1: 2017/04/14(金) 22:02:24.16 ID:lmFIc6Wt.net
「…………ねえ梨子ちゃん」


「……なぁに」


「…………夜中に話してる時ってさ」


「うん」


「2人だけ地球に取りのこされたみたいだよね」


「…………そうだね、聞こえるのは私たちの声だけ」


「……………………」


「……………………」


「耳をすませば遠くの物音が聞こえるかも…………」


「風の声は、ちょっとだけ、聞こえる」


「そうかな?」


「聞こえるよ」

2: 2017/04/14(金) 22:03:14.39 ID:lmFIc6Wt.net
「うーん、わかんない…………」


「ほら、あっちの方から」


「あっちってどっちぃ……」


「あっちだよ」


「…………あ、聞こえたかも」


「ふふっ」

3: 2017/04/14(金) 22:03:58.98 ID:lmFIc6Wt.net
「ねー、風の声ってなーに……」


「風が声を出してるの」


「海の音もそうだけど、梨子ちゃんってたまに変なコト言うよねー」


「あれはもういいでしょっ」


「…………空気も昼間より澄んでる気がする」

4: 2017/04/14(金) 22:04:36.80 ID:lmFIc6Wt.net
「涼しいからそう感じるのかも」


「……湧き水みたいな、空気だと思うんだ」


「湧き水かぁー、言われてみたらそんな気もする、でも海の方が近いかな」


「湧き水を飲んだことはないんだけどね」


「わたしも……」


「ごめん、千歌ちゃんは飲んだことあるのかと思ってた」


「日常的に飲むほど田舎じゃないよぉ……」

5: 2017/04/14(金) 22:06:15.09 ID:lmFIc6Wt.net
「でも、不思議だよね」


「え?」


「……2人とも飲んだことないのに、わかるなんて」


「確かにね……」


「私たち、生まれも育ちも違うのに」


「…………東京と内浦、なにがちがうのかなあ」

7: 2017/04/14(金) 22:07:31.66 ID:lmFIc6Wt.net
「……東京の夜は全然違ったよ」


「あっちはさ、夜が本番だって感じがするよね」


「でも、こっちはみんな眠ってるの…………人も自然も」


「今だってチカと梨子ちゃん以外寝てるんだよ、きっと」


「じゃあ、もう私たちだけの夜だね」


「うん、私たちだけ」


「……………………」

8: 2017/04/14(金) 22:08:38.28 ID:lmFIc6Wt.net
「梨子ちゃん、みて」



「…………ん」


「星、きれい」


「……綺麗だね」


「あれは何座なのかな、あの……」


「うーん、どれ?」


「あれだよあれ」


「……あれは、そもそも星座なのかなぁ……」

9: 2017/04/14(金) 22:09:31.56 ID:lmFIc6Wt.net
「ちがうちがうあのスプーンみたいな」


「……あれなら、おおぐま座だよ」


「おおぐま座……」


「有名な北斗七星もあるんだよ」


「……たしかにくまっぽいかも」


「星座にしては、結構似てると思うんだ」

10: 2017/04/14(金) 22:10:17.97 ID:lmFIc6Wt.net
「ああ、あの星が、ほしいな……」


「…………それで、あれがこぐま座」


「って、スルーしないでよぉっ」


「ごめんごめん」


「ごめんは1回でいいのだ」

13: 2017/04/14(金) 22:11:03.98 ID:lmFIc6Wt.net
「…………あの星と地球の間に、どのくらいの距離があるのかな」


「……わかんない」


「私もわかんない」


「……途方もない距離と時間をこえてひかってる」


「ながいながい、距離と時間、だよね」



「………………」

14: 2017/04/14(金) 22:12:23.89 ID:lmFIc6Wt.net
「……千歌ちゃんと出会ってから、何年も、何百年も、経ってる心地がするんだ」


「……そうかなぁ」


「……もしかしたら、何千年も前かもしれないね」


「前世で会ったりしてねー、前前前世ってやつだよ」


「時代が違ったら、バルコニーで出会ったかも」


「それだと悲劇になっちゃうからチカは嫌だなぁー」

15: 2017/04/14(金) 22:13:15.40 ID:lmFIc6Wt.net
「…………前世があるなら、私たちが出会わなかった時も、あるのかな?」


「うーん…………それはないと思うよ」


「……千歌ちゃんも、案外ロマンチストね」


「そう、かな……?ロマンチストじゃないと作詞役は務まらないのだ…………えへへ」


「照れてる照れてる」


「あーもうやめてよっ」


「ふふふっ」

16: 2017/04/14(金) 22:13:55.42 ID:lmFIc6Wt.net
「…………チカはね、梨子ちゃんと出会った日を昨日のように覚えてる」


「………………そうなんだ」


「だって、毎日思い出してるから」


「………………」

17: 2017/04/14(金) 22:14:39.43 ID:lmFIc6Wt.net
「梨子ちゃん、いつも言ってるよね…………大切なものは目に見えないって」


「…………うん」


「この前、あの本を読んで思ったんだ…………もしかしたら、梨子ちゃんもあの本に出てくる王子みたいに」


「………………」

18: 2017/04/14(金) 22:15:15.34 ID:lmFIc6Wt.net
「ちょうど一年たったときに、星に帰っちゃうのかな、なんて」


「………………」


「ううん、そもそも地球じゃなくて、私は、ただの普通星だったのかも…………」


「…………そんなこと」


「……なんかごめんね、妄想全開DAYだよ…………」

19: 2017/04/14(金) 22:15:51.56 ID:lmFIc6Wt.net
「……………………」


「……………………梨子ちゃん」


「……大丈夫だよ、千歌ちゃん」


「…………ほんと?」


「…………それに、私たちは離れていても、あの星を目指していれば」

20: 2017/04/14(金) 22:16:40.69 ID:lmFIc6Wt.net
「星………………」


「ほら、千歌ちゃんみて、あの星」


「……………………輝いてるね」


「…………迷うことはないよ、きっと」


「…………そうだね、きっと」


「…………ふふっ」

21: 2017/04/14(金) 22:17:21.32 ID:lmFIc6Wt.net
「…………あ、流れ星」


「え、どこ」


「うっそー」


「もう、ちかちゃんっ」




-終-

22: 2017/04/14(金) 22:19:46.55 ID:lmFIc6Wt.net
最後まで読んでくれた人はありがとう
一応言っておくと叙述トリックとかではないよ

23: 2017/04/14(金) 22:24:08.44 ID:ZqjlOiMB.net
ちかっちが可愛かった(コナミ)

24: 2017/04/14(金) 22:29:10.89 ID:u9purLmt.net
2人とも氏んでるオチかと思った

引用元: 【SS】千歌「ポラリスと小さな王子」