてるから」

夏美「……」

かのん「だから、まぁ、ありがとね、……夏美」

夏美「………ですの」

280: 2023/02/19(日) 05:59:17.59 ID:FO0yL1bR.net
かのん「わー、なんか照れてるこの子」

夏美「照れてませんっ!」

かのん「う~ん、これなら、ちょっとはかわいい後輩って思ってあげてもいいかなー」

夏美「なっ!わ、わ、私は最初からかわいいですの!今更気付いたんですの!?」

かのん「はいはい、そうだね」

夏美「っ!そ、そうですの!」

かのん「じゃあ、これからもよろしくね。かわいい後輩さん」

夏美「……はい、ですの」

281: 2023/02/19(日) 06:00:23.62 ID:FO0yL1bR.net
─────翌日。




かのん「このクソガキっ!!」

夏美「にゃははははっ!」

すみれ「もう、あんた達。これから退院なのにやめなさいよ」

かのん「だって、この子がっ!」

夏美「にゃっはーw 毎度毎度騙されるかのん先輩がおまぬけなんですのー!」

かのん「なんだとぉーっ!」

千砂都「あはは、騒がしいね。いつもこんな感じなの?」

すみれ「ええ、いつもこんな感じよ」

かのん「ねぇ聞いてよ!ちぃちゃん!この子ったらね!」

夏美「かのん先輩が悪いんですのー!」

かのん「はぁ!?私になんの非があるっていうの!ふざけないで!」

すみれ「とりあえず落ち着きなさいよ」

千砂都「これじゃあ、なにがあったのかわかんないよー?」

夏美「ちょっとした夜の病院で行われるホラー企画ですの!夏のドッキリ動画ですの!それでかのん先輩がぷっつんしちゃっただけですの。ヤンキーはすぐキレるから毎度の事ながら質が悪いですのーww」

かのん「毎度毎度質が悪いのはそっちでしょっ!!」

千砂都「あはは、楽しそうな動画撮ってるね♪」

かのん「たのしくない!」

282: 2023/02/19(日) 06:00:58.55 ID:FO0yL1bR.net
すみれ「またそんな動画撮って、ほんと懲りないわねあんた達」

かのん「あんた達!?だから私をその中に含めないでってば!」

夏美「にゃはははっ!かのん先輩はわたしと、いっ・しょ。ですの♡」

かのん「ふんっっ!!」ガシッ

夏美「きゃー!服掴むのは反則ですのー!逃げれないですの!ぅっー!たすけてー!追剥にあってますー!!」

すみれ「やめなさいってば」

千砂都「いじめちゃダメだよーかのんちゃん」

夏美「でーすの!こんなかわいい後輩いじめちゃダメですの!」

かのん「別にかわいくないし」

夏美「かわいいですの♡」

かのん「かわいくない」

夏美「かわいいっ!」

かのん「かわいくないっ!」

夏美「でも昨日、かわいいていったですの」

かのん「っ……」

すみれ「へぇ、あんたがね?」

千砂都「あはは、よかったー。やっぱり仲良しでー♪」

かのん「仲良しじゃないもんっ!もう、余計な事をっ!」

夏美「にゃはははっ!にーげろっですの!」

かのん「あっ、待て!このぉっ!」

夏美「にゃははははww」

かのん「あんたはほんとに毎回毎回っ!!」


かのん「もうっ、今日という今日は絶対っ」


かのん「ぜーったい、ゆるさないんだからぁっ!!!!!!」






おしまい。

283: 2023/02/19(日) 06:09:36.12 ID:HrDcse6r.net
乙!面白かった!

284: 2023/02/19(日) 06:34:58.59 ID:7+xFoOT8.net
長いー

285: 2023/02/19(日) 07:01:20.52 ID:/oZMhwlU.net
ぶっ通しでの投下おつ!!
滅茶苦茶面白かった!世界観に引き込まれて夢中で読んでたわ

引用元: かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」